令和3(行コ)112 生活保護基準引下処分取消等請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和7年3月13日 大阪高等裁判所 破棄自判 京都地方裁判所 平成26(行ウ)46
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判決文本文47,752 文字)

令和3年(行コ)第112号生活保護基準引下処分取消等請求控訴事件令和7年3月13日大阪高等裁判所第3民事部判決 主文 1 原判決のうち、別紙当事者目録記載の控訴人らの被控訴人京都市に対する請 求に係る敗訴部分を取り消す。 2 別紙処分一覧表1ないし3の「処分庁」欄記載の各処分行政庁が「処分日1」、「処分日2」及び「処分日3」欄記載の各年月日付けで「処分の名宛人」欄記載の各控訴人に対してした各保護変更決定処分を取り消す。 3 控訴人らのその余の本件控訴をいずれも棄却する。 4⑴ 控訴人らに生じた訴訟費用は、第1、2審を通じ、これを5分し、その1を控訴人らの負担とし、その余を被控訴人京都市の負担とする。 ⑵ 被控訴人京都市に生じた訴訟費用は、第1、2審を通じ、被控訴人京都市の負担とする。 ⑶ 被控訴人国に生じた控訴費用は、その全部を控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決主文第1項のうち、南福祉事務所長が原告3-1(控訴人㉞)に対して平成25年7月23日付けでした生活保護法25条2項に基づく変更決定の取消しを求める部分を却下した部分、原判決主文第2項及び第3項を取り消す。 2 主文第2項と同旨 3 被控訴人国は、控訴人ら各自に対し、1万円及びこれに対する平成25年5月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 訴訟費用は、第1審、第2審とも被控訴人らの負担とする。 第2 事案の概要等(略称は、特記しない限り、原判決の例による。) 1 事案の概要 本件は、厚生労働大臣が、平成25年5月16日付けで平成25年厚生労働省告示第174号(平成25年告 事案の概要等(略称は、特記しない限り、原判決の例による。) 1 事案の概要 本件は、厚生労働大臣が、平成25年5月16日付けで平成25年厚生労働省告示第174号(平成25年告示)を、平成26年3月31日付けで平成26年厚生労働省告示第136号(平成26年告示)を、平成27年3月31日付けで平成27年厚生労働省告示第227号(平成27年告示)をそれぞれ発出して、生活保護法による保護の基準(昭和38年4月1日号外厚生省告示第 158号)における生活扶助の基準を改定し、これに基づき、各処分行政庁が対応する各控訴人(別紙処分一覧表参照)を名宛人として生活保護法25条2項に基づき支給する生活保護費の変更決定処分(本件各処分)を行ったことについて、控訴人らが、⑴ 被控訴人京都市に対し、本件各処分は、生活扶助を健康で文化的な最低限度の生活を維持するに足りない水準とするものであり生 活保護法3条等に違反するなどと主張して、対応する処分行政庁が行った本件各処分の取消しを求めるとともに、⑵ 被控訴人国に対し、平成25年告示による生活保護基準の改定が、控訴人らの健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を侵害し、国家賠償法上違法であると主張して、それぞれ1万円の損害賠償及びこれに対する平成25年告示の発出日から支払済みまで民法(平成29 年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 原審は、控訴人らの訴えのうち、南福祉事務所長が控訴人㉞(原告3-1)に対して平成25年7月23日付けでした生活保護法25条2項に基づく変更決定の取消しを求める部分を却下し、控訴人らのその余の請求をいずれも棄却 した。そこで、控訴人らは、これらを不服として控訴した。 2 関係法令の定め 付けでした生活保護法25条2項に基づく変更決定の取消しを求める部分を却下し、控訴人らのその余の請求をいずれも棄却 した。そこで、控訴人らは、これらを不服として控訴した。 2 関係法令の定め等以下のとおり補正するほかは、原判決「事実及び理由」の第2の2のとおりであるから、これを引用する。 ⑴ 5頁21行目の「保護を必要とする者」を「保護を必要とする状態にある 者」に改める。 ⑵ 6頁16行目の「別表第1」を「保護基準の別表第1」に、7頁7行目及び14行目の「別表第9」を「保護基準の別表第9」にそれぞれ改める。 ⑶ 7頁14行目の「なお、」を削る。 3 前提事実(当事者間に争いがない事実並びに後掲証拠(書証は特記しない限り枝番号を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実等) ⑴ 当事者等7頁19行目の「法」を「生活保護法」に、「支給を受けている者」を「支給を受けていた者」にそれぞれ改めるほかは、原判決「事実及び理由」の第2の3⑴のとおりであるから、これを引用する。 ⑵ 本件各処分に至る経緯 以下のとおり補正するほかは、原判決「事実及び理由」の第2の3⑵のとおりであるから、これを引用する。 ア 8頁25行目の「乙5」を「甲6、乙5」に改める。 イ 9頁10行目の「置かれた」を「設置された(甲108の2、乙15の1)」に改める。 ウ 9頁13行目の「乙15の1」を「甲108の2、乙15の1」に改める。 エ 9頁15行目の「報告書」を「生活扶助基準に関する検討会報告書」に改める。 オ 9頁22行目の「乙6」を「甲7、108~112、乙6」に改める。 カ 10頁6行目の「乙」の次に「8の1、」を加える。 キ 10頁21行目の「甲6」を「甲25、26」に改める る。 オ 9頁22行目の「乙6」を「甲7、108~112、乙6」に改める。 カ 10頁6行目の「乙」の次に「8の1、」を加える。 キ 10頁21行目の「甲6」を「甲25、26」に改める。 ク 10頁22行目から23行目にかけての「物価下落により被保護者の可処分所得が実質的に増加しているとして」を削る。 ケ 12頁18行目の「乙」を「甲1、乙」に改める。 コ 12頁19行目の「。書証は特記しない限り枝番号を含む。」を削る。 ⑶ 本件各処分(弁論の全趣旨)本件各告示による生活扶助基準の改定(本件扶助基準改定)に基づき、処分行政庁は、以下のとおり、控訴人らに支給される保護費に係る保護変更決定(本件各処分)を行った。 ア別紙処分一覧表1の「処分庁」欄記載の各処分行政庁は、「処分日1」欄 記載の各日に、対応する「処分の名宛人」欄記載の各控訴人に対し、平成25年8月以降支給分の保護費に係る保護変更決定を行った(以下、これらの処分を「第1次保護変更決定処分」ともいう。)。 イ別紙処分一覧表2の「処分庁」欄記載の各処分行政庁は、「処分日2」欄記載の各日に、対応する「処分の名宛人」欄記載の各控訴人に対し、平成 26年4月以降支給分の保護費に係る保護変更決定を行った(以下、これらの処分を「第2次保護変更決定処分」ともいう。)。 ウ別紙処分一覧表3の「処分庁」欄記載の各処分行政庁は、「処分日3」欄記載の各日に、対応する「処分の名宛人」欄記載の各控訴人に対し、平成27年4月以降支給分の保護費に係る保護変更決定を行った(以下、これ らの処分を「第3次保護変更決定処分」ともいう。)。 ⑷ 本件訴え提起までの経過(甲352、弁論の全趣旨)ア第1次保護変更決定処分関係(ア) 別 更決定を行った(以下、これ らの処分を「第3次保護変更決定処分」ともいう。)。 ⑷ 本件訴え提起までの経過(甲352、弁論の全趣旨)ア第1次保護変更決定処分関係(ア) 別紙処分一覧表1の番号②、③、⑩、⑪、⑯及び㉒に係る「処分の名宛人」欄記載の各控訴人は、自らを名宛人とする第1次保護変更決定処 分に係る各処分日からいずれも3か月以内である「審査請求日1」欄記載の各日に、京都府知事に対し、当該処分に係る審査請求をし、京都府知事は、「裁決日1」欄記載の各日に、当該審査請求をそれぞれ棄却する裁決をした。 上記各控訴人は、自らを名宛人とする上記各裁決の結果を知った日か ら1か月以内である「再審査請求日1」欄記載の各日に、厚生労働大臣 に対して再審査請求をし、再審査請求が係属中の平成26年12月25日に、本件訴え(第1事件)を提起した。 (イ) 別紙処分一覧表1の番号㉞の控訴人は、自らを名宛人とする第1次保護変更決定処分に係る処分日から3か月以内である「審査請求日1」欄記載の日に、京都府知事に対し、当該処分に係る審査請求をし、京都府 知事は、「裁決日1」欄記載の日に、当該審査請求を棄却する裁決をした。 上記控訴人は、上記裁決の結果を知った日から1か月以内である「再審査請求日1」欄記載の日に、厚生労働大臣に対して再審査請求をし、厚生労働大臣は、平成26年12月19日に再審査請求を棄却する裁決をした。 上記控訴人は、上記再審査請求に係る裁決があったことを知った日から6か月以内である平成27年4月9日に、本件訴え(第3事件)を提起した。 イ第2次保護変更決定処分関係(ア) 別紙処分一覧表2の①、③~⑬、⑮~㉓に係る「処分の名宛人」欄記 載の各控訴人は、自らを名宛人と 27年4月9日に、本件訴え(第3事件)を提起した。 イ第2次保護変更決定処分関係(ア) 別紙処分一覧表2の①、③~⑬、⑮~㉓に係る「処分の名宛人」欄記 載の各控訴人は、自らを名宛人とする第2次保護変更決定処分に係る各処分日からいずれも3か月以内である「審査請求日2」欄記載の各日に、京都府知事に対し、当該処分に係る審査請求をし、京都府知事は、「裁決日2」欄記載の各日に、当該審査請求をそれぞれ棄却する裁決をした。 上記各控訴人は、自らを名宛人とする上記各裁決があったことを知っ た日から6か月以内である平成26年12月25日に、本件訴え(第1事件)を提起した。 (イ) 別紙処分一覧表2の㉕~㉚、㉜及び㉝に係る「処分の名宛人」欄記載の各控訴人は、自らを名宛人とする第2次保護変更決定処分に係る各処分日からいずれも3か月以内である「審査請求日2」欄記載の各日に、 京都府知事に対し、当該処分に係る審査請求をし、京都府知事は、「裁決 日2」欄記載の各日に、当該審査請求をそれぞれ棄却する裁決をした。 上記各控訴人は、自らを名宛人とする上記各裁決があったことを知った日から6か月以内である平成27年1月15日に、本件訴え(第2事件)を提起した。 (ウ) 別紙処分一覧表2の番号㉞の控訴人は、自らを名宛人とする第2次保 護変更決定処分に係る処分日から3か月以内である「審査請求日2」欄記載の日に、京都府知事に対し、同処分に係る審査請求をし、京都府知事は、「裁決日2」欄記載の日に、当該審査請求を棄却する裁決をした。 上記控訴人は、上記裁決の結果を知った日から1か月以内である「再審査請求日2」欄記載の日に、厚生労働大臣に対して再審査請求をし、 再審査請求が係属中の平成27年4月9日に、本件訴え(第3事件)を提起し は、上記裁決の結果を知った日から1か月以内である「再審査請求日2」欄記載の日に、厚生労働大臣に対して再審査請求をし、 再審査請求が係属中の平成27年4月9日に、本件訴え(第3事件)を提起した。 (エ) 別紙処分一覧表2の番号㉟の控訴人は、自らを名宛人とする第2次保護変更決定処分に係る処分日から3か月以内である「審査請求日2」欄記載の日に、京都府知事に対し、同処分に係る審査請求をし、京都府知 事は、「裁決日2」欄記載の日に、当該審査請求を棄却する裁決をした。 上記控訴人は、上記裁決の結果を知った日から1か月以内である「再審査請求日2」欄記載の日に、厚生労働大臣に対して再審査請求をし、厚生労働大臣は、「再審査請求裁決日2」欄記載の日に再審査請求を棄却する裁決をした。 上記控訴人は、上記再審査請求に係る裁決があったことを知った日から6か月以内である平成29年2月28日に、本件訴え(第5事件)を提起した。 ウ第3次保護変更決定処分関係別紙処分一覧表3の番号①~⑬、⑮~㉓、㉕~㉚及び㉜~㉞に係る「処 分の名宛人」欄記載の各控訴人は、自らを名宛人とする第3次保護変更決 定処分に係る各処分日からいずれも3か月以内である「審査請求日3」欄記載の各日に、京都府知事に対し、当該処分に係る審査請求をし、京都府知事は、「裁決日3」欄記載の各日に、当該審査請求をそれぞれ棄却する裁決をした。 上記各控訴人は、自らを名宛人とする上記各裁決があったことを知った 日から6か月が経過する前の平成27年12月28日に、本件訴え(第4事件)を提起した。 ⑸ 本件訴え提起後の検証基準部会は、本件扶助基準改定後である平成28年5月から平成29年12月にかけて、本件扶助基準改定による影響等についての検証(以下 (第4事件)を提起した。 ⑸ 本件訴え提起後の検証基準部会は、本件扶助基準改定後である平成28年5月から平成29年12月にかけて、本件扶助基準改定による影響等についての検証(以下「平成 29年検証」という。)を実施し、同月14日付けで社会保障審議会生活保護基準部会報告書(以下「平成29年報告書」という。)を取りまとめた(乙75)。 第3 争点及びこれに関する当事者の主張 1 本件各処分の根拠となった本件扶助基準改定が生活保護法3条、8条に違反 するか(争点1)⑴ 控訴人らの主張本件各処分の根拠となった本件扶助基準改定は違法であり、その理由は、別紙「控訴人ら・控訴審第20準備書面」の第1~第5及び第7のとおりである。そのうち、①本件扶助基準改定の違法性の判断枠組みについての主張 は上記準備書面の第2、②デフレ調整に関する主張は上記準備書面の第3、③ゆがみ調整に関する主張は上記準備書面の第4の1~3、④ゆがみ調整の幅を基準部会報告書の検証結果の2分の1としたことに関する主張は上記準備書面の第4の4、⑤デフレ調整とゆがみ調整を重複して実施したことに関する主張は上記準備書面の第4の5、⑥平成29年検証に関する主張は上記 準備書面の第5の3のとおりである。 ⑵ 被控訴人らの主張本件各処分の根拠となった本件扶助基準改定は適法であり、その理由は、別紙「控訴審第13準備書面」の第1~第5のとおりである。 