平成26年5月29日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成25年(ワ)第4878号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論の終結の日平成26年4月7日判決東京都新宿区<以下略>(商業登記簿上の本店所在地東京都新宿区<以下略>)原告吉佳エンジニアリング株式会社同訴訟代理人弁護士田中成志平出貴和板井典子山田 徹杉本賢太同補佐人弁理士江藤聡明高橋修平東京都青梅市<以下略>被告 KJSエンジニアリング株式会社同訴訟代理人弁護士安江邦治安江裕太同補佐人弁理士高橋敏邦 主文 原告の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 被告は,HDプレート(上部プレート:HDP-50U,HDP-75U)及びHDネットを販売してはならない。 2 被告は,原告に対し,2333万6720円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,斜面保護方法及び逆巻き施工斜面保護方法に関する特許権を有する原告が,被告による斜面保護工事施工業者への資材の販売等がその特許権を侵害するものとみなされると主張して,特許法100条1 本件は,斜面保護方法及び逆巻き施工斜面保護方法に関する特許権を有する原告が,被告による斜面保護工事施工業者への資材の販売等がその特許権を侵害するものとみなされると主張して,特許法100条1項に基づき,前記資材の販売行為の差止めを求め,上記主張のほか,特許発明の実施による施工業者の特許権侵害を教唆又は幇助したと主張して,不法行為による損害賠償請求権に基づき,原告が受けた損害の額と推定される被告がその侵害の行為により受けた利益の額121万5200円及び共同行為者である施工業者がその侵害の行為により受けた利益の額2000万円に弁護士費用相当損害金212万1520円を加えた合計2333万6720円並びにこれに対する不法行為の後である訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに各項末尾掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 原告の特許権ア原告は,発明の名称を「斜面保護方法及び逆巻き施工斜面保護方法」とする特許権(特許番号第4256545号。以下「本件特許権」といい,この特許を「本件特許」という。)を有している。本件特許は,平成11年8月18日に特許出願がされ,願書に添付した明細書についての平成20年8月11日付手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を経て,平成21年2月6日に特許権の設定の登録がされた。本件補正は,別紙「当初の請求項1の記載」のとおり記載されていた特許請求の範囲の請求項1を本判決添付の特許公報(以下「本件公報」という。)の該当項のとおり補正するという内容を含むものである。 イ原告は,平成25年8月20日,特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的として,本件特 以下「本件公報」という。)の該当項のとおり補正するという内容を含むものである。 イ原告は,平成25年8月20日,特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的として,本件特許出願の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の訂正審判を請求した(以下,この訂正を「本件訂正」という。)。本件訂正は,本件公報の該当項のとおり記載されていた特許請求の範囲の請求項1を別紙「訂正後の請求項1の記載」(訂正部分に下線を付す。)のとおり訂正するという内容を含むものである。 (甲2,16)(2) 本件特許に係る発明本件明細書の特許請求の範囲の請求項1の記載は,本件公報の該当項記載のとおりである(以下,この請求項1に係る発明を「本件発明」という。)。 (3) 被告らの行為ア被告は,業として,HDネット工法と称する斜面保護工法(以下「被告方法」という。)