主文 一被告が原告に対してした平成八年一〇月一五日付け公文書非公開決定処分のうち、リコーの提示した料金部分を除き、非開示とした処分を取り消す。 二原告のその余の請求を棄却する。 三訴訟費用は、被告の負担とする。 事実及び理由 第一請求被告が原告に対してした平成八年一〇月一五日付け公文書非公開決定処分を取り消す。 第二事案の概要一本件は、原告が奈良県情報公開条例(以下「本件条例」という)に基づき「平成八年度文書学事課のコピー機の契約に関する一切の文書」の開示を請求したところ、被告が①料金(金額)が記されている部分及び②契約者である法人の代表者の印影を除いて公文書の一部の開示をする旨決定(以下「本件処分」という)したので、右非開示部分につきその取消しを求めている事案である。 二争いのない事実等 1 原告は、奈良県の住民であり、被告は、本件条例二条一項の実施機関である。 2 本件条例のうち、本件で問題となっている条文は次のとおりである。 「一〇条実施機関は、公文書の開示の請求に係る公文書に次の各号のいずれかに該当する情報が記録されているときは、当該公文書の開示をしないことができる。 三号法人(国及び地方公共団体を除く。)その他の団体(以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、開示することにより、当該法人等又は当該事業を営む個人の競争上又は事業運営上の地位、社会的信用その他正当な利益が損なわれると認められるもの。(ただし書省略)四号開示することにより、人の生命、身体、財産等の保護、犯罪の予防、犯罪の捜査その他の公共の安全と秩序の維持に支障が生ずるおそれがある情報」 3 原告は、平成八年一〇月一日、被告に対し、「平成八年度文書学事課のコピー機の契約に関する一切の文書」 の保護、犯罪の予防、犯罪の捜査その他の公共の安全と秩序の維持に支障が生ずるおそれがある情報」 3 原告は、平成八年一〇月一日、被告に対し、「平成八年度文書学事課のコピー機の契約に関する一切の文書」の開示を請求した(甲一)。 4 被告は、本件条例八条一項に基づき、富士ゼロックス株式会社(以下「当該法人」という)の奈良営業所長に対して意見聴取を行ったところ、同営業所長は、被告に対して、①契約書記載の機種毎、種類毎の各設定価格は、各自治体単位で機械台数等により異なり、数多い価格種類の一部開示は、理解が不十分な場合には価格に対する公平さにつき、一般民間企業等から疑義を受け、当社に不利益が生じるおそれがあること、②他の自治体でも開示されていない実情であることの理由から、各複写サービス個別契約書のうちの契約価格の開示は支障がある旨記載した同月八日付け「公文書の開示に係る意見書」を提出した(乙二)。右意見書中には、営業所長の印影についての意見は記載されていない。 5 被告は、同月一五日、原告の請求に対し、別紙文書目録一記載の公文書(以下「本件公文書」という)のうち、①料金(金額)が記されている部分(以下「本件料金部分」という)については、本件条例一〇条三号(法人等に関する情報)に、②契約者である法人の代表者の印影(以下「本件印影」という)については、本件条例一〇条四号(犯罪に利用されるおそれ)にそれぞれ該当するとの理由で開示しないこととし、その余の公文書を開示する旨の本件処分をした(甲二)。 6 本件処分の通知書中に開示しない部分として掲記されていた「契約者である法人の代表者の印影」は、実際には、契約者である当該法人の奈良営業所長の印影であった。 7 被告は、本件処分に基づき、右非開示部分を白色マスキングをし、その余の部分を原告に開示した。 8 本件公 る法人の代表者の印影」は、実際には、契約者である当該法人の奈良営業所長の印影であった。 7 被告は、本件処分に基づき、右非開示部分を白色マスキングをし、その余の部分を原告に開示した。 8 本件公文書は、平成八年度文書学事課のコピー機の複写サービスの個別契約に関する文書であるが、本件のほか、原告からの開示請求に応じて、①同年度のコピー機の複写サービスの基本契約に関する文書(乙七)及び②奈良県庁の各所属別のコピー使用枚数と請求金額を記載した機種別の使用実績表(乙一一)が別途開示されている。 9 なお、原告は、被告に対し、平成八年一〇月三〇日付けで、本件処分の取消を求める異議申立てをした(甲三)ところ、奈良県情報公開審査会は、被告に対して、平成九年二月一〇日付けで本件処分は妥当である旨の答申をした(乙六)。 三争点 1 本件料金部分は、本件条例一〇条三号本文(法人等に関する情報)に該当するか。 