主文 1 原判決中,控訴人敗訴の部分を取り消す。 2 被控訴人の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,第1,2審を通じて被控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨主文と同旨第2 事案の概要と争点 1 事案の概要は,次のとおりである。 (1) 被控訴人は,別紙約束手形目録記載の裏書の連続した約束手形2通(手形金額合計1億2000万円)の最終所持人であり,第1裏書人欄に記載のある控訴人に対し,裏書をしたと主張して,遡求権を行使し,1億2000万円及びこれに対する満期から支払済みまでの法定利息の支払を求めたところ,(2) 控訴人は,裏書はCがした,控訴人名下の「A」の印影も控訴人の印鑑によるものではなく,Cが勝手に購入した印鑑を押したものであると主張して,自己の責任を否認し,(3) 原判決は,ア控訴人の自署による裏書を認めたが,イ金額欄は白地であってその補充権は,1通につき350万円であったと認めて,ウ合計700万円と満期から支払済みまでの法定利息の支払を命じる限度で,被控訴人の請求を認容した。 (4) 控訴人のみが,原判決に対し控訴している。 2 当審での最大の争点は,(1) 控訴人が裏書人欄に自署したかどうか(争点1),(2) 仮に,そうでなく,Cが控訴人名で裏書(署名代行)したとしても,控訴人からその権限を授与されていたものかどうか(当審における新主張。争点2)である。 第3 請求の原因(被控訴人) 1 被控訴人は,別紙約束手形目録記載の裏書(拒絶証書不要の記載がある。)の連続した約束手形2通(甲1及び2の各1・2。手形番号は,A616928とA616946。記載内容は2通とも同じ。以下「本件各手形」という。)を所持している。 2(1) 控訴人は,本件各手形の第1裏書人欄に自署した(甲1及び2の各1)。 。手形番号は,A616928とA616946。記載内容は2通とも同じ。以下「本件各手形」という。)を所持している。 2(1) 控訴人は,本件各手形の第1裏書人欄に自署した(甲1及び2の各1)。 (2) (仮に,控訴人が自署したのでないとしても,)ア控訴人は,Cに対し,控訴人名の裏書署名を代行する権限を授与した。 イ Cは,本件各手形に控訴人名で裏書をした。 3 よって,本件各手形の最終所持人である被控訴人は,裏書人の控訴人に対し,手形法77条1項4号,43条柱書本文に基づく遡求権を行使して,同法48条1項1号所定の本件各手形の金額合計1億2000万円及びこれに対する同項2号所定の本件各手形の満期である平成12年11月25日から支払済みまで年6分の割合による利息の支払を求める。 第4 請求の原因に対する認否及び主張(控訴人) 1 1は知らない。 2(1) 2(1)は否認する。控訴人は,第1裏書人欄に署名も,記名捺印もしていない。 (2) (2)アは否認し,イは認める。 3(1)ア控訴人は,平成10年8月ころ,D株式会社(以下「D」という。)取締役のCから,「Dの資金繰りのためである,取立てには出さない,期日前には絶対返却する。」との条件で,金額・受取人・振出日・支払期日の各欄を白地とした約束手形2通の借用依頼があった。控訴人は,これを信じて,自己の勤務先の上司Eに依頼して,同人が代表取締役を勤める株式会社F(以下「F」という。)から振り出してもらった,金額・受取人・振出日・支払期日の各欄を白地とした白地手形2通(乙1の1・2。後日白地部分が補充されたものが本件各手形である。)をCに貸与した。 イ平成10年8月28日,Cから,同白地部分につき,1通は,金額を350万円,支払期日を平成11年1月25日と,もう1通は,金額を 補充されたものが本件各手形である。)をCに貸与した。 