令和1(わ)1408 傷害致死,監禁,死体遺棄,恐喝未遂,恐喝被告事件

裁判年月日・裁判所
令和3年1月6日 福岡地方裁判所
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判決文本文32,793 文字)

令和3年1月6日宣告令和元年(わ)第1408号,同第1304号,同第1542号,令和2年(わ)第60号,同第188号(区分事件の枝番号1,2) 主文 本件区分事件の各公訴事実のうち,令和2年11月20日付け予備的訴因等の追加請求書記載の公訴事実第1,第2につき,被告人両名はいずれも有罪。 本件区分事件の各公訴事実のうち,令和元年12月26日付け起訴状記載の公訴事実,令和2年1月30日付け起訴状記載の公訴事実第1,第2につき,被告人甲はいずれも有罪。 理由 (罪となるべき事実)第1 (令和2年11月20日付け予備的訴因等の追加請求書記載の公訴事実第1)被告人両名は,共謀の上,平成28年4月10日,福岡市a区b町c丁目d番e号fマンションg号室において,Aに対し,その身体を繰り返し殴る蹴るの暴行を加え,さらに,前記暴行により同人が畏怖しているのに乗じて同人から現金を脅し取ろうと考え,同日,同所において,「取りあえず家に行って,家族にお金を借りてこい。」などと申し向けて現金の交付を要求し,もしその要求に応じなければ同人の生命身体等にいかなる危害をも加えかねない気勢を示して同人を怖がらせ,よって,同日,福岡県春日市hi丁目j番地k付近において,同人から現金5000円の交付を受け,これを脅し取った。 第2 (令和2年11月20日付け予備的訴因等の追加請求書記載の公訴事実第2)被告人両名は,共謀の上,平成28年9月下旬頃,福岡県太宰府市lm丁目n番o号の被告人両名方において,Aに対し,その身体を繰り返し殴る蹴るの暴行を加え,さらに,前記暴行により同人が畏怖しているのに乗じて同人から現金を脅し取ろうと考え,同日,同所において,同人が紛失した工具の弁償と して金銭を支払うよう申し向けて現 し殴る蹴るの暴行を加え,さらに,前記暴行により同人が畏怖しているのに乗じて同人から現金を脅し取ろうと考え,同日,同所において,同人が紛失した工具の弁償と して金銭を支払うよう申し向けて現金の交付を要求し,もしその要求に応じなければ同人の生命身体等にいかなる危害をも加えかねない気勢を示して同人を怖がらせ,よって,同月26日,同県春日市p町q丁目r番地付近において,同人らから現金35万円の交付を受け,これを脅し取った。 第3 (令和2年1月30日付け起訴状記載の公訴事実第1)被告人甲は,被告人甲を暴力団員と親交を有する者であると誤信して怖がっているBから,同人が被告人甲から財布を譲り受けたにもかかわらず美容室「丙」の退職を決めたことなどに因縁を付けてBから現金を脅し取ろうと考え,被告人乙と共謀の上,平成30年10月11日,福岡県筑紫野市st番地u所在の同美容室において,Bに対し,被告人甲が「辞めると分かっているのに,なぜその前に財布をもらったんだ。」,「謝り方も分からんのか。」,「けじめを付けろ。」,「落とし前をどう付けるんだ。」,「土下座をしろとは言わんし,して終わりとも言わんけど,誠意の見せ方とかもあるやろう。」などと言い,被告人乙が,「女やから殴らんと思うなよ。」,「家まで行ってもいいとぞ。」などと言い,さらに,同年11月29日,同市内にいたBに対し,電話で被告人甲が「もう怒ってないから仲直りしよう。」,「でも,けじめの形としては付けよう。」,「苦しくなければ,じゃあ20万円で。」などと言って現金20万円の交付を要求し,もしその要求に応じなければBの生命身体等にいかなる危害をも加えかねない気勢を示して同人を怖がらせ,よって,同日,同市vw丁目x番y号のv店において,同人から現金19万円の交付を受け,これを脅し取 もしその要求に応じなければBの生命身体等にいかなる危害をも加えかねない気勢を示して同人を怖がらせ,よって,同日,同市vw丁目x番y号のv店において,同人から現金19万円の交付を受け,これを脅し取った。 第4 (令和2年1月30日付け起訴状記載の公訴事実第2)被告人甲は,丁を暴力団員であると誤信して怖がっているBから,前記第3同様に因縁を付けて同人から更に現金を脅し取ろうと考え,丁と共謀の上,平成31年4月8日,福岡県太宰府市lm丁目n番o号の被告人甲方において,Bに対し,被告人甲が,「Bが辞めることに関してもめた時のオーナーと兄貴 との間の会話について,兄貴がまだむかついている。」などと言い,同所にいたBに対し,電話で丁が「事の原因はお前やから,お前がけじめを付けろ。」,「けじめを付けないと店がどうなっても知らんぞ。」,「ちゃんとすれば何もせんぞ。」などと言い,さらに,被告人甲が「この世界では200万が相場だから。」などと言って現金200万円の交付を要求し,もしその要求に応じなければBの生命身体等にいかなる危害をも加えかねない気勢を示して同人を怖がらせ,よって,同日,同市z○a 丁目○b 番地○c の駐車場において,同人から現金100万円の交付を受け,さらに,同月9日,同県筑紫野市○d ○e 丁目○f 番○g 号付近において,同人から現金30万円の交付を受け,これらを脅し取った。 第5 (令和元年12月26日付け起訴状記載の公訴事実)被告人甲は,丁を暴力団員であると誤信して怖がっている戊から,同人の妻である己が丁の現金を使い込んだとしてその返済金の名目及び己が丁の関係するホストクラブの利用料金を未払であるとしてその未払利用料金の名目で現金を脅し取ろうと考え,丁と共謀の上,令和元年8月31日午後 である己が丁の現金を使い込んだとしてその返済金の名目及び己が丁の関係するホストクラブの利用料金を未払であるとしてその未払利用料金の名目で現金を脅し取ろうと考え,丁と共謀の上,令和元年8月31日午後1時48分から同日午後2時47分までの間,大阪府内にいた戊に対し,電話で被告人甲が「己が兄貴のお金200万円をホストクラブに使い込んでる。」などと言い,同日午後6時28分から同日午後6時32分までの間,被告人甲が2台の携帯電話のうち一方の携帯電話で戊の携帯電話に,他方の携帯電話で丁の携帯電話に電話をかけ,被告人甲の2台の携帯電話のスピーカーフォンの機能をいずれも作動させて被告人甲,丁及び戊の三者で通話ができる状態にした上,大阪府内にいた戊に対し,丁が「200万円よろしく頼むぞ。」などと言い,同年9月1日午後3時23分から同日午後4時55分までの間,山口県内にいた戊に対し,電話で被告人甲が「己が庚と辛というお店から合計105万円の付けがある。」,「9月中に付けを回収しなければいけない。」,「兄貴の企業舎弟であるこの2店舗が10月に新装開店をするから,それまでに付けをちゃらにしないといけないから,兄貴に支払わなければならない。」などと言い,次い で,同月9日午後7時48分から同日午後7時50分までの間,前記同様に三者で通話ができる状態にした上,福岡県内又は山口県内にいた戊に対し,丁が己に「お前が払わんやったら,お前と戊をさらうぞ,こら。」などと怒鳴る声を聞かせ,被告人甲が「己が怒鳴られよるよ。」,「早くお金払った方がいいよ。」などと言い,さらに,同月23日午後4時59分から同日午後8時5分までの間,佐賀県内にいた戊に対し,電話で被告人甲が「できませんじゃあ,話通らんけんさあ。」,「すいません,ごめんなさいって言ったらなんでも許されるっ ,同月23日午後4時59分から同日午後8時5分までの間,佐賀県内にいた戊に対し,電話で被告人甲が「できませんじゃあ,話通らんけんさあ。」,「すいません,ごめんなさいって言ったらなんでも許されるって,警察いらんやん。」などと言い,その間の同日午後5時から同日午後7時27分までの間,前記同様に三者で通話ができる状態にした上,佐賀県内にいた戊に対し,丁が「お前,弁護士入れたところで終わると思ってんのかこらー。」などと怒鳴るなどして現金合計305万円の交付を要求し,もしその要求に応じなければ戊及び同人の妻である己の生命身体等にいかなる危害をも加えかねない気勢を示して戊を怖がらせ,同人から現金を脅し取ろうとしたが,同人が弁護士に相談するなどして要求に応じなかったため,その目的を遂げなかった。 (事実認定の補足説明)第1 Aに対する恐喝(第1,第2の事実)について 1 争点等(1) 令和2年2月27日付け起訴状記載の公訴事実第1,第2(以下「主位的訴因」という。)の要旨は次のとおりであり,予備的訴因は,判示第1,第2の事実のとおりである。 第1 被告人両名は,被告人甲を暴力団員と親交を有する者であると誤信して怖がっているAから現金を脅し取ろうと考え,共謀の上,平成28年4月10日,福岡市a区b町c丁目d番e号fマンションg号室において,同人に対し,その身体を繰り返し殴る蹴るの暴行を加えて現金の交付を要求し,もしその要求に応じなければ同人の生命身体等にいかなる危害をも加 えかねない気勢を示して同人を怖がらせ,よって,同日,福岡県春日市hi丁目j番地k付近において,同人から現金5000円の交付を受け,これを脅し取った。 第2 被告人両名は,Aから更に現金を脅し取ろうと考え,共謀の上,平成28年9月下旬頃,福岡県太宰府市lm丁 hi丁目j番地k付近において,同人から現金5000円の交付を受け,これを脅し取った。 第2 被告人両名は,Aから更に現金を脅し取ろうと考え,共謀の上,平成28年9月下旬頃,福岡県太宰府市lm丁目n番o号の被告人両名方において,Aに対し,その身体を繰り返し殴る蹴るの暴行を加えて現金の交付を要求し,もしその要求に応じなければ同人の生命身体等にいかなる危害をも加えかねない気勢を示して同人を怖がらせ,よって,同月26日,同県春日市p町q丁目r番地付近において,同人らから現金35万円の交付を受け,これを脅し取った。 (2) 被告人乙の弁護人は,第1の事実について,被告人乙は,Aに対し暴行を行ったが,現金の奪取に向けられたものではなく,被告人乙はAから現金5000円を受領しておらず,被告人甲と共謀もしていない旨を主張するとともに,第2の事実について,被告人乙は,公訴事実記載の時期にAに暴行は加えておらず,現金35万円は受領したが脅し取ったものではなく,被告人甲と共謀もしていない旨を主張している。 また,被告人甲の弁護人は,第1の事実については,被告人甲は,Aに対し暴行,脅迫をしておらず,被告人乙との共謀もしてない,現金5000円を受領したが,脅し取ったものではない旨を主張するとともに,第2の事実については,被告人甲は,Aから現金35万円を受領しておらず,暴行,脅迫もしていない,被告人乙との共謀もない旨を主張している。 (3) 当裁判所は,第1,第2の事実のいずれに関しても,被告人両名が,Aに対し暴行をしている段階で財物奪取の意思があったと認定するには合理的な疑いを差し挟む余地があるから,判示のとおり予備的訴因が認定できるにとどまると判断した。以下その理由を説明する。 2 第1の事実について (1) A及び証人②の証 認定するには合理的な疑いを差し挟む余地があるから,判示のとおり予備的訴因が認定できるにとどまると判断した。以下その理由を説明する。 2 第1の事実について (1) A及び証人②の証言についてア Aは,法廷で,被告人両名との従前の関係等につき,「平成23年12月頃に,自分が当時好意を抱いていた知人女性から被告人甲を紹介された。 その後時期は覚えていないが,被告人甲から同知人女性の借金のことを知らされて,同知人女性の代わりに支払うことになった。そのことをきっかけに,被告人甲から様々な名目で金銭を請求されるようになり,給料が振り込まれる口座の通帳を被告人甲に預けるなどして支払っていた。給料が少なかったり(仕事で)失敗したりした際には,被告人甲から更に金銭を要求され,何度か暴力を受けることがあり,被告人乙から一緒に暴力を加えられたこともあった。」などと証言した上で(A証言・2ないし21頁),第1の被害状況について,「体調が悪いとうそをついて仕事をずる休みしたところ,被告人甲から判示マンションに呼び出されて怒られた。その際,被告人甲か被告人乙のいずれかから,(自分が)正座をした状態で,顔から下を殴られたり蹴られたりした。その後,被告人両名やその場にいた壬や証人②らと一緒に車で自宅に行き,母親である証人①に金を貸してくれるように頼み込んで,家にあった芝刈り機を質店で売却し,売却代金5000円を被告人甲に渡した。」などと証言している(同・21ないし25頁)。 イまた,証人②は,法廷で,第1の暴行の目撃状況について,「被告人両名は,Aを正座させた状態で,Aが会社を休んだことについて怒鳴るような感じで叱っていた。被告人甲は,「会社を休んで迷惑掛けて。」,「私の顔を潰す気か。」などと言っていた。被告人甲と被告人乙は,いずれも は,Aを正座させた状態で,Aが会社を休んだことについて怒鳴るような感じで叱っていた。被告人甲は,「会社を休んで迷惑掛けて。」,「私の顔を潰す気か。」などと言っていた。被告人甲と被告人乙は,いずれも拳骨でAの胸や腹を殴っていた。」(証人②証言・12ないし15頁),「暴行が始まって5分か10分ぐらいして,(自分は)具合が悪くなって台所に移動して横になった。(Aがいる部屋との間の)ガラス戸が閉まっていたので,中の様子は見えなかったが,Aが殴られる音やAのうめき声が少なくとも15分くらいは聞こえていた。この間,被告人甲や被告人乙は,ずっと暴行を していたわけではなく,Aと受け答えをしてAの答えが気に入らないと殴るという感じだった。」(同・16,17頁)などと証言するとともに,暴行後の状況につき,「暴行を加えたすぐ後に,被告人甲が,Aに対し,「取りあえず家に行って,家族にお金を借りてこい。」などと言っていた。Aや被告人両名らと共にAの家の付近まで車で行ったが,Aが家から戻ってきて金を借りられなかったと言うと,被告人甲は,「お金が借りられないなら,売れるものを持ってこい。」などと言っていた。Aは,家から芝刈り機を持ってきて質店で売却した。売却代金5000円は,被告人甲の手に渡った。」(同・17ないし20頁)などと証言している。 ウそこで,Aや証人②の証言の信用性を検討すると,Aや証人②は,被告人両名が,判示マンションで,Aに対し仕事をずる休みしたことを責め立てて暴力を振るった上で,Aに金銭を要求し,Aの自宅まで車で行き,Aが自宅にあった芝刈り機を売却した代金を脅し取ったという一連の経緯を述べたものである。その証言内容は相互によく符合しており,内容的にも不自然というべき点は見当たらない上,暴行後の状況については,証人①の証言や質店 刈り機を売却した代金を脅し取ったという一連の経緯を述べたものである。その証言内容は相互によく符合しており,内容的にも不自然というべき点は見当たらない上,暴行後の状況については,証人①の証言や質店での芝刈り機の売却状況に関する客観的な証拠(甲107)にも裏付けられている。特に,証人②の証言は,若干曖昧な部分もあるとはいえ,Aが暴行を振るわれているのを見て体調が悪くなって台所に移動し,ガラス戸越しにAが殴られてうめき声を上げていた様子を聞いていたことなど,当時の心境を交えてそれなりに具体的に証言したものといってよく,殊更に事実を誇張して述べている様子も見られない。 以上によれば,A及び証人②の証言の基本的な信用性は高いといえる。 エこれに対し,まずAの証言について,被告人甲の弁護人は,Aは,誰から暴行や金銭の支払の要求を受けたかといった点を含め,事件当日のことをほとんど覚えていないと証言していることなどを指摘し,公訴事実記載の日時場所で暴行を受けた旨のAの証言には信用性がないと主張している。確かに, A証言は,曖昧で具体性に欠ける部分が少なくないものの,Aは,第1の被害に遭う以前から,被告人両名から仕事を休んだり失敗したりした際に金銭の支払を請求され,暴力も振るわれていたというのであるから,事件から4年以上もの時間が経過していたことも考えれば,他の機会に受けた暴行との区別が曖昧になっているとしてもやむを得ないといえる。Aは,そのような中で,覚えていることとそうでないことを区別した上で率直に証言しており,ありもしない被害をでっち上げたり,全くの記憶違いから事実と異なる内容の証言をしたりしているなどとは考え難い。Aの証言は,公訴事実記載の日時場所で暴行を受けたことを含め十分信用できる。 次に,証人②の証言については,被告 げたり,全くの記憶違いから事実と異なる内容の証言をしたりしているなどとは考え難い。Aの証言は,公訴事実記載の日時場所で暴行を受けたことを含め十分信用できる。 次に,証人②の証言については,被告人乙の弁護人は,証人②が,Aが20分から25分もの間暴行を受けていたと証言する点は,そのような暴行を受ければ,Aは少なくとも動きに違和感が出るはずであるのに,母である証人①がAの怪我に気付いていなかったことと矛盾することなどを指摘し,証人②が第1の事実より前に癸やAへの暴行を目撃したことで恐怖を感じ,思い込みなどから証言している旨主張している。しかし,証人②は,前記のとおり,被告人両名は,Aと受け答えをして答えが気に入らないと殴っていた感じであり,ずっと殴っていたわけではないなどと証言するとともに,Aは顔をそれほど殴られていなかったから,外から見て目立つ怪我はなかった旨も証言している(証人②の証言17,18頁)。このような証言内容に照らすと,証人①がAの怪我に気付かなかったとしても特に不自然とはいえないのであり,被告人乙の弁護人の主張は前提を欠く。 また,同じく証人②の証言については,被告人甲の弁護人は,①証人②が,Aの顔に対する暴行はなかったと証言する点は,壬が,Aが鼻血を出していた,誰が見ても怪我していることは分かる状況だったと証言していることと整合しない,②証人②の証言によれば,被告人甲は,Aへの暴行後に自身の金銭負担でAと一緒に飲食したりしたことになるが,恐喝をした者の行動と して不自然であるなどと主張している。しかし,①の点は,証人②は,Aが顔に暴力を受けた可能性を否定してはいない(同・15頁)上,鼻血程度であれば止血さえすれば特に目立たないはずであることも考えると,証人②の証言と壬の証言とが特に矛盾しているとまではいえ 人②は,Aが顔に暴力を受けた可能性を否定してはいない(同・15頁)上,鼻血程度であれば止血さえすれば特に目立たないはずであることも考えると,証人②の証言と壬の証言とが特に矛盾しているとまではいえない。②の点も,被告人甲は,従前からAの給与の振込用の口座の通帳を管理していたというのであり,Aから脅し取った金の一部を使ってAの飲食代金を支払ったからといって,それ自体特に不自然とはいえない。被告人甲の弁護人のこの点の主張は採用できない。 このほか,各被告人の弁護人が,Aや証人②の証言の信用性につき主張する点を子細に見ても採用できるものはない。 オ以上によれば,A及び証人②の証言の基本的な信用性は高く,各被告人の弁護人の主張を踏まえて慎重に検討しても揺るがないといえる。 (2) 被告人乙の弁解についてアこれに対し,被告人乙は,法廷で,判示マンションでの状況について,「なぜ仕事を休んだのか理由を尋ねると,Aは,最初は体調不良だと言っていたのに,話を聞いていくうちに,ただ仕事を休みたかっただけと言うようになったため,腹が立ってAの腹部を数回殴った。