主文 一本件控訴に基づき、原判決を次のとおり変更する。 1 控訴人(附帯被控訴人)は、被控訴人(附帯控訴人)に対し、金二三〇万円及び内金二〇〇万円に対する平成八年八月一六日から、内金三〇万円に対する平成一〇年二月一四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。 2 被控訴人(附帯控訴人)のその余の請求を棄却する。 二被控訴人(附帯控訴人)の本件附帯控訴を棄却する。 三控訴につき訴訟費用は第一、二審を通じてこれを五分し、その一を控訴人(附帯被控訴人)、その余を被控訴人(附帯控訴人)の負担とし、附帯控訴につき控訴費用は被控訴人(附帯控訴人)の負担とする。 四この判決の主文第一項1は、仮に執行することができる。 事実及び理由 第一申立て一控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人(附帯控訴人。以下「被控訴人」という。)の請求を棄却する。 3 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。 二附帯控訴の趣旨 1 原判決中、被控訴人の敗訴部分を取り消す。 2 控訴人(附帯被控訴人。以下「控訴人」という。)は、被控訴人に対し、金四七七万円及び内金四〇〇万円に対する平成八年八月一六日から、内金七七万円に対する平成一〇年二月一四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。 3 訴訟費用は第一、二審とも控訴人の負担とする。 4 仮執行の宣言第二事案の概要一控訴人はα大学生活美術学科の教授、被控訴人は同学科の副手であるが、本件は、被控訴人が控訴人に対し、平成八年八月一六日夜、被控訴人が自動車で控訴人を自宅まで送り届ける途中、停車した車内において控訴人から一時間近くにわたり姦淫等の性的侵害(本件行為)を受けたと主張し、不法行為に基づき、慰謝料一〇〇〇万円及び弁護士費用一七七万円の損害賠償を請求した事案である。これに 中、停車した車内において控訴人から一時間近くにわたり姦淫等の性的侵害(本件行為)を受けたと主張し、不法行為に基づき、慰謝料一〇〇〇万円及び弁護士費用一七七万円の損害賠償を請求した事案である。これに対し、控訴人は、本件行為は合意に基づくものであると主張して争っている。 原審は被控訴人の主張事実を認め、右請求のうち慰謝料六〇〇万円及び弁護士費用一〇〇万円を認容すべきものとしたため、控訴人がこれを不服として控訴し、被控訴人も、請求の一部が棄却された点を不服として附帯控訴した。 二当事者双方の主張は、原判決の「事実及び理由」第二に記載のとおりであるから、これを引用する。 第三判断一争いのない事実は、原判決の「事実及び理由」第三の一に記載のとおりであるから、これを引用する。 右争いのない事実と証拠(甲一、六の1、2、七、八の1ないし1〇、九の1ないし5、一〇の1ないし3、一一の1、2、一二の1、2、一四の1ないし3、一六、一七、一九、二二の1、2、二三ないし二五、三二、三三、五五ないし五七、六七、乙二、三、四の1ないし5、六、一○、一一、一七、二五、二七、二八、二九の1ないし3、三七の1、2、三八の1、2、三九、四一の1、2、四二の1、2、五六ないし五八、六一の1、2、六五の1ないし3、当審証人B、控訴人(原審及び当審)、被控訴人)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 1 被控訴人は平成四年四月α大学生活美術学科に入学し、一、二年の時、同学科の絵画の教授である控訴人から絵画(基礎絵画)の指導を受けたが、三年次から絵画を専攻して控訴人が指導教員となり、卒業研究には絵画を選んだ。被控訴人は教員を志望し、四年の時に教員採用試験を受験したが合格せず、当時担任であったG助教授に副手(三年契約の嘱託職員)への採用を依頼したところ、控訴人 が指導教員となり、卒業研究には絵画を選んだ。被控訴人は教員を志望し、四年の時に教員採用試験を受験したが合格せず、当時担任であったG助教授に副手(三年契約の嘱託職員)への採用を依頼したところ、控訴人も被控訴人を推薦し、平成八年四月から生活美術学科の副手三名のうちの一人として採用された。同学科の副手は主として生活美術学科職員室に勤務し、その職務は、職員や学生への連絡、非常勤講師の手助け、来客の対応、演習・実習の準備や授業の補助などであった。