昭和37(う)627 補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律違反等被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和38年11月27日 東京高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      原判決を破棄する。      被告人A1を罰金七〇、〇〇〇円に、被告人A2及び同A3を各罰金五 〇、〇〇〇円に処する。      右罰金を完納することができないときは、金五〇〇

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主文 原判決を破棄する。 被告人A1を罰金七〇、〇〇〇円に、被告人A2及び同A3を各罰金五〇、〇〇〇円に処する。 右罰金を完納することができないときは、金五〇〇円を一日に換算した期間当該被告人を労役場に留置する。 原審における訴訟費用中証人B1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、B8、B9、B10、B11、B12、B13、B14に支給した分及び当審における訴訟費用は、被告人等の連帯負担とする。 被告人A1及び同A3は、業務上横領の点については無罪。 理由 本件控訴の趣意は、弁護人沢田竹治郎及び同馬場英郎名義控訴趣意書二通の通りであるから、これを引用する。 右に対する当裁判所の判断は、次の通りである。 第一補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(以下「適正化法」と略称する。)違反の罪について本件控訴趣意は、主として法律論であり、又多少の原審の事実認定を争うものであるが、これらに答える前に本件の事案の真相を検討して見ると次の如き事実が認められる。 (一) 原判示冒頭の事実及び原判示第一の事実中「同町の方針として、予算の不足から工事金は可能なかぎり補助金、起債等でまかない町の負担を少くしようとしていたので」という部分を除いたその余の事実(原判決挙示の証拠参照、なおこれらの事実は控訴趣意においても争わないところである)。 (二) a町においては、本件b簡易水道敷設以前にa町簡易水道を竣工していたのであるが、同水道の水源が昭和三一年暮頃から水の出が悪くなつたので、国庫から補助金を貰つて増設工事をしようとの議が起きたが、結局被告人A2の意見により昭和三三年度から本件b簡易水道を計画し実行したこと、従つて後記の如く本件水道とa町簡易水道とは密接な関連が ので、国庫から補助金を貰つて増設工事をしようとの議が起きたが、結局被告人A2の意見により昭和三三年度から本件b簡易水道を計画し実行したこと、従つて後記の如く本件水道とa町簡易水道とは密接な関連があること(被告人A3の検察官に対する昭和三四年九月三〇日付供述調書―記録第四冊一六一九丁及び被告人A2の検察官に対する同月二八日付供述調書―記録第四冊一七九八丁)。 (三) 本件水道の昭和三四年三月三一日の工事の状況は、次の如くであること。 (イ) 取水池から配水池までの送水管四一〇米敷設(ロ) 配水池からC1神社前までの一〇〇耗配水管三〇〇米敷設(ハ) C1神社前からC2線県道を南へ更に約二〇〇米の間一〇〇耗配水管敷設(ニ) C3線県道七五耗配水管一〇四〇米敷設従つて、同日付未完成部分は、原判示の畑中コの字型の七五耗配水管一〇〇〇米及びC2線県道一〇〇粍配水管四八〇米となること((ニ)掲記の供述調書及び原判決挙示の証人B1、B3の各証人尋問調書―記録第一冊一八五丁、一九九丁及び原審検証調書添付の現場検証見取図―記録第一冊一八四丁)(四) a町においては、昭和三二年九月一四日付を以てa町簡易水道増設工事認可申請書を県へ提出し、同年一二月一三日知事の認可があり、昭和三三年四月二八日県費の補助金九三三〇〇円を受領したのであるが、右認可申請をした頃本件水道敷設工事として本件配水池からC1神社前までに既に敷設した三〇〇米の一〇〇粍配水管を利用し、本件水道工事とは別個に同神社前で丁字型に分岐し、a町簡易水道の旧管まで一〇〇米だけ一〇〇粍配水管を敷設してa町簡易水道へ通水したこと、a町簡易水道増設工事の設計では、本件配水池から本件水道の配水管とは別個にa町簡易水道のための配水管が更に一本出てC1神社前で交差することとなつていたのにかかわ 