- 1 -平成23年5月25日判決言渡平成22年(ワ)第73号地位確認等請求事件 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 原告が,被告パナソニック電工株式会社に対し,原告が被告パナソニック電工株式会社に対する雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認する。 2 被告パナソニック電工株式会社は,原告に対し,平成21年4月1日から毎月15日限り,金23万6396円及びこれに対する各支払日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 3 被告らは,原告に対し,各自金330万円及びこれに対する平成21年3月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 訴訟費用は被告らの負担とする。 第2 事案の概要及び当事者の主張本件は,原告が,労務の提供先であった被告パナソニック電工株式会社(以下「被告パナソニック」という。)に対し,被告パナソニックとの間で黙示の直接雇用契約関係が存在するとして,黙示の雇用契約に基づき,雇用契約上の地位が存在することの確認及び上記黙示の直接雇用契約に基づく未払賃金の支払を求めるとともに,雇用契約を締結していた被告アロービジネスメイツ株式会社(以下「被告ABM」という。)及び被告パナソニックに対し,原告をして,労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(以下「労働者派遣事業法」という。)に違反する不法な就労形 - 2 -態のまま就労を継続させ,最終的に原告の雇用を喪失せしめたことが,被告らの原告に対する共同不法行為を構成し,その結果,原告に精神的苦痛が生じたとして,不法行為に基づき,損害賠償を求める事案である。 1 請求原因その1(黙示 終的に原告の雇用を喪失せしめたことが,被告らの原告に対する共同不法行為を構成し,その結果,原告に精神的苦痛が生じたとして,不法行為に基づき,損害賠償を求める事案である。 1 請求原因その1(黙示の雇用契約上の地位確認及び賃金支払請求)(1) 原告は,被告パナソニックのα工場(以下「本件工場」という。)において労務の提供をしていた者,被告パナソニックは,電気機械器具等の製造等を目的とする株式会社,被告ABMは,労働者派遣事業法に基づく一般労働者派遣事業等を目的とする株式会社である。 (2) 原告は,平成15年8月1日から,被告ABMを通じて,被告パナソニックに対し,労務の提供を開始した。 (3)ア被告パナソニックは,原告の就労に先立って,被告パナソニックの担当者をして,原告と面接させ,原告の採用の可否を決定していた。 イ原告は,本件工場の品質保証部品質評価グループに配属され,同グループのリーダーの指揮命令下で就労を開始したが,その建物の2階にある別の部署の作業をしているグループのリーダーの指揮命令に従って労務を提供したこともあった。 ウ原告が従事した業務は,成型の作業を中心とする製造現場における物の製造業務であり,必ずしも専門的な知識,技能及び経験を必要とする業務ではなかったが,雇用契約書上は,平成15年8月1日から平成18年9月30日までの間は,「調査業務」に,同年10月1日から平成19年3月31日までの間は,「研究開発業務」に,それぞれ従事しているものとされ,業務を迅速かつ的確に遂行するために専門的な知識,技術又は経験を必要とする業務に従事していることになっていた。 (4)ア上記(3)によれば,被告パナソニックは,派遣前に労働者を特定する行為(いわゆる事前面接)をした上,労働者派遣事業法上禁止されていた物の製造業 とする業務に従事していることになっていた。 (4)ア上記(3)によれば,被告パナソニックは,派遣前に労働者を特定する行為(いわゆる事前面接)をした上,労働者派遣事業法上禁止されていた物の製造業務について労働者の派遣を受けていたことになるから,労働者供 - 3 -給事業を禁じる職業安定法44条に違反した労務の提供を受けていたものであり,直接雇用の原則を示したと解される同条の趣旨にも照らせば,原告を派遣労働者である旨主張することは許されないというべきである。 イ上記(4)アを前提として,上記(3)によれば,被告パナソニックは,原告を,被告パナソニックの従業員の指揮命令の下で就労させ,原告による労務を受領していたのであるから,原告と被告パナソニックとの間で雇用契約が成立していたというべきである。 (5)ア被告ABMは,原告に対し,平成21年2月中旬ころ,同年3月31日をもって,雇用契約を解除するとの意思表示(以下「本件解除通告」という。)をした。 イ原告は,本件解除通告により,平成21年4月1日以降,被告パナソニックでの就労が不可能な状況になった。 (6) 原告は,平成21年4月1日まで直前3か月の平均賃金は,1か月あたり23万6396円であった。 (7) よって,原告は,被告パナソニックに対し,黙示の雇用契約に基づき,原告が雇用契約上の地位を有することの確認及び未払賃金の支払を求めるとともに,原告の就労が不可能な状態となった日である平成21年4月1日以降の賃金の各支払日(毎月15日)の翌日から上記未払賃金(1か月あたり23万6396円)の各支払済みまで,商事法定利率である年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。 2 請求原因その1(黙示の雇用契約上の地位確認及び賃金支払請求)に対する被告パナソニックの認否及びこ 6396円)の各支払済みまで,商事法定利率である年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。 2 請求原因その1(黙示の雇用契約上の地位確認及び賃金支払請求)に対する被告パナソニックの認否及びこれに対する被告パナソニックの主張(1) 請求原因(1),(2)は認める。 (2)ア請求原因(3)アは否認する。原告が,被告パナソニックに対する労務提供を開始する前に,原告と被告パナソニックの従業員が顔を合わせた事実はあるが,これは,労務提供者に対する本件工場の事業概要や職務内容の - 4 -説明を行ったにすぎないのであり,被告パナソニックによる採用のための面接という性質のものではない。そして,上記のような説明を行うことは,派遣労働者にとって就業可能性,技術上の適応性等の判断に資し,又は,契約内容の事前理解のために必要な行為として,労働者派遣事業法上適法とされているものであり,実務上もよく行われているものである。 