主文 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人が控訴人に対し平成13年4月26日付けでした公文書部分公開決定のうち,立入検査結果通知書(平成12年度分)の企業・氏名等を特定する部分として非公開とした部分及び改修(計画)報告書(平成12年度分)の企業・氏名等を特定する部分として非公開とした部分をいずれも取り消す。 3 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人主文と同じ。 2 被控訴人本件控訴を棄却する。 第2 事案の概要等 1 事案の概要控訴人は,平成13年4月5日,被控訴人に対し,阿見町情報公開条例に基づき,「消防法4条1項に基づく検査結果通知書及び同法5条に基づく措置命令等を示す文書その他阿見町の火災予防体制の実態に関する調査資料(平成12年度分)」の写しの交付を求める公文書公開請求をした。これに対し,被控訴人は,平成13年4月26日付けで,消防法4条又は16条の5に基づく立入検査結果通知書及び改修(計画)報告書のほか,平成12年防火対象物実態等調査表が公開請求に係る文書であることを前提に,立入検査結果通知書及び改修(計画)報告書の企業・氏名等を特定する部分等について,法令秘情報を理由に非公開とする決定をした。 本件は,控訴人が,被控訴人に対し,上記不開示処分の取消しを求めた事案である。 原審は,上記不開示部分は,これを公開すれば事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるという上記条例の非開示条項に該当するとして,控訴人の請求を棄却した。 そこで,控訴人がこれを不服として控訴をした。 2 争いのない事実等(証拠により認定した事実については,括弧内にその証拠を掲記する。)(1) 当事者ア控訴人は,α町に居住する住民である。 イ被控訴人は 控訴人がこれを不服として控訴をした。 2 争いのない事実等(証拠により認定した事実については,括弧内にその証拠を掲記する。)(1) 当事者ア控訴人は,α町に居住する住民である。 イ被控訴人は,阿見町情報公開条例(平成12年12月26日阿見町条例第41号。以下「本件条例」という。)2条所定の実施機関である。 (2) 本訴に至る経緯ア控訴人は,被控訴人に対し,平成13年4月5日,本件条例に基づき,要旨「消防法4条1項に基づく立入検査結果通知書及び同法5条に基づく措置命令等を示す文書その他阿見町の火災予防体制の実態に関する調査資料(平成12年度分)」について,写しの交付による公開の請求(以下「本件請求」という。)をした。 (甲1)イ被控訴人は,本件請求の対象文書が,消防法4条又は16条の5に基づく立入検査結果通知書及び改修(計画)報告書のほか,防火対象物実態等調査表であることを確認の上,平成13年4月26日付けで,被控訴人が保有する平成12年度分立入検査結果通知書(以下「本件結果通知書」という。)及び改修(計画)報告書(以下「本件報告書」といい,これと本件結果通知書とを合わせて,以下「本件文書」という。)については,客観的に企業・氏名等を特定し得る部分(以下「本件不開示情報」という。)及び本件文書の一部につき右欄外部分(以下「本件欄外不開示情報」という。)を除きこれを公開するとともに,平成12年防火対象物実態等調査表については全部を公開する旨の公文書部分公開決定(以下「本件決定」という。)をし,この旨を記載した通知書(阿消発第1037号。以下「本件通知書」という。)をもってこれを控訴人に通知した。 本件通知書の「非公開とする部分の概要」欄には,本件文書の企業・氏名等を特定する部分と記載されるとともに,「非公開とする根拠規定」欄に 以下「本件通知書」という。)をもってこれを控訴人に通知した。 本件通知書の「非公開とする部分の概要」欄には,本件文書の企業・氏名等を特定する部分と記載されるとともに,「非公開とする根拠規定」欄には本件条例7条1項1号が掲げられ,また,「根拠規定を適用する理由」欄には,「立入検査又は質問を行った場合に知り得た関係者の秘密は,消防法4条6項,16条の5第3項,34条2項の規定により法令秘情報になる」旨の記載がある。 (甲2,乙8,10から12まで)ウ控訴人は,平成13年5月1日,本件決定を不服として,被控訴人に対し行政不服審査法に基づく異議申立てをしたが,被控訴人は,同年7月18日,これを棄却した。 (3) 本件条例の関係規定「(公開義務)第7条実施機関は,公開請求があったときは,公開請求に係る公文書に次の各号に掲げる情報(以下「非公開情報」という。)のいずれかが記録されている場合を除き,公開請求者に対し,当該公文書を公開しなければならない。 (1) 法令及び他の条例の定めるところ又は実施機関が法律上従う義務を負う国の機関等の指示により,公にすることができないと認められる情報(2) (略)(3) 法人その他の団体(国及び地方公共団体を除く。以下,「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって,次に掲げるもの。ただし,人の生命,健康,生活又は財産を保護するため,公にすることが必要であると認められる情報を除く。 ア公にすることにより,当該法人等又は当該個人の権利,競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるものイ実施機関の要請を受けて,公にしないとの条件で任意に提供された情報であって,当該条件を付することが当該情報の性質,当時の状況等に照らして合理的であると認められるもの(4) 公にするこ れるものイ実施機関の要請を受けて,公にしないとの条件で任意に提供された情報であって,当該条件を付することが当該情報の性質,当時の状況等に照らして合理的であると認められるもの(4) 公にすることにより,人の生命,身体,財産等の保護,犯罪の予防,犯罪の捜査その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると認められるもの(5) (略)(6) (略)(7) 実施機関又は国等の機関が行う事務又は事業に関する情報であって,公にすることにより,次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上,当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものア監査,検査,取締り又は試験に係る事務に関し,正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし,若しくはその発見を困難にすると認められるものイからオまで (略)(略)(第三者保護に関する手続)第16条公開請求に係る公文書に町,国,他の地方公共団体及び公開請求者以外の者(以下この条第21条及び第22条において「第三者」という。)