令和4(ネ)10018 職務発明の対価請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和6年2月8日 知的財産高等裁判所 1部 判決 控訴棄却 大阪地方裁判所 平成30(ワ)866
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判決文本文15,144 文字)

- 1 -令和6年2月8日判決言渡令和4年(ネ)第10018号職務発明の対価請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成30年(ワ)第866号)口頭弁論終結日令和5年11月2日判決 控訴人 X同訴訟代理人弁護士室谷和彦 被控訴人不二製油グループ本社株式会社 同訴訟代理人弁護士重冨貴光渡辺 洋岩﨑翔太主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 用語の略称及び略称の意味は、本判決で付するもののほかは、原判決に従う。原判決中の「別紙」を「原判決別紙」と読み替える。 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は、控訴人に対し、1億0515万円及びこれに対する平成30年2月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨 - 2 -本件は、被控訴人の元従業員である控訴人が、油脂の乾式分別法に関する2件の発明は、いずれも控訴人が単独で発明した職務発明であり、その特許を受ける権利(外国の特許を受ける権利を含む。以下同じ。)を被控訴人に承継させた旨主張し、平成16年法律第79号による改正前の特許法(以下「旧特許法」といい、原判決中の「昭和34年法」を「旧特許法」と読み替える。)35条3項及び4項の規定 並びにこれらの類推適用に基づき、被控訴人に対し、上記特許を受ける権利の承継に係る相当の対価として1億0515万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成30年2月17日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延 る権利の承継に係る相当の対価として1億0515万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成30年2月17日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 原判決は、控訴人の請求を棄却したため、控訴人がこれを不服として控訴した。 2 前提事実次のとおり訂正するほかは、原判決の「事実及び理由」の第2の2に記載のとおりであるから、これを引用する。 (1) 原判決2頁26行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「本件発明Aの内容は、原判決別紙特許第4682848号公報の【特許請求の 範囲】に各記載のとおりであり、本件発明Bの内容は、原判決別紙特許第4534986号公報の【特許請求の範囲】に各記載のとおりである。」(2) 原判決3頁11行目冒頭から18行目末尾までを次のとおり改める。 「被控訴人は、平成15年12月26日にした特許出願(特願2003-432274)に基づく優先権を主張し、本件発明Aにつき国際出願をして(PCT/JP 2004/018711)、国内移行手続を経て(特願2005-516562)、原判決別紙特許目録記載A1の特許(特許第4682848号。以下「本件特許A1」といい、その特許権を「本件特許権A1」という。)を受けた。また、被控訴人は、上記国際出願につき、米国及び中国においてそれぞれ国内移行の手続をして、米国につき原判決別紙特許目録記載A2の特許(以下「本件特許A2」といい、その特 許権を「本件特許権A2」という。また、本件特許A2に係る発明を「本件発明A2」 - 3 -という。)及び中国につきA3の特許(以下「本件特許A3」という。)を受けた。(甲3~5)被控訴人は、控訴人及び甲らを発明者として平成15年 特許A2に係る発明を「本件発明A2」 - 3 -という。)及び中国につきA3の特許(以下「本件特許A3」という。)を受けた。(甲3~5)被控訴人は、控訴人及び甲らを発明者として平成15年9月17日にした特許出願(特願2003-324787)に基づく優先権を主張し、本件発明Bにつき国際出願をして(PCT/JP2004/010322)、国内移行手続を経て(特願2 005-514002)、原判決別紙特許目録記載B1の特許(特許第4534986号。