主文 1 被告広島県は,原告に対し,10万円及びこれに対する平成11年11月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,これを50分し,その1を被告広島県の負担とし,その余を原告の負担とする。 4 この判決は,原告勝訴部分に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被告らは,原告に対し,連帯して500万円及びこれに対する平成11年11月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,広島県高等学校教職員組合(以下「高教組」という。)が毎年開催している「人事委員会勧告の説明会」と称する集会(以下「本件集会」という。)を,広島県立X高等学校(以下「X高校」という。)で開催しようと,同校校長や事務長に対し,口頭で,同校体育館の使用の申入れをしたところ,いったん口頭ではあるが,これを了承する返事を得ながら,その後,違法不当にその利用を拒否されたとして,原告が,X高校の校長である被告I及び広島県教育長の地位にあった被告Jに対し,共同不法行為(民法719条1項)に基づき,被告広島県に対し,国家賠償法1条,3条に基づき,損害賠償を求めた事案である。 1 争いのない事実等(証拠により認定した事実は当該証拠を掲記した。)(1) 当事者等ア高教組は,広島県立高等学校等に勤務する教職員によって組織された,地方公務員法52条に基づく職員団体であり,組合員の労働条件の維持改善及び教育の民主化を実現するという目的を有する団体である(甲1,81)。 原告は,高教組の府中地区支部に所属する499名の教職員により構成される組織である。 イ被告I(以下「被 改善及び教育の民主化を実現するという目的を有する団体である(甲1,81)。 原告は,高教組の府中地区支部に所属する499名の教職員により構成される組織である。 イ被告I(以下「被告I」という。)は,X高校校長の地位にある者である。 ウ被告Jは,平成11年当時,地方教育行政の組織及び運営に関する法律(以下「地教行法」という。)2条により設置された広島県教育委員会の教育長の地位にあり,同教育委員会の権限に属する全ての事務をつかさどる者である(地教行法17条1項)。 エ被告広島県は,被告I及び同Jの国家賠償法3条所定の費用負担者である(なお,被告Jについては平成11年当時)。 (2) 広島県教育委員会(以下「県教委」という。)が制定した,県教委の所管に属する公有財産(地方自治法238条1項に規定する公有財産)の取得,管理及び処分に関する取扱いに関する広島県教育委員会公有財産管理規則(昭和40年4月1日教育委員会規則第9号,以下「本件管理規則」という。)には,以下の規定がある(乙1)。 【2条】「この教育委員会規則において,次の各号に掲げる用語の意義は,当該各号に定めるところによる。 1 課広島県教育委員会組織規則(平成9年広島県教育委員会規則第4号,以下「組織規則」という。)第5条に規定する課をいう。 2 所組織規則第2章第2節に規定する地方機関並びに第3章及び第4章に規定する広島県教育委員会の所管に属する学校その他の教育機関をいう。 3ないし5 (略) 6 行政財産地方自治法第238条第3項に規定する行政財産をいう。 7 (略)」【3条】「財産は,当該財産に係る事務又は事業を所掌する課に所属させる。(後略)」【20 行政財産地方自治法第238条第3項に規定する行政財産をいう。 7 (略)」【3条】「財産は,当該財産に係る事務又は事業を所掌する課に所属させる。(後略)」【20条】「行政財産は,その用途又は目的を妨げない限度において,かつ,次の各号の一に該当する場合に限り,これを使用させるものとする。 1 国若しくは地方公共団体,水害予防組合,土地改良区その他の公法人又は法令の規定により県の執行機関が監督を行なうことができる法人その他の団体が直接その用に供するために使用するとき。 2 県の職員その他当該行政財産又は公の施設を使用又は利用する者のために必要な食堂,売店,その他の厚生施設の用に供するとき。 3 電気,水道,ガス供給事業その他公益事業の用に供するとき。 4 県の事務又は事業に関する施策の普及,宣伝,その他公共目的のために使用するとき。 5 直接又は間接に県の事務又は事業の便宜となる事業又は施設の用に供するとき。 6 社会教育その他の教育又はスポーツのために使用するとき。 7 その他教育長が特別の理由があると認めたとき。」【21条】「1項行政財産を使用しようとする者は,行政財産使用許可申請書を教育長に提出し,その許可を受けなければならない。」「2項所の長は,前項の申請書の提出があつたときは,その内容を調査し,意見を付して当該財産が所属している課の長に送付しなければならない。」「3項課の長は,前項の申請書を受理したとき,使用許可調書に次に掲げる書類のうち必要なものを添え,教育長の決裁を受けなければならない。 1 評価調書 2 関係図面」「4項前項の規定により使用を許可す したとき,使用許可調書に次に掲げる書類のうち必要なものを添え,教育長の決裁を受けなければならない。 1 評価調書 2 関係図面」「4項前項の規定により使用を許可することに決定したときは,課の長は,申請者に許可書を交付しなければならない。」(3) 県立学校長に対する事務委任規程(昭和38年3月29日教育委員会教育長訓令第2号,以下「本件事務委任規程」という。)には,次の規定がある(乙2)。 【1条】「教育長の権限に属する事務のうち,次に掲げるものを県立学校長に委任する。 1ないし19 (略) 20 学校の用に供する行政財産の1月未満(電柱及び電話機の設置のための場合にあっては,10年以下)の使用の許可に関すること。 21ないし23 (略)」(4) 広島県立学校事務処理等規程(昭和60年3月30日教育委員会教育長訓令第2号,以下「本件事務処理規程」という。)第3条1項は「(前略)校長の権限に属する事務の一部を事務長に専決させることができる事務は,別表第2のとおりとする。 (後略)」と規定し,同別表第2には,行政財産の使用の許可に関することは掲げられていない(乙3)。 (5) X高校学校施設使用の拒否ア高教組は,毎年,春には支部定期大会を,秋には「人事委員会勧告の説明会」と称する集会を,地区支部校で開催しており,平成11年度には,地区支部校であるX高校で開催する予定となっていた。 イ平成11年10月14日,当時の原告代表者であったK(以下「K」という。)は,X高校事務長であるL(以下「L事務長」という。)に対し,口頭にて,同年11月6日開催予定であった本件集会のために,X高校学校施設の使用の許可を申し入れた。 ウ X高校校長である被告 。)は,X高校事務長であるL(以下「L事務長」という。)に対し,口頭にて,同年11月6日開催予定であった本件集会のために,X高校学校施設の使用の許可を申し入れた。 ウ X高校校長である被告Iは,平成11年10月下旬ころ,原告のX高校学校施設の使用許可の申入れに対して,口頭にて,Kに対し,本件集会にX高校学校施設を使用することを許可することはできない旨説明した(以下「本件使用拒否」という。)。 エ原告は,平成11年11月1日,被告Iに対し,X高校学校施設の使用の許可を得るべく,行政財産使用許可申請書を提出するとともに,不許可にする場合には,その理由を文書をもって回答するよう「請求願い」と題する書面を提出した。 オ被告Iは,原告の上記申請等に対し,口頭にて「書面は発行しない」旨回答した。 カ原告は,被告Iの上記回答に対し,平成11年11月2日,不許可の理由を文書にて明らかにするよう,再度,被告Iに対し,「請求願い」を提出したが,結局,不許可の理由が文書で明らかにされることはなかった。 キ上記のとおり,原告は,X高校学校施設の使用許可を得られなかったため,本件集会を,同校で開催することができず,府中市文化センターで開催することとなった。 2 争点及び当事者の主張(1) 被告I及び同Jに対する訴えの適法性(本案前の争点)ア被告I及び同Jの主張原告の同被告らに対する訴えは,これらの者の職務行為を理由とする国家賠償の請求をするものであるところ,これらの者に行政機関としての地位において賠償の責めを負わせ,又は公務員個人としてその責めを負わせようとするものである。 しかしながら,このような場合においては「国または地方公共団体が賠償の責に任ずるのであつて,公務員が行政機関としての地 を負わせ,又は公務員個人としてその責めを負わせようとするものである。 しかしながら,このような場合においては「国または地方公共団体が賠償の責に任ずるのであつて,公務員が行政機関としての地位において賠償の責任を負うものではなく,また,公務員個人もその責任を負うものではない。」とする判例の立場は確定している(最高裁昭和30年4月19日第三小法廷判決,最高裁昭和47年3月21日第三小法廷判決,最高裁昭和53年10月20日第二小法廷判決など)。 したがって,これらの者を行政機関としての地位において相手方とする訴えは不適法であるというべきである。 イ原告の主張争う。 (2) 被告Iの行為の違法性及び同人の責任の有無ア原告の主張(ア) 原告に,X高校学校施設を使用させなかったことの違法性a 本件の背景本件は,学校施設使用拒否の適否という形で争われてはいるものの,次のような背景の下に生じた事件であることに留意すべきである。 すなわち,従来,広島県においては,高教組をはじめとする教職員組合が中心となり,平和教育,同和教育を推進し大きな成果を上げてきたものである。 ところが,かかる広島県の教職員組合の活動を快く思わない,一部の復古主義的な保守派層は,広島県公教育の方針変更をもくろみ,広島県の公教育に様々な政治的介入を図り,かつ,教職員組合を攻撃するようになった。その最たるものが,平成10年4,5月に行われた,当時の文部省による調査及び同省から県教委及び福山市教育委員会に対する是正指導である。かかる調査及び是正指導を行う下準備として,前記保守派層は,某参議院議員をして,国会において,福山市の公立中学校教諭に,広島県の公教育の現場の状況について誤っ 福山市教育委員会に対する是正指導である。かかる調査及び是正指導を行う下準備として,前記保守派層は,某参議院議員をして,国会において,福山市の公立中学校教諭に,広島県の公教育の現場の状況について誤った証言をさせ,かつ,それがあたかも教職員組合の責任によるが如き雰囲気を作り出したのである。 そして,一部保守派層に支配されている文部省は,かかる保守派層の動きに同調し,前記のとおり,県教委及び福山市教育委員会に対し,調査及び是正指導を実行した上,県教委の教育長として,組合潰しのプロともいうべき被告Jを送り込んできたのである。 その後,被告Jが,組合潰しに奔走したことはいうまでもなく,従来の県教委の教職員組合に対する協調路線を一変させ,県教委側と教職員組合側で尊重されてきた様々な協定や慣行を一方的に破棄し,教職員組合側との話し合いにも応じようとしないのである。その結果,県教委と教職員組合との間で数々の軋轢を生じさせ,訴訟事件になっているものも少なくない。 このように,本件使用拒否は,かかる被告Jの組合弾圧施策の一環として,同人及び県教委が被告Iに圧力をかけてなされたものであって,被告らの主張する学校教育上の支障は単なる口実に過ぎない。 このような背景事情に鑑みると,本件は,教育現場を中央集権的に統制することによって,国民意思を国家主義的に支配しようとする一部保守派層と,これを阻止し,教育現場における民主主義を堅持することによって,平和教育,同和教育など民主的な教育を貫徹していこうとする教職員組合との戦いであるという紛争の実態が明らかとなってくる。 万が一,本件使用拒否が適法であると判断され,保守派層と結びついた県教委の施策が是認されるようなことになれば,これらの者は,全国の教職組 であるという紛争の実態が明らかとなってくる。 万が一,本件使用拒否が適法であると判断され,保守派層と結びついた県教委の施策が是認されるようなことになれば,これらの者は,全国の教職組合潰しをさらにエスカレートさせ,その結果,教育現場における民主主義は退廃し,日本における民主的教育も実践されなくなってしまうことになる。 かように本件は,日本教育における民主主義の存立にかかわる重大な意義を有するものであり,裁判所の判断がその試金石となっているのであって,本件不許可の適否の判断には,かかる本件訴訟の有する重大な意義を十分に考慮する必要があるというべきである。 