令和2(ワ)28354 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和4年11月4日 東京地方裁判所
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令和4年11月4日判決言渡同日原本交付裁判所書記官令和2年(ワ)第28354号損害賠償請求事件口頭弁論終結日令和4年9月12日判決 原 告 A 被告株式会社ミスティブ被告訴訟代理人弁護士小山雄輝 主文 1 被告は、原告に対し、93万1200円及び内別紙損害金計算表の「損害額」欄記載の額について「公演日」欄記載の日から各支払済みまで、内15万円について令和2年7月11日から支払済みまで、各年3分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用はこれを20分し、その3を被告の負担とし、その余を原告の負担と する。 4 この判決は、第1項に限り仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は、被告のホームページ上において、1か月を下らない期間、別紙謝罪文 の内容の謝罪文を掲載せよ。 2 被告は、原告に対し、465万2000円及びこれに対する令和2年7月11日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 3 仮執行宣言第2 事案の概要等 1 事案の概要 本件は、①-1主位的に、原告が作成した著作物である台本に基づいて、被告が原告の許諾を得ずに公演をしたことが原告の上演権を侵害するとして、民法709条、著作権法114条2項又は3項に基づき、385万2000円及び公演開始日である令和2年7月11日から民法所定の年3分の割合による遅延損害金を請求し、①-2予備的に、公演について許諾があったとしても許諾料につい ては、相当額とする合意があったと主張して主位的請求と同額を請求するとともに 日から民法所定の年3分の割合による遅延損害金を請求し、①-2予備的に、公演について許諾があったとしても許諾料につい ては、相当額とする合意があったと主張して主位的請求と同額を請求するとともに、②被告が公演に当たって同シナリオを一部改変したこと及び同シナリオで予定していた公演人数に満たない人数で公演したことが原告の同一性保持権侵害に当たると主張して慰謝料80万円及び前同日からの民法所定の年3分の遅延損害金並びに③同同一性保持権侵害につき、著作権法115条に基づき謝罪広告 を請求する事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがないか,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実) ア原告は、「A´」の名義で、マーダーミステリーと呼ばれる、劇に複数人が参加して、参加者がそれぞれ架空の殺人事件の犯人役とその他の役を割り当 てられてその役を演じるという劇の台本を執筆することがあり、その台本が劇場に提供されて公演されたりもしている。(甲62)イ被告は、業としてマーダーミステリーの公演等を行う株式会社である。B(以下「B」という。)は、被告の代表取締役である。(弁論の全趣旨)Bは、令和2年3月3日、原告に対し、原告が作成した「裁くもの、裁かれ るもの」というタイトルのマーダーミステリー(以下、「本件ミステリー」ということがある。)について被告が運営する店舗(Rabbithole)において公演することを打診した。原告はこれを前向きに検討する意向を示し、以後、両名は公演の条件等について協議することとなった。(甲62、乙6)マーダーミステリーの公演は、参加料を支払った参加者が、架空の殺人事件 について、それぞれ犯人その他の役を割り振られ、それぞれの役についてシナ リオにおいて事前に設定 62、乙6)マーダーミステリーの公演は、参加料を支払った参加者が、架空の殺人事件 について、それぞれ犯人その他の役を割り振られ、それぞれの役についてシナ リオにおいて事前に設定されたミッションを達成することを目的とする参加型の公演である。参加者は、マーダーミステリーの公演に参加して、それぞれの役を演じることで、自分自身が推理小説の世界に入ったような体験ができる。 本件ミステリーでは、参加者が裁判官役、検察官役、被告人役、証人役等に 割り振られ、台本において、それぞれの役について、プロフィールや事件について体験したこと、達成すべきミッション等が提示される。例えば、ミッションとして、被告人役については、有罪判決を受けないこと、検察官役については有罪判決を勝ち取ることなどが設定されている。