平成25年2月27日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成23年(ワ)第23673号損害賠償等請求事件口頭弁論終結日平成24年12月21日判決東京都世田谷区<以下略>原告 A同訴訟代理人弁護士伊東 眞同根木純子東京都世田谷区<以下略>被告橋本コーポレイション株式会社東京都世田谷区<以下略>被告 B上記被告ら訴訟代理人弁護士原田 肇 主文 1 被告橋本コーポレイション株式会社は,原告に対し,1731万円及びこれに対する平成21年7月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告の被告Bに対する請求及び被告橋本コーポレイション株式会社に対するその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用はこれを5分し,その4を原告の負担とし,その余を被告橋本コーポレイション株式会社の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求被告らは,原告に対し,連帯して7818万0505円及び別紙一覧表「内金額」欄記載の各金額に対する同表「起算日」欄記載の各年月日から各支払済 みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,(1) 主位的には,遺留分減殺請求により別紙特許権目録記載の特許権(以下「本件特許権」という。)の準共有持分を取得した原告が,被告らに対し,被告B(以下「被告B」という。)は,原告が本件特許権の準共有持分を有することを原告 殺請求により別紙特許権目録記載の特許権(以下「本件特許権」という。)の準共有持分を取得した原告が,被告らに対し,被告B(以下「被告B」という。)は,原告が本件特許権の準共有持分を有することを原告に隠蔽し,その同意を得ることなく,日本企業との間で本件特許権の実施許諾契約を締結するなどし,実施料収入を得たものであり,また,被告橋本コーポレイション株式会社(以下「被告会社」という。)は,被告Bの上記行為を黙認して幇助したものであると主張して,共同不法行為責任(民法719条,709条)に基づく損害賠償として,連帯して,7818万0505円(附帯請求として,別紙一覧表「内金額」欄記載の各金員につき,不法行為の日の後である同目録「起算日」欄記載の各日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金)の支払を求め,(2) 予備的には,原告が,被告Bに対し,同被告は,本件特許権の実施許諾料の一部が,本件特許権の準共有持分権者である原告に帰属すべきものであることを知りながら,上記実施許諾料全額を被告会社に受領させ,被告会社から取締役報酬を得ることにより,上記実施許諾料を実質的に全額取得していたものであるから,被告Bが取得した金員のうち,原告の準共有持分に対応する金額は,原告との関係で不当利得に該当すると主張して,民法704条所定の悪意の受益者に対する不当利得返還請求として,上記(1)と同額(附帯請求についても同じ。)の支払を求める事案である。 1 前提事実(争いのない事実以外は,証拠等を末尾に記載する。)(1) 当事者等ア原告(昭和55年2月17日生)は,平成7年8月19日に死亡したC(以下「C」という。)の実の孫娘であり,Cの養子(平成元年12月1 日養子縁組)であったが,平成7年10月9日,死後離縁につき東京家庭 和55年2月17日生)は,平成7年8月19日に死亡したC(以下「C」という。)の実の孫娘であり,Cの養子(平成元年12月1 日養子縁組)であったが,平成7年10月9日,死後離縁につき東京家庭裁判所の許可を得,同月30日,死後離縁の届け出をし,実父母であるD(以下「D」という。)及びEの戸籍に復帰した者である(甲1,2,5)。 Dは,Cと,平成元年6月25日に死亡したFとの間の長男である(甲1)。 イ被告Bは,平成5年4月7日,Cと日本国の方式により婚姻した者であり,平成4年2月14日,被告会社の取締役に就任し,平成7年3月28日からは代表取締役となった。被告Bは,その後,一旦代表取締役を退任したものの,被告会社の経営に継続的に携わり,平成23年5月31日まで,被告会社の代表取締役を務めていた(甲1,3,58,被告B)。 ウ被告会社は,Cが昭和36年12月19日に設立した株式会社であり,特許権,実用新案権の許諾及び実施に関する技術指導等を事業目的としている(甲3,4の1ないし3)。 (2) 本件特許権本件特許権は,いずれも米国特許権であり,Cの死亡時において,CとG(以下「G」という。なお,書証における摘示に従い「G’」と表記することがある。)との共有であった(甲48の1,50)。 (3) 相続の開始,遺留分減殺請求等ア Cは,平成7年8月19日,死亡した(甲1)。 イ Cの法定相続人は,Cの養子である原告,Cの配偶者である被告B及びCの長男であるDの3名であったが,Dは,平成8年2月15日,東京家庭裁判所に相続放棄の申述をし,同月20日受理されたため,相続人は原告及び被告Bのみとなり,その法定相続分は各2分の1となった(甲1,2,5)。 ウ Cは,その生前に公正証書遺言を作成したが,そ 庭裁判所に相続放棄の申述をし,同月20日受理されたため,相続人は原告及び被告Bのみとなり,その法定相続分は各2分の1となった(甲1,2,5)。 ウ Cは,その生前に公正証書遺言を作成したが,その内容は,被告Bを遺 言執行者として指定するものであり,被告Bの取得分が原告の遺留分(4分の1)を侵害するものであった。 エ原告は,平成8年5月9日付け内容証明郵便により,被告Bに対し,遺留分減殺の意思表示をし,同意思表示は,同月12日,同被告に到達した(以下,「本件遺留分減殺請求」という。)(弁論の全趣旨,甲5)。 オ本件遺留分減殺請求により,原告は,本件特許権につき,下記(ア)ないし(オ)の「原告」部分記載の割合による共有持分を取得し,これにより,被告Bの共有持分は下記(ア)ないし(オ)の「被告B」部分記載のとおりの割合となった(原告の上記共有持分を「本件原告持分」,被告Bの上記共有持分を「本件被告B持分」という。)。 (ア) 別紙特許権目録記載1の特許権(以下「本件特許権1」という。)原告 10%被告B 30%(イ) 同目録記載2の特許権(以下「本件特許権2」という。)原告 15%被告B 45%(ウ) 同目録記載3の特許権(以下「本件特許権3」という。)原告 15%被告B 45%(エ) 同目録記載4の特許権(以下「本件特許権4」という。)原告 12.5%被告B 37.5%(オ) 同目録記載5の特許権(以下「本件特許権5」という。)原告 12.5%被告B 37.5%(4) 遺留分減殺請求訴訟等 ア原告は,平成8年頃,被告Bに対し,遺留分減殺請求により特許権の準共有 特許権5」という。)原告 12.5%被告B 37.5%(4) 遺留分減殺請求訴訟等 ア原告は,平成8年頃,被告Bに対し,遺留分減殺請求により特許権の準共有持分を取得したことの確認等を求める訴訟を提起し(当庁平成8年(ワ)第14301号遺留分減殺請求事件),当庁は,平成19年3月28日,同事件につき判決をした(甲5)(以下,上記判決を「遺留分減殺請求地裁判決」という。)。 イ原告及び被告Bは,遺留分減殺請求地裁判決に対し控訴し(東京高等裁判所平成19年(ネ)第3317号遺留分減殺請求控訴事件),同庁は,平成20年7月17日,原告控訴部分につき,その控訴を棄却し,被告B控訴部分に関し,遺留分減殺請求地裁判決を一部変更する判決をし(甲6),同判決は,同月31日の経過により確定した(甲7)(以下,上記判決を「遺留分減殺請求高裁判決」という。)。 2 争点(1) 主位的請求(共同不法行為責任に基づく損害賠償請求)についてア被告らの原告に対する共同不法行為の成否イ損害額ウ消滅時効の成否(2) 予備的請求(不当利得返還請求)についてア原告の被告Bに対する不当利得返還請求の成否イ被告Bが悪意の受益者に当たるか。 第3 争点に関する当事者の主張 1 被告らの原告に対する共同不法行為の成否(争点(1)ア)について(原告の主張)(1) 被告らの共同不法行為に係る準拠法ア本件において,原告は,被告らに対し,米国特許権の準共有持分権及び上記準共有持分権に基づき実施許諾料を取得する権利を侵害されたことを理由として損害賠償を請求するものであり,本件請求は,米国特許法によ り付与された権利に基づくものであるから,国際私法上の準拠法を決定する必要 基づき実施許諾料を取得する権利を侵害されたことを理由として損害賠償を請求するものであり,本件請求は,米国特許法によ り付与された権利に基づくものであるから,国際私法上の準拠法を決定する必要がある。 イ本件請求に係る法律関係の性質は不法行為である。 ウ不法行為の準拠法については,平成18年12月31日以前の行為については,「法の適用に関する通則法」(以下「通則法」という。)附則3条4項に従い法例11条により,平成19年1月1日以降の行為については,通則法附則1条に従い通則法17条により,各決定されるべきである。 (ア) そこで,まず,平成18年12月31日以前の行為について検討すると,法例11条は,不法行為による損害賠償請求権の成立及び効力はその原因たる事実の発生した地(以下「原因事実発生地」という。)の法律によるものとしているところ,本件において,原告が被告らの共同不法行為に当たると主張する行為は,いずれも日本国内で行われたものである。 したがって,上記行為について,共同不法行為責任を問う場合の準拠法は日本法すなわち我が民法である。 (イ) 次に,平成19年1月1日以降の行為について検討すると,通則法17条は,不法行為によって生じる債権の成立及び効力は,加害行為の結果が発生した地(以下「結果発生地」という。)の法によるのを原則とするが,例外的に,その地における結果の発生が通常予見することのできないものであったときは,加害行為が行われた地(以下「加害行為地」という。)