b 使用許可の不当な撤回(a) 原告は,本件集会の開催に先立ち,被告I自身から,X高校の学校施設を本件集会のために使用することにつき許可を受けていた。すなわち,Kは,平成11年4月17日にX高校で開催された原告のいわゆる春の定期大会の終了直後,被告Iに対し,お礼の挨拶に行き,その際,同人に対し,同年秋の本件集会についても,使用の許可を依頼したところ,口頭にてこれを了承する返事を得たものである。 (b) 仮に,被告I自身による許可がなかったとしても,同人は,X高校事務長に対し,学校施設の使用許可権限を委任しており,原告は,平成11年10月14日,L事務長に対し,口頭にて,本件集会のためX高校学校施設の使用の許可を求めたところ,これを了承されたのである。 県立高等学校の校長が,事務長に学校施設の使用許可権限を委任していたことは,従前,高教組の各支部が,集会開催のため,各高等学校の事務長に対し,使用許可願いを提出し,事務長から許可を受けてきていたという経緯から明らかであることや,また,被告I自身にも,事務長に許可権限を は,従前,高教組の各支部が,集会開催のため,各高等学校の事務長に対し,使用許可願いを提出し,事務長から許可を受けてきていたという経緯から明らかであることや,また,被告I自身にも,事務長に許可権限を委任していることを前提とした言動が多々認められることからも,被告Iが,L事務長に対し,X高校学校施設の使用許可権限を委任していたことは間違いない。 (c) 上記のように,原告は,一旦,有効に,本件集会のためX高校の学校施設を使用することにつき許可を得ていたのであるが,その後になって,被告Iは,原告に対し,使用を認めない旨告知し,使用を拒否し,使用許可を撤回したのである。 被告Iによる上記使用拒否,使用許可撤回は,本件管理規則所定の許可取消事由が存在しないばかりか,何ら合理的理由も存在せず,違法であることは明らかである。 c 本件使用拒否の違法性仮に,原告に対し未だ使用許可がなされていないとしても,被告Iによる本件使用拒否は,次のとおり,違法である。 (a) 裁量権の逸脱濫用学校施設の使用許可が,管理権限者の行政裁量に委ねられているとしても,それは,全くの自由裁量ではなく,国民に対して適正かつ公平に運用されるべきであり,社会教育法,学校教育法,労働法などの各種法律理念に沿って運用されなければならないのはいうまでもなく,この趣旨に反して運用された場合には,管理権限者に与えられた裁量権の範囲を逸脱,濫用したものとして違法であるというべきで,具体的には,処分の目的及び動機,手続経過,使用許可の必要性,不許可による不利益などを総合評価して判断すべきである。 この点,本件では,本件使用拒否の真の目的,動機は,被告らが主張するように,被告Iが単独で,本件集会の内容 ,使用許可の必要性,不許可による不利益などを総合評価して判断すべきである。 この点,本件では,本件使用拒否の真の目的,動機は,被告らが主張するように,被告Iが単独で,本件集会の内容を問題としたものではなく,本件使用拒否は,被告J及び県教委において,原告の重要行事である本件集会の開催を不可能又は困難にして,その活動を抑えるべく,被告J及び県教委の指示の下になされた,組合弾圧施策の一環である。 すなわち,被告Jは,平成10年7月,当時の文部省から,県教委の教育長に着任して以来,従前,県教委と高教組や広島県教職員組合などの教職員組合との間に締結,遵守されてきた協定,慣行などを,一方的に破棄し,話し合いの場をも持とうともせず,これに反する者は処分するなどし,高教組や広島県教職員組合などの教職員組合との間に様々な軋轢を生じさせてきており,それらは枚挙にいとまがない。 このような被告Jによる高教組などの教職員組合弾圧施策の経緯に照らしてみるとき,本件使用拒否が,これら組合弾圧施策の一環としてなされたことは明らかである。 本件使用拒否は,平成11年10月25日に開催された学校長会議において,被告Jや県教委が,組合弾圧のため,教職員組合に学校施設を使用させることは望ましくない旨述べたことから,その意を受けた被告Iにおいて,被告J及び県教委に加担する形でなされたものであり,その目的,動機が,高教組の弾圧という違法なものであったことは明らかである。 また,本件使用拒否に至るまでに,一旦,被告Iにおいて,使用の許可を与えられているものであるし,本件集会は,高教組の組合員が全員参加する年2回の定期大会のうちの一つという重要な集会である上に,特に,秋の集会である本件集会は,労働者とし 被告Iにおいて,使用の許可を与えられているものであるし,本件集会は,高教組の組合員が全員参加する年2回の定期大会のうちの一つという重要な集会である上に,特に,秋の集会である本件集会は,労働者として一番関心のある当該年度のベースアップに関する人事委員会の勧告の説明とそれに対する対応を協議するという最も重要な集会であり,参加人数や開催のための様々な便宜を考えると,学校施設で開催することが最も必要かつ適当であり,それにより特に不都合などなかった。そして,原告は,本件使用拒否により,代替会場である府中市の文化会館を使用して開催せざるを得なかったが,前記のような参加人員やその他の便宜の関係で,多大な損害を被ることになったのである。 ところで,学校教育法85条によれば「学校教育上支障のない限り,…学校の施設を社会教育その他公共のために,利用させることができる。」とされている。同条は,学校施設を,教育,研究活動という本来の目的以外の使用目的で,一般公衆・当該学校の構成員並びに国及び地方公共団体に利用させることを可能にする規定である。同条の解釈について,従来は,許可するか否かは管理権限者の自由な裁量に委ねられていると考えられてきたが,近時,学校施設の目的外使用について,一般公衆による純然たる私的な利用形態から,本件のごとく,学校の構成員又は構成員と同様な学校教育者が,学校教育活動の一環として利用する場合など様々な形態があり,一律には律せないものとして理解されている。すなわち,学校はいわゆる「セミ・パブリック・フォーラム」であって,部分的に表現活動を保障する公共的な場所であり,私的な場所とは異なる性格を有するものと解されているし,近年においては,学校施設が住民による表現活動及び学習の場という,いわば地域センターとして機能しだしてきてい 活動を保障する公共的な場所であり,私的な場所とは異なる性格を有するものと解されているし,近年においては,学校施設が住民による表現活動及び学習の場という,いわば地域センターとして機能しだしてきていることからすれば,学校に対する市民の認識や要望は従前とは大きく異なっているというべきであり,そうだとすれば,一般公衆が純然とした私的利用をする場合でもない限りは,本来の設置目的に支障がない限り,管理権限者には使用させることが義務付けられるというべきであるし,そもそも,教職員団体は,教育行政の中央集権化,画一化,権力化を防ぐ社会的教育的意義のある活動を行っているものであり,その活動は,決して学校教育と切り離されたものではないのであるから,かかる認識に立てば,前記のような一般公衆が使用する場合と同視することは相当ではなく,教職員組合の集会には,本来の設置目的に支障がない限りは,使用を許可すべきである。 以上のような諸事情を考慮すると,本件使用拒否は,明らかに裁量権を逸脱しており,違法であることは明らかである。 (b) 不当労働行為性労働組合法上,組合活動に対する使用者の支配介入は不当労働行為として禁止されており,これは憲法28条の労働基本権(団結権)に由来する。そうであれば,支配介入禁止の原則は,団結権が承認され,それにより結成された公務員労働組合や,これに加入している個々の公務員労働者との関係においても,当然に妥当するというべきである。 したがって,県教委も,かかる不当労働行為を行うことを禁止され,県教委による不当労働行為に対しては,地方公務員法上の行政措置要求(同法46条)や不服申立のみならず,民法上の不法行為責任を追及しうることとなる。 上記支配介入の態様としては,①組 れ,県教委による不当労働行為に対しては,地方公務員法上の行政措置要求(同法46条)や不服申立のみならず,民法上の不法行為責任を追及しうることとなる。 上記支配介入の態様としては,①組合内部運営に介入する場合,②組合活動の妨害,③反組合的言動,④便宜供与の禁止などがあげられるところ,本件においては,従前から,高教組の地区支部大会に対して,学校施設の使用が許可されてきたのであり,慣行として確立していたものといえる。 しかるところ,本件における,被告IによるX高校学校施設の使用拒否は,慣行として確立していた便宜供与を一方的に廃止するものであって,不当労働行為に該当することは明らかである。 これに対し,被告らは,本件使用拒否の理由として,本件集会を,ストライキ権批准を目的とする集会と断定し,かかる批准集会は,地方公務員法上禁止されている争議行為等の実行行為を計画し,又は助長する行為に該当する疑いがあるとし,これをもって,学校教育上の支障があると主張するのであるが,そもそも,かかる公務員労働者の争議権を否定する地方公務員法の規定自体が,憲法28条や経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約(以下「A規約」という。)及び同規約に基づく社会権規約委員会の勧告に違反するものである。したがって,かかる憲法違反,条約違反の規定を援用して,本件集会のための学校施設の使用を拒否をすることは許されるものではなく,その行為自体が,ストライキ権という労働者固有の権利の行使を妨害するという違法な目的による支配介入として,不当労働行為に該当するというべきである。 仮に,公務員労働者の争議行為を禁止する地方公務員法の規定が正当であったとしても,前記のとおり,本件使用拒否は,被告らが主張するような理由でなされた 行為に該当するというべきである。 仮に,公務員労働者の争議行為を禁止する地方公務員法の規定が正当であったとしても,前記のとおり,本件使用拒否は,被告らが主張するような理由でなされたのではなく,あくまで高教組をはじめとする教職員組合の活動を抑え,これを弾圧しようとする違法な目的でなされたことは明らかであって,かかる違法目的による使用拒否が,不当労働行為に該当することは明白である。 また,本件集会の目的は,人事院勧告の内容の説明と,この勧告の完全実施を求めて,組合員が団結することにあり,ストライキ権の批准は,本件集会が終了した後に行われるものであり,本件集会は,ストライキ権批准を目的とするものではない。 さらに,この批准なるものも,仮にストライキを実施した場合,当該組合員がどの程度参加する意思を表示しているのかを調査するための値踏み行為であって,人事委員会から出される勧告の完全実施を求めるため,県教委との交渉手段に使用するものに過ぎず,実際にストライキを実施するわけではない。 したがって,ストライキ権の批准は,ストライキ参加の決意表明に至るものではなく,被告が主張するような争議行為等の実行行為を計画し,又は助長する行為に該当するはずがないのである。 (イ) 使用を許可しなかった理由を文書で明らかにしなかったことなどの違法性行政手続法8条によれば,行政庁は,申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合には,申請者に対し,書面にて拒否の理由を明らかにしなければならないとされているところ,被告Iは,原告が,再三にわたり本件使用拒否の理由を書面で明らかにするよう求めたにもかかわらず,これを無視し続けたのであって,被告Iのかかる行為は,行政手続法の規定に違反する ないとされているところ,被告Iは,原告が,再三にわたり本件使用拒否の理由を書面で明らかにするよう求めたにもかかわらず,これを無視し続けたのであって,被告Iのかかる行為は,行政手続法の規定に違反する違法なものである。 被告らは,原告が,使用許可申請を撤回したなどと主張するが,否認する。 被告Iは,行政財産使用許可申請書を一旦受領し,それを一瞥したうえで,口頭にて使用を許可しないと述べて,何ら正式な拒否処分をすることもなく,不当にも前記申請書を原告に返却したのである。 被告Iは,正式な拒否処分をして,自らの処分の是非を問われることをおそれて,受付段階で返却したにすぎない。原告としては,申請を撤回するつもりなど毛頭なかったのである。 (ウ) 被告Iの責任被告Iは,以上のような違法行為を,被告Jの指示に基づき,故意ないし重大な過失により行ったものであり,被告Jとの共同不法行為として,同人と連帯して,前記違法行為により,原告が被った損害を賠償する責任がある。 イ被告らの主張(ア) 原告に,X高校学校施設を使用させなかったことの違法性についてa 使用許可の不当な撤回について原告は,学校施設の管理権限がX高校の校長である被告Iから同校のL事務長に委任されていることを前提として,L事務長の口頭での回答を使用許可の行政処分と解し,その後,被告Iがなした使用拒否を,上記使用許可の撤回と主張するのであるが,被告Iは,L事務長に対し,学校施設の管理権限を委任をしたことはなく,また,本件事務委任規程や本件事務処理規程に照らしてみても,学校施設の使用許可権限は,当該学校の校長にあり,事務長には委任されていないことは明白であり,被告IがL事務長に対し,学校施設の使用許可 く,また,本件事務委任規程や本件事務処理規程に照らしてみても,学校施設の使用許可権限は,当該学校の校長にあり,事務長には委任されていないことは明白であり,被告IがL事務長に対し,学校施設の使用許可権限を委任し得べくもない。 したがって,L事務長が,X高校学校施設の使用許可の行政処分をなし得るものではないので,その撤回行為も,また存在しないというべきである。 さらに,原告は,高教組地区支部の春の大会終了後,Kが被告Iに対し,口頭にて,本件集会のため,X高校学校施設の使用を申し入れたところ,やはり口頭にて,これを了承する返事を得たとも主張するのであるが,このような事実はなく,そうでなくとも,学校施設の使用許可の申請は,本件管理規則上,所定の書式によらなければならないとされているところ,原告の上記申入れは,所定の書式によるものではなく,かつ日にちも内容も特定されないような申請を,本件管理規則上の行政財産使用許可申請と解する余地はなく,よって,これに対する返答が,学校施設の使用許可になるはずもないのである。 以上により,何らのX高校学校施設の使用許可処分があるわけではないのであるから,その撤回行為も,また存在しないというべきである。 b 本件使用拒否の違法性について(a) 裁量権の逸脱濫用について本件集会は,原告が主張するような人事委員会勧告の説明会などではなく,平成11年12月3日にストライキを構えるため批准投票を実施するためのものであった。 いうまでもなく,地方公務員法上,一般の行政事務に従事する職員及び教育職員は,争議権を行使することは禁止されており,かかる内容の集会を行うこと自体,争議行為等の実行行為を計画し,又は助長する行為に当たる疑いなし ,地方公務員法上,一般の行政事務に従事する職員及び教育職員は,争議権を行使することは禁止されており,かかる内容の集会を行うこと自体,争議行為等の実行行為を計画し,又は助長する行為に当たる疑いなしとしないところである。すなわち,かかる内容の集会は,およそ教育の場で行われるにはふさわしくないものであり,これを学校施設で開催すれば,その是非を巡って世間一般から誤解を受けるほか,生徒に対し精神的悪影響を与え,保護者に心理的混乱を招くなど,その及ぼす支障は,一時にとどまらないものである。 よって,かかる内容の本件集会を,X高校学校施設で開催することは学校教育上支障があるというべく,本件管理規則20条に照らして,その使用は認められないというべきあって,被告Iによる本件使用拒否は適法であったというべきである。原告は,学校施設の利用希望者に何らかの利用権が認められていると主張するようであるが,そのような権利は認められず,よって,本件使用拒否によっても,何ら原告の権利を侵害するものではない。 原告は,本件使用拒否が,被告Jや県教委による高教組などの教職員組合弾圧施策の一環として,同人らの指示の下になされた違法な目的を有するものであると主張するが,否認する。 県教委は,平成10年5月20日,当時の文部省から,広島県における学校の管理運営上不適正な状況があるとの指摘を受け,その是正を求められ,さらに広島県の公教育に対して当たり前の教育が行われていないとの批判もあった。県教委としても,かかる指摘や批判を受け,法令に則った教育の実施を目指すべく,これまでの様々な経緯によって行われてきた教育現場の幾多の慣行やしがらみについても,一つ一つその適法性を吟味し,改めるべきものは改めることにより,教育行政の適正化を図り,県民 育の実施を目指すべく,これまでの様々な経緯によって行われてきた教育現場の幾多の慣行やしがらみについても,一つ一つその適法性を吟味し,改めるべきものは改めることにより,教育行政の適正化を図り,県民から信頼される公教育の確立に向かって,鋭意取り組んできたものである。 しかしながら,高教組をはじめとする教職員組合は,かかる県教委の取組に対して,ことごとく異を唱えるに止まらず,その真意を曲解し,教職員組合活動に対する介入,弾圧と捉えているのであり,原告の主張は,このような誤った認識に立って,被告Jや県教委を論難するものでしかなく理由のないことは明らかである。 (b) 不当労働行為性についてそもそも,学校施設の目的外使用に関する法律関係は,前記のとり,利用希望者に対し,何らの権利も認められるものではないのであって,その理は団結権を援用する場合でも同様である。すわなち,利用希望者は,たとえ,団結権の保障をもってしても,学校施設の利用を求めることはできないのである。 したがって,原告の主張する慣行なるものは,前記法令の趣旨に反する違法なものであって,かかる違法な慣行が成立する余地はないし,あったとしても効力の持ちようがないことは明らかである。 よって,学校施設の目的外使用の場合に,団結権を援用し得ることを前提として,不当労働行為を云々する原告の主張は,その前提において失当であるというべきである。 (イ) 使用を許可しなかったことの理由を文書で明らかにしなかったことなどの違法性について平成11年11月1日,原告より,被告Iに対し,X高校の学校施設の使用許可にかかる行政財産使用許可申請書の提出があった。しかしながら,同申請書の使用目的欄には「国人勧および県人 について平成11年11月1日,原告より,被告Iに対し,X高校の学校施設の使用許可にかかる行政財産使用許可申請書の提出があった。しかしながら,同申請書の使用目的欄には「国人勧および県人勧説明会開催」との記載があったものの,被告Iと原告とのこれまでのX高校学校施設の使用を巡るやりとりにおいて,使用目的がストライキ権の批准集会にあったことは明らかであり,前記使用目的欄の記載が,一見にして虚偽の記載であることが明白であったので,被告Iは,かねてから使用を認めないこと及びその理由を伝えていたこともあって,あえて拒否処分をするまでもなく,申請を撤回するよう指導したところ,原告がこれに応じて,同申請を撤回し,申請書を持ち帰ったのである。 したがって,行政財産使用許可申請は撤回され,申請がなかったのと同様になったのであるから,申請に対する応答としての使用拒否処分をする必要もないし,また,それをなし得るものでもない。よって,使用拒否処分が存在しないのであるから,その理由を示す必要もないし,また,それをなし得るものでもない。 以上により,本件使用拒否につき,書面にて不許可の理由を示さなければならない理由はなく,書面で不許可の理由を明らかにしなかった被告Iの行為に何ら違法な点は存しないというべきである。 (3) 被告Jの行為の違法性及び同人の責任の有無ア原告の主張(ア) 被告Jによる不当労働行為被告Jは,平成11年当時,県教委の教育長の立場にあった者であるが,教育長は,地教行法17条により,教育委員会の権限に属する全ての事務をつかさどる権限と義務を有しており,教育委員会の事務の遂行について,部下の者らが,不当労働行為など違法な行為を行わないよう,監督すべき義務があるというべきである。 委員会の権限に属する全ての事務をつかさどる権限と義務を有しており,教育委員会の事務の遂行について,部下の者らが,不当労働行為など違法な行為を行わないよう,監督すべき義務があるというべきである。 しかるに,被告J自身が,平成11年10月25日に開催された県立学校長会議の冒頭において,高教組が県教委との間で対立関係にあるため,これに学校施設を使用させないように指示したものであって,被告Jのかかる反組合的言動は,高教組に対する支配介入行為として,不当労働行為に該当するものである。 (ウ) 被告Jの責任上記のような被告Jの行為はそれ自体で,故意による不法行為を構成するともに,被告Iに指示して,違法な本件不許可をなさしめたものであるから,故意による共同不法行為として,同人と連帯して,被告Iの違法行為により,原告が被った損害を賠償する責任がある。 イ被告らの主張争う。 被告Jが,学校長会議の場において,原告主張のような指示をした事実はない。 (4) 原告の損害ア原告の主張被告Iによる本件使用拒否などの違法行為のため,原告は,本件集会を他の公共施設で行わざるを得なくなり,かような他の会場を借用する費用やそのために費やされる労力,組合員の参加人数の減少等,様々な有形無形の損害を被っており,それらの損害及び本訴提起追行のための弁護士費用を含めると,原告の被った損害の額は500万円を下らない。 イ被告の主張争う。 第3 争点に対する判断 1 争点(1)について本件は,被告I及び同Jの職務行為の違法を理由とする国家賠償の請求であるところ,国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が,その職務を行うについて,故意又は過失によって違法に他人に損害を加え 本件は,被告I及び同Jの職務行為の違法を理由とする国家賠償の請求であるところ,国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が,その職務を行うについて,故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは,国又は公共団体がその被害者に対して賠償の責に任ずる(国家賠償法1条1項)のであって,公務員個人はその責を負わないと解するのが相当であるが,上記国家賠償法の規定は,公務員個人の責任を否定するという実体法上の問題について規定したに止まり,進んで,公務員個人の当事者適格を否定したものと解すべき理由は見出し難い。したがって,公務員の職務行為の違法を理由として,国又は公共団体に対し,国家賠償の請求をする場合に,併せて当該公務員個人の責任を追及する訴えを提起することは適法といわなければならない。 なお,被告I及び同Jの援用する最高裁判例は,そのいずれにおいても,公務員個人に対する訴えの適法性に何ら言及するものではなく,同被告らの主張する論旨に援用することは的確ではないというほかなく,当裁判所の前記判断と何ら矛盾抵触を生じるものはない。 以上により,本件における被告I及び同Jに対する訴えは適法であるというべきであって,これを不適法として却下すべきであるとの被告I及び同Jの主張は採用できない。 2 争点(2)について(1) 前記第2の1の事実及び証拠(甲3,4の1,甲5の1ないし4,甲6の1ないし10,甲16の1,甲19ないし21,22の1,甲23,24,甲25の1ないし3,甲37ないし45,47,48,52ないし56,58ないし61,甲64,65,甲66の1ないし25,甲67の1ないし14,甲68の1ないし3,甲71の1ないし5,甲72の1ないし23,甲73の3,甲74,79,81,86,甲90及び91の各1,2,甲92の1ないし 4,65,甲66の1ないし25,甲67の1ないし14,甲68の1ないし3,甲71の1ないし5,甲72の1ないし23,甲73の3,甲74,79,81,86,甲90及び91の各1,2,甲92の1ないし3,甲93の1ないし3,乙4,乙5の1,2,乙6の1ないし6,乙8ないし11,乙12の1,2,乙13ないし15,証人M(以下「証人M」という。ただし,後記信用できないとする部分を除く。),同N,同K,被告I(以下「被告I」という。ただし,後記信用できないとする部分を除く。))並びに弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められ,これを覆すに足りる証拠はない。 ア本件の背景(県教委と高教組等との対立)(ア) 以前から,県教委と高教組を含む教職員団体とは,入学式及び卒業式における国旗掲揚,国歌斉唱の実施を巡る問題,研修制度を巡る問題,その他労働条件から学校運営に至る幅広い事項について,労使間(学校長と教職員組合の下部組織等との間)において,様々な協定や慣行が存在し,これらの問題ついて微妙な関係に立っていた。 