平成13(行タ)56 執行停止申立事件

裁判年月日・裁判所
平成13年10月24日 東京高等裁判所 その他
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判決文本文3,395 文字)

主文 1 被申立人が参加人A,同B及び同C並びにDの各申請に対して平成13年3月12日付けでした公正取引委員会平成11年(判)第4号事件に係る事件記録の閲覧謄写を認める旨の各決定の執行は,いずれも本案事件の判決の確定まで停止する。 2 本件申立費用は,被申立人の負担とする。 理由 第1 本件申立ての概要本件申立てに係る本案事件(以下「本件本案事件」という。)は,被申立人が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)69条に基づいて参加人A,同B及び同C並びにD(以下,これら4名を「Aら」という。)からの各申請(以下「本件各申請」という。)に対して平成13年3月12日付けでした公正取引委員会平成11年(判)第4号事件(以下「本件審判事件」という。)に係る事件記録の閲覧謄写を認める旨の各決定(以下「本件各決定」という。)について,申立人らがその取消しを求めているものであり,本件申立ては,本件本案事件の判決の確定まで本件各決定の執行の停止を求めるというものである。 申立人らの本件申立ての理由は,別紙1及び2,これに対する被申立人の意見は,別紙3,参加人Aの意見は,別紙4のとおりである。 第2 当裁判所の判断 1 本件記録によると,以下の事実を一応認めることができる。 (1) 本件審判事件は,申立人ら3社のほか2社(以下「申立人ら5社」ともいう。)を被審人とするものであり,地方公共団体のストーカ式燃焼装置を採用する全連続燃焼式及び准連続燃焼式ごみ焼却施設(以下「ストーカ式ごみ焼却施設」という。)の建設工事について,被審人である申立人ら5社が,平成6年4月から平成10年9月17日までの間に,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるように協調することにより,公共の利益に反して,地方公共団体 の建設工事について,被審人である申立人ら5社が,平成6年4月から平成10年9月17日までの間に,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるように協調することにより,公共の利益に反して,地方公共団体のストーカ式ごみ焼却施設の建設工事の取引分野における競争を実質的に制限していたか否か,すなわち,申立人ら5社が上記の建設工事に関していわゆる談合を行ったか否かを審判の対象事実とするものである。被申立人は,平成11年9月8日,本件審判事件の開始決定を行い,現在,審判が係属しているが,申立人ら5社は,談合の事実を否認している。 (2) Aらは,本件審判事件の記録の閲覧謄写を申請した時点において,いずれもストーカ式ごみ焼却施設を発注した各地方公共団体の住民であり,地方自治法242条の2に基づき,申立人らを被告として住民訴訟を提起している。その訴訟の内容は,各地方公共団体(参加人Aにつき横浜市,同Bにつき東京都,同Cにつき多摩ニュータウン環境組合,Dにつき兵庫県尼崎市)が指名競争入札等の方法により発注したストーカ式ごみ焼却施設の建設工事に関して申立人ら5社が事前に話し合って受注予定者を決定し,受注予定者以外の4社は受注予定者が定めた価格で受注できるよう協力する旨の合意をし,申立人ら5社の談合担当者が毎月1回程度受注調整と称する会合を行って,各地方公共団体の発注する個々のごみ焼却施設建設工事について入札談合行為を行い,これにより各地方公共団体に損害を被らせたことが各地方公共団体に対する不法行為を構成し,当該地方公共団体の長が当該不法行為に基づく損害賠償請求権の行使を怠っていて,これが地方自治法242条1項の「怠る事実」に当たるとして監査請求を行い,さらに,同法242条の2第1項4号に基づき各地方公共団体に代位して申立人らに対する損害賠償請求するという 行使を怠っていて,これが地方自治法242条1項の「怠る事実」に当たるとして監査請求を行い,さらに,同法242条の2第1項4号に基づき各地方公共団体に代位して申立人らに対する損害賠償請求するというものであり,これらの住民訴訟は,現在も係属している。 (3) 本件各申請における謄写の対象は,審判記録(第1回ないし第4回。ただし,参加人Cについては第5回を含む。),書証(査第1号証ないし第139号証。ただし,参加人Cについては第140号証を含む。),その他審査官・被審人双方から提出されたすべての書面であった。なお,Aらは,本件各申請に当たり,被申立人に対し,謄写した事件記録を本件審判事件又はこれに係る損害賠償請求訴訟以外の目的に使用することはしないこと,閲覧・謄写した事件記録を申請者(代理人又は受任者が申請者の場合は本人を含む。)以外の者に閲覧させたり,謄写させたりすることはしない旨の誓約をしている。 (4)本件各決定の内容は,平成13年3月22日以降,Aらに対し,別紙5の範囲で閲覧謄写に応じるとするものである。 (5)本件本案事件の主要な争点は,① 閲覧謄写に応ずる行為の行政処分性,②申立人らの原告適格,③ 訴えの利益,④ 本件各処分の違法性(Aらが独占禁止法69条の「利害関係人」に該当するか否か。)である。 2 そこで,本件申立てについて判断するに,本件本案事件の上記各争点は,これまで先例の乏しい事象に関するものであって,本件本案事件がリーディング・ケースになるものと思われ,各争点につき慎重な検討を要するものである。特に,独占禁止法69条にいう「利害関係人」とは,当該事件の被審人のほか,同法59条及び60条により参加をし得る者若しくは当該審判事件の対象をなす違反行為の被害者をいうものと解されるが(最高裁昭和50年7月10日第一小法廷判 う「利害関係人」とは,当該事件の被審人のほか,同法59条及び60条により参加をし得る者若しくは当該審判事件の対象をなす違反行為の被害者をいうものと解されるが(最高裁昭和50年7月10日第一小法廷判決・民集29巻6号888頁参照),本件審判事件の被審人である申立人ら5社に工事を発注した地方公共団体が上記の「被害者」に当たるとしても,当該地方公共団体に代位して住民訴訟を提起している者がこの「被害者」又は「被害者に準じる者」として当然に上記の利害関係人に当たるか否かについては見解の分かれ得るところであり,また,住民訴訟を提起している住民を一応「被害者に準じる者」として利害関係人に当たるとするにしても,Aらが「被害者に準じる者」として利害関係人に当たるというためには,更に本件審判事件とAらの提起している住民訴訟との関連性や当該住民訴訟の適法性などを具体的に判断することが必要と解される。したがって,上記各争点について更に慎重な審理・検討を経なければ,「本案について理由がないとみえる」とはにわかに判断し難いところである。 そして,本件本案事件は,被申立人のした本件各決定の取消しを求めるものであるが,本件各決定が執行されてしまうと,本件各決定を取り消す意味も失われることになり,また,仮に記録が閲覧・謄写されることによって申立人らの企業秘密が明らかにされることなどによる損害が生ずるとすると,その申立人らの損害は性質上回復が困難になることが明らかである。したがって,申立人らには回復の困難な損害を避けるため本件本案事件の判決確定まで本件各決定の執行を停止すべき「緊急の必要がある」というべきである。 他方,本件各決定の執行を停止すると,Aらの提起している住民訴訟の進行に遅滞を生じさせる懸念がないではないが,Aらが主張立証の機会を逸し,その提起している住 緊急の必要がある」というべきである。 他方,本件各決定の執行を停止すると,Aらの提起している住民訴訟の進行に遅滞を生じさせる懸念がないではないが,Aらが主張立証の機会を逸し,その提起している住民訴訟の機能が害されると認めるに足りる疎明はないから,これによって直ちに「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれ」があるとまでは認め難い。 3 以上検討したところによれば,本件各決定の執行は,本件本案事件の判決の確定まで停止するのが相当である。 よって,主文のとおり決定する。 平成13年10月24日東京高等裁判所第20民事部裁判長裁判官石井健吾裁判官大●弘裁判官植垣勝裕

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