平成28年12月22日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成27年(行ウ)第6号求償権行使懈怠違法確認等請求事件口頭弁論終結日平成28年10月20日判決主文 1 被告が,参加人aに対して有する求償権100万円及びこれに対する平成25年5月2日から支払済みまで年5分の割合による金員の請求を怠ることが違法であることを確認する。 2 被告は,参加人aに対し,100万円及びこれに対する平成25年5月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うよう請求せよ。 3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用(補助参加によって生じた費用を除く。)は,これを2分し,その1を原告らの負担とし,その余を被告の負担とし,補助参加によって生じた費用は,参加人aの負担とする。 事実 及び理由第1 請求の趣旨 1 被告が,参加人a及びb(以下「b」という。)に対して有する求償金2755万6519円及びこれに対する平成25年5月2日から支払済みまで年5分の割合による金員の請求を怠ることが違法であることを確認する。 2 被告は,参加人a及びbに対し,2755万6519円及びこれに対する平成25年5月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を連帯して支払うよう請求せよ。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 第2 事案の概要 1 事案の要旨原告らの子であるc(以下「c」という。)は,大分県立竹田高校(以下「竹 田高校」という。)剣道部に所属する2年生の生徒であり,いずれも同校の教員である参加人a及びb(以下「参加人aら」ということがある。)の指導監督の下に,平成21年8月22日(以下「本件当日」ということがある。),同校の剣道場で練習をしていたところ,熱射病を発症して倒れ,豊後大野市が設置する 以下「参加人aら」ということがある。)の指導監督の下に,平成21年8月22日(以下「本件当日」ということがある。),同校の剣道場で練習をしていたところ,熱射病を発症して倒れ,豊後大野市が設置する公立おがた総合病院(現在の豊後大野市民病院。以下「おがた病院」という。)に搬送され,同病院の医師による手当を受けたが,同日,死亡した(以下「本件事故」という。)。 原告らは,本件事故につき,参加人aらは,cが熱射病を発症したにもかかわらず,直ちに練習を中止し,医療施設に搬送するなどの適切な処置を怠った過失があり,また,おがた病院の医師には適切な医療行為を尽くさなかった過失があり,これらの過失によってcが死亡するに至ったなどと主張して,大分県(以下「県」という。)や豊後大野市らに対して,それぞれ連帯して損害賠償金を支払うよう求めたところ,大分地方裁判所は,平成25年3月21日,原告らの県及び豊後大野市に対する請求につき,各原告につき2328万0013円(合計4656万0026円)及びこれに対する本件当日である平成21年8月22日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の限度で認容し,その余の請求をいずれも棄却する判決をした(平成22年(ワ)第222号。以下「前訴」という。なお,前訴と共通の書証は「甲前」ないし「乙前」号証などとして提出されている。)。その後,県及び豊後大野市に対する請求については,控訴されずに確定したので,県は,豊後大野市との間で前記認容額(遅延損害金を含む。)を折半して負担する旨合意し,これに基づき,原告らに対し,平成25年5月1日,2755万6519円を供託した。 本件は,原告らが,県の住民として,参加人aらには,本件事故につき重大な過失があり,被告は,参加人aらに対し,国家賠償法1条2項により,前記供託金 25年5月1日,2755万6519円を供託した。 本件は,原告らが,県の住民として,参加人aらには,本件事故につき重大な過失があり,被告は,参加人aらに対し,国家賠償法1条2項により,前記供託金2755万6519円及びこれに対する求償権発生の日の翌日である平成25年5月2日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損 害金に係る求償権を取得したにもかかわらず,被告がその行使を違法に怠っているなどと主張して,地方自治法242条の2第1項3号及び4号に基づき,前記第1記載のとおり,被告が,参加人aらに対し,その求償権の行使を怠る事実が違法であることの確認を求めるとともに,参加人aらに対し,その支払を請求することを求める住民訴訟である。なお,原告らは,参加人a及びbの県に対する求償債務は,それぞれが全額について支払義務を負うという不真正連帯債務であり,分割債務ではない旨主張している。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)⑴ 当事者ア原告ら原告らは,いずれも肩書住所地に居住する県の住民であり,cの両親である。 イ ccは,平成4年5月27日生まれの原告らの子であり,本件当時,竹田高校の2年生で,剣道部に所属し,平成21年6月から主将を務めていたが,同年8月22日,本件事故により死亡した。本件当時,cは,剣道の段位3段を取得していた。なお,cの弟であるd(以下「d」という。)も剣道部に所属していた。 ウ被告被告は,県の執行機関としての知事である。 エ怠る事実に係る相手方 参加人a参加人aは,平成21年4月に竹田高校に赴任した保健体育科の教員(地方公務員)である。参加人aは,本 県の執行機関としての知事である。 エ怠る事実に係る相手方 参加人a参加人aは,平成21年4月に竹田高校に赴任した保健体育科の教員(地方公務員)である。参加人aは,本件事故当時,剣道部の顧問を務めており,また,剣道の段位7段を有していた。 bbは,平成13年4月に竹田高校に赴任した理科の教員(地方公務員)である。bは,本件事故当時,剣道部の副顧問であり,また,剣道の段位5段を有していた。 なお,本件事故を受け,県教育委員会は,平成21年12月28日,参加人aについて停職6月,bについて停職2月とする処分を行うことを決議している(甲前13,乙5・67頁,弁論の全趣旨)。 ⑵ 本件事故の発生cは,本件当日,竹田高校剣道場(以下「剣道場」という。)において,参加人aらの立会いのもとで,部活動である剣道の練習をしていたところ,熱射病で倒れるに至った。その後,cは,救急車でおがた病院に搬送され,同病院医師であるe(以下「e医師」という。)による医療行為を受けたが,同日午後6時50分頃,死亡した(甲1,乙前DA2,弁論の全趣旨)。 同月23日,病理解剖がなされ,cの死亡原因は熱射病とされた(乙前DA2)。 ⑶ 前訴の経過(甲1)ア原告らは,平成22年3月2日,県及び豊後大野市らに対し,前訴を提起した。 イ平成25年3月21日,大分地方裁判所は,要旨,以下のとおり判示して,本件事故につき,県は国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を負い,豊後大野市は民法715条1項本文に基づく損害賠償責任を負い,県及び豊後大野市は共同不法行為として連帯責任を負うとして,県及び豊後大野市に対しては,原告らに対し連帯して,それぞれ2328万0013円及びこれに対する本件事故日で 文に基づく損害賠償責任を負い,県及び豊後大野市は共同不法行為として連帯責任を負うとして,県及び豊後大野市に対しては,原告らに対し連帯して,それぞれ2328万0013円及びこれに対する本件事故日である平成21年8月22日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で原告らの請求を認容し,その余の請求を棄却した。 