に関する情報が記録されているときは,実施機関は,公開決定等をするに当たって,当該情報に係る第三者に対し,公開請求に係る公文書の表示その他規則で定める事項を通知して,意見書を提出する機会を与えることができる。 2 実施機関は,次の各号のいずれかに該当するときは,第12条第1項の決定(以下「公開決定」という。)に先立ち,第三者に対し,意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし,当該第三者の所在が判明しない場合は,この限りでない。 (1) 第三者に関する情報が記録されている公文書を公開しようとする場合であって,当該情報が第7条第2号イ,同条第3号ただし書に規定する情報に該当すると認められるとき。 (2) 第三者に関する情報が記録され 第三者に関する情報が記録されている公文書を公開しようとする場合であって,当該情報が第7条第2号イ,同条第3号ただし書に規定する情報に該当すると認められるとき。 (2) 第三者に関する情報が記録されている公文書を第10条の規定により公開しようとするとき。 3 (略)」(4) 阿見町作成の「情報公開事務の手引」(甲6の1。以下「手引」という。)の記載手引の「Ⅱ 阿見町の情報公開条例の趣旨・解釈・運用」の記載の中には,「第7条第3号(法人等に関する情報)の「ただし書」に該当する情報の例示」として,「工場排水の分析結果,防火対象物立入検査結果,危険物貯蔵状況等に関する情報」,「立入検査結果の改善勧告,命令書その他行政処分のうちこれら(裁判所注:人の生命,健康,生活又は財産を保護するため,公にすることが必要であると認められる情報)に該当するもの」が挙げられている。 3 当事者の主張当事者双方の主張は,次項において当審における当事者の主張を付加するほか,原判決事実及び理由の「第2 事案の概要」の「2 当事者の主張」欄記載のとおりであるから,これを引用する。 4 当審における当事者の主張(1) 被控訴人ア本件欄外不開示情報について本件文書の一部につき右欄外にある黒塗り部分(本件欄外不開示情報)には,本件文書の記載内容を電子データとして保存するに当たり,記載内容がコンピュータに入力済みであることを示し,また,作業を担当したものを特定するため,入力作業担当者が自らの氏名をサイン,略語及び押印などの方法により表示した情報が記載されている。 この記載部分は,入力ミスを防止する目的で入力担当者が入力済みを示すチェックマーク代わりに私的に記載したものであり,本件条例2条にいう「公文書」に当たらず,そもそも,特定人の意思又は観念を表示した情報では 載部分は,入力ミスを防止する目的で入力担当者が入力済みを示すチェックマーク代わりに私的に記載したものであり,本件条例2条にいう「公文書」に当たらず,そもそも,特定人の意思又は観念を表示した情報ではなく「文書」に当たらない。 したがって,本件欄外不開示情報は,阿見町に公開を請求することができる文書ではなく,被控訴人がこれを不開示とした処分に違法はない。 イ指摘事項のないものをも不開示とした理由について本件結果通知書のうち何らの指摘事項もないものについても指摘事項のあるものと同様の情報について不開示としたのは,次のとおり,指摘事項の有無にかかわらず本件不開示情報を開示することは,消防法4条に基づく立入検査等の事務の適正な遂行に支障を来し,正確な事実の把握を困難にするおそれが生ずることから,本件条例7条7号アに該当するためである。 (ア) 立入検査先を特定し得る企業,氏名等の本件不開示情報を公開することは,その情報を公開しないことを前提として提供した立入検査先との信頼関係を損ねることになるところ,これは,指摘事項の有無にかかわらずその情報を公開すること自体によって生ずる問題である。 (イ) 指摘事項がなかった立入検査先を特定し得る企業,氏名等の本件不開示情報を開示した場合,将来的に指摘事項があった場合にも本件不開示情報が開示されるのではないかと立入検査先が考え,立入検査に協力することに萎縮してしまうおそれがあり,そうなると,消防法4条に基づく立入検査の実施に支障を来すおそれが生ずる。 (ウ) 立入検査は,規定に該当する限りすべての建物について行われるから,指摘事項がなかった立入検査先を特定し得る企業,氏名等の本件不開示情報を公開した場合,逆に,企業,氏名等が開示されていない建物を容易に特定することができることになり,結果として,指摘事項 れるから,指摘事項がなかった立入検査先を特定し得る企業,氏名等の本件不開示情報を公開した場合,逆に,企業,氏名等が開示されていない建物を容易に特定することができることになり,結果として,指摘事項のあった建物,企業及び氏名等が推知されて,本件不開示情報を公開したのと同様の結果になる。 (2) 控訴人ア本件不開示情報の本件条例7条7号非該当性本件条例7条7号の適用に当たっては,事業執行に対する支障のみを重視することは許されず,公開することによる利益と実施機関等が行う事務又は事業の適正な遂行を確保することによる利益の比較衡量により判断しなければならない。 被控訴人は,本件不開示情報を開示することができない理由として,本件不開示情報については立入検査先との間で公開しない前提となっていた旨を主張するが,この前提を裏付ける具体的事実を何ら明らかにしておらず,本件結果通知書に「指摘事項なし」とされているものも含め,本件不開示情報のすべてについて上記前提があったとは考えられない。