平成23(ネ)2946 地位確認等請求控訴事件(通称 コナミデジタルエンタテインメント降格)

裁判年月日・裁判所
平成23年12月27日 東京高等裁判所
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判決文本文25,051 文字)

平成23年12月27日判決言渡平成23年(ネ)第2946号地位確認等請求控訴事件 主文 1 原判決を次のとおり変更する。 2 被控訴人は,控訴人に対し,35万4168円及びうち2万0832円につき平成21年6月26日から,うち4万1667円につき同年7月26日から,うち4万1667円につき同年8月26日から,うち4万1667円につき同年9月26日から,うち4万1667円につき同年10月26日から,うち4万1667円につき同年11月26日から,うち4万1667円につき同年12月26日から,うち4万1667円につき平成22年1月26日から,うち4万1667円につき同年2月26日から,各支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 3 被控訴人は,控訴人に対し,60万円及びこれに対する平成21年6月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 控訴人のその余の請求を棄却する。 5 訴訟費用は,第1,2審を通じて,これを3分し,その1を被控訴人の,その余を控訴人の,各負担とする。 6 この判決は,第2,3項につき,仮に執行することができる。 事実 及び理由 第1 請求 1 控訴人(1) 原判決を次のとおり変更する。 (2) 被控訴人は,控訴人に対し,158万6844円及びうち10万3925円に対する平成21年5月26日から,うち11万0808円に対する同年6月26日から,うち17万3821円に対する同年7月26日から,う ち19万0039円に対する同年8月26日から,うち18万1091円に対する同年9月26日から,うち17万6058円に対する同年10月26日から,う 7万3821円に対する同年7月26日から,う ち19万0039円に対する同年8月26日から,うち18万1091円に対する同年9月26日から,うち17万6058円に対する同年10月26日から,うち16万9347円に対する同年11月26日から,うち19万7868円に対する同年12月26日から,うち13万4114円に対する平成22年1月26日から,うち14万9773円に対する同年2月26日から,各支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (3) 被控訴人は,控訴人に対し,3300万円及びこれに対する平成21年6月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (4) 被控訴人は,控訴人に対し,本判決確定の日から7日以内に原判決別紙1に記載の内容の謝罪文を交付し,かつ,同内容の謝罪文を被控訴人のホームページ(http://www.konami-digital-entertainment.co.jp/)に,同別紙に記載した掲載条件で,1か月間掲載せよ。 (5) 被控訴人は,被控訴人の就業規則の一部を,原判決別紙2に記載の内容に変更せよ。 (6) 第2,第3項につき仮執行宣言 2 被控訴人(1) 本件控訴を棄却する。 (2) 控訴費用は控訴人の負担とする。 第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は,被控訴人の社員で,産休,育児休業後に復職したところ,担当職務を変更された上,減給されるなどの不当な不利益を受けたと主張する控訴人が,被控訴人に対し,被控訴人の一連の人事措置は妊娠・出産をして育児休業等を取得した女性に対する差別ないし偏見に基づくもので人事権の濫用に当たるほか,女性差別撤廃条約2条(e),(f),4条1項,5条(a),11条1項及び同条2項(b),憲法13条及び14条,労働 業等を取得した女性に対する差別ないし偏見に基づくもので人事権の濫用に当たるほか,女性差別撤廃条約2条(e),(f),4条1項,5条(a),11条1項及び同条2項(b),憲法13条及び14条,労働基準法(以下「労基法」という。)3条,4 条,19条1項,39条7項,65条及び67条,育児休業,介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(以下「育児・介護休業法」という。)5条,10条,22条,23条1項,雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(以下「雇用機会均等法」という。)6条及び9条,民法90条(公序良俗)にも違反する無効なものであるとして,①雇用契約に基づく賃金請求として,降格・減給後の給与額と降格・減給前の給与額との差額及びこれに対する各支払期日の翌日から支払済みまで商事法定利率である年6分の割合による遅延損害金の支払(第1の1(2),以下「本件請求1」という。),②不法行為に基づく損害(慰謝料,弁護士費用)の賠償として3300万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成21年6月24日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(第1の1(3),以下「本件請求2」という。),③控訴人の人格権に基づく侵害回復措置としての被控訴人の謝罪(第1の1(4),以下「本件請求3」という。)及び④育児・介護休業法の趣旨等に基づく被控訴人の就業規則の改訂(第1の1(5),以下「本件請求4」という。)を求めた事案である。 原判決は,担当職務や年俸等の変更に違法はないとして本件請求1を棄却し,成果報酬をゼロとした点は違法であるとして,本件請求2については慰謝料30万円及び弁護士費用5万円の合計35万円の限度でのみ認容したものの,その余の請求はいずれも理由がないとして棄却したため, し,成果報酬をゼロとした点は違法であるとして,本件請求2については慰謝料30万円及び弁護士費用5万円の合計35万円の限度でのみ認容したものの,その余の請求はいずれも理由がないとして棄却したため,これらを不服とする控訴人が,前記裁判を求めて控訴したものである。 2 本件に関する前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張は,原判決を次のとおり補正するほかは,原判決の「事実及び理由」の「第2 事案の概要等」の2ないし4に記載のとおりであるから,これを引用する(以下,原判決を引用する部分については,「原告」を「控訴人」と,「被告」を「被控訴人」と読み替える。)。 (原判決の補正) (1) 原判決3頁24行目の「被告との間で,」の次に「後記(2)ア(ア)bの」を加える。 (2) 原判決10頁20行目の「上記役割グレード」を「前記(2)ア(イ)b(b)の役割グレード」と改める。 (3) 原判決17頁3行目の「ポストが存在していた。」の次に「海外サッカーライセンス業務では,平成20年11月のP1の転出に伴う欠員があり,控訴人の復帰を待つことが可能であったにもかかわらず,平成21年1月になって,他部署から海外ライセンス業務や英語でのビジネス自体が未経験であったP2を異動させたのは,妊娠・出産を経た控訴人に対する差別である。」