平成25(行ケ)10103 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成25年11月21日 知的財産高等裁判所 2部 判決 請求棄却
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判決文本文23,958 文字)

- 1 -平成25年11月21日判決言渡平成25年(行ケ)第10103号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成25年11月7日判決 原告東京エレクトロン株式会社 訴訟代理人弁理士高山宏志丸山幸雄 被告特許庁長官指定代理人土屋知久神 悦彦樋口信宏堀内仁子 主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 原告の求めた判決特許庁が不服2012-7851号事件について平成25年2月25日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要 - 2 -本件は,特許出願拒絶審決の取消訴訟である。争点は,補正についての独立特許要件の有無,補正前発明について進歩性の有無である。 1 特許庁における手続の経緯原告は,平成18年5月18日,発明の名称を「誘導結合プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法(平成23年9月1日付け補正により「誘導結合プラズマ処理装置,誘導結合プラズマ処理方法およびコンピュータ読取り可能な記憶媒体」と補正。甲12)とする発明につき,特許出願(特願2006-139042号,特開2007-311182号。甲3,4)をしたが,平成24年2月2日付けで拒絶査定を受けた(甲14)。そこで,原告は,同年4月27日,これに対する不服の審判を請求すると同時に特許請求の範囲の変更を含む本件補正をした(甲16)。特許庁は,平成25年2月25日,本件補正を却下した上,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は同年3 審判を請求すると同時に特許請求の範囲の変更を含む本件補正をした(甲16)。特許庁は,平成25年2月25日,本件補正を却下した上,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は同年3月12日,原告に送達された。 2 本願発明の要旨(1) 本件補正後の請求項1(補正発明)「被処理基板を収容してプラズマ処理を施す処理室と,前記処理室内で被処理基板が載置される載置台と,前記処理室内に処理ガスを供給する処理ガス供給系と,前記処理室内を排気する排気系と,前記処理室の外部に誘電体部材を介して配置され,整合器を介して高周波電源に接続されて高周波電力が供給されることにより前記処理室内にそれぞれ異なる電界強度分布を有する誘導電界を形成する複数のアンテナ部を有する高周波アンテナと,前記各アンテナ部を含むアンテナ回路のうち少なくとも一つに接続され,その接続されたアンテナ回路のインピーダンスを調節するインピーダンス調節手段とを具備し,前記インピーダンス調節手段によるインピーダンス調節により,前記複数のアン - 3 -テナ部の電流値を制御し,前記処理室内に形成される誘導結合プラズマのプラズマ密度分布を制御するとともに,アプリケーションごとに最適なプラズマ密度分布が得られる前記インピーダンス調節手段の調節パラメータが予め設定され,所定のアプリケーションが選択された際にそのアプリケーションに対応する前記インピーダンス調節手段の調節パラメータが予め設定された最適な値になるように前記インピーダンス調節手段を制御する制御手段をさらに有することを特徴とする誘導結合プラズマ処理装置。」(下線部が補正箇所)(2) 本件補正前の請求項1(補正前発明)「被処理基板を収容してプラズマ処 ダンス調節手段を制御する制御手段をさらに有することを特徴とする誘導結合プラズマ処理装置。」(下線部が補正箇所)(2) 本件補正前の請求項1(補正前発明)「被処理基板を収容してプラズマ処理を施す処理室と,前記処理室内で被処理基板が載置される載置台と,前記処理室内に処理ガスを供給する処理ガス供給系と,前記処理室内を排気する排気系と,前記処理室の外部に誘電体部材を介して配置され,高周波電力が供給されることにより前記処理室内にそれぞれ異なる電界強度分布を有する誘導電界を形成する複数のアンテナ部を有する高周波アンテナと,前記各アンテナ部を含むアンテナ回路のうち少なくとも一つに接続され,その接続されたアンテナ回路のインピーダンスを調節するインピーダンス調節手段とを具備し,前記インピーダンス調節手段によるインピーダンス調節により,前記複数のアンテナ部の電流値を制御し,前記処理室内に形成される誘導結合プラズマのプラズマ密度分布を制御するとともに,アプリケーションごとに最適なプラズマ密度分布が得られる前記インピーダンス調節手段の調節パラメータが予め設定され,所定のアプリケーションが選択された際にそのアプリケーションに対応する前記インピーダンス調節手段の調節パラメータが予め設定された最適な値になるように前記インピーダンス調節手段を制御する - 4 -制御手段をさらに有することを特徴とする誘導結合プラズマ処理装置。」 3 審決の理由の要点(1) 引用発明1について引用例1(特開2000-323298号公報・甲1)には,以下の引用発明1が記載されている。 「内部にプラズマ生成部を形成する絶縁材料で成る放電部(2a)と,被処理物である試料,例えば,ウエハ(13)を配置する 000-323298号公報・甲1)には,以下の引用発明1が記載されている。 「内部にプラズマ生成部を形成する絶縁材料で成る放電部(2a)と,被処理物である試料,例えば,ウエハ(13)を配置するための電極が設置された処理部(2b)とから成る真空容器(2)を有し,放電部の外側には整合器(マッチングボックス)(3)を介して高周波電源(10)に直列に接続されているコイル状の誘導結合アンテナが配置されており,該誘導結合アンテナは,第1の誘導結合アンテナ(1a)と第2の誘導結合アンテナ(1b)の二系統を上下に設置し,並列に接続したものであって,第1の誘導結合アンテナには直列にバリコン(16)が接続され,真空容器内にはガス供給装置(4)から処理ガスが供給され,真空容器内は排気装置(7)によって所定の圧力に減圧排気され,バリコンでインピーダンスの値を変化させることで二系統の誘導結合アンテナに流れる高周波電流の大きさを制御することによりプラズマ分布を制御することができる,プラズマ処理装置。」(2) 独立特許要件について補正発明は,引用発明1及び引用例2(特開2003-179045号公報,甲2)に記載された引用発明2に基づいて,本件出願当時,当業者が容易に発明をすることができたもので,進歩性を欠く。 ア補正発明と引用発明1との一致点と相違点は,次のとおりである。 