平成23(ネ)10012 特許権移転登録等請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成24年2月22日 知的財産高等裁判所 4部 判決 控訴棄却 東京地方裁判所 平成21(ワ)27415
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判決文本文19,027 文字)

平成24年2月22日判決言渡同日原本受領裁判所書記官平成23年(ネ)第10012号特許権移転登録等請求控訴事件原審・東京地方裁判所平成21年(ワ)第27415号口頭弁論終結日平成24年1月18日判決控訴人株式会社東京バイテク研究所同訴訟代理人弁護士黒田英文黒田明被控訴人亘起物産有限会社(以下「被控訴人亘起」という。)被控訴人ヘルスカーボン株式会社(以下「被控訴人ヘルスカーボン」という。)上記両名訴訟代理人弁護士土肥尚子 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴人の当審における拡張請求及び追加請求をいずれも棄却する。 3 当審における訴訟費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨(当審における拡張請求及び追加請求の趣旨を含む。) 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人亘起は,控訴人に対し,1億9329万0838円及びこれに対する平成21年9月6日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 3 被控訴人ヘルスカーボンは,被控訴人亘起に対し,別紙特許権目録記載の特許権及び別紙商標権目録記載の各商標権につき特許権及び各商標権の移転登録の抹消登録手続をせよ。 4(3の予備的請求)(1) 被控訴人亘起と被控訴人ヘルスカーボンとが平成21年5月15日に締結した別紙特許権目録記載の特許権及び別紙商標権目録記載の各商標権についての売買契約を取り消す。 (2) 被控訴人ヘルスカーボンは,被控訴人亘起に対し,別紙特許権目録記載の特許権及び別紙商標権目録記載の各商標権につき特許権及び各商標権の移転登録の抹消登録手続をせよ。 5 被控訴人 り消す。 (2) 被控訴人ヘルスカーボンは,被控訴人亘起に対し,別紙特許権目録記載の特許権及び別紙商標権目録記載の各商標権につき特許権及び各商標権の移転登録の抹消登録手続をせよ。 5 被控訴人亘起は,控訴人に対し,別紙特許権目録記載の特許権及び別紙商標権目録記載の各商標権につき,各持分2分の1の特許権及び各商標権の移転登録手続をせよ。 6 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人らの負担とする。 7 仮執行宣言第2 事案の概要 1 本件は,控訴人が,平成10年頃,被控訴人亘起との間で,別紙特許権目録記載の特許権(以下「本件特許権」といい,本件特許権に係る発明を「本件発明」という。)及び別紙商標権目録記載の各商標権(以下「本件各商標権」という。)について,いずれも持分を各2分の1とする合意(以下「本件共有合意」という。)及び本件発明の実施品の売上金を2分の1ずつ配分する合意(以下「本件配分合意」といい,本件共有合意と併せて「本件各合意」という。)を締結したこと又は後記の事実関係の下において被控訴人亘起がその取得した知的財産権やその実施による利益を控訴人に帰属させる義務(以下「本件義務」という。)を負っていたことを前提に,①控訴の趣旨2の請求として,被控訴人亘起に対し,第一次には,本件配分合意に基づき,第二次には,本件義務に基づき,1億9329万0838円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成21年9月6日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めるほか,②控訴の趣旨3 及び4の請求として,主位的には,本件各合意又は本件義務に基づく権利を被保全債権とする債権者代位権の行使として,被控訴人ヘルスカーボンに対し,別紙特許権目録及び別紙商標権目録のいずれも登録事項順位2番記載の特許権及び商標権の各移 本件各合意又は本件義務に基づく権利を被保全債権とする債権者代位権の行使として,被控訴人ヘルスカーボンに対し,別紙特許権目録及び別紙商標権目録のいずれも登録事項順位2番記載の特許権及び商標権の各移転登録の抹消登録手続を,予備的には,被控訴人亘起に対する本件義務に基づく金銭債権を被保全債権とする詐害行為取消権の行使として,被控訴人亘起と被控訴人ヘルスカーボンとが平成21年5月15日に締結した本件特許権及び本件各商標権についての売買契約(以下「本件売買契約」という。)の取消し及びこれに基づく上記各移転登録の抹消登録手続を求め,③控訴の趣旨5の請求として,上記②の請求が認められて前記特許権及び各商標権の登録名義が被控訴人亘起に回復されることを前提に,被控訴人亘起に対し,本件共有合意又は本件義務に基づき,本件特許権及び本件各商標権につきいずれも持分2分の1の移転登録手続を求める事案である。なお,控訴人は,当審において,原審における1億7298万8112円及びこれに対する遅延損害金の請求を上記①のとおり拡張したほか,上記②及び③の請求中,本件各商標権の移転登録の抹消登録手続請求及び移転登録手続請求並びに本件義務に基づく各請求を追加した。 原判決は,本件各合意の成立を認めることができないとして,控訴人の原審における請求をいずれも棄却した。 2 前提となる事実(証拠を掲記したものを除き,当事者間に争いがない。)