すなわち,本件当日,cは,練習中に竹刀を落としたのにそれに気が付かず竹刀を構える仕草を続けるという行動を取ったのであるから,参加人aらは,遅くともその行動を認識した時点において,cが異常な行動を取っていること,さらにはcが熱射病を発症したことについて容易に認識し得たというというべきであるとし,この時点で,直ちに練習を中止させ,救急車の出動を要請するなどして医療機関へ搬送し,それまでの応急措置として適切な冷却措置を取るべき注意義務があったにもかかわらず,参加人aにおいては,cに意識障害が生じた後も,打ち込み稽古を続けさせ,その後にcがふらふらと歩いて壁に額を打ち付けて倒れた際にも,それがcによる「演技」であるとして何らの措置をも取らず,救急車の出動を要請するなどして直ちに医療機関へ搬送する措置を怠った点において過失があり,また,bにおいても,cに熱射病の兆候である意識障害を窺わせる異常行動が認められた際に,練習を継続する参加人aを制止するなどして直ちに練習を中止し,救急車の出動を要請するなど適切な処置を取るべき注意義務があったにもかかわらず,bは,参加人aが練習を継続するのを制止するなどの措置を何ら取っておらず,かつ,cが倒れるに至っても,直ちに救急車の出動を要請するなどの措置を取っていない点において過失があり,さらに,e医師については,cがおがた病院に搬入された後直ちに適切な冷却措置を ら取っておらず,かつ,cが倒れるに至っても,直ちに救急車の出動を要請するなどの措置を取っていない点において過失があり,さらに,e医師については,cがおがた病院に搬入された後直ちに適切な冷却措置を実施しなかった過失があるとし,その上で,参加人aらの各過失行為とe医師の過失行為とのいずれもが,cの死亡という不可分の一個の結果を招来し,この結果についてそれぞれ因果関係を有する関係にあるとして共同不法行為に当たるから,県及び豊後大野市は,原告らとの関係において,損害の全額について連帯して責任を負うとした。 ウ同判決後,原告らの県及び豊後大野市に対する請求は,当事者双方とも控訴しなかったことから,確定した(甲2,乙1,当裁判所に顕著な事実)。 ⑷ 県による損害賠償金の供託(甲2) ア県及び豊後大野市は,平成25年4月16日,「損害賠償金の支払に関する確認書」を作成し,遅延損害金を含めた上記損害賠償金を県と豊後大野市が折半して弁済する旨合意した。 ところが,原告らから損害賠償金の受領を拒否する旨の返答があったため,県は,同年5月1日,原告らを被供託者として,2755万6519円を供託した(以下「本件供託」という。)。 イ都道府県立学校管理者賠償責任保険(以下「学校管理者保険」という。)は,都道府県立学校の施設整備の不備又は管理上の瑕疵による事故及び教育活動実施中の事故等に起因する損害賠償金等の財政負担を填補し,速やかに被害者の救済を図ることを目的とした保険であるところ,県は,平成21年4月1日午後4時から平成22年4月1日午後4時までを保険期間とする施設賠償責任保険等に加入していた(以下「本件保険」という。)。 本件保険の填補限度額は,1名につき3000万円であり,免責金額は,1事故につき200万円であった。 県は,本 でを保険期間とする施設賠償責任保険等に加入していた(以下「本件保険」という。)。 本件保険の填補限度額は,1名につき3000万円であり,免責金額は,1事故につき200万円であった。 県は,本件供託後の平成25年5月22日,本件保険の幹事会社である東京海上日動火災保険株式会社に対し,本件保険に係る保険金の支払を請求し,同年6月11日,本件供託に係る金員から免責金額である200万円を控除した2555万6519円を収納した(以下,この収納に係る保険金を「本件保険金」という。)。 ⑸ 本件訴訟に至るまでの経緯ア原告らは,県の住民として,平成27年9月9日,県が国家賠償法1条2項に基づき,参加人aらに対して,本件供託金相当額の求償権を取得したのに,その行使を怠っているのは違法であるなどとして,県監査委員に対して,同人らに対する求償権を行使し,本件供託金相当額の支払を求める措置を講じるよう勧告することを求める住民監査請求を行った。 同委員は,同年11月5日,参加人aらには重大な過失があったとまで は認められず,県に参加人aらに対する求償権が認められない以上,その行使を怠る事実も存在しないとして,これを棄却する旨の決定をし,同月6日,原告らに通知した(甲2,弁論の全趣旨)。 イ原告らは,同年12月4日,当裁判所に本件訴訟を提起したところ,被告は,地方自治法242条の2第7項に基づき,怠る事実の相手方とされた参加人aらに対し,平成28年1月27日付けで,訴訟告知書を提出した。参加人aは,同年7月28日,当裁判所に対し,被告を補助するため補助参加の申出をした。 3 主な争点⑴ 参加人aらにcの死亡に対する重過失があったか⑵ 本件保険金の充当による求償権の有無ないし範囲⑶ 求償権の信義則による制限の可否⑷ ため補助参加の申出をした。 3 主な争点⑴ 参加人aらにcの死亡に対する重過失があったか⑵ 本件保険金の充当による求償権の有無ないし範囲⑶ 求償権の信義則による制限の可否⑷ 怠る事実の違法性の有無 4 争点に対する当事者の主張⑴ 争点⑴(参加人aらにcの死亡に対する重過失があったか)について(原告らの主張)ア国家賠償法1条2項に基づく求償権の要件としての重過失とは,当該公務員が自らの職務上の立場において負うべき注意義務の内容・範囲に照らして,その注意を甚だしく欠いていたか,わずかな注意をすれば有害な結果の発生を容易に予見することが可能であったか,の2つの観点から判断されるべきである。 イ参加人aらは,部活動中に熱射病(重度の熱中症)を発症したcに対し,部活動指導者として求められる,直ちに練習を中止させ,救急車の出動を要請するなどして医療機関へ搬送し,それまでの応急措置として適切な冷却措置を取るべき注意義務があったにもかかわらず,これを怠り,直ちに救急車の出動要請を行うことなく,cに意識障害が生じた後 も打ち込み稽古を続けさせようとした。 それに加え,参加人aにおいては,意識障害の生じているcに足蹴りを加え,その後にcがふらふらと歩いて壁に額を打ち付けて倒れた際にも,それがcによる演技であるとして何らの措置を取らずに「演技をするな。」,「目を開けんか。」などと言いながら,10回程度,cの頬に平手打ちをするなど,単に必要な措置を取らなかったにとどまらず,むしろ不適切な行為までをも行い,bはそれを制止しなかった。 このような参加人aらの行為は,熱中症を発症した部員に対して部活動指導者として求められる注意を単に欠いていたにとどまらず,甚だしく欠いていたといえる。 も行い,bはそれを制止しなかった。 このような参加人aらの行為は,熱中症を発症した部員に対して部活動指導者として求められる注意を単に欠いていたにとどまらず,甚だしく欠いていたといえる。 また,参加人aらは,竹田高校において本件事故以前の職員朝礼の際に配布された「熱中症対策(部活生指導)」と題する資料(甲前11の2)の内容を当然理解していたこと,その上で,本件当日の練習中,遅くともcが竹刀を落としたにもかかわらずこれに気付かず竹刀を構える仕草を続けるという行動をとった時点においては,cが異常な行動をとっていることは,何ら認識困難ではなく,むしろ,わずかな注意を払いさえすれば異常行動であることを容易に認識し得たといえ,また,剣道場内の温度,それまでのcの運動量,練習が1時間以上に及んでいたことなども踏まえれば,cが熱射病を発症したことについてもわずかな注意によって容易に認識し得たといえる。 以上のような点を踏まえれば,参加人aらには重過失があるというべきである。 (被告の主張)否認ないし争う。 ア参加人aらは,cが,壁に額を打ち付けて倒れるなどして長座姿勢で座った後,応急処置として,保冷剤でcの額,頸部,脇の下,腿の付け根を 冷やすとともに,大型扇風機をcに近づけ,風を当てるなどの冷却措置を取るなどした上,水分補給が困難と判断するや即座に救急車を要請している。このような措置は,熱中症の応急措置のうち「熱疲労」ないし「熱中症Ⅱ度」に相当する措置,及び救急車到着までの間の冷却措置として,標準的な応急措置である。このように身体の冷却措置や救急車の出動要請などの救命措置を取っており,このような対応は、学校教育現場における一般的な部活動を指導する教諭が,その職務上の立場において負う注意義務 な応急措置である。このように身体の冷却措置や救急車の出動要請などの救命措置を取っており,このような対応は、学校教育現場における一般的な部活動を指導する教諭が,その職務上の立場において負う注意義務の内容に照らし,極めて一般的な対応であり,その注意を甚だしく欠いていたということはできない。 また,当時のcの具体的状況を前提とした場合に,参加人aらがわずかな注意をすれば容易にcの死亡という結果発生を認識できたとはいえない。 これらのことは,専門家であるe医師ですら,cの状態を確認した際,緊急性のあるものと考えずに,病院搬送後,速やかに熱射病の治療を開始しなかった点をみても明らかである。 