そのうち、①本件扶助基準改定の適法性の判断枠組みについての主張は上記準備書面の第2、被控訴人らが主張する判断枠組みによると本件扶助基準 改定が適法であることについての主張は上記準備書面の第3のとおりである。 仮に、本件扶助基準改定の適法性判断に判断過程審査の手法を 面の第2、被控訴人らが主張する判断枠組みによると本件扶助基準 改定が適法であることについての主張は上記準備書面の第3のとおりである。 仮に、本件扶助基準改定の適法性判断に判断過程審査の手法を用いるとしても、本件扶助基準改定は生活保護法3条、8条2項に違反するものではないことは、上記準備書面の第4のとおりであり、このうち、②デフレ調整に関する主張は上記準備書面の第4の2⑵、③ゆがみ調整に関する主張及び④ ゆがみ調整の幅を基準部会報告書の検証結果の2分の1としたことに関する主張は上記準備書面の第4の2⑴、⑤デフレ調整とゆがみ調整を重複して実施したことに関する主張は上記準備書面の第4の2⑶、⑥平成29年検証に関する主張は上記準備書面の第4の2⑵オのとおりである。 2 平成25年告示による生活扶助基準改定の国家賠償法上の違法性の有無及び 控訴人らの損害額(争点2)⑴ 控訴人らの主張別紙「控訴人ら・控訴審第20準備書面」の第6のとおりである。 ⑵ 被控訴人国の主張否認し、争う。本件扶助基準改定(平成25年告示による生活扶助基準改 定を含む。)は違法ではないから、被控訴人国が、国家賠償法1条1項により損害賠償責任を負うことはない。 第4 当裁判所の判断当裁判所は、本件各告示による生活扶助基準の改定(本件扶助基準改定)は、生活保護法3条、8条2項の各規定に違反し、同条1項による委任の範囲を逸 脱する違法なものであり、本件扶助基準改定に伴って各処分行政庁が行った本 件各処分も違法であるので、これらの本件各処分の全部の取消しを求める控訴人らの被控訴人京都市に対する請求はいずれも理由があるから認容すべきであるが、被控訴人国に対する国家賠償を求める請求はいずれも理由がないから棄 あるので、これらの本件各処分の全部の取消しを求める控訴人らの被控訴人京都市に対する請求はいずれも理由があるから認容すべきであるが、被控訴人国に対する国家賠償を求める請求はいずれも理由がないから棄却すべきであると判断する。その理由は以下のとおりである。 1 認定事実 以下のとおり補正するほかは、原判決「事実及び理由」の第5の1とおりであるから、これを引用する。 ⑴ 51頁17行目の「平成15年」から20行目の「社会保障審議会も、同年」までを「社会保障審議会は、平成15年」に改める。 ⑵ 51頁24行目の「乙13の2」を「乙13の1・2」に改める。 ⑶ 53頁8行目の「乙5」を「甲6、397、乙5」に改める。 ⑷ 55頁12行目の「乙15の2」の次に「、弁論の全趣旨」を加える。 ⑸ 56頁14行目の「乙6」の前に「甲7、」を加える。 ⑹ 57頁7行目の「勤労3人世帯」の次に「(夫婦子1人(有業者あり)世帯)」を加える。 ⑺ 59頁8行目の「16、」を削る。 ⑻ 60頁1行目の「以上につき、」の次に「甲282~286、」を加える。 ⑼ 61頁4行目の「13の2」を「123」に改める。 ⑽ 61頁16行目の「甲3、」の次に「25、26、89、」を加える。 ⑾ 61頁17行目の「全国消費実態調査」の次に「(以下「平成21年全消 調査」という。)」を加える。 ⑿ 61頁18行目の「後述するとおり(後記(エ)参照)、」を削る。 ⒀ 62頁9行目末尾に「(乙39、115、後記(エ))」を加える。 ⒁ 64頁4行目の「全国消費実態調査(以下「全消調査」という。)」を「全消調査」に改める。 ⒂ 68頁1行目末尾に改行して、以下のとおり加える。 「 厚生労働省において生活扶助基準の見直しを検討する 消費実態調査(以下「全消調査」という。)」を「全消調査」に改める。 ⒂ 68頁1行目末尾に改行して、以下のとおり加える。 「 厚生労働省において生活扶助基準の見直しを検討する際には、平成25年報告書の評価・検証の結果を考慮し、その上で他に合理的説明が可能な経済指標等を総合的に勘案する場合は、それらの根拠についても明確に示されたい。なお、その際には現在生活保護を受給している世帯及び一般低所得世帯への見直しが及ぼす影響についても慎重に配慮された い。」⒃ 68頁19行目から20行目までを以下のとおり改める。 「(ア) 社会・援護局保護課は、平成25年1月27日、「生活扶助基準等の見直しについて」を作成し、その中で、①基準部会における検証結果を踏まえ、年齢・世帯人員・地域差による影響を調整(財政効果90 億円)、②前回見直し(平成20年)以降の物価の動向を勘案(財政効果本体分510億円、加算分70億円)するという考え方に基づき、生活扶助基準を見直すことを明らかにし、①のゆがみ調整分については、体系及び級地の歪みの調整結果を反映し、②のデフレ調整分については、「前回見直し(平成20年)以降、基準額は見直されていない が、その間デフレ傾向が続いている。このため、実質的な購買力を維持しつつ、客観的な経済指標である物価を勘案して基準額の改定を行う。」との説明がされるとともに、デフレ調整分は4.78%であると数値化されていた(甲144)。 内閣は、同月29日、平成25年度の政府予算案を閣議決定した(甲 38、乙49)。」⒄ 71頁11行目の「上記(イ)と同旨の」を「生活保護基準の主な改正点などを記載した」に改める。 ⒅ 71頁17行目から18行目にかけての「生活保護受給世帯の可処分所得が実 38、乙49)。」⒄ 71頁11行目の「上記(イ)と同旨の」を「生活保護基準の主な改正点などを記載した」に改める。 ⒅ 71頁17行目から18行目にかけての「生活保護受給世帯の可処分所得が実質的に増加したと評価することができるとして、」を削る。 2 デフレ調整における下落幅の算出方法等について 原判決「事実及び理由」の第5の2のとおりであるから、これを引用する。 3 教養娯楽用耐久財の価格の下落に係る寄与度について⑴ 寄与度総務省CPIの変化率の分析・評価においては、ある特定の品目又は類の指数の変動が総合指数の変化率にどの程度寄与したかの検討が行われており、 そうした寄与の程度を示す尺度として「寄与度」という指標が用いられている(乙29)。 特定の指数品目の価格指数の変化率の「寄与度」は、次の算式により求めることができる。全指数品目の寄与度の合計は、総合指数の変化率と一致する(乙28の33頁、29の28頁)。 (算式)特定の指数品目の寄与度=(当期の価格指数×ウエイト-前期の価格指数×ウエイト)÷総合ウエイト÷前期の総合指数×100⑵ 教養娯楽用耐久財の価格指数の動き教養娯楽用耐久財、特に、①テレビ、②ビデオレコーダー、③デスクトッ プ型パソコン(以下「パソコン1」という。)、④ノート型パソコン(以下「パソコン2」という。)及び⑤カメラについては、平成20年から平成23年までにかけて価格指数が顕著に下落している(乙30)(上記①~⑤の各品目をまとめて「テレビ等5品目」という。)。 ⑶ テレビ等5品目の価格の下落率の寄与度 平成20年から平成23年までの間におけるテレビ等5品目の価格の下落率の本件下落率(-4.78%)に対する寄与度を上記⑴の算式を 目」という。)。 ⑶ テレビ等5品目の価格の下落率の寄与度 平成20年から平成23年までの間におけるテレビ等5品目の価格の下落率の本件下落率(-4.78%)に対する寄与度を上記⑴の算式を用いて計算すると、次の表のとおり、-3.28%となる(甲405、乙28~31)。 4 平成29年検証の概要等⑴ 基準部会は、本件扶助基準改定後の平成28年5月から平成29年12月まで、 15回にわたり部会を開催した。この部会での主な検討事項は、以下の①~⑥のとおりであり、基準部会は、以下の⑥の影響把握を行った上で、 以下の①及び②を中心に、一定の検証結果を取りまとめ、平成29年12月テレビビデオレコーダーパソコン パソコン カメラ小計 H20平均205.8191.6237.2281.6224.71140.9H23平均69.1 60.1 337.2H20平均19962.62490.8237256321572.932030.3H23平均6702.7 1520 1017.7-1.98-0.26-0.27-0.62-0.16-3.28(注2)①×②の「H20平均」欄は、平成20年の年平均価格指数を②として用いた場合の数値である。 ①×②の「H23平均」欄は、平成23年の年平均価格指数を②として用いた場合の数値である。 (注3)寄与度=(H23平均の①×②-H20平均の①×②)÷総合ウエイト÷前期の総合指数×100である。ただし、四捨五入した数値である。 (注4)平成22年の指数品目の改定の結果、平成23年生活扶助相当品目に含まれているが、平成20年生活扶助相当品目に含まれていない32 の総合指数×100である。ただし、四捨五入した数値である。 (注4)平成22年の指数品目の改定の結果、平成23年生活扶助相当品目に含まれているが、平成20年生活扶助相当品目に含まれていない32品目については、価格の変動がないものとして扱う。そのため、総合ウエイトは、平成23年生活扶助相当品目のウエイト総数「6393」を用いる(乙31の18頁。引用した原判決第5の2⑷も参照)。 (注5)前期の総合指数は「104.5」を用いる(乙31の18頁。引用した原判決第5の2⑹も参照)。 (注1)②価格指数の「H20平均」欄は、平成20年の年平均の価格指数である。 ②価格指数の「H23平均」欄は、平成23年の年平均の価格指数である。 品目名① 平成22ウエイト(1万分比)②価格指数①×②寄与度(%) 14日付けの平成29年報告書を公表した(甲222、437、438、乙75)。 ① 生活扶助基準に関する検証② 有子世帯の扶助・加算に関する検証③ 勤労控除及び就労自立給付金の見直し効果の検証 ④ 級地制度に関する検証⑤ その他の扶助・加算に関する検証⑥ これまでの基準見直しによる影響の把握⑵ 平成29年報告書の概要は、次のとおりである(甲222、乙75)。 ア生活扶助基準の見直し影響 (ア) 検証に用いる統計データ生活保護受給世帯のデータについては、平成25年度被保護者調査(年次調査)及び平成24年度から平成26年度の社会保障生計調査の個票データを用いた。 一般世帯のデータについては、「平成24年度から平成26年度の家計 調査」の個票データをそれぞれ用いた。 (イ) 検証方法平成25年度被保護者調査(年次調査)の個票データを基に、生活扶助基準見直し前の平成2 は、「平成24年度から平成26年度の家計 調査」の個票データをそれぞれ用いた。 (イ) 検証方法平成25年度被保護者調査(年次調査)の個票データを基に、生活扶助基準見直し前の平成24年度生活扶助基準額表と見直し後の平成27年度生活扶助基準額表を用いて、当該個票データの世帯の基準額の見直 し前後の増減額を推計した。 生活保護受給世帯及び一般世帯について、平成24年度から平成26年度の8月から3月までの間の世帯平均収支を世帯類型毎に集計し、各支出費目の比較を行った。 (ウ) 検証結果 a 生活扶助基準見直しによる影響額の把握 生活扶助金見直しに伴う生活扶助基準額(生活扶助本体及び加算)の影響について、影響額の割合(注:生活扶助基準額が見直し前の基準額と比べて減額された割合)を世帯類型別にみてみると、以下のとおりとなった。 ① 高齢者世帯では 「-1%以上-2%未満」が約4割を占めた。 ② 母子家庭では「-6%以上-7%未満」が約4割を占めた。 ③ 傷病者・障害者世帯及びその他の世帯では「-1%以上-2%未満」が約3割を占めた。 特に母子世帯への影響は大きく、また、多人数の世帯についても影響が大きい傾向が見られた。 b 生活保護受給生体の家計に与えた影響の把握生活保護受給世帯と一般世帯における平成24年度から平成26年度にかけての各支出費目の比較については、支出割合が生活保護受給世帯と一般世帯との間では異なるものの、経年の支出割合の推移は大きな差が見られず、生活扶助基準の見直しによる家計への影響を評価 するまでには至らなかった。 イ生活扶助基準の検証(ア)生活扶助基準の検証方針生活扶助基準の検証については、改めて生 が見られず、生活扶助基準の見直しによる家計への影響を評価 するまでには至らなかった。 イ生活扶助基準の検証(ア)生活扶助基準の検証方針生活扶助基準の検証については、改めて生活扶助基準と対比する一般低所得世帯として相応しい所得階層の検証を行った上で、生活扶助基準 の給付水準の検証を行うとともに、平成24年検証を踏襲して、年齢、世帯人数、級地別にみた一般低所得世帯の消費実態との関係について検証を行うことした。 (イ) 検証に用いる統計データ平成26年全国消費実態調査の個票データを用いた。 (ウ) 生活扶助基準の水準の検証方法 a 全国消費実態調査の消費支出データを基に、変曲点の理論を用いて消費支出の変動について分析を行った(変曲点の理論とは、所得の減少に伴って、消費支出は減少するものであるが、それまでの生活を維持しようとするために、所得が減少しても一定の消費水準を保とうとして消費支出の推移に抵抗が生じる。それが限界点に達する点を変曲 点と解釈するものである。)。 b 消費支出は、世帯人員数や年齢構成などによって消費の特性等が異なると考えられることから、モデル世帯を設定して、その消費支出の変動について分析を行った。 c 夫婦子1人世帯(ただし、親の年齢が65歳未満、子の年齢が18 歳以下(18歳は高校生に限る。)であり、就労世帯に限る。)と高齢夫婦世帯(65歳以上で構成する世帯)の2つの世帯類型をモデル世帯として設定した。 d 消費支出階級五十分位別の消費支出データを分析し、支出弾力性(消費支出額が1%変化する際に、財・サービスの各費目の消費が何% 変化するかを示す指標)が1未満の消費支出費目を「固定的経費」とし、1以上の消費支出項目を「変動的経費」とし 析し、支出弾力性(消費支出額が1%変化する際に、財・サービスの各費目の消費が何% 変化するかを示す指標)が1未満の消費支出費目を「固定的経費」とし、1以上の消費支出項目を「変動的経費」とし、統計的分析手法である折れ線回帰分析を採用して、固定的経費の支出割合が急激に変化する点を検証するなどした。 