以下「本件特許B1」といい、その特許権を「本件特許権B1」という。)を受けた。(甲7、9、10(枝番号を含む。))また、被控訴人は、乙らを発明者として平成14年9月30日にした特許出願(特願2002-287928)及び控訴人及び甲らを発明者として平成15年9月1 7日にした上記特許出願(特願2003-324787)に基づく優先権を主張し、名称を「油脂の乾式分別方法」とする発明につき国際出願をして(PCT/JP2003/012446)、米国において国内移行手続を経て、また欧州移行手続を経て、原判決別紙特許目録記載B2の特許(以下「本件特許B2」といい、その特許権を「本件特許権B2」という。)及びB3の特許(以下「本件特許B3」といい、そ の特許権を「本件特許権B3」という。本件特許権A1~A3、B1~B3を併せて「本件各特許権」ということがある。)を受けた。もっとも、本件特許B2及びB3に係る各発明は、いずれもその発明特定事項に冷却工程が記載されており、本件発明Bを含まない異なる発明である。(甲7、8、11~14)被控訴人は、平成27年12月17日、本件特許権A1及びB1につき、新不二製 油への移転登録手続をした。(甲3の2、甲10の2)」(3) 原判決3頁21 明である。(甲7、8、11~14)被控訴人は、平成27年12月17日、本件特許権A1及びB1につき、新不二製 油への移転登録手続をした。(甲3の2、甲10の2)」(3) 原判決3頁21行目の「SOS脂」を「SOS(1、3位にステアリン酸、2位にオレイン酸が結合したトリグリセリド)脂」と、同行目の「POP脂」を「POP(1、3位にパルミチン酸、2位にオレイン酸が結合したトリグリセリド)脂」とそれぞれ改める。 (4) 原判決3頁22行目の「ところ、」から同頁24行目末尾までを次のとおり改 - 4 -める。 「。SOSパーツを製造する工程は、大別して、①原料から原料油脂を抽出する工程と、②原料油脂から精製油脂を分別する工程からなる。被控訴人は、上記①の工程において、ヒマワリ油を原料とし、酵素エステル交換技術(以下「EE技術」という。)を用いて原料油脂(ESO)を生成している。上記②の工程、すなわち、原料 油脂から生成油脂であるSOSパーツを分別する工程に用いられる方法には、主として、分別に際してアセトン等の溶剤を用いる溶剤分別法と、溶剤を用いない乾式分別法がある。本件各発明は、いずれも、乾式分別法に関する発明である(以下、本件発明Aを実施することを含むSOSパーツ等の乾式分別法を「本件乾式分別法」という。)。」 (5) 原判決3頁26行目の「おいて」の後から4頁1行目の「使用した」までを「本件発明A2を実施することとし、平成15年3月頃、本件乾式分別法を使用した」と改める。 (6) 原判決4頁11行目から同頁17行目(原判決左欄記載の行数による)までを削る。 (7) 原判決7頁11行目の「と受賞した」を「を受賞した」と改める。 3 争点(1) 本件各発明によって被控訴人が「受けるべき利 頁17行目(原判決左欄記載の行数による)までを削る。 (7) 原判決7頁11行目の「と受賞した」を「を受賞した」と改める。 3 争点(1) 本件各発明によって被控訴人が「受けるべき利益の額」(旧特許法35条4項)(争点1)(2) 本件各発明について被控訴人が貢献した程度(争点2) (3) 本件各発明は、控訴人の単独発明か、又は控訴人と被控訴人の従業員との共同発明か(争点3)(4) 本件各発明の特許を受ける権利の承継に係る相当の対価として、控訴人が被控訴人から支払を受けるべき額(争点4)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(本件各発明によって被控訴人が「受けるべき利益の額」(旧特許法3 - 5 -5条4項))について本争点に関する当事者の主張は、次のとおり原判決を訂正するほかは、原判決の「事実及び理由」の第3の1に記載のとおりであるから、これを引用する。 (1) 原判決7頁18行目冒頭から末尾までを削る。 (2) 原判決8頁2行目から3行目にかけての「独占の利益」を「独占の利益、すな わち旧特許法35条4項所定の「発明により使用者等が受けるべき利益」」に改める。 (3) 原判決8頁17行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「そもそも、FVOは、平成16年から平成27年にかけて、FVO品につき●●●●●●●●を、FVOパーツ品につき●●●●●●●●を売り上げているのであ って(甲48)、その販売先には●(省略)●も含まれていたのであるから、FVO品やFVOパーツ品が、●●●●●●●●●受け入れられる品質を有していたことは明白である。」(4) 原判決8頁22行目の「テンパリング」の後に「(温度調整による結晶の安定化・均一化)」を加える。 (5) 原判決9頁1 ●●●●受け入れられる品質を有していたことは明白である。」(4) 原判決8頁22行目の「テンパリング」の後に「(温度調整による結晶の安定化・均一化)」を加える。 (5) 原判決9頁18行目末尾に「なお、FVO品とFOJ品の各製品コストを比較するに当たり、FVOが負担する酵素代を加算することは、乾式分別法と溶剤分別法の比較という観点からは妥当でない。」を加える。 (6) 原判決9頁22行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「一般に、溶剤分別法は、溶剤が入ることに伴ってその留去回収設備を要するの であるから(甲10、60、乙6、7)、これに比して乾式分別法による設備費が低コストになるのは当然である。」(7) 原判決10頁21行目の「内在する。」を「内在し、現実にも、平成3年には被控訴人の工場でノルマルヘキサンの引火・爆発による死亡事故(甲34)が、平成19年には競合他社の設備にてヘキサンが爆発する死亡事故(甲77)がそれぞれ 発生している。」を加える。 - 6 -(8) 原判決11頁21行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「このようなことから、シア脂を原料としてSOSパーツを製造している競合他社が、本件乾式分別法を採用することは原理的に可能である。したがって、競合他社は、安全で、品質面でも劣るところがなく、価格優位性もある本件乾式分別法の採用を望むのが当然であるが、本件各特許権が存在するためにこれを妨げられているの であって、禁止権の効力が及んでいることにほかならない。」(9) 原判決12頁18行目冒頭から末尾までを次のとおり改める。 「イ FVOは、本件各特許権につき、被控訴人グループ内部において特許実施許諾料を支払っている(甲74)。控訴人は、FVOによる本件各発明の実施を被控訴人に 目冒頭から末尾までを次のとおり改める。 「イ FVOは、本件各特許権につき、被控訴人グループ内部において特許実施許諾料を支払っている(甲74)。控訴人は、FVOによる本件各発明の実施を被控訴人による自己実施とみなした上で、これにより被控訴人が受けた独占の利益を算 定すべきと考える。しかし、他方で、被控訴人とFVOはあくまで別法人であり、本件各特許権につき特許実施許諾料の支払が発生している以上、少なくとも、これに相当する額は、本件各発明により被控訴人が受けるべき利益として認定されるべきものである。 (8) 受けるべき利益の額の算定 ア従業員から使用者が職務発明につき発明を受ける権利の譲渡を受け、当該発明につき出願をしたときは、より優位な技術を開発したために当該特許発明を実施しなかったとか、競合他社が当該特許発明の課題を克服した同等を超える水準の代替技術を実施している等の事情がない限り、使用者には、独占の利益がその額の多寡は別としても存在はするというべきである。 イ特許発明を使用者が自己実施している場合における独占の利益の額は、当該特許発明を実施して得られる利益から、使用者が有する法定実施権による利益を控除した利益、いわゆる超過利益がこれに当たると解されるところ、その算定は、自己実施による売上高のうち、当該特許発明を第三者に許諾していたとすれば当該第三者が得たであろう売上高に、仮想実施料率を乗じてされるべきである。 これを本件についてみると、まず、平成16年~平成24年の9年間におけるF - 7 -VO品(FVOで製造されたCBE)とFVOパーツ品を用いて製造された被控訴人グループのCBEとを併せた売上高は、●●●●●●●●●●●●●と推計される。次に、SOSパーツ及びCBEの市場は、被控訴人グ 品(FVOで製造されたCBE)とFVOパーツ品を用いて製造された被控訴人グループのCBEとを併せた売上高は、●●●●●●●●●●●●●と推計される。次に、SOSパーツ及びCBEの市場は、被控訴人グループ、AAK及びBungeLodersCroklaan社(以下「LC」という。)