金銭の要求はしていない。」(被告人乙に対する被告人質問(第2回)・4ないし6頁),「被告人甲は,Aの頭をリモコンで殴り,左頬を平手打ちしたほか,腹部を一,二回足蹴りしており,その最中に,Aに対し,「休んだ分の日当を用意しなかったら兄貴たちに迎えにきてもらうぞ。」などと言っていた。Aは,それまでは怖がっているような感じはなかったが,その言葉を聞いた後は怖がっていた様子であった。」(同(第2回)・6,25頁,同(第7回)・1,2頁)などと弁解するとともに,その後の経緯について,「被告人甲がAの家に行くと言い出し,他に車を運転する人もいなかったので,自分が運転していくことになった。断ると後々 ,25頁,同(第7回)・1,2頁)などと弁解するとともに,その後の経緯について,「被告人甲がAの家に行くと言い出し,他に車を運転する人もいなかったので,自分が運転していくことになった。断ると後々面倒くさそうだったので運転はしたが, 金を作りに行くのに協力したつもりはない。」(同(第7回)・2頁)などと弁解している。 イこの点,確かに,被告人乙の弁解内容は,Aや証人②の証言内容と明らかに矛盾するとはいえない上,Aが曖昧な証言をしている部分や,証人②が台所に移動した後直接目撃していない場面もあることからすると,被告人乙が虚偽の事実を述べているとは直ちには断定しにくい部分もあるようには思われる。しかし,被告人乙は,その弁解内容を前提にしても,Aに対し自ら暴行をしただけでなく,被告人甲と共にAの実家まで押しかけ,質店で芝刈り機を売却してその売却代金を受け取るまで,Aや被告人甲と終始行動を共にしていたことを自認している。それにもかかわらず,被告人乙がAに対する恐喝行為と自分は無関係と考えていたなどというのは,常識的に考えて不自然といわざるを得ない。 これに加えて,被告人乙は,捜査段階では,被告人乙自身も被告人甲も,Aに暴行を加えていないと供述していた(同(第2回)・24,45,46頁)にもかかわらず,法廷では,自らがAに暴力を振るったことを認める一方で,被告人甲が,自分よりも激しい暴力を振るった上で金銭の要求もしたなどと述べて,弁解内容を大きく変遷させている。被告人乙は,そのような変遷の理由につき,自らが共犯と思われるのが嫌だったなどと説明をしているが(同(第2回)・40,45,46頁),結局のところ,その場の状況に合わせて都合よく話を変えていると考えざるを得ない。このような供述状況は,被告人乙の弁解の信用性を大きく減殺させ と説明をしているが(同(第2回)・40,45,46頁),結局のところ,その場の状況に合わせて都合よく話を変えていると考えざるを得ない。このような供述状況は,被告人乙の弁解の信用性を大きく減殺させる事情といえる。 ウしたがって,被告人乙の弁解は信用できないといえる。 (3) 被告人甲の弁解についてア被告人甲は,法廷で,「第1の犯行の日は,癸に対し,被告人乙がいらいらして暴力を振るっていた。自分も癸に少し暴力を振るったが,Aに対し ては,自分も被告人乙も暴行しておらず,金銭の要求もしていない。癸への暴力が終わった後,Aがメイド喫茶に行きたがり,「僕がお金もらってきますんで,僕の行く分のお金は自分で払いますから。」,「1回家に帰ってお母さんに頼みます。」などと言ったので,一旦Aの家に行った。Aが一人で家に入り,戻ってくると5000円を預けてきたので受け取った。草刈機を売却して5000円を作った記憶はない。」旨を弁解している(被告人甲に対する被告人質問(第2回)・2ないし5頁)。 イこの点,被告人甲は,5000円を受領した当日にAに対し暴行を加えたこと自体を否定しているのであって,そのような弁解内容は,Aや証人②,被告人乙も含め被告人甲以外の事件関係者が,被告人両名からAが仕事を休んだことを怒られ,暴行を加えられた旨を一致して述べていることと全くそぐわないものである。特に,被告人甲が第1の事実の際に受領した5000円が,Aが自宅にあった芝刈り機を質店で売却して得たものであることは,質店の売渡証という客観的証拠によって裏付けられており,そのような被告人甲以外の事件関係者らの証言が,揃って記憶違いによるものであるなどとは考えられない。この点は,被告人甲の弁解の信用性を大きく減殺する事情といわざるを得ない。 けられており,そのような被告人甲以外の事件関係者らの証言が,揃って記憶違いによるものであるなどとは考えられない。この点は,被告人甲の弁解の信用性を大きく減殺する事情といわざるを得ない。 ウしたがって,被告人甲の弁解も信用できないといえる。 (4) 検討ア以上のとおり,A及び証人②の証言は信用できるのに対し,被告人両名の弁解はいずれも信用できないといえる。そして,信用できるA及び証人②の証言によれば,被告人甲と被告人乙は,判示マンションにおいて,Aに対し,仕事を休んだことを問い詰めて,Aの胸部や腹部を殴る蹴るといった暴行を加えた上で,暴行が終了するとほどなく,被告人甲が,それまでの暴行により畏怖した状態にあったAに対し金銭を要求し,被告人乙も,そのことを十分認識しながら特に異議を唱えることもないまま,同日のう ちに,被告人両名がAの家や質店の付近まで同行し,Aの自宅にあった草刈機を質店で売却させるなどして,Aから金銭の交付を受けたことが認められる。 このような一連の行動状況に照らすと,被告人両名は,互いに意を通じてAに暴行を加えた上,遅くとも,暴行後に被告人甲がAに対し金銭を要求した段階では,Aがそれまでの暴行により畏怖しているのに乗じて,Aから金銭を脅し取ろうとしたものと認められる。このような暴行後の金銭の要求行為は,Aに対し要求に応じなければ被告人両名から更なる危害を加えられるかもしれないと思わせるものであって,新たな脅迫行為がなされたと評価し得るのであり,その段階で,被告人両名の間で恐喝についての共謀が成立していたことも十分認定できる。 イこの点,Aや証人②の証言を前提としても,被告人甲がAに対し金銭の要求をしたと確実に認定できるのは,Aに対する暴行を終えた後の段階であり,暴行が終了する前に金銭 していたことも十分認定できる。 イこの点,Aや証人②の証言を前提としても,被告人甲がAに対し金銭の要求をしたと確実に認定できるのは,Aに対する暴行を終えた後の段階であり,暴行が終了する前に金銭の要求行為があったかどうかは定かではないといえる。確かに,Aは,第1の事実の前から,被告人甲から様々な名目で金銭の支払を要求されていたというのであるから,金銭の要求行為の時期にかかわらず,被告人両名にAへの暴行を開始した当初からAに対し金銭の支払を要求する意図があったとしてもおかしくないとはいえるが,他方で,被告人両名がAに暴行を加える際に必ず金銭の要求をしていたなどと断定することもできないから,暴行終了後になって恐喝の犯意が生じた可能性も一概には否定できない。 ウしたがって,第1の事実については,主位的訴因については合理的な疑いを入れる余地があるものの,予備的訴因の限度では十分に認定できる。 3 第2の事実について(1) A及び壬の証言についてア Aは,法廷で,第2の被害状況について,「平成28年9月下旬頃,被 告人乙から借りていた職場で使う工具をなくしたため,被告人両名方に呼び出されて,被告人両名のどちらかから,「何で道具をなくしたんだ。」,「何で今まで隠してたんだ。」などという話をされ,被告人乙からは,顔を除く体全体を殴られたり蹴られたりした。被告人甲から暴行を受けたかは覚えていないし,被告人甲が丁に電話していたと思うが,それも記憶が鮮明ではない。その日はお金をどうにかするなどと約束をして自宅に帰り,母である証人①に相談したが,全く請け合ってくれなかった。」(A証言・25ないし28,39,55頁)などと証言するとともに,その後の状況について,「被告人甲に金が用意できなかった旨を相談すると,被告人乙と一緒に行っ 談したが,全く請け合ってくれなかった。」(A証言・25ないし28,39,55頁)などと証言するとともに,その後の状況について,「被告人甲に金が用意できなかった旨を相談すると,被告人乙と一緒に行って説明してもらいなさいなどと言われ,後日,被告人乙と共に,証人①に工具の弁償として35万円の支払を求めた。その日は金を払ってもらえなかったが,嫌気がさして証人①の車で逃げ出そうとして証人①に止められたことがあって,結局証人①が金を用意することになった。証人①と被告人乙と一緒に郵便局に行き,証人①が35万円を借り入れて被告人乙に渡していた。」などと証言している(同・28ないし31頁)。 イまた,壬は,法廷で,第2の目撃状況について,「Aの会社から,被告人甲に対し,Aが職場で物損事故を起こしたことや被告人乙の道具等をなくしたことで金が必要になった旨の電話があった。被告人甲がAを自宅に呼び出し,物損事故についてAに聞いていた。被告人乙は,Aが道具をなくしたことについて聞いており,最初は「道具の管理がなっていない。」などと優しく言っていたが,そのうちしびれを切らせて怒り出し,Aを殴っていた。被告人甲がAに暴力を振るったかどうかは記憶が曖昧であるが,被告人甲は,丁に電話を掛けて,Aに電話を替わったが,丁がAに対し「原発飛ばすぞ。」とか,「マグロ漁船にも乗せる。」などと言っていた。また,被告人甲自身も,Aに家族から金をもらうように言っていた。その際,被告人乙も,道具をなくされた本人なので,Aに金を要求していた。」(壬証 言・5ないし10,25,26頁)などと証言している。