公演では、ゲームマスターと呼ばれる人物がシナリオに基づいて劇の進行を管理し、参加者はあらかじめ 設定されたルールの範囲内で、アドリブで自身のミッションを達成するための様々な行動をすることとなる。本件ミステリーについて、原告が作成した台本(以下「本件原告台本」という。)は、参加者のそれぞれの役のプロフィール、体験した内容、ミッションや、使用される証拠、進行上のルール説明事項、ゲームマスターが最後に事件の真相を語るための解説書などからなっており、劇 を演じるために必要である様々な事項等が記載されて、これによりマーダーミステリーの劇を演じることができるものであって、著作物に当たる。(甲22~27、乙6)原告は、令和2年6月22日、被告に対して、ミッション、証拠の画像等も含む公演に必要な資料一式を含む本件原告台本の電子データを提供した。(甲 62、乙6)被告は、訴外エルミライズと共同で、令和2年7月24日から 日、被告に対して、ミッション、証拠の画像等も含む公演に必要な資料一式を含む本件原告台本の電子データを提供した。(甲 62、乙6)被告は、訴外エルミライズと共同で、令和2年7月24日から同年9月まで、本件原告台本の内容に被告が一部変更を加えて作成した台本(以下「本件公演台本」という。)に基づく公演(以下「被告公演」ということがある。)を行った。 本件公演台本は、本件原告台本に対し、次の点に変更を加えたものであった。 (争いなし)アミッションの変更各参加者のミッションは、本件原告台本では、別紙ミッション変更点の「元のmission」欄記載のとおりのミッションであったが、本件公演台本では、同「変更された後のmission」欄のとおりのミッションであった。 イ画像、イラストの削除参加者が劇で使用する証拠である甲1号証から甲5号証について、本件原告台本では、それぞれ証拠物等(ナイフ、鍵、扉部屋)の写真画像及びその説明が記載されていたが、本件公演台本では、その写真画像が削除されていた。 ウ出演キャラクターの氏名、年齢等ハンドアウト表紙に記載された「園倉芽衣」の年齢が本件原告台本では「23」となっていたが、本件公演台本では、「27」とされた。 ハンドアウト記載の登場人物名について、本件原告台本では「園倉芽衣」となっていた2箇所が、本件公演台本では「園田芽衣」とされた。 情報カード記載の登場人物名について、本件原告台本では「卯月和可菜」となっていたが、本件公演台本では1か所が「卯月和可」とされた。 情報カードについて、本件原告台本では、「血痕」となっている部分のうち本件公演台本では1か所が「結婚」となっていた。 3 争点 被告公演における本件原告 が「卯月和可」とされた。 情報カードについて、本件原告台本では、「血痕」となっている部分のうち本件公演台本では1か所が「結婚」となっていた。 3 争点 被告公演における本件原告台本からの改変の内容(争点1) 被告公演についての原告被告間の合意の有無、内容(争点2) 原告の損害額等(争点3) 謝罪広告の必要性(争点4) 4 争点についての当事者の主張 被告公演における本件原告台本からの改変の内容(争点1) (原告の主張)ア本件公演台本では、前記2の改変に加えて、本件原告台本の「判決文」と題するハンドアウトの1ページ目最終行から次ページ1行目が欠落していた。 イ本件原告台本でも本件公演台本でも参加者が9名で公演を行うこととさ れていたにもかかわらず、令和2年7月16日と同年9月6日の2回の公演では、8名で公演を行った。 (被告の主張)ア 「判決文」の改変については、不知イ公演参加人数についての原告主張については不知。参加者が8名の場合に はゲームマスターが補充の参加者として参加したと思われる。 被告公演についての原告被告間の合意の有無、内容(争点2)(原告の主張)原告と被告の間では、本件ミステリーについて公演の条件について話合いをしていたが、公演開始前にも後にも契約書は作成されておらず、本件ミステリ ーに基づく公演について原告が許諾しことはない。 原告は、原告が提供した本件原告台本の内容を変更することを許諾していない。 仮に原告と被告の間に本件ミステリーの公演について合意が成立していたとしても、そのライセンス料の具体的な金額については合意しておらず、相当 額とすることの合意があったと解するべきである。 (被告 原告と被告の間に本件ミステリーの公演について合意が成立していたとしても、そのライセンス料の具体的な金額については合意しておらず、相当 額とすることの合意があったと解するべきである。 (被告の主張)原告と被告は、令和2年3月24日の原告とBの協議において、本件ミステリーについて、被告が公演を行うこと及びその対価として10万円及び公演売上げの5%を原告に支払うということで合意した。