により3分されており、どの競合他社も本件乾式分別法の採用を望んだが本件各特許権による禁止 権の効力によりこれがかなわなかったのであるから、上記売上高のうち3分の2が、本件各発明を第三者に許諾していたとすれば当該第三者が得たであろう売上高の比率ということになる。そして、仮想実施料率は、「実施料率〔第5版〕」(社団法人発明協会、平成15年)における有機化学製品の平成4年度~平成10年度のイニシャルなしの実施料率5.5%を用いるのが相当である。 そうすると、上記9年間の売上高を特許権の存続期間である20年間に引き直した上で超過利益を算定すると、●(省略)●となる。したがって、超過利益は、●●●●●●●●を下回ることはない。 ウ上記イの算定方法によらずに、本件各発明によるコスト削減効果を独占の利益とみる方法、●●●●●●●●●●に●●●●●●●を販売していた事実をもっ てこれを●●●へのライセンスとみなし、その推計売上高●●●●●●●●●●●●に仮想実施料率を乗じて独占の利益とみる方法等、他の算定方法を採用したとしても、いずれにせよ独占の利益が●●●●●●●●を下回ることはない。 エなお、控訴人は、米国特許である本件特許B2に係る発明が本件発明Bと異なる発明であることは争わないが、これは、被控訴人の誤訳等の行為により無用の 発明特定事項が追加されたことを理由とするものであるから、本件発明Bが米国において特許されていないことを理由に、本件 なる発明であることは争わないが、これは、被控訴人の誤訳等の行為により無用の 発明特定事項が追加されたことを理由とするものであるから、本件発明Bが米国において特許されていないことを理由に、本件発明Bによる相当の対価の存在が否定されるべきではない。 オ以上によると、本件各発明により被控訴人が「受けるべき利益の額」(旧特許法35条4項)は、少なくとも●●●●●●●●である。」 (10) 原判決13頁3行目の「AarhusKarlshamn社(以下「AAK」 - 8 -という。)」を「AAK」と、4行目の「BungeLodersCroklaan社(以下「LC」という。)」を「LC」と、それぞれ改める。 (11) 原判決19頁18行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「(8) 受けるべき利益の算定アそもそも、使用者は、職務発明を法定通常実施権に基づいて実施し、売上げや 利益を上げることができるのであるから、使用者が職務発明を自ら実施しているということのみでは、独占の利益があるとはいえない。独占の利益があるというためには、当該法定通常実施権に基づく実施により得られる利益と比較して、これを超過する利益(超過利益)があることが立証されなければならない。 なお、本件発明Bは米国において特許されていないから(これは、控訴人が主張す るような誤訳等によるものではなく、審査段階での拒絶理由通知に対する訂正により生じたものである。乙85、86)、米国で本件設備を備えた本件工場を稼働させているFVOは本件発明Bに対応する特許発明を実施しておらず、ひいては被控訴人は本件発明Bを実施していないから、そもそも独占の利益の算定の基礎となる超過利益を観念することはできない。 そして、上記(1)~(7)に述べたところから 明を実施しておらず、ひいては被控訴人は本件発明Bを実施していないから、そもそも独占の利益の算定の基礎となる超過利益を観念することはできない。 そして、上記(1)~(7)に述べたところからすると、控訴人は、被控訴人が本件各発明を実施したことにより超過利益を得たことを何ら立証できていないというほかない。控訴人による超過利益の計算は、最終製品であるCBEの原料の一つであるSOSパーツの製造工程の一部に係る発明にすぎない本件発明A2による利益を、最終製品の売上高、利益又はシェア等から算定しようとするもので失当であるし、● ●●●への販売を同社へのライセンスとみなすことも失当である。 イ控訴人は、被控訴人グループ内で特許実施許諾料の支払があるとして、これに相当する額は、本件各発明により被控訴人が受けるべき利益として認定されるべき旨主張するが、被控訴人の子会社であるFVOによる本件発明A2の実施は、実質的に被控訴人の自己実施とみるべきである。また、特許実施許諾料名目での支払 は、被控訴人グループにおいて特許保有会社と特許実施会社とを分ける知財管理体 - 9 -制を採用したため、資産管理及び移転価格税制への対応として行っているにすぎず、第三者へのライセンスとは性質を異にするものであるから、独占の利益の根拠となるものではない。」 