さらに,壬は,その後の状況について,「後日,Aの実家に被告人両名らと一緒に行き,被告人乙が証人①に対し道具代として30万円前後を弁償するよう言った。 これに対し,証人①は, 頁)などと証言している。さらに,壬は,その後の状況について,「後日,Aの実家に被告人両名らと一緒に行き,被告人乙が証人①に対し道具代として30万円前後を弁償するよう言った。 これに対し,証人①は,うちには金がないと言っていた。」(同・10,11頁)などと証言するとともに,更にその後にAと銀行に行った際の状況として,「自分や被告人甲らは車の中に待機しており,Aと被告人乙が銀行に行った。戻ってきた被告人乙が,被告人甲に金銭の入った封筒を渡し,被告人甲はそれをバッグに入れていた。」などと証言している(同・11,12頁)。 ウそこで,Aや壬の証言の信用性を検討すると,Aや壬は,被告人両名が,Aが被告人乙から借りた工具を紛失したことで,Aを被告人両名方に呼び出し,Aを責め立てて暴力を振るった上で金銭の支払を要求し,その後複数回にわたってAの家まで行くなどして,ついには,A及びAから金銭の支払をするよう頼まれた証人①から,証人①が郵便局で借入れをした金銭の交付を受けて脅し取ることになったという一連の経緯を述べたものである。その証言内容は,相互によく符合しており,内容的に不自然というべき点は見当たらない上,暴行後の状況については,証人①の証言や郵便局での借入に関する客観的な証拠(甲356)によって裏付けられている。 したがって,Aや壬の証言の基本的な信用性は高いといえる。 エこれに対し,被告人甲の弁護人は,壬の証言のうち,被告人甲が,丁に電話をしてAを叱ってくれという話をして,Aに電話を替わったとする部分や,被告人甲が,Aに道具代を家族からもらうように言っていたとする部分について,記憶が曖昧であることを指摘した上で,壬が,物損事故を起こしたときの被告人甲とAのやり取りとを混同している可能性があるなどと主張している。この点,確かに,壬は うように言っていたとする部分について,記憶が曖昧であることを指摘した上で,壬が,物損事故を起こしたときの被告人甲とAのやり取りとを混同している可能性があるなどと主張している。この点,確かに,壬は,上記のとおり,Aは,工具を紛失したことのほかに,被告人甲からは,Aが職場で物損事故を起こした ことについても追及されていた旨を証言しているところ,そのような物損事故の請求がされた日と工具代の請求がされた日が同じ日かどうかは記憶が定かでないことも認めている(壬証言・18,19,26,27頁)。壬が殊更に虚偽の証言をしているとは考え難いとはいえ,記憶違いにより,異なる日の出来事を混同して証言している可能性がないかは慎重に検討する必要がある。そして,そのような観点から同人の証言内容を見ると,被告人乙が工具を紛失したことについてAを問い詰めるうちに,しびれを切らしてAを殴るなどしたことなど,被告人乙の言動については相当に具体性がある内容になっており,Aもこれに沿う証言をしていることが認められる(後記のとおり,被告人乙もAに暴行や金銭の要求行為を行ったこと自体は認めている。)。他方で,壬の証言のうち,被告人甲が丁に対し電話を掛けて丁にAを脅させたり,Aに対して家族から金をもらうように言ったりしたことなど,被告人甲の弁護人が指摘する部分にはやや曖昧な内容もあり,Aもはっきりとは記憶していないというのである。したがって,壬の証言のうち,後記のとおり被告人甲自身も認めている丁へ電話を掛けたことはともかく,被告人甲がAに対して家族から金をもらうように言ったという部分については,被告人甲がそのような発言をしたと断定まではできないといえる。 なお,被告人甲の弁護人は,被告人乙が被告人甲に対し金銭が入った封筒を手渡したと証言している点についても, たという部分については,被告人甲がそのような発言をしたと断定まではできないといえる。 なお,被告人甲の弁護人は,被告人乙が被告人甲に対し金銭が入った封筒を手渡したと証言している点についても,被告人甲の弁解を前提に,被告人乙が,被告人甲の股の間の座席の上に封筒を置いたことから,被告人甲がその封筒を手に取って被告人乙に返しており,その一連の動作の一部を見て被告人甲がバッグに入れたと勘違いした可能性があると主張している。しかし,被告人甲は,この点につき,捜査段階では,被告人乙から一旦封筒を受け取ったことを認める供述をしていたというのであり(被告人甲に対する被告人質問(第2回)・25,26,53頁),法廷では,そ の弁解内容を合理的な理由なく変遷させているから,そのような供述状況は被告人甲の弁解の信用性を大きく減殺させるものといわざるを得ない。 また,そもそも被告人乙が,わざわざ金銭が入った封筒を被告人甲の股の間に置き,被告人甲も,それをすぐに返すなどという紛らわしい動作を行ったということ自体,不自然との感が否めない。そうすると,被告人甲のこの点の弁解は信用できないから,壬が勘違いにより証言している可能性は認められない。そして,そのほかには,壬が他の日の出来事と混同して証言をしていることを疑わせるような事情も見当たらない。むしろ,被告人乙は,当時無職できちんとした収入がなく,被告人甲と生計を同一にしていたというのであり(被告人乙に対する被告人質問(第2回)・38,39頁),工具の弁償代として脅し取った金銭を被告人甲に渡したとしても何ら不自然ではないし,被告人甲も,そのように期待したからこそ,Aの家の付近まで複数回に渡って同行したと見ることができる。この点の壬の証言は十分信用できる。 また,被告人乙の弁護人は,壬が,被告人 ら不自然ではないし,被告人甲も,そのように期待したからこそ,Aの家の付近まで複数回に渡って同行したと見ることができる。この点の壬の証言は十分信用できる。 また,被告人乙の弁護人は,壬が,被告人乙は,Aに対する暴行後にAの家に行って工具代を請求した際に,証人①から貴金属や切手を受け取っていたと証言する点について,証人①が,貴金属を取られたのは平成26年より前のことと証言しているのと矛盾するなどと主張している。しかし,壬と証人①の証言内容(壬証言・15,16頁,証人①証言・16頁)を子細に見れば,壬は指輪,証人①はネックレスのことを指して貴金属と証言しており,全く別の機会のことを述べていると考えられるから,証言内容が矛盾しているとはいえないし,そもそもこのような些細な点に若干の記憶違い等があったとしても,直ちに証言全体の信用性に疑いが生じるとはいえない。 このほかに各被告人の弁護人がAや壬の証言の信用性につき主張する点を子細に見ても,採用できるものはない。 オ以上によれば,A及び壬の証言の基本的な信用性は高く,各被告人の弁護人の主張を踏まえて検討しても,壬の証言の一部を除いてその信用性は十分肯認できるというべきである。 (2) 被告人乙の弁解についてア被告人乙は,法廷で,第2の事実について,「平成28年8月下旬か9月上旬頃,被告人甲から,Aが自分の貸していた道具(工具)をなくしたと聞いた。その日の夜に,被告人甲がAを自宅に呼び出した。(自分が)Aに対し道具をなくした理由,経緯を聞いたが,(Aの話を聞いて)管理が甘いことなどに腹が立ち,Aの頭を1回拳骨で殴った上で,「弁償しろ。」などと言った。被告人甲も,Aの顔を拳で殴り,腹部を足蹴りしていた。被告人甲は,「(会社から)首って言われたぞ。今後の借金の返済は いことなどに腹が立ち,Aの頭を1回拳骨で殴った上で,「弁償しろ。」などと言った。被告人甲も,Aの顔を拳で殴り,腹部を足蹴りしていた。被告人甲は,「(会社から)首って言われたぞ。今後の借金の返済はどうするんや。」などと言って怒っており,Aは,母親に聞いてみると言っていた。これに対し,被告人甲は,Aに対し,(母親に)35万円を用意してもらえなどと言っており,Aは承諾していた。被告人甲からは,35万円となった理由は,道具の弁償代とそれまでのAの給料の減額分と聞いた。」(被告人乙に対する被告人質問(第2回)・9ないし12頁),「35万円の請求については,道具代としての弁償を超えた分は自分には関係ないと思っていた。」(同(第8回)・2頁)などと弁解している。 また,被告人乙は,その後数日経った段階と更に1週間ほど経った段階で2回にわたりAの家に行き,証人①に道具代の弁償として金銭を支払うように求めたが,断られた旨を弁解した(同(第2回)・12ないし14頁)上で,その2週間ほど後の出来事について,「Aから自分に電話があり,仕事がきついので転職したいと言っていた。被告人甲に話をしたところ,被告人甲は,証人①に35万円を用意してもらわなければ転職は許さない旨言っていた。その日のうちにそのことをAに伝えたところ,その二,三日後,Aから,母親が金を払ってくれることになったと連絡があり,更にそ の二,三日後に,Aと証人①と共に郵便局に行き,金を受け取って車で待っていた被告人甲に渡した。自宅に帰った後も,被告人甲から道具の弁償代はもらっていない。」(同(第2回)・15ないし19頁)などと弁解している。 イしかし,被告人乙の弁解内容は,Aを1回殴っただけであるかのように弁解する点は,Aが,被告人乙から体全体を殴る蹴るされたなどと証言し 同(第2回)・15ないし19頁)などと弁解している。 イしかし,被告人乙の弁解内容は,Aを1回殴っただけであるかのように弁解する点は,Aが,被告人乙から体全体を殴る蹴るされたなどと証言していることにそぐわない上,被告人甲の暴行内容について証言する点も,仮に被告人乙が弁解するように,被告人甲が激しい暴行を振るっていたのであれば,Aや壬もそのことを覚えているはずと思われる。