平成17年1月31日判決言渡平成14年(ワ)第1299号書類等閲覧等請求事件 主文 1 被告は,原告に対し,被告事務所において,原告財務委員会又はその補助者である弁護士,公認会計士,公認会計士補及び税理士をして,別紙書類目録1及び2記載の各文書のうち,平成12年8月期以降に作成された各文書を閲覧及び謄写させよ。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,差戻前の第1審,第2審及び上告審並びに差戻後の第1審を通じてこれを4分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,被告事務所において,原告財務委員会又はその補助者である弁護士,公認会計士,公認会計士補及び税理士に,別紙書類目録1及び2記載の文書を閲覧,謄写させよ。 第2 事案の概要本件は,被告が経営する預託金会員制のゴルフ場である船橋カントリー倶楽部(以下「本件ゴルフ場」という。)の会員によって組織される原告が,被告の経理内容に不正の疑いがあるなどとして,被告に対し,両者間で締結された協約書に定められた経理内容の調査権に基づき,別紙書類目録1及び2記載の文書(以下「本件文書」という。)の閲覧及び謄写を求めた事案である。 1 争いのない事実等(1) 当事者ア原告は,本件ゴルフ場の特別会員,正会員及び平日会員(以下,これらを総称して「会員」という。)をもって組織された,会員相互の親睦とクラブライフの向上を期することを目的とする権利能力なき社団である。(甲1の1,弁論の全趣旨)イ被告は,本件ゴルフ場を経営している株式会社である。 (2) 本件協約書の定め原告と被告は,昭和47年10月ころ,下記の条項が記載された協約書(以下「本件協約書」という。)に調印した。(以下,本 は,本件ゴルフ場を経営している株式会社である。 (2) 本件協約書の定め原告と被告は,昭和47年10月ころ,下記の条項が記載された協約書(以下「本件協約書」という。)に調印した。(以下,本件協約書の第3条を「本件条項」という。)(甲1の2,20の1,2)記原告と被告とは,被告がその所有するゴルフ場の健全なる経営に,原告はクラブの明朗なる運営に,互譲の精神をもって双方の調和を計り,より一層の発展を期するため,次の条項を協約する。 第1条原告は会社定款第2条第1項及び第2項による被告の健全なる経営に協力する義務を負う。 第2条被告はその経営するゴルフ場において,原告が社会通念上快適なプレーをなすことに支障を来さしめざる義務を負う。 第3条原告は前第1条及び第2条の目的達成に必要な範囲内において,理事会の指示により財務委員会又はその補助者に限り被告の経理内容を調査することができる。 第4条年会費,グリーン・フィーその他の収入は一切被告の収入とし,被告はこれをもってゴルフ場施設の整備運営にあてるほか,原告運営の通常経費を負担する。 第5条下記の事項については,原被告双方の合意を必要とする。 1.会員数の増減2.施設の著しき増改築3.ゴルフ場の移転,売却及び閉鎖4.預託金証書の取扱第6条原告の代表権は会員総会の決議事項とする。 (3) 原告の協約書承認等原告は,昭和47年11月30日,会員総会において,本件協約書を承認した。(甲54,61)本件協約書の調印後,原告の規則について,本件協約書が会員を拘束する旨の条項(4条),本件協約書の履行に関する条項は理事会が決定する旨の条項(31条1号),被告の一 認した。(甲54,61)本件協約書の調印後,原告の規則について,本件協約書が会員を拘束する旨の条項(4条),本件協約書の履行に関する条項は理事会が決定する旨の条項(31条1号),被告の一方的事由によって預託金を包括的に返還する場合,会員は本件協約書第 5条に基づく理事会並びに会員総会の決議に従う旨の条項(10条)が追加されるなどの改正がされた。(甲1の1,弁論の全趣旨)(4) 原告会員による計算書類閲覧等請求原告の会員であったA外5名は,被告との間で,昭和57年8月23日,被告に対して商法282条2項に基づき計算書類の閲覧等を求めた千葉地方裁判所佐倉支部昭和57年(ワ)第38号計算書類閲覧等請求事件において,原被告間で締結された本件条項が有効であることを認める旨の和解をした。(甲23,24,65) 2 争点本件の争点は,①本件条項の法規範性の有無,②本件条項の解釈論(趣旨,内容),③原告の本件文書に関する閲覧・謄写請求権の有無,④訴えの利益喪失の有無,⑤権利濫用該当性の有無の5点である。 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点1(本件条項の法規範性)について(原告の主張)ア本件協約書は,被告の元代表取締役であったBが本件ゴルフ場会員権の不正売却という被告に対する背任行為を行って刑事事件となり有罪判決を受けたことから,原告が被告の経営を監視することを目的として,原告会員の有志により設立された刷新会が原案を作成し,原被告間で締結されたものである。 イ本件条項は,本件協約書1条,2条を具体化する規定であり,法律上少数株主に認められている会計帳簿等の閲覧謄写権 (商法293条ノ6)又は検査役(同法294条)の調査に類似する無名的権利であるというべきであり,少なくとも,原告 具体化する規定であり,法律上少数株主に認められている会計帳簿等の閲覧謄写権 (商法293条ノ6)又は検査役(同法294条)の調査に類似する無名的権利であるというべきであり,少なくとも,原告に被告の経理書類閲覧謄写請求権を認めたものであることは明らかである。