主文 1 被告は,原告Aに対し,金2958万9135円及びこれに対する平成13年8月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告Bに対し,金2958万9135円及びこれに対する平成13年8月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は,これを3分し,その2を原告らの負担とし,その余を被告の負担とする。 5 この判決は,第1,第2項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,原告A(以下「原告A」という。)に対し,金8537万9644円及びこれに対する平成13年8月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告B(以下「原告B」という。)に対し,金8537万9644円及びこれに対する平成13年8月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告両名の子らが自動車で被告の管理する橋を通行中に同橋から河川に転落して死亡した事故(以下「本件事故」という。)について,原告らが,同橋の管理に瑕疵があったとして,被告に対し,国家賠償法2条1項に基づき損害賠償を求める事案である。 1 前提事実(争いのない事実及び証拠により容易に認められる事実)(1) 原告らは,本件事故により死亡したC(昭和51年6月4日生,以下「C」という。)及びD(昭和53年12月2日生,以下「D」という。)の両親であり,C及びDの権利,義務をそれぞれ2分の1の割合で相続した。 (2) 被告は,本件事故現場となった徳島市a町b所在の勝浦川に架かるa橋(以下「本件橋」という。)を管理しているものである。本件橋は C及びDの権利,義務をそれぞれ2分の1の割合で相続した。 (2) 被告は,本件事故現場となった徳島市a町b所在の勝浦川に架かるa橋(以下「本件橋」という。)を管理しているものである。本件橋は,河川の増水時に水流にできるだけ逆らずに橋面が水面下に没するように構築された,いわゆる潜水橋(潜り橋)であり,水没時に水流の妨げとなる欄干(高欄)等の転落防止設備は設けられていなかった。 (3) 平成13年8月22日,Cは,阿南市内の自宅から,Dの同乗する普通乗用自動車(以下「被害車両」という。)を運転して徳島市内の勤務先に向かう途中,同日午前8時ころ,被害車両が本件橋を通過しようとした際に,別紙交通事故現場見取図のとおり,本件橋から勝浦川に転落し,その結果,乗車していた上記両名がおりから台風の影響で増水していた勝浦川の激流に流されて水死する事故(本件事故)が発生した。(甲3,甲11) 2 争点本件の争点は,①本件橋の管理の瑕疵,②本件事故と本件橋の管理の瑕疵との因果関係,③損害額である。 (1) 争点①(本件橋の管理の瑕疵)(原告らの主張)欄干等の転落防止設備の設けられていない潜水橋は,通行車両が橋から転落する危険を伴うため,転落防止措置を講ずべきことが以前から指摘されていた。特に,徳島県(以下「県」という。)においては,これまで通行車両が潜水橋から転落する事故が多発していたため,利用者や専門家などから潜水橋に効果的な転落防止措置を講じることが急務と叫ばれるようになった。かかる状況で,本件橋のほか多数の潜水橋を管理していた被告は,県から,潜水橋の転落防止措置として橋の両側に高さ30センチメートルの地覆(縁石)を設置するよう指導を受けていた。しかるに,被告は,本件事故発生以前に本件橋においても車両転落事故が3回も発 た被告は,県から,潜水橋の転落防止措置として橋の両側に高さ30センチメートルの地覆(縁石)を設置するよう指導を受けていた。しかるに,被告は,本件事故発生以前に本件橋においても車両転落事故が3回も発生していたにもかかわらず,本件橋に上記のような簡易な設備すら設置せず,転落防止措置を怠っていたものであって,本件橋の管理に瑕疵があったというべきである。 