主文 原告の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,原告の負担とする。 事実及び理由 第1原告の請求 原告と被告とを離婚する。 原告と被告との長男Aの親権者を被告と定める。 第2事案の概要 原告と被告は,平成7年9月20日婚姻の届出をした夫婦であり,その間に長男Aがいる(甲1)。 原告は,離婚原因として,①被告に婚姻当初不貞行為があったこと,②長男誕生後間もなく原告に転勤の内示があった際,転勤すれば被告の不貞相手と同じ職場になることなどから原告が退職を希望したところ,被告は自分や子供のことを考えていないと罵り,原告に転勤を命じたこと,③原告は被告の不貞相手に対し何一つ文句を言わなかったにもかかわらず,原告が平成12年に不貞をしたときは,被告は,親や親戚に頼み,原告の不貞相手に対し,尾行をしたり,暴力を振るう,罵声を浴びせるなどし,最終的には仕事を辞めさせ,慰謝料まで支払わせたこと,④原告と被告はすれ違い生活で,顔を会わせてもほとんど会話がなく,もはや夫婦の実態を失っていること等を主張し,婚姻を継続し難い重大な事由(民法770条1項5号)があると主張している。 被告は,原告と被告の婚姻は破綻していない,仮に破綻しているとしてもその原因を作ったのは原告であるから,有責配偶者からの離婚請求は許されないとして争っている。 第3当裁判所の判断 証拠(甲1ないし3,乙1ないし5(以上,枝番のあるものは枝番の全て),原告本人,被告本人)並びに弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ,この認定を覆すに足りる証拠はない。 (1) 原告は,株式会社Bで同僚であった被告と社内恋愛の上,平成7年9月20日婚姻した。それから間もない同年12月ころ,Bの同僚でその当時はC工場に転勤していたDと被告の不貞問題が浮上し,被告は,原告に 原告は,株式会社Bで同僚であった被告と社内恋愛の上,平成7年9月20日婚姻した。それから間もない同年12月ころ,Bの同僚でその当時はC工場に転勤していたDと被告の不貞問題が浮上し,被告は,原告に対し,2度とDと会わないことを約束し,慰謝料5万円を支払った。ところが,平成8年1月,被告がDと交際を続けていたことが発覚したため,原告は,一旦被告を実家に戻らせたが,被告の両親とも相談の上,被告から慰謝料20万円の支払を受け,被告を許した。このとき原告は,被告の不貞につき,自分の親には黙っておき,また不貞相手のDにも話を持って行くことをしなかった。 (2) 平成10年1月に長男Aが誕生したが,その春原告にその当時勤務していたE工場からC工場に転勤するよう内示があり,原告からその話を聞いた被告は,転勤を受けるかどうかは原告に任せる旨答えた。原告は,C工場にはDが勤務しており,同じ寮で生活することになることや自分が長男であって最終的には岡山に落ち着きたいことなどから,転勤せずに退職することを決意し,そのことを被告に伝えたところ,被告は,自分や子供のことを考えていないとして原告を非難し,原告に転勤するよう求めた。原告は,やむなく同年4月にC工場に転勤したが,翌平成11年1月15日Bを退職し,同月18日F株式会社に入社した。 (3) 原告と被告は,平成11年7月,岡山市a町に宅地を購入し,同年9月13日ころ,自宅(軽量鉄骨造亜鉛メッキ鋼板葺2階建居宅1階62.07㎡,2階50.32㎡)を新築した。原告と被告は,この土地建物につき,2分の1宛の共有とし,住宅ローンのため,いずれも原告と被告を連帯債務者として,住宅金融公庫と年金福祉事業団の抵当権を設定している。 (4) 原告は,職場の同僚であったGと平成12年2月ころから不倫関係となり,同女とスキー 宅ローンのため,いずれも原告と被告を連帯債務者として,住宅金融公庫と年金福祉事業団の抵当権を設定している。 (4) 原告は,職場の同僚であったGと平成12年2月ころから不倫関係となり,同女とスキーに行ったりした。被告は,同年3月末でBを退職したが,原告の浮気に気づき,自分の妹や両親等に頼んで原告の車を尾行するなどした。 なお,原告と被告の性交渉は同年6月ころが最後であった。同年9月21日深夜,パチンコ店の駐車場において,尾行していた被告やその母,妹とGがもみ合いとなり,警察官が臨場する騒ぎとなった。このとき被告から連絡を受けて原告の両親は初めて原告の浮気を知った。その夜,原告の両親,被告の両親,原告,被告の6人で話し合いを持ち,原告の父が原告にGと別れるよう諭し,原告も別れると約束した。 (5) ところが,原告はその後もGと交際を続ける一方,原告に対しては冷たい態度を取り,「おめえと話をするときは離婚するときだけじゃ。」などと発言するようになった。被告も,同年11月13日には原告の車の盗聴器を仕掛けるなどし,双方の関係は冷戦状態となった。同年11月29日,原告は,勤務終了後,岡山市bのスーパーマーケットの駐車場でGと待ち合わせ,自分の車からGの車に乗り換えて出発したが,そのことを友人の知らせで知った被告は,自分の父と共にその駐車場まで急行し,証拠とするため原告の車を自宅まで乗って帰った。