【一致点】 - 5 -「被処理基板を収容してプラズマ処理を施す処理室と,前記処理室内で被処理基板が載置される載置台と,前記処理室内に処理ガスを供給する処理ガス供給系と,前記処理室内を排気する排気系と,前記処理室の外部に誘電体部材を介して配置され,整合器を介して高周波電源に接続されて高周波電力が供給される 処理室内に処理ガスを供給する処理ガス供給系と,前記処理室内を排気する排気系と,前記処理室の外部に誘電体部材を介して配置され,整合器を介して高周波電源に接続されて高周波電力が供給されることにより前記処理室内にそれぞれ異なる電界強度分布を有する誘導電界を形成する複数のアンテナ部を有する高周波アンテナと,前記各アンテナ部を含むアンテナ回路のうち少なくとも一つに接続され,その接続されたアンテナ回路のインピーダンスを調節するインピーダンス調節手段とを具備し,前記インピーダンス調節手段によるインピーダンス調節により,前記複数のアンテナ部の電流値を制御し,前記処理室内に形成される誘導結合プラズマのプラズマ密度分布を制御する誘導結合プラズマ処理装置。」【相違点】補正発明は「アプリケーションごとに最適なプラズマ密度分布が得られる前記インピーダンス調節手段の調節パラメータが予め設定され,所定のアプリケーションが選択された際にそのアプリケーションに対応する前記インピーダンス調節手段の調節パラメータが予め設定された最適な値になるように前記インピーダンス調節手段を制御する制御手段」を有しているのに対して,引用発明1がそのような制御手段を有するかどうか不明な点。 イ相違点に関する審決の判断は,以下のとおりである。 引用例2には,プラズマ処理装置のインピーダンス整合器を,プロセスごとに異なるインピーダンスに整合させるために「各プロセスに対応して予め定めた,ROM等に記憶されている制御データを読み出して可変コンデンサによりインピーダンスを調整するインピーダンス制御回路」(引用発明2)が記載されている。 引用発明2と上記相違点に係る構成を対比すると,引用発明2の「プロセス」,「調 - 6 -節パラメータ」 インピーダンスを調整するインピーダンス制御回路」(引用発明2)が記載されている。 引用発明2と上記相違点に係る構成を対比すると,引用発明2の「プロセス」,「調 - 6 -節パラメータ」,「インピーダンス調節手段」,「各プロセスに対応して予め定めた,ROM等に記憶されている制御データ」及び「インピーダンス制御回路」は,それぞれ,相違点に係る構成の「アプリケーション」,「制御データ」,「可変コンデンサ」,「アプリケーションごとに最適なプラズマ密度分布が得られる前記インピーダンス調節手段の調節パラメータ」及び「インピーダンス調節手段を制御する制御手段」に相当する。 してみると,引用発明2は,上記相違点に係る構成の「所定のアプリケーションが選択された際にそのアプリケーションに対応する前記インピーダンス調節手段の調節パラメータが予め設定された最適な値になるように前記インピーダンス調節手段を制御する制御手段」という構成を有している。 引用発明2は,インピーダンス調整に際してごく普通に用いられる可変コンデンサを用いたものであり,引用発明2がインピーダンス整合器に限らず,広くインピーダンス調整のために用いることが可能であることは,当業者にとって自明である。 そして,引用発明1がウエハを処理するための装置であることを考慮すれば,引用発明1が「バリコンでインピーダンスの値を変化させることで」「プラズマ分布を制御する」のは,アプリケーションごとに最適なプラズマ密度分布が得られるようにインピーダンスを調整するものであることは明らかである。そのための制御手段として引用発明2を用いることに,格別の技術的困難性も阻害要因もない。 そして,補正発明全体の効果も,引用発明1及び引用発明2から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なもので ための制御手段として引用発明2を用いることに,格別の技術的困難性も阻害要因もない。 そして,補正発明全体の効果も,引用発明1及び引用発明2から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。 したがって,補正発明は,引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (3) 補正前発明の容易想到性について補正前発明は,補正発明から「整合器を介して高周波電源に接続されて」(高周波電力が供給される。)という特定事項を削除したものである。 - 7 -そうすると,補正前発明の発明特定事項をすべて含み,更に限定したものに相当する補正発明が,引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,補正前発明も,同様の理由により,当業者が容易に発明をすることができたものである。 第3 原告主張の審決取消事由 1 取消事由1(補正発明についての容易想到性判断の誤り)(1) 補正発明と引用発明1の相違点判断の誤りについてア引用発明1では,補正発明が有する「アプリケーションごとに最適なプラズマ密度分布が得られる前記インピーダンス調節手段の調節パラメータが予め設定され,所定のアプリケーションが選択された際にそのアプリケーションに対応する前記インピーダンス調節手段の調節パラメータが予め設定された最適な値になるように前記インピーダンス調節手段を制御する制御手段」は,現実に開示及び示唆されていない。 引用例1の段落【0066】には,プロセスレシピに関する記載があるが,単にプロセスレシピの存在が記載されているにすぎず,補正発明における制御手段の 制御手段」は,現実に開示及び示唆されていない。 引用例1の段落【0066】には,プロセスレシピに関する記載があるが,単にプロセスレシピの存在が記載されているにすぎず,補正発明における制御手段の具体的制御内容が全く記載されていないのであるから,引用発明1には,補正発明における制御手段の構成の存在が確認できないのであり,引用発明1には,当該構成が存在しないというほかはない。 イ補正発明は,引用発明1には存在しない上記の制御手段を有することによって,アンテナ回路のインピーダンスを調節するインピーダンス調節手段の調節パラメータを選択するという簡易な操作のみで,選択したアプリケーションにおいて最適なプラズマ密度分布が得られ,選択したアプリケーションにおいて最適なプラズマ処理を行えるという,引用発明1では得られない顕著な効果を奏するものである。 事実,補正発明によれば,異なるアプリケーションを同一処理チャンバーで行う - 8 -場合(例えば,タングステンなどの高融点金属のエッチング処理を行った後,フォトレジストのアッシング処理を行う場合;甲3の段落【0050】参照),これら複数のアプリケーションに最適な調整パラメータが予め設定されている結果,アプリケーション変更時に制御手段が調整パラメータを自動的に選択することにより,特別のプラズマを調整する工程を経ることなく次のアプリケーションを実行することができる。