平成15(ネ)257 損害賠償請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成15年10月31日 広島高等裁判所 山口地方裁判所 下関支部 平成13(ワ)11
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判決文本文8,823 文字)

主文 1 原判決中,控訴人に関する部分を次のとおり変更する。 2 控訴人は,被控訴人に対し,1審被告Aと連帯して2569万4208円及び内金2500万円に対する平成10年6月1日から,内金69万4208円に対する平成10年1月27日から,それぞれ支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。 3 被控訴人の控訴人に対するその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用は,第1,2審を通じ,これを5分し,その2を控訴人の,その余を被控訴人の負担とする。 5 この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 以下の書証の引用について,本訴甲8(山口地方裁判所下関支部平成10年(ワ)第180号事件の記録)を引用する際には,同事件の表示に従い,「前訴甲1」「前訴証人尋問調書」などという。また,特に記載のない限り,枝番の表記は省略する。 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人(1) 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。 (2) 被控訴人の請求を棄却する。 2 被控訴人本件控訴を棄却する。 第2 事案の概要 1 本件は,原判決別紙記載の土地(以下「本件土地」という。)の所有者Bから所有権移転登記を経由した被控訴人が,同移転登記に係る売買(以下「本件売買」という。)が無効であるとしてBから提起された同登記の抹消登記手続請求訴訟に敗訴したことから,本件土地の売買契約書に立会人として記名・押印し,当事者双方の代理人として本件土地の被控訴人への所有権移転登記手続を行った司法書士である控訴人に対し,所有者の委任意思の確認につき過失があったとして,不法行為に基づき,損害賠償(本件契約に基づき売主に対して支払った代金相当額等)を求めた事案である。 なお,原 った司法書士である控訴人に対し,所有者の委任意思の確認につき過失があったとして,不法行為に基づき,損害賠償(本件契約に基づき売主に対して支払った代金相当額等)を求めた事案である。 なお,原審において,被控訴人は,本件土地の売買に代理人と称して関与し,代金を受領した1審被告Aに対しては,被控訴人を欺罔して本件契約を締結させたとして,また,1審被告Cに対しては,本件土地の所有関係等を確認することなく被控訴人に本件契約を締結させたとして,それぞれ不法行為等を根拠として,損害の賠償を求めていた。 その余の事案の概要は,次のとおり付加,訂正するほか,原判決「事実及び理由」欄中の「第2 事案の概要」に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決3頁4行目の「別紙1」を「別紙」に改め,同頁下から7行目の「本件登記につき,」の次に「被控訴人及びBの」を加える。 (2) 原判決4頁下から6行目の次に,行を改めて次のとおり加える。 「ア被控訴人被控訴人は,本件土地の売買に関して,次のとおりの損害を被った。 (ア) 平成10年6月1日までに,売買代金として6250万円を支払った。 (イ) 平成10年1月27日,所有権移転登記手続費用として,173万5520円を控訴人に支払った。 (ウ) 平成10年6月25日,不動産取得税として,147万8900円を支払った。 (エ) 平成10年8月3日,土地測量・境界立会費用としてDに83万7270円(消費税を含む。)を支払った。 イ控訴人前記(イ)は認めるが,その余は不知である。」(3) 原判決6頁14行目の末尾に続けて「又は少なくとも適正な過失相殺がされるべきである。」を加える。 2 原審は,被控訴人は 控訴人前記(イ)は認めるが,その余は不知である。」