平成24(行ウ)481 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成26年3月6日 東京地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-84986.txt

判決文本文45,594 文字)

- 1 -平成26年3月6日判決言渡平成24年(行ウ)第481号損害賠償請求事件 主文 1 被告は,原告に対し,70万円及びこれに対する平成24年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを6分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,450万円及びこれに対する平成24年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,東京都立高校教員の職を定年退職した後,任期1年の一般職公務員として再任用され,任期更新(更新1回目)を経て,高校教員として勤務していた原告が,東京都教育委員会(以下「都教委」という。)を設置する被告に対し,都教委が原告について平成24年4月1日付け任期の更新(更新2回目)をしなかったことは違法であり,これにより損害を被ったとして,国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項に基づく損害賠償として逸失利益及び慰謝料並びにこれに対する不法行為時である平成24年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 2 争いがない事実等(証拠及び弁論の全趣旨によって認定した事実は,括弧内に証拠番号等を示す。なお,争いがない事実であっても,参照の便宜のために括弧内に証拠番号を示した。) - 2 -(1) 原告原告(昭和24年 ▲月 ▲日生)は,東京都立高校の教員(一般職の地方公務員)として勤務していた者で,平成22年3月31日定年により退職した。都教委は,同年4月1日,原告を同日から平成23年3月31日 告(昭和24年 ▲月 ▲日生)は,東京都立高校の教員(一般職の地方公務員)として勤務していた者で,平成22年3月31日定年により退職した。都教委は,同年4月1日,原告を同日から平成23年3月31日までを任用期間として東京都公立学校教員に再任用し(一般職の地方公務員),同年4月1日,同日から平成24年3月31日までを任用期間として任期を更新(更新1回目)した。再任用期間中,原告は,定年退職時に所属していた東京都立P1高等学校(以下「P1高校」という。)に配属されていた。 (乙1,弁論の全趣旨(被告答弁書p2))(2) 被告被告は,地方自治法180条の5第1項1号,地方教育行政の組織及び運営に関する法律2条の規定に基づいて都教委を設置している。都教委は,同法23条に基づき,学校その他の教育機関の設置,管理,職員の任免その他の人事に関することを管理し,執行する行政庁であり,東京都公立学校教員の任用を所管している。 (弁論の全趣旨)(3) 本件再任用不合格平成23年9月27日,原告は,P1高校のP2校長らによる面接を受けた(以下「9月27日面接」という。)。 原告は,同年10月上旬,P2校長から,平成23年度再任用(教育職員)採用選考案内等の配布を受け,同月下旬,平成23年度の東京都公立学校再任用職員採用候補者選考(以下「再任用選考」という。)及び非常勤教員採用候補者選考(以下「非常勤教員選考」という。)の申込みをした。 都教委は,原告につき,平成23年度の再任用選考は不合格,非常勤教員選考は合格と判定し,平成24年1月20日,P2校長は,これを原告に伝えた。 - 3 -都教委は,原告を平成24年4月1日付けで非常勤教員として任用したが,再任用職員としては任用をしなかった(都教委が,平成23年度 月20日,P2校長は,これを原告に伝えた。 - 3 -都教委は,原告を平成24年4月1日付けで非常勤教員として任用したが,再任用職員としては任用をしなかった(都教委が,平成23年度の再任用選考において原告を不合格とし,平成24年4月1日付けで再任用職員として原告を再任用しなかった行為について,以下,「本件再任用不合格」という。)。 (弁論の全趣旨(被告答弁書p2ないし3))(4) 被告における再任用制度被告は,定年退職者の再任用に関して,地方公務員法28条の4(28条の5及び28条の6による準用も含む。)及び地方公務員法等の一部を改正する法律(平成11年法律第107号)に基づき職員を再任用する場合について必要な事項を定めるため,職員の再任用に関する条例を制定している(甲1,弁論の全趣旨)。同条例は,「再任用の任期の更新は,職員の当該更新直前の任期における勤務実績が良好である場合に行うことができるものとする。」(3条1項)と定めている(甲1)。また,再任用を行う場合及び再任用の任期の更新を行う場合の任期の末日は,その者が年齢65年に達する日以後における最初の3月31日以前でなければならない(4条)とされている(甲1)。 なお,再任用職員は,地方公務員法28条の4第1項,28条の5第1項又は28条の6第1,2項により任用される一般職の公務員であり,公立学校における再任用職員は,学校職員の定数に関する条例(昭和31年東京都条例第67号)に定める学校職員の定数(以下「条例定数」という。)に含まれるが,非常勤教員は地方公務員法3条3項3号の特別職の公務員であり,条例定数に含まれない(弁論の全趣旨(被告準備書面(1)p2))。 (5) 都教委による都立学校の職員の再任用の手続に関する定め等ア東京都教育 は地方公務員法3条3項3号の特別職の公務員であり,条例定数に含まれない(弁論の全趣旨(被告準備書面(1)p2))。 (5) 都教委による都立学校の職員の再任用の手続に関する定め等ア東京都教育庁(以下「教育庁」という。)人事部長が平成23年10月6日付けで発出した「平成23年度東京都公立学校再任用職員,再雇用職員(教育職員)及び非常勤教員採用候補者選考の実施について(通知)」 - 4 -(以下「選考実施通知」という。)には,次の定めがある(甲9)。 「2 選考対象者(1) 再任用職員定年年齢が60歳に定められている職にある者のうち,次のいずれかに該当する者です。・・・ア平成23年度定年退職者イ平成23年度再任用職員のうち,雇用期間の更新を希望する者(以下「再任用更新者」という。)」「3 申込方法等・・・(3) 関係書類の作成所属長は,申込者から提出された申込書をとりまとめ,次の書類を作成の上,期限までに所管の学校経営支援センター・支所へ提出して下さい。 ア推薦書の作成所属長は申込書の記載内容を確認し,申込者と面談を行った上で,推薦書を作成してください。」「4 面接の実施申込者の意欲及び意向を確認するために,面接を実施します。 (1) 対象者・・・イ所属における面接対象者(ア) 再任用申込者のうち,雇用期間の更新を希望する者・・・(2) 面接実施日・・・イ所属における面接平成23年11月下旬まで所属長は,面接の日時,場所を申込者に連絡し,書類提出期限 - 5 -に間に合うように面接を実施してください。 申込書と推薦書を参考にしながら,面接要領に基づいて面接を行い,面接の結果を評定票の評定欄に漏れなく記入してく 込者に連絡し,書類提出期限 - 5 -に間に合うように面接を実施してください。 申込書と推薦書を参考にしながら,面接要領に基づいて面接を行い,面接の結果を評定票の評定欄に漏れなく記入してください。」「5 選考関係書類の提出次の書類を提出期限までに提出してください。 ・・・(1) 提出日時・場所学校等→所管の学校経営支援センター・支所平成23年11月18日(金) ・・・(2) 提出書類・・・ア推薦書(東京都教育委員会による面接対象者分を除く。)イ評定票(所属面接対象者分)」「8 選考結果提出された書類の審査結果及び面接結果等を総合的に勘案し,平成24年1月末(予定)までに決定します。」イ都教委が,平成23年10月6日付けで定めた「平成24年度再任用教育職員の配置に関する方針」には,教諭等で再任用される者(教育職員)の配置について以下の定めがある(甲10)。 「1 基本的な考え方・・・(2) 配置に当っては,即戦力として知識及び経験を活用できるよう,定年前の職員と同様,退職までの間に従事していた職務を基本とする。 (3) ・・・都立学校に勤務する教育職員については,退職時の都立学校に配置することを原則とする。」「2 具体的な配置・・・(1) フルタイム勤務・・・ - 6 -イ都立学校に勤務する教育職員については,原則として退職時における都立学校に配置する。」ウ平成23年度再任用(教育職員)採用選考案内には,要旨,次のとおりの記載がある(甲10)。 「4 選考方法書類選考,面接により行います。 「6 面接の実施所管の教育委員会等において面接を実施します。なお,面接日につい の記載がある(甲10)。 「4 選考方法書類選考,面接により行います。 「6 面接の実施所管の教育委員会等において面接を実施します。なお,面接日については11月から12月上旬を予定していますが,詳細な日程等は所属を通じて後日通知します。 (6) 都教委が定めた「東京都立学校の管理運営に関する規則」(以下「管理運営規則」という。)には,要旨,次の定めがある(乙4)。 「7条(校長の職務)学校教育法第62条で準用する同法37条4項に規定する校長の職務は,おおむね次のとおりとする。 一学校教育の管理,所属職員の管理,学校施設の管理及び学校事務の管理に関すること。 二所属職員の職務上及び身分上の監督に関すること。 三各前号に規定するもののほか,職務上委任または命令された事項に関すること 2 校長は,所属職員に校務を分掌させることができる。」「12条の6(企画調整会議)学校に企画調整会議を置く。 2 企画調整会議は,校長の補助機関として,校務に関する企画立案及び連絡調整その他校長が必要と認める事項を取り扱う。 3 企画調整会議の構成員は,校長,副校長,経営企画室長(経営企画課 - 7 -長を置く学校にあっては経営企画課長),主幹教諭その他校長が必要と認めた者とする。 4 前3項に規定するもののほか,企画調整会議の組織及び運営について必要な事項は,校長が定める。 12条の7(職員会議)校長は,校務運営上必要と認めるときは,校長がつかさどる校務を補助させるため,職員会議を置くことができる。 2 職員会議は,次の各号に掲げる事項のうち,校長が必要と認めるものを取り扱う。 一校長が学校の管理運営に関する方針等を周知すること。 二校長が校務に関する決 ,職員会議を置くことができる。 2 職員会議は,次の各号に掲げる事項のうち,校長が必要と認めるものを取り扱う。 一校長が学校の管理運営に関する方針等を周知すること。 二校長が校務に関する決定等を行うに当たって,所属職員等の意見を聞くこと。 三校長が所属職員等相互の連絡を図ること。 3 職員会議は,校長が招集し,その運営を管理する。 4 前三項に掲げるもののほか,職員会議の組織及び運営について必要な事項は,校長が定める。」(7) P1高校の学校管理運営規程P1高校の校長決定にかかる「東京都立P1高等学校管理運営規程」(平成10年12月25日決定。平成18年4月1日改正のもの。以下「学校管理運営規程」という。)には次の定めがある(乙5)。 「第9 企画調整会議 1 目的企画調整会議は,校長の補助機関として,校長の学校運営方針に基づき,学校全体の業務に関する企画立案及び連絡調整,各分掌組織間の連絡調整,職員会議における議題の整理,その他校長が必要と認める事項を行い,円滑かつ効率的な学校運営を推進する。 2 構成員校長,副校長,経営企画室長,主幹,教務主任,生活指導 - 8 -主任,保健主任,進路指導主任,環境主任,各学年主任,各学科主任及び経営企画室各係長とする。」「第10 職員会議 1 目的職員会議は,校長の補助機関として,次に掲げる事項のうち,校長が必要と認めるものを取り扱う。 (1) 校長が学校の管理運営に関する方針等を周知すること。 (2) 校長が校務に関する決定等を行うに当たって,所属職員等の意見を聞くこと。 (3) 校長が所属職員等相互に連絡を図ること。 2 構成員常勤の教職員。ただし,校長が認めた場合は他の職員も参加できる。・・・ 8 運営(1) 報告,意見聴取及び連絡 見を聞くこと。 (3) 校長が所属職員等相互に連絡を図ること。 2 構成員常勤の教職員。ただし,校長が認めた場合は他の職員も参加できる。・・・ 8 運営(1) 報告,意見聴取及び連絡に関する事項は,企画調整会議を経た上,事前に資料を添付し副校長に提出する。 (2) 校長の意思決定に資するため,職員会議において,必要に応じて構成員の意向を聞くことはあるが,校長の意思決定を拘束するものではない。」「第12 人事分掌組織を構成する人事については,東京都教育委員会の権限に属するもののほかは,校長が定める。」(8) 都教委教育長が平成10年7月17日に都立学校長宛てに発出した「東京都公立学校の管理運営に関する規則の一部改正について(通達)」には,次の記載がある(甲25)。 「職員会議に関する事項・・・ 1 改正の趣旨第12条の6を新設した趣旨は,学校教育法第28条第3項において - 9 -「校長は校務をつかさどり,所属職員を監督する。」