イ平成10年8月28日,Cから,同白地部分につき,1通は,金額を350万円,支払期日を平成11年1月25日と,もう1通は,金額を350万円,支払期日を平成10年12月10日とそれぞれ補充したとの電話連絡とともに,ファックスで手形2通の表部分が送信されてきた(乙2)。 ウ控訴人は,平成11年1月30日,Cに上記手形2通の返還を求めたところ,買い戻して破棄したとの報告を受けて安心していた。しかるに,本件訴訟が提起された。 (2) Cは,本件各手形の第1裏書人欄に,控訴人名を勝手に書き込み,かつ,栃木県足利市にある有限会社Gで購入した「A」と刻んだ印鑑を勝手に押して,控訴人名の裏書を記載した。控訴人が,Cに署名代行の権限を授与していなかったことはいうまでもない。 第5 当裁判所の判断 1 証拠〔甲1及び2の各1・2〕によれば,請求の原因1の事実が認められる。 2 事実経過証拠〔甲1及び2の各1・2,3,4,5の1・2,6~39,乙1の1・2,2,6(原審での控訴人陳述書),7~14,16,21(当審での控訴人陳述書),22(H陳述書),原審・当審証人Iの各証言(以下「原審I証言」,「当審I証言」という。),当審証人Hの証言(以下「H証言」という。),当審における控訴人本人尋問の結果(以下「控訴人供述」という。),原審福岡地方裁判所平成12年(手ワ)第132号事件に併合された同年(ワ)第4149号(同年(ワ)第4583号を併合した。以下「被併合事件」という。)甲6の1~3,5,7及び8の各1~3,9の1~5,10及び11の各1~3〕によれば,次のとおり認められる(以下丸付き数字は通し番号である。)。 (1) 当事者の関係① IとC昭和60年ころ,I(通称「J」。以下 7及び8の各1~3,9の1~5,10及び11の各1~3〕によれば,次のとおり認められる(以下丸付き数字は通し番号である。)。 (1) 当事者の関係① IとC昭和60年ころ,I(通称「J」。以下「I」という。福岡市所在)は,株式会社Jのオーナー(会長)として時計や宝飾品の販売業を営んでいた。同社は,部下のCが副会長をし,Kの五反田支店や赤坂支店に預金をしていた。なお,Iは,金融業も営んでいた。 ② 控訴人,IとCそのころ,Kの五反田支店長をしていた控訴人は,同組合副理事長の紹介で,IやCと知り合い,以後,一緒に食事をしたりするような友人関係になった。 ③ 控訴人,L,EとF控訴人は,平成8年5月,本店営業部の管理部長を最後に,行員生活35年に終止符をうって退職し,翌6月,L株式会社(以下「L」という。当時の代表取締役はM。その子Eが取締役)に入社し,財務担当・管理部長に就任し,Eのもとで働くことになった(現在も同役職)。 当時,Eは,F(不動産の売買,仲介等を営業目的として,昭和60年3月14日に成立した会社である。平成14年12月3日商法406条ノ3第1項の規定により解散した。)の代表取締役でもあったが,Lとの間に,資本関係その他でのつながりはなかった。 〔①から③まで,乙16,21,原審及び当審のI証言,控訴人供述〕(2) Dの設立④ Dの役員Cは,平成8年ごろまで株式会社Jにおいて,Iの下で仕事をしていたが,同社退職後,不動産業経営に乗り出し,同年4月,墓地,霊園の開発並びに企画,設計,施工,墓地,霊園の永代使用権の販売等の事業を目的として,栃木県足利市に本店をおくDを設立し(控訴人も発起人として200万円を出資),ア代表取締役にN(Cの妻),イ専務取締役にH(Cの息子),ウ取締役にCとB(控訴人の息子)がそ 目的として,栃木県足利市に本店をおくDを設立し(控訴人も発起人として200万円を出資),ア代表取締役にN(Cの妻),イ専務取締役にH(Cの息子),ウ取締役にCとB(控訴人の息子)がそれぞれ就任し,栃木県足利市等の現場で仕事を開始した。 ⑤ 控訴人のC,Dへの貸付け控訴人は,D設立前はCに個人的に,設立後はDに合計1億円を超える貸付けをしていたが,Dの運営や経営には関与しなかった。 