(3) 原判決6頁14行目の末尾に続けて「又は少なくとも適正な過失相殺がされるべきである。」を加える。 2 原審は,被控訴人は,司法書士として登記名義人(所有名義人)であるBの登記手続委任の意思を確認しなかったことなどについて過失があったとして,控訴人に不法行為責任を認めたが,被控訴人にも3割の過失があったとして,その7割相当額について認容し,その余の請求は理由がないとして棄却した。これを不服として控訴人から提起されたのが,本件控訴事件である(なお,1審被告Aに対する請求は全額認容されたが,1審被告Cに対する請求は全て棄却され,これらの認容及び棄却部分はそのまま確定している。)。 3 当審における争点は,(1) 控訴人の過失の有無,すなわち,① 控訴人は,本件登記申請手続において使用された委任状のうち登記義務者であるB作成部分が1審被告Aにより偽造されたものであること(したがって,1審被告Aが無権限により本件契約を締結したこと)を知りながら,同手続を行ったものであるかどうか② 控訴人は,前記偽造の事実を過失により知らずに,本件登記手続を行ったものであるかどうか(控訴人は,前記所有権移転登記手続の委任者となっている所有者であるBの委任意思を確認すべき義務があったかどうか)③ 控訴人が被控訴人に対し,前記委任状偽造の事実が判明した段階で,適切な助言を行うべき義務があり,これに違反したかどうか(2) 被控訴人についての過失の有無及び程度(控訴人に過失が認められた場合)(3) 被控訴人の損害額である。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人には,司法書士としての職務上の注意義務に違反した過失が認められるから,被控訴人の被った が認められた場合)(3) 被控訴人の損害額である。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人には,司法書士としての職務上の注意義務に違反した過失が認められるから,被控訴人の被った損害につき賠償する義務があるが,一方,被控訴人にも,本件売買の当事者として当然果たすべき基本的注意義務を怠った重大な過失が認められるから,その過失の程度を6割として過失相殺し,結局,認定される被控訴人の損害額のうち4割を控訴人の責任と認めるのが相当であると判断する。 その理由は,次のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」欄中の「第3 争点に対する判断」欄に記載のとおりであるから,これを引用する(ただし,控訴人以外の1審被告と被控訴人に係る部分を除く。)。 (1) 原判決8頁4行目の「別訴」を「前訴」に改める。 (2) 原判決9頁15ないし16行目の「売買契約書」のあとに「(しかも,同契約書には,売主であるBの記名・捺印は全くなく,したがって,売主が誰であるかが同契約書からは全く分からないという不自然・不備なものであった。)」を付加する。 (3) 原判決10頁15行目の「作成して」から同16行目の「交付していた。」までを「作成した(甲4=前訴乙5がその写し)。」に,同頁下から9行目の「上記シ」を「1審被告Aから同日受領した前記シ」にそれぞれ改める。 (4) 原判決12頁10行目から同13頁21行目までを次のとおり改める。 「2 争点(2)(当審における争点(1)及び(2))について(1) 司法書士は,他人の嘱託を受けて登記等に関する手続を代理することなどを業務とするものであって(司法書士法2条),「業務に関する法令及び実務に精通して,公正かつ誠実にその業務を行わなければならない」(同法1条の2)とされており て登記等に関する手続を代理することなどを業務とするものであって(司法書士法2条),「業務に関する法令及び実務に精通して,公正かつ誠実にその業務を行わなければならない」(同法1条の2)とされており,登記の申請手続の委任を受けた場合には,委任の本旨に従い,当該登記の原因となる契約等の目的が委任者の意図のとおり達成されるように,善良な管理者として注意をする義務があり,これは,当該取引の当事者双方からの委任を受けた場合であっても同様であることはいうまでもないところである。