(1) 当事者ア控訴人は,生化学,医学,薬学,工学等生命科学の基礎及び応用を対象とする研究,開発,調査並びにそれらの受託及びコンサルタント業務等を目的として,昭和61年12月12日に設立された株式会社であり,その代表取締役は,A であった。 イ被控訴人亘起は,食品素材の製造販売等を目的として,昭和57年3月11 日に設立さ 務等を目的として,昭和61年12月12日に設立された株式会社であり,その代表取締役は,A であった。 イ被控訴人亘起は,食品素材の製造販売等を目的として,昭和57年3月11 日に設立され,昭和62年5月31日,A が代表取締役に就任し,平成8年3月1日,有限会社に組織変更された会社である(甲2,乙2,5,6,8)。 ウ被控訴人ヘルスカーボンは,平成19年4月18日に設立された株式会社であり,平成20年6月13日,その目的を食品素材の製造販売等に変更した(甲3,弁論の全趣旨)。 (2) 本件特許権及び本件各商標権の登録ア被控訴人亘起は,平成8年12月27日,代表取締役であるA が発明した本件発明について特許出願し(出願番号10-506775),特許庁は,平成19年1月10日,当該出願について特許査定をし,同年2月9日,特許権の設定登録をした(本件特許権)。 イ被控訴人亘起は,平成12年1月14日,別紙商標権目録1記載の商標について出願し,平成13年12月21日,商標登録を受けたほか,平成12年7月18日,別紙商標権目録2記載の商標について出願し,平成13年9月14日,商標登録を受けた(甲35,36。本件各商標権)。 (3) 被控訴人亘起の売上げ被控訴人亘起は,平成13年頃,株式会社ビッグウェスト社及び高橋金属工業株式会社との間で,それぞれ本件発明の実施品であるヘルスカーボンを継続的に供給する取引を開始し,ビッグウェスト社との間では平成12年3月から平成20年2月までの間で総額3億0458万1675円の売上げが,高橋金属工業との間では平成15年8月受注分までで総額8200万円の売上げが,それぞれ発生した(合計3億8658万1675円。甲8,38,39,弁論の全趣旨)。 (4) A の死亡A は,平成19年6 工業との間では平成15年8月受注分までで総額8200万円の売上げが,それぞれ発生した(合計3億8658万1675円。甲8,38,39,弁論の全趣旨)。 (4) A の死亡A は,平成19年6月16日,死亡した。 (5) 被控訴人亘起による本件特許権及び本件各商標権の譲渡 被控訴人亘起は,被控訴人ヘルスカーボンとの間で,平成21年5月15日,本件特許権及び本件各商標権を売却する契約(本件売買契約)を締結し,これらについて同日付けで移転登録をした。 3 本件訴訟の争点(1) 本件各合意の成否(争点1)(2) 利益相反取引及び本件義務の成否(争点2)(3) 債権者代位権行使による本件各合意の成否(争点3)(4) 債権者代位権行使の可否(争点4)(5) 詐害行為取消権行使の可否(争点5) 4 当事者の主張(1) 争点1(本件各合意の成否)について〔控訴人の主張〕ア本件各合意の成立について控訴人は,代表取締役A,取締役B 弁護士(本件訴訟の原審における控訴人訴訟代理人であるが,原判決言渡し後である平成23年4月6日に死亡した。以下「B弁護士」という。)及び同C(現在の控訴人代表者。以下「C」という。)が出席した控訴人取締役会において,被控訴人亘起との間で,平成10年頃,下記(ア)及び(イ)からなる本件各合意をした。なお,控訴人取締役会では議事録を作らない習慣であった。 (ア) 本件共有合意本件発明に係る出願が将来特許査定を受けて登録になったときは,本件特許権を控訴人と被控訴人亘起との共有とし,本件特許権の持分2分の1を控訴人に移転登録する。 (イ) 本件配分合意 今後,本件発明の実施品であるヘルスカーボンの取引によって売上収入が発生したときは,その全てを控訴人と被控訴人亘起との間で2 の持分2分の1を控訴人に移転登録する。 (イ) 本件配分合意 今後,本件発明の実施品であるヘルスカーボンの取引によって売上収入が発生したときは,その全てを控訴人と被控訴人亘起との間で2分の1ずつ配分する。 イ本件各商標権について本件各商標権に係る商標は,それぞれ,「ヘルスカーボン」及び「ヘルスカーボン開発者A」というものであって,いずれも本件特許権の内容として知られている「ヘルスカーボン」の語を商標として確保し,これによって,A の開発したヘルスカーボン技術の成果である利益を確保しようとするものである。そして,本件共有合意は,A が開発した技術の成果として将来発生する権利及び利益の2分の1を全て控訴人に帰属させることを内容とするものであるから,本件各商標権は,本件共有合意の対象に含まれる。 ウ本件各合意の成立を裏付ける事実について本件各合意については,契約書は存在しないが,次の事実により,その成立が裏付けられる。 (ア) 平成11年7月26日に控訴人,被控訴人亘起,有限会社豊産業及び協和酵工業株式会社の4社間で締結された製造委託契約(以下「本件製造委託契約」という。甲5の1)の契約書には,協和酵工業が,控訴人及び被控訴人亘起の発明の権利を争わず,控訴人及び被控訴人亘起が,当分の間,協和酵工業に対して発明の実施料を請求しない旨の条項がある(第1条⑩)。 (イ) 本件製造委託契約に係る代金の決済は,協和酵工業が発行する手形を豊産業において現金化し,これを控訴人の口座に振込む方法で行うことになっていたところ,協和酵工業が振り出した約束手形2通(額面合計400万円)は,平成13年8月,現金化されずにそのまま控訴人の下に送られてきたので,B 弁護士は,これを手形割引により現金化(398万円)した上で,その2分 酵工業が振り出した約束手形2通(額面合計400万円)は,平成13年8月,現金化されずにそのまま控訴人の下に送られてきたので,B 弁護士は,これを手形割引により現金化(398万円)した上で,その2分の1に当たる199万円を被控訴人亘起に対し振込送金した(甲23~25)。 (ウ) 控訴人及び被控訴人亘起は,平成16年2月12日,人用ヘルスカーボンに「ヘルスカーボン」の表示を付して販売しようとした会社に対し,特許権及び商標権侵害であると記載した警告書を連名で発出した(甲6)。 エ被控訴人らの主張に対する反論B 弁護士作成の告訴状(乙7)は,保護法益の明確化が特に要求されることから,対外的に法律関係を単純化するためにあえて内部的に共有関係にあることを開示しなかったにすぎず,B 弁護士の認識をそのまま反映したものではない。現に,上記告訴状より後に作成された警告書(甲6)には,ヘルスカーボンに関する無体財産権を控訴人と被控訴人亘起とが共有している旨が明記されている。 オ結論よって,控訴人は,被控訴人亘起に対し,本件各合意に基づき,本件発明の実施品であるヘルスカーボンの取引による被控訴人亘起の売上げ合計3億8658万1675円の2分の1である1億9329万0838円及び訴状送達の日の翌日である平成21年9月6日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めることができるほか,後記の債権者代位権の行使又は詐害行為取消権の行使により被控訴人亘起が本件特許権及び本件各商標権の登録名義を回復することを前提として,これらの持分2分の1について移転登録手続を求めることができる。 〔被控訴人らの主張〕ア本件各合意の成立を否認する。 イ本件各合意については,これを証すべき書面もなく,本件特許権又は本件各商標権を 分2分の1について移転登録手続を求めることができる。 〔被控訴人らの主張〕ア本件各合意の成立を否認する。 イ本件各合意については,これを証すべき書面もなく,本件特許権又は本件各商標権を共有とするには,A があらかじめ特許又は商標登録を受ける権利を控訴人と被控訴人亘起に承継させ,両社に出願させれば足りたのであって,控訴人主張のような迂遠な方法によるべき合理的な理由はない。 仮に,本件各合意が成立していたのであるならば,A は,本件特許権及び本件各商標権の成立後に本件各合意に基づく義務を容易に履行できたし,履行がなかった場合,控訴人の取締役であったB 弁護士も,これに対して異議を述べるなどしていたはずである。しかし,現実にはそのようにされた事実はなく,むしろ,B 弁護士は,平成14年12月15日付けで作成した告訴状において被控訴人亘起が本件特許権等を有する旨を記載している(乙7)ところ,このことは,控訴人及び被控訴人亘起の両社の代表取締役であったA にその意思がなかったことの現れである。 また,本件各合意に関するC の供述は,例えば売上金を分割するのか費用を控除した利益を分割するのかといった重要な点が曖昧であるし,本件配分合意があったとすれば,控訴人及び被控訴人亘起の両社の業務を執行していたA は,そのような業務処理をしたはずであるが,そのような事実はなく,ヘルスカーボンの取引は,全て被控訴人亘起の名義でされ,売上金も,控訴人には入金されていない。 ウ商標権は,商標ごとに発生するものであり,どのような商標が発生するのが本件共有合意当時に判明していなかった以上,本件各商標権は,本件共有合意の対象に含まれるものではない。 (2) 争点2(利益相反取引及び本件義務の成否)について〔被控訴人らの主張〕ア利益相反取引 有合意当時に判明していなかった以上,本件各商標権は,本件共有合意の対象に含まれるものではない。 (2) 争点2(利益相反取引及び本件義務の成否)について〔被控訴人らの主張〕ア利益相反取引について仮に,本件各合意が成立したとしても,本件各合意は,A が控訴人及び被控訴人亘起の双方を代表してされたものであって,A の被控訴人亘起に対する利益相反取引であり,被控訴人亘起の社員総会の特別決議による認許が必要であった(平成17年法律第87号による廃止前の有限会社法(以下「法」という。)30条1項,29条1項,48条1項)。 しかるに,上記特別決議による認許の事実はなく,かつ,控訴人代表者であるA は,このことについて悪意であったから,被控訴人亘起は,控訴人に対し,その無効を主張できる。 イ控訴人の主張に対する反論被控訴人亘起は,控訴人主張のような事実関係から知的財産権やその実施による利益を控訴人に帰属させる義務(本件義務)を負うものではなく,控訴人の主張を争う。 〔控訴人の主張〕ア本件各合意に対する認許について控訴人の株主は,当時,A(40%),B 弁護士(30%)及びC(30%)であり,B 弁護士及びC は,控訴人の取締役でもあったが(甲15,乙3),A による本件各合意を承諾した。 被控訴人亘起の社員は,当時,A(20口),D(A の妻。22口)及びA 夫妻の3人の子(各6口。以上合計60口)であるとされている(乙8)が,D も,本件各合意に同意した。 イ権利利益の欠如について被控訴人亘起は,昭和57年3月11日,株式会社として設立され,平成8年3月1日,資本金が300万円に増額された上で有限会社に組織変更されたものであって,その際の社員は,前記アに記載のとおりであるとされている(乙5,8)。 し 月11日,株式会社として設立され,平成8年3月1日,資本金が300万円に増額された上で有限会社に組織変更されたものであって,その際の社員は,前記アに記載のとおりであるとされている(乙5,8)。 