特に,前記国旗,国歌問題や,職員の時間外勤務に関する問題では,教育長と高教組等の職員団体との間で協定書が取り交わされ,これに基づき,実際の現場での運用が是認されるという形で,一応,県教委と教職員団体との関係は均衡を保っていた。 (イ) ところが,平成9年8月,前記国旗,国歌問題に関する協定書が存在し,これが文部省学習指導要領を逸脱する疑いがある旨報道されるに及び,同年9月29日,広島県議会において,自由民主党のO県議会議員が,かかる問題を取りあげるに至った(同議員は,さらに県議会において,継続してかかる問題のほか広島県教育の他の問題点について取りあげている。)。さらに,平成10年4月1日,広島県福山市の公立中 議員が,かかる問題を取りあげるに至った(同議員は,さらに県議会において,継続してかかる問題のほか広島県教育の他の問題点について取りあげている。)。さらに,平成10年4月1日,広島県福山市の公立中学校の教諭が,参議院予算委員会に参考人として出頭し,広島県の教育の現状について証言し,これがマスコミに報道されて,広島県の教育問題は,全国的に注目を浴びることとなった。そこで,当時の文部省は,広島県の教育の実態について調査すべく,平成10年4月27日及び28日の両日,担当官を県教委に派遣し,実態調査を行った。その調査事項は,①学校における教育課程の編成及び実施状況等について((1)国旗,国歌関係,(2)人権学習の内容について,(3)道徳の時間の実情について,(4)国語の時間割について,(5)小学校の音楽での国歌「君が代」の指導,(6)授業時間数及び単位時間について,(7)指導要録等),②学校の管理運営の状況等について((1)教員の勤務時間管理について,(2)主任の命課について(命課時期,人選)),③その他これに関連する事項についてであり,県教委は,調査項目に係る関係資料の提出や追加の説明を求められた。 (ウ) 上記調査に基づき,文部省は,平成10年5月20日,県教委及び福山市教育委員会に対し,是正指導を行った。その是正指導の項目及び内容等については別紙「項目」及び「是正指導内容等」欄記載のとおりである。 平成10年7月1日,文部省より,県教委の教育長に被告Jが就任した。 被告J及び県教委は,上記是正指導を受けて,被告Jの着任前より既に進められていた,広島県の教育施策の見直しをさらに強力に推進することとした。その主たる見直し策は,別紙「対応」欄記載のとおりである。 これら,見直し策について,高教組を含む職員団体は,一斉に られていた,広島県の教育施策の見直しをさらに強力に推進することとした。その主たる見直し策は,別紙「対応」欄記載のとおりである。 これら,見直し策について,高教組を含む職員団体は,一斉に激しい反発を示して,抗議や交渉の申入れを繰り返すようになり,両者の関係は,一気に悪化して,激しい対立関係となった。ことに,入学式,卒業式における国歌斉唱の実施問題については,深刻であり,県教委側は,職務命令を出して対処するに至り,これに従わなかった教職員に対して,処分がなされるという事態が繰り返されるようになった。また,平成11年2月28日,卒業式を直前に控えた県立高等学校の校長が自殺するという事件も発生し,マスコミで,前記国歌斉唱問題との関連も取りざたされた。 一連の県教委と職員団体との対立関係は,新聞等のマスコミで報道されており,いずれか一方に好意的な立場を示すマスコミも存在していた。 イ本件集会の内容,推移等(ア) 批准集会について高教組は,広島県下に9つの地区支部を有し,各支部ごとに例年4月と11月ころに,全ての組合員が参加する規模の集会が開催される。4月に開催される集会は「春の定期大会」などと呼ばれ,各地区支部の役員の承認,前年度の活動の総括,予算,決算の承認や新年度の運動方針などが決定される。11月ころに開催される集会においては,8月に,公務員労働者の労働条件に関する人事院の勧告及び11月に出される県の人事委員会の勧告を受けて,その内容の説明等の状況説明やその後の県当局との団体交渉に向けての各支部の態度や決意が表明される。そして,同集会終了直後には,組合員により「ストライキ」の批准投票なるものが実施される。 批准投票とは,一定の交渉課題について,ストライキの実施の賛否を,無記名投票の形で組合 態度や決意が表明される。そして,同集会終了直後には,組合員により「ストライキ」の批准投票なるものが実施される。 批准投票とは,一定の交渉課題について,ストライキの実施の賛否を,無記名投票の形で組合員に問うものである。そして,投票の結果,組合員の過半数の賛成が得られた場合を,「ストライキ権の確立」といい,実際にストライキを行うか否かを決定するに当たっての一つの指標とされる。ストライキ権が確立された場合,高教組は,ストライキの日程を決めると当時に,各組合員に対し,「決意署名」といって,実際にストライキが行われた場合に,当該組合員が参加するか否かの意思確認を行う。その後,県当局との団体交渉の結果如何により,実際にストライキを行うか否か,高教組と協調して団体交渉を行っている他の職員団体との協議によって決定され,その旨各組合員に通知され,ストライキが実行されることとなる(もっとも,実際にストライキが実施されたのは昭和59年までであり,それ以降は,延期あるいは中止されるなどして,ストライキの実施は回避されてきている。)。 高教組の各地区支部の開催する上記,春の定期大会及び批准集会は,これまで,各地区支部のある学校施設を使用して行われてきたが,従前,使用を拒否されることはなかった。ところが,平成11年度にいたって,批准集会の会場として,Y養護学校(広島北地区支部),Z高等学校(広島東地区支部)の2校の学校施設の利用が認められるに止まり,その余の学校施設の利用は認められなくなった。 翌平成12年には,県立学校施設が批准集会の会場として利用されることはなかった。 (イ) 本件集会についてa 本件集会は,平成11年度,原告において開催された批准集会である。原告である府中地区支部においても,輪番制にて,地区支部校を担当し,従前, かった。 (イ) 本件集会についてa 本件集会は,平成11年度,原告において開催された批准集会である。原告である府中地区支部においても,輪番制にて,地区支部校を担当し,従前,担当校の学校施設が原則として,春の定期大会及び秋の批准集会の会場として使用が認められ,同施設において集会が開催されてきた。 b 高教組は,平成11年9月21日,第338回広高教組委員会・拡大委員会を開催し,「99年度秋季年末賃金確定闘争」に関し,組織内学習会を強化して組織の総力を結集し,県当局との団体交渉を強力に押し進めるとともに,その交渉の基盤として,同年12月3日にストライキを配置すること,また高批准でストライキ権を確立するための批准集会を各地区支部で一斉に開催することとし,その名称は「九九秋季年末賃金確定諸要求実現〇〇地区支部総決起批准集会」とすること,集会日時を平成11年11月6日午後とすること,これまでの総括に立ち,事前の十分な学習の積み上げ,参加人数の大幅なアップ(棄権の防止),批准大会内容の創意工夫等を志向しつつ,高批准でストライキ権を確立するよう努力すること,ストライキ突入態勢の強化,ストライキ前後の詳細については,代表者会議の補強を待ちながら,別途指示あるいは第339回拡大委員会で明らかにすることなどを決定した。 c 高教組は,平成11年11月1日,執行委員長名義の「五者共闘・広教協対任命権者交渉の参加について」と題する文書により,各地区支部長,各分会長,県専門部長に対し,同年12月2日までの県当局との団体交渉の日程と動員者数の割当と高批准のストライキ権確立を背景とした強力な団体交渉を推進する必要がある旨を通知した。 d 平成11年11月6日午後2時,高教組の県下9の地区支部は,同様の名称にて一斉に 動員者数の割当と高批准のストライキ権確立を背景とした強力な団体交渉を推進する必要がある旨を通知した。 d 平成11年11月6日午後2時,高教組の県下9の地区支部は,同様の名称にて一斉に批准集会を開催し,それぞれ批准投票を実施し,批准率は全県で88%,原告である府中地区支部は95%であった。 e 高教組は,平成11年11月11日,「情報」と題する宣伝ビラにおいて,同月6日に開催された批准集会において批准率88%にてストライキ権が確立されたこと,県当局との団体交渉を強力に推進していくためには,各組合員による100%の決意署名が必要になることなどを,組合員に喧伝した。 なお,その後行われた決意署名の,有資格者に占める署名者数の割合は全県で92.1%,原告である府中地区支部では99.6%に達した。 f 高教組は,平成11年11月13日,第339回広高教組委員会・拡大委員会を開催し,「九九秋季年末賃金確定闘争」に関し,ストライキを同年12月3日早朝に2時間配置することなどを決定した。 g 高教組は,平成12年1月22日,第340回広高教組委員会・拡大委員会を開催し,「九九秋季年末賃金確定闘争」に関し,高教組が,県当局との団体交渉の結果,結局,平成11年12月3日に予定されていたストライキを回避することとしたことなどの団体交渉の経過,組織学習会の強化,批准投票における棄権者増加,決意署名率100%などへの取組の必要性などの団体交渉及びそれに向けられる各組合員の運動についての総括,課題などを内容とする「中間総括」を決定した。 ウ本件不許可処分に至る経緯(ア) 平成11年4月から平成12年3月までの間,X高校に,原告の事務局が置かれていた。 なお,原告が,同校の校舎の一部(家 括」を決定した。 ウ本件不許可処分に至る経緯(ア) 平成11年4月から平成12年3月までの間,X高校に,原告の事務局が置かれていた。 なお,原告が,同校の校舎の一部(家庭経営準備室)を事務局として使用することについては,県教委が許可していた。 (イ) 平成11年4月17日,X高校体育館において,原告の第47回定期大会(いわゆる「春の定期大会」)が開催された。同校の学校施設の使用許可は,被告Iの前任者の時代になされたものであった。 (ウ) その後,平成11年9月下旬ころ,Kが事務室に赴き,L事務長に対し,立ち話ふうに「批准大会をするので体育館を使用させださい。」旨述べた。これに対し,L事務長は,従前,批准集会の会場に学校施設が使用されてきた経緯から,「使用してもらってもいいですが,申請書を提出してください。」と対応した。 (エ) 平成11年10月中旬ころ,Kが,再度,事務室にL事務長を訪ね,口頭にて「大会があるので頼むよ。」と依頼したので,L事務長は「文書で申請してください。」と対応した。 (オ) ちょうどそのころ,平成11年10月25日午後,平成11年度第2回県立学校長会議が開催され,被告Iも同会議に出席した。 同会議の冒頭,被告Jが,まず挨拶を行った。その内容は,文部省の是正指導に関する問題,人事異動の方針など,様々なものを含んでいたが,学校施設の目的外使用に関する点について,教職員組合による争議行為のための集会に使用を許可することは相当ではない旨言及した。 被告Jの挨拶,県教委事務局の各部の部長による所管事項に関する説明の後,当時,県教委事務局管理部教職員課長の職にあったM(以下「M課長」という。)が所管事項の説明を行った。その内容については,①勤務時間中 の挨拶,県教委事務局の各部の部長による所管事項に関する説明の後,当時,県教委事務局管理部教職員課長の職にあったM(以下「M課長」という。)が所管事項の説明を行った。その内容については,①勤務時間中の職員団体のための活動の状況調査,②地区支部役員,分会役員の時間軽減及び地区支部事務室の使用について,③平成11年度末人事異動についてなどのほか,④学校施設の目的外使用についても言及するに至り,M課長は「学校施設の目的外使用としては,ほかに教育研究集会に使用させる場合等があるが,このような1月未満の使用許可については校長に事務委任され,その際の判断基準は,広島県教育委員会公有財産管理規則第20条に制限列挙されている。この場合,学校教育活動に支障を来すかどうかがポイントであり,さらに,例えば学習指導要領反対や官製研修反対といった,国や県の行政施策に反対することや,争議行為などに関する議論をするような法律違反の行為を目的とするものは,許可の事由に当たらないのではないか。各校長におかれては,慎重に対応していただきたい。」旨述べ,出席した学校長に対して,学校施設の使用許可について,一定の示唆を与えた。