〔④から⑤まで,甲3,4,乙14,21,22,原審及び当審I証言,H証言,控訴人供述〕(3) 本件各手形振出しとIがこれを取得するまで⑥ CからIへの融資依頼ア Iは,Cに対し,株式会社J時代を含め,Dの事業に関連して,1億円を超える貸付けをしていた。 イ C(栃木県足利市所在)は,しばしば,金策を依頼したりするために,福岡市にIを訪ね,同市所在のシーホークホテルで食事をするなど親しく交際していた。 ウ平成10年6月下旬ころ,Iは,Cから,霊園事業のために,控訴人からの借入分をいったん返却すればより大きな融資が得られる,そのつなぎ資金として6000万円を貸して欲しい,同金員は控訴人への返却分と工事代金である,同借入れができたなら,Iに対する以前からの借入金6000万円と合わせて1億2000万円を弁済するとの申し出を受けたが,手元に資金を有していなかったので,いったんこれを断った。 ⑦ 以後,Iは,同年8月初めころまでしばしば,Cから,電話で上記借入れへの協力依頼を受け,その際,担保として,共通の友人である控訴人が関係している会社から金額6000万円の約束手形2通(合計1億2000万円)を振り出してもらい,それに控訴人の裏書をしてもらうとの話を聞かされ,そうであればこれに応じてもよいとの意向を示した。 〔⑥から⑦まで,甲4,原審及び当審I証言 の約束手形2通(合計1億2000万円)を振り出してもらい,それに控訴人の裏書をしてもらうとの話を聞かされ,そうであればこれに応じてもよいとの意向を示した。 〔⑥から⑦まで,甲4,原審及び当審I証言,被併合事件甲6の1~5,7及び8の各1~3,9の1~5,10及び11の各1~3〕⑧ 本件各手形振出しとCへの交付ア Eは,かねて,Lにおける部下の控訴人からDの事業内容を聞き,またCとも面識があり,Dの資金繰りについての協力依頼を受けたり,控訴人とCからの要請を受けてDの霊園造成工事の業者を紹介したりしたこともあって,Dの事情も知っていた。 イ同年8月ころ,控訴人は,Cから,「Dの霊園造成代金支払の資金繰りのために借入れをする必要があり,その条件として約束手形2通を担保に求められている。約束手形1通につき限度額は350万円で,借金の担保に預けるだけで譲渡はしない,取立てにも回さない,期日前に間違いなく返還して迷惑をかけないから,金額・受取人・振出日・支払期日の各欄白地の約束手形2通を用立てて欲しい。」旨懇願された。 ウ控訴人は,勤務先の上司Eに,イの趣旨を伝えて依頼したところ,Eは自己が代表者であるFの約束手形であれば手形を貸してもよいと言って,金額・受取人・振出日・支払期日の各欄がいずれも白地の約束手形2通を振り出し(乙1の1・2。これが,後日白地部分が補充され,本件請求の原因となっている本件各手形である。),控訴人に交付した。 エ控訴人は,同年8月13日ころ,Cに,白地部分を補充したらコピーをくれるように念を押して,上記手形2通をCに交付した。 〔アからエまで,乙1の1・2,6,21,控訴人供述〕⑨ IからCへの6000万円の融資ア同年8月初めころ,Iは,Cから,⑦で言及した担保に供する手形はこういうものだと言って,金額・受取 した。 〔アからエまで,乙1の1・2,6,21,控訴人供述〕⑨ IからCへの6000万円の融資ア同年8月初めころ,Iは,Cから,⑦で言及した担保に供する手形はこういうものだと言って,金額・受取人・振出日・支払期日の各欄を白地とした本件各手形2通がファックス送信されてきたのを受け取った。 イ IとC間の合意と6000万円貸付けの履行そこで,Iは,Cの申し出を受けて,新たに6000万円を貸し付けること,貸付けは複数回に分けること,これに以前からの借入金6000万円を合わせた1億2000万円について,(ア) うち6000万円を,返済期限を平成11年9月末日とすること,利息は残存額に対し月4%の割合とし,毎月10日と20日に2%ずつ支払うこと,(イ) うち6000万円を,返済期限を平成12年7月末日とすること,利息は同11年10月末日より完済まで毎月120万円を支払うこと,等で合意し,妻のO名義でCに対し,同年8月10日760万円(甲6),同月19日1920万円(甲7),同年9月9日1000万円(甲8),同月11日880万円(甲9)を順次貸し付けた。