の法によるものと定めているところ,本件において,原告の主張する加害行為の結果発生地は日本である。なお,仮に加害行為地によるとしたとしても,本件において,原告の主張する加害行為が行われた地は日本である。 したがって,上記行為につ いて,原告の主張する加害行為の結果発生地は日本である。なお,仮に加害行為地によるとしたとしても,本件において,原告の主張する加害行為が行われた地は日本である。 したがって,上記行為について,共同不法行為責任を問う場合の準拠法は日本法すなわち我が民法である。 エ共同不法行為の成否を検討する際の準拠法について(ア) 本件において,原告は,被告らが,本件特許権につき,準共有持分権者である原告の同意を得ずに実施許諾契約を締結し,実施許諾料を受領したことが,日本国民法の719条2項所定の共同不法行為に当たるとの主張をするものである。 そこで,上記共同不法行為の成否を検討する際に,特許権の実施許諾契約の準拠法が問題となるが,当事者間でのみ効力をもつ債権的な合意の問題は,第三者に対しても効力をもつ特許権自体の問題とは区別し,当該特許権の登録国法(保護国法)によるのではなく,契約準拠法によると解するのが相当である。 (イ) 契約準拠法に関する法例7条1項によれば,準拠法の指定に関し当事者の意思が明示されているときはそれによるのは当然であり,また,明示の指定がない場合においても,当事者の暗黙の意思が探求されるべきであると解される。これを本件についてみると,原告は,被告らと日本国内企業との間で締結された実施許諾契約についてのみ,不法行為該当性を主張するものである。そうすると,上記実施許諾契約には,日本法を準拠法とする明示の定めがある可能性が高く,また,仮に明示の定めがなかったとしても,契約当事者間において,実施許諾契約に関しては,日本法を準拠法とする黙示の指定が存在したことは明白である。そうすると,実施許諾契約の成立に関する準拠法は,日本法とみるべきことになる。 (ウ) 法例7条によって定まる契約の準拠法は しては,日本法を準拠法とする黙示の指定が存在したことは明白である。そうすると,実施許諾契約の成立に関する準拠法は,日本法とみるべきことになる。 (ウ) 法例7条によって定まる契約の準拠法は,原則として債権契約の成立に関する問題に適用されるものであり,契約が有効に成立した場合における契約の効力に関し適用される準拠法は別に論じる必要がある。しかし,成立と効力は本来原因と結果の関係にあることから,原則として同一の準拠法によらしめるべきである。また,当事者が効力につき異な る準拠法を指定することができるとしても,本件の場合,契約当事者が上記指定をしたような事情は一切ない。 そうすると,実施許諾契約の効力に関する準拠法も,日本法とみるのが相当である。 被告らは,実施許諾契約の準拠法は米国法であり,米国特許法262条では,共有者は他の共有者の同意を得ることなく実施権の許諾をすることができると定められていると主張する。しかし,被告Bが本件特許権を自ら実施する場合は特許権の効力の問題であり準拠法は米国法であるとしても,本件は第三者との間の実施契約の問題であるから,準拠法は日本法となる。 (エ) したがって,本件特許権の実施許諾に関しては,日本国特許法73条が適用され,各共有者は,本件特許権に専用実施権を設定し,又は第三者に対し通常実施権を許諾する場合には,他の共有者の同意を得なければならないこととなり,共有者が他の共有者の同意を得ずに第三者に対し通常実施権を許諾するなどした場合には,他の共有者の同意権の侵害として,不法行為に該当することになる。 (オ) 以上を前提に,被告らの共同不法行為の成否について主張する。 (2) 共同不法行為の成否ア本件特許権をCの相続財産目録に記載せず隠蔽した違法行為( 法行為に該当することになる。 (オ) 以上を前提に,被告らの共同不法行為の成否について主張する。 (2) 共同不法行為の成否ア本件特許権をCの相続財産目録に記載せず隠蔽した違法行為(ア) 被告Bは,Cの遺言執行者として,速やかに,公証人をして,正確な内容の相続財産目録を調製させ,原告に対し交付すべき義務を負う。 にもかかわらず,被告Bは,Cの相続財産目録の調製を東京法務局所属の公証人増田豊に依頼するに際し,Cの遺産中に本件特許権の準共有持分が含まれることを同公証人に告げずに隠蔽し,同公証人に,上記持分の記載のない相続財産目録(甲49。以下「本件相続財産目録」という。)を調製させ,これを,原告に対し交付したのみで,本件特許権の 記載のある相続財産目録を作成・交付しなかった。 被告Bが本件相続財産目録の作成された平成7年10月20日の時点でCの遺産に本件特許権が含まれることを知っていたことは,同年9月21日作成の報告書(甲50)等から明らかである。 (イ) 仮に,被告Bが本件相続財産目録作成時点でCの遺産に本件特許権が含まれることを知らなかったとしても,本件相続財産目録には,今後の調査により資産等が判明すれば,更に公正証書作成嘱託をする予定であると被告Bが述べた旨が記載されているのであるから,被告Bは,民法1011条(若しくはその趣旨)又は信義則上,本件特許権の準共有持分の存在が判明した後,速やかに,新たな相続財産目録調製公正証書を作成し,原告に交付すべき義務を負う。 にもかかわらず,被告Bは,上記公正証書を作成せず,本件特許権の存在を隠蔽した。 被告Bの上記(ア)及び(イ)の行為は,原告に対し,本件原告持分の存在及び遺留分減殺請求日以後の特許実施許諾料を収受する権利(民法1036条)の存在を隠蔽し,原告 ,本件特許権の存在を隠蔽した。 被告Bの上記(ア)及び(イ)の行為は,原告に対し,本件原告持分の存在及び遺留分減殺請求日以後の特許実施許諾料を収受する権利(民法1036条)の存在を隠蔽し,原告の権利行使の機会を失わせてこれを侵害する行為に当たる。 被告Bが,遅くとも平成9年5月5日頃までには,本件特許権がCの遺産に含まれることを知っていたことは,同日付けのサンフランシスコ郡カリフォルニア州上位裁判所の命令(甲46,52)から明らかである。 イ Cが生前締結した本件特許権の実施許諾契約について実施料全額を取得した違法行為被告Bは,上記のとおり,原告の権利の存在を隠蔽し,原告の権利行使の機会を失わせただけではなく,更に進んで,本件遺留分減殺請求以後において,Cが,その生前に本件特許権の実施許諾契約を締結していた日本国内企業に対し,本件特許権のCの準共有持分を単独相続した旨装うこと により,上記実施許諾契約又は上記実施許諾契約の切替え契約に基づく実施許諾料の全額を取得し,原告の取得すべき実施許諾料(遺留分減殺請求により原告が取得した本件特許権の準共有持分の法定果実)を横領した。 原告は,被告Bに対し,原告が取得すべき額についての支払を求めたところ,被告Bはこれを拒絶した。 上記行為は,本件特許権に係る本件原告持分を侵害する行為に当たり,かつ,原告の,本件原告持分から生じる法定果実である実施許諾料(民法88条2項及び89条2項)を取得する権利を侵害する行為に当たる。 ウ本件遺留分減殺請求後新たに実施許諾し原告の同意権を侵害した違法行為被告Bは,本件遺留分減殺請求以後において,本件特許権のCの準共有持分を単独相続した旨装い,日本国内企業との間で,新たに他の準共有持分権者である原告の同意を得ることなく本件特許権の実 た違法行為被告Bは,本件遺留分減殺請求以後において,本件特許権のCの準共有持分を単独相続した旨装い,日本国内企業との間で,新たに他の準共有持分権者である原告の同意を得ることなく本件特許権の実施許諾契約を締結し,上記契約に基づく実施許諾料の全額を取得した。 上記行為は,共有特許権の実施許諾契約における,他の共有者(原告)の同意権(特許法73条3項)を侵害する行為に当たり,かつ,原告の,本件原告持分から生じる法定果実である実施許諾料を取得する権利を侵害する行為に当たる。 エ上記アないしウの行為は,いずれも,被告Bの原告に対する不法行為を構成する。また,被告会社は,被告Bが原告に対し本件原告持分の存在を隠蔽し,日本国内企業に対し本件特許権に係るCの準共有持分を単独相続した旨装っていることを知りながら,上記国内企業に対し,上記の点が事実とは異なることを明らかにせず,被告Bの行為を黙認したものであり,被告Bの上記不法行為を教唆又は幇助したものであるから,被告らには,共同不法行為(民法719条2項)が成立する。 なお,上記のとおり,原告が,遺留分減殺請求高裁判決確定後において, 被告らに対し,本件原告持分に応じた特許実施料の支払を請求したところ,被告らが,上記支払に向けた話し合いすら拒否したことは,被告らが,上記実施許諾料の支払をする意思が当初から全くなかったことを示すものであり,被告らに,上記共同不法行為に係る故意があったことを裏付けている。 オ被告らの主張に対する反論上記イの行為に関し,被告らは,本件特許権の実施許諾料は,被告会社とCとの間の合意に従い,Cの死亡後においても,被告会社が取得しており,被告Bがこれを取得した事実はないと主張するが,否認する。Cは,節税のため,本件特許権の実施許諾 特許権の実施許諾料は,被告会社とCとの間の合意に従い,Cの死亡後においても,被告会社が取得しており,被告Bがこれを取得した事実はないと主張するが,否認する。Cは,節税のため,本件特許権の実施許諾料を被告会社に代理受領させた上で,本件特許権等の管理に要する費用その他諸経費や税金支払に必要な額を控除した残額を,代表取締役報酬に上乗せして受け取っていたものであり,被告Bも,Cと同様に,被告会社が代理受領した本件特許権の実施許諾料を,役員報酬名目で取得し続けている。 Cが本件特許権の実施許諾料を包括的又は継続的に被告会社に帰属させる意思であったのであれば,会社名義で特許権登録をすれば足りる。それにもかかわらず,Cが,わざわざ価値の高い特許権を選んで自己名義で登録をしたのは,本件特許権の持分を自己のものとし,本件特許権から生じる多額の実施許諾料収入を取得する意思であったと考えるのが合理的である。