昭和47(ネ)458等 大日本印刷採用内定取消

裁判年月日・裁判所
昭和51年10月4日 大阪高等裁判所
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判決文本文11,101 文字)

主文 一本件控訴を棄却する。二附帯控訴に基き、原判決主文第三、四項を次のとおり変更する。(一) 控訴人(附帯被控訴人)は、被控訴人(附帯控訴人)に対し、金五三六万〇九五二円及びうち金四八六万〇九五二円に対する昭和五一年五月一二日から支払いずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。(二) 控訴人(附帯被控訴人)は、被控訴人(附帯控訴人)に対し、昭和五〇年六月一日から本判決確定に至るまで毎月二八日かぎり一か月金七万一八〇〇円の割合による金員を支払え。(三) 被控訴人(附帯控訴人)のその余の請求を棄却する。三訴訟費用は、第一、二審を通じてこれを八分し、その一を被控訴人(附帯控訴人)の、その余を控訴人(附帯控訴人)の、各負担とする。四この判決は、右二の(一)、(二)にかぎり、仮に執行することができる。五控訴人(附帯被控訴人)において金三〇〇万円の担保を供するときは右二の(一)の仮執行を免れることができる。事実 第一双方の求めた裁判一控訴事件について(一) 控訴人(附帯被控訴人。以下「控訴人」という。)は、「原判決中主文第三項を除くその余の部分を取り消す。被控訴人(附帯控訴人。以下「被控訴人」という。)の請求は、いずれもこれを棄却する。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求めた。(二) 被控訴人は、「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決を求めた。二附帯控訴事件について(一) 被控訴人は、当審において請求を拡張して、「原判決中被控訴人敗訴の部分を取り消す。控訴人は、被控訴人に対し、金六三九万四四五二円及びうち金五八九万四四五二円に対する昭和五一年五月一二日から支払いずみに至るまで年五分の割合による金員並びに昭和五〇年五月二八日から 分を取り消す。控訴人は、被控訴人に対し、金六三九万四四五二円及びうち金五八九万四四五二円に対する昭和五一年五月一二日から支払いずみに至るまで年五分の割合による金員並びに昭和五〇年五月二八日から毎月二八日かぎり一か月金七万一八〇〇円を支払え。 対し、金六三九万四四五二円及びうち金五八九万四四五二円に対する昭和五一年五月一二日から支払いずみに至るまで年五分の割合による金員並びに昭和五〇年五月二八日から 分を取り消す。控訴人は、被控訴人に対し、金六三九万四四五二円及びうち金五八九万四四五二円に対する昭和五一年五月一二日から支払いずみに至るまで年五分の割合による金員並びに昭和五〇年五月二八日から毎月二八日かぎり一か月金七万一八〇〇円を支払え。」との判決及び仮執行の宣言を求めた。(二) 控訴人は、「本件附帯控訴及び当審において拡張された被控訴人の請求は、いずれもこれを棄却する。 訴訟費用は被控訴人の負担とする。」との判決及び仮執行免脱の宣言を求めた。第二双方の主張事実及び証拠関係当事者双方の主張事実及び証拠の関係は、次のとおり変更・附加するほか、原判決事実欄記載のとおりであるから、これを引用する。一被控訴人の主張関係(一) 原判決八枚目裏八行目から九枚目表六行目までをつぎのとおりに変更する。「(一) 被控訴人と同じ時期に大学を卒業し控訴人会社に就職した昭和四四年度大学卒新入社員は、同年三月三一日に入社式を行い、同年四月一日以降控訴人会社において就労し、いずれも、同月より昭和五〇年四月までの間に、給与として毎月二八日かぎり別表(一)記載のとおりの金員(その合計は四四一万三四〇〇円)の、一時金として別表(二)記載のとおりの金員(その合計は一九二万六五五二円)の各支払いを受け、昭和五〇年五月以降は給与として毎月二八日かぎり金一〇万五三〇〇円の支払いを受けている。(二) 被控訴人も、採用内定により控訴人との間に前記のような労働契約が成立し、控訴人の採用内定取消(解雇)は無効であるから、昭和四四年四月一日から就労しうる地位にあるにもかかわらず、控訴人は、被控訴人の労務の提供の受領を拒絶している。(三) したがつて、被控訴人は、同日以降、他の大学卒新入社員と同様に給与及び一時金として、別表(一)及び(二)記載の総合計金六三三 かかわらず、控訴人は、被控訴人の労務の提供の受領を拒絶している。