なお,最終貸付日は同月20日ころであった。 〔アからイまで,甲5の1・2,6~9,原審及び当審I証言,被併合事件甲6の4,9の4〕⑩ 本件各手形のCからIへの交付ア平成10年8月14日,Iは,Cに対し,よく利用する(⑥イ参照)シーホークホテルで会って,現金800万円余を交付し,引き換えに,⑧ウのとおり控訴人から取得した白地手形2通(本件各手形)を受け取ったが,そのときの記載内容は,次のとおりであった。 (ア) 上記白地部分のうち金額欄は6000万円と記載されていた。 (イ) 受取人・振出日・支払期日の各欄は白地のままであった。 (ウ) 第1裏書人欄(控訴人の裏書)から第3裏書人欄まで別紙 であった。 (ア) 上記白地部分のうち金額欄は6000万円と記載されていた。 (イ) 受取人・振出日・支払期日の各欄は白地のままであった。 (ウ) 第1裏書人欄(控訴人の裏書)から第3裏書人欄まで別紙のとおり記載されていた。 イ Iは,Cに対し,さらに支払期日欄の記載を求めたが,Cから,後日,控訴人と相談して決め,連絡を入れる,と聞いて了解した。 ウその後,I(通称J)は,Cから,⑨イの合意をしたためた同月19日付け念書(甲5の2)とともに,お礼の書状(甲5の1)が同封された郵便を受け取った。 〔アからウまで,甲5の1・2,原審及び当審I証言,被併合事件甲6の4,9の4〕⑪ 同月28日,控訴人が⑧エで念を押したことの実行を催促したところ,Cから,1通は,支払期日を平成10年12月10日,金額を350万円と,もう1通は,支払期日を平成11年1月25日,金額を350万円とそれぞれ記載したとの電話連絡とともに,収入印紙欄には各1000円の印紙(印紙税法3条1項所定の印紙分)が貼付された本件各手形の表部分のみ(乙2)がファックス送信されてきた(⑩ア及び⑯から分かるとおり,この各記載事項は,策を弄して作成された虚偽のものであった。)。 しかし,同手形の裏の部分は,控訴人の催促にもかかわらず,ファックス送信をしてこなかった。 〔乙2,6,21,控訴人供述〕⑫ 控訴人は,⑪のとおりの記載がされた手形が利用されたのであろうと考え,約束どおり,最終支払期日(平成11年1月25日)には本件各手形を返還してもらえると思っていたが,期日までに返還されなかったので,平成11年1月30日,Cに本件各手形の返還を求めたところ,Cから,買い戻して破棄したとの報告を受けたので,これを信用して安心していた。 〔乙6,21,控訴人供述〕⑬ I,Cと被控訴人ア平成11 成11年1月30日,Cに本件各手形の返還を求めたところ,Cから,買い戻して破棄したとの報告を受けたので,これを信用して安心していた。 〔乙6,21,控訴人供述〕⑬ I,Cと被控訴人ア平成11年7月,Iは,Cから懇請されて,Dの工事代金4000万円の融資を別途用立てしたが,うち3000万円は,15年来の知人である被控訴人(福岡市所在)から借り入れたものであった。 イ Iは,以前にも被控訴人から5600万円を借り入れていた手前,アの際,Cから,直接,被控訴人にDの霊園事業について説明させ,併せて,(ア) 事業成功の暁には,Cが,Iに⑨イの6000万円の返済とは別に,事業利益の3分の1のお礼を渡すこと,(イ) Iはそのうち半分を被控訴人に渡すこと等を三者間で話して,被控訴人の了解を得た。 ⑭ Iは,Cから,⑨イ(ア)のとおり,平成11年9月末日までに6000万円の返済を受けたら,とりあえず,うち3000万円を被控訴人に返済し,順次残りの借入金を返済する心づもりでいた。 