令和6年9月6日東京地方裁判所刑事第11部宣告令和5年刑(わ)第3180号、令和6年刑(わ)第159号詐欺被告事件 主文 被告人Aを懲役7年に、被告人Bを懲役2年6月に処する。 未決勾留日数中、被告人Aに対し60日を、被告人Bに対し20日を、そ れぞれその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人Aは、電気通信事業等を営むC株式会社(以下「C社」という。)のD本部E統括部統括部長及びITコンサルティング事業等を目的とする株式会社F(以下「F 社」という。)の代表取締役を務めていたもの、被告人Bは、C社のD本部E統括部G部H課課長及び情報技術、情報システムに関するコンサルタント業務等を目的とする合同会社I(以下「I社」という。)の代表社員を務めていたものであるが、被告人両名は、分離前の相被告人Jと共謀の上、C社から受注したシステム開発事業に対する投資金の名目で現金をだまし取ろうと考え、真実は、同社において、「全チャネル統一 ナレッジ管理システムプロジェクト」なる事業は存在せず、同社がI社に同事業を発注した事実はなく、かつ、交付を受けた現金を同事業に係る支払に充てる意思もないのに、これらがあるように装った上、交付を受けた現金を自己らの用途に費消する意図であり、約定どおりに配当金を支払い、元本を返済する確実な見込みがないのに、これらの情を秘し、 第1 令和3年12月22日及び同月23日、東京都港区(住所省略)C社19階会議室等において、K(当時33歳)に対し、C社は、Cショップ向け店頭システムの入れ替えを予定しており、「全チャネル統一ナレッジ管理システムプロジェクト」という総額約95億円のプロジェクトを立ち上げ、被告人Aがそのプロジェクトの責任者になった、被告人 ョップ向け店頭システムの入れ替えを予定しており、「全チャネル統一ナレッジ管理システムプロジェクト」という総額約95億円のプロジェクトを立ち上げ、被告人Aがそのプロジェクトの責任者になった、被告人Aには、その入れ替えに伴うシステム開発業務を発注する 権限があり、被告人Bが代表を務めるI社に発注した、このプロジェクトは令和4 年3月末に終わることになっており、C社からI社への支払は同年4月末になるが、同社から下請けのベンダーへの支払が同年3月末までの間に段階的に発生し、その支払に充てる資金がショートしているため、その資金を投資家から募集したい、同社は、C社からの名目上の業務の請負先にすぎず、実際のもろもろの意思決定などはF社が行うため、同社が窓口となって、投資家から資金を募集する、募集総額は 12億円であり、1口2億円としているが、必ずしも2億円でなくてもよい、投資額に対し、配当を付け、弁済期限の同年4月末日に元本と配当を支払う、他の人の配当は、4か月で20パーセントだが、Kさんは特別にプラス10パーセントして、30パーセントの配当を払う旨うそを言い、同人にその旨誤信させ、よって、同人に、令和4年1月7日、東京都新宿区(住所省略)株式会社L銀行M支店において、 N銀行株式会社O支店に開設された被告人A名義の普通預金口座に現金2500万円を振込入金させ、第2 令和3年12月24日及び令和4年1月5日、前記C社19階会議室等において、直接又はウェブ会議サービス「Zoom」を用いて、P(当時31歳)に対し、C社は、Cショップの店頭で使用する業務用端末のシステムを更新する「全チャネ ル統一ナレッジ管理システムプロジェクト」を立ち上げ、被告人Aがこのプロジェクトの責任者になった、同社は、この新しいシステムの開発をI の店頭で使用する業務用端末のシステムを更新する「全チャネ ル統一ナレッジ管理システムプロジェクト」を立ち上げ、被告人Aがこのプロジェクトの責任者になった、同社は、この新しいシステムの開発をI社に発注した、同社は、開発分野ごとにベンダーに発注することになったが、各ベンダーが完成したシステムの納入時に、同社から各ベンダーへの開発費用の支払が発生するが、C社からI社への開発費用の支払は、同社がシステムを完成させて、C社に納品し、同 社の検査を受けた後の4月30日頃に一括して支払われることになっているため、I社は、C社からの支払がない中で、自己資金から各ベンダーへの支払を負担しなければならなくなる、I社は、自己資金だけではその支払を賄うことができず、その資金を必要としており、同社から、被告人Aが代表を務めるF社に、その開発費用の支払に充てる資金を募集してほしいという依頼があり、同社が投資家からその 