令和6年7月29日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和4年(行ウ)第370号第一種市街地再開発事業組合設立認可差止請求事件口頭弁論終結日令和6年5月16日判決 主文 1 本件訴えのうち、原告B、同C、同D及び同Eの請求に係る部分をいずれも却下する。 2 その余の原告らの請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用(参加によって生じた費用を含む。)は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求東京都知事が令和4年9月16日付けでした石神井公園駅南口西地区市街地再開発組合の設立認可処分を取り消す。 第2 事案の概要 東京都市計画第一種市街地再開発事業「石神井公園駅南口西地区第一種市街地再開発事業」の施行区域内の宅地について所有権を有する者らは、東京都知事に対し、市街地再開発組合の設立について認可申請をした。これに対し、東京都知事は、被告参加人石神井公園駅南口西地区市街地再開発組合(以下「参加人組合」という。)の設立を認可する処分をした。本件は、原告らが、同設立 認可処分の取消しを求める事案である。 原告らは、上記設立認可処分は、被告参加人練馬区(以下「参加人区」といい、参加人組合と併せて「参加人ら」という。)が平成24年に決定し、令和2年に変更した東京都市計画地区計画「石神井公園駅南地区地区計画」を前提とするところ、この地区計画の変更決定は、建築物の高さの最高限度に係る制限 を緩和した点で違法である旨主張している。 1 前提事実当事者間に争いのない事実、後掲証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実並びに当裁判所に顕著な事実は、次のとおりである。 ⑴ 練馬区景観計画の策定参加人区は、平成23年8月、景観法8条所定の景観計画として練馬区景 後掲証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実並びに当裁判所に顕著な事実は、次のとおりである。 ⑴ 練馬区景観計画の策定参加人区は、平成23年8月、景観法8条所定の景観計画として練馬区景 観計画を策定し、その中で、石神井公園周辺地区を「景観まちづくり地区」として指定した。その概要は次のとおりである。(甲13)ア対象区域別紙2の「図対象区域」のとおりイ景観形成の方針 石神井公園からの眺めや豊かな自然景観に配慮した、心地よさが感じられる景観を形成すること、歴史文化的な景観資源を活かし、建築物の配置や外構の緑、しつらえ等を工夫することなどウ景観形成基準石神井公園駅の周辺商業区域(後記⑹の本件再開発事業の施行区域を含 む。)における建築物の建築等の高さ・規模につき、「石神井公園からの眺望の中で突出しないよう高さを抑える」(以下「本件景観形成基準」という。)。 ⑵ 地区計画の決定参加人区は、平成24年5月18日、東京都市計画地区計画「石神井公園駅南地区地区計画」を決定し、告示した(以下、この都市計画を「本件変更 前地区計画」という。)。その概要は次のとおりである。(甲8(枝番を含む。 以下枝番のあるものについて同じ。)、丙6、35)ア地区計画の区域別紙3の1計画図の凡例「地区計画区域」で示される区域イ地区整備計画に定められた建築物等に関する事項 駅前商業地区(別紙3の1計画図の凡例「駅前商業地区」で示される区 分)の建築物の高さについて、下記のとおり。 記35m以下。ただし、面積1000㎡以上の敷地で、区長が別に定める基準に適合し、市街地環境の改善に資すると認める場合は、この限りでない。 なお、本件変更前地区計画が決定された当時、石神井公 35m以下。ただし、面積1000㎡以上の敷地で、区長が別に定める基準に適合し、市街地環境の改善に資すると認める場合は、この限りでない。 なお、本件変更前地区計画が決定された当時、石神井公園駅周辺には、①同駅の北側の「P1」(平成14年3月頃建築、最高部分の高さ約109m。 以下「P1」という。)及び②駅前商業地区の西端の「P2」(平成24年1月頃建築、最高部分の高さ約94m。以下「P2」という。)という2棟の高層マンションが存在していた(丁1、10)。 ⑶ 地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例等ア建築物の制限に関する条例参加人区は、建築基準法68条の2第1項の規定に基づき、練馬区地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例(以下「本件条例」という。)を定めている。 本件変更前地区計画の決定を受けて、本件条例が平成24年6月に改正され、本件条例の適用を受ける区域として、同地区計画の区域のうち地区整備計画が定められている区域が加えられるとともに(3条)、同地区計画の区域のうち駅前商業地区の建築物の高さは、上記⑵イ記に掲げる数値以下にしなければならないとされた(9条)。 (丙49)イ建築物の高さの最高限度に係る制限の緩和に関する要綱参加人区は、本件条例に定められている建築物の高さの最高限度に係る制限を区長が市街地の環境の整備改善に資すると認めて緩和認定するときの基準として、練馬区地区計画の区域内における建築物の高さ制限緩和認 定基準要綱(以下「本件要綱」という。)を定めている。 本件変更前地区計画の決定を受けて、本件要綱が平成24年6月に改正され、同要綱の適用区域として、同地区計画による区域内が加えられるとともに(第1の5)、同地区計画の駅前商業地区の建 る。 本件変更前地区計画の決定を受けて、本件要綱が平成24年6月に改正され、同要綱の適用区域として、同地区計画による区域内が加えられるとともに(第1の5)、同地区計画の駅前商業地区の建築物の最高の高さについて、計画建築物が所定の要件に適合する場合には、50m以下の範囲内において緩和する旨定められた(第4の2)。 (甲19、丙43)⑷ 地区計画の変更参加人区は、令和2年12月17日、本件変更前地区計画を変更する旨決定し、告示した(以下、この決定を「本件変更決定」という。)。その概要は次のとおりである。(甲5、丙26) ア地区計画の区域別紙4計画図の凡例「地区計画区域および地区整備計画区域」で示される区域イ地区整備計画に定められた建築物等に関する事項駅前商業地区A(別紙4計画図の凡例「駅前商業地区A」で示される区 分)の建築物の高さについて、下記のとおり。なお、この駅前商業地区Aの多くの部分が、本件変更前地区計画における駅前商業地区に含まれる。 記 面積が2000㎡以上の敷地で、前面道路に接する全ての部分に歩道状空地を設けた建築物は、50m。 の建築物以外は、35m。 次に掲げる建築物にあっては、、の規定は適用しない。 面積が2000㎡以上の敷地で、都市計画法8条1項3号の規定に基づく高度利用地区内又は建築基準法59条の2第1項の規定に基づき特定行政庁の許可を受けた建築物 (以下、上記の規定を「本件適用除外規定」という。) ⑸ 本件条例及び本件要綱の改正ア本件条例の改正本件変更決定を受けて、本件条例が令和2年12月に改正され、本件変更後地区計画の区域のうち駅前商業地区Aの建築物の高さは、上記⑷イ記に ⑸ 本件条例及び本件要綱の改正ア本件条例の改正本件変更決定を受けて、本件条例が令和2年12月に改正され、本件変更後地区計画の区域のうち駅前商業地区Aの建築物の高さは、上記⑷イ記に掲げる数値以下にしなければならないとされた(丙32)。 イ本件要綱の改正本件変更決定を受けて、本件要綱が令和2年12月に改正され、本件変更後地区計画の駅前商業地区Aの建築物の最高の高さについて、計画建築物が所定の要件に適合する場合における緩和の限度について制限は定められなかった(丙34)。 ⑹ 第一種市街地再開発事業の決定等参加人区は、令和2年12月17日、東京都市計画第一種市街地再開発事業「石神井公園駅南口西地区第一種市街地再開発事業」を決定し、告示した(以下、この市街地再開発事業を「本件再開発事業」という。)。その概要は次のとおりである。(甲6、丙27) ア施行区域別紙5の1計画図の凡例「施行区域」で示される区域イ建築物の整備に関する計画北街区の一部の区域(別紙5の2計画図の凡例「高さの限度:100m」で示される区域)の高さの限度につき100m。 なお、参加人区は、同日、東京都市計画高度利用地区を変更し、本件再開発事業の施行区域を高度利用地区に追加した(甲40、丙28)。 ⑺ 市街地再開発組合の設立認可処分本件再開発事業の施行区域内の宅地について所有権を有する者らは、令和4年5月17日、市街地再開発組合の設立について認可申請をした(以下、 同申請を「本件設立認可申請」という。)。東京都知事は、同年9月16日、 本件設立認可申請を認可し、告示した(以下、同認可を「本件設立認可処分」という。)。本件設立認可処分により参加人組合が成立した。本件設立認可申請 という。)。東京都知事は、同年9月16日、 本件設立認可申請を認可し、告示した(以下、同認可を「本件設立認可処分」という。)。