よって、被告は、本件ミス テリーを公演することについて原告の許諾を受け、その対価も合意していた。 上記協議の際、原告は、「この作品をどのような形で公演にもっていくかは、ラビットホールさんにお任せします。」と発言した。また、Bは、令和2年6月21日に原告と打合わせをし、本件原告台本の改変を提案したところ、原告は、Bに対して、「プロの方の進行なので全てお任せするのでよろしくお願いします。」と述べ、本件原告台本を改変することについて承諾した。よって、被告は 合意に基づいて本件原告台本を改変して公演したのであるから、原告の同一性保持権を侵害したとはいえない。 なお、本件原告台本のミッションの変更は、本件原告台本の表記では、「西園寺翔太」の役割を演じるプレイヤーがどのような行動をとったらよいのか全く分からず、また、「最終弁論」という言葉の意味も一般人にわかりにくいもので あったため、一般人にとってわかりやすく楽しめるように変更したものである。 誤字脱字については、原告の指摘を受けて発覚した後に修正した。 原告の損害額等(争点3)(原告の主張)ア著作権法114条2項に基づく損害額 被告公演によって被告が得た利益は次のとおりであり、同額が原告の損害に当たる。 1公演につき、参加者は9名で、参加者1名当たり400 告の主張)ア著作権法114条2項に基づく損害額 被告公演によって被告が得た利益は次のとおりであり、同額が原告の損害に当たる。 1公演につき、参加者は9名で、参加者1名当たり4000円の利益が得られ、令和2年7月11日から9月末日まで107回の公演があったため、利益額は、4000円×9×107=385万2000円になる。 イ著作権法114条3項に基づく損害額マーダーミステリー業界における一般的なライセンス料は、50%であるから、損害額はアの385万2000円の50%である192万6000円が相当である。 ウ仮に原告と被告が本件ミステリーの公演について対価を相当額とするこ とについて合意していたとしても、その金額は上記イの金額を下らない。 エ同一性保持権侵害に基づく慰謝料原告は、本件原告台本の創作的な表現を自己の意思に反して改変され、広く公演に供されたことにつき著しい精神的苦痛を受けた。また、誤字脱字といった誤り等によって、公演参加者から、原告による瑕疵であると思われたことにつき著しい精神的苦痛を受けた。参加者を減らされた公演については、 物語性やゲーム性も大きく変わった。原告の精神的苦痛を慰藉するための慰謝料は80万円を下らない。 (被告の主張)ア著作権法114条2項に基づく損害額について被告は本件ミステリーについて被告のように公演を実施する立場にない から、本件に係る売上相当の利益について原告が得られる余地はないから、著作権法114条2項に基づく推定は受けない。 イ著作権法114条3項に基づく損害額について本件シナリオによる公演売上げは次のとおりである。 令和2年7月 23回 82万4000円 8月 24回 イ著作権法114条3項に基づく損害額について本件シナリオによる公演売上げは次のとおりである。 令和2年7月 23回 82万4000円 8月 24回 86万4000円9月 15回 53万2000円被告は、お詫び公演のために2万4000円分を無償で実施したから、無償分を減額した被告の売上げは、合計219万6000円である。ライセンス料相当額は、本件について原告と合意した金額である10万円及び売上 げの5%で計算するのが相当であるから、20万9800円である。 ウ仮に本件についてライセンス料について相当額とする合意が成立していたとしても、その額は前記イで主張する額が相当である。 エ同一性保持権侵害の慰謝料については、仮に認められるとしても、原告に生じる損害は軽微である。 謝罪広告の必要性(争点4) (原告の主張)本件では、損害賠償で償えない損害が生じているので謝罪広告を求める。 (被告の主張)原告の主張は否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 原告本人、掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 原告は、令和2年5月(以下、年の表記を省略したものは令和2年である。)頃までに本件ミステリーについての本件原告台本を作成し、2月18日にテストプレイを開催した。同テストプレイには被告代表者であるBが参加していた。 (甲62) 被告は、3月3日、原告に対して、本件ミステリーを被告が運営する店舗(Rabbithole)において公演することを打診し、原告は被告が本件ミステリーを用いて公演することについて前向きな返事をした。