2 本件印影は、本件条例一〇条三号本文又は同条四号(犯罪の予防等に支障が生ずるおそれがある情報)に該当するか。 四争点に関する各当事者の主張 1 争点1(本件料金部分)について(被告の主張)(一) 本件条例一〇条三号本文は、法人等及び事業を営む個人の事業活動の自由を原則として保障しようとする趣旨から、同号所定の情報が記載された公文書の開示をしないことができる旨規定している。 (二)(1) 本件料金部分には、当該法人の営業努力の結果導き出された機種・型式・複写サービス数量の範囲毎の単価や最低料金、解約又は機種変更の要求の原因となる月間基準金額等が記載されており、これらは、当該法人独自の価格体系に基づき、契約相手の取引条件(使用台数、使用機種、使用予定数、設置状況等)、他社との競争状況及び特殊事情等に応じて、設定されているものである。 これらは、単に り、これらは、当該法人独自の価格体系に基づき、契約相手の取引条件(使用台数、使用機種、使用予定数、設置状況等)、他社との競争状況及び特殊事情等に応じて、設定されているものである。 これらは、単に一製品の一定枚数毎の契約単価や月間最低保証金額というだけではなく、電算解析されると、価格ロジック、価格体系、原価、割引率等の重要な営業機密さえもが分かってしまう可能性が極めて高いものである(価格設定の背景について(乙四)、価格設定の方法について(乙五)参照)。 また、これら価格ロジック、価格体系は、複写機の先発メーカーである当該法人が、大手の取引先を始めとして幅広い顧客との長年にわたる信頼に基づく取引・意見交換の中で、利用する者の立場に立った調査・研究・提案の積重ねにより生み出された貴重な営業上のノウハウにほかならず、営業秘密に属するものとして社外秘の取扱がされているものである。 (2) したがって、本件料金部分に記載されている情報は、本来、当該法人の内部で管理されるべき営業の実態を示した企業秘密に属するものであり、法人の営業上のノウハウに関する情報に該当する。 (三) そして、仮に、本件と同様の個別契約書における料金部分が、他の部署におけるものについても次々と開示されれば、電算解析により、右の価格ロジック、価格体系を始めとする営業上のノウハウが容易に知られてしまう危険性は避けられない。 また、本件料金部分を開示すれば、当該法人が多くの顧客と継続的に取引関係を維持していく上において、契約相手に不信感を与え、信頼関係を損ない、単純な価格比較により値引きを強要されるなど、営業上の著しい支障をきたすおそれがある。 さらに、当該法人独自の価格体系等に基づき設定されている契約金額が開示されると、同業他社に営業上有利な条件を与えることになり、他社との厳 を強要されるなど、営業上の著しい支障をきたすおそれがある。 さらに、当該法人独自の価格体系等に基づき設定されている契約金額が開示されると、同業他社に営業上有利な条件を与えることになり、他社との厳しい販売競争を繰り広げている当該法人の正当な利益が損なわれることになる。 (四) 原告は、競争入札の場合に落札金額・入札金額が公開されていることを指摘するが、落札金額は落札者とともに公開しないと入札の意味がないし、入札金額は、談合の防止等入札の公明・公正を期するため公開される可能性があることは、入札参加者も予め了知している上、入札金額は、内訳を全く示さない総額だけの記載であるから、これを本件と同視することはできない。 また、原告は、見積書、飲食店の請求書に記載されている金額を例に挙げて主張するが、見積書は、契約の見込みまたは可能性のある者にだけ交付されるものであるし、飲食店の請求書に記載されている金額は、通常店頭等に表示されている料理の単価などと異質なものではなく、他業者との競争上特に秘密にしておく必要のある事項ではないから、これらを本件と同視することはできない。 (原告の主張)(一) 本件条例一〇条三号は、法人等がその情報を公開されることにより不合理な損害を被ることを避けるため、知る権利と法人等の営業の利益との調整を図った規定である。 企業にとっては、その活動に関する情報を公開されることは、不利益に感じることが圧倒的に多いと思われるから、単に法人等に不利益が生じることを適用除外の要件にすると、適用除外の範囲は限りなく広いものになってしまうことになる。したがって、同号の「正当な利益が損なわれる」とは、正当な利益が不当に損なわれる場合をさすものと解するのが相当である。 (二) 被告は、料金は営業上のノウハウであるか、企業秘密に属するものである 。したがって、同号の「正当な利益が損なわれる」とは、正当な利益が不当に損なわれる場合をさすものと解するのが相当である。 (二) 被告は、料金は営業上のノウハウであるか、企業秘密に属するものであると主張する。しかし、「ノウハウ」とは「技術的知識・情報、こつ」という意味であり、商品の製造方法や原価等はノウハウといえるが、商品の価格はノウハウには当たらない。また、競争入札による場合は、落札金額・入札金額が公開されており、競争入札に比べて例外的で簡易な方法である随意契約の場合は、よりいっそう公開されて当然であるし、判例も、飲食店の請求書に記載の金額について、営業上の秘密、ノウハウには当たらず、競争上の地位その他正当な利益が害されることは考えられないと判示している(最判平成六年二月八日)。 (三) 被告は、平成八年一一月一九日付け「文書学事課のコピー機の使用実績が分かる文書すべて」という原告の開示請求に対して同年一二月三日付けで使用枚数と請求金額が分かる文書を開示しており、複写一枚当たりの平均単価も容易に計算可能であるから、本件料金部分を非公開にすべき必要はない。 2 争点2(本件印影)について(被告の主張)(一) 本件条例一〇条三号本文該当性について(1) 本件印影は、当該法人の代表者から奈良県内における複写サービス契約に関する一切の権限を委任された奈良営業所長の印影であるので、実質的には、県内の契約に限れば、当該法人の代表者の印影に該当するものである。そして、法人の印影については法人に関する情報であることは明白である。 (2) 法人の印影は、当該法人が事業活動を行う上での重要な経理等の内部管理に属する情報であり、当該法人が積極的に公表しているものではなく、また、広く一般に知られているとも認められないので、これを当該法人の事業活動と無関係に 人が事業活動を行う上での重要な経理等の内部管理に属する情報であり、当該法人が積極的に公表しているものではなく、また、広く一般に知られているとも認められないので、これを当該法人の事業活動と無関係に開示すれば、当該法人の正当な利益が損なわれると認められる。 (3) 原告が本件公文書の公開を求めた趣旨・目的は、実費と比較して実際のコピー利用料金が不当に高くないか等を確認・検討するためにあるものと思料されるが、それらを確認・検討するために印影までの開示が必要又は有用とは思われない。 (二) 本件条例一〇条四号該当性について(1) 本件条例一〇条四号は、公共の安全と秩序の維持を図る趣旨から同号所定の情報が記載された公文書の開示をしないことができる旨規定している。 (2) 民間事業者にとって、印影は契約等に使用され、財産そのものに影響を与える重要な役割を持つものであるとともに、一定の取引関係の存在を前提にしてのみ知り得る情報であり、また、商業登記法一二条によれば、法人代表者の印鑑証明書の交付請求者が制限されている趣旨に照らしても、広く一般に公開されるべき性質のものではない。とりわけ、当該法人の場合は押印するときには、必ず押捺記録簿に記録するなど、特に大切に取り扱われている。 そして、本件印影を開示すれば、情報が流通し、印鑑偽造等により印影を不正に使用され、財産権が侵害される場合も予想されることから、犯罪の予防等公共の安全と秩序の維持に支障が生ずるおそれがある情報に該当する。 (原告の主張)(一) 本件条例一〇条三号本文該当性について営業所長の印鑑は外部に出す見積書等に普通に押されているものであるから、秘密に保管されているものとはいえず、また、事業活動に有用な営業上の情報であるとも思われない。 もし、これに当たるとするならば、被告は具体的に企業 に出す見積書等に普通に押されているものであるから、秘密に保管されているものとはいえず、また、事業活動に有用な営業上の情報であるとも思われない。 もし、これに当たるとするならば、被告は具体的に企業のどのような利益が不当に損なわれるかを立証しなければならない。 (二) 本件条例一〇条四号該当性について被告主張のように抽象的な犯罪の蓋然性を理由に文書の公開を拒むならば、非公開の範囲は限りなく広くなってしまうおそれがあり、被告は犯罪の具体的危険性を主張立証しなければならない。 印鑑証明書が添付されている実印の印影であれば、一般的に重要なものと認められることが多いが、本件の場合は代表権のない営業所長の印影であり、はじめての顧客に対してでも発行される見積書にも押印されるものである。 商業登記法上、法人代表者の印鑑証明書の交付請求者が本人等に制限されているのは、登記所が証明した印鑑証明書と同じ印鑑を持っている者が代表者本人であることを証明する制度となっているからであるが、右趣旨は、本件印影を非公開にする理由にはならない。 第三証拠本件訴訟記録中の書証目録及び証人等目録の記載を引用する。 