被控訴人は、午前八時半から午後五時まで職員室で右職務に従事し、午後五時以降は、美術実習室の一室で午後八時ころまで制作を行っていた。 被控訴人が副手として採用された後、控訴人は被控訴人に対し、平成八年一〇月の仙台市民美術展に作品を出展するよう勧め、控訴人の時間の空いている時に、技法や構図・構想について被控訴人の相談に乗るなどした。また、控訴人は、他の副手と共に被控訴人を飲みに連れていったり、作家の個展のパーティーに同伴することがあった。被控訴人は、控訴人が顧問をしている版画ゼミナールに入っていなかったが、同ゼミの平成八年三月の欧州旅行や平成八年七月二九日に行われたバーベキューパーティーに参加するなどしていた。なお、被控訴人は学生時代から、版画ゼミナールに所属する男子学生と交際し、そのことは学科の教員らにも周知の事実で、前記欧州旅行には右男子学生も同行していた。 この間、被控訴人は控訴人に対し、平成八年五月三〇日の控訴人の誕生祝いにネクタイピンを贈ったり、同年八月にはマリオネットを贈るなどした。 2 Aは昭和六三年に本件大学に入学後、一年の時から版画ゼミナールに入り、控訴人はAの卒業研究や版画の指導に当たり、また、就職についても助力するなどした。Aは、本件大学を卒業後中学校の美術教師となったが、卒業後も控訴 に本件大学に入学後、一年の時から版画ゼミナールに入り、控訴人はAの卒業研究や版画の指導に当たり、また、就職についても助力するなどした。Aは、本件大学を卒業後中学校の美術教師となったが、卒業後も控訴人の研究室に出入りし、版画ゼミナールの登山合宿やスキー旅行に参加し、休みの時には本件大学の版画室に通い、工房を借りて版画の制作を続け、控訴人の企画した展覧会や控訴人に紹介された他の展覧会にも出品するなどした。控訴人は、Aが両親と離れて暮らしていたため、自宅に宿泊させたり、スキーに連れていくなど、私的な面でも親密にしていた。 Aは平成六年一二月ころ、当時交際していた女性と婚約したいと考えていたが、相手の女性の両親とうまくいかなかったため、内緒で交際を続け、平成八年五月ころ、控訴人に対し、相手の両親と和解できるよう間に立ってほしい旨依頼した。Aの父親は平成八年六月ころ、控訴人を訪ね、前記女性との結婚の仲人を依頼したが、右女性は控訴人に対し電話で、Aとの関係が必ずしもうまくいっていない旨を告げていた。 3 被控訴人は平成八年五月ころ、帰宅しようとして本件大学の下足箱付近にいたところ、飲みに行こうとしていた控訴人とAに会い、連れ立って居酒屋に行き、Aと知り合いになった。その後、Aは、大学に制作に行ったときに被控訴人のアトリエを訪ねて話をするようになり、同年六月ころには被控訴人と親密に交際し、関係を結ぶまでに至った。そのころ、控訴人の妻が不在の折、被控訴人はAと共に控訴人の自宅に宿泊した。Aは前記恋人がいたため、控訴人に対して被控訴人との交際を打ち明けられないでいたが、前記恋人との関係も同年七月末まで続けていた。 4 本件大学は平成八年七月二六日から夏休みに入ったが、控訴人は、被控訴人に対し、一〇月の仙台市民美術展に向けて作品の指導をしていた。八月一三 いでいたが、前記恋人との関係も同年七月末まで続けていた。 4 本件大学は平成八年七月二六日から夏休みに入ったが、控訴人は、被控訴人に対し、一〇月の仙台市民美術展に向けて作品の指導をしていた。八月一三日から同月一七日まではお盆休みで学校の閉鎖期間となったところ、被控訴人とAは、同月一三日、控訴人と共にAの車で盛岡市にある橋本美術館を見学に行った。Aは、その帰りに被控訴人を同人の自宅近くで降ろした後、控訴人に対し、被控訴人と付き合って既に関係を結んでいることを打ち明け、被控訴人が処女でなかったことまで話した。控訴人はこれを聞き、Aに対し、前記恋人との関係はどうなっているのかと問いただし、Aを非難して怒鳴りつけるなどした。そのため、Aは同日、被控訴人に対して電話で、被控訴人との交際を控訴人に打ち明けたところ控訴人が怒っていたことを知らせた。 5 被控訴人は当時、両親と離れてアパートに住んでいたが、八月一四日から一六日まで帰省し、同日夜、アパートに戻った。控訴人は、Aから被控訴人との交際の事実を知らされたことから、同月一八日から予定されていた三日間の登山合宿を前に、被控訴人にAとの関係を確認し、団体行動が求められる合宿での行動について注意をしようと考え、同月一六日、友人と飲酒後の午後九時ころ、地下鉄仙台駅から被控訴人に電話し、話があるので地下鉄β駅まで迎えに来てほしい旨依頼した。 