を加える。 (4) 原判決17頁5ないし6行目の「事実は全くなかったから,当該クレームの存在は,」を「事実は全くなかった。仮に,重要な交渉相手であるP3やフランスサッカーリーグなどからクレームがあったのであれば,メールや報告書などにその旨の何らかの記録が残されているはずであるのに,被控訴人からそのようなメールや報告書などは提出されていない。したがって,本件では,そのようなクレームは存在しなかったのであるから ルや報告書などにその旨の何らかの記録が残されているはずであるのに,被控訴人からそのようなメールや報告書などは提出されていない。したがって,本件では,そのようなクレームは存在しなかったのであるから,」と改める。 (5) 原判決17頁12行目の「なかった。」の次に「I氏が国内ライセンス業務からキャリア開発グループに配置されたのは,控訴人が復職した約2か月後の平成21年6月16日のことである。」を加える。 (6) 原判決17頁13行目冒頭から同頁16行目末尾までを,次のとおり改める。 「(e) 被控訴人は,国内ライセンス業務を担当していたI氏の役割グレードがA-8であったから,その後任である控訴人については,それまでB-1であったことを考慮してA-9としたと主張しているが,そのI氏とはP4氏のことであり(甲35),同氏の当時のグレードはB-1であったのであり,同氏がA-8だったから,控訴人のグレードをA- 9としたという被控訴人の主張は,意図的なものであり,人事権の濫用を示すものである。」(7) 原判決19頁5行目の「規定は存在しない。」の次に「確かに,年俸規程の別紙には「報酬グレード」が規定されているが,報酬グレードに対応する役割グレードが明らかではなく,そもそもどの職務がどの役割グレードに対応するかの決定基準も存在しないのであって,自動的に決定する仕組みではない。ちなみに,役割グレードを説明している「人事制度の手引き」(甲25,以下「本件手引き」という。)は,就業規則の明示の委任もないものであって,その効力が不明であるが,その記載をみても,役割グレードの上昇についての説明はあるが,低下についての説明はなく,役割グレードが引き下げられることは想定されていない。」と改める。 (8) 原判決20頁7行目末尾に「仮に,育児・介護休 みても,役割グレードの上昇についての説明はあるが,低下についての説明はなく,役割グレードが引き下げられることは想定されていない。」と改める。 (8) 原判決20頁7行目末尾に「仮に,育児・介護休業法による事業主の措置義務について,それに従わなかった場合に何ら強制手段が用意されていないとしても,雇用機会均等法や育児・介護休業法が定めている女性労働者の保護規定は,それらの法の趣旨が事業主によって尊重されることを当然の前提としているものであって,その結果,使用者による人事権行使の裁量の幅が狭められていることを看過してはならない。これらの法の趣旨に照らすならば,本件のようなB-1からA-9への二段階の降格や,年俸640万円から年俸520万円への大幅な減給が許されるはずはない。」を加える(9) 原判決20頁19行目末尾に,改行の上,次の部分を加える。 「ⅱ 被控訴人の本件手引きによれば,成果報酬とは「会社業績」「部門業績」「個人の成果の評価」を掛け合わせて算定されるものとなっている。 控訴人が育休中はもとより,職場復帰した際も,「会社業績」「部門業績」がゼロということはない。したがって,被控訴人の成果報酬がゼロと査定されたのは,ひとえに「個人の成果の評価」がゼロとされたためであることは明らかであるが,そのようなことは,上記3の要素を考慮 するとした成果報酬の考え方に反するものであり,控訴人を不当に差別するものである。仮に,成果報酬が基本給の一部ではなく,従前の評価に基づいて決定されるとしても,労働者の権利である産休・育児休業の取得により,その業績評価を受ける機会を奪われてはならない。」(10) 原判決20頁20行目の「ⅱ」を「ⅲ」と,同21頁3行目の「ⅲ」を「ⅳ」と,同頁8行目の「ⅳ」を「ⅴ」と,それぞれ改める。 (11) 原判 の業績評価を受ける機会を奪われてはならない。」(10) 原判決20頁20行目の「ⅱ」を「ⅲ」と,同21頁3行目の「ⅲ」を「ⅳ」と,同頁8行目の「ⅳ」を「ⅴ」と,それぞれ改める。 (11) 原判決21頁7行目末尾に「したがって,控訴人が育休等で休業している期間が成果報酬の査定対象期間の多くを占めているため,具体的な業績がなかったとしても,その期間の休業を理由として成果報酬をゼロと査定するなど育休等を取得した労働者に一方的な不利益を負わせることは,育児・介護休業法の趣旨に反するというべきであり,被控訴人としては,それ以前の評価を据え置くか,もしくは平均値を算出するか,又は合理的な範囲内で仮の評価を行うなど,適切な方法を採用することにより,育休などを取得した控訴人の不利益をできる限り回避するような措置をとるべき義務がある。それにもかかわらず,被控訴人は,そのような回避努力を尽くすことなく,控訴人の平成21年度の成果報酬をゼロと査定したものであるから,違法であり,無効である。」を加える。 (12) 原判決30頁5行目末尾に,改行の上,次の部分を加える。 「a そもそも役割グレード制自体は労働者の労働条件を直接規律するものではないので,就業規則上の定めを必要としない。被控訴人における役割グレードは,職能資格制度ではなく,業務遂行能力それ自体が役割グレード決定の要素ではない。控訴人は,本件手引きには役割グレードが下がる場合について説明がないから,引下げは予定されていないと主張しているが,本件手引きは年俸規程上の「報酬グレード」を決定する際の解釈指針であって,引下げが予定されていないわけではない。被控訴人における役割クラスは,各社員が担当する基本的な業務の内容,職責, 所属組織において期待される役割等に応じて定まるものであり,「役割ク 指針であって,引下げが予定されていないわけではない。被控訴人における役割クラスは,各社員が担当する基本的な業務の内容,職責, 所属組織において期待される役割等に応じて定まるものであり,「役割クラスの設定の目安」として記載されている基準に従って決定される。 年俸決定の運用基準の周知は必ずしなければならないものではないが,実際には周知を図っており,その意味でも問題はない。」(13) 原判決30頁6行目の「a」を「b」と改める。 (14) 原判決30頁24行目末尾に,改行の上,次の部分を加える。 「c 控訴人は,海外サッカーライセンス業務では,平成20年11月のP1の転出に伴う欠員があり,控訴人の復帰を待つことが可能であったと主張しているが,そうではない。海外サッカーライセンス業務は,P1の転出によってP5とP6だけの2名体制となってしまうが,毎年1月から2月にかけてサッカーゲームの新年度の交渉が開始し,2名体制では負担が大きいため,早急に人員を補充することが必要であった。そこで,被控訴人においては,同年9月ころから後任となれる者を探していたが,P2が英語を使う部署への異動を希望していたことから,P2を候補者として異動時期について調整を図っていた。他方,控訴人の復職は,当初の予定でも平成21年2月15日であり,しかも,控訴人から復職してもしばらくは慣らし保育や予防接種などで休暇を取ることがあるなどの説明もあり,控訴人の復職時期は同年4月となったため,控訴人が復職した時点では,海外サッカーライセンス業務に欠員はなかったのである。」