敷設してa町簡易水道へ通水したこと、a町簡易水道増設工事の設計では、本件配水池から本件水道の配水管とは別個にa町簡易水道のための配水管が更に一本出てC1神社前で交差することとなつていたのにかかわらず、本件水道の配水管が既にできていたので、a町簡易水道増設工事としての配水池からC1神社前までの配水管一本を省略して右の如く本件水道の配水池からC1神社前までの配水管を利用したこと(被告人A2の検察官に対する昭和三四年一〇月八日付供述調書―記録第四冊一八三二丁、a町簡易水道増設工事認可申請について―当庁昭和三七年押第二三八号の五、簡易水道補助申請書提出について―前押号の六)。 (五) 昭和三四年三月二〇日頃本件工事の一部としてD1クリーニング店の前までC3線県道に敷設された一〇四〇米の配水管(前記(三)の(ニ))とa町簡易水道の配水管とを連結させ、右一〇四〇米の部分にはa町簡易水道から通水されたこと(被告人A2の検察官に対する昭和三四年九月二八日付供述調書―前出)。 (六) 被告人A2は昭和三四年三月二五日頃工事責任者である株式会社D2商会のB1に対し、畑中の一〇〇〇米分及びC2線県道の四八〇米分の配布管敷設の中止方を指示したのであるが、これは、畑中の個所は配水管敷設のための道路敷地買収がはかどらず、又この部分は住宅も殆んどなく、差当り水道の必要性も乏しく、C2線の残四八〇米も右の畑中の一〇〇〇米分を敷設しなければ差当り必要がないというのが真の理由であつたこと及び同日頃右四八〇米の部分につき一部工事延期伺書を起案し、A1、A3の決裁を受けたが、右伺書には延期の期間として「自昭和三四年八月三十一日」の記載があること(被告人A2の検察官に対する昭和三四年九月二八日付供述調書―前出、一部工事延期につき伺ひと題する書面―前押号の九中にあり)。 書には延期の期間として「自昭和三四年八月三十一日」の記載があること(被告人A2の検察官に対する昭和三四年九月二八日付供述調書―前出、一部工事延期につき伺ひと題する書面―前押号の九中にあり)。 (七) 昭和三四年五月七日頃甲府行政監察局の係員が来て本件水道工事について調査したこと((六)掲記の被告人A2の供述調書)。 (八) 本件補助金一二二万円の受領後B15及び韮崎保健所のB16係長から数回にわたり工事完成方の注意があつたので、同年五月一八日頃から一週間でD2商会をして畑中の一〇〇〇米の一部(約五三五米)につき七五粍配水管を敷設させたが、深さは設計より浅い五〇糎位の部分もあること、この敷設に際し、a町簡易水道の配水管と連結させたこと((六)掲記の被告人A2の供述調書、証人B1の証人尋問調書―前出、B9の検察官に対する供述調書―記録第二冊七二三丁)(九) 同年六月一八日に会計検査院の検査があることが判つたので、その一両日前にD2商会に頼みC2線県道の既に配水管を敷設した道路の上の手直し及び残四八〇米の未敷設部分の上に砂利を敷かせたこと、右六月一八日のB17調査官の検査は一応パスしたこと((六)掲記の被告人A2の供述調書)(一〇) 同年八月初旬頃町長反対派のB14等が本件水道工事に関し告訴すると騒ぎ出したので、八月一八日頃D2商会から七五粍パイプ一六〇本及び接手を送らせ、町直営でC2線県道の残四八〇米にこれを敷設したが、通水はしなかつたこと、これより先同年七月三日頃被告人A2がD2商会の支配人B3に対し畑中に仮敷設したパイプを安く引取つてくれないかと持ちかけたことがあつたこと((六)掲記の被告人A2の供述調書、B3の検察官に対する供述調書―記録第二冊七四二丁)(一一) 実績報告書の提出関係実績報告書(適正化法第一四条に基く くれないかと持ちかけたことがあつたこと((六)掲記の被告人A2の供述調書、B3の検察官に対する供述調書―記録第二冊七四二丁)(一一) 