また,司法書士は,登記義務者の代理人と称する者の依頼を受け所有権移転の登記申請をするに当たり,依頼者の代理権の存在を疑うに足りる事情がある場合には,登記義務者本人について代理権授与の有無を確かめ,不正な登記がされることのないように注意を払う義務があるものというべきである(最高裁判所昭和50年11月28日第三小法廷判決・金融法務事情777号24頁参照)。 したがって,所有権移転登記手続の委任を受けた場合には,各当事者から交付された登記関係の書面が当該登記手続に必要な要件を満たしているかどうかについて点検,調査を行うとともに,当事者双方,とりわけ登記義務者である所有者の登記委任意思ないし代理権授与の有無を確認することは,最も基本的な注意義務のひとつであるというべきである。そして,仮に,所有者の意思に基づかない登記が経由された場合には,所有者に大きな損害を被らせることになるから,この確認義務は,第一義的には所有者に対する義務であるが,他方,不実の登記が経由された場合には,真実の所有者から,登記名義人となっている登記権利者に対して所有権移転登記抹消登記手続請求が提起されることが容易に予想され,その結果,当該所有権移転登記が無効のものと認定されるおそれが払拭できない等,登記権利者に対 登記名義人となっている登記権利者に対して所有権移転登記抹消登記手続請求が提起されることが容易に予想され,その結果,当該所有権移転登記が無効のものと認定されるおそれが払拭できない等,登記権利者に対しても重大な影響を及ぼすものであることは否定できないから,前記の確認義務は,登記権利者に対する義務でもあるというべきである。 ところで,その意思確認に当たっては,当該事案の具体的経緯,特に当該登記手続の原因となる契約関係についての司法書士の関与の有無及び程度等の諸事情に応じ,適切な確認方法を採るべきであって,当事者から提出された書面が形式上の要件を満たしており,外形的に本人のものと認められる印影が押捺された書面及び印鑑登録証明書が存在しさえすれば足りるというものではない。 (2) そこで本件を見るに,本件各証拠によるも,1審被告Aが,前記委任状を偽造した点につき,控訴人が悪意であったとまでは認められない。 しかしながら,前記(原判決7頁1行目から同11頁3行目まで及び前記付加,訂正部分)で認定した事実によると,控訴人は,被控訴人が1審被告Aに対して当初に本件契約に係る代金の一部として650万円を支払った際,立会人として1審被告Aとともに預り証に署名しているほか,本件契約書に立会人として記名・捺印をしており(したがって,その際,売主である登記義務者が立ち会ってはいないことを認識していた。),控訴人が1審被告Aから当初受け取った委任状(甲3)には,権利者としてEとの記載が,また,登記の目的として「売買に依る所有権の移転」との記載がされているだけであって,登記原因の記載はなく,その後,さらに,1審被告Aから同一の書面でBの捨印が押捺された委任状(甲4)の交付を受け,これに控訴人自らが所要事項を補充して本件登記に使 との記載がされているだけであって,登記原因の記載はなく,その後,さらに,1審被告Aから同一の書面でBの捨印が押捺された委任状(甲4)の交付を受け,これに控訴人自らが所要事項を補充して本件登記に使用された委任状(甲5)を完成させたものである。 本件の場合,前記認定のとおり,最終的に控訴人に交付された委任状には,Bの名下に押捺された印影自体は真正に押捺された上,捨印という形式で当該書面の訂正を容認する作成者Bの意思が外形上表示されていたのであり,かつ,その捨印は作成者であるBの名下に真正に押捺された印影とは相似しているものであり,一見してこれと異なるものとは判別しがたいものであったことが認められる。 しかしながら,控訴人は,本件において,単に本件登記の申請手続を行っただけではなく,本件土地に関する被控訴人との契約経過にも関与していたところ,本件土地について作成された売買契約書(本件契約書)には,「売主代理人」として1審被告Aが記名捺印をしているほかには,登記簿上の所有名義人であるBの記名等はもとより,同会社関係者の立会人としての記載もなく,また,訂正後の手付金が代金全額となっている上,通常の不動産の売買契約書であれば当然貼付されているはずの収入印紙もなく,本件土地に設定されている優先担保権の処理に関する取り決めの記載もないのであって,このような本件契約書の不自然さに徴すると,これに立会人として記名・捺印した控訴人においても,売主の真意ないし1審被告Aの代理権の有無に一応疑念を入れるべき事情は存在していたものというべきである(売買契約書自体に売主となるべきBの1審被告Aに対する委任状が添付されているなら格別であるが,本件においては,そのような事情を認めるに足りる証拠はない。)