被控訴人は、当日午後九時半ころA宅に行く予定であり、控訴人宅はその途中にあったため、これを承諾した。なお、地下鉄β駅は、被控訴人宅(前記アパート)から比較的近い場所にある。 被控訴人は同日午後九時半ころ、被控訴人の車を運転してβ駅まで控訴人を迎えに行き、控訴人を乗車させた。なお、被控訴人は、それまで控訴人から電話で呼び出されたりしたことはなかった。 被控訴人の車は、 被控訴人は同日午後九時半ころ、被控訴人の車を運転してβ駅まで控訴人を迎えに行き、控訴人を乗車させた。なお、被控訴人は、それまで控訴人から電話で呼び出されたりしたことはなかった。 被控訴人の車は、三ドア五人乗りの小型自動車(スターレット)であり、運転席と助手席は分離し、その間にサイドブレーキのレバー及びオートマチックのセレクターレバーなどがあり、運転席のシートを倒すためのレバーは運転席右側下にある。運転者(被控訴人と同程度の体格の者)が運転席に着座した状態において、ハンドルの下部分と運転者の大腿部との空間は数センチメートル程度、座席シートを後部に下げて運転席のシートを倒し着席者が仰臥状態になれば、ハンドルの下部分と同人の膝部分との空間は着座状態より若干の余裕が生ずるが、着席者が両足を左右に開かない限り男性の大腿部が入るほどの空間はない。ちなみに、被控訴人の身長は一五七センチメートルで体重は四八キログラム、控訴人の身長は一七二センチメートルで体重は六七キログラムである。 6 控訴人は乗車後、喫茶店か被控訴人宅で話をしたい旨告げたが、被控訴人が明確な返事をしないでいたところ、控訴人が、当日上越教育大学の先生と飲酒してきたことや被控訴人が副手期間経過後に右大学の大学院へ行きたいのであれば、推薦状を書いてもいいことなどを話すうち、車は被控訴人宅前を通過した。そして、宮城交通ワンマンバス回転場(本件現揚)付近に至り、控訴人が、先を急いでいるように見えた被控訴人に対し、そこで停車するよう指示したため、被控訴人は右回転場の右奥で車を止め、エンジンを切り、シートベルトを外した。控訴人は同所において、被控訴人に対し、Aに婚約者がいることを話し、それでもAと交際するのかなどと詰問し、これに対して被控訴人が、Aとの交際を続ける旨答えたところ、控訴人は、なぜ ートベルトを外した。控訴人は同所において、被控訴人に対し、Aに婚約者がいることを話し、それでもAと交際するのかなどと詰問し、これに対して被控訴人が、Aとの交際を続ける旨答えたところ、控訴人は、なぜAなのかなどと言って被控訴人を非難し、前を向いていた被控訴人の頭に触れ、控訴人の方に顔を向かせた上、両手でその頬を挾むようにし、二度ほど頬を叩いて叱りつけ、被控訴人のあごをつかんだ。控訴人はそのまま被控訴人の唇にキスをしたが、これに対し、被控訴人が強く抵抗はしなかったため、控訴人は興奮して積極的になり、被控訴人を抱きしめ、運転席のシートを倒して被控訴人の上に重なるようになった。当日、被控訴人は前ボタンのブラウスにスカートを着用し、ストッキングをはいていなかったが、控訴人は被控訴人の胸を直接に触り、スカートの下から下着を下ろした。その際、被控訴人は「やめてください」あるいは「だめ」というような言葉を発したが、控訴人は、被控訴人が強く拒否していないものと感じ、そのまま下着を足の先に下ろし、控訴人もズボンを下ろして関係を持った。しかし、射精には至らず、控訴人は助手席に戻った後、被控訴人に対し、性器を吸ってほしいと要求し、被控訴人はやむなくこれに応じた。そして、再び運転席で関係を持った後、控訴人は助手席において、自己の性器に被控訴人の顔を引き寄せて口淫させ、更に運転席で関係を持ったが、結局、射精には至らなかった。そのうち、被控訴人が「もう時間が遅いので」などと述べたため、控訴人は行為を終え、二人は衣服を整えて本件現場を出発したが、時刻は午後一〇時半をかなり過ぎていた。 被控訴人は、控訴人を自宅まで送り届けた後、A宅近くの電話ボックスからAに電話し、右電話ボックスまで迎えに来たAが被控訴人の車を運転してA宅に行った。被控訴人は、Aの「どうしたのか」と ぎていた。 被控訴人は、控訴人を自宅まで送り届けた後、A宅近くの電話ボックスからAに電話し、右電話ボックスまで迎えに来たAが被控訴人の車を運転してA宅に行った。被控訴人は、Aの「どうしたのか」という問いに対し、控訴人からAとの交際を追及され、顔を殴られ髪を引っ張られたりしたことなどを話したが、Aがそれ以上は尋ねなかったため、シャワーを浴び、その夜はA宅に泊まった。