平成16(行コ)79 損害賠償請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成13年(行ウ)第20号)

裁判年月日・裁判所
平成17年3月25日 大阪高等裁判所 住民訴訟
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判決文本文7,817 文字)

主文 1 本件控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1 控訴人らの申立て 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人らは,豊能郡環境施設組合に対し,各自38億4005万2695円及びこれに対する平成13年4月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人らの負担とする。 4 仮執行宣言第2 事案の概要事案の概要は,以下のとおり,原判決を補正し,控訴人らの当審における主張とこれに対する被控訴人らの反論を付加するほか,原判決の事実及び理由中の「第2 事案の概要」欄記載のとおりであるから,これを引用する。 1 原判決の補正(1) 原判決5頁8行目の「当庁」を,「大阪地方裁判所」と改める。 (2) 同13頁9行目の「防止すべき義務ない」を,「防止すべき義務はない」と改める。 (3) 同14頁18行目の「必要性や要請も」を,「必要性の指摘や要請も」と改める。 2 控訴人らの当審における主張(1) 補足的主張一般的に,調停において,被申請人間や利害関係人との間の権利関係を清算する旨の合意がなされた場合には,調停条項中にその旨が明記される。ところが,本件公害調停条項には,組合と被控訴人らとの間の権利関係について清算する旨の明確な文言は盛り込まれていない。したがって,本件公害調停において,組合と被控訴人らの間に被控訴人ら主張のような清算合意はなされていない。また,本件公害調停は,申請人らと被申請人らとの間でなされたものであるから,それに拘束されるのは申請人らと被申請人らとの関係だけであり,同じく被申請人であった組合と被控訴人らとの関係は本件公害調停に拘束されないものと解するべきである。 人らとの間でなされたものであるから,それに拘束されるのは申請人らと被申請人らとの関係だけであり,同じく被申請人であった組合と被控訴人らとの関係は本件公害調停に拘束されないものと解するべきである。 これらのことは,① 組合,能勢町及び豊能町が本件調停案を受諾するに際して行われた組合及び両町の議会での質疑において,組合管理者及び両町の担当者らは,公害調停成立により組合及び両町が被控訴人らに対する損害賠償請求権を放棄することになる旨の説明や回答を行っていないのであって,組合や両町は,本件公害調停成立にあたって,被控訴人らに対する損害賠償請求権を放棄するような意思を有していなかったと考えられること,② 本件公害調停の申請人らも,本件公害調停成立により,旧住民訴訟を取り下げる意思は有していたものの,組合の被控訴人らに対する損害賠償請求権を放棄させることまでは意図していなかったし,そのようなことを合意させる権限も有していなかったこと,③ 例えば,本件公害調停成立時には,ダイオキシンによる高濃度汚染物や汚染土壌の無害化処理の方法や費用は確定されておらず,本件公害調停成立以後に能勢町営し尿処理施設の乾燥汚泥から高濃度のダイオキシン類が検出されているとおり,本件公害調停成立時には,本件焼却施設からのダイオキシン類汚染と相当因果関係のある損害の額がいくらになるのかは想定されていなかったことなどからも明らかである。 (2) 追加的主張仮に,本件調停により組合と被控訴人らとの間に清算合意がなされ,それが組合と被控訴人らとの間で拘束力をもつとしても,それは,せいぜい,組合から被控訴人らに対しては損害賠償請求権を行使しない旨の合意にとどまるものであって,組合が被控訴人らに対する損害賠償請求権を放棄したり消滅させたりするものではな もつとしても,それは,せいぜい,組合から被控訴人らに対しては損害賠償請求権を行使しない旨の合意にとどまるものであって,組合が被控訴人らに対する損害賠償請求権を放棄したり消滅させたりするものではない。 したがって,控訴人らとの関係では,組合が被控訴人らに対する損害賠償請求権を行使しないことは地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの。以下同じ。)242条の2第1項4号の「怠る事実」に該当し,控訴人らは請求権不行使の合意に拘束されることなく,同項により組合に代位して,損害賠償請求権を行使できるものというべきである。 