。また,この時点以降,控訴人としては ある(売買契約書自体に売主となるべきBの1審被告Aに対する委任状が添付されているなら格別であるが,本件においては,そのような事情を認めるに足りる証拠はない。)。また,この時点以降,控訴人としてはBの本件土地の処分意思等についての意向を確認する機会は十分にあったものと認められる(控訴人は,甲4の委任状を呈示された時点において,本件売買の登記手続につき委任されることは予想していなかった旨主張するが,証拠(甲8=前訴乙21,原審控訴人)によれば,それまで1審被告Aの取引に関しては控訴人が少なくとも五,六回その登記手続を受任してきたことがあること,1審被告Aは,本件についても控訴人に委任する予定であったことが認められ,これらの事実に照らすと,控訴人の前記主張は信用できず,採用することは困難である。)。」(5) 原判決13頁22行目の「被告F」から同23行目の「ある。」までを削除する。 (6) 原判決14頁下から4行目から15頁9行目までを次のとおり改める。 「(4) もっとも,本件契約が無効であったことから被控訴人に損害が生じたことについては,被控訴人自身(具体的には当時の代表者であった畑中)にも落度(過失)があったというべきである。 すなわち,被控訴人は,本件土地の売主がBであることは,被控訴人の代理人ないしは使者として活動していた一審被告Cから受け取っていた本件土地の登記簿謄本等から十分知っていたと認められるところ,前記のとおり,本件契約書は,売主の記名も捺印もなく,訂正後の手付金が代金全額とされ,収入印紙の貼付も,優先担保権の処理に関する取り決めについての記載もないという,極めて不自然・不備なものであり,しかも,同契約書上売主の代理人とされている一審被告Aへの売主からの代理権授与を示す何らの資料もなかったのであ 担保権の処理に関する取り決めについての記載もないという,極めて不自然・不備なものであり,しかも,同契約書上売主の代理人とされている一審被告Aへの売主からの代理権授与を示す何らの資料もなかったのであり,その上,本件土地についての所有権移転登記手続を契約当事者双方が控訴人に委任する趣旨の委任状(甲5)自体も,前記のとおり,まことに杜撰なものと言わざるを得ない記載内容等のものであったのであって,したがって,これらの諸事情を認識していた被控訴人としては,売主であるBの代理人とされている者への代理権授与の有無を確認するなどして売主の売却意思を確認すべき状況にあったというべきである。 ところが,被控訴人は,一審被告Cを介した同Aからの説明等から,同人がBから本件土地の処分権限を授与されているものと軽信し,同人の代理権の存在に何らの疑念も抱かず,売主に対して直接売却意思を確認することもなかったのであるから,この点について被控訴人にも過失(落度)があるというべきである。登記義務者の登記意思やそのための代理権授与の有無の確認は,司法書士の義務ではあるとしても,売買契約における売主の売却意思やそのための代理権授与の有無の確認は,本来,買主側が行うべきこと(不動産仲介業者が介在する場合は,そのものによる意思確認も含めて。)は当然のことである。本件契約の代金は6250万円という相当大規模のものであり,慎重な配慮が求められて然るべきものであるところ,被控訴人は,本件登記手続に関する委任状が偽造のものであるらしいとの連絡があった旨の通知を控訴人から受けたのちも,何らの懸念も抱かないまま,約定に従った代金支払を継続している。 このような諸事情を考慮すると,本件における被控訴人の落度は重大であり,登記手続を受任した控訴人より大きいと言わざるを も,何らの懸念も抱かないまま,約定に従った代金支払を継続している。 このような諸事情を考慮すると,本件における被控訴人の落度は重大であり,登記手続を受任した控訴人より大きいと言わざるを得ず,結局,その過失割合は60パーセントと認めるのが相当である。」(7) 原判決16頁2行目から同14行目までを次のとおり改める。 