このように被告人乙の弁解がAのみならず壬の証言ともそぐわないものとなっているのは,被告人乙が,自らの関与をできるだけ小さく述べる一方で,被告人甲が中心的に暴行,脅迫を行ったと述べることで,被告人甲に責任を押しつけようとしていることによるものと考えざるを得ない。 その点を措くとしても,そもそも被告人乙は,その弁解を前提としても,暴行の程度はともかく,自らAに対し暴行を加えて工具の弁償代として金銭を要求したことを認めているだけでなく,被告人甲の言葉にAが畏怖していることを認識しつつ,その後も単独あるいは被告人甲と共にAの自宅まで複数回行くなどしてAや証人①に金銭を要求し,実際に自らAや証人①から金銭の交付を受けたことも自認している。しかも,被告人乙は,被告人甲から35万円の金銭に工具の弁償代が含まれていると聞いていたことや,Aから35万円を受け取った後に被告人甲に対し工具代を払うように要求したことも認めている(被告人乙に対する被告人質問(第2回)・23,35頁)。このように,被告人乙は,自らあるいは被告人甲と意を通じて恐喝行為を行ったことを自認していると見て差し支えないのであり,それにもかかわらず,被告人乙が,自らは恐喝行為に無関係と考えていたというのは,常識的に考えて不自然といわざるを得ない。 なお,被告人乙がAに対する暴行を行った時期を平成2 いのであり,それにもかかわらず,被告人乙が,自らは恐喝行為に無関係と考えていたというのは,常識的に考えて不自然といわざるを得ない。 なお,被告人乙がAに対する暴行を行った時期を平成28年8月下旬から同年9月上旬頃であったと弁解する点については,Aや証人①,被告人甲は,いずれも,必ずしも明確に述べたものではないものの,一連の出来事が平成28年9月下旬頃であった旨を証言ないし供述していること(A証言・39,55頁,証人①証言・7,8頁,被告人甲に対する被告人質問(第2回)・57頁)とそぐわないものといえる。しかも,被告人乙は,捜査段階では,暴行の時期について,同年2月頃であったなどと,法廷で述べるのと全く異なる供述をしていたというのであるが(同(第2回)・33,46頁),そのように弁解内容を変遷させた理由について十分合理的な説明をしているとは認め難い(同(第2回)・47頁)。したがって,暴行の時期に関する被告人乙の弁解も信用できないといえる。 ウしたがって,被告人乙の弁解は,信用できない。 (3) 被告人甲の弁解についてア被告人甲は,法廷で,第2の事実について,Aが判示被告人両名方に来ることになった経緯について,「Aの会社の社長から電話で,Aが工具をなくしたことを伝えられた。その後社長が,Aを被告人甲の自宅に連れてきて,被告人乙に,「お前がちゃんとけじめを付けろよ。」などと言っていた。」(被告人甲に対する被告人質問(第2回)・6,7頁)などと弁解した上で,その後の状況について,「Aは,正座をして謝っていた。被告人乙は,Aに対し,初めは柔らかい物腰で話をしていたが,Aが「すみません。」としか言わないので,怒ってヒートアップし,Aの顔面を二,三発殴り,横腹を五,六回踏み付けるなどの暴行を加えており,そ 被告人乙は,Aに対し,初めは柔らかい物腰で話をしていたが,Aが「すみません。」としか言わないので,怒ってヒートアップし,Aの顔面を二,三発殴り,横腹を五,六回踏み付けるなどの暴行を加えており,その頃,Aは,「お母さんに言って道具代は払います。」などと言っていた。その際,自分もAにビンタをしたかもしれないが,激しい暴行はしていない。」(同(第2回)・7ないし9頁),「被告人乙に言われて,丁に電話をして被告人乙に代わったところ,被告人乙が,「道具をなくされたんですよ。たまりませんからね。」な どと言ったのに対し,丁が,「きちっと払ってもらって返してもらえや。」などと言っていた。丁は声が大きいので,スピーカーにしなくても声が漏れる場合があり,Aは,おびえた感じで「集めます。」などと言っていた。 その後,被告人乙が携帯電話機で道具代を計算して,「35万でいいけど,どげんや。」などと言っていた」(同(第2回)・9ないし11頁)旨を弁解している。 また,被告人甲は,その後被告人乙と一緒にAの家に行き,被告人乙が証人①に金銭を支払うように言って断られた経緯を述べた上で(同(第2回)・11,12頁),その後にAから金銭を受け取った際の状況について,「Aから,電話で,今なら母親の機嫌がいいからいけるかもしれないと被告人乙に伝えてほしいと連絡があった。被告人乙らと一緒にAの家の近くまで車で行き,Aと被告人乙がAの家に行った。被告人乙は,1時間半くらい経って戻ってくると,運転席に乗り込み,車をバックさせながら金銭の入った封筒を自分の股の間の座席の上に置いた。バックしているからだろうなと思ったが,自分がもらったものではないのですぐに返した。自宅に帰った後,35万円の中から10万円を被告人乙から家賃代として受領した。」などと弁解している(同(第 置いた。バックしているからだろうなと思ったが,自分がもらったものではないのですぐに返した。自宅に帰った後,35万円の中から10万円を被告人乙から家賃代として受領した。」などと弁解している(同(第2回)・13ないし18頁)。 イこの点,確かに,Aが紛失した工具は,被告人乙が貸したものであるから,被告人乙がAを問い詰めて暴力を振るうなどした一方で,被告人甲自身はさしたる暴力を振るっておらず,金銭の要求も明確にはしていなかったとしてもそれ自体が不自然とはいえない。しかし,それを超えて,被告人甲が自らは金銭の要求に関与していなかったと弁解する点については,Aが,被告人甲からの具体的な暴行や金銭の要求行為をはっきりとは記憶していないと証言しつつも,被告人甲に対し証人①に言っても金銭が準備できなかったと報告すると,被告人甲からは,被告人乙と一緒にAの家に行き,被告人乙に説明してもらうように言われたなどと証言していること や,前記のとおり,壬が,被告人乙が受け取った金銭の入った封筒を被告人甲に渡し,被告人甲がその封筒を自分のバッグに入れていた旨を証言していること(この点につき,被告人甲の弁解が信用できないことは,前記のとおりである。)とそぐわないといえる。 また,その点を措くとしても,被告人甲は,被告人乙がAに激しい暴行を加えて,工具代の名目で高額の金銭を請求したことを十分認識していながら,これに特段の異議を唱えることもないまま,被告人乙と共にAの家の付近まで車で行っただけでなく,実際にAや証人①から金銭の交付を受ける際にも,Aから連絡を受けて被告人乙に同行したことを自認している。 被告人甲が,自らが恐喝行為に無関係であると思っていたのであれば,このような行動に及んだことは,常識的に考えて不自然といわざるを得ない。 ウしたがって 受けて被告人乙に同行したことを自認している。 被告人甲が,自らが恐喝行為に無関係であると思っていたのであれば,このような行動に及んだことは,常識的に考えて不自然といわざるを得ない。 ウしたがって,被告人甲の弁解は信用できない。 (4) 検討ア以上によれば,A及び壬の証言は,前記のとおり壬の証言部分の一部を除いて信用できるのに対し,被告人両名の弁解は信用できないといえる。 そして,信用できるAの証言や壬の証言部分によれば,被告人乙は,Aに対し,被告人乙が貸していた工具をAが紛失したことを問い詰め,殴る蹴るなどの暴行を加えた上で,暴行により畏怖した状態にあったAに対し金銭を要求し,その後もAの家まで行って,Aや証人①に対し金銭を繰り返し要求して,ついには,A及びAから金銭の支払をするよう頼まれた証人①から,証人①が郵便局で借入れをした金銭の交付を受けたことが認定できる。また,被告人甲は,Aに対し直接的な暴行や金銭の要求行為をしたとは認定できないものの,Aを被告人両名方に呼び出した上で,被告人乙がAに暴行を加えた際には終始その場にいて直ちにこれを止めなかっただけでなく,その後も,被告人乙が畏怖しているAに対し金銭を要求したことを十分認識しながら,Aから金銭の準備の状況の報告等を受け,被告 人乙が金銭の要求をするためにAの自宅に行く際には複数回にわたって車で付近まで同行して待機するなど,犯行に深く関与し,その実現のために重要な役割を果たすとともに,実際に,被告人乙がA及び証人①から金銭の交付を受けた後には,被告人乙から脅し取った金銭をそのまま受領したことが認められる。 このような一連の行動状況に照らすと,被告人両名は,互いに意を通じて,被告人乙においてAに対し暴行を加えた上で,遅くとも,暴行後被告人乙がAに金銭を った金銭をそのまま受領したことが認められる。 このような一連の行動状況に照らすと,被告人両名は,互いに意を通じて,被告人乙においてAに対し暴行を加えた上で,遅くとも,暴行後被告人乙がAに金銭を要求した段階では,Aが暴行により畏怖しているのに乗じてAから現金を脅し取ろうとしたものと認められる。このような暴行後の金銭の要求行為は,Aにその要求に応じなければ被告人両名から更なる危害を加えられるかもしれないと思わせるものであって,新たな脅迫行為がなされたと評価し得るのであり,その段階で,被告人両名の間で恐喝についての共謀が成立していたことも十分認定できる。 イこの点,Aや壬の証言を前提としても,暴行と金銭の要求行為の前後関係は定かではなく,被告人乙が金銭の要求をしたと確実に認定できるのは,被告人乙がAに対する暴行を終えた後の段階にすぎない。 