イまた,求償関係における公務員の重過失は,内部的なものであり,被害者に対する関係のものとは必ずしも同一ではないから,予見可能性の対象や相当因果関係の判断の対象が異なり,当該公務員の個別の行為を基準とした上で,その後の過失行為と,それによる拡大損害の発生について,公務員に予見可能性があったかどうか,また,当該公務員の行為と結果との間に相当因果関係があるかどうかが個別に判断されなければならない。本件では,参加人aらの行為が,cの死亡という結果発生に直接結びついているのではなく,e医師の医療上の過失という新たな過失行為が介在することにより,それまでは存在していたcの救命可能性が失われ,これが直接的な原因となり,cの死亡という結果が発生しているところ,参加人aらの個別の行為により,その後,医療機関で適切な医療行為がなされないという医療上の過失行為が競合して,それによってcの救命可能性が失わ れて,熱射病で死亡するという結果について,容易に予見することができたとはいえないし,また,参加人aらの行為とcの死亡という結果発生の間に因果関係 合して,それによってcの救命可能性が失わ れて,熱射病で死亡するという結果について,容易に予見することができたとはいえないし,また,参加人aらの行為とcの死亡という結果発生の間に因果関係は認められない。 ウ以上のとおり,参加人aらには重過失はない。 ⑵ 争点⑵(本件保険金の充当による求償権の有無ないし範囲)について(被告の主張)ア財務会計上の行為によって地方公共団体に損害が生じた場合でも,当該行為の結果,その地方公共団体が利益を得たり,支出を免れることによって利得をしている場合には,両者の間には相当因果関係がある限り損益相殺の対象となるところ,県は,本件事故当時加入していた本件保険により本件保険金の支払を受けており,これは,県が負担する損害賠償債務と相当因果関係を有する利益として損益相殺の対象となる。そうすると,本件供託に伴う県の実質的負担額は,本件供託金から本件保険金を控除した200万円にとどまり,仮に,県の参加人aらに対する求償権があるとしても,その求償権の上限は200万円となる。 イ加えて,本件において,cの死亡結果は,参加人aら及びe医師の共同不法行為によって発生しているところ,共同不法行為者の一方である参加人aらが,自身の使用者である県から求償される場合も,あくまで参加人aらの負担割合の範囲内において求償義務を負担することになるところ,その負担割合については,原因力・違法性の大小及び共同の態様を考慮して決定すべきである。そして,cの死亡という結果発生に与えた原因力等からすれば,その直接的・重大な原因を与えたのは,e医師による医療上の過失行為であり,その負担割合が参加人aらの負担割合を大きく上回ることは明らかである。このような参加人aらの本来的な負担割合は,県が受け取った本件保険金額 大な原因を与えたのは,e医師による医療上の過失行為であり,その負担割合が参加人aらの負担割合を大きく上回ることは明らかである。このような参加人aらの本来的な負担割合は,県が受け取った本件保険金額の賠償金全体に対する割合(約46.4%)を超えることはないというべきである。そうすると,本件保険金が参加人aら の本来的な負担部分から充当されることになれば,参加人aらの本来的な負担部分に対応する額は全て填補されたことになる。 そこで,本件保険金を本件供託金のどの部分から充当するか(参加人aらの本来的な負担部分から充当するか,それ以外の部分から充当するか)が問題となるところ,県に固有の過失が存在しないにしても,本件事故が教育活動の一環として行われたことなど争点⑶(被告の主張)で述べる事情を踏まえれば,県においても本件事故による損害について一定の負担をするのが相当であるから,本件保険金を参加人aらの本来的な負担部分から優先的に充当し,本件保険金による填補後に残存する200万円の限度で県が負担するとすることも,財産管理に関する行政裁量の範囲内として許容されるべきである。なお,本件保険金による填補後に残存する200万円という金額は,総損害額(遅延損害金を含め5511万3038円)に比較しても,県の実質的負担額として妥当と判断される。 したがって,本件保険金を参加人aらの本来的な負担部分に優先的に充当したことにより,参加人aらの本来的な負担部分に対応する額は全て填補されたことになるから,県の参加人aらに対する求償権は存在しないというべきである。 (原告らの主張)否認ないし争う。 本件事故については,被告も主張するように,県に固有の過失が認められる事情はなく,本件供託金につき県が負担すべき部分は存在しないから,保険金の充当にお (原告らの主張)否認ないし争う。 本件事故については,被告も主張するように,県に固有の過失が認められる事情はなく,本件供託金につき県が負担すべき部分は存在しないから,保険金の充当において県の負担部分は想定し得ない。また,仮に,県に負担部分があるとした場合であっても,本件保険は県が加入し,保険料を支払っていた学校管理者保険であることからすれば,その保険金は,県の負担部分について優先的に充当されなければならない。被告の主張するような,参加人aらの負担部分に優先的に充当し,その結果として県の負担部 分を保険によって填補されないまま残存させるという取扱い(行政裁量)は,参加人aらのために保険金を「流用」することと何ら差異なく,地方公共団体の財産管理上何ら正当化されない。そうすると,被告の主張するような参加人aらの負担部分から優先的に充当されるという前提自体が全く根拠のないものというべきである。 また,e医師の負担割合が参加人aらの負担割合を大きく上回っているとの主張は,県が,本件事故につき,前訴判決を踏まえ,豊後大野市との間でその認容金額を折半して負担することで合意して本件供託をしていることと整合しない。 ⑶ 争点⑶(求償権の信義則による制限の可否)について(被告の主張)仮に,本件保険金による充当後において,なお県が参加人aらに求償できる部分が存在するとしても,本件においては,損害の公平な分担という見地から,信義則上相当と認められる限度に制限されるべきものである。すなわち,部活動は,学校の教育計画に基づいて行われる教員の本務としての活動と位置づけられる一方で,その指導が正規の勤務時間外に行われる実態があるにもかかわらず,その対価として僅少な教員特殊業務手当(部活手当)が支給されるにすぎないなど,教員の熱意や献 の本務としての活動と位置づけられる一方で,その指導が正規の勤務時間外に行われる実態があるにもかかわらず,その対価として僅少な教員特殊業務手当(部活手当)が支給されるにすぎないなど,教員の熱意や献身的な努力によって支えられるボランタリーな性格を有しているものである。にもかかわらず,懸命に指導に当たる教員に重過失が認められた場合,直ちに求償されるようなことがあれば,教員による部活動を通した教育活動を委縮させるおそれが高く,部活動自体が維持できなくなり,教育活動に弊害が生じ得る。加えて,参加人aは,剣道場の大型扇風機1台及び10ℓ入りタンクを自費で提供し,また,窓の開放ができるよう学校に網戸設置を依頼するなど練習環境の整備を行っていた。以上の事情からすれば,県の参加人aらに対する求償権があるとしても,信義則上相当程度に制限されるべきである。 (原告らの主張)否認ないし争う。 本件は,県の組織的関与や監督の下に生じたものではなく,県の負担を考慮する必要性はないというほかない上に,そもそも,本件事故が,部活動指導者の多忙や疲労等を原因として監督懈怠の結果生じた偶発的なものではなく,体罰をも交えた過酷な部活動指導の末に生じたものであり,部活動の指導の範疇を大きく外れた極めて異常な行為によって発生したものである以上,求償権行使を制限することは妥当ではなく,県は参加人aらに対し,その全額について求償することができるというべきである。 ⑷ 争点⑷(怠る事実の違法性の有無)について(原告らの主張)地方公共団体は,客観的に存在する債権を理由もなく放置したり免除したりすることは許されず,原則として,地方公共団体の長にその行使又は不行使についての裁量はない。 本件は,既に前訴において県が負担することが確 体は,客観的に存在する債権を理由もなく放置したり免除したりすることは許されず,原則として,地方公共団体の長にその行使又は不行使についての裁量はない。 