3 被控訴人らの反論(1) 補足的主張について本件公害調停成立に至る経緯や調停の内容,本件公害調停成立後に旧住民訴訟が取り下げられていること,本件焼却施設において作業に従事していた従業員らが作業に伴って身体に高濃度のダイオキシンの類による汚染を受けたとして,組合及び被控訴人らに対して損害賠償請求をしていた事件(以下「別件労災訴訟」という。)の和解条項(乙43)や協定書(乙44)においても,本件焼却施設のダイオキシン問題がすべて解決した旨改めて確認されていることに照らせば,本件公害調停の成立により,組合と被控訴人らとの間に,組合は被控訴人らに対して,本件公害調停条項に定めたものを超えて金銭的負担を求めない旨の合意,すなわち,他に組合の被控訴人らに対する損害賠償請求権が存在しない旨の清算合意が成立したものというべきである。 控訴人らは,本件公害調停条項中に,組合と被控訴人ら間の清算条項が明記されていないことを強調して,清算合意の存在を否定するが,そのような調停条項の解釈は本件公害調停成立の経緯やその条項全体の内容を無視したものである。 また,控訴人らは,議会での が明記されていないことを強調して,清算合意の存在を否定するが,そのような調停条項の解釈は本件公害調停成立の経緯やその条項全体の内容を無視したものである。 また,控訴人らは,議会での質疑応答の内容をもって,組合や能勢町及び豊能町に清算合意をする意思がなかった旨主張するが,そもそも,議会での質疑は組合や両町の意思決定過程における内部的議論に過ぎず,本件公害調停成立の経過(とりわけ,被控訴人らが,本件公害調停成立に際して,同調停成立時において費用負担額を確定させることを前提とすることを明確に求めており,組合や両町がこれに応じて本件公害調停が成立したこと)や本件公害調停条項全体の内容,別件労災訴訟に関する和解条項や協定書の内容に照らせば,組合及び両町に清算の意思があったことは明らかである。 さらに,控訴人らは,本件公害調停成立時には損害額が想定できなかった旨主張するが,本訴において控訴人らの主張する損害はいずれも本件公害調停成立時に想定されていたものであり,その対策のための費用は確定できていないことを前提として本件公害調停が成立したものであるから,損害額が確定できていなかったことは清算合意がなされなかったことの根拠とはなり得ない。 (2) 追加的主張について控訴人らは,仮に本件公害調停によって組合と被控訴人らとの間に和解契約が成立していたとしても,それは損害賠償請求権消滅の合意ではなく損害賠償請求権不行使の合意であり,この合意に控訴人らは拘束されない旨主張する。 しかしながら,上記のとおり,本件公害調停成立に至る経緯や調停の内容,本件公害調停成立後に旧住民訴訟が取り下げられていること,別件労災訴訟の和解条項(乙43)や協定書(乙44)においても,本件焼却施設のダイオキシン問題がすべ 本件公害調停成立に至る経緯や調停の内容,本件公害調停成立後に旧住民訴訟が取り下げられていること,別件労災訴訟の和解条項(乙43)や協定書(乙44)においても,本件焼却施設のダイオキシン問題がすべて解決した旨改めて確認されていることに照らせば,本件公害調停の成立により,他に組合の被控訴人らに対する損害賠償請求権が存在しない旨の清算合意が成立したものというべきである。 また,そもそも,本件公害調停による合意の内容が控訴人らの主張するように損害賠償請求権不行使の合意であったとしても,それにより,もはや組合が被控訴人らに対して損害賠償請求権を行使できなくなるのであるから,控訴人らがこれを代位行使する余地もないというべきであって,控訴人らの主張は失当である。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人らの請求をいずれも棄却すべきと判断するところ,その理由は,以下のとおり,控訴人らの当審における主張に関する判断を付加するほか,原判決の事実及び理由中の「第3 当裁判所の判断」欄記載のとおりであるから,これを引用する(ただし,原判決32頁19行目の「当庁」を,「大阪地方裁判所」と改める。)。 (1) 控訴人らの当審における補足的主張についてア控訴人らは,本件公害調停条項中に,組合と被控訴人ら間の清算条項が明記されていないことを強調して,本件公害調停における組合と被控訴人らとの間の清算合意の存在を否定するところ,本件公害調停条項の14条は「申請人らの被申請人らに対する本調停による請求は,前記各調停条項によってすべて解決されたものとし,申請人ら及び被申請人らは今後前記各調停条項を尊重し,信義に従い誠実に協議解決することを約する。」とされており,本件公害調停条項に,ともに被申請人であった組合と被控訴人らとの間の清算条項が明記さ し,申請人ら及び被申請人らは今後前記各調停条項を尊重し,信義に従い誠実に協議解決することを約する。」