また,仮に,Cが本件特許権の実施許諾料を被告会社に贈与していたとすれば,被告会社には,毎年,特許実施許諾料収入に応じた受贈益が発生し,この受贈益に応じた法人税の納付義務があるが,被告会社がこれを納付していた事実はない。これらの事情に加え,Cの代表取締役報酬が平成7年1月当時で月額450万円であり,他の取締役の報酬額の数倍以上という破格の金額であったこと,株式会社朝日コーポレイションとの間の実施許諾契約において,同社からの技術指導料(実施許諾料)に関し,税 務署の調査において事情を尋ねられたことを契機として,上記技術指導料(実施許諾料)を被告会社に受領させる代わりに,Cの代表取締役報酬を上げることとした経緯があることなども考慮すれば,Cが本件特許権の実施許諾料を被告会社に取得させていたものとは考えられない。 (被告らの主張)( 告会社に受領させる代わりに,Cの代表取締役報酬を上げることとした経緯があることなども考慮すれば,Cが本件特許権の実施許諾料を被告会社に取得させていたものとは考えられない。 (被告らの主張)(1) 原告の主張のうち,事実に関する点は否認し,法的主張については争う。 (2) 本件特許権をCの相続財産目録に記載せず隠蔽した違法行為についてア被告BはCの遺言執行者であり,遺言執行者は就職後速やかに相続財産目録を作成し相続人に交付する義務があるが,本件遺留分減殺請求後に,正確な内容の相続財産目録を作成し,原告に交付する義務を負うものではない。 イ被告Bは,本件相続財産目録の調製に当たり,その資料として,被告会社従業員の作成した特許権のリストを公証人に対し提示したが,上記リストには,本件特許権を含む米国特許権は全て被告会社の所有である旨記載されていたため,上記リストの記載を信じていた。被告Bは,Cの生前は被告会社の経営に実質的に関与しておらず,当時は,別件の職務執行停止仮処分事件の対応に追われる中,Cの遺産内容も十分把握できていない状況で作成したものであり,同事件の証拠書類(甲50を含む)の詳細まで理解する余裕はなかった。本件相続財産目録の調製に当たり,被告Bに原告を欺く意思はなかった。 被告Bは,平成9年に本件特許権がCの相続財産であることを知ったが,遺留分減殺請求訴訟の審理過程において本件特許権の存在を明らかにすれば足りることや,米国検認裁判所に対する修正申立書が原告に送付されることなどから,追加の相続財産調製公正証書を作成する必要がないと考え,これを作成しなかったにすぎない。 ウしたがって,被告らに,この点において不法行為は成立しない。 (3) Cが生前締結した本件特許権の実施許諾契約に基づき実施料 する必要がないと考え,これを作成しなかったにすぎない。 ウしたがって,被告らに,この点において不法行為は成立しない。 (3) Cが生前締結した本件特許権の実施許諾契約に基づき実施料全額を取得した違法行為についてア Cは,その生前,被告会社との間で,被告会社及びCが九州松下電器株式会社(以下「九州松下」という。)等との間で締結した実施許諾契約に基づく実施許諾料を,すべて被告会社に帰属させる旨合意しており,被告会社は,上記合意に基づき,実施許諾料を自己の収入として取得し,会計上も税務上も自己の収入として処理していた。原告及び被告Bは,Cの相続人として上記合意に拘束されるから,被告会社が本件特許権の実施許諾料を取得したことが,原告との関係で違法性を有することはないというべきである。 イなお,上記合意の存在は,原告と被告Bとの間の遺留分減殺請求地裁判決(甲5)において認定されている事実であるところ,上記判決は,10年以上にわたる審理における双方の主張立証に基づくものであるから,上記判決における認定事実と反する内容を原告が主張することは,信義則に反し許されない。 ウ原告は,被告Bが,被告会社に実施許諾料を代理受領させた上で,代表取締役報酬名目で支払を受けていたとも主張するが,否認する。上記アのとおり,被告会社は,Cとの間の合意に基づき,自己の収入として実施許諾料を取得したものであり,被告Bのために実施許諾料を代理受領した事実はない。また,被告Bは,その業務の対価として代表取締役報酬を得たものであり,本件特許権の実施許諾料を代表取締役報酬名目で得たものではない。なお,Cは,上記イでみた判決において,被告会社から多額の代表取締役報酬を得ていたことなどを理由として,被告会社名義で登録した特許権に関する職務発明対価 諾料を代表取締役報酬名目で得たものではない。なお,Cは,上記イでみた判決において,被告会社から多額の代表取締役報酬を得ていたことなどを理由として,被告会社名義で登録した特許権に関する職務発明対価請求権を放棄したものと認定されているところ,C名義の特許権に基づく実施許諾料収入についても同様のことがいえるのであり,本件特許権の実施許諾料を対価なくして被告会社に帰属させ たことは何ら不合理なものではない。 (4) 本件遺留分減殺請求後新たに実施許諾し原告の同意権を侵害した違法行為についてア被告Bが,本件遺留分減殺請求以後において,本件特許権につき,日本企業に対し,新たに実施許諾契約を締結した事実はない。 イまた,仮にこの点を措くとしても,本件特許権の実施許諾が原告に対する不法行為を構成することはない。 (ア) すなわち,不法行為に基づく損害賠償請求の準拠法は,法例11条により原因事実発生地の法律となるところ,最一小判平成14年9月26日民集56巻7号1551頁は,日本国内でされた米国特許権侵害を誘導する行為による損害賠償請求につき,原因事実発生地は米国であるとしている。また,本件では,特許権の共有者の権利が問題となっているので,この点からも特許付与国である米国法が準拠法となる。 (イ) 上記最高裁判決は,日本において米国特許権の直接侵害行為を誘導する行為が米国特許法上違法とされる余地があるとしても,属地主義の原則を採り,域外適用を可能とする規定をもたない日本国特許法の下では,法例11条2項により,登録国の域外における特許権侵害誘導行為を違法とすることはできない旨判示している。 本件において原告が主張する被告らの行為は,いずれも米国外で第三者に実施許諾をした行為であり,直接侵害の誘導行為にすぎないか る特許権侵害誘導行為を違法とすることはできない旨判示している。 本件において原告が主張する被告らの行為は,いずれも米国外で第三者に実施許諾をした行為であり,直接侵害の誘導行為にすぎないから,不法行為には当たらない。 また,米国特許法において,特許権の共有者は,自己の共有持分に基づき,他の共有持分権者の同意なく,第三者に特許権を譲渡し,非独占的通常実施権を設定することができ,また,それらにより得た収益を他の共有持分権者に分配する義務はないものとされている。したがって,被告BがCの死亡後に本件特許権の実施を新たに許諾し,実施許諾料を 被告会社に取得させたことがあったとしても,これが原告との関係で不法行為に該当することはない。 2 損害額(争点(1)イ)について(原告の主張)(1) 本件特許権1ないし3は,Cが平成4年6月頃にサムスン電子株式会社宛てに送付した警告状(甲47)において,被侵害特許権として列挙されたものに当たる。また,本件特許権1,4及び5は,訴訟提起のため,被告会社から米国においてフォンテル・コミュニケーションズ・インク(以下「フォンテル社」という。)らが提起した訴訟において,同訴訟の被告らによる特許権侵害が認められ,フォンテル社に約12億円の利益をもたらしたとされる特許権の一部に当たる。したがって,本件特許権は,いずれも,ファクシミリ機能付き留守番電話機の製造販売に不可欠な発明に係るものであり,実施料取得が可能な重要特許権であった。 (2) 本件特許権の上記重要性に鑑みると,被告らの共同不法行為により,原告に損害が発生していることは明白である。しかし,本件特許権の実施許諾契約の具体的内容は原告にとって不明であり,損害額につき立証することができない。 このように損害の発生につき証 為により,原告に損害が発生していることは明白である。しかし,本件特許権の実施許諾契約の具体的内容は原告にとって不明であり,損害額につき立証することができない。 このように損害の発生につき証明がなされたが,損害額につき立証することができない場合の特例として,民訴法248条は,裁判所が相当な損害額を認定することができるとしている。本件においては,上記規定の適用又は類推適用により,適切な損害額が認容されるべきである。 上記(1)のとおり重要な特許権である本件特許権のうちの3件を含む14件の特許権については,米国企業等を被告とした米国における訴訟において特許侵害の事実が認められたものであり(甲24ないし34),各特許権の実施料獲得比率は不明であるため,いずれも同じ(各14分の1)であると仮定し,被告会社の実施料収入額(別紙特許料収入一覧表。平成8年度から 平成11年度までについては損益計算書に基づく額であり,平成12年度以降は推定額である。)を14で除した金額に本件原告持分をそれぞれ乗じた額が,当該年度において,上記3件の特許権につき原告が受けるべきであった実施許諾料額となる。 上記3件の特許権につき,存続期間満了までの間の各年度に原告が受けるべきであった実施許諾料額は別紙一覧表の内金額欄記載のとおりであり,その合計金額は,7818万0505円である。 したがって,民訴法248条に基づく相当な損害額として,同額が認容されるべきである。 (被告らの主張)原告の主張は争う。本件において,原告に損害が発生したことの立証がない以上,民訴法248条を適用又は類推適用すべき基礎を欠く。 3 消滅時効の成否(争点(1)ウ)について(被告らの主張)本件損害賠償請求は,原告が主張する弁済期の最後のもの(平成19年1月 ,民訴法248条を適用又は類推適用すべき基礎を欠く。 3 消滅時効の成否(争点(1)ウ)について(被告らの主張)本件損害賠償請求は,原告が主張する弁済期の最後のもの(平成19年1月1日)から訴訟提起時(平成23年7月16日)までに,既に3年が経過しているから,時効により消滅している。 (原告の主張)(1) 被告らの主張は争う。 (2) 民法724条にいう「損害及び加害者を知った時」とは,被害者において,加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況の下に,その可能な程度において,これらを知った時を意味するものと解されている(最高裁昭和48年11月16日第二小法廷判決参照)。 本件において,原告は,遺留分減殺請求控訴審判決確定により,初めて本件原告持分の存在を知り,被告らに対する損害賠償請求が事実上可能となったものであるから,消滅時効の起算点は,上記判決確定時である平成20年 7月31日と解するべきである。 原告は,平成23年7月16日に本件訴訟を提起しているから,これにより,消滅時効は中断しており,本件損害賠償請求権につき消滅時効は完成していない。 4 原告の被告Bに対する不当利得返還請求の成否(争点(2)ア)について(原告の主張)(1) 準拠法ア本件において,原告は,遺留分減殺請求時以降に被告Bが取得した本件特許権の実施許諾料のうち,本件原告持分に対応した額につき,不当利得返還請求をするものであるところ,本件特許権は米国特許権であり,渉外的要素を含むものであるから,準拠法を決定する必要がある。 イ不当利得返還請求の準拠法については,平成18年12月31日までは,法例に,平成19年1月1日以降は通則法に従い,被告Bの利得の原因事実発生地の法を本件不当利得返還請求の準拠法とす がある。 イ不当利得返還請求の準拠法については,平成18年12月31日までは,法例に,平成19年1月1日以降は通則法に従い,被告Bの利得の原因事実発生地の法を本件不当利得返還請求の準拠法とすべきこととなる。 本件において,被告Bは,原告による遺留分減殺請求により,Cから相続した本件特許権の準共有持分のうち,本件原告持分に対応する部分を失ったにもかかわらず,本件特許権の実施許諾料の全額を取得したものであり,原告は,上記実施許諾料の取得が,被告Bの不当利得に当たると主張するものである。 したがって,原因事実を狭く考えれば,本件特許権の実施許諾契約を承継した事実となり,上記実施許諾契約のライセンシーが日本企業に限られる以上,原因事実発生地は日本となる。また,原因事実を,相続,遺言,遺留分減殺請求,本件特許権の実施許諾契約の承継と,広く捉えたとしても,これらの各事実は,いずれも日本国内におけるものであるから,原因事実発生地は日本となる。 ウ以上によれば,本件不当利得返還請求の準拠法は日本法すなわち我が民 法となる。 (2) 原告は,被告Bに対する遺留分減殺請求により,本件特許権につき,本件原告持分を取得したものであるところ,本件特許権に基づく特許実施料収入は,本件特許権の法定果実(民法88条2項)であるから,被告Bと原告は,それぞれの準共有持分に応じてこれを取得する権利を有することになる(同法89条2項)。すなわち,遺留分減殺請求時以降における本件特許権の実施許諾料収入のうち,本件原告持分に対応する額は,原告が取得すべき財産上の利益に当たる。 しかるに,被告Bは,上記遺留分減殺請求時以後も,Cの生前に締結された実施許諾契約及びCの死亡後に本件特許権の単独権利者を装って締結した実施許諾契約に各基づく実 すべき財産上の利益に当たる。 しかるに,被告Bは,上記遺留分減殺請求時以後も,Cの生前に締結された実施許諾契約及びCの死亡後に本件特許権の単独権利者を装って締結した実施許諾契約に各基づく実施許諾料の全額を,被告会社に代理受領させた上,代表取締役報酬名目で取得していた。被告Bの上記取得分のうち,本件原告持分に対応する金額は,原告が取得すべきものであり,被告Bの不当利得に該当する。 (3) この点,被告らは,Cの生前に締結された実施許諾契約に基づく実施許諾料は,被告会社とCとの間の合意に従い,Cの死亡後においても,被告会社が取得したから,被告Bに利得はないと主張するが,争う。この点に関する原告の主張は争点(1)アに関する原告の主張(2)オのとおりである。 (4) 被告Bの利得額については,本件特許権の実施許諾契約の内容等が原告にとって不明であり,具体的に立証することができない。しかし,民訴法248条の趣旨は,不当利得返還請求にも同様に妥当するから,同請求にも同条が類推適用されるべきである。 同条の類推適用によって認定されるべき相当利得額は,争点(1)イに関する原告の主張(2)でみたところと同様であり,7818万0505円が認容されるべきである。 (被告Bの主張) (1) 原告の主張のうち,事実については否認し,法的主張は争う。 (2) 争点(1)アに関する被告らの主張(3)アのとおり,Cの生前に締結された実施許諾契約については,Cと被告会社との間に,実施許諾料のすべてを被告会社に帰属させる旨の合意が存在し,原告及び被告Bは,Cの相続人として上記合意に拘束されるところ,被告会社は,上記合意に基づき,実施許諾料を自己の収入として取得していたものであるから,この点につき,被告Bに利得は存在しない。 なお,原告は, Bは,Cの相続人として上記合意に拘束されるところ,被告会社は,上記合意に基づき,実施許諾料を自己の収入として取得していたものであるから,この点につき,被告Bに利得は存在しない。 なお,原告は,被告Bが,被告会社に実施許諾料を代理受領させた上で,代表取締役報酬名目でその支払を受けていたとも主張するが,被告会社が被告Bのために実施許諾料を代理受領した事実がないこと及び被告Bの役員報酬が本件特許権の実施許諾料と無関係であることは,争点(1)アに関する被告らの主張で述べたとおりである。 (3)アまた,争点(1)アに関する被告らの主張(4)のとおり,本件特許権に関し,Cの死亡後に新たに締結された実施許諾契約は存在しないから,この点に関し,被告Bに利得は存在しない。 イ仮にこの点を措くとしても,不当利得返還請求の準拠法は,不法行為に関し争点(1)アで主張したところと同様に,原因事実発生地である米国法となるところ,米国特許法上,共有者は他の共有者の同意なく第三者に実施許諾をすることができ,その果実(実施許諾料)を分配する義務もないから,被告Bが実施許諾料を収受したとしても,これが,原告との関係で不当利得に該当することはない。 5 被告Bが悪意の受益者に該当するか(争点(2)イ)について(原告の主張)(1) 被告Bは,相続財産目録の作成に当たり,その調製を依頼した公証人に対し,Cの遺産中に本件特許権が含まれるにもかかわらず,これを告げず,その記載のない相続財産目録を作成させた上,これを原告に交付することに より,本件特許権の存在を原告に知らせることなくあえて隠蔽し,本件特許権の実施許諾料全額を取得し続けたものであるから,悪意の受益者(民法704条)に該当する。 (2) したがって,原告は,民法704条に基づき,争点(2 を原告に知らせることなくあえて隠蔽し,本件特許権の実施許諾料全額を取得し続けたものであるから,悪意の受益者(民法704条)に該当する。 (2) したがって,原告は,民法704条に基づき,争点(2)アでみた被告Bの利得である7818万0505円に加え,C死亡の翌日である平成7年8月20日から各特許期間満了時までの各年度について,当該年度に発生した利得分につき,民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求することができる。 (被告らの主張)原告の主張は争う。 第4 当裁判所の判断 1 争点(1)ア(被告らの原告に対する共同不法行為の成否)について(1) 原告が被告らの共同不法行為であると主張する行為は,①相続財産目録への本件特許権の不記載による隠蔽に関する点,②Cが生前に締結した本件特許権の実施許諾契約に基づく実施許諾料の収受等に関する点,③本件遺留分減殺請求以後における本件特許権の新たな実施許諾契約の締結と,その実施許諾料の収受に関する点に分けられるので,順次検討する。 (2) ①相続財産目録への本件特許権の不記載による隠蔽に関する点ア証拠(甲49),被告B本人及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (ア) Cが死亡した後,その妻である被告Bが,Cの公正証書遺言により遺言執行者として指定された。しかし,被告Bは長年米国に居住しており,Cの我が国における不動産や預貯金,株式等の財産については詳しく知らなかったことから,被告会社の役員や従業員の助力を得て,不動産については固定資産評価証明書,金融資産については残高証明書,株式については株式登録証明書,特許権については被告会社作成のリスト を基にCの相続財産を把握し,その目録を作成した。なお,Cの考案に係る特許権・実用新案権を列挙 資産については残高証明書,株式については株式登録証明書,特許権については被告会社作成のリスト を基にCの相続財産を把握し,その目録を作成した。なお,Cの考案に係る特許権・実用新案権を列挙したものとみられるリスト(甲23。なお,その作成者及び作成年月日は明らかではない。)には,1091件もの各国特許・実用新案権等が列挙されている上,同リストには,出願人又は特許権者を示す記載はない。また,遺留分減殺請求地裁判決において,審理の対象とされた特許権(平成7年8月19日時点に存続していたもの)は国内外合わせて432件に及び,そのうち,本件特許権を含む428件は,被告会社名義で出願登録されたものであり,同判決に添付された目録においても,本件特許権の権利者は「法人」(被告会社)と記載されていることが認められる(甲5)。このように,特許権については膨大なリストが存在した上,当時,Dが被告Bを含む被告会社役員5名及び被告会社を債務者として申し立てた職務執行停止仮処分申立事件(当庁平成7年(ヨ)第20059号)に対処する必要もあったことから,被告Bは,Cの相続財産の内容を十分調査検討する時間がなかった。 (イ) 被告Bは,平成7年10月頃,東京法務局所属公証人増田豊に対し,Cの相続財産目録の調製を嘱託し,同月19日,同公証人に対し,同目録に記載すべき財産として,不動産,金融資産,株式,特許権等を申述したが,上記のとおり,十分な調査検討の時間がなかったため,公証人に対し,本相続財産目録は,現時点における相続財産の概略であり,今後調査を継続することにより,資産並びに負債が判明する可能性があるので,その段階で更に明細書を提出し,相続財産目録の調製につき公正証書作成嘱託をする予定である旨述べた。上記申述に基づき調製された相続財産目録調製 ることにより,資産並びに負債が判明する可能性があるので,その段階で更に明細書を提出し,相続財産目録の調製につき公正証書作成嘱託をする予定である旨述べた。上記申述に基づき調製された相続財産目録調製公正証書(甲49)には,本件特許権は記載されていなかった。 (ウ) 他方,上記公正証書作成に先立ち,Dが被告Bを含む被告会社役員 5名及び被告会社を債務者として申し立てた前記職務執行停止仮処分申立事件に平成7年9月21日付けで提出された報告書(甲50)には,本件特許権1,2,4及び5を被告会社がCとG’(G)に譲渡した旨が記載されている。もっとも,上記報告書は,被告会社の取締役であったH及びIの作成に係るものであり,被告B自身の作成に係るものではない上,同報告書によれば,本件特許権1,2,4及び5の譲渡の経過は,上記Hが米国弁護士を通じて米国特許庁から記録を取り寄せることにより,初めて判明したものであるとされており(甲50の9頁),被告会社において従前から把握していたものではないことがうかがわれる。 また,上記報告書には,本件特許権1,2,4及び5につき,昭和63年にその持分がC(及びG’)に譲渡された旨が記載されているのみであり,その後の権利移転の有無について触れるものではない。 (エ) しかし,米国サンフランシスコ郡カリフォルニア州上位裁判所(以下「米国検認裁判所」という。)が1997年(平成9年)5月5日付けで発令した「誤記を訂正する命令および…最終遺産分配に関する命令に対する遡及的な修正」(甲46,52。以下「本件修正命令」という。)には,Cの遺産として,本件特許権を含む7件の米国特許権が記載されている(甲46,52に「US4,788,744」とあるのは,「US4,788,714」の誤記と認めるのが相当である。)。 。)には,Cの遺産として,本件特許権を含む7件の米国特許権が記載されている(甲46,52に「US4,788,744」とあるのは,「US4,788,714」の誤記と認めるのが相当である。)。 本件修正命令は,米国検認裁判所が,同年2月24日付けで,「弁護士の法定・特別料金の査定についての会計報告の放棄に基づく最終遺産分配に関する命令」(甲52。以下「本件分配命令」という。)を発令したのに対し,被告B代理人弁護士からの申立てに基づき発令されるに至ったものであるところ,被告Bは,フォンテル社の調査により,平成9年2月頃,本件特許権の持分がC名義であることが判明したため,訂正を申し立てた結果,本件修正命令が発令されたものであると主張し, これに沿う供述をする(被告B10頁)。しかし,他方,米国検認裁判所に提出された「最終財産目録及び評価額」(甲53)には,添付資料記載の財産がCの遺産に含まれる旨の記載と,1995年(平成7年)12月8日付けの被告Bの署名が存在し,添付資料2には,本件特許権(持分)が列挙されていることが認められる。したがって,被告Bは,遅くとも,我が国において相続財産目録を作成した後である平成7年12月8日には,本件特許権がCの遺産に含まれていることを認識するに至ったものというべきである。したがって,上記本件修正命令が発令されるに至った経緯は明らかではないものの,上記被告Bの主張及び供述を採用することはできない。 イ以上の経緯に基づき,被告Bによる違法行為の有無について検討する。 (ア) 原告は,被告Bが上記アのとおり本件特許権の記載のない相続財産目録を調製・交付したことや,被告Bが,原告による遺留分減殺請求後,本件特許権の存在が判明した時点で,速やかに本件特許権を記載した追加の相続財産目録公正証書 アのとおり本件特許権の記載のない相続財産目録を調製・交付したことや,被告Bが,原告による遺留分減殺請求後,本件特許権の存在が判明した時点で,速やかに本件特許権を記載した追加の相続財産目録公正証書を調製・交付しなかったことが,遺言執行者としての義務に反するものであり,原告に対する不法行為を構成すると主張しており,Cの相続人として,正確な内容の相続財産目録を受領する権利を侵害されたと主張するものと解されるから,行為地,被侵害利益のいずれの点においても,上記不法行為の主張に渉外的要素は含まれず,この点の判断に当たり,準拠法決定の必要は生じないものというべきである。これは,相続財産目録に記載するべきであったとされる財産(本件特許権)が米国特許権であること,原告が,被告Bの上記不法行為により,本件特許権に基づく実施許諾料を収受する権利の行使が妨げられた旨主張していることを考慮しても同様である。 (イ) そこで,これらの点に関する被告らの共同不法行為(民法719条)の成否について検討すると,遺言執行者は,その就職後,遅滞なく 相続財産目録を作成し,相続人に交付しなければならないものとされ(民法1011条1項),また,その任務の遂行に当たっては,善管注意義務(同法1012条2項,644条)を負担するものとされる。 前記ア(ア)のとおり,Cの考案に係る特許件数が多数に及ぶこと,これらの特許権中には,外国特許権が相当数含まれていたこと,被告Bは,平成5年12月27日に被告会社の取締役に就任し(甲4の3),平成7年3月28日には被告会社の代表取締役に就任しているものの(甲58),Cが死亡するまでの間,被告会社の経営に実質的に関与したことを認めるに足りる証拠はないことも考慮すれば,被告Bにおいて,前記ア(ア)のとおり,被告Bが被告会 表取締役に就任しているものの(甲58),Cが死亡するまでの間,被告会社の経営に実質的に関与したことを認めるに足りる証拠はないことも考慮すれば,被告Bにおいて,前記ア(ア)のとおり,被告Bが被告会社から提供を受け,相続財産目録調製を嘱託した公証人に対し提示した特許権のリストにおいて,本件特許権の共有持分がC個人に帰属する旨が記載されていなかったとしても,これを記載すべきものと認識することは困難であったと認められる。 確かに,上記ア(ウ)のとおり,上記仮処分事件における報告書(甲50)には,本件特許権がCに譲渡されたことが記載されているものの上記報告書(甲50)の作成経緯からみて,被告Bがこれを見たことが確実であったということはできず,また,これを見ていたとしても,上記報告書の記載内容等に照らすと,直ちに,本件特許権1,2,4及び5の共有持分がCの相続財産に当たると認識することは,やはり困難であったものというべきである。 そうすると,相続財産目録を作成した時点で,被告Bに,遺言執行者としての義務違反や本件特許権の存在を隠蔽する意図があったと認めることはできない。 (ウ) しかし,前記ア(エ)のとおり,被告Bは,相続財産目録作成後の,平成7年12月8日までの時点において,本件特許権がCの相続財産に含まれることを認識するに至ったのであるから,上記公正証書における 新たな相続財産目録作成予定の陳述に照らしても,本件特許権を記載した相続財産目録を新たに作成する義務があったというべきであり,その点において,被告Bに遺言執行者としての義務違反が認められるというべきである。 しかし,そのような遺言執行者としての一般的な義務違反があったとしても,そこから,原告の保護利益との関係で決定されるべき不法行為における義務違反が直ちに導 義務違反が認められるというべきである。 しかし,そのような遺言執行者としての一般的な義務違反があったとしても,そこから,原告の保護利益との関係で決定されるべき不法行為における義務違反が直ちに導かれるものではない。上記平成7年12月8日の時点においては,未だ原告による遺留分減殺請求はされておらず(前提事実(3)エのとおり,遺留分減殺請求が被告Bに到達したのは平成8年5月12日のことである。),それからほどなく遺留分減殺請求訴訟(甲5)が提起され(甲5によれば,訴え提起は平成8年7月22日,被告Bに送達されたのは同年9月4日である。),同訴訟において,原告は,平成9年10月1日付け準備書面により,本件特許権のCの共有持分について,4分の1の共有持分権があると追加主張したものであり,被告Bは,これに対し,本件特許権がCの相続財産であることを認めていたのである(甲5の22頁。同34頁で判決が本件特許権1について争いがあるとしているのは,原告が8分の1以上の持分を取得したといえるかの点に限定したものである。)。そうすると,本件特許権について,被告Bに相続財産であることを隠蔽しようとする意図があったとまでは認められず,不法行為における義務違反は認められないというべきである。 ウしたがって,この点に関し,被告らに不法行為が成立するものとは認められない。これに反する原告の主張は採用しない。 (3) ②Cが生前に締結した本件特許権の実施許諾契約に基づく実施許諾料の収受等に関する点ア前記前提事実(3)オのとおり,本件特許権に係るCの共有持分は,本件 相続の開始及び本件遺留分減殺請求により,原告及び被告Bに承継されたものであり,上記承継に伴い,Cの死亡前に締結された本件特許権の実施許諾契約上の地位も,その承継持 るCの共有持分は,本件 相続の開始及び本件遺留分減殺請求により,原告及び被告Bに承継されたものであり,上記承継に伴い,Cの死亡前に締結された本件特許権の実施許諾契約上の地位も,その承継持分に応じて,原告及び被告Bに承継されたものと認められる。 原告は,上記承継により,Cの死亡前に締結された本件特許権の実施許諾契約から生じる実施許諾料のうち,原告持分に相当する分は,本件特許権の法定果実として原告に帰属すべきものとなったと主張し,これにもかかわらず,被告Bが,本件特許権の実施許諾料全額を取得したことが,原告に対する不法行為に該当すると主張する。