平成21(行ウ)475 遺族厚生年金不支給処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成23年8月23日 東京地方裁判所 その他
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判決文本文28,389 文字)

主文 1 社会保険庁長官が平成20年3月24日付けで原告らに対してした遺族厚生年金不支給決定を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求主文同旨第2 事案の概要本件は,原告らが,その長男であるP1が厚生年金保険の被保険者である間に初診日がある○により当該初診日から起算して5年を経過する日以前に死亡したとして,遺族厚生年金の受給権の裁定請求(以下「本件請求」という。)をしたところ,社会保険庁長官(当時)から,P1が厚生年金保険の被保険者である間に初診日のある傷病と死亡の原因となった傷病との間の因果関係は認められないとして,遺族厚生年金を支給しない旨の処分(以下「本件処分」という。)を受けたことから,その取消しを求めている事案である(なお,平成22年1月1日の日本年金機構法の施行に伴い,処分行政庁の地位が社会保険庁長官から厚生労働大臣に承継された。)。 1 関係法令等の定め(1) 厚生年金保険法ア厚生年金保険法(以下「厚年法」という。)58条1項2号は,遺族厚生年金は,「被保険者であった者が,被保険者の資格を喪失した後に,被保険者であった間に初診日がある傷病により当該初診日から起算して5年を経過する日前に死亡したとき」に,その遺族に遺族厚生年金を支給すると定めている。 なお,厚年法47条1項は,「傷病」について,疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病と定義し,「初診日」について,傷病につき初めて医師 又は歯科医師(以下「医師等」という。)の診療を受けた日と定義している。 イ厚年法59条1項は,遺族厚生年金を受けることができる遺族は,被保険者又は被保険者 ついて,傷病につき初めて医師 又は歯科医師(以下「医師等」という。)の診療を受けた日と定義している。 イ厚年法59条1項は,遺族厚生年金を受けることができる遺族は,被保険者又は被保険者であった者の配偶者,子,父母,孫又は祖父母であって,被保険者又は被保険者であった者の死亡の当時その者によって生計を維持したもの(以下「生計維持関係」という。)とすると定めている。また,同条4項は,同条1項の規定の適用上,被保険者又は被保険者であった者によって生計を維持していたことの認定に関し必要な事項は政令で定めると定めている。 (2) 厚生年金保険法施行令厚生年金保険法施行令(以下「施行令」という。)3条の10は,厚年法59条1項に規定する被保険者又は被保険者であった者の死亡の当時その者によって生計を維持していた配偶者,子,父母,孫又は祖父母は,当該被保険者又は被保険者であった者の死亡の当時その者と生計を同じくしていた者であって厚生労働大臣の定める金額以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外のものその他これに準ずる者として厚生労働大臣の定める者とすると定めている。 施行令3条の10を受けて,厚生労働大臣は,上記の厚生労働大臣の定める金額を年額850万円と定めている(平成6年11月9日庁保発第36号各都道府県知事あて社会保険庁運営部長通知)。 なお,現時点で,施行令3条の10にいう「その他これに準ずる者として厚生労働大臣の定める者」について規定した厚生労働大臣の定めはない。 (3) 生計維持要件に関する通達の定め等厚年法59条4項,施行令3条の10にいう被保険者又は被保険者であった者によって生計を維持したものであること(以下「生計維持要件」という。)については,「生計維持関係等の認定基準及び認定の取扱いについて 法59条4項,施行令3条の10にいう被保険者又は被保険者であった者によって生計を維持したものであること(以下「生計維持要件」という。)については,「生計維持関係等の認定基準及び認定の取扱いについて」(昭 和61年4月30日庁保険発第29号社会保険庁年金保険部国民年金課長・社会保険庁年金保険部業務第一課長・社会保険庁年金保険部業務第二課長通知。平成6年2月9日庁文発第3235号による一部改正後のもの。以下「本件通達」という。)が発せられている。 本件通達は,原則として,以下のア及びイを満たす場合に,遺族厚生年金の受給権者と死亡した被保険者又は被保険者であった者との間に生計維持関係があるものと認定するものとすると定めている。 ア生計同一要件本件通達は,遺族厚生年金の受給権者(生計維持認定対象者)が死亡した者の父母,孫又は祖父母である場合には,原則として,以下の生計同一要件に該当する者は生計を同じくしていた者又は生計を同じくする者に該当するものとすると定めている。 (ア) 住民票上同一世帯に属しているとき(イ) 住民票上世帯を異にしているが,住所が住民票上同一であるとき(ウ) 住所が住民票上異なっているが,次のいずれかに該当するときa 現に起居を共にし,かつ,消費生活上の家計を一つにしていると認められるときb 生活費,療養費等について生計の基盤となる経済的な援助が行われているときイ収入要件本件通達は,以下の場合のいずれかに該当する者は厚生労働大臣の定める金額(年額850万円)以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外の者に該当するものとすると定めている。 (ア) 前年の収入が年額850万円未満であること(イ) 前年の所得が年額655万5000円未満であること(ウ) 一時的な所得がある と認められる者以外の者に該当するものとすると定めている。 (ア) 前年の収入が年額850万円未満であること(イ) 前年の所得が年額655万5000円未満であること(ウ) 一時的な所得があるときは,これを除いた後,上記(ア)又は(イ)に 該当すること(エ) 上記(ア),(イ)又は(ウ)に該当しないが,定年退職等の事情により近い将来収入が年額850万円未満又は所得が年額655万5000円未満となると認められること 2 前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 当事者等ア P1は,昭和▲年▲月▲日に出生し,P2株式会社等3社での勤務を経た後,平成15年12月15日から平成18年7月25日まで,P3株式会社(以下「P3」という。)で勤務しており,その間,厚生年金保険の被保険者であった。(乙1,5)イ原告P4及び原告P5は,P1の両親である。 原告らとP1は,千葉県市川市α×番9号で原告P4を世帯主として同居していたが,P1は,平成12年12月10日,同市β×番5号所在のγ×号(以下「転居前居室」という。)に転居するとともに,同月21日の住民届出をもって世帯を独立させた。(乙1)他方,原告らは,平成13年3月16日,上記住所から同市α×番10所在のδ(以下「本件マンション」という。)×号室に転居した。(乙1)また,P1は,平成13年3月23日,転居前居室から本件マンション××号室に転居した。(乙1)なお,原告らの二男であるP6は,平成16年9月2日,前住所から本件マンション×号室に転居した。(乙1)以上の住民票の記載につき,本件処分時までは,平成▲年▲月▲日にP1の死亡届出がされた以外に異動はない。 ウ原告P4の平成18年1月 2日,前住所から本件マンション×号室に転居した。(乙1)以上の住民票の記載につき,本件処分時までは,平成▲年▲月▲日にP1の死亡届出がされた以外に異動はない。 ウ原告P4の平成18年1月1日から同年12月31日までの総所得金額は,490万1462円であり,給与所得が150万円,不動産所得が3 40万1462円であり,原告P5の同時期の総所得金額は116万4000円であった。 なお,原告P4の平成18年度の国民年金受給額は年77万4164円であった。 (以上につき,乙1)(2) P1の病状及び死亡に至る経緯等ア P1は,平成▲年▲月▲日,左胸部痛を訴え,医療法人P7医院(以下「P7医院」という。)を受診した。(甲3の1,乙1,3)その際,P7医院のP8医師は,P1の胸部レントゲンを実施し,医療法人P9病院(以下「P9病院」という。)