実績報告書の提出関係実績報告書(適正化法第一四条に基く)は、昭和三一年八月二五日厚生省令第三〇号厚生省所管補助金等交付規則第五条により、補助事業等の完了の日から一箇月を経過した日又は交付決定の翌年四月一〇日のいずれか早い日までに提出することを要する旨定められているが、実際においては、この期限は必ずしも遵守されず、翌年度六、七月頃に提出されるのも少くないという実情であつたこと、本件においては、昭和三四年四月三日頃本件補助金一二二万円の請求書及び実績報告書の提出について伺書(前押号の一〇)が起案され、被告人等三名の決裁があつて、a町土木課員B18が四月七日頃これを県厚生労働部公衆衛生課員B4の許へ提出したところ、B4は補助金請求関係の書類は出納室へ廻したが実績報告書(前押号の一三)の方は後に検討することとして預つておいたこと、その後一一月初a町から韮崎保健所へ先の実績報告書を訂正し金額を減少させた実績報告書(前押号の一四三)が提出され、同保健所から県へ廻付され(県受付一一月五日)たが、当時既にa町の方で補助金全額一七七万円を国へ返還する動きがあつたので、右実績報告書は韮崎保健所を通じて、一一月二五日頃a町へ返還されたこと(B15の原審第一、二回証言―記録第一冊二七五丁、四八一丁、B5の原審証言―記録第一冊三七七丁、B4の原審証言及び検察官に対する供述調書―記録第一冊三四七丁及び四六三丁、B18の原審証言及び検察官に対する供述調書―記録第一冊二二九丁及び四五五丁、昭和三三年度b水道工事国庫補助金請求及び実績報告書(前押号の一〇)、執務日誌(前押号の一一)、昭和三三年度国庫補助金請求書(前押号の一二) 検察官に対する供述調書―記録第一冊二二九丁及び四五五丁、昭和三三年度b水道工事国庫補助金請求及び実績報告書(前押号の一〇)、執務日誌(前押号の一一)、昭和三三年度国庫補助金請求書(前押号の一二)、国庫補助事業実績報告書(前押号の一三)、昭和三三年度国庫補助事業実績報告書(前押号の一四三)、返戻書(前押号の一四四)、なお、B4は原審公判廷において実績報告書は昭和三四年七月頃県へ提出されたと供述しているが、関係証拠を検討しても右に説明した外に実績報告書が七月頃提出された形跡は見当らないし、又前押号の一四三の実績報告書について、被告人A2は原審公判廷で四月一一日韮崎保健所を経由して県へ提出し、その後訂正して七月上旬再び県へ提出したと供述しており―記録第三冊一三三三丁、第四冊一九八九丁、右の前押号の一四三にも四月一一日の韮崎保健所の受付印が押されていることが認められるのであるが、前記B5の証言によれば、被告人A2の右供述は真実に合致しないものであり、四月一一日の韮崎保健所の右受付印も実際は前記の如く一一月初の受付であるにかかわらず日付を遡及させて押印され、ために受付番号も二五二三の二と枝番号が付されたものであることを認めることができる。なお又、前押号の一三の発かん番号が長土発三二二号であるのに同一四三の発かん番号が長土発一〇〇一号と著しくかけ離れていることも、a町の昭和三四年度文書発送簿(前押号の一六六)と対照するときは、前押号の一四三の実績報告書が四月一一日ではなく右の如く一一月初に提出されたことを裏づけるものである)。 以上(一)乃至(二)の事実を彼此検討して行くと、被告人等は始から本件水道を完成させる意図がなかつたものであり、国の補助金を貰つてa町簡易水道の水の出をよくするようこれを改修するために本件水道工事を計画し実行したのではない 実を彼此検討して行くと、被告人等は始から本件水道を完成させる意図がなかつたものであり、国の補助金を貰つてa町簡易水道の水の出をよくするようこれを改修するために本件水道工事を計画し実行したのではないかとも疑う余地は多分にあるのである。若し然りとすれば、被告人等は補助金交付決定そのものを偽りその他不正の手段によりなさしめたものであるといわなければならないのであるが、本件訴因はそこまで主張されているわけでもなく、又本件にあらわれた証拠によつても、右の疑問は相当強いとはいえても結局それはあくまでも疑問に止るものであり、これを確認するだけの証拠はないといわなければならないから、当裁判所としても、そこまで確認するものではない。 <要旨>しかしながら、右の(一)乃至(二)の事実をよく検討すると、本件一二二万円の補助金の交付決定を申請する当時は</要旨>暫く措き、少くとも一二二万円の補助金を受領する当時においては、未完成の一四八〇米は遠い将来は別として少くとも近い将来においてはこれを完成させる積りはなかつたものと当裁判所としては認めざるを得ない。このことは、前記(一)乃至(二)の事実からも然く認められるところであるのみならず、被告人A1の検察官に対する次の如き供述により、当裁判所としては一層その確信を強めるものである。