令和5年11月29日判決言渡 令和5年(行ケ)第10014号審決取消請求事件 口頭弁論終結日令和5年9月13日判決 原告 本田技研工業株式会社 同訴訟代理人弁理士 鷺健志 被告 特許庁長官 同指定代理人 山本信平 倉橋紀夫 中尾麗 後藤亮治 綾郁奈子 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は、原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 特許庁が訂正2022-390154号事件について令和5年1月10日にした審決を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 (1) 特許第4937087号は、平成19年11月21日に出願(特願2007-302088号)され、平成24年3月2日に設定登録(以下、この登録に係る特許を「本件特許」といい、その発明を「本件発明」という。)がされた。設定登録時の特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。 【請求項1】 地図データを記憶する地図データ記憶手段と、この地図データ記憶手段に記憶されている地図データを基にして地図画面を表示する表示手段と、ユーザーによる操作を受けてこの表示手段の地図画面上から対象地点の位置情報を取得する位置情報取得手段と、を備えたナビゲーション装置において、対象地点の地点候補を絞り込む候補抽出手段を設け、この候補 受けてこの表示手段の地図画面上から対象地点の位置情報を取得する位置情報取得手段と、を備えたナビゲーション装 置において、対象地点の地点候補を絞り込む候補抽出手段を設け、この候補抽出手段で抽出された地点候補を、前記表示手段の地図画面上にシンボルマークで表示するとともに、前記表示手段の地図画面上に前記地点候補がシンボルマークで表示さ れている間は、前記位置情報取得手段によって位置情報を取得し得る地点を、前記シンボルマークに対応する位置に制限することを特徴とするナビゲーション装置。 【請求項2】現在位置を検出する現在位置検出手段と、 目的地を設定する目的地設定手段と、経由地を設定する経由地設定手段と、ユーザーが予め決めた経由地点を地点候補として記憶する地点候補記憶手段と、この地点候補記憶手段に記憶されている地点候補を呼び出す地点候補 抽出手段と、を備え、 前記経由地設定手段は、前記位置情報取得手段で取得する位置情報を基にして経由地を設定する際に、前記地点候補抽出手段によって呼び出された地点候補を、前記表示手段の地図画面上にシンボルマークで表示するとともに、前記表示手段の地図画面上に前記地点候補がシンボルマークで表示さ れている間は、前記位置情報取得手段によって位置情報を取得し得る地点を、前記シンボルマークに対応する位置に制限することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。 【請求項3】現在位置を検出する現在位置検出手段と、 目的地を設定する目的地設定手段と、経由地を設定する経由地設定手段と、経由地点の属するカテゴリに応じて地点候補を抽出するカテゴリ別候補抽出手段と、を備え、 段と、 目的地を設定する目的地設定手段と、経由地を設定する経由地設定手段と、経由地点の属するカテゴリに応じて地点候補を抽出するカテゴリ別候補抽出手段と、を備え、前記経由地設定手段は、前記位置情報取得手段で取得する位置情報を 基にして経由地を設定する際に、前記カテゴリ別候補抽出手段で抽出された地点候補を、前記表示手段の地図画面上にシンボルマークで表示するとともに、前記表示手段の地図画面上に前記地点候補がシンボルマークで表示されている間は、前記位置情報取得手段によって位置情報を取得し得る地 点を、前記シンボルマークに対応する位置に制限することを特徴とする請求項1または2に記載のナビゲーション装置。 【請求項4】前記表示手段は、前記経由地設定手段によって経由地を設定する場合には、少なくとも現在位置と目的地を表示した縮尺の地図画面上に、前 記地点候補を表すシンボルマークを表示することを特徴とする請求項2 または3に記載のナビゲーション装置。 【請求項5】目的地を設定する目的地設定手段と、ユーザーが予め決めた目的地点を地点候補として記憶する地点候補記憶手段と、 この地点候補記憶手段に記憶されている地点候補を呼び出す地点候補抽出手段と、を備え、前記目的地設定手段は、前記位置情報取得手段で取得する位置情報を基にして目的地を設定する際に、前記地点候補抽出手段によって呼び出された地点候補を、前記表示手 段の地図画面上にシンボルマークで表示するとともに、前記表示手段の地図画面上に前記地点候補がシンボルマークで表示されている間は、前記位置情報取得手段によって位置情報を取得し得る地点を、前記シンボルマークに対応する位置に クで表示するとともに、前記表示手段の地図画面上に前記地点候補がシンボルマークで表示されている間は、前記位置情報取得手段によって位置情報を取得し得る地点を、前記シンボルマークに対応する位置に制限することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。 【請求項6】目的地を設定する目的地設定手段と、目的地点の属するカテゴリに応じて地点候補を抽出するカテゴリ別候補抽出手段と、を備え、前記目的地設定手段は、前記位置情報取得手段で取得する位置情報を 基にして目的地を設定する際に、前記カテゴリ別候補抽出手段で抽出された地点候補を、前記表示手段の地図画面上にシンボルマークで表示するとともに、前記表示手段の地図画面上に前記地点候補がシンボルマークで表示されている間は、前記位置情報取得手段によって位置情報を取得し得る地 点を、前記シンボルマークに対応する位置に制限することを特徴とする 請求項1~5のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。 【請求項7】候補抽出された地点候補を示す前記シンボルマークは、その他のシンボルマークに比較して大縮尺の地図表示でも表示されることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。 【請求項8】抽出された地点候補を、前記表示手段の地図画面上にシンボルマークで表示するときに、隣接する地点候補が近接する場合には地図画面を拡大することを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。 (2) 原告は、令和4年9月12日付けで、本件特許の特許請求の範囲及び明細書を訂正する訂正審判請求をし(甲2。以下、この請求に係る訂正を「本件訂正」という。)