令和7年3月10日判決言渡 令和6年(行ケ)第10088号審決取消請求事件 口頭弁論終結日令和7年1月15日判決 原告 X 同訴訟代理人弁理士小川清 被告特許庁長官 同指定代理人浦崎直之 同大島勉 同阿曾裕樹 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は、原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 特許庁が不服2023-7306号事件について令和6年8月19日にした審決を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 ⑴ 原告は、令和3年6月12日、以下の構成からなり、後記⑶のとおり補正後の指定役務を第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授、セミナーの企画・運営又は開催、電子出版物の提供、書籍の制作、教育・文化・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。)」とする商標(以下、その出願を「本願」と、その商標を「本願商標」という。)について、商標登録出願をした(商願2021-73076号、甲1)。 (本願商標)触らない施術 【標準文字】 ⑵ 原告は、令和4年3月30日付けの拒絶理由通知書(甲2)を受け、同年5月18日、意見書(甲3)を提出したが、令和5年1月25日付け拒絶査定(甲4)を受け、同年5月5日、拒絶査定不服審判請求をした(不服2023-7306号、甲5)。 ⑶ 令和6年4月25日付けで審尋がされたところ、原告は、同年6月18日付け意見書を提出し、同日付けで指定役務を補正した。 )を受け、同年5月5日、拒絶査定不服審判請求をした(不服2023-7306号、甲5)。 ⑶ 令和6年4月25日付けで審尋がされたところ、原告は、同年6月18日付け意見書を提出し、同日付けで指定役務を第41類「技芸・スポーツ又は 知識の教授、セミナーの企画・運営又は開催、電子出版物の提供、書籍の制作、教育・文化・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く 。)」と補正する手続補正書(乙2)を提出したが、特許庁は、同年8月19日、「本件審判の請求は、成り立たない。請求の趣旨中、『審判費用は特許庁の負担とする』との請求は、却下する。」とする審決(以下「本件審決」 という。)をし、その謄本は、同月30日に原告に送達された。 ⑷ 原告は、令和6年9月27日、本件審決の取消しを求めて、本件訴えを提起した。 2 本件審決の理由の要旨本件審決の理由は、要するに、本願商標をその指定役務に使用したときには、 これに接する取引者、需要者は、「身体に触らないで行う施術を内容とする役務」であること、すなわち、役務の質(内容)を普通に用いられる方法で表示したものと認識するというのが相当であり、商標法3条1項3号に該当する、というものである。 3 原告の主張する本件審決の取消事由 本願商標が商標法3条1項3号に該当するとした判断の誤り 第3 当事者の主張取消事由(本願商標が商標法3条1項3号に該当するとした判断の誤り)についての両当事者の主張は以下のとおりである。 〔原告の主張〕 1 本件審決は、本願商標は、「取引者、需要者が、役務の質を表示していると認 識する」から登録できないと判断したが、法文は、「その役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章であると、取引者、需要者が認識する標章」は、 は、「取引者、需要者が、役務の質を表示していると認 識する」から登録できないと判断したが、法文は、「その役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章であると、取引者、需要者が認識する標章」は、登録を受けることができない、と規定されているはずであり、本件審決の判断手法は誤りである。 「本願商標を、その指定役務に使用したときには、」として、「商標を、役務 に使用したとき」を問題にしているが、法文には、「役務の質を、普通に用いられる方法で表示している標章」とあり、法文は「標章」が質を表示しているか否かを問題にしており、「商標」を問題にしているのではなく、「標識(英語でいうマーク)」を問題としている。