そのため,原告はa町の自宅まで徒歩で帰るはめになった。被告の父は,Gの親を原告方に呼んで話し合いをするため,同日午後10時過ぎころGの家を訪れたが,同所で口論となりG側が警察を呼ぶ騒ぎとなった。結局その夜,原告の両親,被告の両親,原告,被告,G,Gのおばらが原告方で話し合いを持ち,Gのおばは,今後Gに原告との交際を一切させないこと,原告と同じ会社も退職 なりG側が警察を呼ぶ騒ぎとなった。結局その夜,原告の両親,被告の両親,原告,被告,G,Gのおばらが原告方で話し合いを持ち,Gのおばは,今後Gに原告との交際を一切させないこと,原告と同じ会社も退職させることなどを約束した。Gとおばが帰った後も原告側と被告側の話し合いが続き,原告は,「自分と別れてくれんと,一生おめえを恨む。」と言って離婚用紙を被告に突き付けた。 被告が「絶対離婚はしない。結婚したら最後まで責任を取ってほしい。」「離婚がしたかったら,私を殺してからにして。」と答えると,原告は「おう,刺したらぁ。」とまで言った。 (6) 同年12月17日午後3時ころ,ファミリーレストランで原告,原告の父,Gのおば,Gの母らが集まり,念書を交換した。G側は,このとき,Gが被告に慰謝料50万円を支払い,仕事を辞め,原告との不倫をしないことを約束し,同月23日,被告にその50万円を支払った。原告は,被告が不貞行為をしたときには,自分の親や不貞の相手に話をせずに自分の内で納めたのに,立場が逆になると,被告は自分の周囲に話し,不貞の相手を失職させ,慰謝料まで支払わせたことで被告に対する嫌悪感を強めた。原告は,被告に対し,「あくでぇことをしやがって。」と罵り,以後被告を露骨に無視するようになった。 (7) 平成13年3月10日,原告と被告は口論し,被告は実家に逃げ帰り,以後原告と被告は別居している。なお,同月17日に原告がa町の自宅から実家に戻り,被告と長男がa町の家で生活するようになった。原告は,同年7月23日,離婚調停を申し立てたが,同年11月16日調停不成立となったため,同月26日本件訴訟を提起した。また,原告は,被告に対し,生活費として,同年4月に10万円,同年5月から毎月5万円を支払っていたが,平成14年3月20日には被告申立てに係る婚姻費 成立となったため,同月26日本件訴訟を提起した。また,原告は,被告に対し,生活費として,同年4月に10万円,同年5月から毎月5万円を支払っていたが,平成14年3月20日には被告申立てに係る婚姻費用分担の調停が成立した。 この調停において,原告は,被告に対し,婚姻費用の分担金として平成13年9月から毎月7万5000円の支払義務があることを認め,平成13年9月分から平成14年3月分までの毎月5万円宛の既払金を控除した未払残額合計17万5000円を同年4月15日に支払うこと,同年4月から毎月15日限り月額7万5000円宛支払うことを約束した。 (8) 被告は,なお原告との婚姻継続を希望しているが,原告の離婚意思は固く,現在原告と被告の婚姻はすでに破綻し,回復の見込みがない。 前記のとおり,原告と被告の婚姻はすでに破綻しているものと認められるところ,その専らの責任は,家庭を顧みずにGと不貞を行い,それが発覚しても自らの非を棚に上げ被告を責める言動に終始した原告にあるものといわざるをえない。原告は,被告の不貞問題が発覚した直後から離婚を考えていたが,結婚直後であり,しかも夫婦とも同じ職場であったことなどから我慢をしていたところ,被告の言動により離婚の思いが強くなり,被告がBを退職した平成12年4月ころには離婚意思が固まっており,Gとの交際によって婚姻が破綻したものではないかの主張をするが,平成11年7月から9月にかけて,婚姻継続を前提とし,夫婦で連帯債務者となって,多額の住宅ローンを組み,自宅の土地建物を取得していることなどに照らせば,Gと交際する前から原告と被告の婚姻が破綻していたものとは解されず,原告の前記主張は採用できない。また,原告は,被告の不貞問題に対する自らの対応の仕方を挙げて今回の被告側の対応が行き過ぎであるかの主張をするが, から原告と被告の婚姻が破綻していたものとは解されず,原告の前記主張は採用できない。また,原告は,被告の不貞問題に対する自らの対応の仕方を挙げて今回の被告側の対応が行き過ぎであるかの主張をするが,被告の不貞問題は数年も前の解決済みの問題であり,原告とGの不貞問題と関連付けて論ずることはできず,また,被告側の対応に多少の行き過ぎがあったとしても,そのことを原告が責められる立場にはない。 そうすると,原告の本件離婚請求は,有責配偶者からのものであり,しかも夫婦の別居期間も短く,夫婦間にまだ幼い子があること,離婚を認めると被告が精神的,社会的,経済的に苛酷な状態に置かれる可能性が高いこと等の事情を考えると,これを認容することは正義に反するものであり,信義則に照らし,許されないというべきである。 以上によれば,原告の請求は理由がない。 岡山地方裁判所第2民事部裁判官政岡克俊
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