、特許庁は、これを訂正2022- (2) 原告は、令和4年9月12日付けで、本件特許の特許請求の範囲及び明細書を訂正する訂正審判請求をし(甲2。以下、この請求に係る訂正を「本件訂正」という。)、特許庁は、これを訂正2022-390154号事件として審理した。 原告の求めた訂正事項は、別紙1審決書(写し)2頁4行目ないし9頁2 2行目のとおりである(以下、それぞれの訂正事項を、「訂正事項1」ないし「訂正事項22」という。甲3、4)。 (3) 特許庁審判官は、令和4年10月19日付けで訂正拒絶理由通知書を発し(甲5)、これに対し原告は、同年11月22日付けで意見書を提出した(甲6)。 (4) 特許庁審判官は、令和5年1月10日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、本件審決は、同月20日、原告に送達された。 (5) 原告は、令和5年2月15日、本件審決の取消しを求めて本件訴えを提起した。 2 本件審決の要旨 本件審決の理由は、別紙1審決書(写し)記載のとおりである。 その要旨は、①本件訂正のうち、請求項1に係る訂正事項1は、特許法126条6項に規定する要件に適合しないから、訂正事項1による訂正を認めることができない、②訂正事項2ないし20も同様の訂正事項を含むものであるから、訂正を認めることができない、③訂正の対象とする請求項が訂正後の請求 項の番号で特定されていないことから、本件訂正は特許権全体に対して請求するものであり、訂正事項21及び22について検討するまでもなく、本件訂正を認めることはできないというものである。 3 取消事由(1) 取消事由1(訂正事項1に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張する ものであり、特許法126条6項に規定する要件に適合しない を認めることはできないというものである。 3 取消事由(1) 取消事由1(訂正事項1に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張する ものであり、特許法126条6項に規定する要件に適合しないとして、訂正を認めなかった判断の誤り)⑵ 取消事由2(訂正事項2ないし20並びに21及び22に係る訂正は認めることができないとした判断の誤り)第3 当事者の主張 1 取消事由1(訂正事項1に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張するものであり、特許法126条6項に規定する要件に適合しないとして、訂正を認めなかった判断の誤り)について〔原告の主張〕⑴ 本件特許の請求項1の特許請求の範囲の記載を構成要件に分説すると以下 のとおりである(以下「構成要件A」などという。)。 A 地図データを記憶する地図データ記憶手段と、B この地図データ記憶手段に記憶されている地図データを基にして地図画面を表示する表示手段と、C ユーザーによる操作を受けてこの表示手段の地図画面上から対象地 点の位置情報を取得する位置情報取得手段と、 D を備えたナビゲーション装置において、E 対象地点の地点候補を絞り込む候補抽出手段を設け、F この候補抽出手段で抽出された地点候補を、前記表示手段の地図画面上にシンボルマークで表示するとともに、G 前記表示手段の地図画面上に前記地点候補がシンボルマークで表示 されている間は、前記位置情報取得手段によって位置情報を取得し得る地点を、前記シンボルマークに対応する位置に制限することを特徴とするナビゲーション装置。 訂正事項1に係る訂正後の構成要件Gは、以下のとおりである(下線は訂正箇所。以下「構成要件G’」という。)。 G’ 前記表示手段の地図画面上に前 することを特徴とするナビゲーション装置。 訂正事項1に係る訂正後の構成要件Gは、以下のとおりである(下線は訂正箇所。以下「構成要件G’」という。)。 G’ 前記表示手段の地図画面上に前記地点候補がシンボルマークで表示されている間は、前記位置情報取得手段によって地点候補の位置情報を取得し得る地点を、前記シンボルマークに対応する位置に制限することを特徴とするナビゲーション装置。 ⑵ 訂正前の請求項1の構成要件Cにおける「位置情報取得手段」は、「ユーザ ーによる操作を受けてこの表示手段の地図画面上から対象地点の位置情報を取得する」ものであり、対象地点が制限されていないことから、「ユーザーによる操作を受けて、表示手段の地図画面上から、任意の対象地点の位置情報を取得する」ことができるものである。 他方、訂正前の請求項1の構成要件Gにおける「位置情報取得手段」は、 「表示手段の地図画面上から対象地点の位置情報を取得する」ものである点は構成要件Cにおける「位置情報取得手段」と同じであるが、取得し得る地点が、「候補抽出手段で抽出された地点候補」が表示手段の地図画面上に「シンボルマークで表示されている」間は、「シンボルマークに対応する位置」すなわち「候補抽出手段で抽出された地点候補」に制限されるものである。 このことは、構成要件Eの「対象地点の地点候補を絞り込む候補抽出手段」、 構成要件Fの「この候補抽出手段で抽出された地点候補を、前記表示手段の地図画面上にシンボルマークで表示する」、構成要件Gの「前記表示手段の地図画面上に前記地点候補がシンボルマークで表示されている間は、前記位置情報取得手段によって位置情報を取得し得る地点を、前記シンボルマークに対応する位置に制限する」との記載、さらに、本件特許の明細 地図画面上に前記地点候補がシンボルマークで表示されている間は、前記位置情報取得手段によって位置情報を取得し得る地点を、前記シンボルマークに対応する位置に制限する」との記載、さらに、本件特許の明細書(以下「本 件明細書」という。)の段落【0007】に「上記の課題を解決する請求項1に記載の発明は、・・・。これにより、表示手段の地図画面上から対象地点の位置情報を取得する場合には、候補抽出手段によって地点候補が絞り込まれ、抽出された地点候補が地図画面上にシンボルマークで表示される。」と記載されていることから明らかである。 次に、訂正後の請求項1は、構成要件G’の他は訂正前の請求項1と同じなので、構成要件Cにおける「位置情報取得手段」は、「ユーザーによる操作を受けて、表示手段の地図画面上から、任意の対象地点の位置情報を取得する」ことができるものであり、訂正前の請求項1の構成要件Cにおける「位置情報取得手段」と同一である。 さらに、訂正後の請求項1の構成要件G’における「位置情報取得手段」は、「候補抽出手段で抽出された地点候補」が表示手段の地図画面上に「シンボルマークで表示されている」間は、「地点候補の位置情報」を取得し得る地点が、「シンボルマークに対応する位置」すなわち「候補抽出手段で抽出された地点候補」に制限されることが明確である。 したがって、訂正前と訂正後の請求項1に記載した事項は、実質的に同じである。 