主文 被告人を懲役8年に処する。 未決勾留日数中320日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実) 第1 被告人は、氏名不詳者らと共謀の上 1 市役所職員等になりすましてキャッシュカードをだまし取ろうと考え、令和6年8月1日、氏名不詳者が、和歌山市(住所省略)A方に電話をかけ、同人(当時82歳)に対し、市役所職員を名のり、銀行口座への振り込みによって医療保険の払戻しを受けることができ、その手続のため、次にB銀行の係員から電話がある旨 うそを言い、その頃、氏名不詳者が、A方に電話をかけ、同人に対し、B銀行の銀行員を名のり、Aが持っている古いキャッシュカードは使えず、新しいキャッシュカードを作る必要があるため、同人方を訪れる担当者に古いキャッシュカードを渡してほしい旨うそを言い、さらに、同日午後1時頃、A方を訪れた被告人が、同所において、Aに対し、B銀行の銀行員を装ってキャッシュカードを交付するよう要 求し、同人をして、被告人がB銀行の銀行員であり、キャッシュカードの更新手続等のため、被告人にキャッシュカードを交付する必要があるものと誤信させ、よって、その頃、同所において、Aから同人名義のキャッシュカード1枚の交付を受け、もって人を欺いて財物を交付させ 2 前記1の犯行によりだまし取ったA名義のキャッシュカードを使用して現金を 窃取しようと考え、別表1記載のとおり(別表1省略)、同日午後1時10分頃から同月2日午前8時12分頃までの間、9回にわたり、同市(住所省略)a 共同出張所ほか3か所において、各所に設置された現金自動預払機に前記キャッシュカード1枚を挿入して同機を作動させ、株式会社C銀行金融犯罪対策部長ほか1名管理の現金合計350万2000円を引き出して窃取 出張所ほか3か所において、各所に設置された現金自動預払機に前記キャッシュカード1枚を挿入して同機を作動させ、株式会社C銀行金融犯罪対策部長ほか1名管理の現金合計350万2000円を引き出して窃取した。 第2 被告人は、氏名不詳者らと共謀の上 1 市役所職員等になりすましてキャッシュカードをだまし取ろうと考え、令和6年8月7日、氏名不詳者らが、複数回にわたり、栃木県佐野市(住所省略)D方に電話をかけ、同人(当時89歳)に対し、市役所職員等を名のり、医療費の払戻しを受けるためにはこれからD方を訪問する郵便局員にキャッシュカードを渡す必要がある旨うそを言い、さらに、同日、被告人が、D方において、同人に対し、郵便 局員になりすまし、Dを、電話の相手が市役所職員等であり、被告人が郵便局員としてキャッシュカードを受け取るものと誤信させ、よって、その頃、同所において、Dから同人名義のキャッシュカード1枚の交付を受け、もって人を欺いて財物を交付させ 2 前記1の犯行によりだまし取ったD名義のキャッシュカードを使用して現金を 窃取しようと考え、別表2記載のとおり(別表2省略)、同日午後2時46分頃から同月8日午前0時7分頃までの間、6回にわたり、同市(住所省略)b店ほか1か所において、被告人が、各所に設置された現金自動預払機に、D名義のキャッシュカード1枚を挿入して各機を作動させ、各機から、株式会社C銀行金融犯罪対策部長管理の現金合計100万円を引き出して窃取した。 第3 被告人は、氏名不詳者らと共謀の上 1 市役所職員等になりすましてキャッシュカードをだまし取ろうと考え、令和6年8月20日、氏名不詳者らが、複数回にわたり、埼玉県行田市(住所省略)E方に電話をかけ、同人(当時73歳)に対し、市役所職員等を名のり 員等になりすましてキャッシュカードをだまし取ろうと考え、令和6年8月20日、氏名不詳者らが、複数回にわたり、埼玉県行田市(住所省略)E方に電話をかけ、同人(当時73歳)に対し、市役所職員等を名のり、介護保険の還付金を受け取るためにはこれからE方を訪問する銀行職員にキャッシュカードを渡 