これに対して,引用例1では,段落【0066】~【0068】,【図24】に記載されているように,異なるアプリケーションの間にプラズマ分布調整するための工程31a,31b,31cを挿入しているのであるから,補正発明において制御手段を有する効果は顕著である。 (2) 引用発明2に関する対比判断の誤りについて以下のとおり,引 調整するための工程31a,31b,31cを挿入しているのであるから,補正発明において制御手段を有する効果は顕著である。 (2) 引用発明2に関する対比判断の誤りについて以下のとおり,引用発明2は,「アプリケーションごとに最適なプラズマ密度分布が得られる前記インピーダンス調節手段の調節パラメータが予め設定され,所定のアプリケーションが選択された際にそのアプリケーションに対応する前記インピーダンス調節手段の調節パラメータが予め設定された最適な値になるように前記インピーダンス調節手段を制御する制御手段」との構成を有しておらず,引用発明2がこの構成を有するとした審決の判断は誤りである。 ア引用発明2では,プラズマ負荷のインピーダンスを出力インピーダンスに整合させるために,インピーダンス整合器のインピーダンスを可変コンデンサやインダクタにより調整しており,インピーダンス制御回路により調整されるインピーダンスは,与えられたプラズマ負荷のインピーダンスに対して反射波電力が最小となるように変化させるものであり,しかも,引用発明2におけるインピーダンス整合器のインピーダンスは,出力インピーダンスと負荷のインピーダンスを見かけ上一致させるものにすぎず,プラズマ密度分布とは無関係である。 これに対し,補正発明において調整すべきインピーダンスは,各アンテナ部を含むアンテナ回路のインピーダンスであり,このインピーダンスを変化させることにより,アンテナ回路への電流分配比が変化し,プラズマ密度分布が変化するもので - 9 -ある。 したがって,補正発明のインピーダンスは,プラズマ処理の際のプラズマ密度分布に直接寄与するものであり,引用発明2における整合器のインピーダンスとは全く異なるものである。 イ引用発明2のインピーダンス ,補正発明のインピーダンスは,プラズマ処理の際のプラズマ密度分布に直接寄与するものであり,引用発明2における整合器のインピーダンスとは全く異なるものである。 イ引用発明2のインピーダンス制御回路46は,各プロセス条件に対応したインピーダンス整合点が存在すると予測される範囲における可変コンデンサC1,C2の容量を,各プロセスの初期設定段階でインピーダンスを整合させるための初期値として記憶し,実際のインピーダンス調整においては,その初期値として記憶されたC1,C2の容量であるD1,D2の付近において全可動範囲よりも狭く限定された範囲で変動させてインピーダンス整合器34のインピーダンスを調整し,インピーダンス整合点に到達させる。したがって,引用発明2では,インピーダンス制御回路46に記憶されているのはインピーダンス整合のための初期値にすぎず,その初期値から所定の範囲で変動させて整合するインピーダンスに調整しているのであり,その点,アプリケーションごとに最適なプラズマ密度分布が得られる調節パラメータの値自体が予め設定されている補正発明とは明らかに異なっている。つまり,補正発明では,制御手段は,各アンテナ部を含むアンテナ回路に対する電流分配が最適なプラズマ密度分布となるように直接的に一つの値のインピーダンスを与える調整パラメータを設定するのに対し,引用発明2のインピーダンス制御回路では,直接的なインピーダンス値を設定するのではなく,整合状態に至り得る特定の範囲で変動し得るインピーダンスの初期値を設定するにすぎない。 したがって,補正発明の制御手段に設定される調整パラメータと,引用発明2のインピーダンス制御回路に記憶される制御データとは本質的に相違している。 ウまた,一般的に「プロセス」と「アプリケーション」とがしばしば同義 御手段に設定される調整パラメータと,引用発明2のインピーダンス制御回路に記憶される制御データとは本質的に相違している。 ウまた,一般的に「プロセス」と「アプリケーション」とがしばしば同義語として扱われることがあるが,引用発明2では,ある条件のプロセスが与えられた際に,そのプロセスのインピーダンスの整合点が存在すると予測される範囲における可変コンデンサの容量の初期値が記憶されており,そのプロセスのプロセス条 - 10 -件は予め決まっていて,調整されるインピーダンスはプロセス条件には無関係であるのに対し,補正発明では,あるアプリケーションが与えられたときに,そのアプリケーションにおけるプラズマ密度分布が最適になる調整パラメータがプロセス条件の一部として予め設定されているのであって,この点を考慮すると,引用発明2における「プロセス」は補正発明の「アプリケーション」に相当しない。 エ以上に述べたことからすると,審決が,引用発明2が「所定のアプリケーションが選択された際にそのアプリケーションに対応する前記インピーダンス調節手段の調節パラメータが予め設定された最適な値になるように前記インピーダンス調節手段を制御する制御手段」という構成を有していると判断したのは誤りである。引用発明2に記載されているのは,あくまでも「所定の条件のプロセスが選択された際に,可変コンデンサの容量がそのプロセスにおける初期段階においてインピーダンス整合器のインピーダンス整合点が存在すると予測される値になるようにインピーダンス整合器の可変コンデンサを制御するインピーダンス制御回路」という構成にすぎない。 (3) 補正発明に関する容易想到性判断の誤りについてア前記(2)に述べたことからすれば,引用発明1と引用発明2のインピーダンスの本 インピーダンス制御回路」という構成にすぎない。 (3) 補正発明に関する容易想到性判断の誤りについてア前記(2)に述べたことからすれば,引用発明1と引用発明2のインピーダンスの本質的機能は全く相違しており,引用発明2におけるインピーダンス整合器の制御回路を,相違点の構成であるアンテナ回路への電流分配比を調節するインピーダンス調節手段の制御手段に適用しようとする動機が存在せず,引用発明2は,引用発明1に組み合わせるべきものではない。また,仮に組み合わせたとしても,引用発明2の構成は,「アプリケーションごとに最適なプラズマ密度分布が得られる前記インピーダンス調節手段の調節パラメータが予め設定され,所定のアプリケーションが選択された際にそのアプリケーションに対応する前記インピーダンス調節手段の調節パラメータが予め設定された最適な値になるように前記インピーダンス調節手段を制御する制御手段」ではないから,相違点に係る構成を導くことはできない。 - 11 -イまた,審決は,「引用発明2はインピーダンス調整に際してごく普通に用いられる可変コンデンサを用いたものであり,引用発明2がインピーダンス整合器に限らず,広くインピーダンス調整のために用いることが可能であることは当業者にとって自明である。」としたが,この判断も誤っている。 