(三) したがつて、被控訴人は、同日以降、他の大学卒新入社員と同様に給与及び一時金として、別表(一)及び(二)記載の総合計金六三三万九九五二円及び昭和五〇年五月以降毎月二八日かぎり一か月金一〇万五三〇〇円の支払いを受ける権利を有するものといわなければならない。 社員と同様に給与及び一時金として、別表(一)及び(二)記載の総合計金六三三 かかわらず、控訴人は、被控訴人の労務の提供の受領を拒絶している。(三) したがつて、被控訴人は、同日以降、他の大学卒新入社員と同様に給与及び一時金として、別表(一)及び(二)記載の総合計金六三三万九九五二円及び昭和五〇年五月以降毎月二八日かぎり一か月金一〇万五三〇〇円の支払いを受ける権利を有するものといわなければならない。」(二) 原判決九枚目裏五行目から九行目までをつぎのとおりに変更する。「七弁護士費用被控訴人は、法律の専門家でないため独力で本件訴訟を遂行することができないので、昭和四四年五月一七日本件訴訟の遂行を弁護士である被控訴代理人に委任し、着手金及び費用として金三万円を支払い、かつ勝訴の場合判決認容額の二割以内の報酬を支払うことを約し、同額の損害を被つた。この損害は、控訴人が違法に採用内定を取り消したことに基因する損害であるから、被控訴人は、控訴人に対し、右のうち金五〇万円の支払いを求める。八結語したがつて、被控訴人は、控訴人に対し、被控訴人が控訴人の従業員たる地位を有することの確認を求め、さらに、右五ないし七の金員の合計金八八三万九九五二円(ただし、そのうち昭和四四年四月分から昭和五〇年五月分までの給与については、原判決で一か月三万三五〇〇円の割合で認容されているので、附帯控訴請求では右認容額を差し引いた額を請求する。)及びそのうち弁護士費用五〇万円(及び右差引額)を控除した額に対する弁済期の後である昭和五一年五月一二日から支払いずみに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金並びに同月二八日以降毎月二八日かぎり金一〇万五三〇〇円(附帯控訴請求では原判決で認容されている一か月金三万三五〇〇円を差し引いた額を請求する。)の給与の支払いを求める。」二控訴人の主張関係(一) 原判決一二枚目表二行目冒頭か り金一〇万五三〇〇円(附帯控訴請求では原判決で認容されている一か月金三万三五〇〇円を差し引いた額を請求する。)の給与の支払いを求める。」二控訴人の主張関係(一) 原判決一二枚目表二行目冒頭から四行目「ものであるが」までをつぎのとおりに変更する。「控訴人会社において被控訴人の採用内定を取り消した経過は、つぎのとおりである。すなわち、面接試験の後、採用内定の決定権を有するA専務から被控訴人が「グルーミー」な印象を与えることを理由に強い難色を示されたが、B課長から、被控訴人の身上調書に体操部のマネージヤーをしていた旨の記載があるから必ずしもそのような性格とも断定できないのではないかとの意見が出たので、A専務も、もし右の印象を打ち消すだけの事実があるなら判断を改めても良いとして、一応内定者に入れた。 、つぎのとおりである。すなわち、面接試験の後、採用内定の決定権を有するA専務から被控訴人が「グルーミー」な印象を与えることを理由に強い難色を示されたが、B課長から、被控訴人の身上調書に体操部のマネージヤーをしていた旨の記載があるから必ずしもそのような性格とも断定できないのではないかとの意見が出たので、A専務も、もし右の印象を打ち消すだけの事実があるなら判断を改めても良いとして、一応内定者に入れた。その後B課長が調査したところによれば、被控訴人が体操部マネージヤーとして実質的な活動をしていたことは認められず、逆に被控訴人の人柄について学友間で「表裏のある人」等芳しくない評価を受けている事実も報告されて来ており、さらには外部から匿名で被控訴人が会社にとつて好ましくない人物である旨を告げる電話もあるという状況で、結局、当初のA専務の判断をくつがえすに足る事業を発見できず、かえつて被控訴人の信頼性に対する疑惑を深める結果となつたため、これが前記誓約書(乙第二号証)記載の五項目の内定取消事由のいずれかに当るとして、採用内定を取り消すことになつたのである。そして、」(二) 原判決一二枚目表八行目から一〇行目までをつぎのとおり変更する。「五同五項の(一)の事実は認める。同(二)及び(三)の事実は争う。」