「財務委員会又はその補助者に限り」としたのは,権利の行使方法を具体的に示したものであり,この経理内容調査権の主体はあくまで原告である。 また,「補助者」には,少なくとも弁護士,公認会計士,公認会計士補及び税理士が含まれる。 ウしたがって,本件条項は,単なる精神条項ではなく,原告の具体的な権利を規定する合意(条項)である。 (被告の主張)原告は,本件条項を本件文書の閲覧及び謄写請求権の根拠とするが,以下の理由から,そもそも各条項に法律的な拘束力があるか疑問であり,本件条項は会社の経営状態,信用,経営者の動向等を事実上監視するための申合せであって,基本的には精神条項と解すべき性質のものであり,まして,原告に被告の経理内容を調査する法的権利を付与するものではない。 ア本件協約書の原案は,刷新会が作成したものではなく,いわゆる中立派とされた人々が作成したものであった。本件協約書は,被告の経営権と会員のプレー権とを分離し,会員が親睦を目的として被告と協調し,快適にプレーを楽しむことを目指し,刷新会の行き過ぎを抑止するために起案されたものである。 イ本件協約書1条及び2条は,あいまい不明確な訓示規定であると言わざるを得ないから,それらを前提とした本件条項の「第1条及び第2条の目的達成に必要な範囲内において」という記載が,調査権の範囲を限定する意味を有するものではない。すなわち,原告が主張する経理内容調査権は,いつどのような とした本件条項の「第1条及び第2条の目的達成に必要な範囲内において」という記載が,調査権の範囲を限定する意味を有するものではない。すなわち,原告が主張する経理内容調査権は,いつどのような状況においてその発生要件が充足されるのかすらあいまいで不明確なものであり,法的権利として観念し得るものではない。 ウ本件条項は,対象となる書類等の範囲が限定されておらず,調査の具体的内容も判然としない上,かつ,弊害が生じるおそれを払拭するための担保規定も設けられていないのであるから,本件条項が具体的な権利を規定したものと解することは到底できない。 (2) 争点2(本件条項の解釈論)について(原告の主張)ア本件条項は,「第1条及び第2条の目的達成に必要な範囲内において」,「理事会の指示により財務委員会又はその補助者に限り」,被告の経理内容を調査できる旨規定する。前者は,いかなる場合に調査できるのか,その前提ないし時期と共に,調査権の及ぶ範囲を限定し,後者は,調査の主体と方法を限定している。 したがって,本件条項による調査権は,債権者が商法上有する権利とは内容も要件も異なるものであり,単なる商法上の権利の確認でないことは明らかである。 イ本件条項の「第1条及び第2条の目的達成に必要な範囲内において,理事会の指示により財務委員会又はその補助者に限り」という表現は,商法293条ノ7の意図する趣旨と同旨であり,調査の目的は,被告の業務を妨害したり,損害を与えたりするためのものではなく,原告の権利の確保又は行使に関することに限定されることを示したものであるから,第1条及び第2条が満たされていることが調査の前提条件であるとする被告の解釈は誤りであり,第1条及び第2条を満たすという の権利の確保又は行使に関することに限定されることを示したものであるから,第1条及び第2条が満たされていることが調査の前提条件であるとする被告の解釈は誤りであり,第1条及び第2条を満たすという目的を達成するのに必要な範囲内で調査が可能であるとの趣旨と解釈すべきである。 (被告の主張)ア被告が原告に本件書類の謄写を認めれば,当該書類の性質上,必然的に第三者が被告の経営に介入することを容認することになる。しかし,本件条項が,拡散の危険を伴う書類の謄写までも認める趣旨のものとは到底解されない。 イ本件条項は,被告の経理内容の調査に関する規定であり,書類・帳簿を謄写することに関する規定はなく,ゴルフクラブの会員が会社情報を取得するには,債権者として,商法282条2項に基づく計算書類閲覧等の手段によるべきである。なお,本件条項は,その行使方法について,同項の請求権を各会員が格別に行使すると被告の業務遂行に支障を来すおそれがあることから,個々の会員からの個別的な計算書類の閲覧請求には応じないようにしたものであると解すべきである。 (3) 争点3(本件文書の閲覧・謄写請求権)についてア株式会社エルジーブイ(以下「エルジーブイ」という。),有限会社C(以下「C」という。)及び有限会社ナナマルサン(以下「ナナマルサン」という。)は,被告と法人格が別であるが,別表のとおり,株主構成,事業内容,役員構成などに照らすと,実質的には被告と一体の関連会社である。したがって,本件条項の経理内容調査権は,被告のみならず,本件協約書成立後に被告の運営するゴルフ場の運営に携わる目的で設立され,本件協約書成立時の被告の業務を一部行い,被告と一体的に経営され,また,経営状況の 経理内容調査権は,被告のみならず,本件協約書成立後に被告の運営するゴルフ場の運営に携わる目的で設立され,本件協約書成立時の被告の業務を一部行い,被告と一体的に経営され,また,経営状況の判断を被告と一体的に観察すべき上記各関連会社に対しても及ぶというべきであり,これらの関連会社の法人格が被告とは別であるとの主張は許されない。