本件設立認可処分により参加人組合が成立した。本件設立認可申請に係る事業計画(以下「本件事業計画」という。)の概要は次のとおりである。(甲10、11、28、29)ア施行地区 別紙6の1位置図の凡例「施行地区の区域」で示される区域。なお、本件再開発事業の施行区域に一致する。 イ施設建築物の設計の概要補助232号線より北側に別紙6の2設計図のとおり所在する北街区に、地上1・2階に商業施設や神社、3~5階に公共施設、6~26階に集合 住宅を配置する。北街区の施設建築物の断面図は、別紙6の3設計図のとおりであり、その最高部分の高さは99.9mである。なお、この施設建築物の敷地は、本件変更後地区計画の駅前商業地区Aに含まれる。 ⑻ 訴えの提起等ア原告らは、令和4年8月1日、本件設立認可申請に対する設立認可処分 の差止めを求めて本件訴えを提起し、同年9月16日に本件設立認可処分がされたことを受けて、同月30日、本件訴えに係る請求を本件設立認可処分の取消しを求めるものへと交換的に変更した(当裁判所に顕著な事実)。 イ原告B、同C、同D及び同E(以下「原告Bら」という。)を除く原告らは、本件事業計画の施行地区内の宅地の所有者又は共有者である(甲1~ 3)。 2 争点⑴ 原告Bらの原告適格⑵ 本件変更決定の違法性 3 争点に関する当事者の主張 ⑴ 原告Bらの原告適格(争点⑴) (原告Bらの主張)本件設立認可処分は都市再開発法に基づく処分であるところ、その関係法令である都市計画法が風致地区について規定しているほか、良好な景観の恵沢を享受す 告適格(争点⑴) (原告Bらの主張)本件設立認可処分は都市再開発法に基づく処分であるところ、その関係法令である都市計画法が風致地区について規定しているほか、良好な景観の恵沢を享受する利益が法律上の保護に値すること、また同法が都市計画の決定に当たり住民の手続参加を規定していることからすれば、都市再開発法は、 風致地区の近隣住民の景観利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含んでいる。 したがって、本件事業計画の施行地区の周辺地域に居住する原告Bらは、本件設立認可処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者であり、 原告適格を有するから、原告Bらの訴えは適法である。 (被告の主張)原告Bらは、本件事業計画の施行地区外の周辺住民であり、参加人組合の成立によって組合員の地位を取得することはなく、その法的地位に変動はない。また、市街地再開発組合の設立認可処分を定めた都市再開発法が、周辺 住民といった不特定多数者の具体的利益を、それが帰属する個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むと解することはできない。 したがって、原告Bらは、本件設立認可処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者ではなく、原告適格を有しないから、原告Bらの訴えは不適法である。 ⑵ 本件変更決定の違法性(争点⑵)(原告らの主張)ア参加人区の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用参加人区は、本件変更決定により本件変更後地区計画に本件適用除外規定を設けるに当たり、考慮すべき事情を考慮せず(後記イ)、考慮すべきで ない事情を考慮したものであり(後記ウ)、そのため、本件変更決定の内容 は社会通念に照らして著しく 本件適用除外規定を設けるに当たり、考慮すべき事情を考慮せず(後記イ)、考慮すべきで ない事情を考慮したものであり(後記ウ)、そのため、本件変更決定の内容 は社会通念に照らして著しく妥当性を欠く(後記エ)。 したがって、本件変更決定は、参加人区においてその裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものであるから、違法である。 イ考慮すべき事情を考慮しなかったこと本件変更前地区計画等が建築物の高さの最高限度に係る制限を50m とした理由等a 本件変更前地区計画は、地域住民が長年にわたって主体的に議論を続けた結果として決定された継続性・安定性の要請が高い地区計画である。そして、本件変更前地区計画は、建築物の高さのコントロールをその根幹の一つとする街並み誘導型地区計画であって、前提事実⑸ アのとおり改正される前の本件条例及び前提事実⑸イのとおり改正される前の本件要綱(以下「本件改正前要綱」といい、本件変更前地区計画及び上記改正前の本件条例と併せて「本件変更前地区計画等」という。)とともに、駅前商業地区における建築物の高さの最高限度を50mに制限していた。この制限は、石神井公園駅周辺に高層マンショ ンが建築される中で、更なる高層建築物の出現により石神井公園の景観をこれ以上破壊してはならないという地域住民の強い意思に基づくものであった。したがって、本件変更前地区計画等が定めていた、建築物の高さの最高限度を50mとする制限を緩和するためには、それを正当化するに足りる大きな必要性が求められるものであった。 b 参加人らは、本件変更前地区計画について、市街地再開発事業が実現することとなった場合には変更される可能性があることを想定していたと主張するが、本件変更前地区計画は、街並み誘導型地区計画という b 参加人らは、本件変更前地区計画について、市街地再開発事業が実現することとなった場合には変更される可能性があることを想定していたと主張するが、本件変更前地区計画は、街並み誘導型地区計画という手法を用いて中長期的に建物の共同化等を実現することとし、土地の高度利用と周辺環境への配慮とを両立するべく決定されたもので あり、第一種市街地再開発事業による共同化については、検討されは したものの、採用しないこととされたものである。 c 本件変更前地区計画等が建築物の高さの最高限度に係る制限を50mとした理由は上記aのとおりであるから、仮に第一種市街地再開発事業を行うとしても、参加人区は、本件変更前地区計画等における建築物の高さの最高限度に係る制限を緩和しなければ当該再開発事業が できないのかを慎重に検討しなければならなかった。 ところが、参加人区は、本件変更決定に当たり、平成26年3月に設立された石神井公園駅南口西地区市街地再開発準備組合(以下「本件準備組合」という。)が作成した事業計画案を、市街地環境の改善に資すると評価しただけで、①本件変更前地区計画等が建築物の高さの 最高限度に係る制限を50mとした理由を考慮せず、そのため、②本件変更前地区計画等における建築物の高さの最高限度に係る制限を緩和しなければ第一種市街地再開発事業ができないのかについても考慮しなかったものである。 d なお、参加人らは、駅前商業地区における建築物の高さの最高限度 の数値を変更するだけであれば、本件改正前要綱の当該部分を改正すれば足りたと主張するが、そうであるとすれば、本件変更前地区計画を変更する必要はなかったということであるから、本件変更決定は必要性を欠くものとして違法となる。 本件景観形成基準との整合性 りたと主張するが、そうであるとすれば、本件変更前地区計画を変更する必要はなかったということであるから、本件変更決定は必要性を欠くものとして違法となる。 本件景観形成基準との整合性 本件変更決定によって本件変更後地区計画に設けられた本件適用除外規定は、高さの限度を100mとする本件再開発事業に関する都市計画決定を可能にするものであるから、練馬区景観計画に定められた「石神井公園からの眺望の中で突出しないよう高さを抑える」という本件景観形成基準(前提事実⑴ウ)に整合しないものであるのに、参加人区はこ の点を考慮しなかった。 本件景観形成基準は、P1及びP2という2棟の高層マンションの建築を受けて、更なる高層建築物の出現によりこれ以上石神井公園の景観を破壊してはならないという意思の下で策定されたものであるから、これらの2棟の高層マンションと同じ程度の高さの建築物を建築しても本件景観形成基準との不整合が生じないとの解釈は誤りである。 ウ考慮すべきでない事情を考慮したこと参加人らは、本件変更決定をした理由として、従前石神井公園駅南口周辺においては敷地や建物の共同化の具体的な進展がなかったが、本件準備組合が設立され、まちづくりの機運が高まったことを主張する。 しかし、石神井公園駅南口周辺において敷地や建物の共同化が進まなか ったのは、本件変更前地区計画の決定のわずか3年後に参加人区が南口西地区市街地再開発事業施行への支援を推進することを打ち出したため、建築物を建て替えても、第一種市街地再開発事業により権利変換を受けて取り壊されてしまうことを懸念せざるを得なくなったためである。また、本件準備組合は、当初から本件変更前地区計画等における建築物の高さの最 高限度に係る制限を大幅に緩和する より権利変換を受けて取り壊されてしまうことを懸念せざるを得なくなったためである。また、本件準備組合は、当初から本件変更前地区計画等における建築物の高さの最 高限度に係る制限を大幅に緩和することを前提に地権者の加入比率を確保し、第一種市街地再開発事業の機運を高めた。