令和3(行ケ)2 選挙無効請求事件

裁判年月日・裁判所
令和4年2月21日 福岡高等裁判所 棄却
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判決文本文22,220 文字)

主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 令和3年10月31日に行われた衆議院(小選挙区選出)議員選挙の福岡県第1区ないし第11区,佐賀県第1区及び第2区,長崎県第1区ないし第4区,熊本県第1区ないし第4区並びに大分県第1区ないし第3区における選挙をいずれも無効とする。 第2 事案の概要 1 本件は,令和3年10月31日施行の衆議院議員総選挙(以下「本件選挙」という。)について,上記第1に記載の各選挙区(以下「本件各選挙区」という。)の選挙人である原告らが,衆議院小選挙区選出議員の選挙(以下「小選挙区選挙」という。)の選挙区割りに関する公職選挙法の規定は憲法に違反し無効であるから,これに基づき施行された本件選挙の本件各選挙区における選 挙も無効であると主張して提起した選挙無効訴訟である。 2 前提事実(争いのない事実,当裁判所に顕著な事実,掲記の証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実)⑴ 本件選挙についてア本件選挙の小選挙区選挙(以下「本件小選挙区選挙」という。)は,令 和3年10月31日,公職選挙法(平成29年法律第58号による改正後のもの(以下「平成29年改正法」という。)13条1項及び別表第1(以下,後記の改正の前後を通じてこれらの規定を併せて「区割規定」といい,平成29年改正法による13条1項及び別表第1を「本件区割規定」という。)による選挙区割り(以下「本件選挙区割り」という。)の下で 施行された。 イ原告らは,それぞれ別紙当事者目録に記載の順に従い,本件小選挙区選挙の福岡県第1区ないし第11区,佐賀県第1区及び第2区,長崎県第1区ないし第4区,熊本県第1区ないし第 された。 イ原告らは,それぞれ別紙当事者目録に記載の順に従い,本件小選挙区選挙の福岡県第1区ないし第11区,佐賀県第1区及び第2区,長崎県第1区ないし第4区,熊本県第1区ないし第4区並びに大分県第1区ないし第3区の選挙人である。 ウ被告らは,それぞれ別紙当事者目録に記載の順に従い,福岡県,佐賀県, 長崎県,熊本県及び大分県の各選挙区について,本件選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会である。 ⑵ 本件選挙当時の選挙制度及びそれに至る法改正の経緯等についてア昭和25年に制定された公職選挙法は,衆議院議員の選挙制度につき,中選挙区単記投票制を採用していたが,平成6年に公職選挙法の一部を 改正する法律(平成6年法律第2号)が成立し,その後,平成6年法律第10号及び同第104号によりその一部が改正され,これらにより,従来の中選挙区単記投票制に代わって小選挙区比例代表並立制が導入された。 本件選挙は,小選挙区比例代表並立制の下で施行されたが,本件選挙 施行当時,衆議院議員の定数は465人とされ,そのうち289人が小選挙区選出議員,176人が比例代表選出議員とされ(公職選挙法4条1項),小選挙区選挙については,全国に289の選挙区を設け,各選挙区において1人の議員を選出するものとされ(同法13条1項,別表第1),比例代表選出議員の選挙(以下「比例代表選挙」という。)に ついては,全国に11の選挙区を設け,各選挙区において所定数の議員を選出するものとされている(同法13条2項,別表第2)。衆議院議員総選挙においては,小選挙区選挙と比例代表選挙を同時に行い,投票は小選挙区選挙及び比例代表選挙ごとに1人1票とされている(同法31条,36条)。 イ平成6年に前記 2)。衆議院議員総選挙においては,小選挙区選挙と比例代表選挙を同時に行い,投票は小選挙区選挙及び比例代表選挙ごとに1人1票とされている(同法31条,36条)。 イ平成6年に前記の公職選挙法の一部を改正する法律と同時に成立した衆 議院議員選挙区画定審議会設置法(以下,後記の改正の前後を通じて「区画審設置法」という。)によれば,衆議院議員選挙区画定審議会(以下「区画審」という。)は,衆議院小選挙区選出議員の選挙区の改定に関し,調査審議し,必要があると認めるときは,その改定案を作成して内閣総理大臣に勧告するものとされている(同法2条)。 上記の改定に係る選挙区の区割りの基準(以下,後記の改正の前後を通じて「区割基準」という。)について,平成28年法律第49号(以下「平成28年改正法」という。)による改正後の区画審設置法(以下「新区画審設置法」という。)3条は,1項において,上記の改定案を作成するに当たっては,各選挙区の人口(同条においては最近の国勢調 査の結果による日本国民の人口をいう。)の均衡を図り,各選挙区の人口のうち,その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が2以上とならないようにすることとし,行政区画,地勢,交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行わなければならないものと定めるとともに,2項において,各都道府県の区域内の選挙区の数は,各都道府県の人口を 小選挙区基準除数(その除数で各都道府県の人口を除して得た数(1未満の端数が生じたときは,これを1に切り上げるものとする。)の合計数が衆議院小選挙区選出議員の定数に相当する数と合致することになる除数をいう。)で除して得た数(1未満の端数が生じたときは,これを1に切り上げるものとする。)とするとし(アダムズ方式と呼ばれ の合計数が衆議院小選挙区選出議員の定数に相当する数と合致することになる除数をいう。)で除して得た数(1未満の端数が生じたときは,これを1に切り上げるものとする。)とするとし(アダムズ方式と呼ばれ,人 口比を反映させやすい議席配分方法である。),3項において,下記の同法4条2項の規定による勧告に係る改定案の作成に当たっては,各都道府県の区域内の衆議院小選挙区選出議員の選挙区の数は変更しないものとすると定めている。 そして,選挙区の改定に関する区画審の勧告は,統計法5条2項本文の 規定により10年ごとに行われる国勢調査の結果による人口が最初に官 報で公示された日から1年以内に行うものとされ(新区画審設置法4条1項),さらに,区画審は,統計法5条2項ただし書の規定により上記の国勢調査が行われた年から5年目に当たる年に行われる各選挙区の国勢調査の結果による日本国民の人口のうち,その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が2以上となったときは,当該国勢調査の結果 による人口が最初に官報で公示された日から1年以内に,上記の勧告を行うものとされている(新区画審設置法4条2項)。 