また,本件条例は,「公文書」に該当するものはすべて原則として公開するとの立場に立っているのであり,従来公表していない情報や,情報公開制度により公開される可能性の事前告知がない情報であっても対象文書となることは明らかである。 本件条例16条に基づく立入検査先への意見聴取の回答状況も,平成12年度防火対象物立入検査実施件数191件のうち開示に反対する意見は6件のみであり,ほとんどの立入検査先は,結果の公開によって不利益を受けることはないと考えて公開を了承している。また,公開に反対の回答であっても,公開される情報についての誤解があるとみられるものがあるほか,反対の理由として,プライバシーの保護やイメージダウンの回避を挙げているが,本件不開示情報の内容に照らし,そもそもイメ の回答であっても,公開される情報についての誤解があるとみられるものがあるほか,反対の理由として,プライバシーの保護やイメージダウンの回避を挙げているが,本件不開示情報の内容に照らし,そもそもイメージダウン等にはつながらない上,ひとたび火災が発生した場合の影響の重大さを考慮すれば,上記反対理由は不合理なものである。 さらに,本件決定時の消防法においては,立入検査の拒否者に対し20万円以下の罰金又は拘留に処すものとしており,この制裁は,間接強制の手段としては強度であり,この罰則がありながらなお立入検査の拒否を貫き続ける者が現れることはほとんど考えられない。 他方,本件不開示情報を開示することにより,防火設備に不備があったり,管理者の防火意識が低い施設を知ることによって,町民は自らの安全を守ることができるほか,検査結果が公開されることになれば,管理者にとって設備の維持・改善への強い動機付けになるから,地域の安全を高めることにつながる。このことは,「国民の生命,身体及び財産を火災から保護する」という消防法の目的(1条)にもかなう。 以上のとおり,本件不開示情報を公開することにより消防法4条に基づく立入検査の実施に支障を来すおそれは極めて乏しく,公開することによりもたらされる利益との比較衡量の観点からも,本件不開示情報は本件条例7条7号に該当しない。 イ本件不開示情報の本件条例7条1号,3号及び4号非該当性本件条例7条1号で非開示とされる情報とは,法令又は他の条例により明らかに公にすることができないと定められている情報,及び法令又は他の条例の趣旨,目的から当然に公にすることができないと認められる情報をいい,公開すべきでない具体的な利益の存在が当然予定されているが,本件不開示情報は,このような情報に当たらない。 本件条例7条3号アは「公 ,目的から当然に公にすることができないと認められる情報をいい,公開すべきでない具体的な利益の存在が当然予定されているが,本件不開示情報は,このような情報に当たらない。 本件条例7条3号アは「公にすることにより,当該法人等又は個人の権利,競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるもの」と定めており,「害するおそれ」が認められるのみではこれに該当しないところ,本件不開示情報を開示しても,立入検査先の「正当な利益を害する」とはいえない。また,本件不開示情報は,消防法に基づいて提出されたものであり,立入検査は間接強制による強制力を背景に行われたものである上,本件不開示情報の公益性をも鑑みれば,本件不開示情報が本件条例7条3号イに該当するともいえない。仮に同号ア又はイに該当するとしても,同号ただし書によって本件不開示情報は開示されるべきである。 本件条例7条4号にいう「人の生命,身体,財産等の保護」に支障を生ずる場合とは,特定人に対して犯罪等の人為的な危害が加えられる具体的な危険性がある場合を指すものと解され,「犯罪の予防」及び「犯罪の捜査」に対する支障についても,同様に具体的な支障が生ずる場合に限るべきである。しかし,本件不開示情報を開示したとしても,上記具体的な危険性ないし支障が生ずるとはいえず,本件不開示情報は本件条例7条4号に該当しない。 第3 当裁判所の判断 1 被控訴人が本件決定の根拠として本件通知書と異なる理由を主張することの許否当裁判所は,被控訴人が本件決定の根拠として本件通知書に記載したものと異なる理由を本訴において主張することも許されると判断する。その理由は,原判決事実及び理由の「第3 当裁判所の判断」欄の1項記載のとおりであるから,これを引用する。 2 本件不開示情報の本件条例7条各号該当性(1) 上記第2の ることも許されると判断する。その理由は,原判決事実及び理由の「第3 当裁判所の判断」欄の1項記載のとおりであるから,これを引用する。 2 本件不開示情報の本件条例7条各号該当性(1) 上記第2の2の事実に加え,後掲証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実を認めることができる。 ア消防法(平成13年法律第98号による改正前のもの。以下同じ。)は,「火災を予防し,警戒し及び鎮圧し,国民の生命,身体及び財産を火災から保護するとともに,火災又は地震等の災害に因る被害を軽減し,もって安寧秩序を保持し,社会公共の福祉の増進に資すること」を目的とする法律である(同法1条)。 そして,消防法4条1項本文は,「消防長又は消防署長は,火災予防のために必要があるときは,(略)当該消防職員(略)にあらゆる仕事場,工場若しくは公衆の出入する場所その他の関係のある場所に立ち入って,消防対象物の位置,構造,設備及び管理の状況を検査させ,若しくは関係のある者に質問させることができる。」と定め,また,同法16条の5第1項は,市町村長等(同法11条2項参照)は,危険物の貯蔵又は取扱に伴う火災の防止のため必要があると認めるときは,当該消防事務に従事する職員に,指定数量(同法9条の3,危険物の規制に関する政令1条の11,別表第3参照)以上の危険物を貯蔵し,若しくは取り扱っていると認められるすべての場所(以下「貯蔵所等」という。)に立ち入り,これらの場所の位置,構造若しくは設備及び危険物の貯蔵若しくは取扱いについて検査させ,関係のある者に質問させることができる旨定めている。 上記各条項に基づく立入り,検査等を拒み,妨げ又は忌避した者については,20万円以下の罰金又は拘留に処するとされていた(消防法44条2号。