その結果、本件景観形成基準との整合性がないがしろにされ、地域住民による合意形成が図られないまま本件変更決定がされたのであるから、その必要性を基礎づける事情とすることは許されない。したがって、参加人区は考慮すべきでない事情を 考慮したということになる。 エ本件変更決定の内容が社会通念に照らして著しく妥当性を欠くこと上記イ及びウのとおり、本件変更決定は、考慮すべき事情を考慮せず、考慮すべきでない事情を考慮して、長年の取組みの結果形成されたルールである本件変更前地区計画を、本件準備組合という一部地権者の利益のた めに緩和し、高さの限度を100mとする本件再開発事業に関する都市計 画決定を可能にするものであって、社会通念に照らして著しく妥当性を欠く。 オ本件設立認可処分の違法性以上のとおり、本件変更決定は違法であるから、これを前提とする本件設立認可処分も違法である。 (参加人らの主張)ア本件変更決定の趣旨石神井公園駅南口周辺地区については、本件変更前地区計画が決定される前から、①駅前の立地であるが小規模な建物が密集し土地の高度利用が図られていない、②敷地が細分化され空地や緑が少ない、③道路に 歩道がなく歩行者にとって危険な状況となっている、④老朽化した建物が密集しており災害時への対応が不十分であるなど、市街地環境に係る課題があり、これらの課題の解決に向けて敷地や建物の共同化が目標とされ、上位計画である被告策定の東 状況となっている、④老朽化した建物が密集しており災害時への対応が不十分であるなど、市街地環境に係る課題があり、これらの課題の解決に向けて敷地や建物の共同化が目標とされ、上位計画である被告策定の東京都市計画都市再開発の方針(都市計画法7条の2。以下「都市再開発の方針」という。)及び参加人区策定 の「練馬区都市計画マスタープラン」(同法18条の2。以下「マスタープラン」という。)にも、同趣旨の内容が含まれていた。そして、本件変更前地区計画においても、土地の高度利用や商業施設の集積を促進し、地域拠点としての機能を高めるとともに、緑豊かで開放感のある街並み及び防災性・快適性の高い良好な住環境を形成することが掲げられてい た。しかし、現実には、本件変更前地区計画が決定された平成24年5月当時、石神井公園駅南口周辺では、敷地や建物の共同化の具体的な進展はなかった。 このような状況の中、平成26年3月に本件準備組合が設立され、石神井公園駅南口周辺地区におけるまちづくりの機運が高まった。そして、 本件準備組合が作成した事業計画案は、細分化された敷地の統合と老朽 化した個々の建物の共同化・不燃化により防災性を高めるとともに、補助232号線と敷地内のオープンスペースを一体で整備し、高度利用により土地を有効活用して、商業施設や住宅等のほか公共サービス施設を集約的に整備して区民の利便性を向上させるものであった。 参加人区が本件変更決定により本件変更後地区計画に本件適用除外規 定を設けることとしたのは、次のような趣旨によるものである。すなわち、本件変更前地区計画等が定められた当時は、補助232号線について具体的な整備のめどが立っておらず、敷地や建物の共同化や法定再開発に向けた具体的な進展もない状況であった。そのため、本 ある。すなわち、本件変更前地区計画等が定められた当時は、補助232号線について具体的な整備のめどが立っておらず、敷地や建物の共同化や法定再開発に向けた具体的な進展もない状況であった。そのため、本件変更前地区計画等における建築物の高さの最高限度の50mという数値は、敷地 面積1000㎡程度で容積率500%での共同化を想定したものであり、本件準備組合が作成した事業計画案のような、敷地面積3000㎡規模で容積率700%での共同化を想定したものではなかった。そして、当初想定されていなかったような大規模な共同化等が行われる場合には、50mや100mなどといった一律の上限を定めず、高度利用地区の制 度の下での市街地環境の改善の程度に応じた個別の規制とする方が、個々の敷地における状況に応じた市街地環境の改善が可能となると考えられたものである。 イ参加人区の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用の不存在参加人区が、本件変更決定により本件変更後地区計画に本件適用除外規 定を設けるに当たり、考慮すべき事情を考慮しなかったことはなく(後記ウ)、考慮すべきでない事情を考慮したこともなく(後記エ)、本件変更決定の内容は社会通念に照らして著しく妥当性を欠くものではない(後記オ)。 したがって、本件変更決定は、参加人区においてその裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものではなく、適法である。 ウ考慮すべき事情を考慮しなかったことはないこと 本件変更前地区計画等が建築物の高さの最高限度に係る制限を50mとした理由等a 参加人区としては、石神井公園駅南口の市街地再開発事業を推進することについては昭和61年以降一貫しており、本件変更前地区計画等により建築物の高さの最高限度に係る制限をしたのは、石神井公園 駅 参加人区としては、石神井公園駅南口の市街地再開発事業を推進することについては昭和61年以降一貫しており、本件変更前地区計画等により建築物の高さの最高限度に係る制限をしたのは、石神井公園 駅周辺が、土地の高度利用を促進すべき地域でありながら細分化された狭い敷地が多いことから、同事業の合意形成の支障となりかねない無秩序な高層化がなされることを避けるためであって、同事業が実現することとなった場合には、本件変更前地区計画が変更される可能性があることを想定していた。 b 原告らは、本件変更前地区計画が、地域住民が長年にわたって主体的に議論を続けた結果として決定された継続性・安定性の要請が高い地区計画であると主張する。しかし、そもそも、本件変更前地区計画の決定に当たっては、建築物の高さの最高限度に係る制限を設けることに反対する意見もあり、地域住民の意見が完全に一致していたわけ ではなかった。また、本件適用除外規定を設けることは、本件変更前地区計画が目標とする「土地の高度利用や商業施設の集積を促進し・・・地域拠点としての機能を高めるとともに、緑豊かで開放感のある街並みおよび防災性・快適性の高い良好な住環境を形成すること」に資するものであって、継続性・安定性の要請を損なうものではない。 原告らは、本件変更前地区計画が街並み誘導型地区計画であることを主張する。しかし、石神井公園駅南口地区では補助232号線の整備推進が求められてきたところ、補助232号線の区域内の地権者が建築をしようとしても一定の制限がかかるのであり(都市計画法53条、54条)、地区計画による緩やかな個々の建替えと補助232号線 の整備を両立することは困難であった。したがって、本件変更前地区 計画は、地元合意形成等の社会経済状況の変化 法53条、54条)、地区計画による緩やかな個々の建替えと補助232号線 の整備を両立することは困難であった。したがって、本件変更前地区 計画は、地元合意形成等の社会経済状況の変化に対応した調整・見直し(例えば高度利用地区の優先適用)を内在・予定していたものである。 c なお、駅前商業地区における建築物の高さの最高限度の数値を変更するだけであれば、本件改正前要綱の当該部分を改正すれば足りたが、 参加人区は、上記アの事情等を踏まえ、まちづくりの進捗等に合わせて、地域住民の意見を聴きながら、地区計画の内容そのものを変更することが望ましいと考えたものである。 本件景観形成基準との整合性本件景観形成基準は、具体的な数値を挙げていないから、建築物等の 高さやその規模の点において「石神井公園からの眺望の中で突出しないよう高さを抑える」に該当するか否かについては、周辺の街並みとの状況の中で相対的に判断される。この点につき、本件事業計画で示された施設建築物は、石神井公園から視認できない又は樹木によりほとんど視認されないか、P1及びP2という2棟の高層マンションとの比較にお いて高さが突出するものではない。 よって、本件変更後地区計画に本件適用除外規定を設けても、本件景観形成基準に矛盾するものではない。 エ考慮すべきでない事情を考慮したことはないこと参加人区として石神井公園駅南口の市街地再開発事業を推進することは、 昭和61年以降の一貫した方針である。そして、本件変更前地区計画の決定後に、地権者らが本件準備組合を設立するなどしたことから、まちづくりの機運が高まったと判断したことに誤りはない。 また、建築物の高さの最高限度に係る制限の緩和を前提にしていたとの点については、本件準備組合が、事 本件準備組合を設立するなどしたことから、まちづくりの機運が高まったと判断したことに誤りはない。 また、建築物の高さの最高限度に係る制限の緩和を前提にしていたとの点については、本件準備組合が、事業成立性を確保し、地権者の合意形成 を図ることを真摯に考えるのであれば、容積率緩和を含めて総合的に検討・ 計画するのが自然かつ合理的であり、むしろ第一種市街地再開発事業の仕組み上、それが要請されていたといえる。 