被控訴人の体には、打ち身など外部から見て暴行を受けた痕跡はなかった上、着用していたブラウスのボタンはちぎれていなかった。 7 被控訴人は、翌一七日はAとドライブに行き、同月一八日から版画ゼミナール主催の栗駒山登山合宿に参加し、右合宿には控訴人及びAも参加したが、控訴人当日、被控訴人に対し、ティファニーのネックレスを校舎内で贈った。被控訴人は、合宿初日と二日目、合宿に参加した学生の写真撮影に笑顔で応じている。 合宿二日目の同月一九日夜、被控訴人が何かを隠していると感じたAの問いに対し、被控訴人は、控訴人に本件現場に車を停めさせられ、Aと付き合っているのか問いただされ、先生もおまえを抱きたかったのになどと言われた上、髪を引っ張られ頬を叩かれた旨説明し、これを聞いたAが、抱かれたのかと尋ねたところ、被控訴人は下を見てうなずいた。そのためAは、「何で最後まで抵抗できなかったんだ。普通の女性なら抵抗できたはずだ。」と言って被控訴人を非難し、その後、合宿の間、被控訴人に話かけることはなかった。そして、被控訴人は合宿終了後の同月二一日、A宅を訪ねたが、Aは被控訴人を非難するだけであった。 8 被控訴人は平成八年八月二三日午後七時ころ、母親に電話し、控訴人から乱暴された旨話したため、両親が被控訴人のアパートまで来た。被控訴人は、Aに対しても電話で、両親に打ち明け、これから警察に告訴に行く旨 控訴人は平成八年八月二三日午後七時ころ、母親に電話し、控訴人から乱暴された旨話したため、両親が被控訴人のアパートまで来た。被控訴人は、Aに対しても電話で、両親に打ち明け、これから警察に告訴に行く旨を告げて呼び出し、同日午後一一時ころ、四人は泉警察署に赴き、控訴人に強姦された旨申し出た。被控訴人は、事情聴取を受けた上、告訴の手続の説明を受け、告訴に備えて、被控訴人が事件当日身につけていた洋服、下着等を警察署に提出したが、署員から告訴するかどうかよく考えて決めて下さいと言われ、当日は告訴の手続をしなかった。 Aは、被控訴人とその両親と話し合った結果、Aが信頼するB講師に相談することを提案し、翌二四日、Bに対し、事件のことには触れず、会って話がしたい旨電話で依頼した。Bは、当日、親戚も来ていたことからいったん断ったが、Aが執拗に依頼するため、午後二時に自宅近くの名取空港ボウルで待ち合わせをすることにした。Bは、それまでAから個人的な相談を受けたことがなく、卒業後は指導もしていなかったのに前記のような依頼を受け、Aの電話の様子が怒っているようでもあったため、日頃からAと懇意にし面倒を見ている控訴人に連絡して、右待ち合わせ場所に来てもらうよう依頼した。Bが同所に赴くと、Aのほかに被控訴人とその両親がおり、Bは、後に控訴人も来ることを告げた上、話があるという被控訴人と自己の車で二人だけになり、控訴人から乱暴された旨を聞かされた。その後、同所に到着した控訴人の車に、Bが助手席、被控訴人とその両親が後部座席に座り、Bは控訴人に対し、被控訴人が控訴人から乱暴されたと言っているが本当かどうかを尋ねた。これに対し、控訴人は、被控訴人がそういうのであればそうでしょうと述べ、申し訳ないことをしたと両親に謝罪した。その間、被控訴人は、うつむいているだけで発言は されたと言っているが本当かどうかを尋ねた。これに対し、控訴人は、被控訴人がそういうのであればそうでしょうと述べ、申し訳ないことをしたと両親に謝罪した。その間、被控訴人は、うつむいているだけで発言はしなかった。被控訴人の両親は、控訴人の車から降りた後、Bに対し、今後のことを依頼し、土産を渡した。Bは、被控訴人らが帰った後、控訴人に対して再度、真偽を確認したところ、控訴人は、男女関係があったことは認めたが、被控訴人に対して乱暴はしていない旨答えた。 9 Aは同日夜、控訴人宅に電話をし、控訴人の態度に納得がいかない旨釈明を求めたところ、控訴人はA宅に赴いた上、本件行為は強姦ではなく被控訴人がその気であったから起きたこと、被控訴人はむしろ積極的であったこと、被控訴人は控訴人の性器を二度も吸ってくれたことなどを話した。これを聞いたAは、本件行為は強姦ではなく、被控訴人にだまされていたものと考え、翌二五日、Aに電話をしてきた被控訴人を非難し、これに驚いてAを訪れた被控訴人に対し、「吸ってやったんだろう。それも二回も。強姦じゃないよ。告訴どころじゃない。なんてことをしてくれたんだ。悪いのは君だ。」「怪我もしていないじゃないか。」と言い、「人を殺して捕まったような気分だろう。」と責め、被控訴人とはもう会わない旨を告げた。 