e 年収階級五十分位別の消費支出データの分析を行い、統計的分析手 法である折れ線回帰分析を採用し、変曲点(消費支出が急激に変化する点)を検証した。 (エ) 検証結果a 生活扶助基準の水準の検証結果(夫婦子1人世帯の検証結果)消費支出階級第11・五十分位値(第11・五十分位と第12・五 十分位の境界値)で固定的経費の支出割合が有意に上方に変化してい ることが確認された。消費支出階級第11・五十分位値の消費支出額は約19万8000円となった。 年間収入階級五十分位別の消費支出については、第2~第6・五十分位値の間で消費支出額が有意に変化していることが確認されたが、変曲点がいずれの分位に存在するか判然としなかったため、消費支出 額の対数をとることによってデータを補正した結果、第3・五十分位値を境として、第1~第3・五十分位の回帰直線の傾きと第4~第17・五十分位の回帰直線の傾きに有意な差があることが認められた。 第3・五十分位値における消費支出額の理論値は約20万2000円であった。 上記のとおり、消費構造(固定的経費の支出割合)の変化に関する分析と、消費支出の変動(変曲点)に関する分析によりそれぞれ得られた結果は、約19万8000円、約20万2000円とほぼ近似している。一方、従前から比較対象分位として参照してきた年間収入階級第1・十分位の平均消費支出額は約20万2000円と によりそれぞれ得られた結果は、約19万8000円、約20万2000円とほぼ近似している。一方、従前から比較対象分位として参照してきた年間収入階級第1・十分位の平均消費支出額は約20万2000円となっており、 上記の分析結果に基づいた消費支出額と同等の水準となっている。 これらを総合的に勘案すると、夫婦子1人世帯の生活扶助基準については、夫婦子1人世帯の第1・十分位の世帯を比較対象とする所得階層と考えることが適当である。生活扶助基準見直し後の生活扶助基準額と年間収入階級第1・十分位の生活扶助相当支出額とを比較する と、夫婦子1人世帯の生活扶助基準額13万6495円に対し、夫婦子1人世帯の年間収入階級第1・十分位の生活扶助相当支出額は、外れ値±2σ(標本全体の平均との差の絶対値が当該標本の標準偏差の2倍よりも大きくなる標本値を外れ値として除外する。)の場合は13万4254円、外れ値±3σ の場合13万6638円となり、概ね均衡し ていた。 b 生活扶助基準の水準の検証結果(高齢者世帯の検証結果)消費支出階級第6・五十分位値(第6・五十分位と第7・五十分位の境界値)で、固定的経費の支出割合が有意に上方に変化していることが確認された。消費支出階級第6・五十分位値における消費支出額は約12万5000円となった。 年間収入階級五十分位別の消費支出の分析では、第9・五十分位値(第9・五十分位と第10・五十分位の平均)を境として、その前後の回帰直線の傾きに有意な差があることが認められた。第9・五十分位値における消費支出額は約18万5000円となった。 上記のとおり、両者の分析結果にかい離が見られた。これは、 貯蓄 を年収換算する方法等に何らかの課題があることに起因するものと考えられ、 位値における消費支出額は約18万5000円となった。 上記のとおり、両者の分析結果にかい離が見られた。これは、 貯蓄 を年収換算する方法等に何らかの課題があることに起因するものと考えられ、高齢夫婦世帯の年収階級別の分析の評価については、課題が残る結果となった。 (オ) 生活扶助基準の年齢、世帯人数、級地別の検証結果a 夫婦子1人世帯を展開の基軸として検証した。生活扶助基準額表は、 年齢、世帯人員、級地別の三要素で構成されることに着目し、その三要素別にみた生活扶助基準額と一般低所得世帯の消費水準について、回帰分析を用いて指数化した上で比較を行った。 b 世帯人員別の指数については、実データによる方法と回帰分析による方法が考えられるところ、前者の方法による結果と後者の方法によ る結果が異なった。この違いは、理論値を導き出すための回帰式の立て方に起因するものと考えられるが、その原因等について十分な解明には至らなかった。 c 平成29年検証においては、夫婦子1人世帯について生活扶助基準額と年間収入階級第1・十分位の生活扶助相当支出額の均衡を確認 しただけであり、そこから展開した様々な世帯類型における生活扶助 基準額と一般低所得世帯の生活水準の均衡を確認するまでには至らなかった。この意味するところは、単に消費水準との均衡を図ることが最低生活保障水準を満たすものと言えるのか、水準均衡方式のあり方が問われる本質的な課題であることに留意する必要がある。 平成29年検証においては、夫婦子1人世帯や高齢者世帯について、 展開により機械的に得られる基準額をそれぞれ世帯別の第3・五分位の平均生活扶助相当支出額と比較すると、夫婦子1人世帯の展開後の基準額は中間所得層の消費水準の6割を超える見込みの一方で、 いて、 展開により機械的に得られる基準額をそれぞれ世帯別の第3・五分位の平均生活扶助相当支出額と比較すると、夫婦子1人世帯の展開後の基準額は中間所得層の消費水準の6割を超える見込みの一方で、高齢者世帯の展開後の基準額では5割台になってしまうことが見込まれることに留意が必要である。 5 厚生労働大臣による生活扶助基準改定の違法性判断の枠組みについて⑴ 厚生労働大臣の裁量権について各処分行政庁は、厚生労働大臣により改定された生活扶助基準に従って本件各処分をしたところ、厚生労働大臣による本件扶助基準の改定が違法であれば、これに従ってされた各処分行政庁がした本件各処分も違法となること から、厚生労働大臣による本件扶助基準の改定が違法であるかについて検討する。 ア憲法25条1項は、すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有すると規定し、この規定の理念に基づき、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最 低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的として生活保護法が制定されている(同法1条)。そして、同法により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならず(同法3条)、保護基準は、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最 低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、かつ、これを超えな いものでなければならない(同法8条2項)。そうすると、仮に、保護基準における生活扶助基準が上記の最低限度の生活の需要を超えているというのであれば、これに応じて生活扶助基準を改定することは、同項の規定に沿うものであるということができ 項)。そうすると、仮に、保護基準における生活扶助基準が上記の最低限度の生活の需要を超えているというのであれば、これに応じて生活扶助基準を改定することは、同項の規定に沿うものであるということができる。 もっとも、これらの規定にいう最低限度の生活は、抽象的かつ相対的な 概念であって、その具体的な内容は、その時々における経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであり、これを保護基準において具体化するに当たっては、高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものである。したがって、保護基準のうち生活扶助基準(基準生活費)に係る部分の改定 を行うに際し、生活扶助基準が最低限度の生活における需要を満たすに足りる程度を超えるものになっているか、改定後の生活扶助基準の内容が健康で文化的な生活水準を維持することができるものであるか否かを判断するに当たっては、厚生労働大臣に上記のような専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められるものというべきである。 また、生活扶助基準の改定は、被保護者の生活に多大な影響を及ぼすことも想定し得るのであって、厚生労働大臣は、生活扶助基準を改定するに当たっては、その改定の必要性を踏まえつつ、生活扶助基準の改定による被保護者の生活への影響についても可及的に配慮するため、その改定の具体的な方法等について、激変緩和措置の要否等を含め、上記のような専門 技術的かつ政策的な見地からの裁量権を有しているというべきである。 イ生活保護法8条1項は、保護基準の設定及び改定を厚生労働大臣に委ねているものの、同条2項は、保護基準は、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低 生活保護法8条1項は、保護基準の設定及び改定を厚生労働大臣に委ねているものの、同条2項は、保護基準は、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、かつ、これを超えない ものでなければならないと規定しているから、厚生労働大臣の定める保護 基準は同項所定の事項を遵守したものであることを要するとともに、上記アのとおり、その性質上、高度の専門技術的な考察及びこれに基づいた政策的判断をすることが要請されているものというべきである。 そして、生活扶助基準の改定の前提となる最低限度の生活の需要に係る評価及びゆがみ調整やデフレ調整による生活扶助基準の改定に伴う被保 護者の生活への可及的な配慮は、上記アのような専門技術的な考察に基づいた政策的判断であり、生活扶助基準の展開部分の不均衡の有無やその程度及び物価下落による生活保護受給者の可処分所得の実質的な増加の有無やその程度は、各種の統計資料や専門家の作成した資料等に基づいてある程度客観的に推認し得るものであり、これまでも各種の統計や専門家の 作成した資料等に基づいて生活扶助基準と一般国民の消費実態との比較検討がされてきた経緯があること、本件各告示による生活扶助基準の引下げに際してもこうした資料に基づいて検討が行われていることなどに鑑みると、ゆがみ調整及びデフレ調整による生活扶助基準の改定は、①ゆがみ調整及びデフレ調整による生活扶助基準の改定をした厚生労働大臣の 判断に、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤、欠落の有無等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合、あるいは、②ゆがみ調整及びデフレ調整による生活扶助基準の改定に際し 活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤、欠落の有無等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合、あるいは、②ゆがみ調整及びデフレ調整による生活扶助基準の改定に際し激変緩和等の措置を講ずるか否かについての方針及びこの措置を講ずる場合において現に選択したその措置が相当であるとし た厚生労働大臣の判断に、被保護者の生活への影響等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合に、生活保護法3条、8条2項に違反し、違法となるものというべきであり、厚生労働大臣の上記①の裁量判断の適否に係る裁判所の審理においては、主として最低限度の生活の具体化に至る判断の過程及び手続に過誤、欠落があるか否か等の 観点から、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整 合性の有無等について審査し、厚生労働大臣の上記②の裁量判断の適否に係る裁判所の審理においては、生活扶助基準の改定による被保護者の生活への影響の程度やそれが上記の激変緩和措置等によって緩和される程度等について統計等の客観的な数値等との合理的関連性等を含めて審査すべきである(最高裁平成22年(行ツ)第392号、同年(行ヒ)第41 6号同24年2月28日第三小法廷判決・民集66巻3号1240頁、最高裁平成22年(行ヒ)第367号同24年4月2日第二小法廷判決・民集66巻6号2367頁参照)。 ⑵ 被控訴人らの主張についてア被控訴人らは、現在の判例法理を形成している堀木訴訟最高裁判決及び 朝日訴訟最高裁判決からすれば、①厚生労働大臣の保護基準改定の裁量権の範囲の逸脱又は濫用の判断においては、「現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定する」かこれと同程度のものでなければ違法とならないというべきであ すれば、①厚生労働大臣の保護基準改定の裁量権の範囲の逸脱又は濫用の判断においては、「現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定する」かこれと同程度のものでなければ違法とならないというべきであり、②仮に上記基準と異なる判断基準(例えば判断過程審査の手法)を採用した場合であっても、結果的に「現実の生活条件を無視 して著しく低い基準を設定する」かこれと同程度のものでなければ違法とならないとの基準よりも厚生労働大臣の裁量権が狭くなるような判断基準を採用することや、かかる判断基準を前提に当てはめの判断をすること(判断代置審査の手法)は、上記両最高裁判決の下では許されないと主張する。 イしかし、いわゆる堀木訴訟最高裁判決(最高裁昭和51年(行ツ)第3 0号同57年7月7日大法廷判決・民集36巻7号1235頁)は、「憲法二五条の規定の趣旨にこたえて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁量にゆだねられており、それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるをえないような場合を除き、裁判所が審査判断するのに適しない事柄であるといわなければならない。」と の判示から明らかなとおり、立法府の裁量と裁判所による審査の限界につ いて判示したものであって、法令の規定に基づく大臣(本件においては厚生労働大臣)の裁量権が問題となる本件とは事案を異にすることは明らかである。 