〔⑬から⑭まで,原審I証言〕(4) 被控訴人が本件各手形を取得した経緯⑮ア Cは,Iに対し,平成12年2月ころまでは,⑨イ(イ)に基づく月120万円の利息を振込入金していた。 イしかしながら,⑨イ(ア)の元金6000万円については,返済期限の平成11年9月末日が到来しても支払わず,種々弁解をしては返済しないことを繰り返した。 ウ次に履行を約束した平成12年9月20日にも支払がなかったことから,Iも当てがはずれた。 エ Iは,被控訴人から⑬アの返済を迫られ,苦境に陥った。Cの弁解を被控訴人に伝えてはいたが,Iも言い訳に窮し,夫婦で相談の上,妻のO名義で,本件各手形を被控訴人あてに裏書譲渡することにし,第4裏書人欄に同女の署名,捺印を得て,同月下旬,被控訴人に交 。Cの弁解を被控訴人に伝えてはいたが,Iも言い訳に窮し,夫婦で相談の上,妻のO名義で,本件各手形を被控訴人あてに裏書譲渡することにし,第4裏書人欄に同女の署名,捺印を得て,同月下旬,被控訴人に交付した。 ⑯ 被控訴人による受取人・振出日・支払期日の各欄の補充ア Cは,Iに対し,最終支払期限を平成12年11月20日と約束したので,これをIから聞いた被控訴人は,Iに対し,同日までに支払がなければ本件各手形を取立てに回すので,白地欄を決めて欲しいと要求した。 イ平成12年11月10日,IがこのことをCに伝えると,Cは,控訴人と相談して連絡すると言った。翌朝,Cから支払期日欄は同月25日でよいとIに連絡があり,Iは,受け取った日が平成10年8月14日であることとともに被控訴人に伝えた。 ウそこで,被控訴人は,本件各手形の白地の受取人欄に控訴人名を,振出日欄に平成10年8月14日と,支払期日欄に平成12年11月25日とそれぞれ記載した。 (5) 本件訴えの提起など⑰ 平成12年11月20日,Iは妻Oとともに,Dの事務所(Cの自宅)にCを訪ねて支払を催促したが,支払を受けられず,その後,Cは,Iらから姿をくらまして,支払をしないままになった。このころまで,Dの実権を握って経営をしていたのはCであった。 〔⑮から⑰まで,原審及び当審I証言,H証言〕⑱ 控訴人は,平成12年12月29日本件訴状の送達を受けた。 〔本件記録〕⑲ Hは,DからCを排除すべく,平成12年11月11日付けでC及びNの辞任届(乙12,13)を提出させ,平成14年5月,控訴人及びHが同社の代表取締役に就任して,Cの影響力を排除し,同年9月13日,Cを告訴(乙7~11)した(なお,平成12年6月,本店を群馬県藤岡市に移転)。 〔乙7~13,H証言,控訴人供述〕 3 争点1( が同社の代表取締役に就任して,Cの影響力を排除し,同年9月13日,Cを告訴(乙7~11)した(なお,平成12年6月,本店を群馬県藤岡市に移転)。 〔乙7~13,H証言,控訴人供述〕 3 争点1(控訴人の自署による裏書の有無)について(1) 控訴人は,本件各手形(甲1及び2の各1)の第1裏書人欄の控訴人名の署名,捺印につき,控訴人は,自署ではない,署名したのはCである,印影も自分の印鑑によるものではなく,Cが勝手に購入した「A」名の印鑑による印影であると主張する。 ア控訴人の陳述書(乙21(第2の2項,第3の1項))及び当審での供述(125~129項)は,上記主張に沿うものである。 イ Cの主張(本件に併合された福岡地方裁判所平成13年(ワ)第561号事件の第3回口頭弁論期日でCが陳述した平成13年3月15日付け準備書面2ページ参照)も,上記主張に沿うものである。 ウ証拠〔乙17,18の1・2,19,21~23,控訴人供述〕によれば,(ア) 控訴人は,Cが足利市の有限会社Gで控訴人名の印鑑を作ったと言っていたことから,原判決で敗訴した後,その確認のために調査に入ったところ,(イ) Dの事務所のCの机の中から,製作者が同店名の「C様」あての紙袋(乙17)に入った印鑑(乙23)と,同店発行の「C様」あての請求書2通(1通は平成10年8月5日付けのD用のもの(乙18の1),もう1通が同月7日付けの本件各手形の控訴人名裏書に使用された「A」という印影になる印鑑と同一の印鑑3000円分(乙18の2)である。)