なお,現行法においては,30万円以下の罰金又は拘留に処するとさ 記各条項に基づく立入り,検査等を拒み,妨げ又は忌避した者については,20万円以下の罰金又は拘留に処するとされていた(消防法44条2号。なお,現行法においては,30万円以下の罰金又は拘留に処するとされている。)。 一方,上記各条項に基づく立入検査又は質問を行った場合に知り得た関係者の秘密については,これを「みだりに他に漏らしてはならない」とされている(消防法4条6項,16条の5第3項)。 イ消防法17条1項は,「学校,病院,工場,事業場,興行場,百貨店,旅館,飲食店,地下街,複合用途防火対象物その他の防火対象物で政令で定めるものの関係者は,政令で定める技術上の基準に従って,政令で定める消防の用に供する設備,消防用水及び消防活動上必要な施設(以下「消防用設備等」という。)を設置し,及び維持しなければならない。」と定めており,上記「防火対象物で政令で定めるもの」(以下「法17条の防火対象物」という。)が,消防法施行令(平成13年政令第385号による改正前のもの。以下同じ。)別表(以下「政令別表」という。)第1に掲げられている(同施行令6条参照)。 法17条の防火対象物については,政令別表第1(20)項に掲げるものを除き(消防法17条の3の3,同法施行令36条1項。総務省令で定める舟車のこと。),その関係者は,当該防火対象物における消防用設備等について,省令で定めるところにより,定期に点検をし,その結果を消防長又は消防署長に報告しなければならないとされている(消防法17条の3の3)。また,消防長又は消防署長は,法17条の防火対象物における消防用設備等が設備等技術基準に従って設置され,又は維持されていないと認めるときは,当該防火対象物の関係者で権原を有するものに対し,当該設備等技術基準に従ってこれを設置すべきこと,又はその維持のため必要な措 等が設備等技術基準に従って設置され,又は維持されていないと認めるときは,当該防火対象物の関係者で権原を有するものに対し,当該設備等技術基準に従ってこれを設置すべきこと,又はその維持のため必要な措置をなすべきことを命ずることができるとされている(同法17条の4)。 そして,消防法17条の3の3の規定による報告をせず,又は虚偽の報告をした者は,20万円以下の罰金又は拘留に処するとされ(同法44条7号の3。なお,現行法においては,30万円以下の罰金又は拘留に処するとされている。),同法17条の4の規定による命令に違反して消防用設備等を設置しなかった者については,6月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する(情状によりこれらを併科する。)とされている(同法42条1項7号,2項。なお,現行法においては,罰金については50万円以下とされている。)。 ウ消防法10条1項は,「指定数量以上の危険物は,貯蔵所(略)以外の場所でこれを貯蔵し,又は製造所,貯蔵所及び取扱所以外の場所でこれを取り扱ってはならない。ただし,所轄消防長又は消防署長の承認を受けて指定数量以上の危険物を,10日以内の期間,仮に貯蔵し,又は取り扱う場合は,この限りでない。」と定め,同条3項及び4項で,製造所,貯蔵所又は取扱所においてする危険物の貯蔵又は取扱いに係る技術上の基準並びに製造所,貯蔵所及び取扱所の位置,構造及び設備の技術上の基準は,政令で定める旨が規定されている。 そして,消防法12条1項は,製造所,貯蔵所又は取扱所の所有者,管理者又は占有者は,製造所,貯蔵所又は取扱所の位置,構造及び設備が同法10条4項の技術上の基準に適合するように維持しなければならないと定め,同法12条2項は,市町村長等は,製造所,貯蔵所又は取扱所の位置,構造及び設備が同法10条4項の技術上の基準に 造及び設備が同法10条4項の技術上の基準に適合するように維持しなければならないと定め,同法12条2項は,市町村長等は,製造所,貯蔵所又は取扱所の位置,構造及び設備が同法10条4項の技術上の基準に適合していないと認めるときは,製造所,貯蔵所又は取扱所の所有者,管理者又は占有者で権原を有する者に対し,同項の技術上の基準に適合するように,これらを修理し,改造し,又は移転すべきことを命ずることができると定めている。 上記消防法12条2項の規定による命令に違反があった場合には,市町村長等は,当該製造所,貯蔵所又は取扱所について,設置の許可を取り消し,又は期間を定めてその使用の停止を命ずることができ(同法12条の2第1項3号),この規定による命令に違反した場合には,6月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する(情状によりこれらを併科する。)とされている(同法42条1項3号,2項。 なお,現行法においては,罰金については50万円以下とされている。)。 エ阿見町においては,消防法4条又は16条の5に基づく立入検査を「阿見町火災予防査察等に関する規程」(甲33,乙13。以下「本件規程」という。)に基づき実施している。 本件規程によれば,消防法2条3項に規定する消防対象物に立ち入り,その位置,構造,設備及び管理の状況を検査し,当該対象物の関係者に対して不備欠陥事項等の是正及び火災予防上適切な指導を行うことなどを「査察」と称し(本件規程2条4号),その執行の対象物を次のように区分し(本件規程3条,別表第1),この区分に応じ,第1種査察対象物については原則として年1回以上,第2種査察対象物については周囲の状況,構造,規模,用途から総合的に判断し本件規程15条及び16条に基づき消防長又は消防署長(以下「消防長等」という。)が策定する査察計画に基づき,第3種 1回以上,第2種査察対象物については周囲の状況,構造,規模,用途から総合的に判断し本件規程15条及び16条に基づき消防長又は消防署長(以下「消防長等」という。)が策定する査察計画に基づき,第3種査察対象物については消防署長が必要に応じ定めるものに基づき,それぞれ査察の執行をするものとされている(本件規程17条)。 