イ請求原因(3)イのうち,原告が,本件工場の品質保証部品質評価グループに配属され,同グループのリーダーの指揮命令下で就労を開始したことは認め,その余は否認する。本件工場の品質保証部の作業の一部は,通常使用しているスペース以外の場所で行っており,原告が指摘する作業はそのことを示しているにすぎず,他のグループの指揮命令者の指揮命令下で業務をさせた事実は存在しない。 ウ請求原因(3)ウのうち,雇用契約書上の記載の点及び原告の業務が「調査業務」とはいえないことはいずれも認め,その余の点は否認する。原告の業務は専門的な知識,技術及び経験が必要な研究開発業務であり,これを物の製造にすぎないとする原告の主張は,原告の業務内容の正確な理解に欠けるものである。 (3)ア請求原因(4)アは否認又は争う。労働者派遣契約に基づく労働者派 験が必要な研究開発業務であり,これを物の製造にすぎないとする原告の主張は,原告の業務内容の正確な理解に欠けるものである。 (3)ア請求原因(4)アは否認又は争う。労働者派遣契約に基づく労働者派遣である以上は,労働者派遣事業法の要件を充足するか否かに関わりなく,職業安定法4条6項にいう労働者供給に該当せず,職業安定法44条違反の問題も生じないというべきであり,また,労働者派遣契約が労働者派遣事業法に違反するものであったとしても,特段の事情のない限り,派遣元と派遣労働者との間の雇用契約及び派遣元と派遣先の労働者派遣契約が無効になることはないというべきである。(最二小判平成21年12月18日民集第63巻10号2754頁参照。以下「最高裁平成21年判決」という。)イ請求原因(4)イは否認又は争う。原告と被告パナソニックとの間には雇用 - 5 -契約は存在しない。 (5) 請求原因(5)は認める。ただし,原告が被告パナソニックにおいて就労していないのは,被告ABMとの間の雇用契約が終了したからにすぎない。 (6) 請求原因(6)は否認する。原告の平成20年7月から同年9月までの間の平均賃金が原告主張の額であることは争わないが,原告の平成21年1月から同年3月までの間の平均賃金は,21万9360円であり,雇用契約終了直前3か月前の平均賃金としては,21万9360円であるというべきである。 3 請求原因その2(不法行為)(1) 原告は,本件工場において労務の提供をしていた者,被告パナソニックは,電気機械器具等の製造等を目的とする株式会社,被告ABMは,労働者派遣事業法に基づく一般労働者派遣事業等を目的とする株式会社である。 (2) 原告は,被告パナソニックの指揮命令を受け,被告パナソニックとの間で,黙示の雇用契約が存在して 会社,被告ABMは,労働者派遣事業法に基づく一般労働者派遣事業等を目的とする株式会社である。 (2) 原告は,被告パナソニックの指揮命令を受け,被告パナソニックとの間で,黙示の雇用契約が存在していたところ,形式的には,被告ABMとの間の雇用契約及び被告パナソニックと被告ABMとの間の労働者派遣契約の下で,労務提供を行わされてきた。 (3) 被告パナソニックは,被告ABMをして,本件解除通告により,原告との間の形式上の雇用契約を解消させ,原告が,被告パナソニックにおいて黙示的に有していた雇用契約上の地位を侵害した。 (4)ア上記(2),(3)によれば,被告らは,原告を違法な派遣就労により労働させ,使用収益したのみならず,その地位を不当に奪ったことになるから,このような被告らの行為は,原告に対する共同不法行為を構成する。 イ(ア) 上記不法行為に伴う原告の精神的苦痛を慰謝するに足りる金額は,それぞれ300万円を下らない。 (イ) 上記精神的苦痛にかかる損害賠償を求めるため,本件訴訟を提起する必要があり,その際,弁護士に訴訟追行を委任しなければならなかっ - 6 -たところ,上記不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は,30万円を下らない。 (5) よって,原告は,被告らに対し,不法行為(民法719条1項)に基づき,各自330万円及び不法行為の最終日(就労が不可能な状態になった日)である平成21年3月31日から支払済みまで民事法定利率である年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 4 請求原因その2(不法行為)に対する被告らの認否請求原因(1),原告と被告ABMとの間に雇用契約があったこと,被告パナソニックと被告ABMとの間に労働者派遣契約があったこと,前記雇用契約及び前記労働者派遣契約に基づき,原告が本件工場におい 否請求原因(1),原告と被告ABMとの間に雇用契約があったこと,被告パナソニックと被告ABMとの間に労働者派遣契約があったこと,前記雇用契約及び前記労働者派遣契約に基づき,原告が本件工場において労務提供をしていたこと,被告ABMが原告に対して本件解除通告をしたことの各事実はいずれも認め,その余はいずれも否認又は争う。 第3 当裁判所の判断 1 前提となる事実関係当事者の間に争いのない事実,証拠(甲1の1ないし9,甲2の1ないし16,甲3,22,乙1の1,1の2,1の3の1,1の3の2,1の4,2の1ないし12,4の1ないし3,5の1ないし4,乙6ないし8,10,21 の1ないし13,乙22,23,証人A,同B,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。 (1) 原告は,平成15年8月1日から平成21年3月31日までの間,被告ABMとの間で雇用契約を締結し,本件工場の被告パナソニック品質保証部品質評価グループで労務の提供をしていた者である。(当事者の間に争いのない事実,原告本人,弁論の全趣旨)(2)ア被告パナソニックは,電気機械器具及び各種機械器具の製造並びに販売等を目的とする株式会社,被告ABMは,一般労働者派遣事業等を目的とする株式会社である。被告ABMは,被告パナソニックの100パーセ - 7 -ント子会社であるが,全従業員272名のうち,被告パナソニックからの出向者は11名と4パーセント程度に留まっている。 被告ABMは,遅くとも平成14年3月16日から平成21年3月31日までの間,被告パナソニックとの間で労働者派遣契約を締結していたところ,被告パナソニック又は被告パナソニックの関連会社との間でのみ,労働者派遣契約を締結しているのではなく,他の会社との間においても,労働者派遣契約を締結 ックとの間で労働者派遣契約を締結していたところ,被告パナソニック又は被告パナソニックの関連会社との間でのみ,労働者派遣契約を締結しているのではなく,他の会社との間においても,労働者派遣契約を締結し,取引先の3割から4割程度は,被告パナソニック又はその関連会社以外の会社との取引が占めていた。