にP1の胸部単純CT撮影及び画像の読影を依頼した。 イ P9病院P10医師は,平成▲年▲月▲日,P1の胸部単純CT撮影を実施した結果,同人の両肺につき,○があると診断し,その所見として右中葉,左舌区,左下葉に線状影が認められるとし,他方,その他,両肺の明らかな○及び○,明らかなリンパ節腫大,胸水,CT描出範囲内の上腹部臓器の著変の所見はいずれも認められないとした。 P8医師は,上記胸部単純CT撮影結果(別紙CT画像写し①。以下「CT画像①」という。)を踏まえ,P1につき左胸部の○と診断した。 なお,P1は,平成▲年▲月▲日にP7医院を再診した後,同医院を受診していない。(甲7の2)ウ P1は,平成▲年▲月▲日,社団法人P11診療所(以下「P11診療所」という。)において,P12組合主催の定期健康診断(以下「本件定期健診」という。)を受けた。 P11診療所は,本件 2)ウ P1は,平成▲年▲月▲日,社団法人P11診療所(以下「P11診療所」という。)において,P12組合主催の定期健康診断(以下「本件定期健診」という。)を受けた。 P11診療所は,本件定期健診の結果,P1につき,① 白血球数が基準値よりも多かったため,一般的に感染症の場合に白血球数が増加することから,直ちに病院で医療を受ける必要がある,② 尿糖,尿蛋白,空腹 血糖が基準値の範囲外であったため,○の疑いがあると判断し,P1に対し,① 白血球数につき要医療,尿蛋白,糖代謝(空腹血糖)につき要精密検査となったことから,産業医・主治医等に相談し適切な処置を採ること,② BMI(肥満1度),血圧,肝機能,脂質についても産業医・主治医等に相談することを求める旨の健康診断結果を通知した。 なお,本件定期健診の結果,基準値の範囲外の数値を示した項目・数値及びP1の過去の定期健康診断時の項目・数値との対比は,以下のとおりである。 (以上につき,甲4,乙1,3)(ア) 白血球数(基準値:3900~9800/ul)平成▲年▲月▲日定期健康診断時 8300/ul平成▲年▲月▲日定期健康診断時 8400/ul本件定期検診時 15200/ul(イ) 尿糖平成▲年▲月▲日定期健康診断時 (-)平成▲年▲月▲日定期健康診断時 (-)本件定期検診時 (+)(ウ) 尿蛋白平成▲年▲月▲日定期健康診断時 (-)平成▲年▲月▲日定期健康診断時 (-)本件定期検診時 (+)(エ) 空腹血糖(基準値:109㎎/dl)平成▲年▲月▲日定期健 (-)平成▲年▲月▲日定期健康診断時 (-)本件定期検診時 (+)(エ) 空腹血糖(基準値:109㎎/dl)平成▲年▲月▲日定期健康診断時 105㎎/dl平成▲年▲月▲日定期健康診断時なし本件定期検診時 179㎎/dl(オ) BMI(基準値:22.0) 平成▲年▲月▲日定期健康診断時 28.9平成▲年▲月▲日定期健康診断時 28.7本件定期検診時 28(肥満1度)(カ) 血圧平成▲年▲月▲日定期健康診断時 126/86平成▲年▲月▲日定期健康診断時 134/90本件定期検診時 146/86(キ) 肝機能(GPT)(基準値:5~35IU/1)平成▲年▲月▲日定期健康診断時 52IU/1平成▲年▲月▲日定期健康診断時 54IU/1本件定期検診時 53IU/1(ク) 脂質(中性脂肪)(基準値:30~149㎎/dl)平成▲年▲月▲日定期健康診断時 301㎎/dl平成▲年▲月▲日定期健康診断時 207㎎/dl本件定期検診時 196㎎/dlエ P1は,平成▲年▲月▲日,医療法人P13病院(以下「P13病院」という。)を受診し,① 3週間前から食事をすると胃の辺りがごろごろしたり,少し腹が張ったりし,腰の辺りが圧迫されている様な痛みがあること,② 2か月ほど前から腹部膨満感,両側腰部圧迫感があること という。)を受診し,① 3週間前から食事をすると胃の辺りがごろごろしたり,少し腹が張ったりし,腰の辺りが圧迫されている様な痛みがあること,② 2か月ほど前から腹部膨満感,両側腰部圧迫感があること,③その他,心窩部違和感があることを訴えた。 P13病院のP14医師は,同日,P1に対して実施した血液検査,腹部レントゲン撮影及び上腹部単純CT撮影等を受けて,P1につき,①○(疑),②○,③○と診断し,更なる精査・加療のため,P15病院を紹介した。 オ P1は,平成▲年▲月▲日,P15病院を受診し,血液検査で黄疸,肝胆道系酵素の上昇が認められたため,腹部超音波検査及び腹部CT検査(別 紙CT画像写し②。以下「CT画像②」という。)を受けたところ,P16医師より,約5㎝大の○であると診断され,P15病院に入院した。(甲5の1,2,乙1,3)P1は,化学療法を受け,一時退院してP15病院に外来通院していたが,病状が悪化したため,平成▲年▲月▲日にP15病院に再入院していたものの,同年▲月▲日,○を直接死因として死亡した。 (3) 本訴提起に至る経緯等ア原告らは,平成20年2月19日,社会保険庁長官に対し,遺族厚生年金の受給権につき本件請求をした。 社会保険庁長官は,平成20年3月24日付けで,原告らに対し,厚生年金保険被保険者期間中に初診日のある傷病と死亡の原因となった傷病との間に因果関係は認められないとして,遺族厚生年金を支給しない旨の本件処分をし,その旨を通知した。 イ原告らは,平成20年5月23日,本件処分を不服として,千葉社会保険事務局社会保険審査官に対し審査請求をしたが,同審査官は,同年10月8日,これを棄却する旨の決定をした。 これに対し,原告らは,平成20年12月5日,社会保険審査会に対し再 として,千葉社会保険事務局社会保険審査官に対し審査請求をしたが,同審査官は,同年10月8日,これを棄却する旨の決定をした。 これに対し,原告らは,平成20年12月5日,社会保険審査会に対し再審査請求をしたが,同審査会は,平成21年3月31日,これを棄却する旨の裁決をした。 ウ原告らは,平成21年9月25日,本件訴えを提起した。(顕著な事実)(4) 収入要件について原告らの平成18年の収入は,合計849万5626円であり,平成18年の所得も,上記(1)ウのとおり,原告P4の所得が490万1462円,原告P5の所得が116万4000円の合計606万5462円である。(乙1。収入要件につき被告は争うことを明らかにしていない。) 3 争点 (1) 初診日要件P1の○の初診日が,平成▲年▲月▲日といえるかどうか。 (2) 生計同一要件ア処分理由の差替えの可否本件処分時の処分理由となっていなかった生計同一要件の有無を本訴において主張することの可否。 イ生計同一要件の有無原告らがP1と生計を同一にしていたといえるか否か。 4 争点に関する当事者の主張の要旨(1) 争点(1)(P1の○の初診日が,平成▲年▲月▲日といえるかどうか)について(原告らの主張の要旨)ア厚年法58条1項2号について厚年法58条1項2号にいう「被保険者であつた間に初診日がある傷病」とは,被保険者期間中の初診日において,医師が現実に診断した傷病名にかかわらず,当該医師の診察ないし診療の結果によって客観的に明らかになり得る傷病と解するべきであり,「初診日」とは診療ないし治療を受けた日をいい,当該傷病の具体的治療行為等を要しないと解すべきである。 このように解すべきことは,厚年法47条1項本文,58条1項2号の る傷病と解するべきであり,「初診日」とは診療ないし治療を受けた日をいい,当該傷病の具体的治療行為等を要しないと解すべきである。 このように解すべきことは,厚年法47条1項本文,58条1項2号の文理のほか,そう解さなければ,医師によって正確な傷病名を診断できなかった場合,誤診により誤った傷病名を診断した場合や傷病を見落とした場合に,遺族は遺族厚生年金の支給を受けられず,厚年法1条の趣旨に反することになること,このように解しても,裁定機関の認定判断の客観性を十分担保し,その認定判断の画一性・公平性を確保することは可能であることから明らかである。 イ P1の厚年法58条1項2号の該当性 (ア) P1の平成▲年▲月▲日の傷病についてP1の平成▲年▲月▲日及び同年▲月▲日に撮影されたCT画像によれば,いずれにおいても○の存在が認められ,これはいずれも○によって生じたといえる。すなわち,① 上記2つの○は局在位置がほぼ同一であるところ,その大きさが異なるのは,○の進行度合いも考慮すれば,前者の○が,10か月程度経過して,○の増大に伴い○閉塞を来したことによって二次的に貯留嚢胞が増大し,後者の○になったと考えることが自然であり,前者の○は○の萌芽といえること,② この○の発生原因としては○,○又は○が考えられるところ,P1が○及び○に罹患していたことはなく,○が発生原因と考えられることからすると,両者の○はいずれも○によって生じたものといえる。 