M課長の,かかる発言に対し,出席した学校長から「職員団体は,様々な会合を持つわけであるが,先ほどの説明では,内容によっては許可できないのではないかとのことである。校長としては,その内容を事前に立ち入って確認することは困難である。組合活動に使うことは明確だが,極端なものでなければ,同じ職場に勤めている者として,人間関係を保つためにも許可したいと思うが,この点について示唆をいただけないか。」との質疑があった。これに対し,M課長は「本来職員団体を敵視してはならないし,これからも健全な形での労使関係を醸成していかなければならない。その会合でやっておられる中身が て示唆をいただけないか。」との質疑があった。これに対し,M課長は「本来職員団体を敵視してはならないし,これからも健全な形での労使関係を醸成していかなければならない。その会合でやっておられる中身がどうであるかについては,一般的には,前後の関係ないし一連の流れの中で判断することとなると思う。直近の例でいえば,教研集会のスローガンのような,学習指導要領反対や官製研修反対といったものがあれば,それが一つの判断材料になろうと思う。今後可能性があるものとして,争議行為等の絡みで物事を判断するための会合というのは,明らかに違法行為を予定したものなので,許可するのは適切ではないのではないか。本来学校というのは,宗教的なものとか政治的なものとかが関与しない形であるべきではないかと思う。」旨,前記質疑に回答した。 (カ) 被告Iは,前記校長会議におけるやりとりの状況を見聞きしたり,他の校長に相談などした結果,X高校の学校施設を本件集会のため使用することを認めない方針を固めた。 (キ) そこで,被告Iは,KにX高校の学校施設の使用について確認するため,平成11年10月28日,折から開催されていた同校の球技大会の最中に,Kを捜し出し,前記のような経緯を伝えて,同年11月6日に,同校で開催が予定されていた本件集会に,X高校の学校施設の使用を許可することができなくなった旨伝えた。同日午後,同校校長室を,Kが原告書記長P(以下「P書記長」という。)とともに訪れた。被告Iは,Kらに対し,再度,前記経緯から許可をすることはできないと伝え,たとえ,正式に申請書が提出されたとしても結論は同じであると伝えた。これに対し,Kらは,本件集会は,国の人事院勧告及び県の人事委員会勧告の内容を説明するものであって,批准投票をするものではないから,何ら県教委と対立する 提出されたとしても結論は同じであると伝えた。これに対し,Kらは,本件集会は,国の人事院勧告及び県の人事委員会勧告の内容を説明するものであって,批准投票をするものではないから,何ら県教委と対立する内容ではないと反駁したが,受け入れられず,被告Iは,①ストライキの批准投票が行われること自体に問題があること,②クラブ活動に支障が出ること,③被告Jや県教委も使用を許可することが相当ではないとの見解を有していることを,使用が認められない理由として説明した。 なお,被告Iは,前記のようなやりとりの後,X高校の学校施設の使用を認めないかわりに,代替施設を提供すべく,自ら電話にて施設の空き状況を確認し,X町にある「シルトピア」なる公共施設が使用できることが判明したので,Kらに,同施設の使用を勧めた。しかし,確保できる駐車場の数の関係で,同施設が使用されることはなかった。 (ク) 原告は,前記のとおり,原告のX高校の学校施設の使用許可申請に対し,被告Iが口頭にて不許可とするので,正式な申請をすることとし,同年10月28日付けの行政財産使用許可申請書(甲4の1)を作成し,同年11月1日,P書記長が,X高校の事務室を訪れ,上記申請書を提出した。L事務長は,これを受け取ることとし,事務室の係員にゴム印と収受印を押させ,同係員が,受付欄に自らの印を押捺して,さらに,L事務長も,事務長欄に自らの印を押捺して,被告Iの下へ同申請書を持参した。 同申請書の「使用目的」欄には「国人勧および県人勧説明会開催」,「理由」欄には「上記説明会開催会場に使用するため」,「期日」欄には「平成11年11月6日(土)」との記載があるところ,被告Iは,かかる記載をみたものの,一瞥して,批准集会の会場として使用されることは明らかであったので,L事務長にコピ 用するため」,「期日」欄には「平成11年11月6日(土)」との記載があるところ,被告Iは,かかる記載をみたものの,一瞥して,批准集会の会場として使用されることは明らかであったので,L事務長にコピーをとらせ,原本は前後して,校長室に入ってきたKに返却したすると,Kらは,同申請書の「使用目的」欄や「理由」欄に批准集会とは書いていないのに,何故,許可されないのかと抗議をし,被告Iに対し,使用を許可するよう迫ったが,被告Iは,使用を許可できない理由については,平成11年10月28日に説明したとおりだと述べ,別会場で開催するよう求めた。 間もなく,P書記長が,平成11年11月1日付けの「請求願い」と題する書面(甲4の2)を校長室に持参し,使用を許可できない理由を文書にて明らかにするよう求めたが,被告Iは,口頭ですることで十分であるとして,使用を許可できない理由を文書で明らかにすることはしなかった。 (ケ) 平成11年11月2日,P書記長が,X高校校長室を再び訪れ,被告Iに対し,同日付けの「請求願い」と題する書面(甲4の3)を提示し,使用を許可できない理由を文書にて明らかにするよう,再度求めたが,被告Iは,前日と同様,文書で回答する必要はないとして,使用を許可できない理由を文書で明らかにすることはしなかった。 エ本件集会の状況原告は,被告Iより,前記のように,X高校の学校施設を本件集会のため使用することにつき,許可が得られかったため,本件集会の期日が迫っていたこともあって,これ以上の被告Iとの交渉を断念し,急遽,代替会場を探すこととし,平成11年11月3日ころに,府中市文化センターを借用することとなった。もっとも,同会場の有する駐車場では数が足りなかったので,別途,府中市役所の駐車場をも借用するこ 急遽,代替会場を探すこととし,平成11年11月3日ころに,府中市文化センターを借用することとなった。もっとも,同会場の有する駐車場では数が足りなかったので,別途,府中市役所の駐車場をも借用することとなった。このような会場変更により,従前の学校施設を使用する場合には,会場の使用料は不要であったのに対し,府中市文化センターを使用する場合には,使用料が徴収されることから,その使用料分や会場変更に伴う諸連絡に際しての費用が,余計に支出されることとなった。また,地区支部が置かれているX高校から,同会場への資料等の搬入の手間や市役所の駐車場係や会場準備のための人員の増員など,従前の学校施設で開催される場合と比べて,必要な手間や人員が増加することとなった。しかし,平成11年11月6日に,本件集会は,上記府中市文化センターで開催された。 なお,同様に学校施設での開催を拒否された他の地区支部の批准集会も,他の公共施設を借用して開催された。 (2) 原告に,X高校学校施設を使用させなかったことの違法性の有無ア使用許可の不当な撤回について原告は,本件使用拒否以前において,被告Iから,口頭で使用許可を得ていたであるとか,学校施設の使用許可権限が,被告IからL事務長に対し委任されていたことを前提として,従前,L事務長からも許可を得ていたのであるから,本件使用拒否は,不当な使用許可の撤回であると主張する。 しかしながら,既に見た各種規定上,事務長に対し,学校施設の許可権限が委任されていないことは明らかであるし,学校施設の許可という行政処分の特質に鑑み,学校長と事務長との個人的な合意によって,かかる権限の委任をなし得ると解すこともできない。 そもそも,前記のとおり,本件管理規則及び本件事務委任規程上,学校施設の使 行政処分の特質に鑑み,学校長と事務長との個人的な合意によって,かかる権限の委任をなし得ると解すこともできない。 そもそも,前記のとおり,本件管理規則及び本件事務委任規程上,学校施設の使用に当たっては,事前に当該学校長に対して,所定の許可申請書を提出しなければならないとされ,かつ,学校施設使用の許否の決定も同申請書に基づいてなすこととされている本件にあっては,所定の申請書が提出されていない段階において,Kの口頭での申請に対して,被告IやL事務長が口頭で了承する旨の回答をしたとしても,単なる事後の使用申請を前提とした事前折衝に過ぎないものというべく,これを学校施設の使用の許可行為と認める余地はないものといわなければならない。 したがって,被告IやL事務長の口頭での回答を,X高校の学校施設の使用許可処分と位置付け,その上で,その撤回を論じる原告の主張は,L事務長に対する学校施設使用許可権限の委任の有無にかかわらず,その前提において失当というべきであり,これを採用することはできない。 イ本件使用拒否の違法性(イ) 裁量権の逸脱濫用の有無a 学校施設の目的外使用の法律関係(a) 地方公共団体は,住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するための施設を設け,その施設を住民が利用するにつき,正当な理由がない限り,これを拒んではならないと同時に,不当な差別的取扱いをしてはならないものとされている(地方自治法(以下「地自法」という。)244条)。 しかしながら,前記のような施設は,行政財産に属し(地自法238条3項),かような行政財産は,その設置目的に沿って使用することが原則とされ,その目的外に使用する場合には,その用途又は目的を妨げない限度において,管理権限者の許可を必要 政財産に属し(地自法238条3項),かような行政財産は,その設置目的に沿って使用することが原則とされ,その目的外に使用する場合には,その用途又は目的を妨げない限度において,管理権限者の許可を必要とする(同法238条の4第4項)。 むろん,地方公共団体が設置する公立の学校施設が,前記行政財産に属することは疑いもなく,目的外使用に関する前記一般原則は,特段の定めのない限り,前記学校施設にも当てはまるものというべきである。 (b) そこで,学校施設の利用に関する法令を鳥瞰するに,昭和27年4月12日法律第86号(ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く文部省関係諸命令の措置に関する法律)1条により,日本国との平和条約の最初の効力発生日以後も,法律としての効力を有する昭和24年2月1日政令第34号「学校施設の確保に関する政令」1条においては,「この政令は,学校施設が学校教育の目的以外の目的に使用されることを防止し,もって学校教育に必要な施設を確保することを目的とする。」と規定し,同政令3条においては,「1項学校施設は,学校が学校教育の目的に使用する場合を除く外,使用してはならない。但し,左の各号の一に該当する場合は,この限りでない。1 法律又は法律に基く命令の規定に基いて使用する場合 2 管理者又は学校の長の同意を得て使用する場合」,「2項管理者又は学校の長は,前項第2号の同意を与えるには,他の法令の規定に従わなければならない。」と規定されている。この規定は,まさに行政財産一般の目的外使用に関する通則を定める地自法238条の4第4項と趣旨を同じくし,その細目を学校施設の目的外使用について定めたものというべきである。 なお,学校教育法85条には,「学校教育上支障のない限り,…学校の施設を社 自法238条の4第4項と趣旨を同じくし,その細目を学校施設の目的外使用について定めたものというべきである。 なお,学校教育法85条には,「学校教育上支障のない限り,…学校の施設を社会教育その他公共のために,利用させることができる。」との規定があるが,同規定も,前記地自法238条の4第4項とその趣旨を同じくし,これを学校施設の目的外使用に敷衍したものにほかならないというべきである。すなわち,目的外使用の場合でも,「社会教育その他公共のため」であれば,「学校教育上支障のない限り」,利用させなければならないというものではなく,学校施設の管理権限者において「利用させることができる」という裁量的なものであって,利用希望者において当然に使用権を生じさせるものでないことは明らかである。 (c) 本件管理規則は,このような法令の規定を受けて,地教行法33条1項に基づき,県教委が,学校施設の管理運営の基本的事項,特にその目的外使用について定めたものであり,同条項は,「法令…に違反しない限度において」,教育委員会規則が定められることを規定していることから,本件管理規則もまた,前記地自法238条の4等の規定と趣旨を同じくするものというべきである。 