10 被控訴人は平成八年八月二六日、大学に出勤していたところ、夕方午後五時過ぎころ、控訴人の帰宅する姿を見て、「先生、私馬鹿でした。先生が一番よく分かったと思います。なんだか人を殺して捕まった気分です。先生が帰ってしまうの見て涙が止まりませんでした。作品は頑張ってきます。それしか今はないです。先生、本当にごめんなさい。」と記載したメモ(乙二。本件メモ)を作成し、控訴人の下足箱に入れた。 控訴人は翌二七日朝、本件メモを発見し、Bにこ んでした。作品は頑張ってきます。それしか今はないです。先生、本当にごめんなさい。」と記載したメモ(乙二。本件メモ)を作成し、控訴人の下足箱に入れた。 控訴人は翌二七日朝、本件メモを発見し、Bにこれを見せて、どう思うかを尋ねた。Bは、本件メモが被控訴人の控訴人に対する謝罪であると考え、これを預かり、被控訴人の両親に電話で連絡した上、本件メモを見せた。被控訴人の母は、本件メモが被控訴人の作成したものであることから、被控訴人が被害を受けたと思っていたことは間違いであると考えた。 11 被控訴人の母は、平成八年八月二七日午前一〇時三五分、泉警察署に電話し、「先日、先方から謝罪があり、話し合いをしております。娘の将来のことを考えますと、事件のことを取り下げていただきたいと思います。話し合いがまとまった時点で再度連絡いたします。」と申し出、その後同月二九日午前一〇時二五分、同警察署に電話し、「告訴して相手を処罰するということになりますと、娘の今後のことで支障がありますし、相手も絶対このようなことはしないと謝罪して来ましたので届け出を取り下げます。」と連絡した。 そして、被控訴人は、平成八年九月一〇日に自ら、提出していた衣類等の返還を受け、その後、告訴の手続はしなかった。 12 本件大学の夏期休暇期間は平成八年九月一九日までであったが、そのころ、被控訴人が控訴人の研究室を訪ねたところ、控訴人は被控訴人に対し、今後も仕事を頑張るよう励ました。また、被控訴人は、Bに「お騒がせしました。」と言って謝罪し、同月二〇日から大学に出勤し、制作を続けた。なお、被控訴入は、平成八年九月四日から開催された仙台ユース・ビジュアル展及び同年一一月一四日から開催された新現美術協会展にそれぞれ自己の作品を出展した。 平成八年一〇月半ばころ、被控訴人Aと再び付き合うように は、平成八年九月四日から開催された仙台ユース・ビジュアル展及び同年一一月一四日から開催された新現美術協会展にそれぞれ自己の作品を出展した。 平成八年一〇月半ばころ、被控訴人Aと再び付き合うようになっていたところ、Aが真相を教えてほしいと求めたため、被控訴人はAに対し、控訴人がものすごい力で被控訴人の腕をつかんだので逃げることもどうすることもできずに強姦され、また、顔をつかんでむりやり性器を口に入れさせられたなどと当夜の行動を説明した。Aは右説明を聞いて控訴人に対する怒りが込み上げ、控訴人宅へ夜中に押し掛け、玄関のドアを蹴るなどした。 13 被控訴人は、平成八年一一月八日、生活美術学科の副手担当の助教授であるCに対し、控訴人にレイプされた旨を話し、Cは翌九日、被控訴人と共に、学科長のDに事件を報告し、Dは同月一八日、E理事長に報告して、控訴人は同月三〇日、同年一二月一日から当分の間謹慎を命じられて自宅待機となり、平成九年一月三一日に自宅待機を解かれ、同年二月三日戒告処分を受けた。控訴人は現在も本件大学の教授の地位にあるが、授業その他の校務からほとんどはずされている。 その後、被控訴人は弁護士と相談し、平成一〇年一月二九日、本件訴訟を提起した。なお、被控訴人は平成九年一二月七日、Aとの婚姻の届出をした。 二そこで、以上の認定事実に基づき、平成八年八月一六日夜の控訴人の本件現場における行為(本件行為)が不法行為に当たるかどうかについて検討する。この点に関する双方の主張は対立し、被控訴人は控訴人の行為は強制わいせつないし強姦に当たると主張するのに対し、控訴人は本件行為は被控訴人との合意に基づくものであると主張する。 当審の認定事実は前記のとおりであって(当夜の行動については前記一の5及び6参照)、当裁判所は、控訴人が被控訴人の主張するよ 対し、控訴人は本件行為は被控訴人との合意に基づくものであると主張する。 