と定められており,校長がすべての校務について決定権を持つことから,職員会議はあくまでも校長の補助機関であり,このことを規則で確認的に規定することによって,職員会議の位置づけを明確にし,職員会議の運営の適正化を図るところにある。もとより,校長には,日頃から所属職員との円滑なコミュニケーションが求められており,校長は,職員会議が補助機関であることを踏まえた上で,職員会議の場を活用することなどにより,所属職員の建設的な考え方や意見を聞き,それを学校運営に生かすよう努める必要がある。」「3 解釈及び運用方針(1) 第12条の6第1項関係職員会議は校長の職務を補助するための機関であり,それ自体が決定権限を有するものではないことを明らかにしたものである。 職員会議におい 「3 解釈及び運用方針(1) 第12条の6第1項関係職員会議は校長の職務を補助するための機関であり,それ自体が決定権限を有するものではないことを明らかにしたものである。 職員会議において,人事や校内予算編成など,本来校長の責任において決定する事項に対して,不当に制約するような運営は許されない。 また,職員会議は意思決定機関ではないので,議決によって校長の意思決定権を拘束することはできない。・・・」 3 争点及びこれについての当事者の主張(1) 本件再任用不合格に国賠法上の違法性があるか(原告)原告は,特段の事由のない限り,65歳まで再任用を受けられる期待権を有しているところ,本件再任用不合格は,後記イのとおり手続に瑕疵があり,後記ウないしキのとおり合理的な理由がないもので,都教委が裁量権を逸脱,濫用して原告の期待権を侵害したものであるから,違法である。 ア再任用をされる期待権 - 10 -再任用制度は,公的年金における年金満額の支給開始年齢の引き上げに合わせて,満額支給が受けられる65歳まで定年退職職員の退職後の雇用,生活保障を目的として,平成13年4月に条例が制定され,導入されたものである。そのことは,再任用制度の根拠となった平成11年の地方公務員法等の改正において,「再任用制度は,高齢者が豊かな知識経験を生かすことを可能とする重要な制度であり,政府は,地方公共団体が公務における雇用機会の拡充に努めるよう支援すること」が附帯決議されていることからも明らかである。また,国家公務員法81条の4に関して,人事院事務総長通達平成11年10月25日管高-978号も,その旨明示している(甲37)。被告が労働組合に示した「新再任用制度の概要と再任用職員の勤務条件の整理」にも「再任用制度は,基本的には定 ,人事院事務総長通達平成11年10月25日管高-978号も,その旨明示している(甲37)。被告が労働組合に示した「新再任用制度の概要と再任用職員の勤務条件の整理」にも「再任用制度は,基本的には定年退職者等を65歳まで継続雇用するための制度である。」,更新は「高齢職員の勤務意欲・能力の変化が大きい」ことから「勤務実績やその者の健康状態等を判断し」「働く意欲と能力」を見極めるために行うとされている(甲3)。 そのため,再任用者は,適格性に欠ける等の特段の事由がない限り,5年間の再任用・更新が認められており,教職員において平成22年,23年とも申込者の96%以上が合格しており,65歳までの継続任用が常態となっている(甲27,28の1ないし3)。再任用できない特段の事情がない限り,再任用者には再任用の更新をされる正当な期待権がある。 イ再任用選考のための面接が実施されていないこと(手続の瑕疵)(ア) 選考実施通知には,再任用選考においては所属長が「面接要領」(乙9。再任用(教育職員)採用選考面接要領。以下「面接要領」という。)に基づいて面接を行い再任用(教育職員)評定票(以下「面接評定票」という。)を作成する旨定められているのに,原告に対しては面接要領に基づく面接が実施されていない。 P2校長は,平成24年1月25日の原告との話合いの際,面接を実 - 11 -施しなかったのは自分のミスである旨述べ,原告について再任用選考のための面接を実施していないとの認識を示していた。 9月27日面接は,業績評価の中間申告にともなう面接であり,面接要領によって必要とされる手続は実施されていなかった。すなわち,面接要領では,申込者に対して採用面接であることを伝えること,再任用選考の申込書及び推薦書を参考にしながら面接を実施すること,現在の職務 領によって必要とされる手続は実施されていなかった。すなわち,面接要領では,申込者に対して採用面接であることを伝えること,再任用選考の申込書及び推薦書を参考にしながら面接を実施すること,現在の職務に関する質問を1つ以上すること,希望する職場に就けなかった場合の意向等を確認すること,面接評定の項目について確認すること等が定められているが,9月27日面接は,原告に対し採用面接であることは伝えられておらず,再任用選考の申込書及び推薦書を参考にした面接でもなく,現在の職務に関する質問はなされておらず,希望する職場に就けなかった場合の意向等は質問されておらず,面接評定の項目についての確認もなかった。 (イ) 再任用(教育職員)採用選考推薦書(以下「推薦書」という。)の記入要領(乙11。以下「推薦書記入要領」という。)によれば,推薦書作成のための面接を実施する必要があるが,その面接も実施されていない。 (ウ) 原告について作成された面接評定票(乙7の1・2,以下「本件面接評定票」という。)は,個別の評定項目の全てが「B(良好)」なのに,総合評定のみ「C」とされているところ,P2校長は,原告に対して面接の評定項目について具体的質問をしていないのであるから「C」としたことには何らの根拠もない。また,面接評定票の作成基準日は,面接をしたという平成23年9月27日とすべきであり,また,推薦書の作成基準日は,記入要領のとおり同年10月1日としなければならないが,P2校長が後記ウ(ア)(エ)のとおり基準日以降の勤務状況を考慮していることは違法である。 - 12 -(エ) 被告は,面接の実施方法は昨年と同様であるから瑕疵はない旨主張するが,再任用選考を不合格とするのであれば再任用選考手続としての面接は厳格に行うべきであり,合格とされた昨年と同様 12 -(エ) 被告は,面接の実施方法は昨年と同様であるから瑕疵はない旨主張するが,再任用選考を不合格とするのであれば再任用選考手続としての面接は厳格に行うべきであり,合格とされた昨年と同様であるという理由で手続を緩和することはできない。行政行為における行政庁の実体判断は,裁量権問題として尊重されるとしても,行政行為の手続については,その公正を担保するため司法的統制を及ぼすことが求められている。 判断形成過程においても,本来最も重視すべき諸要素,諸価値を不当,安易に軽視すること,当然尽くすべき配慮を尽くさないこと,本来考慮にいれるべきでない事項を考慮にいれること,過大に評価すべきでない事項を過大に評価することといった基準によって,裁量判断の方法ないし過程に誤りがあるときは違法となる。 ウ推薦書の評価の根拠となった事実は存在しないこと原告について作成された推薦書(乙6,以下「本件推薦書」という。)において,原告を「現任校に配置できない」「学校運営に協力的ではない」とした具体的理由としてP2校長が考慮した事実はいずれも存在しない。 (ア) 原告は平成23年度の分掌希望調査に関与していないこと分掌希望調査は,校長の人事決定が教職員の希望と齟齬がないようにするため,教職員全体の中で係を決め,全教職員の次年度の分掌についての希望を調査するものである。分掌希望調査の結果を受け取るか否かの取扱いは管理職の判断に委ねられているから,分掌希望調査は学校運営を阻害するようなものではない。その上,原告は,平成23年度は分掌希望調査の係になっておらず,アンケートの作成,配付,集計にも,管理職への結果の提供にも関わっておらず,P2校長に分掌希望調査の結果を持参していないし,何らかの申入れをした事実もない。原告が分掌希望調査に中心となって関与し ,アンケートの作成,配付,集計にも,管理職への結果の提供にも関わっておらず,P2校長に分掌希望調査の結果を持参していないし,何らかの申入れをした事実もない。原告が分掌希望調査に中心となって関与したというのは,P2校長の憶測に過ぎない。 - 13 -平成24年1月31日の職員会議で,P2校長は,原告の再任用不合格の理由に関し,分掌希望調査を持参したことが一番大きな問題である旨述べて,他の教職員らからその間違いを指摘されており,P2校長が事実誤認に基づいて原告の評価をしたことは明白である。 (イ) 海外修学旅行について学校運営を混乱させていないこと都教委は,海外修学旅行実施の条件としてこれを3年間継続することを求めている。そのため,平成23年6月22日の職員会議において修学旅行の実施学年である1学年の教職員から海外修学旅行実施の提案がされた際,その意義,費用,企画,治安,保護者の了解等のほか,海外修学旅行を3年間継続できるかも問題となり,教職員全体の合意形成が必要となった。さらに,保護者や旅行業者との関係からは,同年9月上旬までには決定する必要があった。そこで,同年7月6日,同月15日,同年9月1日の職員会議の後,教職員全員に対する海外修学旅行についてのアンケートが実施され,その結果を受けて同月14日の臨時職員会議が開催され,P2校長の最終決定がその場で行われた。原告は,同年7月15日の職員会議において,「これだけ逼迫してくれば,賛否を含めたアンケートをとるくらいでなければまとまらない。」旨の発言をしたが,アンケートは,実施学年を含めた教職員の間で意見集約の必要性が認識された結果実施されたのであり,原告の発言は何ら学校運営を混乱させるものではなかった。 P2校長が同年9月1日の職員会議において海外修学旅行の実施を決 学年を含めた教職員の間で意見集約の必要性が認識された結果実施されたのであり,原告の発言は何ら学校運営を混乱させるものではなかった。 P2校長が同年9月1日の職員会議において海外修学旅行の実施を決定しようとしてできなかったのは,原告以外の教員から発言が続いたことによるのであり,原告の発言によるのではない。また,アンケートは,1学年の教員が提案しP2校長の了解の下で実施したもので,その結果をP2校長は積極的に評価していた。 (ウ) 50周年記念行事 - 14 -平成23年6月22日の職員会議において,P2校長から,P1高校の50周年記念行事の日時,場所,内容及び実行委員会の立ち上げが初めて文書で報告された。原告は,示された日程が文化祭とインターンシップに挟まれた時期であったため,日程への不安を指摘し,日程案について関係部署との調整が必要である旨の発言をしたが,50周年記念行事に反対する発言や,アンケートを実施すべきである旨の発言はしていない。原告の発言に対し,P2校長が,企画調整会議で話し合った旨述べたので,原告は,「学校行事は少人数のところだけで進められるものではない。」旨発言したところ,他の教員からも原告と同様の指摘があった。これを受けて,P2校長は,日程の理由について説明し,同年7月6日の職員会議では行事予定表が配布されたのであり,原告の発言により,学校運営には何ら支障は生じていない。 (エ) P2校長の陳述書で追加された理由a 公募制人事職員会議で,原告は,P1高校の機械科の主幹・主任の教諭の公募をするについては,機械科の教員との相談が必要ではなかったか旨発言をしたのであって,P1高校の教員の他校の教員への応募について明らかにするよう発言したことはない。 b 業務・服務監察平成23年1 ついては,機械科の教員との相談が必要ではなかったか旨発言をしたのであって,P1高校の教員の他校の教員への応募について明らかにするよう発言したことはない。 b 業務・服務監察平成23年10月26日の職員会議において,P2校長から,都教委の業務・服務監察において,教員が部活動等の費用の立替払をすることには問題があるとの指導がされたことが報告されたため,原告は,5月の予算確定前から活動を行う必要がある生徒会の費用等について,今後どのようにしたらよいかという質問をしたのであり,都教委の業務・服務監察の指導に反対したわけではない。 c ストライキ - 15 -P3労働組合連合会(以下「P3」という。)のストライキの際,原告は,P2校長に対し,P4組合(以下「P4」という。)P5分会の会員として同分会の要望を申し入れたが,P2校長は要望には応じないと答え,それ以上のやりとりはなかった。組合活動を個人の評価の問題とすることは不当労働行為であり許されない。 エ 「学校運営に非協力的」との評価が不公正であること前記2(8)の通達のとおり,校長は,職員会議の場を活用することなどにより所属職員の建設的な考え方や意見を聞き,それを学校運営に生かすよう努める必要があるとされているところ,原告の職員会議での意見は,前記ウ(イ)(ウ)(エ)abのとおり建設的な意見であって,学校運営を混乱させるような意見ではないから,このような意見を述べることを学校運営の妨害として敵視することは許されない。 また,前記ウ(イ)(ウ)の職員会議での原告の発言について,9月27日面接においてはP2校長から何らの指導もされず,「人事構想外」との通告もされず,その他の場でも,P2校長から原告に対し,学校運営に非協力的であるといった指導がされたことはなかった ついて,9月27日面接においてはP2校長から何らの指導もされず,「人事構想外」との通告もされず,その他の場でも,P2校長から原告に対し,学校運営に非協力的であるといった指導がされたことはなかった。