b 学校施設の使用許可の法的性質以上のような法令の趣旨に照らせば,行政財産に属する学校施設のような公共施設は,その設置目的に沿わない場合,原則としてその使用は許されず,例外として目的又は用途を妨げない限度において,管理権限者の許可に基づき使用が認められるにすぎないというべきである。そして,その許否については,管理権限者の裁量に委ねられているというべきであり,特に学校施設は,学校教育の利用に供することを目的として設置された施設であり,その性質上,広く一般に開放される である。そして,その許否については,管理権限者の裁量に委ねられているというべきであり,特に学校施設は,学校教育の利用に供することを目的として設置された施設であり,その性質上,広く一般に開放されることを想定して設置された施設ではないので,管理権限者の裁量権の幅は,一般の施設のそれと比較して広くなるといわざるを得ない。 この趣旨に照らし,本件管理規則は,使用許可基準をより明確に規定してはいるものの,これら使用許可基準に該当すれば,必ず使用を許可しなければならないというものではない。これらの基準は,管理権限者において裁量権を行使する際の一つの指針を与えるものに過ぎず,裁量権を拘束するものではないというべきである。すなわち,使用許可基準に該当する場合であっても,利用希望者において,直ちに,施設の使用権が生ずるものではないというべきである。 c 本件使用拒否の違法性の有無(a) 以上のとおり,学校施設の使用の許否の判断は,管理権限者の広い裁量に委ねられているものであるが,前記法令の趣旨からして,管理権限者の裁量権の行使にあたって,恣意が許されないのはいうまでもなく,使用目的が学校施設の設置目的に沿っているのに,特に理由もなく使用を拒否したとか,使用目的が設置目的に沿うものでなくとも,不当な理由により拒否するなど,管理権限者の判断において,裁量権の逸脱・濫用にあたる事情があれば,違法というべきであり,その判断は,学校施設の使用目的,代替施設の確保の困難性,施設管理上,学校教育上の支障などの諸事情を基礎として総合的に判断されるべきものである。 (b) 本件において,原告のX高校学校施設の施設の使用目的が本件集会の開催にあったことは当事者間に争いがないところであるが,本件集会は,原告の主張のとおり,国の人 れるべきものである。 (b) 本件において,原告のX高校学校施設の施設の使用目的が本件集会の開催にあったことは当事者間に争いがないところであるが,本件集会は,原告の主張のとおり,国の人事院勧告及び県の人事委員会の勧告を受けて,その内容等の状況説明やその後の県当局との団体交渉に向けての各支部の態度や決意が表明される場であるととともに,前記認定のとおり,同集会終了直後には,一定の交渉課題について,ストライキの実施の賛否を,無記名投票の形で組合員に問う「批准投票」が実施されるものである。 なお,原告は,本件集会は,前記国の人事院勧告及び県の人事委員会の勧告の単なる説明会に過ぎないと主張する。 確かに,形式的には,本件集会の閉会宣言後に,批准投票がなされている。しかし,高教組自身が,本件集会の名称を「批准集会」としていることもさることながら,乙第10号証ないし15号証のような高教組の刊行物をみても,本件集会を,批准投票実施のための集会と位置付けているのは明らかであるし,そもそも,批准投票は,組合員のほとんどが参加して,一斉になされるものであるから,原告の主張するように,高教組各地区支部の開催する全組合員規模の集会は,年2回にしかなく,しかも,その投票の実施の趣旨からして,実施時期は,人事院や人事委員会の勧告がなされた後である秋ころに実施することが適当であることなどからしても,批准投票を実施するには,秋の集会でするほかなく,実際,平成11年度においても原告を含む高教組各地区支部の開催する集会において実施され,また,それまでも,そのように実施されてきたものと認められる。 そうであれば,批准投票を本件集会から切り離して考えるのはその実態に反するというべきであって,本件集会は,批准投票をも目的と た,それまでも,そのように実施されてきたものと認められる。 そうであれば,批准投票を本件集会から切り離して考えるのはその実態に反するというべきであって,本件集会は,批准投票をも目的とした集会と認められ,国の人事院勧告及び県の人事委員会の勧告の単なる説明会という原告の主張は採用できない。 しかして,本件集会は,国の人事院勧告及び県の人事委員会の勧告を受けて,その内容等の状況説明やその後の県当局との団体交渉に向けての各支部の態度や決意が表明される場であるとともに,前記認定のとおり,同集会終了直後には,一定の交渉課題について,ストライキの実施の賛否を,無記名投票の形で組合員に問う「批准投票」を実施するための集会という,原告の上位組織である高教組の労働運動としての色彩を濃厚に有するものであるから,その使用目的は,学校施設の設置目的である学校教育とは何らの関係を有しないものと認められる。 このように,本件においては,原告のX高校の学校施設の使用目的が,学校施設の設置目的に沿うものといえないことから,使用目的が学校施設の設置目的に沿う場合と比較して,許可権限者の有する裁量権の幅は一層広くなるといわざるを得ず,以下,かかる観点から,本件を検討する。 (c) 施設管理上,学校教育上の支障の有無施設管理上,学校教育上の支障の点については,被告らは,本件使用拒否の理由として,本件集会は,地方公務員法上禁止されているストライキを構えるための批准投票を実施するためのものであり,かかる内容の集会は,およそ教育の場で行われるにはふさわしくないものであり,これを学校施設で開催すれば,その是非を巡って世間一般から誤解を受けるほか,生徒に対し精神的悪影響を与え,保護者に心理的混乱を招くなどの教育上 およそ教育の場で行われるにはふさわしくないものであり,これを学校施設で開催すれば,その是非を巡って世間一般から誤解を受けるほか,生徒に対し精神的悪影響を与え,保護者に心理的混乱を招くなどの教育上の支障が生じると主張し,原告は,これを争うので,その支障の有無について,以下検討する。 地方公務員が,争議行為を行うことは,地方公務員法(以下「地公法」という。)37条1項により禁止され,その遂行を共謀し,そそのかし,若しくはあおり,又はこれらの行為を企てることについては,さらに罰則をもって禁止されている(地公法61条4号)。 地方公務員が行うストライキは地公法37条1項の規定に抵触することは明らかであるところ,本件集会においては,組合員にストライキの実施の賛否を問う批准投票が実施され,その批准率の高低が,高教組において,実際にストライキを行うか否かを判断する一指標となっていることは前記認定のとおりであって,そうだとすれば,本件集会の内容に一部,地公法の規定に抵触するものが存在するのは明らかであるといわなければならない(むろん,かかる内容が包含されるからといって,本件集会を開催すること自体が直ちに,争議行為を計画,又は助長する行為に該当し,違法となるものでもなく,本件においては,これを認めるに足りる証拠はないから,本件集会を開催すること自体には何らの違法性は認められない。)。 ところで,本件使用拒否は,前記認定のとおり,県教委と高教組を含む職員団体との間におけるそれまでの慣行の是非を巡る激しい対立を背景にして生じたものである。すなわち,広島県の教育に違法な点があるとの報道がなされ,県議会ばかりか国会の場にまで,その議論が波及し,広島県の教育の在り方について,様々なマスコミにおいて種々報道され,広島 て生じたものである。すなわち,広島県の教育に違法な点があるとの報道がなされ,県議会ばかりか国会の場にまで,その議論が波及し,広島県の教育の在り方について,様々なマスコミにおいて種々報道され,広島県民のみならず日本国民の注目が集まる中,県教育行政に対し,文部省より,異例ともいうべき是正指導がなされたのであって,かかる是正指導に基づき,県教委は,これまでの教育行政の在り方を見直し,その適正化を図る一環としての県教委の指導に基づき,本件使用拒否が起こったといえる。 かように,広島県の教育行政の適正さについて,衆目の関心が集まる状況において,上記とおり,本来の学校設置目的とは何らの関係がなく,一部,法律の規定に矛盾抵触する内容を含む集会が,一部の職員団体によって,学校施設を使用して開催されるとなれば,各種報道によって事実を知った生徒,保護者,さらには広島県民等が,学校施設の適正な使用,ひいては広島県の教育行政の在り方について不信を抱くのは明らかといえる。 したがって,X高校の学校施設を使用して本件集会が開催されることによる支障は,単に生徒保護者に止まらず,県民全体,ひいては国民全体に波及すべきおそれを内包すべきものあって,これが,施設管理上,学校教育上の支障に該当することは明らかである。 これに対し,原告は,前記地公法37条1項の規定が憲法28条に違反すると主張する。 確かに,地方公務員といえども憲法28条にいう勤労者に該当し,同条による労働基本権の保障を受けることは当然である。 しかしながら,地方公務員は,地方公共団体の住民全体の奉仕者として,実質的にはこれに対して労務提供義務を負うという特殊な地位を有し,かつ,その労務の内容は,主として地方行政の遂行という公共的 しかしながら,地方公務員は,地方公共団体の住民全体の奉仕者として,実質的にはこれに対して労務提供義務を負うという特殊な地位を有し,かつ,その労務の内容は,主として地方行政の遂行という公共的性質を有するものであって,地方公務員が争議行為に及ぶことがあれば,上記のようなその地位の特殊性と職務の公共性と相容れないばかりか,そのために公務の停廃を生じ,地方住民全体ないしは国民全体の共同利益に重大な影響を及ぼすか,又はそのおそれがあることもまた疑いのないところである。 そして,地方公務員の勤務条件は,法律及び地方公共団体の議会が制定する条例によって定められ,また,その給与は,当該地方公共団体における政治的・財政的・社会的その他諸般の合理的な配慮に基づき決定され,当該地方公共団体の税収入等の財源によってまかなわれるところからすると,私企業の労働者の如く,当局者を相手にした団体交渉及び争議権の行使という方式によって,労働条件の向上を図っていくことは,期待できないばかりか,かえって議会における民主的な手続によってされるべき勤務条件の決定に対して不当な圧力を加え,これを歪めるおそれすらある。 したがって,地方公務員の労働基本権は地方住民全体ないし国民全体の共同利益のために,これと調和するように制限されることはやむをえないというべきであるが,地方公務員の労働基本権が地方住民全体ないし国民全体の共同利益のために制約を受ける場合においては,その間に均衡が保たれる必要があり,したがって制約に見合う代償措置が講じられなければならないところ,地方公務員の場合には,地公法上,勤務条件に関する利益保障(地公法24条ないし26条等)や身分保障(同法27条以下)の規定が定められているほか,公正かつ妥当な勤務条件の享有を保障する手段と ところ,地方公務員の場合には,地公法上,勤務条件に関する利益保障(地公法24条ないし26条等)や身分保障(同法27条以下)の規定が定められているほか,公正かつ妥当な勤務条件の享有を保障する手段として人事委員会又は公平委員会の制度が設けられていること(同法7条ないし12条)からして,制度上,地方公務員の労働基本権の制約に見合う代償措置としての一般的要件を満たしているものと認めることができる。 以上より,地公法37条1項が地方公務員の争議行為を禁止するのは,地方住民全体ないし国民全体の共同利益のために,やむをえない限度の制約というべきであり,憲法28条に違反するものではない(最高裁判所昭和51年5月21日大法廷判決・刑集30巻5号1178頁参照)。 原告は,上記最高裁判所判例を様々に論難するのであるが,地方公務員の争議権を一律全面的に禁止する地公法37条1項の規定の合憲性について,合憲,違憲の各々立場の見解が論じられるなかで,最高裁判所が到達した一つの結論であり,これが現在,確立した判例となっていることは周知のとおりである(最高裁判所昭和63年1月21日第一小法廷判決・判例時報1284号137頁等,同裁判所平成元年4月25日第三小法廷判決・判例時報1336号128頁等,同裁判所平成2年2月22日第一小法廷判決・判例地方自治76号30頁,同裁判所平成2年4月17日第三小法廷判決・刑集44巻3号1頁,同裁判所平成4年9月24日第一小法廷判決・判例地方自治111号18頁等)。 