(15) 原判決30頁25行目の「b」を「d」と,同31頁10行目の「c」を「e」と,同頁21行目の「d」を「f」と,それぞれ改める。 (16) 原判決31頁20行目末尾に,改行の上,次の部分を加え 15) 原判決30頁25行目の「b」を「d」と,同31頁10行目の「c」を「e」と,同頁21行目の「d」を「f」と,それぞれ改める。 (16) 原判決31頁20行目末尾に,改行の上,次の部分を加える。 「 なお,控訴人は,控訴人が引き継いだI氏のグレードはB-1であり,A-8ではなかったと主張しているが,誤解がある。確かに,I氏の平成20年度の役割グレードはB-1とされていたが,それは,同氏が野球関 連業務をはじめとする国内ライセンス業務全般を担当することを前提に決定されたものであった。しかし,同氏は,国内ライセンス業務において,案件を放棄したり,報告を怠るだけではなく,ミスも多く,その適格性及び能力に問題があることが判明したため,国内ライセンス業務のうち難易度・重要度が最も高い野球関連業務をI氏から外してS氏に移管した。その結果,国内ライセンス業務におけるI氏の担当業務は定型的で事務処理的な業務のみとなっていたので,本来であれば役割グレードの見直しがなされ,その役割グレードはA-8とされるべきであったが,被控訴人では,年度途中に役割グレードの変更があっても年俸は増減しないとされていることを考慮して(乙6の1,第20条2項),形の上ではそのままB-1のグレードを維持し,平成21年度における役割グレードの評価時期となった同年5月に,I氏の国内ライセンス業務における役割グレードを本来あるべきA-8と査定したものである。そして,控訴人は,国内ライセンス業務におけるI氏の定型的で事務処理的な業務を引き継ぐこととなったが,控訴人の手腕等に期待し,役割グレードを一つ上のA-9と査定したというのが実態である。甲35(I氏の宣誓供述書)は,そのような経過を十分に理解しないまま述べられた一方的な見解にすぎない。」(17) 原判決32頁1 待し,役割グレードを一つ上のA-9と査定したというのが実態である。甲35(I氏の宣誓供述書)は,そのような経過を十分に理解しないまま述べられた一方的な見解にすぎない。」(17) 原判決32頁1ないし2行目の「上記2の前提事実(以下「上記前提事実」という。)」を「前記2の前提事実(以下「本件前提事実」という。)」と改める。 (18) 原判決32頁17行目の末尾に「しかも,成果報酬の変更は,年俸規程18条2項,19条に規定されているところであり,控訴人の平成21年度の成果報酬をゼロと変更したのもこれらの規定に基づくものであるから,問題はない。そもそも成果報酬は,前年度の賃金の後払いではなく,前年度の実績を査定した上で決定される賃金であり,前年度に実績がなければ育休等の場合でも「0円」となるのは当然である。」を加える。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は,被控訴人が控訴人の職場復帰に伴い,平成21年6月16日以降の控訴人の役割グレードをB-1からA-9に引き下げ,その役割報酬を550万円から500万円に減給させるとともに,同日以降の成果報酬をゼロと査定して,控訴人の年俸を,産休,育休等の取得前の合計640万円から復帰後は合計520万円に引き下げたことは,違法であると判断する。その理由は,原判決を次のとおり補正するほかは,原判決の「事実及び理由」の「第3 当裁判所の判断」1の(1)ないし(7)(ただし,次の補正で削除する部分を除く。),2及び3に記載のとおりであるから,これを引用する(以下,原判決を引用する部分については,「上記認定事実」を「本件認定事実」と,「上記前提事実」を「本件前提事実」と,それぞれ読み替える。)。 (1) 原判決44頁4行目の「業務負荷の程度は」から同頁14行目末尾までを次のとおり改める。 「業務 実」を「本件認定事実」と,「上記前提事実」を「本件前提事実」と,それぞれ読み替える。)。 (1) 原判決44頁4行目の「業務負荷の程度は」から同頁14行目末尾までを次のとおり改める。 「業務負荷の程度は海外ライセンス業務よりも低いものである。 控訴人の前任者であるI氏の役割グレードは,平成20年度当初には,野球関連業務をはじめとする国内ライセンス業務全般を担当することを前提にB-1とされたが,I氏は,その後,案件を放棄したり,業務の進捗状況を報告しなかったり,その他の業務でもミスが目立つなどして,その適格性及び能力に問題があったため,被控訴人では,国内ライセンス業務のうち難易度・重要度が最も高い野球関連業務をI氏の担当から外してS氏に移管した。その結果,I氏が担当する国内ライセンス業務は定型的で事務処理的な業務のみとなったため,本来であれば役割グレードの見直しが必要になっていたが,被控訴人の年俸規程(乙6の1)では,年度途中に役割グレードの変更があっても年俸は増減しないとされているため(20条2項),直ちに役割グレードを変更することはしなかった。しかし,同人の仕事ぶりは改善される様子もなかったため,P7部長は,平成21 年2月ころから,I氏を他の部署に転出させる方向で検討を開始するとともに,平成21年度の役割グレードの査定時期になった同年5月には,I氏の国内ライセンス業務における役割グレードをA-8と査定した。そして,I氏は,同年6月16日にはキャリア開発グループへ配置換えとなり,平成21年度の役割グレードがA-8に下げられていることを知ったが,同年7月31日にはP8を退職した。 [甲35,乙11,12,14,原審における証人P7の証言,弁論の全趣旨]」(2) 原判決60頁17行目末尾に,改行の上,次を加え ていることを知ったが,同年7月31日にはP8を退職した。 [甲35,乙11,12,14,原審における証人P7の証言,弁論の全趣旨]」(2) 原判決60頁17行目末尾に,改行の上,次を加える。 「(カ) ちなみに,控訴人は,その当時,P2は海外ライセンス業務や英語でのビジネス自体が未経験で適任ではなく,同人を配置したことに合理性はないなどと主張しているが,甲38(控訴人の陳述書)添付の海外ライセンス担当者の異動状況一覧表によれば,P2は,平成21年1月に海外ライセンスグループに異動となった後,平成23年5月現在においても同グループに在籍しており,同人が海外ライセンス業務の担当者として定着していることが認められるから,同人をP1の後任として異動させたことは,頻繁な担当者の交替を防止するという異動目的に適ったものであったことを裏付けており,合理的なものであったことを推認させるものである。」(3) 原判決62頁5行目の「本件担務変更が」を「本件担務変更は,控訴人が本件育休等から職場復帰したことに伴うものではあるが,」と改める。 (4) 原判決63頁15行目の「上記イの(ウ),(オ)の事実関係のとおり,」を「上記イの(ウ),(オ)及び(カ)の事実関係のとおり,」と改める。 (5) 原判決63頁26行目の「上記イ(オ)の事実関係のとおり,」を「上記イ(オ)及び(カ)の事実関係のとおり,」と改める。 (6) 原判決64頁6行目の「このことは,」を「その後,平成23年5月当 時においても海外ライセンス業務の担当者として在籍し,定着していることが認められるのであって,P2の上記移動時期の遅れは,」と改める。 (7) 原判決64頁11行目の「(甲24)」を「(甲24,38)」と改める。 (8) 原判決65頁15行目の「これらの発 ることが認められるのであって,P2の上記移動時期の遅れは,」と改める。 (7) 原判決64頁11行目の「(甲24)」を「(甲24,38)」と改める。 (8) 原判決65頁15行目の「これらの発言等の内容は,」の次に「控訴人が育児のための勤務時間の短縮を求めていることをも考慮した上で,」を加える。 (9) 原判決66頁22ないし23行目の「そして,」の次に「本件において,控訴人は,平成19年10月4日にグローバルコンテンツ推進部北米グループからライセンス部に異動したもので,平成20年7月に産休を取得するまでに海外ライセンス業務に従事した期間は約9か月間程度であり,控訴人の希望はともかく,被控訴人における控訴人の担当業務が長年にわたって海外ライセンス業務に固定されていたわけではなく,」を加える。 (10) 原判決66頁25行目の「配置転換」を「同じライセンス部の中で,海外ライセンス業務から国内ライセンス業務への担務変更」と改める。 (11) 原判決67頁20行目の「ある。」の次に,「(ア) 」を加え,「(ア)」以下を改行する。 (12) 原判決68頁1行目の「以上によると,」から同頁6行目末尾までを,改行の上,次のとおり改める。 「(イ) しかしながら,他方において,本件手引き(甲25)において説明されている各役割クラスの設定の目安をみると,各役割の内容として,Aクラスについては,個人の業務遂行能力を高め,成長を重視するステージであり,業務グループ等の構成員の一員として,そのグループ等の方針や計画,目標に基づき,上位者/関係者からの指示や依頼のもと,一定範囲の担当職務をグループ等のために責任をもって確実に遂行する役割を担うものとされ,また,業務グループ等のグループリーダー相当 として,同じグループ内のAクラスを指 からの指示や依頼のもと,一定範囲の担当職務をグループ等のために責任をもって確実に遂行する役割を担うものとされ,また,業務グループ等のグループリーダー相当 として,同じグループ内のAクラスを指導,リードする役割を担う場合があるとされているのに対し,Bクラスについては,個人の成長とともに組織の目標に対する貢献(成果)が求められるステージであり,業務グループ等のグループリーダー相当職として,業務リーダー的な立場で,Cクラスを補佐し,Aクラスを指導,リードしながら,そのグループ等の目標や方針,計画に基づき,担当範囲の職務をグループ等のために責任をもって確実に遂行する役割を担うものとされている。また,Cクラス以上については,主に組織の目標に対する貢献(成果)を求められるステージであるとされ,そのポジションは,Cクラスは一定組織以上のリーダー相当職,Dクラスは「部」相当の長,又はそれに相当するポジション,Eクラスは「部」相当の長,またはそれらを統括する組織長,とされているのであって,役割グレード全体として,A,B,C,D,Eなどの各クラスに応じた組織上の一定のポジションが対応するものとされている。 しかも,その図表5「役割グレードに基づくキャリアステップ」によれば,Aクラスを基本として,そこから矢印で,専門職系統(B(S)クラス→Sクラス)と,マネジメント職系統(Bクラス→Cクラス→Dクラス→Eクラス)との二つに大きく分かれてステップアップしていくことが図示されているほか,Aクラスは「スタッフ」,Bクラスは「上級スタッフ,初級マネジメント職(マネジメント職候補)」,CないしEクラスは「マネジメント職」と分類されており,また,その図表9「報酬グレードテーブル」によれば,報酬グレードの1ないし5は,それぞれ1と2とに細分化されて ント職(マネジメント職候補)」,CないしEクラスは「マネジメント職」と分類されており,また,その図表9「報酬グレードテーブル」によれば,報酬グレードの1ないし5は,それぞれ1と2とに細分化されて10段階となっていて,それぞれが役割グレードのA-1からA-10に,報酬グレードの6ないし8は役割グレードのB-1からB-3に,それぞれ対応していて,Aクラスの報酬グレードとBクラスの報酬グレードとが重なることはないものとして説明さ れているところである。 さらに,成果報酬の査定についても,Aクラスでは,成長が重視され,特に平均的な支給額について言及されていないのに対して,Bクラスでは,成果が重視され,その平均的な支給額は60万円とされているのであって,ここでもAクラスとBクラスとでは,質的な違いがあるものとして取り扱われている。 (ウ) これらの事実を考慮するならば,被控訴人におけるP8社員に係る人事・報酬制度は,いわゆる成果主義的な考え方を前提として,年功序列制や職能資格制度とは異なる職務等級制のような人事・報酬制度を実現しようとして導入されたものであろうと推測することができるが,そこでは,Aクラスを基本的な出発点とし,そこで能力を磨いて成長した上で,専門職(S(B)クラス)かマネジメント職候補(Bクラス)かに分かれてキャリアアップしていくことが予定されているのであって,被控訴人の社内におけるキャリアステップとして,Aクラスは,まだ専門職でもなく,マネジメント職でもないスタッフであるのに対して,Bクラスは,マネジメント職候補とされ,明らかにAクラスとは異なる階層にあるものとしての位置付けがなされていることが明らかであるから,少なくともAクラスとBクラスとの間には質的な違いがあり,いわば職能資格制度の下で考えられている一種の 明らかにAクラスとは異なる階層にあるものとしての位置付けがなされていることが明らかであるから,少なくともAクラスとBクラスとの間には質的な違いがあり,いわば職能資格制度の下で考えられている一種の階層的な要素も含まれているものと理解する余地があるというべきである。」(13) 原判決68頁20行目の「そして,原告が本件担務」から同頁23行目末尾までを,次のとおり改める。 「ちなみに,原告が本件担務変更により引き継ぐこととなったI氏の国内ライセンス業務の内容及びその役割グレードは,変遷があり,平成20年度当初は,国内ライセンス業務全般を担当することを前提に,B-1とされていたが,I氏の適格性及び能力に問題があることが明らかになってきたため, 被控訴人は,国内ライセンス業務のうち難易度・重要度が最も高い野球関連業務をI氏の担当から外してS氏に移管した。その結果,I氏の担当業務は定型的で事務処理的な業務のみとなってしまい,これに伴って役割グレードの見直しも必要になっていたが,被控訴人の年俸規程20条2項では,年度途中に役割グレードの変更があっても年俸は増減しないとされているため,そのまま据え置いて,平成21年度の役割グレードの査定時期になった同年6月から,国内ライセンス業務におけるI氏の役割グレードを正式にA-8に変更したものである。このように,I氏の役割グレードは,国内ライセンス業務を担当している間は,実際にはB-1に留まっていて,A-8に下げられたのは国内ライセンス業務を離れる際であった。」(14) 原判決69頁2行目冒頭から同72頁1行目末尾までを,次のとおり改める。 「ウ上記に認定したところによれば,被控訴人においては,役割グレードは,「役割クラス」と「グレード」に分かれているところ,役割クラスのうち,Aクラスは個人 1行目末尾までを,次のとおり改める。 