平成23(ワ)1429 地位確認等請求事件(通称 日本航空整理解雇)

裁判年月日・裁判所
平成24年3月30日 東京地方裁判所
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判決文本文81,938 文字)

- 1 -平成24年3月30日判決言渡平成23年(ワ)第1429号地位確認等請求事件 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 原告らが,被告に対し,労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。 2 被告は,別紙「原告一覧表」記載の原告番号1から62,65から67,70から72の原告らに対し,平成23年1月以降,毎月25日限り,同表の各原告に対応する「請求賃金額」欄記載の金員及びこれに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員をそれぞれ支払え。 3 被告は,原告P1(原告番号63)に対し,平成23年2月以降,毎月25日限り,別紙「原告一覧表」の同原告に対応する「請求賃金額」欄記載の金員及びこれに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 4 被告は,原告P2(原告番号64)に対し,平成23年6月以降,毎月25日限り,別紙「原告一覧表」の同原告に対応する「請求賃金額」欄記載の金員及びこれに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 5 被告は,原告P3(原告番号68)に対し,平成23年3月以降,毎月25日限り,別紙「原告一覧表」の同原告に対応する「請求賃金額」欄記載の金員及びこれに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員- 2 -を支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は,被告の会社更生手続中にその更生管財人から平成22年12月31日付けで整理解雇する旨の解雇予告通知を受けた(以下,「本件解雇予告通知」といい,当該通知に基づく解雇を「本件解雇」という。)客室乗務員である原告らが,更 中にその更生管財人から平成22年12月31日付けで整理解雇する旨の解雇予告通知を受けた(以下,「本件解雇予告通知」といい,当該通知に基づく解雇を「本件解雇」という。)客室乗務員である原告らが,更生管財人を被告として(会社更生手続終結後に被告が受継した。),本件解雇の無効を主張して,労働契約に基づき,① 労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに,② 本件解雇時点で被告に勤務していた原告ら(原告番号1から62,65から67,70から72の原告ら)については,平成23年1月分以降の賃金とこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払,③ 本件解雇時点で病気を理由に欠勤し,休職していたものの,後に,主治医から就業可能との診断を受けた原告ら(原告番号63,64,68の原告ら。なお,原告P4〔原告番号69〕については,①の地位確認のみを請求している。)については,それぞれ主治医から就業可能との診断がされた日の属する月の翌月以降の賃金とこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求める事案である(被告は,本件解雇の有効性を主張するとともに,原告P4以外の原告らの請求賃金額に対し,別紙「賃金額認否」記載のとおり認否している。)。 なお,原告らは,整理解雇である本件解雇において,人員削減の必要性が欠如している点が最も問題である旨を主張している。 2 前提事実(当事者間に争いがないか,括弧内掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定可能な事実。なお,争いがない事実であっても,参照等の便宜のため,基本書証を摘示することもある。また,枝番号の付された書証を全枝番号ごと引用する場合には,書証の枝番号の表記を省略することとする。 認定可能な事実。なお,争いがない事実であっても,参照等の便宜のため,基本書証を摘示することもある。また,枝番号の付された書証を全枝番号ごと引用する場合には,書証の枝番号の表記を省略することとする。)- 3 -(1) 被告被告は,その子会社,関連会社とともに,航空運送事業及びこれに関連する事業を営む企業グループ(以下「P5グループ」という。)を形成し,国際旅客事業,国内旅客事業等の航空運送事業を展開する株式会社である。 (2) 原告ら原告らは,いずれも被告の前身である株式会社P6(以下「P6」という。)との間で期間の定めのない労働契約を締結し(ただし,原告P7〔原告番号62〕は,当初,1年契約の契約社員としてP6に入社し,原告番号66から69の原告らも,1年契約の契約社員としてP6と合併前の株式会社P8に入社したが,いずれも2回の契約更新を経て,P6との間で期間の定めのない労働契約を締結するに至った。),客室乗務員として旅客航空機に乗務し,乗客の安全を守るための保安業務及び機内サービス業務等に従事していた者であり,P5グループの客室乗務員をもって組織される労働組合であるP9ユニオン(以下,その前身である「P10組合」を含めて「P9」という。)の組合員である。 原告らの生年月日,入社年月日,職種,所属は別紙「原告一覧表」の「生年月日」欄,「入社年月日」欄,「職種」欄,「所属」欄記載のとおりであり(甲個1ないし72号証の各3及び5),賃金は,定額部分である基準内賃金については,毎月1日から末日までの期間について計算をし,当月25日に支払い,乗務手当等の実績に応じて変動する基準外賃金については,前月1日から末日までの期間について計算し,翌月25日に支払うものとされていた(甲4ないし6)。 (3) 被告の会社更 月25日に支払い,乗務手当等の実績に応じて変動する基準外賃金については,前月1日から末日までの期間について計算し,翌月25日に支払うものとされていた(甲4ないし6)。 (3) 被告の会社更生手続開始決定P6は,平成22年1月19日,株式会社P11(以下「P11」という。),株式会社P12(以下,「P12」といい,同社とP6とP11とを合わせて「更生3社」という。)