しかも,経営上の疑問点,問題点はこれらの関連会社に関するものである。 イ被告の経営には,少なくとも,以下の疑問点,問題点が存在する。 (ア) 被告の関連会社に関する問題a 被告は,平成7年10月,事業上の必要性がないにもかかわらず,銀行借入れをして,被告の取締役であるDらが所有していた不動産(Eマンション)を5億7300万円で購入した。 被告は,平成11年7月,エルジーブイに対し,Eマンションを5億7300万円で売却したと説明しているが, 登記は移転していない。しかも,不動産が大幅な値下がりをしているのに4年後に同額で売買していることから明らかなように,エルジーブイへの売却は,原告が被告のマンション購入を問題にしたことを受けて表面上繕ったものに過ぎない。 bEマンションは,平成7年10月から平成11年7月までは所有者である被告が,以後はエルジーブイが,被告の役員Fが代表者を務める有限会社純ハウジングコーポレーション(以下「純ハウジング」という。)に貸している。 純ハウジングは,その所有する東京都内の土地に,債務者を被告とする極度額2億円の根抵当権を設定しており,被告と純ハウジングとの間に何らかの債権債務関係が存在することが窺われる。 c 被告の決算書及び事業 る東京都内の土地に,債務者を被告とする極度額2億円の根抵当権を設定しており,被告と純ハウジングとの間に何らかの債権債務関係が存在することが窺われる。 c 被告の決算書及び事業報告書によれば,平成2年度の総入場者数は5万5998名,平成4年度は5万5992名であり,6名の減少に過ぎないにもかかわらず,営業収益が約2億円減少し,経常損益も1億2500万円強の利益から7400万円強の損失に陥っている。この不自然な収益悪化は,被告の利益が関連会社に移転されている以外に説明できず,以後も同様のことが行われていることが疑われる。 d 被告の未収金・貸付金も,平成5年度では合計6000万円弱であったのが,平成10年度には5億6000万円まで増加している。平成11年8月に被告が開催した説明会において,未収金・貸付金の相手はエルジーブイであると説明されたが,エルジーブイは,平成元年度から平成4年度までの4年間で合計約3億8000万円の申告所得を計上しており,平成5年度以降,被告に対し土地・設備の使用料を支払えなくなるはずがなく,被告の計算でエルジーブイのために何らかの操作が行われた疑いがある。 e エルジーブイがG一族から被告会社の株式19パーセントを3億1200万円で買い取り保有していることが判明したが,Cが被告会社の株式60パーセントを保有するに至った経緯は不明である。 f その他,海外資産取得資金の総額や出所,エルジーブイ以外の関連会社(海外を含む)の負債,被告及びエルジーブイ以外の関連会社からG一族への役員給与支払の有無等も不明である。 (イ) 被告の原告会員に対する要求等に関する問 ルジーブイ以外の関連会社(海外を含む)の負債,被告及びエルジーブイ以外の関連会社からG一族への役員給与支払の有無等も不明である。 (イ) 被告の原告会員に対する要求等に関する問題a 被告は,平成6年に,会員から改善事業協力基金(一口30万円)の募集・徴収をし,また,平成8年からは名義書換料とは別に新入会員から新たな預託金(正会員100万円)を徴収しており,右基金は約1億8000万円以上,新たな預託金は3億円以上集まり,約5億円の金銭が別途被告の収入となっているはずであるが,右資金の流れ等を明らかにする必要がある。 b 被告は,上記aの収入等にもかかわらず,同時期から,原告の理事会に対し,年会費の大幅な値上げ(2万円から 5万円)と新入会員から新たに入会金100万円を徴収することを認めるよう,強硬に要求しており,原告の理事会がその具体的な根拠と資料を示すよう再三要求しても一向にその明確な根拠も資料も示そうとしておらず,同要求がなぜなされ,またその根拠資料がなぜ示されないか明らかにする必要がある。 c また,協約書2条の関係でも,被告が約束している快適なプレーの保証は,快適なクラブライフを通じて初めて達成できるのであるが,被告は,本件協約書4条で原告の通常経費を負担することとなっているにもかかわらず,平成 13年度以降,その支出を拒んでいる。 d 細則は,「日曜,祝祭日及び理事会の定めた特定日」にビジターの制限を設けており,原告会員が「快適なプレー」ができるようにしたものであるが,原告は,被告の経営にも配慮し,一定数ビジターを許容してきた。ところが,現在は,被告 ジターの制限を設けており,原告会員が「快適なプレー」ができるようにしたものであるが,原告は,被告の経営にも配慮し,一定数ビジターを許容してきた。ところが,現在は,被告が原告理事会の承諾なく極めて多数のビジターのプレーを認めているため,原告会員は,日曜及び祝祭日の予約が思うようにとれず,また予約が取れても当日のプレーが大幅に遅延し,とても快適なプレーができる状態ではなく,原告会員の快適なプレーをなす権利が阻害されている。 ウ預託金会員制ゴルフ場の運営会社が万一破綻すれば,預託金の返還はもちろん,プレー権すら認められなくなるおそれが強いし,また,市場で売却することもできなくなることから,関連会社設立前からの被告の財務内容及び関連会社の財務内容を知ること,被告と関連会社との間の保証など債務負担行為の内容を知ることが必要である。 