また,平成22年度と平成23年度の学校運営にかかわる原告の評価は「B」であった。消極的な評価の根拠となる事項は,指導を要する事項であるから,評価権者がこれを認識しながら指導の対象としていない場合は,格別の指導の必要がない事項であったと推認するのが相当であり,評価権者が指導もしていないのに,消極的な評価の根拠とすることは許されないというべきである。 さらに,評価権者から指導がされていれば,本人の弁明により,前記ウのとおり事実誤認が明らかになったはずである。P2校長の内心にある個人の専断が,原告に秘匿されたまま,何ら検証されることなく,再任用の不合格の理由となるのは不公正である。 オ再任用中の原告の勤務成績が優良であること - 16 -原告の平成22年度の業績評価は,学習指導「B」,生活指導・進路指導「B」,学校運営「A」,特別活動・その他「A」,総合は「B」であり,平成23年度の業績評価は,学習指導「B」,生活指導・進路指導「B」,学校運営「B」,特別活動・その他「A」,総合は「B」であり,いずれも良好な勤務成績をあげていた。 P2校長は,本件面接評定票や本件推薦書で「B」とした評価項目に関し,原告は仕事については特に問題がないが,学校運営に批判的であるという理由でBとしたと証言しており,教職員として十分な勤務実績があったことを認めている。P2校長は,原告が指導した生徒総会について校内誌において高く評価し(甲19),生徒会主催の行事について,授業や入学試験等に配慮しつつ生徒を指導して大成功を収めたと証言した。 原告が不合格 ている。P2校長は,原告が指導した生徒総会について校内誌において高く評価し(甲19),生徒会主催の行事について,授業や入学試験等に配慮しつつ生徒を指導して大成功を収めたと証言した。 原告が不合格となったのち,原告の職場の同僚の職員56名中54名が,「原告は,教科指導,生活指導とも卓越した手腕と見識をもち,P1高校にとってなくてはならない存在であり,原告の再任用の更新についての再選考を要望する。」旨の署名を提出している(甲18)。また,同僚の職員に実施したアンケートには,原告が生徒指導や教科指導等において多大な貢献をしており,生徒会行事の成功には原告の力が必要であること,教科(  ○  )指導に熱心であること等が綴られている(甲17)。生徒からも, ○ の学習と生徒会活動等に関する原告の熱心な指導ぶりについて陳述書が提出されている(甲41)。このように,原告の勤務成績が優れていたことは明らかである。 カ再任用選考の判定方式が不公正であること教育庁人事部選考課長(当時)であるP6(以下「P6課長」という。)の陳述書(乙13)には,①推薦書の総合評定,②面接評定票の総合評定,③平成22年度の業績評価,④その他(健康状況,服務事故等)を基に判定するとしつつ,原告については①②を数値に換算した点数が基準に達し - 17 -ないため不合格になった旨の記載がある。 P2校長は,原告について②本件面接評定票で「採用してもよい」というC評価をし,①本件推薦書でも同様の判断であった旨証言しているのに,①②を数値に換算した点数で不合格になった理由は明らかではなく,判定方式が不合理である。また,本人開示がされ不服申立ての制度がある③平成22年度の業績評価が考慮されることなく,校長以外の検証がされない①②のみで不合格にする判定方法は公正と 由は明らかではなく,判定方式が不合理である。また,本人開示がされ不服申立ての制度がある③平成22年度の業績評価が考慮されることなく,校長以外の検証がされない①②のみで不合格にする判定方法は公正とはいえない。原告について,③と①②は相当乖離があるのに,都教委では何らこれを問題視していないことも不公正である。 キ現任校に配置できないという理由で再任用を拒否されるいわれはないこと推薦書における現任校に配置できるか否かの評価は,教職員の成績評価に関わる項目ではないから,現任校に配置できないとの評価によって再任用を拒否されるいわれはない。再任用教職員の配置に関する方針は,再任用された教職員の配置についての方針であり,再任用の合格の判断基準ではないのであるから,校長が他校への配置を要望したことで再任用不合格とすることは許されない。 (被告)以下のとおり,本件再任用不合格に関しては,手続に瑕疵はなく,合理的な理由があり都教委の裁量権の範囲内で行われたもので,期待権侵害はないから,何らの違法性もない。 ア期待権の侵害はないこと再任用職員の任期は1年であり,任期の更新も各年度における任用はいずれも新たな採用であって,職員の当該更新直前の任期における勤務実績が良好であることを前提として(地方公務員法28条の4第1項,職員の再任用に関する条例3条1項),任命権者たる都教委の広範な裁量に基づ - 18 -いて行われるものであり,都教委には,再任用職員の任期の更新をしなければならない法律上の義務はない。 各年度の採用選考においては,更新直前の任期における勤務成績が良好であるか等の実質的選考が毎回行われるのであって,その前後において身分の連続性はなく,65歳まで更新されるのが原則ということはない。再任用選考の申込者には採用さ 更新直前の任期における勤務成績が良好であるか等の実質的選考が毎回行われるのであって,その前後において身分の連続性はなく,65歳まで更新されるのが原則ということはない。再任用選考の申込者には採用される法的権利が与えられているものではなく,再任用が更新されるとの期待は事実上のものにとどまり,法的保護に値する期待権は存しない。 イ手続の瑕疵はないこと-再任用選考の面接についてP2校長は,中間申告の9月27日面接において,再任用選考の採用面接を兼ねて実施しているから手続の瑕疵はない。9月27日面接において,P2校長は,原告に対し,異動を希望しないこと,すなわち次年度もP1高校で再任用として勤務したいと希望していることを確認しており,再任用選考の採用面接の際に必要な申込者の意欲及び意向の確認をした。P1高校では,平成22年度の再任用選考においても,再任用選考の採用面接と中間申告の面接を併せて行ったが,原告を含め,再任用職員から何らの苦情もなかった。平成24年1月25日の原告との話合いの際,P2校長が,「面接を実施しなかったのは自分のミスである。」旨述べた事実はなく,「再任用選考のみの面接を行う必要があるならば,それを行っていないことは自分のミスということになる。」旨述べたに過ぎない。 ウ本件再任用不合格の理由(ア) 平成23年度の再任用選考の判断基準の骨子は,①推薦書の総合評定,②面接評定票の総合評定,③平成22年度の業績評価,④その他(健康状態,服務事故等)の4項目のうち,まず,①②の評定結果を数値に換算し,総合点で一定の点数以上であり,かつ,個別評価に下位評定がある場合等の一定の要件に該当しない者を合格とし,再任用職員として - 19 -任期中に懲戒処分を受けた者及び再任用職員として業務に従事するのに困難な健康状況 あり,かつ,個別評価に下位評定がある場合等の一定の要件に該当しない者を合格とし,再任用職員として - 19 -任期中に懲戒処分を受けた者及び再任用職員として業務に従事するのに困難な健康状況にある者については個別に合否を判断している(乙13)。原告は,①②の評定結果を数値に換算した総合点が合格点に達していなかったため不合格となった。①本件推薦書の総合評定はC(もう一歩),②本件面接評定票の総合評定はC(採用してもよい)であり,いずれも積極評価ではない。 (イ) 都立学校に勤務する再任用教員については,平成24年度再任用教育職員の配置に関する方針のとおり,原則として退職時に所属している都立学校に配置する(現任校配置)。これは,再任用教員は条例定数に含まれること,再任用教員はそれぞれの担当教科の指導を行うところ,再任用教員の選考が行われる1月ころには,正規教員の異動配置先が決まっていることから,再任用選考合格者の配置先を確保するためには現任校配置とするのが適切であるからである。原告については,推薦書に「現任校に配置すべきではない」旨評価されていることから,再任用について不合格となったものである。 エ推薦書及び面接評定票の評価の理由P2校長が,原告につき本件推薦書及び本件面接評定票のとおり評価し,原告を現任校に配置できないと評価した具体的な理由は,次のとおり,原告に円滑な学校運営に支障を来たす言動があったためである。 (ア) 分掌希望調査平成23年10月下旬ころ,原告は,職員団体の分会長とともに校長室を訪れ,P2校長に対し,平成24年度の人事異動に関して,職員の意向を踏まえ残留希望の職員を残留させて欲しい旨の申出を行った。また,その際,原告は,「職員団体で行っている分掌希望調査を後ほど持参しますのでよろしく。」等とい 成24年度の人事異動に関して,職員の意向を踏まえ残留希望の職員を残留させて欲しい旨の申出を行った。また,その際,原告は,「職員団体で行っている分掌希望調査を後ほど持参しますのでよろしく。」等といった発言をした。P2校長は,原告に対し,「それは禁止されています,駄目です。」旨告げた。平成23年 - 20 -12月8日,原告以外の教諭が,P2校長のところに分掌希望調査の結果を持参したので,P2校長は受け取ることはできないと述べて受け取らなかった。平成24年1月18日の職員会議終了後,原告は,他の教諭とともに校長室を訪れ,P7副校長同席の下,P2校長に対し,異動事務に関する要望等を述べた後に,「平成24年度の副担任,分掌についても,また機会を改めて来たい。」等と述べた。P2校長は,これまでの経過を踏まえて,「分掌に対する調査,集計はだめですよ。」と改めて伝え,平成24年度の校務分掌や副担任等の校内人事についての申入れを受けるつもりはない旨を告げた。 校務の分掌に関する決定は校務をつかさどる校長の権限であり(学校教育法37条4項,62条),都教委の管理運営規則7条2項,P1高校の学校管理運営規程にも,その旨明記されている。これらの定めは,過去に多くの都立学校において,職員会議で選出した人事委員で構成される人事委員会が校務分掌構成案等を作成して職員会議で決定し,校長がこれを追認せざるを得ないといった校長の人事権の実質的侵害が行われていたことから,これを是正し学校運営を適正化するための取組みである。分掌希望調査を実施してその結果を校長に提出することは,校長の人事権に対し不当な影響を与えようとする行為であるから,学校運営の適正化に真っ向から反する行動である。 (イ) 海外修学旅行平成23年6月,平成25年度の修学旅行の実施学年であ ることは,校長の人事権に対し不当な影響を与えようとする行為であるから,学校運営の適正化に真っ向から反する行動である。 (イ) 海外修学旅行平成23年6月,平成25年度の修学旅行の実施学年である1学年の教職員が,海外修学旅行を実施することについて提案を行い,平成23年6月22日,同年7月6日,同月15日,同年9月1日の職員会議において詳細な説明を行い,同日の職員会議においてP2校長がいったんは海外修学旅行を実施することを決定した。それにもかかわらず,原告は,同日の職員会議において,海外修学旅行の実施について全教職員に - 21 -対して賛否を含めたアンケートをとるべきである等と発言した。原告の発言は,実施学年の教職員の検討調整を無視し,校長が校務全般の最終的な決定権者であることを理解しないものであった。 これにより,アンケートが実施されることになり,同年9月14日に臨時職員会議を開かざるを得なくなり,学校における円滑な意思決定が阻害された。 (ウ) 50周年記念行事P2校長は,平成23年5月下旬の企画調整会議において,P1高校の50周年記念式典の実施について各分掌から意見を徴集するよう提案し,同年6月8日の職員会議においても,各分掌を通じて職員からの意見を企画調整会議に上げるよう教員に伝えた。その後,2回ほど企画調整会議を経て,同月22日の職員会議において,P2校長が,企画調整会議での検討を経たP1高校の50周年記念式典の内容,日時について報告したところ,原告は,50周年の記念誌は,「提出しても都教委が修正したりするので意味がない。」,「記念誌の発行や記念式典の日時については,職員会議で採決できないのだから,賛否を含めたアンケートをとるべきだ。」,「企画調整会議で,少人数で決めている。」等の発言を行った。 原告 味がない。」,「記念誌の発行や記念式典の日時については,職員会議で採決できないのだから,賛否を含めたアンケートをとるべきだ。」,「企画調整会議で,少人数で決めている。」等の発言を行った。 原告の発言は,企画調整会議で検討を経て決定された校務の方針について異議を唱え,いたずらに校務の運営を阻害するものであり,校長の学校運営方針に基づき,企画調整会議で連絡調整を図りつつ,学校運営を組織的機動的に推進するという都立学校の学校運営方法についての理解を欠いたものであり,学校運営上不適切であった。 (エ) その他a 公募制人事平成23年10月12日の職員会議において,既に同年9月末に終 - 22 -了していた東京都立学校教員公募制人事における主幹教諭及び主任教諭の公募について,原告は,校長から本校の公募に対し事前に報告がなかったが,誰が対象なのかなどを職員会議で報告すべきだった等と発言した。 