と,同請求書に対応する同店発行の同月11日付けDあて領収証(乙19)が発見されたことが認められる(なお,平成10年8月当時も,Dの経営や経理などの実権はCがすべてを握っていたことは2⑰で認定したとおり。)。 エそして,本件各手形の 1日付けDあて領収証(乙19)が発見されたことが認められる(なお,平成10年8月当時も,Dの経営や経理などの実権はCがすべてを握っていたことは2⑰で認定したとおり。)。 エそして,本件各手形の第1裏書人欄の控訴人名の筆跡を,当審における控訴人本人尋問の際の宣誓書中の控訴人の自署部分及び当審訴訟代理人弁護士あての委任状の署名(控訴人の自署と思料される。)と比較対照してみても,これが同一人の筆跡になるものとは認め難い。 (2) 結論ア 2の認定事実及び3(1)の点を総合勘案すれば,(ア) 控訴人の裏書が控訴人によって自署されたものとも,控訴人名下の印影が控訴人の印鑑によって捺印(手形法82条参照)されたものとも言い難く,(イ) かえって,Cが本件各手形の各第1裏書人欄に控訴人名で裏書し,Cが勝手に作った控訴人名の印鑑を使用して,控訴人名下に捺印したものと認められる。 イ確かに,上記認定判断に反し,原審I証言(64~72・150~162・167項)及び当審I証言(45~53・161~170項)は,2⑩で認定した,平成10年8月14日,同人がCとシーホークホテルで会って本件各手形の交付を受けた際,(ア) Cが控訴人に電話し,(イ) 途中でCに代わって,Iも直接控訴人と電話で話をし,その声色から控訴人であると判断したのみならず,控訴人の裏書が間違いないとの返事を受けた旨証言する。 ウしかしながら,同証言部分は,次のとおりの理由でこれを採用できない。 (ア) 同証人は,Cが控訴人に電話をしている途中に代わった(原審I証言68項,当審I証言176~177項)というのであるが,電話の相手が控訴人であることを担保するものはない。 (イ) 同証人は,2①②で認定したとおり,昭和60年ころ控訴人と知り合い,以後,顧客として面識があったとは 言176~177項)というのであるが,電話の相手が控訴人であることを担保するものはない。 (イ) 同証人は,2①②で認定したとおり,昭和60年ころ控訴人と知り合い,以後,顧客として面識があったとはいえ,控訴人と最後に会ったのは,平成8年ころであり(乙6(9項),原審I証言163~168項),その前も更に4,5年前に1回会っただけである(控訴人供述37~40項)。 (ウ) Iと控訴人なる人物との電話での会話の内容というものも,「お体は大丈夫ですか。Cさんから手形2通いただきますけど,裏書は間違いありませんか。」(原審I証言70~71項)という簡単なもので,控訴人でなければ返答できない内容とはいえず,Cが第三者を控訴人に仕立てて電話に応じさせた可能性も否定できない。 (エ) 他方,控訴人は,陳述書(乙6(7項),21(第5))において,Iが電話の確認を取った平成10年8月14日には,新潟県の湯沢に家族と滞在していたもので,その所在をCやIに知らせていなかったとして,Iとの上記電話確認(本件各手形の裏書の確認)があったことを否定する。 (オ) イ(ア)の電話が,控訴人の携帯電話であったかどうかを認めるに足りる証拠はないが,仮に,携帯電話であったとしても,控訴人は,陳述書(乙21(第5))でも,法廷(控訴人供述101項)でも,平成13年9月10日から携帯電話を所有するようになり,それ以前は,平成8年5月ころまで勤務していたKの携帯電話を利用していたにすぎないと主張する。