A1曰く「D3病院の方に布設した配水管はD1付近でa町簡易水道の旧管に連結し、D3病院の方には水が出ていた、それにC1神社前からD1までの間は百姓地帯で水道の布設を希望もせず、個人給水の必要もないところである、本件水道はa町簡易水道の水源こ渇を救う目的で作つたものだから、その部分は特に必要を感じなかつた、又コの字型部分は道路の設計をしたが、土地の入手ができず、法務局出張所の敷地にする積りであつたのに、昭和三四年三月これが他に決定しよう 救う目的で作つたものだから、その部分は特に必要を感じなかつた、又コの字型部分は道路の設計をしたが、土地の入手ができず、法務局出張所の敷地にする積りであつたのに、昭和三四年三月これが他に決定しようとしたので畑になつており道路も決つていない所へ水道をひくことは考えてもいなかつた」と(記録第四冊一六〇三丁、一六〇四丁)。 以上の如き事実関係であるからには、被告人等の本件一二二万円の補助金の受領行為が適正化法第二九条第一項に該当すること明らかなところであるが、この点について誤解を生じないように当裁判所の見解を少しく述べておくこととするが、当裁判所としては、工事が三月三一日までに完成しないのに補助金を受取つたすべての場合が適正化法第二九条第一項に該当するとまではいつてはいないのである。即ち、当裁判所としては、左様なすべての場合につきそれが適正化法第二九条第一項に該当するとも又しないともいつてはいないのであり、唯本件の如く補助金を受領する四月一一日には未完成であり、しかもその後も近い将来においてこれを完成させる意図がないのに(前認定の如く本件においては、被告人等に最も有利に解しても、昭和三四年八月三一日以前にこれを完成させる意図はなかつたものと認めざるを得ないし(前記(六)記載の一部工事延期伺ひと題する書面の延期の期間の記載参照)、又客観的にも前認定の如く昭和三四年八月においても未完成であり、原審検証時たる昭和三六年二月二日においても完成していない)完成したと偽つて補助金の支払を受けるが如き行為は、適正化法第二九条第一項に該当するといつているに過ぎないのである。そして、このことは、被告人等が後日真実を記載した実績報告書を提出して適正化法第一五条による確定を受け、未完成の一四八〇米に関する過払分を返還する意図があつたとしても、同法第二九条第一項 いのである。そして、このことは、被告人等が後日真実を記載した実績報告書を提出して適正化法第一五条による確定を受け、未完成の一四八〇米に関する過払分を返還する意図があつたとしても、同法第二九条第一項違反の罪の成立を妨げるものではないのである。何故ならば、第二九条第一項の犯罪はこれによつて国の被る金銭上の損失の故に反社会的であるとされているものと解するを相当とするところ、現実の国損は、国がいかなる形態にせよ金員を支払つたとき既に発生するものといわざるを得ないからである。加之、本件においては前認定の如く正式に県に受理されたものではないにせよ四月七日頃本件工事は総工事費四八八万円を以て完成したとする内容虚偽の実績報告書を公衆衛生課へ提出しているのであるから、被告人等は、本件補助金受領当時においては、後日精算した過払金を返還するという意図はなかつたものと認めざるを得ないのである。 以下、控訴趣意において主張する主要な点についての当裁判所の見解を述べておく(1) 適正化法第二九条第一項にいわゆる「偽りその他不正の手段」とは、交付決定を受けるについての問題であり、一旦交付決定を受けた者は、仮りに現実に補助金の支払を受けるについて不正があつたとしても、適正化法第二九条第一項に該当しないと解すべきかどうか(控訴趣意第一点の二の(三))この点については、当裁判所としては、左様には解さないのである。それは、まず第一には、補助金の交付を受ける側において交付決定受領後年度の途中において所定の工事を勝手に縮小させたり或は又質を落したりしてなお所定の補助金の交付を受けた場合のことを考えれば納得が行く筈であり、第二には、弁護人主張の如きことが許されれば、終局においては当該工事を完成させる意図はあるが、早く補助金を貰おうと思つて、当該年度内に実現し得ないような 受けた場合のことを考えれば納得が行く筈であり、第二には、弁護人主張の如きことが許されれば、終局においては当該工事を完成させる意図はあるが、早く補助金を貰おうと思つて、当該年度内に実現し得ないような計画をなして補助金をとりあえず受領しておくという弊風を助長しかねないこととなり、かくては、予算単年度主義の原則を乱す虞があることを考えても納得が行くと思うのである。 