本件事故当時,本件橋の路上には泥土が堆積して非常に滑りやすい状況であった上,台風の影響により勝浦川の水位が橋桁下約1メートルまで上昇していたため,本件橋を通行するのは非常に危険な状態にあった。したがって,本件橋を管理している被告としては,本件事故当時,適切な通行禁止措置を講じるべきであった。しかるに,被告は,本件橋の付近に通行禁止の看板を立てていたものの,同看板は,簡易に移動できるものであったため,本件事故当時,第三者によって現場から撤去されていた。かかる事情によれば,被告において,十分な通行禁止の措置を講じていたとはいえないのであって,この点においても本件橋の管理に瑕疵があったというべきである。 (被告の主張)そもそも,潜水橋においては,水没時の水流の障害となる転落防止用設備を設置することができないとされている。本件橋は,かかる潜水橋としての構造を有するものとして,長年にわたりその用法に従って利用者の通行の用に供されていたものであるから,被告が本件橋に転落防止用の設備を設置していなかったことをもって,本件橋の管理に瑕疵があったとはいえない。 本件事故発生当時,本件橋は,台風通過後,相当時間が経過していたため,勝浦川の水位が橋桁より低くなり,冠水状態ではなかった上,平常どおり問題なく多数の車両が通行したのであって,通行を禁止しなければならない状況にあったわけではない。したがって,被告 経過していたため,勝浦川の水位が橋桁より低くなり,冠水状態ではなかった上,平常どおり問題なく多数の車両が通行したのであって,通行を禁止しなければならない状況にあったわけではない。したがって,被告において本件橋の通行を禁止しなかったことに管理の瑕疵があったとはいえない。 (2) 争点②(本件事故と本件橋の管理の瑕疵との因果関係)(原告らの主張)被害車両は,本件橋を通行中,上記のとおり路上に堆積していた泥土によりスリップを起こして本件橋から転落したものである。かかる事故態様に照らせば,本件事故は,被告において十分予期し得たものであって,上記転落防止措置を講じていれば,その発生を防止することができたというべきである。したがって,本件事故は,本件橋の管理の瑕疵によって生じたものであることは明らかである。 (被告の主張)被害車両は,別紙交通事故現場見取図のとおり,本件橋の手前で左折して同橋に進入した後,そのまま左に弧を描くようにして橋の左(西)端から転落したものである。かかる事故態様に照らすと,本件事故は,原告らが主張するようなスリップが原因で発生したものとは考えられず,左折完了後もそまま左旋回させるという異常な運転によって生じたものであって,このような事故は,通常予期することのできないものであった。したがって,本件事故は,本件橋の通常の用法に即しない被害者の異常な行動に起因して生じた自招事故にすぎないのであって,本件橋の管理の瑕疵によって生じたものではない。 (3) 争点③(損害額)(原告らの主張)ア Cは,本件事故により,次のとおり合計8534万8710円の損害を被った。 (ア) 逸失利益 6004万2960円689万2300円(大卒男子全年齢平均賃金)×(1-0.5(生活費控除率))×17.423 とおり合計8534万8710円の損害を被った。 (ア) 逸失利益 6004万2960円689万2300円(大卒男子全年齢平均賃金)×(1-0.5(生活費控除率))×17.4232(就労可能年数42年間に相当するライプニッツ係数)=6004万2960円(イ) 慰謝料 2400万円(ウ) 葬儀費 124万8500円(エ) 車両引揚げ代 5万7250円イ Dは,本件事故により,次のとおり合計6783万0578円の損害を被った。 (ア) 逸失利益 4252万4828円3417万7900円(女子労働者学歴計全年齢平均賃金)×(1-0.3(生活費控除率))×17.7740(就労可能年数45年に相当するライプニッツ係数)=4252万4828円(イ) 慰謝料 2400万円(ウ) 葬儀費 124万8500円(エ) 車両引揚げ代 5万7250円ウ 原告らの損害額各7658万9644円原告らは,相続によりC及びDの上記損害賠償請求権をそれぞれ2分の1の割合で取得したことになるから,原告ら各自の損害額は,それぞれ7658万9644円となる。 