本件は,既に前訴において県が負担することが確定した損害賠償金の履行に伴う求償が問題となる事案であり,重過失の判断以外は全て前訴の判決において明示されているところ,県は前訴の訴訟資料を全て保有している上,前訴の判決においても重過失の存在を示唆する表現が用いられている。また,本件において,求償権不行使を是認する法律上の根拠はなく,参加人aらに対して求償するに当たり多大なコストを要するというような事情もなければ,県が求償権行使を差し控えておくことが原告らと参加人aらの間での本件の抜本的解決につながるといった事情も存在しない。このように被告による参加人aらに対する求償権の不行使が例外的に許容されるような事情はないから,被告において,その求償権行使を違法に怠っている事実があるといえる。 (被告の主張)否認ないし争う。 債権の行使に違法な怠る事実があると判断されるかについては,訴訟となった場合の訴訟行為の難易度,経済的負担の多寡,法的措置を取るべき必要性・緊急性,公益上の必要性,相手方の資力等の諸般の事情を総合的に判断し,地方公共団体の長がその行使を見合わせることとした判断に合理性がある場合には,違法な怠る事実があるとはいえないと解すべきである。 本件においては,上記のとおり,求償権を行使する前提となる重過失の有無のほか,仮に重過失が認められたとして,どの程度の求償が可能かの判断が困難であって,求償すべき額も一義的に明らかではなく,最高裁判例を前提としても,直ちに債権の行使を違法に怠っていると判断することはできない。そして,被告は,本件において,参加人aらの行為とcの死亡とい 難であって,求償すべき額も一義的に明らかではなく,最高裁判例を前提としても,直ちに債権の行使を違法に怠っていると判断することはできない。そして,被告は,本件において,参加人aらの行為とcの死亡という結果発生についての予見可能性や因果関係を検討した上で,その点について参加人aらに重過失があったと認めることはできないとして,求償権の行使はできないと判断したものであり,このような判断には合理性が認められる。 また,被告は,仮に参加人aらに重過失があったとしても,本件保険金の支払により参加人aらの本来的負担割合の全額が填補され,参加人aらに対する求償権は存在しないか,残存するとしても僅少額である上に,諸般の事情を総合的に考慮すると,参加人aらに対する求償権は相当程度制限されるため,求償権を行使しないこととしたものであり,このような判断には合理性が認められる。 したがって,被告に求償権の行使を違法に怠っている事実があるとはいえない。 第3 当裁判所の判断 1 前記前提事実のほか,証拠(後掲の各証拠のほか,全体につき甲1,3,甲前4,乙3ないし5,15,証人d,証人a)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ,これに反する証拠は採用できない。 ⑴ 剣道部は,平成21年8月10日から同月13日まで,4日間の夏合宿を 行い,同月14日から同月16日までを休養日として,翌17日に練習を再開することとなっていた(甲3,乙前B3,乙3,証人d,証人a)。 ところが,部員にインフルエンザ罹患の可能性が判明したことから,同月18日から同月20日まで部員全員が自宅待機となった(甲前4,乙3,証人a)。 同月21日より練習が再開されたものの,この日は,参加人aらの立会いはなく,cが参加人aから受けていた指示に従って,午後3時から午後5 まで部員全員が自宅待機となった(甲前4,乙3,証人a)。 同月21日より練習が再開されたものの,この日は,参加人aらの立会いはなく,cが参加人aから受けていた指示に従って,午後3時から午後5時までの間,部員のみによる自主練習が行われた(甲前4)。 なお,剣道部の男子部員は,同月30日開催の秋季高校剣道大会に出場予定であった(甲前4)。 ⑵ 本件当日,剣道場において,午前9時より練習を開始した。当日の練習参加者は,cを含む部員ら8名(うち女子2名)と,顧問である参加人a,さらに15分ほど遅れて参加した副顧問のbであった。本件当時,剣道場の出入口の戸及び全ての窓を全開にした上で,剣道場の壁際に設置した大型扇風機3台を最大風量,首振りで稼働させていた。 部員らは,体操,素振り及び足さばきを行い,午前9時30分頃からは,前進,後退等の足運びの練習を行ったが,これらは胴と垂れを着けるが防具(面)を付けずに行われるものであった。 その後,部員らは,午前9時55分頃から午前10時25分頃までの間,参加人aの指示で休憩を取ることとなり,cもスポーツドリンクを飲んだ(甲前4,乙3,乙4,証人a)。 ⑶ 午前10時25分頃,練習が再開され,参加人aは,部員らに防具(面)を付けさせ,大きく行う面打ち,大きくゆっくり行う切り返し,大きく速く行う切り返し,一息の切り返し(息継ぎをせずに行う切り返し)といった練習を行わせたが,その途中,適宜,練習を中断させ,指導を行うことがあった(甲前4,甲3,証人a)。 参加人aは,上記のように,一息の切り返しにおいては,息継ぎをせずに行わなければならないところ,cが息継ぎをしているなどとして,注意,指導し,cにのみ何度か一息の切り返しの練習を追加して行わせ,集合させた他の部員7名にその合否を 切り返しにおいては,息継ぎをせずに行わなければならないところ,cが息継ぎをしているなどとして,注意,指導し,cにのみ何度か一息の切り返しの練習を追加して行わせ,集合させた他の部員7名にその合否を判定させることとした(甲前17,甲前45,乙3,証人a)。そして,参加人aは,2年生の男子部員1名が合格とする判定をしたのに対し,見極めが甘いとしてその判定を撤回させるとともに,その頃,座っていたパイプ椅子を床に向かって投げるなどした(甲前14,証人a)。 ⑷ そして,午前11時頃から打ち込み稽古が行われた。 打ち込み稽古は,まず,1対1(打つ側4人,元立ち4人。「元立ち」とは打ち込み稽古の受け手を指す。)で行う4人元立ちによるものから開始したが,参加人aは,その途中,cの発声に問題があるとして集合をかけ,その際,cの面の突き垂れを上げ,cの顎の近辺を叩くなどした(甲前17,甲3,乙前甲15,乙3,乙5)。 その後,打ち込み稽古は,5対3(打つ側5人,元立ち3人)で行う3人元立ちによるものとなり,その後,6対2(打つ側6人,元立ち2人)で行う2人元立ち(女子部員2人が元立ち)によるものになった(甲前4)。このような打ち込み稽古の途中,体調不良を訴え,嘔吐しにトイレに行く者もいるなど,少なくとも,部員らが認識し得る程度の体調不良者がc以外に2名いた(甲前14,甲前17,甲前18,甲前20,甲前45,乙前甲15,乙前甲16)。 そして,2人元立ちの打ち込み稽古の終わり頃には,有効打突を取って合格と判定された部員からその稽古を終えるということになり,cを含む残った3名の部員が打つ側となる,3対1(打つ側3人,元立ち1人)で行う1人元立ちによる打ち込み稽古に至った(乙3)。そして,c以外の2人も数回程度打ち込みを行う間に合格し,最終的に なり,cを含む残った3名の部員が打つ側となる,3対1(打つ側3人,元立ち1人)で行う1人元立ちによる打ち込み稽古に至った(乙3)。そして,c以外の2人も数回程度打ち込みを行う間に合格し,最終的にc1人が残り,参加人aは他の部 員らにその合否を判定させたが,合格と判定されず,そのため,cは,他の部員よりも数回多くの打ち込み稽古をすることとなった(甲前4,甲前14,甲前17,甲前20,甲3,乙前甲16,乙4,乙5,証人d)。 cは,その打ち込み稽古における最後の面打ちについて,小技でしなければならないところを大技で,かつ元立ちをしていた女子部員が頭を押さえる程の強い力で打ち込んだ(乙3,証人d,証人a)。そして,このように面打ちが大技になったため合格と判定されなかったところ,cは,再度,打ち込みを行うため,打ち込み開始場所に戻った際,参加人aに対し,「もう無理です。」などと述べた。これに対し,参加人aは,「何言いよんのか。お前はキャプテンだろうが,お前の目標は何だ。」などと問いかけたところ,cは,「大分県制覇です。」「俺ならできる。」などと答え,練習を継続することになった(甲前4,甲3,乙3,証人a)。 そして,元立ちが女子部員から2年生の男子部員に交代し,元立ちが先に発声したのに対し,cは発声を返さなかったため,元立ちが発声をするよう促し,cの竹刀を払ったところ,cは竹刀を落とした。しかし,cは,そのことに気が付かないまま,竹刀を構える仕草を続ける行動をし,他の部員らが注意してもcはこれに気が付かなかった(甲前4,甲前14,甲前17,甲前18,甲前20,甲3,乙前甲15,乙前甲16,乙4,証人d)。