なるほど,被告人両名は,Aが被告人乙の工具を紛失したことをきっかけに暴行を加えていたのであるから,当初からその弁償代金を支払わせることが念頭にあったとしても不自然ではないとはいえ,当初はAの不注意さに腹を立てて暴力を振るっていただけで,Aを畏怖させて金銭を要求することまでは考えていなかったとしてもおかしくはないようにも思われ,当初から恐喝の故意があったと断定するのは躊躇されるというべきである。 ウしたがって,第2の主位的訴因については合理的な疑いを入れる余地があるものの,予備的訴因については十分に認定できる。 なお,暴行の時期について,前記のとおり,Aや証人①,被告人甲は,いずれも一連の出来事が平成28年9月下旬頃であった旨を証言している のに対し,これに反する被告人乙の弁解は信用できないといえる。この点,確かに,証人①は,上記のとおり,平成28年9月下旬頃と証言する一方で,35万 8年9月下旬頃であった旨を証言している のに対し,これに反する被告人乙の弁解は信用できないといえる。この点,確かに,証人①は,上記のとおり,平成28年9月下旬頃と証言する一方で,35万円を交付した日は,被告人乙から最初に金銭の請求を受けてから,「10日ぐらい経っていると思う。」(証人①証言・11頁),「同月半ば過ぎだと思う。」(同・24頁)などとも証言しているから,被告人乙の弁護人が指摘するとおり,暴行の時期は同月20日より前のことであった可能性も否定できないといえる。しかし,証人①は,別の証言部分では金銭を要求された回数も覚えていないと証言しており(同・20,21頁),10日ぐらい経っていたという証言も感覚的なもので厳密な特定をしたものではないといえる。そして,検察官は,公訴事実においては,上記のような事件関係者の供述内容によっても暴行の時期が証拠上厳密には特定できないことを踏まえて,「頃」という幅のある特定の仕方をしたものと理解できる。以上を踏まえて,暴行の時期については,公訴事実のとおり平成28年9月下旬頃と認定するのが相当と判断した。 4 結論以上によれば,第1,第2の事実については,判示のとおり予備的訴因を認定できる。 第2 Bに対する恐喝(第3,第4の事実)について 1 争点被告人甲の弁護人は,第3の事実について,被告人甲は,Bから現金19万円を受領したが,これは被告人甲がBに対して渡した財布等の買取代金として受領したもので,脅し取ったものではなく,被告人乙と共謀もしていない旨を主張するとともに,第4の事実について,被告人甲は,Bから平成31年4月8日に現金50万円,同月9日に現金20万円を受領したが,受領した現金はBから借りたものであり,いずれも脅し取っておらず,丁との共謀もない旨を主張して 事実について,被告人甲は,Bから平成31年4月8日に現金50万円,同月9日に現金20万円を受領したが,受領した現金はBから借りたものであり,いずれも脅し取っておらず,丁との共謀もない旨を主張している。 2 Bの証言について(1) Bは,判示美容室(以下「本件美容室」という。)に勤務し,被告人甲を担当していたものであるが,法廷で,次のように証言している。 アまず,Bは,被告人甲の人柄等について,「怒るとすごく怖い印象があり,店へのクレームのときなど大声で怒鳴るなどしていた。被告人甲の父親が暴力団関係者であると聞いていたし,他にも,被告人甲と付き合いがある兄貴という人物も暴力団関係者と聞いていた。」(B証言・2,3頁)などと証言した上で,第3の被害状況について,「平成30年9月末か10月頃に,本件美容室のオーナーである証人④から被告人甲に対し,Bが本件美容室をやめることを伝えたところ,被告人甲がなぜ本人が言わないんだ,(同年9月頃にBが被告人甲から財布を受け取っていたことについて)辞めるのになぜ財布をもらったんだなどと怒り出した。そのため,被告人甲に対するおわびの場を設けることになり,同年10月11日に,本件美容室の待合室で,被告人甲と被告人乙から判示のとおり脅迫された。 被告人甲の声はかなり大きく威圧的な感じであり,顔を近づけて至近距離でにらまれるなどして怖かった。証人④が土下座をしたので,自分もすぐに後に続いて土下座をして謝ったが,話が終わらず財布の話も何度も出てきていた。はっきりとは言わないが金銭の支払を要求していると思った。」(同・4ないし8頁)などと証言している。また,Bは,同年11月29日に被告人甲から電話で金銭を要求された状況については,「被告人甲から電話で,判示のとおり「けじめの形としては付けよう。 思った。」(同・4ないし8頁)などと証言している。また,Bは,同年11月29日に被告人甲から電話で金銭を要求された状況については,「被告人甲から電話で,判示のとおり「けじめの形としては付けよう。」などと言われ,金を支払えということだと思った。断ると家に来られて自分や家族が殴られるかもしれないなどと思って支払うことにした。コンビニエンスストアのATM機で20万円を引き出して封筒に入れ,被告人甲に呼び出されたレストランに行って被告人甲に渡した。直前に証人③に電話をして報告したところ,1万円でいいなどと言われて,どうしようかと迷って1万円を 抜き差ししていたときに,慌てて渡したため,結局1万円を入れ忘れて19万円を渡した。」(同・8ないし12頁)などと証言している。 イまた,Bは,第4の被害状況については,「平成31年3月末に美容室を退職したが,同年4月8日,被告人甲からその自宅に呼び出され,判示のとおり,被告人甲から兄貴がまだむかついているなどと言われて,電話を替わった兄貴(丁)からも脅された。丁の口調は,ドスの利いた低い声で,威圧的で怖く,恐怖でいっぱいになった。その後,被告人甲から,判示のとおり200万円が相場であるなどと言われ,200万円の支払を要求されていると思った。そんな大金はないので,いったん持ち帰ってよいかなどと言って帰ろうとしたが,帰ることができなかった。偽の仕事を準備し,(偽の)給与明細も作って消費者金融に電話して借りることなどをずっと説明された。そういった方法で金を借りることは嫌だったが,今までのこともあるし,家も知られているので怖くて金を支払うことにした。」(同・14ないし18頁)などと証言した上で,その後,被告人甲の指示に従い,消費者金融2社から合計100万円を無人契約機で借りて被告人甲に渡し, ,家も知られているので怖くて金を支払うことにした。」(同・14ないし18頁)などと証言した上で,その後,被告人甲の指示に従い,消費者金融2社から合計100万円を無人契約機で借りて被告人甲に渡し,翌9日も,クレジットカードのキャッシング機能を利用して限度額である30万円を引き出して被告人甲に渡した旨証言している(同・18ないし21頁)。 (2) そこで,Bの証言の信用性を検討すると,Bは,暴力団関係者と付き合いがあると考えていた被告人甲やその交際相手である被告人乙から本件美容室で執ように因縁を付けて脅され,恐怖心からやむなく金銭を支払うことになったことや,本件美容室を退職後も,被告人甲から自宅に呼び出された上,暴力団関係者と考えていた丁から脅されて追い詰められ,消費者金融等で多額の借金をするなどして,被告人甲に金銭を渡さざるを得なくなったことなど,一連の経緯につき,当時の心情を交えて具体的に証言しており,内容的にも不自然な点は見当たらない。また,本件美容室の経営者である証人④や Bの上司(チーフ)である証人③は,平成30年10月11日に本件美容室でBが被告人甲らから脅迫された状況の一部始終を目撃しているところ,同人らが証言する被害目撃状況は,Bの証言とよく整合しており,その信用性を強く裏付けている。 これらによれば,Bの証言の基本的な信用性は高いといえる。 (3) これに対し,被告人甲の弁護人は,第3の事実につき,被告人甲は謝罪を求めていたにすぎず,Bや証人④の証言を前提としても,被告人甲はBに金銭の要求はしていないから,財物奪取に向けられた脅迫は行っていない旨を主張している。しかし,前記のようなBの証言内容に照らすと,被告人甲は,平成30年10月11日に,Bに対し,金を支払えとはっきりとは言わないものの,Bが財布を 奪取に向けられた脅迫は行っていない旨を主張している。しかし,前記のようなBの証言内容に照らすと,被告人甲は,平成30年10月11日に,Bに対し,金を支払えとはっきりとは言わないものの,Bが財布を受け取ったことを持ち出しながら,証人④やBが土下座までして謝っても話をやめずに,「けじめを付けろ。」,「落とし前をどう付けるんだ。」などと繰り返し発言していたというのであって,このような状況は,Bに対し,暗に金銭の支払を要求したものにほかならないといえる。また,被告人甲が,同年11月29日に,Bに対し「けじめの形としては付けよう。」などと電話で発言したことも,同様に暗に金銭の支払を要求したものであることは明らかである。被告人甲らがBに対し財物奪取に向けた脅迫を行ったことは十分認定できる。この点の被告人甲の弁護人の主張は採用できない。 このほか,被告人甲の弁護人は,①証人③は,捜査段階では,被告人甲らが金銭を請求していると思ったとは話しておらず,信用性がない,②Bは,美容室を退職し被告人甲と接点がなくなっていたのに,自ら被告人甲の自宅に行っており,Bが恐怖心を抱いていたとすれば不自然であると主張する。 しかし,①の点については,証人③は,検察官の再主尋問に対し,弁護人が指摘する供述調書を作成した際には当時の心境を詳しく聞かれていない,金銭の請求をしていると思わなかったと話したというはっきりした記憶もない旨を証言しており(証人③証言・20,21頁),その証言内容が特に不 自然とはいえない。また,②の点は,Bは,被告人甲に対し強い恐怖心を抱いていたから,被告人甲からの呼び出しを断わりきれずに被告人甲の自宅に行ったとしても特に不自然とはいえない。