平成26年12月15日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成24年(ワ)第25291号特許権侵害差止等請求事件(口頭弁論終結の日平成26年9月17日)判決金沢市旭町<以下略>原告甲同訴訟代理人弁護士影山光太郎同園山佐和子同島岡雅之金沢市広坂<以下略>被告金沢市同訴訟代理人弁護士坂井美紀夫同長澤裕子同訴訟復代理人弁護士松本司同指定代理人関本哲夫同武田丈八同石野圭祐同木越龍雄同佐藤孝一金沢市高畠<以下略>被告補助参加人株式会社土田工建(以下「参加人土田工建」という。)金沢市笠舞本町<以下略>被告補助参加人株式会社平本組(以下「参加人平本組」という。) 主文 1 被告は,原告に対し,336000円及び,う 組(以下「参加人平本組」という。) 主文 1 被告は,原告に対し,33万6000円及び,うち16万8000円に対する平成24年9月10日から,うち16万8000円に対する平成26年5月2日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用(補助参加によって生じた費用を除く。)は,これを3分し,その2を原告の負担,その余を被告の負担とし,参加人土田工建の補助参加によって生じた費用は同参加人の負担とし,参加人平本組の補助参加によって生じた費用は同参加人の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,別紙1被告物件目録記載1ないし4のマンホール用インバートを使用してはならない。 2 被告は,原告に対し,56万円及びこれに対する平成24年9月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 本件は,発明の名称を「マンホール用のインバート」とする特許権を有する原告が,被告に対し,被告の管理に係る別紙1被告物件目録記載1ないし4のマンホール用インバート(以下,同目録記載順に「被告物件1」などといい,その設置場所のマンホール〔人孔ともいう。〕を「被告物件1のマンホール」などという。)は上記発明の技術的範囲に含まれ,被告による被告物件1ないし4の使用は上記特許権の侵害を構成する旨主張して,①特許法100条1項に基づき,被告物件1ないし4の使用禁止を求めるとともに,②不法行為(特許権侵害)に基づき,損害賠償金56万円及びこれに対する平成24年9月1 許権の侵害を構成する旨主張して,①特許法100条1項に基づき,被告物件1ないし4の使用禁止を求めるとともに,②不法行為(特許権侵害)に基づき,損害賠償金56万円及びこれに対する平成24年9月10日(本件訴状送達の日の翌日)から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である(なお,原告は,被告及び関係業者 から信用・名誉を毀損され,工事から排除されるなど種々経済的及び精神的な不利益を受けたことによる損害の額が150万円を下らない旨述べたが〔平成,請求の拡張はしておらず,上記②の請求が一部請求である旨の主張もしないので,上記150万円は単なる事情として主張されたものと解される。)。 2 前提事実(当事者間に争いがないか,後掲の証拠等により容易に認められる事実)(1) 当事者等ア原告は,左官工事,土木工事,下水・インバート工事等を業務内容とする有限会社倉工業の代表取締役である(甲11)。 イ被告は,マンホール用インバートの施行・管理等を含む下水道事業を行う地方公共団体であり,被告物件1ないし4は,いずれも被告の施行・管理等に係るマンホール用インバートである。なお,被告における下水道管渠の維持管理に関する事項は,被告の企業局建設部維持管理課(以下「被告企業局建設部維持管理課」という。なお,被告の他の部局や機関についても同様の表現を用いることがある。)の分掌である(乙46,47)。 被告は,平成25年4月27日,同月26日付け訴訟告知書を当庁に提出して,参加人土田工建及び参加人平本組に訴訟告知をした。参加人土田工建及び参加人平本組(以下,両者を併せて「参加人ら」という。)は,それぞれ同年5月4日,上記訴訟告知書の副本の送達を受け,参加人土田工建は,平成26年8月22日,参加人平本組は,同月2 参加人土田工建及び参加人平本組(以下,両者を併せて「参加人ら」という。)は,それぞれ同年5月4日,上記訴訟告知書の副本の送達を受け,参加人土田工建は,平成26年8月22日,参加人平本組は,同月27日,それぞれ被告を補助するため,補助参加の申出をした(当裁判所に顕著)。 ウ参加人土田工建は,土木一式工事の設計・監理・請負・施工等を目的とする株式会社であり,被告の公共下水道管渠工事として,被告物件1のインバートの施工工事を被告企業局から請け負ったとする業者である(丙1)。 エ参加人平本組は,土木工事一式業,造園工事業,管工事業等を目的とする株式会社であり,被告の公共下水道管渠工事として,被告物件2のインバートの施工工事を被告企業局から請け負ったとする業者である(丁1)。 オなお,社団法人日本下水道協会作成の「下水道施設計画・設計指針と解説前編 -2009年版-」(乙32)の252頁では,「マンホール底部には,下水の円滑な流下を図るため,管きょの接合や会合の状況に応じたインバートを設ける」とされ,同協会作成の「下水道用設計積算要領-管路施設(開削工法)編- 2008年版」(乙33)の233頁では,「インバートは,管径の1/2を越えない高さを標準とする」とされている。 (2) 原告の有する特許権ア原告は,次の特許権を有している(以下「本件特許権」という。)。 発明の名称マンホール用のインバート特許番号第2949276号出願日平成8年8月21日登録日平成11年7月9日イ本件特許権に係る明細書(以下,図面と併せて,「本件明細書」という。 参照の便宜のため,本件特許権に係る特許公報の写し(甲1)を本判決末尾に別添として添付する。)の特許請求の範囲における請求項1の記載は,次のとおりであ 書(以下,図面と併せて,「本件明細書」という。 参照の便宜のため,本件特許権に係る特許公報の写し(甲1)を本判決末尾に別添として添付する。)の特許請求の範囲における請求項1の記載は,次のとおりである(以下,同項に記載された発明を「本件発明」といい,本件発明についての特許を「本件特許」という。)。 「断面半円形の導流溝の最下部に跳返り防止用の凹溝を長手方向に形成してなるマンホール用のインバート。」(3) 本件発明の構成要件本件発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,それぞれの記号に従い,「構成要件A」などという。)。 A 断面半円形の導流溝のB 最下部にC 跳返り防止用の凹溝をD 長手方向に形成してなるE マンホール用のインバート 3 争点(1) 被告物件1ないし4は本件発明の技術的範囲に含まれるか(争点1)(2) 本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものか(争点2)ア実施可能要件違反の有無(争点2-ア)イサポート要件違反の有無(争点2-イ)(3) 差止請求の可否(争点3)(4) 被告は無過失か(争点4)(5) 損害の額(争点5) 4 争点に関する当事者等の主張(1) 争点1(被告物件1ないし4は本件発明の技術的範囲に含まれるか)について(原告の主張)ア被告物件1ないし4の構成について被告物件1ないし4の各構成は,それぞれ別紙「原告主張の被告物件目録1」ないし「原告主張の被告物件目録4」記載のとおりである(予備的に,被告及び参加人ら〔以下「被告ら」という。〕主張のとおりであることを主張する。)。 イ構成要件充足性について被告物件1ないし4の各構成を本件発明の構成要件と対応させて記載すると,いずれも次のとおりとなり,これらは本件発明の構成要 。〕主張のとおりであることを主張する。)。 イ構成要件充足性について被告物件1ないし4の各構成を本件発明の構成要件と対応させて記載すると,いずれも次のとおりとなり,これらは本件発明の構成要件と同一であり,同一の作用効果を奏するから,被告物件1ないし4は,いずれも本 件発明の技術的範囲に含まれる。 a 断面半円形の導流溝のb 最下部にc 跳返り防止用の凹溝をd 長手方向に形成されているe マンホール用のインバートウ被告らの主張に対する原告の反論(ア) 被告らは,本件発明が「インバート成形時に一体形成されたもの」に限られる旨主張する。 しかし,特許発明の技術的範囲は,特許請求の範囲の記載に基づいて定めるべきところ(特許法70条1項),本件明細書の特許請求の範囲には「一体(形成)」なる文言はなく,本件発明の技術的範囲を「インバート成形時に一体形成されたもの」に限定解釈すべき理由はない。 (イ) 被告らは,被告物件1ないし4が本件発明の作用効果を奏しない旨主張する。 しかし,本件発明は物の発明であるところ,本件明細書に記載された実施態様等を参酌すれば,本件発明の構成要件を充足する被告物件1ないし4が「汚物の付着を防止」する効果を奏することは,明らかである。 (被告らの主張)ア被告物件1ないし4の構成について被告物件1ないし4の各構成は,それぞれ別紙2-1ないし2-4記載のとおりである。 イ構成要件充足性について被告物件1ないし4が本件発明の構成要件を充足する旨の原告主張は,争う。 本件明細書の特許請求の範囲の請求項1には,「断面半円形の導流溝の 最下部に跳返り防止用の凹溝を長手方向に形成」とあるところ,同記載は,インバート成形時の一体形成を意味するものというべきであり,同明 書の特許請求の範囲の請求項1には,「断面半円形の導流溝の 最下部に跳返り防止用の凹溝を長手方向に形成」とあるところ,同記載は,インバート成形時の一体形成を意味するものというべきであり,同明細書の発明の詳細な説明の段落【0031】に,「インバート10は,セメントによって一体成形する他,塩化ビニルのような硬質樹脂材料により一体成形してもよい。」と記載されていることからすれば,本件発明は,凹溝が「インバート成形時に一体形成されたもの」に限られることが明らかである。 しかるところ,被告物件1ないし4は,争点3及び4で詳述するとおり,被告が引渡しを受けた後に,第三者によりインバートの形状が凹溝に加工されたものであって,断面半円形の導流溝の最下部に凹溝が長手方向に形成されているとしても,それはインバート成形後にされたものであるから,本件発明の構成要件を充足しない。 ウ被告物件1ないし4が本件発明の作用効果を奏しないこと(ア) 被告物件1ないし4は,以下のとおり本件発明の作用効果を有しないから,本件発明の技術的範囲に含まれない。 (イ) そもそも直径150mm,200mm,250mmの断面半円形の導流溝に対し,たかだか1ないし5mm程度の段差(11a,11a)を付けた「凹溝」を設定しても,「汚物の付着を防止」という本件発明の効果を奏するかは,技術常識からしても極めて疑わしい(乙48)。 (ウ) 被告物件2とほぼ同じ条件(段差,マンホールの設置位置等)のインバートと従来技術のインバート(モルタルの塗布されていない上部開放の断面半円形の導流溝のインバート)の比較実験(以下「比較実験1」という。乙48参照)の結果によれば,被告物件2とほぼ同じ条件のインバートと従来技術のインバートとの間で,マンホールの底面や壁面,管渠の開口端等の汚物 溝のインバート)の比較実験(以下「比較実験1」という。