(以上,当事者の間に争いのない事実,乙1の1,1の2,1の3の1,1の3の2,1の4,証人B,弁論の全趣旨)イ被告パナソニックと被告ABMとの間の労働者派遣契約においては,派遣代金が,労働者の労働時間及び時間当たりの単価に応じて決定されることとなっていたが,被告ABMがその従業員に対して支払う賃金は,その派遣代金の額と必ずしも連動していなかった。なお,原告の派遣に係る労働者派遣契約においては,平成15年8月から平成18年3月までの時間当たり単価は1820円,同年4月からは1850円,平成19年4月からは1920円,平成20年4月からは1970円,同年10月からは2010円であった。そして,被告パナソニックとしては,被告ABMがその従業員に対して,どのような形で賃金を決定し,いくら支払っているかについては,全く認識していなかった。 また,被告パナソニックは,被告ABM以外の会社とも労働者派遣契約を締結し,労務の提供を受けていたが,派遣会社が決定した派遣労働者の受け入れを拒否したことはない。(以上,当事者の間に争いのない事実,乙1の1,1の2,1の3の1,1の3の2,1の4,2の1ないし12, 21 の1ないし13,証人A,同B,弁論の全趣旨)(3)ア被告ABMは,被告パナソニックから,平成15年7月ころ,派遣社 - 8 -員3名を派遣してほしい旨申し入れを受けたため,同月下旬ころ,三重県四日市市周辺で派遣社員募集の広告を出したところ ア被告ABMは,被告パナソニックから,平成15年7月ころ,派遣社 - 8 -員3名を派遣してほしい旨申し入れを受けたため,同月下旬ころ,三重県四日市市周辺で派遣社員募集の広告を出したところ,これに応じて原告を含む複数の者からの応募(履歴書の送付)があり,被告ABMにおいて,原告を含めた約10名の者(以下,これらの者を総称して「本件参加者」という。)を選別した。そして,被告ABMは,そのころ,本件工場内で,本件参加者に対して,被告パナソニックや仕事内容の概要に関する説明を行うとともに,本件参加者からの質問を受ける会(以下「本件説明会」という。)を開くこととし,その後に,被告ABMの担当者(訴外C。)が,本件参加者に対して面接(以下「本件面接」という。)を行うこととした。 そして,本件説明会では,被告パナソニックの従業員である訴外D(人事担当者)及び同Aが,被告パナソニックや仕事内容の概要に関する説明を行い,本件参加者からの質問に対する回答をしたが,その所要時間は10分から15分程度であった。また,本件面接を行ったときには,被告パナソニックの従業員は同席しておらずCが単独で行ったほか,被告ABMの会社概要が記載されたパンフレットを配布した。(乙6,乙22,原告本人,証人A,同B,弁論の全趣旨)イ被告ABMは,本件面接の結果,同月28日,原告の採用を決め,同年8月ころ,原告との間で雇用契約を締結した。そして,原告に対して派遣社員・採用決定通知書及び契約社員就業規則を交付し,原告からは,入社宣誓書を徴収した。その当時の原告の労働条件は,契約期間が平成15年8月1日から同年10月10日まで,就業時間が午前8時50分から午後5時15分まで(休憩時間45分,実労働時間7時間40分),時給1300円であり,業務内容は「第9号調査」と 契約期間が平成15年8月1日から同年10月10日まで,就業時間が午前8時50分から午後5時15分まで(休憩時間45分,実労働時間7時間40分),時給1300円であり,業務内容は「第9号調査」とされ,就業場所は,本件工場品質保証部品質評価グループであった。 その後,原告の労働条件は,契約期間は概ね6か月となり,時給も平成16年4月からは1320円,平成17年4月からは1330円,同年1 - 9 -0月からは1350円,平成18年4月からは1380円,平成19年4月からは1430円,平成20年4月からは1460円,同年10月からは1490円となっていたほか,業務内容については,平成18年10月以降,「第17号研究開発」と変更になったが,就業時間及び就業場所には全く変更がなかった。(以上,甲1の1ないし9,甲3,乙4の1ないし3,乙7,8,21 の1ないし13,乙22,原告本人,証人A,同B,弁論の全趣旨)(4)ア原告の給与は,毎月15日に被告ABMが支払っており,所得税及び住民税の源泉徴収も被告ABMが行っていた。また,被告パナソニックとしては,被告ABMがその従業員に対して,どのような形で賃金を支払っているかを認識していなかった。 (甲2の1ないし16,乙5の1ないし4,乙10,22,23,証人A,同B,弁論の全趣旨)イ(ア)a 被告ABMは,平成15年8月から平成18年12月までの間,原告と雇用契約を締結(更新)する度,原告に対し,雇用契約書とともに3枚複写となった管理表を渡し,毎月月末に,1か月間の原告の労働時間について,原告が自ら労働時間を記入した上で,ファクシミリ送信及び郵送の方法によって送付するよう依頼していた。 そして,原告は,実際に,毎月末に,被告ABMに対して管理表をファクシミリ送信していた。(な いて,原告が自ら労働時間を記入した上で,ファクシミリ送信及び郵送の方法によって送付するよう依頼していた。 そして,原告は,実際に,毎月末に,被告ABMに対して管理表をファクシミリ送信していた。(なお,本人が直接行ったか,被告パナソニックを介して行ったかについては,当事者の間に争いがあるが,最終的に被告ABMに対して上記管理表を送信していたこと自体については,当事者の間に争いはない。)また,平成19年1月以降は,原告が,被告ABMのウェブサイトにアクセスして自らの労働時間を申告する方法に変更され,被告ABMは,その申告により,労働時間を把握していた。 b 原告は,6か月経過後に10日,その後は1年経過するごとに1 - 10 -日ずつ増加する日数の年次有給休暇が与えられていたところ,その取得に際しては,被告パナソニックに連絡した上で,被告ABMに対して年次有給休暇を取得する旨通知しており,その後,年次有給休暇を取得した旨管理表に記載する又は上記被告ABMのウェブサイトにアクセスして申告していた。そして,それらのことを通じて,被告ABMは,原告の年次有給休暇の取得及び消化を把握していた。 (以上,甲2の2,2の6,2の12,乙5の1,乙7,10,23,証人B,原告本人,弁論の全趣旨)(イ) 被告ABMの担当者は,原告と概ね1か月に1度程度,定期的に面談を行い,待遇や契約継続に関する希望等を聴取していた。そして,原告は,上記面談の際,被告ABMの担当者に対し,待遇改善(時給の上昇)の要望を行い,実際にそれを反映して,原告の意向に沿った結果が生じたこともあった。また,原告は,半年に1回程度,被告パナソニックの担当者と面談することもあったが,それは,労働安全衛生の観点からなされるものであり,所要時間は10分から15分程度であった 結果が生じたこともあった。また,原告は,半年に1回程度,被告パナソニックの担当者と面談することもあったが,それは,労働安全衛生の観点からなされるものであり,所要時間は10分から15分程度であった。なお,被告パナソニックは,その正規従業員に対しては,人事考課を目的として少なくとも1時間程度の面談を実施している。(乙22,23,証人A,同B,原告本人,弁論の全趣旨)(ウ) 原告は,被告ABMが加入していた各種社会保険(健康保険,厚生年金,雇用保険)の対象となる従業員であり,各種社会保険料(健康保険,厚生年金,雇用保険)の控除も被告ABMが行っていた。そして,原告が,平成20年12月ころ,健康保険被保険者証を紛失した際も,原告がBに連絡を取って,被告ABMに健康保険被保険者証を再発行してもらうということもあった。 また,原告は,被告ABMが1年に1回,定期的に実施していた健 - 11 -康診断(ただし,被告パナソニックと被告ABMは,同一の健康保険組合に属しているため,被告パナソニックが実施する健康診断と同一のもの。)を受診していた。(以上,甲2の1ないし16,乙5の1ないし4,乙10,23,証人B,原告本人,弁論の全趣旨)ウ原告は,本件工場品質保証部品質評価グループに配属され,主に本件工場管理棟1階において,プラスチック材料から金型プレスを用いるなどして成形テストピースを作成する作業を担当していた。このテストピースは,曲げ強度,引っ張り強度,耐熱性等様々な観点のテストに使用される製品である。なお,原告は,本件工場のフェノール第二工場2階において,1か月に一,二回程度の頻度で作業をしたこともあるが,これは,その場所に上記テストピース作成に必要な金型があったことによるものである。また,プラスチックの成型をする際に使用する 二工場2階において,1か月に一,二回程度の頻度で作業をしたこともあるが,これは,その場所に上記テストピース作成に必要な金型があったことによるものである。また,プラスチックの成型をする際に使用する機械のメンテナンスのようなテストピース作成業務そのものではないが,それに付随する業務を担当することはあったが,他の部署の指揮命令下におかれたことはない。 原告は,本件工場で就業を開始した当時は,テストピースの作成業務を担当した経験は全くなく,被告パナソニックの従業員ら(訴外E,A)から,様々な教育や指導(いわゆるOJT(実際の仕事を通じて、必要な技術、能力、知識、 あるいは態度や価値観などを身に付けさせる教育訓練)のことである。)を受けながら作業手順や業務を習熟していった。このような被告パナソニックの従業員らによる教育や指導は,原告が就労を開始した平成15年8月1日から平成18年10月12日までの間,継続的に行われていた。 原告は,本件工場内ではまじめに仕事を行い,しばしば時間外労働も行っていただけでなく,他の従業員らとトラブルを起こすこともなく職場になじんでいたほか,原告より後に本件工場での勤務を開始した被告パナソニックの正規従業員に対してテストピースの作成業務について教えたこと - 12 -もあった。(以上,甲1の1ないし9,2の1ないし8,2の11 ないし16,甲22,乙4の1ないし3,乙16,21 の1ないし14,乙22,証人A,原告本人,弁論の全趣旨)(5) 被告パナソニックは,平成20年9月ころのいわゆるリーマンショック(アメリカ合衆国の大手証券会社兼投資銀行であったリーマンブラザーズの経営破綻とそれに伴う株価暴落等の世界的な金融危機,同時不況)以降の世界的な急激な不況をきっかけとして,平成21年3月末日限りで被告A メリカ合衆国の大手証券会社兼投資銀行であったリーマンブラザーズの経営破綻とそれに伴う株価暴落等の世界的な金融危機,同時不況)以降の世界的な急激な不況をきっかけとして,平成21年3月末日限りで被告ABMとの間の労働者派遣契約を終了させることを決定した。そこで,被告ABMのF支社の支社長であった訴外G及びBは,平成21年2月16日,原告に対し,原告と被告ABMとの間の雇用契約の終了とその後の新たな雇用契約の不締結を告知した(本件解除通告)。その際,G及びBは,リーマンショック以降の著しい経済収縮により,新製品開発ニーズも減少したため,本件工場全体で試作品の開発業務が縮小しており,業務全般を被告パナソニックの正規従業員が担当するので,被告パナソニックと被告ABMとの間の労働者派遣契約が平成21年3月末日で終了することを説明した。 Bは,同年3月2日,原告に対し,被告ABMの再就職支援制度として,<A>雇用契約終了後1か月間について,被告ABMと希望者との間で雇用契約を締結する,<B>当該希望者は,業務に従事する必要はなく,再就職先を探すことに専念して良い,<C>上記1か月間については,従前の賃金の約6割を休業手当として,支給するという概要の制度がある旨を説明したところ,原告からは,同制度の利用を希望する旨の申し出があった。また,そのころ,Bは,原告から,未消化の年次有給休暇について,これを全て取得させてほしいとの希望を伝えられ,被告パナソニックと調整した結果,原告の意向どおり,原告に上記未消化の年次有給休暇を全て取得させることが可能となった。 Bは,同年4月15日に原告と面談した際,名古屋勤務の訴外H株式会社 - 13 -の住宅営業の職を紹介したが,原告はこれを断り,四日市市周辺勤務の正社員の職を希望した。なお,Bは,そのような Bは,同年4月15日に原告と面談した際,名古屋勤務の訴外H株式会社 - 13 -の住宅営業の職を紹介したが,原告はこれを断り,四日市市周辺勤務の正社員の職を希望した。なお,Bは,そのような内容の職を探したものの,当該条件に合致する職はなかった。そして,被告ABMは,原告に対し,1か月分の従前賃金の約6割相当額を支給した。(以上,当事者の間に争いのない事実,甲22,乙5の3,5の4,乙22,23,証人A,同B,原告本人,弁論の全趣旨) 2 請求原因その1(黙示の雇用契約上の地位確認及び賃金支払請求)について(1) はじめに本件の最大の争点は,原告と被告パナソニックとの間で,黙示の雇用契約が存在するか否かという点にある。