この点の被告人甲の弁護人の主張も採用できない。 (4) 以上によれば,Bの証言の基本的な信用性 たから,被告人甲からの呼び出しを断わりきれずに被告人甲の自宅に行ったとしても特に不自然とはいえない。この点の被告人甲の弁護人の主張も採用できない。 (4) 以上によれば,Bの証言の基本的な信用性は高く,被告人甲の弁護人の指摘を踏まえて慎重に検討しても揺るがないといえる。 3 被告人甲の弁解について(1) これに対し,被告人甲は,第3の事実については,まず平成30年10月11日の状況については,「Bにもう少し長く店にいてほしいという思いがあり,財布のことは正直どうでもよかった。けじめという言葉を使ったのは,Bの代わりになる人を育ててから辞めるなどしてほしいという意味であり,そのようにBに伝えた。「落とし前」という言葉は,被告人乙が言ったものであり,被告人乙がそのようなことを言うとは事前には知らなかった。」(被告人甲に対する被告人質問(第5回)・4ないし8頁)などと弁解するとともに,同年11月29日の状況については,店側に要望していたのにBと話す機会を持ってくれなかったために,本件美容室からBに電話を掛けたと説明した上で,「Bは,財布等今までもらった物を全部買い取るなどと言っていた。持ってこなくていいなどと断ったが,Bは,とりあえず20万円しかないですけどなどと言っていた。その後レストランでBと会うと,Bが「これは私としてのけじめなので,これさせてください。」などと言って金の入った封筒を差し出してきたので,何度か断ったが,結局受け取ることになった。」(同・14ないし20頁)旨を弁解している。 また,被告人甲は,第4の事実については,「Bに話を聞いてもらいたいことがあるなどと言って家に来てもらった。Bに金を借りてもらって,その金を貸してほしいと伝え,消費者金融で金を借りる方法を教えた。Bは,少し悩んでいたが,応じてくれた。このとき 話を聞いてもらいたいことがあるなどと言って家に来てもらった。Bに金を借りてもらって,その金を貸してほしいと伝え,消費者金融で金を借りる方法を教えた。Bは,少し悩んでいたが,応じてくれた。このとき,丁に連絡した記憶はない。Bが 消費者金融の無人契約機で50万円を借り入れて,車の中で受け取ったが,Bは,自分もお金に困っているから,こんなに簡単に借りられるなら,もう1件行ってくるなどと言って,別の消費者金融から30万円を借りていた。 また,翌日も,Bから金を借りることとなり,被告人乙の提案で,Bがクレジットカードのキャッシング機能を使って30万円を借り,うち20万円を受け取った。」(同・20ないし28頁),「借りた金は,ホストクラブで使うつもりだった。」(同・47ないし50頁)旨を弁解している。 (2) しかし,被告人甲の弁解は,平成30年10月11日の言動については,Bの証言だけでなく,その一部始終を目撃していた証人③や証人④が,被告人甲が暗に金銭を要求していた旨を一致して述べていることとそぐわないといえる。被告人甲の弁解が,被告人甲を除く関係者らの証言と全くそぐわないことはその弁解の信用性を大きく減殺する事情といわざるを得ない。 また,被告人甲の弁解内容を見ても,被告人甲の弁解を前提にすると,Bは,被告人甲らから脅されているわけでもないのに,自ら財布等の買取りのために20万円もの金銭の支払を申し出た上,被告人甲が何度か受け取りを断っても,なお受け取ってほしいなどと述べたことになる。このようなBの行動は,Bの当時の預金残高が23万円余りしかなかったこと(甲51)も考えれば,相当に不自然との感は否めない。さらに,第4の事実に関しても,被告人甲の弁解を前提にすれば,Bは,それまでに1度も消費者金融等を利用したことがなかっ 3万円余りしかなかったこと(甲51)も考えれば,相当に不自然との感は否めない。さらに,第4の事実に関しても,被告人甲の弁解を前提にすれば,Bは,それまでに1度も消費者金融等を利用したことがなかったのに,他人がホストクラブで使うための金銭を準備するために,職業を偽ってまで消費者金融を利用するなどして多額の借金をしたことになるから,それも相当に不自然といわざるを得ない。 (3) 以上によれば,被告人甲の弁解は信用できない。 4 判断 以上のとおり,Bの証言は信用できるのに対し,被告人甲の弁解は信用できないといえる。 そして,信用できるBの証言によれば,第3の事実については,被告人甲と被告人乙とが,第4の事実については,被告人甲と丁とが,それぞれ互いに意を通じて,判示のとおりBに因縁を付けて現金を脅し取ったものといえる。そうすると,第4の事実につき,丁が被告人甲から「けじめの金」を取ってほしいなどと言われて,判示のとおりBに金銭の支払を要求した旨を証言する点(丁証言・28,29頁)の信用性を子細に検討するまでもなく,第3,第4のいずれの事実についても,恐喝の共同正犯が成立することは優に認められる。 5 結論以上によれば,第3,第4の事実は十分認定できる。 第3 戊に対する恐喝未遂(第5の事実)について 1 争点被告人甲の弁護人は,戊を脅迫しておらず,丁との共謀もなかった旨を主張している。 2 戊の証言について(1) 戊は,第5の被害状況について,次のとおり証言している。 アまず,戊は,令和元年8月31日の状況について,「同日午後1時48分頃から,被告人甲から,電話で,妻である己が丁の金200万円をホストクラブに使い込んでいるから,自分に離婚する代わりに手切れ金として200万円を支払うよう 31日の状況について,「同日午後1時48分頃から,被告人甲から,電話で,妻である己が丁の金200万円をホストクラブに使い込んでいるから,自分に離婚する代わりに手切れ金として200万円を支払うよう言ってきた。被告人甲から,丁が暴力団関係者と聞いていたので,断ると拉致されて暴力を受けるなどと考え,怖くて承諾をした。同日午後6時28分頃から,被告人甲,丁,戊の三者で通話ができる状態で,丁から,判示のとおり200万円よろしく頼むなどと言われた。 関西弁でドスが利いた暴力団組員風の話し方であり,断るのが怖かったので,「分かりました。」と答えた。」(戊証言・11ないし15頁)などと証 言している。 イ次に,戊は,同年9月1日の状況について,「被告人甲から,電話で,判示のとおり,己が,丁の企業舎弟である2つのホストクラブに合計105万円の付けがあり,9月中に回収して丁に支払わなければならないなどと支払を求められた。最初は払える自信がないなどと言っていたが,断ると暴力団関係なのでどうなるか分からないと思って,承諾した。」(同・15ないし17頁)などと証言するとともに,同月9日の状況について,「(三者で通話ができる状態で,)丁が,己に対し,判示のとおり,払わなければ己と戊をさらうなどと怒鳴る声が聞こえ,己が「すいません。」などと答えていた。被告人甲からも,判示のとおり早くお金払った方がいいなどと言われ,自分にも同じことが起きるのかと思って怖くなった。」(同・20,21頁)などと証言している。 ウさらに,戊は,その後同月21日までの間に,被告人甲から金銭の支払方法等につきいろいろな提案を受けた旨を証言する(同・21ないし27頁)とともに,同月23日の状況について,「被告人甲に電話を掛けて,会話を録音し,(事前に相談した先輩のアドバイス 甲から金銭の支払方法等につきいろいろな提案を受けた旨を証言する(同・21ないし27頁)とともに,同月23日の状況について,「被告人甲に電話を掛けて,会話を録音し,(事前に相談した先輩のアドバイスに従い)弁護士を入れると伝えた。録音の中で,丁から,今月いっぱいの期限だからなどと言われたのは,200万円のことと思う。丁からは,己の実家から金をとるようにも言われた。録音の中で,被告人甲から期限が1週間しかないなどと言われたのは,ホストクラブの付けの105万円の請求のことと思う。」(同・27ないし29頁)などと証言している。 (2) そこで戊の証言の信用性を検討する。 ア戊は,被告人甲や暴力団組員と聞いていた丁から,己が丁の金を使い込んだとか,ホストクラブに高額の付けがあるなどと様々な名目で因縁を付けられ,恐怖心から金銭の支払を承諾せざるを得なかったことなど,1か月ほどの期間に及ぶ一連の経緯を具体的に証言しており,内容的にも特に 不自然な点は見られない。 イまた,戊は,令和元年9月23日の被告人甲や丁との間の約3時間にわたる通話内容を録音しているところ(甲342,360),その通話内容は,丁が,戊に対し,期限が迫った支払(200万円のことと思われる。)に関して直接会って話すようしつこく求めた上で(甲360・1ないし4頁),その後丁と電話を替わった被告人甲が,戊に対し,丁や被告人甲と会いもしないで支払はどうするのかなどと問い詰めるとともに,ホストクラブの付けなど自らが立て替えたという金のことも持ち出して繰り返し支払を求めており(同・4ないし26頁),これに対して戊が「弁護士入れました。」などと言うと(同・27頁),自らその理由等を問い詰めるとともに,丁に対しても戊が弁護士を依頼したと告げ(同・27ないし35頁),これを受 ・4ないし26頁),これに対して戊が「弁護士入れました。」などと言うと(同・27頁),自らその理由等を問い詰めるとともに,丁に対しても戊が弁護士を依頼したと告げ(同・27ないし35頁),これを受けた丁が判示のとおり戊を激しく怒鳴り付けると,その合間に,被告人甲が,「借りた金も返さんで弁護士を入れるらしい。」,「いや,詐欺やろう,詐欺。」などと戊を責め立てるなどしている(同・36ないし54頁)。