尤も、当該年度内に実現できると思つて補助金の交付決定を受けたが、事志と違つて当該年度内に実現できなくなる場合があることは勿論であり、かかる場合には、予算の支出者側において繰越の手続をとれば、翌年度においてその予算を使用することができるのであるが(B15の原審第一回証言―前出、B10の証人尋問調書―記録第二冊六一三丁、B19及びB6の原審における各証言―記録第一冊三三七丁、三九一丁、なお繰越については、財政法第一四条の三参照)、この繰越はやむを得ない例外であり、この繰越の制度があるからといつて、弁護人主張の如きことが許されると解することはできないのである。 なお、この点については、当審証人B20の証言参照。 (2) 厚生大臣の本件補助金交付決定の通知が昭和三四年二月二七日付であり、これがa町に現実に到達したのは同年三月上旬であるから、昭和三三年度会計年度内に工事が完了できないのはやむを得ないものといえるかどうか(弁論書第一点一の(一)中にあり)。 この点については、本件補助金交付決定の通知書の日付が所論の如くであることは、前記の前押号の一二中の右通知書の写により明らかであり、従つて三月初頃a町に到達したものと認められるのであるが、本件工事は昭和三二年度からの継続工事であり、同年度においても既に五五万円の国庫補助金を受領しているのであるから(被告人A2の検察官に対する昭和三四年九 頃a町に到達したものと認められるのであるが、本件工事は昭和三二年度からの継続工事であり、同年度においても既に五五万円の国庫補助金を受領しているのであるから(被告人A2の検察官に対する昭和三四年九月二八日付供述調書―前出)、特別の事情のない限り昭和三三年度においても国庫補助金が出ることは当然予想できるところであり、被告人等としても又このことを予想したものと考えられるから、即ち補助金をいわゆるあてにして工事を進めることは可能であつたのであるから、本件交付決定通知の遅延を以て本件工事の遅延の一因とする所論は当らないところといわなければならない。 (3) 本件一二二万円の支払は原判示の如く概算払でないかどうか(この点は、趣意書には明示されていないが、弁論書中にある)。 この点については、原判決はその趣旨必ずしも明らかではないが、概算払ではなく清算払であるかの如く考えているようであるが、原判決挙示のB21の検察官に対する供述調書(記録第五冊二二二九丁)同調書添付の「昭和三三年一般会計歳出予算に係る概算払について」、B8及びB6の原審における各証言(前者は記録第二冊六三一丁、後者は前出)によれば、本件一二二万円の支払は会計法第二二条、予算決算及び会計令第五八条第三号に基く概算払であると認めざるを得ない。しかしながら、それが概算払であるからといつて、適正化法第二九条第一項の適用がないということにはならないのであつて、このことは、前述の通り本条が保護しようとしている国損はその支払がいかなる形態にせよ国が現実に金員を支払つたときに発生するということを考えれば自ら納得が行く筈である(村上孝太郎著、補助金等適正化法二二三頁及び当審証人B20の証言参照)。 原判決は前述の通り被告人等が金一二二万円を精算払として受領したかの如く認定しているが、これは傍論 ば自ら納得が行く筈である(村上孝太郎著、補助金等適正化法二二三頁及び当審証人B20の証言参照)。 原判決は前述の通り被告人等が金一二二万円を精算払として受領したかの如く認定しているが、これは傍論として述べているだけのことであり、罪となるべき事実の判示として何らこの点に触れているわけのものではないので、この誤認は判決に影響を及ぼすものではない。 (4) 本件一二二万円の補助金の支払を請求するには、本件工事の竣工したことが要件となつてはいないから、被告人等が本件補助金の支払の請求に際し竣工届書を提出したからといつて偽りその他不正の手段を請じたことにはならないといえるかどうか(控訴趣意第一点三の(三))。 この点については、原審におけるB15(第一回)、B19、B6の各証言(いずれも前出)及びB21の検察官に対する供述調書添付の「昭和三三年一般会計歳出予算に係る概算払について」(前出、特に備考三の「当該事業が年度内に完成し」とある点)によれば、当該年度の補助金の全額の支払は、事業が完成していることが要件となつていることが明らかであるから、完成していないのに竣工届を提出する等の行為に出れば、偽りその他不正の手段を講じたことになることは多言を要しないところである。 