そして、参加人区においては、本件変更決定に当たり、公聴会・説明会、都市計画の案の公告・縦覧、意見書対応、東京都知事との協議及び練馬区都市計画審議会への諮問という民主的プロセスを経ているのであって、地 域住民の合意形成が図られないまま本件変更決定がされたとの指摘は当たらない。 オ本件変更決定の内容が社会通念に照らして著しく妥当性を欠くものではないこと以上のとおり、参加人区は、その広範な政策的・専門的裁量を活かし、 諸事情を総合的に考慮・調整して必要性や相当性を判断した結果、本件変更決定により本件変更後地区計画に本件適用除外規定を設けることとしたものであって、本件変更決定は、都市計画法、都市再開発法その他関係計画に即した合理的かつ妥当なものであり、その内容が社会通念に照らして著しく妥当性を欠くということはできない。 原告らは、本件準備組合という一部地権者の利益のために建築物の高さの最高限度に係る制限を緩和したと主張するが、参加人区は、上記アのとおり、建築物の高さの最高限度について一律に制限をするよりも、高度利用地区の制度の下での市街地環境の改善の程度に応じた個別の規制とする方が、個々の敷地における状況に応じた市街地環境の改善が可能となる と考え、本件変更決定をしたものであって、一部 りも、高度利用地区の制度の下での市街地環境の改善の程度に応じた個別の規制とする方が、個々の敷地における状況に応じた市街地環境の改善が可能となる と考え、本件変更決定をしたものであって、一部地権者の利益を図ったとの批判は当たらない。 (被告の主張)本件変更決定は適法であるから、これを前提とする本件設立認可処分も適法である。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実後掲証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実は、次のとおりである。 ⑴ 石神井公園駅の周辺環境石神井公園駅は、大正4年に開通した現在の西武池袋線の駅として開業した。その後、石神井公園駅の南側にあった三宝寺池周辺の人工的な公園づく りが本格化し、大正8年に石神井城址が東京府の史跡に指定され、昭和5年に周辺地域が宅地の造成や建築物の建築が制限される風致地区に指定され、昭和9年に石神井池が築造され、昭和10年に三宝寺池にある植物群落が国の天然記念物に指定されるなどした。石神井公園は、現在は約22.6haの面積を有し、三宝寺池周辺は豊かな自然に包まれ、落ち着いた雰囲気に満 ちており、石神井池周辺は、ボート遊びができる池を中心に、明るく開放的な景観が広がっている。 一方、石神井公園駅周辺は、昭和30年代以降、都市化が著しく進んで様々な都市問題が生じ、参加人区が昭和61年に作成した「石神井公園駅周辺地区のまちづくり」には、種々の問題の指摘と市街地再開発事業を含む各種の 提案が記載されていた。また、平成10年頃以降、鉄道の高架化や周辺道路の整備に関する都市計画事業が進められるようになった。 (甲12、丙62、丁49)⑵ 石神井公園駅周辺地区まちづくり全体構想の策定等ア平成12年9月、石神井公園駅周辺地区のまちづくりについて意見 備に関する都市計画事業が進められるようになった。 (甲12、丙62、丁49)⑵ 石神井公園駅周辺地区まちづくり全体構想の策定等ア平成12年9月、石神井公園駅周辺地区のまちづくりについて意見交換 を行う場として、石神井公園駅周辺地区まちづくり協議会が発足した。同協議会は、地元町会・商店会の代表者9名、公募区民10名、参加人区の担当課長1名を構成員とし、発足後、16回にわたって検討が続けられた。 同協議会は、平成14年3月、練馬区長に対し、石神井公園駅周辺のまちづくりに関する検討内容を提言した(以下、同提言を「まちづくり協議 会提言」という。)。まちづくり協議会提言は、現状の問題点として、交通 動線が混乱し危険な状況が日常化していること、土地利用状況が容積率制限をはるかに下回っており効率的に土地利用されていないこと、建物の不燃化が不十分であり延焼遮断帯も未形成で災害に弱いことなどを指摘していた。そして、土地利用に関する提言として、土地の高度利用の程度は地権者や周辺住民が参加する協議会の場を経て定めていくべきものであると した上で、本件変更前地区計画の駅前商業地区に相当する地区について目指すべき街並みのイメージを「商業、業務施設が中心に立ち並ぶ中高層(7~10階程度)」としていた。 (丙2)イ平成14年3月頃、石神井公園駅の北側にP1(最高部分の高さ約10 9m)が建築された(丁1)。 ウ参加人区は、平成15年6月、「石神井公園駅周辺地区まちづくり全体構想」(以下「全体構想」という。)を策定した。全体構想は、まちづくり協議会提言を参考として参加人区の考え方をまとめ、2回にわたって実施した住民説明会の結果を踏まえ、今後のまちづくりの進め方を策定したもの であり、概要、以下の記載が た。全体構想は、まちづくり協議会提言を参考として参加人区の考え方をまとめ、2回にわたって実施した住民説明会の結果を踏まえ、今後のまちづくりの進め方を策定したもの であり、概要、以下の記載があった。(丙3)まちづくりの課題と検討の方向a 道路の整備幅が狭い上、歩道のない道路が多く、歩行者・自転車・車の流れが交錯している。特に、南口商店街では、歩行者と車の接触事故が毎年 数件発生している。歩行者の安全と円滑な車両通行が確保できるよう、補助132号線及び補助232号線を整備する。 b 駅前の顔づくり石神井公園駅南口周辺は、低層の店舗併用住宅や駐車場が点在しており、土地の有効利用の上で課題がある。鉄道の高架化や駅前広場の 整備とともに、駅前の顔となる街並みづくりが求められている。そこ で、建物の共同化などの実施に向けた検討組織の設置や関係者の合意形成を促進する。 まちづくり段階構想a 第1段階(現段階)b 第2段階(その1)(駅付近の鉄道連続立体交差事業に着手する段階) 地区計画の方針づくり建物共同化と連携した補助232号線の整備着手駅周辺の建物共同化と、周辺環境と調和した高度利用の推進c 第2段階(その2)(駅付近の鉄道連続立体交差事業が完了した段階)駅前地区の建物共同化の完了 駅周辺の建物共同化と連携し、補助232号線の整備推進d 第3段階(駅付近の鉄道連続立体交差事業の完了以降)補助232号線の整備推進補助232号線沿道地区の建物共同化実施まちづくり基本構想図 別紙7のとおりであり、石神井公園駅南口周辺について、共同化の推進、駅前の顔づくり及び防災性の向上が掲げられている。 具体の事業実施の検討地区計画は 施まちづくり基本構想図 別紙7のとおりであり、石神井公園駅南口周辺について、共同化の推進、駅前の顔づくり及び防災性の向上が掲げられている。 具体の事業実施の検討地区計画は、徐々に進めていく緩やかなまちづくりであるが、主な道路や建物の共同化については、地元合意形成を推進し、早期事業化を図 っていく。 鉄道連続立体交差事業(高架化)に併せて、駅舎のバリアフリー化、南口駅前広場整備、法定市街地再開発事業や優良建築物等整備事業等による駅周辺建物の共同化等を推進し、駅前の顔づくりを目指す。 補助132号線を整備するとともに、補助232号線については、共 同化事業の進捗に合わせて整備する。 ⑶ マスタープラン地域別指針参加人区は、平成13年3月に策定したマスタープランの全体構想において、石神井公園駅周辺地区を地域拠点として位置付けていたが、平成15年6月、その地域別指針を策定し、同地区について、建物の建替えを図りながら商業・業務環境を高め、土地の高度利用を促すものとした(丙41、42)。 ⑷ 都市再開発の方針ア被告は、平成16年4月、都市再開発の方針において、本件再開発事業の施行区域を含む石神井公園駅周辺地区を、特に一体的かつ総合的に市街地の再開発を促進すべき相当規模の地区(都市再開発法2条の3第1項2号)と位置付け、そのうち駅前地区については、下記のとおり定めた(丙 39)。 記土地利用計画の概要:商業、業務、都市型住居地区として、土地の高度利用を図る。 建築物の更新の方針:老朽木造建築物の不燃化、共同化、協調化により、 中高層での建替えを誘導する。商業、業務施設と都市型住宅の供給促進を図る。 イ被告は、平成21年3月、都市再開発の方針を改定した 更新の方針:老朽木造建築物の不燃化、共同化、協調化により、 中高層での建替えを誘導する。商業、業務施設と都市型住宅の供給促進を図る。 イ被告は、平成21年3月、都市再開発の方針を改定したが、土地利用計画の概要及び建築物の更新の方針については、上記アから変更はなかった(丙40)。 ⑸ 石神井公園駅南地区まちづくり計画の策定及び本件変更前地区計画の決定ア平成21年3月、全体構想を踏まえた石神井公園駅南口周辺のまちづくりを進めるため、石神井公園駅南地区まちづくり推進協議会(以下「推進協議会」という。)が発足した。推進協議会は、地権者を中心とし、参加人区の担当課を事務局とするものであった。(丙5、丁56) イ推進協議会は、平成23年10月、「石神井公園駅南地区まちづくり計画」 を策定した。同まちづくり計画では、通風・採光を確保し、駅から公園に向かって徐々に空の広がりが感じられるよう、地区ごとに建物の高さを抑えるとして、建築物の高さの最高限度について、従前は制限のなかった駅前商業地区では35mとし、石神井公園に向かって地区ごとに徐々に低くしていくことが示されていた。