とされており,本件公害調停条項に,ともに被申請人であった組合と被控訴人らとの間の清算条項が明記されていないことは控訴人ら指摘のとおりである。 しかしながら,本件公害調停において,組合と被控訴人らとの間に清算合意がなされたか否かについては,本件公害調停が成立した経緯等に照らし,その調停条項相互の関係を考慮して,その条項を解釈するのが相当であるところ,前記引用にかかる認定事実(原判決28頁11行目冒頭から33頁7行目末尾まで)によれば,① 本件公害調停においては,控訴人らが本件訴訟で問題としている本件焼却施設からのダイオキシン類汚染に関する組合の損害を含むダイオキシン類対策が問題とされ,組合と能勢町及び豊能町から被控訴人らに対して,それに関する費用負担が求められ,② これに対して被控訴人らは負担すべき費用の額を本件公害調停成立時に確定し,その後はダイオキシン類対策について技術的な協力等は行うものの,さらなる費用負担はしないことを前提として,ダイオキシン類汚染による組合の損害を含む対策費用を負担することを了承し,組合及び両町もそのような前提で本件公害調停成立に向けた協議を重ねていたのであり,③ 本件公害調停条項には,そのような前提で合意された被控訴人らのダイオキシン類対策費用等の負担条項(2,3,5,6,7条)が定められ,13条において,別件労災訴訟については,同訴訟において解決を図るものとして,同訴訟の原告となっている申請人らは本件公害調停の申立てを取り下げ,本件公害調停で解決されるべき問題から除外する旨が定められたうえで,14条において,上記のとおり清算と調停条項遵守が定められている。これらに照らせば,本件公害調停条項14条にお 停の申立てを取り下げ,本件公害調停で解決されるべき問題から除外する旨が定められたうえで,14条において,上記のとおり清算と調停条項遵守が定められている。これらに照らせば,本件公害調停条項14条において全面的に解決されたことが確認された「申請人らの被申請人らに対する本調停による請求」には,被控訴人らから組合に対する損害填補の問題が包含されているものと解釈するのが相当であり,同条の合意の主体は申請人らと被申請人ら全員と解釈するのが相当というべきであって,同条により,組合と被控訴人らとの間に,「(別件労災訴訟に関するものを除き)ダイオキシン類汚染による組合の損害を含むダイオキシン類対策費用について,同調停条項に定められたもの以外に,被控訴人らが組合に対して費用を負担すべき義務は存在しない。」旨の清算合意がなされたものと認められるというべきである。 そして,このような調停条項の解釈は,本件公害調停成立後に成立した別件労災訴訟の和解に際して取り交わされた協定書(乙44)7条において,組合と被控訴人らとの間で,「組合と被控訴人らは,別件労災訴訟における和解及びこれに先立つ本件公害調停により,組合と被控訴人らとの間における本件焼却施設に関わるダイオキシン類汚染問題がすべて解決されたことを相互に確認する。」旨合意されていることからも裏付けられる。 したがって,この点に関する控訴人らの上記主張は採用できない。 イまた,控訴人らは,本件公害調停は,申請人らと被申請人らとの間でなされたものであるから,それに拘束されるのは申請人らと被申請人らとの関係だけであり,同じく被申請人であった組合と被控訴人らとの関係は本件公害調停に拘束されないものと解するべきであるとも主張する。 しかしながら,組合及び被控訴人らは,いずれも本 申請人らとの関係だけであり,同じく被申請人であった組合と被控訴人らとの関係は本件公害調停に拘束されないものと解するべきであるとも主張する。 しかしながら,組合及び被控訴人らは,いずれも本件公害調停の当事者(被申請人)となっていたのであり,本件公害調停条項14条の合意の主体を,組合及び被控訴人らを含む被申請人らと申請人らの全員であると解釈すべきことは上記アに説示したとおりであって,本件公害調停における清算合意は組合及び被控訴人らに効力が及ぶものと解されるから,この点に関する控訴人らの主張も採用できない。 ウ以上に対し,控訴人らは,本件公害調停における清算合意の存在を否定する根拠として,① 組合,能勢町及び豊能町が本件調停案を受諾するに際して行われた組合及び両町の議会での質疑において,組合管理者及び両町の担当者らは,公害調停成立により組合及び両町が被控訴人らに対する損害賠償請求権を放棄することになる旨の説明や回答を行っていないのであって,組合や両町は,本件公害調停成立にあたって,被控訴人らに対する損害賠償請求権を放棄するような意思を有していなかった,② 本件公害調停の申請人らも,本件公害調停成立により,旧住民訴訟を取り下げる意思は有していたものの,組合の被控訴人らに対する損害賠償請求権を放棄させることまでは意図していなかったし,そのようなことを合意させる権限も有していなかった,③ 本件公害調停成立時には,本件焼却施設からのダイオキシン汚染と相当因果関係のある損害の額がいくらになるのかは想定されていなかった,などと主張する。 