- 1 -平成30年2月2日判決言渡平成29年(行コ)第146号相続税更正処分取消等請求控訴事件(原審大阪地方裁判所平成24年(行ウ)第259号)主文 1 本件控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は,控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 控訴人X1関係(1) 原判決中控訴人X1に関する部分を,次のとおり変更する。 (2) P1が平成23年2月18日付けで控訴人X1の相続税についてした更正処分のうち納付すべき税額5億1418万2200円を超える部分を取り消す。 2 控訴人X2,同X3関係(1) 原判決中控訴人X2及び同X3に関する部分を取り消す。 (2) P1が平成23年2月18日付けで控訴人X2の相続税についてした更正処分のうち納付すべき税額5億3537万2000円を超える部分を取り消す。 (3) P1が平成23年12月12日付けでした控訴人X2の相続税に係る更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分を取り消す。 (4) P1が平成23年2月18日付けで控訴人X3の相続税についてした更正処分のうち納付すべき税額5億6872万9700円を超える部分を取り消す。 (5) P1が平成23年12月12日付けでした控訴人X3の相続税に係る更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分を取り消す。 3 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。 - 2 -第2 事案の概要以下で使用する略称は,原判決の例による。 1 本件は,平成21年▲月▲日に死亡したB(亡B)の相続人である控訴人らが,亡Bの死亡により開始した相続(本件相続)について共同でした相続税の申告(本件申告)につき,本件相続により取 例による。 1 本件は,平成21年▲月▲日に死亡したB(亡B)の相続人である控訴人らが,亡Bの死亡により開始した相続(本件相続)について共同でした相続税の申告(本件申告)につき,本件相続により取得した財産(本件相続財産)のうち,原判決別紙1「物件目録」記載の各不動産(本件各不動産)の評価額が過大であったなどとして二度にわたり更正の請求をそれぞれしたところ,P1が当初の請求(本件第1次各更正の請求)に対しては各更正処分(本件各更正処分)を,再度の請求(本件第2次各更正の請求)に対しては更正をすべき理由がない旨の各通知処分(本件各通知処分)をそれぞれしたため,本件各処分がいずれも違法であるとして,被控訴人を相手に,本件各更正処分のうち上記各請求記載の納付すべき税額を超える部分の各取消し及び本件各通知処分の各取消しを求める事案である。 2 関係法令等の定め,前提事実,本件各処分の根拠及び適法性に関する被控訴人の主張並びに争点及びこれに関する当事者の主張は,当審における控訴人らの主張を後記3に加えるほか,原判決の「事実及び理由」中の第2の2から第2の5(原判決3頁23行目から8頁16行目まで。ただし,この部分で引用する原判決別紙1から別紙6までを含む。)に記載のとおりであるから,これを引用する。 ただし,原判決別紙6「特別の事情に関する当事者の主張」E土地の原告らの主張欄7行目の「約40%」を「約58%」に改める。 3 当審における控訴人らの主張(1) 甲土地の評価についてア原判決は,甲土地のように既に宅地として造成されているのであれば,広大地補正をする必要はないとする。 しかし,甲土地は,昭和44年の都市計画法施行前から現況の宅地が形 - 3 -成されていたものであり,甲土地には,公共公益的施設用地のうち,十 あれば,広大地補正をする必要はないとする。 しかし,甲土地は,昭和44年の都市計画法施行前から現況の宅地が形 - 3 -成されていたものであり,甲土地には,公共公益的施設用地のうち,十分な広さの道路は確保されておらず,公園は全く確保されていない。甲土地のような多数の区画に分かれた土地を買い受ける者は,底地や貸家建付地の買い取りを専門とする開発業者に限られるところ,そのような業者が新規に宅地分譲する場合,3000㎡以上の開発に当たり,α市開発指導要綱21条が適用され,公園用地などのつぶれ地が発生する。