このような一連のやり取りからは,被告人甲は,丁と意を通じて,丁のことを暴力団組員と考えて畏怖している戊に対し,己が使い込んだとして請求していた丁の200万円や,己のホストクラブの付けとして請求していた105万円を含め,様々な名目で因縁を付け,金銭を脅し取ろうとしていたものにほかならないといえる。確かに,被告人甲は,上記通話では200万円の支払に直接的には言及しておらず,部分的に見れば丁をなだめているともとれる発言をしていること(同・37,38頁)も認められるが,上記のとおり通話内容を全体として見れば,被告人甲が丁と別個に金銭の支払を求めていたとは考え難いのであり,被告人甲は,丁と一体となって,戊に対し,200万円も含めた様々な名目で金銭を支払わせようとしていることは十分に認められる。以上のような通話内容は,戊の証言内容を強く裏付けるものといってよい。 ウ以上によれば,戊の証言の基本的な信用性は高いといえる。 (3) これに対し,被告人甲の弁護人は,①戊は,被告人甲が怖かったと証言しているが,令和元年9月頭頃に被告人甲から金を借りているが,怖がっている相手から金銭を借りることは不自然である,②戊は,被告人甲からも200万円を請求された旨供述しているが,3時間に及ぶ録音内容において,被告人甲から200万円の話は一切出ておらず,被 が,怖がっている相手から金銭を借りることは不自然である,②戊は,被告人甲からも200万円を請求された旨供述しているが,3時間に及ぶ録音内容において,被告人甲から200万円の話は一切出ておらず,被告人甲が有罪となる方向への記憶の変異や勘違いが起きている可能性があるなどと主張している。しかし,①の点は,戊は,(銀行の口座から)生活費を下そうとしたところ残高がゼロだったので,己に電話で聞いたところ,近くにいた被告人甲が生活費がないのだろうということで1万円を振り込んできたと証言しており(戊証言・29,30頁),そのような経緯で,被告人甲の申出に従って1万円程度の金額の振込みを受けたからといって,戊が被告人甲を怖がっていなかったという疑いは生じない。また,②の点は,前記のとおり,令和元年9月23日の通話内容は,被告人甲は,丁と意を通じて,200万円も含め様々な名目で因縁を付けて金銭の支払を求めていると認められる。このような通話に先立ち,被告人甲自身が戊に200万円の支払を求めていたとしても何ら不自然ではなく,戊の記憶が変容しているなどという疑いは生じない。 その他に被告人甲の弁護人が指摘する点を見ても採用できるものはない。 (4) 以上によれば,戊の証言の基本的な信用性は高く,被告人甲の弁護人の指摘を踏まえて慎重に検討しても,これを左右するものはないといえる。 3 被告人甲の弁解について(1) これに対し,被告人甲は,200万円の請求は丁と己が話し合って決めたことで,自分はホストクラブの付けについて請求はしたものの,自らは戊を脅していない旨を弁解している。すなわち,ア被告人甲は,丁の200万円に関しては,「戊に対し丁が暴力団員であると話したことはない。」(被告人甲に対する被告人質問(第5回)・28, 29頁)などと弁 弁解している。すなわち,ア被告人甲は,丁の200万円に関しては,「戊に対し丁が暴力団員であると話したことはない。」(被告人甲に対する被告人質問(第5回)・28, 29頁)などと弁解した上で,令和元年8月31日の状況について,「(己が丁の200万円を使い込んだことにして戊に請求したのは,)丁と己が話して決めたことである。戊に請求をしていたのは丁であり,己もどうにかしてよなどと言っていたが,自分は何も言っていない。」(同・29,30頁)などと弁解するとともに,令和元年9月9日の状況については,「丁と己が演技で会話をして戊に金を払わせようとしており,丁に指示をされて,自分が電話をつないで戊に聞かせたが,丁がどのような言葉を言うかは事前には知らなかった。」(同・33ないし35頁)などと弁解している。 イまた,被告人甲は,ホストクラブの付けに関し,令和元年9月1日の状況について,「戊に対し,辛は掛け(付け)ができないので,自分が五,六十万円を立て替えており,庚の掛け(付け)は55万円残っていると伝えた。戊に対し,「105万返して。」などと言うと,戊から,毎月3万円ずつ返済すると言われたので,了承した。丁が可愛がっているホストたちがいるところだとは言ったが,脅すつもりではなかった。」(同・31,32頁)旨を弁解している。 ウさらに,被告人甲は,令和元年9月23日の通話内容については,「録音に出てくる10万円は,戊に頼まれて貸した金のことであり,55万円は庚の掛け(付け)のことである。55万円については,己が電話を替わって戊に払うように言っており,自分もできる限り払ってほしいとは思っていた。電話の中で怒る場面があったのは,戊が余りに無言で何も話さず,問いただしても無言であったのでヒートアップしたにすぎない。」(同・3 うように言っており,自分もできる限り払ってほしいとは思っていた。電話の中で怒る場面があったのは,戊が余りに無言で何も話さず,問いただしても無言であったのでヒートアップしたにすぎない。」(同・39ないし41頁)などと弁解している。 (2) しかし,被告人甲の弁解の信用性については,次の事情が指摘できる。 アそもそも丁と戊は,互いに連絡先を知らず,常に被告人甲を介してやり取りをしていたというのであって(戊証言・15頁,丁証言・14頁), 本件に関する一連のやり取りも,被告人甲を介して三者で通話するなどして行われている(甲315)。それにもかかわらず,被告人甲自身は電話を取り次いだだけで,200万円の恐喝行為には全く関与していなかったなどというのは,常識的に考えて,不自然といわざるを得ない。実際に,令和元年9月23日の通話の録音内容は,前記のとおり,被告人甲が,丁と意を通じ,戊に対し200万円を含めて様々な名目で金銭を脅し取ろうとしていたものにほかならないといえ,被告人甲の弁解内容は客観的証拠ともそぐわない。 イまた,被告人甲は,捜査段階では,自らが戊に対し己がホストクラブで200万円を使い込んだことを話したことを認めていた(被告人甲に対する被告人質問(第5回)・69頁)。このように,被告人甲が法廷で弁解する内容は,捜査段階から供述の根幹部分に大きな変遷が見られるにもかかわらず,被告人甲は,そのような変遷の理由について合理的な理由を説明していない。このような供述状況は,被告人甲が真実を語っているとすれば不自然といわざるを得ない。 (3) したがって,被告人甲の弁解は信用できない。 4 判断以上によれば,戊の証言は信用できるのに対し,被告人甲の弁解は信用できないといえる。そして,信用できる戊の証言に加え,前記録音内容 (3) したがって,被告人甲の弁解は信用できない。 4 判断以上によれば,戊の証言は信用できるのに対し,被告人甲の弁解は信用できないといえる。そして,信用できる戊の証言に加え,前記録音内容も併せ考慮すると,丁が,被告人甲から相談を受け,己が丁の金を使い込んだことにして,戊を脅すことにしたなどと一連の経緯を証言する点(丁証言・8ないし20頁)の信用性を子細に検討するまでもなく,被告人甲と丁とが,互いに意を通じて,戊に対し合計305万円の支払を要求したものであることは十分に認定できる。第5の事実について,被告人甲と丁に恐喝の共同正犯が成立することは十分認定できる。 5 結論 以上によれば,第5の事実は十分認定できる。 (罪となるべき事実に関連する情状に関する事実) 1 第1,第2の犯行について(被告人両名関係)被告人両名は,Aが仕事を休んだことや職場で使う工具をなくしたことをきっかけに,Aに殴る蹴るの暴行を加えた上,金銭の支払を要求して合計35万5000円を脅し取った(第1,第2)。 被告人甲は,第1の犯行では,自らAに暴行,脅迫を加えた上で金銭を要求するなどして犯行を主導した。また,被告人甲は,第2の犯行でも,Aに対して直接暴行,脅迫をしていないとはいえ,事実認定の補足説明に記載したとおり,犯行に深く関与し,その実現のために重要な役割を果たしただけでなく,犯行後に,脅し取った金銭を被告人乙からそのまま受け取った。また,被告人乙は,いずれの犯行でもAに暴行を加える実行行為を行っており,特に,第2の犯行では,自ら暴行や金銭の要求を行い,Aの家まで行ってAやその母に直接金銭を要求するなど,中心的な役割を果たした。 Aは,被告人両名に対し厳しい処罰感情を表明している。 2 第3ないし第5の犯行につ 自ら暴行や金銭の要求を行い,Aの家まで行ってAやその母に直接金銭を要求するなど,中心的な役割を果たした。 Aは,被告人両名に対し厳しい処罰感情を表明している。 2 第3ないし第5の犯行について(被告人甲関係)被告人甲は,美容室の担当美容師であったBに対し,被告人甲から財布を譲り受けたにもかかわらず,退職を決めたことに因縁を付けるなどして合計149万円を脅し取った(第3,第4)ほか,戊の妻である己が丁の金を使い込んだ,己が丁のホストクラブに付けがあるなどとして因縁を付け,合計305万円を要求したが,未遂に終わった(第5)。 被告人甲は,いずれの犯行においても,被害者を直接脅迫した実行犯であり,共犯者らがいずれも犯行の一部のみに加担しているのに対し,被告人甲は,各被害者と直接連絡を取り,繰り返し金銭を要求するなど不可欠の役割を果たした。 B及び戊は,いずれも,被告人甲に対し厳しい処罰感情を表明している。 令和3年1月12日 福岡地方裁判所第2刑事部 裁判長裁判官岡 﨑 忠之 裁判官 𠮷 野内庸子 裁判官平岩彩夏

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