令和5年2月15日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成30年(ワ)第28931号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日令和4年10月5日判決 原告浜松ホトニクス株式会社 同訴訟代理人弁護士設樂隆一尾関孝彰寺下雄介松本直樹大澤恒夫深沢正志同訴訟復代理人弁護士河合哲志同訴訟代理人弁理士長谷川芳樹柴田昌聰同補佐人弁理士小曳満昭今村玲英子 被告株式会社東京精密 同訴訟代理人弁護士半場秀筬島裕斗志前田直哉三縄隆松村啓服部誠中村閑同訴訟復代理人弁護士柿本祐依同補佐人弁理士相田義明山下崇 主文 1 被告は、原告に対し、1億3116万1399円及びこれに対する平成30年11月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の各請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は、これを20分し、その19を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。 4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求等 3 訴訟費用は、これを20分し、その19を原告の負担とし、その余を被告の 負担とする。 4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求等 1 請求等 ⑴ 被告は、別紙対象製品目録記載の各製品(以下「各対象製品」という。)を製造し、使用し、譲渡し、貸し渡し若しくは輸出し、又は、譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。 ⑵ 被告は、各対象製品を廃棄せよ。 ⑶ 被告は、原告に対し、24億円及びうち21億円に対する平成30年11 月1日から、うち3億円に対する令和2年2月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ⑷ 仮執行宣言 2 答弁⑴ 原告の各請求をいずれも棄却する。 ⑵ 仮執行免脱宣言 第2 事案の概要本件は、原告が、被告に対し、①被告による各対象製品の製造、譲渡、輸出及び譲渡の申出は、原告の有する特許第4509578号の特許権(以下「本件特許権」という。)を侵害する等と主張して、本件特許権による差止請求権(特許法100条1項)に基づき、 各対象製品の製造、譲渡等の差止めを、廃棄等請求権(同条2項)に基づき、各対象製品の廃棄を求めるとともに、②被告による各対象製品の製造、譲渡等により、原告は本件特許権を侵害され損害を被り、又は、被告は法律上の原因なく原告の損失において利得したと主張して、㋐主位的に、不法行為による損害賠償請求権(民法709条)に基づ き、24億円及びうち21億円に対する不法行為より後の日である平成30年11月1日から、うち3億円に対する同令和2年2月1日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め、㋑予備的 行為より後の日である平成30年11月1日から、うち3億円に対する同令和2年2月1日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め、㋑予備的に、不当利得返還請求権(民法703条)に基づき、20億円及びうち17億5000万円に対する不当利得より後の日である平成 30年11月1日から、うち2億5000万円に対する同令和2年2月1日から支払済みまで上記同様の年5分の割合による利息(民法704条)の支払を求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実及び証拠上容易に認められる事実。証拠は文末に括弧で付記した。なお、書証は特記しない限り枝番を全て含む。以 下同じ。)⑴ 当事者原告は、電磁波機器、通信機器、医療機器等の研究、試作、製造及び販売等を目的とする株式会社である。 被告は、精密機械、工作機械及び各種専用機の製造修理及び販売等を目的 とする株式会社である。 (本項につき、弁論の全趣旨)⑵ 本件特許権原告は、以下の本件特許権を有する。(争いがない事実)登録番号特許第4509578号出願日平成16年1月9日 登録日平成22年5月14日発明の名称レーザ加工方法及びレーザ加工装置⑶ 特許請求の範囲の記載本件特許権に係る特許(以下「本件特許」という。また、本件特許の願書に添付した明細書及び図面を「本件明細書」という。)の特許請求の範囲の 請求項8、11の記載は次のとおりである。(甲1、2)【請求項8】 第一のレーザ光を加工対象物の内部に集光点を合わせて照射し、前記加工対象物の切断予定ラインに沿って前記加工対象物の内部に改質領域を形成するレーザ加工装置であ ある。(甲1、2)【請求項8】 第一のレーザ光を加工対象物の内部に集光点を合わせて照射し、前記加工対象物の切断予定ラインに沿って前記加工対象物の内部に改質領域を形成するレーザ加工装置であって、前記第1のレーザ光を前記加工対象物に向けて集光するレ ンズと、前記加工対象物と前記レンズとを前記加工対象物の主面に沿って移動させる移動手段と、前記レンズを前記主面に対して進退自在に保持する保持手段と、 前記移動手段及び前記保持手段それぞれの挙動を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は前記集光点が前記加工対象物内部の所定の位置に合う状態となる初期位置に前記レンズを保持するよ うに前記保持手段を制御し、 当該位置に前記レンズを保持した状態で前記第一のレーザ光を照射しながら、前記制御手段は前記加工対象物と前記レンズとを前記主面に沿って相対的に移動させるように前記移動手段を制御して前記切断予定ラインの一端部において改質領域を形成し、 前記切断予定ラインの一端部において改質領域が形成された後に、前記制御手段は前記レンズを前記初期位置に保持した状態を解除して前記レンズと前記主面との間隔を調整しながら保持するように前記保持手段を制御し、前記レンズと前記加工対象物とを前記主面に沿って相対的に移動さ せるように前記移動手段を制御して改質領域を形成する、レーザ加工装置。 【請求項11】前記切断予定ラインの一端部において改質領域が形成された後に、前記制御手段は前記レンズを前記初期位置に保持した状態を解除して前記レンズと前記主面との間隔を調整し ながら保持するように前記保持手段を制御し、前記レンズと前記加工対象物とを前記主面に沿って相対的に移動させるよう を前記初期位置に保持した状態を解除して前記レンズと前記主面との間隔を調整し ながら保持するように前記保持手段を制御し、前記レンズと前記加工対象物とを前記主面に沿って相対的に移動させるように前記移動手段を制御して改質領域を形成し、更に、前記制御手段は前記レンズを前記主面に向かう方向に駆動させずに保持するように前記保持手段を制御すると 共に、前記レンズと前記加工対象物とを前記主面に沿って相対的に移動させるように前記移動手段を制御する、請求項8~10のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。 請求項8に係る発明(以下「本件発明1」という。)及び請求項11に係る発明(「本件発明2」といい、本件発明1及び2を併せて「本件各発明」 という。)は次のとおり分説できる(以下、符号に応じて「構成要件1A」 などという。)。 ア本件発明11A 第一のレーザ光を加工対象物の内部に集光点を合わせて照射し、前記加工対象物の切断予定ラインに沿って前記加工対象物の内部に改質領域を形成するレーザ加工装置であって、 1B 前記第1のレーザ光を前記加工対象物に向けて集光するレンズと、1C 前記加工対象物と前記レンズとを前記加工対象物の主面に沿って移動させる移動手段と、1D 前記レンズを前記主面に対して進退自在に保持する保持手段 と、1E 前記移動手段及び前記保持手段それぞれの挙動を制御する制御手段と、を備え、1F 前記制御手段は前記集光点が前記加工対象物内部の所定の位置に合う状態となる初期位置に前記レンズを保持するよう に前記保持手段を制御し、1G 当該位置に前記レンズを保持した状態で前記第一 段は前記集光点が前記加工対象物内部の所定の位置に合う状態となる初期位置に前記レンズを保持するよう に前記保持手段を制御し、1G 当該位置に前記レンズを保持した状態で前記第一のレーザ光を照射しながら、前記制御手段は前記加工対象物と前記レンズとを前記主面に沿って相対的に移動させるように前記移動手段を制御して前記切断予定ラインの一端部において 改質領域を形成し、1H 前記切断予定ラインの一端部において改質領域が形成された後に、前記制御手段は前記レンズを前記初期位置に保持した状態を解除して前記レンズと前記主面との間隔を調整しながら保持するように前記保持手段を制御し、前記レンズ と前記加工対象物とを前記主面に沿って相対的に移動させ るように前記移動手段を制御して改質領域を形成する、1I レーザ加工装置。 イ本件発明22A 前記切断予定ラインの一端部において改質領域が形成された後に、前記制御手段は前記レンズを前記初期位置に保持し た状態を解除して前記レンズと前記主面との間隔を調整しながら保持するように前記保持手段を制御し、前記レンズと前記加工対象物とを前記主面に沿って相対的に移動させるように前記移動手段を制御して改質領域を形成し、2B 更に、前記制御手段は前記レンズを前記主面に向かう方向に 駆動させずに保持するように前記保持手段を制御すると共に、前記レンズと前記加工対象物とを前記主面に沿って相対的に移動させるように前記移動手段を制御する、2C 請求項8~10のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。 ⑷ 事実経過 アダイシングとは、半導体基板(半導体ウェハ)を切断してチップに分割することをい 段を制御する、2C 請求項8~10のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。 ⑷ 事実経過 アダイシングとは、半導体基板(半導体ウェハ)を切断してチップに分割することをいう。 原告は、一定の条件でレーザ光をウェハ内部に集光してウェハ内部において加工層を形成し、その後ウェハに引っ張り応力を加え、ウェハ表面に形成される集積回路に損傷を与えずに加工層を起点としてウェハを分 割することを、ステルスダイシング(StealthDicing)と呼んでいた。 (甲3、弁論の全趣旨)イ原告及び被告は、●(省略)●(甲5、6、乙1、弁論の全趣旨)原告及び被告は、本件業務提携契約に基づき、原告が製造したSDエンジン(以下「原告エンジン」ということがある。)を被告に販売するなど の取引を行った。原告エンジンを用いて被告が製造、販売したSD装置に は、原告の許諾の下、原告の商号、「SDE」、「StealthDicingEngineinside!」との文字等が記載されている「SDEプレート」(以下「本件プレート」という。)が貼付されていた。(甲12、弁論の全趣旨)なお、原告は、被告のほか、株式会社ディスコ(以下「ディスコ社」という。)にも原告エンジンを販売していた。(弁論の全趣旨) ウ原告及び被告は、平成26年10月8日、打合せ(以下「10月8日打合せ」という。)を行った。 被告は、平成27年頃から、独自に開発したSDエンジン(NS900、以下「被告エンジンB」という。)を搭載したSD装置である別紙対象製品目録記載1⑵Bの製品(以下「対象製品1⑵B」という。)を製造 し、海外の法人に販売するようになった。 その後、原告が被告に上記の製造、販売の中止を求めたことがあったが、被告は 別紙対象製品目録記載1⑵Bの製品(以下「対象製品1⑵B」という。)を製造 し、海外の法人に販売するようになった。 その後、原告が被告に上記の製造、販売の中止を求めたことがあったが、被告はこれを中止しなかった。 一方、原告は、平成28年9月まで被告に原告エンジンを販売していたところ、被告は、これを用いてSD装置(型番:ML300Plus Ⅲ、ML300PlusV、ML200PlusⅢ及びML200PlusV)を製造、販売していた。 本件業務提携契約は、●(省略)●に終了し、被告は、対象製品1⑵Bの受注を中止した。 被告は、平成28年3月から平成30年8月まで、別紙対象製品1⑵B 売上一覧記載のとおり、いずれも海外の法人である三星電子株式会社(以下「サムスン社」という。)、テキサスインスツルメント(以下「TI社」という。)、SKハイニックス株式会社(以下「SKハイニックス社」という。)、STATSチップPAC、シングネティクスに対し、合計●(省略)●台の対象製品1⑵Bを販売した。 (争いがない事実のほか、乙18~20、弁論の全趣旨) エ被告は、平成29年12月14日に開催された展示会において、「ML300EX Series/ML200EX」と題し、「ML300EX」、「ML300EXFH」及び「ML300EXFHWH」について「300mmウエーハに対応したレーザーダイシングマシン。適応するアプリケーションに応じてローダ仕様を選択可能。」などと、 「ML200EX」について「200mmウエーハに対応したレーザーダイシングマシン」などと記載し、「ML200EX」との銘板が貼付されたSD装置の写真を掲載したパネルを展示した。(甲10、弁論の全趣旨)オ被告は、被告エンジンBとは エーハに対応したレーザーダイシングマシン」などと記載し、「ML200EX」との銘板が貼付されたSD装置の写真を掲載したパネルを展示した。(甲10、弁論の全趣旨)オ被告は、被告エンジンBとは別にSDエンジン(以下「被告エンジンA」 という。)を開発し、本件業務提携契約終了後、これを搭載したSD装置である別紙対象製品目録記載1⑴及び1⑵Aの製品(以下、順に「対象製品1⑴」、「対象製品1⑵A」といい、対象製品1⑴、1⑵A及び1⑵Bを併せて「対象製品1」という。)の販売の申出を開始し、その後、これらを販売するようになった。(争いがない事実のほか、弁論の全趣旨) 被告は、平成30年3月以降、少なくとも合計●(省略)●台の対象製品1⑴及び1⑵Aを製造し、譲渡し、輸出し、譲渡の申出をした。 また、被告は、販売済みの対象製品1⑵Bについて、順次、搭載されている被告エンジンBを被告エンジンAに交換する改造を行った。 被告は、令和3年12月をもって、対象製品1⑴及び1⑵Aの製造、販 売等を終了した。 (争いがない事実のほか、乙126、131、132、弁論の全趣旨)⑸ 対象製品1ア対象製品1の基本的構成対象製品1は、レーザ加工装置であり(構成要件1I)、加工用レーザ 光を、加工対象物であるシリコンウェハの内部に集光点を合わせて主に シリコンウェハの裏面すなわち主面から照射し(例えば、NAND型フラッシュメモリ又はDRAMが形成されたシリコンウェハを切断してメモリチップを切り出す加工を行う場合、シリコンウェハの表面にはメモリが形成されていることから、これとは反対側の裏面から加工用レーザ光を入射させる。)、シリコンウェハ内部で加工用レーザ光の集光点を 走査することにより、シリコンウェハの切断予定ライン( にはメモリが形成されていることから、これとは反対側の裏面から加工用レーザ光を入射させる。)、シリコンウェハ内部で加工用レーザ光の集光点を 走査することにより、シリコンウェハの切断予定ライン(切断起点であるレーザ加工領域を形成するための加工用レーザ光の集光点を通過させることを予定する所望のライン)に沿って、シリコンウェハの内部にレーザ加工領域を形成する。 対象製品1は、筐体、ステージ(X、Y、θ軸)、搬送系、SDエンジ ン及び制御用ソフトウェアによって構成される。SDエンジンは、レーザ加工エンジンユニット、Z軸ステージ及びソフトウェア設計から成る。 対象製品1のレーザ加工エンジンユニットは、加工用レーザ光の光源、加工用レーザ光をシリコンウェハに向けて集光する対物レンズ(構成要件1B)、及び、加工用レーザ光を対物レンズに導く加工用レーザ光の 光学系から成るレーザ照射機構と、測距用レーザ光の光源、シリコンウェハの主面で反射された測距用レーザ光を検出する位置検出素子、及び、測距用レーザ光をシリコンウェハの主面に照射し、シリコンウェハの表面で反射された測距用レーザ光を位置検出素子の受光部に導く光学系から成るオートフォーカス(AF)ユニットを含む。 ステージのうちX軸は、カッティングテーブルをX軸方向に移動することにより、その主面(加工用レーザ光の入射面)がXY平面と平行となるようにカッティングテーブルに支持、固定されたシリコンウェハを対物レンズに対して移動(走査)させる、すなわち、シリコンウェハと対物レンズとをシリコンウェハの主面に沿って相対的に移動させる(加工 用レーザ光を照射しつつ上記走査をさせることにより、シリコンウェハ の内部で加工用レーザ光の集光点を走査させて、レーザ加工領域を形成すなわちレ ェハの主面に沿って相対的に移動させる(加工 用レーザ光を照射しつつ上記走査をさせることにより、シリコンウェハ の内部で加工用レーザ光の集光点を走査させて、レーザ加工領域を形成すなわちレーザ加工する。)(構成要件1C)。 レーザ加工エンジンユニットは、対物レンズ保持機構を備え、ピエゾアクチュエータを駆動して、シリコンウェハの主面のうねり(反り)に合わせて対物レンズの高さ(Z軸上の位置)を微調整することができ、し たがって、対物レンズをシリコンウェハの主面に対して進退自在に保持する(構成要件1D)。具体的には、Z軸ステージがZ軸方向に移動することにより、シリコンウェハのXY平面上の所定の点(例えば、中心)で加工用レーザ光の集光点がシリコンウェハの内部の所定の深さに位置するように対物レンズの高さを調整(ハイト調整)する。その後、加工 に当たり、対物レンズ保持機構において、対物レンズの走査中、AFユニットにより測距用レーザ光の反射光に基づき対物レンズとシリコンウェハの主面との距離(ないし上記の高さ調整時からの変位)を測定し、同測定値に基づきピエゾアクチュエータを制御することによって、シリコンウェハの主面と対物レンズとの間の距離を一定に維持し、これによ り加工用レーザ光の集光点を上記の高さ調整をした際の所定の深さに維持する(オートフォーカス追従、以下「AF追従」という。)。 対象製品1は、制御機構を備え、ステージ及び対物レンズ保持機構の挙動をコンピュータシステムによって制御する(構成要件1E)。 以上のとおり、対象製品1は、構成要件1Bから1E、1Iを充足する。 なお、ここで加工対象とされているシリコンウェハの厚さは、例えば775μm程度であり、そのうねり(反り)の程度は、概ね±3μmである。 (本項に は、構成要件1Bから1E、1Iを充足する。 なお、ここで加工対象とされているシリコンウェハの厚さは、例えば775μm程度であり、そのうねり(反り)の程度は、概ね±3μmである。 (本項につき、争いがない事実のほか、甲13、乙29、弁論の全趣旨)イ対象製品1⑵B対象製品1⑵Bは、被告エンジンBを搭載した製品である。 対象製品1⑵Bは、AF追従が難しいシリコンウェハの端部(ウェハエ ッジ。面取り加工(ベベル加工)されシリコンウェハの端から0.5mm程度丸みを帯びている場合と、面取り加工されていない場合とがある。)から所定の距離の範囲においては、ピエゾアクチュエータを制御し、AF追従を停止して対物レンズをシリコンウェハの所定の点で加工用レーザ光の集光点がシリコンウェハの内部の所定の深さに位置するよ うな高さに調整された位置(前記ア)に固定する(ただし、わずかな上下動を許容する。以下、AF追従を停止して対物レンズを固定することを「AF固定」という。)機能を有し、シリコンウェハの端部から所定の距離の範囲においてAF固定の状態でレーザ加工を行った後に、AF固定を解除して、AF追従の状態でレーザ加工を行う。すなわち、対象 製品1⑵Bは、「シリコンウェハの所定の点で加工用レーザ光の集光点がシリコンウェハの内部の所定の深さに位置するような高さに調整された位置」に、すなわち、「初期位置に」対物レンズを「保持」する(構成要件1F、1G、1H、2A)。 また、対象製品1⑵Bは、AF追従の状態でのレーザ加工終了後、対物 レンズがシリコンウェハの端部を超えて走査終了位置に至ると、対物レンズをAF追従を終了した時点又はそれより所定の距離戻った位置における高さに固定した状態で、カッティングテーブルをX軸方向に動か レンズがシリコンウェハの端部を超えて走査終了位置に至ると、対物レンズをAF追従を終了した時点又はそれより所定の距離戻った位置における高さに固定した状態で、カッティングテーブルをX軸方向に動かす。 (本項につき、争いがない事実のほか、乙54、弁論の全趣旨)ウ対象製品1⑴及び1⑵A 対象製品1⑴及び1⑵Aは、被告エンジンAを搭載した製品である。 対象製品1⑴及び1⑵Aにおいては、シリコンウェハの形状計測結果等を基に算出した想定されるシリコンウェハの端部突入時のピエゾアクチュエータの位置(以下「想定位置」という。)を規定し、これにより対物レンズを保持する。また、対象製品1⑴及び1⑵Aにおいては、加工 対象物の検出方法として、加工対象物が面取り部分のあるシリコンウェ ハである場合には、座標基準(エンコーダ基準)を採用し、あらかじめ記憶させたシリコンウェハの中心の位置及び中心からの距離等を基にシリコンウェハの存在を推定し検出し、他方、加工対象物が面取り部分のないシリコンウェハである場合には、加工対象物の存在ないし位置を検出する方法として照射した測距用レーザ光の反射光量によって加工対象 物の端部などを検出する光量基準を採用し、シリコンウェハの現実の端を検出する。 そして、対物レンズの走査が開始されてからシリコンウェハの端部までの範囲においては、ピエゾアクチュエータを想定位置に固定するよう制御し、これにより対物レンズをAF固定する。次に、シリコンウェハの 端部から所定の距離の範囲においては、想定位置の値、及び、現実のシリコンウェハの主面の高さと現実のピエゾアクチュエータとの距離の測定値に一定の係数(0.8)を乗じた値(具体的には、計算式〔想定位置の値+(現実のシリコンウェハの主面の高さの値- 値、及び、現実のシリコンウェハの主面の高さと現実のピエゾアクチュエータとの距離の測定値に一定の係数(0.8)を乗じた値(具体的には、計算式〔想定位置の値+(現実のシリコンウェハの主面の高さの値-現実のピエゾアクチュエータの位置の値)×0.8〕によって求められる値)に基づく、所 定の上限値の範囲内の値(以下「制御指令値」という。)により、ピエゾアクチュエータを制御し、その結果、シリコンウェハの端部から所定の距離の範囲においては、対物レンズを緩やかなAF追従(以下「低追従」という。)の状態で走査する(以下、対物レンズを低追従の状態で走査する範囲を「低追従領域」という。)。低追従領域のうち、シリコ ンウェハの端部から一定の範囲においては加工用レーザ光を照射せず(以下、レーザ加工を行わないシリコンウェハの端部から一定の範囲を「非加工領域」という。)、この非加工領域を超えた時点で、対物レンズを低追従の状態で走査しながら加工用レーザ光を照射してレーザ加工を開始する。更にその後(低追従領域を超えた時点で)、対物レンズを 低追従の状態からAF追従の状態に切り替える。 また、対象製品1⑴及び1⑵Aは、AF追従の状態でのレーザ加工終了後、対物レンズがシリコンウェハの端部を超えて走査終了位置に至ると、対物レンズをピエゾアクチュエータが想定位置に固定されるよう制御した状態で保持し、カッティングテーブルをX軸方向に動かす。 もっとも、対象製品1⑴及び1⑵Aは、制御機構において、グラフィカ ルユーザインターフェース(GUI)から、コンピュータのパラメータを調整してアプリケーションないしシステムを作成、調整することにより、加工対象物の存在ないし位置を検出する方法を選択したり、対物レンズがシリコンウェハの外側の走査開始の待機位置( ュータのパラメータを調整してアプリケーションないしシステムを作成、調整することにより、加工対象物の存在ないし位置を検出する方法を選択したり、対物レンズがシリコンウェハの外側の走査開始の待機位置(以下「走査開始待機位置」という。)にあるときから加工用レーザ光を照射するよう設定 したりすることが可能である。 被告は、低追従についての発明について特許権(特許第6481842号、特許第6608519号)を有する。 (本項につき、争いがない事実のほか、乙60、61、64、弁論の全趣旨) ⑹ 訴訟経過等ア原告は、平成29年11月13日、被告に対し、原告はステルスダイシングに関して日本国における150以上の特許権その他海外における多数の特許権から成る特許ポートフォリオを有しており、被告によるSD装置等の製造、販売等は、原告の上記特許ポートフォリオを侵害するな どとして、SD装置等の製造、販売等を中止するよう求めた。(甲9)イ原告は、平成30年9月7日、被告によるSD装置等の製造、販売等に関し、本件訴えを提起したほか、原告が有する特許第3935188号の特許権及び特許第3990711号の特許権(以下、これらの特許権に係る特許を順に、「188特許」、「711特許」という。)の侵害を理由 とする訴え(東京地方裁判所平成30年(ワ)第28929号、以下「別 件訴訟1」という。)並びに特許第3867108号の特許権及び特許第4601965号の特許権(以下、これらの特許権に係る特許を順に、「108特許」、「965特許」という。)の侵害を理由とする訴え(同平成30年(ワ)第28930号、以下「別件訴訟2」といい、別件訴訟1及び2を併せて「各別件訴訟」という。)をそれぞれ提起した。 東京地方 965特許」という。)の侵害を理由とする訴え(同平成30年(ワ)第28930号、以下「別件訴訟2」といい、別件訴訟1及び2を併せて「各別件訴訟」という。)をそれぞれ提起した。 東京地方裁判所は、令和3年8月10日、別件訴訟1について、原告の被告に対する188号特許及び711号特許に係る各特許権による差止請求権及び廃棄請求権に基づく各対象製品を含む被告の製品についてその製造、譲渡等の差止請求及び廃棄請求を認める旨の判決をした。被告は同判決に対し控訴し、その後、原告は188号特許に係る特許権に関する訴え を取り下げ、令和4年9月5日、控訴を棄却する旨の判決がされた(知的財産高等裁判所令和3年(ネ)第10101号)。 (本項につき、当裁判所に顕著な事実のほか、弁論の全趣旨)ウ被告は、令和3年6月22日付けで、本件特許について特許無効審判を請求した(無効2021-800050)が、審判請求は成り立たない旨 の審決がされたことから、令和4年、同審決に対する訴えを提起した(知的財産高等裁判所令和4年(行ケ)第10099号)。(乙76、122、弁論の全趣旨) 2 争点及び争点に関する当事者の主張本件の争点は次のとおりである。 ① 被告が対象製品2を製造、販売等したか。 ② 対象製品1⑵Bが本件各発明の技術的範囲に属するか。 ③ 対象製品1⑴、1⑵A及び2が本件各発明の技術的範囲に属するか。 ④ 本件特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか。 