しかしながら,これらのA 以外の社員は,その年齢等に鑑みると,昭和57年の会社設立当時,自らの資金で出資をしたとは考えられず,現に,A は,昭和61年12月12日,控訴人を設立するに当たって資本金を全額出資している。 このように,A 以外の社員は,A に対抗する独自の利益を主張する権利利益を有する者とは認められず,被控訴人亘起は,A の個人会社というべきものであったから,A による本件各合意は,被控訴人亘起との間での利益相反取引には当たらない。 ウ本件義務の成立について(ア) A は,控訴人設立当時(昭和61年12月12日)から,専ら自己が代表者である控訴人の名において技術開発活動を行っており,その成果である特許権等を全て控訴人に帰属させる方針を採っていたところ,B 弁護士は,平成5年頃から,A の依頼により控訴人に資金援助をするようになり,平成10年頃には,控訴人に対し,約1億円を超える債権を有するに至った(甲10,26)。そこで,A は,平成5年以降,控訴人のB 弁護士に対する上記債務を弁済させるため,A の技術開発活動の成果である特許権等を全て控訴人に帰属させるべき法的義務を負っていた。 しかるに,A は,上記義務に反して,自己が代表者である被控訴人亘起を出願人として本件発明に係る特許出願をした(甲33の2,甲34の1)。 以上のような事実関係の下においては,被控訴人亘起は,控訴人に対し,A の技術開発活動の成果として取得した上記特許権等の知的財産権やその実施による利益を帰属させる義務(本件義務)を負っていたとみるべきである。 な事実関係の下においては,被控訴人亘起は,控訴人に対し,A の技術開発活動の成果として取得した上記特許権等の知的財産権やその実施による利益を帰属させる義務(本件義務)を負っていたとみるべきである。 そして,本件各合意は,既に存在している本件義務(債務)の2分の1の履行を実現させることを内容とするものであり,その余の2分の1については和解をしたにすぎないから,民法108条ただし書所定の「債務の履行」に該当し,同条本文の適用は除外される。 (イ) 仮に,本件各合意の成立が認められず,あるいは本件各合意が利益相反取引に該当するとしても,控訴人は,被控訴人亘起に対し,本件義務に基づく権利に基づき,本件発明の実施品であるヘルスカーボンの取引による被控訴人亘起の売上げ合計3億8658万1675円の2分の1である1億9329万0838円及び訴状送達の日の翌日である平成21年9月6日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めるほか,後記の債権者代位権又は詐害行為取消権により被控訴人亘起が本件特許権及び本件各商標権の登録名義を回復するこ とを前提として,これらの持分2分の1について移転登録手続を求めることができる。 (3) 争点3(債権者代位権行使による本件各合意の成否)について〔控訴人の主張〕ア前記(2)〔控訴人の主張〕ウ(ア)に記載のとおり,控訴人は,B 弁護士に対して多額の債務を負っており,被控訴人亘起は,控訴人に対し,本件義務を負っていた。 したがって,B 弁護士は,控訴人に対する上記債権を被保全債権として,本件義務に基づく控訴人の被控訴人亘起に対する知的財産権の引渡請求権及び利益返還請求権の全部について,控訴人に代位して債権者代位権を行使することができた。 イ B 弁護士は,平成10年頃,控訴人 ,本件義務に基づく控訴人の被控訴人亘起に対する知的財産権の引渡請求権及び利益返還請求権の全部について,控訴人に代位して債権者代位権を行使することができた。 イ B 弁護士は,平成10年頃,控訴人の取締役会において,A が被控訴人亘起を出願人として本件発明に係る特許出願をしたことを知ったことから,自己の控訴人に対する前記債権を保全するため,本件義務のうち2分の1を限度として控訴人に代位し,被控訴人亘起の代表者であるA との間で本件各合意を締結した(甲5の2・3,甲15,30,43)。 なお,本件各合意は,一種の和解契約で,申込みと承諾とにより成立したものであって,申込み及び承諾は,厳格な意味で権利ではないが,権利でないという形式的理由によって,債権者代位権の対象となり得ないとするのは妥当ではなく,その実質的性質に従って判断すべきである。そして,本件では,その実質的性質に鑑みると,本件各合意は,被控訴人亘起の代表者であるA の申込みを,B 弁護士が控訴人に代位して控訴人の名により承諾したことによって成立したものというべきである。 〔被控訴人らの主張〕争う。債権者代位権をもって本件各合意のような契約の締結(申込み及び承諾) をすることはできない。 (4) 争点4(債権者代位権行使の可否)について〔控訴人の主張〕ア被控訴人ヘルスカーボンは,被控訴人亘起に対し,本件売買契約の代金を支払った形跡がなく,現実に,被控訴人亘起は,無資力となっているのに,被控訴人ヘルスカーボンに対して,本件売買契約の無効を主張して原状回復を求めようとしていない。 したがって,被控訴人亘起と被控訴人ヘルスカーボンとは,通謀して,被控訴人亘起が控訴人に対して負っていた本件各合意に基づく債権又は本件義務に基づく権利の実現を不能又は困難ならしめる目 ていない。 したがって,被控訴人亘起と被控訴人ヘルスカーボンとは,通謀して,被控訴人亘起が控訴人に対して負っていた本件各合意に基づく債権又は本件義務に基づく権利の実現を不能又は困難ならしめる目的のもとに,本件売買契約を締結して本件特許権及び本件各商標権の移転登録手続を完了させたものと認められ,本件売買契約は,民法90条に該当し,公序良俗に違反して無効である。 イよって,控訴人は,被控訴人ヘルスカーボンに対し,本件各合意に基づく債権を保全するため,仮に本件各合意の成立が認められないとしても,本件義務に基づく権利を保全するため,民法423条に基づき,被控訴人亘起に代位して,本件売買契約に基づく本件特許権及び本件各商標権についての移転登録の抹消登録手続を求めることができる。 