を広告,宣伝し,被告方法のための製品であるとして,別紙「被告製品説明書」記載の各製品を販売している。 イユウテック株式会社は,業として,三重県紀伊長島加田地区において,被告が販売した上部プレート(HDP-50U),下部プレート(HDP-50L,HDP-75L),HDボルト(D19,D22),球座ナット(D19,D22)及びキャップナット(KRS-D19,KRS-D22)を用いて,被告方法による斜面保護工事を施工した。 (甲3,4,7,8,21,22)(4) 被告方法と本件発明の構成要件との対比ア本件発明の構成要件の分説本件発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説した構成要件をそれぞれの符号に従い「構成要件A」のようにいう。)。 A 引張り強度が400~2000N/㎟であるワイヤーで製作した金網 を, 件に分説すると,次のとおりである(以下,分説した構成要件をそれぞれの符号に従い「構成要件A」のようにいう。)。 A 引張り強度が400~2000N/㎟であるワイヤーで製作した金網 を,B 保護すべき斜面に展設し,C この金網の上面から受圧板を所定間隔において点在状態に配置しD 前記受圧板配置箇所に相当して地山に固設されるアンカーを用いて受圧板を地山に固定し,E 前記アンカーを用いた受圧板の固定は,前記受圧板により金網全体にほぼ均等に土圧による張力が働くように押え付けて行われることF を特徴とする斜面保護方法。 イ被告方法の構成被告方法は,HDネットを,斜面に展設し,上部プレートを,HDネットの上面から,HDネットの下に所定間隔において点在状態に配置されHDボルトを用いて地山に固定された下部プレートの上に配置し,前記上部プレート設置箇所に相当して地山に固設されるHDボルトを用いて上部プレートを地山に置かれた下部プレート上に固定することを特徴とする斜面保護方法である。 (甲7,8,21,22) 2 争点(1) 被告の行為が本件特許権を侵害するものであるか(争点(1))(2) 本件特許が特許無効審判により無効とされるべきものと認められるか(争点(2))(3) 本件訂正により無効理由が解消されるか(争点(3)) 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点(1)(被告の行為が本件特許権を侵害するものであるか)についてア被告方法が本件発明の技術的範囲に属するか。 (ア) 原告a 構成要件A HDネットは,素線径3.2㎜,引張り強度が1000N/㎟を有する亜鉛メッキ鋼線に飽和ポリエステル塗装を施した鋼線を格子状のネット様に編んだ金網であるから 告a 構成要件A HDネットは,素線径3.2㎜,引張り強度が1000N/㎟を有する亜鉛メッキ鋼線に飽和ポリエステル塗装を施した鋼線を格子状のネット様に編んだ金網であるから,被告方法は構成要件Aを充足する。 b 構成要件BHDネットは,保護すべき斜面に展設されるから,被告方法は構成要件Bを充足する。 c 構成要件C上部プレートは,地山に押しつけられて固定されている下部プレートの設置位置,すなわち,約1ないし2mの間隔で所定間隔をおいて点在状態に固定されるとともに,地山斜面に固定される。また,上部プレートの構成要素である傾斜した脚部は,HDネットの網目を挿通し,かつ,HDネットと接触して,HDネットが上方に浮き上がらないように上部から押さえ付けている。地山斜面に凹凸があって,HDネットはほとんどの部分で地山に接し,HDネット全体にほぼ均等に土圧による張力が働くから,上部プレートは「受圧板」に当たる。 上部プレートはHDネットの上面から所定間隔において点在状態に配置されているから,被告方法は構成要件Cを充足する。 d 構成要件DHDボルトは,「アンカー」であり,下部プレート及び上部プレート設置箇所に相当して地山に固設されるHDボルトを用いて上部プレートを地山に置かれた下部プレートに固定するから,被告方法は構成要件Dを充足する。 e 構成要件E上部プレートの上面部は,脚部が外側に広がるように傾斜させて形成されているから,上面部がHDネットに触れる前に脚部が必ずHDネットを構成する線材に触れ,上側から線材を押さえ付けるように機 能し,地山からHDネットに対してかかる土圧は,上部プレートによって受けられる。