「ウ上記に認定したところによれば,被控訴人においては,役割グレードは,「役割クラス」と「グレード」に分かれているところ,役割クラスのうち,Aクラスは個人の業務遂行能力を高め,成長を重視するステージとされ,業務グループ等の構成員の一員として上位者/関係者からの指示や依頼のもとで一定範囲の担当職務を遂行する役割を担うもの等とされているのに対し,Bクラスは,個人の成長とともに組織の目標に対する貢献(成果)が求められるステージとされ,業務グループ等のグループリーダー相当職として,業務リーダー的な立場で,Cクラスを補佐し,Aクラスを指導するものとされている上,被控訴人におけるキャリアステップにおいては,Aクラスを基本的な出発点とし,そこから専門職(S(B)クラス)かマネジメント職(Bクラス以上)に分かれてキャリアアップしていくことが予定されているものであり,Aクラスは,まだ専門職でもなく,マネジメント職でもないスタッフであるのに対して,Bクラスは,マネジメント職候補とされ,明らかにAクラスとは異なる 階層にあるものとしての位置付けがなされていることが明らかであるから,少なくともAクラスとBクラスとの間には質的な違いがあり,いわば職能資格制度の下での一種の階層的な位置づけも含まれているものと理解する余地がある。そうであれば,少なくとも,Bクラスにある者をAクラスに変更することは,そのようなマネジメント職候補としてのポジションを喪失させるという一種の不利益を生じさせるものであることは否定できないというべきである。 しかも,被控訴人においては,P8社員に係る人事・報酬制度は,いわゆる成果主義的な考え方を前提として,年功序列制や職能資格制度とは異なる職務等級制のような人事・報酬制度を実現しよ である。 しかも,被控訴人においては,P8社員に係る人事・報酬制度は,いわゆる成果主義的な考え方を前提として,年功序列制や職能資格制度とは異なる職務等級制のような人事・報酬制度を実現しようとして導入されたものであろうと推測することができるものの,上記の「役割グレード」と「報酬グレード」とが連動するものとされており,役割グレードの引下げは当然に年俸の引下げを伴うものとされているのであるが,そもそも被控訴人の就業規則(乙3)で,給与の詳細を定めると規定されている年俸規程(乙6の1,2)では,「報酬グレード」や「役割報酬」については言及されているものの,「報酬グレード」が「役割グレード」と連動していることを定めている条項は存在しない。被控訴人における役割報酬の決定に際しては,本件手引き(甲25)によって,役割報酬と役割グレードとの対応が一応示されているものの,本件手引きにおいても,役割報酬の大幅な減額を生じるような役割グレードの変更がなされることについて明確に説明した記載は見当たらないし,そのような不利益変更の可能性について,被控訴人から,控訴人を含むP8社員に対して具体的に説明がなされたことを認めるに足りる証拠も提出されていない。そうすると,被控訴人においては,P8社員の担当職務を変更することにより,その役割グレードが変更され,その結果として当然に役割報酬が引き下げられるものとして運用されており,そのような 結果は被控訴人の報酬体系では当然の結果であると主張しているが,役割報酬の引下げは,労働者にとって最も重要な労働条件の一つである賃金額を不利益に変更するものであるから,就業規則や年俸規程に明示的な根拠もなく,労働者の個別の同意もないまま,使用者の一方的な行為によって行うことは許されないというべきであり,そして,役割グ ある賃金額を不利益に変更するものであるから,就業規則や年俸規程に明示的な根拠もなく,労働者の個別の同意もないまま,使用者の一方的な行為によって行うことは許されないというべきであり,そして,役割グレードの変更についても,そのような役割報酬の減額と連動するものとして行われるものである以上,労働者の個別の同意を得ることなく,使用者の一方的な行為によって行うことは,同じく許されないというべきであり,それが担当職務の変更を伴うものであっても,人事権の濫用として許されないというべきである。 そして,本件における控訴人の場合にも,担当職務の変更に伴って役割グレードがB-1からA-9へと変更され,それに連動する形で報酬グレードが6から5-1に変更されて,その役割報酬が年550万円から年500万円に減額されたものであるから,そのような大幅な報酬の減額を伴う役割グレードの変更を,就業規則や年俸規程に明示的な根拠もなく,個々の労働者の同意を必要とせず,使用者である被控訴人の一存で行うことができるとすることは,労使双方の対等性を損なうものとして許容することができないと解すべきである。 エこれに対し,被控訴人は,被控訴人における役割グレード制自体は,労働者の労働条件を直接規律するものではなく,就業規則上の定めを必要とするものではないし,業務遂行能力それ自体が役割グレード決定の要素ではないのであって,担当職務に応じて,その業務内容の重要度や難易度や繁忙度や責任の重さなどを勘案した上で役割グレードが決定され,その役割グレードを前提とし,本件手引きを一つのガイドラインとして,上記のような業務内容の重要度や難易度や繁忙度や責任の重さなどに見合う役割報酬額が決定されるのであり,仮に,役割グレードが変 更され,役割報酬額が減額されることになったとし ガイドラインとして,上記のような業務内容の重要度や難易度や繁忙度や責任の重さなどに見合う役割報酬額が決定されるのであり,仮に,役割グレードが変 更され,役割報酬額が減額されることになったとしても,被控訴人における報酬体系におけるルールを適用した結果によるものであるから,人事権の濫用ではないなどと主張している。 しかしながら,役割グレードと報酬グレード及び役割報酬額とを連動させることについて,被控訴人の就業規則や年俸規程に明示的な定めがあるわけではないことは,被控訴人も認めているところである上,前記のとおり,被控訴人において役割グレードの内容等を説明した本件手引きには,役割グレードが引き下げられる場合や,役割グレードが引き下げられることによって,結果的に役割報酬額も大幅に減額されることについては説明がなく,控訴人を含むP8社員において,そのような報酬額の引下げについても事前に包括的に了解していたものと理解することは困難である。仮に,被控訴人の主張するところを前提とするならば,例えば,C-1の役割グレードにある者について,その担当職務を変更した結果,新たな担当職務の役割グレードがA-9と評価されれば,その役割報酬は,700万円から500万円へと200万円も減額されてしまうことになるが,そのような約30パーセント弱もの大幅な賃金の減額が一方的に行えるとすることは,現行の労働法体系の下では許容されるものではないというべきである。 もっとも,そのことと,業務上の必要性が認められるときに,P8社員の担当職務を変更することとは別問題であり,被控訴人の就業規則及び年俸規程においても,担当職務の変更と役割グレードの変更とを常に連動させなければならないものとはされていない。現に,被控訴人においては,年度途中で担当職務の内容が変化 であり,被控訴人の就業規則及び年俸規程においても,担当職務の変更と役割グレードの変更とを常に連動させなければならないものとはされていない。現に,被控訴人においては,年度途中で担当職務の内容が変化しても役割グレードは当然には変更しないとされているところであり,控訴人がその国内ライセンス業務を引き継いだI氏においても,最終的にはその担当職務は軽微なものに変更されたにもかかわらず,その役割グレードは当該年度内におい てはB-1のままであったのであるから,仮に,控訴人をI氏の後任にするとしても,控訴人の役割グレードをB-1のまま据え置くことが就業規則や年俸規程の上で不可能であったわけではない。