さらに,P1は,平成▲年▲月▲日の本件定期健診の際には,白血球数と血糖値に異常値が認められており,これは○による○を生じ,尾側の○が萎縮したため○内分泌機能の低下を招いた結果である可能性が高い。 以上からすると,P1は,平成▲年▲月▲日,P7医院を受診した際,○に罹患していた られており,これは○による○を生じ,尾側の○が萎縮したため○内分泌機能の低下を招いた結果である可能性が高い。 以上からすると,P1は,平成▲年▲月▲日,P7医院を受診した際,○に罹患していたと認められる。 (イ) 平成▲年▲月▲日の「初診日」該当性P1が,P7医院を受診した際に作成された平成▲年▲月▲日付けのCT画像と同年▲月▲日の本件定期健診結果は,いずれも客観的に同人がP7医院受診当時に○に罹患していたことを裏付ける資料であるから,P1は,同年▲月▲日,P8医師によって○部分も調べられていたと評価することができ,同日が厚年法58条1項2号の「初診日」に該当する。 なお,仮に,厚年法58条1項2号の「初診日」について,受診当時の医学的資料から死亡原因となった傷病を認定できることに加え,被保 険者の主訴によって医師等が当該傷病を診察したことが必要であると解した場合であっても,P1は,平成17年夏頃から,原告P5に対して○の一般的臨床所見である上腹部・腰背部の疼痛,体重減少,食欲不振,全身倦怠感,悪心・嘔吐等を訴えていたことからすると,平成▲年▲月▲日の受診の際も,P8医師に○の諸症状を訴えていたというべきであり,やはり同日が「初診日」に該当する。 ウ小括以上のとおり,P1は,被保険者期間中の平成▲年▲月▲日を初診日として同人の死因となった○について医師の診察を受けていたのであるから,原告らにおいて厚年法58条1項2号の遺族厚生年金の受給要件を満たす。 なお,遅くてもP1は本件定期健診を受けた平成▲年▲月▲日当時には○を発症していた可能性が高いのであるから,この当時P1が○に罹患していたことを否定した本件処分はこの点においても違法である。 (被告の主張の要旨)ア厚年法58条1項2号について 当時には○を発症していた可能性が高いのであるから,この当時P1が○に罹患していたことを否定した本件処分はこの点においても違法である。 (被告の主張の要旨)ア厚年法58条1項2号について厚年法58条1項2号にいう「初診日」とは死亡の原因となった傷病について初めて医師等の診療(具体的な治療行為又は療養の指示)を受けた日をいい,「被保険者であった間に初診日がある傷病により」死亡したとは,被保険者であった期間に初めて医師等から傷病に関する具体的な治療行為又は療養の指示を受け,当該傷病を原因として死亡したことをいうと解すべきである。 これに対し,原告らは,上記アのとおり,「初診日」とは診療ないし治療を受けた日をいい,当該傷病の具体的治療行為等を要しないと主張する。 しかし,原告らの上記主張は,明らかに厚年法47条1項本文,58条1項2号の文理に反するし,裁定機関の認定判断の客観性を担保するとともに,その認定判断が画一的かつ公平なものとなるよう,傷病の発症日で はなく,当該傷病につき医師等の診療を受けた日(具体的な治療行為又は療養の指示があった日)をもって遺族厚生年金の支給要件とした厚年法58条1項2号の趣旨にも反する。 また,厚年法58条1項2号は,死亡原因となった傷病と初診時の診断名が一致していることまでは要求していないし,原告らが上記アで指摘するような正確な傷病名が確定できなかったり,誤診があったとしても,当該受診時の被保険者の主訴,客観的所見,診療内容等に照らし,医学的経験則に基づき,当該受診時に死亡の原因となった傷病に関する具体的な治療行為又は療養の指示を受けたと認め得るのであれば,同号の支給要件は充足されるので,何ら不都合はない。 事後的,客観的にみて,医師等を受診した際に死亡の原因となった傷病が 傷病に関する具体的な治療行為又は療養の指示を受けたと認め得るのであれば,同号の支給要件は充足されるので,何ら不都合はない。 事後的,客観的にみて,医師等を受診した際に死亡の原因となった傷病が生じていたにもかかわらず,当該傷病に対する具体的な診療が行われないという事態が生じ得ることは否定できず,その場合,被告主張の厚年法58条1項2号の解釈では遺族厚生年金の支給要件を充足しないことになるが,このような帰結は厚年法が予定しているところである。 イ P1の厚年法58条1項2号の該当性P1の厚生年金の被保険者期間は,平成15年12月15日から平成18年7月26日までの間であるところ,P1は,同年▲月▲日,P13病院を受診した際に初めて,医師から○に関する具体的な治療行為又は療養の指示を受けたのであって,それ以前の同年▲月▲日又は同年▲月▲日の時点で,○ないしそれに起因する疾病について,医師から具体的な治療行為又は療養の指示を受けていたとは認められない。 また,原告らが上記イ(ア)で指摘するように平成▲年▲月▲日及び同年▲月▲日に撮影されたCT画像に描出された○の位置がほぼ同一であったというだけでは,同年▲月▲日の○が○の萌芽であったとするには飛躍があるし,その他このCT画像や同年▲月▲日の本件定期健診の結果に○の 所見は認められない。 仮に原告らが上記主張の根拠としている平成▲年▲月▲日に撮影されたCT画像上に描出された○が○に起因する所見であり,また,同月▲日,客観的にP1が○に罹患していたとしても,P1は,同日,左胸部痛を訴えてP7医院を受診したのであって,○ないしそれに起因する症状により同医院を受診したのではないから,上記受診がP1の○の「初診日」であるということはできない。 また,本件定期健診を受けた平 を訴えてP7医院を受診したのであって,○ないしそれに起因する症状により同医院を受診したのではないから,上記受診がP1の○の「初診日」であるということはできない。 また,本件定期健診を受けた平成▲年▲月▲日の時点においても,P1は要医療の指示を受けた事項は白血球数についてのみであり,要精密検査の指示を受けた事項は尿糖,尿蛋白及び糖代謝(空腹血糖)についてのみであるから,この時点においてもP1が医師から○に関する具体的な治療行為又は療養の指示を受けたとは認められず「初診日」に当たらない。 ウ小括以上のとおり,P1は,被保険者であった間に初診日がある傷病により当該初診日から起算して5年を経過する日前に死亡したとはいえず,厚年法58条1項2号には該当しない。 (2) 争点(2)ア(処分理由の差替えの可否)について(原告らの主張の要旨)被告は,争点(2)イにおいて,原告らは生計維持要件を欠き,厚年法59条1項本文の「遺族厚生年金を受けることができる遺族」に該当しない旨主張しているが,これは,本件処分,審査請求棄却決定及び再審査請求棄却裁決のいずれにおいてもその存否について何ら判断がされておらず,本訴提起後に,被告が初めて主張し始めたものである。 このように,行政庁が第一次判断権を行使していない別の処分理由を主張して,本件処分を適法とするのは,処分の同一性を害し,取消訴訟の訴訟物の範囲を超えるというべきである。 また,行政庁は,上記厚年法59条1項本文の実体要件の存否について第一次判断権を行使する義務に違反していたにもかかわらず,そのような行政庁において,上記実体要件を充足しないことを新たな理由として主張し,本件処分を維持することは許されないというべきである。 よって,争点(2)イにおける被告の主張は, にもかかわらず,そのような行政庁において,上記実体要件を充足しないことを新たな理由として主張し,本件処分を維持することは許されないというべきである。 よって,争点(2)イにおける被告の主張は,排斥すべきである。 (被告の主張の要旨)処分の取消訴訟の訴訟物は処分の違法性一般であり,単一の処分を正当化する個々の処分理由は攻撃防御方法としての意味しか有せず,このような攻撃防御方法の提出は当事者の自由な権能に属するのが民事訴訟の建前であるから,被告は,特別の根拠のない限り,取消しを求められている行政処分それ自体の適法性の根拠となる一切の事実を主張できると解すべきである。 