すなわち,原告は,本件特許権の実施許諾料は被告会社宛てに支払われていたものの,これは,Cの生前において,被告会社がCのために代理受領していたものにすぎず,Cは,代表取締役報酬名目で,上記代理受領に係る実施許諾料を取得していたものであるところ,被告Bは,Cの死後,上記実施許諾料を,Cと同様に,代表取締役報酬名目で取得したと主張するものである。 上記の原告の主張の趣旨を更に検討すると,原告は,本件特許権の実施許諾料を収受することのできる権限は被告会社ではなくCが有しており,その受領方法として,被告会社による代理受領及び代表取締役報酬名目でのCへの交付という方法を選択したにすぎないという前提の下に,上記実施許諾料収受権限のうち,本件原告持分に対応する部分は,本件遺留分減殺請求により,本件特許権の法定果実を得る権限として原告に帰属したにもかかわらず,被告Bは,上記実施許諾料全額を取得することで,原告の上記受領権限を侵害したと主張するものであると解されるところである。 原告の主張をこのように解する限り,当該不法行為の主張は,日本人及び日本法人間における,日本国内にお ることで,原告の上記受領権限を侵害したと主張するものであると解されるところである。 原告の主張をこのように解する限り,当該不法行為の主張は,日本人及び日本法人間における,日本国内における行為に関する請求であり,かつ,日本人であるCと日本国内企業との間で締結された本件特許権の実施許諾契約に基づく実施許諾料収受権限の侵害の成否という問題である以上,被 侵害法益の点においても渉外的要素は含まれず,この点の判断に当たり準拠法決定の必要は生じないものと解される。 イそこで,不法行為の成否について検討するに,証拠(各認定事実の末尾に摘示する。)及び弁論の全趣旨によれば,この点に関し,次の事実が認められる。 (ア) Cは,留守番電話装置に関連する多数の発明を行い,日本,米国,イギリス,ドイツ等の各国において,被告会社名義で特許権等登録出願を行った(甲5,23,弁論の全趣旨)。Cは,そのうち,本件特許権に係る発明を含むごく一部の発明につき,C名義又はG等との共有名義としたが,その余の多数の発明については,被告会社が特許登録名義人とされている(甲5,50,弁論の全趣旨)。 (イ) Cは,昭和52年9月1日,ソニー株式会社との間で,C及び被告会社の有する特許権等(出願中のものを含む。)に関する実施許諾契約を締結した(甲16の1)。 C,被告会社及びソニー株式会社は,同日付けで,被告会社が,上記契約に基づきCがソニー株式会社から受領する実施料を受領する権利をCから取得する旨の覚書を締結した(甲16の2)。 (ウ) Cは,朝日通商株式会社等との間で,昭和53年7月31日,技術契約書を締結したが,上記契約は,C及び被告会社の有する特許権等(出願中のものを含む。)の実施を許諾する趣旨を含むも (ウ) Cは,朝日通商株式会社等との間で,昭和53年7月31日,技術契約書を締結したが,上記契約は,C及び被告会社の有する特許権等(出願中のものを含む。)の実施を許諾する趣旨を含むものであった(甲37)。 C,被告会社及び株式会社朝日コーポレーション(上記朝日通商株式会社等が合併後,商号を変更したもの。甲38)は,平成3年12月10日,Cの発明又は考案の範囲に属する遠隔聴取機能についての留守番電話装置の特許等の権利は,Cから被告会社に移転していることを理由として,Cの株式会社朝日コーポレーションに対する技術指導料の権利, 義務は,Cから被告会社に承継されたものとすることを合意する旨の覚書を作成した(甲44)。 この合意は,税務署から,技術指導契約(甲37)の主体がCであることから,上記契約に基づき被告会社宛てに支払われている実施許諾料が,Cの所得として源泉徴収の対象となるのではないかとの問い合わせを受けたことから,C個人に対する課税を避けるために締結されたものであると認められるところ(甲41ないし43),上記経緯において,被告会社内で,単に実施許諾料の支払先を被告会社としたのみでは,上記実施許諾料がCの収入とみなされるおそれがあることから,実施許諾契約の主体を被告会社に切り替えた上で,被告会社からCへの支払は,別途契約を締結するか,又は代表取締役報酬を上げることによることが検討された形跡がうかがわれる(甲41ないし43)。 (エ) 上記(イ)及び(ウ)の契約以外にも,C及び被告会社と国内企業との間で締結された特許権等の実施許諾契約が存在するが,昭和39年に締結された契約(甲15の1・2)を除けば,いずれの契約においても,C及び被告会社は,特許権の名義がC名義であるか,又は被告会社名義 の間で締結された特許権等の実施許諾契約が存在するが,昭和39年に締結された契約(甲15の1・2)を除けば,いずれの契約においても,C及び被告会社は,特許権の名義がC名義であるか,又は被告会社名義であるかを区別することなく,一括して実施許諾を行い,実施許諾料についても,各特許権から生じる部分を区別することなく,まとめて算定することとされている(甲16の1・2,17の1・2,弁論の全趣旨)。このほか,被告会社及びCは,平成4年4月1日,九州松下との間で,特許権等実施許諾契約を締結しているところ(甲22の1),上記契約に基づき実施許諾を受ける特許権を指定するため,九州松下から同年9月17日付けで送付された文書(甲22の2)には,多数の他の特許権とともに本件特許権が挙げられているが,その権利者に関する記載はなく,かえって,これらの特許権についても,「橋本コーポレイション出願特許」との表示がされていることが認められる(甲22の1・ 2)。また,平成4年6月頃,サムスン電子株式会社宛ての特許権侵害警告状の案文として作成されたとするファクシミリ文書(甲47)には,同社による侵害が疑われる関係特許として,本件特許権1ないし3を含む合計6件の各国特許権が列挙され,いずれも「当方所有の関係特許」と記載されていることが認められる。これらに加えて,本件特許権に係る実施許諾料も,その他の特許権に係る実施許諾料と併せて,被告会社が受領していたとされること(ただし,後述のとおり,当該受領の法的性質については争いがある。)も考慮すれば,C及び被告会社において,出願人,権利者又は共有持分権者がC個人であるか,又は被告会社であるか,更には他に共有特許権者が存在するか否かを明確に区別せず,これらの特許権を一括して被告会社が管理し,被告会社宛てに支払うもの 出願人,権利者又は共有持分権者がC個人であるか,又は被告会社であるか,更には他に共有特許権者が存在するか否かを明確に区別せず,これらの特許権を一括して被告会社が管理し,被告会社宛てに支払うものとされていたことがうかがわれる。 ウ(ア) 上記認定事実に照らして検討すると,上記イ(イ)及び(ウ)でみた被告会社に実施許諾料を帰属させる旨の合意は,当該企業を含めた三者間(C,被告会社,当該企業)でなされているものである上,契約上の権利義務自体を,Cから被告会社に移転させる趣旨の文言を含むものであるから,上記合意は,単に,実施許諾料の支払方法を定めたものではなく,実施許諾料の帰属主体を,法的に被告会社に移転・帰属させる趣旨でなされたものであると解される。 そうすると,その他の実施許諾契約において,実施許諾料を被告会社宛てに支払うものとしたことも,同一の趣旨によるものであると認められるのであって(弁論の全趣旨),これらの契約についても,その法的効果としてCや被告会社が意図したところは,上記イ(イ)や(ウ)でみた合意によるものと同一のものであったと推認するのが相当である。 以上のとおり,上記イ(イ)及び(ウ)以外の実施許諾契約についても,C,被告会社及び当該実施許諾契約の相手方企業との間において,C名 義の特許権から生じる分も含めた実施許諾料全体につき,その帰属主体を法的に被告会社とする旨の合意があり,実施許諾料が被告会社宛てに支払われていたのは,上記合意に基づくものであったと解するのが相当である。 (イ) 他方,上記イ(ウ)でみたところに照らせば,Cは,C個人への課税を避けるための方法として,実施許諾料の帰属主体を被告会社とする旨の上記合意をしたものと認められるのであって,Cが他の取締役と比較して高額の取締役報酬を受け たところに照らせば,Cは,C個人への課税を避けるための方法として,実施許諾料の帰属主体を被告会社とする旨の上記合意をしたものと認められるのであって,Cが他の取締役と比較して高額の取締役報酬を受け取っていたことが認められること(甲35)も考慮すれば,被告会社とCとの間で,本件特許権について被告会社が収受した実施許諾料から経費等を控除した相当額(以下「本件特許権の実施許諾料相当額」という。)をCに分配する旨の合意があり,Cは,上記分配の方法として,取締役報酬の引き上げの方法を採っていたものとみるのが相当である。 (ウ) 上記(ア)及び(イ)の各合意のうち,実施料の帰属主体についての合意は,第三者である企業との法的関係でもあるため,Cの死亡によっても変動しないものと解される。また,Cと被告会社との間における,本件特許権の実施許諾料相当額の分配合意は,本件相続の開始及び本件遺留分減殺請求により,原告及び被告Bと被告会社との間に承継されたものと認められ,原告及び被告Bは,原告につき4分の1,被告Bにつき4分の3の割合で,被告会社から上記金員の分配を受ける地位を承継したと認められる。 この点に関し,被告らは,取締役報酬を受けるべき地位は一身専属的なものであり,Cの死亡により終了するべきものであるから,原告が上記地位を承継することはないと主張する。しかし,前記のとおり,Cは,被告会社との間で,本件特許権の実施許諾料相当額の分配を受ける合意をしていたものと認められるのであって,取締役報酬の引上げは,上記 分配の方法として採用されたものにすぎないというべきであるから,取締役報酬を受けるべき地位がCの死亡により消滅したとしても,本件特許権の実施許諾料相当額の分配を受けることのできる地位までもが消滅するものではない。 以 れたものにすぎないというべきであるから,取締役報酬を受けるべき地位がCの死亡により消滅したとしても,本件特許権の実施許諾料相当額の分配を受けることのできる地位までもが消滅するものではない。 