都立高校においてどの教科で教員を公募するかは,学校運営の総合的見地に基づいて校長が判断する事項である。また,他校から教員を公募する場合には,公募対象教科の教員が転出することになることが多いから,他校からの公募状況を明らかにすることは,当該高校からどの教員が転出することになるのか(どの教員が他校への公募を希望しているのか)に直結し,個人のプライバシーに関わる。 原告の発言は個人のプライバシーを損ない,管理職の職務権限を侵すもので,不適切であった。 b 業務・服務監察平成23年10月21日,教育庁の業務・服務監察があり,生徒会会計における部活動大会参加費について,教員が立替払を行っていることについて問題があるので改善するよう指導があった。同月26日の職員会議において,経営企画室長から,上記指導事項について周知し,再発 会計における部活動大会参加費について,教員が立替払を行っていることについて問題があるので改善するよう指導があった。同月26日の職員会議において,経営企画室長から,上記指導事項について周知し,再発防止策等を説明したところ,原告は,立替払を認めてくれなかったら学校行事や生徒会活動ができない等と発言し,業務・服務監察の指導に反対する意見を述べた。 c ストライキ平成23年11月15日,P3が1時間のストライキを実施する予定であったところ,同月11日,原告は,他の教員とともに校長室を訪れ,P2校長に対し,ストライキがあった場合,同月15日の朝は慣例により参加者について29分の遅参にするようお願いします等と述べた。P2校長は,ストライキは禁止されており,虚偽報告をする - 23 -ことは絶対にできないと伝えた。 原告の上記発言は,違法なストライキが実施されることを前提として,P2校長に対し,給与が減額されないよう29分の遅参という虚偽報告をするよう求めたもので,公務員としての服務規律を遵守する基本姿勢を欠くものであった。 オ本件推薦書の評価が合理的であること前記エのとおり,原告は,企画調整会議を中心とした都立学校の学校運営について反対の意思を有していることを示す言動を繰り返しており,原告を現任校に配置した場合には,円滑な学校運営に支障があった。P2校長は,原告に対し,9月27日面接において,人事構想外であるとの伝達はしなかったが,自己申告の中間面接で人事構想外であるとの伝達を行うのは定年前の職員についてであり,再任用職員にはそのようなルールはない。 カ原告の勤務成績教育職員人事考課制度における業績評価は,対象期間中における教育職員の職務遂行上の業績を評価するもので,業績評価における評価と再任用選考 職員にはそのようなルールはない。 カ原告の勤務成績教育職員人事考課制度における業績評価は,対象期間中における教育職員の職務遂行上の業績を評価するもので,業績評価における評価と再任用選考における推薦書や面接評定票の評価が一致するとは限らない。 (2) 原告の損害額(原告)ア経済的損害 150万円再任用職員に対する報酬は,①給与表,②教職調整額,③地域手当,④義務教育等教員特別手当,⑤期末・勤勉手当の年額合計460万3244円であるのに対し,非常勤教員のそれは,①第一種報酬,②特別支給の年金の合計406万6800円であり,年額53万6444円の差額が生じる。また,再任用職員のうちフルタイム職員は,非常勤教員より,有給休暇日数,病気休暇の可否等において優遇されており,担任業務も行うこと - 24 -ができる。 原告は,本件再任用不合格により,65歳までの3年間,再任用の更新をされる資格を失い,年額50万円の損害を3年間被った。 イ精神的損害本件再任用不合格により原告の名誉は著しく傷つけられた。また,原告は,P1高校での教育実践を大切にしており,再任用期間においてその集大成を目指していた。原告は,P1高校での生活指導部の教育活動及び他の担任教諭の負担軽減について意欲をもって検討していたところ,本件再任用不合格の通告を受け,多大な衝撃を受けた。 本件再任用不合格による原告の精神的損害は,300万円を下回ることはない。 (被告)再任用職員と非常勤教員の報酬額,フルタイムの再任用職員が担任業務を行うことができること,非常勤教員と労働条件が異なることは認めるが,損害額は全て争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)について-本件再任用不合格に国賠法上の違法性があるか(1) 認定事実後掲各 できること,非常勤教員と労働条件が異なることは認めるが,損害額は全て争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)について-本件再任用不合格に国賠法上の違法性があるか(1) 認定事実後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の各事実が認められる。 ア東京都における定年退職後の教職員の再任用の制度(ア) 東京都は,平成13年,地方公務員法等の一部を改正する法律(平成11年法律第107号)及び地方公務員法28条の4等に基づき,職員の再任用に関する条例を制定し,定年等によりいったん退職した一般職の地方公務員を,1年を超えない範囲内で任期を定め,常時勤務を要する職(地方公務員法28条の4)又は短時間勤務の職(同法28条の5)に再任用する制度を導入し,平成14年度から任用を開始した(甲 - 25 -1ないし3,弁論の全趣旨(被告準備書面(1)p2))。平成13年6月,東京都総務局人事部及び教育庁人事部が再任用制度の導入の説明のため作成した「都における再任用制度の導入(概要)」には,「本格的な少子・高齢社会に対応した高齢者雇用のあり方について,『高齢者の知識・経験の活用』と,公的年金(公務員においては,退職共済年金)におけるいわゆる『満額年金』の支給開始年齢の引上げに合わせて60歳台前半を『雇用と年金の連携』により支えることが国民全体の問題となっている。都においても,これらの問題に対処するため,これまで以上に退職職員の知識・経験の本格的な活用が必要となる。その退職職員の活用にあたっては,(1)団塊の世代が退職を迎え,若年労働者層が減少していく中で,都の組織活力を維持していくために,職場実態を踏まえ,退職職員の知識・経験を即戦力として活用することにより,都民サービスの向上等行政の効率的運営を図る。(2)退職職員の生活設計の選択肢 していく中で,都の組織活力を維持していくために,職場実態を踏まえ,退職職員の知識・経験を即戦力として活用することにより,都民サービスの向上等行政の効率的運営を図る。(2)退職職員の生活設計の選択肢の一つとして,都が雇用主の立場から,年金制度の改正に合わせて,公務部門における再任用の機会を設定し,高齢職員に雇用機会を提供する,という基本的考えに基づき,・・・平成13年度から再任用制度を導入することとした。」旨記載されている(甲3)。 (イ) 職員の再任用に関する条例によれば,再任用を行うことができるのは,20年以上勤続して退職した者であって当該退職の日の翌日から起算して5年を経過する日までの間にある者(2条1号)又はこれに該当する者として再任用をされたことがある者であり(同条2号),再任用の任期の更新は,職員の当該更新直前の任期における勤務実績が良好である場合に行うことができる(3条1項)とされている(甲1)。 (ウ) 都教委では,再任用制度とは別に,平成19年度から公立学校に勤務する教員について非常勤教員の制度を導入し,平成20年度からその任用を開始しており,定年退職者等を対象とした選考を行っている。 - 26 -公立学校における再任用職員は,学校職員の定数に関する条例(昭和31年東京都条例第67号)に定める学校職員の定数(条例定数)に含まれるが,非常勤教員は地方公務員法3条3項3号の特別職の公務員であり,条例定数に含まれない。 (弁論の全趣旨(被告準備書面(1)p2)(エ) 再任用職員は,学校職員の定数(条例定数)に含まれているとおり,定年前(現役職員)と同様の本格的な職務に従事することが予定されている(甲2)。すなわち,再任用職員の教員については,学校で,児童・生徒に対する学習指導,生活指導等に当たるとともに, ているとおり,定年前(現役職員)と同様の本格的な職務に従事することが予定されている(甲2)。すなわち,再任用職員の教員については,学校で,児童・生徒に対する学習指導,生活指導等に当たるとともに,校務分掌等も行う正規任用の職員としての職務に従事し,フルタイム勤務のときは学級担任となることもある(甲2,3,弁論の全趣旨(被告準備書面(1)p3~5))。 他方,非常勤教員は,再任用職員のような定年前と同様の本格的な職務に従事することはないが,本人の希望を踏まえて,選考により条例定数外の非常勤教員に任用し,学校現場に配置するもので,都教委は,再任用職員と非常勤教員との併願を認め,併願の場合には,第1志望が再任用職員,第2志望が非常勤教員と扱っている(甲11,弁論の全趣旨(被告準備書面(1)p6))。 (オ) 教職員の再任用の合格者は,平成21年度は申込者523名のうち485名(合格率92.7%),平成22年度は申込者698名のうち670名(同96.0%),平成23年度は申込者777名のうち751名(同96.7%)となっている(甲27,38)。 イ平成24年度の都教委による再任用選考の手続平成24年度の再任用選考について,教育庁人事部長は,平成23年10月6日,都立高校長等に対し,前記第2の2(5)アの選考実施通知を発出した(甲9)。選考実施通知等によれば,原告のような平成23年度再任 - 27 -用職員で雇用期間の更新を希望する者(以下「再任用更新者」という。)についての再任用選考の手続は,次のとおりであった(甲9,乙9,11,13)。 (ア) 再任用更新者は,再任用(教育職員)採用選考申込書(以下「申込書」という。)に必要事項を記入し,所属長に提出する。非常勤教員を併せて申し込む場合は,「非常勤教員採用選考申込書」 13)。 (ア) 再任用更新者は,再任用(教育職員)採用選考申込書(以下「申込書」という。)に必要事項を記入し,所属長に提出する。非常勤教員を併せて申し込む場合は,「非常勤教員採用選考申込書」も併せて提出する(甲9)。 (イ) 所属長は,申込書の記載内容を確認し,平成23年10月28日までに,所管の学校経営支援センター・支所に提出する(甲9)。 (ウ) 申込者の意欲及び意向を確認するため面接を行い,再任用更新者については,申込者の所属において平成23年11月下旬までに面接を実施する(これに対し,平成23年度定年退職者やこれに準ずる者等については,都教委において面接を実施する。甲9)。所属長は,面接の日時場所を申込者に連絡し,都教委が作成した面接要領に基づいて面接を実施し,面接の結果に基づき,面接評定票及び推薦書の各評定欄を作成する(甲9)。所属長は,同月18日までに推薦書及び面接評定票を所管の学校経営支援センター・支所に提出する(甲9)。 なお,面接要領によれば,面接委員は,面接において,申込書及び推薦書を参考にして,再任用職員を希望する動機,仕事に対する意欲,年収逆転についての認識,現在の職務に関する知識等,希望する職場,職務内容及びその理由,希望する職場や希望職務に就けなかった場合の意向や対応,職場,職務内容における被面接者の特殊事情の有無等について質問すること,現在の職務に関する質問(知識等)を必ず1つ以上質問すること,評定項目について確認することとされ,そして,その評定項目は,「職務遂行力」,「積極性」,「勤勉性」,「健康状態」であり,評定基準としては,質問事項の回答をもとに,A,B,C,Dの4 - 28 -段階による絶対評価を行うこととされていた(乙9)。また,面接に当たっての注意事項として,面接委員は,あ 態」であり,評定基準としては,質問事項の回答をもとに,A,B,C,Dの4 - 28 -段階による絶対評価を行うこととされていた(乙9)。また,面接に当たっての注意事項として,面接委員は,あくまでも採用面接であることを被面接者に十分理解させたうえで実施することとされていた(乙9)。 また,都教委が作成した推薦書記入要領によれば,申込書を基に,本人と面談した上で所属学校長が記入すること,面談に際しては,本人と十分に話し合うことにより,お互いの意思疎通を図るとともに,本人の適性や意向等をより正確に把握するように努めること,作成基準日は平成23年10月1日とし,推薦項目欄については,再任用職員が定年前の職員と同質の職務内容を求められ,定年前の職員と同等の働きを期待されていること等を考慮し,「業績」「能力」「態度」の各要素について厳しく判定すること等とされていた(乙11)。 (エ) 平成23年12月から平成24年1月中旬までに,選考課で合否の判定作業を行い,教育庁人事部長が選考の合否を決定する(乙13)。 選考では,選考資料である申込書,推薦書,面接評定票及び申込者の過去の業績評価や懲戒処分歴等を含めて総合的に勘案する(乙13)。その骨子は,①推薦書の総合評定,②面接評定票の総合評定,③平成22年度の業績評価,④その他(健康状況,服務事故等)の4項目を判定項目とし,①②を数値に換算し,総合点で一定の点数以上の者を合格とするものであった(乙13)。