区分第1種査察対象物項1 内容政令別表第1(1)から(6)項まで((5)項ロを除く。),(9)項イ,(16)項イ,(16の2)項及び(16の3)項の防火対象物で,固定消防用設備(本件規定2条5号参照)の設置を必要とするもの項2 内容保安監督者該当製造所等(消防法10条に規定する危険物の製造所,貯蔵所及び取扱所並びに指定数量以上の危険物を仮に貯蔵し,又は取り扱う場所のうち同胞13条1項により保安監督者を定めなければならないもの。本件規定2条6号イ参照) 区分第2種査察対象物項1 内容政令別表第1(5)項ロ,(7)項,(8)項,(9)項ロ及び(10)項から(17)項((16)項イ,(16の2)項及び(16の3)項を除く。)までの防火対象物で,固定消防用設備の設置を必要とするもの項2 内容第1種第2項査察対象物以外のその他の製造所等(消防法10条に規定する危険物の製造所,貯蔵所及び取扱所並びに指定数量以上の危険物を仮に貯蔵し,又は取り扱う場所。本件規定2条6号ウ参照)区分第3種査察対象物項1 内容政令別表第1に定める防火対象物(第1種第1項及び第2種第1項の査察対象物を除く。)で,消防用設備等(政令7条4項2号に定める誘導標識を除く。)の設置を要する防火対象物項2 内容少量危険物等貯蔵取扱所(指定数量の2分1未満は除く。)(指定数量未満の危険物及び指定可燃物を貯蔵し,又は取り扱う場所。本件 項2号に定める誘導標識を除く。)の設置を要する防火対象物項2 内容少量危険物等貯蔵取扱所(指定数量の2分1未満は除く。)(指定数量未満の危険物及び指定可燃物を貯蔵し,又は取り扱う場所。本件規定2条7号)オ阿見町においては,消防長等から査察の執行を命じられた職員(以下「査察職員」という。)は,査察対象物の査察を行ったとき等は,その結果を立入検査結果通知書に記入し,関係者に交付しなければならず,また,上記査察を行った結果,消防法若しくは阿見町火災予防条例に規定する火災予防に関する違反事実又は改善を必要とする事項(軽易なものは除く。)がある場合は,関係者に対し改善結果(計画)書を提出するよう指示するものとされている(本件規程26条)。 さらに,査察職員は,査察を終了したときは,その結果を立入検査結果報告書により消防長等に報告しなければならないとされ,消防長等は,その査察結果の内容中,上記違反事実又は改善を必要とする事項について改善されていないと認められるときは,指導書を発行し,その指導書に記載した履行期限経過後,直ちに現場等の調査を行い質問調書を徴するものとし,消防署長は,その調査の結果,違反事実又は改善を必要とする事項について改善されていないと認められるときは,違反調査報告書により消防長に報告しなければならないとされている(本件規程27条)。 カ平成12年度においては,本件規程に定める査察対象物のうち第3種2項の査察対象物を除く合計190件について消防法4条又は16条の5に基づく立入検査が実施された(以下「本件立入検査」という。)。(乙15,16)その結果,88件の査察対象物について,消防法,同法施行令,同法施行規則,阿見町火災予防条例等の法令に違反する事実が認められ,その査察対象物の所有者又は管理者に対し,上記違反事実 (乙15,16)その結果,88件の査察対象物について,消防法,同法施行令,同法施行規則,阿見町火災予防条例等の法令に違反する事実が認められ,その査察対象物の所有者又は管理者に対し,上記違反事実を記載した立入検査結果通知書(甲36に相当するもの)が交付された。他方,102件の査察対象物については,上記違反事実等の指摘事項はない旨を記載した立入検査結果通知書(甲35に相当するもの)がその所有者又は管理者に交付された。(甲35,36,乙16)本件立入検査の結果,法令に違反する事実の指摘がされた査察対象物88件のうち46件の対象物の関係者等は,平成13年4月までに,阿見町消防長に対し改修(計画)報告書(本件報告書)を提出した。(甲37)キ控訴人は,本件条例が平成13年4月1日に施行された(甲5)直後の同月5日,被控訴人に対し本件請求をした。 被控訴人は,本件請求について,本件条例16条所定の第三者保護に関する手続をとることを決め,平成13年4月16日ころ,本件立入検査が行われた査察対象物の関係者に対し,本件文書の公開についての意見照会書(乙9)を送付した。この結果,同月23日までに66件の回答があったが,このうち公開に反対する意見を記載したものは6件のみであった。もっとも,このうちの更に1件は,消防点検とともに機械警備による防犯業務も同一会社へ委託している関係上,消防検査書の公開により防犯設備の内容の漏出危惧を拭えないとするもので,後記ク認定の本件文書の記載内容に対する誤解に基づく意見であることが明らかであった。その余の反対意見は,プライバシーの保護や企業イメージの失墜をその理由として挙げ,1件については,仮に公開されれば,今後の消防署への書類提出等は一切拒絶しますと明記していた。(乙2から6まで,8)ク被控訴人は,上記キの意見 シーの保護や企業イメージの失墜をその理由として挙げ,1件については,仮に公開されれば,今後の消防署への書類提出等は一切拒絶しますと明記していた。(乙2から6まで,8)ク被控訴人は,上記キの意見照会の結果も考慮し,平成13年4月26日,本件文書のうち本件不開示情報及び本件欄外不開示情報を除いた部分並びに平成12年防火対象物実態等調査表の全部について,閲覧及び写しの交付の方法により公開する旨の本件決定をし,本件通知書でこれを控訴人に通知した。そして,同年5月10日,控訴人に対し,本件文書の一部を黒塗りした写しの交付等の公開手続が実施された。(乙8)控訴人に交付された本件文書の写しは,概ね次のようなものである。 (ア) 本件結果通知書(甲35,36)本件結果通知書には2種類の様式があり(別紙1及び2参照。以下,別紙1の様式を「様式1」,別紙2の様式を「様式2」という。),様式1については,名宛人欄のほか,名称,所在,用途,防火管理者(記載がある場合)及び立会者職氏名の各欄について一律に黒塗りがされている。また,一部については,内容欄の一部又は右欄外(本件欄外不開示情報記載部分)に黒塗りがある。様式2については,名宛人欄のほか,対象物名,用途,所在地,電話及び査察結果通知書受領者職氏名の各欄について一律に黒塗りがされており,一部については,指示事項欄の一部又は右欄外(本件欄外不開示情報記載部分)に黒塗りがある。 