しかも,仮に,被控訴人が主張しているように,I氏に問題があったため,B-1とされていた担当職務を年度途中に軽減したというのであれば,その逆に,国内ライセンス業務における控訴人の担当職務を,B-1にふさわしいものに加重していくことも十分に可能であったはずであるから,その意味でも,控訴人について,国内ライセンス業務に担当職務を変更したことにより,その役割グレードをB-1からA-9へと引き下げなければならなかったとする被控訴人の主張は,十分な説得力を有するものではないというべきであり,採用することはできない。」(15) 原判決72頁9行目の「決定されるものである。」を「決定されるものとして運用されている。」と改める。 (16) 原判決73頁5行目冒頭から同77頁1行目末尾までを,次のとおり改める。 「イ本件役割報酬減額の無効について前記のとおり,被控訴人においては,本件手引きからも明らかなように,「役割グレード」と「報酬グレード」及び「役割報酬額」とが連動するものとされており,役割グレードの引下げは当然に報酬グレード(役割報酬額 とおり,被控訴人においては,本件手引きからも明らかなように,「役割グレード」と「報酬グレード」及び「役割報酬額」とが連動するものとされており,役割グレードの引下げは当然に報酬グレード(役割報酬額)の引下げとなり,年俸(役割報酬部分)の引下げを伴うものとされているのであるが,そもそも被控訴人の就業規則や年俸規程では,報酬グレード(役割報酬額)が役割グレードと連動していることを定めている条項は存在しないのであり,本件手引きによっても,役割報酬の大幅な減額を生じるような役割グレードの変更がなされることについて明確に説明した記載は見当たらないのである。しかるに,被控訴人においては,担当職務の変更により役割グレードが変更され,その結 果として役割報酬額も引き下げられているところ,役割報酬額の引下げは,労働者にとって最も重要な労働条件の一つである賃金額を不利益に変更するものであるから,就業規則や年俸規程に明示的な根拠もなく,労働者の個別の同意もないまま,使用者の一方的な行為によってそのような重要な労働条件を変更することは,許されないというべきである。 そして,本件における控訴人の場合にも,担当職務の変更に伴って役割グレードがB-1からA-9へと変更され,それに連動する形で報酬グレードが6から5-1に変更されて,その役割報酬が年550万円から年500万円に減額されたものであって,そのような大幅な報酬の減額を,役割グレードの変更に伴う当然の結果であるとして,就業規則や年俸規程に明示的な定めもなく,個々の労働者の同意を必要とせず,使用者である被控訴人の一存で行うことができるとすることは,労使双方の対等性を著しく損なうものであるから,許容することはできないというべきである。 特に,一般のサラリーマンの場合には,いかに成果報酬の考え方に基 一存で行うことができるとすることは,労使双方の対等性を著しく損なうものであるから,許容することはできないというべきである。 特に,一般のサラリーマンの場合には,いかに成果報酬の考え方に基づく報酬制度を導入したとはいえ,会社の経営方針や戦略や重点項目の決定などに直接関与するものではなく,原則として,役員や経営幹部等によって定められた経営方針や組織の指示等に従い,会社組織の一員として持てる労働力を提供し,必要な事務を処理することが求められているのであるから,特段の事情がない限り,前年と同程度の労働を提供することによって同程度の基本的な賃金は確保できるものと期待するのは当然のことであり,そのような期待を不合理なものであるということはできない。被控訴人の報酬体系においては,年俸は,役割報酬と成果報酬と調整報酬の3つの合計額として算出されるものとされているところ,控訴人の平成20年度の年俸は,役割報酬550万円,成果報酬90万円,調整報酬0円の合計640万円であって,役割報酬部分が約86パ ーセント,成果報酬部分が約14パーセント,調整報酬部分が0パーセントという比率になっており,役割報酬部分が実質的に基本給としての性質を有するものであることも明らかである。 しかも,控訴人は,被控訴人から示されたB-1からA-9への役割グレードの降級及び役割報酬の減額について,何度も再検討を求め,異議を述べ,同意を留保しつつ,国内ライセンス業務の仕事に従事したことが認められるのであって(甲7の2,3,8の1,24,38,原審における控訴人本人尋問の結果),そのような下位グレードへの役割グレードの変更及び役割報酬の減額につき,同意していないことは明らかであるから,平成21年6月16日以降の控訴人の役割グレードをB-1からA-9へ変更し, 問の結果),そのような下位グレードへの役割グレードの変更及び役割報酬の減額につき,同意していないことは明らかであるから,平成21年6月16日以降の控訴人の役割グレードをB-1からA-9へ変更し,役割報酬を550万円から500万円に減額変更したことは,たとえ担当職務の変更を伴うものであっても,人事権の濫用であって,無効なものというべきである。したがって,平成21年度(同年6月16日から平成22年6月15日まで)における控訴人の役割報酬の額は,平成20年度の役割報酬の額が変更されることなく,引き続き適用されるものと考えられるから,年に550万円であったというべきである。 ウ本件役割報酬減額が有効であるとする被控訴人の主張等についてこれに対し,被控訴人は,そもそも控訴人の担当職務を海外ライセンス業務から国内ライセンス業務に変更したことは,控訴人の復職時におけるライセンス部の業務状況等の下では合理的なものであったから,それに伴って役割グレードが変更され,役割報酬が減額されたとしても,それ自体,被控訴人の人事制度及び報酬体系に則って定められただけのものであり,差別的な意思もなく,年俸減額を緩和するため調整報酬20万円を増額しているから,人事権の濫用ではないと主張しているが,前記認定の本件の事実関係に照らし,そのような主張を採用することは できない。 なお,本件役割報酬の減額が違法,無効なものであることにつき控訴人が主張しているその余の点については,上記のとおり,本件における被控訴人の平成21年度における役割報酬の減額は人事権の濫用であり,無効であるから,さらに判断を示す必要はない。」(17) 原判決77頁2行目の「オ」を「エ」と改める。 (18) 原判決79頁3行目冒頭から同頁19行目末尾までを,次のとおり改める。 用であり,無効であるから,さらに判断を示す必要はない。」(17) 原判決77頁2行目の「オ」を「エ」と改める。 (18) 原判決79頁3行目冒頭から同頁19行目末尾までを,次のとおり改める。 「(ウ) また,被控訴人における成果報酬は,その就業規則や年俸規程のほか,弁論の全趣旨を考慮するならば,前年度の業務実績を前提として,翌年度において期待することのできる業務実績を金銭評価し,これを「成果報酬」という名目で予め支給するものであって,仮にその期間内の実際の業務実績が当初の予測に達しない場合であっても,年度当初に決定された額を受け取ることができるだけではなく,既に受け取った成果報酬を返還する必要はないものとされているから,賃金の後払いではなく,いわゆる見込で支払われる報酬(以下「見込報酬」という。)