第四争点に対する判断一争点1(本件料金部分)について 1 証拠(乙三)によれば、本件料金部分には、大別して、①単純な(コピー料金の総額を使用枚数で割ることによって、容易に算出できるもの)コピー一枚当たりの単価、②コピーの使用枚数に対応した単価(例えば、一枚目から二〇〇〇枚目まで、二〇〇一枚目から四〇〇〇枚目まで、四〇〇一枚目から八〇〇〇枚目まで、八〇〇一枚目以上の各単価を示すもの)、③月間最低料金(最低補償金額)があることが認められる。 2 本件料金部分は、複写サービス等を事業として行う当該法人の奈良営業所長が被告との間で締結した複写サービス個別契約の 上の各単価を示すもの)、③月間最低料金(最低補償金額)があることが認められる。 2 本件料金部分は、複写サービス等を事業として行う当該法人の奈良営業所長が被告との間で締結した複写サービス個別契約の一内容であるから、本件条例一〇条三号本文前段の「法人に関する情報」に当たるところ、被告は、本件料金部分は、本件条例一〇条三号本文後段の「開示することにより、当該法人の競争上の地位その他正当な利益が損なわれると認められるもの」に当たる旨主張するので、以下検討する。 (一) 証拠(乙二、八、証人Aの供述)によれば、以下の事実が認められる。 (1) 当該法人では、機械台数、使用枚数、機械種類、設置条件等を顧客毎に最適に組み合わせて複写サービスの価格を決定しており、使用枚数及び機械台数が多ければ多いほど割安な価格が設定されている。価格には、大別して、一般顧客向け価格と大口割引価格があり、さらに右大口割引価格は、企業単位、事業所単位、室内単位、複数台数単位で適用される。また、価格の種類には、一台毎価格、二台連結価格、集中印刷室価格、事業所プール価格等、顧客の環境に応じた様々なものがあり、顧客の利用状況(月間枚数、要求品質、要求スピード、ピーク時処理、スペース等)に応じて、各条件を組み合わせて最適価格が設定されている(乙四、五)。 (2) 当該法人と被告との間の本件個別契約の価格は、標準小売価格を基本として大口割引価格を適用したものである。 (3) 当該法人においては、複写サービス料金のうち、標準小売価格については、一般の顧客に配布するパンフレット(乙九)等により一般に公表しているが、大口顧客向けの割引価格等は公表していない。 (4) 当該法人は、複写機の先発メーカーであり、価格ロジックや価格体系を長年にわたる顧客との信頼に基づく取引の中で、研究の積重ねによ 般に公表しているが、大口顧客向けの割引価格等は公表していない。 (4) 当該法人は、複写機の先発メーカーであり、価格ロジックや価格体系を長年にわたる顧客との信頼に基づく取引の中で、研究の積重ねにより生み出してきたことから、こうしたものを貴重な営業上のノウハウとして位置づけ、重要な営業秘密として取り扱っている。 (5) 当該法人は、本件料金部分が開示されると、他の顧客から値引き要求されるなどの営業上の支障がある旨主張している(証人Aの供述二丁、九丁)。 (6) 奈良県では、公共工事等の契約の締結が競争入札により行われた場合の契約金額について、公表している。 (二) 本件条例一〇条は、実施機関において、同条各号掲記の非開示情報が記載されているときは、当該公文書の開示をしないことができる旨規定しており、本件条例は、公文書の原則開示を基本としつつ、一定の合理的な理由がある場合に限って例外的に非開示とすることを許容したものと解することができる。 そして、「法人に関する情報」が開示されることにより、当該法人の競争上の地位その他正当な利益が損なわれるか否かは、本件条例の趣旨・目的と当該情報の内容・性質に照らして判断されることになる。 まず、本件条例一条(目的)、三条(解釈及び運用)は「県民の公文書の開示を求める権利」を規定し、本件条例の解釈及び運用に当たっては、右権利を「十分に尊重するもの」とし、「県政に対する県民の理解と信頼を深め、県民の県政への参加を促進し、もって公正で開かれた県民本位の県政を一層推進することを目的」としている。 ところで、一般の経済的取引における契約内容の開示は、その内容がどのようなものであっても契約当事者にとって必ずしも望ましいことではなく、競業する他の業者への影響のみならず、将来の取引に何らかの影響があることは当然に予想す 取引における契約内容の開示は、その内容がどのようなものであっても契約当事者にとって必ずしも望ましいことではなく、競業する他の業者への影響のみならず、将来の取引に何らかの影響があることは当然に予想することができる。