なお,平成24年法律第95号(以下「平成24年改正法」という。)による改正前の区画審設置法(以下「旧区画審設置法」という。)3条は,1項において,上記の改定案を作成するに当たっては,各選挙区の 人口の均衡を図り,各選挙区の人口のうち,その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が2以上とならないようにすることを基本とし,行政区画,地勢,交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行わなければならないものと定めるとともに,2項において,各都道府県の区域内の選挙区の数は,各都道府県にあらかじめ1を配当することとし(以 し,行政区画,地勢,交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行わなければならないものと定めるとともに,2項において,各都道府県の区域内の選挙区の数は,各都道府県にあらかじめ1を配当することとし(以下, このことを「1人別枠方式」という。),この1に,小選挙区選出議員の定数に相当する数から都道府県の数を控除した数を人口に比例して各都道府県に配当した数を加えた数とすると定めていた(以下,この区割基準を「旧区割基準」といい,この規定を「旧区割基準規定」ともいう。)。 ウ平成21年8月30日施行の衆議院議員総選挙(以下「平成21年選挙」という。)の小選挙区選挙は,平成14年に成立した公職選挙法の一部を改正する法律(平成14年法律第95号)により改定された選挙区割り(以下「旧選挙区割り」という。)の下で施行されたものであり,選挙当日における選挙区間の選挙人数の最大較差は1対2.304(以下, 較差に関する数値は,全て概数である。)であり,選挙人数が最も少な い選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は45選挙区であった(以下,平成21年選挙に係る衆議院小選挙区選出議員の選挙区を定めた平成24年改正法による改正前の公職選挙法13条1項及び別表第1を併せて「旧区割規定」という。)。 平成21年選挙につき,最高裁判所平成23年3月23日大法廷判決・ 民集65巻2号755頁(以下「平成23年大法廷判決」という。)は,選挙区の改定案の作成に当たり,選挙区間の人口の最大較差が2倍未満になるように区割りをすることを基本とすべきものとする旧区画審設置法3条1項の定めは,投票価値の平等の要請に配慮した合理的な基準を定めたものであると評価する一方,平成21年選挙時において,選挙区 間の投票価 りをすることを基本とすべきものとする旧区画審設置法3条1項の定めは,投票価値の平等の要請に配慮した合理的な基準を定めたものであると評価する一方,平成21年選挙時において,選挙区 間の投票価値の較差が拡大していたのは,各都道府県にあらかじめ1の選挙区数を割り当てる同条2項の1人別枠方式がその主要な要因となっていたことが明らかであり,かつ,人口の少ない地方における定数の急激な減少への配慮等の視点から導入された1人別枠方式は既に立法時の合理性が失われていたものというべきであるから,旧区割基準のうち1 人別枠方式に係る部分及び旧区割基準に従って改定された旧区割規定の定める旧選挙区割りは憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたと判示した。そして,同判決は,これらの状態につき憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえず,旧区割基準規定及び旧区割規定が憲法14条1項等の憲法の規定に違反するもの ということはできないとした上で,事柄の性質上必要とされる是正のための合理的期間内に上記の状態を解消するために,できるだけ速やかに旧区割基準中の1人別枠方式を廃止し,旧区画審設置法3条1項の趣旨に沿って旧区割規定を改正するなど,投票価値の平等の要請にかなう立法的措置を講ずる必要があると判示した。 エ平成23年大法廷判決を受けて,平成24年11月16日,旧区画審設 置法3条2項の削除及びいわゆる0増5減(各都道府県の選挙区数を増やすことなく議員1人当たりの人口の少ない5県の各選挙区数をそれぞれ1減ずることをいう。以下同じ。)を内容とする公職選挙法及び区画審設置法の一部を改正する法律案が平成24年改正法として成立した。 この改正により,旧区画審設置法3条1項が同改正後の区画審設置法3 れ1減ずることをいう。以下同じ。)を内容とする公職選挙法及び区画審設置法の一部を改正する法律案が平成24年改正法として成立した。 この改正により,旧区画審設置法3条1項が同改正後の区画審設置法3 条となり,同条の内容のみが区割基準となった。 平成24年改正法の成立と同日に衆議院が解散され,平成24年12月16日に施行された衆議院議員総選挙(以下「平成24年選挙」という。)までに新たな選挙区割りを定めることは時間的に不可能であったため,同選挙は平成21年選挙と同様に旧選挙区割りの下で施行された。 平成24年選挙につき,最高裁判所平成25年11月20日大法廷判決・民集67巻8号1503頁(以下「平成25年大法廷判決」という。)は,同選挙時において旧区割規定の定める旧選挙区割りは平成21年選挙時と同様に憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったものではあるが,憲法上要求される合理的期間内における是正がされな かったとはいえず,旧区割規定が憲法14条1項等の憲法の規定に違反するものということはできないとした上で,国会においては今後も平成24年改正法による改正後の区画審設置法3条の趣旨に沿った選挙制度の整備に向けた取組が着実に続けられていく必要があると判示した。 オ平成24年改正法の成立後,同法の附則の規定に基づく区画審の勧告を 受けて,平成25年6月24日,各都道府県の選挙区数の0増5減を前提に,選挙区間の人口の較差が2倍未満となるように17都県の42選挙区において区割りを改めることを内容とする平成24年改正法の一部を改正する法律案が,平成25年法律第68号(以下「平成25年改正法」という。)として成立した。 上記の改定の結果,平成22年10月1日を調査時とする国 する平成24年改正法の一部を改正する法律案が,平成25年法律第68号(以下「平成25年改正法」という。)として成立した。 上記の改定の結果,平成22年10月1日を調査時とする国勢調査の結 果によれば選挙区間の人口の最大較差は1対1.998となるものとされたが,平成26年12月14日施行の衆議院議員総選挙(以下「平成26年選挙」という。)