す必要がある旨うそを言い、さらに、同日、被告人が、E方において、同人に対し、銀行職員になりすまし、Eを、電話の相手が市役所職員等であり、被告人が銀行職員としてキャッシュカードを受け取るものと誤信させ、よって、その頃、同所において、Eから同人名義のキャッシュカード1枚の交付を受け、もって人を欺いて財物を交付させ 2 前記1の犯行によりだまし取ったE名義のキャッシュカードを使用して現金を 窃取しようと考え、別表3記載のとおり(別表3省略)、同日午後4時57分頃から同月22日午前0時4分頃までの間、9回にわたり、同市(住所省略)c共同出張所ほか2か所において、被告人が、各所に設置された現金自動預払機に、E名義のキャッシュカード1枚を挿入して各機を作動させ、各機から、株式会社C銀行金融犯罪対策部長管理の現金合計150万円を引き出して窃取した。 第4 被告人は、F、当時少年のG及び氏名不詳者らと共謀の上 1 営業中の貴金属販売専門店に押し入って金品を強取する目的で、令和6年8月29日午後5時17分頃、千葉県船橋市(住所省略)d駐車場において、包丁2本を準備した上、自動車に乗り込み、同所から同市(住所省略)所在の貴金属販売専門店Hに向けて出発し、同日午後5時30分頃、同店前の路上等において、同店舗 内の様子を確認し、施錠された出入口ドアを開けようとするなどして同店舗内への侵入及び強盗の機会をうかがい、もって強盗の予備をし 2 営 、同日午後5時30分頃、同店前の路上等において、同店舗 内の様子を確認し、施錠された出入口ドアを開けようとするなどして同店舗内への侵入及び強盗の機会をうかがい、もって強盗の予備をし 2 営業中の質屋に押し入って金品を強取する目的で、同日午後6時頃、前記貴金属販売専門店付近路上において、前記自動車に乗り込み、同所から同県八千代市(住所省略)所在の質屋Iに向けて出発し、同日午後6時38分頃、同社代表取締 役Jが看守する同店舗内に、その出入口ドアから侵入し、その頃から同日午後6時48分頃までの間に、同所において、前記1で準備した刃体の長さ約16センチメートルの包丁2本を隠して携帯しながら同店舗内を徘徊するとともに、同店舗内に設置されたインターフォンを押して同店従業員を呼び出すなどして強盗の機会をうかがい、もって強盗の予備をするとともに業務その他正当な理由による場合でない のに刃体の長さが6センチメートルを超える刃物を携帯し、人の看守する建造物に侵入した。 第5 被告人は、金品を強取しようと考え、当時少年のK、L及び氏名不詳者らと共謀の上、令和6年8月31日午後0時34分頃、被告人及びKが、M株式会社N店長Oが看守する神奈川県厚木市(住所省略)eビル1階所在の同店に出入口自動 ドアから侵入し、その頃、同所において、同社(代表取締役P)所有の商品棚のガ ラス戸8枚をハンマーでたたき割った上、同店店員Q(当時54歳)の面前で、同社所有のショーケースを同ハンマーでたたき割り(損害見積額合計39万4600円)、同人に対し、同ハンマーを振り上げて同人を脅迫し、もって他人の物を損壊するとともに、Qの反抗を抑圧して、O管理の腕時計等130点(販売価格合計8425万7500円)を強取し、同日午後0時36分頃、Kが、同市(住所 ハンマーを振り上げて同人を脅迫し、もって他人の物を損壊するとともに、Qの反抗を抑圧して、O管理の腕時計等130点(販売価格合計8425万7500円)を強取し、同日午後0時36分頃、Kが、同市(住所省略) f駐車場先歩道上及び同市(住所省略)gビル先歩道上において、逃走した被告人及びKを追い掛け、Kの前に立ちはだかったR(当時30歳)に対し、同ハンマーでその左側頭部を殴打し、さらに、その左腕にかみつく暴行を加え、これら一連の暴行により、同人に加療約2週間を要する頭部挫創、左上肢擦過傷の傷害を負わせた。 (証拠の標目) 省略(法令の適用) 省略(量刑の理由)1⑴ 本件は、被告人がいわゆる闇バイトに応募して、共犯者と共謀の上、特殊詐欺、窃盗3件(判示第1ないし第3)、強盗予備等2件(判示第4)及び強盗致 傷等1件(判示第5)をしたというものである。 いずれも氏名不詳者を含む犯罪グループで複数人が役割分担し、組織的に行われた計画性の高い犯行である。