他方、いわゆる朝日訴訟最高裁判決(最高裁昭和39年(行ツ)第14号同42年5月24日大法廷判決・民集21巻5号1043頁)は、「何が 健康で文化的な最低限度の生活であるかの認定判断は、いちおう、厚生大臣の合目的的な裁量に委されており、その判断は、当不当の問題として政府の政治責任が問われることはあつても、直ちに違法の問題 が 健康で文化的な最低限度の生活であるかの認定判断は、いちおう、厚生大臣の合目的的な裁量に委されており、その判断は、当不当の問題として政府の政治責任が問われることはあつても、直ちに違法の問題を生ずることはない。ただ、現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定する等憲法および生活保護法の趣旨・目的に反し、法律によって与えられた裁量権 の限界をこえた場合または裁量権を濫用した場合には、違法な行為として司法審査の対象となることをまぬかれない。」と判示しているものの、被控訴人らも自認するとおり、この判示部分は傍論であって、判例法理を形成していると直ちにいうことはできない。また、この点をおくとしても、上記の判示部分は、「現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定する 等」とあるとおり、「現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定する」という場合は、憲法及び生活保護法の趣旨・目的に反し、法律によって与えられた裁量権の限界を超えた場合又は裁量権を濫用した場合のうち、これらの場合に当たることが明白な場合を例示したものにすぎず、上記の判示部分から、厚生労働大臣の保護基準改定の裁量権の範囲の逸脱又は濫用 の判断においては、「現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定する」かこれと同程度のものでなければ違法とならないと当然に解すべきことにはならず、厚生労働大臣には合目的的な裁量を行う権限があることはもとより当然であるとしても、上記⑴イの①又は②の場合も、生活保護法の趣旨・目的に反したものとして、厚生労働大臣による生活扶助基準の改 定は違法になるものというべきである。 よって、上記アの被控訴人らの主張を採用することはできない。 ウ被控訴人らは、生活保護法は、厚生労働大臣に対し、最低限度の生活の具体化 定は違法になるものというべきである。 よって、上記アの被控訴人らの主張を採用することはできない。 ウ被控訴人らは、生活保護法は、厚生労働大臣に対し、最低限度の生活の具体化について、立法府に認められるのと同様の極めて広範な裁量権を与えていると主張するが、前記のとおり、厚生労働大臣は、保護基準を定めるに当たって同法8条2項所定の事項を遵守することを要するのであるか ら、厚生労働大臣に認められた裁量権は、立法府において憲法25条1項の理念を実現する法律を制定する際に立法府に認められる裁量権と同様であるということはできず、上記の主張を採用することはできない。 エ被控訴人らは、老齢加算訴訟最高裁判決の事案は、老齢加算の廃止といういわば既得権の廃止という色彩があり、被保護者の期待的利益や生活へ の影響等に配慮すべき必要性が高い事案であり、保護基準の改定の内容改定に至る経緯等の点において司法審査の密度を高めるべき事情が存したことを踏まえ、判断過程審査という判断枠組みを採用したとみるべきであるなどと主張するが、基準生活費に係る部分の減額改定は、被保護者の生活に直に影響を及ぼすのであり、被保護者の生活への影響等に配慮すべき必 要性は、老齢加算の廃止に勝るとも劣らないのであって、上記の主張はその前提を欠くものであって、この主張を採用することもできない。 6 被控訴人らが主張するデフレ調整の判断過程について⑴ 生活扶助基準の水準改定が必要であると判断した過程について上記5⑴によれば、デフレ調整による生活扶助基準の改定をした厚生労働 大臣の裁量判断の適否に係る審理においては、主として最低限度の生活の具体化に至る判断の過程及び手続に過誤、欠落があるか否か等の観点から、統計等の客観的な数値等との合理的関 改定をした厚生労働 大臣の裁量判断の適否に係る審理においては、主として最低限度の生活の具体化に至る判断の過程及び手続に過誤、欠落があるか否か等の観点から、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無等について審査すべきであるところ、デフレ調整の判断過程についての被控訴人らの主張を踏まえ、厚生労働大臣が、生活扶助基準の水準を改定する必要が あると判断した過程について検討する。 ア前記第2の3で補正の上引用した原判決の「前提事実」の⑵ウ~カ、前記1で補正の上引用した原判決の「1 認定事実」の⑴ウ、エ及びカ並びに後記イによれば、厚生労働大臣は、①生活扶助基準の水準については、平成19年検証において、一般低所得世帯の消費水準と比較して高いという結果が得られていたものの、原油価格の高騰等が消費に与える影響等の 社会経済情勢を踏まえ、平成20年度の生活扶助基準を据え置くこととし、②その後、平成20年9月のリーマンショックに端を発する世界金融危機の影響で、同年以降、賃金、物価、家計消費等がいずれも下落する経済情勢にあったものの、他方で、上記の世界金融危機が実体経済に深刻な影響を及ぼしており、国民の将来不安が高まっている状況にあると考えられる などとして、平成21年度も生活扶助基準を据え置くこととし、また、完全失業率が高水準で推移するなど、厳しい経済・雇用状況を踏まえ、国民生活の安心が確保されるべき状況にあることに鑑みるとして、平成22年度から平成24年度においても生活扶助基準を据え置くこととしたのであるが、③厚生労働大臣は、上記①及び②のとおり、平成19年報告書にお いて生活扶助基準の基準額が一般低所得世帯の消費実態と比較して高いなどの検証結果が示され、かつ、その後、賃金、物価及 のであるが、③厚生労働大臣は、上記①及び②のとおり、平成19年報告書にお いて生活扶助基準の基準額が一般低所得世帯の消費実態と比較して高いなどの検証結果が示され、かつ、その後、賃金、物価及び家計消費がいずれも下落するデフレ状況が継続する一方、当時の社会経済情勢等から生活扶助基準が据え置かれる状況が続いており、生活扶助基準額が据え置かれているということは、実質的には生活扶助基準の引上げがされているのと同 視することができ、これにより生活保護受給世帯の可処分所得が実質的に増加したといえるため、一般世帯の消費実態との均衡を図るべく生活扶助基準の見直しが必要であると判断するとともに、平成24年8月に成立した社会保障制度改革推進法附則2条1号において、政府は「生活扶助、医療扶助等の給付水準の適正化…を早急に行うこと」と明記されたことなど も相まって、生活扶助基準の「水準」を減額改定する必要があると判断したということができる。 イ(ア) 上記の判断過程に関し、被控訴人らは、当審において、以下のとおり主張する(以下「新主張」という。)。 ① 原審において、「生活保護受給世帯における可処分所得の相対的、実 質的な増加」に基づく説明をしていたが、この説明は、生活扶助相当CPIの変動率をもって生活扶助基準の「水準」を改定した結果生じた状態を「可処分所得」という概念を用いていいかえたものにすぎず、それ以上特段の意味があるものではない。 ② デフレ調整の指標として用いられる生活扶助相当CPIは、一般国 民の直面する物価動向を求めることを目的としており、生活保護受給世帯の生活水準(可処分所得)の変化を直接的に捉えるものではない。 ③ したがって、生活扶助相当CPIの変動率が「生活保護受給世帯における可処分 る物価動向を求めることを目的としており、生活保護受給世帯の生活水準(可処分所得)の変化を直接的に捉えるものではない。 ③ したがって、生活扶助相当CPIの変動率が「生活保護受給世帯における可処分所得の相対的、実質的な増加」と評価できるかは、裁判所の審理判断の対象となる厚生労働大臣の判断過程には当たらない。 (イ) 被控訴人らは、本件訴訟の原審において、「消費者物価指数がマイナスとなっている中で、生活扶助基準額が据え置かれているということは、実質的に見れば、生活扶助基準の引上げと同視することができ、生活保護受給世帯の可処分所得が実質的に増加してきたといえる。…このため、厚生労働大臣は、一般国民の生活実態との均衡を図るため、実質的な購 買力を維持しつつ、…物価(消費者物価指数)の動向を勘案して生活扶助基準額の見直しを行うこととした」と主張し(弁論の全趣旨(第1準備書面50頁))、また、「デフレ傾向が続き、消費者物価指数がマイナスとなっているにもかかわらず、生活扶助基準額が据え置かれていたことは、実質的に見れば生活扶助基準の引上げと同視することができ、これ により生活保護受給世帯の可処分所得も実質的に増加している状況にあ った。そうすると、…保護基準は「最低限度の生活の需要」を超えている場合であっても、法8条2項に反するものとなることから、…上記の生活保護受給世帯における可処分所得の実質的増加を勘案して生活扶助給付水準の適正化を図る必要がある。」と主張していた(弁論の全趣旨(第2準備書面17頁))。なお、原判決は、デフレ調整の必要性に関する被 控訴人らの主張につき、「平成21年以降、賃金、物価及び家計消費がいずれも継続的に下落するデフレ傾向が続き、消費者物価指数がマイナスとなっていた。そのような状況下 デフレ調整の必要性に関する被 控訴人らの主張につき、「平成21年以降、賃金、物価及び家計消費がいずれも継続的に下落するデフレ傾向が続き、消費者物価指数がマイナスとなっていた。そのような状況下で生活扶助基準額が据え置かれているということは、実質的には生活扶助基準の引上げがされているのと同視することができ、これにより生活保護受給世帯の可処分所得も実質的に 増加している状況にあったことから、一般世帯の消費実態との均衡を図るため、物価動向を勘案した生活扶助基準の見直しが必要不可欠であった。」と摘示し、被控訴人らが、当審の口頭弁論期日において、原判決記載のとおり原審口頭弁論の結果を陳述したことは、当裁判所に顕著である。 本件訴訟における上記の被控訴人らの主張に照らせば、原審における被控訴人らの説明が、「生活扶助相当CPIの変動率をもって生活扶助基準の「水準」を改定した結果生じた状態を「可処分所得」という概念を用いていいかえたものにすぎず、それ以上特段の意味があるものではない。」ということはできないし、「生活扶助相当CPIの変動率が「生活 保護受給世帯における可処分所得の相対的、実質的な増加」と評価できるかは、裁判所の審理判断の対象となる厚生労働大臣の判断過程には当たらない。」ということはできない。 (ウ) ところで、被控訴人国は、東京地裁に係属していた別件訴訟(東京地裁平成30年(行ウ)第188号)においても、例えば、「デフレ調整が デフレによる生活扶助受給世帯の可処分所得の実質的増加分を是正する ものであることから、デフレ傾向が生じた平成20年を起点とした」と主張し(甲279)、「デフレ調整の目的は、デフレ傾向が続くことによって生活保護受給世帯の可処分所得が実質的に増加していることを勘案した であることから、デフレ傾向が生じた平成20年を起点とした」と主張し(甲279)、「デフレ調整の目的は、デフレ傾向が続くことによって生活保護受給世帯の可処分所得が実質的に増加していることを勘案した上で、これを是正することにより、生活扶助給付水準の適正化を図る点にある。そのため、デフレ調整において、是正すべき点は、「デフレ 傾向から生じた生活保護受給世帯の可処分所得の実質的増加分」ということになる。そうすると、デフレ調整においては、デフレ傾向の生じている期間について、上記修正を施すことになる。…デフレ傾向が生じ、生活扶助基準額が据え置かれたことによる実質的な可処分所得の増加が認められたのは、平成20年から平成23年にかけてであるため、デフ レ調整の起点を「平成20年」としたものである。」と主張し(甲280)、「厚生労働大臣の判断の過程として、改めて簡潔に整理すると次のとおりである。…平成20年以降の経済動向をみると、一般国民の消費水準、賃金等が下落する一方、デフレ傾向によって生活保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加した…と評価できる状況にあった。そこで、 厚生労働大臣は、平成20年以降の物価の動きを生活扶助基準に反映することによって一般国民との均衡を図ることとし、…平成20年から平成23年までの物価下落率を4.78パーセントと算定した。その上で、上記のとおり算定された統計上の数値について、…平成20年以降の生活保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加したこと(基準の 実質的な引上げ)による不均衡を是正するのに相当なものと評価し、生活扶助基準の水準の減額に用いることとした」と主張していた(甲337)。また、被控訴人国は、さいたま地裁に係属していた別件訴訟(さいたま地裁平成26年(行ウ)第34号)に のに相当なものと評価し、生活扶助基準の水準の減額に用いることとした」と主張していた(甲337)。また、被控訴人国は、さいたま地裁に係属していた別件訴訟(さいたま地裁平成26年(行ウ)第34号)においても、「平成20年以降も生活扶助基準が据え置かれた。その後デフレ傾向が続く中で、生活扶助 基準が据え置かれたことにより、生活保護世帯の可処分所得の実質的な 増加が生じたことから、生活扶助基準の引上げと同視し得る部分を適正化し、生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡を図るため、デフレ調整を行う必要があった」と主張していた(甲155)。 