乙48参照)の結果によれば,被告物件2とほぼ同じ条件のインバートと従来技術のインバートとの間で,マンホールの底面や壁面,管渠の開口端等の汚物付着状況に有意な差はなかった。 さらに,原告が主張するような「流路の段差の存否・程度,流量」を 考慮した上で,再度被告が行った実験(以下「比較実験2」という。 乙52の1・2参照)の結果からも,従来技術との間で「汚物の付着を防止」する効果について有意な差異は認められなかった。 (エ) したがって,被告物件1ないし4は,いずれも本件発明の作用効果を奏しない。 (オ) なお,原告が平成20年2月14日に出願した実用新案登録第3141205号に係る明細書(乙51参照)には,「従来のインバートは,・・・上流側,下流側の管渠を段差接合するとき,上流側の管渠から落下する汚水に汚物が含まれていると,汚物が上方に跳ね返り,マンホールの底面や壁面,管渠の開口端等に付着する不都合があるため,出願人は,導流溝の最下部に跳返り防止用の凹溝を形成することを先きに提案した(特許文献1)。」「【特許文献1】特許第2949276号公報(判決注:本件特許に係る特許公報)」「かかる従来技術によるときは,導流溝の最下部の凹溝は,導流溝の全体断面形状を複雑にするにも拘らず,汚物の跳返り防止効果が必ずしも十分でないという問題があった。」との記載がある(段落【0003】ないし【0004】)。 これらの記載によれば,原告自身が,本件発明の構成を採用しても,その作用効果である「汚物の跳返り防止効果が必ずしも十分でない」と述べており,本件発明の作用効果に疑問をもっていることがわかる。 (2) 争点2(本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものか)について(被告らの主張) り防止効果が必ずしも十分でない」と述べており,本件発明の作用効果に疑問をもっていることがわかる。 (2) 争点2(本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものか)について(被告らの主張)ア争点2-ア(実施可能要件違反の有無)について(ア) 平成14年法律第24号による改正前の特許法36条4項(以下,単に「特許法36条4項」という。)の要件に適合した記載とは,特許を受けようとする発明の作用効果を奏する構成を開示する記載であると ころ,本件明細書の発明の詳細な説明には,跳返り防止作用を発揮する構成を開示する記載がないから,実施可能要件(特許法36条4項)違反である。 すなわち,特許法36条4項の「明確かつ十分」な記載とは,当業者がさしたる負担もなく,再現可能な記載を意味するところ,以下のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明には,このような記載はない。 本件明細書によれば,本件発明は,「断面半円形の導流溝の最下部に跳返り防止用の凹溝を長手方向に形成してなるマンホール用のインバート。」とされ(特許請求の範囲の請求項1),この構成を採用することにより,発明の詳細な説明の段落【0010】及び【0032】の作用効果を奏すると説明されており,導流溝の最下部に凹溝を設ければ,どのような大きさの凹溝であっても,上流側の管渠から落下する汚水の跳返りを導流溝内に小さく抑えることができるとされている。 しかし,発明の詳細な説明には,「凹溝11は,直径150mm,200mm,250mmの導流溝10aに対して段部11a,11aの段差が1~5mm程度に設定されており,導流溝10aの断面形状は,たとえば,正半円より約10mm程度上方に高く延長して形成されている。」(段落【0018】)との説明のほか,凹溝の断面形状に係る説明(段落【00 mm程度に設定されており,導流溝10aの断面形状は,たとえば,正半円より約10mm程度上方に高く延長して形成されている。」(段落【0018】)との説明のほか,凹溝の断面形状に係る説明(段落【0025】ないし【0028】)があるものの,具体的に大きさ等を明記した凹溝を形成した場合と形成していない従来技術との比較試験結果等は,一切説明されていない。 また,「直径150mm,200mm,250mmの断面半円形の導流溝」に対して,たかだか「1~5mm」程度の段差を設けても,「跳返り防止」や「汚物付着防止」の効果はないから,当業者は,本件明細書の発明の詳細な説明の記載を踏まえても,跳返り防止作用を発揮するようなインバートを再現製作することができない。 したがって,当業者にとって,本件明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて本件発明を実施することは,不可能である。 (イ) 実際にも,比較実験1の結果によれば,被告物件2とほぼ同じ条件のインバートと従来技術のインバートとの比較において,マンホールの底面や壁面,管渠の開口端等の汚物付着状況に有意な差は存在しなかった(乙48)。 また,被告の行った比較実験2では,本件発明の明細書の記載を参酌し,本件発明の実施品である,導流溝の最下部に「凹溝」を施したインバート(直径200mm・長さ900mmで,本件明細書の【図6】を参酌し,幅約150mmの「凹溝」を【0018】の記載から「5mm」の段差をつけることにより設けたもの。以下「調査物件A」という。)と,従来技術である「上部開放の断面半円形」で直径200mm・長さ900mmの導流溝のインバート(以下「従来物件B」という。)について,本件明細書の【図4】にあるように,調査物件A及び従来物件Bをやや傾斜させ,本件明細書の発明の詳細な説明の段落 200mm・長さ900mmの導流溝のインバート(以下「従来物件B」という。)について,本件明細書の【図4】にあるように,調査物件A及び従来物件Bをやや傾斜させ,本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0020】ないし【0022】の記載を参照し,調査物件A及び従来物件Bの上流側端の上方「0cm」,「30cm」及び「58cm」の高さから実験用の汚水を落下させるようにした。しかし,この比較実験2の結果によっても,汚物の跳返り防止効果に差異は認められなかった(乙52の1・2)。 これらのことは,言い換えれば,本件発明の跳返り防止作用を発揮するインバートを当業者が本件明細書の発明の詳細な説明の記載により再現製造できなかったということであり,発明の詳細な説明には,本件発明の作用を発揮する構成を開示した記載は存在しないことになる。 仮に,当業者が跳返り防止作用を発揮する構成を得ようとしたら,種々の条件を変えた試作品を多数製作して実験する必要があるが,こ れは,当業者がさしたる負担もなく再現可能にする記載が発明の詳細な説明にはないことを意味する。 (ウ) 以上のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明には,跳返り防止作用を発揮する構成を開示する記載がなく,したがって,本件特許には,実施可能要件違反の無効事由が存在する。 イ争点2-イ(サポート要件違反の有無)について(ア) 本件明細書の特許請求の範囲の請求項1の「断面半円形の導流溝の最下部に跳返り防止用の凹溝を長手方向に形成してなるマンホール用のインバート。」との記載によれば,凹溝の巾や段差がどの程度であっても,また,流量,流速等の諸条件が異なっても,「凹溝」を「断面半円形の導流溝の最下部に」かつ「長手方向に形成」しさえすればよいことになる。 ここで,本件明細書の発明の詳細な説明の どの程度であっても,また,流量,流速等の諸条件が異なっても,「凹溝」を「断面半円形の導流溝の最下部に」かつ「長手方向に形成」しさえすればよいことになる。 ここで,本件明細書の発明の詳細な説明の記載によれば,本件発明は「汚物付着を防止」する効果があるとされ,特に,段落【0018】において,「凹溝11は,直径150mm,200mm,250mmの導流溝10aに対して段部11a,11aの段差が1~5mm程度に設定されており,導流溝10aの断面形状は,たとえば,正半円より約10mm程度上方に高く延長して形成されている。」とされているところ,本件発明は,段差がたとえ0.5mmであっても,逆に10mm,20mmであってもよいことになる。さらに,同段落では,導流溝の断面形状は,特許請求の範囲の請求項1でいう「半円形」(正半円)ではなく,「正半円より約10mm程度上方に高く延長して形成されている。」と説明しているのである。 このように,本件明細書の発明の詳細な説明によりサポートされていない構成も,特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(本件発明)の要旨に含まれていることになる。 (イ) 仮に,「汚物の付着を防止」する効果が流路の段差の存否・程度,流量,流速等によって変わるなら,本件明細書の特許請求の範囲の請求項1には,「汚物の付着を防止」する流路の段差の存否・程度,流量,流速等の諸条件が記載されなければならないはずであり,これらが規定されていないのであれば,請求項1の記載は「汚物の付着を防止」の効果を奏しない構成をも含む記載となっている。 (ウ) また,本件発明の凹溝を説明した実施態様は,本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0018】の説明と【図6】で示されるものしか存在しない。【図1】の凹溝は同【請求項4】の,同【図7】及び 。 (ウ) また,本件発明の凹溝を説明した実施態様は,本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0018】の説明と【図6】で示されるものしか存在しない。【図1】の凹溝は同【請求項4】の,同【図7】及び【図8】は同【請求項2】の,同【図10】は同【請求項3】の実施態様であり,同【請求項1】の実施態様でない。 (エ) 以上のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明に開示された技術内容は,特許請求の範囲の請求項1記載の構成をサポートするといえず,本件特許には,サポート要件(平成14年法律第24号による改正前の特許法36条6項1号〔以下,単に「特許法36条6項1号」という。〕)違反の無効事由が存在する。 ウなお,実施可能要件及びサポート要件を具備することは,特許権の発生要件であるから,出願人・特許権者である原告が立証責任を負担するものである(知財高裁平成20年(行ケ)第10483号同21年11月11日判決参照)。このことは,特許法104条の3第1項が「特許権・・・侵害に係る訴訟において,当該特許が特許無効審判により・・・無効にされるべきものと認められるときは,特許権者・・・は,相手方に対しその権利を行使することができない。」と規定し,「無効事由が存するときは」とは規定していないことからも,明らかである。実質的にみても,追試等をしなければならない第三者と比較して,出願人ないし特許権者は出願発明につき知悉しているのであるから,サポート要件及び実施可能要件が存 在することにつき立証責任を負担させても酷とはいえない。加えて,特許庁の審判と侵害裁判所の無効の主張との立証責任の分配を異に解するときは,両者の判断が齟齬することを制度上も認める結果となり妥当ではない。 したがって,特許法104条の3第1項の無効の主張の場合の立証責任の分配は,無効 の無効の主張との立証責任の分配を異に解するときは,両者の判断が齟齬することを制度上も認める結果となり妥当ではない。 