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主文 本件上告を棄却する。上告費用は上告人の負担とする。理由 上告代理人大蔵敏彦、同小林達美の上告理由第一点および第二点について。所論は、要するに、公立学校における宿日直勤務は、本来、教員の職務に属さないものであり、かつ、労働基準法上も、同法三六条の手続を経た場合のほかこれを命ずることを許した規定がないにもかかわらず、原審が、校長の職務命令により教員に宿日直勤務を行なわせることができると判断したのは、法令の解釈適用を誤つたものである、というのである。記録によれば、静岡県立高等学校の教員である上告人は、教員は法令上当然に宿日直義務を負うものではないとの主張を前提として、地方公務員法四六条の規定に基づき、被上告人人事委員会に対し、(一)静岡県教育委員会は、上告人が宿日直勤務に服することを応諾し、かつ、宿日直勤務の内容が昭和二二年九月一三日発基第一七号、同二三年四月一七日基収第一〇七七号の基準を下廻らない場合にかぎり、被上告人委員会に対し上告人の宿日直勤務の許可を求め、かつ、被上告人委員会の許可のないかぎり、上告人をして宿日直勤務に服させないように措置すべきこと、(二)静岡県は、上告人に対し、上告人が昭和二九年四月から同三二年一月までの間に勤務校においてした宿日直勤務につき、その勤務に相応して計算される超過勤務手当、夜勤手当および休日給の支給額から宿日直手当としてすでに支給された額を控除した残額を支給し、かつ、今後上告人に支給されるべき宿日直手当の額も右超過勤務手当等の額を下廻らないように措置すべきこと、をそれぞれ勧告するよう申し立てたところ、申立を棄却する旨の判定を受けたので、その判定の取消しを求めて本訴を提起したが、差戻後の第一審においては、右措置要求事項のうち、上告人- に措置すべきこと、をそれぞれ勧告するよう申し立てたところ、申立を棄却する旨の判定を受けたので、その判定の取消しを求めて本訴を提起したが、差戻後の第一審においては、右措置要求事項のうち、上告人- 1 -が昭和二八年四月から同三一年九月三〇日までの間にした宿直勤務について一回三六〇円の割合で計算した額から宿直手当としてすでに支給を受けた額を控除した残額の支給措置を求める部分(以下宿直手当残額の支給措置に関する部分という。 それぞれ勧告するよう申し立てたところ、申立を棄却する旨の判定を受けたので、その判定の取消しを求めて本訴を提起したが、差戻後の第一審においては、右措置要求事項のうち、上告人- 1 -が昭和二八年四月から同三一年九月三〇日までの間にした宿直勤務について一回三六〇円の割合で計算した額から宿直手当としてすでに支給を受けた額を控除した残額の支給措置を求める部分(以下宿直手当残額の支給措置に関する部分という。)のみを正当として、その限度で本件判定の一部を取り消し、その余の請求をすべて棄却したこと、この判決に対して、上告人は控訴(附帯控訴)の申立てをせず、被上告人のみが控訴した結果、原審においては、右控訴が理由ありとされ、上告人の第一審勝訴部分を取り消し、その部分の請求を棄却する旨の判決が言い渡されたことが明らかである。以上の経過によると、本件についての原審の審判の範囲は、被上告人が控訴によつて不服を申し立てた限度、すなわち前記宿直手当残額の支給措置に関する部分の当否のみに限定されていたものというべきであつて(民訴法三七七条一項、三八五条)、第一審判決において論ぜられた教員の宿日直義務の存否およびその労働基準法上の根拠いかんというがごとき問題については、右の審判につき必要のないかぎり、これに対する判断を示さなければならないものではない。ところで、校長の宿日直命令が違法であつても、その命令の事実上の拘束力によつて教員が現実に宿日直勤務に服した場合には、右勤務に対する手当の支給を禁じた特別の規定等がないかぎり、適法な命令に基づいて勤務した場合と同様の手当の支給を請求しうるものと解すべきことは、当裁判所の判例(昭和三三年(あ)第一一三五号同三五年七月一四日第一小法廷判決・刑集一四巻九号一一三九頁、同四四年(行ツ)第二六号同四 務した場合と同様の手当の支給を請求しうるものと解すべきことは、当裁判所の判例(昭和三三年(あ)第一一三五号同三五年七月一四日第一小法廷判決・刑集一四巻九号一一三九頁、同四四年(行ツ)第二六号同四七年四月六日第一小法廷判決・民集二六巻三号三九七頁、同四六年(行ツ)第八四号同四七年一二月二六日第三小法廷判決・民集二六巻一〇号二〇九六頁)の趣旨に徴して明らかである。してみると、上告人が法令上宿日直勤務に服すべき義務を負うものであつたかどうかは、上告人の前記宿直手当残額の請求権の有無の判断に直接影響を及ぼす事項ではないというべきであつて、原審が- 2 -右宿日直義務の存否およびその法律上の根拠について説示したのは、判決の結論に影響のない傍論を述べたにすぎないものと解される。 七年一二月二六日第三小法廷判決・民集二六巻一〇号二〇九六頁)の趣旨に徴して明らかである。してみると、上告人が法令上宿日直勤務に服すべき義務を負うものであつたかどうかは、上告人の前記宿直手当残額の請求権の有無の判断に直接影響を及ぼす事項ではないというべきであつて、原審が- 2 -右宿日直義務の存否およびその法律上の根拠について説示したのは、判決の結論に影響のない傍論を述べたにすぎないものと解される。したがつて、右説示の誤りをいう論旨は、原判決の傍論を非難するに帰し、いずれも採用することができない。同第三点について。所論は、要するに、労働基準法施行規則二三条所定の許可を得ないで命ぜられた宿日直勤務に対しては、通常の超過勤務手当、夜勤手当および休日給に相当する額の手当が支給されるべきであり、これより低額でよいとした原判決には、法令の解釈適用を誤つた違法があるというのである。しかし、原審は、その審判の対象となつた前記宿直手当残額の請求権はすでに時効によつて消滅した旨判断しているのであるから、右手当の数額のいかんは判決の結論に影響を及ぼすものではない。論旨は、ひつきよう、原判決の傍論を非難するものにすぎず、採用することができない。同第四点について。本件措置要求に前記宿直手当残額請求権の消滅時効を中断する効力がないとした原審の判断は正当であつて、原判決に所論の違法はない。かかる措置要求に対して時効中断の効力を認める規定がないのみならず、それは宿直手当支給義 前記宿直手当残額請求権の消滅時効を中断する効力がないとした原審の判断は正当であつて、原判決に所論の違法はない。かかる措置要求に対して時効中断の効力を認める規定がないのみならず、それは宿直手当支給義務者に対する権利行使とはいえないからである。そして、宿日直手当等の請求権を有する者は、これについての措置要求に対する判定とはかかわりなく、給与負担者に対して直接その支給を請求することができるのであるから、右のように解したからといつて、所論のような不都合な結果を生ずるものではない。論旨は、独自の見解に立つて原判決を攻撃するものであつて、採用することができない。よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。- 3 -最高裁判所第一小法廷裁判長裁判官大隅健一郎裁判官藤林益三裁判官下田武三裁判官岸盛一裁判官岸上康夫- 4 -
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