当日においては,選挙区間の選挙人数の最大較差は1対2.129であり,選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は13選挙区であった。 平成26年選挙につき,最高裁判所平成27年11月25日大法廷判決・民集69巻7号2035頁(以下「平成27年大法廷判決」という。)は,上記0増5減の措置における定数削減の対象とされた県以外の都道府県について旧区割基準に基づいて配分された定数の見直しを経ておらず,上記のような投票価値の較差が生じた主な要因は,いまだ多 くの都道府県において1人別枠方式を定めた旧区画審設置法3条2項が削除された後の区割基準に基づいて定数の再配分が行われた場合とは異なる定数が配分されていることにあり,このような投票価値の較差が生じたことは,全体として平成24年改正法による改正後の区画審設置法3条の趣旨に沿った選挙制度の整備が実現されていたとはいえないこと の表れというべきであるとして,平成25年改正法による改正後の平成24年改正法により改定された選挙区割りはなお憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったものといわざるを得ないと判示した。そして,同判決は,同条の趣旨に沿った選挙制度の整備については,漸次的な見直しを重ねることによってこれを実現していくことも国会の裁量に 係る現実的な選択として許容され ざるを得ないと判示した。そして,同判決は,同条の趣旨に沿った選挙制度の整備については,漸次的な見直しを重ねることによってこれを実現していくことも国会の裁量に 係る現実的な選択として許容されていると解されるとし,上記の選挙区割りの改定後も国会において引き続き選挙制度の見直しが行われていること等を併せ考慮すると,平成23年大法廷判決の言渡しから平成26年選挙までの国会における是正の実現に向けた取組は,立法裁量権の行使として相当なものでなかったということはできず,憲法上要求される 合理的期間内における是正がされなかったとはいえないと判示した。 カ平成25年改正法の成立の前後を通じて,国会においては,今後の人口異動によっても憲法の投票価値の平等の要求に反する状態とならないようにするための制度の見直しについて,総定数の削減の要否等を含め,引き続き検討が続けられ,平成26年6月19日の衆議院議院運営委員会における議決により,衆議院選挙制度に関する調査,検討等を行うた め,衆議院に有識者により構成される議長の諮問機関として衆議院選挙制度に関する調査会(以下「選挙制度調査会」という。)が設置された。 (乙9)選挙制度調査会は,平成26年9月以降,定期的な会合を開催し,衆議院議員の選挙制度の在り方,議員定数の削減,投票価値の較差の是正等 の問題について,各政党からの意見聴取を含めた調査,検討を行い,平成28年1月14日,衆議院議長に対し,衆議院選挙制度に関する調査会答申を提出した。(乙8の各枝番,乙10)上記答申は,①衆議院議員の選挙制度の在り方については,現行の小選挙区比例代表並立制を維持し,②議員定数の削減については,衆議院議 員の定数を10削減して465人(小選挙区選 0)上記答申は,①衆議院議員の選挙制度の在り方については,現行の小選挙区比例代表並立制を維持し,②議員定数の削減については,衆議院議 員の定数を10削減して465人(小選挙区選出議員の定数につき6削減して289人,比例代表選出議員の定数につき4削減して176人)とする案が考えられるとした。また,③投票価値の較差の是正については,小選挙区選挙における各都道府県への議席配分方式について満たすべき条件として,比例性のある配分方式に基づいて配分すること,選挙 区間の投票価値の較差を小さくするために各都道府県間の投票価値の較差をできるだけ小さくすること,各都道府県の配分議席の増減変動が小さいこと,一定程度将来にわたっても有効に機能し得る方式であることとした上で,この諸条件に照らして検討した結果として,各都道府県への議席配分につき,各都道府県の人口を一定の数値(小選挙区基準除数) で除し,それぞれの商の整数に小数点以下を切り上げて得られた数の合 計数が小選挙区選挙の定数と一致するようにする方式(アダムズ方式)により行うものとした。そして,各都道府県への議席配分の見直しは,制度の安定性を勘案し,10年ごとに行われる国勢調査の結果による人口に基づき行うものとし,その5年後に行われる国勢調査の結果,選挙区間の人口の較差が2倍以上の選挙区が生じたときは,各都道府県への 議席配分の変更は行わず,区画審において上記の較差が2倍未満となるように関係選挙区の区画の見直しを行うものとした。 キ選挙制度調査会の前記答申を受けて,平成28年5月20日,衆議院議員の定数を475人から10削減して465人(小選挙区選出議員の定数につき6削減して289人,比例代表選出議員の定数につき4削減し て176人)と 答申を受けて,平成28年5月20日,衆議院議員の定数を475人から10削減して465人(小選挙区選出議員の定数につき6削減して289人,比例代表選出議員の定数につき4削減し て176人)とするとともに,前記イのとおり,各都道府県への定数配分の方式としてアダムズ方式を採用すること等を内容とする衆議院議員選挙区画定審議会設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律(平成28年改正法)が成立した。平成28年改正法においては,選挙制度の安定性を勘案し,アダムズ方式による各都道府県の選挙区数の変更は平成 32年(令和2年)以降10年ごとに行われる国勢調査の結果に基づき行うこととされ,その5年後に行われる国勢調査の結果,選挙区間の日本国民の人口(以下,単に「人口」という。)の較差が2倍以上の選挙区が生じたときは,各都道府県の選挙区数の変更はせず,同較差が2倍未満となるように選挙区割りの改定を行うこととされた。 他方,平成28年改正法は,アダムズ方式による各都道府県の選挙区数の変更が行われるまでの投票価値の較差是正のための措置として,附則により,小選挙区選出議員の定数を6削減することを前提として,区画審において平成27年に行われた国勢調査(以下「平成27年国勢調査」という。)の結果に基づく選挙区割りの改定案の作成及び勧告を行うこ ととした。そして,同改定案の作成に当たっては,各都道府県の選挙区 数につき,定数の削減による影響を受ける都道府県を極力減らすことによって選挙制度の安定性を確保する観点から,減少の対象となる都道府県は,アダムズ方式により得られる選挙区数が改正前の選挙区数より少ない都道府県のうち,当該都道府県の平成27年国勢調査の結果による人口を同方式により得られる選挙区数で除して得た数が少 象となる都道府県は,アダムズ方式により得られる選挙区数が改正前の選挙区数より少ない都道府県のうち,当該都道府県の平成27年国勢調査の結果による人口を同方式により得られる選挙区数で除して得た数が少ない順から6 都道府県とし,それ以外の都道府県は改正前の選挙区数を維持することとした。