本件において,原告らが生計維持要件を満たさず厚年法59条1項の「遺族」に該当しないという事実は,本件処分それ自体の適法性の根拠となる事実であり,本件訴訟において,処分理由の追加が認められず,裁判所において判断し得ないとすれば,仮に本件処分が取り消されたとしても,行政庁は,原告らが厚年法59条1項の「遺族」に該当しないことを理由として再度の不支給処分を行うことが可能となり,紛争の一回的解決を図ることができず,妥当でない。 よって,争点(2)イにおける被告の主張の追加は許されるべきである。 (3) 争点(2)イ(生計同一要件の有無)について(原告らの主張の要旨)ア住民票上世帯を異にしているが,住所が住民票上同一であるときに該当すること原告らとP1は,前提事実(1)のとおり,住民票上は住所を別にしているが,部屋番号が違うだけで,同じ本件マンション内で居住していることに変わりはなく,同じ住所で生活しているとの認識を有していたし,本件マ ンションは,もともと原告ら,P1及びP6が4人で同居していた建物を取り壊して建築された原告P4所有の建物であっ ることに変わりはなく,同じ住所で生活しているとの認識を有していたし,本件マ ンションは,もともと原告ら,P1及びP6が4人で同居していた建物を取り壊して建築された原告P4所有の建物であって,所有者用居室とした×号室だけでは,手狭であったため同じ所有者用居室である××号室にP1が就寝のため利用していたにすぎない。 また,原告らとP1は,本件マンション建築工事をしていた際には,転居前居室で同居して生活していた。 以上の経緯に照らせば,原告らとP1は単に形式上住民票上の世帯を異にしているだけで,住所が住民票上同一であるときに該当するといえる。 イ現に起居を共にし,かつ,消費生活上の家計を一つにしているときに該当すること(ア) 原告らとP1が現に起居を共にしていたこと原告らとP1は,住民票上,本件マンションの居室を異にしていたが,P1は,就寝するとき以外はすべて原告らの居室で生活していたのであり,原告らとP1の居室が異なっていたのも,原告らとしては,P1が婚姻して独立した場合を念頭においていたものにすぎず,本件マンション完成時にP1は婚姻に至っていなかったのであるから,P1が世帯を離れて独立する事情は何ら存せず,現に起居を共にしていたといえる。 なお,P6は,一時的に原告らの居室に居住を余儀なくされたにすぎないため,原告らの居室の物置用の部屋で就寝していたのに対し,P1は,恒常的に本件マンションに居住する予定であったため,無理に物置用の部屋で就寝させず,本件マンションの××号室を用意したのであり,何ら不自然な点はない。 (イ) 原告らとP1が消費生活上の家計を一つにしていることP1は,原告P4が本件マンションの建築資金を銀行から借り入れた際,P1が連帯保証人となった上,その収入のうちから月収の半額程度に (イ) 原告らとP1が消費生活上の家計を一つにしていることP1は,原告P4が本件マンションの建築資金を銀行から借り入れた際,P1が連帯保証人となった上,その収入のうちから月収の半額程度に当たる概ね毎月10万円程度を原告らに手渡して家計に入れており, 家計の支出についても,P1は,食費その他の日常生活上の支出を原告P5に管理させていたから,原告らとP1は,収入面及び支出面ともに協力しあっていたのであって,消費生活上の家計を一つにしていたといえる。 ウ生活費,療養費等について生計の基盤となる経済的な援助が行われていると認められるときに該当すること以上の事情に加え,原告らの収入額は合計でも年850万円を下回っていて前記1(3)イの収入要件は満たしており,本件マンション建築に伴う借入金返済のため月45万円程度の支出を余儀なくされていたから,原告らの生計を維持するためにはP1の月10万円程度の支出は欠かせないものであるし,実際,P1の死亡後は,原告らの生計の維持は困難となり得たところ,P1の生命保険金の支給によって生計を維持できていることからすれば,P1により原告らの生計の基盤となる経済的な援助が行われていることも認められる。 エ小括以上のとおり,原告らとP1は,前記1(3)にいう生計同一要件を満たし,生計を同一にする関係にあったと認められ,収入要件も満たしているから,原告らは厚年法59条1項本文の「遺族厚生年金を受けることができる遺族」に該当する。 (被告の主張の要旨)ア原告らとP1が住民票上世帯及び住所を異にしていること本件マンションの建築前にP1が居住していた転居前居室について,住民票を移動したのはP1のみであり,この時点で既にP1は原告らと住所及び世帯を異にしていたのであるし,本件マン を異にしていること本件マンションの建築前にP1が居住していた転居前居室について,住民票を移動したのはP1のみであり,この時点で既にP1は原告らと住所及び世帯を異にしていたのであるし,本件マンションに入居するに当たっても,前提事実2(1)のとおり,原告らとP1の転居日と転居先は異なっている。 以上からすると,原告らとP1は,住民票上,世帯も住所も異にしていたことは明らかである。 イ原告らとP1が現に起居を共にし,かつ,消費生活上の家計を一つにしていると認められるときに該当しないこと本件マンションは平成13年3月5日に新築された建物であるところ,原告らは,同月16日に×号室に,P1は,同月23日に××号室に,それぞれ住民票を移転し居住していると認められるが,他方,P6は,平成16年9月2日頃,×号室に住民票を移し,居住していることからすると,家族4名が×号室で就寝するには手狭であったから,P1が××号室を就寝のために使用していたとの原告らの主張は信用できないし,他の住人も居住している本件マンションにおいて,1階と3階に居室をそれぞれ別にして独立した世帯を設けて居住している状態をもって,起居を共にしているとはいえない。 また,P1が原告らに対して金銭交付をしていた事実を裏付ける客観的な証拠は見当たらないし,仮にP1が原告らにその主張どおり金銭を渡していたとしても,それらの金銭は,上記金額からして原告らの生活費というよりは,P1の食事等に係る費用その他P1自身の生活費に充てるためのものと解すべきであるし,P1は××号室の光熱費は自身で支払っていたというのであるから,原告らとP1が消費生活上の家計を同一にしていたとはいえない。 ウ生活費,療養費等について生計の基盤となる経済的な援助がP1から原告らに行われ 室の光熱費は自身で支払っていたというのであるから,原告らとP1が消費生活上の家計を同一にしていたとはいえない。 ウ生活費,療養費等について生計の基盤となる経済的な援助がP1から原告らに行われていると認められるときに該当しないこと前記1(3)の通達にいう①生計同一要件と②収入要件を充足し,生計維持関係が認められるには,遺族厚生年金制度の趣旨から,当該遺族が被保険者又は被保険者であった者の収入から生活費,療養費等の出捐を受け,これが自己の生計を維持するための相当な部分を占め,当該被保険者又は被 保険者であった者の出捐が得られなければ自己の生計の維持に支障を来すこととなる関係の存在が必要と解すべきである。 これを本件についてみると,原告らは,P1の約2.5倍の収入を得ていたのであって,仮にP1が毎月10万円程度の金銭を原告P5に交付していたとしても,原告らがP1の収入から生活費,療養費等の出捐を受け,これが原告らの生計を維持するための相当な部分を占め,P1の出捐が得られなければ原告らの生計の維持に支障を来すほどの状態であったとは解されない。 P1の原告らに対する家計支援及び原告らの家計収支状況に関する原告らの主張には,客観的な証拠は特にないし,かえって,原告らは,P1が退職して無職となった場合に,P1のために生活上必要な支出に相当する金銭や入院費用等を支払っていたことからすると,生計維持関係は認められない。 エ小括以上からすると,原告らの上記(3)のその余の主張もいずれも理由がなく,原告らは,生計維持要件を欠いており,厚年法59条1項の「遺族厚生年金を受けることができる遺族」に該当しない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(P1の○の初診日が,平成▲年▲月▲日といえるかどうか)について(1) おり,厚年法59条1項の「遺族厚生年金を受けることができる遺族」に該当しない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(P1の○の初診日が,平成▲年▲月▲日といえるかどうか)について(1) 厚年法58条1項2号が,昭和60年法律第34号による改正前の厚生年金保険法の定めと異なり発症日ではなく初診日を基準として遺族厚生年金の支給要件を定めているのは,厚生年金事業を管掌する政府において個々の死因となった傷病につき発症日を的確に認定するに足りる資料を有しないことに鑑み,医学的見地から裁定機関の認定判断の客観性を担保するとともに,その認定判断が画一的かつ公平なものとなるよう,当該傷病につき医師等の 診療を受けた日をもって遺族厚生年金の支給に係る規定の適用範囲を画することとしたものであると解される。 