このようなcの行動は,自らの行動を正常に把握できず,また,周囲からの注意や呼びかけに対しても正常に応答ができなくなるなど,意識 ,甲前18,甲前20,甲3,乙前甲15,乙前甲16,乙4,証人d)。このようなcの行動は,自らの行動を正常に把握できず,また,周囲からの注意や呼びかけに対しても正常に応答ができなくなるなど,意識が朦朧としているものといえ,このような症状は,熱射病(重度の熱中症)に起因する意識障害の発現ということができる(甲1,弁論の全趣旨)。 これに対し,参加人aは,「演技じゃろうが。」などと述べながら,cの右横腹付近を前蹴りし,cは,一旦は踏みとどまったものの,ふらついて倒れた。他の部員がcに対しコップで水を掛けると,cは,面や胴をはぎとるように外すとともに,自らの太腿付近を両手で叩き始めた(甲前4,甲前14, 甲前17,甲前18,甲前20,甲前45,乙前甲15,乙前甲16,乙4,証人d,証人a)。 参加人aが,cの頬を叩き,cは再び立ち上がったが,cは,ふらふらと剣道場内の女子部室の方へ歩いていき,壁に額を打ち付けて倒れた(甲前4,甲前14,甲前17,甲前20,乙前甲15,乙前甲16)。この時,cは頭部から出血する傷を負った。 参加人aは,倒れたcの上にまたがり,駆け寄ってきたbに対し,「b先生,これは演技じゃけん,心配せんでいい。」,「これが熱中症の症状じゃないことは俺は知っている。」「演技じゃろうが。」などと述べながら,往復ビンタのように10回程度cの頬を平手打ちした(甲前4,甲前14,甲前20,乙前甲15,乙前甲16,乙前C4,乙5,証人d)。なお,この時点で,午前11時55分頃となっており,練習再開から1時間半程度は経過していた(甲前4,乙5)。 ⑸ 参加人aは,他の部員らの練習を終了させるとともに,bや部員らと協力し,cに水分を摂らせ,頭部の傷を拭き,応急措置として保冷剤でcの額,頸部,脇の下,腿の付け根を冷やすとと 甲前4,乙5)。 ⑸ 参加人aは,他の部員らの練習を終了させるとともに,bや部員らと協力し,cに水分を摂らせ,頭部の傷を拭き,応急措置として保冷剤でcの額,頸部,脇の下,腿の付け根を冷やすとともに,大型扇風機をcに近づけて,風を当てたりした。しかし,その後,cは,飲ませたものを吐き出すなど嘔吐し,参加人aが「おまえもう無理なんか。」「救急車呼ぶんか。」などと声をかけたのに対しても,応じなかった。参加人aは,cのそのような様子を見て,午後0時19分頃,救急車の出動を要請し,午後0時24分頃,救急車が竹田高校に到着した。cは救急車に乗せられ,参加人aもこれに同乗した(甲前4,乙前甲15,乙4)。 竹田消防署の救急出動記録票には,救急車搬入当時のcの状態について,傷病の程度として重症の熱中症であると記載されている(甲前12の1,2)。 ⑹ なお,本件当日の竹田市の気温は,午前10時10分の時点で30度に達し,午後1時頃まで,30度前後で推移しており,剣道場の環境等からすれ ば,剣道場内の気温はそれ以上に達していた可能性がある(甲1)。 2 争点⑴(参加人aらにcの死亡に対する重過失があったか)について⑴ 参加人aについてア後掲各証拠及び弁論の全趣旨によると,文部科学省による平成21年6月26日付けの「熱中症事故等の防止について(依頼)」と題する文書(甲前10の2)などにおいて,学校管理下における熱中症事故を防止するよう要請されていたことを受け,竹田高校では,同月29日,職員朝礼の際,「熱中症対策(部活生指導)」と題する書面(甲前11の2)を教員らに配布しており,同書面には,熱中症が発生する機序,熱中症の種類,対策,熱中症になりやすい関連条件,熱中症の症状に関する記載がなされ,その中に,「足がもつれる・ふらつく・ 面(甲前11の2)を教員らに配布しており,同書面には,熱中症が発生する機序,熱中症の種類,対策,熱中症になりやすい関連条件,熱中症の症状に関する記載がなされ,その中に,「足がもつれる・ふらつく・転倒する,突然座り込む・立ち上がれない,応答が鈍い,意識がもうろうとしている,言動が不自然など少しでも意識障害ある場合には,熱射病を疑う」,その場合には,すぐに救急車を要請し,同時に救急車到着までの間,積極的に体を冷やすなどの応急手当を行うこととされ,迅速に体温を下げることができれば,救命率が上がるなどと記載されていること,参加人aは,その書面を受領し,内容を把握した上,後日,剣道場にも貼付し,部員に対し,気温が高い場合には,剣道場ではなく,風通しのよい体育館へ移動して可能な練習を行うか,練習自体を中止する旨告げるなどしていたこと(甲3,証人d,証人a),また,参加人aが保健体育の教員として使用していた「現代保健体育」という教科書にも熱中症に関する記載があり,熱射病は,熱が体外へうまく放出されないために体温の上昇が激しく,意識障害を生じ,早急に手当をしなければ,多臓器障害が生じ,生命が危険な症状に至るとされ,熱射病とは判断できない場合であっても,様子がおかしいと感じたら,医療機関へ運ぶようにすべきと記載されており,その内容について参加人aは認識していたこと(甲前6,証人a),また,剣道は,身体から発生する熱の拡散を妨 げる防具を着て運動する競技であり,暑熱環境下での運動によって体温が異常に上昇すること,汗により身体の水分と塩分が失われることという2つの熱中症の発症原因が増強されるため,熱中症が起こりやすい競技特性を有しており,室内競技において最も熱中症の事故が多く,本件事故時までにも全国で熱中症による死亡事故も発生していたこと,そ という2つの熱中症の発症原因が増強されるため,熱中症が起こりやすい競技特性を有しており,室内競技において最も熱中症の事故が多く,本件事故時までにも全国で熱中症による死亡事故も発生していたこと,そのため,全日本剣道連盟は,平成17年に,剣道競技における熱中症の発症予防のための提言を公表していたこと(甲前24),参加人aは,剣道の段位7段の有段者であり,指導歴も豊富であり,夏場の剣道の稽古が非常に暑い環境下で行われることを当然に認識しており,以前の教え子の中にも熱中症により病院に搬送される者もいたこと(乙4,証人a),参加人aは,剣道部の顧問として,体育協会や教育委員会主催の熱中症対策講習会に出席し研修を受けるなどしていたこと(甲前4),以上の事実が認められる。 このように,参加人aは,剣道部の指導者として求められる熱中症に関する知識等を十分に有していたといえる上に,本件事故の2か月前に部活動における生徒の熱中症について教員に対する注意喚起がなされていたことなどの事情からすると,熱中症・熱射病の危険性,熱射病を疑うべき症状,さらには熱射病が疑われる事態が生じた場合に求められる処置について,正確な理解が求められてしかるべき立場にあったというべきである。 イしかるに,前記認定事実等によると,参加人aは,本件当日,練習に立ち会い,剣道場内の温度や湿度について当然認識していたこと,その日の練習の進行順序を決定するなどその全体を把握し,cに他の部員よりも多く打ち込み稽古などをさせていることなどから,cの運動量や疲労度についても容易に推察することができたこと,そうした中,練習再開から休憩もなく1時間以上経過した状況で,cが「もう無理です。」などと述べ,その後,元立ちの発声にも返答せず,竹刀を落としたのにこれに気が付かずに竹刀を構える ことができたこと,そうした中,練習再開から休憩もなく1時間以上経過した状況で,cが「もう無理です。」などと述べ,その後,元立ちの発声にも返答せず,竹刀を落としたのにこれに気が付かずに竹刀を構える仕草を続け,他の部員が注意しても気が付かないことも認 識していた。そして,このようなcの行動は,上記のとおり,自らの行動を正常に把握できず,また,周囲からの注意や呼びかけに対しても正常に応答ができなくなるなど,意識が朦朧としているものといえ,上記アのとおり,参加人aにおいても認識していた,熱射病(重度の熱中症)に起因する意識障害の発現ということができ,直ちに医療機関に搬送し,迅速に冷却措置を実施しなければ,死亡する危険が高いといえる状態に至っていたといえる。 このような本件事故当時の状況等に加え,上記アのとおり参加人aが有しており,また有することが求められていた知識等からすれば,参加人aは,遅くとも,cが竹刀を落としたのにこれに気が付かずに竹刀を構える仕草を続けるという行動をとった時点において,cの行動が熱射病に起因する意識障害の発現としての異常行動であること,ひいては放置すれば死亡する危険が高いことを容易に認識し得たといえる。 