原告とBは、3月24日、被告の店舗であるRabbithole 新 舗(Rabbithole)において公演することを打診し、原告は被告が本件ミステリーを用いて公演することについて前向きな返事をした。原告とBは、3月24日、被告の店舗であるRabbithole 新宿店において、打合せを行った。同打合せでは、被告の方から、本件ミステリーについてプレイヤーの数を増やしたらどう かといった提案がされ、原告はその提案を承諾した。(甲62、乙6)原告は、被告に本件原告台本をプリントアウトしたものを送付したが、被告が新型コロナウイルスに対する対応等で受領できなかったために、それは原告に返送された。その後、原告は、6月22日に本件原告台本の電子データを被告に交付した。原告は、7月5日、Bに対し、電子メールで、次のメッセージ を送信した。 「B様、池袋店店長様製作者が知らないうちに、「裁くもの、裁かれるもの」の予告告知があったことによるご質問と早急な対応のお願い。 4月にB様とお話した際に「変更したあとの内容の確認を制作者がする」と いう条件でお話を勧めていたはずです。 先ほど、予約開始の告知がありましたが、最終のテストプレイの日程調整のご連絡がありません。 このままでは、制作者が作品の最終的な内容を知らないまま、公演が始まってしまいます。 また、以前も貴社からの連絡が途絶えた経験があることから、制作者として は不安を感じています。 私としては「制作者の内容確認」がなければ公演を許可しない、という契約と考えております。 (中略)今後の日程と、最終の内容確認の調整を至急お願いします。 (もう一つ)4月のお話のとき、制作後のコンポーネント1セットを制作者用として頂けるというお話でした。こちらも公演開始前にお願いいたします。」これ 内容確認の調整を至急お願いします。 (もう一つ)4月のお話のとき、制作後のコンポーネント1セットを制作者用として頂けるというお話でした。こちらも公演開始前にお願いいたします。」これに対して、Bは、電子メールで、次のとおり返信した。 「製作者様のチェックに関して以前のお話を失念しており失礼しました。 先日のコロナ後のお話合いの際にチューニングに関しては、弊社を信用してお任せいただけると言うお声がけから、進行をしてしまいました。 (中略)A´さんの対応可能なスケジュールを教えていただけますでしょうか?」これに対して原告は、電子メールで、次のとおり返信した。 「チューニングについては信頼しています(ので口を出すつもりはありません)。 ただ、法廷マーダーミステリーという性質上明らかに法廷ものとしておかしいところは最後に確認する、というお話でした(思い出して頂けると思います)。 (後略)」(甲14、62、乙3、) 被告は、7月11日に本件ミステリーの公演を開始した。原告は、7月24 日、原告に対し客から被告店舗に入れないという連絡があったため、Bに対して、公演開始時間にもかかわらず客が被告店舗に入れていないとの連絡があった旨を伝え、代金の割引など何らかの対応をするように求めた。 原告は、被告公演の開始後、原告のツイッターで、被告公演の告知をするなどした。また、Bに対し、被告公演開始後に、最終的な公演内容の確認をした いことを申し入れていた。(原告本人)被告は、8月4日、ライセンス契約書案の電子データを原告に送付した。その後、原告と被告は契約の締結に向けてのやり取りをし、被告は、8月31日、被告側の事情でライセンス契約書の進捗が遅れていることを詫び、8月末まで 、ライセンス契約書案の電子データを原告に送付した。その後、原告と被告は契約の締結に向けてのやり取りをし、被告は、8月31日、被告側の事情でライセンス契約書の進捗が遅れていることを詫び、8月末までの公演のロイヤリティについて、前倒して対応するか契約書が完成してからに するかを確認するメッセージを送信した。(乙4)原告は、9月11日、Bに対し、先日、被告公演について誤植の指摘をしたが、前日の公演で修正がされていなかったことについて対応を求めるメッセージを送信した。(乙4)原告とBは、9月14日、電話で話をし、その直後、原告は、Bに対して、 7月8日に約束をした完全なコンポーネントの交付なども含めた既に履行が完了しているはずの約束を果たしてもらえないと話を進めることはできない、Bから調整後の公演があたかも原告の作品ではないかのような発言があったと考えており、Rabbithole の正式な見解だというのであれば、全公演の中止も検討しているとのメッセージを送信した。原告は、9月15日には、 「Rabbithole 確認・警告書.pdf」というファイルを送信し、話し合いで解決する機会はこれで最後とすることとして、社内の意見を精査した上で対応を要求する旨のメッセージを送信した。