エ 弁護士費用各879万円オ よって,原告らは,被告に対し,国家賠償法2条1項に基づく損害賠償請求として,それぞれ損害金8537万9644円及びこれらに対する本件事故発生日である平成13年8月22日から支払済まで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (被告の主張)ア損益相殺原告らは,Dに対する自賠責保険の給付として2193万6750円の支払を受けたから,同額をDの損害額から控除すべきである。 原告らは,国家公務 (被告の主張)ア損益相殺原告らは,Dに対する自賠責保険の給付として2193万6750円の支払を受けたから,同額をDの損害額から控除すべきである。 原告らは,国家公務員災害補償法に基づく保険給付として,Cを被災者とする遺族補償一時金合計808万3000円及び葬祭料55万7490円並びにDを被災者とする遺族補償一時金合計467万9000円及び葬祭料45万5370円の支払を受けたから,同額をそれぞれの損害額から控除すべきである。 イ加害者と被害者の相続による混同原告らは,本件事故において加害者であるCと被害者であるDの双方を相続したから,Dに対する損害賠償債務は,混同により消滅した。 第3 当裁判所の判断 1 前記第2の1の前提事実に加え,証拠(証拠番号は各項末尾に掲記する。)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (1) 本件橋は,徳島市a町b所在の勝浦川に架けられた全長約78メートル,幅約6メートル,高さ約4メートルのコンクリート製の橋であり,勝浦川の増水時には水面下に水没する構造となっている潜水橋である。本件事故当時,本件橋上のアスファルト舗装の道路は,別紙現況平面図のとおり,自転車歩行者道(幅2.4メートル)と車道(幅4メートル)に区分され,車道の路面には自動車走行帯が表示されていた。また,本件橋の両側には,標識ポールが一定の間隔で設けられていたほか,高さ3ないし4センチメートル程度の地覆(縁石)が設けられていたが,欄干(高欄)やガードレール等の転落防止設備は設けられていなかった。 (甲2,甲3,甲5)(2) ところで,県内には,本件橋と同様の潜水橋が66カ所あり,このうち県の管理する潜水橋が12か所,市町村の管理する潜水橋が54か所あるところ,潜水橋は,そのほとん 。 (甲2,甲3,甲5)(2) ところで,県内には,本件橋と同様の潜水橋が66カ所あり,このうち県の管理する潜水橋が12か所,市町村の管理する潜水橋が54か所あるところ,潜水橋は,そのほとんどが未だ自動車が普及していなかった昭和20年代から昭和40年代にかけて,建設工費のかかる永久橋ができるまでの一策として設置され,地域住民の生活道として利用されてきたものである。そして,通常の橋梁(永久橋)に設置されている欄干(高欄)等の転落防止設備を潜水橋に設置すると,水没時の水流の障害となり水位の上昇を招くおそれがあるため,河川管理上,潜水橋には,これらの転落防止設備は設置されていない上,そのほとんどは幅員が3ないし4メートル程しかなく,設置当初は車両の通行は想定されていなかったものである。しかし,自動車の普及による潜水橋の車両通行量の増加に伴い,通行車が潜水橋から転落する事故がしばしば発生するようになった。特に平成8年には県内の潜水橋において車両の転落による死亡事故が多発したため,地域住民や専門家の間で潜水橋の転落防止対策が急務と叫ばれるようになった(甲4,甲8の3の4)(3) そのため,県は,平成8年ころより,県管理の潜水橋の安全対策として,走行帯表示,減速表示等の路面表示や交通標識の設置を進めるとともに,橋の両端にある地覆(縁石)の高さを25センチメートルに嵩上げする工事を順次実施し(なお,高さ25センチメートルの地覆(縁石)により時速30キロメートルで走行する乗用車を誘導角(橋端に対する車両の進入角度)20度程度まで誘導できるとされている。),平成10年までに,県管理の12か所の潜水橋のうち11か所で上記地覆(縁石)嵩上げ工事を完成させた結果,それ以降,県管理の潜水橋では転落死亡事故はほとんど発生しなくなった。