したがって,相続時の時価を算定するに当たっては,本来,広大地補正を適用する必要がある(評価通達では上記補正はできないので,評価通達によっては適正な時価を算定することができない特別な事情があることになる。)。 イ原判決は,甲土地の各区画の権利関係等の個別的事情は,評価通達による評価においても,貸宅地や貸家建付地としての評価方法(評価通達25,26)によって,評価額に反映されているとする。 しかし,底地を評価する場合,個別的事情として,不動産鑑定評価基準が求める総合的勘案事項である「将来における賃料の改定の実現性と程度」「借地権の態様及び建物の残存耐用年数」などの事情が考慮されるべきであるが,評価通達において,そのような事情は考慮されていない。 また,評価通達が,三大都市圏における市街化区域では,広大地に該当する条件として500㎡以上としている。このことから,評価通達では,本来,宅地の単位評価の基準として500㎡未満を想定しており,甲土地のような広大な宅地を想定していない。 これらの点でも,甲土地には,評価通達によっては適正な時価を算定することができない特別の事情がある。 ウ甲土地の評価は,相続時点での客観的価値 り,甲土地のような広大な宅地を想定していない。 これらの点でも,甲土地には,評価通達によっては適正な時価を算定することができない特別の事情がある。 ウ甲土地の評価は,相続時点での客観的価値とすべきであるが,甲土地付近の公示地価の推移(年率6.0%の割合で下落中)に照らせば,甲土地の全てを早期に売却せざるを得ず,そのためには一括売却しなければならない。甲土地の全てを早期に売却せざるを得ない合理的な理由や一括売却 - 4 -の必要性を否定し,甲土地の最有効使用は各区画を宅地として利用することとした原判決は誤りである。 そして,評価通達では,上記のような減価要因は考慮されていないので,甲土地には,評価通達によっては適正な時価を算定することができない特別な事情が存する。 (2) 乙土地の評価についてア広大地補正は,本来土地の面積に応じて比例的に減額する評価方法であり,がけ地といった土地の形状や土地の個別要因は反映されない。したがって,原判決が,広大地補正における補正率の算定過程において,がけ地が存在するという事実が考慮されていると判断したのは誤りである。 イ原判決は,乙土地の周辺もがけ地であることからすると,がけ地であることが正面路線価に反映されているとも考えられるとするが,乙土地の正面路線価の南側地区はがけ地ではないから,そのようにいうことはできない。 ウまた,原判決が指摘する9件の取引事例は,取引事例比較法によって乙土地の評価をする際に,比準・採用できるものではない。 (3) A土地の評価についてア A土地は,南東向き傾斜の地勢下にある粗造成地であるから,擁壁工事のほか盛土などの土地の区画又は形質に変更を加える「宅地造成工事」が必要である。 しかも,A土地は,市街化区域にある500㎡を超える土地であ 南東向き傾斜の地勢下にある粗造成地であるから,擁壁工事のほか盛土などの土地の区画又は形質に変更を加える「宅地造成工事」が必要である。 しかも,A土地は,市街化区域にある500㎡を超える土地であり,開発行為(上記宅地造成を含む。)のためには,β市長の許可が必要であるが,西側位置指定道路は4mであり,条件(接続道路及び敷地内道路の幅は6m)を満たさない。都市計画法及び兵庫県β市の開発指導に従うと,最初に売却した区画(500㎡未満)に建物が建築されて完了検査が済んだ時点以降に隣の区画(前同様)につき開発許可を得る形で順次開発する - 5 -しかないことになる。評価通達の各補正によっては,このような事情は反映されない。 したがって,A土地は,評価通達によって適正な時価を算定することができない特別の事情がある。 イ一度に4区画に分筆して順次宅地造成工事を行って売却することができることを前提とした原判決は誤りである。 また,A土地付近の公示地価が数年にわたって下落していることに照らせば,甲土地の全てを早期に売却せざるを得ない合理的理由がないとはいえず,この点でも原判決は誤りである。 (4) D土地の評価についてア市街化調整区域に存する雑種地を評価する場合に,付近の宅地の価額を基として評価する場合(宅地比準)における法的規制等(開発行為の許可,建築制限等)にかかる「しんしゃく割合(減価率)」は,50%,30%又は0%とされており,40%という数字はない。 原判決が採用する雑種地補正率0.6(減価率40%)は,γ市の職員の回答によるものにすぎず,何ら根拠のない数字である。 イまた,原判決は,法地が存在するという事情は,宅地造成が必要であるという点で評価額を減少させるものであるが,雑種地補正は,宅地造成が必要で 回答によるものにすぎず,何ら根拠のない数字である。 イまた,原判決は,法地が存在するという事情は,宅地造成が必要であるという点で評価額を減少させるものであるが,雑種地補正は,宅地造成が必要であるという事情をも含めてされたものであると説明する。しかし,評価通達82は宅地造成が必要であるという事情について触れておらず,「評価通達の解説(乙40)」においても,宅地に比準する場合のしんしゃく割合(減価率)を説明するに当たり,宅地造成が必要であるという事情について触れていない。したがって,原判決の上記説明は根拠がない。 (5) E土地の評価についてア E土地は,兵庫県の急傾斜地崩壊対策工事の対象となるほど崩落の危険のあるがけ地であり,急傾斜地崩壊危険区域に指定された範囲は,E土地 - 6 -の北東端の一部を除くほぼ全域である。急傾斜地崩壊危険区域に指定されると,① 水を放流し,停滞させる行為,② 工作物の設置,改造,③ のり切り,切土,掘削,盛土,④ 立木竹の伐採等について,県土木事務所から許可を受けなければならないものとされている。兵庫県が行った急傾斜地崩壊対策工事において,控訴人らから借地することとなった部分(対象となった土地)は,E土地の58%に及ぶ。 イがけ地補正は,がけ地等を理由に通常の用途に供することができない面積に応じて行われるべきものであるところ,評価通達の定めるがけ地補正は,がけ地の方位が当該土地の南側である場合,最大でも0.7の補正率にとどまる。したがって,評価通達は,通常の用途に供することができないと認められる部分の面積が約58%に及ぶE土地には妥当しない。 (6) Fマンションの評価についてFマンションは,主たる建物と附属建物からなる特異な設計であり,管理費及び修繕積立金等の月額が8万568 る部分の面積が約58%に及ぶE土地には妥当しない。 (6) Fマンションの評価についてFマンションは,主たる建物と附属建物からなる特異な設計であり,管理費及び修繕積立金等の月額が8万5680円と高額であって,一般向けファミリー型分譲マンションとは異なる。 原判決は,管理費や修繕積立金等は区分所有者が他の区分所有者に対して有する債権であるから,建物の価値に含めることはできず,Fマンションの管理費や修繕積立金等は,Fマンションの客観的交換価値とは無関係であるとした。しかし,管理費及び修繕積立金等を滞納すると,その徴収のために強制執行が申し立てられ,その手続においては当該物件の価額が低下するほか,一般の市場でも,管理費及び修繕積立金等が高い物件は,それが低い物件と比較して収益価格が低下し,その評価額も低くなるものである。 したがって,管理費及び修繕積立金等がFマンションの客観的交換価値とは無関係であるとした原判決は誤りである。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人X1の請求は,原処分1のうち納付すべき税額5億78 - 7 -30万4100円を超える部分を取り消し,本件各通知処分のうち控訴人X1に対するものを取り消す限度で理由があるが,その余の控訴人らの請求は理由がないと判断する。その理由は,次のとおり補正し,後記2のとおり当審における控訴人らの主張に対する判断を加えるほか,原判決「事実及び理由」中の第3の1から第3の9まで(原判決8頁18行目から19頁8行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 ただし,原判決15頁13行目及び23行目の「約40%」をいずれも「約58%」に改める。 2 当審における控訴人らの主張に対する判断(1) 甲土地の評価についてア甲土地において予想される開発 し,原判決15頁13行目及び23行目の「約40%」をいずれも「約58%」に改める。 