当審の認定事実は前記のとおりであって(当夜の行動については前記一の5及び6参照)、当裁判所は、控訴人が被控訴人の主張するように暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為ないし姦淫行為をしたものとまでは認められないが、本件行為が被控訴人との合意に基づくものとは認められず、控訴人は被控訴人の意に反して性的行為ないし性的関係を強要したものであり、右行為は被控訴人の性的自由を侵害すものとして不法行為に当たると判断する。以下、当夜の行動の経過に沿って検討する。 1 前記認定事実によれば、被控訴人は本件大学に入学以来、控訴人の指導を受け、卒業後は控訴人の推薦もあって生活美術学科の副手に採用され、同学科の教授である控訴人から一層親密な指導を受けるようになった。一方、Aもまた、控訴人から就職の世話や版画の指導を受けていたのみならず、交際していた女性の両親との間の調整を依頼するなど控訴人とは私的にも極めて親密な関係にあった。 ところで、前記認定のとおり、平成八年八月一三日、Aは控訴人に対し、被控訴人と付き合って既に関係を結び、被控訴人が処女でなかったことまで話したところ、控訴人は、Aには恋人がいて、その両親との調整を依頼されるなどしていたことから、Aを非難し、同月一六日、被控訴人にAとの関係を確認し、同月一八日から予定されている合宿での両者の行動について注意しようと考え、友人と飲酒後の午後九時ころ、被控訴人に電話し、話があるので地下鉄β駅まで迎えに来てほしい旨依頼したものである。 2 右のとおり、控訴人が当夜被控訴人を呼び出したのは、被控訴人がAと交際していることを不快に思い、被控訴人に注意しようと考えたことによるものであって、控訴人とAの前記のような関係に照らせば、右のような目的自体は 、控訴人が当夜被控訴人を呼び出したのは、被控訴人がAと交際していることを不快に思い、被控訴人に注意しようと考えたことによるものであって、控訴人とAの前記のような関係に照らせば、右のような目的自体はうなずけないものではない。したがって、控訴人が当初から本件行為に及ぶことを意図していたものということはできず、そのことは、前記認定のとおり、控訴人が乗車後、話し合う場所として喫茶店を提案していることからも明らかである。もっとも、被控訴人が控訴人の教え子であり、教授と副手の関係にあるとはいえ、右のような目的のために、若い女性に対し、夜遅く車での出迎えを依頼するのは、いささか非常識のそしりを免れない。 他方、前記認定事実によれば、被控訴人はそれまで控訴人から車での出迎えを依頼されたことがなかったにもかかわらず、控訴人の呼出しに何ら警戒心を抱くこともなく応じていることが認められ、被控訴人の供述によれば、控訴人が話があると告げた意味を推測もしなかったというのであるが、夜遅く右のような呼出しを受けるのは異常ともいえる事態であるから、電話に出た際あるいは控訴人が乗車した後においても、控訴人に対し、話の目的・内容が何であるか、それが当夜でなければならないのかなどを尋ね、場合によっては、それに適当な場所を考えることもできたはずである。しかし、前記認定のとおり、被控訴人は、呼び出されるまま控訴人を出迎えに行き(被控訴人の供述によれば、当夜はA宅に行く予定であったため、途中にある控訴人宅で控訴人を降ろせばよいと考え、前記のとおり、控訴人が話があるという意味を推測もしなかった。)、控訴人を乗車させた後は特段の質問をすることもなく、控訴人に指示されるまま本件現場に車を入れ、停車させたのであって、いかに控訴人を信頼していたにせよ、無警戒にすぎる行動であったというべき かった。)、控訴人を乗車させた後は特段の質問をすることもなく、控訴人に指示されるまま本件現場に車を入れ、停車させたのであって、いかに控訴人を信頼していたにせよ、無警戒にすぎる行動であったというべきである。なお、控訴人は、被控訴人が控訴人に対して警戒心を抱かなかったのは、控訴人に対して師弟関係を超えた親密な感情を有していたためであるかのように主張するが、被控訴人が既にAと親密な関係にあったことは前記認定のとおりであって、本件全証拠によっても右主張事実を認めることはできない。 3 前記認定のとおり、本件現場に停車後、控訴人は被控訴人に対し、Aに婚約者がいることを話し、それでもAと交際するのかなどと詰問し、被控訴人がAとの交際を続ける旨答えたところ、前を向いていた被控訴人の頭に触れ、控訴人の方に顔を向かせた上、両手で顔を挟むようにし、二度ほど頬を叩いて叱りつけた。 被控訴人は、控訴人が被控訴人の髪を引っ張って顔を向かせた上、二度にわたり頬を平手打ちにした旨主張し供述するが、誇張がうかがわれ、当審の認定は右のとおりである。