そして,上部プレートは,敷設されたHDネットの ネットを構成する線材に触れ,上側から線材を押さえ付けるように機 能し,地山からHDネットに対してかかる土圧は,上部プレートによって受けられる。そして,上部プレートは,敷設されたHDネットの全体にわたってほぼ等間隔に点在設置されていることから,HDネットは,上部プレートの抑止によって,地山からの土圧をほぼ均等に受ける。そうすると,被告方法において,HDボルトを用いた上部プレートの固定は,前記上部プレートによりHDネット全体にほぼ均等に土圧による張力が働くように押さえ付けて行われるから,被告方法は構成要件Eを充足する。 (イ) 被告a 構成要件A「引張り強度が400~2000N/㎟であるワイヤーで製作した金網」は,本件発明の目的,作用効果である地山を押さえ付ける目的,作用効果を有する金網を意味するが,被告方法のHDネットは,地山を押さえ付ける目的,作用効果を有しないから,被告方法は構成要件Aを充足しない。 b 構成要件B「保護すべき斜面に展設」は,金網全体にほぼ均等に土圧による張力が働くように地山を押さえ付けて保護すべき斜面に展設することを意味するが,被告方法のHDネットは,その全体にほぼ均等に土圧による張力が働くように地山を押さえ付けて保護すべき斜面に展設されたものではないから,被告方法は構成要件Bを充足しない。 c 構成要件C「受圧板」は,底面が平坦なもの又は本件明細書の特許請求の範囲の請求項4に記載された椀状又は皿状の中空殻体構造のものを意味するが,上部プレートの上面部は,底面に4本の脚部を有して,地山とは接触せず,上部プレートの上面部と下部プレートとの間には空間が あって,HDネットはその空間に展設され,HDネットの一部が地山に接触することがあるとしても 底面に4本の脚部を有して,地山とは接触せず,上部プレートの上面部と下部プレートとの間には空間が あって,HDネットはその空間に展設され,HDネットの一部が地山に接触することがあるとしても,ほとんどの部分で接触することがないのであるから,上部プレートは,金網全体にほぼ均等に土圧による張力が働くように金網を押さえ付けるという効果を奏さない。そうであるから,上部プレートは「受圧板」に該当せず,被告方法は構成要件Cを充足しない。 d 構成要件D上部プレートは,「受圧板」に該当せず,被告方法には「受圧板」に相当する部材がないから,「前記受圧板配置箇所に相当して地山に固設されるアンカーを用いて受圧板を地山に固定」するという構成がない。そうであるから,被告方法は構成要件Dを充足しない。 e 構成要件E被告方法には「受圧板」がないから,「前記アンカーを用いた受圧板の固定は,前記受圧板により金網全体にほぼ均等に土圧による張力が働くように押え付けて行われる」という構成がない。そうであるから,被告方法は構成要件Eを充足しない。 イ被告が別紙「被告製品説明書」記載1(1)の上部プレート(HDP-50U,HDP-75U)及び2のHDネット(以下「被告製品」という。)を販売することが本件特許権を侵害するものとみなされるか。 (ア) 原告被告製品を使用する工法は被告方法のみであるから,被告製品は被告方法にのみに用いる物である。そうでないとしても,本件発明の特徴的技術手段は,均質な高強度の金網を地山からの圧力を主体的に受けるために用いる点にあるから,被告製品は,本件発明の課題の解決に不可欠であり,また,被告は,平成10年ころから原告との業務上の関係があって,本件発明を実施するための製品を原告に納入したこ 体的に受けるために用いる点にあるから,被告製品は,本件発明の課題の解決に不可欠であり,また,被告は,平成10年ころから原告との業務上の関係があって,本件発明を実施するための製品を原告に納入したこともあるから, 本件発明が特許発明であること及び被告製品が本件発明の実施に用いられることを知っていた。 (イ) 被告原告の主張する事実は否認する。 ウ被告が被告方法の実施による施工業者の本件特許権侵害を教唆又は幇助したか。 (ア) 原告被告は,被告方法を広告,宣伝し,ユウテックに対し,そのための製品として別紙「被告製品説明書」記載の各製品を販売したのであり,これにより,ユウテックが被告方法を実施して本件特許権を侵害したのであるから,被告はユウテックを教唆した者又はこれを幇助した者である。 (イ) 被告被告が被告方法を広告,宣伝し,ユウテックに対し上記各製品を販売したことは認めるが,その余の事実は否認する。 (2) 争点(2)(本件特許が特許無効審判により無効とされるべきものと認められるか)についてア新規事項の追加(特許法17条の2第3項)について(ア) 被告願書に最初に添付した明細書及び図面には,「前記アンカーを用いた受圧板の固定は,前記受圧板により金網全体にほぼ均等に土圧による張力が働くように押え付けて行われる」ことについての記載はないから,本件補正のうち,上記の補正は,願書に最初に添付した明細書及び図面に記載された事項の範囲内においてしたものではない。 (イ) 原告願書に最初に添付した明細書及び図面には,「前記アンカーを用いた受圧板の固定は,前記受圧板により金網全体にほぼ均等に土圧による張 力が働くように押え付けて行われる」ことが記載され 願書に最初に添付した明細書及び図面には,「前記アンカーを用いた受圧板の固定は,前記受圧板により金網全体にほぼ均等に土圧による張 力が働くように押え付けて行われる」ことが記載されているから,上記の補正は,願書に最初に添付した明細書及び図面に記載された事項の範囲内においてしたものである。 イ明確性要件(特許法36条6項2号)について(ア) 被告当業者は,本件明細書の特許請求の範囲の請求項1の「受圧板の固定は,前記受圧板により金網全体にほぼ均等に土圧による張力が働くように押え付けて行われる」ようにするための具体的な受圧板の固定方法を理解することができないから,特許を受けようとする発明が明確ではない。 (イ) 原告本件明細書の記載及び図面や技術常識を考慮すれば,当業者は,本件明細書の特許請求の範囲の請求項1の記載内容を理解することができるから,特許を受けようとする発明は明確である。 ウ実施可能要件(特許法36条4項1号)について(ア) 被告本件明細書の発明の詳細な説明には,「受圧板により金網全体にほぼ均等に土圧による張力が働くように」する方法の記載がなく,また,何により「受圧板」を押さえ付けるのかについての記載がないから,本件明細書の発明の詳細な説明は,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでない。 (イ) 原告受圧板の固定が受圧板により金網全体にほぼ均等に土圧による張力が働くように押さえ付けて行われることの技術的手段は,本件明細書に記載されているから,本件明細書の発明の詳細な説明は,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。 エ新規性又は進歩性の欠如(特許法 手段は,本件明細書に記載されているから,本件明細書の発明の詳細な説明は,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。 エ新規性又は進歩性の欠如(特許法29条1項1号ないし3号,2項)について(ア) 被告本件特許出願前に頒布された「落石対策便覧」(乙2),特開平7-42158号公報(乙3),地山補強土工法に関するシンポジウム発表論文中の「補強工詳細図」(乙4),「第二東名高速道路長大切土のり面設計施工指針(案)」(乙5)には,「所定の引張り強度を有するワイヤーで製作した金網を,保護すべき斜面に展設し,この金網の上面から受圧板を所定間隔において点在状態に配置し,前記受圧板配置箇所に相当して地山に固設されるアンカーを用いて受圧板を地山に固定し,金網は金網全体に土圧による張力が働くように受圧板で押え付けて展設されることを特徴とする斜面保護方法。」に係る発明が記載されている。 そして,本件特許出願前に頒布された落石防護網カタログ「複式ロックネット」,鉄鋼関係JIS要覧「G3543」及び「G3547」によれば,引張り強度が400ないし1270N/㎟であるワイヤーで製作した金網が存在しており,また,斜面の表層の滑り,崩壊を防止することは所定間隔を開けて点在する受圧板により得られる効果として公知のものであった。 そうであるから,本件発明は,本件特許出願前に公然知られた発明であるか,公然実施をされた発明であるか,刊行物に記載された発明であり,そうでないとしても,日本国内において頒布された刊行物に記載された上記発明に基づいて当業者が容易に発明することができた。 (イ) 原告被告が掲げる刊行物は,いずれも本件発明の構成要件の全てを開示するもの おいて頒布された刊行物に記載された上記発明に基づいて当業者が容易に発明することができた。 (イ) 原告被告が掲げる刊行物は,いずれも本件発明の構成要件の全てを開示するものではなく,本件発明は,本件特許出願前に公然知られた発明であるとか,公然実施をされた発明であるとか,刊行物に記載された発明で あるということはできない。そして,本件発明は,金網が主体となって表層の滑り,崩壊の防止機能を発揮するための構成を採っているから,被告が主張する従来技術とは構成,効果において有意な差があり,それらを組み合わせたとしても当業者が容易に本件発明に想到することはできない。 (3) 争点(3)(本件訂正により無効理由が解消されるか)についてア原告本件特許出願時のJIS規格が定める金網は,軟鋼線(一般の鉄線)を用いて作成されたもので「硬鋼製のワイヤー」を用いて製作されたものではないから,本件訂正後の発明は,本件特許出願前に公然知られた発明であるとか,公然実施された発明であるとか,刊行物に記載された発明であるということはできないし,被告が主張する従来技術を組み合わせたとしても当業者が容易に発明することはできない。 そして,HDネットは,素線径3.2㎜,引張り強度が1000N/㎟を有する亜鉛メッキ鋼線に飽和ポリエステル塗装を施した鋼線を格子状のネット様に編んだ金網であるから,被告方法は,本件訂正後の「引張り強度が400~2000N/㎟である硬鋼製のワイヤーで製作した金網」との構成要件を充足し,また,HDボルトの設置固定に加えて,HDネットの展設及び上部プレートによる押さえ付けによって,地山の斜面の表層の滑り,崩壊を防止するためのものであるから,被告方法は,本件訂正後の「斜面の表層の滑り,崩壊を防止するた 置固定に加えて,HDネットの展設及び上部プレートによる押さえ付けによって,地山の斜面の表層の滑り,崩壊を防止するためのものであるから,被告方法は,本件訂正後の「斜面の表層の滑り,崩壊を防止するための」との構成要件を充足する。 そして,その余の構成要件は,本件発明の構成要件と同じであるから,被告方法は,これらを充足する。 イ被告「硬鋼製のワイヤー」は炭素成分を含んだ鉄によって作られたワイヤーのことであって,かかるワイヤーにより製作された金網は公知のものであ るから,本件訂正後の発明は,本件特許出願前に公然知られた発明であるか,公然実施された発明であるか,刊行物に記載された発明であり,そうでないとしても,日本国内において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができた。 「引張り強度が400~2000N/㎟である硬鋼性のワイヤーで製作した金網」は,地山を押さえ付ける目的,作用効果を有する金網を意味するところ,被告方法のHDネットは,地山を押さえ付ける目的,作用効果を有していないし,被告方法は,HDネットの展設及び上部プレートによる押さえ付けによって,地山斜面の表層の滑り,崩壊を防止するものではない。そして,斜面保護方法であることを除き,被告方法がその余の構成要件を充足しないことは,先に述べたとおりである。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(被告の行為が本件特許権を侵害するものであるか)について(1) 証拠(甲2)によれば,(ア) 本件発明は,斜面保護方法,特に地山の斜面や法面の表層の滑り,崩壊を防止するための方法に関する,(イ) 比較的浅い,例えば1ないし2mの深さの表層が剥離して滑り落ちるような斜面の安定化法として,金網などの網体で斜面を覆い,この網体の上面に所定の間隔 の滑り,崩壊を防止するための方法に関する,(イ) 比較的浅い,例えば1ないし2mの深さの表層が剥離して滑り落ちるような斜面の安定化法として,金網などの網体で斜面を覆い,この網体の上面に所定の間隔で多数のコンクリートブロックを配置し,この配置箇所の地山に固定的に設置されるアンカーを用いてコンクリートブロックを網体に押し付け,これら網体を地山に定着する方法があり,さらに,使用される網体が地山から受ける圧力によって破断して保護機能を失ってしまうことがあることから,その対策として,網体にPC鋼線を編み込んで,網体の引張り強度を高める方法が提案されているが,多数のコンクリートブロックを並べ,連続したコンクリートの枠の状態として網体を上面から押さえる方法や梁状のコンクリート体となるようにコンクリートの打設を行うものでは,法面形状の経時的な変化による網体とコンクリートブロックとの接触,押圧関係の変化が非常 