そして、被控訴人国は、他の別件訴訟においても、表現振りは同一ではないものの、可処分所得の実質的増加分を是正するためにデフレ調整 が行われた、デフレ調整の目的は可処分所得の実質的増加を勘案して生活扶助基準の適正化を図る点にあった、デフレ調整は、可処分所得の相対的実質的な増加により生じた不均衡を是正するためであった旨主張し(甲334(36頁・大阪地裁)、336(79頁・福岡地裁)、357(185頁・東京地裁)、390(43頁・横浜地裁)、422(16頁・ 和歌山地裁)、424(42頁・さいたま地裁)、445(17頁・鹿児島地裁)、446(48頁・富山地裁)、乙119(65頁・大阪高裁第1民事部))、国以外の被告となった地方自治体も同旨の主張をしていた(上記各甲号証及び乙号証のほか、甲335(50頁・札幌地裁)、355(45頁・熊本地裁)、421(28頁・宮崎地裁)、423(40頁・ 青森地裁)、425(76頁・奈良地裁)、426(52頁・千葉地裁)、427(28頁・静岡地裁)、428(70頁・広島地裁)、457(125頁・東京地裁))。 このような被控訴人国等の応訴態 青森地裁)、425(76頁・奈良地裁)、426(52頁・千葉地裁)、427(28頁・静岡地裁)、428(70頁・広島地裁)、457(125頁・東京地裁))。 このような被控訴人国等の応訴態度からすると、被控訴人国も、厚生労働大臣は、生活保護受給世帯の可処分所得が実質的に増加したといえ るため、一般世帯の消費実態との均衡を図るべく生活扶助基準の見直しが必要であると判断したものと理解していたものと推認される一方、生活扶助相当CPIの変動率をもって生活扶助基準の「水準」を改定した結果生じた状態を「可処分所得」という概念を用いていいかえていたとは考え難いものというべきである。 (エ) また、保護基準の改定事務を所掌する厚生労働省社会・援護局保護課 において平成25年改定に携わったJ課長補佐(以下「J補佐」という。)は、陳述書(乙115)において、「平成25年改定当時、直前の平成19年検証において、生活扶助基準が一般低所得世帯の消費実態と比較して高いという見解が示されつつも、平成20年度には生活扶助基準を据え置く判断がなされ、その後、世界金融危機の影響で、賃金、物価、家 計消費等がいずれも下落する経済情勢にあったにもかかわらず、こうした経済情勢が生活扶助基準に反映されていませんでした。…こうした中で、デフレ調整は、消費実態そのものということではなく、デフレ調整下における生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加分に着目し、消費の構成要素である物価を指標として「絶対的な水準」の改 定が行われたものとなります。これは、「一般国民」の生活水準との均衡を維持するという意味において、生活扶助基準の改定方式として水準均衡方式が採用された際の基本的な発想に沿うものです。」と陳述している。 そして、厚生 ります。これは、「一般国民」の生活水準との均衡を維持するという意味において、生活扶助基準の改定方式として水準均衡方式が採用された際の基本的な発想に沿うものです。」と陳述している。 そして、厚生労働省の幹部が内閣官房副長官との協議で示した資料、平成25年1月27日付けで社会・援護局保護課が作成した「生活扶助 基準等の見直しについて」及び同年2月19日付けで社会・援護局が作成した「全国厚生労働関係部局長会議資料」には、「前回見直し(平成20年)以降、基準額は見直されていないが、その間デフレ傾向が続いている。このため、実質的な購買力を維持しつつ、客観的な経済指標である物価を勘案して基準額の見直しを行う。」といった記載があり(甲9、 144、146、232、乙32)、また、同年3月11日付けで保護課が作成した「社会・援護局関係主管課長会議資料」には「前回の見直し(平成20年)以降、基準額は見直されていないが、その間、デフレ傾向が続いている。このため、実質的な購買力を維持しつつ、客観的な経済指標である物価を勘案して基準額の見直しを行う。」と記載されている ところ(乙17)、J補佐は、別件訴訟において、ここでいう「実質的な 購買力を維持しつつ」は「可処分所得の実質的増加分だけ、生活保護基準を見直す」とほぼ同じ意味であると証言している(乙116の50頁)。 さらに、K政府参考人(厚生労働省社会・援護局長)は、衆議院厚生労働委員会において、「今回の政策目的でございますが、20年と23年、同じような生活を生活保護受給者の方がした場合に、同じような生活水 準を維持していただくためにどれだけの扶助費があればいいかということを見るということが大きな目的でございます。」と答弁している(甲341の10頁左下)。 (オ) した場合に、同じような生活水 準を維持していただくためにどれだけの扶助費があればいいかということを見るということが大きな目的でございます。」と答弁している(甲341の10頁左下)。 (オ) 被控訴人国は、本件訴訟の原審において上記(イ)のとおり主張していたことに加え、上記(ウ)のとおり、別件訴訟における被控訴人国等の応訴態 度からして、被控訴人国も、厚生労働大臣は、生活保護受給世帯の可処分所得が実質的に増加したといえるため、一般世帯の消費実態との均衡を図るべく生活扶助基準の見直しが必要であると判断したものと理解していたものと推認されることに加え、上記(エ)で指摘した平成25年改定に携わったJ補佐の陳述や証言、厚生労働省内で作成された資料の内容、 政府参考人の発言をも併せ考えると、厚生労働大臣は、生活保護受給世帯の可処分所得が実質的に増加したといえるため、一般世帯の消費実態との均衡を図るべく生活扶助基準の見直しが必要であると判断したものと認められ、他にこれを覆すに足りる的確な証拠はない。 そうすると、この判断の過程については、裁判所の審理判断の対象と なる厚生労働大臣の判断過程に含まれるものというべきである。 ウ被控訴人らは、厚生労働大臣が生活扶助基準の「水準」を改定する必要があると判断した過程の一部として、①平成21年全消調査における夫婦子1人の一般低所得世帯(第1・十分位)の消費水準は、平成16年全国消費実態調査から約11.6%下落し、②平成21年全消調査の夫婦子1 人の一般低所得世帯(第1・十分位)の消費水準は、夫婦子1人世帯の生 活扶助基準額を12.6%下回っており、③これらの下落率等からすれば、消費を基準として扶助基準を改定すれば減額幅が大きくなるため、物価を指標として改定を行 消費水準は、夫婦子1人世帯の生 活扶助基準額を12.6%下回っており、③これらの下落率等からすれば、消費を基準として扶助基準を改定すれば減額幅が大きくなるため、物価を指標として改定を行うことにしたと主張し、J補佐は、上記①及び②の計算はしていたと証言する(乙116の11頁)。 しかし、J補佐は、「平成30年に示された算定結果では、平成21年全 国消費実態調査に基づく夫婦子1人世帯の年収階級第1・十分位の生活扶助相当消費支出額は13万1500円であった。これは、平成19年検証時点の生活扶助相当消費支出額14万8781円から11.6%程度の低下にあたる。」と陳述していることからすれば(乙115)、上記①は、平成25年改定の際には、厚生労働大臣の判断過程に入っていなかった可能 性が高く、上記①について当時計算していた旨のJ補佐の証言を直ちに採用することはできない。 上記②について、J補佐は事後的に算出したとも証言しており(乙116の10頁)、その証言に揺らぎがあること、上記①の計算についても証言を鵜呑みにすることができないこと、上記②の計算をしたことを裏付ける 資料も証拠として提出されていないことからすると、上記②について当時計算していた旨のJ補佐の証言を直ちに採用することもできない(しかも、上記①及び②の計算につき、厚生労働大臣に説明したことを裏付ける資料も証拠として提出されておらず、上記①及び②の事情を同大臣が把握していたかも疑問が残ったままである。)。 ところで、平成23年12月13日付けで保護課が作成した第8回基準部会の資料4「生活保護基準の検証について」(甲90の2、乙121)には、「平成21年全国消費実態調査の公表も行われたことから、改めて現行の生活扶助基準額の妥当性を検証するとと が作成した第8回基準部会の資料4「生活保護基準の検証について」(甲90の2、乙121)には、「平成21年全国消費実態調査の公表も行われたことから、改めて現行の生活扶助基準額の妥当性を検証するとともに、前回検証等において指摘のあった項目も含め、適正な生活保護基準の在り方について検討を行う。」 との記載の下に、今後のスケジュール案として、「平成23年11月~12 月:平成21年全国消費実態調査等のデータを入手平成23年12月~1月:上記データを検証に活用するため、特別集計を開始平成24年1月~2月:特別集計の結果データに基づく検証等開始」と記載されている。 しかし、上記資料の上記各記載があるとしても、これらの記載から、保護課において、本件扶助基準改定までに上記①及び②の計算をしていたと 推認することはできないし、まして、その計算結果を厚生労働大臣が把握していたと認めることは困難というほかない。 そして、他に、本件扶助基準改定までに上記①及び②の計算がされ、その結果を厚生労働大臣が把握していたと認めるに足りる証拠もない以上、同大臣が、上記①及び②の計算により算出された下落率等からすれば、消 費を基準として扶助基準を改定すれば減額幅が大きくなるため、物価を指標として改定を行うことにしたという事実は認められず、上記①~③が同大臣の判断過程に入っていたと認めることはできないし、さらにいえば、本件扶助基準の改定が、上記①及び②の計算結果を踏まえ、消費水準の下落率より消費者物価指数の下落率の方が低いため、より生活保護受給者へ の影響が少ない消費者物価指数を用いて標準世帯の基準額を改定するという判断過程を経て行われたとは認められない。 ⑵ デフレ調整における生活扶助基準の水準の改定の程度について判断した過程 へ の影響が少ない消費者物価指数を用いて標準世帯の基準額を改定するという判断過程を経て行われたとは認められない。 ⑵ デフレ調整における生活扶助基準の水準の改定の程度について判断した過程の概要について上記⑴のとおり、厚生労働大臣は、生活扶助基準の「水準」を減額改定す る必要があると判断したところ、前記第2の3で補正の上引用した原判決の「前提事実」の⑵カ、前記1で補正の上引用した原判決の「1 認定事実」の⑴カ及び⑵、前記2で補正の上引用した原判決の「2 デフレ調整における下落幅の算出方法等について」の⑵~⑹及び証拠(甲9、155の2、247、251、255、乙37、49、50の1~4。下線部が証拠により 認定した部分である。)によれば、厚生労働大臣は、①物価を指標として生活 扶助基準の水準の改定を行うこととし、②物価変動率を算定するための基礎データとしては総務省CPIを用いることとするが、生活扶助基準の水準の改定であり生活扶助費で支出されない品目を除外する必要があるため(甲9、255)、総務省CPIの指数品目のうち生活扶助費で支出される品目の価格指数を用いることとし、③生活扶助基準の改定に係る従前の経緯やデフレ 調整の目的を踏まえ、物価変動率の算定期間の始期を平成20年とする一方、平成25年度予算政府案編成時に平成24年の総務省のCPIを用いることは時間的にできなかったため(甲155の2、乙49、50の1~4)、物価変動率の算定期間の終期を平成23年とし、④物価指数を算定するために用いるウエイトについても、総務省CPIのウエイトを用いることとし、総務 省のCPIウエイトのデータは平成17年以前の基準によるものと平成22年基準によるものがあり、可能な限り最新の消費実態を反映した物価の動向を勘 、総務省CPIのウエイトを用いることとし、総務 省のCPIウエイトのデータは平成17年以前の基準によるものと平成22年基準によるものがあり、可能な限り最新の消費実態を反映した物価の動向を勘案するには、平成17年基準ではなく、平成22年基準という直近の基準を用いることが適当であるとして(甲247、251、乙37)、ウエイトについては平成22年基準を用いることとし、⑤上記①~④を前提として、 平成20年の生活扶助相当CPIは104.5で、平成23年の生活扶助相当CPIは99.5であるから、生活扶助相当CPIの変動率は-4.78%であると算定し、生活扶助基準の改定率を、平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの変動率と同じ-4.78%とすることが相当と判断したということができる。 7 判断過程等の審査⑴ 序論前記5のとおり、デフレ調整による生活扶助基準の改定をした厚生労働大臣の裁量判断の適否に係る審理においては、主として最低限度の生活の具体化に至る判断の過程及び手続に過誤、欠落があるか否か等の観点から、統計 等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無等につ いて審査すべきである。 そして、上記6⑵のとおり、厚生労働大臣は、生活扶助相当CPIの変動率は-4.78%であると算定し、生活扶助基準の改定率を、平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの変動率と同じ-4.78%を生活扶助基準とすることが相当と判断したところ、控訴人らは、生活扶助相当C PI及びその計算結果である-4.78%という数値には、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性はないと主張するので、この点について検討する。 ⑵ テレビ等5品目の物価の下落による影響の程度に ある-4.78%という数値には、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性はないと主張するので、この点について検討する。 ⑵ テレビ等5品目の物価の下落による影響の程度についてア控訴人らは、上記主張に関し、テレビ等に係る価格の下落が生活扶助相 当CPIの変動率の算定に大きな影響を及ぼしたと指摘する。 総務省CPIの平成22年までの推移をみると、総合指数は、平成10年頃にごく緩やかな下落傾向に転じているものの、非耐久財、半耐久財、耐久財のうちの自動車については下落傾向にあると一概にいえないのに対し、耐久財のうちの教養娯楽用耐久財及び家事用耐久財は下落が著しく、 これらは総合指数の下落に相当大きな影響を与えていた(甲363)。