すなわち、「標章」が役務の質を表示しているか否かが問題であり、本件審決が「本願商標を、その指定役務に使用したと きには」として本願「商標」のことを問題にしているのは、誤りである。 また、本件審決は「本願商標を、その指定役務に使用したときには、」として「役務に使用したとき」を問題にしているが、法文には、「その役務の提供の場所、質、・・・を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」とあり、願書記載の「標章」が、指定役務の質を「表示しているか否か」を問題に すべきであり、「使用したとき」を問題にして判断しているのは誤りである。 2 上記以外にも、本件審決には下記のような誤りが含まれている。 ⑴ 本件審決は「『身体に触らないで行なう施術を内容とする役務』であること」として、「内容とする役務」とするが、法文には、「その役務の質」と書いてあり、法文の「質」という言葉を「内容」という言葉に置き換えて判断して いる。 しかし「質」という言葉と「内容」という言葉とは、意味が同じではなく、同じであるとするなら、法 書いてあり、法文の「質」という言葉を「内容」という言葉に置き換えて判断して いる。 しかし「質」という言葉と「内容」という言葉とは、意味が同じではなく、同じであるとするなら、法文には「質」という理解しにくい言葉ではなく、「その役務の内容」を普通に用いられる方法で表示する標章は、登録を受けることができない、と書かれているはずである。「内容」という言葉の意味を辞書で調べても、「質」と解説している辞書は見当たらない。 また本件審決は「役務の質(内容)」という表現も使用しており、「質」の言葉の次に(内容)と書いてあるが、どうしてそのような表現がしてあるのか説明がない。推定するところ、「質」という言葉は、「内容」という言葉に含まれると判断したのではないかと思われるが、「質」の言葉が「内容」に含まれると解釈するのは誤りである。「質」が「内容」に含まれるのであれば、 法文に書いてある「提供の場所、提供の用に供する物、効能、用途、数量、態様、価格、提供の方法、提供の時期」も「内容」に含まれる。そうであるなら法文は、こうした多数の言葉を羅列する代わりに、「『役務の内容を普通に用いられる方法で表示する標章』のみからなる商標」は、商標登録を受けることができない、と簡潔な文章で規定できたはずであるが、そのようには なっていない。どうしてそのような簡潔な文章が採用されていないのか。それは、「内容」という言葉は極めて広い意味を持つ言葉であり、法文に書かれている上記の言葉以外にも、例えば「提供者、提供を受ける者」といった言葉も「内容」という言葉に含まれる。法文は、そうした多数の言葉の中の「提供の場所、提供の用に供する物、効能、用途、数量、態様、価格、提供の方 法、提供の時期」の何れかを普通に用いられる方法で表示する標章 」という言葉に含まれる。法文は、そうした多数の言葉の中の「提供の場所、提供の用に供する物、効能、用途、数量、態様、価格、提供の方 法、提供の時期」の何れかを普通に用いられる方法で表示する標章のみを、登録しないと規定している。 以上のとおり、「内容」に含まれる言葉の中の「質」という言葉の意味をどのように解釈するかが問題である。本件審決は、その「質」という言葉の意味、解釈を説明することなく、「質(内容)」という意味不明の表現を使用し て誤魔化しており、誤りである。 ⑵ 本件審決は、法文に使用されている「役務の質」という言葉の意味、解釈について説明することなく、「本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」、「取引者、需要者は、・・・役務の質(内容)を普通に用いられる方法で表示したものと認識するのが相当である。」とする。しかし、「取引者、需要者」は「役務の質」という言葉の意味をどのように解釈した上で、「役務 の質」を表示していると認識するのか不明である。「役務の質」を表示していると認識すると書くのであれば、「役務の質」という言葉の意味を、取引者、需要者はどのように解釈した上でそのように認識するかを記載すべきであるが、本件審決は何も説明していない。