(もちろん,控訴人には,契約申込書の会社とは別の携帯電話会社の携帯電話を持っていた可能性や家族(妻)の携帯電話を使用した可能性もあることから,携帯電話の契約申込書と領収証(乙15の1,2)のみから,上記電話確認の当時において,控訴人が携帯電話を所持せず,これを使用していなか た可能性や家族(妻)の携帯電話を使用した可能性もあることから,携帯電話の契約申込書と領収証(乙15の1,2)のみから,上記電話確認の当時において,控訴人が携帯電話を所持せず,これを使用していなかったとまで即断するわけではない。)エウで指摘した点をあれこれ考慮すれば,イのI証言を採用することは困難であるというべきところ,他に控訴人が本件各手形に自署により裏書したことを認めるに足りる証拠はない。 オ争点1に関する原判決と当審の判断の相違点この点において,原判決(3ページ7行目から20行目まで)が,控訴人の署名(自署),捺印を認めたのは相当でない。 4 争点2(裏書の署名代行権の有無)について(1) 被控訴人は,仮に,控訴人名の裏書が自署でなかったとしても,控訴人がCに,控訴人名の署名代行権を授与し,それに従ってCが控訴人名の署名を代行したと主張する(請求の原因2(2))が,署名代行権の授与を認めるに足りる証拠はないし,上記認定の事実及び判断に照らしても,同授与の事実を推認することはできない。 (2)ア被控訴人は,Cが控訴人名のゴム印を作成したということは,控訴人がCに控訴人名の裏書の署名代行権を授与したことを裏付けるものであると主張する。 イしかしながら,(ア) 2認定の事実に照らすと,そのようにいうことは困難であるのみならず,(イ) むしろ,a 前記認定によれば,Cがわざわざ控訴人名の印鑑を注文して購入し,これを使用して控訴人の裏書人欄に押印したと推認されること,b 2⑪で認定したとおり,Cから,控訴人あてに,1通は,支払期日を平成10年12月10日,金額を350万円と,もう1通は,支払期日を平成11年1月25日,金額を350万円とそれぞれ記載したとの電話連絡とともに,収入印紙欄には各1000円の印紙(印紙税法3条 を平成10年12月10日,金額を350万円と,もう1通は,支払期日を平成11年1月25日,金額を350万円とそれぞれ記載したとの電話連絡とともに,収入印紙欄には各1000円の印紙(印紙税法3条1項所定の印紙分)が貼付された本件各手形2通の表部分のみ(乙2)がファックスで送信され,あたかも,これが真実であるかのような情況を作出しながら,裏部分は,控訴人の催促にもかかわらず,ファックス送信をしてこなかったことは,Cが裏書の控訴人名を署名代行するにつき,控訴人から同権限の授与を得ていなかったことを強く推測させるものである。 (3) 2④⑤認定のとおり,控訴人の息子がDの役員に名を連ね,また,控訴人がCに多額の貸付けをし,Cと同じようにDの霊園事業に重大な利害関係を有していたことも,2⑲認定のとおり,平成12年11月11日付けでC及びNのDの役員辞任届を提出させ,平成14年5月,控訴人及びHが同社の代表取締役に就任し,同年9月13日,Cを刑事告訴したことをも合わせ考慮すれば,上記(1)(2)の認定・判断を左右しない。 5 まとめ(1) そうとすれば,争点1及び2についての被控訴人の主張は,いずれも採用できないから,その余の点について判断するまでもなく,被控訴人の本件請求は理由がないことに帰する。したがって,これと一部結論を異にする原判決は不当である。 (2) よって,本件控訴は理由があるので,ア原判決中,控訴人敗訴の部分を取り消して,イ被控訴人の請求を棄却し,ウ訴訟費用は第1,2審とも被控訴人に負担させることとして,主文のとおり判決する。 福岡高等裁判所第1民事部裁判長裁判官簑田孝行裁判官駒谷孝雄裁判官 福岡高等裁判所第1民事部 裁判長裁判官 簑田孝行 裁判官 駒谷孝雄 裁判官 藤本久俊 (別紙約束手形目録省略)
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