ただし、控訴人が被控訴人がAと交際していることを不快に思い、当夜これを注意しようと考えていたことは前記のとおりであり、右認定事実によっても、控訴人が被控訴人を強く叱責し、これにより被控訴人が少なからず畏怖の念を抱いたであろうと推認することができる。 ところで、本件現場に停車後、被控訴人がシートベルトを外したことは前記認定のとおりであるが、控訴人は、そのこともまた被控訴人が控訴人に親密な感情を抱いていたことの現れである旨主張する。しかしながら、被控訴人が控訴人に対して師弟関係以上の親密な感情を抱いていたものと認めることができないことは前記のとおりであり、被控訴人の供述によれば、シートベルトを外したのは習慣的なものにすぎないと しながら、被控訴人が控訴人に対して師弟関係以上の親密な感情を抱いていたものと認めることができないことは前記のとおりであり、被控訴人の供述によれば、シートベルトを外したのは習慣的なものにすぎないというのであって、右主張を採用することはできない。 4 その後の経過は前記認定のとおりである。すなわち、控訴人は、被控訴人の顔を控訴人の方に向かせた後、そのまま被控訴人の唇にキスをし、これに対して被控訴人が強く抵抗しなかったため、興奮して積極的になり、被控訴人を抱きしめ、運転席のシートを倒して被控訴人の上に重なり、下着を下ろして関係を持ったが、射精には至らなかった。その後、控訴人は助手席に戻り、被控訴人に自己の性器を吸わせた後、再び運転席で関係を持ち、右のような行為を繰り返したものである。 被控訴人は、右行為の過程において必死に抵抗したが控訴人の力に抗しけれず強姦された旨主張し、これに沿う供述をする。また、被控訴人が下着を下ろされそうになり抵抗した際に下着が破れたとして、被控訴人が事件当日に着用していたとする下着の写真(甲一〇の5、6。被控訴人が平成一〇年五月一六日に本件大学内のアトリエで撮影したもの)を提出する。しかしながら、被控訴人の体に外部から見て暴行を受けた痕跡はなく、着用していたブラウスのボタンがちぎれていなかったことは前記認定のとおりであり、また、右写真によれば下着のレースの一部に破損が認められるが、被控訴人が主張・供述するような必死の抵抗があったとすれば、破損状態は右程度にとどまらないとも考えられるのであって、この点に関する被控訴人の供述はにわかに採用することができない。 これに対して控訴人は、被控訴人が身体を寄せてきたので思わずキスをしてしまったところ、被控訴人が舌を絡めるようなキスを返してきたので興奮し、抱擁し合ううち性的関係 にわかに採用することができない。 これに対して控訴人は、被控訴人が身体を寄せてきたので思わずキスをしてしまったところ、被控訴人が舌を絡めるようなキスを返してきたので興奮し、抱擁し合ううち性的関係に至った旨主張し、これに沿う供述をする。また、被控訴人が運転していた小型自動車(三ドア五人乗りのスターレット)内においては、被控訴人の協力がなければ運転席において性的関係を結ぶことはできない旨主張する。しかしながら、控訴人が被控訴人の行為につき右のような主張をするのは、被控訴人が控訴人に対して師弟関係以上の親密な感情を抱いていることを前提にするものであるところ、右のような前提事実を認めることができないことは前記のとおりである。そして、前記のとおり、被控訴人は既にAと親密な関係を持ち、当夜も控訴人を送り届けた後はA宅に行くことを予定していたのであって、そのような状況の下において、被控訴人が控訴人の主張するような積極的な行動に出る動機ないし可能性は認め難いものといわなければならず、控訴人の前記供述を採用することはできない。 5 当審の認定事実は前記のとおりであり、右認定事実によれば、結局のところ、控訴人の前記行為は全体として控訴人の一方的な要求に基づくものというべきであって、右行為につき被控訴人の同意があったものとは認められない(下着を下ろそうとした際、被控訴人が「だめ」というような言葉を発して抵抗していたことは、控訴人も供述するところである。)。ただし、前記認定のとおり、被控訴人が運転していた自動車の車内は相当に狭かったから、控訴人が主張するように、被控訴人のある程度協力的な行為がなければ右車内において性的関係まで結ぶことは困難であったと認められる。したがって、被控訴人がその主張するような必死の抵抗をしたのであれば、性的関係にまで至ることはなか 訴人のある程度協力的な行為がなければ右車内において性的関係まで結ぶことは困難であったと認められる。