しかしながら,そもそも,組合及び両町の議会における質疑応答は,組合及び両町が本件公害調停案を受諾するか否かの意思決定に関する内部手続であり,そこでの質疑応答の内容がそのまま本件公 しかしながら,そもそも,組合及び両町の議会における質疑応答は,組合及び両町が本件公害調停案を受諾するか否かの意思決定に関する内部手続であり,そこでの質疑応答の内容がそのまま本件公害調停における組合や両町の意思と認められるわけではないうえ,この質疑応答の内容を見ても,「被控訴人らに対する損害賠償請求権ないし訴権を放棄した旨記載した文書は存在するか。」との質問に対して,組合管理者が「そのような文書は存在しない。」旨回答しているものの,「本件公害調停を成立させた場合にも,組合及び両町が被控訴人らに対してさらに損害賠償請求権を有する。」趣旨の回答はなく,むしろ,「本件公害調停を成立させた後には,被控訴人らに対しては,ダイオキシン類対策のための技術的な協力は求めるものの,さらに金銭的な請求はしない。」趣旨の回答をしていることが認められること(甲4,7,8,10,99)に照らせば,組合及び両町が本件公害調停成立に際して,上記アに認定判断したような清算合意をする意思がなかったものとは認められない。 また,上記清算合意が組合と被控訴人らとの間のものであることに照らせば,控訴人らの上記②の主張は,その事実が認められるかはさておき,そもそも上記清算合意の存在を否定する根拠になるものとは解されない。 さらに,本件公害調停においては,被控訴人らが本件訴訟で問題としている本件焼却施設からのダイオキシン類汚染に関する組合の損害を含むダイオキシン類対策が問題とされ,組合と能勢町及び豊能町から被控訴人らに対して,それに関する費用負担が求められており,その対策に要する費用の額は確定していなかったものの,被控訴人らが負担する金額は本件公害調停成立時に確定させることを前提に協議がなされていたことは上記アのとおりであり,このこ 用負担が求められており,その対策に要する費用の額は確定していなかったものの,被控訴人らが負担する金額は本件公害調停成立時に確定させることを前提に協議がなされていたことは上記アのとおりであり,このことに照らせば,控訴人らの上記③の主張も上記清算合意の存在を否定する根拠とは解し難いというべきである。 エ以上のとおり,控訴人らの当審における補足的主張はいずれも採用できない。 (2) 控訴人らの当審における追加的主張について控訴人らは,本件公害調停によって組合と被控訴人らとの間に和解契約が成立していたとしても,そこで合意されたのは損害賠償請求権消滅の合意ではなく損害賠償請求権不行使の合意(すなわち,請求権は存在するが,行使しない旨の合意)であって,この合意に控訴人らは拘束されない旨主張する。 しかしながら,前記(1)に認定,判断したとおり,組合と被控訴人らとの間には,本件公害調停において,「(別件労災訴訟に関するものを除き)ダイオキシン類汚染による組合の損害を含むダイオキシン類対策費用について,同調停条項に定められたもの以外に,被控訴人らが組合に対して費用を負担すべき義務は存在しない。」旨の清算合意がなされたものと認められるから,控訴人らの当審における追加的主張は,そもそもその前提を欠くものというべきである。 また,仮に,本件公害調停によって組合と被控訴人らとの間になされた合意が,控訴人らの主張するように損害賠償請求権不行使の合意であったとしても,それにより,組合は被控訴人らに対して損害賠償請求権を行使できないのであるから,同合意により組合が損害賠償請求権を行使しないことをもって,地方自治法242条の2第1項4号の「怠る事実」に該当するものとは解されないというべきである。 を行使できないのであるから,同合意により組合が損害賠償請求権を行使しないことをもって,地方自治法242条の2第1項4号の「怠る事実」に該当するものとは解されないというべきである。 したがって,控訴人らの当審における追加的主張は採用できない。 2 以上によれば,原判決は相当であって,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし,民事訴訟法67条,61条,65条を適用して主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第1民事部裁判長裁判官横田勝年裁判官亀田廣美裁判官末永雅之

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