インピーダンス調整にごく普通の可変コンデンサを用いることは,引用発明2を待つまでもなく当たり前のことであり,引用発明2がごく普通の可変コンデンサを用いたことが,「引用発明2がインピーダンス整合器に限らず,広くインピーダンス調整のために用いることが可能であることは当業者にとって自明である」ことにつながるというのは,論理の飛躍であるという他はない。むしろ,引用発明2は,所定条件のプロセスにお 限らず,広くインピーダンス調整のために用いることが可能であることは当業者にとって自明である」ことにつながるというのは,論理の飛躍であるという他はない。むしろ,引用発明2は,所定条件のプロセスにおけるインピーダンス整合器のインピーダンス調整において,迅速にインピーダンス調整を行うために,予め記憶されているそのプロセスの初期段階においてインピーダンス整合点が存在すると予測される値にインピーダンスを制御するという特殊な用途に特化しており,その他のインピーダンス調整については全く記載されていないのであって,広くインピーダンス調整のために用いることが可能な技術ではない。 ウ被告は,引用例1の記載に接した当業者ならば,プラズマ分布を調整するための工程(31a,31b,31c),すなわち,引用発明1のバリコン16を調整する工程について,事前に設定された制御データの選択により制御することを想起すると主張する。 しかし,引用例1は,2種類の材料を連続してエッチングする場合,従来技術では異なる装置を用いてエッチング処理を行う必要があった(段落【0067】)ものを,複数の誘導結合アンテナに流れる高周波電流を調節するという手法により,同一の装置により行えるようにしたことによって,各プロセスごとにウエハを装置間で移動したりする手間を省いてスループットを向上させるものであり(段落【0068】~【0069】),引用例1にオペレータによる調整作業を排してスループットを向上させる点は全く記載されていない。 - 12 -エさらに,補正発明の効果について,前記のとおり,引用発明1から予測し得る範囲のものではなく,相違点に係る制御手段の構成を何ら示唆しない引用発明2からも当然に予測し得ないものであるから,「補正発明全体の効果も,引用発明1及び いて,前記のとおり,引用発明1から予測し得る範囲のものではなく,相違点に係る制御手段の構成を何ら示唆しない引用発明2からも当然に予測し得ないものであるから,「補正発明全体の効果も,引用発明1及び引用発明2から当業者が予測し得る範囲のものであって格別のものではない。」という判断も誤っている。前記に述べたように,補正発明では,引用発明1には存在しない構成を有する結果,アンテナ回路のインピーダンスを調節するインピーダンス調節手段の調節パラメータを選択するだけで,選択したアプリケーションにおいて最適なプラズマ密度分布が得られ,選択したアプリケーションにおいて最適なプラズマ処理を行えるという,引用発明1では得られない顕著な効果を奏するのである。 2 取消事由2(補正前発明の容易想到性判断の誤り)補正発明の「整合器を介して高周波電源に接続されて」の要件は,引用発明2との相違を明確にするために,念のために補正前発明に加えたものであり,補正前発明の本質は補正発明の本質と相違はない。したがって,前記のとおり,補正発明が引用発明1及び引用発明2に対して進歩性を有しないという判断が誤りである以上,補正前発明が引用発明1及び引用発明2に対して進歩性を有しないという判断も誤っている。 第4 被告の反論 1 取消事由1に対し(1) 原告主張1(1)に対しア引用発明1のプラズマ処理装置が,プロセスレシピと称される,事前に設定された制御データを選択し制御されることは明らかである(甲1の段落【0065】~【0069】)から,引用発明1において,インピーダンス調節手段を制御する制御手段の構成が「存在しない」とはいえない。 - 13 -引用例1には,プラズマ処理装置の制御手段に関して具体的かつ詳細な記載がないため,引用発 おいて,インピーダンス調節手段を制御する制御手段の構成が「存在しない」とはいえない。 - 13 -引用例1には,プラズマ処理装置の制御手段に関して具体的かつ詳細な記載がないため,引用発明1において,相違点に係る構成の存否が不明なだけである。 したがって,引用発明1が相違点に係る制御手段を有するか不明である点を相違点とした審決の判断に誤りはない。 イまた,補正発明の特許請求の範囲には,「所定のアプリケーションが選択された際に」という制御タイミングに関する漠然とした記載はあるものの,アプリケーション変更時に制御手段が調整パラメータを自動的に選択する等の,具体的な選択手段は記載されていない。 補正発明の特許請求の範囲に記載されているとおり,補正発明は,最適なプラズマ密度分布を得る前に,インピーダンス調節手段の調節パラメータが予め設定された最適な値になるように前記インピーダンス調節手段を制御する工程,すなわち,複数のアンテナ部の電流値を制御し,前記処理室内に形成される誘導結合プラズマのプラズマ密度分布を制御する工程が必要な装置である。補正発明は,上記のプラズマ密度分布調整工程の後に(変更後の)アプリケーションの処理を行うようにした結果として,アンテナを交換することなく,選択したアプリケーションにおいて最適なプラズマ密度分布が得られ,選択したアプリケーションにおいて最適なプラズマ処理を行えるプラズマ処理装置である。 (2) 原告主張1(2)に対しア審決は,引用発明2と相違点の対比判断を誤っているとはいえない。審決は,引用発明1を容易推考の出発点としたときに,引用発明1において補正発明と相違する構成が,引用発明2から導き出すことができることを説示する趣旨で,引用発明2が相違点に係る構成を有していると説示し 決は,引用発明1を容易推考の出発点としたときに,引用発明1において補正発明と相違する構成が,引用発明2から導き出すことができることを説示する趣旨で,引用発明2が相違点に係る構成を有していると説示しているものである。 イ原告は,相違点に係る制御手段と引用発明2のそれとでは,制御手段が制御する対象及び制御量が異なる旨を指摘するが,物としての制御手段の実体においては,ROM等に記憶されている制御データを読み出してモータ等の適宜の可変手段によって可変コンデンサの容量を制御する手段であり,何ら異なるところがな - 14 -い。 また,引用発明2の「プロセス」は,基板を処理するプロセスのことであるから(甲2の段落【0012】,【0014】,【0041】及び【0049】),この点において相違点に係る構成の「アプリケーション」と共通する。 ウ引用発明2の制御対象は,引用発明1でいえばマッチングボックス3内の2個のバリコンであり,相違点に係る構成の制御対象は,引用発明1でいえばバリコン16である。両者は,ともに,①プラズマ処理装置のアプリケーションを変更する際に,プラズマの状態が変化したことに対応して調整が必要であり ,②プラズマ処理装置の放電回路の一部を構成し,かつ,第1の高周波電源に対し直列接続された負荷として機能し(甲1の図6及び7),③マッチングに影響し(甲1の段落【0018】ないし【0020】),④ROM等に記憶されている制御データに基づいて,モータ等の適宜の手段により制御可能であり,⑤物としての実体はバリコン(可変コンデンサ)であって,また,制御量はバリコンの容量である点において,共通している。 