(甲4,甲8の3の る。),平成10年までに,県管理の12か所の潜水橋のうち11か所で上記地覆(縁石)嵩上げ工事を完成させた結果,それ以降,県管理の潜水橋では転落死亡事故はほとんど発生しなくなった。(甲4,甲8の3の1,3,)(4) 他方,約17か所の潜水橋を管理していた被告は,平成8年10月ころ県から潜水橋における上記安全対策(路面表示や交通標識の設置,地覆(縁石)嵩上げ工事)に関する資料の送付を受けるとともに,被告管理の潜水橋においても安全確保に配慮するよう要請する旨の通知を受け,さらに,平成10年1月ころにも県から同様の通知を受けた。被告は,平成8年に県から上記通知を受けた後,被告管理の潜水橋の安全対策に取り組み,平成9年ころにはほとんど全ての潜水橋に注意喚起のための道路標識を設置したものの,地覆(縁石)嵩上げ工事については,その実施が遅れ,本件事故当時,本件橋をはじめ多くの潜水橋において未だ同工事を実施していなかった。(甲4,甲8の2,甲8の3の1ないし3)(5) 被告の管理する本件橋は,比較的通行量が多く,朝の通勤時間帯には多数の車両がたえまなく本件橋を通行していたが,前記のとおり,本件事故に至るまで地覆(縁石)嵩上げ工事が実施されておらず,既存の地覆(縁石)の高さは約3ないし4センチメートルしかなかっため,平成9年から12年までの間に車両転落事故が3回も発生しており,被告管理の潜水橋の中でも転落事故の多い橋であった。(甲4,乙1,乙4)(6) 被告は,本件事故の前日の平成13年8月21日,台風の接近により本件橋が冠水する危険があったため,被告職員において,同日午後3時25分ころから本件橋への進入路となる道路(3か所)上に鉄パイプ製のバリケードを設置して,全面通行禁止の措置を講じた。その後,勝浦川は,台風の影響により増水したとこ め,被告職員において,同日午後3時25分ころから本件橋への進入路となる道路(3か所)上に鉄パイプ製のバリケードを設置して,全面通行禁止の措置を講じた。その後,勝浦川は,台風の影響により増水したところ,本件事故当日の同月22日早朝には台風が通過して雨も上がり,同橋は冠水状態でなくなったものの,普段は30ないし40センチメートル(橋桁下約4メートル)しかない水位が,本件事故当時には橋桁下約1メートルまで上昇しており,濁流が激しく流れていた。また,本件事故当時,本件橋の路上には南詰めから中央部にかけ泥土(泥水)が堆積していたため,通行車両が誤って転落する危険の高い状況にあった。ところが,上記バリケードが何者かにより無断で撤去されていたため,同日朝には普段と同様,多数の車両が本件橋を通行していた。なお,上記バリケードは,固定式ではなく,簡単に撤去できる程度の重量であったため,過去にも何度か無断で撤去されていたことがあった。(甲3,甲5)(7) Cは,日頃から通勤の際に本件橋を通行していたところ,本件事故当日の平成13年8月22日午前7時30分ころ,阿南市内の自宅から,同じ勤務先に勤めている妹のDを被害車両に同乗させ,同車両を運転して徳島市内の勤務先に向かう途中,同日午前8時ころ,本件橋にさしかかり,別紙交通事故現場見取図のとおり,被害車両を本件橋の南詰め交差点で左折させ,時速約10キロメートルの低速度で本件橋上を南から北へ進行しようとしたところ,左折完了後そのまま左に旋回したため,本件橋の南詰めから約15メートル進んだ地点で,被害車両を本件橋の左(西)端から路外に逸脱させて勝浦川に転落した(なお,逸脱時の橋端に対する被害車両の角度は25度程度であった。他方,転落の際に路上に残された被害車両のタイヤ痕は,横滑りを示すスリップ痕ではなく,タイ (西)端から路外に逸脱させて勝浦川に転落した(なお,逸脱時の橋端に対する被害車両の角度は25度程度であった。他方,転落の際に路上に残された被害車両のタイヤ痕は,横滑りを示すスリップ痕ではなく,タイヤの回転を示す転写痕であった。)。車両ごと転落した上記被害者両名は,増水していた勝浦川の激流に流された後,濁流の中に水没したため,救助されることなく水死した。