エよって,原告は,本件条項に基づき,被告の経理内容を実効的かつ十分に調査して被告の健全な経営を担保し,原告会員の快適にゴルフをプレーする権利を保持するために,本件文書の閲覧及び謄写を求めることができる。 (被告の主張)仮に,本件条項に基づく請求があり得るとしても,被告はこれまで,本件協約書1条に定める健全な経営を行っており, また,2条に定める原告を構成する会員が社会通念上快適なプレーをなすことに支障を来さないようにする義務を果たしてきた一方,原告は,被告の健全な経営に協力せず,過去19年余りにわたって,年会費を2万円に据え置いたまま,被告の値上げ要求にも応じず,被告にのみその負担を強いているのであるから,原告の本件請求は,「第1条及び第2条の目的達成に必要な限度」で認められるとする本件 会費を2万円に据え置いたまま,被告の値上げ要求にも応じず,被告にのみその負担を強いているのであるから,原告の本件請求は,「第1条及び第2条の目的達成に必要な限度」で認められるとする本件条項の前提要件を充足していない。 (4) 争点4(訴えの利益の喪失)について(原告の主張)検査役の調査報告書は,確かに,被告の経営の全体像を把握できる内容になっている。しかし,その内容には不十分な点が少なからず存在し,例えば,Cが被告の株式の60パーセントを保有するに至った経緯,海外資産取得資金の総額や出所, エルジーブイ以外の関連会社からG一族への役員給与支払の有無等も不明である。 また,被告は,平成11年ころ以降,協約書の定めを無視するようになり,その後,原告の活動予算額を支払わなくなっていることから,その理由を明らかにする必要がある。 したがって,原告は,訴えの利益を喪失していない。 (被告の主張)被告は,本件訴訟において,裁判所の指示に従い,千葉地方裁判所佐倉支部が選任した検査役Hの作成した調査報告書を証拠(乙97)として提出しており,調査報告書は,被告の財務内容に止まらず,関連会社やG一族の私産にまで立ち入って報告されているのであって,原告の本訴請求の範囲をはるかに上回るものであるから,原告の請求は既に充足されたものであり,原告は訴えの利益を喪失した。 (5) 争点5(権利濫用の該当性)について(原告の主張)被告の株式を保有していない原告が,被告を乗っ取ることなど不可能であるから,被告の経営権を侵害する目的などあり得ず,原告の本訴請求は権利の濫用には当たらない。 (被告の主張)原告の請求は,外形上こそ権利主張のように見えたとしても,その実質 など不可能であるから,被告の経営権を侵害する目的などあり得ず,原告の本訴請求は権利の濫用には当たらない。 (被告の主張)原告の請求は,外形上こそ権利主張のように見えたとしても,その実質は原告が権利行使に仮託して被告の本件ゴルフ場の経営権を侵害せんとするものであるから,権利の濫用として許されない。 第3 争点に対する判断 1 後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の各事実が認められる。 (1) 被告の元代表取締役であるBは,被告に対する債権の見返りとして,正規の手続によらずに発行された預託金証書(実質的には本件ゴルフ場の正会員の資格及び預託金返還請求権を与えるためのもの)を受け取っていたところ,昭和45年1 月ころから46年4月ころまでの間,そのうち28枚を売却・譲渡し,これらと引き換えに合計5700万円を受領し,被告に同額の損害を与えた背任の事実(以下「会員権不正売却事件」ということがある。)によって,昭和50年9月18 日,東京高等裁判所において,有罪判決を受けた。 (甲21)(2) Bは,被告の代表取締役であるとともに,原告の代表者理事長でもあったが,昭和47年2月23日,会員権不正売却事件が原告会員らに発覚したことを受けて,原告理事長を辞任した。(甲52,57,103)(3) 原告会員の有志は,会員権不正売却事件をきっかけとして,刷新会を結成し,刷新会は,被告及び原告理事会に対し, 事件の解明,本件ゴルフ場の経営・運営の改善,被告主導の理事会の解散と新理事の選任等を求めた。また,原告会員の中には,会員株主制度の採用や,Bに対し,被告の代表取締役も辞任するよう求める者もいた。(甲52,103)(4) 刷新会は,本件協約書の案を作成し,原告理事会に対し,協約書案を被告 告会員の中には,会員株主制度の採用や,Bに対し,被告の代表取締役も辞任するよう求める者もいた。(甲52,103)(4) 刷新会は,本件協約書の案を作成し,原告理事会に対し,協約書案を被告の代表取締役であるB及びIが承認するなら刷新会を解散しても良い旨申し入れた。(甲103)これに対し,被告は,協約書の原案を作成したのは刷新会ではなく,いわゆる中立派に属する人々であったと主張するが, これに沿う証拠はなく,被告の主張は採用できない。 (5) 昭和47年10月13日ころ,当時,事実上原告の理事長として活動していたJ,原告の常任理事であった原告代表者及びKの3名と当時の被告代表者であるBは,同人の自宅において,本件協約書に調印した。(甲37)同月16日,原告代表者と当時の被告代表者Iは,同人の自宅において,本件協約書に調印した。