の一種であると理解することができる。 そして,被控訴人においては,本件で問題となっている平成21年度の成果報酬について,平成20年4月1日から平成21年3月31日までの1年間を査定の対象期間としたものであるが,控訴人は,このうち平成20年7月16日以降は本件育休等を取って休業していたため,その間の業務実績はなかったものである。そして,同年4月1日から休業前日の7月15日までの期間においては,前記のとおり,控訴人は見るべき成果を上げていないとした上,7月16日以降は休業していることから,平成21年度の成果報酬はゼロと査定したものであるが,そもそも上記4月1日から7月15日までの期間において何も成果がなかった としたこと自体相当ではないのは,前記のとおりである。しかも,控訴人は,その後は本件育休等を取得して休業していたため,具体的な業績は上げられなかったのであるが,平成21年4月16日には職場復帰して業務に従事 自体相当ではないのは,前記のとおりである。しかも,控訴人は,その後は本件育休等を取得して休業していたため,具体的な業績は上げられなかったのであるが,平成21年4月16日には職場復帰して業務に従事しており,何らかの成果を上げられる見込みが高いことは明らかであったのに,それにもかかわらず,同年6月16日以降の平成21年度の成果報酬を0円と査定するのは,あまりにも硬直的な取り扱いといわざるを得ない。本件成果報酬ゼロ査定は,育休取得後,業務に復帰した後も,育休等を取得して休業したことを理由に成果報酬を支払わないとすることであり,そのようなことは,「育介指針」において,「休日の日数を超えて働かなかったものとして取り扱うことは,給与の不利益な算定に該当する」とされている趣旨に照らしても,育休等を取得して休業したことを理由に不利益な取り扱いをすることに帰着するから,女性労働者の就業に関して妊娠中及び出産後の就労の確保を図ることなどを目的の一つとしている雇用機会均等法や,育児休業に関する制度を設けるとともに子の養育を行う労働者等の雇用の継続を図ることなどを目的としている育児・介護休業法が,育休等の取得者に対する不利益取扱いを禁止している趣旨にも反する結果になるものというべきである。 このような場合,被控訴人としては,成果報酬の査定に当たり,控訴人が育休等を取得したことを合理的な限度を超えて不利益に取り扱うことがないよう,前年度の評価を据え置いたり,あるいは控訴人と同様の役割グレードとされている者の成果報酬査定の平均値を使用したり,又は合理的な範囲内で仮の評価を行うなど,適切な方法を採用することによって,育休等を取得した者の不利益を合理的な範囲及び方法等において可能な限り回避するための措置をとるべき義務があるというべきである。それにも 範囲内で仮の評価を行うなど,適切な方法を採用することによって,育休等を取得した者の不利益を合理的な範囲及び方法等において可能な限り回避するための措置をとるべき義務があるというべきである。それにもかかわらず,被控訴人は,控訴人の平成21年度の成果報 酬を合理的に査定する代替的な方法を検討することなく,機械的にゼロと査定したものであるから,その意味においても,人事権の濫用として違法であるというべきである。 (エ) もっとも,上記の認定判断は,被控訴人がした平成21年度の控訴人の成果報酬額をゼロと査定したことが人事権の濫用であることを明らかにしたものであり,控訴人が主張しているような,被控訴人において育休等を取得した控訴人に対する偏見があるとの控訴人の主張を認めるものではないし,上記ゼロ査定が雇用機会均等法や育児・介護休業法により直接無効になると認定判断するものではない。 オ以上のとおり,本件年俸減額措置のうち本件役割報酬を減額するとともに本件成果報酬をゼロと査定したことは,被控訴人の人事権の濫用であり,無効であるというべきであるが,その余の点については,控訴人の主張は理由がないというべきである。」(19) 原判決82頁22行目冒頭から89頁8行目末尾までを,次のとおり改める。 「ア控訴人は,本件各措置が控訴人の能力,才能を一切評価せず,控訴人が産休・育休等を取得して復職した女性であり,子を持つ女性であることのみを理由として,合理的な理由もないのに差別したものであるとし,その理由として,①憲法13条及び14条違反,②女性差別撤廃条約2条(e),(f),4条1項,5条(a),11条1項,同2項(b)違反,③労基法3条,4条,65条,39条7項,19条1項本文,67条違反,④育児・介護休業法5条1項,23条1項, 性差別撤廃条約2条(e),(f),4条1項,5条(a),11条1項,同2項(b)違反,③労基法3条,4条,65条,39条7項,19条1項本文,67条違反,④育児・介護休業法5条1項,23条1項,10条,22条違反,⑤雇用機会均等法9条1項,同3項,6条1号,同3号,民法90条違反,などについても主張している。 イしかしながら,前記認定判断のとおり,控訴人の復職に際して,被控訴人が控訴人の担当職務を海外ライセンス業務から国内ライセンス業務 に変更したことと,控訴人について育児短時間勤務を認めると共に本件裁量労働制の適用を排除したことについては,いずれも合理的な理由が認められるのであって,控訴人が主張するような差別的な意図に基づいてなされたものと認めることはできないから,これらの点に関する控訴人の上記アの主張は,それ以上の判断を示すまでもなく,失当なものである。 ウまた,本件年俸減額措置について,平成21年6月16日以降の役割報酬を減額するとともに成果報酬をゼロと査定したことは,前記のとおり,被控訴人の人事権の濫用であり,無効であるというべきであるから,この点に関する控訴人の上記アの主張については,後記2(1)で判断した部分を除き,判断の必要がないというべきである。」(20) 原判決89頁10行目冒頭から同頁25行目末尾までを,次のとおり改める。 「ア以上のとおり,本件役割報酬減額と,本件成果報酬ゼロ査定は,被控訴人による人事権の濫用であり,無効というべきであるから,それぞれについて,従前の年俸額と新しい年俸額との差額支給請求について判断する。 イまず,役割報酬の減額にともなう差額支給請求権についてであるが,控訴人の従前の役割報酬は年額550万円で,これが12か月に分けて支払われていたのであるから 差額支給請求について判断する。 イまず,役割報酬の減額にともなう差額支給請求権についてであるが,控訴人の従前の役割報酬は年額550万円で,これが12か月に分けて支払われていたのであるから,1か月当たり45万8333円(最初の月は端数4円を加算して45万8337円)となる。これに対し,平成21年6月16日以降については,役割報酬が年額500万円とした上で12か月に分けて支払われていたのであり,1か月当たり41万6666円(最初の月は端数8円を加算して41万6674円)となる。そうすると,控訴人の平成21年6月以降支払われるべきであった役割報酬の額は,初回の同月分は16日から30日までで月額の半分であるか ら2万0832円(四捨五入),同年7月から平成22年2月分についてはそれぞれ4万1667円ずつ,少なく支払われたものと考えられるから,被控訴人は,控訴人に対し,その合計額35万4168円及びうち2万0832円につき平成21年6月26日から,うち4万1667円につき同年7月26日から,うち4万1667円につき同年8月26日から,うち4万1667円につき同年9月26日から,うち4万1667円につき同年10月26日から,うち4万1667円につき同年11月26日から,うち4万1667円につき同年12月26日から,うち4万1667円につき平成22年1月26日から,うち4万1667円につき同年2月26日から,各支払済みまで,年6分の割合による遅延損害金を支払うべき義務があるというべきである。 