「4 争点(4)(当審における争点(3))について証拠(前訴甲15,前訴乙13,14,32ないし35)及び弁論の全趣旨によれば,被控訴人が主張する前記損害のうち,(ア)6250万円(本件土地の売買代金)の支払の事実が認められ,(イ)については当事者間に争いがない。しかし,前記(ウ)147万8900円(不動産取得税)については,本件各証拠中に,被控訴人がこれを支払ったと認めるに足りる的確な証拠はなく,また(エ)83万7270円(Dへの支払金)についても,前訴乙39は請求書であって領収書の類ではなく,しかもその日付は前訴の訴状が受理された平成10年6月30日(甲8のうち「訴状」1枚目)より相当後である同年8月3日であることを勘案すると,被控訴人が速やかにこれを支払ったと考えるのも躊躇されるところであり,他に支払の事実を認めるに足りる的確な証拠はない。したがって,前記(ア)及び(イ)の合計である6423万5520円が,控訴人の本件不法行為により被控訴人が被った損害と認められる。」 2 控訴人は,当審において,平成9年12月中旬ころ,Eを権利者とする所有権移転仮登記について,同人の抹消承諾書がすでに存在しており,また,本件の所有権移転登記は,同人の仮登記の抹消登記手続が前提となっていた,いわゆる連件一括申請事件という極めて特殊な案件であったこと(登記簿謄本〔甲1〕の甲区欄順位番号5,6番),前訴で おり,また,本件の所有権移転登記は,同人の仮登記の抹消登記手続が前提となっていた,いわゆる連件一括申請事件という極めて特殊な案件であったこと(登記簿謄本〔甲1〕の甲区欄順位番号5,6番),前訴で明らかになったように,Eは登記義務者であるB側の知人でもあったこと,前記仮登記は,執行妨害・滌除の手段にすぎなかったこと,したがって,Eは,保護されるべき正当な権利を有していなかったこと,等の経緯・諸事情を総合的に判断すれば,売主(B),E,1審被告Aらにとってのみならず,他方で,不動産の取引を多く経験している1審被告Cを使者として,本件売買の交渉に当たらせ,逐一同人に報告を求めていた被控訴人にとっても,権利者の訂正によることが好都合・簡便であったことは疑う余地もなく,被控訴人もこれを是認していたはずであること,何よりも,委任状は,委任者が作成・吟味した上で,受任者に交付すべき書面であって,登記申請の委任状もこの例外ではないから,新たな委任状を作成するのが一般的であった等とはいえないこと,これらの諸事情から判断すれば,控訴人には過失は認められない,と主張する。 しかしながら,前記説示のとおり,登記義務者の代理人と称する者からの登記申請の依頼を受けた場合には,司法書士としては,その代理人と称する者の言動,提出された書類の性格,形状,内容及び自分が当該取引に関与した経緯等に照らして,登記義務者本人の登記意思ないしその代理人と称する者への代理権授与の存在を疑うに足りる事情が認められるときには,適宜,登記義務者である所有者に当たるなどしてその確認をすべき義務があるというべきであるところ,本件においては,前記のような1審被告Aの代理権授与の有無及びBの登記委任意思を疑うべき事情が存在しており,たとえ,Eを権利者とする前記所有権移転請求権仮登記が き義務があるというべきであるところ,本件においては,前記のような1審被告Aの代理権授与の有無及びBの登記委任意思を疑うべき事情が存在しており,たとえ,Eを権利者とする前記所有権移転請求権仮登記が執行妨害・滌除等の目的に出たものであって,同人は正当な権利を有するものではなく,この仮登記を抹消するにつき,所有者であるBが承諾していた(またはその承諾が推定される)としても,そのことから当然に,Bが本件土地を被控訴人に売却することまで承諾していたとは考えられないから,控訴人の前記主張は失当であって,採用することはできない。 3 以上の次第であり,被控訴人の控訴人に対する本件請求は,前記認定損害額6423万5520円及び前記各支払金員に対する各支払日以降の遅延損害金の4割相当額である2569万4208円及びこれに対する各遅延損害金の限度で理由があると認められ,これと一部異なる原判決は不当であるから変更することとし,主文のとおり判決する。 広島高等裁判所第2部 裁判長裁判官鈴木敏之裁判官松井千鶴子裁判官工藤涼二

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