(三) 原判決一二枚目表一一行目の後に、つぎの項を加入する。「(抗弁)かりに本件採用内定により、控訴人会社と被控訴人との間に、将来の一定時期 )の事実は認める。同(二)及び(三)の事実は争う。」(三) 原判決一二枚目表一一行目の後に、つぎの項を加入する。「(抗弁)かりに本件採用内定により、控訴人会社と被控訴人との間に、将来の一定時期に互いに何ら特別の意思表示を要することなく試傭労働契約を成立させるとの採用内定契約あるいは被控訴人主張のような労働契約が成立していたとしても、控訴人会社が昭和四四年二月一二日被控訴人に対してした意思表示は右の契約を解約する旨の意思表示を含むことは当然であるから、いずれにしても控訴人会社と被控訴人との間の右の契約関係は、右意思表示到達の時点を以て消滅したものである。採用内定段階においては、試採用におけるよりもさらに広範な解約権が留保されていると解すべきであり、また、受注産業である印刷業を営業目的とする控訴人会社において、その採用する大学卒業者に営業マンとしての適格性を求めることは当然であるところ、営業マンとしての適格性の有無の判断は本来営利会社である控訴人会社の人事に関する裁量権に委すべきものであつて、前記のとおり採用内定取消の理由となつた「グルーミー」な印象は、営業マンとして最も忌むべき性格を表わし、とりもなおさず営業に対する適格性の欠如を示すものであることは明白であるから、これを理由とする採用内定取消は、きわめて合理的である。 業者に営業マンとしての適格性を求めることは当然であるところ、営業マンとしての適格性の有無の判断は本来営利会社である控訴人会社の人事に関する裁量権に委すべきものであつて、前記のとおり採用内定取消の理由となつた「グルーミー」な印象は、営業マンとして最も忌むべき性格を表わし、とりもなおさず営業に対する適格性の欠如を示すものであることは明白であるから、これを理由とする採用内定取消は、きわめて合理的である。」三証拠関係(省略) 理由 一当裁判所は、本訴請求につき、被控訴人が控訴人会社の従業員たる地位を有することの確認を求め後記の額の金員支払いを求める限度で正当とし、その余の請求を失当とするものであり、その理由とする認定・判断は、つぎの(一)ないし(二)のとおり加削・変更をするほか、原判決の理由欄に記載されたところと同一(ただし、原判決一五枚目表二行目に「送付された来た」とあるのを「送付されて来た 理由とする認定・判断は、つぎの(一)ないし(二)のとおり加削・変更をするほか、原判決の理由欄に記載されたところと同一(ただし、原判決一五枚目表二行目に「送付された来た」とあるのを「送付されて来た」と訂正する。)であるから、右加削等を加えたうえ、右記載をここに引用する。(一) 原判決一三枚目裏六、七行目の「同第一四号証、」の次に「同第二六号証の一、二」と加入し、同一一行目の「原告本人尋問の結果」を「当審証人Cの証言、被控訴人本人尋問の結果(原審及び当審)」と変更する。(二) 原判決一四枚目表末行の「推せんを求める各企業にもこのことを通知し、」を削り、同裏四行目の「である」の次に「が、控訴人会社においても、昭和四四年度の募集に際し、少なくとも、滋賀大学において右の先決優先の指導が行われていたことは知つていた」と加える。(三) 原判決一四枚目裏一二行目の「応募していた」の次から一三行目の「辞退し」までを「が試験日が控訴人会社と重複したため受験できなかつた訴外ダイキン工業株式会社に対しても、大学を通じて応募を辞退する旨通知し」と、同一五枚目裏四行目の「取消して」を「しないで」と、それぞれ変更する。(四) 原判決一五枚目裏一一行目の「の証言」を「及び当審証人Bの各証言」と変更する。(五) 原判決一六枚目裏七行目の「採用内定を」の次に「何ら留保等の附されていない」と加え、同八行目の「取扱う」を「考えた」と変更する。 訴人会社と重複したため受験できなかつた訴外ダイキン工業株式会社に対しても、大学を通じて応募を辞退する旨通知し」と、同一五枚目裏四行目の「取消して」を「しないで」と、それぞれ変更する。(四) 原判決一五枚目裏一一行目の「の証言」を「及び当審証人Bの各証言」と変更する。(五) 原判決一六枚目裏七行目の「採用内定を」の次に「何ら留保等の附されていない」と加え、同八行目の「取扱う」を「考えた」と変更する。(六) 原判決一七枚目表六行目の「認められること、」を「認められることからも推認できる。」と変更する。