厚年法58条1項2号にいう初診日とは,疾病にかかり,又は負傷し,その疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病(以下「傷病」という。)につき初めて医師等の診療を受けた日(厚年法47条1項)をいうことがその文理上明らかであるところ,以上のような文理及び厚年法58条1項2号の趣旨に照らせば,「初診日」とは,医師等が当該傷病について初めて被保険者を診察し,医学的知見に基づきその者の当該傷病の病状を判断し(いわゆる確定診断である必要はない。),又は当該傷病に対し治療(療養の指示を含む。)を施した日をいうものと解される。そして,医師等が当該傷病の診断をしたときは,被保険者の愁訴の内容にかかわらず,当該傷病について診療(診察)をしたといえることは当然であるが,そのような場合でなくとも,当該傷病について医師等が被保険者を診察したということができる場合は存在するのであって,そのためには,被保険者が当該傷病に関する症状を医師等に訴えていた形跡があり,当 が,そのような場合でなくとも,当該傷病について医師等が被保険者を診察したということができる場合は存在するのであって,そのためには,被保険者が当該傷病に関する症状を医師等に訴えていた形跡があり,当該医師等によって,事後的にせよ当該傷病が当該初診日当時に存在していたことを医学的に判断することができるだけの客観的資料が収集されていることを要し,かつそれで足りるものと解するのが相当である。 これに対し,被告は,「初診日」とは医師等の診断にとどまらず,具体的な治療行為又は療養の指示があったことまでを必要とすると主張している。 しかし,一般に「診療」とは診察と治療を意味するところ,厚年法47条1項の「診療」についても,その字義的意味に照らして,治療の概念も含まれるものの,厚年法58条1項2号が初診日を要件とした上記趣旨からは,少なくとも当該傷病について診察を受けたということができれば足り,被保険者が当該傷病に関する症状を医師等に訴えていた形跡があり,当該医師等によって,事後的にせよ当該傷病が当該初診日当時に存在していたことを医 学的に判断することができるだけの客観的資料が収集されていることが重要であって,それで必要かつ十分といえる。被告の主張するように具体的な治療行為又は療養の指示があったことを要件とすれば,どの程度の治療行為又は療養の指示をもって具体的な治療行為又は療養の指示といえるかが明確でない事態等も生じ得るから,かえって上記趣旨に反するといえる。 よって,被告の上記主張は採用することができない。 (2) 前提事実に加え,掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件の事実関係として,次の事実が認められる。 ア P1の病状及び死亡に至る経緯等(ア) P1の平成17年頃の生活状況P1は,平成15年12月15日からP3で 証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件の事実関係として,次の事実が認められる。 ア P1の病状及び死亡に至る経緯等(ア) P1の平成17年頃の生活状況P1は,平成15年12月15日からP3で自動車販売の営業として休むことなく勤務していたが,平成17年夏頃から,原告らに疲労感を訴えることが多くなり,同年冬頃からは,本件マンション×号室に帰ってきてもソファーに寄り掛かったり,原告P5の調理の際の臭いが気持ち悪いなどと言うことが多くなった。 また,P1は,この頃,背中や腹をさする動作をしており,食欲も減退しており,平成17年末には,毎年,友人と出かけていたスキー旅行もキャンセルして本件マンションで休養していた。 (以上につき,甲14,原告P5本人,弁論の全趣旨)(イ) P7医院の受診経過及びCT画像①の撮影等aP7医院の受診経過原告らは,P1に病院に行くことを勧めたが,P1は,すぐには病院に受診せず,平成▲年▲月▲日,P7医院を受診し,P8医師に対し,主として左胸部痛(その位置は○がある上腹部に近接している。)を訴えた。 P8医師は,P1の胸部レントゲン撮影を実施し,P9病院にP1 の胸部単純CT撮影及び画像の読影を依頼した。 P10医師は,平成▲年▲月▲日,P1の胸部単純CT撮影を実施し,その結果,CT画像①中の上腹部(○・胃・脾臓の間)に低吸収値の境界明瞭な○が存在したが,右中葉,左舌区,左下葉に線状影が認められるとして(その他,両肺に明らかな○,○,明らかなリンパ節腫大,胸水及びCT描出範囲内の上腹部臓器に著変は認められないとした。),○があると診断した。 P8医師は,上記胸部単純CT撮影結果(CT画像①)を踏まえ,再診日である同月▲日までの間に,P1につき○と診断し,再診をした後にP1が 器に著変は認められないとした。),○があると診断した。 P8医師は,上記胸部単純CT撮影結果(CT画像①)を踏まえ,再診日である同月▲日までの間に,P1につき○と診断し,再診をした後にP1が来院することがなかったため,再診日をもって終診とした。 また,平成20年2月12日にP8医師が受診当時の診療録に基づき作成した受診状況等証明書には,発病年月日,傷病の原因又は誘因,発病から初診までの経過等は不詳と記載されている。 (以上につき,甲3の1・2,7の2,11,14,乙1,3,原告P5本人,弁論の全趣旨)bCT画像①の追加説明P10医師は,平成21年4月14日,平成▲年▲月当時は,胸部単純CTの依頼であったので,胸部CTの報告をしたが,指摘を受けてCT画像①を見直したところ,P1の上腹部のCT画像中には,○/胃/脾の間に低吸収値の境界明瞭な○が描出されていると認められるも,原因の確定や性状等の詳細については言及できず,造影,CT,MRIなどにより腹部臓器の検査が必要であったとし,上記病変をチェックすべきところ失念したと報告している。(甲3の3)また,P16医師は,平成21年4月21日,CT画像①にはP1の腹腔内に○が描出されているも,○自体はCT画像から指摘するこ とは困難であるとしている。(甲5の3)(ウ) 本件定期健診の結果等a 本件定期健診の結果P1は,平成▲年▲月▲日,P11診療所において,本件定期健診を受けた。 P11診療所がP1に通知した本件定期健診の結果は,前提事実(2)ウのとおりである。 b 本件定期健診の医学的説明P16医師は,平成20年12月12日に作成した意見書で,P1の本件定期健診結果で空腹時血糖が179㎎/dlと前年度まで正常であった血糖値が突然上昇した である。 b 本件定期健診の医学的説明P16医師は,平成20年12月12日に作成した意見書で,P1の本件定期健診結果で空腹時血糖が179㎎/dlと前年度まで正常であった血糖値が突然上昇したのは,○が原因である可能性は否定できないとしている。(甲5の1)また,本件定期健診を実施したP11診療所のP17医師も,○は,○が関与するが,本件定期健診の段階で受診したとしても,○の診断は付け難いとしている。(乙2,3)(エ) P13病院の受診経過P1は,平成18年7月26日,体の調子が悪いため,P3を退職し,本件マンションで休養していたが,原告らに疲れるなどと訴え,ほとんどソファで横になっていた。 P1は,平成▲年▲月▲日,前提事実(2)エのとおり,P13病院を受診し,同病院のP14医師は,同日,上記前提事実のとおりP1を診断の上,更なる精査・加療のため,P15病院に紹介した。 (以上につき,甲10,14,原告P5本人,弁論の全趣旨)(オ) P15病院の受診経過及びP1の死亡等P1は,前提事実(2)オのとおり,平成▲年▲月▲日,P16医師から,5㎝大の○であると診断され,P15病院に入院し,化学療法を受け, 一時退院したが,病状が悪化したため,平成▲年▲月▲日,○を直接死因として死亡した。 