訂正前の請求項1は、構成要件Gの「前記位置情報取得手段によって位置情報を取得し得る地点」の「位置情報」が、「地点候補」とは関係のない位置情報であると誤解されるおそれがあったのに対し、訂正後の請求項1は、構 成要件G’を「前記位置情報取得手段によって地点候補の位置情報を取得し 得る地点」と 地点候補」とは関係のない位置情報であると誤解されるおそれがあったのに対し、訂正後の請求項1は、構 成要件G’を「前記位置情報取得手段によって地点候補の位置情報を取得し 得る地点」と訂正して(訂正事項1)、誤解されるおそれをなくしたものであるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的としたものにすぎない。 したがって、訂正事項1は、「実質上特許請求の範囲を拡張する」ものではなく、訂正事項1に係る訂正は認められるべきであり、審決の判断は誤りである。 ⑶ 訂正後の請求項1の構成要件G’についての被告の解釈について被告は、訂正後の請求項1の構成要件G’である「前記表示手段の地図画面上に前記地点候補がシンボルマークで表示されている間は、前記位置情報取得手段によって地点候補の位置情報を取得し得る地点を、前記シンボルマークに対応する位置に制限すること」について、抽出された地点候補を、抽 出された地点候補であるシンボルマークに対応する位置に制限するものであると解釈されるから、「訂正後の請求項1においては制限されるものが何ら特定されなくなった」とした審決の判断に誤りはないと主張する。 しかし、訂正後の請求項1は、訂正前の請求項1の構成要件Gの記載を構成要件G’の記載に訂正したことを除き、訂正前の請求項1と同じである。 すなわち、訂正後の請求項1に係る発明は、構成要件Cにおける「位置情報取得手段」が、ユーザーによる操作を受けて、表示手段の地図画面上から、「任意の対象地点の位置情報を取得する」ものであるのに対して、構成要件G’における「位置情報取得手段」は、「候補抽出手段で抽出された(対象地点の)地点候補」が表示手段の地図画面上に「シンボルマークで表示されて いる」間は、「(対象地点の)地点候補の位置情報」を取得 における「位置情報取得手段」は、「候補抽出手段で抽出された(対象地点の)地点候補」が表示手段の地図画面上に「シンボルマークで表示されて いる」間は、「(対象地点の)地点候補の位置情報」を取得し得る地点を、「前記シンボルマークに対応する位置に制限する」ことが特定されている。したがって、「訂正後の請求項1においては制限されるものが何ら特定されなくなった」とする被告の主張は誤りである。 ⑷ 訂正事項1に係る訂正の目的について 被告は、訂正前の請求項1に係る発明は、カーソルの移動や地図画面のセ ンタリングをさせることができるものも含むため、カーソルの移動や地図画面のセンタリングをさせることができないと誤って解釈されてしまうおそれはなく、明瞭であるから、訂正事項1は明瞭でない記載の釈明ではないと主張する。 しかし、訂正前の請求項1に係る発明につき、カーソルの移動や地図画面 のセンタリングをさせることができるものも含むとの被告の主張が正しいとしても、訂正前の構成要件Gの記載は、カーソルの移動や地図画面のセンタリングをさせることができないと誤って解釈されてしまうおそれはなく、明瞭である、と断定することはできないから、訂正事項1に係る訂正の目的は「明瞭でない記載の釈明」であるといえる。 〔被告の主張〕⑴ 本件特許の技術的意義について本件特許の発明の詳細な説明の段落【0005】ないし【0007】及び段落【0040】の記載からもわかるように、本件発明の技術的意義は、「位置情報を取得し得る地点」の範囲を制限し、「位置情報が取得されなくなる」位 置の範囲を設けることである。 ⑵ 訂正事項1に係る訂正前と訂正後の「制限」についてア訂正前訂正前の請求項1の「前記表示手段の地図画面上に前記地点候 「位置情報が取得されなくなる」位 置の範囲を設けることである。 ⑵ 訂正事項1に係る訂正前と訂正後の「制限」についてア訂正前訂正前の請求項1の「前記表示手段の地図画面上に前記地点候補がシンボルマークで表示されている間は、前記位置情報取得手段によって位置情 報を取得し得る地点を、前記シンボルマークに対応する位置に制限すること」(構成要件G)に関し、訂正前の請求項1に「ユーザーによる操作を受けてこの表示手段の地図画面上から対象地点の位置情報を取得する位置情報取得手段」(構成要件C)と記載されており、さらに、本件明細書の段落【0030】に「表示装置51の地図画面上から、例えば、地図画面上 のカーソルで地点を指定することによって対象位置の位置情報を取得す る位置情報取得手段46を備えている。」と記載されていることから、上記構成要件Gにおける「前記位置情報取得手段によって位置情報を取得し得る地点」とは、表示手段の地図画面上から位置情報を取得し得る全ての対象地点(以下、「全ての対象地点」という。)である。 また、訂正前の請求項1に「この候補抽出手段で抽出された地点候補を、 前記表示手段の地図画面上にシンボルマークで表示する」(構成要件F)と記載されていることから、構成要件Gにおける「前記シンボルマークに対応する位置」とは、候補抽出手段で抽出された「地点候補」の地点であることは明らかである。 よって、訂正前の請求項1の構成要件Gにおける「前記位置情報取得手 段によって位置情報を取得し得る地点を、前記シンボルマークに対応する位置に制限すること」とは、位置情報取得手段によって位置情報を取得し得る地点について、全ての対象地点を、抽出された「地点候補」に制限することである。すなわち、全ての対象地点のう ボルマークに対応する位置に制限すること」とは、位置情報取得手段によって位置情報を取得し得る地点について、全ての対象地点を、抽出された「地点候補」に制限することである。すなわち、全ての対象地点のうち、抽出された「地点候補」以外の地点の位置情報を取得し得ないものである。 イ訂正後訂正後の請求項1の「前記表示手段の地図画面上に前記地点候補がシンボルマークで表示されている間は、前記位置情報取得手段によって地点候補の位置情報を取得し得る地点を、前記シンボルマークに対応する位置に制限すること」(構成要件G’)における「前記位置情報取得手段によって 地点候補の位置情報を取得し得る地点」とは、「地点候補」の地点である。 また、構成要件G’における「前記シンボルマークに対応する位置」とは、訂正後の請求項1にも、「この候補抽出手段で抽出された地点候補を、前記表示手段の地図画面上にシンボルマークで表示する」(構成要件F)と記載されていることから、候補抽出手段で抽出された「地点候補」の地点 であることは明らかである。 