無効理由1 サポート要件違反 無効理由2 明確性要件違反 無効理由3 実施可能要件違反⑤ 原告が被告に対し対象製品1⑵Bの製造等につき許諾を与えたか。 ⑥ 被告が各対象製品を製造等 無効理由2 明確性要件違反 無効理由3 実施可能要件違反⑤ 原告が被告に対し対象製品1⑵Bの製造等につき許諾を与えたか。 ⑥ 被告が各対象製品を製造等するおそれがあるか。 ⑦ 廃棄の必要があるか。 ⑧ 原告の受けた損害又は損失及び額 ⑨ 原告に過失があるか、また、これを考慮して損害賠償額を定めるべきか。 ⑴ 争点①(被告が対象製品2を製造、販売等したか。)について(原告の主張)被告は、対象製品2を製造、販売等した。 (被告の主張) 対象製品2は存在しておらず、被告がこれを販売したことはない。 ⑵ 争点②(対象製品1⑵Bが本件各発明の技術的範囲に属するか。)について(原告の主張)対象製品1⑵Bは、構成要件1A、1F、1G及び1H並びに2A及び2 Bをいずれも充足し、その他本件発明1の構成要件を充足するから、構成要件2Cを充足し、本件各発明の技術的範囲に属する。 ア改質領域の形成(構成要件1A、1G、1H及び2A)について「改質領域」は、多光子吸収によって形成されるものに限定されない。 本件明細書の記載は、本件各発明の最良の実施形態に関するものである。 また、本件各発明は、レーザ光の集光点のずれを極力少なくしつつ効率よくレーザ加工を行うことができるレーザ加工装置を提供することを目的とし、レンズの保持態様等により課題を解決するものであり、レーザ加工により形成される改質領域が多光子吸収によるものか単光子吸収によるものかは発明の目的や課題解決手段とは無関係である。なお、現在 の科学的知見によれば、レーザ光を加工対象物の内部に集光点を合わせ て照射する(レーザ光のエネルギーを吸収させる)ことによる改質領域の形成は、多 課題解決手段とは無関係である。なお、現在 の科学的知見によれば、レーザ光を加工対象物の内部に集光点を合わせ て照射する(レーザ光のエネルギーを吸収させる)ことによる改質領域の形成は、多光子吸収のみならずレーザ光の波長によっては単光子吸収によってもされることがあるとされているが、当業者は、本件特許出願当時、上記の改質領域の形成は多光子吸収によってされるものと理解していた。したがって、本件明細書には同理解に従った記載がされている が、単光子吸収によって改質領域が形成される場合を排除する趣旨ではなく、上記場合も本件各発明の技術的範囲に含まれる。 対象製品1⑵Bは、レーザ光を加工対象物であるシリコンウェハの内部に集光点を合わせて照射し、集光点を走査することによって、集光点及びその上部に「改質領域を形成」する。 イレンズの保持態様(構成要件2B)について「主面に向かう方向」及び「主面に沿って」は、主面に垂直及び水平な方向を意味するにすぎず、レンズが加工対象物の上に存在することを要しない。 ウ切断予定ラインの一端部における改質領域の形成(構成要件1G、1H 及び2A)について「切断予定ラインの一端部」は、本件明細書において何ら限定されておらず、また、課題の解決という観点からも、対物レンズを初期位置に保持する範囲はレーザ光のずれをもたらす加工対象物の形状変動全体を含むのが望ましく、形状変動はシリコンウェハの面取り部分に限定されな い(本件各発明はシリコンウェハのみを加工対象物として想定しているわけではない。)から、加工対象物において使用者が切断を所望、予定するラインの一方の端部と理解すべきである。 対象製品1⑵Bは、初期位置保持領域において対物レンズを保持した状態で ているわけではない。)から、加工対象物において使用者が切断を所望、予定するラインの一方の端部と理解すべきである。 対象製品1⑵Bは、初期位置保持領域において対物レンズを保持した状態で加工用レーザを照射し加工対象物にレーザ加工を行うから、「切断 予定ラインの一端部において改質領域を形成し」ている。 エ制御手段(構成要件1F、1G、1H、2A及び2B)についてアプリケーション及びシステムの作成、調整は、パラメータの調整によってされるところ、パラメータ調整が販売後にされることをもって、制御手段が完成していないとはいえない。 したがって、対象製品1⑵Bは、「制御手段」を備える。 (被告の主張)対象製品1⑵Bは、販売後、被告エンジンBを被告エンジンAに交換しており、現在、対象製品1⑵Bは存在しない。 対象製品1⑵Bは、構成要件1A、1F、1G及び1H並びに2A及び2B、ひいては構成要件2Cを充足せず、したがって、本件各発明の技術的範 囲に属しない。 ア改質領域の形成(構成要件1A、1G、1H及び2A)について「改質領域」とは、本件明細書の記載によれば、多光子吸収によって形成されるものを意味する。 対象製品1⑵Bにおいては、多光子吸収によって加工領域が形成される ことはないから、「改質領域」は形成されない。 イレンズの保持態様(構成要件2B)について「レンズを…主面に向かう方向に駆動させずに保持する…と共に…主面に沿って相対的に移動させる」は、レンズが加工対象物の上にあることを前提とする。 対象製品1⑵Bは、対物レンズがシリコンウェハ上にある間はAF追従を行っており、対物レンズを保持していない。 ウ切断予定 レンズが加工対象物の上にあることを前提とする。 対象製品1⑵Bは、対物レンズがシリコンウェハ上にある間はAF追従を行っており、対物レンズを保持していない。 ウ切断予定ラインの一端部における改質領域の形成(構成要件1G、1H及び2A)について「切断予定ラインの一端部」とは、シリコンウェハの面取り部分を意味 するところ、面取り部分は一般に加工対象ではない。すなわち、面取り 部分を有しないシリコンウェハは、本件各発明の課題に直面しておらず、本件明細書にも記載はないから、本件各発明における加工対象物は面取り部分を有するシリコンウェハに限定され、かつ「切断予定ラインの一端部」とはシリコンウェハの面取り部分を意味すると理解すべきである。 また、本件明細書には、対物レンズの高さを初期位置に保持する制御を 解除する時点については、反射光全光量基準で観測する方法しか開示されていないから、同方法により観測した時点において上記制御を解除するものと理解すべきであり、結局「一端部」はシリコンウェハの面取り部分を意味する。 対象製品1⑵Bは、シリコンウェハの端部においてAF固定制御を行っ ているが、当該部分においてレーザ加工をしておらず、シリコンウェハの面取り部分すなわち「切断予定ラインの一端部において改質領域を形成し」ていない。 エ制御手段(構成要件1F、1G、1H、2A及び2B)について対象製品1⑵Bは、販売後に、客先においてアプリケーション及びシス テムを作成、調整することにより、初めてAF追従に係る制御手段が完成、実現する。そして、被告は、対象製品1⑵Bを海外の顧客にのみ販売している。すなわち、対象製品1⑵Bの制御手段は国内では完成しておらず、海外で初めて完成するから、対象製品 F追従に係る制御手段が完成、実現する。そして、被告は、対象製品1⑵Bを海外の顧客にのみ販売している。すなわち、対象製品1⑵Bの制御手段は国内では完成しておらず、海外で初めて完成するから、対象製品1⑵Bは、国内に存在する限り、構成要件1F、1G、1H、2A及び2Bを充足しない。 ⑶ 争点③(対象製品1⑴、1⑵A、2が本件各発明の技術的範囲に属するか。)について(原告の主張)対象製品1⑴、1⑵A及び2は、構成要件1A、1F、1G及び1H並びに2A及び2Bをいずれも充足し、その他本件発明1の構成要件を充足する から、構成要件2Cを充足し、本件各発明の技術的範囲に属する。 ア改質領域の形成(構成要件1A、1G、1H及び2A)について「改質領域」は、多光子吸収によって形成されるものに限定されない(前記⑵(原告の主張)ア)。 対象製品1⑴、1⑵A及び2は、レーザ光を加工対象物であるシリコンウェハの内部に集光点を合わせて照射し、集光点を走査することによっ て、集光点及びその上部に「改質領域を形成」する。 イ対物レンズの保持態様(構成要件1F、1G、1H、2A及び2B)についてレンズを「初期位置に」「保持」するとは、結果として得られる状態をいうにすぎず、固定する制御をする場合に限定されない。また、「主面 に向かう方向」及び「主面に沿って」は、主面に垂直及び水平な方向を意味するにすぎず、レンズが加工対象物の上に存在することを要しない。 対象製品1⑴、1⑵A及び2は、対物レンズを初期位置に保持した状態で切断予定ラインの一端部においてレーザ光を照射して改質領域を形成するものであり、「初期位置に…レンズを保持」している。また、対象 製品1⑴、1⑵A及び2は、加工対象 を初期位置に保持した状態で切断予定ラインの一端部においてレーザ光を照射して改質領域を形成するものであり、「初期位置に…レンズを保持」している。また、対象 製品1⑴、1⑵A及び2は、加工対象物のレーザ加工終了後、対物レンズをAF追従が終了した時点等の高さに、「レンズを…主面に向かう方向に駆動させずに保持」するとともに、「レンズと…加工対象物とを…主面に沿って相対的に移動させる」。すなわち、シリコンウェハの端部は欠けを防止するため面取りされて丸みを帯びていることから高低差が 大きく、また、シリコンウェハの表面に積層部(機能素子)を構成する際に使用した材料が主面(裏面)側に回り込んで堆積するなどしてAF追従不可能な形状変更を来していることがあるため、シリコンウェハの端部においてAF固定する機能なく加工を行うことは不可能であり、標準的なAF追従開始位置はX軸座標5mm地点である。したがって、対 象製品1⑴、1⑵及び2は、AF固定機能を有しているはずである。そ して、対象製品1⑴、1⑵A及び2は、AF低追従制御を行う際には、所定の上限値の範囲内でピエゾアクチュエータを制御しているというのであり、対物レンズと加工対象物との主面との間隔を目標距離に維持する制御を行わず(したがって、「…レンズと…主面との間隔を調整しながら保持するように…保持手段を制御し」(構成要件1H)ていな い。)、実際にもX軸座標0から10mmの区間においては対物レンズの位置は変位しないよう制御されているから、同区間において初期位置に対物レンズを保持しているというべきである。 ウ切断予定ラインの一端部における改質領域の形成(構成要件1G、1H及び2A)について 「切断予定ラインの一端部」は、加工対象物において使用者が切 いるというべきである。 ウ切断予定ラインの一端部における改質領域の形成(構成要件1G、1H及び2A)について 「切断予定ラインの一端部」は、加工対象物において使用者が切断を所望、予定するラインの一方の端部と理解すべきである(前記⑵(原告の主張)イ)。また、「切断予定ラインの一端部において改質領域が形成された後に」とは、対物レンズの高さを初期位置に保持する制御を解除する時点を、「切断予定ラインの一端部において改質領域が形成された 後」のどの時点とするかは特定していない。 対象製品1⑴、1⑵A及び2は、対物レンズが走査開始待機位置にあるときから加工用レーザを照射することができ、加工対象物の端部を始点とするあらかじめ設定された所定の距離の区間(典型的には5mm)においてAF固定制御又はAF低追従制御をしてレーザ加工をすることが できる。具体的には、対象製品1⑴、1⑵A及び2においては、加工対象物の位置の検出方法として光量基準を選択し、かつ、対物レンズが走査開始待機位置にあるときから加工用レーザ光を照射するよう設定することが可能であり、これにより、面取り部分のあるシリコンウェハについて、光量基準によりシリコンウェハの端部として検出される実際のシ リコンウェハの端部より内側の点まで、対物レンズを固定したまま加工 用レーザ光を照射することができ、すなわち、シリコンウェハの一端部においてAF固定制御をしてレーザ加工をすることができ、実際、主面に近い深さ(少なくとも主面から約65μmの深さ)では面取り部分においても改質領域の形成が可能である。なお、面取り部分のあるシリコンウェハの加工において光量基準を選択することは例えば後工程請負業 者の行う4分の1シリコンウェハ小片を用いた切断加工試験にお においても改質領域の形成が可能である。なお、面取り部分のあるシリコンウェハの加工において光量基準を選択することは例えば後工程請負業 者の行う4分の1シリコンウェハ小片を用いた切断加工試験において実用的であり、対象製品を購入した業者が自ら加工条件を調整、設定をすることは可能である。したがって、対象製品1⑴、1⑵A及び2は、「切断予定ラインの一端部において改質領域を形成し」ている。 エ制御手段(構成要件1F、1G、1H、2A及び2B)について パラメータ調整が追ってされることをもって、制御手段が完成していないとはいえない(前記⑵(原告の主張)ウ)。 したがって、対象製品1⑴、1⑵A及び2は、「制御手段」を備える。 (被告の主張)対象製品1⑴及び1⑵Aは、構成要件1A、1F、1G及び1H並びに2 A及び2B、ひいては構成要件2Cを充足せず、したがって、本件各発明の技術的範囲に属しない。 ア改質領域の形成(構成要件1A、1G、1H及び2A)について「改質領域」とは、多光子吸収によって形成されるものを意味する(前記⑵(被告の主張)ア)。 対象製品1⑴及び1⑵Aにおいては、多光子吸収によって領域が形成されることはなく、すなわち改質領域は形成されない。 イレンズの保持態様(構成要件1F、1G、1H、2A及び2B)についてレンズを「初期位置に」「保持」するとは、レンズを初期位置に固定す ることをいう。また、「レンズを…主面に向かう方向に駆動させずに保 持する…と共に…主面に沿って相対的に移動させる」は、レンズが加工対象物にあることを前提とする。 対象製品1⑴及び1⑵Aは、シリコンウェハ端部から所定の距離の範囲においてもAF追従を停止してAF固定 する…と共に…主面に沿って相対的に移動させる」は、レンズが加工対象物にあることを前提とする。 対象製品1⑴及び1⑵Aは、シリコンウェハ端部から所定の距離の範囲においてもAF追従を停止してAF固定することはなく、シリコンウェハが存在する領域全体において対物レンズをシリコンウェハの主面に対 して進退自在に保持しており、一定の領域において対物レンズを特定の「初期位置に」「保持」するということはない。対象製品1⑴及び1⑵Aは、シリコンウェハの端(ウェハエッジ)から所定の距離の範囲においては、シリコンウェハの形状計測結果等から算定した測距用レーザ光の集光点の高さの値と、対物レンズとシリコンウェハの主面との距離の 測定値に一定の係数を乗じた値に基づいて、所定の上限値の範囲内でピエゾアクチュエータを制御しており、その結果、シリコンウェハの端部から所定の距離の範囲においてはAF低追従を行う。そして、ピエゾアクチュエータが対物レンズとシリコンウェハの主面との距離の測定値に基づいて制御されることから明らかなように、シリコンウェハの端部か ら所定の距離の範囲においても、対物レンズを特定の位置に保持しておらず、AF追従によって変位させており、変位量が小さいことから直ちに固定しているということになるものではない。AF低追従制御においては、対物レンズと主面との距離が所定の距離よりも長い場合には対物レンズを下降させ、対物レンズと主面との距離が所定の距離よりも短い 場合には対物レンズを上昇させるから、「…レンズと…主面との間隔を調整しながら保持するように…保持手段を制御し」(構成要件1H)ているものであり、対物レンズを「初期位置に」「保持」していない。なお、制御開始点付近では物理法則に従い動き出しの変位は小さくなるのであり、制御開始点付 るように…保持手段を制御し」(構成要件1H)ているものであり、対物レンズを「初期位置に」「保持」していない。なお、制御開始点付近では物理法則に従い動き出しの変位は小さくなるのであり、制御開始点付近で対物レンズの変位量が小さくなることは技術 上の制約から不可避である。また、対象製品1⑴及び1⑵Aは、対物レ ンズがシリコンウェハ上にある間はAF追従を行っており、対物レンズを保持していない。 ウ切断予定ラインの一端部における改質領域の形成(構成要件1G、1H及び2A)について「切断予定ラインの一端部」とは、シリコンウェハの面取り部分を意味 するところ、面取り部分は一般に加工対象ではない(前記⑵(被告の主張)イ)。 対象製品1⑴及び1⑵Aは、シリコンウェハの端部からAF低追従及びAF追従制御を行っており、しかも、当該部分においてレーザ加工をしておらず、対物「レンズを保持した状態」でシリコンウェハの面取り部 分すなわち「切断予定ラインの一端部において改質領域を形成し」ていない。対象製品1⑴及び1⑵Aにおいては、座標基準により加工対象物の位置を検出するようアプリケーションを設定しており、これらによりシリコンウェハを量産加工する際、光量基準を選択して面取り部分のあるシリコンウェハを加工することはなく、被告は利用者が独断でそのよ うな設定をしている事実も認識していない。仮に、利用者が独断でそのような設定をした場合には、そのような制御を行う製品を完成させたのは利用者であって被告ではない。仮に、光量基準を選択し、かつ、対物レンズが走査開始待機位置にあるときから加工用レーザ光を照射するよう設定して、面取り部分を有するシリコンウェハを加工したとしても、 主面から遠い深さのみならず主面に近い深さでも面取り部分 対物レンズが走査開始待機位置にあるときから加工用レーザ光を照射するよう設定して、面取り部分を有するシリコンウェハを加工したとしても、 主面から遠い深さのみならず主面に近い深さでも面取り部分において改質領域を形成することはできない。そもそも、対象製品1⑴及び1⑵Aにおいては、面取り部分を有するシリコンウェハ(厚さ775μm)について主面から約65μmという浅い部分にレーザ加工をすることはない。なお、被告は、対象製品1⑴及び1⑵Aにおいてアプリケーション 設定を行う際には光量基準を用いているが、その際でも面取り部分を有 しないシリコンウェハを用いて切断加工試験を行っている。 エ制御手段(構成要件1F、1G、1H、2A及び2B)について対象製品1⑴及び1⑵Aの制御手段は国内では完成しておらず、海外で初めて完成するから、対象製品1⑴及び1⑵Aは、国内に存在する限り、構成要件1F、1G、1H、2A及び2Bを充足しない。 ⑷ 争点④(本件特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか。)について(被告の主張)本件特許には、次のとおり無効理由があり、特許無効審判により無効にされるべきものである。 ア無効理由1(サポート要件違反) 本件明細書では、改質領域の形成は多光子吸収によってされるとされている一方、本件各発明は、改質領域の形成が単光子吸収によってされる場合も含むというのであるから、本件各発明は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。 本件明細書では、加工対象物の端部にレンズを保持した状態でレーザ光を照射する構成しか開示されていない一方、本件各発明は、加工対象物の端部に改質領域を形成することを必須としてお 本件明細書では、加工対象物の端部にレンズを保持した状態でレーザ光を照射する構成しか開示されていない一方、本件各発明は、加工対象物の端部に改質領域を形成することを必須としておらず、加工対象物の端部にレンズを保持した状態でレーザ光を照射しないもの、すなわち、加工対象物の平面視中央部分のみに切断予定ラインを設定するもの等も 含む内容となっていることから、本件各発明は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。本件明細書によれば、本件各発明は、加工対象物の端部の形状変動による影響を排除して改質領域を形成できるという効果を奏するものであるとされているところ、加工対象物の端部に改質領域を形成することを前提としなければ、本件各 発明の解決すべき課題を解決できると認識できない。 本件明細書では「切断予定ラインの一端部」は面取り部分であるとされており、光量基準によってレンズを初期位置に保持した状態を解除すべき「一端部」の終端を検知する方法しか記載されていないから、仮に「切断予定ラインの一端部」が面取り部分よりも内側にも存在し本件各発明が任意の位置においてレンズの保持状態を解除することをも含むと すれば、本件各発明は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。 イ無効理由2(明確性要件違反)本件明細書には本件各発明の改質領域が多光子吸収によってされる旨記載されている。本件各発明が単光子吸収によってされる場合も含むのであ れば、本件明細書の記載内容と矛盾するものであり、本件各発明は、明確であるとはいえない。 ウ無効理由3(実施可能要件違反)仮に「切断予定ラインの一端部」が面取り部分よりも内側にも存在し本件各発明が任意の位置 載内容と矛盾するものであり、本件各発明は、明確であるとはいえない。 ウ無効理由3(実施可能要件違反)仮に「切断予定ラインの一端部」が面取り部分よりも内側にも存在し本件各発明が任意の位置においてレンズの保持状態を解除することをも含 むとすれば、本件明細書には、光量基準によってレンズを初期位置に保持した状態を解除すべき「一端部」の終端を検知する方法しか記載されておらず、光量基準によっては任意の位置を選択して検出することはできないから、本件明細書は、当業者が、本件各発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。なお、 座標基準は当時知られていなかった。 (原告の主張)ア無効理由1について 改質領域が多光子吸収によって形成されるか単光子吸収によって形成されるかにかかわらず、本件明細書の記載により当業者が「加工対象物 の端部におけるレーザ光の集光点のずれを極力少なくしつつ効率よくレ ーザ加工を行うことができるレーザ加工装置を提供する」という本件各発明の課題を解決することができると認識できることは明らかである。 本件各発明は、加工対象物の端部に改質領域を形成することを必須としておらず、加工対象物の端部にレンズを保持した状態でレーザ光を照射しないものも含む内容となっているが、加工対象物の端部の範囲内で レーザ照射をしない(切断予定ラインを設定しない)等という使い方は非実用的であって通常想定されておらず、そのような極端な場合を前提にサポート要件を議論すべきではない。また、加工対象物の端部の範囲を超えた後でレーザ照射がされる場合であっても、本件各発明が集光点のずれを極力少なくできることは明らかであるし、それにより加工対象 物の端部の範囲を気 きではない。また、加工対象物の端部の範囲を超えた後でレーザ照射がされる場合であっても、本件各発明が集光点のずれを極力少なくできることは明らかであるし、それにより加工対象 物の端部の範囲を気にすることなくレーザ照射の開始位置を決定でき、課題を解決することが可能である。 本件各発明においては、「切断予定ラインの一端部において改質領域が形成された後に」レンズを初期位置に保持した状態が解除されるにすぎず、切断予定ラインの一端部の終端は検知する必要はなく、当業者が 任意に決定し得るものである。本件各発明においては、加工対象物の位置を検知する方法は何ら限定されていない。 イ無効理由2について本件明細書の記載は、改質領域が多光子吸収のみによって形成されるとはしておらず、被告の主張は前提を欠く。 ウ無効理由3について本件各発明においては、「切断予定ラインの一端部において改質領域が形成された後に」レンズを初期位置に保持した状態が解除されるにすぎず、切断予定ラインの一端部の終端は検知する必要はなく、当業者が任意に決定し得るものである。本件各発明においては、加工対象物の位置 を検知する方法は何ら限定されていない。 ⑸ 争点⑤(原告が被告に対し対象製品1⑵Bの製造等につき許諾を与えたか。)について(被告の主張)原告は、平成26年10月8日、被告に対し、●(省略)●被告が開発、製造したSDエンジンを搭載したSD装置すなわち対象製品1⑵Bを製造し て販売することについて許諾を与えた(以下、被告が同日に被告が原告に対してしたと主張する上記の内容の許諾を「本件許諾」という。)。 ●(省略)●原告が主張する合意内容は、およそ半導体製造装置の開発、販売過程等から遊離した 与えた(以下、被告が同日に被告が原告に対してしたと主張する上記の内容の許諾を「本件許諾」という。)。 ●(省略)●原告が主張する合意内容は、およそ半導体製造装置の開発、販売過程等から遊離した経済合理性等を全く無視したものとなっており不合理である。また、本件業務提携契約は原告エンジンを搭載したSD装置に係 るものであるのに対し、本件許諾は被告が製造するSDエンジンを搭載したSD装置についてのものであって、合意の対象が異なるから、本件許諾は本件業務提携契約の範囲外である。 仮に、本件許諾がサムスン社を顧客とするSD装置1台の製造、販売等に関するものであったとしても、その1台の製造、販売等は、試作機及び顧客 が試作機を評価した上で購入に至ったSD装置の製造、販売等を意味し、したがって、別紙対象製品1⑵B売上一覧記載番号1の製造、販売については許諾があった。一般に、試作機はそのままそれを販売の対象とする場合もあれば、サムスン社のように試作機は返却した上で試作機と同一の仕様の製品を販売の対象とする場合もあり、両者を区別して前者のみに許諾を与えたも のであると理解することは商慣習上あり得ない。 (原告の主張)原告は、平成26年10月8日、被告に対し、●(省略)●その他、被告が開発、製造したSDエンジンを搭載したSD装置すなわち対象製品1⑵Bの製造、販売を許諾したことはなく、原告が、被告が主張する本件許諾をし たことはない。 すなわち、被告からは●(省略)●ステルスダイシング業界においては、試作機は1台のみ提供するのが常識であり、また、紹介のみであれば1台提供すれば十分であるから、平成26年10月8日にされた許諾の対象は●(省略)●別紙対象製品1⑵B売上一覧記載番号1の製造、販売については 1台のみ提供するのが常識であり、また、紹介のみであれば1台提供すれば十分であるから、平成26年10月8日にされた許諾の対象は●(省略)●別紙対象製品1⑵B売上一覧記載番号1の製造、販売については許諾していない。 ⑹ 争点⑥(被告が各対象製品を製造等するおそれがあるか。)について(原告の主張)被告は、今後も、対象製品1⑴、1⑵Aを製造等するおそれがあるのみならず、対象製品1⑵Bを現に使用している顧客から追加で発注を受けることなどにより、対象製品1⑵Bを製造等するおそれがある。 (被告の主張)被告は、現在、各対象製品の製造等をしていない。被告は、被告エンジンAを独自に開発した上で対象製品1⑴、1⑵Aを製造等し、販売した対象製品1⑵Bのエンジンも全て被告エンジンAに交換した上、さらに、その後、対象製品1⑴、1⑵の製造等も中止したから、将来、各対象製品を製造等す る可能性はない。 ⑺ 争点⑦(廃棄の必要があるか。)について(原告の主張)本件特許権の侵害の予防のためには各対象製品の廃棄が必要である。 (被告の主張) 被告は各対象製品の製造等を終了しており、廃棄することのできる各対象製品は存在しない。 ⑻ 争点⑧(原告の受けた損害又は損失及び額)について(原告の主張)ア特許法102条2項の算定による損害額(主位的請求のうち選択的主張 ①) 原告は、SD装置を販売していないが、SD装置を販売する業者に対し、SD装置の部品である原告エンジンを販売し、その保守管理をすることにより利益を得ているから、被告による各対象製品の販売がなければ、被告と唯一の競争関係にあるディスコ社がSD装置を販売することができ、したがって、原告はディスコ社 ンを販売し、その保守管理をすることにより利益を得ているから、被告による各対象製品の販売がなければ、被告と唯一の競争関係にあるディスコ社がSD装置を販売することができ、したがって、原告はディスコ社に対し原告エンジンを販売することができた から、原告はこれにより利益を受けることができた。 すなわち、被告とディスコ社は、海外及び国内において、ほぼ独占的にSD装置を販売しているから、被告による各対象製品の製造、販売により、ディスコ社の製造に係るSD装置の販売数量が減少し、その結果、原告のディスコ社に対する原告エンジンの販売数量が減少し、原告エンジンの販 売に係る利益、販売後に必要となるLD(レーザダイオード)モジュールの交換販売に係る利益、包括許諾により付加的に受領していた実施料相当額の利益を得られなかった。また、より端的には、原告は、被告に対し原告エンジンを販売していたところ、被告による被告エンジンA又はBを搭載した各対象製品の販売により、原告の被告に対する原告エンジンの販売 数量が減少し、原告エンジンの販売に係る利益を得られなかった。 原告は被告による合計●(省略)●台の各対象製品の製造販売により損害を受け、被告は各対象製品の製造販売により利益を受けたところ、同利益の額が原告が受けた損害の額と推定される(特許法102条2項)。 各対象製品●(省略)●台の製造、販売についての損害について 各対象製品●(省略)●台の限界利益の額は●(省略)●円であり、このうちSDエンジンの貢献の割合は75%であるというべきであるから、原告の損害額は●(省略)●円であると推定される。原告が本件訴訟追行に要した弁護士費用のうち2億2425万円は被告の不法行為と相当因果関係のある損害として被告が負担すべきであ というべきであるから、原告の損害額は●(省略)●円であると推定される。原告が本件訴訟追行に要した弁護士費用のうち2億2425万円は被告の不法行為と相当因果関係のある損害として被告が負担すべきである。したがって、 損害額の合計は●(省略)●となる。 原告は、このうち24億円、及び、うち平成30年10月までの製造、販売についての損害21億円に対する同年11月1日から支払済みまで、うち同月以降の製造、販売についての損害3億円について令和2年2月1日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 前記のうち対象製品1⑵Bの製造、販売についての損害について a 対象製品1⑵Bの売上額について被告は、平成28年3月から平成30年8月まで、別紙対象製品1⑵B売上一覧記載のとおり、合計●(省略)●台の対象製品1⑵Bを製造販売した。このうちRMモジュールと共に販売されたものについてRMモジュールを除いた本体金額は、別紙対象製品1⑵B売上一覧 記載番号●(省略)●円とみるべきである。そうすると、●(省略)●台分の売上額は合計●(省略)●円となる。 b 控除すべき経費等について対象製品1⑵Bの限界利益率は、●(省略)●%であり、別紙対象製品1⑵B売上一覧記載の●(省略)●台の限界利益の合計は● (省略)●円である。 c 推定覆滅事由について原告は、SD装置ではなくSDエンジンである原告エンジンを販売しており、被告とは業態が異なるが、SDエンジンがSD装置の市場価値を決定づけていることからすれば、SD装置の販売利益のうちS Dエンジンの貢献の割合が75%であるというべきである。すなわち、現在、量産されているシリコンウェハの切断装置はSD装置とブレー 値を決定づけていることからすれば、SD装置の販売利益のうちS Dエンジンの貢献の割合が75%であるというべきである。すなわち、現在、量産されているシリコンウェハの切断装置はSD装置とブレード装置の2種類のみであり、SD装置は、ブレード装置にない機能を備えており、その販売価格もブレード装置の販売価格の数倍である。 このようなSD装置の価値はSDエンジンの価値そのものによる。 d 小括 ●(省略)●円 以上から、原告の損害額は標記額と推定される。 ●(省略)●×0.75=●(省略)●e 弁護士費用 ●(省略)●円原告が本件訴訟追行に要した弁護士費用のうち標記額は、被告の不法行為と相当因果関係のある損害として被告が負担すべきである。 f 合計 ●(省略)●円イ特許法102条1項の算定による損害額(主位的請求のうち選択的主張②)原告は、SD装置を販売していないが、SD装置を販売する業者に対し、SD装置の部品である原告エンジンを販売し、その保守管理をすること により利益を得ているから、被告による各対象製品の販売がなければ、被告と唯一の競争関係にあるディスコ社がSD装置を販売することができ、したがって、原告はディスコ社に対し原告エンジンを販売することができたから、原告はこれにより利益を受けることができた。 すなわち、被告とディスコ社は、海外及び国内において、ほぼ独占的に SD装置を販売しており、また、SD装置に搭載するSDエンジンは原告のみが販売しているから、被告による対象製品の製造販売により、ディスコ社が製造するSD装置の販売数量が減少し 、ほぼ独占的に SD装置を販売しており、また、SD装置に搭載するSDエンジンは原告のみが販売しているから、被告による対象製品の製造販売により、ディスコ社が製造するSD装置の販売数量が減少し、その結果、原告のディスコ社に対する原告エンジンの販売数量が減少するのであって、SDエンジンである原告エンジンの市場とSD装置である各対象製品の市場 は競合する。 そして、原告は、被告による各対象製品の製造販売がなければ、原告エンジン一式(SDエンジン本体、AFユニット及び対物レンズ)及び定期メンテナンスに伴う交換部品(LDモジュール)を販売することができたから、これらの単位数量当たりの利益の額に、被告が販売した各対 象製品及び交換部品の数量を乗じて得た額が原告が受けた損害の額と推 定される。 各対象製品●(省略)●台の製造、販売についての損害について被告による各対象製品●(省略)●台の販売により原告が受けた損害の額は16億3858万6218円であり、原告が本件訴訟追行に要した弁護士費用のうち2億2425万円は被告の不法行為と相当因果関係 のある損害として被告が負担すべきである。したがって、損害額の合計は18億6283万6218円となる。 前記のうち対象製品1⑵Bの製造、販売についての損害についてa 別紙対象製品1⑵B売上一覧記載番号●(省略)●について被告エンジンBに相当する原告が製造する原告エンジンは型番80 0DSであり、同一式の販売価格は●(省略)●円(SDエンジン本体●(省略)●円、AFユニット●(省略)●円、対物レンズ●(省略)●円の合計)であり、原価は●(省略)●円(SDエンジン本体●(省略)●円、AFユニット●(省略)●円、対物レンズ●(省略)●円の 体●(省略)●円、AFユニット●(省略)●円、対物レンズ●(省略)●円の合計)であり、原価は●(省略)●円(SDエンジン本体●(省略)●円、AFユニット●(省略)●円、対物レンズ●(省略)●円の合計)であるから、原告エンジン一式の単位数量当たりの利益 の額は●(省略)●円である。被告は、標記の●(省略)●台を販売した。 また、LDモジュールは●(省略)●交換する必要があり、SD装置の使用期間は●(省略)●であるから、原告は、SD装置1台当たり●(省略)●台のLDモジュールを販売することができた。原告エ ンジン型番800DSに対応するLDモジュールは1台当たり●(省略)●円であり、原価は●(省略)●円であるから、単位数量当たりの利益の額は●(省略)●円である。 以上から、被告による標記製品の販売により、原告が受けた損害額は●(省略)●円である。 ●(省略)● b 別紙対象製品1⑵B売上一覧記載番号●(省略)●について標記製品については、原告エンジン型番1000DSを前提に、同一式の販売価格は●(省略)●円(SDエンジン本体●(省略)●円、AFユニット●(省略)●円、AFコントローラ●(省略)●円、AF増設ユニット●(省略)●円、治具●(省略)●円の合計)であり、 原価は●(省略)●円(SDエンジン本体●(省略)●円、AFユニット●(省略)●円、AFコントローラ●(省略)●円、AF増設ユニット●(省略)●円、治具●(省略)●円の合計)であるから、原告エンジン一式の単位数量当たりの利益の額は●(省略)●円である。 被告は、標記の●(省略)●台を販売した。 また、LDモジュールは●(省略)●交換する必要があり、SD装置の使用期間は●(省略) 単位数量当たりの利益の額は●(省略)●円である。 被告は、標記の●(省略)●台を販売した。 また、LDモジュールは●(省略)●交換する必要があり、SD装置の使用期間は●(省略)●であるから、原告は、SD装置1台当たり●(省略)●台のLDモジュールを販売することができた。原告エンジン型番1000DSに対応するLDモジュールは1台当たり●(省略)●円であり、原価は●(省略)●円であるから、単位数量当 たりの利益の額は●(省略)●円である。 以上から、被告による標記製品の販売により、原告が受けた損害額は●(省略)●円である。 ●(省略)●c 小括 ●(省略)●円 以上から、原告の損害額は標記額となる。 d 弁護士費用 1億2187万5000円e 合計 10億0157万6530円ウ特許法102条3項の算定による損害額(主位的請求のうち選択的主張③) 各対象製品●(省略)●台の製造、販売についての損害について 各対象製品●(省略)●台の売上額は●(省略)●円であり、本件特許の実施料相当額はこの35%であるというべきであるから、原告の損害額は●(省略)●円となる。原告が本件訴訟追行に要した弁護士費用のうち2億2425万円は被告の不法行為と相当因果関係のある損害として被告が負担すべきである。したがって、損害額の合計は●(省略) ●円となる。 前記のうち対象製品1⑵Bの製造、販売についての損害についてa 実施料相当額 ●(省略)●円原告は、原告エンジン一式の製造についてはこれに関して原告が有する一 る。 前記のうち対象製品1⑵Bの製造、販売についての損害についてa 実施料相当額 ●(省略)●円原告は、原告エンジン一式の製造についてはこれに関して原告が有する一連の特許の使用許諾を一切せず、原告エンジンを購入する者に 対してSD装置の製造について原告の有する特許の実施許諾をして利益を得ていたから、原告が合意し得る本件特許の実施料相当額は、原告エンジン一式及びLDモジュールの販売についての原告の利益額とライセンス料の合計であり、SD装置の販売価格の35%である。なお、原告が訴えを提起しているのは、一連の特許のうちの本件特許を 含む一部の特許に関してであり、訴訟が係属していない特許を考慮して実施料相当額を減額することはあり得ない。 被告は対象製品1⑵Bを●(省略)●台販売し、このうちRMモジュールを除いた際の本体金額は、別紙対象製品1⑵B売上一覧記載番号●(省略)●円となる。 したがって、原告がこれに対し受けるべき金銭の額に相当する額は、標記額である。 ●(省略)●×35%=●(省略)●b 弁護士費用 ●(省略)●円c 合計 ●(省略)●円 エ民法709条における損害額(特許法102条の適用を主張しないもの。 主位的請求のうち選択的主張④)被告とディスコ社は、海外及び国内において、ほぼ独占的にSD装置を販売しており、また、SD装置に搭載するSDエンジンは原告のみが販売しているから、被告による対象製品の製造販売により、ディスコ社が製造するSD装置の販売数量が減少し、その結果、原告のディスコ社に 対する原告エンジンの販売数量が減少するのであって、SDエンジンである原告エンジンの市場と 象製品の製造販売により、ディスコ社が製造するSD装置の販売数量が減少し、その結果、原告のディスコ社に 対する原告エンジンの販売数量が減少するのであって、SDエンジンである原告エンジンの市場とSD装置である各対象製品の市場は競合し、原告は、被告による各対象製品の製造販売がなければ、原告エンジン一式(SDエンジン、AFユニット及び対物レンズ)及び定期メンテナンスに伴う交換部品(LDモジュール)を販売することができ、SD装置 の製造に対して関連特許の実施料(SD装置の販売価格の●(省略)●%相当額)を得られた。 各対象製品●(省略)●台の製造、販売についての損害について原告の逸失利益は、特許法102条1項により算定される損害額16億3858万6218円(前記イ)及び実施料相当額1億4100万 円(●(省略)●)の合計17億7958万6218円である。原告が本件訴訟追行に要した弁護士費用のうち2億2425万円は被告の不法行為と相当因果関係のある損害として被告が負担すべきである。したがって、損害額の合計は20億0383万6218円となる。 前記のうち対象製品1⑵Bの製造、販売についての損害について a 逸失利益 9億5470万1530円原告の逸失利益は、8億7970万1530円(前記イc)に、関連特許の実施料相当額7500万円を加えた標記額である。 b 弁護士費用 1億2187万5000円c 合計 10億7657万6530円 オ不当利得(予備的請求) 前記ウのとおり、被告は、本件特許の実施料相当額を法律上の原因なく不当に利得し、原告はこれによって損失を被った。 各対象製品●(省略) 万6530円 オ不当利得(予備的請求) 前記ウのとおり、被告は、本件特許の実施料相当額を法律上の原因なく不当に利得し、原告はこれによって損失を被った。 各対象製品●(省略)●台の製造、販売に係る損失の額は16億3829万0800円であり(前記ウ)、このうち対象製品1⑵Bの製造、販売についての損失の額は9億1281万3219円(同イa)である。 (被告の主張)ア特許法102条2項の算定による損害額について被告による各対象製品の販売等がなければ、原告が利益を得られたとはいえない。 すなわち、特許法102条2項が適用されるのは、同項に基づく推定を 正当化できる場合、具体的には、特許権者等が少なくとも侵害品と代替性がある競合品を販売している場合に限られる。同項の推定の基礎には、侵害者が侵害品を販売して利益を得ていなければ特許権者は自己の製品を販売してこれと同額の利益を得られたはずであるという一応の経験則であるから、同項により推定される逸失利益は、侵害品と代替性があり 市場で競合する製品の売上減少による逸失利益に限定される。原告は、SDエンジンである原告エンジンを製造、販売するにすぎず、SD装置の製造、販売は行っておらず、原告エンジンはSD装置の代替品として用いることはできないのであるから、原告エンジンは各対象製品の代替品ではなく、原告エンジンと各対象製品は市場において競合しないから、 各対象製品の売上額は同項による推定の基礎とはならない。 また、被告とディスコ社のSD装置の販売先は海外の者が大半であり、海外には競合となるSD装置の製造販売事業者が存在するし、サムスン社は複数の業者からSD装置を購入する体制を採用しているから、被告によるSD装置の製造販売がなければ、サムスン 海外の者が大半であり、海外には競合となるSD装置の製造販売事業者が存在するし、サムスン社は複数の業者からSD装置を購入する体制を採用しているから、被告によるSD装置の製造販売がなければ、サムスン社がディスコ社からS D装置を購入し、翻って、原告がディスコ社に対し原告エンジンを販売 できたとはいえない。さらに、被告によるSD装置の製造販売がなければ、TI社が被告のSD装置の代わりにディスコ社のSD装置を購入していたともいえない。 仮に、本件において特許法102条2項が適用されるとしても、対象製品1⑵Bの製造、販売により原告が受けた損害額は次のとおり算定され る。 限界利益について被告による対象製品1⑵Bの販売等がなければ原告が得られた利益は、対象製品1⑵Bのうち被告エンジンBについての限界利益のみであるから、これを原告が受けた損害額の算定の基礎とすべきである。具体的に は、対象製品1⑵Bの販売価格が●(省略)●円であり、被告が原告から原告エンジンを●(省略)●円で購入していたことを参考にして、対象製品1⑵Bの限界利益の●(省略)●%が被告エンジンBによるものと考えるべきである。 そして、別紙対象製品1⑵B売上一覧記載番号●(省略)●の限界利 益は●(省略)●円であるから、被告エンジンBについての限界利益に相当する額は、●(省略)●円となる。 ●(省略)● 推定覆滅事由について次の各事情を考慮すれば、被告エンジンBの限界利益に相当する額を 算定の基礎とする場合にはその89%、対象製品1⑵Bの限界利益の額を算定の基礎とする場合にはその97%について、少なくとも特許法102条2項の推定が覆滅されるというべきである。 を 算定の基礎とする場合にはその89%、対象製品1⑵Bの限界利益の額を算定の基礎とする場合にはその97%について、少なくとも特許法102条2項の推定が覆滅されるというべきである。 まず、対象製品1⑵BはSD装置であるのに対し原告はSDエンジンである原告エンジンを製造販売するにすぎず、その市場は同一ではない から、仮に、対象製品1⑵Bの販売による限界利益全額を原告が受けた 損害額の基礎とする場合には、その●(省略)●%について推定が覆滅される。なお、量産されているシリコンウェハの切断装置には、SD装置、ブレード装置のほか、UVレーザを使用した装置も存在する。そもそも、SD装置の販売価格をブレード装置の販売価格と比較することには何らの意味もない。 また、海外においては、複数の業者がSD装置を製造、販売しており、半導体製造業者は複数の業者からSD装置を購入する体制を採用しているから、市場において競合品が存在している。 被告は、従来からの顧客に対し、築き上げてきた良好な関係や積極的な営業活動を活かして、対象製品1⑵Bを販売するに至ったのであり、 このような被告の既存の顧客に対して、ディスコ社が原告エンジンを搭載した製品を販売できたとは限らない。 対象製品1⑵Bには、シリコンウェハの透過率がほどよい、亀裂を生むための力を内部に集約しやすい、デバイスへのダメージが少ない、加工スピードを調整できるなど、ディスコ社の製品にはない特徴があり、 このような特徴は、被告が営業活動において強調してきた結果、顧客の高い評価を受け、対象製品1⑵Bの販売につながった。したがって、ディスコ社が対象製品1⑵Bの代わりに原告エンジンを搭載した製品を販売できたとは限らない。 さらに、対象製品1⑵Bの販売等について、 高い評価を受け、対象製品1⑵Bの販売につながった。したがって、ディスコ社が対象製品1⑵Bの代わりに原告エンジンを搭載した製品を販売できたとは限らない。 さらに、対象製品1⑵Bの販売等について、本件のほか、複数の特許 権の侵害を理由とする各別件訴訟が係属しているところ、対象製品1⑵Bが本件各発明以外の技術の特徴を備えていることは、推定覆滅事情として考慮されるべきである。 小括 ●(省略)●円以上を前提にすると、102条2項の算定による原告が受けた損害額 は、せいぜい標記額である。 ●(省略)●×11%≒●(省略)● 弁護士費用について否認ないし争う。 イ特許法102条1項の算定による損害額について被告による各対象製品の販売等がなければ、原告が原告エンジンを販売 することができたとはいえない。 すなわち、特許法102条1項は、特許権者が特許発明の実施品を市場で独占的に販売することができる地位にあることから、侵害品の販売等がなければ、これに代替する特許発明の実施品は特許権者のみが販売することができたはずであるという理解を前提にした規定であり、したが って、同項1号にいう「特許権者…がその侵害の行為がなければ販売することができた物」とは、侵害行為がなければ販売することができたといえる程度に侵害品との代替性が認められる物でなければならない。そして、原告エンジンは各対象製品の代替品であることはできず、原告エンジンと各対象製品は市場において競合しないから、各対象製品の販売 等について同項を適用することはできない。 また、被告によるSD装置の製造販売がなければ、サムスン社がディスコ社からSD装 と各対象製品は市場において競合しないから、各対象製品の販売 等について同項を適用することはできない。 また、被告によるSD装置の製造販売がなければ、サムスン社がディスコ社からSD装置を購入し、翻って、原告がディスコ社に対し原告エンジンを販売できたとはいえないし、被告によるSD装置の製造販売がなければ、TI社が被告のSD装置の代わりにディスコ社のSD装置を購入して いたともいえない。 仮に、本件において特許法102条1項が適用されるとしても、対象製品1⑵Bの製造、販売により原告が受けた損害額は次のとおり算定されるべきである。 原告の利益について 原告エンジンの販売による利益は立証されているとはいえない。被告 は、原告から原告エンジンを●(省略)●円で購入していた。また、LDモジュールは、侵害品ではない上、交換は顧客の希望によるものであるから、その販売による利益は原告が受けた損害の算定の基礎に含めるべきではないし、その立証も不十分である。 原告のディスコ社に対する原告エンジンの販売台数は多く割引がされ ていると考えられるから、原告エンジンの販売価格は●(省略)●円であり、その原価は被告のレーザエンジンと同程度の●(省略)●円であると考えられるから、原告エンジンの限界利益は1台当たり●(省略)●円である。 ●(省略)● 実施相応数量について被告が対象製品1⑵Bを販売した時期に、ディスコ社が被告の販売数量と同数のSD装置を製造販売する実施の能力があったことは何ら立証されていない。 原告が販売することができないとする事情等 原告がディスコ社に販売した原告エンジンが本件各発明の実施品であるSD装置に搭載されてい あったことは何ら立証されていない。 原告が販売することができないとする事情等 原告がディスコ社に販売した原告エンジンが本件各発明の実施品であるSD装置に搭載されていない場合には、本件各発明は原告エンジンの売上げに貢献していないこと、対象製品1⑵Bの販売等について、本件のほか、複数の特許権の侵害を理由とする不法行為による損害賠償請求訴訟が2件係属しているところ、対象製品1⑵Bが本件各発明以外の技 術に係る特徴を備えていることから、原告エンジンの販売による利益のうち80%は、対象製品1⑵Bの販売等により原告が受けた損害の額とすることはできない。 また、市場の非同一性、競合品の存在、被告の営業努力、対象製品1⑵Bの性能、本件各発明以外の技術に係る特徴など、原告が販売するこ とができないとする事情があり、その数量は、対象製品1⑵Bの販売数 量の約89%である●(省略)●台を下らない。 小括 ●(省略)●円以上を前提にすると、102条1項の算定による原告が受けた損害額は、せいぜい標記額である。 ●(省略)●×20%×●(省略)●-●(省略)●×20%×●(省略) ●=●(省略)● 弁護士費用について否認ないし争う。 ウ特許法102条3項の算定による損害額について対象製品1⑵Bの製造販売により原告が受けた損害額は次のとおり算定 されるべきである。 実施料相当額について ●(省略)●円原告が本件各発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭は、対象製品1⑵Bの販売価格の●(省略)●%である。 すなわち、まず、原告エンジン製造販売による原 ●(省略)●円原告が本件各発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭は、対象製品1⑵Bの販売価格の●(省略)●%である。 すなわち、まず、原告エンジン製造販売による原告の利益、LDモジ ュールの販売による利益は、実施料相当額の基礎とはならない。原告と被告は、本件業務提携契約において、ステルスダイシングに関して原告が有する●(省略)●件の特許権に係る各特許発明の実施料として、被告が原告に対し被告製造に係るSD装置の販売価格の●(省略)●%相当額のロイヤリティを支払うことを合意し、その後、ロイヤリティの額 はSD装置の販売価格の●(省略)●%相当額に変更された。しかも、同実施料は被告が製造するSD装置に本件プレートを貼付することの対価でもあった。したがって、本件各発明の実施料に相当する額は、被告が製造するSD装置の販売価格に、原告と被告が合意していた実施料率●(省略)●%を特許権の数で除した前記割合を乗じた額を超えること はない。そうでなければ、特に、別件訴訟2の対象である965特許に 係る特許発明と本件各発明はその構成要件が酷似しており、また、本件各発明は各別件訴訟の対象である188特許及び108特許に係るシリコンウェハの内部に溶融処理領域を形成して割断するという内容の各特許発明に付随するものにすぎないことから、被告は過大な損害賠償責任を負うことになる。 このほか、実施料に相当する額を定める上では、次のような各事情が考慮されるべきである。 SD装置の中心的特徴はレーザにより内部に切断の起点を形成するという公知技術にある上、本件各発明は、被告が特許権を有する低追従という技術に代替されるものであり、かつ、対象製品1⑵Bにおいて実際 には使用されていなかったから、その価値 断の起点を形成するという公知技術にある上、本件各発明は、被告が特許権を有する低追従という技術に代替されるものであり、かつ、対象製品1⑵Bにおいて実際 には使用されていなかったから、その価値は極めて低い。 被告は、昭和44年に日本で初めてダイシングマシンを、平成11年に世界で初めてツインスピンドル方式のフルオートウェハダイシングマシンを開発したほか、プロービングマシンについて50%強という世界一の占有率を誇るなど、半導体製造装置を幅広く製造し、原告との共同 開発を開始する以前の段階で世界におけるダイシングマシンの製造につき占有率約30%を獲得しており、そのような中で、従来からの顧客に対し、築き上げてきた良好な関係や積極的な営業活動を活かして、SD装置を販売するに至った。また、対象製品1⑵Bは、シリコンウェハの透過率がほどよい、亀裂を生むための力を内部に集約しやすい、デバイ スへのダメージが少ない、加工スピードを調整できるなど、原告エンジンより高性能な被告エンジンBを搭載しているほか、被告がレーザダイシング装置に関して有する●(省略)●件の特許権の一部に係る発明が実施されている。 また、本件各発明は原告と被告との共同開発の中でされたものであり、 本件特許は共同出願されるべきものであった。さらに、10月8日打合 せの際の原告の代表取締役副社長の言動は、被告をして対象製品1⑵Bの販売等について許諾を受けたと誤信させるものであったから、被告による対象製品1⑵Bの販売等は原告の過失により招来されたものである。 そうすると、102条3項の算定による原告が受けるべき金銭の額に相当する額は、標記額を超えることはない。 ●(省略)● 弁護士費用について である。 そうすると、102条3項の算定による原告が受けるべき金銭の額に相当する額は、標記額を超えることはない。 ●(省略)● 弁護士費用について否認ないし争う。 エ民法709条における損害額(特許法102条の適用を主張しないもの)について 被告によるSD装置の製造販売がなければ、サムスン社がディスコ社からSD装置を購入し、翻って、原告がディスコ社に対し原告エンジンを販売できたとはいえない。また、LDモジュールは、侵害品ではない上、交換は顧客の希望によるものであり、被告によるSD装置の製造販売がなければ、原告がLDモジュールを販売することができ、利益を得られたとは いえない。さらに、SD装置の製造についての関連特許の実施料は、原告と許諾契約を締結した者から取得できるにすぎず、原告が被告によるSD装置の製造販売により実施料相当額の損害を受けたとはいえない。 オ不当利得について否認する。 ⑼ 争点⑨(原告に過失があるか、また、これを考慮して損害賠償額を定めるべきか。)について(被告の主張)原告の代表取締役副社長は、平成26年10月8日、被告との間で、原告が被告に対しSDエンジンの開発を了承し、被告が原告に対しロイヤリティ を支払う旨の合意をしたため、被告はこの合意の存在を信じて対象製品1⑵ Bの製造販売を行ったのであり、このような経緯に照らせば、被告が対象製品1⑵Bの製造販売を行うに至ったことには原告の過失がある。したがって、原告に過失があったことを考慮して損害賠償額を定めるべきである。 (原告の主張)原告の代表取締役副社長が、平成26年10月8日、被告との間で、原告 が被告に対しSDエン たがって、原告に過失があったことを考慮して損害賠償額を定めるべきである。 (原告の主張)原告の代表取締役副社長が、平成26年10月8日、被告との間で、原告 が被告に対しSDエンジンの開発を了承したことはない。 第3 当裁判所の判断 1 本件各発明について⑴ 本件明細書には、次のとおりの記載があり、また、別紙本件発明図面のとおりの図面がある。(甲2) 【発明の詳細な説明】【技術分野】【0001】本発明は、レーザ光を照射することで加工対象物を加工するためのレーザ加工方法及びレーザ加工装置に関する。 【背景技術】【0002】従来のレーザ加工技術には、加工対象物を加工するためのレーザ光を集光する集光レンズに対し、加工対象物の主面高さを 測定する測定手段(接触式変位計や超音波距離計等)を所定の間隔をもって並設させたものがある(例えば、下記特許文献1…参照。)。このようなレーザ加工技術では、加工対象物の主面に沿ってレーザ光でスキャンする際に、測定手段により加工対象物の主面高さを測定し、その測定点が集光レンズの直下に到達したときに、その主面高さの測定値に基づいて集光 レンズと加工対象物の主面との距離が一定となるように集光レンズをその光軸方向に駆動する。 【0003】また、主面が凸凹している加工対象物を加工する技術としては、加工準備として、加工を施す部分全ての平面度を平面度測定手段(投光器と反射光受光器とを有する平面度測定器)によって測定した後、測定した 平面度に基づいて加工対象物を加工するものがある(例えば、下記特許文 献2参照。)。 【発明の開示】【発明が解決しようとする課題】【0004】しかしながら、上記特許文献1に記載のレーザ加工技術においては、次のような解決すべき課題があ ある(例えば、下記特許文 献2参照。)。 【発明の開示】【発明が解決しようとする課題】【0004】しかしながら、上記特許文献1に記載のレーザ加工技術においては、次のような解決すべき課題がある。すなわち、加工対象物の外側の位置からレーザ光の照射を開始してレーザ光と加工対象物とをその主面に沿って移動させて加工を行 う場合に、測定手段は加工対象物の外側から測定を開始し、加工対象物の内側へと測定を行っていくことになる。そして、この測定によって得られた主面高さの測定値に基づいて集光レンズを駆動すると、加工対象物の端部においてレーザ光の集光点がずれる場合がある。 【0005】また、上記特許文献2に記載の技術を用いた場合には、加工対 象物の主面の平面度を正確に把握できるのものの、加工準備と実際の加工とで同じ部位を2度スキャンしなければならないため、時間がかかり加工効率が低下する。 【0006】そこで本発明では、加工対象物の端部におけるレーザ光の集光点のずれを極力少なくしつつ効率よくレーザ加工を行うことができるレー ザ加工方法及びレーザ加工装置を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】【0007】本発明者らは上記課題を解決するために種々の検討を行った。まず、加工用の第1のレーザ光と、加工対象物の主面の変位を測定するための第2のレーザ光とを同一の軸線上で加工対象物に向けて照射する加工方法について検討した。この検討内容につ いて図10(A)~図10(C)を参照しながら説明する。 【0008】図10(A)では、ダイシングフィルム802に固定されているシリコンウェハ800を、レーザユニット804からレーザ光を照射して加工する場合であって、加工準備段階を示している。レーザユニット804は、レーザ光をシリコンウ シングフィルム802に固定されているシリコンウェハ800を、レーザユニット804からレーザ光を照射して加工する場合であって、加工準備段階を示している。レーザユニット804は、レーザ光をシリコンウェハ800に向けて集光するための集光レ ンズ804aと、集光レンズ804aを保持するためのレンズホルダ80 4bと、レンズホルダ804bをシリコンウェハ800に対して進退自在に保持するピエゾアクチュエータ804cと、を含む。レーザユニット804を含むレーザ加工装置にはこの他、レーザ光源といった部位があるがそれらの記載は省略する。図10(A)の状態で、加工用の第1のレーザ光806及びシリコンウェハ800の主面800bの変位を測定するため の第2のレーザ光808の照射を開始し、矢印Aの方向にシリコンウェハ800が移動するようにシリコンウェハ800を載置しているステージ(図示しない)を移動させる。シリコンウェハ800に第1のレーザ光806で加工しようとしているのは切断予定ライン800aに相当する位置である。 【0009】シリコンウェハ800が図10(A)の矢印Aの方向に移動すると、図10(B)に示すように第1のレーザ光806及び第2のレーザ光808の光軸がシリコンウェハ800と交差する位置になる。ピエゾアクチュエータ804cは、第2のレーザ光808の反射光から検出される非点収差信号が所定の値になるようにレンズホルダ804bをシリコンウ ェハ800に対して進退させる。従って、図10(B)の状態からは、ピエゾアクチュエータ804cが縮んでレンズホルダ804b及び集光レンズ804aは上昇する。しかしながら、シリコンウェハ800は図10(A)の矢印Aの方向に移動し続けているので、レンズホルダ804b及び集光レンズ804aが cが縮んでレンズホルダ804b及び集光レンズ804aは上昇する。しかしながら、シリコンウェハ800は図10(A)の矢印Aの方向に移動し続けているので、レンズホルダ804b及び集光レンズ804aが所定の位置に上昇し、切断予定ライン800aに おいて第1のレーザ光806の集光点が合うまでにはタイムラグが発生する。また、非点収差信号も大きく振られることになって第1のレーザ光806の集光点がずれることにもなる。 【0010】従って、図10(C)に示すように、切断予定ライン800aにおいて第1のレーザ光806の焦点が合って安定状態になるまでの区間 Bでは、切断予定ライン800aではない部分がレーザ加工されることに なる。例えば、シリコンウェハ800の厚みが100μmであって、15mSの時間遅れが発生するものとすれば、加工速度が100mm/Sの場合には区間Bの長さは理論上1.5mmとなる。 【0011】また、図10(A)~図10(C)では理想的に平面度の高いシリコンウェハ800について考えたが、例えば端部が反りあがっている 場合も考えられる。端部が反りあがっているシリコンウェハの例について図11(A)~図11(C)を参照しながら説明する。 【0012】図11(A)では、ダイシングフィルム802に固定されているシリコンウェハ810を、レーザユニット804からレーザ光を照射して加工する場合であって、加工準備段階を示している。レーザユニット8 04は図10(A)~図10(C)を参照しながら説明したものと同様である。シリコンウェハ810は、その端部が反りあがっている。シリコンウェハ810の切断予定ライン810aは主面810bから等距離に位置するように設定されている。 【0013】シリコンウェハ810が図11(A)の矢印 ハ810は、その端部が反りあがっている。シリコンウェハ810の切断予定ライン810aは主面810bから等距離に位置するように設定されている。 【0013】シリコンウェハ810が図11(A)の矢印Aの方向に移動す ると、図11(B)に示すように第1のレーザ光806及び第2のレーザ光808の光軸がシリコンウェハ810と交差する位置になる。ピエゾアクチュエータ804cは、第2のレーザ光808の反射光から検出される非点収差信号が所定の値になるようにレンズホルダ804bをシリコンウェハ810に対して進退させる。従って、図11(B)の状態からは、ピ エゾアクチュエータ804cが縮んでレンズホルダ804b及び集光レンズ804aは上昇する。しかしながら、シリコンウェハ810は図11(A)の矢印Aの方向に移動し続けているので、レンズホルダ804b及び集光レンズ804aが所定の位置に上昇し、切断予定ライン810aにおいて第1のレーザ光806の集光点が合うまでにはタイムラグが発生す る。また、シリコンウェハ810の端部が反りあがっているために、レン ズホルダ804b及び集光レンズ804aが所定の位置まで上昇する際には、図11(B)の点線Cの位置から主面810bの実際の位置に対するギャップが反映されてオーバーシュートを起こすことになる。 【0014】従って、図11(C)に示すように、切断予定ライン810aにおいて第1のレーザ光806の集光点が合って安定状態になるまでの区 間Dでは、切断予定ライン800aではない部分がレーザ加工されることになる。この区間Dの長さはオーバーシュートの分だけ図10(C)における区間Bの長さよりも長くなる傾向にある。そこで本発明者らは、加工対象物の端部における処理に着目した。本発明はこれらの知見に基づ になる。この区間Dの長さはオーバーシュートの分だけ図10(C)における区間Bの長さよりも長くなる傾向にある。そこで本発明者らは、加工対象物の端部における処理に着目した。本発明はこれらの知見に基づいてなされたものである。 【0023】本発明のレーザ加工装置は、第一のレーザ光を加工対象物の内部に集光点を合わせて照射し、加工対象物の切断予定ラインに沿って加工対象物の内部に改質領域を形成するレーザ加工装置であって、第1のレーザ光を前記加工対象物に向けて集光するレンズと、加工対象物とレンズとを加工対象物の主面に沿って移動させる移動手段と、レンズを主面に対し て進退自在に保持する保持手段と、移動手段及び保持手段それぞれの挙動を制御する制御手段と、を備え、制御手段は集光点が加工対象物内部の所定の位置に合う状態となる初期位置にレンズを保持するように保持手段を制御し、当該位置にレンズを保持した状態で第一のレーザ光を照射しながら、制御手段は加工対象物とレンズとを主面に沿って相対的に移動させる ように移動手段を制御して切断予定ラインの一端部において改質領域を形成し、切断予定ラインの一端部において改質領域が形成された後に、制御手段はレンズを初期位置に保持した状態を解除してレンズと主面との間隔を調整しながら保持するように保持手段を制御し、レンズと加工対象物とを主面に沿って相対的に移動させるように移動手段を制御して改質領域を 形成する。 【0024】本発明のレーザ加工装置によれば、初期位置にレンズを保持した状態で切断予定ラインの一端部において改質領域を形成するので、加工対象物の端部の形状変動による影響を極力排除して改質領域を形成することができる。そして、切断予定ラインの一端部において改質領域を形成した後にレンズを保持した 端部において改質領域を形成するので、加工対象物の端部の形状変動による影響を極力排除して改質領域を形成することができる。そして、切断予定ラインの一端部において改質領域を形成した後にレンズを保持した状態を解除し、レンズの位置を調整しながら残部 において改質領域を形成するので、加工対象物内部の所定の位置に改質領域を形成することができる。 【0027】また、本発明のレーザ加工装置では、切断予定ラインの一端部において改質領域が形成された後に、制御手段はレンズを初期位置に保持した状態を解除してレンズと主面との間隔を調整しながら保持するように 保持手段を制御し、レンズと加工対象物とを主面に沿って相対的に移動させるように移動手段を制御して改質領域を形成し、更に、制御手段はレンズを主面に向かう方向に駆動させずに保持するように保持手段を制御すると共に、レンズと加工対象物とを主面に沿って相対的に移動させるように移動手段を制御することも好ましい。改質領域を形成した後にレンズを主 面に向かう方向に駆動しないように保持するので、例えば、次の切断予定ラインの加工に移行する際に円滑な移行が可能となる。 【発明の効果】【0031】本発明のレーザ加工方法及びレーザ加工装置によれば、加工対象物の端部におけるレーザ光の集光点のずれを極力少なくしつつ効率よくレーザ加工を行うことができる。 【発明を実施するための最良の形態】【0032】本発明の知見は、例示のみのために示された添付図面を参照して以下の詳細な記述を考慮することによって容易に理解することができる。引き続いて、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。 【0033】本実施形態のレーザ加工装置につい 。引き続いて、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。 【0033】本実施形態のレーザ加工装置について図1を参照しながら説明 する。図1に示すように、レーザ加工装置1は、ステージ2(移動手段)上に載置された平板状の加工対象物Sの内部に集光点Pを合わせて加工用レーザ光L1(第1のレーザ光)を照射し、加工対象物Sの内部に多光子吸収による改質領域Rを形成する装置である。ステージ2は、上下方向及び左右方向への移動並びに回転移動が可能なものであり、このステージ 2の上方には、主にレーザヘッドユニット3、光学系本体部4及び対物レンズユニット5からなるレーザ出射装置6が配置されている。また、レーザ加工装置1は制御装置7(制御手段)を備えており、制御装置7はステージ2及びレーザ出射装置6に対してそれぞれの挙動(ステージ2の移動、レーザ出射装置6のレーザ光の出射等)を制御するための制御信号を出力 する。 【0039】また、対物レンズユニット5は、光学系本体部4の下端部に着脱自在に取り付けられている。…この対物レンズユニット5の筐体41の下端には、ピエゾ素子を用いたアクチュエータ43(保持手段)を介在させて、軸線βに光軸が一致した状態で加工用対物レンズ42が装着されて いる。…【0040】更に、対物レンズユニット5の筐体41内には、加工対象物Sの表面S1から所定の深さに加工用レーザ光L1の集光点Pを位置させるべく、測距用レーザ光L2(第2のレーザ光)を出射するレーザダイオード44と受光部45とが配置されている。測距用レーザ光L2はレーザダ イオード44から出射され、ミラー46、ハーフミラー47…、…ダイクロイックミラー48 のレーザ光)を出射するレーザダイオード44と受光部45とが配置されている。測距用レーザ光L2はレーザダ イオード44から出射され、ミラー46、ハーフミラー47…、…ダイクロイックミラー48により反射され…、軸線β上を下方に向かって進行し、加工用対物レンズ42を通過して加工対象物Sの表面S1に照射される。 なお、加工用レーザ光L1はダイクロイックミラー48を透過する。 【0041】そして、加工対象物Sの表面S1で反射された測距用レーザ光 L2の反射光は、加工用対物レンズ42に再入射して軸線β上を上方に向 かって進行し、ダイクロイックミラー48により反射され…、ハーフミラー47を通過して受光部45内に入射し、フォトダイオードを4等分してなる4分割位置検出素子上に集光される。この4分割位置検出素子上に集光された測距用レーザ光L2の反射光の集光像パターンに基づいて、加工用対物レンズ42による測距用レーザ光L2の集光点が加工対象物Sの表 面S1に対してどの位置にあるかを検出することができる。4分割位置検出素子上に集光された測距用レーザ光L2の反射光の集光像パターンに関する情報は、制御装置7に出力される。制御装置7はこの情報に基づいて、アクチュエータ43に加工用対物レンズ42を保持する位置を指示する制御信号を出力する。 【0042】制御装置7は物理的には、ステージ2及びレーザ出射装置6と信号の授受を行うためのインタフェイスと、CPU(中央演算装置)と、メモリやHDDといった記憶装置と、を備え、記憶装置に格納されているプログラムに基づいてCPUが所定の情報処理を行い、その情報処理の結果を制御信号としてインタフェイスを介してステージ2及びレーザ出射装 置6に出力する。 【0043】…制御装置7は機能的には、レー ラムに基づいてCPUが所定の情報処理を行い、その情報処理の結果を制御信号としてインタフェイスを介してステージ2及びレーザ出射装 置6に出力する。 【0043】…制御装置7は機能的には、レーザ出射制御部701と、ステージ移動制御部702と、アクチュエータ制御部703と、集光点演算部704と、端部判断部705 と、循環メモリ706(変位記憶手段)と、を備える。レーザ出射制御部701 は、加工用レーザ光L1及び測距用 レーザ光L2の出射を制御する信号をレーザヘッドユニット3のレーザヘッド13及び対物レンズユニット5のレーザダイオード44にそれぞれ出力する部分である。ステージ移動制御部702は、ステージ2の移動を制御する制御信号をステージ2に出力する部分である。アクチュエータ制御部703はアクチュエータ43の駆動を制御する制御信号を対物レンズユ ニット5のアクチュエータ43に出力する部分である。アクチュエータ制 御部703は循環メモリ706にアクチュエータ43の移動量を格納する部分でもある。この移動量は加工対象物Sの主面S1の変位に応じて変化するので、主面S1の変位を表す量として捉えることもできる。集光点演算部704は対物レンズユニット5の受光部45から出力される非点収差信号に基づいて、加工対象物Sと測距用レーザ光L2の集光点との距離を 算出する部分である。端部判断部705は受光部45が受光する光量に基づいて、加工用対物レンズ42が加工対象物Sの端部に対応する位置にあるかどうかを判断する部分である。…【0044】以上のように構成されたレーザ加工装置1によるレーザ加工方法の概要について説明する。まず、ステージ2上に加工対象物Sを載置し、 ステージ2を移動させて加工対象物Sの内部に加工用レーザ光L1の集光 のように構成されたレーザ加工装置1によるレーザ加工方法の概要について説明する。まず、ステージ2上に加工対象物Sを載置し、 ステージ2を移動させて加工対象物Sの内部に加工用レーザ光L1の集光点Pを合わせる。このステージ2の初期位置は、加工対象物Sの厚さや屈折率、加工用対物レンズ42の開口数等に基づいて決定される。 【0045】続いて、レーザヘッド13から加工用レーザ光L1を出射すると共に、レーザダイオード44から測距用レーザ光L2を出射し、加工用 対物レンズ42により集光された加工用レーザ光L1及び測距用レーザ光L2が加工対象物Sの所望のライン(切断予定ライン)上をスキャンするようにステージ2を移動させる。このとき、受光部45により測距用レーザ光L2の反射光が検出され、加工用レーザ光L1の集光点Pの位置が加工対象物Sの表面S1から常に一定の深さとなるようにアクチュエータ4 3が制御装置7によってフィードバック制御されて、加工用対物レンズ42の位置が軸線β方向に微調整される。 【0046】従って、例えば加工対象物Sの表面S1に面振れがあっても、表面S1から一定の深さの位置に多光子吸収による改質領域Rを形成することができる。このように平板状の加工対象物Sの内部にライン状の改質 領域Rを形成すると、そのライン状の改質領域Rが起点となって割れが発 生し、ライン状の改質領域Rに沿って容易且つ高精度に加工対象物Sを切断することができる。 【0047】本実施形態のレーザ加工装置1を用いるレーザ加工方法についてより具体的に説明する。このレーザ加工方法の説明では、レーザ加工装置1の動作も併せて説明する。本実施形態のレーザ加工方法は、ウェハ状 の加工対象物Sに対する加工用対物レンズ42の初期位置を設定する準備工程と、 する。このレーザ加工方法の説明では、レーザ加工装置1の動作も併せて説明する。本実施形態のレーザ加工方法は、ウェハ状 の加工対象物Sに対する加工用対物レンズ42の初期位置を設定する準備工程と、加工用レーザ光L1を照射して改質領域を形成する加工工程とに分けることができるので、準備工程及び加工工程についてそれぞれ説明する。 【0048】(準備工程)まず、ウェハ状の加工対象物Sに対する加工用対 物レンズ42の初期位置を設定する準備工程について説明する。 【0049】図3は加工対象物Sの平面図である。加工対象物Sにはn本の切断予定ラインC1~Cnが設定されており、この切断予定ラインC1~Cnそれぞれで順番にレーザ加工を行う。まず、最初の切断予定ラインC1上の一点Q1において加工対象物Sの内部の所定の位置に集光点が合う ようにステージ2(図1参照)の高さを調整する。その調整した高さを初期位置として、切断予定ラインC1の延長上の点X1に加工用対物レンズ42が位置するようにステージ2を移動させる。 【0050】より詳細に図4(A)~図4(C)を参照しながら説明する。 図4(A)~図4(C)は、図3のⅡ-Ⅱ断面を示す図である。尚、理解 を容易にするために図4(A)~図4(C)においては断面を示すハッチングを省略する。図4(A)に示すように、加工対象物Sはダイシングフィルム2aを介してステージ2に吸着されて固定されている。ダイシングフィルム2aはダイシングリング(図示しない)で固定されている。 【0051】図4(A)に示すように、加工対象物2の切断予定ラインC 1上の一点Q1に対応する位置に加工用対物レンズ42が配置されるよう にステージ2が移動する。加工用対物レンズ42を保持しているアクチュエータ43は最も縮んだ 対象物2の切断予定ラインC 1上の一点Q1に対応する位置に加工用対物レンズ42が配置されるよう にステージ2が移動する。加工用対物レンズ42を保持しているアクチュエータ43は最も縮んだ状態から25μm伸びた状態になる。この伸び量25μmは、アクチュエータ43の最大伸び量50μmの半分の量として設定されている。この状態で観察用可視光の反射光のピントが合うようにステージ2を上下させる。尚、ステージ2の上下動による誤差が大きい場 合は、まずアクチュエータ43を所望の位置まで動かしてその時の非点収差信号を記憶したら、いったんアクチュエータ43を元の位置まで戻し、ステージ2を(大雑把に)移動させて、アクチュエータ43を先ほど記憶した非点収差信号と合う位置に微調整させると良い。 【0052】続いて、図4(B)に示すように、図4(A)の状態からステ ージ2が更に所定の距離(以下、加工高さ)上昇して、加工対象物Sの表面S1と加工用対物レンズ42との距離が図4(A)における距離から加工高さ分だけ近づくように設定される。ここで、可視域のピント位置とレーザ光の集光位置とが一致するものとすれば、加工用レーザ光L1は、加工対象物Sの内部であって、その表面S1から加工高さと加工対象物Sの レーザ波長における屈折率との積の値に相当する位置に集光されることになる。例えば、加工対象物Sがシリコンウェハであってその屈折率が3. 6(波長1.06μm)であり、加工高さが10μmであれば、3.6×10=36μmの位置に集光されることになる。図4(B)に示す状態で測距用レーザ光L2の反射光から非点収差信号を得て、この非点収差信号 の値を基準値とする。 【0053】図4(B)に示す状態からそのままステージ2を移動させて、加工用対物レンズ42 す状態で測距用レーザ光L2の反射光から非点収差信号を得て、この非点収差信号 の値を基準値とする。 【0053】図4(B)に示す状態からそのままステージ2を移動させて、加工用対物レンズ42が切断予定ラインC1の延長上の点X1に至った段階で図4(C)に示すように待機状態となる。図4(B)及び図4(C)に示す、鉛直方向における加工対象物Sに対する加工用対物レンズ42の 位置が初期位置となる。 【0054】この準備工程におけるレーザ加工装置1の動作について…説明する。制御装置7のステージ制御部702がステージ2に対して加工用対物レンズ42がC1上の一点Q1に移動するように制御信号を出力する(ステップS01)。この制御信号の出力に応じてステージ2が移動する。 更に制御装置7のアクチュエータ制御部703がアクチュエータ43に対 して25μm伸びるように制御信号を出力する(ステップS02)。この制御信号の出力に応じてアクチュエータ43は25μm伸びる。この状態で可視観察光によってピントが合うようにステージ2を上下させ、その可視観察光のピントが合う位置を設定し、加工用対物レンズ42及び加工対象物Sは図4(A)で説明した状態になる(ステップS03)。 【0055】制御装置7のステージ移動制御部702がステージ2に対して所定の加工高さ(例えば、10μm)上昇するように制御信号を出力する(ステップS04)。この制御信号の出力に応じてステージは10μm上昇し、加工用対物レンズ42及び加工対象物Sは図4(B)で説明した状態になる。 【0056】制御装置7のレーザ出射制御部701はレーザダイオード44に対して測距用レーザ光L2を出射するように制御信号を出力する(ステップS05)。この制御信号の出力に応じてレーザダイ 【0056】制御装置7のレーザ出射制御部701はレーザダイオード44に対して測距用レーザ光L2を出射するように制御信号を出力する(ステップS05)。この制御信号の出力に応じてレーザダイオード44は測距用レーザ光L2を出射し、加工対象物Sの表面S1で反射された反射光は受光部45の4分割位置検出素子が受光する。この受光に応じて出力され る信号は集光点演算部704及び端部判断部705に出力される。 【0057】集光点演算部704はこの状態における非点収差信号の値を基準値として保持する(ステップS06)。続いて、ステージ移動制御部702からステージ2に対して、加工用対物レンズ42が加工対象物Sの切断予定ラインC1の延長上のX1に対応する位置まで移動するように制御 信号を出力する(ステップS07)。この制御信号の出力に応じてステー ジ2は移動し、加工用対物レンズ42が加工対象物Sの切断予定ラインC1の延長上のX1に対応する位置まで移動すると、ステージ移動制御部702からステージ2に対して移動を停止するように制御信号を出力する(ステップS08)。 【0058】(加工工程)引き続いて、加工用レーザ光L1及び測距用レー ザ光L2を照射して改質領域を形成する加工工程について説明する。 