令和4年1月28日宣告令和3年(わ)第657号判決上記の者に対する殺人被告事件について、当裁判所は、裁判員の参加する合議体により、検察官大友隆及び同中田和暉並びに国選弁護人浅水正(主任)及び同三上直子各出席の上審理し、次のとおり判決する。 主文 被告人を懲役3年に処する。 この裁判確定の日から5年間その刑の執行を猶予する。 理由 (犯行に至る経緯)被告人は、妻であるA(以下「被害者」という。)とともに生活していたところ、遅くとも令和3年1月頃までにうつ病を発症していた。そして、長女及び長男を含む親族からの支援や十分な額の貯蓄や年金収入があるにもかかわらず、経済的に困窮するという貧困妄想等の微小妄想を抱き、将来を悲観して、自ら又はアルツハイマー型認知症と診断された被害者の一方のみが生き残れば周囲に迷惑を掛けるなどとして、被害者との心中を考えるようになり、被害者に心中を持ち掛けることもあった。同年5月頃に目の手術を受けてからは、微小妄想に加えて、幻聴や幻視等の精神病症状を発症するなど、うつ病を重症化させた。 (罪となるべき事実)被告人は、令和3年7月11日、起床すると、被害者と心中を遂げることを固く決意し、同日午前4時33分頃から遅くとも同日午前8時5分頃までの間に、札幌市a区bc条d丁目e番f号被告人方において、被害者(当時74歳)に対し、殺意をもって、同人の頸部を腕及びロープで絞め付けるなどの暴行を加え、よって、その頃、同所において、同人を頸部圧迫による窒息により死亡させて殺害した。 なお、被告人は、本件犯行当時、前記うつ病のため心神耗弱状態にあった。 (証拠の標目)省略(法令の適用)罰条刑法199条刑種の選択 により死亡させて殺害した。 なお、被告人は、本件犯行当時、前記うつ病のため心神耗弱状態にあった。 (証拠の標目)省略(法令の適用)罰条刑法199条刑種の選択有期懲役刑を選択法律上の減軽刑法39条2項、68条3号(心神耗弱)刑の執行猶予刑法25条1項訴訟費用刑事訴訟法181条1項ただし書(不負担)(量刑の理由)被告人は、激しく抵抗し、階下に逃げる被害者を捕まえて引き倒すなどした上、その首を腕やロープで絞め付けていることに加えて、その顔を体重をかけて踏みつけており、犯行態様は強固な殺意に基づく執ようなもので、悪質である。また、認知症の病状が軽く、生活の質を保っていた被害者の生命を無理やり奪った結果は極めて重大というほかない。 もっとも、被告人は、重症のうつ病のために、貧困妄想等から将来を極度に悲観し、被害者と心中するしかないという著しく狭められた思考にとらわれ、心中の実行を決意して、被害者を殺害するに至ったもので、心神耗弱の状態であったから、このような被告人を強く非難することまではできない。 これらの犯情を前提に、犯行動機が心中であり、配偶者に対する殺人の単独犯1件という事案の量刑傾向も踏まえると、本件は執行猶予を付すことも検討される事案というべきである。 その上で、他の一般情状についてみると、被告人が、事実を認めて反省していること、被害者と被告人の長男が厳罰を望まず、被告人を支援する意向を示していること、高齢で、うつ病の治療の必要があり、被告人を受け入れる病院が確保されていること、前科はなく、再犯の可能性も低いといえることなどの事情もある。 以上によれば、被告人に対しては、心神耗弱による法律上の減軽をした上で刑の執行を猶予するのが相当である。 病院が確保されていること、前科はなく、再犯の可能性も低いといえることなどの事情もある。 以上によれば、被告人に対しては、心神耗弱による法律上の減軽をした上で刑の執行を猶予するのが相当である。 よって、主文のとおり判決する。 (求刑懲役5年)令和4年1月28日札幌地方裁判所刑事第3部 裁判長裁判官井下田英樹 裁判官山下智史 裁判官後藤紺
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