(七) 原判決一七枚目表一二行目から同裏七行目までを削り、同九行目の「しかしながら」を「(一)つぎに」と変更し、同一八枚目表一二行目の「更に」の前に「(二)」を加える。(八) 原判決一九枚目表七行目から、同二〇枚目表二行目まで から同裏七行目までを削り、同九行目の「しかしながら」を「(一)つぎに」と変更し、同一八枚目表一二行目の「更に」の前に「(二)」を加える。(八) 原判決一九枚目表七行目から、同二〇枚目表二行目までをつぎのとおりに変更する。「六以上に摘示・認定した事実に、終身雇用制度の下におけるわが国の労働契約とくに大学新卒業者と大企業とのそれにみられる公知の強い附合(附従)契約性を合わせ考えれば、前記経過の下に前記形態で採用内定が行われた本件においては、控訴人会社からの募集(申込の誘引)に対し、被控訴人が応募したのが労働契約の申込みであり、これに対する控訴人会社よりの採用内定の通知は右申込みに対する承諾であつて、これにより(もつとも、右承諾は、通知書に同封して来た誓約書を指定期日までに控訴人会社に送ることを停止条件としていたものとみるのが相当であるが、被控訴人は右誓約書を指定どおりに送付したので、これにより)控訴人と被控訴人との間に、前記誓約書における五項目の採用内定取消理由に基く解約権を控訴人会社が就労開始時まで留保し、就労の始期を被控訴人の昭和四四年大学卒業直後とする労働契約が成立したと解するのが相当である。」(九) 原判決二〇枚目表三、四行目の「その基礎にある将来の試傭労働契約の内容」を「就労開始後に関する契約内容の詳細」と変更する。(一〇) 原判決二〇枚目表一〇行目の後に、次の一項を加える。「ところで、前記三において認定した事実によれば、控訴人会社においては、採用内定をしても後の調査により不適格と判断された場合には自由に内定の取消ができると理解していたことがうかがわれないではないが、かりにそのような理解のもとに本件採用内定の通知をしたとしても、それは、控訴人会社の内心の意思ないしは希望にすぎず、前認定の状況・経過のもとで前認定の態様でな 決二〇枚目表一〇行目の後に、次の一項を加える。「ところで、前記三において認定した事実によれば、控訴人会社においては、採用内定をしても後の調査により不適格と判断された場合には自由に内定の取消ができると理解していたことがうかがわれないではないが、かりにそのような理解のもとに本件採用内定の通知をしたとしても、それは、控訴人会社の内心の意思ないしは希望にすぎず、前認定の状況・経過のもとで前認定の態様でな していたことがうかがわれないではないが、かりにそのような理解のもとに本件採用内定の通知をしたとしても、それは、控訴人会社の内心の意思ないしは希望にすぎず、前認定の状況・経過のもとで前認定の態様でなされた採用内定により当事者間に前示のとおりの労働契約の合意が成立したことを認定する妨げとなるものではない。けだし右のような労働契約は、あくまでも当事者の意思の客観的合理的な解釈として認められたものであるからである。従つて、たとえば、会社において控訴人主張のような労働契約の予約であつて会社側としては違反しても損害賠償責任を負うことがあるにすぎない旨を明示した採用内定の通知をした等の場合には、当事者間に労働契約の予約が成立するにすぎないこともありうる。もつともこのような場合には、応募者の側でもその不安定な地位を嫌つて他の会社に走り、当該会社では優良な従業員の確保ができない、という危険を負担することとなろう。」(二) 原判決二〇枚目表一一行目以降を次のとおり変更する。「七そうすると、控訴人会社が昭和四四年二月一二日被控訴人に対してした前記採用内定取消の通知は、右解約権に基く解約申し入れとみなければならない。そして、右解約権は、前記乙第二号証の第二項①ないし⑤の事由がある場合にのみ行使できることは前認定の事実から明らかであるところ、右⑤としては「その他の事由によつて入社後の勤務に不適当と認められたとき」とあり、その解釈次第では如何なるときでも自由に解約ができるとされる虞があるようにも思われるが、前認定の解約権留保付労働契約たる本件採用内定がなされた経過・状況から推認される右契約の性質・目的からみれば、右⑤により解約ができるのは、①ないし④より類推される後発的事実を理由とする等の合理的な場合に限られるといわなければならない。八ところで、控訴人 状況から推認される右契約の性質・目的からみれば、右⑤により解約ができるのは、①ないし④より類推される後発的事実を理由とする等の合理的な場合に限られるといわなければならない。 