また,選挙区割りにつき,平成27年国勢調査の結果に基づく選挙区間の人口の較差が2倍未満となるようにし,かつ,次回の国勢調査が実施される平成32年(令和2年)見込人口に基づく選挙区間の人口の較差が2倍未満であることを基本とするとともに,各選挙区の平成 27年国勢調査の結果による人口及び平成32年(令和2年)見込人口の均衡を図り,行政区画,地勢,交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行うこととした。 平成28年改正法の成立後,区画審による審議が行われ,平成29年4月19日,区画審は,内閣総理大臣に対し,上記のとおり各都道府県の 選挙区数の0増6減の措置を採ることを前提に,19都道府県の97選挙区において区割りを改めることを内容とする改定案の勧告を行った(乙14の1・2)。これを受けて,内閣は,同年5月16日,平成28年改正法に基づき,同法のうち上記0増6減を内容とする公職選挙法の改正規定の施行期日を定めるとともに,上記改定案に基づく選挙区割 りの改定を内容とする公職選挙法の改正事項を定める法制上の措置として,平成28年改正法の一部を改正する法律案を国会に提出し,平成29年6月9日,この改正法案が平成29年改正法として成立した。上記0増6減及びこれを踏まえた選挙区割りの改定を内容とする公職選挙法の改正規定は平成29年7月16日から施行され,この改正により,各 都道府県の選挙区数の0増6減とともに上記改定案のとおりの選挙区 増6減及びこれを踏まえた選挙区割りの改定を内容とする公職選挙法の改正規定は平成29年7月16日から施行され,この改正により,各 都道府県の選挙区数の0増6減とともに上記改定案のとおりの選挙区割 りの改定が行われた。 ク平成29年9月28日に衆議院が解散され,同年10月22日,本件選挙区割りの下において衆議院議員総選挙(以下「平成29年選挙」という。)が施行された。本件選挙区割りの下において,平成27年10月1日を調査時とする平成27年国勢調査の結果によれば選挙区間の人口 の最大較差は1対1.956となるものとされ,平成29年選挙当日における選挙区間の選挙人数の較差は,選挙人数の最も少ない選挙区(鳥取県第1区)と最も多い選挙区(東京都第13区)との間で1対1.979であり,選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は存在しなかった。 平成29年選挙につき,最高裁判所平成30年12月19日大法廷判決・民集72巻6号1240頁(以下「平成30年大法廷判決」という。)は,本件区割規定に係る改正を含む平成28年改正法及び平成29年改正法による改正は,平成32年(令和2年)の国勢調査の結果に基づく選挙区割りの改定に当たり,各都道府県への定数配分を人口に比 例した方式の一つであるアダムズ方式により行うことによって,選挙区間の投票価値の較差を相当程度縮小させ,その状態が安定的に持続するよう立法措置を講じた上で,同方式による定数配分がされるまでの較差是正の措置として,各都道府県の選挙区数の0増6減の措置を採るとともに選挙区割りの改定を行うことにより,上記のように選挙区間の人口 等の最大較差を縮小させたものであって,投票価値の平等を確保するという要請に応えつつ, 県の選挙区数の0増6減の措置を採るとともに選挙区割りの改定を行うことにより,上記のように選挙区間の人口 等の最大較差を縮小させたものであって,投票価値の平等を確保するという要請に応えつつ,選挙制度の安定性を確保する観点から漸進的な是正を図ったものと評価することができると判示した。 その上で,本件区割規定は,投票価値の平等の要請にかなう立法的措置を講ずることを求めた平成23年大法廷判決以降の各大法廷判決の趣旨 に沿って較差の是正を図ったものであり,平成29年選挙当時において は,新区画審設置法3条1項の趣旨に沿った選挙制度の整備が実現されていたということができ,平成28年改正法及び平成29年改正法による選挙区割りの改定等は,国会の裁量権の行使として合理性を有し,平成27年大法廷判決が平成26年選挙当時の選挙区割りについて判示した憲法の投票価値の平等の要求に反する状態は,平成29年改正法によ る改正後の平成28年改正法によって解消されたものと評価することができるなどとして,平成29年選挙当時において,本件区割規定の定める本件選挙区割りは,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったということはできず,本件区割規定が憲法14条1項等に違反するものということはできないと判示した。 3 争点本件においては,本件選挙当時の本件区割規定が定める本件選挙区割りが憲法に違反し,本件小選挙区選挙が無効とされるべきかが争われているところ,具体的には,⑴ 本件選挙時において,本件区割規定が定める本件選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたか,⑵ 上記⑴が肯 定される場合,憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったか,⑶ 上記⑵も肯定される場合,本件小選挙区選挙は無効と の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたか,⑵ 上記⑴が肯 定される場合,憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったか,⑶ 上記⑵も肯定される場合,本件小選挙区選挙は無効とされるべきか,が争点となる。 ⑴ 本件選挙時において,本件区割規定が定める本件選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたか ア原告ら 憲法56条2項,1条及び前文第1段第1文は,主権を有する国民が,正当に選挙された国会における代表者である国会議員を通じ,出席議員の過半数により両院の議事を決定することによって主権を行使することを定めている。すなわち,憲法56条2項,1条及び前文第1段第1文 は,合理的に実施可能な限りでの人口比例選挙(1人が1票の投票価値 を有する選挙)によって保障される1人1票の原則を求めているところ,本件区割規定が定める本件選挙区割りはこれに違反している。 憲法はできる限り人口比例選挙を要求していると解する立場を採る憲法研究者がほとんどであり,また,アメリカ合衆国フロリダ州及びペンシルバニア州では連邦下院議員選挙の選挙区間の最大人口差が1人,ニ ューメキシコ州では選挙区間の最大人口差は0人であり,人口比例選挙は技術的に可能である。 