したがって,特許法104条の3第1項の無効の主張の場合の立証責任の分配は,無効審判における立証責任の分配と同様に考えるべきである。 (原告の主張)ア争点2-ア(実施可能要件違反の有無)について明細書の発明の詳細な説明は,特許請求の範囲に記載された発明を実施するための具体的個別的な設計図である必要はない。課題を解決するための技術的思想を具体的にどのように実施するかが,当業者の視点に立って出願時の技術水準を考慮して可能な程度に記載されていればよい。 本件明細書の発明な詳細な説明についてみると,8つの実施の形態(【図1】及び【図4】ないし【図10】参照)が記載されており,第1の実施の形態では,導流溝,段部の段差等について具体的な数値が記載されており(段落【0018】),したがって,当業者は,特許請求の範囲の請求項1に係る発明(本件発明)を実施することができる。他の実施の形態についても,これを教示として,当業者が出願時の技術水準に基づき,現場の状況に合うように適宜寸法設計すれば,実施することができる。 なお,明細書の発明の詳細な説明の記載においては,従来例との比較試験データがすべての発明について要求されるわけではない。比較試験データを示さない限り,発明の作用効果を明らかにできない場合(特に化学系の発明等)には必須の記載となるが,本件発明のように物の構造に関する発明では,明細書に記載された実施の形態及び他の記載内容を参照することにより,発明の作用効果を奏することが当業者にとって技術的に明らかであれば,従来例との比較試験データは必要ない。本件発明は,そうした比較試験データを要求する類の発明ではないと判断されたからこそ, ことにより,発明の作用効果を奏することが当業者にとって技術的に明らかであれば,従来例との比較試験データは必要ない。本件発明は,そうした比較試験データを要求する類の発明ではないと判断されたからこそ, 特許査定に至ったものである。 本件明細書の発明の詳細な説明には,本件発明の実験値は明示されていないが,凹溝の壁面に沿った流れが凹溝の段部にあたって勢いが弱まり,凹溝外に跳ね上げることが減ずることは,流体力学的に明解であり,当業者にとって自明である。 また,凹溝等の構成部材,「跳返り」「跳返り防止」等の用語は,当業者に理解可能な用語であり,本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0015】ないし【0021】に記載された第1の実施の態様を読んで理解し,インバートを製造することは,当業者には容易である。当業者が経験と知識並びに具体的な実施の態様に基づき,マンホールの環境に応じて,本件発明の構成を備えたインバートを製作できることは,明らかである。しかも,被告は,現に比較実験2のように本件発明の再現を行っているのであり,その結果は,本件発明が実施可能であって,その効果が顕著であることを示すものである。 したがって,本件明細書の発明の詳細な説明の記載が特許法36条4項の規定に違反するとは,いえない。 イ争点2-イ(サポート要件違反の有無)について本件明細書の特許請求の範囲の請求項1は,①発明の詳細な説明に記載された8つの実施の形態に記載された事項と対応する事項によって記載されており,②発明の詳細な説明と用語も統一され,③発明の詳細な説明に記載された内容を拡張又は一般化して記載されたものではなく,④発明の課題を解決する手段を反映した内容になっていることから,特許法36条6項1号違反に当たらないことは,明白である(特許・実用新案審査基準 載された内容を拡張又は一般化して記載されたものではなく,④発明の課題を解決する手段を反映した内容になっていることから,特許法36条6項1号違反に当たらないことは,明白である(特許・実用新案審査基準第Ⅰ部第1章明細書及び特許請求の範囲の記載要件2.2.1.3参照)。 ウ実施可能要件違反及びサポート要件違反の立証責任について本件発明が特許されているということは,審査過程で特許法36条4項 や特許法36条6項1号に違反していないと特許庁が判断したということであって,被告が本件発明についての特許がこれらに反してされたことを抗弁として主張するのであれば,その立証責任は,被告が負うべきである。 (3) 争点3(差止請求の可否)について(原告の主張)現時点において,被告らの主張するように被告物件1ないし4に施された加工がすべて修復されているとしても,被告が自らの責任を否定し,本件特許権を侵害したことを争っている以上,差止めの必要性はあるというべきである。 (被告らの主張)被告は,被告物件1については本件訴訟が提起される前に,被告物件2ないし4については平成26年5月2日に,それぞれ凹溝のない断面半円形の導流溝に戻している(乙54,55)。被告物件1ないし4にモルタルによる上塗りや切削が施されていたのは,争点4で詳述するとおり,被告の意思に基づくものではなく,被告の知らないうちに第三者が行ったもので,被告発注の施工工事によるものではない。被告は,今後,特に必要性も認められないモルタルをインバートに塗布する等の加工を行う予定はなく,差止めの必要性はない。 (4) 争点4(被告は無過失か)について(被告らの主張)ア(ア) 被告は,下水道事業を統括する立場から金沢市内における管渠築造工事を実施しているが,各工事の完了に 差止めの必要性はない。 (4) 争点4(被告は無過失か)について(被告らの主張)ア(ア) 被告は,下水道事業を統括する立場から金沢市内における管渠築造工事を実施しているが,各工事の完了に際し,一般的な形状のインバートであることを確認の上,引渡しを受けており,被告物件1ないし4の各施工時に,本件特許権を侵害するような施工方法は,用いられていない。 被告における公共下水道事業管渠築造工事は,管渠築造工事発注設計 業務委託の成果に基づき発注されるが,発注設計業務委託の要件を定めた「下水管渠実施設計業務委託標準仕様書」(乙31)は,その第8章(3)において,「下水道施設計画・設計指針と解説(日本下水道協会)」などを参考図書として示しているだけであり,インバートの形状については一切特別の定めがないこと(乙30)からすれば,インバートの一般的形状とは,「管渠の形に合わせて整形された断面半円形とし,円滑に流水がはかれるもの」といえる。 (イ) 被告物件1及び2におけるモルタルで上塗りされた部分,並びに被告物件3及び4における削られた部分は,いずれも極めて粗雑であり,左官工事として施工され,被告の検査を通過した内容でないことは一目瞭然である。 さらに,仮に,第三者による加工後の状態である被告物件1ないし4の各構成が本件発明の技術的範囲に含まれ,被告がこれらを使用していると認められるとしても,被告は,本件で問題とされているインバートを含めて適切な管理を実施してきている。 イ被告は,被告物件1ないし4における上記ア(イ)の加工を施した者は,原告又は原告の関係者であると考えている。金沢市内にはマンホールが約7万か所も存在するにもかかわらず,被告物件1ないし4を発見し,本件において指定してきたのは原告だからである。 原告は, た者は,原告又は原告の関係者であると考えている。金沢市内にはマンホールが約7万か所も存在するにもかかわらず,被告物件1ないし4を発見し,本件において指定してきたのは原告だからである。 原告は,知らない者からいきなり特許権侵害の可能性があるとの電話連絡を受け,田上本町地内にあるマンホールから一つを特定・把握し,自らそのマンホールを確認したところ,被告物件2のマンホールであった旨主張するが,原告と関係のない者が本件発明の内容を知っており,しかも,田上本町土地区画整理事業地内に存在するおよそ500個のマンホールのうちの一つの内部に位置するインバートを発見し,当該インバートが原告の施工に係るものではないと考えたため,原告の電話番号を調べて電話し てきたなどという原告の説明は,不自然極まりなく,到底信用できない。 むしろ,原告又はその関係者が,被告物件1ないし4において,従来技術である「上部開放の断面半円形の導流溝」にモルタルを塗布したり,切削を施したものと考えるのが自然である。 ウ以上のとおり,被告物件1ないし4の各構成は,何者かがマンホール内に侵入し,インバートに後付けの状態を形成したことによりもたらされたものであって,その使用が本件特許権を侵害するものであるとしても,そのことについて,被告に過失はない。 (参加人らの主張)参加人土田工建及び参加人平本組がそれぞれ受注したインバート底部の左官工事については,いずれも,すべて有限会社目川工業(以下「目川工業」という。)に下請工事として発注している。 (原告の主張)本件発明の技術的範囲に属する被告物件1ないし4が現実に存在し,被告は,これらを使用していたのであるから,被告の管理の過失の有無は問題とならない。また,第三者がマンホールへ侵入したかどうかは不明であるが,被告 術的範囲に属する被告物件1ないし4が現実に存在し,被告は,これらを使用していたのであるから,被告の管理の過失の有無は問題とならない。また,第三者がマンホールへ侵入したかどうかは不明であるが,被告の管理に過失がないとはいえない。 (5) 争点5(損害の額)について(原告の主張)ア被告物件1及び2についてインバート底部の導流溝の凹溝の製造費用(インバートの価額)は4万円を下らない。 したがって,原告の損害額(被告の得た利益)は,8万円(=4万円×2)となる。 イ被告物件3及び4についてインバート底部の導流溝の壁面を削ったように見える形状は凹溝と解し うる。この形状により導流溝の水流の壁面に沿っての跳ね上がりを防止するという点で,本件発明と同様の効果が得られ,製造費用(インバートの価額)は4万円を下らない。 したがって,原告の損害額(被告の得た利益)は,8万円(=4万円×2)となる。 ウ弁護士費用本件特許権侵害と相当因果関係にある弁護士費用の額は,少なくとも40万円である。 エ合計上記アないしウを合計すると,原告の被った損害は56万円を下らない。 (被告らの主張)ア原告の主張について争う。 特許法102条2項の推定による損害額は,「利益の額」であって,代金全額ではない。 なお,被告は,平成19年の時点で,原告による特許権侵害の申出に対し,真摯な対応を行っている。被告が原告を仕事から締め出したり,原告の名誉を毀損するような行為に及んだ事実もない。 イ被告物件1及び2について被告物件1及び2は,共に同じ下請業者によって施工されている。 インバート底部施工にかかる代金額は,被告物件1及び2とも1万8000円であり,その内訳は①モルタル(材料費)1832円,②左官(マンホール内に 及び2は,共に同じ下請業者によって施工されている。 インバート底部施工にかかる代金額は,被告物件1及び2とも1万8000円であり,その内訳は①モルタル(材料費)1832円,②左官(マンホール内に1人)9200円,③普通作業員(マンホール外で補助として1人)6800円,④諸雑費168円である。上記インバート底部施工にかかる代金額を1万8000円としたのは,インバートの具体的形状等を考慮したものでなく,人孔一つ当たりの平均額として算出したものであ る。 被告の利益の額は,代金額から①モルタル(材料費)及び④諸雑費を控除した金額となり,被告物件1及び2の使用による損害額は,それぞれ1万6000円となり,合計3万2000円である。 (参加人土田工建の主張)インバート底部施工にかかる代金は,形状にかかわらず,一律1万8000円で請求している。 (参加人平本組の主張)インバート底部施工にかかる代金は,形状によって変わる。