そもそも,雇用契約も他の私法上の契約と同様,当事者間の明示の合意によって締結されるばかりでなく,黙示の合意によっても成立し得るところ,雇用契約の本質は使用者が労働者を指揮命令及び監督し,労働者が賃金の支払を受けて労務を提供することにあるから,黙示の合意により雇用契約が成立したかどうかは,明示された契約の形式だけでなく,当該労務供給形態の具体的実態により両者間に事実上の使用従属関係があるかどうか,この使用従属関係から両者間に客観的に推認される黙示の意思の合致があるかどうかによって判断するのが相当である。 そして,本件においては,原告は,被告ABMとの間で,雇用契約があったこと(これが形式的なものに留まるか,実質を伴うかには争いがあるが,外形的に契約が存在していたこと自体は当事者の間に争いはない。),原告が実際に労務を提供していたのが本件工場(被告パナソニックの工場)であることについてはいずれも,当事者の間に争いがないところ,このような事実関係の下においては,明示的に存在する雇用契約上の使用者(被告ABM) を提供していたのが本件工場(被告パナソニックの工場)であることについてはいずれも,当事者の間に争いがないところ,このような事実関係の下においては,明示的に存在する雇用契約上の使用者(被告ABM)が形式的な存在にすぎず,その使用者が労働者(原告)の労務管理を行っていない反面,労務提供先(被告パナソニック)が実質的に労働者の採用,賃金額その他の就業条件を決定し,配置,懲戒等を行い,派遣労働者の業務内 - 14 -容・期間が労働者派遣事業法で定める範囲を超え,派遣先の正規従業員と区別し難い状況下で当該労働者に労務を提供させるなど,当事者間に事実上の使用従属関係がある(当該労務提供先が,労務給付請求権を有するとともに,当該労働者に対して賃金を実質的に支払っている関係にある)と認められる特段の事情があるときには,労務提供先と労働者との間に黙示の雇用契約が成立したと認められると解するのが相当である。 そこで,上記指摘のような黙示の雇用契約成立をうかがわせる各事情について,本件においてその存在が認められるか否か,以下検討する。 (2) 黙示の雇用契約の成立の有無を判断する要素となる事情についてア被告パナソニックと被告ABMの関係前記前提となる事実関係によれば,①被告ABMは,被告パナソニックの100パーセント子会社であること,②被告ABMの従業員のうち,る被告パナソニックから出向してきている従業員は4パーセント程度であり,被告パナソニックと被告ABMとの間には,特段の人的関係はないこと,③被告ABMは,被告パナソニックとの間でのみ,労働者派遣契約を締結しているのではなく,その業務の3割から4割程度は他の会社(被告パナソニックと何らの資本関係のない会社)との間の労働者派遣契約が占めていることの各事実が認められるところ,これらの事実に 遣契約を締結しているのではなく,その業務の3割から4割程度は他の会社(被告パナソニックと何らの資本関係のない会社)との間の労働者派遣契約が占めていることの各事実が認められるところ,これらの事実によれば,被告ABMは,被告パナソニックとの関係において,その存在が形式的なものであったとか,実質的に被告パナソニックに従属していたとかいう事実を認めることはできない。 イ原告の採用(ア) 前記前提となる事実関係によれば,①被告ABMの担当者が,本件参加者の中から採否を決するための面接を行った際には,被告パナソニックの担当者が同席していなかったこと,②本件説明会に出席した被告パナソニックの従業員は,本件参加者の情報(履歴書等も含む。)を一 - 15 -切知らされていなかったこと,③従前,被告パナソニックが,被告ABMの採用した派遣労働者の受け入れを拒否した事実はないことの各事実が認められるから,これらの事実によれば,原告の採用を決定したのは,被告ABMであり,被告パナソニックはその採否に関与したり,影響を及ぼしたりしていないと認められる。 (イ) 原告は,(あ)被告パナソニックで就労する以前に,被告パナソニックの従業員であるAによる事前面接を受けていること,(い)Aは,上記(あ)の際,原告に対し,「すぐに辞められると困る」,「5年以上働いてくれるか」などと問いかけをしていること,(う)原告は,A及びCによる面接の後に履歴書を提出したことの各事実を指摘して,原告の採否を実質的に決定したのは,被告パナソニックである旨主張する。 a 原告指摘(あ)の点は,原告がこれに沿う陳述(甲22)及び供述をする(原告本人調書1ないし2頁)が,同時に,原告自身,被告パナソニックの従業員との面接の内容は,被告パナソニックと仕事内容の概要についての 摘(あ)の点は,原告がこれに沿う陳述(甲22)及び供述をする(原告本人調書1ないし2頁)が,同時に,原告自身,被告パナソニックの従業員との面接の内容は,被告パナソニックと仕事内容の概要についての説明であった旨陳述及び供述(なお,原告指摘(い)の点は次に検討する。)することに照らすと,この点が,被告パナソニックが,原告の採否を決定していたことをうかがわせる事情であると解することはできないというべきである。 b 原告指摘(い)の点は,原告がこれに沿う陳述(甲22)及び供述(原告本人調書1ないし2頁)をする。 しかし,原告は同時に,Aが発言したのは,被告パナソニックや仕事内容の説明が終わった後の本件参加者からの質疑応答の際であった,原告以外の本件参加者もいる中での発言であったとも陳述及び供述するところ,これらの原告自身の陳述及び供述を前提としても,原告が指摘するAの発言は,本件参加者からの質問に対する回答としてなされる性質のものではないことがその発言内容自体から明らかであるか - 16 -ら,本件参加者からの質問とは関係なく発言されたものであることになる上,その内容自体に照らし,原告以外の者の面前で発言するような内容でもなく,突拍子もない発言をしたことにもなるといわざるを得ない。そうすると,原告自身の陳述及び供述を前提としても,原告の指摘する発言がなされた状況に照らし,Aの発言内容が著しく不自然,不合理であることは否めないというべきである。しかも,証拠(乙22,証人A)によれば,Aは,品質評価関係の仕事を担当する者であって,人事関係を担当する者はなく,従業員の採否について発言しなければならない立場も必然性もない(しかも,前記前提事実によれば,本件説明会の場には,被告パナソニックの人事担当者(訴外D)も別に出席していたと認めら 担当する者はなく,従業員の採否について発言しなければならない立場も必然性もない(しかも,前記前提事実によれば,本件説明会の場には,被告パナソニックの人事担当者(訴外D)も別に出席していたと認められるから,なおさらその必要性はないというべきである。)