また、今後の課題として、富士街道につい ては、補助132号線や補助232号線とともに交通ネットワークを形成する上で不可欠な路線であるため、効果的な整備を求めていくとされていた。(丙5)ウ平成24年1月頃、本件変更前地区計画における駅前商業地区の西端付近にP2(最高部分の高さ約94m)が建築された(丁10、弁論の全趣 旨)。 エ参加人区は、石神井公園駅南側の商業エリアについて、上記イのまちづくり計画の内容を採用し、平成24年5月18日、本件変更前地区計画を決定した。 本件変更前地区計画は、地区計画の目標として、マスタ 参加人区は、石神井公園駅南側の商業エリアについて、上記イのまちづくり計画の内容を採用し、平成24年5月18日、本件変更前地区計画を決定した。 本件変更前地区計画は、地区計画の目標として、マスタープラン、全体 構想及び練馬区景観計画に言及しつつ、「土地の高度利用や商業施設の集積を促進し道路網の整備・改善を進めることで地域拠点としての機能を高めるとともに、緑豊かで開放感のある街並みおよび防災性・快適性の高い良好な住環境を形成すること」を掲げ、また、建築物等の整備の方針として、「駅から公園に向かって徐々に建築物の高さを抑えながらスカイラインを 整えるため、建築物等の高さの最高限度を定める」こととした。そして、前提事実⑵イのとおり、駅前商業地区の建築物の高さの最高限度について、原則35mに制限しつつ、面積1000㎡以上の敷地で区長が別に定める基準に適合し市街地環境の改善に資すると認める場合は、この35mの制限が及ばないこととした。 (甲8、17、丙5) ⑹ 本件再開発事業の具体化ア平成15年から、石神井公園駅周辺の建物共同化を見据え、地元有志から成る石神井公園駅南口再開発勉強会が11回開催され、専門家の講演会等が行われるなどしたが、本件変更前地区計画が決定された平成24年5月当時は、敷地や建物の共同化の具体的な進展がない状況であり、そのよ うな状況が平成25年頃まで続いた(甲12、丙53、弁論の全趣旨)。 イ本件再開発事業の施行地区内の宅地について所有権を有する者らは、平成25年7月、石神井公園駅南口西地区の市街地再開発に向けて研究会を発足させ、研究会への加入率が権利者全体の約85%となった平成26年3月、本件準備組合を設立した。本件準備組合は、同年11月、たたき台 として、最高部 南口西地区の市街地再開発に向けて研究会を発足させ、研究会への加入率が権利者全体の約85%となった平成26年3月、本件準備組合を設立した。本件準備組合は、同年11月、たたき台 として、最高部分の高さ約130mの高層ビルを建築するなどの第一種市街地再開発事業の案を作成した。なお、令和元年8月27日の時点では、借地権者を含む権利者の約90%が本件準備組合に加入していた。 (丙12の1、45~47、丁6)ウ被告は、平成27年3月、都市再開発の方針を改定したが、石神井公園 駅の駅前地区における土地利用計画の概要及び建築物の更新の方針については、上記⑷アから変更がなかった(丁33)。 エ参加人区は、平成27年3月、「みどりの風吹くまちビジョン」を公表し、石神井公園駅周辺地区について、5か年の取組みとして、南口西地区市街地再開発事業施行への支援や補助232号線の整備推進を定めた(甲22 の1)。 オ参加人区は、平成27年12月、マスタープランを改定し、石神井公園駅周辺地区について、南口西地区市街地再開発事業施行への支援や補助232号線の整備を重点事業として進めることを定めた。また、その地域別指針も改定し、同地区について、地区計画による建築物の規制・誘導や市 街地再開発事業を推進し、土地の高度利用を図ることにより、商業・業務 環境を高めること、補助132号線、補助232号線等の道路網整備を進め交通環境を改善するとともに、防災性の向上を図ることなどを定めた。 (丁35)カ平成27年8月から平成28年8月まで、石神井公園駅周辺地区まちづくり懇談会が6回にわたり開催された。同懇談会は、参加人区の担当課が 事務局となり、各回、地域住民が30~60人程度参加した。石神井公園駅南口西地区に高層ビルを建築 、石神井公園駅周辺地区まちづくり懇談会が6回にわたり開催された。同懇談会は、参加人区の担当課が 事務局となり、各回、地域住民が30~60人程度参加した。石神井公園駅南口西地区に高層ビルを建築することについては賛否があったが、参加人区は、本件準備組合が作成した再開発事業の案は、オープンスペースの確保による良質な都市空間の創出等の数多くの地域貢献をもたらす有効な事業手法であると考える、本件変更前地区計画では建築物の高さの最高限 度35mを基本としているが、高度利用地区等の都市計画を新たに定めることで再開発事業を行うことができ、そのようにすることは本件変更前地区計画の目標である土地の高度利用や商業施設の集積等に合致すると考えるとして、今後は、本件準備組合の検討を踏まえて都市計画決定を行い、組合設立認可、工事着手等に進む旨を説明した。 これに対し、石神井公園駅南口西地区の高層ビル建築に反対する地域住民は、同年10月、石神井まちづくり談話会を発足させた。 (甲23、丙8)キ参加人区及び本件準備組合は、平成29年2月、同年4月及び平成30年10月、説明会を実施し、石神井公園駅南口西地区に最高部分の高さ約 110m(ただし、平成30年10月の説明会時点では約103m)の高層ビルを建築する予定であることなど、市街地再開発の検討状況について地域住民に説明した。質疑応答の中では、本件変更前地区計画及び本件景観形成基準との整合性に関する質問が複数出されたが、参加人区は、本件変更前地区計画の目的には土地の高度利用が含まれているし、高さ制限に 対し高度利用地区という新たな都市計画をかけて再開発をすることは他地 区でも行っている、新たな都市計画と本件変更前地区計画の変更を考えているが、再開発事業を実施することが さ制限に 対し高度利用地区という新たな都市計画をかけて再開発をすることは他地 区でも行っている、新たな都市計画と本件変更前地区計画の変更を考えているが、再開発事業を実施することが街並み誘導をやめることにはならない、本件景観形成基準に従い既存の高層マンションとの比較で突出しないように計画するなどと回答した。質疑応答において出された意見の中には、市街地再開発事業に肯定的なものも複数あった。(丙9) ⑺ 本件変更決定及び本件再開発事業に関する都市計画の決定ア本件準備組合は、令和元年6月、練馬区景観条例の規定に従い、大規模建築物の新築に係る届出を行うために練馬区長に事前協議を申請した。練馬区長は、この事前協議を行うに当たり、練馬区都市計画審議会に対し、その意見を聴くための諮問をした。 同審議会の会議では、委員から、①本件変更前地区計画等において建築物の高さの最高限度に係る制限を定めたのにこれを緩和する点、②本件景観形成基準との整合性につき、既存の高層マンションとの比較で突出しなければよいというのは比較対象の点で疑問があるなどの指摘があった。また、会議においては、本件再開発事業における施設建築物の高さと事業の 採算性の関係が議論になり、参加人区から50mでは事業が成り立たないと考えている旨の説明があったほか、本件準備組合において、施設建築物の高さを50m、70m、80m、90m及び103mとした各場合の資金計画の概略を非公開の場で説明したことがあった。最終的に、同審議会からは、同年10月30日、練馬区長に対し、上記①の点につき「再開発 事業の意義、必要性、施設計画の合理性について地域住民に丁寧に説明し、意見を十分に聴きながら進められたい」、上記②の点につき「遠方からの見え方に配慮したデザ に対し、上記①の点につき「再開発 事業の意義、必要性、施設計画の合理性について地域住民に丁寧に説明し、意見を十分に聴きながら進められたい」、上記②の点につき「遠方からの見え方に配慮したデザインになるよう工夫されたい。特に石神井公園からの眺望に配慮するよう努められたい」との意見が提出された。 (甲14、丙10~13、丁11) イ参加人区は、令和元年11月及び12月、本件変更後地区計画及び本件 再開発事業に関する都市計画等の都市計画の素案について地域住民に説明する説明会を実施した。様々な意見が寄せられたが、参加人区は、①本件準備組合が設立されたことなど、まちづくりの機運が高まっていることから、本件変更前地区計画の主旨を踏まえつつ、社会状況の変化に対応した地区計画の変更を提案していること、②駅前商業地区Aには、将来的には 100mを超える建築物が複数建つことが想定されること、③本件再開発事業の区域内及びその周辺は、敷地が細分化され、建築物が密集し、歩道もないなど危険な状態であるが、本件再開発事業には、これらの課題の解決を期待できること、④本件再開発事業の効果を踏まえて建築物の高さの最高限度に係る制限を変更することとしたが、高度利用地区等により個別 にその妥当性を判断できる仕組みであること、⑤103mという高さについては、歩道状空地等公共的空間の確保等のために必要と考えているが、今後具体的な計画を進める中で縮小できる余地があれば指導助言していくことなどを回答した。