【0059】図4(A)~図4(C)と同様に図3のⅡ-Ⅱ断面を示す図6(A)~図6(C)を参照しながら説明する。尚、理解を容易にするために図6(A)~図6(C)においては断面を示すハッチングを省略する。 図6(A)は図4(C)の状態から引き続いて、切断予定ラインC1にお いて加工用対物レンズ42が改質領域の形成を開始した状態を示している。 アクチュエータ43は図4(C)で設定された伸び量で固定されている。 図4(C)から図6(A)の状態 切断予定ラインC1にお いて加工用対物レンズ42が改質領域の形成を開始した状態を示している。 アクチュエータ43は図4(C)で設定された伸び量で固定されている。 図4(C)から図6(A)の状態に差し掛かる前に加工用レーザ光L1及び測距用レーザ光L2が照射される。加工用対物レンズ42が図中矢印Eの方向に移動するようにステージ2が移動する。 【0060】測距用レーザ光L2はダイシングフィルム2aにおいては反射率が低く反射される全光量は少ないが、加工対象物Sにおいては反射される全光量が増大する。すなわち、受光部45(図1参照)の4分割位置検出素子が検出する測距用レーザ光L2の反射光の全光量が多くなるので、反射光の全光量が予め定められた閾値を超えた場合に加工対象物Sの切断 予定ラインC1と加工用対物レンズ42が交差する位置にあるものと判断できる。従って、受光部45(図1参照)の4分割位置検出素子が検出する全光量が予め定められた閾値よりも大きくなった場合に、加工用対物レンズ42が切断予定ラインC1の一端に相当する位置にあるものとして(図7(A)に相当する状態になってものとして)、その時点でのアクチ ュエータ43の伸び量の保持を解除して、所定の間隔ごと(例えば、各サ ンプリングポイントごと)に非点収差信号がステップS06で保持した基準値となるようにアクチュエータ43の伸び量制御を開始する。従って、加工用対物レンズ42が図6(A)中の矢印E方向に移動すると図6(B)に示す状態になる。図6(B)に示すように、区間F(一端部)においては一定の加工高さで改質領域Rが形成されることになる。この区間Fにお いて一定の加工高さで改質領域Rが形成されると、その後、加工用対物レンズ42は切断予定ラインC1に沿って移動し、加工用レ いては一定の加工高さで改質領域Rが形成されることになる。この区間Fにお いて一定の加工高さで改質領域Rが形成されると、その後、加工用対物レンズ42は切断予定ラインC1に沿って移動し、加工用レーザ光L1によって改質領域Rを形成する。この間、測距用レーザ光L2の反射光から得られる非点収差信号が上記基準値となるようにアクチュエータ43が調整される。 【0061】図6(B)に示す状態から更に加工用対物レンズ42が図6(A)中矢印Eの方向に移動すると、図6(C)に示すように加工用対物レンズ42は切断予定ラインC1の他端に差し掛かる。加工用対物レンズ42が加工対象物Sから外れた位置に至ると、図6(A)を参照しながら説明したのとは逆の状態となり、受光部45(図1参照)の4分割位置検 出素子が検出する測距用レーザ光L2の反射光の全光量が少なくなる。従って、受光部45(図1参照)の4分割位置検出素子が検出する全光量が予め定められた閾値よりも小さくなった場合に、加工用対物レンズ42が切断予定ラインC1の一端に相当する位置にあるものとして(図6(C)に相当する状態になってものとして)、その時点でのアクチュエータの伸 び量を保持する。アクチュエータ43の伸び量を保持したまま加工用対物レンズ42が図6(C)中のX2の位置に至るようにステージ2が移動し、次の切断予定ラインC2の加工に備える(移行ステップ)。 【0062】尚、上述の説明で、加工用対物レンズ42が切断予定ラインC1の一端に相当する位置(図6(A))に到達したこと検出するために、 受光部45(図1参照)の4分割位置検出素子が検出する全光量が予め定 められた閾値よりも大きくなったことに基づいたが、これに限られず他の基準を適用することもできる。その一例を図7(A) 受光部45(図1参照)の4分割位置検出素子が検出する全光量が予め定 められた閾値よりも大きくなったことに基づいたが、これに限られず他の基準を適用することもできる。その一例を図7(A)~図7(B)を参照しながら説明する。図7(A)は、縦軸に受光部45(図1参照)の4分割位置検出素子が検出する全光量をとり、横軸に時間をとって、図6(A)~図6(B)に相当する受光部45(図1参照)の4分割位置検出素子が 検出する全光量の変化を記録した図である。この場合には上述の通り、予め定められた閾値T1を上回った時点で加工用対物レンズ42が切断予定ラインC1の一端に相当する位置に到達したと判断している。 【0063】図7(A)のグラフから、所定の間隔ごと(例えば、各サンプリングポイントごと)に、後の全光量の値から前の全光量の値を差し引い た差分の変化量を算出し、縦軸に変化量をとって横軸に時間をとった図を図7(B)に示す。この場合に、正のピークが現れている部分は、全光量の変化が最も大きな点、すなわち加工対象物Sのエッジ中央付近に相当する部分であると考えられる。そこで、図7(A)に示す全光量が閾値T1となった後であって、図7(B)に示す差分のピークの変化が収まった後 にアクチュエータ43の追従を開始することもできる。 【0064】また、上述の説明で、加工用対物レンズ42が切断予定ラインC1の他端に相当する位置(図6(C))にあること検出するために、受光部45(図1参照)の4分割位置検出素子が検出する全光量が予め定められた閾値よりも小さくなったことに基づいたが、これに限られず他の基 準を適用することもできる。その一例を図8(A)~図8(B)を参照しながら説明する。図8(A)は、縦軸に受光部45(図1参照)の4分割位置検 さくなったことに基づいたが、これに限られず他の基 準を適用することもできる。その一例を図8(A)~図8(B)を参照しながら説明する。図8(A)は、縦軸に受光部45(図1参照)の4分割位置検出素子が検出する全光量をとり、横軸に時間をとって、図6(B)~図6(C)の状態における受光部45(図1参照)の4分割位置検出素子が検出する全光量の変化を記録した図である。この場合には上述の通り、 予め定められた閾値T2を下回った時点で加工用対物レンズ42が切断予 定ラインC1の一端に相当する位置にあると判断している。 【0065】図8(A)のグラフから、所定の間隔ごと(例えば、各サンプリングポイントそれぞれ)に、後の全光量の値から前の全光量の値を差し引いた差分の変化量を算出し、縦軸に変化量をとって横軸に時間をとった図を図8(B)に示す。この場合に、負のピークが現れている部分は、全 光量の変化が最も大きな点、すなわち加工対象物Sのエッジ(外縁)中央付近に相当する部分であると考えられる。そこで、この部分に相当するアクチュエータ43の伸縮量で固定することもできる。 【0067】この加工工程におけるレーザ加工装置1の動作について…説明する。尚、レーザ加工装置1のステージ2及び加工用対物レンズ42は、 図4(C)を参照しながら説明した状態にあるものとする。 【0068】制御部7のレーザ出射制御部701が、レーザヘッド13に対して加工用レーザ光L1を出射するように、レーザダイオード44に対しては測距用レーザ光L2を出射するように、それぞれ制御信号を出力する(ステップS11) 。この制御信号の出力に応じて加工用レーザ光L1 及び測距用レーザ光L2がそれぞれ出射される。 【0069】制御装置7のステージ制御部702がステージ2に 御信号を出力する(ステップS11) 。この制御信号の出力に応じて加工用レーザ光L1 及び測距用レーザ光L2がそれぞれ出射される。 【0069】制御装置7のステージ制御部702がステージ2に対して加工用対物レンズ42が図6(A)の矢印E方向に移動するように制御信号を出力する(ステップS12)。この制御信号の出力に応じてステージ2は移動を開始する。 【0070】制御装置7の端部判断部705は、受光部45から出力される信号に基づいて、加工用対物レンズ42が加工対象物Sの端部に差し掛かったかどうかを判断する(ステップS13)。端部判断部705は、加工用対物レンズ42が加工対象物Sの端部に差し掛かったと判断すると、アクチュエータ制御部703に対してアクチュエータ43の伸縮を開始して、 非点収差信号が保持している基準値に等しくなるように、制御信号を出力 するように指示する指示信号を出力する。アクチュエータ制御部703はアクチュエータ43に伸縮を開始して、非点収差信号が保持している基準値に等しくなるための、制御信号を出力する(ステップS14)。この制御信号の出力に応じてアクチュエータ43は加工対象物Sの表面S1の変位に応じて伸縮して、測距用レーザ光L2の集光点位置が基準位置となる ように加工用対物レンズ42を保持する。従って、加工対象物Sの表面S1の変位に応じた位置に改質領域Rが形成される(図6(B)参照)。 【0071】端部判断部705は、受光部45から出力される信号に基づいて、加工用対物レンズ42が加工対象物Sの他端に差し掛かったかどうかを判断する(ステップS15)。端部判断部705は、加工用対物レンズ 42が加工対象物Sの端部に差し掛かったと判断すると、アクチュエータ制御部703に対してアクチュエータ 差し掛かったかどうかを判断する(ステップS15)。端部判断部705は、加工用対物レンズ 42が加工対象物Sの端部に差し掛かったと判断すると、アクチュエータ制御部703に対してアクチュエータ43の伸縮を停止する制御信号を出力するように指示する指示信号を出力する。この指示信号の出力に応じて、アクチュエータ制御部703はアクチュエータ43に対して伸縮を停止して保持状態とするための制御信号を出力する(ステップS16)。この制 御信号の出力に応じてアクチュエータ43は伸縮を停止する。ステージ移動制御部702は、加工用対物レンズ42が切断予定ラインC1の延長線上の点X2に差し掛かると、ステージ2に対して移動を停止するように制御信号を出力する(ステップS17)。その後、循環メモリ706に格納されているアクチュエータ43の伸縮量の内、最初の5チャネル分のメモ リに格納されているアクチュエータ43の伸縮量の平均値を算出し、この平均値となるようにアクチュエータ43の伸縮量を固定する(ステップS18)。 【0072】上述した準備工程及び加工工程は、加工対象物Sの全ての切断予定ラインC1~Cnそれぞれで行われ、切断予定ラインC1~Cnそれ ぞれに沿って改質領域Rが形成される。 【0073】本実施形態では、初期位置に加工用対物レンズ42を保持して加工用レーザ光L1を照射してレーザ加工を開始するので、加工対象物Sの端部の形状変動の影響を極力排除することができる。 【0074】加工用対物レンズ42を初期位置に保持した状態で加工対象物Sの端部に改質領域を形成した後に加工用対物レンズ42を保持した状態 を解除して、加工用対物レンズ42と加工対象物Sとの距離が一定となるように調整しながら改質領域を形成するので、加工対象物Sの表 Sの端部に改質領域を形成した後に加工用対物レンズ42を保持した状態 を解除して、加工用対物レンズ42と加工対象物Sとの距離が一定となるように調整しながら改質領域を形成するので、加工対象物Sの表面S1から一定の距離隔てた位置に改質領域を安定して形成できる。 【0075】改質領域を形成した後に加工用対物レンズ42を加工対象物Sの主面S1に向かう方向に駆動しないように保持するので、次の切断予定 ラインの加工に移行する際に円滑な移行が可能となる。 【0076】加工用対物レンズ42を駆動しないように保持した時点から所定時間前に記憶したアクチュエータ43の伸縮量に基づいた位置となるように、次の切段予定ラインの準備ステップにおいて加工用対物レンズ42の主面S1に対する位置を設定するので、次の切断予定ラインにおいても 加工対象物Sの端部の形状変動による影響を極力排除できる。 【0077】切断予定ラインに沿って改質領域を安定して形成することができるので、改質領域を形成した後にダイシングフィルム2aの拡張等により加工対象物としてのウエハをチップ状に割断・分離する工程において、良好な切断品質で且つ大量のウエハを割断する場合でも常に安 定してウエハの割断を行うことができる。 ⑵ 本件明細書の記載によれば、本件各発明は次のような技術的意義を有するものと認められる。 本件各発明は、レーザ光を照射することで加工対象物を加工するためのレーザ加工装置に関するものである(【0001】)。 従来のレーザ加工技術においては、加工対象物の外側の位置からレーザ光 の照射を開始してレーザ光と加工対象物とをその主面に沿って移動させて加工を行う場合に、測定手段は加工対象物の外側から測定を開始し、加工対象物の内側へと測定を行っていき の外側の位置からレーザ光 の照射を開始してレーザ光と加工対象物とをその主面に沿って移動させて加工を行う場合に、測定手段は加工対象物の外側から測定を開始し、加工対象物の内側へと測定を行っていき、この測定によって得られた主面の高さの測定値に基づいて集光レンズを駆動すると、加工対象物の端部においてレーザ光の集光点がずれる場合がある(【0002】)。すなわち、加工対象物の 外側から測定を開始した場合、集光レンズは加工対象物を検出した時点で上昇するが、この間もレーザ光と加工対象物のその主面に沿った移動は継続していることから、集光レンズが所定の位置に上昇し、切断予定ラインにレーザ光の集光点が合うまでにはタイムラグが発生し、また、集光レンズを所定の位置に合わせるための信号が大きく振られることによってもレーザ光の集 光点がずれるため、レーザ光の焦点が切断予定ラインに合って安定状態になるまでの間は、切断予定ラインではない部分が加工されることになる(【0008】~【0014】)。このような問題点に対し、本件各発明は、加工対象物の端部における処理に着目し、加工対象物の端部におけるレーザ光の集光点のずれを極力少なくしつつ効率よくレーザ加工を行うことができるレ ーザ加工装置を提供することを目的とする(【0006】【0014】)。 具体的には、本件各発明は、集光点が加工対象物内部の所定の位置に合う状態となる初期位置にレンズを保持するように保持手段を制御し、当該位置にレンズを保持した状態で第一のレーザ光を照射しながら、制御手段は加工対象物とレンズとを主面に沿って相対的に移動させるように移動手段を制御 して切断予定ラインの一端部において改質領域を形成し、切断予定ラインの一端部において改質領域が形成された後に、制御手段はレンズを初期位置に を主面に沿って相対的に移動させるように移動手段を制御 して切断予定ラインの一端部において改質領域を形成し、切断予定ラインの一端部において改質領域が形成された後に、制御手段はレンズを初期位置に保持した状態を解除してレンズと主面との間隔を調整しながら保持するように保持手段を制御し、レンズと加工対象物とを主面に沿って相対的に移動させるように移動手段を制御して改質領域を形成するレーザ加工装置であり、 初期位置にレンズを保持した状態で切断予定ラインの一端部において改質領 域を形成するので、加工対象物の端部の形状変動による影響を極力排除して改質領域を形成することができ、切断予定ラインの一端部において改質領域を形成した後にレンズを保持した状態を解除し、レンズの位置を調整しながら残部において改質領域を形成するので、加工対象物内部の所定の位置に改質領域を形成することができる(【0023】【0024】)。また、さら に、レンズと加工対象物とを主面に沿って相対的に移動させるように移動手段を制御して改質領域を形成した後、レンズを主面に向かう方向に駆動させずに保持するように保持手段を制御すると共に、レンズと加工対象物とを主面に沿って相対的に移動させるように移動手段を制御することにより、例えば、次の切断予定ラインの加工に移行する際に円滑な移行が可能となる (【0027】)。 本件各発明により、加工対象物の端部におけるレーザ光の集光点のずれを極力少なくしつつ効率よくレーザ加工を行うことができるという効果があり(【0031】)、切断予定ラインに沿って改質領域を安定して形成することができるので、改質領域を形成した後にダイシングフィルムの拡張等によ り加工対象物としてのウェハをチップ状に割断、分離する工程において、良好な切断 ラインに沿って改質領域を安定して形成することができるので、改質領域を形成した後にダイシングフィルムの拡張等によ り加工対象物としてのウェハをチップ状に割断、分離する工程において、良好な切断品質でかつ大量のウェハを割断する場合でも常に安定してウェハの割断を行うことができる(【0077】)。 2 争点①(被告が対象製品2を製造、販売等したか。)について被告は、平成29年12月14日に開催された展示会において、「ML30 0EXSeries/ML200EX」と題し、「ML200EX」について「200mmウエーハに対応したレーザーダイシングマシン」などと記載するなどしたパネルを展示したことがあった(前記第2の1⑷エ)。 ここで、被告は、実際には型番中に「ML200EX」を含む製品すなわち対象製品2を被告が製造、販売等したことはなく、イメージを示すために写真 をデジタル加工するなどして上記パネルを作成したと主張する。上記展示会で 上記パネルの展示はあったものの、そのこと以外に、対象製品2が現実に存在し、被告がこれを製造、販売等をした事実をうかがわせる証拠はなく、被告が対象製品2を製造、販売等したことを認めるに足りない。 3 争点②(対象製品1⑵Bが本件各発明の技術的範囲に属するか。)について⑴ 対象製品1⑵Bについて ア被告は、平成28年3月から平成30年8月まで、別紙対象製品1⑵B売上一覧記載のとおり、被告エンジンBを搭載した対象製品1⑵Bを製造、販売した(前記第2の1⑷ウ)。被告は、その後、これらについて被告エンジンBを被告エンジンAに交換する改造を行った(同オ)ため、被告エンジンBを搭載した製品(対象製品1⑵B)は存在しなくなった。 しかし、上記改造が行われたのは製造、販売後 らについて被告エンジンBを被告エンジンAに交換する改造を行った(同オ)ため、被告エンジンBを搭載した製品(対象製品1⑵B)は存在しなくなった。 しかし、上記改造が行われたのは製造、販売後なのであるから、被告は、対象製品1Bの製造、販売を行ったといえるのであり、それらを行わなかったことになるものではない。 イ対象製品1⑵Bは、シリコンウェハの端部から所定の距離の範囲においてAF固定の状態でレーザ加工を行った後に、AF固定を解除して、AF 追従の状態でレーザ加工を行う。 具体的には、加工対象物が面取り部分のあるシリコンウェハである場合には、加工対象物の位置の検出方法として座標基準を採用し、概要別紙対象製品1動作態様記載1⑴のとおり、シリコンウェハの現実の端を検出した後、面取り部分(ベベル部分)を超えて所定距離進んだ時点で加工用レ ーザの照射を開始し、更に所定距離進んだ(シリコンウェハの中心からの距離により推定された地点に到達した)時点でAF固定を解除し、AF追従を行う。 また、加工対象物が面取り部分のないシリコンウェハである場合には、加工対象物の位置の検出方法として光量基準を採用し、別紙対象製品1動 作態様記載1⑵のとおり、シリコンウェハの現実の端を検出した後、加工 用レーザ光の照射を開始し、その後、所定距離進んだ時点でAF固定を解除し、AF追従を行う。 (弁論の全趣旨)ウ被告は、対象製品1⑵Bの制御機構について、出荷前に、日本国内において、コンピュータのパラメータ設定により様々なアプリケーションを作 成し、各駆動機構及び対物レンズ保持機構について異なる動きをさせる検査を行い、海外の法人である各利用者(前記第2の1⑸ウ)に納品した後、各利用者の要望に応じて調整を行ったアプリケ ーションを作 成し、各駆動機構及び対物レンズ保持機構について異なる動きをさせる検査を行い、海外の法人である各利用者(前記第2の1⑸ウ)に納品した後、各利用者の要望に応じて調整を行ったアプリケーションを適用していた。 (弁論の全趣旨)⑵ 改質領域の形成(構成要件1A、1G、1H及び2A)について ア特許請求の範囲においては、「改質領域」は「レーザ光を加工対象物の内部に集光点を合わせて照射」(構成要件1A)することにより形成されるものと記載されているが、その形成が多光子吸収によりされるなど、その形成の態様について、限定する記載はない。 本件明細書には、レーザ光を加工対象物の内部に集光点をあわせて照射 して改質領域を形成すること(【0023】等)が記載され、また、「発明を実施するための最良の形態」として、レーザ光を加工対象物の内部に集光点を合わせて照射することにより、多光子吸収による改質領域を形成することが記載されている(【0033】【0046】)。もっとも、上記【0033】【0046】は実施例の記載であるところ、 本件明細書には、本件各発明の改質領域の形成が多光子吸収によりされることに限定される旨の記載やそのように限定されることを示唆する記載はない。本件各発明は、「レーザ光を加工対象物の内部に集光点を合わせて照射し、…加工対象物の内部に改質領域を形成する」(【0023】等)に当たり、加工対象物の端部においてレーザ光の集光点がずれ る場合があるという従来のレーザ加工技術における課題を、レンズの位 置を保持することなどにより解決し、加工対象物の端部におけるレーザ光の集光点のずれを極力少なくしつつ効率よくレーザ加工を行うことができるレーザ加工装置を提供することを目的とするものである の位 置を保持することなどにより解決し、加工対象物の端部におけるレーザ光の集光点のずれを極力少なくしつつ効率よくレーザ加工を行うことができるレーザ加工装置を提供することを目的とするものである(前記1⑵)。本件各発明のこのような課題の解決との関係において、改質領域の形成が多光子吸収によりされることに何らかの技術的意義がある旨の 本件明細書の記載はないし、また、これを認めるに足りる証拠はない。 これらによれば、本件各発明の「改質領域」は、レーザ光を加工対象物の内部に集光点を合わせて照射することによって形成されるものであれば足り、「多光子吸収」によって形成されるものに限定されるとは解されない。 イ対象製品1⑵Bは、シリコンウェハ内部で、加工用レーザ光の集光点を走査することにより、シリコンウェハの内部にレーザ加工領域を形成する(前記第2の1⑸ア)。これは、「レーザ光を加工対象物の内部に集光点を合わせて照射」することにより形成される加工領域すなわち「改質領域」を形成するものといえる。 ⑶ レンズの保持態様(構成要件2B)についてア特許請求の範囲においては、「…加工対象物と…レンズとを加工対象物の主面に沿って移動させる移動手段」(構成要件1C)と記載されており、本件各発明の「移動手段」は、加工対象物とレンズとを加工対象物の主面に沿って移動させるものであることが理解できる。また、特許請 求の範囲においては、「切断予定ラインの一端部において改質領域が形成された後に、」「レンズを…初期位置に保持した状態を解除して…レンズと…主面との間隔を調整しながら保持するように…保持手段を制御し、…レンズと…加工対象物とを…主面に沿って相対的に移動させるように…移動手段を制御して改質領域を形成し 保持した状態を解除して…レンズと…主面との間隔を調整しながら保持するように…保持手段を制御し、…レンズと…加工対象物とを…主面に沿って相対的に移動させるように…移動手段を制御して改質領域を形成し」(構成要件2A)、「更 に、」「…レンズを…主面に向かう方向に駆動させずに保持するように …保持手段を制御すると共に、」「レンズと…加工対象物とを…主面に沿って相対的に移動させるように…移動手段を制御する」(構成要件2B)と記載されており、「…後に」、「更に、」との文言から、本件発明2において、「(レンズを初期位置に保持し、レンズと加工対象物とを主面に沿って相対的に移動させるように移動手段を制御した状態での) 切断予定ラインの一端部における改質領域の形成」(構成要件1G)、「レンズと主面との間隔を調整しながら保持し、レンズと加工対象物とを主面に沿って相対的に移動させるように移動手段を制御した状態での改質領域の形成」(構成要件2A)、「レンズを主面に向かう方向に駆動させずに保持した状態での、レンズと加工対象物とを主面に沿って相 対的に移動させるような移動手段の制御」(構成要件2B)という各動作は、時間的に、そこに記載された順に実行されるものと理解できる。 ここで、構成要件2Bには、「レンズを主面に向かう方向に駆動させずに保持した状態での、レンズと加工対象物とを主面に沿って相対的に移動させるような移動手段の制御」と同時に改質領域を形成することは記 載されていない。 また、本件明細書には、移動手段である加工対象物が載置されたステージ2が、加工工程において、加工対象物がレンズの直下にない範囲においても、加工対象物とレンズとを移動させていることが記載されている(【0033】【0059】)。また、本件明細書には、 置されたステージ2が、加工工程において、加工対象物がレンズの直下にない範囲においても、加工対象物とレンズとを移動させていることが記載されている(【0033】【0059】)。また、本件明細書には、「レンズと主 面との間隔を調整しながら保持し、レンズと加工対象物とを主面に沿って相対的に移動させるように移動手段を制御した状態での改質領域の形成」(構成要件2A)、「レンズを主面に向かう方向に駆動させずに保持した状態での、レンズと加工対象物とを主面に沿って相対的に移動させるような移動手段の制御」(構成要件2B)について、「改質領域を 形成した後にレンズを主面に向かう方向に駆動しないように保持するの で、」「次の切断予定ラインの加工に移行する際に円滑な移行が可能となる。」(【0027】【0075】)、「加工用対物レンズ42が加工対象物Sから外れた位置に至ると、…その時点でのアクチュエータの伸び量を保持する。アクチュエータ43の伸び量を保持したまま加工用対物レンズ42が図6(C)中のX2の位置に至るようにステージ2が 移動し、次の切断予定ラインC2の加工に備える(移行ステップ)。」(【0061】)と記載されており、「レンズを主面に向かう方向に駆動させずに保持した状態での、レンズと加工対象物を主面に沿って相対的に移動させるような移動手段の制御」は、一つの切断予定ラインの加工を終えて加工対象物がレンズの直下から外れた後、次の切断予定ライ ンの加工に備える際の動作として記載されている。 このような特許請求の範囲及び本件明細書の記載によれば、本件発明2における「レンズを主面に向かう方向に駆動させずに保持した状態での、レンズと加工対象物とを主面に沿って相対的に移動させるような移動手段の制御」(構成要件2B)は、加工 細書の記載によれば、本件発明2における「レンズを主面に向かう方向に駆動させずに保持した状態での、レンズと加工対象物とを主面に沿って相対的に移動させるような移動手段の制御」(構成要件2B)は、加工対象物がレンズの直下にあること を前提とした動作であるとは解されず、構成要件2Bの「主面に向かう方向」及び「主面に沿って」は、加工対象物に対して垂直方向及び水平方向を意味するにとどまるというべきである。 