とともに,東京地方裁判所に対して会社更生手続- 4 -開始申立てを行い,同日,会社更生手続開始決定がされ(以下,この開始決定に基づく会社更生手続を「本件会社更生手続」という。),P13弁護士(以下「P13元管財人」という。)及び株式会社P14(以下「P14」という。)が更生管財人に選任された(甲2。以下,特に区別の必要がない場合には,単に「管財人」といい,また,当時の被告担当者を含めて「被告側」ということがある。)。なお,本件訴訟提起時(平成23年1月19日当時)の被告はP13元管財人であったが,平成23年3月28日,本件会社更生手続につき,更生手続終結の決定がされたことから,被告が本件訴訟を受継するに至った。 他方,P14は,平成22年1月19日,株式会社企業再生支援機構法(以下「機構法」という)25条4項に基づく支援決定を行い(甲7,乙14),被告の事業再生については,P14の支援と本件会社更生手続とが併用されることとなった。 (4) 本件会社更生手続開始当初の事業再生計画本件会社更生手続開始決定当時,被告においては,事業構造の硬直化(大型機の大量保有,不採算路線の維持等)と組織体制の硬直化(人員余剰,硬直的組織体制,意思決定の遅滞等)が指摘されていたため,当初の暫定的な事業再生計画(以下「本件旧事業再生計画」という。)では,① 機材の小型化, 不採算路線の維持等)と組織体制の硬直化(人員余剰,硬直的組織体制,意思決定の遅滞等)が指摘されていたため,当初の暫定的な事業再生計画(以下「本件旧事業再生計画」という。)では,① 機材の小型化,効率性向上,② 不採算路線の大胆撤退,アライアンス(企業間提携)効果の追求,③ 人員・組織体制の効率化,柔軟性の抜本的向上,④ 現場基点の意思決定の早い組織体制の確立等が掲げられた。本件旧事業再生計画に基づく人員数計画においては,P5グループ社員5万1862名(平成20年度〔平成20年4月1日から平成21年3月31日までの企業会計年度を指す。以下,「年度」という場合には,当年4月1日から翌年3月31日までの企業会計年度を指すものとする。〕末・平成21年度初頭現在の人数)を今後3か年で3万6201名に削減することを内容とする旨が公表された- 5 -(甲8,14,乙40)。 また,平成22年1月21日,被告側は,被告の従業員らが加入している,P9及びP15労働組合(以下「P15」という。)を含む8つの労働組合(以下「8労組」という。)に対し,本件会社更生手続及びその前提となる本件旧事業再生計画の内容に関する説明を行ったが,人員削減の方法としては,自然減,早期退職,一時帰休等のワークシェア的なものも検討対象に含めて行っていくと説明した(甲9)。 (5) 特別早期退職措置の実施被告側は,平成22年3月,P6の従業員を対象とする特別早期退職の募集を開始した(以下「本件特別早期退職措置」という。)。客室乗務員については,① 部長級を対象とした特別早期退職募集が,同年3月5日から同月24日までの募集期間で,② 平成22年3月31日時点で35歳以上の次長・課長級及び一般職を対象とした特別早期退職募集が,同月11日から同年4月9日までの募集期 早期退職募集が,同年3月5日から同月24日までの募集期間で,② 平成22年3月31日時点で35歳以上の次長・課長級及び一般職を対象とした特別早期退職募集が,同月11日から同年4月9日までの募集期間でそれぞれ実施された。退職条件としては,退職金規程上(乙11),会社都合と同率の支給係数による基本退職金(退職金基礎額職級号俸表に定める基礎額に勤続年数に応じた最大45.3500の係数を乗じた退職金額)の支給に加え,定年退職に準ずる事由による退職として扱うものとすることによる特別退職金(職級により181万4000円ないし317万4500円)及び一時金(1か月分の賃金相当額を80万円とし,原則としてその6か月分)の追加支給,改定前の制度による企業年金(被告においては,制度の改定により,現役の従業員については受給額の約53%減額が予定されていたところ,応募者については現OBと同様,約30%の減額にとどめることとされた。)の存続,年次有給休暇の買取り,外部機関による再就職支援サービスの提供等を提示した(甲10,11,乙18)。 その結果,P6全体では約3610名(甲11),うち客室乗務員につい- 6 -ては1367名(甲14,乙40)が本件特別早期退職措置に応募した。 (6) 新たな事業再生計画の策定管財人は,新たな事業再生計画作成の前提として,平成20年度比で国際線の事業規模を約4割,国内線の事業規模を約3割削減する内容の平成22年度下期(平成22年10月から平成23年3月まで)の路線便数計画を策定し,これを平成22年4月28日に公表した(乙4,15)。 そして,管財人は,この路線便数計画に応じた最適な生産体制を築くためとして,本件旧事業再生計画を見直し,人員数計画についても,当初予定の3か年計画から平成22年度末まで前倒し た(乙4,15)。 そして,管財人は,この路線便数計画に応じた最適な生産体制を築くためとして,本件旧事業再生計画を見直し,人員数計画についても,当初予定の3か年計画から平成22年度末まで前倒しするとともに,削減後の人員数を当初予定の約3万6200名から約3万3500名に深掘りする新たな事業再生計画を同年6月4日に決定した(甲12,13,乙1)。この新たな事業再生計画は,固定費のブロック単位での削減と,収益性の高い基幹路線ネットワークをバランスよく両立させるため,一旦は現状の3分の2程度に事業規模を限定し,経営資源の選択と集中とを実施することを指標として,①路線便数計画のうち,国内線については,全国ユニバーサル輸送サービスの提供と固定費削減とのバランスを両立した路便網を構築するため,30路線の運休及び4地点からの撤退,② 路線便数計画のうち,国際線については,ビジネス需要に軸足を置いた路線のスリム化を促進し,需要変動による下振れリスク(想定した数値・指標等がその想定より下がる危険)に対する体制を強化し,かつ,収益の源泉である常顧客の利便性を損なわない効率的な路便網を構築するため,15路線の運休,5路線の開設及び7地点からの撤退,③ コスト削減策については,機材のダウンサイジング,機種統一の加速,路線便数計画・供給計画に応じた最適な生産体制の構築(前記のとおりのP5グループ人員数計画),新しい人事賃金制度の策定等を内容とするものであった。 (7) 労働組合に対する説明会の実施- 7 -被告側は,平成22年6月7日,前記(6)の新たな事業再生計画について,8労組に対する説明会を開催した。 