(甲37)(6) 原告は,昭和47年11月30日,会員総会において,本件協約書を承認し,刷新会は解散した。(甲54,61,1 03)(7) 原告と被告は,昭和56年12月1日ころ,協約書の精神を受け,被告の健全な経営と原告の会員が快適なプレーを楽しめるため,下記の内容の覚書を締結し,その後,経営委員会が設置された。(甲1の3,64,65)記 1 被告の選任する者と,原告の選任する者5名以内をもって委員会(経営委員会)をつくる。 2 委員会は毎年四半期ごとにコースの改善維持,ハウスその他の施設整備に関する計画と予算を設定し,その実施経過を検討する。 3 委員会は年4回開催する。ただし原告と被告が協議して増減することができる。 4 委員長は被告の代表者,副委員長は原告の代表者とし,幹事2名を置く。 (8) 原 設定し,その実施経過を検討する。 3 委員会は年4回開催する。ただし原告と被告が協議して増減することができる。 4 委員長は被告の代表者,副委員長は原告の代表者とし,幹事2名を置く。 (8) 原告理事長は,昭和56年11月ころ,原告の会員総会において,前年度に会社が発表した経理内容と,雑誌ダイヤモンドに掲載された会社所得との間に差があったことについて,被告の協力によりその経理内容を調査した結果,公租公課等の支出に伴う税務調整によるものであり,原告会員に損害を与えるような経理は全然ないことが判明した旨説明し,了承された。(甲64)(9) 原告の会員であるA外5名は,昭和57年2月12日,被告に対し,商法282条2項に基づき,計算書類の閲覧請求をしたが,被告はこれを拒否し,その理由として「協定書の定めにもとづき去る昭和56年10月クラブ理事会が弊社の経理内容を調査され『会員に損害を与えるような経理は全然ない』との結論を出したうえ,昭和56年11月17日開催の会員総会においても会員の皆様に貸借対照表および損益計算書を配布し,右の調査結果について説明がなされております。」 「前述のとおり,すでにクラブ理事会が貴殿ら会員の代表として計算書類の閲覧のみならず,経理内容まで調査されておりますので,重ねて計算書類を閲覧する必要はないと思われます。」などと主張した。(甲25ないし27)(10) 年会費値上げ要求等被告は,平成9年ころから,原告に対し,入会金の新設,あるいは会員の年会費を,従前の年2万円から年5万円に値上げするよう求めた。原告がこれを拒否したところ,被告は,平成11年4月17日,直接,会員に対し,年会費の値上げについて理解を求める内容の書面を送付した。(甲6の1・4,8 円から年5万円に値上げするよう求めた。原告がこれを拒否したところ,被告は,平成11年4月17日,直接,会員に対し,年会費の値上げについて理解を求める内容の書面を送付した。(甲6の1・4,8の1,134の14)(11) エルジーブイは,平成11年8月10日,被告を被申請人として,千葉地方裁判所佐倉支部に対し,商法294条に基づく検査役の選任申請をし,平成12年1月24日,H弁護士(以下「H検査役」という。)を検査役に選任する旨の決定がなされた。(甲151)(12) 被告は,平成11年9月27日,原告に対し,原告の予算の仮払いとして,原告理事長名義の銀行口座に1150万円を振込送金した。(乙3,4)(13) 被告は,原告の平成13年度予算を大幅に減額し,平成14年度以降,原告に対し,原告の通常経費である活動予算を支払っていない。(甲144)(14) 原告は,平成12年7月10日,同年9月27日,同年10月24日の3回,H検査役に対して,検査役選任申請事件の利害関係人として,原告が被告の経理内容について問題としている点及び調査に当たって留意すべき事項等を記載した上申書を提出した。(甲152ないし154)(15) H検査役は,平成13年4月4日,本件訴訟との関連で,原告が疑問とする被告の業務執行についてもできるだけ調査した上で,被告についての調査報告書(以下「検査役報告書」という。)を千葉地方裁判所佐倉支部に提出した。(乙9 7)(16) 検査役報告書は,昭和58年8月期から平成11年8月期までの資料に基づき,被告の事業損益の概況及び財産の概況を明らかにした上で,検討することを適当とする事項として,遊休資産の整理,関連会社の整理,役員報酬及び賞与の相当 成11年8月期までの資料に基づき,被告の事業損益の概況及び財産の概況を明らかにした上で,検討することを適当とする事項として,遊休資産の整理,関連会社の整理,役員報酬及び賞与の相当性等を挙げているが,結論としては,被告の役員に業務上横領や背任に該当するような不正の廉はなく,全般的に見て,これまでよくやってきたといえる,としている。 また,年会費については,収益面からは,必ずしも増額を必要としないとしつつも,設備の老朽化に対応した改装は緊急課題であり,その一助として年会費の増額は,近辺の相場から見ても考慮してよいとしている。(乙97)(17)ア Cは,被告及びエルジーブイからゴルフコースのメンテナンス業務の受託を目的として,平成2年7月3日に設立された会社であり,被告の株式の60パーセントを保有している。Cの株式は,ナナマルサンが99パーセントを保有している。(乙97)イナナマルサンは,被告から食堂,売店及び車両運行業務の受託を目的として,平成2年9月17日に設立された会社である。