この点,参加人aは,これまでにもcがまだ続けることができる状態にあるのに「もう無理です。」と発言することがあったこと,本件当日におけるcの様子等からすると,上記のように竹刀を構えたような仕草についても,気持ちの弱さから練習をやめたいがために行う演技であると思ったとし,それが熱射病に起因する意識障害の発現としての異常行動であると認識することはできなかった旨述べている。しかしながら,証拠(甲前4,甲前14,甲前17,甲前44,甲前45,甲3,乙5,乙前甲15,乙前C4)及び弁論の全趣旨によると,bや他の部 異常行動であると認識することはできなかった旨述べている。しかしながら,証拠(甲前4,甲前14,甲前17,甲前44,甲前45,甲3,乙5,乙前甲15,乙前C4)及び弁論の全趣旨によると,bや他の部員らは,これまでのcの言動や本件当日のcの様子等を参加人aと一緒に見ていたが,cが上記のような竹刀を構えたような仕草をした時点において,cの様子が異常であると認識していたと認められるのであって,関係各証拠に照らしてみても,参加人aにおいてのみ,このような状態を認識し得なかったとはいえない。 そうすると,参加人aには,遅くとも,cが竹刀を落としたのにこれに 気が付かずに竹刀を構える仕草を続けるという行動を取った時点において,cについて直ちに練習を中止させ,救急車の出動を要請するなどして医療機関へ搬送し,それまでの応急措置として適切な冷却措置を取るべき注意義務があったと認められる。 ウにもかかわらず,前記認定事実によると,参加人aは,cが竹刀を落としたのにこれに気が付かずに竹刀を構える仕草を続けるといった行動を取った時点において,cの行動が熱射病に起因する意識障害の発現としての異常行動であることを容易に認識することができたのに,指導に熱中し,自身の経験を過信して,それを熱射病の症状と疑うこともなく,何ら合理的な理由もないのに,安易に演技であると決めつけ,練習を継続させ,救急車の出動要請までの時間をいたずらに浪費したものであり,直ちに,cについて練習を中止させることをせず,また,直ちに,医療機関へ搬送することも応急措置として適切な冷却措置を取ることもなかった。 それに加えて,前記認定事実によると,参加人aは,上記のように意識障害の発現としての異常行動を示していたcに対し,あろうことか,「演技するな。」などと述べながら,cの右横腹部 ることもなかった。 それに加えて,前記認定事実によると,参加人aは,上記のように意識障害の発現としての異常行動を示していたcに対し,あろうことか,「演技するな。」などと述べながら,cの右横腹部分を前蹴りし,ふらつき倒れたcの頬を叩き,さらに,立ち上がったものの壁に額を打ち付けて出血し,再び倒れたcに対し,その身体の上にまたがり,「演技じゃろうが。」などと言いながら,10回程度,その頬を平手打ちにしているのであり,その後,ようやく練習を終了させ,cに水分を取らせ,午前11時55分頃から,応急措置として保冷剤で冷やすとともに,大型扇風機をcに近付かせるなどしていたものの,しばらくした後,cが嘔吐するなどした様子を見て,午後0時19分頃になってようやく救急車の出動を要請したというのである。このように参加人aは,熱射病を疑わせる症状が次々とみられ,体温を下げることができずに時間が経過すれば,死亡する危険が高いといえる状態に至っていたcに対し,その症状を正確に把握せず,直ちに体温 を下げるため適切な措置を取らなかったばかりか,その全身状態を悪化させるような不適切な行為にまで及んでいるのである。参加人aは,前蹴りをしたり,再度倒れたcの身体の上にまたがり,その頬を平手打ちした意図について,気付けであるとか,疲れていて気持ちが気弱になっていたので,奮い立たせるつもりであった旨述べているが,既に熱射病の症状である意識障害を生じているcに対して,体温を下げるために何ら有効なものではなく,疲労など体調の悪さが体温調整機能を低下させること(甲前7・47頁)などからすれば,その行為はcの全身状態を悪化させるだけの不適切なものというほかない。 このように参加人aの行為は,自らの職務上の立場において負うべき注意義務の内容に照らせば,わずかな注 47頁)などからすれば,その行為はcの全身状態を悪化させるだけの不適切なものというほかない。 このように参加人aの行為は,自らの職務上の立場において負うべき注意義務の内容に照らせば,わずかな注意を払えば,cの行動が演技ではなく,熱射病に起因する意識障害の発現としての異常行動であること,ひいては放置すれば死亡する危険が高いことを容易に認識し得たのであるから,cについて直ちに練習を中止させ,救急車の出動を要請するなどして医療機関へ搬送し,それまでの応急措置として適切な冷却措置を取るべき注意義務があったにもかかわらず,単にその注意義務を怠ったにとどまらず,cの全身状態を悪化させるような不適切な行為にまで及んでいるのであるから,その注意義務違反の程度は重大であり,その注意を甚だしく欠いたものということができる。 エこの点,被告は,求償関係における公務員の重過失は,当該公務員の個別の行為を基準とした上で,その後の第三者の過失行為と,それによる拡大損害の発生について,公務員に予見可能性があったかどうか,また,当該公務員の行為と結果との間に相当因果関係があるかどうかが個別に判断されなければならない旨主張する。しかしながら,国家賠償法1条2項は,公務員個人に対する求償が,公務員を委縮させ,公務の果断な執行の障害となるおそれがあるとの弊害を踏まえ,過失責任の場合の求償には過失の 重大性という要件の限定を付しているものと解されるが,そうであるからといって,過失の判断の前提となる予見可能性の対象や相当因果関係の判断が異なることとなる理由はなく,上記のような趣旨を踏まえた上で,注意義務違反の程度が著しいものといえるかといった観点から判断すれば足りるというべきであり,被告の主張は独自の見解に基づくものであって採用できない。 被告は,参加人 記のような趣旨を踏まえた上で,注意義務違反の程度が著しいものといえるかといった観点から判断すれば足りるというべきであり,被告の主張は独自の見解に基づくものであって採用できない。 被告は,参加人aの行為の後,e医師の医療上の過失という新たな過失行為が介在することにより,それまでは存在していたcの救命可能性が失われ,cの死亡という結果が発生していることをもって,参加人aにおいて,cの死亡という結果を容易に予見できなかった旨繰り返し主張している。しかしながら,上記のとおり,参加人aは,遅くとも,cが竹刀を落としたのにこれに気が付かずに竹刀を構える仕草を続けるという行動を取った時点において,cの行動が熱射病に起因する意識障害の発現としての異常行動であること,ひいては放置すれば死亡する危険が高いことを容易に認識し得たといえるのであり,熱射病による死亡という結果についての予見可能性が否定されることはない。被告の主張は,結局のところ,参加人aの行為後の具体的な因果の経過についてまで予見可能性を必要とするものであるが,公務員に対する求償の場面において,そのような経過についての予見可能性を必要とされるものではないことは前記のとおりである。 オ以上からすれば,参加人aは,cの死亡について重過失があったといえる。 ⑵ bについてア上記認定事実に加え,後掲各証拠(甲1,乙前C4,乙5)及び弁論の全趣旨によれば,bは,本件事故の約2か月前の平成21年6月29日,竹田高校から「熱中症対策(部活生指導)」と題する書面(甲前11の2)を受領し,その内容を把握していたこと,また,剣道の段位5段の有段者 であり,夏場の剣道の稽古が非常に暑い環境下で行われることを当然に認識しており,さらに,本件当時,剣道場において練習に立ち会い,剣道場内の温度 握していたこと,また,剣道の段位5段の有段者 であり,夏場の剣道の稽古が非常に暑い環境下で行われることを当然に認識しており,さらに,本件当時,剣道場において練習に立ち会い,剣道場内の温度や湿度,cの運動量や疲労度についても把握することができ,そうした中,練習再開から1時間以上経過した状況下で,cが「もう無理です。」などと述べ,その後,元立ちの発声にも返答せず,竹刀を落としたのにこれに気が付かずに竹刀を構える仕草を続け,他の部員が注意しても気が付かなかったことも認識しており,これらのことからcの状態が異常であることを認識していたというのである。 