しかしながら、地方公共団体と契約を締結する法人等は、行政の透明性等の要請から、民間と契約する場合とは異なる制約を甘受せざるを得ないものである。すなわち、地方自治法は、地方公共団体の締結する契約については、その価格等の公正さを担保するため、一般競争入札の方法によるべきことを原則とし、随意契約等これ以外の方法による契約の締結を例外的なものとしているところ(二三四条一項、二項)、前記本件条例の趣旨・目的に照らすと、一般競争入札以外の方法による契約についても、料金部分を含むその契約内容等について、公開することを原則としていると考えられる。したがって、地方公共団体と契約を締結する法人等において、契約内容の開示により当該法人の競争上の地位その他正当な利益が損なわれるとするためには、一般の経済的取引における契約内容の開示と異なり、当該開示により、原価、価格ロジック、価格体系等の営業上の秘密やノウハウが明らかになるなどの事情が必要であると解される。 これを本件についてみると、料金部分を開示しても、当該法人の特定の相手方に対する数台のコピー機の料金が明らかになるにすぎず、料金部分の開示により、当該料金を設定するに至った原価、価格ロジック、価格体系等の営業上の秘密やノウハウが明らかになるとは認め難いから(証人Aも、料金部分の開示により、専ら、当該法人と競業する他の業者の値引きや取引相手からの値引き交渉が予想されることを問題としているようにうかがえる)、契約の相手方ではないリコーの提示した料金部分を除き、本件料金部分の開示によって当該法人の競争上 競業する他の業者の値引きや取引相手からの値引き交渉が予想されることを問題としているようにうかがえる)、契約の相手方ではないリコーの提示した料金部分を除き、本件料金部分の開示によって当該法人の競争上の地位その他正当な利益が損なわれると認めることはできない。 結局、本件処分のうち、右リコーの提示した料金部分を除き、契約書等における当該法人の料金部分を非開示とした処分は違法である。 二争点2(本件印影)について 1 証拠(乙八、証人Aの供述)によれば、当該法人の奈良営業所長は、代表取締役から奈良県内の営業活動に関する権限の委任を受けていること、同営業所においては、営業所長の印章を使用する際には、事前の許可や記録簿への記載を要するなど厳重な管理がなされていること、営業所長の印章は、入札、領収書、請求書等の取引関係書類に押捺されるなどして使用され、取引に関係のない挨拶状のようなものには押捺されていないことの各事実が認められる。 2 本件条例一〇条四号該当性について被告は、本件印影は、本件条例一〇条四号の「犯罪の予防その他の公共の安全と秩序の維持に支障が生ずるおそれがある情報」に当たる旨主張する。 前述したとおり、本件条例は情報の開示を原則とし、一定の合理的な理由がある場合に限り非開示とすることを許容しているものと解されるから、情報の開示と「犯罪の予防等に支障が生ずるおそれ」との間には因果関係を要するものと解するのが相当である。 これを本件についてみると、印影の開示と印章偽造等の犯罪行為との関連は直接的なものではなく、犯罪者が不法な意図をもって実施機関により開示された印影等を用いて印章偽造を行うなどの異例な場合にのみおこりうるにすぎないから、右因果関係を認めることは困難であり、本件印影は本件条例一〇条四号に当たるとはいえない。 3 本件条例 関により開示された印影等を用いて印章偽造を行うなどの異例な場合にのみおこりうるにすぎないから、右因果関係を認めることは困難であり、本件印影は本件条例一〇条四号に当たるとはいえない。 3 本件条例一〇条三号本文該当性について本件印影は、当該法人の奈良営業所長の印影であり、営業所において厳重に管理され、取引関係書類に押捺されるものであるから、本件条例一〇条三号本文前段の「法人に関する情報」に当たるところ、被告は、本件印影は、本件条例一〇条三号本文後段の「開示することにより、当該法人の正当な利益が損なわれると認められるもの」に当たる旨主張するので、以下検討する。 地方公共団体と法人等との間の契約書や見積書等に押捺されて、地方公共団体に対して提出される法人等の印影は、取引の相手方又は取引の相手方となろうとする者に対して一般的に交付されるものであるが、こうした法人等の印影は、各文書が法人等の契約締結権限を有する者によって真正に作成された文書であることを示すために押捺されるものであるから、作成名義人の氏名等とあいまって契約を締結した者を特定し、契約締結権限を証明するという意味を有するほか、特殊な情報が含まれているわけではない。 