2 当審における控訴人らの主張に対する判断(1) 甲土地の評価についてア甲土地において予想される開発行為控訴人らは,甲土地を購入する開発業者が新規に宅地分譲する場合,3000㎡以上の開発に当たり,α市開発指導要綱21条が適用されるため,公園用地などのつぶれ地が発生すると主張する。 確かに,甲土地を処分するに当たり,開発業者に売却し,同業者が,一定程度の広さを有する土地について再開発した上,分譲する可能性は否定できない(後述するとおり,控訴人らは,平成22年8月31日,甲土地を一括して,業者に売却している〔甲24〕。)。しかし,評価通達は不動産の時価を算定する方法として一般的な合理性を有するとされていることを考慮すると,控訴人が主張する開発行為の内容を当然の前提とすることはできず,評価通達によっては適正な時価を算定することができない特別な事情であるということはできない。 イ個別的事情の反映控訴人らは,評価通達による評価額には,各区画の権利関係の個別的事情等が反映されていないと主張する。 しかし,甲土地を評価通達に従って評価した場合,区画ごとに,① 路 - 8 -線価について,奥行価格補正率,側方路線影響加算率又は二方路線影響加算率による補正がされ,② 不整形地である区画については,不整形地補正率を間口狭小補正率又は奥行長大補正率と比較した上で,不整形地補正がされている上,③ 借地権の目的となっている区画は,借地権価額を控除し,④ 貸家建付地は,自用地価額に借地権割合,借家権割合及び賃貸割合を乗じた価額を自用地価額から控除して,それぞれ価額が算出されており,この評価額の計算過程をみれば,各区画の形状や権利関係等が個別 ,④ 貸家建付地は,自用地価額に借地権割合,借家権割合及び賃貸割合を乗じた価額を自用地価額から控除して,それぞれ価額が算出されており,この評価額の計算過程をみれば,各区画の形状や権利関係等が個別に反映されていることは明らかである。 したがって,各区画の権利関係等の個別的事情は考慮されているということができ,控訴人らの前記主張は理由がない。 ウ一括売却の方法しかないこと控訴人らは,甲土地の評価額は,開発業者が全体を一括して処分する場合の評価額によるべきであり,かつ,その場合には,評価通達が定める方法によることは著しく不適当であるから,他の合理的な方法である甲11号証の鑑定評価書が採用する方式によるべきであると主張する。 確かに,控訴人らが,甲土地の各区画を個別に売却しようとすると,長時間を要することが容易に推認される。 実際にも,控訴人らは,平成22年8月31日,代金を合計3億5000万円とし,売買代金を同年10月22日までに支払う約定で,甲土地及び甲土地上の控訴人ら所有建物を株式会社藤原興産に売却する旨の売買契約を締結した(甲24)。 しかし,だからといって,甲土地の処分には一括売却の方法しかないということにはならず(既に区画されて宅地として利用されているのであるから,順次売却するのが自然であり,短期間の内に売却しなければならないという事情を認めるに足りる証拠もない。),評価通達を使用できない特別な事情があるということはできない。 - 9 -エなお,控訴人らは,平成29年度税制改正の大綱において,広大地の評価について,現行の面積に比例的に減額する評価方法から,各土地の個性に応じて形状・面積に基づき評価する方法に見直すとしていることから,従来の広大地補正が土地の個別的要因に係る補正が全て考慮されたもの 価について,現行の面積に比例的に減額する評価方法から,各土地の個性に応じて形状・面積に基づき評価する方法に見直すとしていることから,従来の広大地補正が土地の個別的要因に係る補正が全て考慮されたものとなっていないからこそ本件税制改正が行われたものであると主張するため,弁論の再開を求めている。 しかし,広大地補正は,未だ区画されていない土地を戸建て住宅用地として分譲する場合にいわゆるつぶれ地が生じることから,そのことによって発生する減価を反映させることを趣旨とするものであって,既に宅地として区画されている土地は,仮に再開発をすること自体が甲土地の最有効使用の状態であり,その場合につぶれ地が生じることがあるとしても,既に宅地として区画されて,現に利用されている土地の評価をする場合に,これを広大地と同様に取り扱い広大地補正の対象とすることはできない。 