その際,被告側からは,P5グループ人員数計画として,社員約4万8700名(平成21年度末現在の人数)を平成22年度末までに約3万270 な事業再生計画について,8労組に対する説明会を開催した。 その際,被告側からは,P5グループ人員数計画として,社員約4万8700名(平成21年度末現在の人数)を平成22年度末までに約3万2700名にするという,本件旧事業再生計画で示した人員数計画を更に深掘りし,前倒しした人員数計画を予定している旨の説明が行われた(甲13)。また,これと同時に,必要人員体制と必要削減人数の試算が示された。その内容は,P5グループ全体における客室乗務員の職種(以下「客室乗務職」という。)に関し,休職者を除いた人数として,平成21年度末の人員数9121名を平成22年度末までに6403名に削減し,平成21年度末との対比で客室乗務職の削減必要数2718名のうち,日本地区における今後の特別早期退職の実施人数を573名(頭数)とするというものであった(甲13)。 (8) 更生計画案の提出管財人は,平成22年8月31日,東京地方裁判所に更生計画案を提出した(甲14,乙40。以下「本件更生計画案」という。)。 本件更生計画案によれば,P5グループの負債の状況は,平成22年3月31日時点での連結ベースで総額約9592億円の債務超過に陥っており,財務健全化計画としては,① 既存株主に対しては,全株式を無償取得し償却するいわゆる100%減資を実施すること,② 更生3社に対する重複債権控除後の一般更生債権者に対しては,87.5%(約5215億円)の債務免除(弁済率12.5%)を求めること,③ P14から3500億円の出資を受けること,④ 従業員及び元従業員に対しては,年金給付の減額や予定利率の引下げ等により会社負担を30%圧縮すること,⑤ さらに,リファイナンス(借換え)による更生債権の一括弁済へ向けての努力を継続すること等が掲げられた。 また,事業 は,年金給付の減額や予定利率の引下げ等により会社負担を30%圧縮すること,⑤ さらに,リファイナンス(借換え)による更生債権の一括弁済へ向けての努力を継続すること等が掲げられた。 また,事業計画としては,① 航空機機種数の削減,② 機材のダウンサ- 8 -イジング,③ 路線ネットワークの最適化,④ 運航子会社構造の最適化,⑤ 航空運送事業への経営資源の集中,⑥ 機動性を高める組織,経営管理体制の構築,⑦ アライアンスの積極的活用,⑧ 自営空港体制の大幅縮小,⑨ 人事賃金,福利厚生制度の改定,⑩ ITシステムの刷新,⑪ 各種コストの圧縮が掲げられた。 さらに,人員削減計画においては,本件特別早期退職等の取組と退職確定人数とが示されるとともに,今後の予定として,早期退職,子会社売却等によってP5グループの人員削減の一層の推進を図り,平成21年度末の社員数4万8714名から平成22年度末(平成23年3月31日)には約3万2600名とする予定である旨が掲げられた。 他方,被告においては,平成22年8月31日,計画初年度である平成22年度における営業利益の目標は,P5グループ全体で641億円と設定された(甲15)。 なお,本件更生計画案の基礎となった新たな事業再生計画については,これを網羅的にまとめた一冊の「事業再生計画書」が存在するわけではなく,平成22年4月28日付け「2010年度路線便数計画」(乙4)及び同年6月7日に作成された「説明会資料」(甲13)がこの新たな事業再生計画の主要な内容を示すものであり,これに同年8月20日付け「2010年度下期路線便数計画の一部変更」(以下「平成22年度確定下期路線計画」という。甲305,乙8)を加味した同月31日付け「P5グループ再生の方向性について」(甲15)が,本件更生計画案 「2010年度下期路線便数計画の一部変更」(以下「平成22年度確定下期路線計画」という。甲305,乙8)を加味した同月31日付け「P5グループ再生の方向性について」(甲15)が,本件更生計画案の基礎となった最終的な事業再生計画である(以下,このような意味・内容での事業再生計画を「本件新事業再生計画」という。)。 そして,P14は,同年8月31日,機構法31条1項に基づき,本件更生計画案が可決され,本件更生計画案の認可決定がされることを条件として3500億円の出資決定を行った(甲16)。 - 9 -(9) 被告側が策定した客室乗務職についての削減目標及びP9への説明ア被告側は,客室乗務職の人員計画を策定するに当たって,「稼働ベース」という考え方を用いていた。これは,被告の事業運営に必要な労働力として,通常勤務をすることができる1人の社員の労働力(これを1稼働とする。)を単位とする「必要稼働数」を算出し,在籍社員全体の実労働力についても,一定の換算基準に従い,1稼働を単位とする労働力に換算して「有効配置稼働数」を算出するというものである(以下,このような考え方を単に「稼働ベース」といい,このような考え方に基づき算定された人員数の枠組みについても同様に表現するものとする。)。 イ被告側は,本件更生計画案の基礎となる事業再生計画を策定した平成22年6月4日の段階では,平成23年3月31日の有効配置稼働数(4712名分)と必要稼働数(4195名分)との差である517名分を稼働ベースによる客室乗務職の削減目標としていた。 ウ被告側は,8労組に対し,平成22年6月7日,説明会の場において,客室乗務員の削減目標につき,「573名」と説明した。 エ被告側は,P9に対し,平成22年9月2日,事務折衝の場においても,客室 被告側は,8労組に対し,平成22年6月7日,説明会の場において,客室乗務員の削減目標につき,「573名」と説明した。 エ被告側は,P9に対し,平成22年9月2日,事務折衝の場においても,客室乗務職の削減目標につき,頭数で約570名と説明した。 オ被告側は,平成22年度確定下期路線計画を加味して上記の事業再生計画を見直した平成22年9月28日の段階では,平成23年3月31日の有効配置稼働数につき4726名分とし,必要稼働数につき4120名分とする変更点が生じたことから,両者の差である606名分を稼働ベースによる客室乗務職の新たな削減目標とするに至った。 カこれを受けて,被告側は,P9に対し,平成22年9月28日,事務折衝の場において,客室乗務職の削減目標につき,稼働ベースで606名分と説明した。 (以上,全体につき,甲13,115,239,乙5の11,6,36)- 10 -(10) 第1次,第2次希望退職措置の実施被告側は,平成22年8月31日,全職種を対象とした希望退職措置を実施することを公表した(甲17。