そして、開示された法人等の印影が印章偽造等の犯罪等に悪用されることは異例の事態であって、開示との間の因果関係が認められないことは前述のとおりであり、地方公共団体の契約の相手方の氏名が既に開示されているような場合においては、法人等の印影は付随的な情報にすぎず、これを開示されたからといって当該法人の正当な利益が損なわれるとは認められない。 これを本件についてみると、本件印影は、被告と当該法人奈良営業所長との間の複写サービス契約の契約書等に押捺された同営業所長の印影であり、真正な作成名義を有する者によって作成された文書で られない。 これを本件についてみると、本件印影は、被告と当該法人奈良営業所長との間の複写サービス契約の契約書等に押捺された同営業所長の印影であり、真正な作成名義を有する者によって作成された文書であることを示すために押捺された上、被告に対して提出されたものにすぎず、当該法人奈良営業所長の氏名については既に開示されているから、本件印影が開示されたからといって、当該法人の正当な利益が損なわれるとは認められない。 したがって、本件印影は、本件条例一〇条三号本文に該当するとは認められず、これを非開示とした本件処分は違法である。 第五よって、本件請求は主文掲記の限度で理由があるからこれを認容すべきであり、その余は理由がないから棄却すべきであり、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民訴法六一条、六四条を適用して、主文のとおり判決する。 (平成九年一〇月二九日口頭弁論終結)奈良地方裁判所裁判長裁判官前川鉄郎裁判官石原稚也裁判官田口治美(別紙)文書目録一本件公文書 1 平成八年四月一日付け決済の「コピー機の複写サービスに関する契約について」と題する決済伺い用文書(①「平成八年度契約コピー機の随意契約理由について」と題する書面及び②同日付け複写サービス個別契約書(案文及び正式文書)が添付されている) 2 平成八年四月一五日付け決済の「コピー機の複写サービスに関する契約について」と題する決済伺い用文書(①「平成八年度契約コピー機(新規分)の随意契約理由について」と題する書面、②同日付け終了承認書三通(案文及び正式文書)、③同月一六日付け複写サービス個別契約書(案文及び正式文書)及び④同月一六日付けゼロックス製品使用開始通知書(案文及び正式文書)二通が添付されている) 3 平成八年一〇月一日付け決済の「複写サービスに関する契約について サービス個別契約書(案文及び正式文書)及び④同月一六日付けゼロックス製品使用開始通知書(案文及び正式文書)二通が添付されている) 3 平成八年一〇月一日付け決済の「複写サービスに関する契約について」と題する決済伺い用文書(①「総合公開窓口の複合機の導入について」と題する書面、②同日付け複写サービス個別契約書(案分及び正式文書)、③同日付け念書(案文及び正式文書)及び④同日付けゼロックス製品使用開始通知書(案文及び正式文書)が添付されている)二原告が取消を求めている非開示部分 1 「平成八年度契約コピー機の随意契約理由について」及び「平成八年度契約コピー機(新規分)の随意契約理由について」と題する各書面のうち、(一) 基本契約単価中の各コピーの使用枚数に対応した単価(二) 基本契約単価中の月間最低補償金額(三) 前年度月平均枚数使用時の料金 2 「総合公開窓口の複合機の導入について」と題する各書面のうち、(一) 複写サービス料金中の各コピーの使用枚数に対応した単価(二) 複写サービス料金中の月間複写サービス最低料金(三) 一〇〇〇枚使用時の料金 3 平成八年四月一日付け及び同月一六日付け各複写サービス個別契約書(案文及び正式文書)のうち、(一) 富士ゼロックス株式会社(以下「当該法人」という)の奈良営業所長の印影(二) 複写サービス料金の各複写サービス数量の範囲(コピーの使用枚数)に対応した単価(三) 月間複写サービス最低料金 4 同年一〇月一日付け複写サービス個別契約書(案文及び正式文書)のうち、(一) 当該法人の奈良営業所長の印影(二) 複写サービス料金の各複写サービス数量の範囲(コピーの使用枚数)に対応した単価(三) 月間契約基準金額 5 各終了承認書のうち、当該法人の奈良営業所長の印影 6 各念書のうち、(一) 当 (二) 複写サービス料金の各複写サービス数量の範囲(コピーの使用枚数)に対応した単価(三) 月間契約基準金額 5 各終了承認書のうち、当該法人の奈良営業所長の印影 6 各念書のうち、(一) 当該法人の奈良営業所長の印影(二) 適用金額
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