エ調整対象のインピーダンス及び設定されるパラメータに関しても,引用発明2と相違点に係る構成は,少なくとも上記① サ)であって,また,制御量はバリコンの容量である点において,共通している。 エ調整対象のインピーダンス及び設定されるパラメータに関しても,引用発明2と相違点に係る構成は,少なくとも上記①ないし⑤の点で同じである。 (3) 原告主張1(3)に対しア審決は,前記のとおり,引用発明2と相違点の対比判断を誤っていないから,原告の主張は,その前提に誤りがある。 イ仮に,引用例2に,「所定の条件のプロセスが選択された際に,可変コンデンサの容量がそのプロセスにおける初期段階においてインピーダンス整合器のインピーダンス整合点が存在すると予測される値になるようにインピーダンス整合器の可変コンデンサを制御するインピーダンス制御回路」という構成しか記載されていないとしても,以下のとおり,当業者が,引用発明1のバリコン16を制御する制御手段の構成として,ROM等に記憶されている制御データを読み出して可変コンデンサの容量を制御する手段を採用することは容易である。 - 15 -(ア) 引用発明1のプラズマ処理装置が,プロセスレシピと称される,事前に設定された制御データを選択し制御されることは明らかである。引用例1には,プラズマ処理装置の制御手段に関して具体的かつ詳細な記載がないけれども,引用例1の記載に接した当業者ならば,プラズマ分布を調整するための工程(31a,31b,31c),すなわち,引用発明のバリコン16を調整する工程について,事前に設定された制御データの選択により制御することを想起する。 (イ) また,引用発明1において,単純に引用発明2を組み合わせてなるものは,引用発明1のマッチングボックス3内の2つのバリコンに対して,引用発明2の制御回路の構成を採用したものであるとしても,前記で述べたとおり 引用発明1において,単純に引用発明2を組み合わせてなるものは,引用発明1のマッチングボックス3内の2つのバリコンに対して,引用発明2の制御回路の構成を採用したものであるとしても,前記で述べたとおり,マッチングボックス3内の2個のバリコンを制御する手段と,プラズマ密度分布を調整するバリコン16を制御する手段は,前記①ないし⑤の点で同じバリコンを制御対象とする手段である。しかも,物としての実体においては,ROM等に記憶されている制御データを読み出して可変コンデンサの容量を制御する手段にすぎないから,直ちに他の可変コンデンサの制御に流用可能である。 引用発明1のマッチングボックス3内の2つのバリコンについて,引用発明2を組み合わせて,事前に設定された制御データに基づいて制御可能としたにもかかわらず,バリコン16について,引用発明2を組み合わせず,事前に設定された制御データに基づいて制御可能としないのでは,引用発明1のプラズマ処理装置の放電回路を,事前に設定された制御データに基づいて制御できなくなる。 当業者であれば,プラズマ処理装置の放電回路において,その回路の一部に用いられている制御手段を,その回路内の他の箇所に流用する程度のことは思いつくし,むしろ,対処を異ならせることの方に動機がない。 当業者が,マッチングボックス3内の2つのバリコンに加えて,引用発明1のバリコン16をも制御する制御手段の構成として,ROM等に記憶されている制御データを読み出して可変コンデンサの容量を制御する手段を採用することは容易である。 - 16 -ウまた,インピーダンス調整に用いる可変コンデンサが普通のものであれば,汎用性があることは自明である。引用発明2の制御回路の制御対象である可変コンデンサは,具体的には,ごく普通の,モータ等によっ ウまた,インピーダンス調整に用いる可変コンデンサが普通のものであれば,汎用性があることは自明である。引用発明2の制御回路の制御対象である可変コンデンサは,具体的には,ごく普通の,モータ等によって制御される可変コンデンサにすぎない(甲2の段落【0042】)。 したがって,引用発明2が,少なくともプラズマ処理装置において広くインピーダンス調整のために用いることが可能であることは,当業者にとって自明である。 エ本願明細書の段落【0019】に記載された効果は,引用発明1が奏する効果である。制御手段の具体的構成について引用発明1の構成が不明である点を考慮したとしても,当業者が予測し得る範囲内のものであって,顕著なものではない。 オ以上から,補正発明は,当業者が引用発明1及び引用発明2から容易に発明することができるとした審決の判断には誤りがない。 2 取消事由2に対し前記1と同様の理由から,補正前発明も進歩性を有せず,進歩性を否定した審決の判断に誤りはない。 第5 当裁判所の判断 1 補正発明及び補正前発明について本願明細書(甲4)及び手続補正書(甲16)によれば,補正発明及び補正前発明につき,以下のことを認めることができる。 補正発明及び補正前発明は,液晶表示装置(LCD)等のフラットパネルディスプレイ(FPD)製造用のガラス基板等の基板にプラズマ処理を施す誘導結合プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法に関するものである(段落【0001】)。 1台の誘導結合プラズマ処理装置は,複数のアプリケーションに対応する必要があり,それぞれのアプリケーションにおいて均一な処理を行うためにプラズマ密度 - 17 -分布を変化させる必要があるところ,従来技術においては,そのために高密度領域及び低密度領 対応する必要があり,それぞれのアプリケーションにおいて均一な処理を行うためにプラズマ密度 - 17 -分布を変化させる必要があるところ,従来技術においては,そのために高密度領域及び低密度領域の位置を異ならせるように異なる形状のアンテナを複数準備してアプリケーションに応じてアンテナを交換していた(段落【0005】)。しかしながら,アンテナの交換には多くの労力を要し,その製造費用も高価となる。また,複数のアンテナを用意しても,更にプロセス条件の調整により対応せざるを得ないという課題が存在した(段落【0006】,【0009】)。 そこで,前記の補正発明及び補正前発明に記載したとおりの構成をとり,インピーダンス調節手段によるインピーダンス調節により,複数のアンテナ部の電流値を制御し,処理室内に形成される誘導結合プラズマのプラズマ密度分布を制御するとともに(段落【0010】),アプリケーションごとに最適なプラズマ密度分布が得られる前記インピーダンス調節手段の調節パラメータが予め設定され,所定のアプリケーションが選択された際にそのアプリケーションに対応する前記インピーダンス調節手段の調節パラメータが予め設定された最適な値になるように前記インピーダンス調節手段を制御する制御手段を有するものとした(段落【0011】)。 