〔被控訴人らの主張〕争う。 (5) 争点5(詐害行為取消権行使の可否)について〔控訴人の主張〕ア被控訴人亘起は,本件売買契約の結果,何ら資産を有しないこととなることを知りながら,本件売買契約を締結して本件特許権及び本件各商標権の移転登録手続を完了させ,その結果,現実に無資力となった。 被控訴人ヘルスカーボンは,本件売買契約の結果,被控訴人亘起が無資力となることを知っていた。 イよって,控訴人は,仮に,本件各合意の成立が認められず,かつ,控訴人が債権者代位権を行使できないとしても,本件義務に基づく金銭債権を保全するため,民法424条に基づき,本件売買契約の取消し並びに本件特許権及び本件各商標権についての移転登録の抹消登録手続を求めることができる。 〔被控訴人らの主張〕争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実当事者間に争いのない事実,証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実を認めることができる。 (1) 被控訴人亘起は,昭 〔被控訴人らの主張〕争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実当事者間に争いのない事実,証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実を認めることができる。 (1) 被控訴人亘起は,昭和57年3月11日,株式会社として設立され,昭和62年5月31日,A が代表取締役に就任し,平成8年3月1日,有限会社に組織変更をした。被控訴人亘起の社員は,その際,A(出資口数は,20口),A の妻であるD(同じく22口)及びA 夫妻の3名の子(同じく各6口で合計18口)とされた(甲41,乙1,2,4,5,8)。 (2) A は,それまで技術者として勤務していたテルモ株式会社を退職の上で,昭和61年12月12日,自己が全額を出資して控訴人を設立し,その代表取締役に就任して自己の発明に係る事業活動を開始した。しかし,控訴人の経営が思わしくなかったことから,A の知人であったB 弁護士は,平成5年1月頃から,A の依頼に応じて控訴人に対する融資を重ねるようになった。そして,A,B 弁護士及びC(A の知人であり他の会社の経営者でもあった。)は,当時の商法改正により控訴人の資本金を増加させなければならなくなったこともあり,平成6年3月31日,増資に併せて控訴人の株式のうちA が4割を,B 弁護士及びC がそれぞれ3割を取 得し,控訴人の収益もこの割合で配分することとし,併せて,「三者の信頼関係が子子孫孫に至るまで継続するよう格別の配慮をするものとする。」(第3条)などと記載した覚書(甲15)を作成した。B 弁護士及びC は,平成8年3月1日,控訴人の取締役に就任したが,控訴人の経営は,その後も好転せず,B 弁護士の控訴人に対する融資は,平成10年末の時点で,合計5141万5862円に達していた(甲10,15,26~28,30,43,乙3, 人の取締役に就任したが,控訴人の経営は,その後も好転せず,B 弁護士の控訴人に対する融資は,平成10年末の時点で,合計5141万5862円に達していた(甲10,15,26~28,30,43,乙3,当審控訴人代表者)。 (3) 控訴人及び被控訴人亘起は,かねてよりA による発明について特許出願をしてきたが,被控訴人亘起は,平成8年12月27日,A による本件発明について特許出願をした(甲34)。 (4) 被控訴人亘起は,本件発明の実施品であるヘルスカーボンの販路の開拓に当たったところ,協和酵工業及び豊産業が製造委託契約に応じてくれることとなったので,被控訴人亘起代表者兼控訴人代表者であるA は,平成10年頃,B 弁護士の事務所で開かれた毎月恒例の控訴人の取締役会において,B 弁護士に対してその契約書の作成を依頼した。しかしながら,B 弁護士は,控訴人に対する融資が高額なものになっている上に,A との信頼関係に関する前記覚書の記載もあったことから,当該融資に対する返済資金を確保するため,A がした発明に係る特許権及びその収益はいずれも控訴人に帰属させるべきものであると考えていた。そのため,B 弁護士は,被控訴人亘起が本件発明に係る特許出願の出願人となっていることを知って立腹し,A を叱責した。A は,B 弁護士に対して謝罪し,併せて,本件発明に係る特許出願が特許査定されて登録された際には,本件特許権の持分2分の1を控訴人に移転すること及び本件発明により生じる売上げの2分の1を控訴人に帰属させることを申し出たところ,B 弁護士も,この申出を了承した(甲26,30,43,当審控訴人代表者)。 (5) 控訴人,被控訴人亘起,協和酵工業及び豊産業は,平成11年7月26日,B 弁護士が起案した草案(甲5の2・3)に基づいて本件発明の実施品であ た(甲26,30,43,当審控訴人代表者)。 (5) 控訴人,被控訴人亘起,協和酵工業及び豊産業は,平成11年7月26日,B 弁護士が起案した草案(甲5の2・3)に基づいて本件発明の実施品であるヘルスカーボンの製造委託契約(本件製造委託契約)を締結した。その契約書には, 第1条⑩として,「甲(協和酵工業)は,乙(控訴人)及び丙(被控訴人亘起)の権利を争わないものとする。乙及び丙は,当分の間,甲に対し,発明の実施料を請求しない。」という条項がある(甲5の1)。 