ナナマルサンの株式は,L,F,Mがそれぞれ33パーセントを保有している。(乙97)ウエルジーブイは,被告から土地を賃借してミニゴルフ場を運営することなどを目的として,昭和62年11月11日に設立された会社であり,被告の株式の19パーセントを保有している。エルジーブイの株式は,F,Mがそれぞれ25パーセントずつ,Lが22パーセント,Dが20パーセントを保有している。(乙97)エ純ハウジングは,不動産の管理及び賃貸等を目的とする会社であり,エルジーブイからEマンションを賃借しており,所有する苗場のリゾートマンションを被告に賃貸している。純ハウジングの株式は,Dが80パ ハウジングは,不動産の管理及び賃貸等を目的とする会社であり,エルジーブイからEマンションを賃借しており,所有する苗場のリゾートマンションを被告に賃貸している。純ハウジングの株式は,Dが80パーセントを,Fが10パーセントを保有している。(乙97) 2 争点1(本件条項の法規範性)について(1) 上記認定事実によれば,本件協約書は,会員権不正売却事件が発覚したことを契機として起案及び調印されたものと認められる。そして,協約書の趣旨は,原告会員から出された,Bは被告の代表取締役を辞任せよとの要求や,株主会員制を採用すべきであるといった要求などを沈静化させるため,また,会員の権利を危うくするような事態を未然に防ぐため,原告の権限を強化するとともに原告被告間の関係を明確化するという点にあったものであり,被告は,Bが会員権不正売却事件を起こしたことなどから,これを受け入れざるを得ない立場にあったものと認められる。 さらに,本件条項の文言について検討するに,調査の主体につき「理事会の指示により財務委員会又はその補助者に限り」 と明記されており,その対象も「被告の経理内容」と明定されているのであって,その行為態様も「調査することができる」と特定されているのである。このような規定の仕方にかんがみると,本件条項は,一定の要件のもとに何らかの調査が具体的になされることを予定しているものと解されるのであり,その反面,被告の経理内容について,被告が調査を受忍すると共にこれに必要な情報を提供する義務を負っている趣旨であると解するのが相当である。 (2) そうすると,本件条項は,一定の要件のもとに,原告に被告の経理内容を調べる具体的な調査権を付与したものであり,法的な拘束力があるという っている趣旨であると解するのが相当である。 (2) そうすると,本件条項は,一定の要件のもとに,原告に被告の経理内容を調べる具体的な調査権を付与したものであり,法的な拘束力があるというべきである。 (3) これに対し,被告は,本件条項の文言が抽象的であり,原告の主張する調査権の要件・効果を具体的に導き出すことができないことなどを理由に,本件条項は精神条項であり,法的拘束力はないと主張する。 しかしながら,本件条項が調査内容を具体的に規定していないことから,直ちに法的拘束力がないとは言えず,後記のとおり,その内容を合理的に解釈することは十分可能である。また,仮に,本件条項をもって,被告の経営状態等を事実上監視するための申合せに過ぎないものとすると,被告の経営情報の開示の有無及び範囲は被告の全くの任意に委ねられているものと解するほかないこととなるが,そのような解釈は,調査という文言及び本件協約書締結の経緯から推認される契約当事者の合理的意思に反することになり,到底採用することができない。 さらに,被告は,弊害が生じるおそれを払拭するための担保規定がないことも,法的拘束力を否定する根拠としているが, 後記のとおり,弊害を防止する要件が全くないとはいえない上,本件条項が公序良俗ないし強行規定に反し無効であるともいえない以上,本件条項の法的拘束力を否定する根拠とはなり得ない。 (4) したがって,本件条項は精神条項であり,法的拘束力がないとする被告の主張は,採用できない。 3 争点2(本件条項の解釈論)について(1) 本件条項に基づく調査権の要件ア本件条項に基づく調査権には「本件協約書第1条及び第2条の目的達成に必要な範囲内」で調査可能であるとの限定がされており,その体裁 条項の解釈論)について(1) 本件条項に基づく調査権の要件ア本件条項に基づく調査権には「本件協約書第1条及び第2条の目的達成に必要な範囲内」で調査可能であるとの限定がされており,その体裁から,経理内容の調査権を,合理的な範囲にとどめるための要件を定めたものであることは明らかである。 そして,本件協約書の1条及び2条は,原告及び被告の義務を定めたものであり,その目的は,文言自体からは必ずしも明らかでないが,前文と併せて読めば,本件協約書1条及び2条の義務を双方が果たすことによって,互譲の精神をもって本件ゴルフ場のより一層の発展を目指す点にあるものと解される。すなわち,被告は,健全な経営のため,原告に協力を求めることができるが,その要求は正当なものでなければならず,原告は,被告の要求が正当であるか否かを判断するために,本件条項に基づく調査権を行使することができる。他方,原告は,本件条項に基づく調査権を行使する際には,無限定に行使するのではなく,被告の経営に配慮し,被告を害する目的,態様で調査権を行使してはならないのである。 