補正発明及び補正前発明の実施形態に係るプラズマ処理装置の制御部50には,処理条件に応じてプラズマ処理装置の各構成部に処理を実行させるためのプログラム,すなわち,レシピが格納された記憶部52が接続され,任意のレシピを記憶部52から呼び出し,異なる電界強度分布を有する誘導電界を形成する複数のアンテナ部を有する高周波アンテナに接続された可変コンデンサ21の容量調節によって,プラズマ密度分布を制御することができる(段落【0037】 び出し,異なる電界強度分布を有する誘導電界を形成する複数のアンテナ部を有する高周波アンテナに接続された可変コンデンサ21の容量調節によって,プラズマ密度分布を制御することができる(段落【0037】,【0038】)。 そして,アプリケーションごとに最適なプラズマ密度分布を把握し,可変コンデンサ21のポジションを記憶部52に設定しておくことにより,最適な可変コンデンサ21のポジションを選択してプラズマ処理を行えるようにすることができる(段落【0038】,【0044】)。 このように,可変コンデンサ21によりプラズマ密度分布を制御することができるので,アンテナを交換する必要がなく,アンテナ交換の労力やアプリケーション - 18 -ごとにアンテナを準備しておくコストが不要となる。また,可変コンデンサ21のポジション調節によりきめ細かな電流制御を行うことができ,アプリケーションに応じて最適なプラズマ密度分布が得られるように制御することが可能となる(段落【0045】)。 2 引用発明1と補正発明の相違点判断について(1) 原告は,引用例1において,上記の相違点に係る制御手段は,現実に開示及び示唆されておらず,引用発明1には上記制御手段は存在しないから,審決の相違点の認定に誤りがあると主張する。 ア引用発明1の特徴及び引用例1の記載について(ア) 引用例1によれば,引用発明1について,以下のとおり認めることができる。 引用発明1は,アンテナに高周波電力を供給して発生させたプラズマを用いて試料をプラズマ処理するプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法に関する発明であり,その目的は,誘導結合アンテナを用いたプラズマ処理において,プラズマ分布を制御することのできるプラズマ処理装置を提供することにある(段落【00 プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法に関する発明であり,その目的は,誘導結合アンテナを用いたプラズマ処理において,プラズマ分布を制御することのできるプラズマ処理装置を提供することにある(段落【0001】,【0008】)。 そして,第二の実施例として記載された装置では,二系統の誘導結合アンテナ1a,1bに流れる高周波電流の大きさを制御することで,プラズマ分布を制御できる。具体的には,負のリアクタンスをもつバリコンのインピーダンスを調節して,誘導結合アンテナ1aと誘導結合アンテナ1bとに流れる高周波電流の割合を制御する。この実施例によれば,二系統の大きさの異なる誘導結合アンテナを設け,それぞれの誘導結合アンテナへの高周波電力の印加量を制御することで,放電部内でのプラズマの分布を更に細かく制御することができるとの効果を奏する(段落【0029】~【0032】,【0036】)。 (イ) この引用発明1について,引用例1には以下の記載がある。 - 19 -「【0065】さらに,このような本発明は次のような半導体製造プロセスに適用することができる。図24は本発明を用いた半導体プロセスの工程の一例を示す図である。本プロセスでの対象となる装置構成は前述した各実施例の何れかの構成を用いる。 【0066】半導体プロセスでは,エッチングする材料に合わせて処理ガスの種類,真空容器内のガス圧,ガス流量,アンテナに印加する高周波電力等を調整し,エッチングや成膜処理におけるウエハの均一処理が行えるようにプロセスレシピを決める。例えば,アルミニウムをエッチングする場合には,処理ガスとして塩素ガスや三塩化ホウ素ガス等を用い,石英をエッチングする場合には,処理ガスとしてC4F8 ガスを用いる。 【0067】ガスの種類やガス圧等が変わればプラズマの分 チングする場合には,処理ガスとして塩素ガスや三塩化ホウ素ガス等を用い,石英をエッチングする場合には,処理ガスとしてC4F8 ガスを用いる。 【0067】ガスの種類やガス圧等が変わればプラズマの分布も変化するので,従来技術の装置を用いる場合には,上記2種類の材料をエッチングする場合,異なる装置を用いてエッチング処理を行う必要があった。 【0068】しかし,本発明の装置を用いれば,図24に示すように連続したプロセス処理の途中に,複数の誘導結合アンテナに流れる高周波電流を調節してプラズマ分布調整するための工程31a,31b,31cを加えるとともに,異なるプロセス30a,30b,30cをそれぞれの行程31a,31b,31cの後に持ってくることによって,同一の装置で各プロセスにおけるプラズマ分布を均一に調整してウエハを均一に処理することができる。 【0069】これによって,各プロセス毎にウエハを装置間で移動したりする手間が省けスループットの向上を図ることができる。また,一台の装置で複数のプロセス処理ができるので装置の台数を節約できる。」イ以上の記載を踏まえて,引用発明1において,相違点に係る制御手段が存在しないといえるか否かについて検討する。 (ア) 確かに,引用例1には,インピーダンスを調節するバリコンを制御する手段に関する具体的な記載,及びプロセスレシピを決めた際(所定のアプリ - 20 -ケーションが選択された際)に,対応する調節パラメータが予め設定された最適な値になるようにインピーダンス調節手段を制御することについての具体的な記載はない。 (イ) しかし,前記のとおり,引用例1には,半導体プロセスでは,エッチングする材料に合わせて処理ガスの種類,真空容器内のガス圧,ガス流量,アンテナに印加する高周 の具体的な記載はない。 (イ) しかし,前記のとおり,引用例1には,半導体プロセスでは,エッチングする材料に合わせて処理ガスの種類,真空容器内のガス圧,ガス流量,アンテナに印加する高周波電力等を調整し,エッチングや成膜処理におけるウエハの均一処理が行えるようにプロセスレシピを決めるが,ガスの種類やガス圧等が変わればプラズマの分布も変化するので,従来技術では,異なる装置を用いてエッチング処理を行う必要があったのに対して,引用発明1の装置を用いれば,連続したプロセス処理の途中に,複数の誘導結合アンテナに流れる高周波電流の大きさを制御してプラズマ分布を調整するための工程を加えるとともに,その後,それぞれの調整工程に対応する異なるプロセスを持ってくることによって,同一の装置で各プロセスにおけるプラズマ分布を均一に調整してウエハを均一に処理することができ,各プロセスごとにウエハを装置間で移動したりする手間が省けスループットの向上を図れ,一台の装置で複数のプロセス処理ができることが記載されている。 (ウ) また,証拠(乙1~4)によれば,本願出願時において,プロセス処理装置が,プロセスレシピにより制御されることが周知であると認められる。 (エ) さらに,乙4には,以下の記載があり,プロセスレシピの情報に基づいてプロセス条件が設定されることにより,プロセス処理ごとに適切なプラズマの状態を形成することについても開示されている。 「実際に印加する直流電圧をどのように設定すればウエハWの面内均一な処理ができるかはエッチングすべき膜の種類,各電極3,4への供給電力などによって異なるので,予め実験を行って処理毎の設定値を決めておくのが望ましい。」(段落【0051】),「異なるプロセス処理の一例として・・・これらの処理に対応す 種類,各電極3,4への供給電力などによって異なるので,予め実験を行って処理毎の設定値を決めておくのが望ましい。」(段落【0051】),「異なるプロセス処理の一例として・・・これらの処理に対応するプロセスレシピがレシピ選択手段62により選択され,選択されたプロセスレシピの情報に基づい - 21 -て処理条件が設定されることとなる。」(段落【0052】),「こうして第1の処理であるシリコンナイトライド膜65のエッチングが終了すると,記憶領域61内の第2の処理のプロセスレシピを読み出してプロセス条件が設定され,第2の処理が開始される。」(段落【0056】),「上述の実施の形態によれば,フォーカスリング5の電極51に所定の直流電圧を印加することにより,プロセス処理毎例えば処理条件の異なる膜の種類毎にフォーカスリング5の表面とプラズマとの境界にあるイオンシース領域の形状を調整することができ,ウエハWが面内均一に処理できる適切なプラズマの状態を形成することができる。従って,互いに異なる複数のプロセス処理を共通のフォーカスリング5を用いて処理することができるので,装置の共用化を図ることができる。」(段落【0057】)。 (オ) そうすると,引用例1のプラズマ分布を調整するための工程に関する記載に接した当業者は,事前に設定されたプロセスレシピの情報に基づいて,各プロセスにおけるプラズマ分布を均一にするようにバリコンのインピーダンスを制御する手段を備えることを想起するといえる。 (カ) そして,引用例1におけるスループットの向上についての「各プロセス毎にウエハを装置間で移動したりする手間が省け」(段落【0069】)との記載は,「装置間で移動する手間」以外の手間を省略できる要因を排除するものではなく,また,当業者は,上記 についての「各プロセス毎にウエハを装置間で移動したりする手間が省け」(段落【0069】)との記載は,「装置間で移動する手間」以外の手間を省略できる要因を排除するものではなく,また,当業者は,上記の事前に設定されたプロセスレシピの情報に基づいて,各プロセスにおけるプラズマ分布を均一にするようにバリコンのインピーダンスを制御する手段を備えることを想起するに当たり,自動的にインピーダンスを調整する制御手段を除外し,オペレータがプラズマ分布を調整するもののみを想起すると解することはできない。 加えて,このような制御手段を備えるものとした場合,オペレータによる調整作業が省略できることによるスループットの向上が図れることは,当業者において自明なものである。 - 22 -(キ) そうすると,引用例1にインピーダンスを調節するバリコンを制御する手段に関する具体的な記載,及びプロセスレシピを決めた際に,対応する調節パラメータが予め設定された最適な値になるようにインピーダンス調節手段を制御することについて具体的な記載がないとしても,相違点に係る構成のように,アプリケーションの選択に応じて,調節パラメータを予め設定された最適な値になるよう自動的に調整する制御手段を有することが,可能性の一つとして合理的に推認されるものであり,少なくとも,引用発明1において,「そのような制御手段を有するかどうか不明」であるとした審決の認定に誤りがあるとはいえない。 (2) また,原告は,補正発明によれば,異なるアプリケーションを同一処理チャンバーで行う場合,これら複数のアプリケーションに最適な調整パラメータが予め設定されている結果,アプリケーション変更時に制御手段が調整パラメータを自動的に選択することにより,特別のプラズマを調整する工程を経ることなく これら複数のアプリケーションに最適な調整パラメータが予め設定されている結果,アプリケーション変更時に制御手段が調整パラメータを自動的に選択することにより,特別のプラズマを調整する工程を経ることなく次のアプリケーションを実行することができるのに対して,引用例1では段落【0066】~【0068】,【図24】に記載されているように,異なるアプリケーションの間にプラズマ分布調整するための工程31a,31b,31cを挿入している旨主張する。 しかし,補正発明は,アプリケーションごとに最適なプラズマ密度分布を予め把握して記憶部に設定したことにより,アプリケーションを選択した場合に,記憶部がアプリケーションごとに最適な可変コンデンサのポジションを選択してプラズマ密度分布を制御するというものであり,補正発明においても,制御手段が自動的に調整パラメータを選択し,設定することにより,プラズマ分布を調整するための工程が前置していることは明らかである。 したがって,原告主張の上記点において,補正発明と引用発明1との相違点を見出すことはできない。 3 補正発明に関する容易想到性判断について - 23 -(1) まず,原告は,補正発明の制御手段は,アンテナ回路への電流分配比を調節してプラズマ密度分布を調整するためのものであるのに,引用発明2が制御するのは,インピーダンス整合器である点,補正発明は,最適な調整パラメータを設定するものであるのに対し,引用発明2は,整合状態に至り得る特定の範囲内でインピーダンスを初期設定するものであり,本質的機能が全く異なるのに,引用発明2に相違点に係る構成があると認定した点において,対比判断の誤りがあると主張するので,検討する。 引用発明2の構成に関する審決の認定は,引用発明1と補正発明との相違点を認 く異なるのに,引用発明2に相違点に係る構成があると認定した点において,対比判断の誤りがあると主張するので,検討する。 引用発明2の構成に関する審決の認定は,引用発明1と補正発明との相違点を認定した上で,当該相違点に係る容易想到性判断を行う前提として行われる認定であるから,主引用発明との対比判断の手法とは自ずから違いがある。確かに,相違点に係る構成と引用発明2の構成において,原告が上記に指摘する相違があることはそのとおりであると解されるが,以下に述べるとおり,審決は,引用発明2に相違点に係る構成がそのまま開示された旨を認定するものではなく,引用発明2に開示された技術事項から上記構成が容易に想到できる旨を判断するものであるから,引用発明2と相違点に係る構成との間に差異があるとしても,直ちに審決の判断に誤りがあるということはできない。 すなわち,審決は,引用発明2について「プラズマ処理装置のインピーダンス整合器を,プロセスごとに異なるインピーダンスに整合させるために『各プロセスに対応して予め定めた,ROM等に記憶されている制御データを読み出して可変コンデンサによりインピーダンスを調整するインピーダンス制御回路』」と認定した上で,「引用発明2はインピーダンス調整に際してごく普通に用いられる可変コンデンサを用いたものであり,引用発明2がインピーダンス整合器に限らず,広くインピーダンス調整のために用いることが可能であることは当業者にとって自明である」ことを考慮に入れて,容易想到性について判断しており,原告が指摘する上記相違点の存在を前提としていることは明らかである。