平成14(ワ)130 大分セクシュアル・ハラスメント

裁判年月日・裁判所
平成14年11月14日 大分地方裁判所
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判決文本文7,792 文字)

平成14年11月14日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成14年(ワ)第130号損害賠償請求事件判決原告 A同訴訟代理人弁護士柴田圭一被告 B同訴訟代理人弁護士瀬戸久夫清水立茂 主文 1 被告は原告に対し,金220万円及びこれに対する平成14年2月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを3分し,その1を被告の,その余を原告の負担とする。 4 この判決1項は,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 原告の請求被告は原告に対し,金660万円及びこれに対する平成14年2月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,被告が,その経営する会社のC事務所に勤務していた原告に対し,強制猥褻行為等のセクハラ行為を行い,これに対し厳しい態度を取り始めた原告を違法に解雇したと主張して,原告が被告に対し,不法行為に基づき,損害賠償金及びこれに対する最終不法行為日から支払済みまで民事法定利率による遅延損害金の支払を求めた事案である。 1 前提事実(1) 原告(昭和○年○月○日生)は,平成11年10月,Cである被告が代表取締役のC業務を目的とする有限会社Dに,経理兼事務員として雇用され,E市内の同社のC事務所において稼働していたが,平成14年2月14日,被告から口頭で解雇され(以下「本件解雇」という。),その後,「就業規則26条2項及 する有限会社Dに,経理兼事務員として雇用され,E市内の同社のC事務所において稼働していたが,平成14年2月14日,被告から口頭で解雇され(以下「本件解雇」という。),その後,「就業規則26条2項及び3項により,就業に適さないと認められる。」との解雇理由により,同月15日付けで解雇し,解雇予告手当12万円を支給する旨の同年3月13日付けの同社の解雇通知書が原告に郵送された(争いのない事実,乙1ないし3)。 (2) 同社の就業規則には,次のような規定が存する(乙1)。 「(通常解雇)第26条次の各号に該当するときは解雇することがある。 1 身体の虚弱,障害等により業務に耐えられないと認めたとき 2 能率又は勤務状態が著しく不良で,就業に適さないと認めたとき 3 その他業務上の都合によりやむ得ない事由があるとき」 2 争点(1) 原告主張のセクハラ行為の存否(原告の主張)原告が被告に雇用されている間,被告は,その勤務時間中に事務所内において,また,勤務時間外において,原告に対し,次のような強制猥褻行為等のセクハラ行為を行った。 ア勤務時間中等に,「ホテルに行こう。」,「僕と不倫してみないか。」等と言葉でセクハラ行為を行った。 イ勤務時間中に,両手で両胸を触るセクハラ行為を行った。 ウ勤務時間外のスナック等で,抱き寄せたり,胸・足・お尻を触ったり, キスをしようとしたり,手を舐めたりするセクハラ行為を行った。 エ勤務時間外のスナック等で,「触らせろ。」,「ホテルに行こう。」,「付き合ってくれ。」等と言葉でセクハラ行為を行った。 オ出張途中の自動車の中で,「ホテルに行こう。」,「付き合ってくれ。」等と言葉でセクハラ行為を行うとともに,股間に手を入れたり,手の甲を舐めたりする強制猥褻行為を行った。 カ勤務時間 を行った。 オ出張途中の自動車の中で,「ホテルに行こう。」,「付き合ってくれ。」等と言葉でセクハラ行為を行うとともに,股間に手を入れたり,手の甲を舐めたりする強制猥褻行為を行った。 カ勤務時間中に,後ろから両手で両胸を触ったり,スカートの中の股間に手を入れたり,首筋などにキスをしたり,舐めたりする強制猥褻行為を行った。 キ勤務時間中に,床に押し倒し,両足で原告の両大腿辺りを押さえつけて身動きできないようにした上で,体中を触りまくるという強制猥褻行為を行った。 ク勤務時間中に,無理矢理応接室に引きずり込んで,ソファーに押し倒して洋服やスカートの中に手を入れ,胸や股間を直接触ったりする強制猥褻行為を行った。 (被告の主張)被告は,スナックでのカラオケでデュエットをした際,原告の肩を抱いたことはあったが,原告主張のセクハラ行為をしたことはない。 原告は解雇された後に始めてセクハラを受けたなどと主張するようになったものであり,本訴は本件解雇に対する腹いせではないかと思われる。 (2) 本件解雇の違法性(原告の主張)本件解雇は,平成13年11月9日の前記(1)(原告の主張)ク記載の強制猥褻行為以降,原告が被告に対して厳しい態度で臨んだことに対し,その態度が気に入らないことを真の理由としてなされたものであるから,違法な解雇である。 (被告の主張)原告には,次のような就業規則26条2項及び3項該当の解雇事由が存したので,本件解雇に違法性はない。 ア被告は,F市内在住の原告に対し,自宅から直接G市内の顧客のところに資料収集に行くことを認めたところ,原告は,午後3時過ぎに事務所に出勤するという状況が生じた。 イ原告は,事務所内で横柄な態度を採るようになり,被告の指示にも従おうとしなかった。そして,自己の担当の仕事以外は頼まれても たところ,原告は,午後3時過ぎに事務所に出勤するという状況が生じた。 イ原告は,事務所内で横柄な態度を採るようになり,被告の指示にも従おうとしなかった。そして,自己の担当の仕事以外は頼まれてもすることはせず,資料収集先として割り当てられたE市内の顧客のところにも回らなかった。 ウ顧客から,原告が肘をついて飴を食べながら対応する等,原告の言葉遣いや態度について苦情が寄せられることがあった。 エ原告は,被告が事務所に居ないときには,仕事をせず,私的な外出をしたり,求人誌を広げて読んだり,被告の悪口を言うなどしていた。 オ被告は,原告の態度について,当初は顧客先からの苦情を告げるなどして注意していたが,途中から諦め,状況が改善されなければ辞めてもらうしかないと考え,平成13年11月ころから,新たに事務員を採用したが,原告の態度は改善されず,かえって,他の事務員から原告の勤務態度について指摘されるなどし,他の事務員に対する悪影響も懸念されるようになった。 カ平成13年初めころ,原告からF市内の飲み屋でアルバイトをしたいと相談を受け,被告は,原告がアルバイトを始めた場合は,退職してもらう旨告げていたにもかかわらず,平成14年2月にF市役所から原告の給与以外の収入について問い合わせがあったことにより,原告が被告に隠れて F市内のラウンジでアルバイトをしていたことが判明した。 (3) 損害額(原告の主張)ア慰謝料 600万円原告は,前記(1)(原告の主張)記載の強制猥褻行為等のセクハラ行為を受けることにより,多大の精神的・肉体的な苦痛を被るとともに,違法な本件解雇を受けたことにより,多大の精神的苦痛を被ったが,これらを慰謝するには金600万円の慰謝料を要する。 イ弁護士費用 60万円 の精神的・肉体的な苦痛を被るとともに,違法な本件解雇を受けたことにより,多大の精神的苦痛を被ったが,これらを慰謝するには金600万円の慰謝料を要する。 イ弁護士費用 60万円第3 争点に対する判断 1 原告主張のセクハラ行為の存否(争点(1))について前記第2の1認定事実,証拠(甲1,3ないし13,原告,被告)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) 原告は,E公共職業安定所の紹介で,平成11年10月から被告経営の有限会社Dに勤め始めたが,入社後1か月経過したころから,勤務時間中に,被告から,「ホテルに行こう。」とか「僕と不倫しよう。」と言われ出し,そのうち,被告は,事務所で仕事をしている原告の胸を軽く触るようになってきた。 (2) 原告は,入社してから1か月半くらいしてから,平成13年11月8日まで,被告より,勤務時間後に飲食に誘われるようになり,平成12年10月ころまでは多いときに週に三,四回の頻度で,被告と飲食していた。その際,原告は,セクハラ防止目的で,友人を伴って被告と飲食していたが,それでも,被告は,居酒屋やスナックで,しばしば,原告に対し,「触らせろ。」,「ホテルに行こう。」とか「付き合ってくれ。」と言ったり,原告の胸・尻・足を触ったり,時には肩・手を舐めたり,抱きついたり,キスをしようとした。 (3) また,原告は,被告を助手席に乗せて,被告の自動車を運転し,G市内の顧客先に資料を受け取りに行くことがあったが,平成12年3月頃から,その道中で,被告が,「ちょっとくらい,いいじゃないか。」と言ったりして,ハンドルを握っている原告の左手を無理矢理取ってキスをしたり舐めたりし,また,胸を触ったり,股間に手を入れたりした。このようなことは五,六回なされたが,被告は,G市からの帰りに 。」と言ったりして,ハンドルを握っている原告の左手を無理矢理取ってキスをしたり舐めたりし,また,胸を触ったり,股間に手を入れたりした。このようなことは五,六回なされたが,被告は,G市からの帰りに,「ホテルに行こうや。」とか「そこを右に曲がったらホテルがあるからそこに入ろう。」