イそうすると,「本件協約書第1条及び第2条の目的達成に必要な範囲内」とは,被告の経営状況及び経理内容に関する情報開示の程度等に照らし,被告の経理内容を調査する必要性が認められる場合にのみ調査が可能であるが,不当目的である場合, あるいは,調査請求の内容が,調査目的に照らして不必要な範囲にわたっている場合には,被告は調査を拒否できるとの意味であると解するのが相当である。 ウこれに対し,被告は,第1条及び第2条が満たされていること,すなわち,原告が,被告の健全な経営に協力し,かつ,会員の快適なプレーに支障を来していることが調査権発生の要件であると主張する。 しかしなが し,被告は,第1条及び第2条が満たされていること,すなわち,原告が,被告の健全な経営に協力し,かつ,会員の快適なプレーに支障を来していることが調査権発生の要件であると主張する。 しかしながら,本件条項の文言からはそのように解することは困難であり,また,経理内容を調査するという権利の性質からすれば,被告の健全な経営に協力すべき場合か否かを判断するため,調査が必要な場合もあり得るというべきであるから,被告の健全な経営に協力することが調査権の要件であると解するのは不合理である。 したがって,第1条及び第2条が満たされていることが調査権発生の要件であるとする被告の主張は,採用できない。 (2) 本件条項に基づく調査の内容ア次に,本件条項に基づく調査権によってなし得る調査の内容について検討すると,本件条項は,その文言から,なし得る調査の範囲に特段の限定が付されていないこと,また,本件条項の趣旨は,会員の権利を危うくするような経理が行われることを未然に防ぐことにあったことなどからすれば,本件条項は,調査目的を達成するに足りるだけの幅広い調査を予定しているというべきである。 そうすると,原告は,調査権の行使として,経理内容に関係する限り,調査目的を達成するために必要な行為をなし得ると言うべきであり,経理内容に関し,被告に報告を求めること,経理内容に関する帳簿・書類の閲覧及び謄写をすることもその内容に含まれるが,被告は,会社の営業上の秘密が含まれるなど,正当な理由がある場合には,調査を拒むことができるものと解するのが相当である。 イこれに対し,被告は,仮に閲覧が可能であるとしても,書類の拡散の危険を伴う謄写まで認める趣旨の合意ではないと主張する。 しかし,本件条項の文言からは,特に書類の謄 するのが相当である。 イこれに対し,被告は,仮に閲覧が可能であるとしても,書類の拡散の危険を伴う謄写まで認める趣旨の合意ではないと主張する。 しかし,本件条項の文言からは,特に書類の謄写を除外する趣旨は窺われず,かえって,調査の内容によっては,閲覧のみで,経理内容を判断することが困難な場合があり得ることは容易に予想されることであるから,本件条項に基づく調査としては,書類の謄写も予定していたものというべきである。 したがって,仮に閲覧が可能であるとしても,謄写は許されないとする被告の主張は,採用できない。 ウまた,被告は,本件条項は,商法282条2項に基づく計算書類閲覧等の権利について,その行使方法を限定したものと解すべきであると主張する。 しかし,上記認定事実のとおり,本件協約書は,Bの会員権不正売却事件の発生を受けて,被告の経営内容を監視するために締結されたものであるから,これを会員の権限を縮小する趣旨の合意と解釈することは困難である。 さらに,原告は,昭和56年に,被告の経理内容を調査しているところ,調査の結果,公租公課の支出に伴う税務調整であることが判明していること,また,被告は,「計算書類の閲覧のみならず,経理内容まで調査されております」と主張していたことなどからすれば,計算書類の閲覧を超える何らかの書類の開示を受けたことが窺われるのである。 したがって,商法282条2項の権利に関する合意であるとの被告の主張は,採用できない。 (3) なお,本件条項にいう「補助者」には,経理内容の調査が専門性を要することから,少なくとも,弁護士,公認会計士, 公認会計士補及び税理士が含まれるものと解するのが相当である。 4 争点3(本件文書の閲覧・謄写請求権)について(1)ア原告は,本件請求に することから,少なくとも,弁護士,公認会計士, 公認会計士補及び税理士が含まれるものと解するのが相当である。 4 争点3(本件文書の閲覧・謄写請求権)について(1)ア原告は,本件請求において,被告の経営内容にいくつもの疑問点ないし問題点が存在すること,被告が,原告に対し,年会費の値上げ及び新たな入会金の徴収を認めるよう要求していること,被告が,原告の通常経費の支出を拒否していること等を挙げて,被告が健全な経営をしているか否かを調査する必要があると主張している。 イまず,原告が主張する被告の経営上の疑問点については,検査役報告書によって明らかになったものと認められる。 これに対し,原告は,Cが被告の株式のうち60パーセントを保有するに至った経緯,海外資産取得資金の総額や出所及びエルジーブイ以外の関連会社の負債がなお不明であると主張する。 しかし,検査役報告書は,原告が問題としていた事項についても調査した上で作成されているにもかかわらず,原告が主張する点について問題として記載されていないのであるから,これらの点に不正はなく,今後検討することを要するものでもないと認められる。 したがって,原告が主張する被告の経営上の疑問点について,なお調査が必要であるということはできない。 