よって、訂正後の請求項1の構成要件G’における「前記位置情報取得手段によって地点候補の位置情報を取得し得る地点を、前記シンボルマークに対応する位置に制限すること」とは、位置情報取得手段によって位置情報を取得し得る地点について、(全ての対象地点ではなく)「地点候補」の地点を抽出された「地点候補」に制限することである。すなわち、制限 される対象は、(全ての対象地点ではなく)「地点候補」だけであるから、全ての対象地点のうち、「地点候補」以外の地点の位置情報を取得することに制限はかからず、「地点候補」以外の地点の位置情報を取得し得るものになる。 ⑶ 訂正前の請求項1に係る発明には含まれなかったが の対象地点のうち、「地点候補」以外の地点の位置情報を取得することに制限はかからず、「地点候補」以外の地点の位置情報を取得し得るものになる。 ⑶ 訂正前の請求項1に係る発明には含まれなかったが、訂正後の請求項1に 係る発明には含まれることになった事項について上記⑵に記載のとおり、訂正前の請求項1に係る発明には明らかに含まれていなかった、全ての対象地点のうち「地点候補」以外の地点の位置情報を取得できるものが、訂正後の請求項1に係る発明には含まれるようになったのであるから、訂正事項1に係る訂正は実質上特許請求の範囲を拡張するも のであるといえる。 ⑷ 訂正事項1に係る訂正の目的について訂正前の請求項1に係る発明は、カーソルの移動や地図画面のセンタリングをさせることができるものも含むため、カーソルの移動や地図画面のセンタリングをさせることができないとの誤った解釈をされてしまうおそれはな く、明瞭であるから、訂正事項1は、明瞭でない記載の釈明ではない。 ⑸ 小括よって、訂正事項1に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張するものであり、特許法126条6項に規定する要件に適合しない。 以上のとおり、「本件審判の請求は、成り立たない。」とした審決の結論に 誤りはない。 2 取消事由2(訂正事項2ないし20並びに21及び22に係る訂正は認めることができないとした判断の誤り)について〔原告の主張〕審決は、訂正事項1に係る訂正は特許法126条6項の要件に適合しないとして訂正を認めることができないことを根拠として、訂正事項2ないし20並 びに21及び22に係る訂正は認めることができないとしたが、前記のとおり訂正事項1に係る訂正についての審決の判断は誤りであるから、かかる誤った判断を根 ことを根拠として、訂正事項2ないし20並 びに21及び22に係る訂正は認めることができないとしたが、前記のとおり訂正事項1に係る訂正についての審決の判断は誤りであるから、かかる誤った判断を根拠とした、訂正事項2ないし20並びに21及び22に係る訂正は認めることができないとした判断も誤りである。 したがって、取消事由2には理由がある。 〔被告の主張〕訂正事項1に係る訂正についての審決の判断に誤りはないから、訂正事項2ないし20並びに21及び22に係る訂正は認めることができないとした審決の判断にも誤りはない。 取消事由2にも理由はない。 第4 当裁判所の判断 1 取消事由1(訂正事項1に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張するものであり、特許法126条6項に規定する要件に適合しないとして、訂正を認めなかった判断の誤り)について⑴ 本件明細書の記載事項 ア本件明細書(甲1)の記載は別紙2特許公報のとおりであり、そこには、次のような記載がある(該当する図については別紙2参照)。 (ア) 技術分野「この発明は、ナビゲーション装置に関するものである。」(段落【0001】) (イ) 背景技術 「ナビゲーション装置によって走行経路を探索する場合、車両の現在位置と目的地とを設定し、必要に応じて経由地等も設定する。ナビゲーション装置においては、これらの設定情報に基づいて経路の探索を行い、そこで得られた結果を表示画面に表示するようになっている。」(段落【0002】) 「この種のナビゲーション装置において、例えば、経由地等の地点を設定するに際して、地点候補をリスト表示し、その表示リストの中からユーザーが所望の地点を適宜選択し得るようにしたものがある。 ) 「この種のナビゲーション装置において、例えば、経由地等の地点を設定するに際して、地点候補をリスト表示し、その表示リストの中からユーザーが所望の地点を適宜選択し得るようにしたものがある。しかし、このように地点候補をリスト表示してユーザーがその中から地点候補を選択する場合、ユーザーは地図上における地点候補の位置を確認するこ とができないため、選択するユーザーに不安が残ることが懸念される。」(段落【0003】)「これに対処し得るナビーゲーション装置として、経由地等の地点を設定するに際して表示装置に地図画面を表示し、ユーザーがその地図画面上でカーソル操作を行うことによって地図画面上の位置情報を取得する ものも案出されている(例えば、特許文献1参照)。」(段落【0004】)(ウ) 発明が解決しようとする課題「しかし、この従来のナビゲーション装置においては、表示装置に表示される地図画面の中から所望地点の位置情報を取得するものであるため、例えば、現在位置と目的地を結ぶ経路を広域地図(大縮尺の地図)で表 示している状態から、所定の経由地を設定する場合には、地図の拡大とスクロールを繰り返さなければ、正確な設定を行うことができない。」(段落【0005】)「そこで、この発明は、ユーザーに煩雑な操作を強いることなく、地図画面上から所望の位置情報を取得することのできるナビゲーション装置 を提供しようとするものである。」(段落【0006】) (エ) 課題を解決するための手段「上記の課題を解決する請求項1に記載の発明は、地図データを記憶する地図データ記憶手段(例えば、後述の実施形態における地図データ記憶部12)と、この地図データ記憶手段に記憶されている地図データを基にして地図画面を表示する表示手 に記載の発明は、地図データを記憶する地図データ記憶手段(例えば、後述の実施形態における地図データ記憶部12)と、この地図データ記憶手段に記憶されている地図データを基にして地図画面を表示する表示手段(例えば、後述の実施形態におけ る表示装置51)と、ユーザーによる操作を受けてこの表示手段の地図画面上から対象地点の位置情報を取得する位置情報取得手段(例えば、後述の実施形態における位置情報取得手段46)と、を備えたナビゲーション装置において、対象地点の地点候補を絞り込む候補抽出手段(例えば、後述の実施形態における候補抽出手段47)を設け、この候補抽 出手段で抽出された地点候補を、前記表示手段の地図画面上にシンボルマークで表示するとともに、前記表示手段の地図画面上に前記地点候補がシンボルマークで表示されている間は、前記位置情報取得手段によって位置情報を取得し得る地点を、前記シンボルマークに対応する位置に制限することを特徴とする。 