平成29年度税制改正の大綱がいう個別的要因に係る補正の考慮は,既に宅地として区画されている土地についてするものと解することはできない。 オよって,控訴人らの主張は理由がなく,他に,甲土地について,評価通達によっては適正な時価を算定することができない特別の事情があることを認めるに足りる証拠はない。 (2) 乙土地の評価についてア控訴人らは,評価通達に基づく広大地補正のみでは,がけ地であることが考慮されておらず,評価通達によっては適正な時価を算定することができない特別な事情があると主張する。 しかし,乙1号証(137,144 頁)及び弁論の全趣旨によれば,評価通達による広大地補正(算式;広大地の価額=正面路線価×広大補正率×地積)において使用される広大地補正率を定める算式(広大地補正率=0.6-0.05×地積÷1000 ㎡)は,収集した鑑定評価事例を基に1㎡当たりの鑑 - 10 地の価額=正面路線価×広大補正率×地積)において使用される広大地補正率を定める算式(広大地補正率=0.6-0.05×地積÷1000 ㎡)は,収集した鑑定評価事例を基に1㎡当たりの鑑 - 10 -定評価額が正面路線価に占める割合と評価対象地の地積との関係を統計学の手法を用いて分析・検討し,評価の簡便性や安全性にも配慮して定められたものであり,地積が5000㎡までの広大地について妥当するものであるとされていること,収集された鑑定事例における鑑定評価(開発法)は,評価対象地の形状,道路との位置関係など,土地の個別要因に基づいて最も経済的・合理的となるような開発想定図を作成し,それに基づいて評価額を算出すると定められていることから,鑑定評価額に基づいて算出された広大地補正率は,土地の個別要因の事情による補正が考慮されているものとなると理解されていること,その結果,広大地補正率を適用する土地については,土地の形状,道路との位置関係に基づく事情補正を考慮せず,前記算式のとおり,正面路線価,広大地補正率及び地積の3要素を用いて評価することとしているものと認められる。 そうすると,広大地補正率は土地の個別的要因に係る補正が全て考慮されたものとなっていないとの控訴人らの主張は,独自の見解であるというほかはない。 なお,控訴人らは,平成29年度税制改正の大綱に「広大地の評価について,現行の面積に比例的に減額する評価方法から,各土地の個性に応じて形状・面積に基づき評価する方法を見直す」と記載されているのは,広大地補正が,がけ地などの個別的要因を反映していないことを自認したようなものであると主張し,平成29年改正通達の趣旨を主張,立証すべく,口頭弁論の再開を求めている。しかし,広大地補正が,土地の個別的要因(がけ地など)を考慮していないとはい ていないことを自認したようなものであると主張し,平成29年改正通達の趣旨を主張,立証すべく,口頭弁論の再開を求めている。しかし,広大地補正が,土地の個別的要因(がけ地など)を考慮していないとはいえないことは,上述したとおりである。 イ控訴人らは,乙土地の正面路線価の南側地区はがけ地ではないと主張する。 しかし,甲12号証の附属資料として添付された写真及び本物件所在図 - 11 -及び乙14号証の2の附属資料№2及び№3によれば,乙土地の南西側には階段の上にC公園があり,同南側の住宅地と乙土地の正面道路との間には擁壁が設置されていること,乙土地の北側はがけ地であることが認められる。そして,路線価は,宅地の価額がおおむね同一と認められる一連の宅地が面している路線ごとに設定され,その一連の宅地に共通している地勢にあることなど一定の事項に該当する標準的な画地を有する宅地の1㎡当たりの価額である(乙1)。そうすると,乙土地の正面路線価は,このような地勢にあることを考慮したものであることは明らかである。 したがって,乙土地の正面路線価の南側地区はがけ地ではないことをもって,評価通達によっては適正な時価を算定することができないとする控訴人らの主張は理由がない。 ウまた,控訴人らは,乙24号証に基づいて原判決が認定した土地取引事例は,取引事例比較法で採用することができるものではなく,したがって,取引事例比較法で採用できる取引事例が存在せず,評価通達によっては適正な時価を算定することができない特別の事情がある旨主張する。 