以下「本件希望退職措置」という。)。客室乗務職については,同年11月30日時点において,管理職につき55歳以上,一般職につき45歳以上(キャビンスーパーバイザー及び国際線先任業務資格保有者については52歳以上)が対象者とされた。募集期間は2期間に分けることとし,第1次募集は同年9月3日から同月24日まで,第2次募集は同年10月1日から同月22日までとされた。退職条件としては,退職金規程上(乙11),会社都合と同率の支給係数による基本退職金(退職金基礎額職級号俸表に定める基礎額に勤続年数に応じた最大45.3500の係数を乗じた退職金額)の支給に加え,定年退職に準ずる事由による退職として扱うことによる特 同率の支給係数による基本退職金(退職金基礎額職級号俸表に定める基礎額に勤続年数に応じた最大45.3500の係数を乗じた退職金額)の支給に加え,定年退職に準ずる事由による退職として扱うことによる特別退職金(職級により181万4000円ないし317万4500円)及び個別に提示される一時金の追加支給,本件特別早期退職措置同様の改定前の制度による企業年金の存続,年次有給休暇の買取り,外部機関による再就職支援サービスの提供等が提示された(甲17,108,乙7,17)。 その結果,次のとおり,平成22年10月22日までに,P6単体における合計頭数1545名(休職者を除く合計頭数1458名)が本件希望退職措置に応募し,整備職及びその他地上職については,削減目標が達成された(甲21,355)。 削減目標数(稼働ベース) 希望退職者数(稼働ベース)運航乗務職 371名(371名分) 257名(242名分)客室乗務職 662名(606名分) 649名(46 6 .5名分)整備職 482名(482名分) 524名(518名分)その他地上職 100名(100名分) 115名(113名分)(11) 「S10」及び「S19」スケジュールの業務指示と面談の実施- 11 -被告側は,平成22年9月23日に交付した同年10月分の勤務割において,本件希望退職措置の対象となる原告らを含む客室乗務職(同年11月30日時点で46歳となる者の一部と47歳以上の者全員)に対し,同年10月1日から同月10日までの期間の休日を除く労働日につき,すべて「S10」(10時から16時までのスタンバイ)という内容の勤務を割り当てる指示(スケジュールアサイン)を行った。これは,原則として乗務には起用しないが,スタンバイとされる 除く労働日につき,すべて「S10」(10時から16時までのスタンバイ)という内容の勤務を割り当てる指示(スケジュールアサイン)を行った。これは,原則として乗務には起用しないが,スタンバイとされる時間帯において連絡可能であれば,必ずしも自宅待機の必要はないというものであった(甲19)。 被告側は,第2次希望退職募集開始の同年10月1日から,順次,上記「S10」スケジュールアサインを受けた原告らを含む客室乗務職との間で個別面談を実施したが,対象者のうち本件希望退職措置に応募しなかった原告らを含む客室乗務職に対しては,同月11日以降も「S10」スケジュールアサインを継続した(甲242,243,246)。 その後,本件希望退職措置の対象者のうち,同年11月30日時点で49歳以下の一般職客室乗務職については,整理解雇の対象者となる可能性が低くなったとして,「S10」スケジュールアサインを解除したものの,その他の者については,「S10」スケジュールアサインを継続した(甲247,248)。 また,同月17日からは,「S10」スケジュールアサインをされながら退職の意思表示をしなかった原告らを含む50歳以上の客室乗務職に対し,同じく事実上乗務のない「S19」(19時から22時までのスタンバイ)という内容の勤務を命じるスケジュールアサインを行った(甲250)。 その後,被告側は,同月30日時点で満50歳及び満51歳の一般職客室乗務職につき,整理解雇の対象者となる可能性が低くなったことを理由に「S19」スケジュールアサインを解除し,その他の者については,「S19」スケジュールアサインを継続した(甲251,254,255,262)。 - 12 -(12) 整理解雇基準の提示ア被告側は,平成22年9月27日,本件希望退職措置の第1次募 は,「S19」スケジュールアサインを継続した(甲251,254,255,262)。 - 12 -(12) 整理解雇基準の提示ア被告側は,平成22年9月27日,本件希望退職措置の第1次募集期間が終了したものの,応募者数が目標を大きく下回っていたため,P9やP15に対し,要旨,客室乗務職について次のような整理解雇の人選基準案(以下「本件人選基準案」という。甲20)を提示し,翌28日,本件人選基準案について説明を行った。 (ア) 平成22年8月31日時点の休職者(産前,育児,介護,組合専従による休職者を除く。以下「休職者基準」という。)(イ) 平成22年4月1日から同年8月31日までの5か月間の病気欠勤日数が41日以上(キャリアサービスアテンダント〔勤務日を月間10日とし,毎月連続する就労義務のない日を定型的に確保することのできる部分就労客室乗務職。以下「CSA」という。甲51〕においては21日以上),休職期間(産前,育児,介護,組合専従による休職者を除く。以下同じ。)が2か月以上,病気欠勤日数及び休職期間の合計が61日以上である者(ウ) 平成20年4月1日から平成22年8月31日までの2年5か月間の病気欠勤日数が合計81日以上(CSAにおいては41日以上),休職期間が4か月以上,病気欠勤日数及び休職期間の合計が121日以上である者(ただし,平成22年4月1日から同年8月31日までの5か月間において,病気欠勤日数及び休職期間がいずれも0日であった者は除く。)(エ) 病気欠勤日数が平成20年度に13日以上,平成21年度に13日以上,かつ,平成22年4月1日から同年8月31日までの5か月間に6日以上である者(以下,(イ)ないし(エ)を合わせて「病欠日数・休職日数基準」という。)(オ) 人事考課の結果が, 度に13日以上,かつ,平成22年4月1日から同年8月31日までの5か月間に6日以上である者(以下,(イ)ないし(エ)を合わせて「病欠日数・休職日数基準」という。)(オ) 人事考課の結果が,平成19年度から平成21年度までの3年間に- 13 -おいて毎年2以下であった者(以下「人事考課基準」という。)(カ) 上記(ア)から(オ)までの各基準を順に適用し,以上によっても,なお目標人数に達しない場合は,職種・職位・保有資格ごとに,年齢の高い者から順に,目標人数に達するまでを対象とする(育児,介護,組合専従による休職者を含む。