これにより、表示手段の地図画面上から対象地点の位置情報を取得する場合には、候補抽出手段によって地点候補が絞り込まれ、抽出された地点候補が地図画面上にシンボルマークで表示される。こうしてシンボルマークが表示されると、その表示のある間は、位置情報を取得し得る地点がシンボルマークに対応する位置に制限され、他の位置からは位置 情報が取得されなくなる。」(段落【0007】)(オ) 発明の効果「請求項1に記載の発明によれば、候補抽出手段によって地点候補を絞り込み、絞り込まれた地点候補を地図画面上にシンボルマークで表示するとともに、そのシンボルマークの表示のある間、位置情報を取得可能 な地点をシンボルマークに対応する位置に制限するので、表示されたシ ンボルマークを選択するだ シンボルマークで表示するとともに、そのシンボルマークの表示のある間、位置情報を取得可能 な地点をシンボルマークに対応する位置に制限するので、表示されたシ ンボルマークを選択するだけで、地図画面上から所望の位置情報を取得することができる。」(段落【0015】)(カ) 発明を実施するための最良の形態「以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。 ナビゲーション装置10は、図1に示すように、現在位置検出部11 (現在位置検出手段)と、地図データ記憶部12(地図データ記憶手段)と、施設データ記憶部13と、入力操作部14と、ECU15と、出力部16とを備えている。」(段落【0023】)「現在位置検出部11は、人工衛星を利用して車両の位置を測定するためのGPS(GlobalPositioningSystem)信号や、適宜の基地局を利用 してGPS信号の誤差を補正するD(Differential)GPS信号等の測位信号を受信する測位信号受信部21と、水平面内での自車両の向きや鉛直方向に対する傾斜角度(例えば、車両の前後方向軸の鉛直方向に対する傾斜角度や車両重心の上下方向軸回りの回転角であるヨー角等)および傾斜角度の変化量(例えば、ヨーレート等)を検出するジャイロセ ンサ22と、車両の速度(車速)を検出する車速センサ23と、を備え、受信した測位信号によって、あるいは、車速やヨーレート等の検出信号に基づく自律航法の算出処理によって、車両の現在位置を算出するようになっている。」(段落【0024】)「ECU15は、図1に示すように、記憶部41と、ナビゲーション処 理部42と、出力制御部43と、を主として備えている。 記憶部41は、現在位置検出部11から出力される現在位置情報や、操作 「ECU15は、図1に示すように、記憶部41と、ナビゲーション処 理部42と、出力制御部43と、を主として備えている。 記憶部41は、現在位置検出部11から出力される現在位置情報や、操作者による入力操作部14の操作によって入力された目的地や経由地等の地点情報等を記憶する。 ナビゲーション処理部42は、地図データ記憶部12から取得する道 路データに対して、現在位置検出部11から出力される現在位置に基づ いてマップマッチングを行うと共に、入力操作部14の操作によって入力された目的地や経由地に対して経路探索や経路誘導等の処理を実行し、出力部16の表示装置51やスピーカ52の動作を指示するための制御指令を出力する。 出力制御部43は、例えば、ナビゲーション処理部42から出力され る制御指令や、入力操作部14の操作に応じて、出力部16の表示装置51やスピーカ52を制御する。」(段落【0029】)「ナビゲーション処理部42は、経路探索や経路誘導を行う準備段階として、ユーザーによる入力操作部14の操作によって目的地を設定する目的地設定手段44と、同様の入力操作部14の操作によって経由地を 設定する経由地設定手段45を備えるとともに、表示装置51の地図画面上から、例えば、地図画面上のカーソルで地点を指定することによって対象位置の位置情報を取得する位置情報取得手段46を備えている。」(段落【0030】)「経由地設定手段45は、後述するように地点候補をリスト表示して、 そのリストの中から任意数の経由地点を選択して確定するリスト入力モード(A)と、表示装置51の地図画面上から経由地点を選択して確定する以下の(B)~(C)の3つの地図入力モードを備えている。 <地図詳細位置からの設定モード> … を選択して確定するリスト入力モード(A)と、表示装置51の地図画面上から経由地点を選択して確定する以下の(B)~(C)の3つの地図入力モードを備えている。 <地図詳細位置からの設定モード> …(B)地図画面上の詳細位置をカーソル等で逐次指定して、位置情報取得手 段46で位置情報を取得し、その位置情報を経由地として設定する。 <記憶地点候補からの設定モード> …(C)ユーザーが予め記憶部41等に複数の地点候補を記憶させておき、経由地の設定時には、候補抽出手段47が記憶されている地点候補を呼び出し、その呼び出した地点候補を、シンボル表示手段48を通して地図 画面上にシンボルマーク(図8参照)で表示するとともに、取得情報制 限手段49が位置情報取得手段46で取得し得る地点をシンボルマークに対応する位置のみに制限する。この状態で所望のシンボルマークを選択することにより、そのシンボルマークに対応する位置情報を取得し、その位置情報を経由地として設定する。 <カテゴリ別候補からの設定モード> …(D) 施設データ記憶部13に記憶されているPOI(PointOfInterest)データに対してカテゴリ別の検索(例えば、経由地点に関係する系列店名の検索)を行い、そこで抽出された地点候補を、シンボル表示手段48を通して地図画面上にシンボルマーク(図14参照)で表示するとともに、取得情報制限手段49が位置情報取得手段46で取得し得る地点 をシンボルマークに対応する位置のみに制限する。この状態で所望のシンボルマークを選択することにより、そのシンボルマークに対応する位置情報を取得し、その位置情報を経由地として設定する。」(段落【0031】)「以下に、この実施形態のナビゲーション装置10によ シンボルマークを選択することにより、そのシンボルマークに対応する位置情報を取得し、その位置情報を経由地として設定する。」(段落【0031】)「以下に、この実施形態のナビゲーション装置10による経路誘導の設 定について、図5~図7のフローチャートに沿って説明する。 まず、図5のステップS101において、表示装置51に地図画面を表示し、ステップS102で目的地設定処理によって目的地の位置情報を取得するとともに、つづくステップS103において、現在位置と目的地の位置情報を基にして経路探索を行い、ステップS104において、 探索した経路を地図画面に表示する。このとき、地図画面上には、例えば、図8に示すように現在位置oを示すカーソルcと目的地pを意味するマークが、複数の候補経路とともに表示される。ユーザーはこのとき適宜希望の経路R1を選択する。 