(甲3,甲5,甲11,乙7)(8) 本件事故後,被告は,平成13年12月26日から平成14年5月10日までの間に本件橋に地覆(縁石)嵩上げ工事を実施し,同地覆(縁石)を高さ約30センチメートルまで嵩上げした。(甲8の3の2,甲9の5ないし8) 2 争点①(本件橋の管理の瑕疵)について(1) 国家賠償法2条1項にいう営造物の設置又は管理の瑕疵とは,営造物が通常有すべき安全性を欠き,他人に危害を及ぼす危険のある状態をいうところ,かかる瑕疵の有無については,当該営造物の構造,用法,場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合考慮して,具体的,個別的に判断すべきものである。 (2) これを本件についてみると,前記認定事実を総合すれば,潜水橋は,そのほとんどが未だ自動車が普及していなかった時代に永久橋ができるまでの過渡的な一策として設置された,地域住民のための生活道であり,水没時に水流の妨げとなる欄干(高欄)等の転落防止設備は設置されていない上,幅員も狭く,設置当初は車両の通行は想定されていないなかったこと,その後,自動車の普及による潜水橋の車両通行量の増加に伴い,通行車両が誤って転落防止設備のない潜水橋から転落する事故がしばしば発生するようになったこと,特に徳島県においては平成8年に潜水橋の転落死亡事故が多発し,地域住民や専門家の間で潜水橋の転落防止対策が急務と叫ばれるようになった 備のない潜水橋から転落する事故がしばしば発生するようになったこと,特に徳島県においては平成8年に潜水橋の転落死亡事故が多発し,地域住民や専門家の間で潜水橋の転落防止対策が急務と叫ばれるようになったため,県が自己の管理する潜水橋について順次地覆(縁石)の嵩上げ等の安全対策工事を実施した結果,それ以降転落死亡事故はほとんど発生しなくなったこと,被告は平成8年に県より上記安全対策に関する資料の送付を受けるとともに,被告管理の潜水橋についても安全対策を講じるよう指導を受けていたが,地覆(縁石)嵩上げ工事についてはその実施が遅れ,本件事故当時,本件橋をはじめ多くの橋において未だ同工事を実施していなかったこと,本件橋は,車道の幅員が4メートル程度しかない上,その両端には高さ3ないし4センチメートル程度の地覆(縁石)が設けられているにすぎなかったため,通行車両が運転を誤った場合,路外に逸脱して河川に転落する危険性を有するものであったところ,本件橋の通行量は比較的多かったため,実際,本件事故以前にも本件橋において車両の転落事故が相次いで発生しており,潜水橋の中でも転落事故の多い橋であったこと,本件事故当時,本件橋は冠水していなかったものの,橋の路上には泥土(泥水)が堆積していたため,通行車両が誤って転落する危険の高い状況にあり,しかも台風の影響により河川が橋桁下1メートルまで増水して濁流が激しく流れていたため,橋から河川に転落した場合,自力ではいあがることはもちろん,救助を期待するのもほとんど不可能な状況にあったことなどが認められる。 (3) 以上の事情を総合すれば,本件橋は,その構造,用法,場所的環境,利用状況等に照らして,車両転落死亡事故の発生する危険性の高い橋梁であったというべきところ,本件橋を管理する被告としては,本件事故以前に県内の潜水橋 総合すれば,本件橋は,その構造,用法,場所的環境,利用状況等に照らして,車両転落死亡事故の発生する危険性の高い橋梁であったというべきところ,本件橋を管理する被告としては,本件事故以前に県内の潜水橋で転落死亡事故が多発したため,県からその安全対策について指導を受けていた上,本件橋においても車両の転落事故が相次いで発生していたのであるから,本件橋の有する上記危険性を十分認識し得たというべきである。他方,前記のとおり,潜水橋は,構造上,たいていの橋梁に設けられている欄干(高欄)を設置できない上,その多くは道幅も狭く,設置当初は車両の通行を想定されていなかったが,その後,自動車の普及による潜水橋の車両通行量の増加に伴い,通行車両の転落事故が増加したのであるから,潜水橋を管理する者としては,本来想定されていなかった潜水橋の車両通行を許す以上,潜水橋に欄干(高欄)を設置できないことの代替措置として,何らかの有効な転落防止措置を講じる必要があるというべきである。