そして、前記3⑶によれば、平成22年の価格指数を100とした場合における平成20年と平成23年のテレビ等5品目の価格指数は、以下の表の「②価格指数」欄のとおりであり、平成20年と平成23年の価格指数を対比すると、テレビ等5品目の価格指数の下落は顕著であった。これらのこと を併せ考えれば、テレビ等5品目の価格の下落が平成20年から平成23年までの物価の変動に大きな影響を与えたものと推認される。 イまた、前記3⑶によれば、平成20年から平成23年までの物価の変動におけるテレビ等5品目の寄与度は、上記表の「寄与度」欄のとおり、-3.28%であるから、上記期間にテレビ等5品目について価格が変動し、その他の生活扶助相当品目の価格には変動がなかったとした場合におけ る生活扶助相当CPIの変化率は-3.28%となるから、生活扶助相当CPIの下落率(-4.78%)の相当な部分がテレビ等5品目の価格の下落の影響によるものであるということができる。 おけ る生活扶助相当CPIの変化率は-3.28%となるから、生活扶助相当CPIの下落率(-4.78%)の相当な部分がテレビ等5品目の価格の下落の影響によるものであるということができる。 ⑶ 保護受給世帯と一般世帯との間の消費構造ア一般に、保護受給世帯を含む低所得の世帯においては、その他の世帯に 比べて、食料費、光熱費、水道費などの日常生活の維持に必要不可欠な品目に係る消費支出額が消費支出総額のうちに占める割合が大きく、教養娯楽費のような日常生活の維持に必ずしも不可欠とはいえない品目に係る消費支出額の割合が小さくなると考えられ、このことは、甲118、269、348、406、乙116(51頁)によっても裏付けられている。 イ上記⑵によると、テレビ等5品目の価格の下落が、厚生労働大臣がデフレ調整に当たって使用した生活扶助相当CPIの変動率(下落率)に大きな影響を及ぼしているところ、テレビ等5品目への支出額やこれらの品目を含む費目(教養娯楽費、教養娯楽用耐久財)への支出額が、消費支出総額に占める割合について、平成22年の社会保障生計調査の結果(保護受 給世帯における消費構造を示している。甲116、403)と同年の総務テレビビデオレコーダーパソコン1パソコン2カメラ小計 H20平均205.8191.6237.2281.6224.71140.9H23平均69.1 60.1 337.2H20平均19962.62490.8237256321572.932030.3H23平均6702.7 1520 1017.7-1.98-0.26-0.27-0.62-0.16-3.28品 237256321572.932030.3H23平均6702.7 1520 1017.7-1.98-0.26-0.27-0.62-0.16-3.28品目名① 平成22ウエイト(1万分比)②価格指数①×②寄与度(%) 省CPIにおけるウエイト(一般世帯における消費構造を示している。甲115、乙84、85)をそれぞれ用いて比較した結果は、次の①~③のとおりである(なお、社会保障生計調査における消費支出総額には生活扶助以外の種類の保護により賄われることが予定されている品目に係る消費支出も含まれるため、ここでは、一般世帯に係るウエイト総数についても 除外品目に係るウエイトを除外することはせず、総務省CPIにおけるウエイト総数(10000)をそのまま用いることとする。)。 ① 教養娯楽に係る支出保護受給世帯における消費支出総額に対する教養娯楽に係る支出額が占める割合は、2人以上の世帯においては6.4%(1か月当たりの支 出額は1万1030円)であり、単身世帯においては5.6%(1か月当たりの支出額6057円)である(乙86)。 これに対し、一般世帯におけるウエイト総数(10000)に対する教養娯楽のウエイト(1145)が占める割合は11.5%である(乙30)。 上記のとおり、保護受給世帯における消費支出総額に対する教養娯楽に係る支出額が占める割合は、一般世帯の約半分にすぎない。 ② 教養娯楽用耐久財に係る支出保護受給世帯(2人以上)における消費支出総額は1か月当たり17万3620円で、教養娯楽用耐久財に係る支出額は1か月当たり111 0円であるから、前者に対する後者が占める割合は0.64%である(甲276、乙86)。 これに対し、一般世帯に 月当たり17万3620円で、教養娯楽用耐久財に係る支出額は1か月当たり111 0円であるから、前者に対する後者が占める割合は0.64%である(甲276、乙86)。 これに対し、一般世帯におけるウエイト総数 (10000)に対する教養娯楽用耐久財のウエイト(171)が占める割合は1.71%である(乙30)。 上記のとおり、保護受給世帯における消費支出総額に対する教養娯楽 用耐久財に係る支出額が占める割合は、一般世帯の4割未満にすぎない。 ③ テレビ等に係る支出社会保障生計調査においては、家計調査におけるような詳細な品目別の調査は行われておらず、 教養娯楽用耐久財については、PC・AV機器、ピアノ、他の教養娯楽用耐久財の三つに区分されている(甲276)。 他方、平成22年の家計調査においては、教養娯楽用耐久財が、テレビ、携帯型オーディオプレーヤー、電子辞書、ビデオレコーダー、パソコン(デスクトップ型)、パソコン(ノート型)、プリンタ、カメラ、ビデオカメラ、ピアノ、学習机に区分されている(乙30)。これらの各調査の各区分を参考にすると、社会保障生計調査におけるPC・AV機器は、 概ねテレビ等5品目に対応するものと考えられる。 保護受給世帯(2人以上)の消費支出総額は1か月当たり17万3620円で、PC・AV機器に係る支出額は1か月当たり737円であるから、前者に対する後者が占める割合は0.42%である(甲276、395、乙86)。 これに対し、一般世帯におけるウエイト総数(10000)に対するテレビ等5品目のウエイト(147)が占める割合は1.47%である(前記3⑶、乙30)。 上記のとおり、保護受給世帯の消費支出総額に対するテレビ等5品目に係る支出額が占める割合は、一般世帯の3割未 テレビ等5品目のウエイト(147)が占める割合は1.47%である(前記3⑶、乙30)。 上記のとおり、保護受給世帯の消費支出総額に対するテレビ等5品目に係る支出額が占める割合は、一般世帯の3割未満にすぎない。 ウ上記ア及びイによれば、テレビ等5品目への支出額やこれらの品目を含む費目(教養娯楽費、教養娯楽用耐久財)への支出額が消費支出総額に占める割合をみる限りでも、保護受給世帯と一般世帯との間の消費構造には実際には無視しえない相違があるということができる。 なお、平成21年から平成23年にかけてテレビの出荷台数が増加して いるが、これは、平成21年5月から平成23年3月までにテレビをも対 象とする家電エコポイント制度が実施されたこと、同年7月に地上アナログ放送が終了し、地上デジタル放送の番組を視聴するためには、地上デジタル放送に対応する必要があり、そのためにテレビを購入する者が増加したことによるものであった(甲251、400~402)。 しかしながら、NHK受信料が全額免除の世帯のうち保護受給世帯には、 地上デジタル放送に対応する地上デジタルチューナーが無償給付されたため(甲277の1~3、364の1~3、402)、上記の時期に保護受給世帯においてテレビの購入のための支出をすることが一般的であったとは考え難く、保護受給世帯におけるテレビの普及率が高いからといって、保護受給世帯においてもテレビの購入がされたという関係にあるとは言い難 い。 ⑷ 小括ア上記⑵によれば、平成20年から平成23年までの物価の変動には、テレビ等5品目の価格の下落が少なからぬ影響を与えているところ、生活扶助相当CPIの下落率は、総務省CPIの下落率よりも高率の-4.78% にも及び、かつ、その相当な部分がテ 物価の変動には、テレビ等5品目の価格の下落が少なからぬ影響を与えているところ、生活扶助相当CPIの下落率は、総務省CPIの下落率よりも高率の-4.78% にも及び、かつ、その相当な部分がテレビ等5品目の価格の下落の影響によるものであったということができる。そして、上記⑶によれば、テレビ等5品目への支出額やこれらの品目を含む費目(教養娯楽費、教養娯楽用耐久財)への支出額が消費支出総額に占める割合をみる限り、テレビ等5品目については保護受給世帯においては一般世帯ほどの支出はされておら ず、保護受給世帯と一般世帯との間の消費構造には実際には無視しえない相違があるのであって、平成20年から平成23年までに物価の下落があり、この間に生活扶助基準が改定されなかったからといって、保護受給世帯において-4.78%にも及ぶ可処分所得の実質的な増加があったとはいえない。 イ前記6⑵のとおり、厚生労働大臣は、生活扶助基準額が据え置かれてい るということは、実質的には生活扶助基準の引上げがされているのと同視することができ、これにより保護受給世帯の可処分所得が実質的に増加したといえるため、一般世帯の消費実態との均衡を図るべく生活扶助基準の見直しが必要であり、生活扶助基準の「水準」を減額改定する必要があると判断し、物価を指標として生活扶助基準の水準の改定を行うこととして、 生活扶助相当CPIの変動率は-4.78%であると算定し、生活扶助基準の改定率を、平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの変動率と同じ-4.78%とすることが相当であると判断した。 しかしながら、上記アによれば、厚生労働大臣がデフレ調整のために算定した生活扶助相当CPIの変動率は、平成20年から平成23年までの 保護受給世帯の可処分所得 ることが相当であると判断した。 しかしながら、上記アによれば、厚生労働大臣がデフレ調整のために算定した生活扶助相当CPIの変動率は、平成20年から平成23年までの 保護受給世帯の可処分所得の実質的増加の程度を正しく評価したものであるとはいえず、換言すると、生活扶助基準の改定率を-4.78%とすると、保護受給世帯における実質的な購買力を維持することもできないから、厚生労働大臣の判断は、統計等の客観的な数値等との合理的関連性を欠くものといえるので、デフレ調整として生活扶助基準を4.78%引き 下げることとした厚生労働大臣の判断には、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程における過誤があり、その判断は裁量権の範囲を逸脱してされたものであるというべきである。 ウそして、補正して引用した原判決の「事実及び理由」の第5の1⑵によれば、本件扶助基準改定は、ゆがみ調整及びデフレ調整を、本件各告示に よる生活扶助基準の改定を通じて一体的に行うものであり、本件各告示をゆがみ調整に係る部分とデフレ調整に係る部分とに区分することはできず、これらは不可分一体のものとして本件扶助基準改定を構成していることからすれば、その余の点について判断するまでもなく、本件各告示による生活扶助基準の改定(本件扶助基準改定)は、生活保護法3条、8条2 項の各規定に違反し、同条1項による委任の範囲を逸脱する違法なもので あり、本件扶助基準改定に伴って各処分行政庁によりされた本件各処分も違法であるというべきである。 ⑸ 生活扶助相当CPIの算出過程自体からの検討ア生活扶助相当CPIとは、生活扶助に相当する品目を対象とする消費者物価指数であり、具体的には、総務省CPIの指数品目から、非生活扶助 相当品目を除いた生活扶助相当品目につ 程自体からの検討ア生活扶助相当CPIとは、生活扶助に相当する品目を対象とする消費者物価指数であり、具体的には、総務省CPIの指数品目から、非生活扶助 相当品目を除いた生活扶助相当品目について、品目ごとに総務省CPIのウエイトを乗じた数値を総務省CPIのウエイトの合計値で除して算出したものであり、その具体的な算出過程及び変化率の算定過程は、以下のとおりである(引用した原判決「事実及び理由」の第5の2⑶及び⑷、乙30、31)。 (ア) 平成20年の生活扶助相当CPIa 平成22年の総務省CPIの品目588品目のうち、平成20年においても総務省CPIの算出に当たって指数品目とされていた品目(平成17年を基準年とする品目)から非生活扶助相当品目を除いた485品目を、生活扶助相当CPIの算出の基礎となる指数品目とす る。 b 平成22年の価格を100とした場合の平成20年時点の価格指数を総務省CPIから抽出する(別表「乙31」の「②CPI」の「H20年平均」の欄)。 c 平成22年総務省CPIから上記aに該当する品目のウエイトを抽 出する(別表「乙31」の「①左記ウエイト中生活扶助相当品目」の「H20年平均」の欄)。 d 上記aに該当する個々の品目又は類(複数の品目をまとめた項目)につき、上記bで抽出した価格指数に上記cで抽出したウエイトを乗ずる(別表「乙31」の「①×②」の「H20年平均」の欄)。 e 上記dで算出した数値の和は646627.9であり、上記cで抽 出したウエイトの和は6189であるところ(別表「乙31」の18頁)、646627.9を6189で除し、算出された数値を小数点第二位で四捨五入し、平成20年生活扶助相当CPIを104.5とする(以上の経過を式にすると以下のと であるところ(別表「乙31」の18頁)、646627.9を6189で除し、算出された数値を小数点第二位で四捨五入し、平成20年生活扶助相当CPIを104.5とする(以上の経過を式にすると以下のとおりである。)。 平成20年の価格 × 平成22年のウエイト ――――――――――――――――――――――――――― ×100平成22年の価格 × 平成22年のウエイトの合計(イ) 平成23年の生活扶助相当CPIa 平成22年の総務省CPIの品目588品目から非生活扶助相当品目を除いた517品目を、生活扶助相当CPIの算出の基礎となる 指数品目とする。 b 平成22年の価格を100とした場合の平成23年時点の価格指数を総務省CPIから抽出する(別表「乙31」の「②CPI」の「H23年平均」の欄)。 