なお、この点に関し、弁論書には、本件補助金の支払の請求をしたり又その際竣工もしていないのに竣工届を添付したりしたのは公衆衛生課のB15係長の指導によるもので、被告人等が進んでなしたものではないとの主張があるが、B15の原審以来の証言としては竣工していないのに竣工届を提出するよう指導したことは固よりこれを認めてはいないのであるが、仮りにそうだとしても、その場合には、B15が被告人等又は情を知つて補助金を交付した者(適正化法第二九条第二項違反)の幇助犯等の共犯となるだけのことであり とは固よりこれを認めてはいないのであるが、仮りにそうだとしても、その場合には、B15が被告人等又は情を知つて補助金を交付した者(適正化法第二九条第二項違反)の幇助犯等の共犯となるだけのことであり、これがため被告人等の犯罪の成立に何らの消長を及ぼすものではない。 (5) 本件犯行の動機の点についての原判示の「同町の方針として予算の不足から工事金は可能なかぎりの補助金、起債等でまかない町の負担を少くしようとしていたので」とある点が事実誤認かどうか(控訴趣意第一点三の(一))。 これは、本件犯行の動機に関する認定であるから、仮りにそれが誤認であつても、刑事訴訟法第三八二条にいわゆる事実誤認には該当しないのであるが、重要な点であるので、当裁判所の判断を述べておくと、被告人A3の昭和三四年一〇月五日付検察官に対する供述調書(記録第四冊一六六四丁)第二項には、原判示にそう供述があり、又被告人A3、A2の検察官に対する各供述調書に見られる如く本件工事につきD2商会に相当多額の寄付をさせていること等を考えると、前記被告人A3の検察官に対する供述は真実を述べたものと受取らざるを得ないのである。尤も、弁論書にある如く補助金は工事費の四分の一について交付されるだけであり、又起債は結局はこれを返還することを要するということを考えれば、原判示の用語はいささか正確を欠くといえないこともないのであるが、要するに町の負担をできるだけ少くしようとしていたことは間違いないところであるから、結局は用語の妥当性の問題に過ぎないのであつて、動機についての認定を誤つたものとまでいう必要はないところである。 以上控訴趣意の主要な点及び控訴趣意にはなくても、本件にまつわる重要な事実点及び法律点についての当裁判所の判断を述べたのであるが、右に触れた以外の控訴趣意の諸点は、その法 要はないところである。 以上控訴趣意の主要な点及び控訴趣意にはなくても、本件にまつわる重要な事実点及び法律点についての当裁判所の判断を述べたのであるが、右に触れた以外の控訴趣意の諸点は、その法律点についてはすべて弁護人独自の見解であり、又事実点については原判決挙示の証拠及びその他の関係証拠によつても何ら事実の誤認はないから、弁護人の主張する本件控訴趣意はすべてその理由がない。 次に、職権を以て調査するに、昭和三四年三月三一日における未完成部分は前記の如く一四八〇米であるのに、一二二万円の全額につき適正化法第二九条第一項に違反するかどうかという問題がある。原判決はこれを積極に解しているが、補助金が可分である場合には未完成部分についてだけ犯罪が成立すると解する説(村上孝太郎著前掲二二六頁)があるので、この点について考えて見るに、若し本件の場合これを可分に解すべきものとするならば、一二二万円から三八万三〇〇〇円を控除した残額八三万七〇〇〇円についてだけ犯罪の成立を認めれば足りるわけである。 何故ならば、未完成部分一四八〇米敷設の経費についての補助金は、前述の昭和三四年一一月に提出された実績報告書(前押号の一四三)によれば三八万三〇〇〇円とされているからである。 しかしながら、形式論ではあるが原判示の如く本件は一通の小切手で支払がなされており、又実質論としても、本件一二二万円の補助金は当該年度内竣工を前提として支払われるものであり、しかも前述の如く昭和三四年四月以降近い将来においてこれを完成させる意図のないものについては、法律的にいえば本件の場合は可分のものとはいえないので、原判示はこれを正当となすべきである。 (その余の判決理由は省略する。)(裁判長判事栗本一夫判事上野敏判事赤塔政夫) 可分のものとはいえないので、原判示はこれを正当となすべきである。 (その余の判決理由は省略する。)(裁判長判事栗本一夫判事上野敏判事赤塔政夫)

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