者であると認められるから,このことも併せ考慮すれば,Aが,そのような発言をする動機も合理的な理由も見あたらないといわざるを得ない。そして,A自身も,そのような発言をしたことはない旨陳述及び証言しているのである。 したがって,これらの事情を総合的に考慮すれば,原告の陳述及び供述は到底信用できないのであって,他に原告の主張する事実が存在したことを認めるに足りる証拠もないから,原告の主張は採用できないというべきである。 c 原告指摘(う)の点は,本件説明会の後に本件面接があった(このこと自体については,当事者の間に争いがない。)ことを前提とすると,履歴書を提出した相手は,Cであったことになる(原告自身もその旨供述(原告本人調書19頁)する。)から,原告指摘の事実が,被告パナソニックによる採否の決定を裏付ける事情になるとはいえないのであり,原告の主張は採用できない。 d 以上によれば,原告の主張は全て採用できず,他に,原告の主張を - 17 -裏付ける事情を認めるに足りる証拠もない。 ウ賃金額の決定及び賃金の支払(ア) 前記前提となる事実関係によれば,①原告は,被告ABMから賃金の支払を受けていたこと,②被告パナソニックとしては,被告ABMがその従業員に対して,どのような形で賃金を支払っているかを認識していなかったこと,③被告パナソニックから被告ABMに対して支払われる労働者派遣契約に基づく契約代金と被告ABMが原告に支払う賃金との間には必ずしも相関関係がないことの各事実が認め ているかを認識していなかったこと,③被告パナソニックから被告ABMに対して支払われる労働者派遣契約に基づく契約代金と被告ABMが原告に支払う賃金との間には必ずしも相関関係がないことの各事実が認められるから,これらの事実によれば,被告ABMは,被告パナソニックと被告ABMとの間の労働者派遣契約に基づく代金額とは無関係に,原告の給与を定め,現実にこれを原告らに対して支払っていた事実が認められる。 (イ) 原告は,<A>被告パナソニックの担当者と定期的に面談をしていた,<B>上記面談の際に昇給希望を出すと昇給することが多かった,<C>Aから勤務状況をほめられたことがあるなどの事情を指摘して,原告の給与を実質的に決定していたのは被告パナソニックである旨主張するが,上記認定のとおり,被告パナソニックから被告ABMに対して支払われる労働者派遣契約に基づく契約代金と被告ABMが原告に支払う賃金との間には必ずしも相関関係がないことに照らすと,そもそも,被告パナソニックが原告の給与を実質的に決定していたとの事実をうかがわせる客観的事実が存在しないというべきであり,主張の前提を欠いているというほかないから,原告の主張は採用できない。 また,原告は,派遣先事業者の賃金決定額への関与については,派遣先が供給された労働者の労務提供の対価として一定額を支払い,その支払額の範囲内で当該労働者の直接支払われる賃金が捻出されることになることの認識があれば十分とされるべき旨主張する(原告準備書面(2)・9p)が,「派遣先が供給された労働者の労務提供の対価として一定額 - 18 -を支払い,その支払額の範囲内で当該労働者の直接支払われる賃金が捻出される」という関係は,経済学的に見れば当然のこと(むしろ,それ以外の関係はあり得ないともいえる。)であり,そのよう - 18 -を支払い,その支払額の範囲内で当該労働者の直接支払われる賃金が捻出される」という関係は,経済学的に見れば当然のこと(むしろ,それ以外の関係はあり得ないともいえる。)であり,そのような認識があれば賃金額を決定しているといえると評価できるというのは,経済的な常識を無視した独自の見解というほかなく,到底採用の限りではない。 エ労務管理等(ア) 出退勤管理及び休暇の取得a 前記前提となる事実関係によれば,①被告ABMは,原告の労働時間について,平成15年8月から平成18年12月までは,原告が自ら労働時間を記入した管理表を1か月に1回の割合でファクシミリ送信及び郵送の方法によって送付を受けることにより,平成19年1月以降は,原告が,被告ABMのウェブサイトにアクセスして自らの労働時間を申告する方法により,それぞれ管理していたこと,②原告は,被告パナソニックに連絡した上で,被告ABMに対して年次有給休暇を取得する旨通知し,その旨管理表に記載する又は上記被告ABMのウェブサイトにアクセスして申告するという方法により,年次有給休暇を取得していたこと,③原告は,本件解除通告の後,Bに対し,未消化の年次有給休暇について,これを全て取得させてほしいとの希望を伝え,Bが被告パナソニックと調整した結果,原告の意向に沿うことができたことの各事実が認められるから,これらの事実によれば,被告ABMが,原告の出退勤及び年次有給休暇の管理を行っていたと認められる。 b 原告は,<A>管理表をパソコン入力して3枚プリントアウトした上,2枚をAに渡した,<B>被告パナソニックは,勤務時間管理のために直接被告ABMのウェブサイトにアクセスして勤務時間の承認を行っていた,<C>Aは,原告が労働時間を被告ABMに申告 - 19 -していない た,<B>被告パナソニックは,勤務時間管理のために直接被告ABMのウェブサイトにアクセスして勤務時間の承認を行っていた,<C>Aは,原告が労働時間を被告ABMに申告 - 19 -していないことを把握し,原告に対し,早く申告するように求めたこともあったとの事実を指摘し,原告の労務管理を実質的に行っていたのは,被告パナソニックであった旨主張する。 しかし,原告が労働時間を自己申告していたことについては,当事者の間に争いがないところ,本件全証拠によっても,被告パナソニックが,原告の申告に対して何らかの作為を加えた事実は認められず,原告の申告した事実の承認を与えていたに留まる(証人A)上,管理表やウェブサイトの作成者は被告ABMであり(このことについても,当事者の間に争いがない),既に摘示したとおり,被告ABMが,被告パナソニックとの関係において,その存在が形式的なものであったとか,実質的に被告パナソニックに従属していたとかいう事実もないことに照らすと,原告の指摘する各事実を前提としても,原告の労務管理を実質的に被告パナソニックが行っていたとは認められないのであり,他に被告パナソニックが原告の労務管理を行っていたことをうかがわせる事情を認めるに足りる証拠もないから,原告の主張は採用できない。 (イ) 定期面談a 前記前提となる事実関係によれば,①被告ABMの担当者は,原告と概ね1か月に1度程度,定期的に面談を行っていたこと,②その際,原告は,被告ABMの担当者に対し,待遇改善(時給の上昇)の要望を行い,それが反映して,原告の意向に沿った結果が生じたこともあったこと,③被告パナソニックは,半年に1回程度,担当者に原告と面談させていたが,それは,労働安全衛生の観点からなされるものであり10分から15分程度であったところ,被告パ った結果が生じたこともあったこと,③被告パナソニックは,半年に1回程度,担当者に原告と面談させていたが,それは,労働安全衛生の観点からなされるものであり10分から15分程度であったところ,被告パナソニックの正規従業員に対しては,人事考課を目的として少なくとも1時間程度の面談を実施しており,被告パナソニックによる原告との面談は労務管理 - 20 -の一貫とはいえないことの各事実が認められるから,これらの事実によれば,被告ABMは,原告について,その労務管理を主体的に行っていた事実が推認できるというべきである。 b 原告は,被告ABMの担当者による面談は半年に1度であったなどと主張し,原告がこれに沿う供述をする(原告本人調書9頁16行目)が,原告は,同時に,「月に一度,ABMの方が来て」と供述したり(同9頁11行目),平成20年4月から担当者となったB(このことは,当事者の間に争いがない)と,辞めるまでの間の約1年間に「五,六回くらい」は会っている旨供述したり(同27頁18行目)しており,その供述はいわば支離滅裂であって,信用できないといわなければならず,他に原告の主張を裏付ける事情を認めるに足りる証拠もないから,原告の主張は採用できない。 原告は,被告パナソニックの担当者に対して,給料について交渉していた旨主張し,原告がこれに沿う供述をする(原告本人調書8ないし9頁)が,上記認定のとおり,被告パナソニックから被告ABMに対して支払われる労働者派遣契約に基づく契約代金と被告ABMが原告に支払う賃金との間には必ずしも相関関係がないことに照らすと,そのような事実が存したことには疑問がある上,他に,原告の主張を裏付けるに足りる証拠もないことに照らすと,原告の供述は信用できず,原告の主張も採用できない。 (ウ) 健康診断の実施, に照らすと,そのような事実が存したことには疑問がある上,他に,原告の主張を裏付けるに足りる証拠もないことに照らすと,原告の供述は信用できず,原告の主張も採用できない。 (ウ) 健康診断の実施,社会保険への加入前記前提事実によれば,①原告は,被告ABMが定期的に実施していた健康診断を受診していたこと,②原告は,被告ABMが加入していた各種社会保険(健康保険,厚生年金,雇用保険)の対象となる従業員であり,原告が,平成20年12月ころに,健康保険被保険者証を紛失した際も,Bに連絡を取って,健康保険被保険者証を再発行し - 21 -てもらったことの各事実が認められるから,これらによれば,原告は,被告ABMの従業員として扱われ,原告自身もそれを前提として行動していた事実が推認できる。 なお,原告は,形式的な雇用主が被告ABMである以上,健康保険被保険者証再発行等の事務手続を被告ABMに依頼するのは当然であり,この点は,原告と被告ABMとの間の雇用契約が形式的なものであったことを左右しない旨主張するが,この点が,直ちに,原告と被告ABMとの間の雇用契約が実質的なものであったことを基礎付けるとまではいえないものの,実質を伴っていたことを裏付ける一事情にはなり得るのであり,その限度で,原告の主張は採用できない。 オ退職に至る経緯(ア) 前記前提事実によれば,①原告に対して,契約を更新しない旨を告げたのは,被告ABMの従業員であったこと,②被告ABMは,原告に対し,他の会社への派遣を打診したほか,他の会社への就職を支援するために雇用契約を1か月延長し,休職手当相当額の賃金も支払っていること,③原告も,何らの異議も述べることなく,被告ABMの再就職支援制度を利用していることの各事実が認められるから,原告の就業態様について,被告A を1か月延長し,休職手当相当額の賃金も支払っていること,③原告も,何らの異議も述べることなく,被告ABMの再就職支援制度を利用していることの各事実が認められるから,原告の就業態様について,被告ABMが主体的な関与をしている事実が認められる。 (イ) 原告は,Gは,「派遣先(被告パナソニック)に言われたので仕方がない」と言明するだけで,契約更新がされない理由の説明は全くなかった旨主張し,原告がこれに沿う陳述(甲22)をするが,原告は,同時に,「頭が真っ白になった」,「やりとりをよく思い出すことができません」とも陳述及び供述しており,その際のG及びBからの説明については,ほとんど頭に入っていなかったことを自認しているから,原告の陳述及び供述は,契約更新がされない理由について,上記のとおりの説明がされたことと矛盾するものではなく,原告の主張を裏付けるものと - 22 -もいえない。そして,他に原告の主張を裏付けるに足りる証拠もないから,原告の主張は採用できない。 カまとめ以上によれば,(あ)被告ABMが,被告パナソニックとの関係において,その存在が形式的なものであったとか,実質的に被告パナソニックに従属していたとかいう事実がないこと,(い)原告を採用したのは,被告ABMであり,被告パナソニックが採否に実質的に関与したとはいえないこと,(う)原告の賃金を決定し,支払っていたのは被告ABMであること,(え)原告の労務管理を行っていたのは被告ABMであること,(お)被告ABMは原告に対して他の会社への派遣を打診したほか,他の会社への就職を支援するために雇用契約を1か月間延長したことの各事実が認められるから,これらの事実関係によれば,被告パナソニックが,被告ABMによる原告の採用に実質的に関与していたり,原告が被告ABMから支給を 支援するために雇用契約を1か月間延長したことの各事実が認められるから,これらの事実関係によれば,被告パナソニックが,被告ABMによる原告の採用に実質的に関与していたり,原告が被告ABMから支給を受けていた給与の額を事実上決定していたりしていたといえるような事情があるとは認められず,かえって,被告ABMは,原告に対し,配置を含む原告らの具体的な就業態様を一定の限度で決定し得る地位にあったものと認められる。 