以下「年齢基準」という。)イその後,被告は,P15から,「現在何の問題もなく乗務復帰している者は,将来の貢献度が低いとは言えないのではないか。」との指摘を受けたことを踏まえ,平成22年11月15日付けで,病欠日数・休職日数基準に該当したとしても,同年9月27日現在で乗務復帰しており,平成18年10月1日から平成20年3月31日までの間に連続して1か月を超える病気欠勤期間及び休職期間がなかった客室乗務職については対象外とする旨の変更を加えた整理解雇の人選基準案を提示した(以下,本件人選基準案を上記のとおり変更したものを「本件人選基準」という。甲29,乙25)。 (13) 最終希望退職措置の実施被告側は,平成22年10月26日,最終希望退職措置の実施を発表した(甲22。以下「本件最終希望退職措置」という。)。その概要は,客室乗務職については,対象者を管理職55歳以上(同年11月30日時点の年齢。 以下同じ。),一般職42歳以上(キャビンスーパーバイザー及び国際線先任業務資格保有者については52歳以上),募集期間を同年10月26日から同年11月9日まで,削減目標を前記の同年9月28日に提示した 下同じ。),一般職42歳以上(キャビンスーパーバイザー及び国際線先任業務資格保有者については52歳以上),募集期間を同年10月26日から同年11月9日まで,削減目標を前記の同年9月28日に提示した削減目標である606名(稼働ベース)から本件希望退職措置に応じた応募者数466名(稼働ベース)を差し引いた140名(稼働ベース)とし,退職条件を本件希望退職措置と同じとするものであった(甲22,109,247,249,乙11,17)。 その結果,頭数で83名(休職者を除く頭数68名)の客室乗務職がこれ- 14 -に応募し,結局,同年11月9日までに本件希望退職措置の結果と合わせて頭数で732名(稼働ベース換算で517.5名分)の客室乗務職が希望退職措置に応募した(甲21,355)。 (14) 整理解雇方針の発表と追加希望退職措置の実施被告側は,平成22年11月15日,本件最終希望退職措置に関して,運航乗務職につき目標人数約130名に対して約20名,客室乗務職につき目標人数約140名に対し約50名の応募があったが,本件更生計画案の実現のためには,運航乗務職につき更に約110名,客室乗務職につき更に約90名の人員調整が必要であり,今後も時間の許す限り希望退職の応募を受け付けるが,整理解雇によって人員規模の適正化を図らざるを得ないとの決断に至ったこと,これまで,人員規模の適正化を図るための施策に係る人員数に関しては,「休職者等を除いた人数」を基準としてきたが,今般,整理解雇を実施するに当たっては,「休職者等約50名」についても一定の基準の下,整理解雇の対象とする方針であることを発表した(甲28)。 また,管財人は,P9に対し,同日,整理解雇によって人員規模の適正化を図らざるを得ないとの結論に達した旨を通知した(甲29)。 さ 下,整理解雇の対象とする方針であることを発表した(甲28)。 また,管財人は,P9に対し,同日,整理解雇によって人員規模の適正化を図らざるを得ないとの結論に達した旨を通知した(甲29)。 さらに,被告側は,同月19日,本件人選基準に基づき,募集期限を同月30日までとする希望退職の応募を引き続き行うことを明らかにし(甲30。 以下「本件追加希望退職措置」という。),同年12月1日には,希望退職の募集期限を同月9日まで延長した(甲31)。本件追加希望退職措置に客室乗務職31名が応募したことにより,希望退職応募者は,同月9日までで最終的に頭数で763名(稼働ベース換算で534名分)となった(甲257)。 (15) 更生計画の認可管財人は,平成22年11月22日,同月19日を締切りとする債権者投票において,本件更生計画案について96%以上の同意を得て可決されたと- 15 -発表し,東京地方裁判所は,同月30日,本件更生計画案を認可する旨の決定をした(以下,認可された本件更生計画案を「本件更生計画」という。甲32,34)。 上記認可決定を受け,同年12月1日,P6を存続会社とし,P11,P12,株式会社P16及び株式会社P17を消滅会社とする吸収合併が実施されてP5グループの組織再編がされると同時に,P6は,発行済株式を取得・消却していわゆる100%減資を行い,被告の体制が整った(甲14,乙40,被告の資格証明書)。また,被告は,P14から3500億円の出資を受けて1億7500万株の株式発行を行い,これをP14に割り当てた(甲16)。 (16) 本件解雇の通知管財人は,原告らに対し,平成22年12月9日,本件解雇予告通知をした(甲個1ないし72号証の各1及び5)。その際の整理解雇対象者は,客室乗務職108 )。 (16) 本件解雇の通知管財人は,原告らに対し,平成22年12月9日,本件解雇予告通知をした(甲個1ないし72号証の各1及び5)。その際の整理解雇対象者は,客室乗務職108名(稼働ベースで72名分)であったが,① 扶養家族に障がい者がおり,そのための金銭的負担が将来に亘り大きいと思われる客室乗務職1名につき,被害度の観点から,人員調整目標人数の内数として本件解雇の対象外とし,削減数を1名分減らしたこと,② 本件解雇通知後も,被解雇者を対象として希望退職の募集を行ったところ,23名(稼働ベースで10.5名分)の応募があったため,最終的な希望退職応募人数が786名(稼働ベースで544.5名分)となったことから,整理解雇の対象となる客室乗務職数は84名(稼働ベースで60.5名分)となった(甲257,258,260,乙36)。 そして,本件解雇予告通知に当たって,管財人が解雇理由証明書に記載した解雇理由は,就業規則52条1項4号所定の「企業整備等のため,やむを得ず人員を整理するとき」に該当するというものであり,各原告につき,管財人がP9に提示した「人選基準(案)」に該当するとした事由は,別紙「原- 16 -告一覧表」記載の各原告に対応する「解雇理由証明書上の人選基準の該当事由」欄のとおりである(甲個1ないし72号証の各2及び5)。 (17) 本件解雇に伴う給付本件解雇に際して原告らが被告から受領した退職金,特別退職金,一時金の額は,合計で3600万円台が1名,3000万円台が1名,2700万円台が5名,2600万円台が12名,2500万円台が10名,2400万円台が19名,2300万円台が6名,2200万円台が3名,2100万円台が1名,2000万円台が3名,1400万円台が1名,1200万 名,2600万円台が12名,2500万円台が10名,2400万円台が19名,2300万円台が6名,2200万円台が3名,2100万円台が1名,2000万円台が3名,1400万円台が1名,1200万円台が2名,1100万円台が2名,1000万円台が1名,600万円台が4名,500万円台が1名であり,その平均額は約2280万円である(乙42の1)。原告らは,これらを退職金等としてではなく,無効な本件解雇によって発生する賃金の一部として預かる旨を被告に通知した(甲354)。 また,原告らは,3名のCSAを除き,被告の企業年金基金(第1年金)を脱退した場合に脱退一時金の支払を受けることができるところ,その脱退一時金の額は,1100万円台が1名,1000万円台が2名,900万円台が4名,800万円台が27名,700万円台が23名,500万円台が1名,200万円台が1名,100万円台が2名,80万円台が3名,60万円台が4名,50万円台が1名であり,その平均額は約670万円である(乙42の2)。 (18) 本件解雇後の記者会見における被告代表取締役会長の発言当時の被告代表取締役会長P18(平成22年2月1日就任。以下「P18会長」という。)は,これまで一度も従業員を解雇することなく企業経営をしてきたところ(乙45),本件解雇後の平成23年2月8日,P19における記者会見の場で,「160名を残すことが,経営上不可能かというと,そうではないのは,もう皆さんもおわかりになると思いますし,私もそう思います。しかしながら,一度約束し,裁判所も債権者もみんな大変な犠牲を- 17 -払って,やって,じゃあ,これならよろしいと認めたことを,1年も経たないうちにそれを反故にしてしまうと,今までのP5の経営者はすべて,そういうことを反故 所も債権者もみんな大変な犠牲を- 17 -払って,やって,じゃあ,これならよろしいと認めたことを,1年も経たないうちにそれを反故にしてしまうと,今までのP5の経営者はすべて,そういうことを反故にしてきたと,そのために信用ならないんだということをいわれ続けてきたんだと。だから,わずかかもしれない,そして,しのびないかもしれないけど,それは,そういう前提でもって,裁判所も金融機関も債権者もみんながそれを前提に認めたんだからということでした。で,わたしも確かに,そうかもしれないと,一度正式にそういうのを認めてもらったのに,それをしりから我々のほうはやめてしまうというわけにはいかないので,私は,今,裁判になっておりますが,きっと将来,そういう方々に対しても,なんらかの形でもってお返しできるようなことが出来やしないかなあと思っています。」と発言した(甲60。以下「P18発言」という。)。 (19) 本件会社更生手続の終結及びその前後の事情アリファイナンスに係る基本合意の締結管財人は,株式会社P20銀行(以下「P20」という。),株式会社P21銀行(以下「P21」という。),株式会社P22銀行(以下「P22」という。),株式会社P23銀行(以下「P23」という。)及び株式会社P24銀行(以下「P24」という。)といった主な取引銀行(以下「主要行」という。)との間で,平成22年11月30日,更生債権の早期弁済を目的としたリファイナンス契約を締結するため,基本合意書を作成して法的拘束力のない形での基本合意をし(乙38。以下,この合意書を「本件基本合意書」といい,当該合意を「本件基本合意」という。),主要行において,リファイナンスについての基本的な意向,方向性があることを確認し,同年12月1日,P14から3500億円の出資を受けた 「本件基本合意書」といい,当該合意を「本件基本合意」という。),主要行において,リファイナンスについての基本的な意向,方向性があることを確認し,同年12月1日,P14から3500億円の出資を受けた。 本件基本合意においては,「更生計画に記載されている対象事業者における諸施策(人員圧縮等,実施中のコスト削減策)…(中略)…の実現に重大な支障が生じていないこと」がリファイナンスに係る協議の前提として- 18 -定められた。 イリファイナンスの実施と更生債権等の繰上償還被告は,平成23年3月28日,本件基本合意に基づくリファイナンスにより,主要行をはじめとする各取引金融機関及び新規取引金融機関(合計11金融機関)より2549億6000万円の融資を受け,これに自己資金を加えて同日までの間に更生債権等約3951億4557万円を繰上償還し(甲160),同日,会社更生手続の終結決定を得た。 ウ新たな人事賃金制度の策定被告は,これまでの年功序列的に報酬水準が上がる制度から,成果や行動を中心に公正かつ厳格に評価し,これを処遇へ適正に反映する制度への変更を企図するとともに,諸手当を労働法上の最低水準に引き下げる等の見直しをし,また,一定時間の乗務時間保障制度から乗務実績に応じた手当への変更を伴う制度とすることとして新たな人事賃金制度を策定し,平成23年1月1日,これを施行した(以下「新人事賃金制度」という。甲158,乙30)。 エ従業員に対する一時金の支給被告は,平成23年3月から同年12月にかけて,支給日当日時点で被告に在籍している従業員に対し,基礎額(通常は基本給額)に所定の係数を乗じるなどして算出した一時金を支給した。その概要は次のとおりである(甲148,346,347)。 (ア) 生活調整手当(同年3月31日 ている従業員に対し,基礎額(通常は基本給額)に所定の係数を乗じるなどして算出した一時金を支給した。その概要は次のとおりである(甲148,346,347)。 (ア) 生活調整手当(同年3月31日支給) 基礎額×1.15+2万円(イ) 平成23年度夏期賞与(同年7月5日支給) 基礎額×1.0(ウ) 平成23年度年末賞与(同年12月9日支給)基礎額×1.5オ LCC(格安航空会社)の設立への関与被告は,平成23年8月16日,P25,P26株式会社と共同出資してLCCの新会社P27株式会社(以下「P27」という。)を設立する- 19 -ことを発表し,同社の資本金48億円のうち,42%を出資した(議決権割合としては33%分。甲290,299)。 第3 本件の争点 1 第1に,会社更生手続中の本件解雇にいわゆる整理解雇法理を適用することの当否が本件の争点である。 2 第2に,上記が肯定されたとしても,整理解雇である本件解雇が労働契約法16条に該当して無効となるか否かが争点であるが,その場合,整理解雇の有効性判断の考慮要素である,① 人員削減の必要性の有無ないし程度,② 解雇回避措置の有無ないし程度,③ 人選基準の合理性の有無ないし程度,④ 解雇手続の相当性の有無ないし程度が問題となる。 