したがって、被控訴人がその主張するような必死の抵抗をしたのであれば、性的関係にまで至ることはなかったと考えられるのであり、被控訴人には控訴人の行為を断固として拒否する態度に欠けていたものといわざるを得ない。しかしながら、そうであるからといって、控訴人の行為につき被控訴人が同意していたものと認められないことは前記のとおりであり、前記認定事実によれば、被控訴人としては、控訴人からAとの交際を強く叱責された後、突然に抱きしめられるような行動に出られたため、また、控訴人と被控訴人との前記のような関係からして、控訴人の要求に従わざるを得ない感情が働いたことも推認され、結局、控訴人の行為に強く抵抗することができなかったものと推認される。 なお、前記認定のとおり、被控訴人は平成八年八月二六日、本件メモを作成して控訴人の下足箱に入れ、右メモには控訴人に対する謝罪文言が記載されているところ、控訴人は、本件メモの存在によっても本件行為が強姦でないことは明らかである旨主張する。しかしながら、本件メモが作成されるまでの事実経過は前記認定のとおりであり、被控訴人は、控訴人の説明により本件行為が強姦に当たらないと信じたAから強く非難されていたのであって、そのような状況の下において、被控訴人が自らを責め、自己が謝りさえすればすべてが終わると考えて本件メモを作成した旨の同人の供述も理解できないものではない。したがって、本件メモが存在することから、直ちに本件行為が合意に基づくものであると認めることはできない。また、被控訴人が平成九年に同僚であるFに差し出した年賀状(乙七の1、2)には、「スターレットにも感謝、感謝」と記載されているところ、控訴人は、本件行為が強姦であっ のであると認めることはできない。また、被控訴人が平成九年に同僚であるFに差し出した年賀状(乙七の1、2)には、「スターレットにも感謝、感謝」と記載されているところ、控訴人は、本件行為が強姦であったとすれば、そのような行為のあった車に「感謝」することはあり得ない旨主張する。しかしながら、被控訴人の供述によれば、被控訴人は本件行為があった右の車を買い替えたいとは思ったものの、金銭的な余裕がなく、同じ車を所有している今野との共通の話題を記載したまでであるというのであって、右年賀状の記載をもって本件行為が合意に基づくことの証左とすることはできない。 6 以上によれば、控訴人は被控訴人の意に反する性的行為ないし性的関係を強要したものというべきであり、右行為は被控訴人の性的自由を侵害するものとして不法行為に当たる。 三賠償額について前記認定事実によれば、本件行為は計画的なものでなく、控訴人が夜遅く被控訴人と狭い車内で話すうち衝動的に行われた多分に偶発的なものということができるが、控訴人は、被控訴人が控訴人を信頼し、また、その指示・要求に従わざるを得ない立場にあるのを不当に利用して本件行為に及んだものというべきであって、その行為は非難されなければならない。しかし、被控訴人の行動も無警戒にすぎ、本件現場においても、被控訴人が控訴人の要求を断固として拒否する態度に出たならば本件好意にまで至らなかったものということができる。 右のような本件行為に至る経緯、本件行為の経過と態様及びその他本件に現れた諸般の事情を総合考慮すると、被控訴人に対する慰謝料は二〇〇万円をもって相当とする。また、本件事案の内容、訴訟の経緯等にかんがみれば、弁護士費用は三〇万円をもって相当とする。 以上によれば、控訴人は被控訴人に対し、金二三〇万円及び内金二〇〇万円については 円をもって相当とする。また、本件事案の内容、訴訟の経緯等にかんがみれば、弁護士費用は三〇万円をもって相当とする。 以上によれば、控訴人は被控訴人に対し、金二三〇万円及び内金二〇〇万円については不法行為の日である平成八年八月一六日から、内金三〇万円については不法行為後の日である平成一〇年二月一四日から、それぞれ支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払義務がある。したがって、被控訴人の請求は右の限度で容認すべく、その余は理由がないので棄却すべきである。 四よって、本件控訴に基づき、右と一部結論を異にする原判決を本判決の主文第一項のとおり変更し、本件附帯控訴は理由がないので棄却することとし、主文のとおり判決する。 仙台高等裁判所第二民事部裁判長裁判官大内俊身裁判官吉田徹裁判官比左和枝
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