水路が(上流一つと下流一つの)2方向の場合は1万8000円,同様に水路が3方向になる場合は2万円,4方向になる場合は2万2000円として,それぞれ請求している。 (参加人らの主張)参加人らが,いずれもインバート底部の左官工事の下請を目川工業に発注していることは,前述のとおりであるが,目川工業からそれぞれに請求される請求書については,発注者ごとに異なっている。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(被告物件1ないし4は本件発明の技術的範囲に含まれるか)ついて(1) 被告物件1ないし4の構成について被告物件1ないし4の構成については,原告の主位的主張(別紙「原告主張の被告物件目録1」ないし「原告主張の被告物件目録4」の記載のうち,客観的な構成に係る部分)のとおりであると認めるに足りる証拠がないことから いし4の構成については,原告の主位的主張(別紙「原告主張の被告物件目録1」ないし「原告主張の被告物件目録4」の記載のうち,客観的な構成に係る部分)のとおりであると認めるに足りる証拠がないことから,原告の予備的主張(被告ら主張を援用するもの)に従い,別紙2-1ないし2-4記載のとおりと認め,これらが本件発明の技術的範囲に含まれるか否かについて,以下検討する。 (2) 被告物件1及び2の構成要件充足性について ア被告物件1及び2は,別紙2-1及び2-2に示されるとおり,いずれも断面半円形の導流溝1からなるマンホール用のインバートであるところ,導流溝1の両側面にモルタル2が塗布されていることにより,導流溝1のうち該両側面より下の部分が凹状となっており,この凹状の部分は,導流溝1の最下部に位置し,その長手方向に形成されているものと認められる。 ここで,被告物件1及び2は,いずれも「マンホール用のインバート」(構成要件E)であって,その導流溝1が「断面半円形の導流溝」(構成要件A)に該当するところ,その最下部に上記凹状の部分が形成されており,同部分が「凹溝」に該当するといえるから(「跳返り防止用」であるか否かについては,後記イで検討する。),「最下部に・・・凹溝を長手方向に形成してなる」(構成要件BないしD)ものと認められる。 イ(ア) 被告らは,被告物件1及び2について,本件発明の作用効果を奏しないから,本件発明の技術的範囲に属しない旨主張するところ,その趣旨は,被告物件1及び2に形成された凹状の部分が「跳返り防止用」(構成要件C)であることを争う趣旨と解されるので,以下,検討する。 (イ) 本件明細書の発明の詳細な説明には,【作用】につき,「かかる発明の構成によるときは,導流溝は,最下部に跳返り防止用の凹溝が形成さ C)であることを争う趣旨と解されるので,以下,検討する。 (イ) 本件明細書の発明の詳細な説明には,【作用】につき,「かかる発明の構成によるときは,導流溝は,最下部に跳返り防止用の凹溝が形成されているから,上流側の管渠から落下する汚水に汚物が含まれていても,汚物の跳返りを導流溝内に小さく抑えることができ,汚物がマンホールの底面や壁面にまで跳ね飛ぶことを防止することができる。」(段落【0010】)との記載,【発明の効果】につき,「以上説明したように,この発明によれば,導流溝の最下部に跳返り防止用の凹溝を形成することによって,凹溝は,上流側の管渠から落下する汚物の跳返りを小さく抑えることができるから,マンホールの底面 や壁面,管渠の開口端等に汚物が付着することに起因して発生する下流側の管渠の詰りや,汚水処理場における処理負担の増大の問題を最少にすることができるという優れた効果がある。」(段落【0032】)との記載がある。 また,段差のある管渠から汚水が導流溝に落下した場合,汚水の跳返りが断面半円形の導流溝の側壁に沿って遡上することは,流体力学上自明であり,導流溝最下部に凹溝を設けること,つまり導流溝最下部と導流溝側壁に段差を設けることで,導流溝側壁を遡上する汚水に対する抵抗が増し,汚水の跳返りが抑制されることも,容易に理解されるところである。 確かに,汚水量が少ないとか,上流側の管渠と導流溝を段差接合する際に落下高が低い場合には,導流溝壁面を遡上する汚水に対する抵抗も小さいため,汚物の跳返りを抑制するという効果もさほど大きくないと考えられるが,本件明細書の発明の詳細な説明には,【発明が解決しようとする課題】につき,「かかる従来技術によるときは,インバートは,断面半円形の導流溝が形成されているから,上流側,下流側の管渠 いと考えられるが,本件明細書の発明の詳細な説明には,【発明が解決しようとする課題】につき,「かかる従来技術によるときは,インバートは,断面半円形の導流溝が形成されているから,上流側,下流側の管渠を段差接合するとき,上流側の管渠から落下する汚水に汚物が含まれていると,汚物が導流溝の内面に沿って上方に跳ね返り,マンホールの底面や壁面,管渠の開口端等に付着して乾燥し,その後マンホールの底面,壁面等から剥落して下流側の管渠に流入することにより,下流側の管渠を詰らせたり,汚水処理場における浄化処理負担を過大に増大させたりすることがあるという問題があった。」(段落【0004】),「そこで,この発明の目的は,かかる従来技術の問題に鑑み,導流溝の最下部に跳返り防止用の凹溝を形成することによって,下流側の管渠の詰りや,汚水処理場における処理負担の増大を有効に防止することができるマンホール用のインバートを提供することにある。」(段落【00 05】)と記載されており,段差接合する際の跳返り等の課題を解決することが本件発明の目的であるから,本件発明は,この限りにおいて作用効果を奏すれば足りるというべきである。 この点,被告らは,原告が主張するような「流路の段差の存否・程度,流量」を考慮した上で行った比較実験2の結果から,本件発明と従来技術との間で「汚物の付着を防止」する効果について有意な差異は認められなかった旨主張するが,同実験(被告らは,調査物件Aが本件明細書記載の条件の加工を施した直線状インバートであり,比較物件Bが加工を施さない直線状インバートであるとしている。)の結果(甲16,乙52の1・2)によれば,インバート外のマンホール床面への汚水跳ね出し量の違いの定量的な差異は必ずしも明確でないものの,段差が30cm,58cmの各例におい トであるとしている。)の結果(甲16,乙52の1・2)によれば,インバート外のマンホール床面への汚水跳ね出し量の違いの定量的な差異は必ずしも明確でないものの,段差が30cm,58cmの各例において,インバート内での落下汚水の動態に少なくとも定性的な差がみられるところであって(乙52号証の1の写真18〔調査物件A〕と写真26〔比較物件B〕を比較すると,段差30cmにおける落下水は,比較物件Bでは断面円形の導流溝壁に沿って膜状に遡上して導流溝壁上端で垂直上方へ跳返っていることが認められるのに対し,調査物件Aでは,導流溝壁上端での落下水が遡上して上昇する程度は小さく,垂直上方への跳返りも小さいことが認められ,「凹溝」の段差により落下水の遡上速度が抑制されているものと考えられる。また,同号証の写真20〔調査物件A〕と写真28〔比較物件B〕を比較すると,段差58cmにおける落下水の状態は,段差30cmの場合よりも更に顕著に異なっている。このように,比較物件Bの方が,落下水は断面円形の導流溝壁に沿って膜状に高く遡上して導流溝壁上端で垂直上方へ跳ね返っており,逆に,調査物件Aにおいては,導流溝壁上端での落下水が遡上して上昇する程度は小さく,垂直上方への跳返りがより小さくなっていることが認められ,「凹溝」の段差により 落下水の遡上速度が更に抑制されていることが推認される。),本件発明の加工を施したインバートには,加工を施していないインバートに比べ,一定の汚水跳返り抑制効果が認められるというべきである。 そうすると,本件発明の他の構成要件(「跳返り防止用」以外の構成要件)を充足するようなインバートであれば,汚物の跳返りを抑制するという本件発明の作用効果を奏すると考えられ,被告製品1及び2においても,汚水の跳返りの程度によってその効果は 返り防止用」以外の構成要件)を充足するようなインバートであれば,汚物の跳返りを抑制するという本件発明の作用効果を奏すると考えられ,被告製品1及び2においても,汚水の跳返りの程度によってその効果は一定ではないものの,凹状の部分により跳返りの程度に応じた作用効果がもたらされるものというべきであって,本件発明の作用効果が奏されるものと考えられる。 (ウ) 被告らは,比較実験1の結果によれば,被告物件2とほぼ同じ条件のインバートと従来技術のインバートとの間で,マンホールの底面や壁面,管渠の開口端等の汚物付着状況には有意な差は存在しなかった旨主張するが,同実験は,「上流側の管渠との段差0cm」という段差接合していない条件下,すなわち,汚物の跳返りを抑制する効果が小さい条件下でされたものであり(乙48),前記認定判断を左右するものではない(なお,上記条件が被告物件2のマンホールにおける具体的な状況に近いものであるとしても,被告物件1及び2が本件発明の作用効果をおよそ奏しないことを示す目的でされた比較実験1の条件設定としては,適切とはいえないというべきである。)。 (エ) したがって,被告物件1及び2は,断面半円形の導流溝1の最下部に凹状の部分が長手方向に形成されていることにより,本件発明の作用効果を奏するものと合理的に推認することができ,上記凹状の部分は,「跳返り防止用」(構成要件C)のものと認められる。 ウ以上より,被告物件1及び2の構成は,断面半円形の導流溝の最下部に跳返り防止用の凹溝を長手方向に形成してなるマンホール用のインバートであるという,本件発明の構成要件AないしEをすべて充足し,本件発明 の技術的範囲に含まれるというべきである。 エ被告らは,本件発明は,凹溝が「インバート成形時に一体形成されたもの」に限られる いう,本件発明の構成要件AないしEをすべて充足し,本件発明 の技術的範囲に含まれるというべきである。 エ被告らは,本件発明は,凹溝が「インバート成形時に一体形成されたもの」に限られるから,被告に引き渡した後に,何者かによって凹溝の形状にモルタルで上塗りされた被告物件1及び2は,本件発明の構成要件を充足しない旨の主張もする。 しかし,本件明細書の特許請求の範囲の請求項1には,単に「跳返り防止用の凹溝を長手方向に形成してなる」との記載があるのみで(構成要件C及びD),凹溝の形成時期や手順を限定する記載は見当たらないし,発明の詳細な説明の段落【0031】にも,「一体成形してもよい」と例示的に記載されているにすぎず,本件発明における凹溝が「インバート成形時に一体形成されたもの」に限定されると解釈すべき根拠はない。 したがって,被告らの上記主張は,採用することができない。 (3) 被告物件3及び4の構成要件充足性について被告物件3及び4は,別紙2-3及び2-4に示されるとおり,いずれも断面半円形の導流溝1からなるマンホール用のインバートであるところ,導流溝1の両側面が断面略三角形状に削り取られていることにより,溝(上記各別紙における図中の灰色部分)が形成されているものと認められる。 上記溝は,導流溝1の下部の両側面に位置しているが,導流溝1の「最下部」に位置しているとは認められない。また,同溝に挟まれた導流溝1の最下部を含む領域は,半円形断面そのものであり,同溝との関係では凸状の部分を形成しているものと認められる。 したがって,被告物件3及び4は,「最下部」(構成要件B)に「凹溝」(構成要件C)を形成しているとは認められない。 