次に、ステップS105では、経由地の設定を行うかどうかのユーザ ーの入力を待ち、ユーザーが経由地の設定を行う場合には、ステップS 106に進み、経由地の設定を行わない場合には、ステップS107に進み経路誘導を開始する。」(段落【0032】)「図6のフローチャートは、記憶地点候補から経由地を設定する一連の処理を示すものである。以下、この処理について説明する。なお、図6のフローチャートでは省略されているが、地図画像から設定した経由地 点は、例えば、図9に示すようなリストのかたちでまとめて表示し、総ての経由地点が確定した時点で経路探索(図5中のステップS112)に移行する。以下で説明するステップS201~ステップS205は、図9のリストの一枠に経由地点を一つずつ設定するステップである。 ステップS201においては、図10に示すような少なくとも現在地 移行する。以下で説明するステップS201~ステップS205は、図9のリストの一枠に経由地点を一つずつ設定するステップである。 ステップS201においては、図10に示すような少なくとも現在地 oと目的位置pの入る尺度の地図画面を表示し、次のステップS202において、予め記憶されている地点候補を呼び出し、ステップS203で、地図画面上に地点候補に対応するシンボルマークS1~S4を表示するとともに、ステップS204で、位置情報取得手段46で取得し得る地点をシンボルマークS1~S4に対応する位置のみに制限する。 この状態から、任意のシンボルマークS1~S4にカーソルcを合致させると、図10に示すように、そのシンボルマークに対応する位置情報を表示するための情報スイッチ60とともに経由地設定スイッチ61が画面の右上に表示される。なお、この経由地設定スイッチ61は、シンボルマークに対応した位置情報を取得して経由地として設定する ためのものである。 ステップS205においては、所望のシンボルマークS1~S4にカーソルcを合致させ、その状態で経由地設定スイッチ61を確定操作することにより、選択したシンボルマークに対応する位置情報を取得して経由地点として設定する。」(段落【0035】) 「なお、上述した記憶地点候補から経由地を設定するときと、カテゴリ 別候補から経由地を設定するときでは、地点候補以外のシンボルマークが消失する大縮尺の地図表示になっても、地点候補を示すシンボルマークが残るように設定されており、それによって利便性の向上が図れている。」(段落【0038】)「また、記憶地点候補から経由地を設定するときと、カテゴリ別候補か ら経由地を設定するときには、地図画面上に表示するシンボルマーク それによって利便性の向上が図れている。」(段落【0038】)「また、記憶地点候補から経由地を設定するときと、カテゴリ別候補か ら経由地を設定するときには、地図画面上に表示するシンボルマークが密集する場合(シンボルマーク同士が所定距離よりも近接する場合)には、地図画面の縮尺を自動的に拡大するようになっている。このため、ユーザーは小縮尺の表示に手動で切り替えることなく、所望の地点候補を正確に選択することができる。なお、地図画面上に表示するシンボル マークが密集する場合に、密集するシンボルマークに対応する地点情報をリスト表示して、そのリストの中から選択させるようにしても良い。」(段落【0039】)「以上のように、このナビゲーション装置10においては、表示画面上から経由地を設定する場合に、記憶地点候補からの設定モード(C)や カテゴリ別候補からの設定モード(D)を選択すれば、地図画面上に表示されるシンボルマークを選択するだけで地図画面を見ながら容易に所望の経由地を設定することができる。そして、経由地を設定する際には、シンボルマークに対応する位置以外は位置情報の取得が制限されるため、縮尺の大きい地図画面であっても不要な地点を誤って設定してしまうこ とがない。 また、特に、この実施形態の場合、地点候補のシンボルマークを表示する基本地図画面が、少なくとも現在位置oと目的地pが表示される縮尺に設定されているため、基本経路に対する経由地の位置関係を確認しながら設定操作を行うことができる。」(段落【0040】) 「なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要 旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記の実施形態においては、記憶地点候補からの設定モード(C)やカテ なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要 旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記の実施形態においては、記憶地点候補からの設定モード(C)やカテゴリ別候補からの設定モード(D)において、地図画面上のシンボルマークに対応する地点以外の位置情報を取得できないようにしているが、単に、取得できないだけでなく、位置情報の選択カーソルを地点候補(シンボ ルマーク)以外には移動できないようにしても良い。」(段落【0042】)イ前記アの記載事項によれば、本件明細書には、本件発明につき次のような開示があることが認められる。 本件発明は、ナビゲーション装置に関するものであるところ(段落【0001】)、従来のナビゲーション装置においては、表示装置に表示される地図 画面の中から所望地点の位置情報を取得するものであるため、例えば、現在位置と目的地を結ぶ経路を広域地図(大縮尺の地図)で表示している状態から、所定の経由地を設定する場合には、地図の拡大とスクロールを繰り返さなければ、正確な設定を行うことができないとの課題があったところ(段落【0005】)、本件発明は、ユーザーに煩雑な操作を強いることなく、地図 画面上から所望の位置情報を取得することのできるナビゲーション装置を提供しようとするものである(段落【0006】)。 ⑵ 訂正事項が実質上特許請求の範囲を変更するものであるか否かについてア特許法126条6項は、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなると、第三者に不 測の不利益が生じる恐れがあるため、そうした事態の発生を防ぐ趣旨の規定であるから、同条項の「実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する 訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなると、第三者に不 測の不利益が生じる恐れがあるため、そうした事態の発生を防ぐ趣旨の規定であるから、同条項の「実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するもの」であるか否かの判断は、訂正の前後の特許請求の範囲の意義を基準としてされるべきであり、「実質上」の拡張又は変更に当たるかどうかは訂正により第三者に不測の不利益を与えることになるかどうかの観点から決する のが相当である。 