このような本件事故当時の状況等に加え,上記のようなbが有していたはずの知識等からすれば,bにおいても,遅くとも,cが竹刀を落としたのにこれに気が付かずに竹刀を構える仕草を続けるという行動を取った時点において,cの行動が熱射病に起因する意識障害の発現としての異常行動であること,ひいては放置すれば死亡する危険が高いことを認識し得たといえる。 そうすると,bは,遅くとも,cが竹刀を落としたのにこれに気が付かずに竹刀を構える仕草を続けるという行動を取った時点において,参加人aが練習を継続するのを制止するなどして直ちに練習を中止させ,救急車の出動を要請するなどして医療機関へ搬送し,それまでの応急措置として適切な冷却措置を取るべき注意義務があったと認められるところ,前記認定事実によると,bは,参加人aが練習を継続するのを制止するなどの措置を取っておらず,cが倒れるに至っても,参加人a同様に,直ちに救急車の出動を要請するなどの措置を取っていないのであるから,上記注意義務に違反した過失がある。 イしかしながら,bは,顧問である参加人aを補佐する立場にあり,練習計画などは全て参加人aが決定して 車の出動を要請するなどの措置を取っていないのであるから,上記注意義務に違反した過失がある。 イしかしながら,bは,顧問である参加人aを補佐する立場にあり,練習計画などは全て参加人aが決定していたこと(甲3,乙4,乙5),剣道部の練習に参加する回数も限られていたこと(乙4,5)等関係各証拠から 窺われるbの立場や参加人aとの関係性からすれば,bは,顧問である参加人aの意向に反することは困難なものであったといえ,加えて,前記認定事実によると,bは,本件当日,壁に頭を打ち付けて倒れたcに駆け寄った際,参加人aから「b先生,これは演技じゃけん,心配せんでいい。」,「これが熱中症の症状じゃないことは俺は知っている。」などと制止されたため,すぐに救急車の出動を要請するなどの措置を講じなかったこと,参加人aにみられるようなcの全身状態を悪化させるような不適切な行為には及んでいないことが認められ,これらの事実関係等からすれば,bについて,その職務上の立場において負うべき注意義務の内容に照らしても,その注意義務違反の程度が重大であり,その注意を甚だしく欠いたものとまでは認められない。 ウ以上からすると,bは,cの死亡について重過失があるとはいえない。 3 争点⑵(本件保険金の充当による求償権の有無ないし範囲)について⑴ 地方自治法242条の2第1項4号に基づく住民訴訟において,住民が請求することを求める対象となる,怠る事実に係る相手方に対する損害賠償請求権は,民法その他の私法上の損害賠償請求権と異なるところはないというべきであるから,損害の有無,その額については,損益相殺が問題になる場合はこれを行った上で確定すべきものであり,同項3号に基づく住民訴訟において,その怠る事実の違法確認の請求をする場合も同様である。したがって,財務会 の有無,その額については,損益相殺が問題になる場合はこれを行った上で確定すべきものであり,同項3号に基づく住民訴訟において,その怠る事実の違法確認の請求をする場合も同様である。したがって,財務会計上の行為により普通地方公共団体に損害が生じたとしても,他方,その行為の結果,その地方公共団体が利益を得,あるいは支出を免れることによって利得をしている場合には,損益相殺の可否については,両者の間に相当因果関係があると認められる限りは,これを行うことができる(最高裁平成6年12月20日第三小法廷判決・民集48巻8号1676頁(平成14年法律第4号による改正前の地方自治法242条の2第1項4号に関するもの)等参照)。 前記前提事実によると,県は,本件事故により本件供託金2755万6519円を支出するという損害を被った一方で,これにより,当時加入していた本件保険から,免責金額200万円を控除した本件保険金2555万6519円を収納していること,本件保険は,教育活動実施中の事故等に起因する損害賠償金等の財政負担を填補することを目的とした保険であることが認められるから,本件供託金の支出と本件保険金の収入との間には相当因果関係があるといえ,損益相殺の対象となるというべきである。 そうすると,本件供託に伴う県の実質的負担額は,本件供託金から本件保険金を控除した200万円にとどまり,求償権の上限は200万円となるというべきである。 ⑵ 被告は,本件保険金を参加人aの本来的な負担部分に優先的に充当することができることを前提に,本件保険金によって参加人aの本来的な負担部分に対応する額は全て填補されたことになるとして,県の参加人aに対する求償権は存在しない旨主張し,本件事故が教育活動の一環として行われたこと等の事情を踏まえれば,県においても本件事 の本来的な負担部分に対応する額は全て填補されたことになるとして,県の参加人aに対する求償権は存在しない旨主張し,本件事故が教育活動の一環として行われたこと等の事情を踏まえれば,県においても本件事故による損害について一定の負担をするのが相当であるから,財産管理に関する行政裁量として上記のような優先的な充当方法も許容されるべきである旨主張する。 しかしながら,そのような行政裁量があることを基礎付ける財務会計法規上の根拠規定は存在せず,被告の主張は,県に固有の過失が存在しないというにもかかわらず,根拠不明な行政裁量を理由に,適正な求償権行使を控えるものといわざるを得ない。被告が主張する諸般の事情は,後述の信義則による求償権の制限の問題として考慮すれば足りるのであって,上記のような参加人aの本来的な負担部分に優先的に充当する取扱いを正当化する根拠にはならないというべきである。 したがって,被告の上記主張は,本件保険金を参加人aの本来的な負担部分に優先的に充当することができるとの前提自体が独自の見解に基づくもの であり,採用できない。 4 争点⑶(求償権の信義則による制限の可否)について⑴ 国又は公共団体は,公権力の行使に当たる公務員がその職務を行うについてなした加害行為によって,国家賠償法1条1項により損害賠償責任を負う場合において,当該公務員に故意又は重大な過失がある場合には,当該公務員に対して求償権を有する(国家賠償法1条2項)が,公務の遂行を通じて公権力の行使という行政目的を達していることなどに照らせば,生じた損害の全額を直ちに求償できることにはならず,その公務の性格,規模,施設の状況,当該公務員の業務の内容,勤務条件,勤務態度,加害行為の態様,加害行為の予防もしくは損失の分配についての国又は公共団体の配慮の程度その他 に求償できることにはならず,その公務の性格,規模,施設の状況,当該公務員の業務の内容,勤務条件,勤務態度,加害行為の態様,加害行為の予防もしくは損失の分配についての国又は公共団体の配慮の程度その他諸般の事情に照らし,損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度においてのみ,当該公務員に対し求償の請求をすることができるものと解するのが相当である。 ⑵ 証拠(乙11ないし13)及び弁論の全趣旨によれば,本件事故当時の高等学校の学習指導要領において,部活動について学校教育の一環として教育課程との関連が図られるよう留意することを明記されるなど,部活動の顧問としての活動が教員の本務であると位置づけられていたものの,部活動の顧問としての指導は,放課後や,土日等,基本的に正規の勤務時間(7時間45分)外に及んで実施されるという実態がありながら,部活動指導のための時間外勤務を命ずることはできないとされていること,教員の勤務態様の特殊性を踏まえた教職調整額や土日等の部活動指導に限って支給される教員特殊業務手当(部活手当)等を踏まえても,その金額は僅少であり,勤務時間外に顧問として活動することに伴う負担を十分に填補されているとまではいえないことなど,勤務時間外に及ぶ部活動の指導は,各教員のボランタリーな勤務という取扱いにならざるを得ないが,部活動をしたいという生徒の要望に応えたいとの教員の熱意と献身的な努力によって支えられていると認められ る。 