「役務の質」という言葉は、解釈が難しい言葉である。 ⑶ 本願商標の指定役務は、類似群コードが異なる技芸・スポーツ又は知識の教授(41A01)、セミナーの企画・運営又は開催(41A03)、電子出版物の提供(41C02)、書籍の制作(41D01)、教育・文化・スポーツ用ビデオの制作(41E05)との異なる役務が5個も指定してあるのに、本件審決は、各役務の質がどのようなものであるかを説明することなく、一 括して「身体に触らないで行なう施術を内容とする役務 ツ用ビデオの制作(41E05)との異なる役務が5個も指定してあるのに、本件審決は、各役務の質がどのようなものであるかを説明することなく、一 括して「身体に触らないで行なう施術を内容とする役務」であるとして処理した。しかし、類似群コードの異なる役務は互いに非類似であると特許庁は判断するのであるから、非類似である5個の「役務の質」が同一であるとは考えられず、各役務の「質」は、異なっている。従って、「役務の質」を表示しているか否かは、類似群コードの異なる役務ごとに、個別に判断すべきで ある。 したがって、本願標章「触らない施術」が「指定役務の質」を普通に用いられる方法で表示する標章に該当すると判断する場合には、各役務別に、その理由を記載すべきである。 そして、その場合、「役務の質」における「役務」という言葉の意味を正確 に把握して説明することが必要であり、「役務の質」の「役務」とは、特許庁 総務部総務課制度審議室編集の「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説(第22版)」には、「他人のために行う労務又は便益であって、独立して商取引の目的たり得るべきものをいう。」と解説されており、この中の「労務」とは「報酬を受ける目的で体力(や知力)によってする労働勤務」(goo辞書)であり、「便益」とは「便利で、利益があるようにすること。便利。」(日本国 語大辞典)の意味である。 すなわち、「役務」とは、「報酬を受ける目的で体力(や知力)によってする労働勤務又は便益」を意味する言葉である。 したがって、例えば、役務「技芸・スポーツ又は知識の教授」とは、「報酬を受ける目的で体力や知力によって技芸・スポーツ又は知識を教授するとい う労働勤務」を意味する。こうした点をしっかり認識して各役務の内容を記載すべきであるところ、 又は知識の教授」とは、「報酬を受ける目的で体力や知力によって技芸・スポーツ又は知識を教授するとい う労働勤務」を意味する。こうした点をしっかり認識して各役務の内容を記載すべきであるところ、本件審決にはこうした記載がされておらず、審決の体をなしていない。 〔被告の主張〕 1 本願商標が商標法3条1項3号に該当すること ⑴ 商標法3条1項3号について商標法3条1項3号に掲げる商標が商標登録の要件を欠くと規定されているのは、このような商標は、指定役務との関係で、その役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途その他の特性を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものである から、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他役務の識別力を欠くものであることによるものと解される(最高裁昭和53年(行ツ)第129号同54年4月10日判決・集民126号507頁参照)。そうすると、出願に係る商標が、その指定役務について役務の質を普通に用いられる方法で表示す る標章のみからなる商標であるというためには、審決時点において、当該商 標が当該役務との関係で役務の質を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であり、当該商標の取引者、需要者によって当該役務に使用された場合に、将来を含め、役務の質を表示したものと一般に認識されるものであれば足りると解される。そして、当該商標の取引者、需要者によって当該役務に使用された場合に役務の質を表示したものと一般に認識されるかどう かは、当該商標の構成やその指定役務に関する取引の実情を考慮して判断すべきである(知財高裁令和3年(行ケ)第10113号同4年1月25日判 た場合に役務の質を表示したものと一般に認識されるかどう かは、当該商標の構成やその指定役務に関する取引の実情を考慮して判断すべきである(知財高裁令和3年(行ケ)第10113号同4年1月25日判決、同令和5年(行ケ)第10051号同5年10月25日判決参照)。 ⑵ 本願商標について本願商標は、「触らない施術」の文字を普通に用いられる方法で横書きして なるところ、その構成文字は、「接触する」(乙3)の意味を有する「触る」の語の否定形である「触らない」の文字と、「手術・催眠術などを行うこと」(乙4)の意味を有する「施術」の文字よりなり、いずれも意味の理解が容易な平易な語であるから、全体として「触らないで行う施術」程度の意味合いを容易に認識、理解できる。 ⑶ 指定役務に関する取引の実情について整骨や整体、気功等の民間療法分野などにおいては、証拠(乙5ないし15)によれば、「触らない施術」、「患部をほとんど触らない施術」、「ほとんど身体に触れない施術」などと称する、患部や患者に触らないで症状を回復させることをうたう施術が広く執り行われている実情がある。 また、本願商標の指定役務と関連して、セミナーや書籍、ビデオなどの教授内容を表示することは、取引上必要なことであり、一般に広く行われているところ、証拠(乙16ないし21)によれば、現に、上記のような患部や患者に触らないで行う施術の教授を内容とするセミナーや電子書籍及びDVDなどが提供又は販売されている実情がある。 ⑷ 検討 以上によれば、本願商標「触らない施術」は、その構成文字の語義や、指定役務に係る取引の実情を踏まえると、「(患部や身体に)触らないで行う施術」程度の意味合いを容易に想起させるものであり、当該表示は、その指定役務との関係にお らない施術」は、その構成文字の語義や、指定役務に係る取引の実情を踏まえると、「(患部や身体に)触らないで行う施術」程度の意味合いを容易に想起させるものであり、当該表示は、その指定役務との関係において、知識の教授やセミナー、書籍、ビデオなどの内容を表示記述するものとして、同種役務を提供する同業者における取引に際し必 要適切な表示であり、その指定役務に係る取引者、需要者をして、当該役務に使用された場合、役務の質(内容)を表示したものと一般に認識されるものである。 したがって、本願商標は、その指定役務「技芸・スポーツ又は知識の教授、セミナーの企画・運営又は開催、電子出版物の提供、書籍の制作、教育・文 化・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。)」について、役務の質(内容)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であり、商標法3条1項3号に該当する。 2 原告の主張に対する反論⑴ 原告は、本件審決は「取引者、需要者が、役務の質を表示していると認識 する」から、登録できないと判断しており、「願書記載の標章が、指定役務の質を、普通に用いられる方法で表示しているか否か」で判断すべきであるのに、それとは違う条件で判断している旨を主張する。 しかしながら、商標法3条1項3号は「その役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」を商標登録できない商標として掲げ ているところ、出願商標が何を表示するものであるかを客観的に把握する上では、取引者、需要者の認識を基準として判断せざるを得ないことは当然であり、そのような解釈は、商標法1条の趣旨にも沿うものといえる(令和6年(行ケ)第10003号同6年6月3日知財高裁判決参照)。 そして、本願商標「触らない施術」は、上記1⑷のとおり、 ことは当然であり、そのような解釈は、商標法1条の趣旨にも沿うものといえる(令和6年(行ケ)第10003号同6年6月3日知財高裁判決参照)。 そして、本願商標「触らない施術」は、上記1⑷のとおり、その構成文字 の語義や、指定役務に係る取引の実情を踏まえると、「(患部や身体に)触ら ないで行う施術」程度の意味合いを容易に想起させるものであるから、その指定役務に係る取引者、需要者をして、当該役務に使用された場合、役務の質(内容)を表示したものと一般に認識されるものである。 ⑵ 原告は、本件審決が「商標を」、「役務に使用したとき」を問題とし、また、「内容とする役務」や「役務の質(内容)」と記載することは誤りであること、 「役務の質」の解釈を説明していないこと、役務ごとに個別に判断していないことなどを指摘し、本件審決は取り消されるべきである旨を主張する。 原告の主張の趣旨や合理的な根拠は必ずしも明らかではないが、本願を拒絶すべき理由をあえて補足しつつ詳述すれば、本願商標「触らない施術」は、上記のとおり、「(患部や身体に)触らないで行う施術」程度の意味合いを容 易に想起させるものであるから、その指定役務に係る取引者、需要者をして、当該役務に使用された場合、役務の質(知識の教授やセミナー、書籍、ビデオなどの内容)を表示したものと一般に認識されるものである。したがって、本願商標は、その指定役務のすべてについて、役務の質(内容)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であり、商標法3条1項3号 に該当する。 そのため、それと同旨を述べる本件審決の記載内容は、商標法3条1項3号の規定や過去の判決等で示された同項同号の判断枠組みに照らしても、何ら不足や瑕疵はない。 第4 当裁判所の判断 1 取消事 ため、それと同旨を述べる本件審決の記載内容は、商標法3条1項3号の規定や過去の判決等で示された同項同号の判断枠組みに照らしても、何ら不足や瑕疵はない。 第4 当裁判所の判断 1 取消事由(本願商標が商標法3条1項3号に該当するとした判断の誤り)について⑴ 判断基準商標法3条1項3号に掲げる商標が商標登録の要件を欠くと規定されているのは、このような商標は、指定商品との関係で、その商品の産地、販売地、 品質、原材料、効能、用途、形状その他の特性を表示記述する標章であり、 一般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品識別力を欠き、取引に際し何人もその使用を欲するものであることから、特定人によるその独占使用を認めるのは適当でないとされる場合があることによる。 そうすると、出願に係る商標が、その指定役務について役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるというためには、審 決がされた時点において、当該商標が当該役務との関係で役務の質を表示記述するものであり、当該商標の取引者、需要者によって当該役務に使用された場合に、将来を含め、役務の質を表示したものと一般に認識されるものであれば足りると解される。そして、当該商標の取引者、需要者によって当該役務に使用された場合に役務の質を表示したものと一般に認識されるかどう かは、当該商標の構成やその指定役務に関する取引の実情を考慮して判断すべきである。 ⑵ 本願商標の構成ア上記第2の1⑴のとおり、本願商標は、「触らない施術」の文字を標準文字で表してなるものである。 本願商標の「触らない施術」の語は、「触らない」の語と「施術」の語を組み合わせた語であるといえるが、それ自体が辞書等に掲載されている語ではない。 イ本願商 字で表してなるものである。 本願商標の「触らない施術」の語は、「触らない」の語と「施術」の語を組み合わせた語であるといえるが、それ自体が辞書等に掲載されている語ではない。 イ本願商標のうち「触らない」の語は、「触る」の語の否定形であるところ、「触る」とは、「手を物にくっつけて、感触を確かめる。接触する。ふれる。」 (広辞苑第7版。乙3)などの意味を有する語である。 「施術」の語は、「手術・催眠術などを行うこと。」(広辞苑第7版。乙4)の意味を有する。 これらは、いずれも容易に意味が理解できる平易な語であるから、「触らない施術」は、全体として「触らないで行う施術」程度の意味合いを容易 に認識、理解できる。 ⑶ 本願商標の指定役務に関する取引の実情本願商標は指定役務を第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授、セミナーの企画・運営又は開催、電子出版物の提供、書籍の制作、教育・文化・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く 。)」とするものであるところ、以下に掲記した証拠及び弁論の全趣旨によれば、本願商標 の指定役務に関連する取引の実情として、次の事実が認められる。 