に大きなものとなる,すなわち,上記のようなコンクリートブロックなどによる網体の押さえ状態は安定性に欠け,地山から網体に対する圧力である土圧による網体の破損の可能性が増加し,また,網体の補強のためにPC鋼線の編み込みを行った箇所で専ら地山からの圧力を強く受け止めることになり,それ以外の網体部分との間に圧力受け止め作用に大きな差異が生じ,斜面全体に均一で十分な保護効果を及ぼすという点で改善の余地があった,(ウ)本件発明は,斜面全体にわたって土圧が金網に均一かつ確実に及ぼされるようにし,効果的な斜面保護ができるようにする方法を提供すること,さらに,これに加えて,受圧板と金網と地山とがより密着し,受圧板の押圧作用がより的確に地山に伝達されるようにした方法を提供することを目的として,特許請求の範囲の請求項1の構成を採用した,(エ) 本件発明 ,これに加えて,受圧板と金網と地山とがより密着し,受圧板の押圧作用がより的確に地山に伝達されるようにした方法を提供することを目的として,特許請求の範囲の請求項1の構成を採用した,(エ) 本件発明は,金網を点在する受圧板で固定することによって,斜面を金網で均等に押さえるという作用を容易に達成する,すなわち,地山から及ぼされる圧力を金網全体でほぼ均等に受け持つようにすることができ,また,受圧板の設置作業は,比較的簡単で短時間の作業で行うことができ,さらに,保護斜面において,金網の領域に対して受圧板の占める領域が従来のブロックに比して極めて小さくなり,金網の厚さが確保されていることから,保護斜面の植生が向上するという効果が得られる,以上の事実が認められる。 上記認定の事実によれば,受圧板は,地山の土圧を受ける板,すなわち,地山を押圧する板で,地山と金網に密着して,地山と金網を押さえ付けるものであると認められる。そして,本件明細書の特許請求の範囲の請求項1の記載によれば,受圧板は,保護すべき斜面に展設した金網の上面から所定間隔をおいて点在状態に配置し,その配置箇所に相当して地山に固定されるアンカーを用いて地山に対して固定し,この固定は金網全体にほぼ均等に土圧による張力が働くように押さえ付けて行われるものである。 (2) 被告方法は,上部プレートを,斜面に展設したHDネットの上面から所 定間隔をおいて点在状態に配置されてHDボルトを用いて地山に固定された下部プレートの上に配置し,その配置箇所に相当して地山に固定されるHDボルトを用いて地山に置かれた下部プレートの上に固定するものであり,被告方法において,地山の土圧を受ける部材,すなわち,地山を押圧する部材は,下部プレートであり,上部プレートは,下部プレートに固定されて トを用いて地山に置かれた下部プレートの上に固定するものであり,被告方法において,地山の土圧を受ける部材,すなわち,地山を押圧する部材は,下部プレートであり,上部プレートは,下部プレートに固定されて,地山に対して固定されるものではなく,地山を押圧するものではない。また,証拠(甲3,4,21,22,乙11,19,20)によれば,上部プレートは,HDネットの上面から地山に対して固定された下部プレートに固定されていて,HDネットが上部プレートの脚部と下部プレートの間に挟まれていることが認められるから,これによれば,上部プレートはHDネットを押圧するものではなく,上部プレートの下部プレートへの固定がHDネット全体にほぼ均等に土圧による張力が働くように押さえ付けているということはできない。 そうであるから,被告方法には受圧板がないものといわざるを得ない。 (3) 原告は,上部プレートは,下部プレートに固定されるとともに地山斜面に固定され,上部プレートの脚部は,HDネットと接触して上部から押さえ付け,HDネット全体にほぼ均等に土圧による張力が働くと主張する。しかしながら,地山に対して固定されるのは下部プレートであって,上部プレートは下部プレートに固定されて,地山に対して固定されるものではなく,上部プレートの脚部がHDネットに接触することがあるとしても,下部プレートの間に挟んでいるだけで,HDネットを押圧するものではなく,上部プレートの下部プレートへの固定はHDネット全体にほぼ均等に土圧による張力が働くように押さえ付けているということはできない。 