そして,本件選挙当日の本件小選挙区選挙の選挙区間における最大較差は2.066倍(総務省発表の令和2年9月1日現在の選挙人名簿登録者数に基づいて算出されたもの)であったから,人口比例選挙によっ て保障される1人1票の原則に違反している。 選挙訴訟における違憲判断の基準時は選挙日とすべきであるところ,平成30年大法廷判決は,平成28年改正法の成立を考慮している。しかしながら,平成28年改正法に基づき の原則に違反している。 選挙訴訟における違憲判断の基準時は選挙日とすべきであるところ,平成30年大法廷判決は,平成28年改正法の成立を考慮している。しかしながら,平成28年改正法に基づき,アダムズ方式によって都道府県別に定数配分がされるのは,令和4年以降であることが見込まれるの であり,本件選挙が施行された時点において,同法によるアダムズ方式に基づく選挙区割りに係る立法措置は未了であるから,同法の成立を考慮することは違法判断の基準時についての従前の判例の解釈を不当に変更するものであって相当でない。 イ被告ら 選挙制度の仕組みの決定については,国会の広範な裁量に委ねられているから,小選挙区制度における具体的な選挙区割りやその前提となる区割規定を定めるに当たっては,投票価値の平等を最も重要かつ基本的な基準としつつも,較差という客観的かつ形式的な数値だけでなく,当該較差の数値の背後にある選挙制度の仕組みや,当該較差を生じさせる要因等も含 めて種々の政策的考慮要素を総合的に考慮した上で,国政遂行のための民 意の的確な反映を実現するとともに,投票価値の平等を確保するという要請との調和を図ることが求められる。 平成24年以降の各改正を経て成立した本件区割規定は,平成23年から平成27年までの各大法廷判決が求めてきた立法的措置の内容に適合し,国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由との関連に おいて,投票価値の平等の要請を調和的に実現した立法的措置といえ,国会の合理的な裁量の範囲の限界を超えるものではない。平成30年大法廷判決も,選挙区割りについての違憲状態が平成29年改正法による改正後の平成28年改正法により解消されたと明示的に判断している。 なお,平成30年大 囲の限界を超えるものではない。平成30年大法廷判決も,選挙区割りについての違憲状態が平成29年改正法による改正後の平成28年改正法により解消されたと明示的に判断している。 なお,平成30年大法廷判決が,平成28年改正法の成立を考慮したの は,平成28年改正法の附則の下で設けられた本件区割規定の定める本件選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあるか否かを判断するに当たって,その前提となるアダムズ方式による定数配分等を規定した平成28年改正法の本則の定めが,安定的に選挙区間の投票価値の較差を相当程度縮小させることを可能にする立法措置であることを示し,平 成28年改正法附則の漸進性を示したものであり,従前の判例と整合するものである。 国会は,平成28年改正の時点で,平成28年改正法附則2条3項の規定により,アダムズ方式によって都道府県別に定数配分がされる平成32年(令和2年)までの間,同年の見込人口を基準としても最大較差が2倍 未満となるようにするための措置を講じていた。それにもかかわらず,本件選挙時において結果的に2倍を超える格差が生じた要因は,平成32年(令和2年)見込人口が算出の基礎とした平成22年の大規模国勢調査から平成27年の簡易国勢調査(平成27年国勢調査)までの日本国民の人口の増減率と異なる人口移動があったためであり,違憲状態と指摘した各 最高裁判所大法廷判決が問題視した1人別枠方式のような選挙制度自体に 起因する構造的な問題が要因で2倍を超える格差が生じたわけではない。 既に成立している新区画審設置法に基づき,令和2年国勢調査の結果が官報で公示された日から1年後である令和4年6月25日までに区画審によるアダムズ方式に基づく都道府県別定数を前提に,選挙区間の 既に成立している新区画審設置法に基づき,令和2年国勢調査の結果が官報で公示された日から1年後である令和4年6月25日までに区画審によるアダムズ方式に基づく都道府県別定数を前提に,選挙区間の人口の最大較差が2以上とならないような選挙区割りの改定案の勧告がさ れることが法律上予定されており(同法4条1項),その勧告の内容は,都道府県間の議席配分については10増10減となることが見込まれ,その勧告についての報告を受けた国会において,本件選挙区割りに係る本件区割規定の改定がされ(公職選挙法13条7項),これが施行されれば上記最大較差が1対1.697まで縮小することが見込まれる。 したがって,本件選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っているとはいえない。 ⑵ 本件選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていた場合,憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったかア原告ら 選挙区割りが憲法の投票価値の要求に反する状態に至っていても,憲法上要求される合理的期間内に是正されなかったといえない場合には憲法違反とはならないとの判例法理は,憲法に違反するものである。 仮にそうでないとしても,本件選挙が施行された令和3年10月31日の時点で,上記合理的期間は既に徒過していたと解されるから,本件選挙 は,憲法98条1項により,無効である。 イ被告ら本件選挙は,平成30年大法廷判決により,区割りについての違憲状態が解消された旨の判示がされた後に初めて実施された総選挙であるから,仮に本件選挙区割りが違憲状態に陥っているとしても,国会においてこれ を認識すべき契機が存在したとはいえず,その状態を認識し得ない状態で あった。 された総選挙であるから,仮に本件選挙区割りが違憲状態に陥っているとしても,国会においてこれ を認識すべき契機が存在したとはいえず,その状態を認識し得ない状態で あった。 また,平成28年改正法により,アダムズ方式による議席配分を実施するのが平成32年(令和2年)の大規模国勢調査以降とされており,それまでにある程度の較差の変動が生じることは当然あり得ることであり,そのような場合に備えて10年又は5年単位で選挙区割りを行い,是正する という現行の選挙制度が整備されているといえる。 したがって,仮に本件選挙区割りが違憲状態に至っていたとしても,国会が憲法上要求される合理的期間内にその是正をしなかったとはいえない。 ⑶ 本件選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っており,かつ憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかった場合,本件 小選挙区選挙は無効とされるべきかア原告ら本件選挙については,比例代表選挙選出の定足数を満たす衆議院議員が存在するので,小選挙区選挙について違憲無効の判決がされても,衆議院は国会活動を有効に行い得るから,社会的混乱や不都合は生じない。また, 全289の小選挙区の選挙人であった各原告がすべての小選挙区選挙について選挙無効訴訟を提起しているから,事情判決の法理を用いるべきではなく,選挙無効判決がされるべきである。 イ被告ら小選挙区選挙について違憲無効の判決がされても,衆議院は国会活動を 有効に行い得るから,社会的混乱や不都合は生じないとの原告らの主張は争う。 第3 当裁判所の判断 1 本件選挙における選挙区間の選挙人数の較差等について⑴ 令和3年10月14日に衆議院が解散され,同月31日,本件選挙区割り や不都合は生じないとの原告らの主張は争う。 第3 当裁判所の判断 1 本件選挙における選挙区間の選挙人数の較差等について⑴ 令和3年10月14日に衆議院が解散され,同月31日,本件選挙区割り の下において本件選挙が施行された。 本件選挙においては,各都道府県に配分された議員定数は,平成29年選挙(小選挙区選挙)の際,各都道府県に配分された議員定数と同じであった。 そして,本件選挙時における都道府県別定数と平成27年国勢調査の結果による人口を基にアダムズ方式で計算した都道府県別定数を比較した場合,11都県において定数が異なっており,その11都県では,本件選挙において, 1人別枠方式が廃止される前の定数が維持されていた。 ⑵ 本件選挙区割りの下において,令和2年10月1日を調査時とする国勢調査(以下「令和2年国勢調査」という。)の結果(調査結果の速報値の官報による公示日・令和3年6月25日,確定値の公表日・同年11月30日)によれば,選挙区間の人口の最大較差は1対2.096となるものとされ, 人口の最も少ない選挙区(鳥取県第2区)と比べて較差が2倍以上となった選挙区は23であった。また,本件選挙当日における選挙区間の選挙人数の較差は,選挙人数が最も少ない選挙区(鳥取県第1区:23万0959人)と最も多い選挙区(東京都第13区:48万0247人)との間で1対2. 079であり,選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっ た選挙区は29であった。なお,選挙人数の最も多い選挙区(東京都第13区)と比べて選挙人数が2分の1以下になっていた選挙区は7(鳥取県第1区,同第2区,長崎県第3区,福島県第4区,宮城県第4区,京都府第5区,香川県第3区)であった。(乙1の1の1・2,乙1の2,乙23 )と比べて選挙人数が2分の1以下になっていた選挙区は7(鳥取県第1区,同第2区,長崎県第3区,福島県第4区,宮城県第4区,京都府第5区,香川県第3区)であった。(乙1の1の1・2,乙1の2,乙23の2)そして,令和2年国勢調査の結果を前提に,新区画審設置法3条2項に 従い,小選挙区選挙の都道府県別定数を計算すると,15の都県で定数の増減が生じ,人口についての較差が2倍以上となった上記23の選挙区のうち21の選挙区が上記15の都県に属し,選挙人数についての較差が2倍以上となった上記29の選挙区のうち26の選挙区が上記15の都県に属している。(乙1の1の1・2) 2 投票価値の平等について 憲法は,選挙権の内容の平等,換言すれば投票価値の平等を要求しているものと解される。そして,投票価値の平等は,選挙制度の仕組みを決定する重要な基準であるが,国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものであるところ,国会の両議院の議員の選挙については,憲法上,議員の定数,選挙区,投票の方 法その他選挙に関する事項は法律で定めるべきものとされ(同法43条2項,47条),選挙制度の仕組みの決定について国会に広範な裁量が認められている。 衆議院議員の選挙につき全国を多数の選挙区に分けて実施する制度が採用される場合には,選挙制度の仕組みのうち定数配分及び選挙区割りを決定す るに際して,憲法上,議員1人当たりの選挙人数ないし人口ができる限り平等に保たれることを最も重要かつ基本的な基準とすることが求められているというべきであるが,それ以外の要素も合理性を有する限り国会において考慮することが許容されているものと解されるのであって,具体的な選挙区を定め とを最も重要かつ基本的な基準とすることが求められているというべきであるが,それ以外の要素も合理性を有する限り国会において考慮することが許容されているものと解されるのであって,具体的な選挙区を定めるに当たっては,都道府県を細分化した市町村その他の行政区画などを 基本的な単位として,地域の面積,人口密度,住民構成,交通事情,地理的状況などの諸要素を考慮しつつ,国政遂行のための民意の的確な反映を実現するとともに,投票価値の平等を確保するという要請との調和を図ることが求められているところである。したがって,このような選挙制度の合憲性は,これらの諸事情を総合的に考慮した上でなお,国会に与えられた裁量権の行 使として合理性を有するといえるか否かによって判断されることになり,国会がこのような選挙制度の仕組みについて具体的に定めたところが,上記のような憲法上の要請に反するため,上記の裁量権を考慮してもなおその限界を超えており,これを是認することができない場合に,初めてこれが憲法に違反することになるものと解すべきである(最高裁判所昭和51年4月14 日大法廷判決・民集30巻3号223頁,最高裁判所昭和58年11月7日 大法廷判決・民集37巻9号1243頁,最高裁判所昭和60年7月17日大法廷判決・民集39巻5号1100頁,最高裁判所平成5年1月20日大法廷判決・民集47巻1号67頁,最高裁判所平成11年11月10日大法廷判決・民集53巻8号1441頁,最高裁判所平成11年11月10日大法廷判決・民集53巻8号1704頁,最高裁判所平成19年6月13日大 法廷判決・民集61巻4号1617頁,平成23年大法廷判決,平成25年大法廷判決,平成27年大法廷判決及び平成30年大法廷判決参照)。 なお,原告らは,憲法5 判所平成19年6月13日大 法廷判決・民集61巻4号1617頁,平成23年大法廷判決,平成25年大法廷判決,平成27年大法廷判決及び平成30年大法廷判決参照)。 なお,原告らは,憲法56条2項,1条及び前文第1段第1文により,合理的に実施可能な限りでの人口比例選挙(1人が1票の投票価値を有する選挙)によって保障される1人1票の原則が求められていると主張する。