ただし,個別評価で下位評価がある場合等は点数にかかわらず不合格とし,再任用職員として任期中に懲戒処分を受けた者については個別に判断することとされていた(乙13)。 (オ) 選考結果は,平成24年1月19日に人事部長名で各校長あてに通知され,同日以降に校長より申込者に通知する(乙13)。 ウ 分を受けた者については個別に判断することとされていた(乙13)。 (オ) 選考結果は,平成24年1月19日に人事部長名で各校長あてに通知され,同日以降に校長より申込者に通知する(乙13)。 ウ本件再任用不合格(ア) 原告は,昭和51年から東京都立高校の ○ の教員(一般職の地方公務員)として勤務し,平成22年3月31日定年により退職した - 29 -者であり,同年4月1日,同日から平成23年3月31日までを任用期間として東京都公立学校教員に再任用され,同年4月1日,同日から平成24年3月31日までを任用期間として再任用(任期の更新)された(甲42,弁論の全趣旨)。原告は,再任用期間中,前記第2の2(5)イの「平成24年度再任用教育職員の配置に関する方針」(以下「再任用教育職員の配置に関する方針」ということがある。)に基づき,定年退職時に所属していたP1高校に配置された(甲10)。P1高校の校長は,平成22年度がP8校長であり,平成23年度がP2校長であった(甲15,16)。 (イ) 原告は,平成23年10月下旬,平成23年度の東京都公立学校の再任用選考及び非常勤教員選考の申込みをしたところ(乙2,3),都教委は,原告につき,再任用選考は不合格,非常勤教員選考は合格と判定し,平成24年1月20日,P2校長は,これを原告に伝えた。平成21年度及び平成22年度と再任用選考に合格していた原告は,その結果に驚き,理由をP2校長に尋ねたところ,同校長は,「併願だからではないか,都教委に問い合わせる。」などと答えた。原告は,その後,再任用選考手続等についてP4に問い合わせるなどした上で,平成24年1月25日,P2校長に対し,再任用選考のための面接が実施されていないことを指摘したところ,P2校長は,「面接をしなかったのは自分のミ 用選考手続等についてP4に問い合わせるなどした上で,平成24年1月25日,P2校長に対し,再任用選考のための面接が実施されていないことを指摘したところ,P2校長は,「面接をしなかったのは自分のミスである。」旨の説明をした。原告は,P2校長に対し,再任用選考面接が実施されていないことにより,同選考には重大な瑕疵があり,選考結果は無効であって再選考の実施を要望する旨の書面(甲12)を都教委に持参することを求め,同校長はこれを了承した。P2校長は,翌日,都教委に出向き,その後,原告に対し,「9月27日面接は,再任用の選考面接と自己申告の中間面接を兼ねて行った。」旨の説明をした。また,P2校長は,平成24年1月31日の職員会議において,原 - 30 -告の不合格理由に関して,校務運営に協力的でないとして,①50周年記念行事,②海外修学旅行アンケート,③校務分掌希望調査に関しての原告の各行動を指摘し,また,同調査の集計結果を持ってきたことが最大の問題である旨述べた。P2校長は,上記職員会議後に,都教委に赴き,P6課長に対し,原告及びP1高校の職員らが再選考を行うよう求めていることを伝えた。原告は,同年2月9日,都教委のP9選考係長に電話をかけたところ,同係長は,「都教委は,校長が出したものを受け取る。手続としては,校長が面接をして評価したと考える。面接をやらないということは想定していない。」旨の返答をした。P2校長は,同月20日,原告に対し,都教委と電話連絡した結果として,「結果は変わらない。」と述べた。 (甲42,証人P10,証人P2,原告本人,弁論の全趣旨(訴状p3~6,答弁書p3~7))(ウ) 都教委は,原告を平成24年4月1日付けで非常勤教員として任用したが,再任用職員としては任用をしなかった(本件再任用不合格)。 原告 告本人,弁論の全趣旨(訴状p3~6,答弁書p3~7))(ウ) 都教委は,原告を平成24年4月1日付けで非常勤教員として任用したが,再任用職員としては任用をしなかった(本件再任用不合格)。 原告は,同日,非常勤教員として任用され,都立P11高校に配置された(甲42)。 エ本件再任用不合格の理由教育庁人事部長が平成24年度の再任用選考において原告を不合格としたのは,前記イ(エ)に従って,本件推薦書及び本件面接評定票の各評定結果を数値に換算したところ,その総合点が合格点に達していなかったためであった(乙13)。また,再任用教育職員の配置に関する方針に基づく配置の可否(現任校への配置の可否)について,本件推薦書に「配置できない」旨記載されていたことも本件再任用不合格の理由の1つであった(弁論の全趣旨(被告準備書面(1)p8))。 オ原告に対して実施された面接 - 31 -平成23年度において,原告が,P2校長及びP7副校長による面接を受けたのは,9月27日面接のみであった(乙12,証人P2,原告本人)。 原告に対しては,9月27日面接は,教育職員人事考課制度における自己申告の中間面接である旨が告知されていたが,再任用選考の採用面接であるとは告知されていなかった(乙12,証人P2,原告本人)。同面接において,P2校長は,原告から平成24年度の異動を希望しないこと等を聴取し,再任用の意欲を確認したものの,同面接において,P2校長もP7副校長も,原告に対し,後記キ(ア)②③のような原告の職員会議での発言等が学校運営に支障を生じさせているといった注意指導は行わなかったし,事実の確認も行わなかった(証人P2)。また,同面接において,採用面接の評定項目についての確認や,希望する職務に就けなかった場合の意向や対応についての質問 せているといった注意指導は行わなかったし,事実の確認も行わなかった(証人P2)。また,同面接において,採用面接の評定項目についての確認や,希望する職務に就けなかった場合の意向や対応についての質問はなされなかった(証人P2)。また,P2校長から原告に対し本件再任用不合格が伝達されるまで,P2校長から原告に対し,後記キ(ア)①ないし⑥の理由に関して事実の確認をしたことはなかった(証人P2,原告本人)。 なお,前年度(平成22年度)の所属長であるP8校長とP7副校長による原告との面接は,教育職員人事考課制度における自己申告の中間面接のみを実施し,これとは別の機会に再任用の採用面接を実施したことはなく,中間面接の際には,再任用の採用面接を兼ねているとは原告に告知されていなかった(原告本人)。P2校長は,平成23年度において,この先例にならったものであった(証人P2)。 カ本件推薦書及び本件面接評定票の内容(ア) 本件推薦書(乙6,11,証人P2)平成23年11月18日の直前ころにP2校長が作成した平成23年度再任用選考に係る本件推薦書(作成基準日・平成23年10月1日)の推薦項目の「業績/仕事の成果/主な着眼点:校長の学校経営方針に - 32 -基づき,担当職務を正確かつ効率よく処理し,職務を達成できるか」については「C(もう一歩)」,「能力/知識/主な着眼点:職務を行う上で必要な知識を有するとともに,関連する知識を持ち,職務を遂行できるか」については「B(良好)」,「能力/理解・判断力/主な着眼点:担当職務の意義や上司の指示を正しく理解するとともに,適切な判断に基づき,職務を遂行できるか」については「C(もう一歩)」,「態度/積極性/主な着眼点:職務に対して意欲をもって積極的に取り組んでいるか」については「B(良好)」 しく理解するとともに,適切な判断に基づき,職務を遂行できるか」については「C(もう一歩)」,「態度/積極性/主な着眼点:職務に対して意欲をもって積極的に取り組んでいるか」については「B(良好)」,「態度/協調性/主な着眼点:組織の一員としての自覚を持ち,上司の命令に従い,自ら進んで同僚と協力し,円滑な職務の遂行につとめているか」については「C(もう一歩)」,「態度/責任感/主な着眼点:自分の担当する職務や与えられた役割を十分自覚し,困難な場合でも,最後までやり遂げるか」については「C(もう一歩)」と記載されていた。 総合評定は「C(もう一歩)」であり,特記事項(総合評定等の所見)は,「教科指導では特に問題がないが,企画調整会議を柱とする学校運営への反発が強く,円滑な学校運営に支障がある。よって非常勤教員として,他校勤務を推薦する。」と記載されていた。「再任用教育職員の配置に関する方針に基づく配置の可否」(現任校に配置できるか否か)については,「配置できない」旨記載されていた。 なお,健康状況については,「健康であり,職務を遂行する体力がある」,過去5年間の処分等については,「ない」旨が記載されていた。 (イ) 本件面接評定票平成23年10月半ばか下旬ころにP2校長が作成した平成23年度再任用選考に係る本件面接評定票には,「職務遂行力(仕事に対する知識,技能はあるか)」,「積極性(仕事に対して意欲的か)」,「勤勉性(上司の命令に従い,仕事に対して真面目に,かつ,熱心に取り組む - 33 -か)」についてはいずれもB(良好),「健康状態(仕事に耐えられる体力があるか)」についてはB(普通),総合評定はC(採用してもよい)であり,所見及び特記事項として「仕事は問題なくやるが,学校経営に批判的なところがある。」旨記載されてい 康状態(仕事に耐えられる体力があるか)」についてはB(普通),総合評定はC(採用してもよい)であり,所見及び特記事項として「仕事は問題なくやるが,学校経営に批判的なところがある。」旨記載されていた(乙7の1,乙9,証人P2)。 P7副校長が作成した本件面接評定票も上記と同旨であった(乙7の2,乙9)キ本件推薦書及び本件面接評定票の評価の理由(ア) 本件推薦書P2校長が,前記カ(ア)のとおり本件推薦書の推薦項目の一部及び総合評定についてC(もう一歩)とし,「教科指導では特に問題がないが,企画調整会議を柱とする学校運営への反発が強く,円滑な学校運営に支障がある。よって非常勤教員として他校勤務を推薦する。」「現任校に配置できない」旨記載したのは,①平成23年10月下旬ころ,原告が,P2校長に対し,「分掌の希望調査を持参するのでよろしく。」等と述べ,校長の権限である校内人事に関して職員団体等として実質的に何等かの影響を及ぼそうとした,②平成23年6月22日,同年7月6日,同月15日,同年9月1日の職員会議において,平成25年度の修学旅行の実施学年である1学年の教員から,海外修学旅行の実施について詳細な説明があり,平成23年9月1日,P2校長が海外修学旅行の実施を宣言したところ,全教職員にアンケートをとる必要性などなかったにもかかわらず,原告が,同日の職員会議において,全教職員に対して海外修学旅行の実施について賛否を含めたアンケートをとるべきである旨発言し,実施学年の検討・調整を無視し,校務全般について校長が最終的な決定権者であることを理解しない態度をとった,③平成23年6月22日の職員会議において,P - 34 -2校長が,既に企画調整会議の検討を経た50周年記念式典の内容及び日時について報告をした際,原告が,「記 とを理解しない態度をとった,③平成23年6月22日の職員会議において,P - 34 -2校長が,既に企画調整会議の検討を経た50周年記念式典の内容及び日時について報告をした際,原告が,「記念誌について提出しても都教委が修正したりするので意味がない。」,「記念誌の発行や記念式典の日時については,職員会議で採決できないのだから,賛否を含めたアンケートをとるべきだ。」,「企画調整会議で,少人数で決めている。」旨の発言を行い,企画調整会議を中心とした学校運営に反対の意思を示した等との事実認識及び評価に基づくものであった(乙12,証人P2)。そのほか,P2校長は,④平成23年10月12日の職員会議で,原告が,同年9月末に終了している東京都立学校教員公募制人事について,校長から公募について事前に報告がなかったが誰が対象なのか等を職員会議で報告すべきであった等と発言した,⑤平成23年10月26日の職員会議で,経営企画室長から,教育庁の業務・服務監察により,生徒会会計の部活動参加費を教員が立替払をしているケースにつき改善するよう指導があったことを伝えた際,原告が,「立替払を認めてくれなかったら,生徒会活動や学校行事ができない。」旨の発言を行った,⑥平成23年11月11日,原告が,他の教員とともに,P2校長に対し,同月15日に予定されていたP3の1時間ストライキについて,同日の朝はストライキ参加者について慣例により29分の遅参(30分未満の遅参は給与が減額されない。)とするよう申入れをしたとの認識に基づいて,企画調整会議を中心とした学校運営に反発が強く,円滑な学校運営に支障があることの根拠として考慮していた(乙12,証人P2)。 P2校長から見て,原告は,仕事の成果に関しては,担当分掌の業務については問題なく取り組んでおり,知識に関して が強く,円滑な学校運営に支障があることの根拠として考慮していた(乙12,証人P2)。 P2校長から見て,原告は,仕事の成果に関しては,担当分掌の業務については問題なく取り組んでおり,知識に関しては,教科指導経験や生活指導部での経験から,生徒を指導する知識は十分であり,理解・判断力に関しては,教科指導や生活指導では問題がなく,積極性 - 35 -に関しても,分掌の生活指導部で生徒会・文化祭指導の担当者として他の教員と変わりなく職務に意欲をもって取り組み,意欲的に生徒を指導し,総合的には教科指導では特に問題はないと判断していた(乙12,証人P2)。 (イ) 本件面接評定票P2校長及びP7副校長は,前記カ(イ)のとおり,本件面接評定票について「職務遂行力」「積極性」「勤勉性」「健康状態」をB(良好)としていたが,前記(ア)①②③のとおり原告の言動が学校運営に批判的であるという理由により,総合評定は1ランク落としてC(採用してもよい)としたものであった(証人P2)。 ク本件推薦書及び本件面接評定票の評価の理由とされた事項に関する原告の言動等(ア) 分掌希望調査分掌希望調査は,次年度の校務分掌や宿泊行事の引率担当等について教職員の個別の希望を調査し,管理職に伝えるものであり,P1高校では,毎年度,教員数名を係(担当者)として互選で選び,その係の教員らが主体となって実施していた。分掌希望調査は,地方公務員法に基づく職員団体であるP4が主体となるものではなく,非組合員も調査の係となることがあった。 原告は,平成23年度の分掌希望調査の係ではなかったため,調査を主体となって行ったり,調査結果を取りまとめたり,管理職に持参したことはなかった。平成23年12月8日,調査係の1人であるP12教諭がP2校長の下に分掌 度の分掌希望調査の係ではなかったため,調査を主体となって行ったり,調査結果を取りまとめたり,管理職に持参したことはなかった。平成23年12月8日,調査係の1人であるP12教諭がP2校長の下に分掌希望調査の結果を持参したが,P2校長は,校長の人事権に不当な影響を与えるものである旨述べて受け取らなかった。平成24年1月中旬,調査係となっていたP5分会の分会長を務めていた教員が,P7副校長の下を訪れ,その机上に調査結 - 36 -果を提出していった。 原告は,平成23年度,P5分会の役員を務めており,平成23年10月下旬ころ及び平成24年1月中旬ころ,分会長を務める教員とともに,P2校長の下を訪れて平成24年度の人事異動等について申入れを行ったが,その際,分掌希望調査についてもよろしくお願いしたい等の発言をし,P2校長が,分掌希望調査は認められない旨応答したことがあった。 (甲39,42,43,乙12,証人P2,同P10,原告本人)(イ) 海外修学旅行P1高校の修学旅行先は,平成20年度は与那国島,平成21年度から平成23年度は北海道であり,平成24年度は屋久島・種子島の予定であった。 平成23年6月22日の職員会議で,平成25年度の修学旅行の実施学年である1学年の教職員らが,マレーシアでの海外修学旅行を実施したい旨の提案を行い,希望する理由及び期待される教育効果等について文書に基づき説明を行った。都教委は,海外修学旅行の実施条件として3年間の継続を指導していたことから,他の学年の教職員らからは,前記都教委の指導により実施学年の1学年の教員以外にも影響があること,費用が国内より多額となること,海外旅行のメリット・デメリットの情報収集の必要性,保護者の同意が得られなかった場合の対応等について質問や意見が出さ より実施学年の1学年の教員以外にも影響があること,費用が国内より多額となること,海外旅行のメリット・デメリットの情報収集の必要性,保護者の同意が得られなかった場合の対応等について質問や意見が出され,継続して議論することとなった。 同年7月6日の職員会議において,1学年の教職員らは,海外修学旅行に必要な費用について文書で報告を行った。同会議では,同月15日の職員会議で今後の具体的な決定スケジュールを詰めていくこと,それまでに諸問題について調査することを確認した。 - 37 -同日の職員会議では,1学年の教職員らは,海外修学旅行の意義・提案理由,タイムスケジュール,外国籍の生徒の問題,費用の問題,国内旅行に変更する場合の管理職の判断基準,3年間継続の問題,生徒の資質の問題等について文書で報告を行った。1学年の教職員らが示したタイムスケジュールでは,同日の職員会議の後,夏季休業期間に修学旅行委員会を設置して交流先調査等を行い,同年9月15日の職員会議で周辺事項調査・検討をし,同年11月19日の保護者会で生徒保護者アンケートを実施する等の予定が示されていた。 同年9月1日の職員会議では,1学年の教職員らが,修学旅行の問題点整理として,費用,各生徒の個別事情,マレーシア修学旅行の意義,マレーシア修学旅行でのイベント予定,事前学習でのイベント予定について報告した。同日の職員会議において,P2校長は,海外修学旅行を実施することを決定しようとしたが,数名の教員らから反対の意見が出されたため,1学年の教職員らが,近日中に修学旅行の実施について全教職員に対しアンケート調査をすることになった。 原告は,同年7月15日の職員会議において,海外修学旅行について全教職員らに対するアンケート調査を提案する発言を行い,その後の同年9月1日の職員会 全教職員に対しアンケート調査をすることになった。 原告は,同年7月15日の職員会議において,海外修学旅行について全教職員らに対するアンケート調査を提案する発言を行い,その後の同年9月1日の職員会議でも同趣旨の発言を行った。 1学年の教職員らは,P2校長の了承を得て,全教職員に対し,同月9日締め切りで,海外修学旅行に対する意識調査を行い,同月14日の職員会議において,その内容の全文を,好意的な意見13名,中立的意見5名,否定的意見10名と分類して報告した。これに対し,数名の教員らから,「意識調査のまとめ方に問題があり,海外修学旅行の問題について話し合う必要がある。」「実施に伴う改善策等についての話合いが重要である。」「不安的な内容についての説明及び話合いが必要である。」旨の意見が提出されていたが,同会議において, - 38 -前記意識調査等に基づいて,P2校長は,海外修学旅行実施及びその実施に向けて活動することを決定した。 (甲39,40,42,43,乙12,14の2,乙15の1・2,乙16の1・2,証人P2,証人P13,証人P10,原告本人)(ウ) 50周年記念行事平成23年6月22日の職員会議において,P2校長は,P1高校の50周年記念式典の日程を同年11月2日の土曜日とすることやその内容等について報告をした。50周年記念行事の実施については同年6月8日の職員会議で報告され,また,日程や内容については企画調整会議で検討を経たものであった。原告は,50周年記念式典の日程が,例年の文化祭(10月下旬)とインターンシップ(11月上旬~中旬)に挟まれた時期であったことから,周年行事の性格付けや実行委員会がない中で日程案を提示することに危惧を表明し,行事を企画調整会議といった少人数で進められるものではない旨の発言をした。 上旬~中旬)に挟まれた時期であったことから,周年行事の性格付けや実行委員会がない中で日程案を提示することに危惧を表明し,行事を企画調整会議といった少人数で進められるものではない旨の発言をした。その際,P2校長が次回までに新たな資料を提示することとされた。 同年7月6日の職員会議で,P2校長は,50周年記念式典の日程,場所,内容,同年の10月から12月までの仮想予定表を配布し,原告は,これについて特に異論は述べなかった。 (甲39,42,43,乙12,14の1・2,乙15の1,証人P2,証人P10,原告本人)(エ) その他平成23年10月12日の職員会議で,原告は,機械科の教員を公募したことについて,事前に校長から機械科の主任教諭らに連絡がなかったが,事前に連絡をすべきではないか旨発言した。 同月26日の職員会議で,経営企画室長が,教育庁の業務・服務監 - 39 -察により,生徒会会計の部活動参加費を教員が立替払をしているケースにつき改善するよう指導があったことを伝えた際,原告は,「立替払を認めてくれないと,生徒会活動の費用納入が期限までにできない。 どうすればよいのか。」旨の意見を述べた。 同年11月11日,原告は,他の教員とともに,P5分会を代表して,P2校長に対し,同日15日に予定されていたP3の1時間ストライキについて,同日の朝はストライキ参加者について慣例により29分の遅参(30分未満の遅参は給与が減額されない取扱いとなっている。)としてほしい旨の申入れを行ったが,P2校長はこれを認めないと返答した。 (甲43,乙12,証人P2,原告本人)ケ平成22年度及び平成23年度の原告の業績評価原告の平成22年度の教育職員業績評価(評価基準時平成23年3月31日。評価開示者はP8校長)は,学習 (甲43,乙12,証人P2,原告本人)ケ平成22年度及び平成23年度の原告の業績評価原告の平成22年度の教育職員業績評価(評価基準時平成23年3月31日。評価開示者はP8校長)は,学習指導はB(良好),生活指導・進路指導はB(良好),学校運営はA(優秀),特別活動はA(優秀),総合評価はB(良好)であった(甲15,44)。 原告の平成23年度の教育職員業績評価(評価基準時平成24年3月31日。評価開示者はP2校長)は,学習指導はB(良好),生活指導・進路指導はB(良好),学校運営はB(良好),特別活動はA(優秀),総合評価はB(良好)であった(甲16,44)。なお,同年度の3学期に行われた生徒会行事に関して,P2校長は,原告について,教科の授業時間を確保しつつ,他の教員の意向を踏まえた指導をして大成功を収めたと評価していた(証人P2)。 上記の評価結果については,対象者に対する開示と不服申立の制度が設けられており(甲44),いずれも当該年度末の3月中旬に原告に開示されていた(甲15,16)。 - 40 -(2) 再任用制度における期待権地方公共団体の任用期間の定めのあるものの職に任用された者は,任用期間の満了後に再び任用される権利若しくは任用を要求する権利を有する又は再び任用されることを期待する法的利益を有するということはできないが,任命権者が,当該職員に対して,任用予定期間満了後も任用を続けることを確約ないし保障するなど,上記期間満了後も任用が継続されると期待することが無理からぬものとみられる行為をしたというような特別の事情がある場合には,職員がそのような誤った期待を抱いたことによる損害につき,国賠法に基づく賠償を認める余地があり得ると解される(最高裁平成6年7月14日第一小法廷判決・裁判集民事第 うような特別の事情がある場合には,職員がそのような誤った期待を抱いたことによる損害につき,国賠法に基づく賠償を認める余地があり得ると解される(最高裁平成6年7月14日第一小法廷判決・裁判集民事第172号819頁参照)。 被告における公立学校の職員の再任用制度は,任期を1年として再任用するものであり,再任用職員は,学校職員の定数に関する条例(昭和31年東京都条例第67号)に定める学校職員の定数(条例定数)に含まれることから((1)ア),再任用には同条例による定数による制約があることが認められる上,被告の制定した職員の再任用に関する条例においては,再任用の更新は,再任用期間における勤務実績が良好である場合に「行うことができるもの」とされていて((1)ア),勤務実績が良好である場合であっても,当然に再任用の更新がされるわけではないことが明示されている。そして,本件において,任命権者である都教委が,原告に対して,任用予定期間満了後も任用を続けることを確約したという事情は認められない。 他方,被告における公立学校の職員の再任用制度は,公的年金におけるいわゆる満額年金の支給開始年齢の引上げに合わせて,公的部門における再任用の機会を設定し,高齢職員に雇用機会を提供するという考えに基づき導入されたものであり((1)ア),被告における公立学校の職員の再任用選考の合格者は,平成21年度には申込者523名中485名,平成22年度には同698名中670名,平成23年度には同777名中751名であり((1) - 41 -ア),毎年,数百人規模の申込者が92~96%の合格率で合格している実態がある。そして,再任用の選考は,本人の申請書,所属長の推薦書及び都教委又は所属における面接の結果を資料とし,改めて試験を実施することなく選考が行われている上( 2~96%の合格率で合格している実態がある。そして,再任用の選考は,本人の申請書,所属長の推薦書及び都教委又は所属における面接の結果を資料とし,改めて試験を実施することなく選考が行われている上((1)イ),原告のように定年後にいったん再任用がされ,再任用の更新の申込みをした者については,採用面接は都教委ではなく所属において実施することとなっており((1)イ),所属における勤務実績を重視した簡素な手続による選考が実施されている。そして,原告は,定年後,平成22年度,平成23年度といずれも再任用されている((1)ウ)。また,再任用の更新は,再任用期間における勤務実績が良好である場合に行うことができるものとされているが,原告の再任用期間である平成22年度の業績評価及び平成23年度の業績評価は,総合評定はB(良好)で,いずれの評価項目でもB(良好)以上で,A(優秀)と評価された項目もあり,これらの結果は再任用期間開始までに原告に開示されていた((1)ケ)。これらのことからすれば,再任用の更新の申込みをした原告において,再任用期間満了後も任用が継続されると期待することが無理からぬ事情があるというべきであり,そのような期待を抱いたことによる損害につき,国賠法に基づく賠償を認める余地があるというべきである。 