イ対象製品1⑵Bは、AF追従の状態でのレーザ加工終了後、対物レンズがシリコンウェハの端部を超えて走査終了位置に至ると、対物レンズを AF追従が終了した時点又はそれより所定の距離戻った位置における高さに固定した状態で、カッティングテーブルをX軸方向に動かす(前記第2の1⑸イ)から、「レンズを…主面に向かう方向に駆動させずに保持するように…保持手段を制御すると共に、…レンズと…加工対象物とを…主面に沿って相対的に移動させるように…移動手段を制御する」も のといえる。 ⑷ 切断予定ラインの一端部における改質領域の形成(構成要件1G、1H及び2A)についてア 「切断予定ラインの一端部」(構成要件1G,1H及び2A)について、特許請求の範囲において、その「切断予定ライン」や「切断予定ラインの一端部」がどのようなものであるのかを説明等する記載はない。 本件明細書には、「図10(A)の状態で、…シリコンウェハ800に第1のレーザ光806で加工しようとしているのは切断予定ライン800aに相当する位置である。」、「切断予定ライン800aにおいて第1のレーザ光806の集光点が合うまでにはタイムラグが発生する。また、非点収差信号も大きく振られることになって第1のレーザ光806 の集光点がずれるこ 。」、「切断予定ライン800aにおいて第1のレーザ光806の集光点が合うまでにはタイムラグが発生する。また、非点収差信号も大きく振られることになって第1のレーザ光806 の集光点がずれることにもなる。」、「従って、図10(C)に示すように、切断予定ライン800aにおいて第1のレーザ光806の焦点が合って安定状態になるまでの区間Bでは、切断予定ライン800aではない部分がレーザ加工されることになる。」との記載があり(【0008】~【0010】)、また、【図10】では、シリコンウェハの断面 図においてそのシリコンウェハの中ほどの高さの部分に一直線に切断予定ライン800aがあることや、その区間Bでは、シリコンウェハの高さ方向においてその切断予定ライン800aと異なる部分が加工されることが示されており、【0012】~【0014】【図11】においても同様の記載がある。これらによれば、「切断予定ライン」は、シリコ ンウェハにおいて、加工を予定する部分であって、シリコンウェハにおいて、高さ方向において予定されている部分と異なる部分が加工されることについて切断予定ラインではない部分が加工されているとされている。そうすると、これらの本件明細書の記載によれば、「切断予定ライン」とは、加工対象物の内部の一定の加工高さすなわち予定する加工の 深さにおける仮想線を意味していると理解できる。上記記載には、従来 技術のレーザ加工装置においては、加工対象物の端部で「切断予定ライン」にレーザ加工がされないことも説明されている。 また、本件明細書には、「受光部45(図1参照)の4分割位置検出素子が検出する全光量が予め定められた閾値よりも大きくなった場合に、加工用対物レンズ42が切断予定ラインC1の一端に相当する位置にあ るものとし 書には、「受光部45(図1参照)の4分割位置検出素子が検出する全光量が予め定められた閾値よりも大きくなった場合に、加工用対物レンズ42が切断予定ラインC1の一端に相当する位置にあ るものとして…、その時点でのアクチュエータ43の伸び量の保持を解除して、所定の間隔ごと(例えば、各サンプリングポイントごと)に非点収差信号がステップS06で保持した基準値となるようにアクチュエータ43の伸び量制御を開始する。従って、加工用対物レンズ42が図6(A)中の矢印E方向に移動すると図6(B)に示す状態になる。図 6(B)に示すように、区間F(一端部)においては一定の加工高さで改質領域Rが形成されることになる。この区間Fにおいて一定の加工高さで改質領域Rが形成されると、その後、加工用対物レンズ42は切断予定ラインC1に沿って移動し、加工用レーザ光L1によって改質領域Rを形成する。この間、測距用レーザ光L2の反射光から得られる非点 収差信号が上記基準値となるようにアクチュエータ43が調整される。」(【0060】)、「加工用対物レンズ42が切断予定ラインC1の一端に相当する位置(図6(A))に到達したこと検出するために、受光部45(図1参照)の4分割位置検出素子が検出する全光量が予め定められた閾値よりも大きくなったことに基づいた」(【0062】)等と 記載されている。本件各発明は、切断予定ラインの一端部において改質領域が形成された後に、制御装置はレンズを初期位置に保持した状態を解除するものであるところ(構成要件1H、2A)、上記では、加工対象物の加工の開始に当たり、「区間F(一端部)」において、「一定の加工高さで」(【0052】)すなわち予定する加工の深さで改質領域 が形成された後、「検出する全光量が予め定められた閾値より 対象物の加工の開始に当たり、「区間F(一端部)」において、「一定の加工高さで」(【0052】)すなわち予定する加工の深さで改質領域 が形成された後、「検出する全光量が予め定められた閾値よりも大きく なった場合に加工用対物レンズ42が切断予定ラインC1の一端に相当する位置にあるものとして」、その時点でアクチュエータの伸び量の保持、すなわち、加工対象物の特定の箇所で集光点が加工対象物の内部の所定の位置に合う状態となる初期位置にレンズを保持した状態(【0048】【0049】【0053】)が解除され、続いて切断予定ライン に沿って改質領域が形成されるとされている。したがって、ここでは、予定する加工の深さで改質領域が形成された後に、加工用対物レンズが切断予定ラインの一端に相当する位置にあることが記載されているといえる。 そして、本件各発明の技術的意義は、集光点が加工対象物内部の所定の 位置に合う状態となる初期位置にレンズを保持した状態で切断予定ラインの一端部において改質領域を形成した後に、初期位置にレンズを保持した状態を解除してレンズと加工対象物の間隔を調整しながら改質領域を形成することにより、加工対象物の端部におけるレーザ光の集光点のずれを極力少なくしつつ効率よくレーザ加工を行い、切断予定ラインに 沿って改質領域を安定して形成することを可能にするところにある(前記1⑵)。本件明細書の前記記載によれば、本件各発明のレーザ加工装置においては、加工対象物の加工の開始に当たり、初期位置にレンズを保持した状態で加工を開始し、一定の加工高さすなわち予定する加工の深さで改質領域が形成され、加工対象物の端部の形状変動による影響を 受けなくなった時点で、「切断予定ラインの一端部」において改質領域が形成されたものとして、 定の加工高さすなわち予定する加工の深さで改質領域が形成され、加工対象物の端部の形状変動による影響を 受けなくなった時点で、「切断予定ラインの一端部」において改質領域が形成されたものとして、初期位置にレンズを保持した状態を解除して、レンズの位置を調整しながら残部において改質領域を形成するものと理解できるところ、このように理解することは、本件各発明のレーザ加工装置において加工対象物の端部におけるレーザ光の集光点のずれを極力 少なくしつつ効率よくレーザ加工を行い、切断予定ラインに沿って改質 領域を安定して形成することを可能にするという本件各発明の上記効果を奏するものであり、上記の本件各発明の技術的意義に合致するものといえる。 したがって、これらの特許請求の範囲及び本件明細書の記載によれば、「切断予定ライン」とは、加工対象物の内部の一定の加工高さすなわち 予定する加工の深さにおける仮想線であり、本件各発明の「切断予定ラインの一端部」とは、加工対象物の加工の開始に当たり、レンズを一定の位置(初期位置)に保持した状態で一定の加工高さすなわち予定する加工の深さで改質領域が形成される部分を意味すると解すべきである。 イ被告は、「切断予定ラインの一端部」とは、シリコンウェハの面取り部 分を意味すると主張する。 本件各発明は、従来のレーザ加工技術においては、加工対象物の外側の位置からレーザ光の照射を開始してレーザ光と加工対象物とをその主面に沿って移動させて加工を行う場合に、測定手段は加工対象物の外側から測定を開始し、加工対象物の内側へと測定を行っていき、この測定に よって得られた主面の高さの測定値に基づいて集光レンズを駆動すると、加工対象物の端部においてレーザ光の集光点がずれる場合があり、加工対象物の 加工対象物の内側へと測定を行っていき、この測定に よって得られた主面の高さの測定値に基づいて集光レンズを駆動すると、加工対象物の端部においてレーザ光の集光点がずれる場合があり、加工対象物の外側から測定を開始した場合、集光レンズは加工対象物を検出した時点で上昇するが、この間もレーザ光と加工対象物のその主面に沿った移動は継続していることから、集光レンズが所定の位置に上昇し、 切断予定ラインにレーザ光の集光点が合うまでにはタイムラグが発生し、また、集光レンズを所定の位置に合わせるための信号が大きく振られることによってもレーザ光の集光点がずれるため、レーザ光の焦点が切断予定ラインに合って安定状態になるまでの間は、切断予定ラインではない部分が加工されることになるという問題点に対し、加工対象物の端部 における処理に着目し、レンズを保持した状態で「切断予定ラインの一 端部」において改質領域を形成した後に、レンズを保持した状態を解除してレンズと主面との間隔を調整しながら改質領域を形成することにより、加工対象物の端部の形状変動による影響を極力排除して改質領域を形成することができるという効果を実現するものである(前記1⑵)。 そして、加工対象物であるシリコンウェハに面取り部分があるか否かに かかわらず、加工対象物の外側から測定を開始した場合、集光レンズが加工対象物を検出した後、所定の位置に上昇し切断予定ラインにレーザ光の集光点が合うまでにはタイムラグが発生し、また、集光レンズを所定の位置に合わせるための信号が大きく振られることによって、加工対象物の端部においてレーザ光の集光点がずれるという問題点とこれに対 する課題が存在する。 以上によれば、本件各発明における加工対象物は面取り部分のあるシリコンウェハに限定されず、 て、加工対象物の端部においてレーザ光の集光点がずれるという問題点とこれに対 する課題が存在する。 以上によれば、本件各発明における加工対象物は面取り部分のあるシリコンウェハに限定されず、「切断予定ラインの一端部」がシリコンウェハの面取り部分を意味するとは解されない。本件各発明では、加工対象物のシリコンウェハに面取り部分があるか否かにかかわらず、加工対象 物に上記アのとおりの「切断予定ラインの一端部」が存在し得るといえる。 ウ対象製品1⑵Bは、加工対象物が面取り部分のあるシリコンウェハである場合には、シリコンウェハの現実の端を検出した後、面取り部分を超えて所定距離進んだ時点で加工用レーザの照射を開始し、更に所定距離 進んだ時点でAF固定すなわちシリコンウェハの所定の点で加工用レーザの集光点がシリコンウェハの内部の所定の深さに位置するような高さに調整された初期位置に対物レンズを保持した状態を解除し、AF追従を行う(前記第2の1⑸イ、前記⑴)。このような対象製品1Bは、面取り部分を超えシリコンウェハの主面が概ね水平(XY平面と平行) となっている部分に到達した後に加工用レーザの照射を開始してAF固 定を解除するまでの間、レンズを一定の位置に保持した状態でシリコンウェハの内部の所定の深さに加工領域を形成する。 また、対象製品1⑵Bは、加工対象物が面取り部分のないシリコンウェハである場合には、シリコンウェハの現実の端を検出した後、加工用レーザ光の照射を開始し、その後、所定距離進んだ地点でAF固定すなわ ちシリコンウェハの所定の点で加工用レーザの集光点がシリコンウェハの内部の所定の深さに位置するような高さに調整された初期位置に対物レンズを保持した状態を解除し、AF追従を行う(前記第2の1⑸イ、 ちシリコンウェハの所定の点で加工用レーザの集光点がシリコンウェハの内部の所定の深さに位置するような高さに調整された初期位置に対物レンズを保持した状態を解除し、AF追従を行う(前記第2の1⑸イ、前記⑴イ)。このような対象製品1Bは、シリコンウェハの主面が概ね水平となっている端部から加工用レーザ光の照射を開始してAF固定 を解除するまでの間、レンズを一定の位置に保持した状態でシリコンウェハの内部の所定の深さに加工領域を形成する。 以上のとおり、対象製品1⑵Bは、加工対象物の加工の開始に当たり、レンズを一定の位置に保持した状態で一定の加工高さすなわち予定する加工の深さである所定の深さで改質領域を形成するから、「切断予定ラ インの一端部」すなわち加工対象物の加工の開始に当たりレンズを一定の位置に保持した状態で一定の高さすなわち予定する加工の深さで改質領域が形成される部分において改質領域を形成する。 ⑸ 制御手段(構成要件1F、1G、1H、2A及び2B)について被告は、対象製品1⑵Bの制御機構について、海外の法人である各利用者 に納品した後、各利用者の要望に応じて調整を行ったアプリケーションを適用していた(前記⑴ウ)。もっとも、対象製品1⑵Bは、出荷の時点で、制御機構のパラメータ設定により、各駆動機構及び対物レンズ保持機構について、シリコンウェハの端部から所定の範囲においてAF固定の状態でレーザ加工を行った後にAF固定を解除してAF追従の状態でレーザ加工を行うと いう動き(同イ)を含む異なる動きをさせることができるものであり、実際、 被告は、対象製品1⑵Bの出荷前に、日本国内において、様々なアプリケーションを作成して各駆動機構及び対物レンズ保持機構について異なる動きをさせる検査を行っていた(同 ができるものであり、実際、 被告は、対象製品1⑵Bの出荷前に、日本国内において、様々なアプリケーションを作成して各駆動機構及び対物レンズ保持機構について異なる動きをさせる検査を行っていた(同ウ)。 したがって、被告が、対象製品1⑵Bについて、海外の法人に納品した後に各アプリケーションを適用するという作業を行っていたとしても、対象製 品1⑵Bは、出荷前に日本国内において完成していたものと認められ、本件各発明の「制御手段」を備えるものと認められる。 ⑹ 小括以上によれば、対象製品1⑵Bは、構成要件1Bから1E、1Iを充足する(前記第2の1⑸ア)ほか、構成要件1A、1Fから1H、2Aから2C をいずれも充足するから、本件各発明の技術的範囲に属する。 4 争点③(対象製品1⑴及び1⑵Aが本件各発明の技術的範囲に属するか。)について⑴ 対象製品1⑴及び1⑵Aについてア対象製品1⑴及び1⑵Aは、加工対象物が面取り部分のあるシリコンウ ェハである場合には、加工対象物の位置の検出方法として座標基準を採用し、また、加工対象物が面取り部分のないシリコンウェハである場合には、加工対象物の位置の検出方法として光量基準を採用して、概要別紙対象製品1動作態様記載2⑴及び⑵のとおり、対物レンズの走査を開始してから座標基準又は光量基準によって検出されるシリコンウェハの 端部までの範囲においては、対物レンズをピエゾアクチュエータが想定位置に固定されるよう制御した状態でAF固定し、その後、シリコンウェハの端部から対物レンズを低追従の状態で走査し、非加工領域を超えた時点で加工用レーザ光を照射してレーザ加工を開始し、その後、低追従領域を超えた時点で対物レンズを低追従の状態からAF追従の状態に 切り から対物レンズを低追従の状態で走査し、非加工領域を超えた時点で加工用レーザ光を照射してレーザ加工を開始し、その後、低追従領域を超えた時点で対物レンズを低追従の状態からAF追従の状態に 切り替える(前記第2の⑸ウ)。 イ対象製品1⑴及び1⑵Aは、対物レンズを低追従の状態で走査する場合には、所定の上限値の範囲内で、計算式〔想定位置の値+(現実のシリコンウェハの主面の高さの値-現実のピエゾアクチュエータの位置の値)×0.8〕によって求められる制御指令値により、ピエゾアクチュエータを制御する。(前記第2の1⑸ウ、争いがない事実、弁論の全趣旨)。 ウ被告は、対象製品1⑴及び1⑵Aについて、加工対象物が面取り部分のあるシリコンウェハである場合には、加工対象物の検出方法として光量基準を採用したり対物レンズが走査開始待機位置にあるときから加工用レーザ光を照射する設定をしたりした対象製品1⑴及び1⑵Aを製造、販売していない。しかし、対象製品1⑴及び1⑵Aは、GUIからパラ メータを調整してアプリケーションないしシステムを作成、調整することにより、加工対象物の存在ないし位置を検出する方法を選択したり、対物レンズが走査開始待機位置にあるときから加工用レーザ光を照射するよう設定したりすることが可能である(前記第2の1⑸ウ、弁論の全趣旨)。 エ被告は、対象製品1⑴及び1⑵Aの制御機構について、出荷前に、日本国内において、コンピュータのパラメータ設定により様々なアプリケーションを作成し、各駆動機構及び対物レンズ保持機構について異なる動きをさせる検査を行い、国内及び海外の法人である各利用者に納品した後、各利用者の要望に応じて調整を行ったアプリケーションを適用して いた。(弁論の全趣旨)⑵ ズ保持機構について異なる動きをさせる検査を行い、国内及び海外の法人である各利用者に納品した後、各利用者の要望に応じて調整を行ったアプリケーションを適用して いた。(弁論の全趣旨)⑵ 改質領域の形成(構成要件1A、1G、1H及び2A)についてア本件各発明において、「改質領域」はレーザ光を加工対象物の内部に集光点を合わせて照射することにより形成されるものであり、「多光子吸収」によって形成されるものに限定されない(前記3⑵ア)。 イ対象製品1⑴及び1⑵Aは、シリコンウェハ内部で加工用レーザ光の集 光点を走査することによりシリコンウェハの内部にレーザ加工領域を形成する(前記第2の1⑸ア)ところ、「レーザ光を加工対象物の内部に集光点を合わせて照射」することにより形成される加工領域すなわち「改質領域」を形成するものといえる。 ⑶ 対物レンズの保持態様(構成要件1F、1G、1H、2A及び2B)につ いてア特許請求の範囲には、「…レンズを…主面に対して進退自在に保持する保持手段」(構成要件1D)が「集光点が…加工対象物内部の所定の位置に合う状態となる初期位置に」「レンズを保持する」よう制御されること(構成要件1F、1G、1H、2A)が記載されている。「保持」 とは、「たもちつづけること。手放さずに持っていること。」をいう(乙27)から、「集光点が…加工対象物内部の所定の位置に合う状態となる初期位置に」「レンズを保持する」とは、レンズを初期位置に保ち続けることをいうものと理解できる。 本件明細書には、保持手段である加工用対物レンズが装着されたアク チュエータ(【0039】【0041】)が、加工の開始に当たっては「図4(C)で設定された伸び量で固定されている」こと(【00 本件明細書には、保持手段である加工用対物レンズが装着されたアク チュエータ(【0039】【0041】)が、加工の開始に当たっては「図4(C)で設定された伸び量で固定されている」こと(【0059】)や、加工用対物レンズが切断予定ラインの一端に相当する位置にあるものと判断された時点で「伸び量の保持を解除」されること(【0060】)が記載されており、ここでは、加工用対物レンズが装着され たアクチュエータの伸び量を固定、すなわち、加工対象物の主面に対して進退自在に保持された加工用対物レンズの(鉛直方向の)動きを固定することにより、加工対象物の特定の箇所で集光点が加工対象物の内部の所定の位置に合う状態となる鉛直方向における加工対象物に対する加工用対物レンズの位置すなわち初期位置にレンズが保持される(【00 48】【0049】【0053】)とされている。そして、本件各発明 の技術的意義が、集光点が加工対象物内部の所定の位置に合う状態となる初期位置にレンズを保持した状態で切断予定ラインの一端部において改質領域を形成した後に、初期位置にレンズを保持した状態を解除してレンズと加工対象物の間隔を調整しながら改質領域を形成することにより、加工対象物の端部におけるレーザ光の集光点のずれを極力少なくし つつ効率よくレーザ加工を行い、切断予定ラインに沿って改質領域を安定して形成することを可能にするところにあること(前記1⑵)も踏まえると、本件各発明のレーザ加工装置においては、加工対象物の加工の開始に当たり、「切断予定ラインの一端部」において改質領域が形成されるまでの間、レンズの鉛直方向の位置が、加工対象物の特定の箇所で 集光点が加工対象物の内部の所定の位置に合う状態となる初期位置に、維持されていると理解できる。 こ て改質領域が形成されるまでの間、レンズの鉛直方向の位置が、加工対象物の特定の箇所で 集光点が加工対象物の内部の所定の位置に合う状態となる初期位置に、維持されていると理解できる。 このような特許請求の範囲及び本件明細書の記載によれば、「初期位置に」「レンズを保持する」とは、加工対象物の特定の箇所で集光点が加工対象物の内部の所定の位置に合う状態となる鉛直方向における加工 対象物に対する加工用対物レンズの位置すなわち初期位置に、レンズを保ち続ける、すなわち、レンズを実質的に固定することを意味すると解すべきである。 対象製品1⑴、1⑵Aは、対物レンズを低追従の状態で走査する場合には、所定の上限値の範囲内で、計算式〔想定位置の値+(現実のシリ コンウェハの主面の高さの値-現実のピエゾアクチュエータの位置の値)×0.8〕によって求められる制御指令値により、ピエゾアクチュエータを制御する(前記⑴ウ)。対象製品1⑴、1⑵Aは、現実のシリコンウェハの主面の高さの値から求められる制御指令値により、すなわち、現実のシリコンウェハの主面の高さに応じて、ピエゾアクチュエータの 位置を制御し、これにより対物レンズの位置を保持しているのであり、 その動きを制御する制御指令値に上限があるからといって、対物レンズを特定の位置に実質的に固定するよう保持しているとはいえない。 ここで、対象製品1⑴及び1⑵Aにより、面取り部分のない(研削した)シリコンウェハを加工する場合、一般にシリコンウェハの外縁が(概ね3μm程度(前記第2の1⑸ア、弁論の全趣旨))反り上がって いるため、シリコンウェハの端から10mm程度の区間では、制御指令値は上限値で一定となり、その値は-0.2μmであるとされている。 もっとも、この場合でも、そもそ 、弁論の全趣旨))反り上がって いるため、シリコンウェハの端から10mm程度の区間では、制御指令値は上限値で一定となり、その値は-0.2μmであるとされている。 もっとも、この場合でも、そもそも、前記のとおり、制御指令値は現実のシリコンウェハの主面の高さに応じて前記計算式によって求められた数値に基づくものである上、シリコンウェハの形状計測結果等を基に規 定される想定位置の値はこれより小さく、現実のピエゾアクチュエータの位置の値は、制御指令値に一致するように制御され上昇することになる。実際、被告の行った実験によれば、想定位置の値は-1.2μmと規定され、現実のピエゾアクチュエータの位置の値は、シリコンウェハの端から10mm程度の区間において約0.15μm程度上昇しており、 したがって、対物レンズの位置も上昇するよう保持される。このように、制御指令位置が一定になることは直ちに対物レンズが特定の位置に固定されることを意味しない。なお、本件各発明のレーザ加工装置や対象製品1⑴、1⑵A等は、概ね±3μm程度のうねりのあるシリコンウェハの主面に沿って対物レンズを追従させようとするごく繊細な動きをする ものであるから、対物レンズの位置を約0.15μm程度上昇させることをもって、対物レンズを特定の位置に実質的に固定する制御を行っていると評価されるとはいえない。(以上につき、争いがない事実のほか、乙24、29、30、弁論の全趣旨)したがって、対象製品1⑴及び1⑵Aにおいて、低追従の状態は、 「初期位置に」「レンズを保持」しているとはいえない。 もっとも、対象製品1⑴及び1⑵Aは、加工対象物にかかわらずその検出方法として光量基準を選択し、対物レンズが走査開始待機位置にあるときから加工用レーザ光を照射す るとはいえない。 もっとも、対象製品1⑴及び1⑵Aは、加工対象物にかかわらずその検出方法として光量基準を選択し、対物レンズが走査開始待機位置にあるときから加工用レーザ光を照射する設定をすることも可能であり(前記⑴イ)、このような設定等をした上で、面取り部分のあるシリコンウェハを加工する場合には、シリコンウェハの現実の端から光量基準によ って検出されるシリコンウェハの主面が概ね水平となっている地点に到達するまでの部分すなわちシリコンウェハの面取り部分においては、対物レンズを想定位置にAF固定した状態、すなわち、「初期位置に」「レンズを保持」した状態となる。 イ本件発明2における「レンズを主面に向かう方向に駆動させずに保持 した状態での、レンズと加工対象物とを主面に沿って相対的に移動させるような移動手段の制御」(構成要件2B)は、加工対象物がレンズの直下にあることを前提とした動作であるとは解されない(前記3⑶ア)。 対象製品1⑴及び1⑵Aは、AF追従の状態でのレーザ加工終了後、対物レンズがシリコンウェハの端部を超えて走査終了位置に至ると、対 物レンズを想定位置に固定されるよう制御した状態で、カッティングテーブルをX軸方向に動かす(前記第2の1⑸ウ)から、「レンズを…主面に向かう方向に駆動させずに保持するように…保持手段を制御すると共に、…レンズと…加工対象物とを…主面に沿って相対的に移動させるように…移動手段を制御する」ものといえる。 ⑷ 切断予定ラインの一端部における改質領域の形成(構成要件1G、1H、及び2A)についてア 「切断予定ラインの一端部」とは、加工対象物の加工の開始に当たり、レンズを一定の位置に保持した状態で一定の加工高さすなわち予定する加工の の形成(構成要件1G、1H、及び2A)についてア 「切断予定ラインの一端部」とは、加工対象物の加工の開始に当たり、レンズを一定の位置に保持した状態で一定の加工高さすなわち予定する加工の深さで改質領域が形成される部分を意味し、また、本件各発明に おける加工対象物は面取り部分のあるシリコンウェハに限定されない (前記3⑷ア、イ)。 イ対象製品1⑴及び1⑵Aは、加工対象物が面取り部分のあるシリコンウェハであっても面取り部分のないシリコンウェハであっても、対物レンズの走査を開始してからシリコンウェハの端部までの範囲においてはピエゾアクチュエータを想定位置に固定するよう制御して対物レンズを AF固定し、その後、シリコンウェハの端部から対物レンズを低追従の状態で走査し、非加工領域を超えた時点で加工用レーザ光を照射してレーザ加工を開始し、その後、低追従領域を超えた時点で対物レンズを低追従の状態からAF追従の状態に切り替える(前記第2の1⑸ウ、前記⑴ア)ところ、低追従の状態は初期位置にレンズを保持している状態で あるとはいえない(前記⑶ア)から、レンズを一定の位置に保持した状態でシリコンウェハの内部の一定の加工高さすなわち予定する加工の深さに加工領域を形成することはない。 もっとも、対象製品1⑴及び1⑵Aは、加工対象物いかんにかかわらずその検出方法として光量基準を採用し、対物レンズが走査開始待機位 置にあるときから加工用レーザ光を照射する設定をすることも可能である。