なお,平成▲年▲月▲日に撮影されたCT画像②によれば,P1の腹腔内に顕著な○が認められる(別紙CT画像写し②)。 イ ○に関する医学的知見(ア) ○とは,一般に原発性に○に発生する○の○を指し,外分泌系の腫瘍が大多数を占め,広義の○は,○,○及び○に大別される。 その原因は,明らかではないが,外部環境因子として喫煙,食習慣,飲酒,○などとの関係が指摘され,内部環境因子としては,○,○ないし○,○などとの関連 占め,広義の○は,○,○及び○に大別される。 その原因は,明らかではないが,外部環境因子として喫煙,食習慣,飲酒,○などとの関係が指摘され,内部環境因子としては,○,○ないし○,○などとの関連が指摘されているが,明らかな因果関係は立証されていない。 (以上につき,甲12)(イ) ○が○内にとどまる早期には病態生理上目立った変化は見られない。 ○における病態は,○や耐糖能異常のほか多くが周囲臓器への浸潤や転移によって展開されることが特徴であるため,○の早期診断は困難とされており,閉塞性黄疸,摂食減退,消化器障害等が○に見られる病態生理の特徴を形成する要因となっており,胆・○管の閉塞による胆汁や○のうっ滞は上腹部の鈍痛,膨満感や重圧感など愁訴を伴うことが多い。 また,○は特に後腹膜の神経叢に浸潤することにより,耐え難い頑固な背部痛が出現する。 なお,○は○や○など,何らかの原因で閉塞ないし狭窄した○の上流が嚢胞状に拡張することによって形成される。 (以上につき,甲12)(ウ) ○の診断としては,黄疸,上腹部や腰背部の疼痛及び体重減少が主要徴候であるが,比較的小さい早期の○では○や○の発症あるいは増悪がしばしばその徴候となる。その他,上腹部の鈍痛や膨満感,食欲不振, 下痢,便秘,全身倦怠感,悪心・嘔吐,吐・下血,腫瘤触知などが臨床所見として一応あるものの,クールヴォアジエ徴候(黄疸例において胆汁で緊満した胆嚢を触知すること)は黄疸例の半数以下に認められるにすぎず,○に一致する腫瘤を触れることも少ないため,一般に○の身体所見は特徴に乏しいとされている。 そこで,○が疑われる場合には,まず,血中○酵素や腫瘍マーカーを検査すると共に腹部超音波検査を実施することが肝要であるとされており,腹部超音波検査は,○や胆管 所見は特徴に乏しいとされている。 そこで,○が疑われる場合には,まず,血中○酵素や腫瘍マーカーを検査すると共に腹部超音波検査を実施することが肝要であるとされており,腹部超音波検査は,○や胆管の拡張,○腫瘤の描出により,○の大多数で病変の局在を明らかにすることができる。 他方,CTは消化管ガスなどで盲点のある超音波検査の補助として適宜応用されるにとどまる。 もっとも,このような画像診断所見については,○内の腫瘍描出を基本とするが,必ずしも,腫瘍が明瞭に描出されるとは限らず,腫瘍による○狭窄や途絶によって○流出障害が生じたため発生する二次的変化(○拡張や○の嚢状拡張(貯留嚢胞)など)をきっかけに超音波内視鏡検査や内視鏡的逆行性○造影などの精密検査により○と診断されることも少なくない。 (以上につき,甲12,13)(エ) ○の予後は一般に不良であり,切除不能な場合は,診断後平均生存期間は3ないし6か月で1年以内に85%が死亡する。 (以上につき,甲12)ウ P1の病状及び死亡経過に関する医学的説明P16医師は,平成21年4月21日に作成した証明書で,P1につき,平成▲年▲月▲日のP15病院の初診時に○及び○による○閉塞を来したために二次的に生じた巨大○貯留嚢胞があると診断した上,① 上記ア(イ)aのとおり,同年▲月▲日撮影のCT画像①でP1の腹腔内に○が認 められ,② 前提事実(2)ウ(エ)のとおり,同年▲月▲日の本件定期健診結果で前年度までなかった高血糖が初めて指摘されているところ,①については,平成▲年▲月▲日には既に○が存在したために貯留嚢胞を形成したということができること,また,②については,○により○を生じ尾側の○が萎縮したため○内分泌機能の低下を招いた結果である可能性が高いことから,P1の○ 日には既に○が存在したために貯留嚢胞を形成したということができること,また,②については,○により○を生じ尾側の○が萎縮したため○内分泌機能の低下を招いた結果である可能性が高いことから,P1の○は少なくとも平成▲年▲月▲日以前に生じた可能性が高いとしている。(甲5の3)また,P16医師は,平成22年12月6日,① CT画像①及び②に描出された嚢胞の同一性について,両者を比較すると嚢胞の大きさは異なるが局在位置がほぼ同一であり,嚢胞の大きさの変化は,○の増大に伴い腫瘍による○狭窄や途絶によって○流出障害が生じたため発生する二次的変化(○拡張や○の嚢状拡張(貯留嚢胞)など)のため○嚢胞(○貯留嚢胞)が増大したと考えるのが自然である,② 嚢胞の発生原因としては,○を考えることができるが,その最大の原因であるアルコール性は,習慣的飲酒者ではないP1には考えられず,その他の○の原因についてもCT画像①及び②上,○腫大や○周囲の浸出液など○を疑わせる所見や○など○を疑わせる所見がないことからすると,P1の○嚢胞は○又は○に起因したものとは考えにくく,○により生じた貯留嚢胞と考えるのが自然であるとの意見を表明している。(甲13)(3) 以上によれば,確かに,P1は,平成▲年▲月▲日時点では,P8医師から○であるとの診断を受けていたわけではない。 しかし,① P8医師の診察の機会にその依頼に基づきP9病院で撮影されたCT画像①には,P1の上腹部の○が描出されていたところ,これは,後に○との診断を受ける際に撮影されたCT画像②に描出された○により生じた○と同じ部位にあり,両者は同一の病変といえるから,当該○の萌芽といえること,② このCT画像①の○は,その約3か月後に実施された本件 定期健診で前年度にはなかった高血糖が認められた 生じた○と同じ部位にあり,両者は同一の病変といえるから,当該○の萌芽といえること,② このCT画像①の○は,その約3か月後に実施された本件 定期健診で前年度にはなかった高血糖が認められたが,P1には○の症状が特に認められなかったことからすると,○に起因して生じたものと考えて矛盾がないこと,③ P1は,P8医師を受診する約半年ほど前の平成17年夏頃から疲労感を原告らに訴え,食欲も減退し,腰や背中をさする動作をしていて,これを見かねた原告P5がP1に病院への受診を勧め,その後,P1がP7医院を受診した経緯に鑑みれば,P1はこれらの事情も含めてP8医師に訴えていたと推認することができる一方,P8医師の診療録上P1の主たる愁訴として左胸部痛のみが記録されたのはP8医師の診断内容が○であったためとも推認することができること,④ 左胸部の痛み自体が上腹部○と無関係のものであったと断定するに足りる事情もなく,また,○の原因も特定はされていないことからも,○又はそれに起因する病変の存在を否定できないこと(乙8中のP18技官の発言),⑤ ○は一般的に身体所見に乏しいことやその他の医学的知見からすれば,P8医師の受診当時,P1に○が存在したことを否定する事情は他に存在しないことなどが認められる。 これらの事情を総合すれば,P1は○に起因するとみて矛盾しない症状を訴えてP8医師の診察を受け,P8医師は,遅くとも平成▲年▲月▲日の終診時において,そのような症状について被保険者であるP1を初めて診察し,かつ,その直接死因である○又はこれに起因する○が終診時に存在していたことを事後的にせよ医学的に判断することができるCT画像という客観的資料を収集していたということができるから,当該終診の日をもってP1の○又はこれに起因する疾病に関する「初診日」に 時に存在していたことを事後的にせよ医学的に判断することができるCT画像という客観的資料を収集していたということができるから,当該終診の日をもってP1の○又はこれに起因する疾病に関する「初診日」に当たるものと認めるのが相当である。 これに対し,被告は,CT画像①の○が○の萌芽であったとするには飛躍があるなどと主張している。 しかし,上記認定に沿うP16医師らの上記意見書における○の因果的経過の説明は医学的知見に照らして合理的なものであり,これに反する医学的 知見を認めるに足りる証拠はないこと,上記認定によっても,CT画像①に現れた○が○に起因するものと医学的知見により蓋然性をもって特定できているのであるから,被告が懸念するような裁定機関の認定判断の客観性や画一性は阻害されることはないし,むしろ,このような客観的資料があり,これを契機として早期のうちに超音波検査等の精密検査を施して○の確定診断に至った事案(なお,本件においてそのような可能性は存在しなかったと認めるに足りる証拠はない。)