ただし,被告における公立学校の職員の再任用制度は,定年等によりいったん退職し,職員の身分を失った者を,新たに選考した上で,任期を1年として再任用するものであり,任命権者である都教委においては,再任用の更新の申込みをした者について,改めて申込書,推薦書及び面接結果等に基づいて勤務実績等を評価して合否の判定を行い,採否の決定を行うこととされているのであるから,再任用の更新を申し込んだ者についても合否の判定及び採否の決定については都教委に広範な 書及び面接結果等に基づいて勤務実績等を評価して合否の判定を行い,採否の決定を行うこととされているのであるから,再任用の更新を申し込んだ者についても合否の判定及び採否の決定については都教委に広範な裁量権があるというべきであり,都教委が,再任用の更新の申込みをした者に対し,著しく合理性,社会的相当性を欠く理由により不合格とした場合に限り,都教委に裁量権の範囲の逸脱, - 42 -濫用があるとして,国賠法上違法と評価する余地があると解するのが相当である。 (3) 再任用選考のための面接手続等ア再任用選考のための面接手続については,申込者の所属において平成23年11月下旬までに実施すること,所属長は面接要領に基づいて面接を実施し,その結果に基づいて面接評定票及び推薦書の各評定欄を作成すること,面接要領によれば,面接委員は,申込書及び推薦書を参考にして,再任用職員を希望する動機等について質問し,さらに評定項目について確認した上で評定基準に基づき評定を行うこととされ,面接委員は採用面接であることを被面接者に十分理解させた上で実施することが注意事項とされていた((1)イ(ウ))。しかし,P2校長らが実際に行った面接(9月27日面接)は,同年9月27日という原告によって申込書が提出(同年10月下旬)される3週間以上前に,再任用選考のための面接であることが告げられることもなく,その聴取事項もおよそ面接要領に沿ったものではない形で行われ,その内容を実質的にみても,P2校長が再任用選考において問題とする後記理由①ないし⑥に係る原告の言動等についての確認はされていなかったのであるから((1)オ),9月27日面接をもって,再任用選考のための面接が実施されたと評価することは到底できない。そして,本来,面接評定票は,「面接の結果」を記載 についての確認はされていなかったのであるから((1)オ),9月27日面接をもって,再任用選考のための面接が実施されたと評価することは到底できない。そして,本来,面接評定票は,「面接の結果」を記載するものである(乙9)ところ,P2校長は本件面接評定票を9月27日面接から相当期間を経た後の同年10月半ばか下旬ころに作成しており((1)カ(イ)),面接時の詳細を踏まえて作成したものか疑問がないとはいえないこと,本件面接評定票が面接日以後の原告の言動等を考慮して作成されていたこと((1)キ(イ))も併せ考慮すると,P2校長及びP7副校長が作成した本件面接評定票は,およそ再任用選考手続において作成が要求されている面接評定票とは評価し得ないものである。 - 43 -この点について,被告は,9月27日面接は,中間申告の面接と再任用面接の選考を兼ねて実施したものである旨主張し,証人P2もこの主張に沿う供述をするが,原告に本件再任用不合格が伝えられた後の原告とP2校長とのやりとり等((1)ウ(イ))からしてもP2校長にそのような認識があったかははなはだ疑問であるし,前記のとおり,9月27日面接が,時期的にみても,内容的にみても再任用選考のためのものとしては評価し難いものであることからすれば,前記被告の主張は採用できない。また,被告は,平成22年度の再任用選考においても再任用選考の採用面接と中間申告の面接を併せて行ったが苦情はなかった旨主張するところ,前記(2)の期待権を有している原告からすれば,本件再任用不合格により実質的にみれば不利益な取扱いを受けることになるのであるから,再任用職員として採用された前年の手続と同様であることによって,今回の手続が正当化されるものではない。 イまた,本件推薦書においても,推薦書記入要領においては 受けることになるのであるから,再任用職員として採用された前年の手続と同様であることによって,今回の手続が正当化されるものではない。 イまた,本件推薦書においても,推薦書記入要領においては,申込書を基に,本人と面談した上で記入することが求められている(乙11)が,原告の申込書提出後に面談がされたとは認められない。 (4) 不合格理由ア被告は,原告の不合格理由について,本件推薦書の総合評定(C)と本件面接評定票の総合評定(C)の結果を数値に換算した総合点が合格点に達しなかったこと及び本件推薦書において原告が「現任校に配置できない」旨評価されたことにある旨主張するところ,これは,P2校長の原告に対する判断に依拠したものであり,P2校長が,上記のC評価をし,原告を「現任校に配置できない」旨評価した理由は,前記(1)キ①ないし⑥のとおりの事実認識と評価(以下「理由①」等という。)によるものと理解できるので,以下には,上記P2校長の事実認識と評価について検討することとする。 - 44 -(ア) 理由①について理由①の平成23年度の分掌希望調査については,原告は調査を実施したり,取りまとめたり,調査結果を管理職に持参したことはなく,これらを担当していたのは別の教職員であって,原告は,職員団体(P4P5分会)の役員として校長に申入れをした際,分掌希望調査についてもよろしくお願いしたい旨述べたことがあるに過ぎなかった((1)ク(ア))。そして,校長には校務全般をつかさどる権限があり(学校教育法37条4項),校内分掌の人事は校長の専権であるところ,分掌希望調査は,教職員の校内分掌についての希望を聴取し,その調査結果を管理職等に伝え,これにより校長の所管する校内分掌の人事に対し影響を与えることを意図するものであるが(( 長の専権であるところ,分掌希望調査は,教職員の校内分掌についての希望を聴取し,その調査結果を管理職等に伝え,これにより校長の所管する校内分掌の人事に対し影響を与えることを意図するものであるが((1)ク(ア)),P2校長は,調査結果の受取りを拒否し,調査結果は副校長の机上に提出されたものであり((1)ク(ア)),平成23年度のP1高校において,分掌希望調査の結果を職員会議で公表したり決議をとったりするといった,分掌希望調査の結果に基づいて,校長の校内分掌についての人事権を事実上制約したり,校長の意思決定を拘束したりする事象が存在したとは認められず(弁論の全趣旨),P1高校においては,分掌希望調査の結果を受け取るか否か,校内分掌の人事の参考にするか否かは,実質的に校長の判断に委ねられていたことが認められる。そうであれば,平成23年度のP1高校において,分掌希望調査を実施し,その結果を管理職へ提出する行為が,校長の人事権を制約するものとも,校長の意思決定を拘束するものとも認めることはできない。そうすると,原告が,P2校長に対し,分掌希望調査についてよろしくお願いしたい等と述べた行為をもって,校長の人事権に不当な影響を与える行為であるとは評価できないというべきである。被告は,過去に多くの都立学校において,職員会議で選出した人事委員で構成される人事委員会が校務分掌構成案等を作成して職員会議 - 45 -で決定し,校長がこれを追認せざるを得ないといった校長の人事権の実質的侵害が行われており,分掌希望調査を実施してその結果を校長に提出することは,校長の人事権に対し不当な影響を与えようとする行為であって,学校運営の適正化に真っ向から反する行動である旨主張するが,前記のとおり,平成23年度のP1高校においては,分掌希望調査の内容を職員会議 ,校長の人事権に対し不当な影響を与えようとする行為であって,学校運営の適正化に真っ向から反する行動である旨主張するが,前記のとおり,平成23年度のP1高校においては,分掌希望調査の内容を職員会議で公表したり,決定したりするといった事象はなく,分掌希望調査の結果を受け取るか否か等についても校長の判断に委ねられていたのであるから,平成23年度に実施された分掌希望調査とその結果の管理職への提出が,校長の人事権の実質的侵害であるとはいえないというべきである。 (イ) 理由②について理由②の海外修学旅行については,都教委が海外修学旅行の条件として3年間の継続を指導していたことから,平成23年6月,実施学年の教職員らの提案に対し,他の学年の教職員らから,費用,教育効果,3年間継続の可否,保護者の意向等について様々な意見が出され,同年9月1日までの4回の職員会議において,実施学年の教職員によって上記事項について文書等に基づき説明がされた((1)ク(イ))。そして,P2校長は,同年9月1日の職員会議において,海外修学旅行の実施を決定しようとしたが,同日の職員会議の席上で,教職員らから,より広く意見聴取をする必要性が指摘されたため決定には至らず,後日,実施学年の教職員らにより全教職員らに対する意識調査が実施されるに至った((1)ク(イ))。校長には海外修学旅行の実施を含め校務全般についての決定権限があり(学校教育法28条3項),職員会議は校長の職務の円滑な執行に資するための機関であり(学校教育法施行規則104条1項,48条1項,第2の1(6)(7)),職員会議での教職員らの決議によって校長の権限を不当に制約するような運営は許されない(第2の1(8))。 - 46 -他方,都教委の指導により海外修学旅行は3年間継続する必要があったことか ,職員会議での教職員らの決議によって校長の権限を不当に制約するような運営は許されない(第2の1(8))。 - 46 -他方,都教委の指導により海外修学旅行は3年間継続する必要があったことから,海外修学旅行の実施は,実施学年の教職員らだけの問題ではなく,全教職員らから広く意見聴取をして検討する必要性があった((1)ク(イ))。また,平成23年9月1日のP2校長の決定に対して,より広く意見聴取をする必要性がある旨の指摘を最初にしたのは原告以外の教職員であり(証人P2),その際,より広く意見聴取をする必要性がある旨の意見を述べた教職員が,原告以外にも少なくとも2名以上存在し(証人P2,証人P13),全教職員に対して意識調査を実施し,その調査結果の全文とともに,実施に好意的と分類される意見が多数である旨報告された後も,その意見の集約方法等について異論を唱えた教職員が存在していた((1)ク(イ))。さらに,海外修学旅行についての全教職員らに対する意識調査の実施は,海外修学旅行を提案した実施学年の教職員らが主導したもので,P2校長もこれを了解していた((1)ク(イ))。これらのことからすれば,原告が,平成23年7月15日及び同年9月1日の職員会議において,海外修学旅行の実施についてアンケート調査をする必要性がある旨の意見を述べたのは,全教職員の職務に関連する事項について,職員会議を3,4回開催しても異論が出ている状況下で,校長の意思決定を円滑にするための打開策として提案したものであり,校長の意思決定権を侵害する意図によるものではなかったと認めるのが相当である。被告は,原告の発言は,実施学年での検討調整を無視し,校長が校務全般の最終的な決定権者であることを理解しないものである旨主張するが,前記(1)ク(イ)のとおり,提案から4回目の平 るのが相当である。被告は,原告の発言は,実施学年での検討調整を無視し,校長が校務全般の最終的な決定権者であることを理解しないものである旨主張するが,前記(1)ク(イ)のとおり,提案から4回目の平成23年9月1日及び5回目の同月14日の職員会議においても,教職員らからの異論が出ていたことからすれば,同年9月1日の職員会議までに,実施学年の教職員らによる調整が十分になされて校長が円滑に意思決定を行う状況が醸成されていたとは認められず,むしろ,実施学年 - 47 -の教職員らが,全教職員に対する意識調査を実施し,その結果を職員会議で報告したことによって,校長が円滑に意思決定を行う状況が整ったものと認められるから,原告の職員会議での前記発言によりP2校長の校務についての意思決定権が侵害されたとは認められない。 (ウ) 理由③について理由③の平成23年6月22日の職員会議については,P2校長が,企画調整会議の検討を経た50周年記念式典の内容及び日時について同日の職員会議で報告をした際,原告が日程について懸念を表明し,少人数の企画調整会議で決められるものではない旨の言動を行った事実がある((1)ク(ウ))。なお,原告が,50周年の記念誌は意味がないとか,式典の実施について賛否を含めたアンケートをとるべきだとか述べたことについては,これに沿う証拠(乙13,証人P2)はあるが,これを否定する証拠(甲42,43,証人P10,原告本人)もあり,後者と対比して前者を直ちに採用することはできないから,これを認めることはできない。そして,職員会議における原告の上記発言は,示された日程案が他の行事(文化祭とインターンシップ)に挟まれた時期であったために懸念を表明したもので((1)ク(ウ)),文化祭とインターンシップが全教職員の協力を要する行事であ 原告の上記発言は,示された日程案が他の行事(文化祭とインターンシップ)に挟まれた時期であったために懸念を表明したもので((1)ク(ウ)),文化祭とインターンシップが全教職員の協力を要する行事であること(証人P10,原告本人)からすれば,原告の懸念は不相当とはいえず,その懸念を職員会議で表明したからといって,校長の校務についての権限や,企画調整会議を中心とした学校運営を阻害するものとは評価できない。