なお,同溝とこれに挟まれた導流溝1の最下部を含む領域を併せて,導流溝1の最下部を構成するものと 告物件3及び4は,「最下部」(構成要件B)に「凹溝」(構成要件C)を形成しているとは認められない。 なお,同溝とこれに挟まれた導流溝1の最下部を含む領域を併せて,導流溝1の最下部を構成するものととらえ,本件発明にいう「凹溝」に該当するとみることは,相当でない。 以上から,被告物件3及び4は,本件発明の構成要件B及びCを充足せず,本件発明の技術的範囲に含まれないというべきである。 2 争点2(本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものか)について(1) 争点2-ア(実施可能要件違反の有無)についてア特許制度は,発明を公開する代償として,一定期間発明者に当該発明の実施につき独占的な権利を付与するものであるから,明細書には,当該発明の技術的内容を一般に開示する内容を記載しなければならない。特許法36条4項が上記のとおり規定する趣旨は,明細書の発明の詳細な説明に,当業者が容易にその実施をすることができる程度に発明の構成等が記載されていない場合には,発明が公開されていないことに帰し,発明者に対して特許法の規定する独占的権利を付与する前提を欠くことになるからであると解される。そして,物の発明における発明の実施とは,その物を生産,使用等をすることをいうから(特許法2条3項1号),物の発明については,明細書にその物を製造する方法についての具体的な記載が必要があるが,そのような記載がなくても明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づき当業者がその物を製造することができるのであれば,上記の実施可能要件を満たすということができる(知財高裁平成22年第10091号同23年12月22日判決・判例タイムズ1399号181頁,知財高裁平成23年(行ケ)第10445号同24年12月5日判決・判例タイムズ1403号257頁参照 る(知財高裁平成22年第10091号同23年12月22日判決・判例タイムズ1399号181頁,知財高裁平成23年(行ケ)第10445号同24年12月5日判決・判例タイムズ1403号257頁参照)。 すなわち,実施可能要件を具備するか否かは,当業者が,明細書及び図面の内容等を参照し,発明を実施できるか否かであって,当該発明の種類によって,要求される記載内容も自ずと異なるものと解される。 イ本件発明は,インバート底部の構造に関するものであるから,実施可能要件違反となるか否かは,当業者であるインバート施工業者にとって実施可能な記載といえるかどうかである。 前記1(2)イ(イ)で説示したとおり,段差のある管渠から汚水が導流溝に落下した場合,汚水の跳返りが断面半円形の導流溝の側壁に沿って遡上することは,流体力学上自明であり,導流溝最下部に凹溝を設けること,つまり導流溝最下部と導流溝側壁に段差を設けることで,導流溝側壁を遡上する汚水に対する抵抗が増し,汚水の跳返りが抑制されることは,容易に理解されるところである。 また,本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0018】によれば,「凹溝11は,直径150mm,200mm,250mmの導流溝10aに対して段部11a,11aの段差が1~5mm程度に設定されており,導流溝10aの断面形状は,たとえば,正半円より約10mm程度上方に高く延長して形成されている」などの記載があり,インバート底部に跳返り防止用の凹溝を施すにあたっての一応の目安が提示されているのであって,当業者は,これをもとにインバート採用箇所の流量等の変化の予測等に応じて,適宜のインバートを施工することができるというべきであり,この際,多少の試行錯誤を要求されるとしても,これを過度の負担とまでいうことはできない。 また ート採用箇所の流量等の変化の予測等に応じて,適宜のインバートを施工することができるというべきであり,この際,多少の試行錯誤を要求されるとしても,これを過度の負担とまでいうことはできない。 また,本件発明のように比較的複雑でない構造の発明の場合に,汚水の流量,管渠の構造等による条件の違いにより,インバート底部にどのような凹溝を設けることが適切かについて,すべて実験して明細書の発明の詳細な説明に記載しなければならないというものではない。現に,被告は,比較実験2において,本件明細書の記載を元に実験を行うことができているのである(この比較実験2の結果について,被告は本件発明の作用効果がないことを明らかにしている旨主張するが,前記認定のとおり,比較実験2の結果により,本件発明が所望の作用効果を奏することは,明らかである。)。 以上によれば,本件明細書の発明の詳細な説明には,当業者が実施可 能な程度に明確かつ十分な記載がされていると認めることができ,本件特許に実施可能要件違反の無効事由があるとの被告ら主張は,採用することができない。 (2) 争点2-イ(サポート要件違反の有無)についてア特許制度は,発明を公開させることを前提に,当該発明に特許を付与して,一定期間その発明を業として独占的,排他的に実施することを保障し,もって,発明を奨励し,産業の発達に寄与することを趣旨とするものである。そして,ある発明について特許を受けようとする者が願書に添付すべき明細書は,本来,当該発明の技術内容を一般に開示するとともに,特許権として成立した後にその効力の及ぶ範囲(特許発明の技術的範囲)を明らかにするという役割を有するものであるから,特許請求の範囲に発明として記載して特許を受けるためには,明細書の発明の詳細な説明に,当該発明の課題が解決 その効力の及ぶ範囲(特許発明の技術的範囲)を明らかにするという役割を有するものであるから,特許請求の範囲に発明として記載して特許を受けるためには,明細書の発明の詳細な説明に,当該発明の課題が解決できることを当業者において認識できるように記載しなければならないというべきである。特許法36条6項1号の規定する明細書のサポート要件が,特許請求の範囲の記載を上記のように限定したのは,発明の詳細な説明に記載していない発明を特許請求の範囲に記載すると,公開されていない発明について独占的,排他的な権利が発生することになり,一般公衆からその自由利用の利益を奪い,ひいては産業の発達を阻害するおそれを生じ,上記の特許制度の趣旨に反することになるからである。 そして,特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである(知財高裁平成 17年(行ケ)第10042号同年11月11日特別部判決・判例タイムズ1192号164頁参照)。 イ本件明細書の発明の詳細な説明は,【発明が解決しようとする課題】として,「インバートは,断面半円形の導流溝が形成されているから,上流側,下流側の管渠を段差接合するとき,上流側の管渠から落下する汚水に汚物が含まれていると,汚物が導流溝の内面に沿って上方に跳ね返り,マンホールの底面や壁面,管渠の開口端等に付着して乾燥し,その後マンホールの の管渠を段差接合するとき,上流側の管渠から落下する汚水に汚物が含まれていると,汚物が導流溝の内面に沿って上方に跳ね返り,マンホールの底面や壁面,管渠の開口端等に付着して乾燥し,その後マンホールの底面,壁面から剥落して下流側の管渠に流入することにより,下流側の管渠を詰まらせたり,汚水処理場における浄化処理負担を過大に増大させたりすることがあるという問題があった。」(段落【0004】)とした上,「そこで,この発明の目的は,かかる従来技術の問題にかんがみ,導流溝の最下部に跳返り防止用の凹溝を形成することによって,下流側の管渠の詰りや,汚水処理場における処理費用の増大を有効に防止することができるマンホール用のインバートを提供することにある。」(段落【0005】)とするものである。 そうすると,上流側と下流側の管渠の段差が小さいために汚水の跳返りがほとんど生じない場合や,汚水の流量が少ないためにインバート底部における汚水の跳返りがほとんど生じない場合には,そもそも本件発明で解決しようとした課題が小さいため,その効果も大きくはないことは,当業者であれば,容易に理解できるところであって,発明の詳細な説明にそのことが明示的に記載されていないとしても,特許請求の範囲に記載された発明に含まれるか否かが明らかでなくなるというものではない。もともとマンホールに流入する汚水の量や速さは一定ではないことも考慮すると,本件発明の効果は,その状況によって相対的に変化するものというべきであり,実験の結果等をもって本件発明を用いるのに最適な汚水の流量や流速,管渠の最適な段差位置や高さなどの関係を開示した上で,特許請求の 範囲においてこれらのパラメータを特定しなければ,本件発明の技術的範囲が不明確になるというものではない。 また,本件明細書の発明の詳細な 差位置や高さなどの関係を開示した上で,特許請求の 範囲においてこれらのパラメータを特定しなければ,本件発明の技術的範囲が不明確になるというものではない。 また,本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0018】には,本件発明の実施の態様の具体的な構成が示されているが,この態様でしか課題を達成し得ないものではなく,発明の詳細な説明に記載された各種の実施の形態をも参照することにより,当業者であれば,管渠の径や段差等周囲の状況を勘案しつつ,現場に応じた「跳返り防止用の凹溝」を導流溝底部に形成することは,十分に可能であるというべきである。 ウ被告は,本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0018】の記載は,特許請求の範囲の請求項1の「半円形」の意味と齟齬する旨主張する。 しかし,段落【0018】は,「たとえば,正半円より約10mm程度上方に高く延長して形成されている」とあるように,特許請求の範囲にいう「半円形」が厳密な正半円に限られるものではないことを明らかにした記載であって,両者の齟齬を示すものとはいえない。 また,被告は,同段落の示す「凹溝」が1~5mm程度では,「汚物の付着を防止」するという本件発明の効果を奏するか疑わしい旨の主張もするが,前述のとおり,導流溝の最下部側面に凹溝が存在することで,側面を跳ね返る汚水に対する物理的な抵抗を与え,跳返りを抑制する効果を生ずることは,自明である(このことは,前述の比較実験2の結果からみても,明らかである。)。 エ以上からすれば,本件明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(本件発明)は,発明の詳細な説明に記載された発明であることが認められ,本件特許にサポート要件違反の無効事由があるとする被告らの主張は,採用することができない。 3 争点3(差止請求の可否)について( 明)は,発明の詳細な説明に記載された発明であることが認められ,本件特許にサポート要件違反の無効事由があるとする被告らの主張は,採用することができない。 3 争点3(差止請求の可否)について(1) 後掲の証拠等によれば,以下の事実が認められる。 ア(ア) 被告は,被告物件1のマンホールの工事を含む「平成18年度若宮町ほか1町地内(61工区)管渠築造工事」について,平成19年3月29日,請負者である参加人土田工建から引渡しを受け,以後現在まで同マンホールの維持・管理を行っている(乙19の2,弁論の全趣旨)。 (イ) 被告は,平成24年6月27日,被告物件1の構成が別紙2-1記載のとおりであり,被告物件1のマンホールのインバート底部(同別紙中のモルタル2部分)にモルタルが塗布されていることを確認した(乙2の2〔写真③〕,49の1,弁論の全趣旨)。 イ(ア) 被告は,被告物件2,3及び4の各マンホールの工事を含む「平成14年度田上本町地内(20-3工区)管渠築造工事」について,平成15年9月25日,請負者である新和建設株式会社から引渡しを受け,以後現在まで同各マンホールの維持・管理を行っている(乙60の27,弁論の全趣旨)。 (イ) 被告は,平成24年9月12日,被告物件2の構成が別紙2-2記載のとおりであり,被告物件2のマンホールのインバート底部(同別紙中のモルタル2部分)にモルタルが塗布されていることを確認した(乙6,8,39,49の2,弁論の全趣旨)。 (ウ) 被告は,平成25年10月28日,被告物件3の構成が別紙2-3に記載のとおりであり,被告物件3のマンホールのインバート底部に切削部分(別紙2-3の「溝」部分(図中の灰色部分))が存することを確認した(乙50の1,弁論の全趣旨)。 (エ) 被告は,平成 -3に記載のとおりであり,被告物件3のマンホールのインバート底部に切削部分(別紙2-3の「溝」部分(図中の灰色部分))が存することを確認した(乙50の1,弁論の全趣旨)。 (エ) 被告は,平成25年10月28日,被告物件4の構成が別紙2-4に記載のとおりであり,被告物件4のマンホールのインバート底部に切削部分(別紙2-4の「溝」部分(図中の灰色部分))が存することを確認した(乙50の2,弁論の全趣旨)。 ウ(ア) 被告は,平成24年7月3日,被告物件1のモルタル塗布部分(別紙2-1の「モルタル2」部分)を部分的にはがし,同月17日,上記部分を完全に撤去した(乙2の3〔写真⑤及び⑥〕,2の4〔写真⑦〕,54,弁論の全趣旨)。 (イ) 被告は,平成26年5月2日,被告物件2のモルタル塗布部分(別紙2-2の「モルタル2」部分)を砕きながら外すことにより撤去し,被告物件3及び4の各導流溝の両側面の削られていた部分(別紙2-3及び2-4の各「溝」部分(図中の灰色部分))を埋めて,それぞれ滑らかな断面半円形に施工した(乙55,弁論の全趣旨)。 (2) 前記1及び2で検討したところによれば,被告物件1及び2は,いずれも本件発明の技術的範囲に含まれ,本件特許に実施可能要件違反又はサポート要件違反の無効事由は存在しないから,被告が被告物件1及び2を使用していたことは,本件特許権の侵害を構成するものと認められる。 しかしながら,上記(1)の認定事実によれば,マンホールの人孔番号で特定される被告物件1及び2は,口頭弁論終結の時点において,もはや別紙2-1及び2-2の構造を有しておらず,被告による被告物件1及び2の使用が本件特許権の侵害を構成することもなくなったといえる。 (3) 前記1で検討したところによれば,被告物件3及び4は,いず 別紙2-1及び2-2の構造を有しておらず,被告による被告物件1及び2の使用が本件特許権の侵害を構成することもなくなったといえる。 (3) 前記1で検討したところによれば,被告物件3及び4は,いずれも本件発明の技術的範囲に含まれないから,被告による被告物件3及び4の使用は,本件特許権の侵害を構成するものではない(なお,被告は,平成26年5月2日,被告物件3及び4の各導流溝の両側面の削られていた部分(別紙2-3及び2-4の各「溝」部分(図中の灰色部分))を埋めて,それぞれ滑らかな断面半円形に施工したことが認められることは,上記(1)のとおりである。)。 (4) 以上の事実関係の下では,今後,被告が被告物件1ないし4を本件発明の技術的範囲に含まれる形状に加工した上,これを使用するおそれがあるとは 認められず,ほかに差止めの必要性を認めるに足りる証拠はない。 したがって,原告の被告に対する被告物件1ないし4の使用差止請求は,いずれも認められない。 4 争点4(被告は無過失か)について(1) 被告らは,被告に過失はない旨主張するので,特許法103条の推定を覆滅する事由があるか否かを判断するため,まず,本件訴訟に至るまでの原告と被告との交渉経緯について検討するに,当該経緯は,以下のとおりであると認められる(特に証拠を掲示していないものは当事者間に争いがない。)。 ア原告は,被告企業局建設課に対し,平成19年7月11日,一部の業者(株式会社豊蔵組)が施工したインバートに特許権侵害の疑いがある旨を申し出た後,同月19日,同課に対し,金沢市内にあるすべてのインバートの調査と対応を要求し,同月31日,同課に対し,同市旭町周辺を自ら調査したい旨申し出,同年8月2日,調査希望場所を同市旭町から田上本町地区へ変更した。原告は,同課に対 沢市内にあるすべてのインバートの調査と対応を要求し,同月31日,同課に対し,同市旭町周辺を自ら調査したい旨申し出,同年8月2日,調査希望場所を同市旭町から田上本町地区へ変更した。原告は,同課に対し,同年9月10日,平成11年度から平成18年度までの全工区のインバート調査を要求し,同課は,場所を限定しての現場確認であれば可能である旨回答した。 同課は,原告が平成19年7月11日に株式会社豊蔵組による施工に侵害の疑いを指摘していたことから,同社施工箇所を含む戸板第二土地区画整理地区内のマンホールで,未だ下水が通っておらず,マンホール開閉による支障が少ない8か所(別紙「金沢市戸板第二土地区画整理事業設計図(2/2)」〔以下「答弁書別紙2の1」という。〕におけるNo.1ないしNo.8)を選定し,同年11月27日,上記8か所のマンホールのインバートの形状について調査を実施した(以下「平成19年調査」という。)。 平成19年調査には,被告企業局建設課の職員3名が立ち会って実施さ れたが,インバートの状況について写真撮影はしなかった。 このとき,参加人土田工建が施工した1か所のマンホール(答弁書別紙2の1のNo.5〔人孔番号126442〕)のインバートについては,原告から「特許に似ている」旨の指摘がされたが,他の7か所のマンホールのインバートについては,特許権侵害の指摘はなかった(乙1)。 イ原告は,被告が,平成19年調査の結果を認識していたにもかかわらず,特許権侵害がなかったと主張し始めたとして,被告に対し,平成22年6月1日,要旨,特許権侵害があったことをうやむやにしないで欲しい,調査には被告の職員3人が立会して「特許の形」を確認しており,その際,施工業者は参加人土田工建であることを原告に知らせてくれたこと,参加人土田工 ,特許権侵害があったことをうやむやにしないで欲しい,調査には被告の職員3人が立会して「特許の形」を確認しており,その際,施工業者は参加人土田工建であることを原告に知らせてくれたこと,参加人土田工建は下請に直させると約束したことなどを記載した書面を送付したところ,被告市民局広報広聴課から,参加人土田工建が手直しを約束したということは確認できず,被告企業局では本件に関し責任はないと考えており,原告と参加人土田工建との間で再度話し合いをしてほしい旨回答された(甲9)。 原告が,上記経緯を踏まえ,被告市長に対し,同年8月4日,これまでの経緯を書面にて回答するよう要求したところ(丙2の2・4頁),被告企業局建設課は,原告に対し,同年10月8日付けで,「被告は特許権侵害の有無を判断する立場にない」旨の回答書を送付した(丙2の2・5頁)。 また,原告は,参加人土田工建に対し,同年11月12日付で警告書を送付し,同書には,特許権侵害の有無を判断するために裁判をする準備をしていること,裁判になれば200万から300万円の費用もかかるため,侵害があったことを認め,通常実施権を100万円で買わないか,賢明な判断を待つなどの記載があった(丙2の1,2の2)。 ウ原告は,被告市長に宛てて,平成23年8月6日,「発明・発見,特許 をめざす人たちへ」と題する書面を送付し,特許権侵害を認めない被告の対応に不満を述べた内容を伝えた(乙44の1)。 エ原告は,代理人弁護士を通じ,被告市長に対し,平成24年6月18日付け「ご連絡」と題する書面(甲4の1)に,「金沢市若宮町の戸板第二土地区画整理地区所在のマンホールにおいて,本件特許発明の使用が確認されております。・・・なお,当該マンホール以外にも金沢市田上本町の田上本町土地区画整理地区所在のマンホー 「金沢市若宮町の戸板第二土地区画整理地区所在のマンホールにおいて,本件特許発明の使用が確認されております。・・・なお,当該マンホール以外にも金沢市田上本町の田上本町土地区画整理地区所在のマンホールにおいても,本件特許発明の使用が確認されております。」などと記載し,被告に善処を願う旨の連絡書を同月20日に送付した(甲4の2)。 オ被告企業局維持管理課は,平成24年6月26日,平成19年調査において原告が確認した8か所のマンホールのインバートを対象として,再調査(以下「平成24年6月調査」という。)を実施したところ,上記8か所すべてのマンホールのインバートの形状について,原告が主張するような事実は認められなかった。 被告企業局建設課は,同月27日,戸板第二土地区画整理地区内の参加人土田工建が施工した2か所のマンホール(答弁書別紙2の1におけるNo.9及びNo.10)のインバートを対象として,追加調査を実施した。 なお,被告は,当該2か所のマンホールのインバートが上流側に設置され,段差もないことから,下水の跳ね返りがなく,原告が主張する特許権侵害が疑われる施工の可能性が低いと考えられたため,平成19年調査の対象としていなかったが,上記エの連絡書の送付を受け,当該2か所を新たに調査の対象としたものである。 その結果,新たに調査した上記2か所のマンホール(答弁書別紙2の1におけるNo.9〔人孔番号126445,本件訴訟における被告物件1のマンホール〕及びNo.10〔人孔番号126448〕)のインバートに,モルタルで上塗りされた加工を発見した(上記No.9につき乙2の 2の写真③),上記No.10につき乙2の2の写真④)。 カ被告企業局維持管理課は,平成24年7月3日,上記オに記載のモルタル加工部分の調査を行い,同月17日, 記No.9につき乙2の 2の写真③),上記No.10につき乙2の2の写真④)。 カ被告企業局維持管理課は,平成24年7月3日,上記オに記載のモルタル加工部分の調査を行い,同月17日,モルタル加工部分が強度的に脆く,破片により汚水の流れを妨げる恐れがあると判断し,モルタル加工部分を完全に撤去し,断面半円形のインバート底部に加工を施さない状態にした(答弁書別紙2の1におけるNo.9〔人孔番号126445,本件訴訟における被告物件1のマンホール〕につき乙2の4の写真⑦,同No.10〔人孔番号126448〕につき乙2の4の写真⑧,乙3)。 キ被告公営企業管理者は,原告に対し,原告の指摘する4か所のマンホールのインバートについては,平成19年3月29日に一般的形状のものとして工事完了を確認していること,上記4か所のうち2か所にについては,平成24年6月28日に何者かによりインバートが細工された形跡を確認し,これを写真で記録の上,引渡しを受けた時の形状に戻したこと,したがって,特許権侵害行為及び特許発明の使用行為はないことなどを記載した返答書を平成24年7月18日に送付した(甲7)。 ク原告の代理人弁護士は,被告の代理人弁護士に対し,平成24年7月25日付け通知書を同月27日に送付して,答弁書別紙2の1におけるNo. 