2 争点2(本件各発明について被控訴人が貢献した程度)について本争点に関する当事者の主張は、原判決19頁19行目冒頭から末尾までを削る ほかは、原判決の「事実及び理由」の第3の2に記載のとおりであるから、これを引用する。 3 争点3(本件各発明は、控訴人の単独発明か、又は控訴人と被控訴人の従業員との共同発明か)について本争点に関する当事者の主張は、原判決21頁15行目冒頭から末尾まで るから、これを引用する。 3 争点3(本件各発明は、控訴人の単独発明か、又は控訴人と被控訴人の従業員との共同発明か)について本争点に関する当事者の主張は、原判決21頁15行目冒頭から末尾までを削る ほかは、原判決の「事実及び理由」の第3の3に記載のとおりであるから、これを引用する。 4 争点4(本件各発明の特許を受ける権利の承継に係る相当の対価として、控訴人が被控訴人から支払を受けるべき額)について〔控訴人の主張〕 前記1で訂正の上引用する原判決の「事実及び理由」の第3の1〔原告(控訴人)の主張〕(8)のとおり、本件各発明により被控訴人が受けるべき利益の額は、少なくとも●●●●●●●●である。 そして、前記2で引用する原判決の〔原告(控訴人)の主張〕における事情に照らすと、本件各発明について被控訴人が貢献した程度は80%を超えることはなく、 また、前記3で引用する原判決の〔原告(控訴人)の主張〕のとおり、本件各発明は控訴人の単独発明であり、共同発明者間の貢献割合を考慮する必要はないから、本件各発明の特許を受ける権利(外国の特許を受ける権利を含む。)の承継に係る相当の対価は、●(省略)●となる。 控訴人は、被控訴人から、本件発明賞による貢献報奨金名目で45万円を受領し ているから、これを控除すると、相当の対価のうち1億0515万円が未払という - 10 -ことになる。 〔被控訴人の主張〕被控訴人が控訴人に対して45万円を支払った事実は認め、その余は争う。 第4 当裁判所の判断当裁判所も、控訴人の請求には理由がないものと判断する。その理由は、次の1の とおり訂正するほかは、原判決の「事実及び理由」の第4に記載のとおりであるから、これを引用する。 1 原判決の訂正(1) 原判決 人の請求には理由がないものと判断する。その理由は、次の1の とおり訂正するほかは、原判決の「事実及び理由」の第4に記載のとおりであるから、これを引用する。 1 原判決の訂正(1) 原判決25頁7行目冒頭から末尾までを「1 本件各発明によって被控訴人が「受けるべき利益の額」(旧特許法35条4項)(争点1)について」と改める。 (2) 原判決25頁26行目冒頭から26頁3行目末尾までを次のとおり改める。 「本件において、控訴人がその特許を受ける権利を譲渡した本件各発明のうち、本件発明Aについては、米国で特許を受け(本件特許A2)、被控訴人又は被控訴人の子会社である新不二製油が本件特許権A2を有し、被控訴人の子会社であるFVOが本件発明A2を実施しているから、本件発明A2により被控訴人が受けるべき 利益を検討するに当たっては、被控訴人グループの持株会社として経営管理事業を目的とする被控訴人が本件発明A2を自己実施している場合と同視して検討するのが相当である。 次に、本件発明Bについては、米国特許である本件特許B2に係る発明が本件発明Bとは異なるものであることにつき、当事者間に争いはないところ、FVOが本 件発明Bに対応する特許発明を実施しているとは認められない。そして、本件全証拠によっても、本件発明Bに対応する特許発明につき、被控訴人又は被控訴人グループに属する者がこれを実施している事実も、被控訴人又は新不二製油がこれを第三者に実施許諾している事実も認められない。そうすると、本件発明Bについては、そもそも、その実施を独占できることによる利益を認めることはできず、独占の利 益を認める前提を欠くというべきである。」 - 11 -(3) 原判決33頁17行目の「前記第2の2」を「訂正の上引用する原判決の 占できることによる利益を認めることはできず、独占の利 益を認める前提を欠くというべきである。」 - 11 -(3) 原判決33頁17行目の「前記第2の2」を「訂正の上引用する原判決の「事実及び理由」の第2の2」と訂正する。 (4) 原判決39頁1行目から2行目にかけての「(温度調整による結晶の安定化・均一化)」を削る。 (5) 原判決44頁15行目から16行目にかけての「この試算では原料コストは 一定の値に固定されている。」を「この試算は、原料コストを一定の値として固定し、FVOの収率を一律に●●●としてされたものである。」と改める。 (6) 原判決47頁4行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「eFVO品及びFVOパーツ品の生産量及び売上げ平成16年(2004年)~平成28年(2016年)のFVO品(CBE)及び FVOパーツ品(SOS)の生産量、売上げ(数量及び売上高)は次のとおりである(ただし、2004年は推計値である。)。(甲48、乙69)●(省略)●上記のうち、平成25年(2013年)、平成26年(2014年)及び平成28年(2016年)のFVOパーツ品の売上げには、●(省略)●、令和元年(201 9年)まで続いた。(乙70)」(7) 原判決48頁8行目の「うかがわれる。」の後に「なお、LMCレポートに記載されている世界CBE需要量と、前記ウ(イ)eとを対比すると、●(省略)●を占めているものと推認できる。」を加える。 (8) 原判決48頁24行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「もっとも、被控訴人グループに属するFOSは、FVOによる本件設備の稼働後である平成17年に新たな分別工場を新設、稼働させたが、本件設備の稼働に至る経緯、FVO品及びFVOパーツ品の品質や 「もっとも、被控訴人グループに属するFOSは、FVOによる本件設備の稼働後である平成17年に新たな分別工場を新設、稼働させたが、本件設備の稼働に至る経緯、FVO品及びFVOパーツ品の品質や採算性に疑問を抱いていた被控訴人は、FOSの上記分別工場の新設計画に当たり、本件乾式分別法の採用を検討しなかった。また、競合他社であったInternationalOils&Fat sLimited社(以下「IOF」という。)は、平成23年、シア脂からSO - 12 -Sパーツを分別できる工場をガーナに新設し、稼働させたが、同工場においては、溶剤分別法が用いられている(なお、IOFは、平成25年、被控訴人の関連会社となった。)。さらに、競合他社であるLCは、平成27年から、シア脂からSOSパーツを分別できる工場をガーナに新設し、稼働させたが、同工場においては、溶剤分別法が用いられている。(乙37、39、44、45、53、74~77、80) 本件各発明に関連する特許としては、本件各発明に係る各日本特許のほか(本件特許A1、B1)、本件発明Aに対応する発明に係る米国特許(本件特許A2)、中国特許(本件特許A3)、インドネシア特許、マレーシア特許があり、本件発明Bに対応しない又は対応するかは不明であるが関連する発明に係る特許として米国特許(本件特許B2)、欧州特許(本件特許B3。指定国はベルギー及びデンマーク)、 インドネシア特許及びマレーシア特許がある。後述するとおり、これらの特許に係る特許権は、いずれも特許料が納付されず、消滅したと認められるところ、その後、競合他社が本件各発明を実施したとか、本件乾式分別法を採用した施設若しくは工場を新設、稼働し、又はその準備をした等の事実を認めるに足りる証拠はない。また、上記各特許に たと認められるところ、その後、競合他社が本件各発明を実施したとか、本件乾式分別法を採用した施設若しくは工場を新設、稼働し、又はその準備をした等の事実を認めるに足りる証拠はない。また、上記各特許に係る特許権の効力が及ばない他の国において、競合他社及び被控 訴人が、本件各発明を実施したとか、本件乾式分別法を採用した施設若しくは工場を新設、稼働し、又はその準備をした等の事実を認めるに足りる証拠もない。」(9) 原判決49頁16行目に「弁論の全趣旨」とあるのを「乙79」と改め、同頁17行目冒頭から21行目末尾までを次のとおり改める。 「また、本件特許権A1、A3、B1~B3については、令和2年以降、特許料が 納付されず、順次消滅した。なお、本件発明Aに対応する発明に係る特許としてインドネシア特許及びマレーシア特許があり、本件発明Bに対応するかは不明であるが関連する発明に係る特許として同じくインドネシア特許及びマレーシア特許があるものの、これらの特許に係る特許権についても同様に特許料が納付されず消滅した。(弁論の全趣旨)」 (10) 原判決49頁22行目冒頭から54頁8行目末尾までを次のとおり改める。 - 13 -「(4) 本件発明A2の自己実施による独占の利益の有無及び額についての検討ア被控訴人においては、平成13年頃、CODEX5%ルールの認可や、東南アジアの経済発展等に伴い、国際的なCBEの需要増加が見込まれる一方、国内製造拠点の生産能力が限界に達しているとの現状認識のもと、米国に所在する子会社であるFVOにおいて、EE技術を利用してヒマワリ油からSOSパーツを製造する 設備を有する工場を新設し、被控訴人グループ内での安定供給を図る方策を立案していたが、当初、当該工場における油脂分別方法としては、溶 いて、EE技術を利用してヒマワリ油からSOSパーツを製造する 設備を有する工場を新設し、被控訴人グループ内での安定供給を図る方策を立案していたが、当初、当該工場における油脂分別方法としては、溶剤分別法を用いることを想定していた。しかるところ、控訴人を含むNTメンバーが主導となって、本件各発明を含む改良された乾式分別法によると、SOSパーツの品質は溶剤分別法によるものと比して大差なく、現にパイロットレベルの試作品においては同等以上とな っていること、分別収率や生産量等の生産効率も溶剤分別法との間にさほどの差はないこと、コスト面においては設備費及び比例・加工費ともに大幅な削減が可能であること等が報告された。そこで、被控訴人は、平成14年9月頃、本件乾式分別法を採用した(本件発明A2を実施する)本件設備を備えた本件工場を米国にてFVOに新設、稼働させる旨を意思決定し、平成15年に着工が始まり、平成16年4月 頃から稼働が始まったものである。(前記(3)イ(ア)~(カ))ところが、本件設備及び本件工場に係る設備投資については、●●●●●●●●●であったのに対し、●(省略)●を要することとなった。しかも、本件工場は、稼働当初、稼働能力や生産効率に課題を抱えていたほか、品質低下も指摘されており、その原因として●●●●●●●●●●●●ことが指摘された。このため、FVOは、 平成18年頃から、品質を確保するため、●(省略)●こととし(ただし、平成27年以降は、●●●●●●●●●●●●●●こととしたが、これが、品質の改良や生産効率の改善によるものであるかは不明である。)、また、更に●●●●●●●●を負担して本件増設工事を行うことを余儀なくされたものである。(前記(3)イ(キ)~(コ)、ウ(ア)c) イ FVOパーツ品の によるものであるかは不明である。)、また、更に●●●●●●●●を負担して本件増設工事を行うことを余儀なくされたものである。(前記(3)イ(キ)~(コ)、ウ(ア)c) イ FVOパーツ品の品質についてみると、●●●●●●●●●●●●●を予定 - 14 -していたところ、本件増設工事が完了した平成19年3月頃には同程度と報告されていることや(前記(3)イ(サ))、現実にFVOがFVOパーツ品を被控訴人グループ●(省略)●世界CBE市場における被控訴人のシェア獲得にも寄与していると認められること(前記(3)ウ(イ)e、エ)に照らすと、FVOパーツ品が、そもそも販売に耐えないほど低品質のものであったということはできない。他方で、FVOパー ツ品やFVO品が、溶剤分別法により製造されたSOSパーツやこれらを原料としたCBEとの比較において、品質面で上回っていることを認めるに足りる証拠もない。そうすると、本件発明A2を実施したことにより、被控訴人がその実施品であるFVOパーツ品やFVO品について、品質面で優位に立ったということはできない。 ウ次に、本件発明A2を実施したことによりFVOが得た利益についてみると、 そもそも、本件乾式分別法を採用したFVOの●(省略)●は、直ちに分別方法による利益の相違を示すものではないが、その算出に際してその時々の相場と過去の実績等が考慮され、変動費に相当する見込み額として位置付けられるものであり、分別方法の差異による採算性を考慮する際の参考にすることは妨げられないというべきである。 さらに進んで、FVO、FOJ及びFOSにおけるSOSパーツの加工費及び比例費の各試算を比較すると、●(省略)●るのに対し、●(省略)●、大きな差が発生しているのに、原料コストや収率等を考慮して試算さ らに進んで、FVO、FOJ及びFOSにおけるSOSパーツの加工費及び比例費の各試算を比較すると、●(省略)●るのに対し、●(省略)●、大きな差が発生しているのに、原料コストや収率等を考慮して試算された比例費では、●(省略)●相対化されている(前記(3)ウ(イ)b)。しかも、この数値は、約9年間にわたり実際には支払われていた●●●●●●●●●●●●を考慮していない上、FVOの現 実の収率よりも高い収率である●●●を収率として試算されたものであり、実数値によると更に差は小さくなるものである。 このことに加え、前記アのとおり、被控訴人内部では、当初、本件乾式分別法を採用することにより設備費においても大幅なコスト削減が見込まれるとの認識(溶剤分別法による場合の投資試算額●●●●●に対し、●●●●●の投資試算額と見込 まれていた。)