とか言ったこともあった。 (4) そして,被告のこのような行動は,平成13年8月ころからひどくなり,勤務時間中に,事務机で仕事中の原告の後ろから「何しよんのか。」と言いながら,原告の椅子の背もたれと原告との間に無理矢理座り込んできて,原告に抱きついて,両胸を触ったり,スカートの中の股間に手を入れたり,首筋にキスをしたり舐めたりしたことが約10回あった。そのうち,ひどいときには,更に,原告を床に押し倒して,自分の両足で原告の両太股辺りを押さえつけて身動きできないようにした上で,原告の胸や股間等の身体を触ったこともあった。 また,被告は,勤務時間中に,原告の腕を引っ張って事務所内の応接室に連れていって,ソファーに押し倒し,原告の服の中に手を入れて,胸を直接触ろうとしたり,口許にキスをしようとしたり,股間を触ろうとしたこともあり,このようなことは五,六回以上あった。 このような被告の行動は同年11月9日まで続いたが,その間,原告が左足の親指の爪を痛めたり,右足の大股に痣を作ったこともあった。 なお,以上の被告の行為は,事務所内に他の事務員等が居るときにもなされていて,被告は,冗談めかしてこれらの行為を始めていた。これに対し,原告は,断固とした拒否態度を採ることなく,ただ,声を上げて逃げ回るに止まっていた。そして,被告は,このように声を上げて逃げ回る原告の反応を楽しんでいた節がある。 (5) 原告は,このように被告から強制猥褻行為を含むセクハラ行為を受けたことで悩み,入 上げて逃げ回るに止まっていた。そして,被告は,このように声を上げて逃げ回る原告の反応を楽しんでいた節がある。 (5) 原告は,このように被告から強制猥褻行為を含むセクハラ行為を受けたことで悩み,入社後1年経過したころからは退職したいと思い始めたが,それにもかかわらず,原告が,被告からの飲食の誘いを断らずにこれを受け続けたり,退職せず,出勤し続け,被告のセクハラ行為に対し断固とした拒否態度を採らなかったのは,世の中が不景気で適当な再就職先が見つかりにくいためであった。 しかしながら,原告は,平成13年11月9日以後,セクハラ行為を受けないために,表情を無表情にして,被告との雑談に加わらず,仕事以外の会話はしないなど,被告に対し厳しい態度を取り始めた。 そのため,被告の原告に対するセクハラ行為は止んだものの,被告も,原告を無視したり,時には大きな溜め息をついたり,原告の事務机の上に書類を投げてよこすようになって,事務所内の雰囲気は悪化した。 このような状況の下で,原告は,時に,自分に割り当てられた担当事務以外の仕事を拒否するなど,被告に対し,反抗的な態度を示すことがあり,被告は,原告のこのような態度が,やる気のない,協調性を欠く,事務所運営に支障を来す態度であると感じ,平成14年2月14日,原告に対し,「明日から来なくてもよい。給料は3月分まで振り込む。」と言って,本件解雇を口頭で言い渡した。 (6) 原告は,被告からセクハラ行為を受けていた間,他の事務員や友人にこのことを相談していたが,平成13年11月ころには,E地方法務局の女性の人権ホットラインに電話をして,被告のセクハラ行為について相談し,警察に行った方がよいとのアドバイスを受けていた。しかしながら,原告は,まだ勤務中だったことから,そのままにしていたところ,本件解雇を受けたので, インに電話をして,被告のセクハラ行為について相談し,警察に行った方がよいとのアドバイスを受けていた。しかしながら,原告は,まだ勤務中だったことから,そのままにしていたところ,本件解雇を受けたので,その翌日である平成14年2月15日,警察に行って,被告の強制猥褻行為について相談した。 また,原告は,同日,E労働局雇用均等室に行って,被告のセクハラ行為について相談をしている。 以上の事実が認められ,被告の供述並びに乙第3ないし第5及び第11号証の各陳述書中上記認定に反する部分は,前掲各証拠と対比して,また,被告の供述の他の部分に照らして信用できず,乙第6ないし第10号証の各陳述書は上記認定を覆すに足りず,他に上記認定を覆すに足りる証拠はない。 なお,被告は,原告が解雇された後に始めてセクハラを受けたなどと主張するようになったものであり,本訴は本件解雇に対する腹いせではないか,と主張するとともに,原告が主張するようなセクハラ行為によって苦しんでいたとすれば,出勤し続けたり,被告と頻繁に飲食することは普通考えられない等と主張して,原告の供述及び原告提出の陳述書(甲1,3ないし13)の信用性を争うが,原告の供述及び上記各陳述書の内容は,具体的かつ自然なものであり,原告は本件解雇前から既に被告のセクハラ行為について公的機関に相談している(そうでなければ,本件解雇の翌日に,直ちに警察及び雇用均等室のような公的機関へ相談に行けるとは考えられない。)