以上によれば,本件相続の開始及び本件遺留分減殺請求により,被告会社には,原告及び被告Bとの関係で,本件特許権の実施許諾料相当額を支払う義務が生じたものと解される。 エそうすると,被告会社は,原告に対し,本件特許権の実施許諾料相当額のうち,本件原告持分に対応する分を支払うべきであったものというべきである。 (ア) もっとも,遺留分減殺請求地裁判決(甲5)によれば,Cの前記前提事実(3)ウの公正証書遺言に,原告にも一部の不動産を相続させる旨の内容が含まれており,Cの遺産の範囲やその評価額についても争いがあったことがうかがわれるのであるから,遺留分減殺請求高裁判決が確定するまでの間において,被告会社が,本件原告持分の有無や,その具体的割合を知ることは困難であったものと認められ,被告会社が原告に上記実施料相当額を支払わなかったことが,直ちに原告に対する不法行為を構成するものとは認められない。 (イ) しかし,証拠(甲8,9)によれば,原告は,遺留分減殺請求高裁判決確定後である平成21年7月1日付けで,被告会社に対し,本件原告持分に応じた実施料相当額の支払を求めたが,被告会社は,同月7日付け書面によって,これを拒絶したことが認められる。 上記時点において,被告会社は,遺留分減殺請求高裁判決の確定により,本件原告持分の存在及びその割合(前記前提事実(3)オ(ア)ないし(オ))を認識していたものと認められるのであって,被告会社は,上記時点において,本件原告持分に応じた実施許諾料相当額を精算すべき義 務を負っていたものというべきである。これに (ア)ないし(オ))を認識していたものと認められるのであって,被告会社は,上記時点において,本件原告持分に応じた実施許諾料相当額を精算すべき義 務を負っていたものというべきである。これにもかかわらず,被告会社は,原告の上記支払請求を拒絶したものであるところ,原告が遺留分減殺請求事件において本件特許権の持分確認請求をしたのは,本件特許権から生じる実施料相当額の利益を得るためであったことがうかがわれるのであって(甲8,弁論の全趣旨),原告は,提訴から約12年という長期間の審理を経て,本件原告持分を有することにつき確定判決を得たにもかかわらず(甲5ないし7),上記のとおり支払を拒絶されたものということができる。加えて,被告会社に,上記拒絶につき正当な理由を見出し難いことも考慮すると,上記支払拒絶は,単なる債務不履行にとどまらず,原告の上記精算を受ける権利を少なくとも過失により侵害したものとして,原告に対する不法行為を構成するものと認めるのが相当である。 原告は,被告会社の不法行為を被告Bの不法行為を教唆・幇助した行為として請求しているが,その主張する事実関係は上記と同一であり,かつ被告Bとの共同不法行為として主張するものであるから,上記のとおり,被告会社の不法行為を認定するに妨げないものである。 (ウ) 他方,被告Bについては,原告による遺留分減殺請求によって,本件特許権について原告との共有持分権者となった者であるにすぎず,被告会社が受領した本件特許権の実施料の処理について,原告に対して義務を負うものではないから,被告Bにこの点についての違法行為を認めることはできない。 オ(ア) そこで,被告会社の上記不法行為に関し,原告の損害額(争点(1)イ)について検討するに,本件特許権は他の多数の にこの点についての違法行為を認めることはできない。 オ(ア) そこで,被告会社の上記不法行為に関し,原告の損害額(争点(1)イ)について検討するに,本件特許権は他の多数の特許権とともに実施許諾され,その固有の実施許諾料を算定することは困難であること,そして前記のとおり,Cの生前においては,本件特許権の実施料はCの取締役報酬の一部として算定されていたことに照らせば,Cが生前に受領 していた取締役報酬の額を参照してこれを算定するのが相当である。 甲35号証によれば,Cは,平成7年1月分として450万円の取締役報酬を得ていたことが認められる。そして,他の取締役の報酬の最高額が約83万円であることと比較すれば,Cが代表取締役としての職務を負担することを考慮しても,特許実施許諾料相当分として受領していた額は月額300万円と認めるのが相当である。 しかし上記額は多数の特許の実施許諾料に対応するものであるから,そこから本件特許権の寄与した割合を考慮する必要があるが,甲25号証ないし30号証,32号証ないし34号証によれば,本件特許権が米国企業を相手とする訴訟において相当程度の役割を果たしていたことが認められる。このような事情を考慮すれば,本件特許権の寄与した割合は20%を下らないものと認めるのが相当である。 そうすると,本件特許権の実施許諾料相当額として相続人である原告及び被告Bが受け取るべき額は月額60万円ということになるが,原告の持分割合は4分の1であるから,原告が受け取るべき額は月額15万円である。なお,本件特許権1ないし5が実施許諾料に占める割合は均等であるとみるのが相当である。 本件特許権の登録日及び存続期間満了日は,別紙特許権目録記載のとお べき額は月額15万円である。なお,本件特許権1ないし5が実施許諾料に占める割合は均等であるとみるのが相当である。 本件特許権の登録日及び存続期間満了日は,別紙特許権目録記載のとおりであるが,原告が減殺請求権を行使した平成8年5月12日には本件特許権はいずれも登録されている。したがって,上記減殺請求の日から本件特許権1ないし5の各存続期間満了日までに原告が受け取るべき実施許諾料相当額は,それぞれ次のとおりとなり,その合計額は1731万円となる(許諾期間が15日を超える月は1月分として計算し,15日未満の月については算定しないこととした。)。 a 本件特許権1 平成8年5月~平成16年8月300万円(3万円×100か月) b 本件特許権2 平成8年5月~平成17年2月318万円(3万円×106か月)c 本件特許権3 平成8年5月~平成19年7月405万円(3万円×135か月)d 本件特許権4 平成8年5月~平成18年3月357万円(3万円×119か月)e 本件特許権5 平成8年5月~平成18年1月351万円(3万円×117か月)(イ) したがって,被告会社が②の不法行為に基づく損害賠償請求として認められる額は1731万円であり,その遅延損害金の起算日は,不法行為日(被告会社がその支払を拒絶する書面を作成した日)である平成21年7月7日とするのが相当である。 カ被告らは,原告の損害賠償請求権は時効により消滅している旨主張する(争点(1)ウ)。しかし,上記損害賠償請求は,被告会社の平成21年7月7日付け書面による支払拒絶が不法行為に当たることを理由と カ被告らは,原告の損害賠償請求権は時効により消滅している旨主張する(争点(1)ウ)。しかし,上記損害賠償請求は,被告会社の平成21年7月7日付け書面による支払拒絶が不法行為に当たることを理由とするものであるところ,原告は,平成23年7月16日に本件訴訟を提起したものであり(当裁判所に顕著),消滅時効が完成しているものとは認められない。 (4) ③本件遺留分減殺請求以後における本件特許権の新たな実施許諾契約の締結と,その実施許諾料の収受に関する点ア原告は,被告Bが本件特許権の共有持分権者である原告の同意を得ることなく,本件特許権の実施を許諾したことが,原告の本件特許権の共有持分権及び同権利の法定果実としての実施許諾料取得権を侵害するものであると主張しており,上記の点を理由とする損害賠償請求は,日本人及び日本法人間における,日本国内における行為に関する請求ではあるが,米国特許権の共有持分権に由来する権利の侵害を主張するものであるという点 において,渉外的要素を含む法律関係であり,準拠法を決定する必要がある。そして,原告の本件請求の性質は不法行為であり,その準拠法については,通則法附則3条4項により,平成19年1月1日前に加害行為の結果が発生した不法行為によって生ずる債権の成立及び効力については法例11条に,同日以後に上記結果が発生した不法行為によって生ずる債権の成立及び効力については通則法17条によるべきである(なお,原告の主張する不法行為の終期は明確ではないが,本件特許権のうち,存続期間満了日の最も遅いものが平成19年8月6日であることを考慮すれば,不法行為の終期は,遅くとも同日であると解されるから,平成19年1月1日から同年8月6日までの行為については,通則法が適用される。)。 そして,法例11条によれ 月6日であることを考慮すれば,不法行為の終期は,遅くとも同日であると解されるから,平成19年1月1日から同年8月6日までの行為については,通則法が適用される。)。 そして,法例11条によれば,不法行為によって生じる債権の成立及び効力はその原因たる事実の発生した地の法律によるものとされ,通則法17条によれば,不法行為によって生じた債権の成立及び効力は原則として加害行為の結果が発生した地の法律により,例外的にその地における結果の発生が通常予見することのできないものであったときは,加害行為地の法によるものとされている。 イそこで検討すると,各国の特許権が,その成立,移転,効力等につき当該国の法律によって定められ,特許権の効力が当該国の領域内においてのみ認められること(属地主義の原則),本件において,被侵害法益として主張されている権利が,米国において登録された特許権に由来する権利であることを考慮すれば,本件において,侵害行為による法益侵害の結果が発生すべき地は,登録国である米国であるというべきであり,法例11条1項「原因タル事実ノ発生シタル地」及び通則法17条にいう「加害行為の結果が発生した地」は,いずれも米国であると解される。 したがって,本件請求の準拠法は米国法であると解されるから,被告らに対し,日本国民法上の不法行為責任に基づく損害賠償を請求する原告の 主張は理由がない。 ウ念のため,米国法を準拠法とする請求として検討してみたとしても,原告の請求には理由がない。 (ア) 原告は,共有特許権の一方の共有者が,他の共有者の同意を得ることなく,本件特許権の実施を許諾した場合における,他の共有者の権利侵害の成否を問題とするものであるところ,国際私法上,一定の権利の侵害が不法行為となるか否かが問題となる場合 他の共有者の同意を得ることなく,本件特許権の実施を許諾した場合における,他の共有者の権利侵害の成否を問題とするものであるところ,国際私法上,一定の権利の侵害が不法行為となるか否かが問題となる場合,そのような権利の存否自体は,前提問題として,不法行為の準拠法ではなく,権利自体の準拠法によって判断されるべきものと解されているところである。 原告の権利の存否を明らかにするためには,共有特許権の実施許諾に当たり,他の共有者の同意を得る必要があるか否か(他の共有者に,一方共有者における実施許諾に関する同意権が存在するか否か)という共有特許権の効力の問題を明らかにする必要があると解されるところ,特許権の効力の準拠法については,法例等において直接の定めがないから,条理に基づいて,当該特許権と最も密接な関係がある当該特許権が登録された国の法律によると解するのが相当である。 したがって,本件において,本件特許権の効力,ひいては原告の権利侵害の存否を判断するについては,その登録国である米国法が準拠法となり,米国特許法に基づき判断すべきこととなる。 (イ) 米国特許法262条は,別異の合意がない限り,各共有特許権者は,他の共有特許権者の同意を得ることなく当該特許発明の実施(米国内における製造,販売及び販売の申し出並びに米国内への輸入)をすることができる旨を定めているところ,上記定めに係る各共有特許権者の権利には,他の共有特許権者の同意を得ることなく,第三者に実施権を付与することができる権利が包含されるものと解され,上記解釈の帰結として,上記実施許諾による対価を他の共有特許権者に分配すべき義務もな いものと解される(乙1ないし4)。 そうすると,米国特許法上,共有特許権者が当該特許権を第三者に実施許諾するに当たり,他の共有特許権者に による対価を他の共有特許権者に分配すべき義務もな いものと解される(乙1ないし4)。 そうすると,米国特許法上,共有特許権者が当該特許権を第三者に実施許諾するに当たり,他の共有特許権者に,同意権や対価分配請求権が認められないのであるから,原告には,不法行為の被侵害法益たる権利が存在しないこととなる。 (ウ) したがって,仮に,Cの死亡後において,被告Bが,原告の同意を得ることなく,本件特許権を第三者に実施許諾した事実が存在するとしても,この点に関し,被告らに損害賠償義務を認める余地はなく,この点に関する原告の請求は理由がないものというべきである。 (5) 以上のとおりであって,原告の被告らに対する不法行為を理由とする請求は,被告会社に対し,1731万円及びこれに対する平成21年7月7日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があり,その余の請求は理由がない。 2 争点(2)(被告Bに対する不当利得返還請求の成否)について(1)ア原告は,被告Bは,①Cが生前に締結した本件特許権の実施許諾契約に基づく実施許諾料及び②Cの死亡後に新たに締結された本件特許権の実施許諾契約に基づく実施許諾料の各全額を収受しているところ,そのうち,本件原告持分に対応する金額が,被告Bの不当利得に該当すると主張する。 イそこで検討するに,不当利得の成否の検討に当たり,利得を生じた基本関係又は原因関係の成立・効力の問題は,不当利得の成立・効力の問題とは別異に考えるべきであり,基本関係又は原因関係たる法律行為等に基づく財産権の移転等により生じた利得について,法律上の原因がなかった場合に,初めて不当利得に関する準拠法が適用され,その成否を検討するべきものと解される。 そこで,不当利得の準拠法及び同準拠法 産権の移転等により生じた利得について,法律上の原因がなかった場合に,初めて不当利得に関する準拠法が適用され,その成否を検討するべきものと解される。 そこで,不当利得の準拠法及び同準拠法に基づく不当利得の成否・効力の検討の前に,まず,上記ア①及び②につき,利得の存否及び法律上の原 因の有無を検討する。 (2) ①Cが生前に締結した本件特許権の実施許諾契約に基づく実施許諾料の点についてア Cが生前に締結した本件特許権の実施許諾契約については,C,被告会社及び当該実施許諾契約の相手方企業との間において,本件特許権から生じる分も含めた実施許諾料全体につき,受領権限を法的に被告会社に帰属させる旨の合意があり,被告会社が,上記受領権限に基づき,実施許諾料を収受していたものと認められることは,争点(1)アに関する当裁判所の判断(前記第4の1(3))のとおりである。 そうすると,上記実施許諾契約に基づく実施許諾料が,被告会社が自己の収入として収受したものである以上,被告Bが,上記実施許諾料を利得した事実は認められない。 イこの点,原告は,被告Bが代表取締役報酬名目で受領した金員が同被告の利得に当たると主張する。しかし,本件において,被告Bが本件特許権の実施許諾料を代表取締役報酬名目で収受していると認めるに足りる証拠はなく,仮に,被告Bの代表取締役報酬に,実質的にみて,本件特許権の許諾料相当分が含まれているとしても,その額が被告Bの相続分に相応する額を超えるものであることを認めるに足りる証拠もない。 ウしたがって,上記①の点については,不当利得の準拠法及び同準拠法に基づく不当利得の成否・効力を検討するまでもなく理由がない。 (3) ②Cの死亡後に新たに締結された本件特許権 。 ウしたがって,上記①の点については,不当利得の準拠法及び同準拠法に基づく不当利得の成否・効力を検討するまでもなく理由がない。 (3) ②Cの死亡後に新たに締結された本件特許権の実施許諾契約に基づく実施許諾料についてア Cの死亡後に新たに本件特許権の実施許諾契約が締結されたことを認めるに足りる証拠はなく,被告Bが同契約に基づき実施許諾料を収受したことを認めるに足りる証拠もない。もっとも,原告は,Cの生前の契約の更新等も新たな契約として主張しているものと解されるから,仮に, これが新たな契約とされ,被告Bが上記契約に基づく実施許諾料を収受していた場合について,以下検討する。 イ特許権の実施許諾契約に基づき収受した実施許諾料が法律上の原因のないものに当たるか否かは,実施許諾契約の効力の問題であるが,本件において,原告は,被告Bが,他の共有者である原告の同意を得ずに本件特許権を実施許諾し,実施許諾料全額を受領したことにより,上記実施許諾料のうち,本件原告持分に対応する金額が法律上の原因のないものとなる旨主張するものであると解され,共有特許権の実施許諾における他の共有者の同意の要否は,上記実施許諾契約の効力を検討する前提問題であって,同契約の効力に関する準拠法とは別にその準拠法を検討するべきものと解される。 ウそこで,この点の準拠法について検討すると,共有特許権の実施許諾における他の共有者の同意の要否は,特許権の効力の問題であるから,前記第4の1(4)ウ(ア)及び(イ)でみたとおり,その準拠法は本件特許権の登録国法である米国特許法となると解される。 米国特許法上,共有特許権者が当該特許権を第三者に実施許諾するに当たり,他の共有特許権者に,同意権や対価分配請求権が認められないことは,前 本件特許権の登録国法である米国特許法となると解される。 米国特許法上,共有特許権者が当該特許権を第三者に実施許諾するに当たり,他の共有特許権者に,同意権や対価分配請求権が認められないことは,前記第4の1(4)ウでみたとおりであるから,被告Bが,他の共有者である原告の同意を得ず本件特許権を実施許諾したものであるとしても,上記実施許諾契約に瑕疵は存在せず,同契約に基づき受領した実施許諾料が法律上の原因のないものとなるとは認められない。 エ原告は,被告Bが,本件原告持分及び本件被告B持分を併せて実施許諾したものとみた上で,原告持分に対応する実施許諾料は原告の収受すべきものであると主張する趣旨であるとも解される。しかし,そもそも上記実施許諾契約の存在及び内容について認めるに足りる立証がない上,前記第4の1(4)ウ(イ)のとおり,米国特許法上,共有特許権者は,そ の持分割合にかかわらず,当該特許権の実施を許諾することができるものとされ,他の共有特許権者に対価分配請求権は認められていないのであるから,仮に,Cの死亡後に新たに締結された実施許諾契約が存在するとしても,上記契約に基づき被告Bが収受する実施許諾料が,法律上の原因のないものとなる理由を見いだせない。 オしたがって,上記②の点についても,不当利得の準拠法及び同準拠法に基づく不当利得の成否・効力を検討するまでもなく理由がない。 第5 結論したがって,原告の被告らに対する請求は,被告会社に対し,1731万円及びこれに対する平成21年7月7日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるからその限度でこれを認容し,被告会社に対するその余の請求及び被告Bに対する請求は理由がないから棄却する。 東京地方裁判所民事第29部 年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるからその限度でこれを認容し,被告会社に対するその余の請求及び被告Bに対する請求は理由がないから棄却する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官大須賀滋 裁判官西村康夫 裁判官森川さつき (別紙) 内金額起算日337万4799円平成8年1月1日841万2499円平成9年1月1日830万7499円平成10年1月1日663万7501円平成11年1月1日841万2499円平成12年1月1日749万9999円平成13年1月1日749万9999円平成14年1月1日749万9999円平成15年1月1日749万9999円平成16年1月1日678万5713円平成17年1月1日535万7142円平成18年1月1日89万2857円平成19年1月1日
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