これに対して、Bは、原告に対し、「原作者様と著作権に関する契約が締結できていない状況であることを踏まえ、原則、公演は中止させていただきます。」「過去公演に関する支払いにつきましては、シ ナリオに対する10万円及び公演売上の5%をお支払いいたします。」「これら に関し、こちらで覚書をご用意いたします。」などと記載されたメッセージを送信した。これに対して、原告は、Bに対し、9月16日、「すでに予約を入れているお客様のご迷惑にならない形 「これら に関し、こちらで覚書をご用意いたします。」などと記載されたメッセージを送信した。これに対して、原告は、Bに対し、9月16日、「すでに予約を入れているお客様のご迷惑にならない形での公演中止とするよう配慮ください。なお、過去公演に対する支払い等については留保し、覚書を確認してからご返答差し上げたいと思います。よろしくお願いします。」とのメッセージを送信し た。その後、原告とBは、覚書の内容についてやり取りをしたが、まとまらなかった。(甲60,61、乙4)原告は、被告公演について、被告公演終了後に本件原告台本からミッションが変更されて実施されていたことを知った。(原告本人) 2 争点1(本件原告台本からの改変の内容)について 本件公演台本の本件原告台本からの改変について、前提事実の改変に加えて、原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、本件公演台本では、本件原告台本の「判決文」と題するハンドアウトの1ページ目最終行から次ページ1行目が欠落していたことが認められる。 また、被告公演の参加人数について、令和2年9月6日の参加人数は台本の定 員(9名)よりも2名少ない7名であった(乙6)。被告が主張するとおり参加者が足りない場合に被告側の人間(ゲームマスター)が1名参加しても定員に満たないことによれば、同日の公演については、参加者が少なくとも定員より1名少ない状態で公演されたことが推認できる。 3 争点2(被告公演についての原告被告間の合意の有無、内容)について ⑴ 本件において、原告と被告の間では、被告が本件ミステリーに基づく公演を行うことの許諾につき契約書が作成されることはなかった。しかし、前記1で認定したとおり、原告は被告に対して本件原告台本を提供し、被告が公演を行うことを知った では、被告が本件ミステリーに基づく公演を行うことの許諾につき契約書が作成されることはなかった。しかし、前記1で認定したとおり、原告は被告に対して本件原告台本を提供し、被告が公演を行うことを知った後も、原告が最終的な公演内容について確認する機会がないことについて不満を示したものの、公演の延期や中止自体を申し入れることはな く、最終的な公演内容も、公演開始後に確認することを申し入れ、公演開始後 も、原告のツイッターで被告公演を告知するなどしており、少なくとも本件原告台本に基づくのであれば、被告が公演をすること自体については許諾していたと認められる。 ⑵ 公演に関する原告に対する報酬について、被告は、令和2年4月24日の原告とBの協議において、シナリオに基づく公演を行うことに係る対価について 10万円及び公演売上げの5%を原告に支払うということで合意したと主張し、Bもこれに沿う供述をする。しかし、これを裏付ける文書がないほか、原告とBとの間のメッセージのやりとりにおいても、公演終了の決定時まで、その合意がされたことをうかがわせるやりとりはない。公演終了が決まった段階で、被告から原告に対し、「過去公演に関する支払いにつきましては、シナリオ に対する10万円及び公演売上の5%をお支払いいたします。」とのメッセージが送られているが、その後の原告の返信の記載内容は、原告被告間で報酬が合意済みであることを前提とするものであるとも認められない。令和2年4月24日の協議において、報酬について被告が主張する内容が話題とされたことがあったとしても、原告との間で少なくとも法的拘束力が発生する合意と評価 するに足りるやりとりがあったと認めるに足りる証拠はない。 ⑶ 本件原告台本からの変更の許諾について検討する。 被告は、原告 たとしても、原告との間で少なくとも法的拘束力が発生する合意と評価 するに足りるやりとりがあったと認めるに足りる証拠はない。 ⑶ 本件原告台本からの変更の許諾について検討する。 被告は、原告が「この作品をどのような形で公演にもっていくかは、ラビットホールさんにお任せします。」、「プロの方の進行なので全てお任せするのでよろしくお願いします。」などと発言したことをもって、本件原告台本を改変 することについて原告の許諾を得たと主張する。本件原告台本に基づく公演について、テストプレイ等を除く大規模な公演は被告での公演が初であることに照らせば、本件原告台本に基づく公演を行うに際し、本件原告台本に対し公演に適するように細部を調整する必要が生じることが十分にあり得たといえる。 