そして,同措置のうち,地覆(縁石)嵩上げは,県の同工事による安全対策により,転落を防止するのに有効な措置であると実証されていた上,その工事内容に照らして,さほど高額な費用を要するものではない。したがって,被告としては,潜水橋の中でも転落事故の危険性の高い本件橋に上記地覆(縁石)嵩上げ工事を実施して転落防止措置を講じる必要があったというべきである。しかるに,被告は,前記のとおり,本件橋の有する危険性を認識し得たにもかかわらず,長期にわたり,地覆(縁石)嵩上げによる転落防止措置を怠っていたものである。したがって,かかる措置が講じられていなかった本件橋は,橋梁として通常有すべき安全性を欠いていたものといわざるをえず,その管理に瑕疵があったというべきである。 (4) なお,前記1(6)によれば,被 がって,かかる措置が講じられていなかった本件橋は,橋梁として通常有すべき安全性を欠いていたものといわざるをえず,その管理に瑕疵があったというべきである。 (4) なお,前記1(6)によれば,被告は,本件事故の前日に台風の影響により本件橋が冠水状態となる危険性があったため,本件橋への進入路上にバリケードを置いて全面通行禁止の措置を講じたたものの,同バリケードは,固定式ではなく,簡単に撤去できる程度の重量であったため,その後,何者かにより撤去されていたところ,過去にも,本件橋において無断でバリケードが撤去されたことが何度かあったことからすると,被告としては,同バリケードの設置は,車両通行を禁止する措置として十分でないことは認識し得たというべきである。 したがって,被告において,かかる措置を講じていたことをもって,本件橋の管理の瑕疵を否定することはできない。 3 争点②(本件事故と本件橋の管理の瑕疵との因果関係)について(1) 前記認定事実によれば,本件事故当時,本件橋の路上に泥土(泥水)が堆積して車両通行帯が見えにくい状況にあったほか,本件橋桁の直下には濁流が激しく流れていたこと,被害車両は,本件橋の南詰め交差点を左折して約10キロメートルの低速度で本件橋に進入した後,そのまま左に旋回して左端から路外へ逸脱して橋から河川に転落したところ,事故現場の路上にはスリップを疑わせる痕跡は残されていなかったことが認められる。 他方,運転者であるCにおいて自殺や飲酒運転等を疑わせる事情は認められない。かかる事故の態様及び現場の状況を考慮すれば,本件事故は,運転者であるCにおいて,本件橋に左折進入するに当たり河川の流れや道路状況による錯覚等によって現場の状況を見誤り必要以上にハンドルを切ったために生じた可能性が高いものと認められる。そして,一般的 ,運転者であるCにおいて,本件橋に左折進入するに当たり河川の流れや道路状況による錯覚等によって現場の状況を見誤り必要以上にハンドルを切ったために生じた可能性が高いものと認められる。そして,一般的に,潜水橋における車両転落事故は,ハンドル操作の誤りが主な要因とされており,その原因の一つに本件事故のように錯覚等により必要以上にハンドルを切りすぎることがあると指摘されていることからすると(甲8の3の4),本件事故のようなハンドル操作の誤りによる転落事故は,潜水橋の管理者において通常予測しうるものであったというべきである。 (2) 他方,前記1(3),(7)によれば,25センチメートルまで地覆(縁石)を嵩上げすることにより,時速30キロメートルで走行する乗用車を誘導角20度程度まで誘導できるとされているところ,被害車両は,本件事故当時,時速約10キロメートルの低速度で走行し,路外逸脱時の角度も25度程度であったから,上記程度の高さの地覆(縁石)を設置していれば,本件事故を防止することができた可能性は高いといえる。 (3) 以上の事情を総合すれば,本件事故は,被告における本件橋の管理の瑕疵に起因して生じたものというべきである。 4 争点③(損害額)(1) Cの損害ア 逸失利益 5928万1566円C(昭和51年6月4日生)は,大学卒業後,平成12年4月から徳島南社会保険事務所において正規職員として稼働していたところ(原告B),本件事故当時25歳の若年者であったことを考慮すれば,就労可能年数である42年間にわたり,賃金センサス平成13年第1巻第1表・産業計・企業規模計・大卒男子労働者全年齢平均賃金680万4900円に相当する年収額を得ることができたというべきである。