ア整骨や整体、気功等の民間療法の分野などにおいては、以下のとおり、「触らない施術」、「患部をほとんど触らない施術」、「触れない施術」などと称する施術が広く執り行われている実情がある。 (ア) 「Ameba」のウェブサイトにおいて、「触らない施術『エルンテ整 体院』」(1枚目)の見出しの記事情報に、「『触らない施術』っていうのは、身体を全く触らないというわけではなくて、わたしが不調を感じている箇所にはほとんど触れないっていう意味です。」(4枚目)の記載がある(乙5)。 (イ) 「常若整骨院」のウェブ 施術』っていうのは、身体を全く触らないというわけではなくて、わたしが不調を感じている箇所にはほとんど触れないっていう意味です。」(4枚目)の記載がある(乙5)。 (イ) 「常若整骨院」のウェブサイトにおいて、「触らない施術?どんな人に 合う?常若整骨院での施術について」(1枚目)の見出しの下、「その言葉通り、当院での施術はお身体にほとんど触りません。身体の動きを確認(可動域検査)する時だけは腕や脚などに触れますが、施術に入ると院長はベッドの足元にたたずんでいるだけ。」(1枚目)の記載がある(乙6)。 (ウ) 「癒し処癒間」のウェブサイトにおいて、「光線浴」(3枚目)の見出しの下、「光線浴では特殊な機械を用いて、人工太陽光線を体の気になる部分に照射します。・・・光線浴は『触らない施術』なので、触れられたくない方や妊婦さんにもおすすめです。」(3枚目)の記載がある(乙7)。 (エ) 「だいぼう整体院」のウェブサイトにおいて、「肘の痛み 『さいたま 市・上尾市の整体|腰痛・首肩こり・頭痛ならだいぼう整体院』」(1枚 目)の見出しの記事情報に、「触ってみると、患部に熱感・圧痛がありました。このような場合、当院の整体では患部をほとんど触らない施術を行います。」(1枚目)の記載がある(乙8)。 (オ) 「エキテン」のウェブサイトにおいて、「市原中央整骨院」(1枚目)の見出しの下、「スポーツで痛めた腰も、日常生活で痛くなった首も、老化 と言われてあきらめてた膝も!そして、妊婦さんの腰痛なども触らない施術で対応しております。」(1枚目)の記載がある(乙9)。 (カ) 「しきさい整骨院」のウェブサイトにおいて、「Q整体を受けてもお腹の赤ちゃんは大丈夫なのでしょうか?」(2枚目)の見出しの下、「母体を触ら しております。」(1枚目)の記載がある(乙9)。 (カ) 「しきさい整骨院」のウェブサイトにおいて、「Q整体を受けてもお腹の赤ちゃんは大丈夫なのでしょうか?」(2枚目)の見出しの下、「母体を触らない施術を行いますので安心して来られてください。」(2枚目) の記載がある(乙10)。 (キ) 「光整骨Lカイロプラクティック」のウェブサイトにおいて、「非接触(ノータッチ)施術」(1枚目)の見出しの下、「触れない施術の利点は、新型コロナウイルス等の感染リスクがかなり低く抑えられる点と、ひどい痛み・皮膚疾患・傷等で触れられたくない場合、どんな姿勢でも施術 できる点です。」(1枚目)の記載がある(乙11)。 (ク) 「B.S.TIMES」のウェブサイトにおいて、「アール・アイ整体」(1枚目)の見出しの記事情報に、「機械や器具は一切使用せず、ほとんど身体に触れない施術は、無痛なので安心安全。」(1枚目)の記載がある(乙12)。 (ケ) 「鍼灸サロンよつ葉治療院」のウェブサイトにおいて、「和のエネルギーヒーリング」(1枚目)の見出しの下、「気功のような、ほとんどお身体に触れない施術です。」(1枚目)の記載がある(乙13)。 (コ) 「整体院レガート」のウェブサイトにおいて、「施術の流れ」(3枚目)の見出しの下、「④施術操体法という体の痛い部分には触れない施術を メインに行っていきます。」(4枚目)の記載がある(乙14)。 (サ) 「マックス治療院」のウェブサイトにおいて、「選ばれる理由」(1枚目)の見出しの下、「痛いところに触れない施術ですので、安心・安全です。」(1枚目)の記載がある(乙15)。 イまた、以下のとおり、上記アのような患部や患者に触らないで行う施術の教授を内容とするセミナーや、 下、「痛いところに触れない施術ですので、安心・安全です。」(1枚目)の記載がある(乙15)。 