と本件とを対比すれば明らかに不公平を生ずるといえることに照らすと,被告の上記主張を採用することはできない。 よって,本件請求の初診日要件は満たされているといえる。 2 争点(2)ア(処分理由の差替えの可否)について取消訴訟の訴訟物は処分の違法一般であると解されるところ,一般に取消訴訟においては,別異に解すべき特別の理由のない限り,被告は当該処分の効力を維持するための一切の法律上及び事実上の根拠を主張することが許されるものと解すべきである(最高裁昭和51年(行ツ)第113号同53年9月19日第三小法廷判決・裁判集民事125号69頁)。 また,本件処分には理由が付記されているが,行政処分に理由を付記(行政手続法8条)すべきものとして 高裁昭和51年(行ツ)第113号同53年9月19日第三小法廷判決・裁判集民事125号69頁)。 また,本件処分には理由が付記されているが,行政処分に理由を付記(行政手続法8条)すべきものとしているのは,行政庁が行政処分をするに際し,その判断の慎重と公正妥当とを担保してその恣意を抑制するとともに,行政処分の理由を処分の名宛人に知らせることによって,その不服申立てに便宜を与えることを目的としていると解され,その目的は,処分の理由を具体的に付記して処分の名宛人に通知すること自体をもって,ひとまず実現され,この趣旨を超えて,一たび裁定書に理由を付記した以上,行政庁が当該理由以外の理由を取消訴訟において主張することを許さないものとする趣旨を含むとは解されない(最高裁平成8年(行ツ)第236号同11年11月19日第二小法廷判決・民集53巻8号1862頁参照)。 よって,被告の生計同一要件の有無に関する主張は許されるものというべき である。 これに対し,原告らは,行政庁が第一次判断権を行使していない別の処分理由を主張して,本件処分を適法とするのは,処分の同一性を害し,訴訟物の範囲を超えるから,許されないと主張している。 しかし,行政手続法及び厚年法をみても,上記の行政手続法の理由付記制度の趣旨を超えて,裁定書に付記された理由以外の理由を取消訴訟において主張することを許さないとする趣旨を含むものとは解されないし,原告らの上記主張の根拠とする最高裁平成2年(行ツ)第45号同5年2月16日第三小法廷判決・民集47巻2号473頁は,労働者災害補償保険法施行前に従事した業務に起因したものであることから,行政庁が業務起因性の有無について判断する前提を欠くとして保険給付不支給処分をしたものであって,処分の実体的要件の存否に関する行政庁の第 補償保険法施行前に従事した業務に起因したものであることから,行政庁が業務起因性の有無について判断する前提を欠くとして保険給付不支給処分をしたものであって,処分の実体的要件の存否に関する行政庁の第一次的判断権の行使をおよそ経ていないことから,行政庁が業務起因性の有無に関する主張を追加することはできないとしたものであり,本件のように,実体的要件(初診日要件)の存否の判断を経ていて行政庁の第一次的判断権が行使されたものとは事案が異なるし,本件訴えにおける訴訟物はあくまで本件処分の違法一般であって,実体要件の一つである生計維持要件(そのうちの生計同一要件)に関する主張を追加することが訴訟物の範囲を超えることにもならないから,原告らの上記主張は採用することができない。 3 争点(2)イ(生計同一要件の有無)について(1) 厚生労働大臣は,厚年法59条1項本文,4項及び施行令3条の10の規定を受けて,生計維持関係の認定基準に関し,前記のとおりの内容の本件通達(関係法令等の定め(3))を定めている。 厚生年金は,労働者の老齢,障害又は死亡について保険給付を行い,労働者及びその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的としており(厚年法1条),厚年法59条の生計維持要件も遺族厚生年金の目的が被保 険者の遺族の生活保障にあることから定められたものであり,本件通達の定めは,その内容からみて,これらの規定の趣旨を受けて,遺族厚生年金の受給資格に関し生計維持要件の認定基準を合理的に定めたものと解される。 したがって,生計維持認定対象者が死亡した者の父母である場合には,原則として,これらの者に本件通達に定められた生計同一要件(関係法令等の定め(3)ア)のうちいずれかの関係(関係法令等の定め(3)ア(ア)ないし(ウ))が被保険者との間 した者の父母である場合には,原則として,これらの者に本件通達に定められた生計同一要件(関係法令等の定め(3)ア)のうちいずれかの関係(関係法令等の定め(3)ア(ア)ないし(ウ))が被保険者との間で認められ,かつ,収入要件が認められるかどうかを基準として判断するのが相当である。 もっとも,生計同一要件は,施行令3条の10に定める「生計を同じくしていた」との要件に関わるものであり,諸般の事情を総合考慮したときに生計維持認定対象者と被保険者とが「生計を維持していた」関係にあったかが重要であるから,上記の認定基準を基本としつつも,これに常に従わなければならないわけではなく,本件通達において,上記認定基準に従うことにつき,「ただし,これにより生計維持関係の認定を行うことが実態と著しく懸け離れたものとなり,かつ,社会通念上妥当性を欠くことになる場合には,この限りでない。」と定められていることからしても,柔軟な認定も許容されるというべきである。 これに対し,被告は,生計同一要件(ウ)bの「生活費,療養費等について生計の基盤となる経済的な援助が行われているとき」につき,被保険者の収入から生活費,療養費等の出捐を受け,これが自己の生計を維持するための相当な部分を占め,この出捐がなければ,自己の生計の維持に支障を来す関係が必要であると主張しているが,上記に述べたところからは必ずしもこのとおり解する必然性はなく,諸般の事情を総合考慮した結果,生計維持認定対象者と被保険者とが「生計を同じくしていた」関係にあるといえる程度の経済的な援助をもって足りると解すべきである。 (2) 前提事実に加え,掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件の事実関係 として,次の事実が認められる。 ア原告らとP1の住民票原告らとP1の住民票の記載は,前提事 きである。 (2) 前提事実に加え,掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件の事実関係 として,次の事実が認められる。 ア原告らとP1の住民票原告らとP1の住民票の記載は,前提事実(1)イのとおりであり,原告らとP1は,平成12年12月10日にP1が転居前居室に転居するまでは原告P4を世帯主として千葉県市川市α×番9号を住所としていたが,P1は,同月21日の住民届出をもって世帯を独立させ,その後平成13年3月23日に,本件マンション××号室を住所としており,原告らは,原告P4を世帯主として,同月16日に,本件マンション×号室を住所としている。(乙1)イ本件マンションの建築本件マンションは,前提事実(1)イの住所に建築され,平成13年3月5日に完成したものであるが,原告らがもともと居住していた一戸建て住宅(以下「建替前住宅」という。)を建て替えた3階建てマンションである。 (甲8の2)本件マンションは,1階3室,2階5室,3階3室という構造であり,このうち1階×号室(3LDK。リビング,ダイニング,8畳の寝室,3畳の仏間,6畳の物置という構造である。),3階××号室(2LDK)を所有者用物件とし,それ以外の居室は全て1Kであり,いずれも賃貸物件としていた。(甲9,14)ウ原告らとP1の生活状況(ア) 本件マンションへの転居前の生活状況原告らとP1は,上記イの本件マンションの建替えまでは,建替前住宅で同居していたが,P1は,平成12年12月10日に,本件マンションへの建替えのための一時的住居として,転居前居室に転居した。 その際,原告らも,住民票を移動することはなかったものの,共に転居前居室に転居し,P1と同居していた。 (以上につき,甲14,原告P5本人)(イ) 本件マンシ 転居前居室に転居した。 その際,原告らも,住民票を移動することはなかったものの,共に転居前居室に転居し,P1と同居していた。 (以上につき,甲14,原告P5本人)(イ) 本件マンションへの転居後の生活状況原告らとP1は,上記アのとおり,平成13年3月に本件マンションに転居したが,×号室で同居しなかったのは,原告らの長男で跡取りであるP1が将来結婚して独立したときのことを考えてのことであり,P1は,そのために所有者用物件として建築された××号室に入居した。 ××号室には,原告らが持っていた古い家具や家電製品が一通り置いてあり,P1も時折,自炊や洗濯を自らすることがあったものの,朝夕の食事や,原告らとP1の団らんは基本的に×号室で行われ,P1は××号室を就寝するための部屋として利用することが多く,このような生活形態は,P1が平成18年7月にP3を退職した後も変わらなかった。 原告らとP1は,双方の居室の鍵を共有しており,××号室の掃除や洗濯などは大半が原告P5がしていた。 なお,P6は,それまでの勤務先を退職し,無職となったため,平成16年9月2日から,一時的に本件マンション×号室で生活するようになり,6畳の物置を与えられた。 (以上につき,甲14,原告P5本人)エ原告らとP1の経済的関係原告らは,P1の給与収入から月々10万円ほどを家計に入れてもらい,原告らの勤務するクリーニング店の給与収入約30万円,本件マンションの家賃収入(入居者が安定しているときで月々57万円程度)があり,平成16年からは原告P4の国民年金年約70万円の収入があった(平成18年度の原告らの総所得は前提事実(1)のとおりである。)。 これに対し,本件マンション建替えに伴う銀行借入れのローン返済は月々45万円程度であり,生 の国民年金年約70万円の収入があった(平成18年度の原告らの総所得は前提事実(1)のとおりである。)。 これに対し,本件マンション建替えに伴う銀行借入れのローン返済は月々45万円程度であり,生活費やその他の経費(不動産管理会社の管理委託費が掛かると認められる。)などの支出を上記収入から当てて,原告 らは家計のやりくりをしていた(ただし,×号室の光熱費は,請求書が直接同室に届けられるため,P1が支払っていた。)。 また,P1は,本件マンション建替えに関する銀行と原告P4の金銭消費貸借契約につき連帯保証をしていた。 その他,原告P4には,○の持病があり,原告P5には○の持病があった。 なお,P6が平成16年に同居してからは,P6からも一部生活費として家計への金銭的支援があり,原告らは,P1が死亡した際には同人の生命保険の保険金収入を得ている。 (以上につき,甲9,14,乙1,原告P5本人)(3)ア以上によれば,① P1の本件マンションの××号室の利用は,基本的に就寝のみに限られ,その他の食事や家族としての団らんといった就寝以外の生活は基本的に原告らと×号室で営まれており,原告らとP1は双方の居室の鍵を共有し,原告P5はP1の居室にも掃除等のために出入りすることが多かったというのであるから,P1にとっては,×号室と××号室が一体のものとして生活の本拠とされていたことからすると,原告らとP1の生活実態は同一であったと認められ,生計同一要件(ウ)aの「現に起居を共にし」に該当するということができる。② また,上記(2)エや原告らとP1の生活実態が同一であったことからすると,基本的に原告ら及びP1の消費生活上の家計は,××号室の光熱費を除き,一体として原告P5において管理されていたということができるし,原告らはクリー 告らとP1の生活実態が同一であったことからすると,基本的に原告ら及びP1の消費生活上の家計は,××号室の光熱費を除き,一体として原告P5において管理されていたということができるし,原告らはクリーニング店の給与収入や本件マンションの賃料収入があるとはいえ,月々45万円の本件マンション建替えのためのローンの返済があり,不動産賃貸業に伴う諸経費や原告らの持病に伴う医療費も考慮すれば,P1の月々10万円程度の支援なくしての原告ら家計の維持は困難であったものと認められ,生計同一要件(ウ)aの「消費生活上の家計を一つにしていた」と認められ る。 これに対し,被告は,原告らとP1のマンション居住状況や原告らの家計の収支状況,P1の家計支援状況には客観的証拠がなく,また,原告らはP6を×号室に居住させており,P1を×号室に居住させることも可能であったから,「現に起居を共にし」ていたとは認められないと主張している。 しかし,前記(2)の認定に沿う原告P5の供述は,このうち長男であり跡取りであるP1のために××号室を用意したとの部分は本件マンション×号室と××号室の客観的状況に符合するし,原告らの家計の収支状況,P1の家計支援状況に関する部分も前提事実(1)ウの課税証明書上の記載内容と矛盾はないばかりか,むしろP6と同居した事情など不利な供述も厭わず,その他供述内容に不自然・不合理な点は特に認められないから,信用性が認められる。 そして,P6は,原告らとP1の入居後に単に××号室よりは×号室の方が構造上広く一時的な間借りとして原告らと×号室で同居したというにすぎず,P1が×号室ではなくあえて××号室を用意してもらったのも,長男として,また独立したときのことを考えてのことというのであるから,これらの経緯に何ら不自然・不合理な点は認 室で同居したというにすぎず,P1が×号室ではなくあえて××号室を用意してもらったのも,長男として,また独立したときのことを考えてのことというのであるから,これらの経緯に何ら不自然・不合理な点は認められないことからすると,P1が×号室に同居しなかったからといって,上記の認定に疑いを入れる余地はないというべきである。 よって,被告の上記各主張は採用できない。 イなお,念のため,生計同一要件(ウ)bの「生活費,療養費等について生計の基盤となる経済的な援助が行われているとき」についても検討すると,この点について,仮に,被告主張のように被保険者の収入から生活費,療養費等の出捐を受け,これが自己の生計を維持するための相当な部分を占め,この出捐がなければ,自己の生計の維持に支障を来す関係が必要と解 したとしても,上記アの原告らとP1の家計の収支状況やP1の家計支援状況によれば,マンション賃貸業を営み,それぞれ持病を有する原告らにしてみれば,賃料収入は期待できるものの,その分管理会社への管理委託費等の諸経費や医療費の支出を余儀なくされるのであるし,P6が同居してからは原告らも家計の負担を求めていたことからすると,P1の10万円程度の家計支援というのは,決して小さいものではなく,原告らの生計を維持するための相当な部分を占めており,この出捐がなければ,原告らの生計の維持に支障を来す関係にあったと認められる。 これに対し,被告は,P1が平成18年7月にP3を退職した後は,原告らがP1の生活上必要な支出に相当する金銭や入院費用等を支払っていたことからすると,上記のような関係は認められないなどと主張する。 しかし,P1がP3を退職してから,死に至るまで約▲か月程度であることからすると,あくまでも一時的な支出にとどまるものと認められ,被 とからすると,上記のような関係は認められないなどと主張する。 しかし,P1がP3を退職してから,死に至るまで約▲か月程度であることからすると,あくまでも一時的な支出にとどまるものと認められ,被告が指摘するような事情をもって,恒久的にP1の家計支援がなくても,原告らの生計の維持に支障がなかったとは認められない。 よって,被告の上記主張は採用できない。 ウ以上のとおり,原告らは生計同一要件(ウ)a又はbを満たしており,収入要件についても,前提事実(4)によれば,P1死亡当時の平成18年度の原告らの収入が850万円未満であったため,満たしている(この点については特に争いがない。)から,本件請求は生計維持要件を満たしていたと認められる。 4 したがって,本件請求については,初診日要件,生計維持要件のいずれも認められるから,本件処分は違法であるといわざるを得ない。 第4 結論以上の次第で,原告らの請求は理由があるからこれを認容することとし,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民訴法61条を適用して,主文の とおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官川神 裕 裁判官林 史高 裁判官菅野昌彦

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