しかし,乙土地についての鑑定評価書である甲12号証においても,108.80㎡ないし191.20㎡の4件の取引事例を規範性があるものとして採用して,各種の補正を行って比準価格を算定しているところであり,取 乙土地についての鑑定評価書である甲12号証においても,108.80㎡ないし191.20㎡の4件の取引事例を規範性があるものとして採用して,各種の補正を行って比準価格を算定しているところであり,取引事例比較法で採用できる取引事例が存在しないとの控訴人らの主張は,理由がない。 エよって,控訴人らの主張は理由がなく,他に,乙土地について,評価通達によっては適正な時価を算定することができない特別の事情があることを認めるに足りる証拠はない。 (3) A土地の評価についてア証拠(甲26~31)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 - 12 -控訴人らは,平成23年6月30日にA土地をエステートなごみ株式会社に売却した。同社は同年9月26日にA土地のうちの西端の土地1筆(住所省略)をGに売却し,同人は平成24年9月19日に前記土地上に居宅を新築した。 エステートなごみ株式会社は,平成23年8月8日に他の2筆(住所省略)をH及びIに売却し,両名は同年12月5日にJにこれらの土地を売却した。同人は,平成25年5月を完成予定として居宅を建てることを計画し,平成24年10月10日にこれらの土地について小規模開発事業の許可を得た。 都市計画法及びβ市開発指導課,開発審査課の指導のとおり,A土地のうちの一区画の上に建物を建築し,その完成後に次の開発が許可されるという経過をたどった。 イ控訴人らは,A土地について,都市計画法等による規制等があるため,市場参加者は開発業者に限られるので,評価通達の各補正によってはこのような事情は反映されず,評価通達によって適正な時価を算定することができない特別の事情があると主張し,また,A土地付近の公示地価は数年にわたって下落していることに照らせば,A土地の全てを早期に売却せざる 事情は反映されず,評価通達によって適正な時価を算定することができない特別の事情があると主張し,また,A土地付近の公示地価は数年にわたって下落していることに照らせば,A土地の全てを早期に売却せざるを得ないと主張し,これらの点を否定した原判決は誤りであると主張する。 しかし,前記認定のとおり,A土地は一旦不動産業者に売却されたが,その業者が造成工事を実施することなく,それから半年程度で2区画に分けてエンドユーザーに売却され,控訴人らがA土地を売却してから1年3か月後ないし2年後にはA土地上の2区画のそれぞれに居宅が建築されたという経過をみれば,A土地にはエンドユーザーの需要が相応にあり,土地の購入者が造成工事を発注することが可能であったといえるから,A土地の売却についての市場参加者が開発業者に限られるという控訴人らが主 - 13 -張する前提を認めることはできない。 ウよって,控訴人らの主張は理由がなく,他に,A土地について,評価通達によっては適正な時価を算定することができない特別の事情があることを認めるに足りる証拠はない。 なお,控訴人らが,近隣の土地価格が下落中であるから,A土地の全てを早期に売却せざるを得ないとする点についてみると,前記のとおりA土地にはエンドユーザーの需要が相応にあったのであるから,近隣の土地価格が下落中という状況にあったとしても,控訴人らの前記主張を認めることはできない。 (4) D土地の評価についてア証拠(甲15,甲43の1~43の4,乙7の1・2,乙19の2,乙35~37,40)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (ア) 控訴人X3は,平成24年2月15日,遺産分割により取得したD土地を株式会社都祁やすらぎホームに売却し,同年10月ころには,D土地において簡易な 論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (ア) 控訴人X3は,平成24年2月15日,遺産分割により取得したD土地を株式会社都祁やすらぎホームに売却し,同年10月ころには,D土地において簡易な擁壁を設置して土入れ等の工事が実施されていた。 (イ) D土地は市街化調整区域にあったが,D土地の1㎡当たりの固定資産税評価額は,路線価を基に,奥行補正(0.96倍),不整型地補正(0.88倍)をした上,市街化調整区域にある雑種地としての補正(0.6倍)をして算出された。 (ウ) D土地の近隣には,飲食店やいわゆるラブホテルが存在する。 イ控訴人らは,γ市職員の回答には根拠がないと主張する。 しかし,評価基準は,雑種地については,「雑種地の評価は,二及び三(裁判所注;ゴルフ場等用地,鉄道用地)に掲げる土地を除き,雑種地の売買実例価額から評定する適正な時価によってその価額を求める方法によるものとする。ただし,市町村内に売買実例価額がない場合においては,土地の位置,利用状況等を考慮し,付近の土地の価額に比準してその価額 - 14 -を求める方法によるものとする。」と定めており,雑種地補正は,補正率についての直接の定めはなく,市町村内の雑種地の売買実例価額がない場合に,「土地の位置,利用状況等を考慮し,付近の土地の価額に比準」して行われる。 雑種地補正率については,前記のとおり,評価基準には倍率の定めはなく,γ市における市街化調整区域にある雑種地は一律に0.6の補正率を乗じるとの取扱いであるが,そのことに合理性があるかについて検討する。 雑種地の評価方法については,相続税に関してではあるが,評価通達に定めがあり,評価通達が評価の統一を図るための財産の時価の算定に係る技術的かつ細目的な基準として定められているものであるから,これをみる 地の評価方法については,相続税に関してではあるが,評価通達に定めがあり,評価通達が評価の統一を図るための財産の時価の算定に係る技術的かつ細目的な基準として定められているものであるから,これをみると,評価通達82は,市街化調整区域の雑種地の価額を評価する場合の状況の類比する土地の判定,比準する場合のしんしゃく割合(減価率)について,店舗等の建築が可能な幹線道路沿いや市街化地域との境界付近にある場合に,宅地に比準して評価するときは,個別に判断すればよいことになるが,法的規制が比較的緩やかであって,店舗等の建築であれば可能なケースも多い地域は減価率30%(ただし,宅地価格と同等の価格で取引が行われている実体があるときは0%)をしんしゃく割合とするのが相当であり,周囲の状況が純農地,純山林,純原野の場合と店舗等の建築が可能な幹線道路沿いや市街化地域との境界付近にある場合の中間的状況であるときに,宅地に比準する場合のしんしゃく割合は50%(減価率50%)とするのが相当であるとして運用されている(乙40[360~362頁])。そして,本件土地の近隣には飲食店やいわゆるラブホテルが存在する。これらのことを総合考慮すれば,前記回答の0.6倍を乗じてする補正(減価率40%)は,前記評価通達の定める評価方法の範囲内の減価率であるということができ,その割合が不合理なものであるということはできない。 - 15 -ウ控訴人らは,原判決が,雑種地補正について,宅地造成が必要であるという事情を含めていると説明したことを批判する。 この点についてみると,D土地付近には飲食店やいわゆるラブホテルがあり,D土地をドライブイン等の敷地として利用できる可能性があるところ,前記イのとおり,評価通達を運用するに際し,店舗等であれば建築可能なケースも多い地 ,D土地付近には飲食店やいわゆるラブホテルがあり,D土地をドライブイン等の敷地として利用できる可能性があるところ,前記イのとおり,評価通達を運用するに際し,店舗等であれば建築可能なケースも多い地域の減価率は30%とされているのに対し,固定資産税評価額の算定においてはD土地については減価率を40%と取り扱っているというのであるから(乙35),控訴人らに有利な数値が採用されたとみることができる。 そうすると,宅地造成のために費用を要するとしても,その点を織り込んだ補正割合であると理解することができ,控訴人らの前記指摘は理由がない。 エよって,控訴人らの主張は理由がなく,評価通達によっては相続財産の評価を行うことができない特別の事情を認めるに足りる主張立証はない。 (5) E土地の評価についてア証拠(甲16,37,38,46,乙19の3,乙20,27,38)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 E土地は,第1種低層住居専用地域にあり,実測面積は651.08㎡であり,北側の接面道路とは約0.7mないし約3mの高低差がある。