したがって, 能年数である42年間にわたり,賃金センサス平成13年第1巻第1表・産業計・企業規模計・大卒男子労働者全年齢平均賃金680万4900円に相当する年収額を得ることができたというべきである。したがって,Cの死亡による逸失利益は,上記年収額に就労可能年数42年に対応するライプニッツ係数17.4232を乗じて中間利息を控除した上,その生活状況を考慮して50パーセントの割合により生活費を控除すると,次のとおり,5928万1566円となる。 680万4900円×17.4232×(1-0.5)=5928万1566円イ 慰謝料 2000万円Cの年齢,生活状況,家族構成,本件事故の状況等諸般の事情を考慮すれば,同人の死亡による慰謝料は,2000万円とするのが相当である。 ウ 葬儀費用 124万8500円証拠(甲6の1ないし4)によれば,原告らは,C及びDの葬儀費用として249万7000円を支出したことが認められるところ,同費用の2分の1である124万8500円は,Cの葬儀費用として,本件事故と相当因果関係のある損害と認められる。 エ 車両引揚げ代 5万7250円証拠(甲7の1,2)によれば,原告らは,本件事故により転落した被害車両の引揚げ代として11万4500円を支出したことが認められるところ,同費用は,本件事故処理のために要した相当な範囲の支出といえるから,その2分の1である5万7250円は,Cの損害と認められる。 オ 合計額 8058万7316円以上によれば,Cは,本件事故により合計8058万7316円の損害を被ったことになる。 (2) Dの損害ア逸 オ 合計額 8058万7316円以上によれば,Cは,本件事故により合計8058万7316円の損害を被ったことになる。 (2) Dの損害ア逸失利益 4382万4996円D(昭和53年12月2日生)は,平成13年8月より,Cの勤務する徳島南社会保険事務所において臨時職員として稼働していたところ(原告B),本件事故当時22歳の若年者であったことを考慮すれば,就労可能年数の45年間にわたり,賃金センサス平成13年第1巻第1表・産業計・企業規模計・学歴計・女子労働者全年齢平均賃金352万2400円の年収額を得ることができたというべきである。したがって,Dの死亡による逸失利益は,上記年収額に就労可能年数45年に対応するライプニッツ係数17.7740を乗じて中間利息を控除した上,その生活状況を考慮して30パーセントの割合により生活費を控除すると,次のとおり,4382万4996円となる。 352万2400円×17.7740×(1-0.3)=4382万4996円イ慰謝料 2000万円Dの年齢,生活状況,家族構成,本件事故の状況等諸般の事情を考慮すれば,同人の死亡による慰謝料は,2000万円と認めるのが相当である。 ウ葬儀費用 124万8500円前記のとおり,原告らは,C及びDの葬儀費用として249万7000円を支出したところ,同費用の2分の1である124万8500円は,Dの葬儀費用として,本件事故と相当因果関係のある損害と認められる。 エ車両引揚げ代 5万7250円前記のとおり,原告らは,本件 である124万8500円は,Dの葬儀費用として,本件事故と相当因果関係のある損害と認められる。 エ車両引揚げ代 5万7250円前記のとおり,原告らは,本件事故により転落した被害車両の引揚げ代として11万4500円を支出したところ,同費用は,本件事故処理のために要した相当な範囲の支出といえるから,その2分の1である5万7250円は,Dの損害と認められる。 オ合計額以上によれば,Dは,本件事故により合計6513万0746円の損害を被ったことになる。 (3) 過失相殺前記のとおり,本件事故は,被害車両の運転者であるCが本件橋に進入した際に現場の状況を見誤り必要以上にハンドルを切ったために生じた可能性が高いところ,Cは,日頃から通勤のため本件橋を通行しており,その危険性を十分認識していたのであるから,前方を十分注視して適切なハンドル操作を行っていれば,本件事故を容易に回避しえたというべきあって,本件事故発生につき,Cにおいて前方注視を怠り,ハンドル操作を誤った点に重大な過失があったことは否定できない。