第4 争点についての当事者の主張 1 争点1(本件解雇に整理解雇法理を適用することの当否)について【被告の主張】本件のように,会社更生手続下において,更生裁判所から選任された管財人が,中立公正な立場で各利害関係人の調整を図り,その結果策定された更生計画を実現する中で行った整理解雇の判断は,会社更生手続下にはない通常の会社における使用者対労働者の対峙とは別次元の利害関係人間の利害調整の結果として,当然に適法性が認められる の結果策定された更生計画を実現する中で行った整理解雇の判断は,会社更生手続下にはない通常の会社における使用者対労働者の対峙とは別次元の利害関係人間の利害調整の結果として,当然に適法性が認められると考えるべきである。 また,会社更生手続は,そもそも開始決定時点で破綻した更生会社を観念的に清算する手続であり,その時点で利害関係人に約束していた人員施策を含む事業計画を遂行しなければ,事業の維持更生の余地がないことに鑑みれば,会社清算・破産手続の場合と同様に,整理解雇法理を機械的に適用すべき場面ではないというべきである。 したがって,解雇権濫用法理とその具体的基準を集約したいわゆる整理解雇法理については,本件解雇に機械的に適用すること自体が,複数の利害関係人に大きな犠牲と負担とを強いながら公的資金を投入し,再建に努めてい- 20 -るP5グループの再建手続にはなじまないというべきである。 【原告らの主張】本件解雇は,本件会社更生手続下において行われたものであるところ,一般に,会社更生手続下においても,労使関係は,使用者を管財人として維持され,更生計画が直接的に労働契約関係を変更するわけではないから,更生会社が整理解雇を行う場合についても,一般の使用者に対する整理解雇法理が適用されるというべきである。この点,会社更生法改正が審議された平成14年の国会審議においても,更生手続下の整理解雇についても整理解雇法理が適用されるべきものであって,その不適用又は適用緩和を容認するものではない旨が確認されているところである。 2 争点2(本件解雇の有効性)について整理解雇の有効性判断の考慮要素に関する当事者双方の主張は次のとおりである。 【被告の主張】(1) 人員削減の必要性に関する主張ア人員削減の必要性判断に当たって 性)について整理解雇の有効性判断の考慮要素に関する当事者双方の主張は次のとおりである。 【被告の主張】(1) 人員削減の必要性に関する主張ア人員削減の必要性判断に当たっての考え方管財人による解雇の効力,特に解雇の必要性を受訴裁判所が検証するに当たっては,会社更生手続の中で事前検証が十分にされているのであるから,会社更生計画の策定後から解雇までの期間における事情の変更等により,事業内容・組織に変化が生じ,会社更生計画の策定時に存在した解雇の必要性が解雇の意思表示までの間に消滅したかどうかの判断が中心とされるべきである。 とりわけ専門性の高い職種に属する従業員の場合には,会社更生計画案策定後解雇時点までの間において,従業員の労働を必要とする事業部門が復活又は維持され,雇用の存続が不可欠と判断されるような著しい事情の変更が発生したか否かについてのみを解雇の必要性判断の対象としてすべ- 21 -きであり,解雇時までに単に超過収益が発生したことを理由として会社更生計画の基礎となった事業計画の変更なしに人員削減計画を見直すことは,管財人の善管注意義務に反するものである。 イ本件更生計画達成のための人員削減の必要性被告は,本件解雇当時,本件会社更生手続下にあったところ,テロや戦争,震災,疾病,世界的な金融危機など,世界の経済情勢を急激に悪化させる要因となる,いわゆるイベントリスクの影響を受けやすい上,固定費の割合が高い航空事業の特徴に照らし,赤字路線からの撤退,機材のダウンサイジングとともに,縮小した事業規模に見合った人員削減を行う必要があった。 そして,本件再生計画の基礎となった本件新事業計画における削減目標人数の設定は,本件更生計画に基づく事業規模の縮小による必要人員の減少に基づき,事業規模縮 見合った人員削減を行う必要があった。 そして,本件再生計画の基礎となった本件新事業計画における削減目標人数の設定は,本件更生計画に基づく事業規模の縮小による必要人員の減少に基づき,事業規模縮小後の必要人員を算出したものである。 被告は,運航乗務職や客室乗務職等の職種別人員配置計画を策定するに当たって,稼働ベースの考え方を採用しているが,その理由は,被告では,客室乗務職全体のうち通常勤務を行っていない者が4分の1程度を占める状況にあり,在籍乗務員の頭数によって人員計画を立てても,運航維持の可否判断を行うことができないからである。 被告は,客室乗務職について,稼働ベースの考え方に基づき,平成22年8月31日時点での在籍者の稼働状況を前提に平成23年3月31日に想定される在籍者数を算出した結果,有効配置稼働数は4726名分となり,必要稼働数は4120名分となったため,両者の差である606名分を最終的な削減目標としたものである。 その上,本件解雇に当たっては,可能な限りの希望退職措置をとったにもかかわらず,運航乗務職及び客室乗務職につき削減目標を達成することができなかったのであるから,本件更生計画における人員削減策を達成す- 22 -るためには,整理解雇の必要性があったといわざるを得ない。 ウ本件更生計画案における事業計画達成のための人員削減の必要性一般に,更生計画案の基礎となる事業計画の実現可能性は,収益弁済を旨とする会社更生計画において債権者が重大な関心を持つものである。本件更生計画においても,これまで被告再建のため策定されてきた種々の計画が未達成又は失策に終わることが多かった経緯もあり,主要行ら債権者は,本件更生計画案中,特に人員削減策の達成状況につき強い関心を示していた。また,管財人は,本件更生計画案に対する債 てきた種々の計画が未達成又は失策に終わることが多かった経緯もあり,主要行ら債権者は,本件更生計画案中,特に人員削減策の達成状況につき強い関心を示していた。また,管財人は,本件更生計画案に対する債権者らの同意を得るに当たり,その基礎となる本件新事業再生計画の実現の可否について,主要行を中心とする厳しい審査を受けている状況であった。このような経過に照らし,管財人は,本件更生計画案の基礎となる本件新事業再生計画に対する金融機関の信頼を得て,本件更生計画案についての同意を得るため,本件新事業再生計画の中で提示した各種事業施策の実現を図る必要があった。