しか しながら,憲法の上記各規定から原告らの主張するような厳格な人口比例選挙が論理必然的に導き出されると解することはできないし,学説のすう勢や外国における例をもって上記の厳格な人口比例選挙が憲法上要求されているということもできないから,原告らの上記主張は採用することができない。 3 そこで,上記の見地に立って,本件選挙当時の本件区割規定が定める本件 選挙区割りが憲法に違反しているか否かについて検討する。 ⑴ 本件選挙時において,本件区割規定が定める本件選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたか否かについてア前提事実⑵カ及びキのとおり,平成26年選挙前に設置された衆議院議長の諮問機関である選挙制度調査会において,衆議院選挙制度に関す る検討が重ねられ,平成27年大法廷判決の言渡し後に,小選挙区選出議員の定数を6削減するとともに,投票価値の較差を是正するための新たな議席配分方式として,各都道府県の人口に比例した配分方式の一つであるアダムズ方式を採用すること等を内容とする答申がされ,これを受けて制定された平成28年改正法は,これと同内容の規定を設けた上 で,アダムズ方式による各都道府県への定数配分を平成32年(令和2 年)以降10年ごとに行われる国勢調査の結果に基づいて行うこととし,その5年後に行 れと同内容の規定を設けた上 で,アダムズ方式による各都道府県への定数配分を平成32年(令和2 年)以降10年ごとに行われる国勢調査の結果に基づいて行うこととし,その5年後に行われる国勢調査の結果に基づく選挙区間の人口の較差が2倍以上となったときは同較差が2倍未満となるように各都道府県内の選挙区割りの改定を行うことを定めたものである。 さらに,平成28年改正法は,アダムズ方式による定数配分が行われ るまでの措置として,選挙制度の安定性を確保しつつ較差の是正を図るため,附則において,平成27年国勢調査の結果に基づきアダムズ方式により定数配分を行った場合に選挙区数の削減が見込まれる議員1人当たりの人口の少ない6県の選挙区数をそれぞれ1減ずる0増6減の措置を採るとともに,新区画審設置法3条1項と同様の区割基準に基づき, 次回の国勢調査が行われる平成32年(令和2年)までの5年間を通じて選挙区間の人口の較差が2倍未満となるように選挙区割りの改定を行うこととしたものである。その上で,区画審による改定案の勧告を経て制定された平成29年改正法において,19都道府県の97選挙区における選挙区割りの改定を内容とする公職選挙法の改正が行われ,同改正 後の本件区割規定の定める本件選挙区割りの下において平成29年選挙及び本件選挙が行われたところである。 そして,前提事実⑵クのとおり,本件選挙区割りの下における選挙区間の投票価値の較差は,平成27年国勢調査の結果による人口の最大較差において1対1.956,平成29年選挙当日の選挙人数の最大較差 においても1対1.979に縮小され,同選挙当時,選挙人数の最も少ない選挙区を基準として較差が2倍以上となっている選挙区は存在しなくなったものである。 29年選挙当日の選挙人数の最大較差 においても1対1.979に縮小され,同選挙当時,選挙人数の最も少ない選挙区を基準として較差が2倍以上となっている選挙区は存在しなくなったものである。 イ平成29年選挙についての平成30年大法廷判決は,本件区割規定は,投票価値の平等の要請にかなう立法的措置を講ずることを求めた平成2 3年大法廷判決以降の各大法廷判決の趣旨に沿って較差の是正を図った ものであり,平成29年選挙当時においては,新区画審設置法3条1項の趣旨に沿った選挙制度の整備が実現されていたなどとし,平成29年選挙当時において,本件区割規定の定める本件選挙区割りは,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったということはできないと判示している。 ウしかしながら,本件選挙区割りについては,前提事実⑵,上記1のとおり,平成24年改正法及び平成28年改正法により選挙区数が減少した県以外の都道府県について,1人別枠方式を含む旧区割基準に基づいて配分された定数に変更はなく,本件選挙時における都道府県別定数と平成27年国勢調査の結果による人口をアダムズ方式で計算した都道府 県別定数を比較した場合,11都県において定数が異なっていたものである。また,令和2年国勢調査の結果によれば,選挙区間の人口の最大較差は1対2.096となるものとされ,人口の最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となった選挙区は23であり,本件選挙当日における選挙区間の選挙人数の較差は,選挙人数が最も少ない選挙区と最も多 い選挙区との間で1対2.079であり,選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となった選挙区は29であった。 そして,令和2年国勢調査の結果を前提として,新区画審設置法3条によ い選挙区との間で1対2.079であり,選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となった選挙区は29であった。 そして,令和2年国勢調査の結果を前提として,新区画審設置法3条による区割基準に基づき定数の再配分をした場合には,15の都県に定数の増減が生じ,上記の人口又は選挙人数について2倍以上の較差が生 じた選挙区の大部分は同都県に含まれている。 エ被告らは,本件選挙時において結果的に2倍を超える格差が生じた要因は,平成32年(令和2年)見込人口が算出の基礎とした平成22年の大規模国勢調査から平成27年の簡易国勢調査(平成27年国勢調査)までの日本国民の人口の増減率と異なる人口移動があったためであり, 1人別枠方式のような選挙制度自体に起因する構造的な問題が要因で2 倍を超える格差が生じたわけではないとし,令和4年6月25日までに区画審によるアダムズ方式に基づく都道府県別定数を前提に,選挙区間の人口の最大較差が2以上とならないような選挙区割りの改定案の勧告がされることが法律上予定されていると主張する。 しかしながら,平成6年に小選挙区比例代表並立制が導入されてから 初めて較差が2倍未満となった平成29年選挙とは異なり,本件選挙においては,上記のような投票価値の較差が生じているのであって,その主な要因は,本件選挙区割りが直近の国勢調査(令和2年国勢調査)の結果を考慮して定められたものではない上,平成27年国勢調査・令和2年国勢調査のいずれの結果を前提としてみても,いまだ11ないし1 5の都県において新区画審設置法による区割基準に基づいて定数の再配分が行われた場合とは異なる定数が配分されていることにあるというべきであり,これは平成29年選挙後の各選挙区における人口の単なる増 5の都県において新区画審設置法による区割基準に基づいて定数の再配分が行われた場合とは異なる定数が配分されていることにあるというべきであり,これは平成29年選挙後の各選挙区における人口の単なる増減や移動の問題として軽視すべきではなく,令和4年6月25日までに選挙区割りの改定案の勧告がされることが法律上予定されていることを 考慮しても,本件選挙において生じた上記のような較差に合理性があるとは認められない。 