9(人孔番号126445,本件訴訟における被告物件1のマンホール)及びNo.10(人孔番号126448)の各マンホールのインバートの写真公開を求めたが,被告公営企業管理者は,同年8月3日,被告情報公開及び個人情報保護に関する条例6条の規定に基づき,行政情報の公開請求を行うよう回答した(甲6の1,6の2,8)。 ケ原告は,平成24年9月5日,本件訴訟を当庁に提起し,同月9日,被告に訴状の副本が送達された。 コ する条例6条の規定に基づき,行政情報の公開請求を行うよう回答した(甲6の1,6の2,8)。 ケ原告は,平成24年9月5日,本件訴訟を当庁に提起し,同月9日,被告に訴状の副本が送達された。 コ被告企業局建設課は,平成24年9月12日,金沢市田上本町地内にある複数のマンホールのインバートについて,調査を実施した。原告は, これまで補助参加人土田工建が金沢市戸板第二土地区画整理地区内で施工した4か所のマンホール(答弁書別紙2の1のNo.5,No.6,No. 9及びNo.10)のインバートを問題にしていたところ,訴状では,田上本町土地区画整理地区内に存在するマンホールのインバートについての特許権侵害も主張し,特定されていなかった。しかし,被告において,訴状と共に提出されていた甲3号証の写真4の擁壁や側溝の状況を参考に,同号証の写真4のマンホールは,金沢市田上本町土地区画整理地区内の人孔番号173821のマンホール(別紙「金沢市田上本町土地区画整理事業設計図」〔以下「答弁書別紙1の1」という。〕におけるNo.1)であることが推測されたため,当該マンホールを含む複数のマンホールのインバートを調査した(以下「平成24年9月調査」という。)。その結果,答弁書別紙1の1におけるNo.1ないしNo.3のマンホール(人孔番号173821ないし173823,本件における被告物件2ないし4のマンホール)のインバートに加工が施されていたことを発見した。 サ被告は,平成24年9月13日,答弁書別紙1の1におけるNo.1ないしNo.3のマンホール(被告物件2ないし4のマンホール)について,被疑者不詳として,建造物侵入の疑いで石川県警察金沢中警察署へ被害通報した(乙6)。 (2) 被告におけるインバート施工工事について平成18年4月1日発行 物件2ないし4のマンホール)について,被疑者不詳として,建造物侵入の疑いで石川県警察金沢中警察署へ被害通報した(乙6)。 (2) 被告におけるインバート施工工事について平成18年4月1日発行の被告企業局技術指導室作成の「金沢市公共下水道事業管渠築造工事標準仕様書」(乙30)には,マンホールのインバートの形状等に関する明確な記述はなく,図面においても,インバートの導流溝の断面形状はほぼ半円形であることが示され,導流溝に凹状の部分を設けることを示唆するものはない。 (3) 上記(1)及び(2)を踏まえ,被告について過失の推定を覆滅すべき事由が存在するか否かについて検討する。 ア被告は,下水道の維持管理を行うものであり,下水道の維持,管理に関し,特許権を侵害する製品を使用していれば,特許権侵害についての過失が推定され(特許法103条),侵害行為に基づく責任を負うべき立場にあるというべきである。 イ被告は,被告物件1及び2の施工について,通常のインバート形状,すなわち,管渠の形に合わせて整形された断面半円形とし,円滑に流水が図れるものを指示したのみで,本件発明を利用する指示は出しておらず,被告物件1及び2の施工を含む下水道管渠工事について,竣工検査に合格した結果,すべての基準を満たすものとして被告物件1及び2などの引渡しを受けているものであるため,被告物件1及び2に見られるようなモルタルの塗布などの加工があれば,竣工検査に合格できず,被告がその引渡しを受けるはずがない旨主張する。 確かに,上記(2)の認定事実によれば,インバートの形状は半円形の断面であることのほか,細かな規定は定められていないことが認められる。 しかし,被告物件1及び2に係る下水道管渠工事について,上記のような加工がされていない状態で竣工され インバートの形状は半円形の断面であることのほか,細かな規定は定められていないことが認められる。 しかし,被告物件1及び2に係る下水道管渠工事について,上記のような加工がされていない状態で竣工されたと認めるに足りる証拠はない(被告から提出された工事基本台帳等の書証(乙9の1ないし5,60の1ないし28)を検討しても,工事完成時の写真が添付されておらず,インバートにおいて汚水が円滑に流下するか否かの検査がされたか否かも不明であって,被告への引渡しに際し,インバートの形状の確認を含め竣工検査がされたことを積極的にうかがわせるものとは,認められない。)。 この点,被告は,被告物件2を含む田上本町土地区画整理事業に関する設計図書及び関連資料として,乙20号証ないし乙29号証(枝番のあるものを含む。以下,同じ。)を提出しているが,これらは平成19年度田上本町地内(7-3工区)管渠築造工事(以下「平成19年度田上本町工事」という。)に関する資料であり,路線番号3121,3120,31 25,3071-1,3052-2,3051,3056の管渠工事に関する資料であることが認められ(乙27の工事写真台帳に添付された図面参照),路線番号3071-2に属する被告物件2のマンホールに関する資料ではない。むしろ,被告が被告物件3及び4に関する資料として提出している,平成14年度田上本町地内(20-3工区)管渠築造工事(以下「平成14年度田上本町工事」という。)に関する設計図書及び関連資料(乙60の1ないし28〔孫番のあるものを含む。〕)によれば,平成14年度田上本町工事において,路線番号3071-2の管渠工事が行われたことが認められ(乙60の4の2,60の24の1),被告物件2のマンホールは,平成14年度田上本町工事で施工されたものと認められる 4年度田上本町工事において,路線番号3071-2の管渠工事が行われたことが認められ(乙60の4の2,60の24の1),被告物件2のマンホールは,平成14年度田上本町工事で施工されたものと認められる(被告物件2のマンホールが平成15年9月25日に引き渡されたことは,被告が石川県警察金沢中警察署長に提出した被害届〔乙53〕にも記載されている。)。そして,同工事のNo.4のマンホールが被告物件2のマンホールであり,No.3のマンホールが被告物件3のマンホールであることが見てとれる(乙60の4の2,60の24の1)。 なお,乙60号証の23の4枚目「マンホール数量計算書」に,1号人孔について,路線番号3071-2のNo.4(被告物件2のマンホールと認められるもの)に関し,「(インバート工無し)」との記載があることから,平成14年度田上本町工事においては,マンホールの設置のみが行われ,インバートの施工については,被告が主張するように,平成19年度田上本町工事において行われた可能性もあるが,乙20号証ないし乙29号証からは,同工区外のインバート工事を行った旨の記載を認めることはできず,結局,乙20号証ないし乙29号証は,被告物件2ないし4のインバート工事が的確に行われたことを示す資料とは認められない。被告は,受命裁判官の釈明を受けて(第12回弁論準備手続調書参照),被告物件3及び4に関する資料として乙60号証(枝番あり。孫番のあるも のも含む。)を提出したが,同号証は,上記のとおり,被告物件2及び3に関する資料と認められ,被告物件4に関する資料であるかどうかは定かでなく(乙60号証の4の2によれば,被告物件4のマンホールは既に設置され,同号証で対象としているマンホール工事によって新設されたものではないように見受けられる。),被告物 資料であるかどうかは定かでなく(乙60号証の4の2によれば,被告物件4のマンホールは既に設置され,同号証で対象としているマンホール工事によって新設されたものではないように見受けられる。),被告物件1ないし4に関する資料をすべて提出したとする被告の主張は,極めて疑わしいものといわざるを得ない。 さらに,被告は,インバート底部についての施工完成写真を撮影していない中核都市も存在するという被告企業局建設部建設課課長作成の陳述書(乙35)を提出するが,完成写真を撮影していない市が被告以外にも存在するからといって,本件訴訟における立証責任が転換されるわけではない。また,インバートは,管渠の状況に応じて適宜,成形されなければならないから個々の設計図等が存在しないというのであれば,実際に個々の管渠の状況に応じて成形されたかどうかについてはどのような検査を実施しているのかについて明らかにするべきであり,被告がこれを明らかにできない以上,インバートの形状が引渡時にどのような状態であったかを証明することはできないことに帰するのであって,被告について,過失の推定を覆滅する事由があるといえないことは,明らかである(下水道管渠工事は,被告の責任において行われる事業であるから,後に問題が生じた場合にも対処できる管理が被告によってされてしかるべきであるところ,被告による適切な管理を裏付ける証拠は,何ら提出されていない。被告らは,施工業者から引渡しを受ける際に検査に合格しているからこそ,被告が引渡しを受けられた旨主張するが,工事が標準仕様書のとおり施工されたはずであるということは,当該工事が標準仕様書のとおり施工されたことを裏付ける具体的な証拠を伴う場合に初めて成り立ち得る主張であって,当該工事が標準仕様書のとおりであったか否かを確認した結果が何ら残され るということは,当該工事が標準仕様書のとおり施工されたことを裏付ける具体的な証拠を伴う場合に初めて成り立ち得る主張であって,当該工事が標準仕様書のとおりであったか否かを確認した結果が何ら残され ていない以上,そもそも確認したこと自体が疑問であるというべきであって,結局,被告は,被告物件1及び2が標準仕様書のとおりの形状で施工されたことは認められず,被告らの主張は,採用することができない。)。 ウさらに,被告は,インバート工事を受注した請負業者からの報告(乙4,5,7)を提出し,参加人らは,それぞれ実際にインバートを施工したとして,その旨の陳述書(丙1,丁1)を提出している。 しかし,上記報告は,いずれも工事時期,場所,インバートの個数を除けば,同一の表現を用いて,工事竣工時に一般的形状であったとするのみであり,個々の設置箇所に対応するインバートを具体的にどのような形状で施工したかについては記載がない。参加人らの各陳述書も同様であり,具体的な工事内容やその写真等を示すものではない。 しかも,実際には,インバート底部の施工を施したのは,参加人らではなく,参加人らからそれぞれインバート底部の施工を請け負った目川工業の左官職人によるもので(乙42,43,丁2の1,弁論の全趣旨),被告物件1及び2をそれぞれ施工したという各左官職人の陳述書(乙42,43)も,同一の不動文字が印刷された書面に手書きの署名がされているだけで,具体的な工事内容を説明するものではないから,被告物件1及び2の施工を担当した者が作成したかは疑問であって,これらの存在から施工当時の被告物件1及び2のインバートの形状が標準仕様書のとおりであったことを推認することはできない。 エまた,被告は,被告物件1については,平成19年調査時(同年11月27日)に実施し から施工当時の被告物件1及び2のインバートの形状が標準仕様書のとおりであったことを推認することはできない。 エまた,被告は,被告物件1については,平成19年調査時(同年11月27日)に実施した現地確認で,参加人土田工建が施工したインバートについて「特許と似ている」と原告が主張していたことから,戸板にて当該業者が施工した4か所を選択して撮影したものとして,平成23年9月6日に写真撮影したという乙2の1の写真(以下「本件写真」という。)