対象製品1及び1Aについて、このような設定等をした上で、面取り部分のあるシリコンウェハを加工する場合には、シリコンウェハの現実の端から光量基準によって検出されるシリコンウェハの主面が概ね水平となっている地点に到達するま て、このような設定等をした上で、面取り部分のあるシリコンウェハを加工する場合には、シリコンウェハの現実の端から光量基準によって検出されるシリコンウェハの主面が概ね水平となっている地点に到達するまでの部分すなわちシリコンウェハ の面取り部分においては、対物レンズを想定位置にAF固定した状態で加工用レーザ光が照射され、主面が概ね水平となっている地点から対物レンズを低追従の状態で走査して加工用レーザ光が照射されることになる(前記⑶ア)。 しかしながら、シリコンウェハの面取り部分は主面が水平ではないた め、照射した加工用レーザ光は散乱してシリコンウェハの内部で適切に 集光することが困難であり、仮に集光したとしても所望の深さより浅い位置にしか集光しない。原告及び被告が行った各実験結果によれば、切断予定ラインの深さをシリコンウェハの主面から65μm等の浅い位置に設定した場合には、面取り部分の一部に加工領域が形成されることがあるものの、加工領域は所望の予定する加工の深さ(65μm等)に水 平に形成されることはなく、その深さより浅い位置において斜めに形成される。他方、切断予定ラインをシリコンウェハの主面から65μm等より深い部分に設定した場合には、面取り部分に加工領域は形成されなかった。(以上につき、甲26、乙50、55、弁論の全趣旨)これらによれば、対象製品1⑴及び1⑵Aは、加工対象物の検出方法 として光量基準を採用し、対物レンズが走査開始待機位置にあるときから加工用レーザ光を照射する設定をして、面取り部分のあるシリコンウェハを加工したとしても、レンズを一定の位置に保持した状態でシリコンウェハの内部の予定する加工の深さに加工領域を形成するものであると認めるには足りない。そうすると、対象製 面取り部分のあるシリコンウェハを加工したとしても、レンズを一定の位置に保持した状態でシリコンウェハの内部の予定する加工の深さに加工領域を形成するものであると認めるには足りない。そうすると、対象製品1⑴及び1⑵Aは、上記 設定をして、面取り部分のあるシリコンウェハを加工したとしても、上記アにいう「切断予定ラインの一端部」において改質領域を形成するものであると認めるに足りない。 前記及びから、対象製品1⑴及び1⑵Aは、「切断予定ラインの一端部」すなわち加工対象物の加工の開始に当たりレンズを一定の位置 に保持した状態で一定の高さすなわち予定する加工の深さで改質領域が形成される部分において改質領域を形成するとは認められず、構成要件1G,1H及び2Aを充足しない。 ⑸ 小括以上によれば、対象製品1⑴及び1⑵Aは、「切断予定ラインの一端部」 において改質領域を形成するとは認められず、構成要件1G、1H及び2A を充足せず、ひいては構成要件2Cも充足しないから、本件各発明の技術的範囲に属しない。 5 争点④(本件特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか。)について⑴ 無効理由1(サポート要件違反)について ア被告は、本件明細書では、改質領域の形成は多光子吸収によってされるとされている一方、本件各発明は、改質領域の形成が単光子吸収によってされる場合も含むことを挙げて、本件各発明は本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない旨主張する。 しかし、本件明細書の「多光子吸収」に関する記載は、一実施例を記 載したにすぎないというべきものであり(前記3⑵ア)、本件明細書の記載において、本件各発明における改質領域はレーザ光を加工対象物の内部 本件明細書の「多光子吸収」に関する記載は、一実施例を記 載したにすぎないというべきものであり(前記3⑵ア)、本件明細書の記載において、本件各発明における改質領域はレーザ光を加工対象物の内部に集光点を合わせて照射することによって形成されることが前提とされているといえる。本件各発明の「改質領域」が「多光子吸収」によって形成されるものに限定されないとしても、そのような本件各発明は 本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものであると認められる。 イ被告は、本件明細書では、加工対象物の端部にレンズを保持した状態でレーザ光を照射する構成しか開示されていない一方、本件各発明は、加工対象物の端部に改質領域を形成することを必須としていないことを挙げて、本件各発明は本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものであるとはい えない旨主張する。 特許請求の範囲には、第一のレーザ光の照射を開始する時点を限定する記載はない。 本件明細書には、加工対象物の外側から加工対象物の主面の高さの測定を開始した場合に、集光レンズは加工対象物を検出した時点で上昇する が、この間もレーザ光と加工対象物のその主面に沿った移動は継続して いることから、集光レンズが所定の位置に上昇し、切断予定ラインにレーザ光の集光点が合うまでにはタイムラグが発生し、また、集光レンズを所定の位置に合わせるための信号が大きく振られることによってもレーザ光の集光点がずれるため、レーザ光の焦点が切断予定ラインに合って安定状態になるまでの間は、切断予定ラインではない部分が加工され ることになる等という問題点に対し、加工対象物の端部におけるレーザ光の集光点のずれを極力少なくしつつ効率よくレーザ加工を行うことができるレーザ加工装置を提供することが記載されている(【0004】 ることになる等という問題点に対し、加工対象物の端部におけるレーザ光の集光点のずれを極力少なくしつつ効率よくレーザ加工を行うことができるレーザ加工装置を提供することが記載されている(【0004】【0006】【0009】【0010】)。ここで、加工対象物の端部におけるレーザ光の集光点のずれは、加工対象物の現実の端から一定の 範囲において生じるものであって、加工対象物の現実の端からレーザ加工を行わない場合であっても、レーザ光の集光点のずれを極力少なくしつつ効率よくレーザ加工を行うことができるレーザ加工装置を提供するという課題は存在し、本件明細書に、加工対象物の現実の端からレーザ加工を行わない場合が排除されていることをうかがわせる記載はないか ら、本件明細書の記載には、加工対象物の現実の端からレーザ加工を行わない場合も含まれているといえる。 さらに、レーザ光の集光点のずれが生じる加工対象物の現実の端から一定の範囲を超えた部分においてレーザ光の照射を開始する場合であっても、本件各発明のレーザ加工装置においては、レーザ光の集光点のずれ が生じる上記の範囲においてはレンズが保持されているから、レーザ光の照射を開始する時点にかかわらず、レーザ光の集光点のずれを極力少なくしつつ効率よくレーザ加工を行うことができるレーザ加工装置を提供するという課題を解決することができるといえる。 したがって、本件各発明が加工対象物の端部に改質領域を形成すること を必須としていないとしても、本件明細書の記載には、加工対象物の現 実の端からレーザ加工を行わない場合も含まれているといえることなどから、本件各発明は本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものであると認められる。 ウ被告は、本件明細書では「切断予定ラインの一端部」は面 ザ加工を行わない場合も含まれているといえることなどから、本件各発明は本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものであると認められる。 ウ被告は、本件明細書では「切断予定ラインの一端部」は面取り部分であるとされており、光量基準によってレンズを初期位置に保持した状態を 解除すべき「一端部」の終端を検知する方法しか記載されていないから、仮に「切断予定ラインの一端部」が面取り部分よりも内側にも存在し本件各発明が任意の位置においてレンズの保持状態を解除することをも含むとすれば、本件各発明は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない旨主張する。 本件各発明における「切断予定ラインの一端部」とは、加工対象物の加工の開始に当たり、アクチュエータの伸び量が固定された状態すなわちレンズを一定の位置に保持した状態で一定の加工高さすなわち予定する加工の深さで改質領域が形成される部分を意味し、加工対象物は面取り部分のあるシリコンウェハに限定されない(前記3⑶ア)。また、本件 各発明は、「切断予定ラインの一端部において改質領域が形成された後に、…レンズを…初期位置に保持した状態を解除して」(構成要件1H)とするにとどまり、「切断予定ラインの一端部」の終端を検知することを要件とするものではない。 また、本件明細書には、「発明を実施するための最良の形態」として、 「受光部45…の4分割位置検出素子が検出する全光量が予め定められた閾値よりも大きくなった場合に、加工用対物レンズ42が切断予定ラインC1の一端に相当する位置にあるものとして…、その時点でのアクチュエータ43の伸び量の保持を解除して、…」(【0060】)等と記載されており、ここでも「切断予定ラインの一端部」の終端を検知す ること自体は記載されて にあるものとして…、その時点でのアクチュエータ43の伸び量の保持を解除して、…」(【0060】)等と記載されており、ここでも「切断予定ラインの一端部」の終端を検知す ること自体は記載されていない。 そうすると、本件各発明が、「切断予定ラインの一端部」の終端を検知する手段以外の方法により「切断予定ラインの一端部において改質領域が形成された後に、…レンズを…初期位置に保持した状態を解除」する場合を含み、他方、本件明細書に、「切断予定ラインの一端部」の終端を検知する手段が記載されていないとしても、上記のとおりの本件各発 明の内容と本件明細書の記載に照らせば、本件各発明が発明の詳細な説明において課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものとは認められない。 ⑵ 無効理由2(明確性要件違反)について被告は、本件明細書には本件各発明の改質領域が多光子吸収によってされ る旨記載されている一方、本件各発明が単光子吸収によってされる場合も含むのであれば、本件明細書の記載内容と矛盾するものであり、明確であるとはいえない旨主張する。 しかし、本件明細書の記載によっても、本件各発明における改質領域はレーザ光を加工対象物の内部に集光点を合わせて照射することによって形成さ れることが前提とされているにとどまり(前記⑴イ)、本件各発明の「改質領域」が「多光子吸収」によって形成されるものに限定されていないから、本件各発明は明確であると認められる。 ⑶ 無効理由3(実施可能要件違反)について被告は、「切断予定ラインの一端部」が面取り部分よりも内側にも存在し 本件各発明が任意の位置においてレンズの保持状態を解除することをも含むとすれば、本件明細書には、光量基準 について被告は、「切断予定ラインの一端部」が面取り部分よりも内側にも存在し 本件各発明が任意の位置においてレンズの保持状態を解除することをも含むとすれば、本件明細書には、光量基準によってレンズを初期位置に保持した状態を解除すべき「一端部」の終端を検知する方法しか記載されておらず、光量基準によっては任意の位置を選択して検出することはできないから、本件明細書は、当業者が、本件各発明の実施をすることができる程度に明確か つ十分に記載したものであるとはいえない旨主張する。 本件各発明における「切断予定ラインの一端部」とは、加工対象物の加工の開始に当たり、アクチュエータの伸び量が固定された状態すなわちレンズを一定の位置に保持した状態で一定の加工高さすなわち予定する加工の深さで改質領域が形成される部分を意味し、加工対象物は面取り部分のあるシリコンウェハに限定されない(前記3⑶ア)。また、本件各発明は、「切断予 定ラインの一端部において改質領域が形成された後に、…レンズを…初期位置に保持した状態を解除して」(構成要件1H)とするにとどまり、「切断予定ラインの一端部」の終端を検知することを要件とするものではない(前記⑴ウ)。 そして、本件明細書には、「切断予定ラインの一端部」すなわちレンズを 一定の位置に保持した状態で一定の加工高さすなわち予定する加工の深さで改質領域が形成される部分において、改質領域が形成された後に、初期位置にレンズを保持した状態を解除する方法についての一実施例が示されており(【0060】、前記⑴ウ)、この方法はシリコンウェハの面取り部分の有無にかかわらず適用可能であると考えられる。 したがって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、発明の属する技術の分野における通常の知識を有す ウ)、この方法はシリコンウェハの面取り部分の有無にかかわらず適用可能であると考えられる。 したがって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえる。 ⑷ 小括以上から、本件特許が特許無効審判により無効にされるべきものとは認め られない。 6 争点⑤(原告が被告に対し対象製品1⑵Bの製造等につき許諾を与えたか。)について⑴ 事実経過前提事実、証拠(各項末尾に掲記のほか乙123、124。ただし、いず れも後記認定に反する部分を除く。)及び弁論の全趣旨によれば、次の各事 実が認められる。 ア原告及び被告は、●(省略)●イ原告と被告は、原告の電子管事業本部長であるA(以下「a」という。)、被告の代表取締役社長であるB(以下「b」という。)において、●(省略)● ウ本件業務提携契約締結後、被告は原告エンジンを用いてSD装置を製造、販売したが、そのSD装置には、原告エンジンを用いたことを示す「SDEプレート」である本件プレートが貼付されていた。 原告は、平成16年、本件特許、965特許等に係る各発明について特許出願をした。 エ ●(省略)●(本項につき、乙14)オ ●(省略)●(本項につき、乙15)カディスコ社は、平成24年頃、SD装置の販売実績を伸ばしていた。そ こで、被告が、原告に対し●(省略)●(争いがない事実)キ原告と被告の間では、●(省略)●(本項につき、争いがない事実のほか、甲28)ク ●(省略)●(本項につき、争いがない事実のほか、甲29、30、 省略)●(争いがない事実)キ原告と被告の間では、●(省略)●(本項につき、争いがない事実のほか、甲28)ク ●(省略)●(本項につき、争いがない事実のほか、甲29、30、乙17、18) ケ原告の代表取締役副社長であるa及びcは、平成26年10月8日、被告を訪問し、被告の相談役b、被告の代表取締役半導体社社長であるD(以下「d」という。)と打合せ(以下「10月8日打合せ」という。)を行った。 10月8日打合せでは、●(省略)● (本項につき、争いがない事実のほか、甲30、乙18、弁論の全趣旨) コ ●(省略)●(甲31、乙19)サ ●(省略)●(甲33、乙67)シ ●(省略)●ス ●(省略)●(本項につき、争いがない事実のほか、甲35、36) セ原告の代表取締役であるeは、入院したaに代わり、原告における被告との間の連絡窓口を務めることになり、●(省略)●(甲8、乙80、82)ソ ●(省略)●(本項につき、甲37、乙38、75) タ ●(省略)●(甲8)チ ●(省略)●(本項につき、甲8)⑵ 原告による許諾の有無及びその内容についてア原告及び被告は、平成26年10月8日に10月8日打合せを行い、そ の際、被告から、●(省略)●(前記ケ)。 被告は、10月8日打合せにおいて、●(省略)●本件許諾を原告が被告に対してした旨主張する。被告が作成し原告の代表取締役副社長a及びcが署名した10月8日議事録には前記ケの記載がある。また、当時、被告の代表取締役半導体社社長であったdは、aとの間で、●(省 略)●原告による許諾が、場合により相当長い期間にわたり多くのSD が署名した10月8日議事録には前記ケの記載がある。また、当時、被告の代表取締役半導体社社長であったdは、aとの間で、●(省 略)●原告による許諾が、場合により相当長い期間にわたり多くのSDエンジンに適用されることになることについての記載は全くなく、上記の「●(省略)●」が被告が主張するような意味のものであるとは直ちには認められない。10月8日打合せ時やその後の状況をみると、●(省略)●原告被告間で、被告が主張する内容の本件許諾を前提にして 交渉がされていたことを直ちには認めるに足りず、かえって、原告は、 ●(省略)●とするなどしていた。これらによれば、10月8日打合せで、原告と被告間で、被告が主張する内容の本件許諾がされたと認めるに足りない。 また、本件業務提携契約の内容は●(省略)●。 したがって、10月8日打合せにおいて、原告が、被告に対し、●(省 略)●被告が開発、製造したSDエンジンを搭載したSD装置すなわち対象製品1⑵Bを製造して販売することについて許諾したとは認めるに足りない。 イもっとも、10月8日打合せの内容について、cは、原告は被告に対し、●(省略)●と認識していたと陳述し(乙124)、本件回答の内容(前 記⑴サ)もこれに沿う。 これらによれば、原告は、10月8日打合せにおいて、被告に対し、●(省略)●と認められる。そして、一般に、試作機を顧客に提供して顧客の満足を得た結果、当該製品を販売するに至る場合、顧客に対し、試作機をそのまま販売することもあれば、試作機に代えて同一仕様の製品 を販売機として販売することもあるのであり(弁論の全趣旨)、原告もそのことを踏まえて、試作機1台に関する許諾をした以上、●(省略)●の限度において、本件各発明の実施を許諾したものと認められる。な を販売機として販売することもあるのであり(弁論の全趣旨)、原告もそのことを踏まえて、試作機1台に関する許諾をした以上、●(省略)●の限度において、本件各発明の実施を許諾したものと認められる。なお、このような試作機1台及びそれに対応する販売機の製造、販売の限度における本件各発明の実施の許諾は、本件業務提携契約で定められた 事項に対して、個別事情に基づく例外的な扱いを定めたものとして●(省略)●することができると解される(原告も、上記試作機1台の製造等について本件各発明の実施の許諾があったことは認めている。)。 ●(省略)●(前記サ、タ)。 ウ以上から、原告は、10月8日打合せにおいて、被告に対し、被告が主 張する本件許諾をしたと認めるに足りず、被告による全ての対象製品1 の製造、販売について、原告の許諾があったとは認められない。もっとも、別紙対象製品1⑵B売上一覧記載番号1の対象製品1⑵Bの製造、販売については、原告の許諾があったと認められる。 7 争点⑥(被告が対象製品1⑵Bを製造等するおそれがあるか。)及び争点⑦(廃棄の必要があるか。)について 被告は、平成29年9月に被告エンジンBを搭載した対象製品1⑵Bの受注を停止し、その後、被告エンジンBとは別に開発した被告エンジンAを搭載した対象製品1⑴、1⑵Aを製造、販売等するようになった。また、販売済みの対象製品1⑵Bについては、順次、搭載されている被告エンジンBを被告エンジンAに交換する改造を行った(なお、さらに、令和3年12月をもって、対 象製品1⑴、1⑵Aの製造、販売等も終了した。)(前記第2の1⑷ウ、オ)。 これらの事実経過によると、被告が、今後、SD装置を販売するに当たり、自ら開発した被告エンジンAではなく被告エンジンBを製 象製品1⑴、1⑵Aの製造、販売等も終了した。)(前記第2の1⑷ウ、オ)。 これらの事実経過によると、被告が、今後、SD装置を販売するに当たり、自ら開発した被告エンジンAではなく被告エンジンBを製造してこれをSD装置に搭載するとは考えにくく、本件で提出された各証拠及び弁論の全趣旨によっても、同様である。 したがって、被告が対象製品1⑵Bを製造等するおそれがあるとは認めるに足りず、その製造等の差止請求は認められず、したがって、廃棄の請求にも理由がない。 8 争点⑧(原告の受けた損害又は損失及び額)及び争点⑨(原告に過失があるか、また、これを考慮して損害賠償額を定めるべきか。)について ⑴ 認定事実前提事実、掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の各事実が認められる。 ア対象製品1⑵Bは、SD装置であるところ、筐体、ステージ(X、Y、θ軸)、搬送系、SDエンジン及び制御用ソフトウェア(CPU)等に よって構成される。 筐体は、例えば、幅2.71m、奥行1.715m、高さ1.85m程度の大きさがあり、搬送系、SDエンジン及び制御用ソフトウェア等を内蔵する。 ステージのうち、X軸は、シリコンウェハを真空吸着して固定したカッティングテーブルを、ロード・アンロード位置と加工部の間で移動させ、 加工時には、SDエンジンの位置を固定しつつカッティングテーブルを移動することにより、シリコンウェハと対物レンズとをシリコンウェハの主面に沿って移動させる。また、Y軸は、SDエンジンを加工ラインに移動させる。θ軸は、カッティングテーブルを回転させ、シリコンウェハのストリートがX軸と平行になるよう調整したりする。 搬送系は、加工前には、シリコンウェハを収納した 加工ラインに移動させる。θ軸は、カッティングテーブルを回転させ、シリコンウェハのストリートがX軸と平行になるよう調整したりする。 搬送系は、加工前には、シリコンウェハを収納したカセットからロードポートにおいてシリコンウェハを引き出し、ロードステージ上のシリコンウェハをロードアームで吸着し、観察(アラインメント)用顕微鏡による記録(外観形状の記録によるシリコンウェハの中心、方向の算出)を経てカッティングテーブルに搬送し、また、加工後には、処理済みの シリコンウェハをカッティングテーブルからアンロードステージに搬送し、アンロードステージ上からカセットに格納する。 SDエンジンは、レーザ加工エンジンユニット、Z軸ステージ及びソフトウェア設計によって構成される。このうちレーザ加工エンジンユニットは、加工用レーザ光の光源、対物レンズ及び光学系を有するレーザ照 射機構、測距用レーザ光の光源、位置検出素子及び光学系からなるAFユニット、対物レンズ保持機構を含む。 ステージやSDエンジン等の制御は、制御用ソフトウェアによって行われ、カッティングテーブルに載置されたシリコンウェハは、観察用顕微鏡による観察の結果に基づき、制御用ソフトウェアによって制御された ステージやSDエンジン等により加工される。 (本項につき、甲13)イ原告は、SDエンジンを製造して、これを被告、ディスコ社などの半導体製造装置の製造業者に対し販売しているが、自らSD装置を製造、販売していない。被告及びディスコ社は日本国内においてSD装置を製造、販売しており、その販売先はサムスン社など専ら海外法人であった。 原告は、被告に対し、原告エンジンを基本的に1台●(省略)●円(消費税別)で販売していた。(前記6⑴ 内においてSD装置を製造、販売しており、その販売先はサムスン社など専ら海外法人であった。 原告は、被告に対し、原告エンジンを基本的に1台●(省略)●円(消費税別)で販売していた。(前記6⑴エ)ウ被告は、平成28年4月から平成30年8月まで、別紙対象製品1⑵B売上一覧記載番号●(省略)●のとおり、いずれも海外の法人であるサムスン社、TI社、SKハイニックス社、STATSチップPAC、シング ネティクス等の半導体の製造業者に対し、対象製品1⑵Bを合計●(省略)●台販売した。 ●(省略)●RMモジュールとは、SD装置を、ポリッシュグラインダというシリコンウェハの薄片化とダメージ除去を行う装置に接続するために開発された装置であり、RMモジュール等をSD装置に接続するこ とにより、SD装置によるレーザ加工の工程に続いてテープ貼替え等の工程を実現することが可能となる。RMモジュール等をSD装置に接続した場合、SD装置でレーザ加工されたシリコンウェハは、中間ユニットを介してRMモジュールに搬送され、RMモジュールにおいてダイシングテープの貼付と表面保護テープの剥離が行われる。SD装置とRM モジュールは、それぞれモニタと制御機構を備え、個別に制御することが可能である。●(省略)●(甲73、乙95~97、128、129)被告は、RMモジュール付きSD装置の定価を●(省略)●円、RMモジュールを接続しないSD装置の定価を●(省略)●円と定めており、したがって、RMモジュール付きSD装置の販売価格におけるSD装置 本体の割合は約●(省略)●%であった。(乙139) ●(省略)●被告は、その後、いずれも海外の法人であるサムスン社、TI社、スマートに対し合計●(省略)●台の対象製品1⑴、⑵Aを販 の割合は約●(省略)●%であった。(乙139) ●(省略)●被告は、その後、いずれも海外の法人であるサムスン社、TI社、スマートに対し合計●(省略)●台の対象製品1⑴、⑵Aを販売し、日本法人であるTDK株式会社に対し●(省略)●台の対象製品1⑴を販売した。 エ海外においては、EOTechnicsCo.,Ltd,(以下「EO社」という。)、徳力激光、長城科技、無錫先導知能設備など複数の法人がSD装置を製造、販売しており、例えば、EO社は、平成27年から平成28年にかけて、サムスン社に対し、約50台のSD装置を販売した。(甲73、乙66) 半導体製造業者は、一般的には、その優位性を確保するため、複数の業者から半導体製造装置を購入する体制を採用している。例えば、サムスン社は、当初は被告のみからレーザダイシング装置を購入していたが、平成23年頃からは被告及びEO社から、平成25年頃から平成28年頃まではEO社及びディスコ社からSD装置を購入していた。サムスン 社は、同年4月20日、原告からの申入れにより、原告に対しEO社から新規にSD装置を購入することは控えたい旨述べ、同年頃以降は被告及びディスコ社からSD装置を購入していた。(甲75、乙94、95)オ原告と被告は、●(省略)●本件業務提携契約を締結した。本件業務提携契約においては、原告は被告に対し、●(省略)●ここで原告が被告 に対し実施を許諾したステルスダイシングに関する各発明、ノウハウには、原告が当時ステルスダイシングに関して有していた、188特許、711特許及び108特許に係る特許権を含む●(省略)●件の特許権に係るもののほか、本件業務提携契約締結後に原告が取得することになる特許権に係る各発明等も含ま シングに関して有していた、188特許、711特許及び108特許に係る特許権を含む●(省略)●件の特許権に係るもののほか、本件業務提携契約締結後に原告が取得することになる特許権に係る各発明等も含まれていた。原告は、平成16年には、本 件特許及び965特許について特許出願をし、その後、原告と被告は、 ●(省略)●なお、原告は、平成22年に本件特許権及び965特許に係る特許権を取得したほか、その後も、ステルスダイシングに関する特許権を取得し、平成29年11月には、被告に対し、被告によるSD装置等の製造、販売等が、原告の特許ポートフォリオを侵害するなどと主張した。(前記6⑴イ、ウ、オ、乙74、乙107~109) 原告は、遅くとも平成31年4月までに、第三者との間で、原告が、同第三者に対し、原告エンジンを供給することを前提に、ステルスダイシングに関する特許に係る各発明を実施してSD装置を製造、販売することを許諾し、同第三者は原告に対し、SD装置の販売価格の●(省略)●%相当額を実施料(ロイヤリティ)として支払うことを内容とする業 務提携契約を締結した。