被告は,原告の発言は,企画調整会議で検討を経て決定された校務の方針について異議を唱え,いたずらに校務の運営を阻害するものである旨主張するが,企画調整会議は,校長の補助機関として校務に関する企画立案等を行うもの,職員会議は,校長の管理運営方針等の周知のほか,校長が校務に関する決定を行うに当たり所属の教職員の意見を聞くものであり(第2の2(6) - 48 -(7)),校長は,職員会議が補助機関であることを踏まえた上で,職員会議の場を活用することなどにより,所属職員の建設的な考え方や意見を聞き,それを学校運営に生かすよう努める必要があるとされているのであるから(同(8)),企画調整会議の立案を経た案であったにせよ,所属の教職員の意見を聴取するための職員会議において,所属の教職員として,前記の不相当とはいえない意見を述べたことをもって,学校運営を阻害するものであると評価することはできない。また,原告は,P2校長から,平成23年10月から12月までの仮想予定表の提示等を受けた後は,特に異論は述べず,自分の意見に固執してはいないのであるから((1)ク(ウ)),いたずらに校務の運営を阻害したともいえない。 (エ) 理由④について理由④の,原告が,職員会議において,東京都立学校教員公募制人事の対象者等を職員会議で報告すべきであった等と発言した (ウ)),いたずらに校務の運営を阻害したともいえない。 (エ) 理由④について理由④の,原告が,職員会議において,東京都立学校教員公募制人事の対象者等を職員会議で報告すべきであった等と発言したことについては,P2校長はこれに沿う証言をするが(乙12,証人P2),原告はこれを否定しており(甲42,43,原告本人),P2校長の前記証言を裏付ける証拠はないから,直ちに採用できない(なお,機械科の教員の公募をしたことを機械科の主幹教諭及び主任教諭にあらかじめ伝えてほしいという原告の発言は((1)ク(エ)),それを実現したからといって,個人の異動の希望の有無等が直ちに判明するとはいえないこと,判明したとしても前記主幹教諭ら以外に判明するとはいえないことから,個人のプライバシーを侵害するものとは認められない。)。 (オ) 理由⑤について理由⑤の,生徒会会計等について教職員の立替払をやめるようにとの業務・服務監察による指導に関し,原告が,「立替払を認めてくれなかったら,生徒会活動や学校行事ができない。どうすればよいのか。」旨の発言を行ったこと((1)ク(エ))については,原告の発言は,業務・服 - 49 -務監察の指導に対する批判的表現を伴うものであるが,指導に基づく具体的な対処の方法を管理職に問うものでもあり,一概に学校運営を阻害するものとはいえない。 (カ) 理由⑥について理由⑥の,原告が,P2校長に対し,職員団体が実施する1時間ストライキについて,慣例により29分の遅参(30分未満の遅参は給与が減額されない。)とするよう申入れをしたことは((1)ク(エ)),許されない地方公務員のストライキ(地方公務員法37条1項)について,事実と異なる取扱いをするよう求める申入れをしたものである。しかし,原告は,職員団体の分会を代表し したことは((1)ク(エ)),許されない地方公務員のストライキ(地方公務員法37条1項)について,事実と異なる取扱いをするよう求める申入れをしたものである。しかし,原告は,職員団体の分会を代表して申入れをしたのであって,P2校長に拒絶されると,申入れを終了しており((1)ク(エ)),このことをもって,校長の権限を不当に抑圧したとは評価できない。 イそうすると,本件推薦書の推薦項目の一部及び総合評定についてC(もう一歩)とし,「教科指導では特に問題がないが,企画調整会議を柱とする学校運営への反発が強く,円滑な学校運営に支障がある。よって非常勤教員として他校勤務を推薦する」「現任校に配置できない」旨記載し,本件面接評定票において,個別評定がいずれもBであるにもかかわらず総合評定を1ランク落としてC(採用してもよい)とした(P2校長もまたこれが異例の評定であることは自認する旨の供述をしている。)P2校長の事実認識と評価の理由となった原告の行為は,これを認めることはできないか(理由③の一部,理由④),校長の権限を侵害し,学校運営に非協力的であると判断することが相当ではない行為である(理由①②,理由③の一部,理由⑤⑥)。さらに,理由となった全ての行為について,評価者である校長から被評価者である原告に対する事実の確認を経て認定判断したものではなく(理由①ないし⑥。なお,理由P2校長は,平成24年1月31日時点においても指摘していない((1)ウ - 50 -(イ))。),推薦書の作成基準日前の行為についても,本件再任用不合格まで原告に対する注意指導がされたことはなかった(理由②③)。そして,P2校長から見て,原告は,仕事の成果に関し,担当分掌の業務については問題なく取り組んでおり,知識に関して,生徒を指導する知識は十分であり 対する注意指導がされたことはなかった(理由②③)。そして,P2校長から見て,原告は,仕事の成果に関し,担当分掌の業務については問題なく取り組んでおり,知識に関して,生徒を指導する知識は十分であり,理解・判断力に関し,教科指導や生活指導では問題がなく,積極性に関し,分掌の生活指導部で他の教員と変わりなく職務に意欲をもって取り組み,意欲的に生徒を指導し,総合的には,教科指導では特に問題はないと評価していた((1)キ(ア))。 これらを総合すると,本件推薦書の推薦項目の一部及び総合評定についてB(良好)ではなくC(もう一歩)とした評価を行い,本件面接評定票において,総合評定をB(良好)ではなく1ランク下げてC(採用してもよい)としたことは,著しく合理性,社会的相当性を欠く判断というべきであるし,P2校長の「現任校に配置できない」旨の評価についても,客観的にみて原告を「現任校に配置できない」理由があるとはいえず,上記評価もまた,著しく合理性,社会的相当性を欠く判断といわざるを得ない。 (5) まとめ前記のとおり,被告は,都教委による本件再任用不合格の理由について,①本件推薦書の総合評定,②本件面接評定票の総合評定の各評定結果を数値に換算したところ,その総合点が合格点に達していなかったためである旨主張し,それらとは異なる都教委独自の判断が付加された旨主張しているわけではないことからすれば,本件再任用不合格は,本件推薦書及び本件面接評定票における判断に依拠していると理解できる。 しかし,前記のとおり,本件面接評定票は,その作成経過からして再任用選考手続において要求されている面接評定票とは評価し得ないものであって,本件再任用不合格は,その判断のための重要な根拠資料を欠いていたと評価せざるを得ない。また,本件推薦書についても,申込書 再任用選考手続において要求されている面接評定票とは評価し得ないものであって,本件再任用不合格は,その判断のための重要な根拠資料を欠いていたと評価せざるを得ない。また,本件推薦書についても,申込書を基に,本人と - 51 -面談した上で記入されたものではない点において,推薦書記入要領にしたがって作成されたものとはいえない。 そして,本件推薦書及び本件面接評定票において,P2校長らがいずれもC評定を行った根拠とするところの事実認識及びその評価は前記のとおり著しく合理性,社会的相当性を欠く判断というべきである。 そうすると,本件推薦書及び本件面接評定票に依拠してなされた都教委の本件再任用不合格もまた,著しく合理性,社会的相当性を欠くものと判断せざるを得ず,都教委には,裁量権の範囲の逸脱,濫用があり,本件再任用不合格は,国賠法上違法と評価すべきである。 なお,被告は,再任用教育職員の配置に関する方針に基づく配置の可否(現任校への配置の可否)について,本件推薦書に「現任校に配置できない」旨記載されていたことも本件再任用不合格の理由の1つであった旨主張するところ,被告は,再任用教員の選考が行われる1月ころには,正規教員の異動配置先が決まっているので,再任用選考合格者の配置先を確保するには現任校に配置するのが適切であるから,「再任用教育職員の配置に関する方針」は合理的であり,原告が推薦書に「現任校に配置できない」旨記載されていることにより不合格とされたことには理由がある旨主張する。確かに,再任用教員は,一般職の公務員として,学校職員の定数に関する条例の条例定数に含まれるから(第2の1(4)),即戦力として定年前に従事していた職務に従事することが期待されるし,都教委が1年ごとに申込者の再任用期間の勤務実績等に基づき行う任用手続に 数に関する条例の条例定数に含まれるから(第2の1(4)),即戦力として定年前に従事していた職務に従事することが期待されるし,都教委が1年ごとに申込者の再任用期間の勤務実績等に基づき行う任用手続において,再任用選考の合否が判明するのが1月であり((1)イ(オ)),そのころに正規教職員の異動配置先が決まっていることからすれば(弁論の全趣旨),再任用教員について現任校配置を標準とすることには合理性がないとはいえない。しかし,現任校への配置を標準とするとはいえ,配置は任用後の人事であり,任用の要件ではないのであるから,現任校に配置できないと所属長が判断した理由が,著しく合理性,社 - 52 -会的相当性を欠く理由による場合には,これに基づく不合格の判断は,裁量権の範囲の逸脱,濫用があったというべきである。 2 争点(2)について-原告の損害額(1) 逸失利益前記第2の1(4)によれば,原告は,平成23年度の再任用選考に合格すれば,平成24年4月1日,再任用職員として採用され,少なくとも更新までの1年間の任期中は再任用職員として稼働して報酬を得ることができたものと認められる。そうすると,原告が再任用職員であったら得られた1年間の報酬額と原告が非常勤教員として得られた報酬の差額として少なくとも50万円の損害(逸失利益)を被ったと認めるのが相当である。 原告は,65歳まで再任用が継続することを前提として3年分の差額が逸失利益である旨主張するが,再任用職員の任期は1年であり,任期の更新は新たな任用であって,職員の当該更新直前の任期における勤務実績が良好である場合に行うことができるものであるから(第2の1(4),第3の1(1)ア(イ)),平成23年度の再任用選考に合格し,平成24年4月1日に再任用職員として採用されたからといって,当 務実績が良好である場合に行うことができるものであるから(第2の1(4),第3の1(1)ア(イ)),平成23年度の再任用選考に合格し,平成24年4月1日に再任用職員として採用されたからといって,当然に平成25年度及び平成26年度に再任用が更新され,65歳まで再任用が継続するとはいえず,3年分の差額を本件再任用不合格と因果関係がある逸失利益であると認めることはできない。 (2) 慰謝料証拠(甲39ないし43,証人P2,同P13,同P10,原告本人)によれば,原告は,平成20年度から平成23年度まで(平成22年度及び平成23年度は再任用期間)P1高校の ○ 担当教員として勤務し,生活指導部に所属して生徒会,文化祭等の指導を担当しており,いずれの分野でも熱意を持って生徒を指導し(甲17),○では定期テストの前後に補講を行って生徒に感謝され(甲41),原告が指導した生徒会主催の行事は校 - 53 -内で高い評価を得ており(甲19,証人P2),P1高校での平成24年度の教育実践に意欲を抱いていた(原告本人)。そして,原告は,平成24年度の再任用に合格していれば,再任用教育職員の配置に関する方針に基づいてP1高校に配置される蓋然性が高く(第2の1(5)イ),他校に配置されたのは本件再任用不合格によるものである。 以上からすれば,本件再任用不合格により,再任用教員として勤務することができず,生徒との信頼関係を築いていたP1高校で勤務できなくなったことによって,原告が著しい精神的苦痛を受けたことは否定できず,再任用による利益としては,採用されて報酬を得られる利益が中核であって,逸失利益の填補により精神的苦痛の大部分が慰謝されるべきこと,再任用後の配置については,都教委において広範な裁量権があることを考慮しても,原告には,逸失利益では填 報酬を得られる利益が中核であって,逸失利益の填補により精神的苦痛の大部分が慰謝されるべきこと,再任用後の配置については,都教委において広範な裁量権があることを考慮しても,原告には,逸失利益では填補できない精神的苦痛があったというべきである。 以上を総合すると,逸失利益とは別に,慰謝料として20万円を認めるのが相当である。 3 結論以上によれば,原告の請求は,国賠法1条1項に基づく損害賠償として70万円及びこれに対する不法行為時である平成24年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないから棄却し,訴訟費用の負担については民事訴訟法61条,64条を適用し,仮執行宣言は相当ではないからこれを付さないこととし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第19部 裁判長裁判官古久保正人 - 54 - 裁判官伊藤由紀子 裁判官芝本昌征

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る