原告も、令和2年7月5日の原告と被告の間のやり取りにおいて、被告から「チ ューニング」については被告を信用してもらえるとの話だったとの指摘がされ たことに対して、原告も、「チューニング」については信頼しているので口を出すつもりはないなどと返信しており、原告と被告の間では、本件原告台本を「チューニング」のために一定程度変更することがあることは前提になっていたと認められる。 もっとも、原告と被告との間で、仮に原告が公演の円滑な進行のために本件 原告台本の変更を容認する発言があったとしても、被告が原告の許諾を得ることなく、本件原告台本を無制限に変更することを許諾したとは認められない。 このことは、被告が、本件原告台本からの変更について了承されていた変更を「チューニング」と表現していたことからも明らかであり、また、その「チューニング」について言及するメッセージにおいて、「法廷マーダーミステリー という性質上明らかに法廷ものとしておかしいところは最後 ーニング」と表現していたことからも明らかであり、また、その「チューニング」について言及するメッセージにおいて、「法廷マーダーミステリー という性質上明らかに法廷ものとしておかしいところは最後に確認する、というお話でした」などと述べていることもこれを裏付ける。そうすると、原告は、被告に本件原告台本に基づく公演を行うことを許諾するに当たっては、被告が公演実施のために必要な細部の調整にとどまらないような変更については事前に原告の許諾を得ることが前提になっていたと認めるのが相当である。 ⑷ 以上を前提に本件原告台本からの変更点について検討すると、被告公演では、本件原告台本から、前提事実及び前記2に記載の点について変更されたといえる。そのうち、被告公演では本件原告台本からミッションの内容が変更している点について、本件原告台本において、ミッションは、各参加者が到達を目指すべき目標であり、各参加者はこれを達成するために自身の具体的な行動を 決定していくのであるから、ミッションは作品の根幹に当たるといえる。そして、ミッションについて被告によって行われた変更は、単に誤字脱字を修正したり、ミッションの内容の実質的同一性を保持したまま趣旨を明確化するといったものではなく、ミッションの内容を全く違ったものに変更するものである。 この点について、被告は、本件原告台本では参加者がどのような行動をとって よいか不明であったなどと主張するが、仮に被告が主張するとおり本件原告台 本のままでは公演に当たって不都合があったとしても、シナリオの内容自体の変更については、原告の了承を得ることが前提になっていたというべきであり、また、被告が原告に確認をとることが被告に過度な負担を強いるとことになるともいえない。 ⑸ 以上によれば、原告と被 容自体の変更については、原告の了承を得ることが前提になっていたというべきであり、また、被告が原告に確認をとることが被告に過度な負担を強いるとことになるともいえない。 ⑸ 以上によれば、原告と被告間では、本件原告台本に基づく公演を行うこと自 体は原告が許諾していたといえるものの、本件原告台本の内容に変更を加える場合には原告の事前の了承を得ることが前提であった認められる。しかしながら、被告は、原告の事前の承諾を得ることなく本件原告台本のミッションの内容を変更した本件公演台本に基づいて公演を実施したと認められるから、被告の本件公演台本に基づく公演は、いずれも原告の許諾に基づかないものであっ たと評価すべきである。そして、ミッションは異なるものの本件原告台本に基づく本件公演台本による公演は本件原告台本による公演の本質的特徴を感得できるものであり、被告公演は、本件原告台本に係る原告の上演権を侵害するものであるといえる。また、少なくとも被告による各ミッションの変更は、本件原告台本とそれに基づく公演に関して有する原告の同一性保持権を侵害す るものであったといえる。 4 争点3(原告の損害額等)について⑴ 原告本人、掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば次の事実が認められる。 ア被告は本件公演台本に基づき別紙損害計算表の「公演日」欄の日に、同「公演回数」欄記載の回数公演を行った(最大で朝、昼、夜の3公演)。(乙6) イ原告は、本件原告台本や被告による公演が終了した後に被告から受領した本件公演台本に対し、さらに修正を加えて台本を作成し、その台本に基づく公演について、少なくとも3社に対して1公演当たり1万2600円のライセンス料で公演を許諾した。これらの公演はいずれも、被告による公演と同様に、1人当たり3000円で9人が 作成し、その台本に基づく公演について、少なくとも3社に対して1公演当たり1万2600円のライセンス料で公演を許諾した。