c 平成22年総務省CPIから上記aに該当する品目のウエイトを抽 出する(別表「乙31」の「①左記ウエイト中生活扶助相当品目」の「H23年平均」の欄)。 d 上記aに該当する個々の品目又は類(複数の品目をまとめた項目)につき、上記bで抽出した価格指数に上記cで抽出したウエイトを乗ずる(別表「乙31」の「①×②」の「H23年平均」の欄)。 e 上記dで算出した数値の和は635973.1であり、上記cで抽出したウエイトの和である6393(別表「乙31」の18頁)であるところ、635973.1を6393で除し、算出された数値を小数点第二位で四捨五入し、平成23年生活扶助相当CPIを99.5とする(以上の経過を式にすると以下のとおりである。)。 平成23年の価格 × 平成22年のウエイト―――――――――――――――――――――――――― ×100平成22年の価格 × 平成 を式にすると以下のとおりである。)。 平成23年の価格 × 平成22年のウエイト―――――――――――――――――――――――――― ×100平成22年の価格 × 平成22年のウエイトの合計 (ウ) 変化率の算定指数の接続をすることなく生活扶助相当CPIの変化率を算定すると、平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの変化率は、(99. 5-104.5)÷104.5×100=-4.78%となる。 イ上記ア(イ)bの平成23年時点の価格指数は、平成22年の価格を100 とした場合の価格指数であり、平成22年という過去の時点を基準にして、平成23年という新しい時点における価格指数を算出したものといえ、そうすると、上記ア(イ)によれば、平成23年生活扶助相当CPIも、平成22年という過去の時点を基準にして、平成23年という新しい時点における価格指数を算出したものであるといえる。 他方、上記ア(ア)bの平成20年時点の価格指数は、平成22年の価格を100とした場合の価格指数であり、「平成22年基準の品目別価格指数を、平成17年基準において算出された指数の変化率を用いて、過去に遡ったものであるため、指数の水準としては平成22年を100とするものではあるが、そこで含まれる品目構成や価格情報は、飽くまで平成17年基準 の下で推計されたもの」である(甲347。例えば、米類についていえば、平成17年基準の価格指数(総務省CPIによるもの)は、平成20年平均が94、平成22年平均が91.1であり(甲252の1、267の1)、これを平成22年平均を100として平成20年平均の数値を求めると、94÷91.1×100≒103.2となり、平成22年基準の総務省C PI 平均が91.1であり(甲252の1、267の1)、これを平成22年平均を100として平成20年平均の数値を求めると、94÷91.1×100≒103.2となり、平成22年基準の総務省C PIの数値、すなわち、別表「乙31」の「②CPI」の「H20年平均」の欄の米類の数値103.2と一致する。)。 このように、上記ア(ア)bの平成20年時点の価格指数は、平成22年の価格を100とした場合の価格指数であり、平成22年という新しい時点を基準にして、平成20年という過去の時点における価格指数を算出した ものといえ、そうすると、上記ア(ア)によれば、平成20年生活扶助相当C PIも、平成22年という新しい時点を基準にして、平成20年という過去の時点における価格指数を算出したものであるといえる(なお、各品目の価格比において、平成22年という新しい時点から平成20年という過去の時点までの上昇率と、平成20年という過去の時点から平成22年という新しい時点までの下落率には双対性はない(甲153)。例えば、上記 の米類であれば、前者の上昇率は、94÷91.1≒1.0318であるから3.18%となるが、後者の下落率は、91.1÷94≒0.9691であるから3.09%で一致しない。)。 そして、生活扶助相当CPIは、平成20年から平成23年にかけての物価の下落率を算定することを目的とするものであるところ、平成22年 という新しい時点を基準に価格比を用いて算出された平成20年という過去の時点における価格指数を基礎として導き出された生活扶助相当CPI(平成20年生活扶助相当CPI)と、平成22年という過去の時点を基準に価格比を用いて算出された平成23年という新しい時点における価格指数を基礎として導き出された生活扶助相当CPI( 扶助相当CPI(平成20年生活扶助相当CPI)と、平成22年という過去の時点を基準に価格比を用いて算出された平成23年という新しい時点における価格指数を基礎として導き出された生活扶助相当CPI(平成23年生活扶助 相当CPI)では、計算論理の異なる算式が使用されている以上、その性質は異なるものであるといわざるを得ず、上記の双対性がないことも踏まえると、始点において、平成22年という新しい時点を基準に価格比を用いて算出された平成20年という過去の時点における価格指数を基礎として導き出された生活扶助相当CPIを用い、終点において、平成22年と いう過去の時点を基準に価格比を用いて算出された平成23年という新しい時点における価格指数を基礎として導き出された生活扶助相当CPIを用いることは一貫性を欠くものであり、上記各生活扶助相当CPIを前提とする上記ア(ウ)の変化率(下落率)は、統計上の正確性が担保されておらず、合理的なものであるとはいえない。 しかも、上記ア(ア)及び(イ)によれば、平成20年の生活扶助相当CPIは 485品目についての物価指数であるのに対し、平成23年の生活扶助相当CPIは517品目についての物価指数であるから、物価指数といってもその対象が異なるから、これらの各指数値をそのまま比較の対象として生活扶助相当CPIの変化率を算定することはできないにもかかわらず、比較の対象とすることができるような調整はしていない(甲134、15 3、268、348、416)。 これらのことからしても、厚生労働大臣の判断は、統計等の客観的な数値等との合理的関連性を欠くものといえるので、デフレ調整として生活扶助基準を4.78%引き下げることとした厚生労働大臣の判断には、最低限度の生活の具体化に係る判断の過 臣の判断は、統計等の客観的な数値等との合理的関連性を欠くものといえるので、デフレ調整として生活扶助基準を4.78%引き下げることとした厚生労働大臣の判断には、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程における過誤があり、その判断は裁 量権の範囲を逸脱してされたものであるというべきであり、上記⑷ウと同様の理由により、本件各告示による生活扶助基準の改定(本件扶助基準改定)は、その余の点について判断するまでもなく、生活保護法3条、8条2項の各規定に違反し、同条1項による委任の範囲を逸脱する違法なものであり、本件扶助基準改定に伴って各処分行政庁によりされた本件各処分 も違法であるというべきである。 ⑹ 被控訴人らの主張についてア被控訴人らは、①物価変動率をより正確に把握することは、一つの重要な考慮要素ではあるものの、②恣意的な判断が介在しないという意味での合理性や国民に対する説明可能性も考慮する必要があり、①の正確性を強 調することは、判断過程を正解しておらず、特定の考慮事項を強調することになり、判断過程審査の枠組みを逸脱していると主張する。 しかし、厚生労働大臣の判断過程を順に検討すれば、上記①を強調せずとも、上記⑸のとおりになるのであり、判断過程審査の枠組みを逸脱しているとの上記主張を採用することはできない。 なお、平成20年の生活扶助基準額の据置きの判断は、物価上昇などが 勘案されたものであるところ(乙116の74頁)、被控訴人らは、厚生労働大臣は、平成20年度の生活扶助基準が生活保護法8条2項に適合する妥当なものであることを前提として、本件生活扶助基準改定においては、平成20年以降の経済情勢を斟酌することとしたと主張するので(別紙「控訴審第13準備書面」61頁及び134~135頁)、念の 合する妥当なものであることを前提として、本件生活扶助基準改定においては、平成20年以降の経済情勢を斟酌することとしたと主張するので(別紙「控訴審第13準備書面」61頁及び134~135頁)、念のため、この 点について検討する。 生活保護法により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならず(同法3条)、保護基準は、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なもの で…なければならない(同法8条2項)ところ、平成20年度の生活扶助基準が生活保護法8条2項に適合する妥当なものであったのに、平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの変動率を基に生活扶助基準の減額改定率を-4.78%とした場合、上記⑸アのとおり、保護受給世帯においては-4.78%にも及ぶ可処分所得の実質的な増加があった とはいえないのであるから、改定後の生活扶助基準は、最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであるとはいえないことになる。 そうすると、被控訴人らの上記主張を前提とすると、本件各告示による生活扶助基準の改定(本件扶助基準改定)は、生活保護法3条、8条2項の各規定に違反しており、生活保護法の趣旨に反し、法律によって与えら れた裁量権の限界を超えたものとして違法なものとなる。 イ L教授は、その意見書(乙118)において、①厚生労働省は、平成25年改定にあたって物価動向を勘案することに関し「実質的な購買力を維持すること」を見直しの考え方の一つとして説明し、「実質的な購買力を維持すること」については、「実質的な可処分所得を維持したもの」とも説明 されているが、これは、物価動向の範囲内で改定すること 持すること」を見直しの考え方の一つとして説明し、「実質的な購買力を維持すること」については、「実質的な可処分所得を維持したもの」とも説明 されているが、これは、物価動向の範囲内で改定することを言い換えたも の、すなわち、「一般国民の直面する生活扶助相当品目に係る物価の動向を参照して改定を行うこと」について別の表現により説明したものにすぎない、②専門的知見に照らしても、「生活保護受給世帯における消費構造を前提として実質的な可処分所得を維持すること」が必然的に求められるものではなく、飽くまで当時の政策的な配慮として「実質的な購買力を維持す ること」に配慮したものと解するべきであり、どの程度まで生活保護受給世帯の実態を考慮するかについては、厚生労働省における経済的・社会的条件を踏まえた政策的判断によることが妥当といえるとの意見を述べる。 しかし、①については、「実質的な購買力を維持すること」及び「実質的な可処分所得を維持したもの」という説明が、「一般国民の直面する生活扶 助相当品目に係る物価の動向を参照して改定を行うこと」について別の表現により説明したものであると理解することはできないし、②については、少なくとも、上記⑸で説示した統計等の客観的な数値等との合理的関連性を欠くことを正当化する根拠にはならないし、上記アの説示に照らせば、本件扶助基準改定については、改定後の生活扶助基準が最低限度の生活の 需要を満たすに十分なものでなくてもよいとの結果を容認することになる見解でもあり、これを採用することはできない。 ウ被控訴人らは、平成29年検証において、本件扶助基準改定後の生活扶助基準額が一般低所得世帯(第1・十分位世帯)生活扶助相当支出額がおおむね均衡することが確認されたと評価されており、統計等の客観的 ウ被控訴人らは、平成29年検証において、本件扶助基準改定後の生活扶助基準額が一般低所得世帯(第1・十分位世帯)生活扶助相当支出額がおおむね均衡することが確認されたと評価されており、統計等の客観的な数 値等との合理的関連性や専門的知見との整合性に欠けるところはない旨主張する。 しかし、上記⑸のとおり、デフレ調整による生活扶助基準の改定をした厚生労働大臣の判断には、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程における過誤があり、デフレ調整として生活扶助基準を4.78%引き下げる こととした厚生労働大臣の判断は裁量権の範囲を逸脱したと判断される 以上、仮に、事後的な検証によって一般低所得世帯の生活扶助相当支出額と上記改定後の生活扶助基準額が概ね均衡することが確認されたとしても、そのことのみによって上記の過誤が治癒されることとなるものではない。 また、前記4のとおり、平成29年検証においては、モデル世帯として 設定された夫婦子1人世帯(親の年齢が65歳未満で子の年齢が18歳以下)についての生活扶助基準額と第1・十分位世帯の生活扶助相当支出額の均衡を確認しただけであって、そのほかにモデル世帯として設定された高齢夫婦世帯(65歳以上で構成する世帯)については世帯人員別の指数について実データによる場合と回帰分析による場合との結果が異なった ため、上記の均衡の有無を確認することができず、その他の世帯類型については上記の検討はされていない上、保護受給世帯には高齢者世帯、母子世帯、単身世帯が少なくなく、上記の夫婦子1人世帯は少数であり(甲239、303の1、411、438)、基準部会の委員も、展開後の基準について均衡を確認しているのは、飽くまでモデル世帯であって、展開後の 水準が各世帯類型にとっても均衡したもので であり(甲239、303の1、411、438)、基準部会の委員も、展開後の基準について均衡を確認しているのは、飽くまでモデル世帯であって、展開後の 水準が各世帯類型にとっても均衡したものであるかどうかという点が非常に重要なポイントである、高齢者世帯の単身世帯が5割台になっていることに注意すべきであると指摘していること(甲437、438)をも併せ考えれば、夫婦子1人世帯の保護受給世帯についての上記の均衡が確認されたからといって、本件扶助基準改定後の生活扶助基準額が一般低所得 世帯(第1・十分位世帯)生活扶助相当支出額とがおおむね均衡することが確認されたということにはならない。 