本件において,当裁判所の地公法37条1項に関する見解は,上記説示のとおりであり,本訴において,あえて,上記見解を変更すべき事情は見出し難い。 よって,地公法37条1項の規定が憲法28条に違反するという原告の主張 7条1項に関する見解は,上記説示のとおりであり,本訴において,あえて,上記見解を変更すべき事情は見出し難い。 よって,地公法37条1項の規定が憲法28条に違反するという原告の主張は採用できない(なお,原告は,代償措置が十分に講じられていないときは,争議行為は許容されると主張するが,本件において,代償措置が十分に講じられていなかったことを認めるに足りる証拠はなく,かかる原告の主張も採用できない。)。 さらに,原告は,地公法37条1項の規定がA規約に反すると主張するが(どの規定であるか必ずしも判然としないが,その主張の趣旨からして,同規約6条ないし8条の規定を指すものと思われる。),同規約が,何らの立法措置を要するまでもなく,直ちに我が国法上において効力を有するとは考え難く,原告のかかる主張は採用できない。 (d) 被告J及び県教委による組合潰しの目的についてさらに,原告は,本件使用拒否が,高教組等の職員団体を敵視する被告Jや県教委によって,組合弾圧,組合潰し施策の一環としてなされたものであると主張する。 確かに,前記認定のとおり,県教委と高教組など職員団体との激しい対立は,被告Jが県教委に教育長として赴任してから起こっており,被告Jが進めた,職員団体との協定,慣行の見直し政策に起因することは否定できない事実であり,これを職員団体側からみれば,これまで長年にわたって,当局から勝ち取ってきた様々な権利を剥奪されることに等しく,職員団体活動への不当な介入,制約であり,これを「組合潰し」と主張するのも理解できないわけではない。 しかしながら,前記のとおり,被告Jの職員団体との間における協定,慣行の見直し政策は,文部省の是正指導を受けてなされた,広島県の教育 組合潰し」と主張するのも理解できないわけではない。 しかしながら,前記のとおり,被告Jの職員団体との間における協定,慣行の見直し政策は,文部省の是正指導を受けてなされた,広島県の教育行政の適正化施策の一環であり,個々の見直し政策は,いずれも文部省の是正指導における指導内容にしたがったものであって,その指導内容を見ても,教育内容及び教育行政が法令等の規定に沿う形になされるべきことを求めているだけであって,一見して違法なものは存在しない。もちろん,その文部省の指導内容及びその実施施策については,反対の立場もあろうが,それは,畢竟,教育行政における政策上の見解の対立であって,その解決は,政治過程,最終的に民意に委ねられるべき問題であり,司法裁判所の判断すべき事項ではない。 以上より,被告J及び県教委が実施した種々の見直し政策は,法令等の規定に則った教育の実現という理由があること,また,県教委は,職員団体に事務所として学校施設の使用を許可していること,県教委自身も職員団体との適正な関係を望んでいるとの立場を明らかにしていること,以上の事情に加え被告Jにおいて,職員団体を弾圧すべき理由が見当たらないことを併せ考えるならば,被告J及び県教委が組合弾圧,組合潰しの目的を有していたということはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 原告は,本件使用拒否の背景として,広島県の教職員組合の教育方針を快く思わない一部の保守派層が,文部省及び県教委をして広島県の教職員組合を攻撃している云々と主張するが,これを認めるべき十分に信用するに足りる証拠はなく,到底採用の余地はない。 (e) 以上のとおり,原告のX高校の学校施設の使用目的が,学校施設の設置目的に沿うものといえないばかりか,本件集会に使用され き十分に信用するに足りる証拠はなく,到底採用の余地はない。 (e) 以上のとおり,原告のX高校の学校施設の使用目的が,学校施設の設置目的に沿うものといえないばかりか,本件集会に使用されることによって施設管理上,学校管理上の支障が認められること,他に本件使用拒否において違法,不当な目的が認められないこと,本件集会の内容に照らし,必ずしも学校施設において実施される必要があるわけではないこと,被告Iにおいて代替施設を確保し,その使用を勧めていることなどの諸事情を総合勘案すると,本件使用拒否において,裁量権の逸脱,濫用があったものと認めることはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 (イ) 不当労働行為性について原告は,県教委との間には,批准集会の会場として,学校施設の利用を認める慣行があったのであり,これを一方的に破棄することは不当労働行為になると主張する。 なるほど,前記のとおり,高教組の各地区支部が実施する批准集会は,従前から毎年開催されており,しかも,その会場として学校施設を利用することが,ほぼ例外なく認められてきたことからすれば,原告と県教委との間には,批准集会の会場として学校施設の利用を認める慣行があったことは否めない。 しかしながら,これをもって直ちに,一般私企業の場合と同様に,正当な理由がない限り,前記慣行を,原告の承諾なくして一方的に破棄することは,支配介入として不当労働行為になると解するのは相当ではない。 すなわち,使用者がその所有する財産を物的資本とし,労働者を人的資本として,事業を行って利益をあげる場合において,使用者の所有する物的資本としての財産は,人的資本とともに収益の基礎となる関係にあるから,人的資本である労働者に認められた労働基本権充足のた を人的資本として,事業を行って利益をあげる場合において,使用者の所有する物的資本としての財産は,人的資本とともに収益の基礎となる関係にあるから,人的資本である労働者に認められた労働基本権充足のため,物的資本たる使用者の財産の所有権も一定限度の制約に服すべきであり,ここに,慣行として成立した施設提供という利益を法的に保護する根拠があるといえる。 しかしながら,一般私企業の場合と比して,公務員労働者に対する公共施設提供の場合はやや状況を異にするといわなければならない。公務員はいうまでもなく,全体の奉仕者であり,その最終的な使用者は国民全体,住民全体であると観念し得る。同様に,公有財産も,法形式上は,所有権者,管理権限者が定められてはいるものの,最終的な所有者は,やはり,国民全体,住民全体と観念し得るものである。 そうであるとすると,公有財産は,国民全体,住民全体の利益のために使用されるべきであって,専ら一個人や特定の団体の利益のために使用されるべきものではないことは当然である。かかる観点から,国や地方公共団体は,様々な事情を考慮して,一定の目的のため公有財産を設置,管理しているのである。したがって,公有財産は,かかる公共の利益のため,常にその目的に副った適正な使用がなされなければならないことはいうまでもなく,それがために,特定の個人や団体に当然に公有財産の使用権が付与されないこととなっているのは,既に見た地自法238条の4等の関係法令の趣旨とするところである。 しかれば,公有財産が目的に副わない形で使用され,なおかつその設置目的を阻害する形で使用されているとすれば,それは,公共の利益を損なうものであって,これが是正されなければならないことは当然である。この理は,公有財産の使用者が何らかの権利に基づいて当 かつその設置目的を阻害する形で使用されているとすれば,それは,公共の利益を損なうものであって,これが是正されなければならないことは当然である。この理は,公有財産の使用者が何らかの権利に基づいて当該公有財産を使用する場合においても同様であり,たとえ,労働基本権に基づく場合も例外ではない。 したがって,公務員労働者は,一般私企業の場合と同様に,かかる労働基本権を援用して,当然に,新たに施設提供を求めたり,これまで提供され続けてきた施設の使用の継続を求めることはできないというべきである。 もっとも,使用の不許可によって,公務員労働者の労働基本権を不当に害することはあってはならず,かかる公務員労働者の労働基本権と公有財産の適正使用による公共の利益との調整が必要になるところ,前示のような公有財産の使用を巡る法律関係に照らし,当該権利に対する違法な制約になるか否かは,公有財産を使用する目的と公有財産の設置目的の適合性の程度,公有財産を使用する必要性の程度及び不許可によって被る損害の内容,程度の諸事情と使用を許可したときの障害の内容,程度の事情を総合的に勘案して判断すべきである。 これを本件についてみるに,本件集会は,原告及び高教組の労働運動の一環として,団結権,団体行動権の行使と見られ,学校施設の設置目的とはかけ離れているものであったこと,本件集会の内容に照らし,必ずしも学校施設において実施される必要があるわけではなく,そして,当時,被告Iが代替施設を確保し,その使用を勧めていることからして,代替施設の確保が困難といえる状況とはいえなかったこと,代替施設において開催した場合には,会場使用料が新たに必要となり(もっとも,会場使用料は本来使用者において当然に負担すべきものであり,従前,学校施設で開催されてきた際には, 況とはいえなかったこと,代替施設において開催した場合には,会場使用料が新たに必要となり(もっとも,会場使用料は本来使用者において当然に負担すべきものであり,従前,学校施設で開催されてきた際には,たまたま免除されていたに過ぎないのであって,これを新たな損害と見ることについては疑問が残る。),駐車場の確保や係員の増員など多少の負担が増加するが,開催を困難にする程度のものではなかったこと,他方,本件集会に使用を許可すれば,各種報道によって事実を知った広島県民等が,学校施設の適正な使用,ひいては広島県の教育行政の在り方について不信を抱きかねないという施設管理上,学校教育上の支障が存在していたことなどの諸事情を総合考慮すると,本件使用拒否は,原告の団結権,団体行動権など労働基本権に対する不当な制約ということはできない。 よって,原告は,被告Iに対し,原告の労働基本権を援用して,X高校の学校施設の使用を求めることはできないというべきであって,そうである以上,団結権に基づく不当労働行為が成立する余地はないといわなければならない。 次に,原告は,公務員労働者の争議権を否定する地公法37条1項の規定自体が,憲法28条やA規約及び同規約に基づく社会権規約委員会の勧告に違反することを前提として,かかる憲法違反,条約違反の規定を援用して,本件集会のための学校施設の使用を拒否することは許されるものではなく,その行為自体が,ストライキ権という労働者固有の権利の行使を妨害するという違法な目的による支配介入として,不当労働行為に該当すると主張するが,地公法37条1項の規定が憲法28条に反するものではなく,さらにA規約との矛盾抵触を生じる余地のないことは前記説示のとおりであり,そうであれば,原告の主張はその前提において失当というべきであって,か 公法37条1項の規定が憲法28条に反するものではなく,さらにA規約との矛盾抵触を生じる余地のないことは前記説示のとおりであり,そうであれば,原告の主張はその前提において失当というべきであって,かかる原告の主張は採用できない。 以上より,被告Iによる本件使用拒否が,不当労働行為に該当するものということはできない。 (3) 使用を許可しなかった理由を文書で明らかにしなかったことなどの違法性の有無ア被告Iは,原告の所定の様式による行政財産使用許可申請書の提出を受けたものの,これに対し,口頭にて使用を許可しない旨とその理由を告げ,同申請書のコピーをとった上で,同申請書の原本を原告に返却し,原告から,再三にわたり,使用を許可できない理由を文書にて明らかにするよう求められたにもかかわらず,文書にて何らの回答をしなかったこと,以上の事実は前記認定のとおりである。 イ行政手続法8条1項本文によれば,行政庁は,申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は,申請者に対し,同時に当該処分の理由を示さなければならないとされ,同条2項において,前項本文に規定する処分を書面でするときは,同項の理由は,書面により示さなければならないとしている(なお,広島県行政手続条例(平成7年3月15日条例第1号)8条にも同旨の規定がある。)。 原告は,処分理由は書面で明らかにすべきと主張するが,行政手続法8条2項(広島県行政手続条例8条2項)で,書面で理由を明らかにする必要があるのは,拒否処分が書面でなされた場合であって,いかなる場合においても書面でなされなければならないわけではない。 