また,前記認定事実のほか,証拠(甲前4,甲1,3,乙前A11,乙前B4,乙前C1ないし3,乙3)及び弁論の全趣旨によると,参加人aは,本件事故のあった平成21年の4月に竹田高校に赴任し,部活動である剣道部の指導を行っていたところ,その練習は放課後だけでなく,土日のいずれも行うことが多 乙3)及び弁論の全趣旨によると,参加人aは,本件事故のあった平成21年の4月に竹田高校に赴任し,部活動である剣道部の指導を行っていたところ,その練習は放課後だけでなく,土日のいずれも行うことが多く,熱意をもって剣道部の指導に当たっており,本件当日までの指導の姿勢に大きな問題点があったとまではいえず,少なくとも学校側からその部活動の指導の姿勢等について明確に注意されていたといった事情は窺われないこと,本件事故当時,竹田高校の剣道場の施設状況として,その北側に玄関,西側に出入口と開閉可能な窓,東側にも開閉可能な窓があるものの,風通しはよくないこと,夏場においては,非常に暑い環境下で行われるため,出入口の窓を全開にした上で,壁際に設置された大型扇風機3台を使用していたものの,それでも剣道場内の湿度は胴衣等を干しても乾かない程度に高いこともあったこと,参加人aは,本件事故当時までに,部員らに対し,塩分補給や水分補給について注意を促したり,大型扇風機1台や10ℓ入りのタンクを自費で購入したり,学校側に網戸の設置を依頼したり,あるいは,休憩時間を長めに取るようにしたりするなど夏場の練習時の事故防止のための対策をしていたことが認められる。 そして,前記認定事実のほか,証拠(甲1,4,乙3,証人d,証人a)及び弁論の全趣旨によれば,本件事故は参加人aの職務遂行の過程において生じたものであり,確かに,参加人aには重大な過失があるといわざるを得ないが,本件事故は,参加人aにおいて,主将であり部員の中で唯一段位3段を有していたcに対する期待等とも相まって,指導に熱中する余り許容限度を超える指導を行う中で生じたものとみられ,そのような指導が行われていた中で,その場に立ち会っており,参加人aを制止すべき立場にあった副顧問であるbにおいても参加人aを制止し に熱中する余り許容限度を超える指導を行う中で生じたものとみられ,そのような指導が行われていた中で,その場に立ち会っており,参加人aを制止すべき立場にあった副顧問であるbにおいても参加人aを制止しなかったという状況も認められる。 以上のような諸事情等に照らすと,損害の公平な分担という見地から信義則上,県は,損益相殺後残存する損害額200万円の2分の1の限度においてのみ,参加人aに求償を請求することができるとするのが相当である。 5 争点⑷(怠る事実の違法性の有無)について⑴ 地方公共団体が有する債権の管理について定める地方自治法240条,地方自治法施行令171条から171条の7までの規定によれば,客観的に存在する債権を理由もなく放置したり免除したりすることは許されず,原則として,地方公共団体の長にその行使又は不行使についての裁量はない(最高裁平成16年4月23日第二小法廷判決・民集58巻4号892頁参照)。 この点,国家賠償法1条2項に基づく求償権は,不法行為に基づく損害賠償請求権と同様に,債権の存否自体が必ずしも明らかでない場合が多いことからすると,その不行使が違法な怠る事実に当たるというためには,少なくとも,客観的にみて求償権の発生を認定するに足りる証拠資料を地方公共団体の長が入手し,又は入手し得たことを要するものというべきである(最高裁平成21年4月28日第三小法廷判決・裁判集民事230号609頁参照)。しかるに,本件において,前訴判決は,前記判示と同様に,参加人aは,遅くとも,cが竹刀を落としたのにこれに気が付かず竹刀を構える仕草を続けるという行動を取った時点において,cが異常な行動を取っていること,さらにはcが熱射病を発症したことについて容易に認識し得たというというべきであるとし,この時点で,直ちに練 ず竹刀を構える仕草を続けるという行動を取った時点において,cが異常な行動を取っていること,さらにはcが熱射病を発症したことについて容易に認識し得たというというべきであるとし,この時点で,直ちに練習を中止させ,救急車の出動を要請するなどして医療機関へ搬送し,それまでの応急措置として適切な冷却措置を取るべき注意義務があったにもかかわらず,参加人aにおいては,cに意識障害が生じた後も,打ち込み稽古を続けさせ,その後にcがふらふらと歩いて壁に額を打ち付けて倒れた際にも,それがcによる「演技」であるとして何らの措置も取らず,救急車の出動を要請するなどして直ちに医療機関へ搬送する措置を怠った点において過失があるなどといった認定判断をし た上で,県に対する損害賠償請求を一部認容するものであり,前訴判決当時から県の知事であった被告は,前訴判決及び前訴において提出された証拠を入手していたとみられ,少なくとも容易に入手することができたものである。 そして,前訴に提出されたとみられる証拠や前訴判決等からすれば,客観的に見て参加人aに重過失があり,求償権の発生を認めることは可能であるから,遅くとも本件訴訟が提起された時点までには,被告において,求償権を行使することにつき,格別の支障がなかったものといえる。 他方において,そのような証拠資料を入手し,又は入手し得たと認められる場合であっても,地方公共団体の長において,求償権を行使せず,その行使を見合わせることとした判断に合理性があると認められるような例外的な場合には,違法な怠る事実があるとはいえないとする余地はあるというべきである。 この点,被告は,本件において,参加人aの行為と,cの死亡という結果発生についての予見可能性や因果関係を検討した上で,参加人aに重過失があったと認めることはできないとし はあるというべきである。 この点,被告は,本件において,参加人aの行為と,cの死亡という結果発生についての予見可能性や因果関係を検討した上で,参加人aに重過失があったと認めることはできないとして,求償権の行使はできないと判断したものであり,このような判断には合理性が認められる旨主張する。しかしながら,前記のとおり,前訴に提出されたとみられる証拠や前訴判決等からすれば,客観的にみて参加人aに重過失があると認めることは可能であり,そのような判断に合理性がないことは明らかである。 また,被告は,仮に参加人aに重過失があったとしても,本件保険金の支払により参加人aの本来的負担割合の全額が填補され,参加人aに対する求償権は存在しないか,残存するとしても僅少額である上に,諸般の事情を総合的に考慮すると,参加人aに対する求償権は相当程度制限されるため,求償権を行使しないこととしたものであり,このような判断には合理性がある旨主張する。しかしながら,前記のとおり,本件保険金の支払により上記本来的負担割合の全額が優先的に填補されるとの前提自体が誤っており,また, 本件保険金により残存する損害額200万円が僅少であるとはいえず,さらに,信義則上の求償権の制限の観点から,参加人aに対して発生している求償権を全く行使しないという判断をしたとの主張についても,そのような判断に合理性があることについて十分な主張立証はされておらず,その合理性を裏付ける事情も認められない。 そして,他に求償権を行使せず,その行使を見合わせることとした被告の判断に合理性があると認めるに足りるような例外的な事情は認められない。 ⑵ 以上からすれば,被告において,参加人aに対する求償権行使を違法に怠っている事実があるといえる。 6 結論以上の次第で,原告らが,被告に対 認めるに足りるような例外的な事情は認められない。 ⑵ 以上からすれば,被告において,参加人aに対する求償権行使を違法に怠っている事実があるといえる。 6 結論以上の次第で,原告らが,被告に対し,参加人aらに対する求償権を行使しないことの違法確認を求める訴え(前記第1の1)は,被告に対し,参加人aに対する100万円及びこれに対する平成25年5月2日から支払済みまで民法所定の年5分の遅延損害金の請求権を行使しないことの違法確認を求める限度で理由があるからこれを認容し,また,原告らが,被告に対し,参加人aらに対する求償権を行使するよう求める訴え(前記第1の2)は,被告に対し,参加人aに対する上記請求権に係る支払の請求をすることを求める限度で理由があるからこれを認容し(なお,後者の訴えが前者の訴えに併合提起されていることにより,前者の訴えが不適法な訴えとなるものと解すべきではないことにつき,最高裁平成13年12月13日第一小法廷判決・民集55巻7号1500頁(平成14年法律第4号による改正前の地方自治法242条の2第1項4号に関するもの)等参照),その余の各請求はいずれも理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 大分地方裁判所民事第1部 裁判長裁判官竹内浩史 裁判官鈴木喬 裁判官工藤優希
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