そうすると,①被告ABMが被告パナソニックの100パーセント子会社であること,②原告による労務提供には,被告パナソニックの正規従業員による労務提供と顕著な差異があるとはいえないことの各事実を十分に考慮したとしても,原告と被告パナソニックとの間において,雇用契約関係が黙示的に成立していたものと評価することはできないというべきである。(なお,原告が従事していた業務が,労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律施行令(昭和61年4月3日政令第95号)4条17号に定める「科学に関する研究又は科学に関する知識若しくは科学を応用した技術を用いて製造する新製品若しく - 23 -は科学に関する知識若しくは科学を応用した技術を用いて製造する製品の新たな製造方法の開発の業務」に該当するか否かについては,当事者の間に争いがあるところ,仮に,これに該当しないとしても,上記(あ)ないし(お)の各事情が存在する以上,上記結論を左右するには至らないというべきであるから,この点については,判断を要しないものというべきである。)(3) その余の原告の主張についてア被告パナソニックと被告ABMとの間の労働者派遣契約の効力について原告は,被告パナソニックと被告ABMとの間の労働者派遣契約は,職業安定法で禁止された (3) その余の原告の主張についてア被告パナソニックと被告ABMとの間の労働者派遣契約の効力について原告は,被告パナソニックと被告ABMとの間の労働者派遣契約は,職業安定法で禁止された労働者供給事業に該当し,無効であることを前提とする主張をするものと解される(訴状12頁参照)が,仮に,被告パナソニックが,原告について,派遣契約期間その他の点において労働者派遣事業法に違反した労働者派遣を受けていたとしても,既に摘示したとおり,原告と被告ABMとの間に有効な雇用契約が存在していたことが認められ,かつ,原告と被告パナソニックとの間に黙示の雇用契約が存在していたとの事実を認めるに足りる事情がない以上,原告と被告らとの間の関係は,労働者派遣事業法2条1号にいう労働者派遣に該当すると解され,このような労働者派遣も,それが労働者派遣である以上は,職業安定法4条6項にいう労働者供給に該当する余地はない(最高裁平成21年判決参照) から,原告の主張はその前提を欠き,採用できない。なお,原告は,最高裁平成21年判決をるる批判するが,いずれも独自の見解による主張であって,採用できない。 イ労働者派遣事業法違反について原告は,原告と被告パナソニックとの関係は,労働者派遣事業法に違反した違法なものであったとして,この点が,原告と被告パナソニックとの間の黙示の雇用契約が存在する根拠となる旨主張するが,労働者派遣事業法の趣旨及びその取締法規としての性質,さらには派遣労働者を保護する - 24 -必要性等にかんがみれば,仮に,労働者派遣事業法に違反する労働者派遣が行われた場合においても,特段の事情のない限り,そのことだけによっては派遣労働者と派遣元との間の雇用契約が無効となることはない(最高裁平成21年判決参照)ところ,仮に,被告パナソニ する労働者派遣が行われた場合においても,特段の事情のない限り,そのことだけによっては派遣労働者と派遣元との間の雇用契約が無効となることはない(最高裁平成21年判決参照)ところ,仮に,被告パナソニックが,原告について,労働者派遣事業法に違反した労働者派遣を受けていたとしても,既に摘示したとおり,本件においては,原告と被告パナソニックとの間に雇用契約が存在していたとの事実を認めるに足りる証拠はなく,他に,原告と被告ABMとの間の雇用契約を無効と解すべき特段の事情を認めるに足りる証拠もないから,この点に関する原告の主張は採用できないというべきである。なお,原告は,最高裁平成21年判決をるる批判するが,いずれも独自の見解による主張であって,採用できない。 ウ三重労働局による是正指導とその前提となる事実認識について原告は,三重労働局が,被告らに対し,原告に係る労働者派遣について,労働者派遣事業法違反があった旨認定し,これに対する是正指導をしたことを指摘し,そのことを原告と被告ABMとの間の労働契約が無効であることを支える一つの間接事実たり得る旨主張する。 しかし,三重労働局の事実認識が裁判所の事実認定を拘束するものではないのは当然であり,かつ,三重労働局の事実認識の基礎となるべき証拠と裁判所の事実認定の基礎となるべき証拠が同一であるとも認められないから,結局,三重労働局の事実認識は上記認定判断を直ちに左右するものとはいえない上,既に摘示したとおり,労働者派遣事業法違反の事実が,直ちに,原告と被告ABMとの間の雇用契約の無効を導くものでもないから,結局,原告の指摘する事情は,上記判断を左右すべき事情には当たらないと解すべきであって,原告の主張は採用できないというべきである。 エ本件解除通告に対する解雇権濫用法理の類推適用について ら,結局,原告の指摘する事情は,上記判断を左右すべき事情には当たらないと解すべきであって,原告の主張は採用できないというべきである。 エ本件解除通告に対する解雇権濫用法理の類推適用について原告は,本件解除通告は,実質的には,被告パナソニックによる解雇と - 25 -同視できるとして,いわゆる解雇権濫用法理(労働契約法16条)が類推適用される旨主張するが,既に摘示したとおり,原告と被告パナソニックとの間で,黙示の労働契約が成立していたとの事実を認めることができず,原告の主張はその前提を欠いているから,到底採用の限りではない。 (4) 小括原告は,以上摘示のほか,るる主張するが,いずれも採用の限りではない。 したがって,本件においては,原告と被告パナソニックとの間において,黙示の雇用契約が存在していたとの事実は認められないから,その余の点について判断するまでもなく,請求原因その1はいずれも理由がない。 3 請求原因その2(不法行為)について以上摘示したとおり,本件においては,原告と被告パナソニックとの間において,黙示の雇用契約が存在していたとの事実を認めることができないから,その余の点について判断するまでもなく,原告と被告パナソニックとの間において,黙示の雇用契約が存在していたことが前提となる請求原因その2はいずれも,理由がない。原告は,以上摘示のほか,るる主張するが,全て独自の見解に立脚するものであり,採用できない。 4 まとめ以上によれば,原告の請求はいずれも理由がないから,これをいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。 津地方裁判所民事部 裁判官福渡裕貴 おり判決する。 津地方裁判所民事部 裁判官福渡裕貴
▼ クリックして全文を表示