本件にあっては,そもそも使用拒否処分があったのか否か問題となるものの,少なくとも,書面による処分はなされておらず,また,本件管理規則上 おいても書面でなされなければならないわけではない。 本件にあっては,そもそも使用拒否処分があったのか否か問題となるものの,少なくとも,書面による処分はなされておらず,また,本件管理規則上,不許可の処分をする場合には書面にてなすべきものともされていないしそのように解すこともできない。よって,行政手続法(広島県行政手続条例)8条2項の適用はないというべきであって,同法(同条例)違反の違法は認められない。 ウところで,前記のとおり,原告の提出した所定の様式による行政財産使用許可申請書(原本)は,被告Iから原告のもとへ返却されたのであるが,同申請書に基づき,正式な処分がなされなかったことは被告らの自認するところである。 その理由として,被告らは,原告の上記申請書を,行政手続法7条1項(広島県行政手続条例7条1項)に基づき審査した際,申請書の記載事項に虚偽があったため,これを持ち帰るよう指導したところ,原告がこれに応じて,申請を撤回したと主張する。 しかしながら,被告Iと原告のそれまでの交渉の経緯,上記申請書返却の後,2度にわたり,「請求願い」なる書面を提出して,不許可の理由を文書にて明らかにするよう求めていること,原告が本訴まで提起していることからして,X高校の学校施設の利用を自ら断念するとは考えられないことなどからすれば,被告の主張するように原告が任意に撤回に応じたとも考えられず,返却に応じたのは,被告Iが,かたくなに申請書の受理を拒んだからにほかならないというべきである。 被告の援用する上記行政手続法7条1項(広島県行政手続条例7条1項)によれば,行政庁は,申請が形式上の要件に適合する場合には,申請を拒否することはできないとされており,その判断は,あくまで外形的,形式的に行われるべきである。 こ 県行政手続条例7条1項)によれば,行政庁は,申請が形式上の要件に適合する場合には,申請を拒否することはできないとされており,その判断は,あくまで外形的,形式的に行われるべきである。 この点,被告の主張する使用目的欄の記載が真実か否かの判断は,外形的,形式的になしうるものではなく,それは,まさに使用の許否を判断するに当たって明らかにされるべきものであるから,申請の受理に当たってなしうる判断を超えてなされていたものといわざるを得ない。 そして,原告の申請において,他に,形式上の要件に適合しない部分があったと認めるに足りる証拠はないから,被告Iは,原告の前記行政財産使用許可申請書による申請を受理し,使用を認めるか拒否するかいずれかの処分をすべきであったというべきである。 しかるに,被告Iは,原告の申請の受理を拒否しうるものと即断した過失により,原告に執拗に迫って,申請書の返却をやむなくして,違法に申請書の受理を拒み,何らの処分をなさなかったといわざるを得ない。 (4) 被告Iの個人責任の有無以上のとおり,被告Iは,過失によって,違法に原告の所定の様式による行政財産使用許可申請書による申請の受理を拒否し,何らの処分をなさなかったものであるが,かかる行為が,同人の職務を行うに当たってなされたことは明らかであり,また,同人が,被告広島県の公権力の行使に当たる公務員であること及び同人の費用負担者が被告広島県であることについては当事者間に争いがないので,被告広島県は,国家賠償法1条及び同法3条により,被告Iの上記行為により被った原告の損害を賠償すべき責任を負う。 原告は,被告Iにも賠償責任がある旨主張するが,前記説示のとおり,国家賠償法1条1項は,国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が,その職務を行 より被った原告の損害を賠償すべき責任を負う。 原告は,被告Iにも賠償責任がある旨主張するが,前記説示のとおり,国家賠償法1条1項は,国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が,その職務を行うについて,故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは,国又は公共団体だけがその被害者に対して賠償の責に任ぜられ,公務員個人はその責を負わない趣旨の規定と解するのが相当であるから,被告Iは責任を負わないというべきである。よって,原告の前記主張は採用できない。 3 争点(3)について(1) 被告Jによる違法行為の有無ア被告Jは,平成11年10月25日午後開催された,平成11年度第2回県立学校長会議の冒頭の挨拶において,文部省の是正指導に関する問題,人事異動の方針など,様々な事項について発言した中で,学校施設の目的外使用に関する点についても,教職員組合による争議行為のための集会に使用を許可することは相当ではない旨言及したこと,以上の事実は前記認定のとおりである。 これに対し,被告らは,被告Jはかかる発言はしていないと主張し,被告I及び証人Mもこれに副う供述をする。しかしながら,甲第5号証の1ないし4の記載内容に比して,同人らの証言ははなはだあいまいであって,到底信用できない。 もっとも,かかる被告Jの発言の趣旨は,前記認定のとおり教職員組合を弾圧したり,潰す意図でなされたものではなく,このことは,その後になされたM課長による学校施設の目的外使用に関する説明を見ても明らかである。 これに対し,原告は,被告Jは,高教組が県教委との間で対立関係にあるため,これに学校施設を使用させないようにと発言したなどと主張し,甲第5号証の1,2及び甲第74号証にはそれに副う記載がある。 しかしながら,これらに ,高教組が県教委との間で対立関係にあるため,これに学校施設を使用させないようにと発言したなどと主張し,甲第5号証の1,2及び甲第74号証にはそれに副う記載がある。 しかしながら,これらに記載された被告Jの発言内容は,同じ甲第5号証の3,4のものと異なるものであるし,そもそも,これらの記載は,高教組関係者が,被告Iほかの学校長から聞き取った伝聞であって,そこに誇張が含まれないとも限らず,にわかに信用しがたい。他に,原告主張にかかる発言を被告Jがしたことを認めるに足りる証拠はなく,原告の主張は採用できない。 前記のとおり,被告J発言の趣旨は,学校施設の使用の適正化に止まるものであり,教職員組合を弾圧したり,潰す意図はなかったのであるから,被告Jの上記発言が,原告の主張する反組合的言動として,不当労働行為に該当する余地はない。 以上より,平成11年10月25日に開催された県立学校長会議における被告Jの発言を不当労働行為と認めることはできず,原告の主張は採用できない。 イ都道府県の教育長は,当該都道府県の教育委員会の委員のうちから,文部大臣の承認を得て,教育委員会が任命する(地教行法16条1項,2項(なお,2項については平成11年7月16日法律第87号による改正前のもの))とされている。そして,教育長は,教育委員会の指揮監督の下に,教育委員会の権限に属する全ての事務をつかさどる(同法17条1項)とともに,事務局の事務を統括し,所属の職員を指揮監督する(同法20条1項)。また,教育委員会のすべての会議に出席し,議事について助言する(同法17条2項)。 このように,教育長は,地方公共団体の教育行政について,広範な権限を有し,教育行政の専門家として,地教行法上,地方教育行政の責任者として位置付けられている いて助言する(同法17条2項)。 このように,教育長は,地方公共団体の教育行政について,広範な権限を有し,教育行政の専門家として,地教行法上,地方教育行政の責任者として位置付けられている。したがって,教育長は,教育行政についての広範な権限をもって,教育行政を円滑かつ迅速に遂行すべき責務を負っているというべきであるから,自ら指揮監督する事務局所属の職員が,その職務を適法に遂行するよう監督すべき法律上の義務を負っていることはいうまでもない。 また,県教育委員会は,県立高等学校の校長の任免その他の人事に関することを所掌する(地教行法23条3号,教育公務員特例法13条1項)とともに,その研修に関することについても所掌する(地教行法23条8号)。そして,前記のとおり,教育長は,教育委員会の指揮監督の下に,教育委員会の権限に属する全ての事務をつかさどるのであるから,県立高等学校の校長に対しても,同様に,その職務を適法に遂行するよう監督すべき法律上の義務を負っていると解される。 ことに本件にあっては,前記のとおり,県立学校長会議において,自ら,教職員組合による争議行為のための集会に使用を許可することは相当ではない趣旨の発言をするとともに,M課長をして,学校施設の目的外使用の許可についての説明をさせ,校長らに対し,県教委の姿勢を示して,許可の在り方に示唆を与えたのであるから,同時に予想される,学校施設の使用不許可処分に際して,関係法令に違背することのないよう指導監督を徹底すべき法的義務があったと認められる。 しかるところ,前記認定のとおり,被告Iは,適法な学校施設使用の申請があったにもかかわらず,これを不適法なものと即断して,同申請の受理を拒み,何らの処分をしなかったという単純かつ重大な過誤を犯したものであって,か 前記認定のとおり,被告Iは,適法な学校施設使用の申請があったにもかかわらず,これを不適法なものと即断して,同申請の受理を拒み,何らの処分をしなかったという単純かつ重大な過誤を犯したものであって,かかる過誤が発生したのは,被告Jにおいて,学校施設の使用不許可処分に際して過誤が発生しないよう,校長らに対し指導監督を徹底すべきであったにもかかわらず,これを怠ったためといわざるを得ず,前示のような校長らに対する監督義務を怠った過失があるというのもやむを得ないというべきである。 (2) 被告Jの個人責任の有無以上のとおり,被告Jにおいては,被告Iに対する監督義務違反という過失が認められるところ,かかる行為が,同人の職務を行うに当たってなされたことは明らかであり,また,同人が,当時,被告広島県の公権力の行使に当たる公務員であったこと及び同人の費用負担者が被告広島県であることについては当事者間に争いがないので,被告広島県は,国家賠償法1条及び同法3条により,被告Jの上記過失により被った原告の損害を賠償すべき責任を負う。 原告は,被告Jにも賠償責任がある旨主張するが,前記説示のとおり,国家賠償法1条1項は,国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が,その職務を行うについて,故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは,国又は公共団体だけがその被害者に対して賠償の責に任ぜられ,公務員個人はその責を負わない趣旨の規定と解するのが相当であるから,被告Jは責任を負わないというべきである。よって,原告の前記主張は採用できない。 4 争点(4)について前記のような被告Iによる申請の受理の拒否の態様やそれに至る経緯,同人及び被告Jの過失の内容,程度などの諸事情を総合勘案すると,被告Iの申請の受理の拒否によって,原告が被った社会的信 について前記のような被告Iによる申請の受理の拒否の態様やそれに至る経緯,同人及び被告Jの過失の内容,程度などの諸事情を総合勘案すると,被告Iの申請の受理の拒否によって,原告が被った社会的信用や名誉の低下など無形の損害の額及び弁護士費用の合計は,10万円を下ることはないと認められる。 前記のとおり,本件において違法と認められるのは,被告Iによる申請の受理の拒否や同人に対する被告Jの監督義務違反であるから,原告が主張するその余の,会場変更に伴う諸々の損害は相当因果関係を欠くものであって,賠償の対象となるべき損害ということはできない。 第4 結論以上によれば,原告の本訴請求は,被告広島県に対し,10万円及びこれに対する不法行為日以後である平成11年11月6日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余は失当であるから棄却し,訴訟費用の負担につき民訴法61条,64条本文,仮執行の宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。 広島地方裁判所民事第2部裁判長裁判官渡邉了造裁判官谷口安史裁判官秋元健一※ 別紙省略
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