本件製造委託契約に基づく代金は,協和酵工業が豊産業に対して手形を振り出して支払い,豊産業がそれを現金化して控訴人及び被控訴人亘起物産に支払うこととされたが,豊産業は,平成13年8月頃,手形2通(額面合計400万円)を現金化せずにB 弁護士に交付した。そこで,B 弁護士は,これを手形割引により現金化した上で,同月22日,その半額である199万円を被控訴人亘起に送金した(甲23~25)。 (6) 被控訴人亘起は,平成12年1月14日,別紙商標権目録1記載の商標権について出願し,平成13年12月21日,商標登録を受けたほか,平成12年7月18日,別紙商標権目録2記載の商標権について出願し,平成13年9月14日,商標登録を受けた(甲35,36。本件各商標権)。 (7) A は,被控訴人亘起と以前に取引のあった財団法人野口医学研究所の関係者が「ヘルスカーボン」又はその類似の商品名で,ヘルスカーボンとしての性能を有しない物を製造・販売していると考え,B 弁護士に対して,刑事告訴を依頼した。 そこで,B 弁護士は,平成14年12月5日,東京地方検察庁検事正宛ての告訴状を作成したが,そこには,「被告訴人らは,共謀の上,告訴人A が発明し,告訴人亘起物産有限会社(以下告訴人亘起と 頼した。 そこで,B 弁護士は,平成14年12月5日,東京地方検察庁検事正宛ての告訴状を作成したが,そこには,「被告訴人らは,共謀の上,告訴人A が発明し,告訴人亘起物産有限会社(以下告訴人亘起という。)が実施権を有し,かつ,「ヘルスカーボン」の商標権を有する商品「ヘルスカーボン」について,被告訴人らは,告訴人A 又は告訴人亘起の許諾を受けることなく,「ヘルスカーボン」又はその類似の商品名をもって,類似の商品を製造又は販売したものである。」,「「ヘルスカーボン」は,現在特許申請中(平成7年7月20日,…)である。また,告訴人亘起の名義でヘルスカーボンの商標登録(登録番号第4531284号)が得られている。」との記載がある(乙7)。 (8) B 弁護士は,平成16年2月12日,A の依頼を受けて,株式会社マイスキ ィに対し,同社がヘルスカーボンと称する商品を販売して行為を中止するよう求める通告書を作成し,これを内容証明郵便として郵送したが,そこには,「小職は,亘起物産株式会社及び株式会社東京バイテク研究所(以下,委任者と総称する。)より,同会社らの所有する無体財産権の侵害に対する法的措置の一切につき,委任を受けております。」,「ヘルスカーボンは,腸溶性を含めて全て委任者の代表取締役A の開発に係り,委任者においてその特許法上の権利を共有しております。」,「該商品の包装箱には,「ヘルスカーボン」の表示に商標登録(登録番号第4531234号)の記載がなされており,この商標番号は,商標権者たる委任者の登録番号と一致しますが,…委任者の商標権の商標権の直接の侵害であり,…」との記載がある(甲6)。 (9) 被控訴人亘起は,平成13年頃,ビッグウェスト社及び高橋金属工業との間で,それぞれ本件発明の実施品であるヘルスカーボンを継続的に供給 商標権の直接の侵害であり,…」との記載がある(甲6)。 (9) 被控訴人亘起は,平成13年頃,ビッグウェスト社及び高橋金属工業との間で,それぞれ本件発明の実施品であるヘルスカーボンを継続的に供給する取引を開始し,ビッグウェスト社との間では平成12年3月から平成20年2月までの間で総額3億0458万1675円の売上げが,高橋金属工業との間では平成15年8月受注分までで総額8200万円の売上げが,それぞれ発生した(合計3億8658万1675円)。しかし,被控訴人亘起は,これらの売上げについて控訴人に配分をしなかった(甲8,26,38,39,43,当審控訴人代表者)。 (10) 特許庁は,平成19年1月10日,本件発明に係る特許出願について特許査定をし,同年2月9日,特許権者を被控訴人亘起として,本件特許権について設定登録をしたが,A は,同年6月16日,死亡した。 被控訴人亘起は,被控訴人ヘルスカーボンとの間で,平成21年5月15日,本件特許権及び本件各商標権を売却する契約(本件売買契約)を締結し,これらについて同日付けで移転登録をした。 2 争点1(本件各合意の成否)について(1) 本件各合意の成立及び内容についてア控訴人は,被控訴人亘起との間で本件各合意が成立した旨を主張し,B 弁護 士(甲26,原審で陳述されたB 弁護士作成に係る訴状及び準備書面)及びC(甲30,43,当審控訴人代表者)の供述は,これに沿うものである。 イそこで検討すると,B 弁護士及びC の供述については,①本件各合意に至る経緯に関する説明について,控訴人の運営方針及びA との信頼関係を確認する覚書(甲15)やB 弁護士の控訴人に対する多額の融資(甲10)といった裏付けがあること,②これらの経緯を踏まえると,協和酵工業らとの間の契約書作成依 控訴人の運営方針及びA との信頼関係を確認する覚書(甲15)やB 弁護士の控訴人に対する多額の融資(甲10)といった裏付けがあること,②これらの経緯を踏まえると,協和酵工業らとの間の契約書作成依頼に関連して本件発明に係る特許出願が被控訴人亘起によりされていることを知ったB弁護士が立腹し,A が本件各合意の内容を申し出るに至ったことも,自然なこととして理解可能であること,③B 弁護士が起案した本件製造委託契約の契約書草案(甲5の2・3)には,いずれも本件発明に係る特許を受ける権利が控訴人と被控訴人亘起との共有であることを明らかにする記載があり,これを受けて作成された当該契約の契約書(甲5の1)にも,このことを前提とする記載(第1条⑩)があるなど,これらの書面の記載が本件共有合意と一致するという裏付けがあること,④本件製造委託契約に基づく代金について,B 弁護士は,その売上額をそのまま2分の1にした上で被控訴人亘起に送金しており(甲23~25),その代金処理が本件配分合意の内容と一致するという裏付けがあること,⑤A の依頼を受けてB 弁護士が作成した株式会社マイスキィに対する通告書には,控訴人と被控訴人亘起とが本件発明に係る特許法上の権利を共有している旨が記載されており(甲6),本件共有合意の内容と一致するという裏付けがあることを,それぞれ指摘できる。 