(丙14~16)参加人区は、令和2年7月から8月にかけて、本件変更後地区計画及び 本件再開発事業に関する都市計画等の都市計画の原案について、公聴会等を実施した。参加人区は、本件変更前地区計画を変更する理由として、周辺道路に歩道が から8月にかけて、本件変更後地区計画及び 本件再開発事業に関する都市計画等の都市計画の原案について、公聴会等を実施した。参加人区は、本件変更前地区計画を変更する理由として、周辺道路に歩道がなく歩行者が危険であることや、上記⑹オのマスタープランの定めなどを挙げていた。原案に対して328通の意見書が出され、公聴会でも10名の公述人から意見が出されたが、本件再開発事業の事業効 果に期待を寄せる声が多数ある一方で、建築物の高さの最高限度に係る制限を緩和することについては、本件変更前地区計画や本件景観形成基準に反するなどとして批判する声も多数あった。参加人区は、①本件変更前地区計画では、最高の高さの緩和の限度について区長に詳細を委ねているが、これは状況の変化等に合わせて迅速に基準の見直しが行えるように配慮し たものであること、②今回はまちづくりの進捗等から見直しを行うもので あること、③駅前商業地区Aにおいては、個々の敷地における市街地環境の改善の状況に応じて高さの判断が可能となるよう50mなど一律の上限を定めないこと、④どの程度の高さとなるかは、確保する歩行者空間等の大きさによって変わるため、個々の制度適用の際にその内容に応じて判断していくこととなること、⑤練馬区景観計画については、既存建築物と同 程度まで高さを抑えて街並みとの調和を図ったこと、⑥駅前から公園に向かって段階的に高さを低くし、駅前については高さ制限を緩和し、市街地環境の改善に資する建物を誘導するという考え方に変更はないことなどを回答した。(甲25、26、丙17~19、22)参加人区は、同月、本件変更後地区計画及び本件再開発事業に関する都 市計画の決定に当たり、東京都知事と協議し、同年9月、意見がない旨の協議結果を受けた(丙20、21 6、丙17~19、22)参加人区は、同月、本件変更後地区計画及び本件再開発事業に関する都 市計画の決定に当たり、東京都知事と協議し、同年9月、意見がない旨の協議結果を受けた(丙20、21)。 参加人区は、同月から同年10月にかけて、本件変更後地区計画及び本件再開発事業に関する都市計画等の都市計画の案について、縦覧に供するとともに、意見書の提出を受け付けた。113通の意見書の提出があり、 その中には、建築物の高さの最高限度に係る制限の緩和について否定的な意見が複数あった。これに対する参加人区の回答は、上記公聴会におけるものと概ね同じであった。(丙23、31)ウ参加人区は、令和2年10月、都市計画法等の規定に従い、練馬区都市計画審議会に対し、本件変更後地区計画及び本件再開発事業に関する都市 計画等の都市計画の案について付議し、同審議会の議を経た(丙24、25)。 エ参加人区は、令和2年12月17日、本件変更決定及び本件再開発事業に関する都市計画の決定をした。 同時に、参加人区は、本件再開発事業の施行区域を都市計画法8条1項 3号の規定に基づく高度利用地区の対象に追加し、その北街区における容 積率を500%から700%まで緩和した。 (甲40、丙26~30)⑻ 本件設立認可処分本件再開発事業の施行区域内の宅地について所有権を有する者らは、令和4年5月17日に本件設立認可申請をし、東京都知事は、同年9月16日に 本件設立認可処分をした(甲28、29、乙1)。 2 争点⑴(原告Bらの原告適格)について⑴ 処分の取消しの訴えは、当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」に限り、提起することができる(行政事件訴訟法9条1項)。そして、同項にいう当該処分の取消しを求める 格)について⑴ 処分の取消しの訴えは、当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」に限り、提起することができる(行政事件訴訟法9条1項)。そして、同項にいう当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する 者」とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうのであり、当該処分を定めた行政法規が、不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には、このような利益もこ こにいう法律上保護された利益に当たり、当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者は、当該処分の取消訴訟における原告適格を有するものというべきである(最高裁平成16年(行ヒ)第114号同17年12月7日大法廷判決・民集59巻10号2645頁参照)。 ⑵ 原告Bらは、本件事業計画の施行地区内の宅地について所有権又は借地権 を有するものとは認められないから、本件設立認可処分によって参加人組合の組合員になることはない(都市再開発法20条1項)。また、原告Bらが、本件再開発事業の施行により権利変換に関する処分を受ける者に該当するとも認められない。そのほか、本件設立認可処分に係る効力の観点から、原告Bらが、本件設立認可処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者 に該当すると認めるに足りる証拠はない。 ⑶ 石神井公園周辺の景観が、良好な風景として、人々の歴史的又は文化的環境を形作り、豊かな生活環境を構成するものであったとしても、原告Bらが、風致地区に居住しているなど、景観の恵沢を日常的に享受していることをうかがわせる証拠はな な風景として、人々の歴史的又は文化的環境を形作り、豊かな生活環境を構成するものであったとしても、原告Bらが、風致地区に居住しているなど、景観の恵沢を日常的に享受していることをうかがわせる証拠はないから、原告Bらは、石神井公園周辺の景観について、法律上保護された景観利益を有するとはいえない。また、都市再開発法の関 係法令である都市計画法において、都市計画の決定に当たって住民の手続参加が規定されているとしても(同法16条1項、17条1項、2項)、これは都市計画に住民の意見を広く反映させようとするものであって、これをもって、都市再開発法が、景観利益について専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべ きものとする趣旨を含むものとは解されない。 さらに、原告Bらは、石神井まちづくり談話会(認定事実⑹カ)の構成員である旨主張するところ、原告Bらが石神井公園駅南口西地区の良好な街並みづくりに関心を有する者であるとしても、良好な街並みを享受する利益をもって直ちに法律上保護された利益ということはできないし、同法が、良好 な街並みから享受する利益について専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むものとは解されない。 ⑷ したがって、原告Bらは、本件設立認可処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者ではないから、本件訴えにつき原告適格を有しない。 よって、原告Bらの訴えは不適法である。 3 争点⑵(本件変更決定の違法性)について⑴ 本件変更決定の違法性の判断枠組み都市計画である地区計画の変更決定に係る判断は、これを決定する行政庁の広範な裁量に委ねられており、裁判所が地区計画の 争点⑵(本件変更決定の違法性)について⑴ 本件変更決定の違法性の判断枠組み都市計画である地区計画の変更決定に係る判断は、これを決定する行政庁の広範な裁量に委ねられており、裁判所が地区計画の変更決定の内容の適否 を審査するに当たっては、当該変更決定が裁量権の行使としてされたことを 前提として、その基礎とされた重要な事実に誤認があること等により重要な事実の基礎を欠くこととなる場合、又は、事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと、判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等によりその内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限り、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となるとす べきものである(最高裁平成16年(行ヒ)第114号同18年11月2日第一小法廷判決・民集60巻9号3249頁参照)。 ⑵ 参加人区が本件変更決定により本件変更後地区計画に本件適用除外規定を設けた理由参加人らは、本件変更決定により本件変更後地区計画に本件適用除外規定 を設けた理由について、概要、①石神井公園駅南口周辺地区については、以前から種々の課題が指摘され、課題解決のために敷地や建物の共同化が目標とされていた、②本件変更前地区計画が決定された平成24年5月当時は、共同化についての具体的な進展がない状況であったが、平成26年3月に本件準備組合が設立されてまちづくりの機運が高まった、③参加人区から見て、 本件準備組合が作成した事業計画案は市街地環境の改善に資すると評価できる内容であった、④参加人区としては、本件変更前地区計画の決定がされた当時は共同化や法定再開発の具体的な進展がなかったため、建築物の高さの最高限度に係る制限は小規模な共同化を想定したものであったが、本件準備組合が ④参加人区としては、本件変更前地区計画の決定がされた当時は共同化や法定再開発の具体的な進展がなかったため、建築物の高さの最高限度に係る制限は小規模な共同化を想定したものであったが、本件準備組合が作成した事業計画案のように当初想定されていなかった大規模な共同 化が行われる場合には、一律に最高限度を定めるよりも高度利用地区の制度の下で市街地環境の改善の程度に応じた個別の規制とする方が望ましいと考えたと主張する。 参加人らの上記主張のうち、①は認定事実⑴から⑷までに、②は認定事実⑹ア及びイにそれぞれ沿うものであり、③及び④については、認定事実⑹カ 及びキによれば参加人区においてそのように評価していたものと認められ、 以上の認定を左右するに足りる証拠はない。 ⑶ 参加人区の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用の有無以下、上記⑴の判断枠組みに従い、認定事実及び上記⑵で認定した事実関係を前提に、参加人区が本件変更決定により本件変更後地区計画に本件適用除外規定を設けたことがその裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用するも のであったか否かについて、原告らの主張に沿って検討する。 ア考慮すべき事情を考慮しなかったか本件変更前地区計画等が建築物の高さの最高限度を50mとした理由等a 本件変更前地区計画等は、面積1000㎡以上の敷地について建築 物の最高の高さの緩和の限度を50mと定めているから、建築物の高さの最高限度に係る制限は、細分化された狭い敷地にのみ適用されるものではない。また、本件変更前地区計画は「駅から公園に向かって徐々に建築物の高さを抑えながらスカイラインを整えるため、建築物等の高さの最高限度を定める」こととしているところ、規模の大きな 敷地の建築物であってもスカイラインに影響を及ぼし得 園に向かって徐々に建築物の高さを抑えながらスカイラインを整えるため、建築物等の高さの最高限度を定める」こととしているところ、規模の大きな 敷地の建築物であってもスカイラインに影響を及ぼし得ることに変わりはない。以上によれば、本件変更前地区計画等は、それらが定められた平成24年5~6月当時は、P1やP2のような高層建築物が新たに建築されるのを避けようとする趣旨を含むものであったと認めるのが相当である。 しかし、本件変更前地区計画が、第一種市街地再開発事業による共同化をしないものとしたと認めることはできない。すなわち、本件変更前地区計画の上位計画である都市再開発の方針は、石神井公園駅周辺地区を、特に一体的かつ総合的に市街地の再開発を促進すべき相当規模の地区(都市再開発法2条の3第1項2号)と位置付けるととも に、土地の高度利用や建物共同化を図ることを定めていたし(認定事 実⑷アイ)、同じく上位計画であるマスタープランの地域別指針も、建物の建替えを図りながら商業・業務環境を高め、土地の高度利用を促すものとしていた(認定事実⑶)。地区計画は上位の都市計画に適合し、又は即したものである必要があることからすれば(都市計画法15条3項、18条の2第4項)、本件変更前地区計画が、これらの上位計画 に反して、第一種市街地再開発事業による共同化をしないものとしたとは解されないところである。むしろ、このような上位計画との整合性に加え、マスタープランの地域別指針と同時期に公表され、本件変更前地区計画でも言及されている参加人区策定の全体構想(認定事実⑵ウ)やその参考となったまちづくり協議会提言(認定事実⑵ア)に 示されているように、土地の高度利用には、土地の有効活用という経済合理性の観点だけでなく、防災性や交 区策定の全体構想(認定事実⑵ウ)やその参考となったまちづくり協議会提言(認定事実⑵ア)に 示されているように、土地の高度利用には、土地の有効活用という経済合理性の観点だけでなく、防災性や交通の危険のように生命身体の安全に関わる課題解消の観点も含まれていたことからすれば、参加人区は、共同化を積極的に推進することが求められていたというべきである。 そして、本件変更前地区計画等における建築物の高さの最高限度に係る制限は、第一種市街地再開発事業を行う場合に及ぶと解されるが、石神井公園駅周辺地区は、上記のとおり共同化の必要性が高いとされながら、本件変更前地区計画等が決定された当時は共同化の具体的な進展がない状況であったのであり(認定事実⑹ア)、建築物の高さの最 高限度に係る制限は根幹的都市施設に関するものでないことや、同制限の緩和自体は土地所有者の利益になるものであることからすると、将来、本件変更前地区計画等における建築物の高さの最高限度に係る制限が土地の高度利用や建物共同化の障害となったときに、その制限を緩和したり撤廃したりするという変更を許容しないほどに強い趣旨 のものであったとは解されない(なお、証拠(甲21)によれば、推 進協議会の第14回の議論の中で、事務局から、地区計画ができれば建物の高さは35mに抑えられるので、今後はP1のような高い建物は建たなくなるとの説明があったことが認められるが、あくまで本件変更前地区計画を前提とする説明と考えられ、その変更可能性を否定する趣旨まで含むとは認められない。)。 b 原告らは、①本件変更前地区計画は、街並み誘導型地区計画という手法を用いて中長期的に共同化等を実現することとしたものである、②本件変更前地区計画は地域住民が長年にわたって主体的に議 )。 b 原告らは、①本件変更前地区計画は、街並み誘導型地区計画という手法を用いて中長期的に共同化等を実現することとしたものである、②本件変更前地区計画は地域住民が長年にわたって主体的に議論を続けた結果として決定された継続性・安定性の要請が高い地区計画であるとして、その変更には大きな必要性が求められると主張する。 しかし、上記①については、本件変更前地区計画では、別紙3の2のとおり、駅前通り等は壁面の位置の制限がされており、街並み誘導型地区計画の手法が用いられたといえるものの、本件再開発事業の施行区域の北街区に相当する部分について壁面の位置の制限はされておらず、当該部分について街並み誘導型地区計画の手法が用いられたと は認められない(甲8の2)。この点を措くとしても、上記aのとおり、参加人区は共同化を積極的に推進することが求められていたこと、全体構想において、地区計画は徐々に進めていく緩やかなまちづくりであるが、主な道路や建物の共同化については、地元合意形成を推進し早期事業化を図っていくとされていること(認定事実⑵ウ)、本件変 更前地区計画及び「石神井公園駅南地区まちづくり計画」に第一種市街地再開発事業を否定する文言がないことからすれば、本件変更前地区計画の下においても、駅前商業地区については、第一種市街地再開発事業を含む早期の再開発が求められていたというべきである。 上記②については、認定事実⑹カ、キ及び⑺のとおり、本件では、 本件変更前地区計画の変更について、平成27年頃から地域住民を巻 き込んだ議論が始まり、参加人区は、約5年の間に、6回にわたるまちづくり懇談会を開催し、更に3回の説明会も開催している上、練馬区都市計画審議会の議を経るなどの手続がとられ、これらの議論におい き込んだ議論が始まり、参加人区は、約5年の間に、6回にわたるまちづくり懇談会を開催し、更に3回の説明会も開催している上、練馬区都市計画審議会の議を経るなどの手続がとられ、これらの議論においては、100m級の高層建築物を建築することの是非が常に議題となっていたのであり、さらに、本件条例の改正については区議会の議 決も経ている。このような経緯によれば、本件変更前地区計画を決定したときほどではないにせよ、変更に向けた手続的な配慮と議論が相応にされていたと評価することができるから、本件変更前地区計画が、地域住民が長年にわたって主体的に議論を続けた結果であるとしても、その変更に当たって大きな必要性が求められるものとはいえない。 以上のとおり、原告らの上記主張はいずれも採用することができない。 c 上記a及びbで説示したところによれば、本件変更前地区計画等における建築物の高さの最高限度に係る制限は、これを変更するために大きな必要性が求められるものではない。 また、参加人区は、本件準備組合が第一種市街地再開発事業の案を作成し、土地の高度利用や建物共同化に向けた動きが具体化した後である平成27年12月に、本件変更前地区計画の上位計画であるマスタープランを改定し、南口西地区市街地再開発事業施行への支援を重点事業として進めることを定めたのであり(認定事実⑹オ)、本件変更 前地区計画は、上記改定後のマスタープランに即したものである必要があることからすると(都市計画法18条の2第4項)、同再開発事業を推進するという方向性を踏まえた変更がされ得る状況になったということができる。 