ウ次に,被告が,原告に対し,年会費の値上げ及び新たな入会金の徴収を認めるよう要求している点については,そのうち,年会費の値上げ要求については,本件訴訟において被告が主張しているところであり,原告が,被告の要求を受け入れるべきか否かを判断するために必要な範囲内で,調査を行う必要性があるものと認められる。 エさらに,被告が,原告の通常経費の支出を拒否していると ころであり,原告が,被告の要求を受け入れるべきか否かを判断するために必要な範囲内で,調査を行う必要性があるものと認められる。 エさらに,被告が,原告の通常経費の支出を拒否しているとの点は,これに対する原告の対応を決定するために必要な範囲内で,調査を行う必要性があるものと認められる。 (2)ア以上の調査の必要性に基づき,閲覧及び謄写の可能な書類の範囲について検討すると,被告の年会費の値上げ要求及び原告の通常経費を支払わないことに対する対応を決定するためには,被告の経理の状況から,原告に対して新たな負担を求めることがやむを得ないかどうか,また,被告が適切な経営努力を行っているかどうかなどを判断しなければならず,その調査はある程度包括的にならざるを得ないといえる。 もっとも,上記のとおり,検査役報告書によって,平成11年8月期以前の被告の経理内容は明らかにされていること,年会費の増額についても,収益面からは,必ずしも増額を必要としないが,設備の老朽化に対応した改装の一助として,年会費の増額をすることは考慮してよいとの意見が記載されていることなどから,平成11年8月期以前については,もはや調査をする必要性は消滅したものと認めるのが相当である。 イまた,本件条項において,調査の受忍義務を負っているのは被告であるが,本件文書中には,エルジーブイ,C及びナナマルサンが作成・保管している文書が含まれているものと思われ,被告が提出することが可能かどうかが問題となるものの,エルジーブイは,被告の実質的子会社であり,C及びナナマルサンは,従前被告が行っていた業務を分離独立した会社であり,実質的には一体の会社であると認められるから,被告が 題となるものの,エルジーブイは,被告の実質的子会社であり,C及びナナマルサンは,従前被告が行っていた業務を分離独立した会社であり,実質的には一体の会社であると認められるから,被告が,エルジーブイ,C及びナナマルサンの保管する文書についても,提出することは可能であるといえ,閲覧及び謄写可能な範囲に含まれるというべきである。 ウそして,本件文書は,帳簿類のみではなく,個別の契約書等も含まれているが,被告において,調査を拒絶する正当な理由について何ら具体的な立証をしないから,調査範囲から除外すべき文書はないものと認められる。 エしたがって,原告は,本件文書のうち,平成12年8月期以降に作成されたものについて,閲覧及び謄写を求めることができることとなる。 5 争点4(訴えの利益の喪失)について被告は,検査役報告書の提出により,原告の請求は充足された旨主張するが,上記のとおり,検査役報告書が提出されたとしても,なお調査の必要性が完全に否定されるものではないから,原告が訴えの利益を喪失したとは認められない。 6 争点5(権利濫用の該当性)について被告は,原告が,被告の本件ゴルフ場の経営権を侵害せんとして,本件請求をしている旨主張するが,これを認めるに足りる証拠はなく,原告の請求が権利の濫用であると認めることはできない。 第4 結論よって,原告の請求は,別紙書類目録1及び2記載の各書類のうち平成12年8月期以降に作成された各書類の閲覧及び謄写を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担につき民訴法67条2項,61条,64条本文を適用して,主文のとおり判決する。 千葉地方裁判所民事第2部裁判長裁判官小磯 の余は理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担につき民訴法67条2項,61条,64条本文を適用して,主文のとおり判決する。 千葉地方裁判所民事第2部裁判長裁判官小磯武男裁判官見米正裁判官吉野内謙志・別紙書類目録 1 被告の昭和59年8月期(第25期)から現在に至るまでの,(1) 会社法人税確定申告書控え(別表及び勘定科目内訳書,販売費及び一般管理費の内訳書等を含む)(2) 総勘定元帳(3) 株式会社エルジーブイ,有限会社C,有限会社ナナマルサン及び有限会社純ハウジングコーポレーション等の関係会社及び被告以外の第三者の借入金等の債務につき保証した保証契約書(4) 株式会社エルジーブイ,有限会社C,有限会社ナナマルサン及び有限会社純ハウジングコーポレーションとの間の金銭消費貸借契約書,営業譲渡契約書,業務委託契約書,賃貸借契約書等,名称の如何を問わず,金銭債務の原因となる契約書類(5) 被告の各決算期における株式会社エルジーブイ,有限会社C,有限会社ナナマルサン及び有限会社純ハウジングコーポレーションとの間の債権債務について記載のある書面(付属明細書等) 2 株式会社エルジーブイ,有限会社ナナマルサン,有限会社Cの設立後現在に至るまでの,法人税確定申告書控(別表及び勘定科目内訳書,販売費及び一般管理費の内訳書等を含む)別表 (省略)
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