南側部分は,平均斜度約45度,高低差約10mの傾斜地であって,兵庫県の急傾斜地崩壊危険区域に指定され,その崩壊対策工事のための借地部分の面積が377.81㎡であり,その余の部分は,おおむね平坦な土地(現況雑種地)である。前記工事は平成25年5月末頃完成したが,E土地において,開発工事を実施したり住宅を建築したりする場合,工事施工部分から3~5mセットバックするなどの条件が付される見込みである。 イ控訴人らは,E土地の約58%の面積部分で前記工事が行われて宅地造 - 16 -成をすることができず,接面道路とは高低差があるので,評価通達によっては適正な時価を算定することができない特別の事情があ 人らは,E土地の約58%の面積部分で前記工事が行われて宅地造 - 16 -成をすることができず,接面道路とは高低差があるので,評価通達によっては適正な時価を算定することができない特別の事情があると主張する。 しかし,崩壊対策工事のための借地部分の面積が上記ア記載のとおりであり,E土地の約58%ががけ地を理由に通常の用途に供することができないといえるとしても,宅地の一部のがけ地等は,がけ地であることにより,採光,通風等宅地の環境上貢献している効用もあり,がけ地補正率は,これらの点にも着目して定められたものであることは前記のとおりである。 そして,評価通達20-4は,がけ地の方位が南であり,がけ地面積が総面積の50%以上である土地のがけ地補正率を0.82,同60%以上の場合には0.79と定めている(乙1の101 頁)。また,がけ地補正と宅地造成費の控除とは判断基準を異にするものであることから,両者の重複適用はできないとされている(乙1の104 頁)。そうすると,評価通達の定める評価方法は,E土地のような状況にある土地を想定したものであるから,E土地の評価を評価通達の定める評価方法によってすることができ,また,それによる評価が不合理なものであるということはできない。 ウよって,控訴人らの主張は理由がなく,E土地について,他に評価通達によっては相続財産の評価を行うことができない特別の事情があることを認めるに足りる主張立証はない。 (6) Fマンションの評価について控訴人らは,Fマンションがやや特異な設計であり,管理規約により専有部分と附属建物とは一体処分しなければならず,管理費が高額であることから,評価通達によっては適正な時価を算定することができない特別の事情があると主張する。 しかし,評価通達において管理費や修繕積立金 と附属建物とは一体処分しなければならず,管理費が高額であることから,評価通達によっては適正な時価を算定することができない特別の事情があると主張する。 しかし,評価通達において管理費や修繕積立金が家屋の評価に考慮されていないことが,評価通達によっては相続財産の評価を行うことができない特別の事情に当たらないことについては,前記1において引用した原判決第3 - 17 -の8(1)(原判決16頁18行目から17頁7行目まで)に記載のとおりである。また,設計が特異であり,専有部分と附属建物とを一体処分しなければならないことも,同様に,評価通達によっては相続財産の評価を行うことができない特別の事情に当たらない。 よって,控訴人らの主張は理由がない。 3 結論以上によれば,控訴人X1の納付すべき本件相続税の額は,本件各更正処分における納付すべき相続税額を下回っており,控訴人X1の各請求は,本件各更正処分のうち納付すべき相続税額5億7830万4100円を超える部分の取消し及び本件各通知処分のうちの同控訴人に対するものの取消しを求める限度で理由がある。 他方,控訴人X2及び控訴人X3の納付すべき本件相続税の額は,いずれも本件各更正処分における納付すべき相続税額を下回ることはないと認められるから,両名の各請求は,いずれも理由がない。 よって,これと同旨の原判決は相当であって,本件控訴にはいずれも理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第8民事部 裁判長裁判官山田陽三 裁判官髙橋文淸 - 18 -裁判官中尾彰(別紙省略) 三 裁判官髙橋文淸 裁判官中尾彰(別紙省略)
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