本件結果通知書のうち指摘事項のあるもの(甲36)については,内容欄(様式1の場合)又は指示事項欄(様式2の場合)に,「消防用設備等の点検を6ヶ月ごとに実施し,その結果を3年に1回消防長に届け出ること。(法第17条の3の3)」(甲36の1枚目),「1 消防計画の組織の変更を消防長に届け出ること。(法第8条)」「2 (不開示部分 点検を6ヶ月ごとに実施し,その結果を3年に1回消防長に届け出ること。(法第17条の3の3)」(甲36の1枚目),「1 消防計画の組織の変更を消防長に届け出ること。(法第8条)」「2 (不開示部分)の消火,通報及び避難の訓練を実施すること。(法第8条)」「3 消防用設備等の点検を6ヵ月ごとに実施し,その結果を3年に1回消防長に届け出ること。(法第17条の3の3)」(同2枚目)などのように,是正すべき法令違反の内容が概括的,定型的に記載されている。 (イ) 本件報告書(甲37)本件報告書の様式は,基本的には別紙3のようなものであり,このうち,提出者に係る名称,所在地,関係者職・氏名及び担当者・職氏名(記載がある場合)については一律に黒塗りがされている。また,一部については,指摘事項等その他の報告部分の一部又は右欄外(本件欄外不開示情報記載部分)に黒塗りがある。 本件報告書には,基本的に,本件結果通知書によって指摘された事項が指摘事項欄に記載された上,指摘を改修した旨又は改修の計画について,改修済み欄又は計画欄に,「4/26届出済」(甲37の2枚目),「平成12年5月中に提出する」(同4枚目)などのように極めて簡潔に記載されている。 ケ本件不開示情報は,これを公開すれば立入検査先が明らかになるか,又はこれを推認することができる情報が記載されている。 また,被控訴人においては,職員により本件文書の記載内容を電子データとして保存させているところ,その職員は,記載内容がコンピュータに入力済みであることを示し,また,作業を担当したものを特定するため,本件文書の右欄外に自らの氏名をサイン,略語,押印などの方法により表示している。さらに,本件報告書の提出の有無により,本件結果通知書の右欄外に「改修報告あり」,「改修なし」などと記載されている。本件 件文書の右欄外に自らの氏名をサイン,略語,押印などの方法により表示している。さらに,本件報告書の提出の有無により,本件結果通知書の右欄外に「改修報告あり」,「改修なし」などと記載されている。本件欄外不開示情報は,これらの右欄外の記載である。(乙10から12まで)しかし,被控訴人は,これらの情報の性質の違いを特に考慮することなく,本件通知書の「非公開とする部分の概要」欄には「1.立入検査結果通知書(平成12年度分)の企業・氏名等を特定する部分」及び「2.改修(計画)報告書(平成12年度分)の企業・氏名等を特定する部分」とのみ記載し,その他の非公開事由を何ら本件通知書に掲げなかった。 (2) 上記(1)認定の事実を前提として,本件不開示情報の本件条例7条1号,3号,4号及び7号該当性について検討する。 ア本件立入検査の趣旨,目的等及び本件不開示情報の性質本件立入検査は,消防法4条又は16条の5に基づき行われたものであり,同法4条に基づき行われたものの対象は,法17条の防火対象物である。この法17条の防火対象物とは,政令別表第1により具体的な例を見ると,劇場,映画館,公会堂又は集会場(同別表(1)項),キャバレー,カフェー,遊技場又はダンスホール(同(2)項),待合,料理店,飲食店(同(3)項),百貨店(同(4)項),旅館,ホテル(同(5)項),病院,老人福祉施設,幼稚園(同(6)項),小学校,中学校,高等学校(同(7)項),図書館,博物館(同(8)項),公衆浴場(同(9)項),その他の事業場(同(15)項),地下街(同(16の2)項)等,不特定ないし多数の者が出入りする建築物等である。 また,法17条の防火対象物については,政令別表第1(20)項に掲げるものを除き,その関係者は,当該防火対象物における消防用設備等について,省令で定 不特定ないし多数の者が出入りする建築物等である。 また,法17条の防火対象物については,政令別表第1(20)項に掲げるものを除き,その関係者は,当該防火対象物における消防用設備等について,省令で定めるところにより,定期に点検をし,その結果を消防長等に報告することが消防法上義務付けられており,消防長等は,法17条の防火対象物における消防用設備等が設備等技術基準に従って設置され,又は維持されていないと認めるときは,当該防火対象物の関係者で権原を有するものに対し,当該設備等技術基準に従ってこれを設置すべきこと,又はその維持のため必要な措置をなすべきことを命ずることができ,上記報告や上記命令の履行は,窮極的には罰則によって担保されている。 本件立入検査のうち消防法16条の5に基づき行われたものの対象は,指定数量以上の危険物の貯蔵所等であり,このうち同法10条1項ただし書所定のものを除く貯蔵所等の所有者等は,その貯蔵所等の位置,構造及び設備が同法所定の技術上の基準に適合するように維持することが義務付けられ,市町村長等は,上記貯蔵所等の位置,構造及び設備が上記技術上の基準に適合していないと認めるときは,上記貯蔵所等の所有者等で権原を有する者に対し,上記技術上の基準に適合するよう命ずることができ,この命令の履行は,窮極的には罰則によって担保されている。 これらの事実その他上記(1)認定の事実によれば,本件立入検査の対象となった法17条の防火対象物又は指定数量以上の危険物の貯蔵所等の所有者等は,本来,上記消防法以下の法令に違反することがないようにすべき公法上の義務があるといえ,また,本件立入検査は,ひとたび火災が発生すれば重大な被害が生ずるおそれのある上記の査察対象物について,上記法令に違反する事実の有無を確認し,仮に違反事実が認められる場合にはそ の義務があるといえ,また,本件立入検査は,ひとたび火災が発生すれば重大な被害が生ずるおそれのある上記の査察対象物について,上記法令に違反する事実の有無を確認し,仮に違反事実が認められる場合にはその改善を指示し,現実に改善させることにより,同法1条所定の目的を達成することを主たる目的として行われたと認めることができる。 