資金を募集することになった、募集額は、1口2億円で合計6口、総額12億円を 予定している、弁済日に元本と月利5パーセントに相当する配当をまとめて支払う、令和4年1月中に1億円を投資してもらえれば、4月28日の弁済期日には、約1億2000万円を支払うことができる旨うそを言い、同人にその旨誤信させ、よって、令和4年1月14日、東京都大田区(住所省略)先路上において、同人から現金1億円の交付を受け、 第3 令和4年1月31日及び同年2月1日、C社19階会議室において、Q株式会社代表取締役及びR代表者を務めるS(当時34歳)に対し、C社は、被告人Aが決裁して、I社に対し、Cショップの店頭システムをリプレイスする「全チャネル統一ナレッジ管理システムプロジェクト」を約96億円で発注した、同社は、各ベンダーに下請けに出しており、 C社は、被告人Aが決裁して、I社に対し、Cショップの店頭システムをリプレイスする「全チャネル統一ナレッジ管理システムプロジェクト」を約96億円で発注した、同社は、各ベンダーに下請けに出しており、各ベンダーに対する支払のため、3月末までの間に 計12億円の資金が必要となるが、C社からI社に対する支払は4月28日となるため、ブリッジとして12億円を融資してほしい、F社が投資家から融資を受け、I社に貸し付ける形にして資金調達をする、同日に、元本12億円に、その20パーセントに当たる2億4000万円の配当を加えた合計14億4000万円を返金する旨うそを言い、同人にその旨誤信させ、よって、別表(添付省略)記載のと おり、令和4年2月4日から同年3月30日までの間、7回にわたり、株式会社T銀行U支店に開設されたR名義の普通預金口座ほか2口座から、V銀行株式会社W支店に開設されたF社名義の普通預金口座に現金合計12億円を振込入金させ、もって人を欺いて財物を交付させたものである。 (量刑の理由) 本件各犯行の態様につき、著名な会社の社員であった被告人らは、共犯者Jと共謀の上、同会社の実際の会議室等において、非常によく作りこまれた虚偽の説明資料を駆使するなどし、同会社に関連する事業への投資であるかのように装って各被害者を欺罔したというのであり、いずれも極めて計画的かつ巧妙なものであって、悪質というほかない。 本件各犯行の被害総額は13億2500万円にも上り、その結果は重大である。 各被告人の役割をみると、本件各犯行を被告人Aらに持ち掛け、また、同会社に関連する事業への投資であるかのように装うことなどの欺罔方法の重要部分の発案をしたり、被害者らを被告人Aらに引き合わせたりしたのは、共犯者Jであるが、被告人Aは 被告人Aらに持ち掛け、また、同会社に関連する事業への投資であるかのように装うことなどの欺罔方法の重要部分の発案をしたり、被害者らを被告人Aらに引き合わせたりしたのは、共犯者Jであるが、被告人Aは、虚偽の説明資料の準備や各被害者らへの虚偽の説明等を主導的に行っており、その役割は重要である。また、被告人Bは、虚偽の説明資料の準備を行ったほか、自 身が代表を務める会社の社名を各犯行に用いることを許容するなどしており、その役割を軽視することはできない。 加えて、被告人Aは、被害金の一部を得ており、この点も非難に値する。 以上によれば、被告人らの責任は重大であり、特に本件各犯行の手口の巧妙さと被害結果の重大さに加え、被害回復が一部にとどまっていることを踏まえれば、被告人 Bの弁護人が同被告人の刑の執行を猶予すべきなどとして弁論で主張する諸点を十分に考慮、検討しても、被告人両名をそれぞれ相応の実刑に処するのが相当である。 他方、被告人両名は共犯者Jの架空の投資話を契機として各犯行に及んでおり、その経緯には酌量する余地があること、一部の被害者らに対し被害金の一部が返金等されているほか、被告人らが被害者らに対し一部被害弁償をしていること、被害者らが 被告人Bを宥恕していること、被告人両名には前科がないこと、被告人両名が各犯行を認めて反省の弁を述べていることなど、各弁護人が弁論等で主張する諸点を考慮すれば、被告人両名をそれぞれ主文掲記の刑に処するのが相当であると判断した。 (求刑被告人Aにつき懲役10年、被告人Bにつき懲役4年)令和6年9月9日 東京地方裁判所刑事第11部 裁判長裁判官江口和伸 裁判官梶 直 東京地方裁判所刑事第11部 裁判長裁判官 江口和伸 裁判官 梶直穂 裁判官 林信吾
▼ クリックして全文を表示