の下で、本件施設及び本件工場の新設に踏み切ったものの、現実には - 15 -これに●●●●●●●●●を要し、加えて、本件設備につき、稼働能力、生産効率、品質低下等の課題が指摘されたことから、更に●●●●●●●●●を要する本件増設工事まで余儀なくされたこと等も併せて考慮すると、FVOが本件乾式分別法を採用したことによる効果として、当初予定していた溶剤分別法による以上に利益率を向上させることができたとか、現実に利益を上げることができたとは認められな い。 エさらに、本件特許権A2を含む特許権に基づく禁止権の効果により他社を排除することができたかについてみると、競合他社であったIOFは平成23年に、LCは平成27年に、それぞれシア脂からSOSパーツを分別できる工場をガーナに新設し、稼働させたが、いずれの工場においても溶剤分別法が用いられており、本 件各発明に関連する特許による禁止の効力が及ば 平成27年に、それぞれシア脂からSOSパーツを分別できる工場をガーナに新設し、稼働させたが、いずれの工場においても溶剤分別法が用いられており、本 件各発明に関連する特許による禁止の効力が及ばない地域においても、競合他社は、いまだ溶剤分別法を採用している上、本件各特許権がいずれも消滅した現在においても、被控訴人又は競合他社が、本件乾式分別法を採用した施設若しくは工場を新設、稼働し、又はその準備をした等の事実は認められないのであって(前記(3)オ)、控訴人が主張するように、溶剤分別法が危険を伴い、時に重大な事故を引き起こし 得るものであるとしても、被控訴人又は新不二製油が、本件特許権A2を含む特許権に基づく禁止権の効果により、競合他社による本件乾式分別法の採用を排除し、これにより使用者として有する通常実施権に基づく実施によって得られる利益を超えた利益を得たと認めることは困難である。 なお、本件施設の稼働後、CBE市場における被控訴人のシェアが増加したのは、 被控訴人が、規制緩和や経済動向をみて国際的なCBEの需要増加を見込み、FVOを拠点に生産施設を新設し、これが現実に稼働したことに伴う結果とみられ、本件乾式分別法を採用したことにより特にシェアを拡大できたことをうかがわせる事情はないというべきである。 オ以上を総合すると、被控訴人が、本件特許権A2につき有する通常実施権に 基づいて本件発明A2を実施して得られる利益の額を超えて、特許による独占的、 - 16 -排他的な実施により超過して利益を得たと認めることはできない。したがって、被控訴人につき、本件発明A2による独占の利益は認められない。 (5) 小括以上に検討したところによると、本件各発明により被控訴人に「受けるべき利益」(旧特許法35条4項)があ い。したがって、被控訴人につき、本件発明A2による独占の利益は認められない。 (5) 小括以上に検討したところによると、本件各発明により被控訴人に「受けるべき利益」(旧特許法35条4項)があったと認めることはできない。」 (11) 原判決54頁9行目冒頭の「キ」を「(6)」と改める。 (12) 原判決54頁25行目の「本件各特許権の」から26行目の「法人格を異にする」までを「グループ会社内部で特許権の帰属主体と実施主体を別とする特許管理戦略を採用した場合に実務上要請される会計処理以上の意味はうかがわれない」と改める。 (13) 原判決55頁1行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「控訴人は、FVOが●●●●●●●●●●に●●●●●●●を販売した事実をもって、これを●●●へのライセンスとみなすとか、独占の利益を認めるべき根拠とすべき旨主張するが、特許発明の実施品を譲渡することをライセンスとみなすことは困難である●(省略)●ことであるし、そもそも●●●が、本件発明A2の実施 品であることに価値を見出して●●●●●●●を購入したとみるべき事情も認められないから、控訴人の主張は採用することができない。」 2 結論以上によると、その余の争点を検討するまでもなく、控訴人の請求は理由がない。 そうすると、控訴人の請求を棄却した原判決は相当であって、本件控訴には理由 がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。 - 17 -知的財産高等裁判所第1部 裁判長裁判官本多知成 裁判官遠山 裁判長 裁判官 本多知成 裁判官 遠山敦士 裁判官 天野研司

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