このような本件立入検査の趣旨,目的等に照らせば,本件不開示情報は,何らの指摘事項のなかった者についてはこれを公にすることに何らの不利益もないと認められ,また,何らかの指摘事項があった者については,公法上の義務を履行していない事実が明らかになる点で不利益があるといえるが,そもそも,ひとたび火災が発生すれば重大な被害が生ずるおそれのある査察対象物を所有ないし管理する以上,消防法以下の法令を遵守すべき義務は重いというべきであり,その義務違反の事実を秘すべき必要性は,仮に認められるとしても乏しいものというべきである。 このような本件立入検査の趣旨,目的等及び本件不開示情報の性質を踏まえ,以下,本件不開示情報の本件条例7条1号,3号,4号及び7号該当性について順次検討する。 イ本件条例7条1号該当性について被控訴人は,本件不開示情報は本件条例7条1号に定める法令秘情報に該当すると主張する。 しかし,消防法4条6項は,立入検査又は質問を行った場合に知り得た関係者の秘密を「みだりに他に漏らしてはならない」と定めているものであり,上記秘密を一切明らかにしてはならないと定めているものではない。そして,上記アの本件立入検査の趣旨,目的等及び本件不開示情報の性質のほか,上記(1)認定の本件結果通知書及び本件報告書の記載内容をも考慮すれば,本件条例に基づき本件不開示情報を公開することは,上記条項に反するものではないと認められる。 し び本件不開示情報の性質のほか,上記(1)認定の本件結果通知書及び本件報告書の記載内容をも考慮すれば,本件条例に基づき本件不開示情報を公開することは,上記条項に反するものではないと認められる。 したがって,被控訴人の上記主張は採用することができない。 ウ本件条例7条3号該当性について被控訴人は,本件不開示情報は本件条例7条3号ア又はイに該当すると主張する。 しかし,上記アの本件不開示情報の性質に照らせば,これを秘すことにより守られる利益が,本件条例7条3号アにいう「当該法人等又は当該個人の(略)正当な利益」であると認めることはできない。 また,上記アの本件立入検査の趣旨,目的等のほか,消防法4条又は16条の5に基づく立入検査を拒むなどした者については罰則規定があり,この立入検査を受け入れることは防火対象物又は指定数量以上の危険物の貯蔵所等の所有者等の義務であるといえることを考慮すれば,従来,消防法に基づく立入検査の結果が公表されておらず,立入検査に際して検査結果を公表する旨を相手方に告げたこともなく,相手方が検査結果の公表を承諾して立入検査に応じたこともないという被控訴人主張の事実が認められるとしても,それだけでは,本件不開示情報が本件条例7条3号イにいう「公にしないことを条件として任意に提供された情報」であると認めることはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。なお,仮に,本件不開示情報の中に黙示的に上記条件を付した上で任意に提供された情報があるとしても,上記アの本件立入検査の趣旨,目的等及び本件不開示情報の性質に照らせば,その条件を付することが合理的であると認めることはできず,いずれにしろ,本件不開示情報が本件条例7条3号イに該当すると認めることはできない。 のみならず,防火対象物立入検査結果,危険物貯蔵状況等に関する情 件を付することが合理的であると認めることはできず,いずれにしろ,本件不開示情報が本件条例7条3号イに該当すると認めることはできない。 のみならず,防火対象物立入検査結果,危険物貯蔵状況等に関する情報が,本件条例7条3号ただし書に該当し公開すべきものであるということは,阿見町が作成した手引(38頁)に明記されている(手引は,本件条例その他の法令の一部ではないが,本件条例の解釈・運用の指針として阿見町が作成したものであるから,本件条例の文言を解釈する際の参考資料となることは当然である。)上,後記エのとおり,これを公にしても,以後,立入検査の相手方が検査を拒否することになるとは認められず,上記アの本件立入検査の趣旨,目的等にも照らせば,本件不開示情報は,上記ただし書に該当すると認めることができる。 したがって,いずれにしろ,本件条例7条3号を根拠に本件不開示情報を非公開とすることが許される旨の被控訴人の主張は,採用することができない。 エ本件条例7条4号該当性について被控訴人は,本件不開示情報は本件条例7条4号に該当するとし,その理由として,① 立入検査の結果を公表すると,以後,相手方が立入検査を拒否することが予想されるから,その後の立入検査が困難となり,従来,立入検査を実施することにより防止し得た火災及び2次被害を防止し得なくなるおそれがある,② 本件不開示情報を開示すれば,防災設備等が不十分な者が特定され,その程度も容易に知り得るところとなるから,放火等の犯罪を企てる者にとっては,格好の放火対象等の選定資料となり,犯罪の発生を助長しかねないと主張する。 しかし,まず上記①についてみると,本件立入検査は,ひとたび火災が発生すれば重大な被害が生ずるおそれのある法17条の防火対象物又は指定数量以上の危険物の貯蔵所等を対象とするもので,そ と主張する。 しかし,まず上記①についてみると,本件立入検査は,ひとたび火災が発生すれば重大な被害が生ずるおそれのある法17条の防火対象物又は指定数量以上の危険物の貯蔵所等を対象とするもので,その所有者等が,消防法により罰則によって間接的に強制されている立入検査を拒むなどした場合には,そのこと自体によって,その社会的信用が大きく失墜することは容易に予想することができるところ,そのような信用失墜の危険のほか,上記罰則が適用される危険すら顧みず,あくまで上記立入検査を拒む者が現れるということは,直ちには想定し難いというべきである。万一,そのような者が現れることがあったとしても,それは,極めて例外的な事例に止まるものと考えられ,そのような極めて例外的な事例の発生の可能性をもって,本件条例7条4号にいう「公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがある」と認めることはできない。