これらの公演はいずれも、被告による公演と同様に、1人当たり3000円で9人が参加することによって3万6000円 の売上げになることが前提になっていた。原告は、これらのライセンス先か ら概ね20回分程度のライセンス料を受領した。(甲30、原告本人)⑵ 原告は、著作権法114条2項に基づく損害を主張するが、被告による侵害行為が行われた際、原告には、自身で集客して何らかの公演を実施することができたとも認められず、同項に基づく推定はその基礎を欠く。 ⑶ 著作権法114条3項に基づく損害について、前記⑴で認定したとおり、原 告は、本件の後、本件原告台本を修正した台本に基づく公演について1公演当たり1万2600円でライセンスした実績がある。そして、本件については、上記の公演のために原告が提供した台本は、公演の人数を増やすなど、被告側のアイデアも一部反映していたという事情がある。また、本件原告台本に基づいて被告が公演をすること自体については基本的に合意されており、台本の改 変についても事前に被告が原告に確認を取っていれば、原告も納得してそれによる公演を許諾していた可能性もあるなどの事情もある。これらの事情を総合的に考慮すると、原告に生じた著作権法114条3項に基づく損害金は、1公演当たり1万2600円と認めるのが相当である。 なお、被告公演では、被告の不手際等を理由に、一部の参加者の参加料を無 料にした公演や、前記2で認定したとおり、参加者が少なくなったため、公演料が9人分よりも少なくなった公演も存在するが、公演が実施されている以上、これらの事情は、上記の損害金を左右する事情に当たるとはいえな た公演や、前記2で認定したとおり、参加者が少なくなったため、公演料が9人分よりも少なくなった公演も存在するが、公演が実施されている以上、これらの事情は、上記の損害金を左右する事情に当たるとはいえない。 ⑷ 同一性保持権侵害に係る損害について、本件公演台本については、本件原告台本から前提事実⑹及び前記2で認定した改変が行われていたことが認めら れる。前記3⑷で説示したとおり、少なくとも、ミッションの改変は、本件原告台本の一部に対して実質的内容を変更するものといえる。他方で、その余の改変は、いずれも誤字、脱字に類するものである。これらの事情を考慮すると、本件原告台本に係る同一性保持権侵害に係る損害は15万円であると認められる。 また、原告は、本来9人で実施するはずの公演が8人で実施されたことにつ いて同一性保持権侵害に基づく損害が発生したと主張する。しかし、本件原告台本は参加型の劇についての台本であり、その規模は1公演につき参加者9人、公演回数も日に3回と小規模である。何らかの事情で参加者が9人に満たなかった場合に代わりの人員を容易に集めることは必ずしも容易ではなく、また、公演中止となるとその他の参加者に迷惑がかかることなどから、事情によって は、8人以下で実施することも想定されていたというべきである。8人で実施されたことについて、参加者もそのことについての不満は述べておらず(甲64)、それが本件原告台本に対する不当な改変であったとは認められない。よって、本件原告台本における定員よりも少ない人数で公演が実施されたことに係る慰謝料相当損害金が発生すると認めるのは相当ではない。 5 争点4(謝罪広告の必要性)について前記1で認定した本件に係る経過、被告による前記同一性保持権侵害の態様等の事情を考 とに係る慰謝料相当損害金が発生すると認めるのは相当ではない。 5 争点4(謝罪広告の必要性)について前記1で認定した本件に係る経過、被告による前記同一性保持権侵害の態様等の事情を考慮すると、被告に対して金銭賠償に加えて謝罪広告まで実施させる必要性があるとは認められない。 第4 結論 以上のとおりであって、原告の上演権侵害に基づく損害賠償の請求には、78万1200円及び別紙損害金計算表の「損害額」欄記載の額につき「公演日」欄記載の日からの遅延損害金を請求する限度で理由がある(なお、予備的請求は、許諾料を相当額とする本件公演台本に基づく公演の許諾があったとは認められないから理由がない。)。同一性保持権侵害については、15万円及び最初の公演 日である令和2年7月11日からの遅延損害金を請求する限度で理由がある。よって、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官柴田義明 裁判官佐伯良子 裁判官仲田憲史 (別紙)損害金計算書記載省略(別紙)謝罪文記載省略(別紙)ミッション変更点 記載省略

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