原告の上記主張は,採用することができない。 (4) したがって,被告方法は,本件発明の構成要件CないしEを充足しない。 2 以上のとおりであって,被告方法は,本件発明の技術的範 い。 原告の上記主張は,採用することができない。 (4) したがって,被告方法は,本件発明の構成要件CないしEを充足しない。 2 以上のとおりであって,被告方法は,本件発明の技術的範囲に属するとは認 められないから,原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由がない。 よって,原告の請求をいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官高野輝久 裁判官藤田 壮 裁判官宇野遥子 (特許公報は省略) (別紙)当初の請求項1の記載引張り強度の高いワイヤーで製作した金網を,保護すべき斜面に展設し,その上面から受圧板を所定間隔をおいて点在状態に配置し前記受圧板配置箇所に相当して地山に固設されるアンカーを用いて受圧板を地山に固定することを特徴とする斜面保護方法。 (別紙)訂正後の請求項1の記載引張り強度が400~2000N/㎟である硬鋼製のワイヤーで製作した金網を,保護すべき斜面に展設し,この金網の上面から受圧板を所定間隔において点在状態に配置し前記受圧板配置箇所に相当して地山に固設されるアンカーを用いて受圧板を地山に固定し,前記アンカーを用いた受圧板の固定は,前記受圧板により金網全体にほぼ均等に土圧による張力が働くように押え付けて行われることを特徴とする斜面の表層の滑り,崩壊を防止するための斜面保護方法。 (別紙)被告製品説明書 1 HDプレート(1) 上部プレート(HDP-50U,HDP-75U)鋳鉄製であり,外表面に亜鉛メッキ塗装がなされており,略正方 方法。 (別紙)被告製品説明書 1 HDプレート(1) 上部プレート(HDP-50U,HDP-75U)鋳鉄製であり,外表面に亜鉛メッキ塗装がなされており,略正方形の形状の上面部を有し,該上面部の四隅から下方に広がって傾斜した4本の脚部を有しているもの,又は4本の直立の脚部が更に各2本ずつに分岐して合計8本の脚部を有するものが存在する。また,上部プレートの略正方形部分の中央に貫通孔が設けられており,貫通孔には,地山に埋設固定されたHDボルトの突出した先端が挿通され,その先端部にキャップナット及び球座ナットによりHDボルト,下部プレートを地山斜面に固定するとともに,HDネットを固定する。 (2) 下部プレート(HDP-50L,HDP-75L)鋳鉄製であり,外表面に亜鉛メッキ塗装がなされており,略正方形の形状を有し,表面に複数の貫通孔が設けられている。中央の貫通孔には,上部プレートと同じく,地山に埋設されたHDボルトの地上に突出した先端が挿通される。 2 HDネット高強度の金網であり,素線径3.2㎜,引張り強度1000N/㎟を有する亜鉛メッキ鋼線に飽和ポリエステル塗装を施した鋼線を網目63㎜×63㎜の格子状のネット様に編んだ状態で構成される。 3 結合コイルHDネットを結合するためのコイルであり,HDネットと同様の素線径3.2㎜,引張り強度1000N/㎟を有する亜鉛メッキ鋼線に飽和ポリエステル塗装を施した銅線からなる。 4 HDボルト(D19,D22,D25)鋳鉄製の棒状部材であり,軸はネジ溝を有している。また,表面には,亜鉛メッキ,飽和ポリエステルによる塗装が施されている。HDボルトの直径は,19. 1㎜~25.4㎜,長さは2m~6m程度であり,施工する地山 あり,軸はネジ溝を有している。また,表面には,亜鉛メッキ,飽和ポリエステルによる塗装が施されている。HDボルトの直径は,19. 1㎜~25.4㎜,長さは2m~6m程度であり,施工する地山の斜面の状態により,選択される。 5 球座ナット(D19,D22,D25)貫通孔が設けられている一側面が球形状に形成されたナットである。 6 キャップナット(KRS-D19,KRS-D22,KRS-D25)貫通孔の設けられている反対方向の一側面にキャップ状の凸部が形成されたナットである。
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