イまた、以下のとおり、上記アのような患部や患者に触らないで行う施術の教授を内容とするセミナーや、電子書籍、DVDなどが提供又は販売さ れている実情がある。 (ア) 「SkinDriveSystem」のウェブサイトにおいて、「スキンドライブ基礎セミナー」(1枚目)の見出しの下、「また、本質を理解することで、怪しいとさえ思っていた『触らない施術』ができるようになります。」(1枚目)の記載がある(乙16)。 (イ) 「Amazon.co.jp」のウェブサイトにおいて、「スキンドライブシステム Kindle版」(1枚目)の見出しの下、「触らない施術、遠隔治療、気功などは、未だ完全には証明されていませんが、『皮膚の機能』にフォーカスすることで、科学的に解明される日が近づいてきました。」(1枚目)の記載がある(乙17)。 (ウ) 「Yahoo!フリマ」のウェブサイトにおいて、「ソーラヒーリングセミナーアチューメント A DVD 整体」(1枚目)の見出しの下、「触らない施術を可能にする検査法から関節を攻略する驚愕の四肢矯正術まで全ての考えを根底から覆す衝撃の連続!」(2枚目)の記載がある(乙18)。 (エ) 「手技オンラインドットコム」のウェブサイトにおいて、「ハンドヒーリングセミナーDVD ~手技療法業界40年の治療家が伝授する言霊とエネルギー施術~」の見出しの下、「ハンドヒーリングと言われる触らない施術へ、元々鍼を使って施術されていたB 先生がどうやってシフトされていったのか、また、健康という大きな枠を治療家がどう捉え向き 合って行くべきなのかを、包み隠さず公開して頂きました。」の記載があ を使って施術されていたB 先生がどうやってシフトされていったのか、また、健康という大きな枠を治療家がどう捉え向き 合って行くべきなのかを、包み隠さず公開して頂きました。」の記載があ る(乙19)。 (オ) 「からだ再生整体 DaBinji」のウェブサイトにおいて、「DRTセミナーのご案内」(1枚目)の見出しの下、「③マスター(上級)セミナー」の項に、「触れない施術“DRTエネルギー”、DRTの秘伝など、マスター以上でないと知り得ないDRTの本質を習得して頂きま す。」(2枚目)の記載がある(乙20)。 (カ) 「こくちーずプロ」のウェブサイトにおいて、「【ベーシック】首痛、ストレートネックを最短一回で完治!RMT施術セミナー」(1枚目)の見出しの下、「【理論編】患部をさわらないで完治させる施術セミナー。」(1枚目)の記載がある(乙21)。 ⑷ 検討上記⑶アによれば、整骨や整体、気功等の民間療法の分野などにおいては、「触らない施術」(上記⑶ア(ア)ないし(カ))、「触れない施術」(上記⑶ア(キ)ないし(サ))などとして、患部や患者に触らないで症状を回復させることをうたう施術が広く執り行われている実情がある。また、上記⑶イによれば、上記⑵ アのような患部や患者に触らないで行う施術の教授を内容とするセミナー(上記⑶イ(ア)、(オ)及び(カ))、電子書籍(上記⑶イ(イ))及びDVD(上記⑶イ(ウ)及び(エ))などが提供ないし販売されており、本願商標の指定役務と関連して、セミナーや書籍、ビデオなどの教授内容を表示することは取引上必要なことであり、一般に広く行われていることが認められる。 以上によれば、本願商標「触らない施術」は、その構成文字の語義や、指定役務に係る取引の実情を踏まえると、 容を表示することは取引上必要なことであり、一般に広く行われていることが認められる。 以上によれば、本願商標「触らない施術」は、その構成文字の語義や、指定役務に係る取引の実情を踏まえると、「(患部や身体に)触らないで行う施術」程度の意味合いを容易に想起させるものであり、当該表示は、その指定役務との関係において、知識の教授やセミナー、書籍、ビデオなどの内容を表示記述するものとして、同種役務を提供する同業者における取引に際し必 要適切な表示であり、その指定役務に係る取引者、需要者をして、当該役務 に使用された場合、役務の質(内容)を表示したものと一般に認識されるものである。 したがって、本願商標を、その指定役務である「技芸・スポーツ又は知識の教授、セミナーの企画・運営又は開催、電子出版物の提供、書籍の制作、教育・文化・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除 く。)」