イ本件明細書の用語の解釈これを本件についてみると、本件訂正の前後を通じ、その請求項1に係る発明において、その特許請求の範囲の記載によれば、地図画面上にシンボルマーク表示される地点候補は、候補抽出手段で抽出された後の「地点候補」である一方、位置情報取得手段により位置情報を取得し得るのは「地点」に ついてのものであり、その取得し得る「地点」をシンボルマークに対応する「位置」に制限するとするものである。 ところで、明細書の用語は、その有する普通の意味で使用し、かつ明細書及び特許請求の範囲全体を通じて統一して使用することが求められるものであるから(特許法施行規則24条、様式第29備考8)、この観点から、 以下、本件明細書における用語の意味を検討する。 まず、本件明細書における「地点」については、「経由地等の地点を設定する」(段落【0003】、【0004】)、「この従来のナビゲーション装置においては、表示装置に表示される地図画面の中から所望地点の位置情報を取得するものである」(段落【0005】)、「地図画面上のカーソルで地点を指 定することによって対象位置の位置情報を取得する」(段落【0030】)、「縮尺の大きい地図画面であっても不要な地点を誤って設定してしまうことがない」(段落【 「地図画面上のカーソルで地点を指 定することによって対象位置の位置情報を取得する」(段落【0030】)、「縮尺の大きい地図画面であっても不要な地点を誤って設定してしまうことがない」(段落【0040】)及び「地図画面上のシンボルマークに対応する地点以外の位置情報を取得できないようにしている」(段落【0042】)との各記載から、もっぱら地図画面上に表示された地理的範囲の中の任意の 場所をいい、シンボルマーク表示のされていないものも含むと解される。 次に、本件明細書における「位置」については、「地点候補をリスト表示してユーザーがその中から地点候補を選択する場合、ユーザーは地図上における地点候補の位置を確認することができない」(段落【0003】)及び「こうしてシンボルマークが表示されると、その表示のある間は、位置情報を取 得し得る地点がシンボルマークに対応する位置に制限され、他の位置からは 位置情報が取得されなくなる。」(段落【0007】)の各記載のように、「地点の地球上の所在地」を指すものとしても用いられるほか、「車両の現在位置と目的地」(段落【0002】)及び「人工衛星を利用して車両の位置を測定する」(段落【0024】)の各記載のように、「車両の現在地」を指すものとしても用いられ、いずれにしても、これらについての地球上の所在地を 指すものと解される。 そして、本件明細書における「位置情報」については、「記憶部41は、現在位置検出部11から出力される現在位置情報」(段落【0029】)及び「図5のステップS101において、表示装置51に地図画面を表示し、ステップS102で目的地設定処理によって目的地の位置情報を取得すると ともに、つづくステップS103において、現在位置と目的地の位置情報を基にして において、表示装置51に地図画面を表示し、ステップS102で目的地設定処理によって目的地の位置情報を取得すると ともに、つづくステップS103において、現在位置と目的地の位置情報を基にして経路探索を行い、ステップS104において、探索した経路を地図画面に表示する。このとき、地図画面上には、例えば、図8に示すように現在位置oを示すカーソルcと目的地pを意味するマークが、複数の候補経路とともに表示される。ユーザーはこのとき適宜希望の経路R1を選択する。」 (段落【0032】)との各記載から明らかなとおり、地図画面上の位置(画面座標)ではなく、現実世界の位置を表す情報と理解される。そのうち、地点についての位置情報をいう場合には、前記「現在位置と目的地の位置情報を基にして」(段落【0032】)との記載によれば、目的地も含まれることが明らかである。 ウ本件訂正前の特許請求の範囲請求項1の発明の意義以上の用語の意味を前提として、本件訂正前の特許請求の範囲請求項1の発明の意義を検討する。 本件明細書における発明の詳細な説明の【課題を解決するための手段】には、「上記の課題を解決する請求項1に記載の発明は、・・・表示手段の地図 画面上から対象地点の位置情報を取得する場合には、候補抽出手段によって 地点候補が絞り込まれ、抽出された地点候補が地図画面上にシンボルマークで表示される。こうしてシンボルマークが表示されると、その表示のある間は、位置情報を取得し得る地点がシンボルマークに対応する位置に制限され、他の位置からは位置情報が取得されなくなる。」(段落【0007】)と記載されているところ、この段落【0007】の「位置情報を取得し得る地点が シンボルマークに対応する位置に制限され、他の位置からは位置情報が取得 置情報が取得されなくなる。」(段落【0007】)と記載されているところ、この段落【0007】の「位置情報を取得し得る地点が シンボルマークに対応する位置に制限され、他の位置からは位置情報が取得されなくなる」の記載は、請求項1の特許請求の範囲の「前記位置情報取得手段によって位置情報を取得し得る地点を、前記シンボルマークに対応する位置に制限する」との記載と同義であると解される。その意については、「地点」について本件明細書の意味するところの、もっぱら地図画面上に表示さ れた地理的範囲の中の任意の場所であってシンボルマーク表示のなされていないものを含むとのことからすれば、位置情報取得手段によって位置情報を取得し得るのは、そのような地図画面上に表示された任意の地点であったものが、表示画面上にシンボルマークが地点候補として表示されている間については、現実世界の位置を表す位置情報を取得し得るのがシンボルマーク に対応した位置に制限されることにより、それ以外の画面上に表示された地点に係る位置情報は取得し得なくなることを意味するものということができる。 そうすると、訂正前の請求項1の発明においては、地点候補がシンボルマークで表示がされている間は、位置情報を取得し得る地点は、このシンボル マークに対応した位置に限られ、それ以外の地点の位置情報は取得し得ないこととなる。これは、本件明細書の発明の詳細な説明の【発明の効果】に、「請求項1に記載の発明によれば、候補抽出手段によって地点候補を絞り込み、絞り込まれた地点候補を地図画面上にシンボルマークで表示するとともに、そのシンボルマークの表示のある間、位置情報を取得可能な地点をシン ボルマークに対応する位置に制限するので、表示されたシンボルマークを選 択するだけで、地 マークで表示するとともに、そのシンボルマークの表示のある間、位置情報を取得可能な地点をシン ボルマークに対応する位置に制限するので、表示されたシンボルマークを選 択するだけで、地図画面上から所望の位置情報を取得することができる。」