契約たる本件採用内定がなされた経過・状況から推認される右契約の性質・目的からみれば、右⑤により解約ができるのは、①ないし④より類推される後発的事実を理由とする等の合理的な場合に限られるといわなければならない。八ところで、控訴人 状況から推認される右契約の性質・目的からみれば、右⑤により解約ができるのは、①ないし④より類推される後発的事実を理由とする等の合理的な場合に限られるといわなければならない。八ところで、控訴人の主張する採用内定取消(解約)の理由は前記事実欄第二の二の(一)記載のとおりであり、原審証人A及び当審証人Bの各証言中には右主張事実に沿う部分があるが、かりに右証言部分が採用できるものとしても、右事実のうち採用内定以後に判明したとされるものはいずれも具体性に欠け解約の事由として合理性を有するとはいえず、結局、解約の事由は、「グルーミーな印象なので当初から不適格と思われたが、それを打ち消す材料が出るかも知れないので採用内定としておいたところ、そのような材料が出なかつた。」というに帰し、このようなことが前記解約権付労働契約の性質からみて、前記⑤その他の解約の事由にあたるといいえないことはいうまでもなく、他にも右解約の事由にあたる事実を認めるに足る証拠はない。したがつて、控訴人のした前記解約は無効といわざるをえない。九そうすると、被控訴人は、前記解約権付労働契約により控訴人会社に対する労働契約上の地位を取得したものであるが、控訴人会社の昭和四四年度新入社員の入社式が行われた同年三月三一日には、前記解約権は消滅し、被控訴人は、同年四月一日以降は控訴人会社の従業員(ただし、当初は試傭者)として、就労し、賃金を得る権利を取得したものといわなければならない。そして、被控訴人が右期日以降控訴人に対し労務に服する旨申し出ているのに控訴人が被控訴人は従業員ではないとして現在に至るまでその就業を拒否していることは、成立に争いのない甲第三号証の一、二及び弁論の全趣旨により明らかである。さらに、前記五の(二)に認定した事実に照すと、控訴人は、試傭期間中における被控訴 て現在に至るまでその就業を拒否していることは、成立に争いのない甲第三号証の一、二及び弁論の全趣旨により明らかである。さらに、前記五の(二)に認定した事実に照すと、控訴人は、試傭期間中における被控訴人の労務の提供をも拒絶し、したがつて試傭に基く従業員としての適格性の判定の権利を行使しなかつたことになるから、控訴人は試傭期間を過ぎた昭和四四年六月下旬ごろ本採用者としての地位を得たものというべきである。 て現在に至るまでその就業を拒否していることは、成立に争いのない甲第三号証の一、二及び弁論の全趣旨により明らかである。さらに、前記五の(二)に認定した事実に照すと、控訴人は、試傭期間中における被控訴人の労務の提供をも拒絶し、したがつて試傭に基く従業員としての適格性の判定の権利を行使しなかつたことになるから、控訴人は試傭期間を過ぎた昭和四四年六月下旬ごろ本採用者としての地位を得たものというべきである。右事実によれば、被控訴人は、他の昭和四四年度採用の大学新卒業者たる従業員と同じ賃金を受ける権利を有するものであるところ、右従業員が受ける給与・一時金等の賃金が被控訴人主張(前記事実欄第二の一の(一)の「 」内の(一))のとおりであることは控訴人の争わないところであるから、被控訴人は、控訴人より、昭和五〇年五月分までの給与及び一時金として合計金六三三万九九五二円の、同年六月一日以降の給与として毎月二八日かぎり金一〇万五三〇〇円の各支払いを受ける権利を有するものというべきところ、本判決確定後の賃金については任意の履行を期待できるので、被控訴人の賃金支払いの請求は、右給与・一時金の合計金六三三万九九五二円及びこれに対する被控訴人主張の遅延損害金並びに昭和五〇年六月一日より本判決確定に至るまでの右一か月金一〇万五三〇〇円の割合の給与の支払いを求める限度においてのみ理由があるというべきである。