なお,上記(1)キ認定のとおり,本件決定に先立ち被控訴人が行った本件条例16条所定の第三者保護に関する手続の結果によれば,本件文書の公開についての意見照会に対する66件の回答のうち1件において,仮に本件文書が公開されれば,今後の消防署への書類提出等は一切拒絶しますと明記したものがあったが,この回答(乙3)については,立入検査自体をそもそも拒絶する趣旨であるのか,その場合には罰則の適用があり得ることを知っているのか,立入検査の結果指摘された事項を改善しない場合にも,窮極的には罰則の適用があり得ることを知っているのかなどの事情が明らかではなく,しかも,本件文書の公開にここまで反発する意見を記載した回答は,本件立入検査の対象となった全190件中1件のみであることをも考慮すれば,上記回答をもって,上記①のおそれが具体的に認められるということはできない。 上記②についても同様 する意見を記載した回答は,本件立入検査の対象となった全190件中1件のみであることをも考慮すれば,上記回答をもって,上記①のおそれが具体的に認められるということはできない。 上記②についても同様であり,放火等の犯罪を企てる者が,消防法に基づく立入検査の結果を確認して対象物を選定した上,放火等の犯罪に及ぶなどということは,具体的な可能性としては極めて乏しいといえる上,本件結果通知書の指摘事項の記載内容は概括的,定型的なものでしかなく,これを知ったからといって,放火等の犯罪の実行にどのように資するのか疑問があることをも考慮すれば,上記②の理由をもって,本件条例7条4号にいう「公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがある」と認めることはできない。 したがって,被控訴人の上記主張は採用することができない。 オ本件条例7条7号該当性について被控訴人は,消防法4条に基づく立入検査権は,相手方の抵抗を実力で排除し得る直接強制権限ではないから,立入検査に際しては,相手方の任意の協力を得ることが必要不可欠であるところ,立入検査の結果を公表すれば,実施機関との間の信頼関係が損われ,相手方が立入検査を拒否し,立入検査の事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある,本件決定に先立つ本件条例16条に基づく意見照会に対し,立入検査先のうち複数の者が本件不開示情報に係る立入検査の結果の公開に否定的な態度を示しており,本件不開示情報を公開すれば,今後,立入検査を拒否する者が多数現れることは明らかであると主張する。 しかし,上記エで述べたとおり,本件不開示情報を公開したとしても,以後,消防法に基づく立入検査の相手方があくまでこれを拒否するおそれは具体的には認められず,まして,上記立入検査を拒否する者が多数現れるということは,到底認め難い。 したがって,被控 たとしても,以後,消防法に基づく立入検査の相手方があくまでこれを拒否するおそれは具体的には認められず,まして,上記立入検査を拒否する者が多数現れるということは,到底認め難い。 したがって,被控訴人の上記主張は採用することができない。 (3) 以上によれば,本件不開示情報については,これを非公開とすべき理由はなく,本件条例7条柱書きに基づき公開すべきものである。 3 本件欄外不開示情報について(1) 本件欄外不開示情報の内容は,上記2(1)ケ認定のとおりであるところ,被控訴人は,このような本件欄外不開示情報は,入力ミスを防止する目的で入力担当者が入力済みを示すチェックマーク代わりに私的に記載したものであり,本件条例2条にいう「公文書」に当たらず,そもそも,特定人の意思又は観念を表示した情報ではなく「文書」に当たらないと主張する。 しかし,上記2(1)ケ認定の事実によれば,本件欄外不開示情報は,被控訴人の職員が,本件文書の記載内容を電子データとして保存し,また,本件結果通知書において指摘事項が記載されている場合には当然に提出が求められる本件報告書の有無を確認するという職務において,その職員の意思又は観念を表示して作成したものであり,これを作成した職員以外の職員においても,その内容を認識し利用することが可能なものであって,被控訴人の職員が組織的に用いるものと認めることができる。 したがって,本件欄外不開示情報は,本件条例2条2号にいう「公文書」に該当すると認められ,被控訴人の上記主張は採用することができない。 (2) 上記2(1)ケ認定の事実及び上記(1)の説示によれば,本件欄外不開示情報は,客観的には,企業・氏名等を特定する部分には当たらない。しかし,上記2(1)ケ認定のとおり,被控訴人は,本件不開示情報と本件欄外不開示情報との情報と 上記(1)の説示によれば,本件欄外不開示情報は,客観的には,企業・氏名等を特定する部分には当たらない。しかし,上記2(1)ケ認定のとおり,被控訴人は,本件不開示情報と本件欄外不開示情報との情報としての性質の違いを考慮することなく,本件通知書の「非公開とする部分の概要」欄に「1.立入検査結果通知書(平成12年度分)の企業・氏名等を特定する部分」及び「2.改修(計画)報告書(平成12年度分)の企業・氏名等を特定する部分」とのみ記載した上で,本件欄外不開示情報をも非公開としたものであるから,被控訴人は,本件欄外不開示情報についても,企業・氏名等を特定する部分として非公開としたものとみるべきであり,この本件欄外不開示情報を非公開とした部分は,本件訴訟において,控訴人が本件決定について取消しを求める部分に含まれると認めるのが相当である。 そして,上記(1)の説示に加え,他に本件欄外不開示情報に係る非公開事由について特段の主張立証がないことに照らせば,本件欄外不開示情報を非公開とすべき理由はないといえ,本件条例7条柱書きに基づき,これを公開すべきものと解される。 4 以上によれば,控訴人の請求は理由があり,これと異なる原判決は失当であって,本件控訴は理由がある。 よって,原判決を取り消し,控訴人の請求を認容することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第14民事部裁判長裁判官西田美昭裁判官大段亨裁判官伊藤正晴
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