ウしたがって,本件各合意に関するB 弁護士及びC の供述は,これを信用することができるというべきであって,これらの供述によれば,本件各合意は,前記1(4)に認定のとおり,A がB 弁護士にその内容を申し出ることで,A が代表者である被控訴人亘起と,A が代表者である控訴人との間で締結したものというべきである。 エなお,控訴人は,以上に加えて,本件各商標権についても本件各合意の対象に 内容を申し出ることで,A が代表者である被控訴人亘起と,A が代表者である控訴人との間で締結したものというべきである。 エなお,控訴人は,以上に加えて,本件各商標権についても本件各合意の対象に含まれる旨を主張し,C の供述(甲43,当審控訴人代表者)にはこれに沿う部分もある。 しかしながら,C の上記供述は,当審において本件各商標権についての主張がされてから提出又は供述されたものであって,C 自身,本件各合意に当たって本件各商標権に関する話がされなかったことを自認している(甲43)ばかりか,原審において控訴人訴訟代理人でもあったB 弁護士が作成した書面(甲26を含む。)にも,いずれも本件各商標権についての明確な言及がない。しかも,本件各合意は,前記認定のとおり,平成10年頃,被控訴人亘起が本件発明についての特許出願をしていたことが明らかになったことを契機としてされたものであって,その際にまだ出願されていない本件各商標権についてまで合意がされたとみるのは,それ自体不自然である。さらに,A の依頼に基づいてB 弁護士が作成した告訴状(乙7)には,本件各商標権のうちの1つが被控訴人亘起に帰属することが明記されているばかりか,同じくB 弁護士が作成した通告書(甲6)も,当該商標権が控訴人と被控訴人亘起の総称である「委任者」に帰属すると記載しながらも,特許法上の権利とは異なり,「共有」である旨を記載していない。 以上によれば,本件各商標権についても本件各合意の対象に含まれるとの趣旨のC の供述部分は,これを信用することができず,他に控訴人の上記主張に沿う証拠はない。よって,控訴人の上記主張は,採用できない。 (2) 被控訴人らの主張について以上に対して,被控訴人らは,本件各合意について書面が残されておらず,その内容も不合理で の上記主張に沿う証拠はない。よって,控訴人の上記主張は,採用できない。 (2) 被控訴人らの主張について以上に対して,被控訴人らは,本件各合意について書面が残されておらず,その内容も不合理であり,B 弁護士作成の告訴状(乙7)にもこれに沿う記載がないばかりか,C の供述によっても本件配分合意が売上金の配分なのか費用を控除した利益の配分なのかが曖昧であって,仮に本件各合意が成立していたならばあるべき履行もない旨を主張して,本件各合意の成立を否認する。 しかしながら,A,B 弁護士及びC が平成6年3月31日に作成した覚書(甲15)にも記載のとおり,これらの3者は,平成10年当時,相互に信頼関係を旨としていたから,本件各合意について改めて契約書等が作成されず,控訴人の取締役会において議事録も作成されなかったとしても,不自然であるとはいえない。また, B 弁護士及びC は,いずれも控訴人とは普段は別の業務に従事していたものであるから,A が独自の利益を図り,あるいは本件各合意を履行しないことを十分に監視することができなかったとしても,不自然であるとはいい難いし,本件特許権が設定登録をされたのは,A の死亡の約4か月前であるから,この間に本件各合意に基づく持分の移転登録がされなかったことも,直ちに不合理とまではいえない。むしろ,B 弁護士は,協和酵工業からの本件製造委託契約の代金を単純に2分の1にして被控訴人亘起に送金しており(甲23~25),これに対してA が何らかの異議を申し出たと窺わせるに足りる証拠もない一方,C が当時,控訴人に対してB 弁護士ほどの強い利害関係を有していなかったことや,現在のC の年齢(昭和7年6月27日生)等を考慮すると,C において本件配分合意の対象その他の詳細な点について記憶が曖昧であることも, 対してB 弁護士ほどの強い利害関係を有していなかったことや,現在のC の年齢(昭和7年6月27日生)等を考慮すると,C において本件配分合意の対象その他の詳細な点について記憶が曖昧であることも,やむを得ないといえる。さらに,B 弁護士作成の告訴状(乙7)も,被控訴人亘起が本件発明の特許出願人であることを当時の状況に合わせて正確に記載しているにとどまるから,本件各合意の成立に関する前記認定を左右するに足りるものではない。 したがって,被控訴人らの上記主張は,これを採用できない。 (3) 小括以上のとおり,本件各合意の成立に関するB 弁護士及びC の供述は,これを信用でき,控訴人と被控訴人亘起との間で,A が両社を代表して,本件特許権を対象とする本件共有合意及び本件発明に係る実施品の売上金を2分の1で配分する本件配分合意(本件各合意)を締結した事実を認めることができるが,本件各合意が本件各商標権を対象に含むものとまでは認めることができない。 3 争点2(利益相反取引及び本件義務の成否)について(1) 利益相反取引の該当性について被控訴人らは,本件各合意が利益相反取引に該当し無効である旨を主張する。 