について使用をしても、当該指定役務に係る需要者をして、患者や患部に触らないで行う施術との役務の内容を表したものと認識させるにとどまり、役務の出所を表示するものと認識させることはないというべきであるから、本願商標は、自他役務の識別標識として機能し得ないものである。そうすると、本願商標は、役務の質(内容)を普通に用いられる方法で表示する 標章のみからなる商標であり、商標法3条1項3号に該当する。そうすると、本願商標の同号該当性について、本件審決の判断に誤りはないというべきである。 ⑸ 原告の主張に対する判断ア原告は、上記第3〔原告の主張〕1のとおり、本件審決は、「取引者、需 要者が、役務の質を表示していると認識する」から、登録できないと判断しており、「願書記載の標章が、指定役務の質を、普通に用いられる方法で表示し 告の主張〕1のとおり、本件審決は、「取引者、需 要者が、役務の質を表示していると認識する」から、登録できないと判断しており、「願書記載の標章が、指定役務の質を、普通に用いられる方法で表示しているか否か」で判断すべきであるのに、それとは違う条件で判断している旨などを主張する。 しかし、商標法における商標及び標章の定義は商標法2条1項に定める とおりであるところ、上記⑷のとおり、本願商標を、その指定役務について使用をしても、当該指定役務に係る需要者をして、患者や患部に触らないで行う施術との役務の内容を表したものと認識させるにとどまり、自他役務の識別標識として機能し得ないものであるから、本願商標は役務の質(内容)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標である と認められ、商標法3条1項3号に該当する。この点についての本件審決 の認定及び判断に誤りはない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 イ原告は、上記第3〔原告の主張〕2⑴ないし⑶のとおり、本件審決が「商標を」、「役務に使用したとき」を問題とし、また、「内容とする役務」や「役務の質(内容)」と記載することは誤りであること、「役務の質」の解釈を 説明していないこと、役務ごとに個別に判断していないことなどを指摘し、本件審決は取り消されるべきであると主張する。 広辞苑第7版の「質」の項には、「②内容。中味。価値。」との記載があるのであり(弁論の全趣旨)、「質」は「内容」の意味を有すると認められるから、「役務の質」を「役務の内容」と解することが相当性を欠くとは認 められない。 また、上記⑷のとおり、本願商標の指定役務に係る上記⑶ア及びイの取引の実情を踏まえると、本願の指定役務である「技芸・スポーツ又は知識の教授、セミ することが相当性を欠くとは認 められない。 また、上記⑷のとおり、本願商標の指定役務に係る上記⑶ア及びイの取引の実情を踏まえると、本願の指定役務である「技芸・スポーツ又は知識の教授、セミナーの企画・運営又は開催、電子出版物の提供、書籍の制作、教育・文化・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを 除く。)」について、当該指定役務に係る需要者をして、本願商標は、役務の出所を表示するものとは認められない。本件審決は、役務の「質」について「質(内容)」と記載し、「質」の語を「内容」と言い換えることによってその意味を説明したものと解されるから、本件審決が「役務の質」の定義を示さずに本願商標が「役務の質」を普通に用いられる方法で表示す る標章に該当すると判断したものとはいえない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 ウその他、原告は種々主張するが、上記⑴ないし⑷で説示した判断に反するところは、上記説示の理由により、いずれも採用することができない。 2 結論 以上によれば、原告の取消事由の主張は理由がなく、本件審決にこれを取り 消すべき違法はない。 よって、原告の請求を棄却することとし、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官中平 健 裁判官今井弘晃 裁判官 水野正則 井弘晃 裁判官 水野正則
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