以上によれば、参加人区において、①本件変更前地区計画等が建築 物の高さの最高限度に係る制限を50mとした理由や、②本件変更前 踏まえた変更がされ得る状況になったということができる。 以上によれば、参加人区において、①本件変更前地区計画等が建築 物の高さの最高限度に係る制限を50mとした理由や、②本件変更前 地区計画等における建築物の高さの最高限度に係る制限を緩和しなければ第一種市街地再開発事業ができないのかを考慮すべきであったとはいえず、参加人区としては、本件変更前地区計画等の変更可能性を前提として、それらにおける建築物の高さの最高限度に係る制限が土地の高度利用や建物共同化の障害となっているのかという検討をすれ ば足りるというべきである。 そして、参加人区において、石神井公園駅南口周辺地区で大規模な共同化が行われる場合には、一律に建築物の高さの最高限度を定めるよりも高度利用地区の制度の下で市街地環境の改善の程度に応じた個別の規制とする方が望ましいと考えていたことは上記⑵④のとおりで あり、また、本件再開発事業についても、施設建築物の高さを50mとしたのでは事業が成り立たないと考えていたことは認定事実⑺アのとおりであるから(練馬区都市計画審議会の中で本件準備組合から建築物の高さと収支の関係について説明がなされたことからすれば、事業成立性に関する参加人区の上記判断には一定の根拠があるものとい える。)、参加人区は、本件変更前地区計画等における建築物の高さの最高限度に係る制限が土地の高度利用や建物共同化の障害となっているのかという検討をしていたものと認められる。 d よって、参加人区が考慮すべき事情を考慮しなかったということはできない。 e なお、原告らは、駅前商業地区における建築物の高さの最高限度の数値を変更することは本件改正前要綱の当該部分の改正により行うことができたとの参加人らの主張を前提に、そうであると きない。 e なお、原告らは、駅前商業地区における建築物の高さの最高限度の数値を変更することは本件改正前要綱の当該部分の改正により行うことができたとの参加人らの主張を前提に、そうであるとすれば本件変更前地区計画を変更する必要はなかったから、本件変更決定は違法であるとも主張する。 しかし、都市計画法21条は、都市計画を変更する必要が生じたと きは、遅滞なく、当該都市計画を変更しなければならないと定めるのみであり、都市計画の変更以外の手段によっても目的を達せられるときに、都市計画の変更をすることを禁じる趣旨とは解されない。そのため、仮に本件改正前要綱の当該部分の改正により建築物の高さの最高限度に係る制限の緩和をすることが可能であったとしても、手続に 慎重を期して本件変更前地区計画自体を変更することが禁じられる理由はない。原告らの上記主張は採用することができない。 本件景観形成基準との整合性a 本件変更決定は、本件適用除外規定により一定の場合に建築物の高さの最高限度に係る制限を撤廃するものであるものの、本件訴えは、 参加人組合の設立認可処分(本件設立認可処分)の取消しを求めるものであるから、その前提となる高さの限度を100mとする本件再開発事業に関する都市計画決定が本件景観形成基準と整合するかという観点から検討すべきである。 b 本件景観形成基準は、「石神井公園からの眺望の中で突出しないよう 高さを抑える」というものであるが、「突出」しているか否かは周囲との相対的な関係で決まるものであるから、既存の建築物等との比較において検討することが相当である。 本件再開発事業に関する都市計画決定における100mという高さの限度は、P1(109m)とP2(94m)の中間的な数値であり、 ら、既存の建築物等との比較において検討することが相当である。 本件再開発事業に関する都市計画決定における100mという高さの限度は、P1(109m)とP2(94m)の中間的な数値であり、 最高部分の高さが100mの建築物は、石神井公園からは、これらの2棟の高層マンションと概ね同程度の高さに見えることが見込まれる(丙44)。 そうすると、本件再開発事業に関する都市計画決定が定める高さの限度の範囲内の建築物が石神井公園からの眺望の中で突出していると まではいえないから、本件景観形成基準に反するということはできな い。 c これに対し、原告らは、本件景観形成基準は、P1及びP2という2棟の高層マンションの建築を受けて、更なる高層建築物の出現によりこれ以上石神井公園の景観を破壊してはならないという意思の下で策定されたものであるから、これらの2棟の高層マンションと同じ程 度の高さの建築物を建築しても本件景観形成基準との不整合は生じないとの解釈は誤りであると主張する。 しかし、景観計画は、都市計画に関する基本的な方針に適合するものでなければならないところ(景観法8条8項)、参加人区は、平成27年12月にマスタープランを改定し、石神井公園駅周辺地区につい て、南口西地区市街地再開発事業施行への支援を重点事業として進めることを定めたものである(認定事実⑹オ)。そうすると、同再開発事業への支援をうたう上記のマスタープランの改定後において、P1及びP2の存在を否定的に評価し、「突出」の判断に当たって比較対象から除外することが相当とは認め難い。原告らの上記主張は採用するこ とができない。 d よって、参加人区が考慮すべき事情を考慮しなかったということはできない。 イ考慮すべきでない事情を考慮した 外することが相当とは認め難い。原告らの上記主張は採用するこ とができない。 d よって、参加人区が考慮すべき事情を考慮しなかったということはできない。 イ考慮すべきでない事情を考慮したか原告らは、参加人区が考慮した事項(上記⑵)のうち、従前石神井公園 駅南口周辺においては敷地や建物の共同化の具体的な進展がなかったが、本件準備組合が設立され、まちづくりの機運が高まったとの点について、①具体的な進展がなかったのは、本件変更前地区計画の決定の3年後に参加人区が南口西地区市街地再開発事業施行への支援を推進することを打ち出したためであること、②本件準備組合は、当初から本件変更前地区計画 等における建築物の高さの最高限度に係る制限を大幅に緩和することを前 提に地権者の加入比率を確保し、第一種市街地再開発事業の機運を高めたことを指摘し、本件変更決定の必要性を基礎づける事情とすることは許されない旨主張する。 しかし、本件変更前地区計画等における建築物の高さの最高限度に係る制限につき、これを変更するために大きな必要性が求められるものでない ことについては、上記アで説示したとおりである。そして、参加人区が、平成27年3月に「みどりの風吹くまちビジョン」を公表して石神井公園駅南口西地区市街地再開発事業施行への支援等を打ち出したこと(認定事実⑹エ)は、上位計画である都市再開発の方針や、参加人区が同年12月に本件変更前地区計画の上位計画であるマスタープランを改定し、南口西 地区市街地再開発事業施行への支援を定めたこと(認定事実⑹オ)と整合するものである。そして、本件変更前地区計画以前の建築物の高さの最高限度に係る制限がない時期から市街地再開発事業が求められていたのにこれが実現していなかったことは認定事実 こと(認定事実⑹オ)と整合するものである。そして、本件変更前地区計画以前の建築物の高さの最高限度に係る制限がない時期から市街地再開発事業が求められていたのにこれが実現していなかったことは認定事実⑹アのとおりであり、建築物の高さの最高限度に係る制限の緩和を前提とするものであっても約90%の借 地権者を含む権利者が本件準備組合に加入し、本件準備組合が事業計画案を作成したことなどからすれば、参加人区がまちづくりの機運が高まっていると評価し、本件変更決定の必要性を基礎づける事情としたことに誤りはない。 よって、参加人区が考慮すべきでない事情を考慮したということはでき ない。 ウまとめ以上のとおり、参加人区が本件変更決定により本件変更後地区計画に本件適用除外規定を設けたことについては、考慮すべき事情を考慮せず、又は考慮すべきでない事情を考慮したということはできないから、本件変更 決定は、参加人区が裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものであ るとはいえない。 ⑷ 本件設立認可処分の適法性上記⑴、⑵及び⑶で説示したところによれば、本件変更決定は適法であるから、これを前提とする本件設立認可処分も適法である。 4 結論 よって、本件訴えのうち、原告Bらの請求に係る部分は不適法であるからこれらをいずれも却下することとし、その余の原告らの請求はいずれも理由がないからこれらをいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官品田幸男 裁判官石神有吾 裁判官大久保陽久 別紙2ないし別紙7は掲載省略 男 裁判官石神有吾 裁判官大久保陽久 別紙2ないし別紙7は掲載省略
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