一〇 次に、被控訴人主張の慰藉料について考えるに、以上認定のとおり、控訴人会社が、正当な理由もないのに、被控訴人に対する採用内定が取り消されたとして、被控訴人に従業員たる地位を認めないため、被控訴人が、大学を卒業しながら他に就職することもできず、本件訴訟を提起・維持しなければならなかつたことについて、相当な精神的苦痛を重ねて来ていることは推察に難くなく、その苦 たる地位を認めないため、被控訴人が、大学を卒業しながら他に就職することもできず、本件訴訟を提起・維持しなければならなかつたことについて、相当な精神的苦痛を重ねて来ていることは推察に難くなく、その苦痛は、本訴において被控訴人の主張が認容され、就職時以降の賃金相当額の支払いを受けたとしても完全に治癒されるものではないと考えられるところ、本件にあらわれた諸般の事情を考慮すれば、右苦痛を治癒すべき慰藉料の額は金一〇〇万円とするのを相当とする。したがつて、被控訴人の慰藉料請求は右金員及びこれに対する主張の遅延損害金の支払いを求める限度で理由があり、その余は失当である。 いることは推察に難くなく、その苦痛は、本訴において被控訴人の主張が認容され、就職時以降の賃金相当額の支払いを受けたとしても完全に治癒されるものではないと考えられるところ、本件にあらわれた諸般の事情を考慮すれば、右苦痛を治癒すべき慰藉料の額は金一〇〇万円とするのを相当とする。したがつて、被控訴人の慰藉料請求は右金員及びこれに対する主張の遅延損害金の支払いを求める限度で理由があり、その余は失当である。一一また、本件訴訟の性質・訴額その他本件に関する一切の事情及び弁論の全趣旨を合わせ考えれば、被控訴人が本件訴訟の遂行を弁護士である被控訴代理人らに委任したことはやむをえないところであり、その弁護士に対する報酬等は金五〇万円を下らず、右金額は、控訴人が不当に本件採用内定取消をしたことに基因し、さらに、控訴人が被控訴人の請求に対し故意又は過失により不当に抗争したこと(被控訴人の主張はこの趣旨を含むと解される。)と相当因果関係のある損害と認められるから、被控訴人の弁護士費用の請求は、その理由がある。二以上のとおりで、原判決は、被控訴人が控訴人の従業員たる地位を有することの確認と控訴人に被控訴人に対する昭和四四年四月一日以降原判決確定に至るまで毎月二八日かぎり一か月金三万三五〇〇円の割合による額の金員の支払いを認容したかぎりにおいて相当であつて、本件控訴は理由がないから、これを棄却し、原判決が右認容の範囲をこえる請求を棄却した点においては、そのうち右額をこえ前判示の請求について理由のある限度までの金員支払いに関するかぎり失当であるから、附帯控訴に基き、原判決主文第三、四項(右棄却部分 が右認容の範囲をこえる請求を棄却した点においては、そのうち右額をこえ前判示の請求について理由のある限度までの金員支払いに関するかぎり失当であるから、附帯控訴に基き、原判決主文第三、四項(右棄却部分及び訴訟費用の裁判)を変更し、前判示の金員支払い請求の理由のある限度の額から原判決認容の額を差し引いた額(昭和五〇年五月分までの給与・一時金、弁護士費用及び慰藉料の合計金七八三万九九五二円から、昭和四四年四月分以降昭和五〇年五月分まで計七四か月毎月三万三五〇〇円の割合による給与合計二四七万九〇〇〇円を差し引いた金五三六万〇九五二円及びこれより弁護士費用五〇万円を控除した残額に対する弁済期の後である昭和五一年五月一二日から支払いずみに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金並びに昭和五〇年六月一日以降本判決確定に至るまで毎月二八日かぎり支払われるべき一か月あたり金一〇万五三〇〇円から原判決認容の金三万三五〇〇円を差し引いた金七万一八〇〇円の割合による金員)の支払いを命じ、被控訴人のその余の請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九六条、第九二条本文を、仮執行及びその免脱の宣言につき同法第一九六条を、それぞれ適用し、主文二の(二)に関する仮執行免脱の宣言は不相当と認めてこれを附さないこととして、主文のとおり判決する。 払われるべき一か月あたり金一〇万五三〇〇円から原判決認容の金三万三五〇〇円を差し引いた金七万一八〇〇円の割合による金員)の支払いを命じ、被控訴人のその余の請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九六条、第九二条本文を、仮執行及びその免脱の宣言につき同法第一九六条を、それぞれ適用し、主文二の(二)に関する仮執行免脱の宣言は不相当と認めてこれを附さないこととして、主文のとおり判決する。(裁判官喜多勝林義雄楠賢二)(別紙省略)

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