し,昨今の雇用状況に照らすと,原告が再就職を懸念して被告のセクハラ行為に耐え,被告からの飲食の誘いを受け続けたり,出勤し続けたことは十分納得でき,そこに不自然さは感じられないから,原告の供述及び原告提出の陳述書(甲1,3ないし13)は十分信用できるものである。 そうすると,上記認定事実によれば,原告は たり,出勤し続けたことは十分納得でき,そこに不自然さは感じられないから,原告の供述及び原告提出の陳述書(甲1,3ないし13)は十分信用できるものである。 そうすると,上記認定事実によれば,原告は,被告に雇用されている間,被告から,原告主張の強制猥褻行為等のセクハラ行為を受けたことが認められ,被告は原告に対し,同セクハラ行為によって生じた原告の精神的苦痛に対し,不法行為上の損害賠償責任を負うことになる。 2 本件解雇の違法性(争点(2))について前記1認定事実によれば,本件解雇は,原告が被告のセクハラ行為を受けないために,被告に対し厳しい態度を取り始めたことから,被告もこれに反応して,事務所内の雰囲気が悪化し,その中で,原告が仕事に関しても被告に対し反抗的な態度を示したためになされたものと認められる。 これに対し,被告の供述並びに乙第3,第4及び第11号証の各陳述書には,第2の2(2)記載の被告の主張に沿う部分があるが,同部分は,これに反する原告の供述及び甲第6号証(原告の陳述書)と対比して,また,前記1認定事実及び被告の供述の他の部分に照らして,更に,上記被告の主張に沿う被告の供述部分は解雇理由としては曖昧であって,結局,被告の供述全体を吟味すれば,平成13年11月9日以後の原告の態度を解雇の理由にする趣旨と解されるので,いずれも信用できず,他に,上記被告の主張を認めるに足りる証拠はない。 そうすると,本件解雇は,原告が被告に対し厳しい態度を取り始めて,事務所内の雰囲気が悪化し,原告が仕事に関しても被告に対し反抗的な態度を示したためになされたものであるが,原告が被告に対し厳しい態度を採ったのは,被告が原告に対しセクハラ行為を行ったため,やむを得ず採った態度であるから,原告に帰責事由があるとは言えず,むしろ,このような結果は被告自 されたものであるが,原告が被告に対し厳しい態度を採ったのは,被告が原告に対しセクハラ行為を行ったため,やむを得ず採った態度であるから,原告に帰責事由があるとは言えず,むしろ,このような結果は被告自らが招いたものと言えるし,原告が仕事に関して反抗的な態度を示した点についても,多少行き過ぎの感が否めないが,それまでの被告のセクハラ行為の態様に鑑みれば,原告は被告に対し拒否的な感情を持たざるを得なくなったものと推認でき,そうであるなら,原告がこのような態度に出たことは仕方のない面があり,このことが就業規則26条2項及び3項該当の解雇事由に該当するとは到底言えず,これまた,被告が自ら招いたものと言わざるを得ない。 よって,本件解雇に解雇事由はなく,前記1認定事実をも考慮するならば,本件解雇は不法行為上の違法性を帯びた行為と認められ,被告は原告に対し,本件解雇行為によって生じた原告の精神的苦痛に対し,不法行為上の損害賠償責任を負うことになる。 3 損害額(争点(3))について(1) 慰謝料 200万円前記1認定事実,殊に,被告の強制猥褻行為を含むセクハラ行為の態様,同行為が長期間にわたって繰り返しなされたこと,本件解雇に至る経過,その他本件に顕れた諸事情を考慮すれば,被告の強制猥褻行為を含むセクハラ行為及び違法な本件解雇によって生じた原告の精神的苦痛を慰謝するには金200万円が相当である。 (2) 弁護士費用 20万円認容額その他本件訴訟の経過を考慮すると,相当因果関係のある弁護士費用は20万円が相当と認められる。 第4 結論よって,原告の本訴請求は,損害賠償金220万円及びこれに対する最終不法行為日である平成14年2月14日から支払済みまで民事法定利率年5分の割合による遅延損害金の支払を求 認められる。 第4 結論よって,原告の本訴請求は,損害賠償金220万円及びこれに対する最終不法行為日である平成14年2月14日から支払済みまで民事法定利率年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条,64条を,仮執行宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。 (口頭弁論終結日平成14年9月5日)大分地方裁判所民事第2部裁判官一志泰滋・

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