オ上記2のとおり,憲法が要求する投票価値の平等は,選挙制度の仕組みを決定する重要な要素であるから,議員1人当たりの選挙人数は可能な限り平等に保たれるべきである。しかしながら,上記ウのとおり,本 件選挙時において,選挙人数の較差が2倍を超える選挙区が多数生じており,選挙区間の選挙人数の最大較差が2.079倍に及び,選挙人数最少の選挙区の選挙人の1票が選挙人数最多の選挙区の選挙人の2票以上に相当することになるという投票価値の較差の状況やその要因となっていた事情等を総合考慮すると,本件区割規定が定める本件選挙区割り は,本件選挙当時,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあった ものといわざるを得ない。 ⑵ 合理的期間内の是正の有無についてア上記⑴のとおり,裁判所において,本件選挙区割りについて,本件選挙当時,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったと判断したとしても,裁判所が自らこれに代わる具体的な制度を定め得るものでは なく,その是正は国会の立法によって行われることになる。そして,その是正の方法についても国会は幅広い裁量権を有しているので,裁判所が選挙制度の憲法適合性について一定の判断を示すことにより,国会がこれを踏まえて自ら所要の適切な是正の措置を講ずることが,憲法 て,その是正の方法についても国会は幅広い裁量権を有しているので,裁判所が選挙制度の憲法適合性について一定の判断を示すことにより,国会がこれを踏まえて自ら所要の適切な是正の措置を講ずることが,憲法上想定されているものと解される。このような憲法秩序の下における司法権 と立法権との関係に照らすと,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っている旨の司法の判断がされれば国会はこれを受けて是正を行う責務を負うものであるところ,憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったといえるか否かを判断するに当たっては,単に期間の長短のみならず,是正のために採るべき措置の内容,そのために検 討を要する事項,実際に必要となる手続や作業等の諸般の事情を総合考慮して,国会における是正の実現に向けた取組が司法の判断の趣旨を踏まえた立法裁量権の行使として相当なものであったといえるか否かという観点に立って評価すべきものと解される(平成25年大法廷判決,最高裁判所平成26年11月26日大法廷判決・民集68巻9号1363 頁,平成27年大法廷判決参照)。 イそこで,本件において,憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったといえるか否かについて検討する。 この点,前提事実⑵クのとおり,平成30年大法廷判決において,本件区割規定は,平成23年大法廷判決以降の各大法廷判決の趣旨に沿っ て較差の是正を図ったものであり,平成29年選挙当時においては,新 区画審設置法の趣旨に沿った選挙制度の整備が実現されていたということができるなどとして,平成29年選挙当時において,本件区割規定の定める本件選挙区割りは,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったということはできず,本件区割規定が憲法14条1項等に違 いうことができるなどとして,平成29年選挙当時において,本件区割規定の定める本件選挙区割りは,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったということはできず,本件区割規定が憲法14条1項等に違反するものということはできないと判示されており,平成29年選挙当時の 最大較差は1.979倍であり,本件選挙区割りは,平成32年(令和2年)の見込人口に基づく最大較差が2倍未満となるものであったこと,その後,令和2年国勢調査の結果の速報値が公表され,最大較差が2倍を超える見込みであることが判明したが,その公表は本件選挙施行日の約4か月前である令和3年6月25日にされたものであり,令和2年国 勢調査の結果の確定値が公表されたのは本件選挙施行後である令和3年11月30日であったことなどに照らすと,国会においては,本件選挙までの間に本件選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたことを認識し得たとは認められず,本件選挙までにこれを是正することは事実上不可能であったといわざるを得ない。 そうすると,本件選挙時までの国会における小選挙区選挙についての投票価値の較差是正に関する取組が立法裁量権の行使として相当なものではなかったということはできず,本件において憲法上要求される合理的期間を徒過したものということはできない。 ウこれに対し,原告らは,選挙区割りが憲法の投票価値の要求に反する 状態に至っていても,憲法上要求される合理的期間内に是正されなかったといえない場合には憲法違反とはならないとの判例法理は憲法に違反するものであり,仮にそうでないとしても,本件選挙が施行された令和3年10月31日の時点で,上記合理的期間は既に徒過していたと主張するが,この点については前記ア及びイで判示したとおりであっ 法に違反するものであり,仮にそうでないとしても,本件選挙が施行された令和3年10月31日の時点で,上記合理的期間は既に徒過していたと主張するが,この点については前記ア及びイで判示したとおりであって,原 告らの主張は採用することができない。 4 以上によれば,本件選挙時において,本件区割規定が定める本件選挙区割りは,憲法が求める投票価値の平等の原則に反する状態にあったものの,憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえず,本件区割規定が定める本件選挙区割りが憲法に違反するとはいえない。 よって,本件各選挙区における本件選挙を無効とすることを求める原告ら の請求は,いずれも理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 福岡高等裁判所第3民事部 裁判長裁判官岩坪朗彦 裁判官秋本昌彦 裁判官浅香幹子

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