そこで検討すると,法29条1項は,「取締役ガ自己又ハ第三者ノ為ニ会社ノ営業ノ部類ニ属スル取引ヲ為スニハ社員総会ニ於テ其ノ取引ニ付重要ナル事実ヲ開示 シ其ノ認許ヲ受クルコトヲ要ス」と規定し,同条2項は,ここにいう認許について法48条所定の決議(総社員の半数以上で総社員の議決権の4分の3以上を有する者の同意をもってするもの)によることを要する旨を規定している。 そして,本件各合意は,前記のとおり,A が控訴人及び被控訴人亘起の両社を代表して,被控訴人亘起の営業の部類に属するヘルスカーボンの帰属及びこれに基づく売上金に関して締結 要する旨を規定している。 そして,本件各合意は,前記のとおり,A が控訴人及び被控訴人亘起の両社を代表して,被控訴人亘起の営業の部類に属するヘルスカーボンの帰属及びこれに基づく売上金に関して締結したものであるから,被控訴人亘起に着目した場合,その取締役であるA が,その営業の部類に属する取引を,第三者である控訴人のためにしたものというほかない。 したがって,本件各合意は,法29条1項に該当する利益相反取引であるというべきである。 (2) 本件各合意に対する認許について控訴人は,本件各合意については法29条1項所定の認許があった旨を主張するもののようである。 しかしながら,前記1(1)に認定のとおり,被控訴人亘起の平成10年当時の総社員は,5名(A,D 及びA 夫妻の3名の子)であり,その出資は合計60口であったが,控訴人は,その総社員の半数以上で総社員の議決権の4分の3以上の同意をもって本件各合意について認許があったことについて,十分な主張をしておらず,また,その許諾を裏付けるに足りる証拠も提出していない。 よって,本件各合意については,被控訴人亘起において認許があったと認めることはできず,控訴人の上記主張を採用することはできない。 (3) 権利利益の欠如について控訴人は,A 以外の被控訴人亘起の社員には,A に対抗する独自の利益を主張する権利利益がないから,本件各合意が利益相反取引には当たらない旨を主張する。 しかしながら,D 及びA 夫妻の3名の子は,いずれも被控訴人亘起の社員として登記されていて,かつ,実在していたことが証拠上明らかであるから,それにもかかわらず,D 及びA 夫妻の3名の子が被控訴人亘起の実質的な社員ではなく,A1 人が同被控訴人の社員であったと認めるに足りる主張立証もない本件においては,控 上明らかであるから,それにもかかわらず,D 及びA 夫妻の3名の子が被控訴人亘起の実質的な社員ではなく,A1 人が同被控訴人の社員であったと認めるに足りる主張立証もない本件においては,控訴人の上記主張は,それ自体失当というほかなく,これを採用することはできない。 (4) 本件義務の成立について控訴人は,本件各合意に至る事実関係を根拠に,A がその技術開発活動の成果を全て控訴人に帰属させる義務を負っており,したがって,被控訴人亘起が自己に帰属した当該成果を控訴人に対して帰属させる義務(本件義務)を負っていた旨を主張し,このことを前提として,本件各合意が利益相反取引には該当しない旨を主張する。 しかしながら,控訴人の上記主張は,何ら法的な根拠を有するものではなく,独自の見解というほかない。 よって,控訴人の上記主張は,それ自体失当であって,本件義務の成立を前提とする控訴人の主張は,いずれも採用できない。 (5) 小括以上によれば,本件各合意は,その成立を認め得るとしても,法29条1項に反するものとして無効といわなければならないから,控訴人は,結局のところ,本件各合意に基づき,被控訴人らに対して本件請求に係る請求をすることができないというほかない。 4 結論以上の次第であるから,控訴人の原審における請求を棄却した原判決は,結論において正当であり,本件控訴は棄却されるべきものであるほか,控訴人の当審における拡張請求及び追加請求も,その理由がないものとして,棄却されるべきものである。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官滝澤孝臣 裁判官井上泰人 裁判官荒井章光 (別紙)特許権目 判官滝澤孝臣 裁判官井上泰人 裁判官荒井章光 (別紙)特許権目録特許番号特許第3914265号出願年月日平成8年12月27日出願番号 10-506775査定年月日平成19年1月10日登録年月日平成19年2月9日発明の名称新規吸着剤登録事項順位1番亘起物産有限会社平成19年2月9日登録順位2番特定承継による本権の移転ヘルスカーボン株式会社平成21年5月15日受付 (別紙)商標権目録 1 商標登録番号登録第4531284号出願年月日平成12年1月14日出願番号 2000-1940査定年月日平成13年11月27日区分の数 5商品及び役務の区分第1類,第29類,第30類,第31類,第32類登録年月日平成13年12月21日商標標準文字ヘルスカーボン登録事項順位1番亘起物産有限会社平成13年12月21日登録順位2番特定承継による本権の移転ヘルスカーボン株式会社平成21年5月15日受付 2 商標登録番号登録第4506481号出願年月日平成12年7月18日出願番号 2000-80043査定年月日平成13年8月23日区分の数 3商品及び役務の区分第1類,第29類,第30類登録年月日平成13年9月14日商標標準文字ヘルスカーボン開発者 A 博士登録事項順位1番亘起物産有限会社 平成13年9月14日登録順位2番特定承継による本権の移転ヘルスカーボン株式会社平成21年5月15 ヘルスカーボン開発者 A 博士登録事項順位1番亘起物産有限会社 平成13年9月14日登録順位2番特定承継による本権の移転ヘルスカーボン株式会社平成21年5月15日受付

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