また,引用発明2は,「インピーダンス制御回路46は,各プロセスの初期設定段階において,例えばROM等に記憶さ - 24 -れている制御データを読み出して,インピーダンス ることは明らかである。また,引用発明2は,「インピーダンス制御回路46は,各プロセスの初期設定段階において,例えばROM等に記憶さ - 24 -れている制御データを読み出して,インピーダンス整合器34のインピーダンスを調整する・・・可変コンデンサC1,C2の容量を,各プロセスの初期設定段階でインピーダンスを整合させるための初期値としている」(段落【0048】)ものであるところ,審決は,その対比判断の中で,引用発明2において調整の基礎とされるべきデータについて,「各プロセスに対応して予め定めた,ROM等に記憶されている制御データ」と正しく認定しており,初期設定後に最終的に到達すべき最適な値として記憶されたものとは認定していない。そして,当該制御データに整合するように自動的にインピーダンスを整合させるという技術的観点から見れば,引用発明2が相違点に係る「前記インピーダンス調節手段の調節パラメータが予め設定された最適な値になるように前記インピーダンス調節手段を制御する制御手段」との構成を有していると認定することが誤りとなるものではない。また,引用発明2においては,制御データにより自動的に初期設定を行った後,更に最適なインピーダンス整合点に到達させる必要性があることから,引用発明2が「最適な値になるように前記インピーダンス調節手段を制御する制御手段」を有しているとの認定は若干不正確であるとしても,既に述べたとおり,ここでの対比判断は,引用発明1と補正発明との相違点を認定した上で当該相違点に係る容易想到性判断を行う前提として行われるものであり,後記のとおり,容易想到性を有するとの審決の判断に誤りはないのであるから,この点は,結論を左右するものでなく,取消事由とはならない。 (2) 次に,容易想到性について検討する。 ア前記 記のとおり,容易想到性を有するとの審決の判断に誤りはないのであるから,この点は,結論を左右するものでなく,取消事由とはならない。 (2) 次に,容易想到性について検討する。 ア前記のとおり,引用例1のプラズマ分布を調整するための工程に関する記載に接した当業者は,事前に設定されたプロセスレシピの情報に基づいて,各プロセスにおけるプラズマ分布を均一にするようにバリコンのインピーダンスを制御する手段を備えることを想起するといえる。そして,引用発明1においてこのような制御手段を備えるものとした場合,オペレータによる調整作業が省略できることによるスループットの向上が図れることは,当業者において自明なものである。 - 25 -イまた,補正発明の「・・・インピーダンス調節手段を制御する制御手段」は,「アプリケーションごとに最適なプラズマ密度分布を把握し,予めそのプラズマ密度分布が得られる可変コンデンサ21のポジションを記憶部52に設定しておくことにより,制御部50によりアプリケーションごとに最適な可変コンデンサ21のポジションを選択してプラズマ処理を行えるようにする」(段落【0044】)とされているから,制御手段が,記憶部に記憶された「可変コンデンサのポジション」を読み出して,読み出された「可変コンデンサのポジション」に基づいて,インピーダンス調整手段としての「可変コンデンサ」のポジションを選択することにより,インピーダンスを調整する態様を含むものである。 そして,補正発明の上記「インピーダンス調整手段を制御する制御手段」と引用発明2の「各プロセスに対応して予め定めた,ROM等に記憶されている制御データを読み出して可変コンデンサによりインピーダンスを調整するインピーダンス制御回路」とは,①ROM等の記憶手段に記憶さ 引用発明2の「各プロセスに対応して予め定めた,ROM等に記憶されている制御データを読み出して可変コンデンサによりインピーダンスを調整するインピーダンス制御回路」とは,①ROM等の記憶手段に記憶されている制御データに基づいて制御を行うこと,②制御対象となる物の実体は可変コンデンサ(バリコン)であり,③制御量は可変コンデンサの容量である点において,技術的に共通するものである。 また,引用発明2は,インピーダンス調整に際して普通に用いられる可変コンデンサであり,インピーダンス調整に可変コンデンサを用いることができるのは,当業者にとって自明のことである。 ウ本願出願時において,プロセス処理装置が,プロセスレシピにより制御されることは,前記のとおり周知であり,また,プロセスレシピの情報に基づいてプロセス条件が設定されることにより,プロセス処理ごとに適切なプラズマの状態を形成することについても,乙4に開示されている。 エ以上を踏まえると,当業者は,引用例1のプラズマ分布を調整するための工程に関する記載により,事前に設定されたプロセスレシピの情報に基づいて,各プロセスにおけるプラズマ分布を均一にするようにバリコンのインピーダンスを制御する手段を備えることを想起するといえ,さらに,引用例2の記載に接した当 - 26 -業者は,このインピーダンスを制御する手段の具体的な構成として,各プロセスに対応して予め定めた,ROM等に記憶されている制御データを読み出して可変コンデンサにより自動的にインピーダンスを調整する「インピーダンス制御回路」を採用することを容易に想到するというべきである。 よって,補正発明は,引用発明1に引用発明2を適用することにより,当業者が容易に発明をすることができたものであり,その旨の審決の判断には誤りがない。 用することを容易に想到するというべきである。 よって,補正発明は,引用発明1に引用発明2を適用することにより,当業者が容易に発明をすることができたものであり,その旨の審決の判断には誤りがない。 以上によれば,審決による補正発明の独立特許要件の判断(特許法29条2項)には誤りがない。 4 補正前発明の容易想到性判断について補正発明は,補正前発明に限定を加えたものであるところ,上記のとおり,補正発明は,引用発明1及び引用発明2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,補正前発明も補正発明と同様に,引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 よって,審決における補正前発明の容易想到性の判断に誤りはない。 第6 結論以上によれば,原告主張の取消事由はすべて理由がない。 よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部 裁判長裁判官清水 節 - 27 - 裁判官中村 恭 裁判官中武由紀

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