これらのことからすれば、平成29年検証の結果を踏まえても、厚生労働大臣による本件扶助基準改定は違法であり、本件扶助基準改定に伴って各処分行政庁によりされた本件各処分も違法であるとの結論には変わり がない。 なお、上記⑸のとおり、デフレ調整による生活扶助基準の改定をした厚生労働大臣の判断には、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程における過誤があり、デフレ調整として生活扶助基準を4.78%引き下げることとした厚生労働大臣の判断は裁量権の範囲を逸脱したと判断される以上、①平成21年全消調査における夫婦子1人の一般低所得世帯(第1・ 十分位)の消費水準が、平成16年全国消費実態調査から約11.6%下落し、また、②平成21年全消調査の夫婦子1人の一般低所得世帯(第1・十分位)の消費水準が、夫婦子1人世帯の生活扶助基準額を12.6%下回っていたとしても、これらのことから、上記判断における上記の過誤が治癒されることになるものではない。 8 争点2(平成25年告示の発出について、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求権が成 いたとしても、これらのことから、上記判断における上記の過誤が治癒されることになるものではない。 8 争点2(平成25年告示の発出について、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求権が成立するか)に対する判断控訴人らは、厚生労働大臣による本件扶助基準改定により精神的苦痛を被ったとして、国家賠償法1条1項に基づき慰謝料の支払を求めている。 しかし、控訴人らが本件扶助基準改定により被ったと主張する精神的損害は、 本件扶助基準改定に基づき控訴人らに対してされる本件各処分を取り消す旨の判決及び同判決の拘束力により回復されるべき性質のものであり、本件全証拠によっても、これらによって回復できず、かつ、本件扶助基準改定と相当因果関係にある精神的損害を控訴人らが被ったと認めるに足りない。 したがって、控訴人らの被控訴人国に対する損害賠償請求は、その余の点に ついて検討するまでもなく、いずれも理由がない。 9 訴えの適法性について原審は、南福祉事務所長が控訴人㉞に対して平成25年7月23日付けでした生活保護法25条2項に基づく変更決定に関し、厚生労働大臣が上記変更決定に係る再審査請求を棄却する裁決をした日が同年12月19日であり、控訴 人㉞が上記変更決定の取消しを求める訴えを提起したのは、同日から1年以上 が経過した平成27年4月9日であったとして、控訴人㉞の訴えのうち上記変更決定の取消しを求める部分は不適法であるとしてこれを却下した。 しかし、厚生労働大臣が上記変更決定に係る再審査請求を棄却する裁決をした日は平成26年12月19日であるから(甲352)、控訴人㉞の訴えのうち上記変更決定の取消しを求める部分は不適法であるとはいえない。 第5 結語以上によれば、控訴人らの請求のうち、被控訴人京都 成26年12月19日であるから(甲352)、控訴人㉞の訴えのうち上記変更決定の取消しを求める部分は不適法であるとはいえない。 第5 結語以上によれば、控訴人らの請求のうち、被控訴人京都市に対し、本件各処分の全部の取消しを求める部分はいずれも理由があるから認容し、被控訴人国に対する国家賠償を求める請求はいずれも理由がないから棄却すべきであるので、本件控訴の一部は理由があるから、原判決のうち、控訴人らの被控訴人京都市 に対する請求に係る敗訴部分を取り消し、各処分行政庁が各控訴人に対してした保護変更決定処分を取り消し、その余の本件控訴は理由がないからいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第3民事部 裁判長裁判官佐藤哲治 裁判官檜皮高弘 裁判官石丸将利 (別紙) 処分一覧表 (注) ①などの丸数字は控訴人番号を、(1-1)などの数字は原告番号である。 処分庁の欄は、いずれも福祉事務所長である。 【処分一覧表1】第1事件関係(原判決別紙処分一覧表1-1の控訴人ら関係部分)番号処分の名宛人処分庁処分日 審査請求日1裁決日1再審査請求日1訴え提起日②(1-2)M1右京H25.7.24H25.8.1H25.9.27(注1)H26.12.25③(1-5)M2左京H25.7.23H25.9.30H26.3.4H26.4.3H26.12.25⑩(1-19)M3山科H25.7.23H25.9.17H26.3.11H26.3.31H H25.9.30H26.3.4H26.4.3H26.12.25⑩(1-19)M3山科H25.7.23H25.9.17H26.3.11H26.3.31H26.12.25⑪(1-22)M4南H25.7.23H25.8.1H25.9.26H25.10.29H26.12.25⑯(1-31)M5南H25.7.23H25.9.17H26.2.20H26.3.7H26.12.25㉒(1-38)M6左京H25.7.23H25.9.17H26.1.8H26.1.10H26.12.25(注1) H25.10.28又はH25.10.29 第3事件関係(原判決別紙処分一覧表3-1の再審査請求裁決日「H25.12.19」を「H26.12.19」に修正したもの)番号処分の名宛人処分庁処分日1審査請求日1裁決日1再審査請求日1再審査請求裁決日1訴え提起日㉞(3-1)M7南H25.7.23H25.8.1H25.9.26(注2)H26.12.19H27.4.9(注2) H25.10.28又はH25.10.29 【処分一覧表2】第1事件関係(原判決別紙処分一覧表1-2の控訴人ら関係部分)番号処分の名宛人処分庁処分日2審査請求日2裁決日2再審査請求日2訴え提起日①(1-1)M8山科H26.3.25H26.5.21H26.8.6 H26.12.25③(1-5)M2左京H26.3.24H26.6.5 訴え提起日①(1-1)M8山科H26.3.25H26.5.21H26.8.6 H26.12.25③(1-5)M2左京H26.3.24H26.6.5H26.10.7H26.11.7H26.12.25④(1-7)M9右京H26.3.17H26.5.21H26.8.20 H26.12.25⑤(1-11)M10下京H26.3.24H26.5.21H26.7.31 H26.12.25⑥(1-15)M11山科H26.3.25H26.5.21H26.7.31 H26.12.25⑦(1-16)M12山科H26.3.25H26.5.21H26.8.6 H26.12.25⑧(1-17)M13山科H26.3.25H26.5.21H26.8.6 H26.12.25⑨(1-18)M14山科H26.3.25H26.5.21H26.8.5 H26.12.25⑩(1-19)M3山科H26.3.25H26.5.21H26.7.31(注3)H26.12.25⑪(1-22)M4南H26.3.24H26.5.27H26.8.26 H26.12.25⑫(1-24)M15上京H26.3.25H26.5.21H26.10.8 H26.12.25⑬(1-25)M16上京H26.3.25H26.5.21H26.8.13H26.9.5H26.12.25⑮(1-30)M17中京H26.3.25H26.5.21H26.9.17 京H26.3.25H26.5.21H26.8.13H26.9.5H26.12.25⑮(1-30)M17中京H26.3.25H26.5.21H26.9.17 H26.12.25⑯(1-31)M5南H26.3.25H26.5.21H26.8.22(注4)H26.12.25⑰(1-33)M18南H26.3.25H26.5.21H26.9.11 H26.12.25⑱(1-34)M19南H26.3.25H26.5.21H26.8.11 H26.12.25⑲(1-35)M20南H26.3.24H26.5.21H26.10.1 H26.12.25⑳(1-36)M21南H26.3.25H26.5.21H26.10.2 H26.12.25㉑(1-37)M22南H26.3.25H26.5.21H26.8.18 H26.12.25㉒(1-38)M6左京H26.3.24H26.5.14H26.8.22H26.9.8H26.12.25㉓(1-39)M23山科H26.3.25H26.5.21H26.7.31 H26.12.25(注3) H26.8.19又はH26.8.20 (注4) H26.8.29又はH26.8.30 第2事件関係(原判決別紙処分一覧表2の控訴人ら関係部分)番号処分の名宛人処分庁処分日2審査請求日2裁決日2訴え提起日㉕(2-2)M24北H26.3.24H26.5.28H26.8.20H27 関係部分)番号処分の名宛人処分庁処分日2審査請求日2裁決日2訴え提起日㉕(2-2)M24北H26.3.24H26.5.28H26.8.20H27.1.15㉖(2-4)M25下京H26.3.24H26.5.21H26.7.31H27.1.15㉗(2-6)M26山科H26.3.25H26.5.21H26.8.6H27.1.15㉘(2-8)M27西京H26.3.24H26.5.21H26.7.31H27.1.15㉙(2-9)M28南H26.3.25H26.5.21H26.9.8H27.1.15㉚(2-10)M29南H26.3.24H26.5.21H26.8.11H27.1.15㉜(2-13)M30伏見H26.3.24H26.5.21H26.7.31H27.1.15㉝(2-14)M31深草H26.3.20H26.5.21H26.7.24H27.1.15 第3事件関係(原判決別紙処分一覧表3-2)番号処分の名宛人処分庁処分日 審査請求日 裁決日2再審査請求日2訴え提起日㉞(3-1)M7南H26.3.24H26.5.27H26.8.26H26.9.26H27.4.9 第5事件関係(原判決別紙処分一覧表5)番号処分の名宛人処分庁処分日2審査請求日2裁決日2再審査請求日2再審査請求裁決日 訴え提起日㉟(5-1)M32山科H26.3.25H26.5.20H26.9.12H26.9. 審査請求日2裁決日2再審査請求日2再審査請求裁決日 訴え提起日㉟(5-1)M32山科H26.3.25H26.5.20H26.9.12H26.9.30H28.9.16H29.2.28 【処分一覧表3】第4事件関係(原判決別紙処分一覧表4)(注) 「処分日」欄は、控訴人らに送達された保護変更決定通知書の日付を記載した。 番号処分の名宛人処分庁処分日3審査請求日3裁決日3訴え提起日①(1-1)M8山科H27.3.9H27.5.20H27.9.14H27.12.28②(1-2)M1右京H27.3.24H27.5.28H27.10.28H27.12.28③(1-5)M2左京H27.3.24H27.5.21H27.9.25H27.12.28④(1-7)M9右京H27.3.24H27.5.20H27.10.28H27.12.28⑤(1-11)M10下京H27.3.24H27.5.20H27.12.22H27.12.28⑥(1-15)M11山科H27.3.24H27.5.20H27.9.14H27.12.28⑦(1-16)M12山科H27.3.9H27.5.20H27.9.14H27.12.28⑧(1-17)M13山科H27.3.24H27.5.20H27.9.14H27.12.28⑨(1-18)M14山科H27.3.24H27.5.20H27.9.14H27.12.28⑩(1-19)M3山科H H27.9.14H27.12.28⑨(1-18)M14山科H27.3.24H27.5.20H27.9.14H27.12.28⑩(1-19)M3山科H27.3.24H27.5.20H28.3.2H27.12.28⑪(1-22)M4南H27.3.24H27.5.28H27.9.24H27.12.28⑫(1-24)M15上京H27.3.24H27.5.20H27.10.28H27.12.28⑬(1-25)M16上京H27.3.24H27.5.20H27.9.10H27.12.28⑮(1-30)M17中京H27.3.24H27.5.27H28.2.17H27.12.28⑯(1-31)M5南H27.3.24H27.5.20H27.11.16H27.12.28⑰(1-33)M18南H27.3.24H27.5.20H27.9.24H27.12.28⑱(1-34)M19南H27.3.24H27.5.20H28.3.2H27.12.28⑲(1-35)M20南H27.3.24H27.5.20H27.9.11H27.12.28⑳(1-36)M21南H27.3.24H27.5.20H27.9.11H27.12.28㉑(1-37)M22南H27.3.24H27.5.20H27.9.11H27.12.28 ㉒(1-38)M6左京H27.3.24H27.5.26H27.9.25H27.12.28㉓(1-39)M23山 H27.9.11H27.12.28 ㉒(1-38)M6左京H27.3.24H27.5.26H27.9.25H27.12.28㉓(1-39)M23山科H27.3.24H27.5.20H27.9.14H27.12.28㉕(2-2)M24北H27.3.24H27.5.20H27.12.24H27.12.28㉖(2-4)M25下京H27.3.24H27.5.20H27.12.22H27.12.28㉗(2-6)M26山科H27.3.24H27.5.20H27.9.11H27.12.28㉘(2-8)M27西京H27.3.24H27.5.20H27.9.10H27.12.28㉙(2-9)M28南H27.3.24H27.5.20H27.9.11H27.12.28㉚(2-10)M29南H27.3.24H27.5.20H27.9.11H27.12.28㉜(2-13)M30伏見H27.3.9H27.5.20H27.9.14H27.12.28㉝(2-14)M31深草H27.3.24H27.5.20H27.9.25H27.12.28㉞(3-1)M7南H27.3.24H27.5.28H27.9.24H27.12.28 以上

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