(段落【0015】)と記載され、シンボルマークが表示されている間に位置情報が取得可能な地点は、シンボルマークが表示されている位置のみとされていることからも明らかである。さらには、前記⑴イのとおり、本件発明はユーザーに煩雑な操作を強いることなく地図画面上から所望の位置情報 を取得することのできるナビゲーション装置を提供するものとし、そのため「地図画面上のカーソルで地点を指定することによって対象位置の位置情報を取得する位置情報取得手段46を備え」(段落【0030】)、「地点候補以外のシンボルマークが消失する大縮尺の地図表示になっても、地点候補を示すシンボルマークが残るように設定されており、それによって利便性の向 上が図れている」(段落【0038】)、「経由地を設定する際には、シンボルマークに対応する位置以外は位置情報の取得が制限されるため、縮尺の大きい地図画面であっても不要な地点を誤って設定してしまうことがない」(段落【0040】)及び「地図画面上のシンボルマークに対応する地点以外の位置情報を取得できないようにしているが、単に、取得できないだけでなく、 位置情報の選択カーソルを地点候補(シンボルマーク)以外には移動できないようにしても良い」(段落【0042】)とする本件明細書の各記載の内容にも沿うものである。 エ本件訂正後の特許請求の範囲請求項1の発明の意義これに対し、訂正後の請求項1の発明は、「前記地点候補がシンボルマー クで表示されている間は、」「地点候補の 容にも沿うものである。 エ本件訂正後の特許請求の範囲請求項1の発明の意義これに対し、訂正後の請求項1の発明は、「前記地点候補がシンボルマー クで表示されている間は、」「地点候補の位置情報を取得し得る地点を前記シンボルマークに対応する位置に制限する」とするものであるところ、前記イのとおり、特許請求の範囲の記載によれば、候補抽出手段で抽出された後の地点候補が地図画面上にシンボルマークで表示されているのであるから、「前記シンボルマークに対応する位置」とは、すなわち地図画面上にシンボ ルマークで表示されている地点候補の地球上の所在地であり、これは、地図 画面上における「地点候補の位置情報を取得し得る地点」と同じものを意味している。そうすると、訂正後の請求項1においては、位置情報を取得し得る地点についての「制限」は何らなされていないこととなる。 加えて、前記イのとおり、位置情報取得手段は地点についての位置情報を取得するものであり、地点候補についての位置情報を取得するものではない から、訂正後の請求項1においては、地点候補以外の地図画面上に表示された任意の場所である地点について、地点候補がシンボルマークで表示されている間、位置情報取得手段により位置情報を取得し得るのか否かについて、明らかにしないものとなる。 すなわち、訂正後の請求項1の発明では、「地点候補の」との文言を加え ることにより、位置情報を取得し得る「地点」についての「制限」をなくし、位置情報を取得できる範囲を不明とするものであり、特許請求の範囲の記載のうち、「前記表示手段の地図画面上に前記地点候補がシンボルマークで表示されている間は、前記位置情報取得手段によって位置情報を取得し得る地点を、前記シンボルマークに対応する位置に制限する」との文 載のうち、「前記表示手段の地図画面上に前記地点候補がシンボルマークで表示されている間は、前記位置情報取得手段によって位置情報を取得し得る地点を、前記シンボルマークに対応する位置に制限する」との文言(構成要件 G)を無意味とし、発明特定事項の一部を削除するものということができる。 オ本件訂正前の請求項1の発明と本件訂正後の請求項1の発明の対比そうすると、訂正事項1により、請求項1に係る発明は、本件訂正前の請求項1に記載される地点の位置情報を取得し得るのがシンボルマークに対応した位置に限られ、それ以外の地点の位置情報は取得し得ないこととなる ものから、位置情報を取得し得る地点についての「制限」をなくし、位置情報の取得範囲を不明として、発明特定事項の一部を削除するものに変更されることになるから、この変更は、特許請求の範囲を変更するものであるところ、その変更は、減縮的な変更には当たらず、また、「明瞭でない記載の釈明」を目的としたものともいえず、本件訂正前の請求項1の記載の表示を信 頼した第三者に不測の不利益を与えることになることは明らかである。 したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を変更するものと認められるから、特許法126条6項の要件に適合しないというべきである。これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。 ⑶ 原告の主張について原告は、前記第3の1〔原告の主張〕⑵のとおり、訂正事項1につき、訂正 の前後で特許請求の範囲の内容が変わるものではない旨を主張する。 しかし、既に検討したとおり、訂正事項1により請求項1の特許請求の範囲に変化があることが明らかである。 したがって、原告の上記主張は、採用することができない。 ⑷ 小括 以上のとお 検討したとおり、訂正事項1により請求項1の特許請求の範囲に変化があることが明らかである。 したがって、原告の上記主張は、採用することができない。 ⑷ 小括 以上のとおり、訂正事項1は、特許法126条6項の要件に適合しないから、その余の点について判断するまでもなく、請求項1に係る訂正事項1による訂正を認めることはできない。 2 取消事由2(訂正事項2ないし20並びに21及び22に係る訂正は認めることができないとした判断の誤り)について 訂正事項1に係る訂正が認められないとの判断が誤りであることを前提として、訂正事項2ないし20並びに21及び22に係る訂正は認めることができないとした本件審決の判断の誤りをいう取消事由2については理由がないことに帰するところ、請求項1に係る訂正事項1による訂正が認められない以上、本件特許権全体に係るその余の訂正事項による訂正についても認めることはで きない。 したがって、本件訂正は訂正要件に適合しないとした本件審決の判断に誤りはない。 3 結論以上によれば、原告主張の取消事由はいずれも理由がなく、本件審決にこれ を取り消すべき違法は認められない。 よって、原告の請求を棄却することとし、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官東海林 保 裁判官今井弘晃 裁判官水野正則 今井弘晃 裁判官 水野正則 (別紙1審決書写し、別紙2特許公報写し省略)
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