同契約においては、同契約で定める条件に違反する同第三者製造に係るSD装置が市場において発見された場合には、同第三者は原告に対し、SD装置の販売価格の35%相当額か原告の逸失利益のいずれかを支払う旨の損害賠償額の定めがされていた。(甲74) ⑵ 特許法102条2項の適用についてア原告は、金銭請求に関する主位的請求についての選択的主張①として、特許法102条2項に基づく損害額を主張する。 特許法102条2項は、民法の原則の下では特許権侵害行為によって特許権者が受けた損害の賠償を求めるためには、特許権者において、損害 の発生及び額、こ 法102条2項に基づく損害額を主張する。 特許法102条2項は、民法の原則の下では特許権侵害行為によって特許権者が受けた損害の賠償を求めるためには、特許権者において、損害 の発生及び額、これと特許権侵害行為との間の因果関係を主張立証しなければならないところ、その立証等には困難が伴い、その結果妥当な損害の填補がされないという不都合が生じ得ることに照らして、侵害者が侵害行為によって利益を受けているときは、その利益の額を特許権者の受けた損害の額と推定することとして、特許権者の立証の困難の軽減を 図った規定であり、このような同項の趣旨に照らせば、特許権者に侵害 者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在する場合には、同項の適用が認められると解すべきである。 そして、特許法102条2項は、上記のとおり、特許権者の立証の困難の軽減を図って、侵害者が侵害行為によって受けた利益の額を特許権者の受けた損害の額と推定するものであり、これが推定である以上、この 推定は、侵害者による特許権侵害行為がなかった場合に、侵害者が特許権侵害行為により受けた利益やそれと同質といえる利益を特許権者が獲得し得るという関係があることを前提としているといえる。そうすると、侵害者による特許権侵害行為がなかったとしても、侵害者が特許権侵害行為により受けた利益と同質といえる利益を特許権者が獲得し得るとい う関係が類型的にない場合には、同条適用の基礎を欠くといえる。同条適用に当たり、特許権者が販売しているのが当該特許の実施品でなくとも、侵害品と競合する製品であれば、侵害者が特許権侵害行為により受けた利益と同質といえる利益を特許権者が獲得し得るという関係があり特許権者に侵害者による特許権侵害行為がなかったならば 実施品でなくとも、侵害品と競合する製品であれば、侵害者が特許権侵害行為により受けた利益と同質といえる利益を特許権者が獲得し得るという関係があり特許権者に侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られ たであろうという事情が存在するといえるのに対し、そもそも侵害者が特許権侵害行為により受けた利益と同質といえる利益を特許権者が獲得し得るという関係が類型的になければ、特許権者に侵害者による特許権侵害行為がなかったとしても、上記にいう利益が得られたであろうという事情が存在するとはいえない。 イ本件において、原告は、SDエンジン(原告エンジン)を製造、販売しているが、SD装置を製造、販売することはしておらず、SDエンジンはSD装置の一部品であって、SDエンジンの需要者は半導体製造装置の製造業者であるのに対し、SD装置の需要者は半導体の製造業者である(前記⑴ア~エ)。原告は、本件各発明の実施品であるSD装置の製 造等に使用される部品に相当するSDエンジンを製造、販売等するにす ぎず、SD装置を販売等していない。そうすると、被告による特許権侵害行為がなかった場合に、原告が、被告に代わってSDエンジンを搭載した装置であるSD装置を販売できたわけではない。本件で被告の利益は被告がSD装置を販売したことにより得た利益であり、被告による本件特許権の侵害行為がなかったとしても、原告がそのようなSD装置を 販売等することによる利益と同質の利益を得ることができたとは認められないから、被告が特許権侵害行為により受けた利益について、類型的に原告が獲得し得るという関係がない。そうすると、本件においては特許法102条2項の適用の基礎を欠く。 なお、原告は、被告及びディスコ社が海外及び国内においてほぼ独占的 ついて、類型的に原告が獲得し得るという関係がない。そうすると、本件においては特許法102条2項の適用の基礎を欠く。 なお、原告は、被告及びディスコ社が海外及び国内においてほぼ独占的 にSD装置を販売しており、SD装置に搭載するSDエンジンは原告のみが販売している等と主張する(前記第2の2⑻(原告の主張)ア)。 関係各証拠によっても、同事実は認めるには足りないが、同事実があっても、原告がSD装置を販売等していない以上、前記に述べた理由により、被告がSD装置を販売したことによる利益に基づく特許法102条 2項の推定の基礎がない。 ⑶ 特許法102条1項の適用についてア原告は、金銭請求に関する主位的請求の選択的主張②として、特許法102条1項に基づく損害を主張する。 特許法102条1項は、民法709条に基づき販売数量減少による逸失 利益の損害賠償を求める際の損害額の算定方法について定めた規定であり、侵害行為と相当因果関係のある販売減少数量の立証責任の転換を図ることにより、より柔軟な販売減少数量の認定を目的とする規定である。 同項の文言及び趣旨に照らせば、特許権者等が「侵害行為がなければ販売することができた物」とは、侵害行為によってその販売数量に影響を 受ける特許権者の製品であれば足り、侵害品と、市場において、侵害者 の侵害行為がなければ販売等することができたという競合関係にある製品をいうものと解するのが相当である。 イ本件で、被告は、侵害品である対象製品1BすなわちSD装置を販売したが、SDエンジンを搭載してステルスダイシングを行う装置がSD装置なのであるから、SD装置においてSDエンジンは必要なものであった といえる。 特許法102条1項における、特許権者等が「侵害行為が SDエンジンを搭載してステルスダイシングを行う装置がSD装置なのであるから、SD装置においてSDエンジンは必要なものであった といえる。 特許法102条1項における、特許権者等が「侵害行為がなければ販売することができた物」とは、侵害行為によってその販売数量に影響を受ける特許権者の製品であれば足りるところ、特許権者である原告はSDエンジンである原告エンジンを販売している。そして、SD装置にはS Dエンジンは必要なものであったといえるのであるから、被告によるSD装置の販売により原告エンジンの販売数量が影響を受ける。したがって、本件には、特許法102条1項を適用する基礎があるといえる。 ウ特許発明を実施した特許権者の製品において、特許発明の特徴部分がその一部分にすぎない場合であっても、特許権者の販売によって得られる限 界利益の全額が特許権者の逸失利益となることが事実上推定されるというべきである。もっとも、特許権者の製品のうち、特許発明の特徴を有する部分が特許権者の製品の販売による利益の全てに貢献しているとはいえないことが認められる場合には、上記の事実上の推定が一部覆滅されるというべきである。 原告エンジンは、ステルスダイシングを行う装置(SD装置)に用いられるものであり、原告が供給したSDエンジンを搭載したSD装置に「StealthDicingEngineinside!」との記載のある本件プレートの貼付がされていたことなどからもうかがえるように、原告エンジンは、それを用いることでステルスダイシングをすることができることに高い顧客吸引 力があったと認められる。他方、本件各発明は、ステルスダイシングに 付随して加工対象物の端部における加工の精度を従来技術より高めることにより加工の効率 ることができることに高い顧客吸引 力があったと認められる。他方、本件各発明は、ステルスダイシングに 付随して加工対象物の端部における加工の精度を従来技術より高めることにより加工の効率化を図るというものであり、その部分の顧客吸引力は、ステルスダイシングを行うことができることに比べて相当に小さいと認められる。また、対象製品1⑴及び1⑵Aには、本件各発明に代替する技術として低追従によるものが導入されており(前記第2の1⑷オ、 同⑸、前記4)、技術的には、ステルスダイシングを行う場合、本件各発明には代替することが可能な技術があったといえた。これらからすると、原告エンジンのうち、本件各発明の特徴を有する部分が原告エンジンの販売による利益の全てに貢献しているとはいえず、前記の事実上の推定は一部覆滅され、その程度は少なくとも8割5分であると認めるの が相当である。 エ本件で、原告は、第2の2⑻(原告の主張)イのとおり主張し、原告エンジン一式の販売価格が●(省略)●円又は●(省略)●円であると主張するが、原告は、原告エンジンを基本的に被告に対して1台●(省略)●円で販売していた(前記イ)。また、原告は、上記原告の主張を前提に 原告エンジン一式の利益が●(省略)●円又は●(省略)●円であると主張する。被告は、前記ウのとおり、別紙対象製品1⑵B売上一覧記載番号●(省略)●のとおり、本件特許権の侵害となる対象製品1⑵Bを合計●(省略)●台販売し、上記原告の主張によっても、その利益の合計は●(省略)●円であり、上記ウの推定覆滅をした後の額は●(省略)●円と なる。この額は、後記で認定する1億1916万1399円よりも小さい。 オ原告は、特許法102条1項の損害の算定に当たり、SD装置販売後に交換され をした後の額は●(省略)●円と なる。この額は、後記で認定する1億1916万1399円よりも小さい。 オ原告は、特許法102条1項の損害の算定に当たり、SD装置販売後に交換されると主張するLDモジュールの販売による利益も主張する。しかし、原告が主張するLDモジュールの交換は、●(省略)●年後以降 というSDエンジンの販売から時間的に隔たった時期にされるものをい うものと解され、その交換が確実であるともいえず、LDモジュールが原告エンジンと一体のものとして「侵害行為がなければ販売することができた物」であるということはできない。 また、特許法102条1項は、同項各号を含めた同項全体によって特許権者の損害額を推定するものであり、同項に加えて同条3項が適用され るものではない。 ⑷ 特許法102条3項の算定による損害についてア特許法102条3項所定の「その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額」は、当該特許発明の実際の実施許諾契約における実施料率や、それが明らかでない場合には業界における実施料の相場等も考慮 に入れつつ、当該特許発明自体の価値すなわち特許発明の技術内容や重要性、他のものによる代替可能性、当該特許発明を当該製品に用いた場合の売上げ及び利益への貢献や侵害の態様、特許権者と侵害者との競業関係や特許権者の営業方針等訴訟に現れた諸事情を総合考慮して、合理的な料率を定めるべきである。 イ当該特許発明に含む発明等についての実際の実施許諾契約における実施料率についてみると、本件において、原告と被告は、原告が被告に対し原告エンジンを販売するとともに、被告が原告がステルスダイシングに関して特許権を有するなどする各発明を実施してSD装置を製造、販売することの対価と ると、本件において、原告と被告は、原告が被告に対し原告エンジンを販売するとともに、被告が原告がステルスダイシングに関して特許権を有するなどする各発明を実施してSD装置を製造、販売することの対価として、SD装置の販売価格の●(省略)●%相当額を実施料と して支払うことを内容とする本件業務提携契約を締結した(前記オ)。 また、原告は、遅くとも平成31年4月までに、第三者との間で、原告が、同第三者に対し、原告エンジンを供給することを前提に、SD装置の販売価格の●(省略)●%相当額を実施料として支払うことを内容とする業務提携契約を締結した(前同)。本件業務提携契約においては、その後、被 告が原告に対して支払う実施料がSD装置の販売価格の●(省略)●%相 当額に変更されたものの、●(省略)●を原因としてされたものであって(前同)、当時の原告と被告との特段の関係から定められたものいえる。 ここで、上記各業務提携契約においては、原告が被告及び第三者に対して原告エンジンを販売し、被告及び第三者は原告エンジンを使用してSD装置を製造、販売することが前提となっていたから(前記⑴オ)、原 告は、ステルスダイシングに関する一連の特許権に係る各発明等の実施料に加えて、原告エンジンの販売による利益も獲得し得るものであった。 そうすると、上記各業務提携契約で定められた実施料率は、原告が、原告のステルスダイシングに関する一連の特許権に係る各発明等を実施する者との間で業務提携をすることにより、原告エンジンの販売に伴う利 益を獲得し得ることなど考慮して決められたものであったと認められる。 したがって、原告が特許権を侵害した者との間で特許権の侵害があったことを前提として合意する場合には、必ずしも同様の水準で実施料率が定められるとはいえず、原告 して決められたものであったと認められる。 したがって、原告が特許権を侵害した者との間で特許権の侵害があったことを前提として合意する場合には、必ずしも同様の水準で実施料率が定められるとはいえず、原告エンジンの販売に伴う利益を獲得し得ることを前提としないことから、上記料率より相当に高い料率になると推認 できる。 そして、原告と第三者との間の上記業務提携契約においては、同契約で定める条件に違反する同第三者が製造したSD装置が市場において発見された場合には、同第三者は原告に対しSD装置の販売価格の35%相当額を支払うなどの定めがされている(前記オ)。この定めは、同契 約の各当事者が様々な義務を負ったことを前提として当該当事者が契約に違反した場合の料率の定めであって、これが、原告エンジンを販売しない場合の実施許諾契約における実際の実施料率であると確定的に認めるには足りないが、この定めは原告エンジンを販売しない場合の実施料率が前記の●(省略)●%より相当に高くなることをうかがわせるもの である。 なお、被告の主張中には、被告が支払う実施料には本件プレートの貼付の対価が含まれている旨の主張がある、被告が原告エンジンを用いて製造、販売したSD装置には、原告エンジンを用いたことを示す本件プレートが貼付されていた(前記6⑴ウ)が、本件プレートは、原告の商号とともに「StealthDicingEngineinside!」と記載されたものであって、 原告エンジンが内蔵されているものを明らかにするものといえ、本件プレートの交付及びSD装置への貼付の許可は、基本的には原告エンジンの販売に付随するものであると認められる。したがって、本件業務提携契約において定められた被告が原告の有する特許発明等を実施してSD装置を製造、 付及びSD装置への貼付の許可は、基本的には原告エンジンの販売に付随するものであると認められる。したがって、本件業務提携契約において定められた被告が原告の有する特許発明等を実施してSD装置を製造、販売することの対価として定められた実施料において、本 件プレートの交付及びSD装置への貼付の許可の対価の部分があったとまでは認められない。 ウ当該特許発明自体の価値すなわち特許発明の技術内容や重要性についてみると、本件各発明は、従来のレーザ加工技術においては、加工の開始に当たりレーザ光の焦点が切断予定ラインに合って安定状態になるまで の間切断予定ラインではない部分が加工されることになるという問題点に対し、集光点が加工対象物の内部の所定の位置に合う状態となる初期位置にレンズを保持するように保持手段を制御し、切断予定ラインの一端部において改質領域が形成された後に、レンズを初期位置に保持した状態を解除する等保持手段を制御すること等により、加工対象物の端部 におけるレーザ光の集光点のずれを極力少なくしつつ効率よくレーザ加工を行うことができるという効果があるというものである(前記1⑵)。 本件各発明は、ステルスダイシングに付随して加工対象物の端部における加工の精度を従来技術より高めることにより加工の効率化を図るというものであって、一定の条件でレーザ光をウェハ内部に集光してウェハ 内部に加工層を形成し、その後ウェハに引っ張り応力を加え、ウェハ表 面に形成される集積回路に損傷を与えずに加工層を起点としてウェハを分割するというステルスダイシング(前記第2の1⑷ア)そのものについての技術ではない。 また、被告は、対象製品1⑴及び1⑵Aには、本件各発明に代替する技術として低追従によるものを導入しており(前記第2 ステルスダイシング(前記第2の1⑷ア)そのものについての技術ではない。 また、被告は、対象製品1⑴及び1⑵Aには、本件各発明に代替する技術として低追従によるものを導入しており(前記第2の1⑷オ、同⑸、 前記4)、本件各発明には代替可能な技術も存在するといえる。このような本件各発明の技術内容等に照らすと、本件各発明がSD装置である対象製品1⑵Bの売上げの増加に対して、特段の貢献をしたと認めるには足りない。 エ前記各業務提携契約においては、原告が有するステルスダイシングに関 する一連の特許権に係る各発明等の実施が許諾されていて、同各発明には本件業務提携契約締結当時において原告が有する少なくとも●(省略)●件の特許権に係るものが含まれていた(前記⑴オ)。前記各業務提携契約において、原告が有するステルスダイシングに関する一連の特許権に係る各発明等の実施が一括して許諾されたといえるところ、それらの 各発明等について、ステルスダイシングそのものをすることに関係する発明等があることがうかがえる一方、本件各発明は、ステルスダイシングに付随して加工対象物の端部における加工の精度を従来技術より高めることにより加工の効率化を図るというものであり、代替技術もあり、原告が実施を許諾したステルスダイシングに関して有する他の特許権に 係る各発明等と比較して特段の重要性を有するものであるとは認めるに足りない。 なお、被告は、本件各発明が原告と被告との間の共同開発の中でされたものであり本件特許が共同出願されるべきものであったことや、本件許諾をした際の原告の代表取締役副社長の言動が被告をして対象製品1⑵ Bの販売等について許諾を受けたと誤信させるものであった等という事 情(前記第2の2⑻(被告の主張)ウ)を や、本件許諾をした際の原告の代表取締役副社長の言動が被告をして対象製品1⑵ Bの販売等について許諾を受けたと誤信させるものであった等という事 情(前記第2の2⑻(被告の主張)ウ)を挙げた上で、これらについて本件各発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額を定める上で考慮すべきであると主張するが、被告が主張する上記各事実自体を認めるに足りず、被告の上記主張には理由がない。 オ以上から、本件において、原告と業務提携関係にない者がステルスダイ シングに関する一連の特許権に係る相当数の各発明等を実施する場合に合意することが想定される実施料率は●(省略)●%より相当に高い料率になると推認することができるが、本件各発明は、ステルスダイシングをすること自体についてのものではなく、代替技術もあり、対象製品1⑵Bの売上げへの貢献の程度も高いものとは認めるに足りず、原告が業務提携契 約において実施を許諾した原告が有するステルスダイシングに関する一連の特許権に係る相当数の各発明等の中では、他の発明等と比較して特段の重要性を有するものとは認めるに足りない。これらを考慮し、原告が本件各発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額は、対象製品1⑵Bの売上高の5%相当額であると認めるのが相当である。 そして、被告は、平成28年4月から平成30年8月まで、原告の特許権を侵害する製品として対象製品1⑵Bを合計●(省略)●台販売し合計●(省略)●円を売り上げた(前記⑴ウ)から、原告が本件各発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額は、その5%相当額である●(省略)●円であると認めるのが相当である。 カまた、本件の内容等に照らし、原告が本件訴訟追行に費やした弁護士費用のうち●(省略)●円は、被告の不法行為と相当 額は、その5%相当額である●(省略)●円であると認めるのが相当である。 カまた、本件の内容等に照らし、原告が本件訴訟追行に費やした弁護士費用のうち●(省略)●円は、被告の不法行為と相当因果関係がある損害として被告が負担すべきである。 キ以上によれば、被告による対象製品1⑵Bの製造、販売により、原告は、1億3116万1399円の損害を受けたものと認められる。 【計算式】●(省略)●×5%≒●(省略)● ●(省略)●=131,161,399⑸ 民法709条における損害(特許法102条の適用を主張しないもの)について原告は、被告による対象製品の販売行為がなければ原告が原告エンジン一式等を販売等できたと主張して、特許法102条の適用を主張せずに、民法 709条に基づく損害を主張する。 原告は、平成19年頃から、被告のほかディスコ社に対しても原告エンジンを販売し、被告とディスコ社は日本国内においてSD装置を製造、販売していた。そして、その販売先はサムスン社など専ら海外法人であった。日本国外においては、EO社、徳力激光、長城科技、無錫先導知能設備など複数 の法人がSD装置を製造、販売していた。また、半導体製造業者は、被告及びディスコ社のSD装置の販売先であるサムスン社も含め、一般的には、その優位性を確保するため、複数の業者から半導体製造装置を購入する体制を採用しており、例えば、サムスン社は、当初は被告からのみレーザダイシング装置を購入していたが、平成23年頃からは被告及びEO社から、平成2 5年頃から平成28年頃まではEO社及びディスコ社から、同年頃以降は被告及びディスコ社からレーザダイシング装置を購入しており、EO社は、平成27年から平成28年にかけ 及びEO社から、平成2 5年頃から平成28年頃まではEO社及びディスコ社から、同年頃以降は被告及びディスコ社からレーザダイシング装置を購入しており、EO社は、平成27年から平成28年にかけて、サムスン社に対し、約50台のSD装置を販売した。(以上につき、前記第2の1⑷イ、前記6⑴オ、カ、前記⑴ウ、エ)。 これらによれば、SD装置の供給者及び需要者はいずれも日本国内の者に限られない。そうすると、本件で問題となるSD装置を製造、販売する者が被告とディスコ社のみであるとはいえないのであり、被告が対象製品1⑵Bを製造、販売することにより、その販売数量について、ディスコ社によるSD装置の販売数量が減少し、その結果、その数量について原告のディスコ社 に対する原告エンジンの販売数量が減少したという事実を認めるには足りな い。 したがって、被告による対象製品1⑵Bの製造、販売により、その販売数量について原告が原告エンジンを販売することができなくなったと認めるには足りず、被告により製造、販売された対象製品1⑵Bの数量について原告が原告エンジンの販売ができなくなりそれによって得られるはずであった利 益を失ったとは認められない。 ⑹ 過失相殺について被告は、原告の代表取締役副社長の平成26年10月8日の言動を理由として、被告が対象製品1Bの製造販売を行うに至ったことには、原告の過失がある旨主張する。 しかし、被告が仮に原告側の平成26年10月8日の言動によりその許諾があったものと考えて対象製品1⑵Bを製造、販売したとしても、そのことについて原告に過失があったとは認められない。すなわち、前記6⑵のとおり、原告は、平成26年10月8日、被告に対し、●(省略)●試作機1台の製造、提供及びこれに対応 製造、販売したとしても、そのことについて原告に過失があったとは認められない。すなわち、前記6⑵のとおり、原告は、平成26年10月8日、被告に対し、●(省略)●試作機1台の製造、提供及びこれに対応する販売機の製造、販売の限度で本件各発明の 実施を許諾したにすぎない。原告と被告との間で、10月8日打合せにより、原告が被告に対し、●(省略)●被告が開発、製造したSDエンジンを搭載したSD装置すなわち対象製品1⑵Bを製造して販売することについて許諾し、被告が原告に対しロイヤリティを支払うという、被告が主張する内容の許諾が明確な文言で確認されたとはいえない。そもそも、本件業務提携契約 の内容は●(省略)●ものとされており、原告と被告が、被告が主張する前記合意内容を合意するに当たっては●(省略)●が必要であったが、そのような書面は作成されなかった。このような状況からすると、被告が仮に10月8日打合せの際の原告側の言動により許諾があったものと誤信して対象製品1⑵Bを製造、販売したとしても、それは上記のとおりの客観的状況を踏 まえずに被告が誤信したといえるものであり、その誤信について原告に過失 相殺の根拠となるような過失があったとは認められない。 ⑺ 不当利得について被告が対象製品1⑵Bの製造、販売により法律上の原因なく受けた本件特許の実施料相当額の利益額は、前記⑷の損害額を超えない。 ⑻ 小括 以上から、原告は、被告による対象製品1⑵Bの製造、販売により、1億3116万1399円(前記⑷)の損害を受けたものというべきである。 第4 結論以上のとおり、原告の被告に対する各請求は、不法行為による損害賠償請求権に基づき1億3116万1399円及びこれに対する不法行為より後の日で けたものというべきである。 第4 結論以上のとおり、原告の被告に対する各請求は、不法行為による損害賠償請求権に基づき1億3116万1399円及びこれに対する不法行為より後の日で ある平成30年11月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるから、同限度で認容し、その余はいずれも理由がないから棄却することとし、主文第1項には仮執行宣言を付し、また、仮執行免脱宣言は相当でないのでこれを付さないこととする。 よって、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官柴田義明 裁判官佐伯良子 裁判官仲田憲史 別紙対象製品目録次の型番のレーザダイシングマシン1⑴ ML300EXシリーズ(その型番中に「ML300EX」を含むもの)⑵ ML300PlusXシリーズ(その型番中に「ML300PlusX」を含むもの)A うち「NS900」以外の型番のレーザエンジンを搭載するものB うち「NS900」の型番のレーザエンジンを搭載するもの 2 ML200EXシリーズ(その型番中に「ML200EX」を含むもの)以上 別紙本件発明図面【図1】 【図3】 【図4】 【図6】 【図7】 【図8】 【図10】 【図11】 【図6】 【図7】 【図8】 【図10】 【図11】 以上 別紙●(省略)● 別紙対象製品1動作態様 1 対象製品1⑵B⑴ 面取り部分のあるシリコンウェハの場合⑵ 面取り部分のないシリコンウェハの場合 2 対象製品1⑴、1⑵A⑴ 面取り部分のあるシリコンウェハの場合⑵ 面取り部分のないシリコンウェハの場合 以上
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