ウ次に,平成21年度の控訴人の成果報酬をゼロと査定したことによる賃金差額の支払請求権について判断するに,被控訴人における成果報酬は,前記のとおり,査定対象期間中の実績に応じて支給されるいわゆる成果給であって,年度ごとに新たに決定される ゼロと査定したことによる賃金差額の支払請求権について判断するに,被控訴人における成果報酬は,前記のとおり,査定対象期間中の実績に応じて支給されるいわゆる成果給であって,年度ごとに新たに決定されるものであり,その額は,査定対象期間中の成果評価に基づく査定を経た上で具体的に決定されるものであるから,控訴人の被控訴人に対する平成21年6月16日以降の具体的な成果報酬支払請求権は,被控訴人が控訴人の同日以降の成果報酬額を具体的に決定して初めて発生するものと解される。そうすると,本件成果報酬ゼロ査定が無効だとしても,被控訴人によって新たな成果報酬額が決定されているわけではなく,控訴人の平成21年6月16日以降の成果報酬額はまだ定まっていない状態にあると考えざるを得ないから,同日以降の具体的な成果報酬支払請求権は発生してないというほかはない(そのような成果報酬のゼロ査定が違法であり,しかるべき金額が決定されていないことについては,次の不法行為に係る請求において斟酌するのが相当である。)。」 (21) 原判決90頁3行目の「本件成果報酬ゼロ査定だけである。」を「平成21年6月16日以降の控訴人の役割グレードをB-1からA-9へと変更し,これに伴って控訴人の役割報酬を年額550万円(報酬グレード6)から年額500万円(報酬グレード5-1)に減額したことと,控訴人の同日以降の成果報酬を0円と査定したことである。そして,役割報酬については,年額550万円で変更がないものとして,賃金支払請求権に基づき,その差額の支払請求が認められるが,成果報酬については,しかるべき金額が具体的に決定されておらず,賃金支払請求権として具体化していないから,その差額の支払請求は認められない。しかしながら,そのような成果報酬を0円としたことを含め,」と改める。 は,しかるべき金額が具体的に決定されておらず,賃金支払請求権として具体化していないから,その差額の支払請求は認められない。しかしながら,そのような成果報酬を0円としたことを含め,」と改める。 (22) 原判決90頁8行目及び同頁17行目の「上記1(5)オ(イ)」をそれぞれ「前記1(5)エ(イ)」と改める。 (23) 原判決90頁19行目の「原告の成果は,」の次に「直ちに」を加え,同頁21行目の「みることはできず,」から同頁25行目末尾までを,次のとおり改める。 「みることはできない。そこで,検討するに,被控訴人における成果報酬は,前年度の実績評価に基づく一種の見込報酬であるから,そのような見込報酬としての成果報酬の支払いに対する期待が侵害されたことによる損害としては,結局のところ,控訴人に対し成果報酬としてどの程度の額が支払われるのが相当であったかということに帰着するところ,前記1(5)エ(イ)で認定し説示されている事実(特に,控訴人の前年度における海外ライセンス業務に係る勤務評価の点数は,平均値が3のところ,3.1であったこと)や,控訴人は,妊娠が判明した後の平成20年2月には海外出張してフランス,ドイツ,オランダでライセンス取得の交渉をしたこと,復職の時期についても,当初は平成21年2月の復職を予定していたが,P5マネージャーの示唆もあって復職時期を同年4月に遅らせたこと,復職に際してはフルタイム のベビーシッターを確保してなるべく業務に支障が出ないよう最大限の努力をすることを伝えていたことなどの事実が認められるのであって,育児短時間制度の適用を申請していたとはいえ,仕事に対する熱意や意欲は十分に示されており,復職すれば一定の成果を上げるものと考えることが可能であり,そうであればこそ,被控訴人においても,問題のあっ 育児短時間制度の適用を申請していたとはいえ,仕事に対する熱意や意欲は十分に示されており,復職すれば一定の成果を上げるものと考えることが可能であり,そうであればこそ,被控訴人においても,問題のあったI氏の後任として,本件事実認定(前記1(1)エ(イ))のとおり,国内ライセンス業務の立て直しを期待したものと考えられること,被控訴人におけるBクラスの成果報酬の平均は60万円であるところ,平成20年度における控訴人の成果報酬の額は90万円であって,平均値の1.5倍であったことなどの事実を総合的に勘案すれば,平成21年6月16日以降の控訴人の成果報酬は,本来であれば,Bクラスの平均値である60万円を下回るものではないと評価するのが相当である。 もっとも,被控訴人は調整報酬として20万円を控訴人に支給することとしていたから,これを控除して40万円とすべきであるところ,控訴人は,平成21年度の途中である平成22年2月には被控訴人を退職しており,その成果報酬が支給されたであろうと考えられる期間は8.5か月間であったことなどを考慮すれば,上記不法行為に対する控訴人の慰謝料としては,30万円とするのが相当である。 また,弁護士費用相当損害金については,上記の点に加えて,前記のとおり,控訴人に対する役割報酬の減額自体が人事権の濫用として違法,無効なものであって,控訴人に対する不法行為を構成するものであり,これに事案の難易度など本件に顕れた諸般の事情をも考慮すれば,これを30万円とするのが相当である。 したがって,控訴人の被控訴人に対する慰謝料等の支払請求権の合計額は60万円である。」第4 結語 以上の次第で,控訴人の本件各請求のうち,雇用契約に基づく賃金差額の支払を求める請求は,平成21年6月16日から平成22年2月2 の支払請求権の合計額は60万円である。」第4 結語 以上の次第で,控訴人の本件各請求のうち,雇用契約に基づく賃金差額の支払を求める請求は,平成21年6月16日から平成22年2月28日に退職するまでの合計35万4168円及び各月の給与の支払期日の翌日から支払済みまで商事法定利率である年6分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で,不法行為に基づく損害賠償(慰謝料及び弁護士費用)の支払を求める請求は,合計60万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成21年6月24日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で,それぞれ理由があるからこれを認容し,その余はいずれも理由がないから棄却すべきところ,原判決のうちこれと異なる部分は相当ではないから,原判決をその限度で変更することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第14民事部 裁判長裁判官設樂隆一 裁判官須藤典明 裁判官尾立美子は差し支えにより署名押印することができない。 裁判長裁判官設樂隆一

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