【DRY-RUN】主 文 本件上告を棄却する。 理 由 弁護人大橋茹及び同斎藤寿の上告趣意第一点について。 旧刑事訴訟法にいわゆる証拠物と証拠書類との相違は、前者に於てはその
主文 本件上告を棄却する。 理由 弁護人大橋茹及び同斎藤寿の上告趣意第一点について。 旧刑事訴訟法にいわゆる証拠物と証拠書類との相違は、前者に於てはその物理的存在自体が問題であるのに対して、後者に於てはその存在は明白であり、唯その記載内容が犯罪事実の証明に役立つという点に存すること所論の通りである。大審院の判例は、証拠書類とは当該訴訟に関し作成せられ証拠の用に供せられる書面を指称するものである、との解釈を維持して来たが、(例えば昭和七年二月一八日判決、集一一巻八四頁)、かような文書はその存在及び成立については特別の場合を除く外全く疑を生ぜず唯その記載の内容のみが証拠となるものであるから、この解釈も結果に於ては上記の見解に背馳するものではない。従つて右の判例は旧刑事訴訟法の解釈に関する限り新憲法の下に於てもこれを変改する必要を認めない。さすれば所論の被告人に対する検事の聴取書や被害者に対する司法警察官の聴取書が証拠書類であることはいうまでもないことであるのみならず、所論A作成の診断書も亦、証拠書類に属する。蓋しこの診断書は、被害者が被告人から傷害せられた部位程度を報告するために作成せられ、捜査官憲に提出せられ、本件記録に編綴せられた文書であつて、その文書の成立についてはその後の審判手続においても別段争われた形迹のないこと記録上明かである。即ち本件の手続において作成せられて、その存在自体並に成立が問題とされたのではなく、その記載内容のみが証拠となつたのであるから、証拠書類にあたるものである。(昭和二三年(れ)第一六三一号、同二四年三月二九日最高裁判所第三小法廷判決参照)。それ故に原審裁判長が証拠調に際して右の各書類を被告人に展示しなかつたからとて、旧刑訴法第三四一条第一項に違反するいわれはなく (れ)第一六三一号、同二四年三月二九日最高裁判所第三小法廷判決参照)。それ故に原審裁判長が証拠調に際して右の各書類を被告人に展示しなかつたからとて、旧刑訴法第三四一条第一項に違反するいわれはなく、論旨は理由がない。 - 1 -同上第二点について。 記録を調べてみると原判決が証拠として採用したA作成の診断書は、被害者Bが警察官に差出したものであつて、これを「A提出」と記載したのは原判決の誤りであること所論の通りである。しかしこの誤記にも拘らず証拠特定の目的は充分に達せられていて、原判決が何を証拠としたかということははつきりわかるのであるから、これを以て虚無の証拠を引用し理由不備の違法を犯したものであるとする論旨は採用し難い。 同上(追加)第三点について。 記録によれば原審第一回公判に於て大橋弁護人から被告人妻Cを証人として訊問ありたいと申請したのに対し、裁判所がこれを却下したことは所論の通りである。 しかし証拠調の限度を定めることは経験則に反しない限り事実審の自由裁量に委ねられているところである。そうして原審裁判所が、右の証人の証言の有無に拘らず本件犯罪事実の認定には影響なしとして、その訊問請求を却下したことは、経験則に反するものとは思われない。従つてこれがために原判決には審理不尽の違法があるという論旨は、採用できない。 以上の理由により旧刑訴法第四四六条に従い主文の通り判決する。 この判決は裁判官全員一致の意見によるものである。 検察官竹原精太郎関与昭和二四年八月九日最高裁判所第三小法廷裁判長裁判官長谷川太一郎裁判官井上登裁判官島保裁判官 官長谷川太一郎裁判官井上登裁判官島保裁判官河村又介- 2 -裁判官穂積重遠- 3 -
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