特殊詐欺、窃盗事件は、高齢者の財産を狙い、巧妙に暗証番号等を聞き出した上でキャッシュカードをだまし取る卑劣な犯行である上、多数回にわたって預金を引き出したものであり、被害額は3件で合計約600万円 と多額で結果は重大である。強盗予備等事件は、営業中で人のいる店舗を狙った犯行で、包丁を用意するなどした危険性は軽視できない。そして量刑の中心となる強盗致傷等事件は、道具等の用意や被害店舗の下見などの周到な準備に基づいて行い、被告人ら2名が営業中の被害店舗に入るや否や、ためらうことなくハンマーでショーケース等をたたき割り、狙いを定めた高額な商品を手際よく多数奪ったもので、 大胆で悪質である。立ちはだかった通行人にハンマーを振り上げて頭部を殴打した 行為は ことなくハンマーでショーケース等をたたき割り、狙いを定めた高額な商品を手際よく多数奪ったもので、 大胆で悪質である。立ちはだかった通行人にハンマーを振り上げて頭部を殴打した 行為は、被害者の身体に対する危険性の高いものであり、頭部に医療用ホチキス3針で止める措置まで要した傷害結果も到底軽いとはいえない。強盗の被害品は130点、被害額は約8425万円と多数かつ極めて高額であり、総じて結果は重大である。被害品は全て還付されたが、被告人らが通行人に逮捕されたためにすぎず、この点を大きく考慮することはできない。 ⑵ 被告人は、全ての犯行に実行役として関与し、強盗致傷等事件では被告人自身も多数の被害品を奪取しており、犯行において不可欠な役割を果たした責任は重いが、他方で、いずれの犯行でも指示役の犯行指示を受けて行動していたもので、犯罪グループとの関係では末端の立場にあった上、強盗致傷等事件では、被害店舗を下見して指示役とイヤホンで繋がりながら店員への脅迫やショーケースの損壊を 実行したKと比較すると被告人の行動は限定的で、通行人への暴行にも及んでいないから、この点は被告人の責任を相応に減じる事情といえる。 また、犯行の経緯については、被告人が強盗致傷等事件の当日未明に自動車内でKから出血を伴う暴行を顔面等に受け、群馬県内の当時の被告人方などにも連れ回され、食事も睡眠もとれないまま、逃げることが相当に困難な状況で犯罪グループ の指示に服従して強盗致傷等事件に加担したという事情が認められる。しかし、そのような事態に至ったのは、被告人が判示第1の犯行を経てSNSで探した闇バイトの違法性を明確に認識したのに、被害者のことを顧みずその後も特殊詐欺、窃盗の犯行を重ね、更なる報酬欲しさにその違法性を承知の上で闇バイトへの応募 は、被告人が判示第1の犯行を経てSNSで探した闇バイトの違法性を明確に認識したのに、被害者のことを顧みずその後も特殊詐欺、窃盗の犯行を重ね、更なる報酬欲しさにその違法性を承知の上で闇バイトへの応募を続け、予想外に強盗予備等事件に加担したのになお自ら闇バイトグループに接近した 結果でもあるといえる。しかも被告人は当時、傷病休暇中で給料減はあったが切迫した困窮状態にあったわけでもなく、その意味でも被告人の行動は誠に軽率かつ身勝手というほかない。そのような一連の経緯を勘案すると、上記の強盗致傷等事件に至った事情を酌むにも限界がある。 2 以上によれば、本件一連の犯行は、同種事案(強盗致傷、共犯、強盗の点: 既遂、犯罪類型:店舗ねらい、凶器等:あり、処断罪と同一又は同種の罪の件数: 1件、傷害の程度:2週間以内)の量刑傾向の中でやや重い部類に位置付けられるというべきである。 3 以上の犯情評価を踏まえ、被告人が本件各犯行をいずれも認め、自身のしたことを振り返り、法廷で謝罪の言葉を述べるなどして反省の態度を示していること、被告人を監督する旨の陳述書を提出した母の存在が更生の支えになるといえること、 前科がないことなど被告人に酌むべき事情をも考慮して、被告人に対しては主文の刑をもって臨むのが相当であると判断した。 (求刑懲役12年)令和7年12月22日横浜地方裁判所小田原支部刑事部 裁判長裁判官寺本真依子 裁判官内山慎子 裁判官柏木悠香 内山慎子 裁判官柏木悠香
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