以上の事情に加え,本件橋の管理の瑕疵の内容,程度等を考慮すれば,Cの過失割合は7割とするのが相当である。したがって,Cの損害につき,上記割合により過失相殺をすると,その過失相殺後の損害額は,2417万6194円(逸失利益1778万4469円,慰謝料600万円,葬儀費用37万4550円,車両引揚げ代1万7175円)となる。 (4) 相続原告らは,C及びDの上記損害賠償請求権をそれぞれ2分の1の割合で相続したから,これにより,各自,損害金4465万3470円(Cの損害金1208万8097円,Dの損害金3256万5373円)の損害賠償請求権を取得したことになる。 なお,本件事故につき過失のあ で相続したから,これにより,各自,損害金4465万3470円(Cの損害金1208万8097円,Dの損害金3256万5373円)の損害賠償請求権を取得したことになる。 なお,本件事故につき過失のあるCは,Dに対し共同不法行為者として被告と連帯して損害賠償債務を負っているところ,原告らは,DとCの間の上記債権と債務の双方を相続により承継したことになるから,CのDに対する上記債務は混同により消滅したことになる。この点,被告は,上記混同により,被告のDに対する損害賠償債務も消滅した旨主張する。しかし,共同不法行為者の損害賠償債務は,不真正連帯債務であって,連帯債務に関する民法438条の適用はないと解するのが相当である(最高裁判所昭和48年1月30日第3小法廷判決参照)。したがって,Cの上記損害賠償債務が消滅したとしても,被告の上記損害賠償債務には何ら影響を及ぼさないことになるから,被告の上記主張は採用できない。 (5) 損益相殺ア証拠(乙6)によれば,原告らは,国家公務員災害補償法に基づく保険給付として,Cの被災につき遺族補償一時金808万3000円,葬祭補償55万7490円,Dの被災につき遺族補償一時金467万9000円,葬祭補償45万5370円の支払を受けたことが認められる。そして,上記遺族補償一時金と葬祭補償は,それぞれ,逸失利益(Cの逸失利益1778万4469円,Dの逸失利益4382万4996円)と葬儀費用(Cの葬儀費用37万4550円,Dの葬儀費用124万8500円)に填補されることになるから,それぞれ対応する損害項目からこれらの保険給付金を控除すると,原告ら各自の損害金の残額は,それぞれ3785万7510円(Cの損害金785万9322円,Dの損害金2999万8188円)となる。 イ証拠(甲13の1,3)によれば,原告ら 険給付金を控除すると,原告ら各自の損害金の残額は,それぞれ3785万7510円(Cの損害金785万9322円,Dの損害金2999万8188円)となる。 イ証拠(甲13の1,3)によれば,原告らは,Dに対する自賠責保険の給付として2193万6750円の支払を受けたことが認められるところ,相続分に従ってそれぞれ1096万8375円の支払を受けたとみるのが相当である。したがって,原告ら各自のD分の損害金2999万8188円から上記自賠責保険金を控除すると,その残額は,1902万9813円となる。 (6) 弁護士費用原告らは,本件訴訟の提起,遂行を原告ら訴訟代理人に委任しているところ,本件訴訟の内容,審理経過,認容額等を考慮すれば,本件と相当因果関係のある弁護士費用は,それぞれ270万円とするのが相当である。 第4 結論よって,原告らの本件請求のうち,被告に対し,国家賠償法2条1項に基づく損害賠償請求として,それぞれ損害金2958万9135円(Cの損害金785万9322円,Dの損害金1902万9813円,弁護士費用270万円)及びこれに対する本件事故当日の平成13年8月22日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないから棄却することとする。 徳島地方裁判所第2民事部 裁判長裁判官村岡泰行 裁判官石垣陽介 裁判官井出弘隆 弘隆
▼ クリックして全文を表示