を提出し,その時点では,被告物件1にモルタル加工はされていなかったと 主張する。 しかし,本件写真には,写真自体に撮影年月日の日付がなく,また,通常,工事現場の写真には,被写体とともに工事名,工事日付,場所,工種等を記載した小黒板を写し込むようにして撮影されてもいないため,同日に撮影されたものであるのか,被告物件1であるのかさえ不明といわざるを得ない。 この点,被告は,本件写真に日付がない点について,撮影に使用したデジタルカメラは初期設定がされていなかったため,正確な日時が記録されない状態にあったなどと主張し,本件写真は,平成23年9月5日から6日にかけて行われた別の工事の写真に挟まれて撮影されたとして通し番号が付されているから,同月6日撮影したことは間違いない旨主張するが,写真のデジタルファイルの場合,ファイル名や撮影日時データが容易に改ざん可能であること,被告が本件写真を撮影したのは,その直前の平成23年8月に原告から被告市長宛てに書面(乙44の1)が送付されており,同年9月7日に,原告と被告企業局建設課長が面会することになっていたため,その準備として撮影したものであると被告は主張しているのに,同日の面会時には特許権侵害がなかった旨の本件写真を原告に示して説明したと認められる形跡 被告企業局建設課長が面会することになっていたため,その準備として撮影したものであると被告は主張しているのに,同日の面会時には特許権侵害がなかった旨の本件写真を原告に示して説明したと認められる形跡もなく,この点からも,本件写真の撮影日が,平成23年9月6日であるという被告の説明は,にわかに信用しがたい。 したがって,同時点において,被告物件1についてモルタル塗布等の加工はされていなかったとする被告らの主張は,採用することができない。 オ被告は,被告市内に何万とあるマンホールの中のインバートについて,原告が何者かからの連絡により被告物件1等を特定できるのが不自然極まりなく,原告又は原告の関係者が本件特許権侵害の状態を作出しているとも主張する。 原告は,左官工事,土木工事,下水・インバート工事等を業務内容とす る有限会社倉工業の代表取締役であるから,同業者から情報が入ることもあり得るところであるが,原告が被告に本件特許権の侵害を申し出た経緯については,やや不自然に感じられるところもあるし,本件訴訟提起の少し前から,平成19年調査では主張していなかった田上地区内のマンホールも問題にするようになったことについても,十分に合理的な説明をしているとはいえない。 しかし,上記(1)の経緯からすると,原告は,当初,被告に対し,被告市内にあるマンホールのすべてを調査対象として欲しいと訴え,被告から場所を特定してなら実施できると言われて戸板地区等の地区のみを指定し,その地区の中でどのマンホールを調査するかを決めたのは被告ともいえる。 また,被告は,訴状では,これまで原告が問題にしていなかった田上地区のマンホールも指摘され,どのマンホールについて主張しているか不明であったが,訴状と共に提出された甲3号証の写真を見て,田上地区の被告物件2 は,訴状では,これまで原告が問題にしていなかった田上地区のマンホールも指摘され,どのマンホールについて主張しているか不明であったが,訴状と共に提出された甲3号証の写真を見て,田上地区の被告物件2の付近の写真だと当たりを付け,被告において自発的に調査した結果,被告物件2ないし4において,インバート底部の加工や切削の状況を確認したとしているのであり,いずれも全く見当がつかないはずの本件訴訟の対象について,これらを具体的に特定したのは被告自身であることを認めているのである。 そうだとすれば,原告が本件訴訟を提起した経緯も定かではないものの,被告においても,どのような経緯かは不明であるが,ある程度問題のあるマンホールについての情報があったものとも推認できる。 したがって,一方的に,原告の本件訴訟提起に至る経緯が全く不自然,不合理であるとまではいえないし,原告又は原告の関係者が被告物件1ないし4に加工等を施したことが推認されるともいえない。 カ以上を総合すれば,被告物件1及び2の使用について,被告の過失推定を覆滅する事由は認められず,被告らの主張は,採用することができない。 5 争点5(損害の額)について(1) 被告物件1及び2の使用による損害額ア前記3(1)の認定事実を前提として,原告の損害額を検討する。 イ被告物件1は,遅くとも乙2号証の2の写真③が撮影された平成24年6月27日から(甲3号証の写真1は,同月2日に撮影されたものとされているが,写真自体に日付がなく,同日の被告物件1の形状を認定するに足りない。また,被告物件1の施工当初の形状を認定するに足りる証拠はない。),乙2号証の4の写真⑦が撮影され,修復工事が完了したとされる同年7月17日までの間,本件発明の技術的範囲に含まれる構成を有しており,被告によ 物件1の施工当初の形状を認定するに足りる証拠はない。),乙2号証の4の写真⑦が撮影され,修復工事が完了したとされる同年7月17日までの間,本件発明の技術的範囲に含まれる構成を有しており,被告によるその使用は,本件特許権の侵害を構成していたものと認められる。 ウまた,被告物件2は,遅くとも被告がその形状を確認した平成24年9月12日から(甲3号証の写真3は,同年6月2日に撮影されたものとされているが,写真自体に日付がなく,同日の被告物件2の形状を認定するに足りない。また,被告物件2の施工当初の形状を認定するに足りる証拠はない。),乙55号証の写真が撮影され,修復工事が完了した平成26年5月2日までの間,本件発明の技術的範囲に含まれる構成を有しており,被告によるその使用は,本件特許権の侵害を構成していたと認められる。 エ原告は,インバート底部の導流溝の凹溝の製造費用(インバートの価額)相当額(被告物件1及び2につき各4万円)が原告の損害額であると主張するところ,これが被告の得た利益であるとも主張しており,特許法102条2項による損害額の推定を主張しているものと解される。 ところで,請負工事においては,注文者は請負代金を支払い,請負人から目的物の完成という労務の提供を受け,以後,目的物の使用が可能となることにより,請負代金相当額の利益を得ているものと解されるから,本件において,被告は,被告物件1及び2の使用により,被告物件1及び2 の工事代金相当額の利益を得ており,同額を原告の損害と推定すべきものと解される(本件の工事代金相当額に照らすと,1か月当たりの使用料相当額を算定して侵害期間ごとに積算していくよりも,上記算定方法によるのが相当と解される。)。 オそこで,被告物件1及び2にかかる工事代金相当額について検討する。 に照らすと,1か月当たりの使用料相当額を算定して侵害期間ごとに積算していくよりも,上記算定方法によるのが相当と解される。)。 オそこで,被告物件1及び2にかかる工事代金相当額について検討する。 被告物件1及び2は,目川工業が実質的にインバート施工を行ったものである(乙42,43)。 なお,いずれも被告から直接請け負った工事ではなく(弁論の全趣旨),被告物件1については,参加人土田工建が受注したものであり,前述のとおり,被告物件2のインバートについては,平成14年度田上本町工事で行われたとすると新和建設株式会社が請け負った工事となり,平成19年度田上本町工事であると参加人平本組が受注した工事となるため,受注者は特定できないが,実際に工事を行ったのは,上記のとおり,目川工業と認められる。 そして,被告物件2に関するインバート工事代金は,インバートの形状により1万8000円と認められる(丁2の1)。 また,被告物件1に関するインバート工事代金を証する証拠は提出されていないものの,被告物件2の施工業者と同一の目川工業による施工であり,発注者により工事代金の請求方法は異なるものの,少なくとも人孔一つ当たり1万8000円と認めるのが相当である。 したがって,被告物件1及び2の工事代金相当額は,1件当たり1万8000円,合計3万6000円と認められ,同額が原告の損害と推定される。 原告は,甲17号証を提出し,工事代金相当額は1件当たり4万円,合計8万円であると主張するが,上記説示したところに照らし,採用することができない。 他方,被告らは,特許法102条2項により推定されるのは利益額であるから,工事代金相当額1万8000円からモルタル(材料費)1832円及び諸雑費168円を控除すべきである旨主張する。 しかし,原告の損 ,被告らは,特許法102条2項により推定されるのは利益額であるから,工事代金相当額1万8000円からモルタル(材料費)1832円及び諸雑費168円を控除すべきである旨主張する。 しかし,原告の損害と推定されるのは,請負人である工事業者の利益ではなく,注文者である被告が工事によって得た利益であり,それは材料費等を含めた工事代金相当額全体であるから(被告は,加工されたモルタルを含め,被告物件1及び2の所有権を取得し,材料費相当額についても利益を得ているし,諸雑費相当額についても対応する労務の提供を受けるなどの利益を得ているといえる。),被告らの主張は,採用することができない。 カしたがって,被告物件1及び2の使用により被告が得た利益は合計3万6000円と認められ,同額が原告の損害と推定される。 (2) 弁護士費用本件事案(被告による本件特許権の侵害行為がすべて中止されたのが本件訴訟の終盤であることを含む。)に鑑みると,被告による本件特許権の侵害と相当因果関係を有する弁護士費用の額は,30万円とするのが相当である。 (3) 遅延損害金の起算日についてア上記(1)イのとおり,被告の被告物件1の使用による本件特許権の侵害行為は平成24年7月16日までに終了していたものであるから,被告物件1の使用による損害額1万8000円及びこれに対応する弁護士費用相当額15万円については,原告が求めている訴状送達の日の翌日である平成24年9月10日から遅延損害金を付するのが相当である。 イ上記(1)ウのとおり,被告の被告物件2の使用による本件特許権の侵害行為は,平成24年9月12日から平成26年5月2日まで継続していたものであるから,被告物件2の使用による損害額1万8000円及びこれに対応する弁護士費用相当額15万円については,侵害行為の終 侵害行為は,平成24年9月12日から平成26年5月2日まで継続していたものであるから,被告物件2の使用による損害額1万8000円及びこれに対応する弁護士費用相当額15万円については,侵害行為の終了した日 である平成26年5月2日から遅延損害金を付するのが相当である。 (4) 小括したがって,原告は,被告に対し,損害賠償金33万6000円及び,うち16万8000円に対する平成24年9月10日(訴状送達の日の翌日)から,うち16万8000円に対する平成26年5月2日(侵害行為の終了した日)から,各支払済みまでの民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができるが,その余の損害賠償請求は,理由がない。 6 結論以上によれば,原告の本件請求は,主文第1項の限度で理由があり,その余はいずれも理由がない。 よって,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官嶋末和秀 裁判官鈴木千帆 裁判官西村康夫
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