さらに,本件会社更生計画案は,更生裁判所の関与により定められたものであるところ,公的資金の出資も伴うため,本件更生計画案に従った施策を忠実に実施する必要があった。しかも,本件会社更生手続は,いわゆる事前調整型会社更生手続として,スポンサーや主要債権者らとの間で,予め必要なリストラ策を実施することを前提として再建の方向性についての協議を重ね,事業毀損を最小限に留めつつ,その申立てに至ったものである。 したがって,本件会社更生手続開始に至った被告の再建のためには,本件更生計画案及びその基礎となるものとして利害関係人に開示された本件新事業再生計画の遂行が求められるのであり,この点からしても,整理解雇の必要性があったというべきである。 さらに,P14の支援は支援決定から3年と定められており(機構法33条),P14は支援対象事業者に対する出資金を3年のうちに回収し- 23 -なければならないことになるから,被告は,遅くとも,P14による支援の回収期限である平成25年1月までに株式を再上場することによって返済資金を得ようと考えていたところ,そのための手順として,平成23年3月中には主要行との間で ら,被告は,遅くとも,P14による支援の回収期限である平成25年1月までに株式を再上場することによって返済資金を得ようと考えていたところ,そのための手順として,平成23年3月中には主要行との間でリファイナンス契約を締結し,会社更生手続の終結から1年間の経営実績を作ることを目指していた。 そして,その前提として,主要行側からの要請に基づき,リファイナンスの協議のための本件基本合意書が作成されることとなった。本件基本合意書の作成の要請は,主要行が被告との間でリファイナンスに関する協議を開始するに当たり,本件更生計画記載の人員削減施策に重大な支障が生じていないことを協議の前提とする考えであったことを示すものである。 このように,人員削減施策は,リファイナンスのための協議の前提という位置付けであったから,これを完遂して初めて,リファイナンスにおける利率や担保,返済期限や各種コベナンツ(融資に当たって契約内容に記載する一定の特約条項等)などの諸条件の協議を行うことができるようになるものであり,これらの諸条件については,協議に相当の時間を要することが見込まれたことや,協議結果についても主要行内の稟議決裁手続の期間が必要となることを考慮すれば,遅くとも平成22年12月31日までに本件更生計画及びその基礎となる本件新事業再生計画に基づく人員削減施策を完遂している必要があった。 したがって,被告の再建のためには,本件更生計画案及びその基礎となる本件新事業再生計画を実行する必要があり,リファイナンス契約の締結予定時期との関係もあり,遅くとも同年12月の時点において原告らの整理解雇(本件解雇)の必要性があったというべきである。 (2) 解雇回避措置の相当性に関する主張ア解雇回避措置の相当性判断に当たっての考え方整理解雇に当たって採用すべき解 おいて原告らの整理解雇(本件解雇)の必要性があったというべきである。 (2) 解雇回避措置の相当性に関する主張ア解雇回避措置の相当性判断に当たっての考え方整理解雇に当たって採用すべき解雇回避措置の内容,程度には,使用者- 24 -の経営政策上の判断という側面があり,企業経営上の最終的な危険を負担するのが使用者であることからすると,使用者には,個別事案に応じた広い裁量が認められるべきであり,企業のとった経営上の努力が著しく不合理,不相当なものでない限り,解雇回避措置を尽くしたものと評価すべきである。 また,本件解雇は,管財人が本件更生計画の基礎となる本件新事業再生計画に基づいて実施したものであって,高度の必要性が存在するということができるから,解雇回避努力については,その有無,程度を問題にする必要はない,そうでないとしても,軽度の努力があれば足りると解すべきである。 そして,事業廃止の危機を回避して会社更生による事業の維持更生を図った本件にあっては,事業構造を抜本的に転換し,縮小した事業規模に応じた適正な人員体制を構築することが不可欠であったという特殊性を十分に考慮すべきである。 イ被告が採った解雇回避措置被告は,客室乗務職も含めた全職種を対象に本件特別早期退職措置を実施し,その後,本件希望退職措置,本件最終希望退職措置,本件追加希望退職措置を実施して,継続的に希望退職の募集を募ってきた。 また,被告は,被解雇者を対象として,本件解雇予告通知後も平成22年12月27日までの間,希望退職の募集を募って可能な限り合意退職の成立を目指していた。 そして,客室乗務職について,希望退職措置における応募資格として年齢制限を設けたのは,被告の客室乗務職のうち20歳代,30歳代の若年層については,40歳代以上の年 意退職の成立を目指していた。 そして,客室乗務職について,希望退職措置における応募資格として年齢制限を設けたのは,被告の客室乗務職のうち20歳代,30歳代の若年層については,40歳代以上の年齢層の者に比べて自己都合による退職率が高く,年齢制限を設けなければ,将来的に管理職を含む指導者の十分な確保が危ぶまれたことによるものである。また,若年層(一般職)は定年- 25 -に至るまでの期間が長いことから,将来に亘っての継続的な貢献が見込まれること,被告の賃金体系は年功序列的なものであったこと,企業年金等に関する退職条件が若年層に比べて高年齢層にメリットがあること(企業年金については,制度改定によって受給額の減額が見込まれるところ,45歳以上の客室乗務一般職の約83%が同年11月30日までに退職することによって,現役社員よりも少ない30%強にとどまる減額幅が適用となるにすぎない。)等も考慮に入れたものである。 さらに,被告は,本件早期希望退職措置を実施した当初から,希望退職における退職条件として,外部機関による再就職支援サービスの提供を提示し,再就職支援を行うことによって希望退職措置による退職を促していたことに加え,P5グループ内での再就職先をあっせんするため,グループ会社における就業機会も紹介していた。 そのほかにも,被告は,本件会社更生手続開始に先立つ平成20年10月には,従業員に対する5%の賃金減額措置を実施していたが,平成22年1月19日の本件会社更生手続開始後も更なる賃金の切下げを行った。 これは,地上管理職・客室乗務管理職の管理職調整手当及び客室乗務管理職の管理職乗務調整手当について,上記の5%の減額を含めて合計30%減額するという内容であった。 (3) 人選基準の合理性に関する主張ア人選基準の内容 理職の管理職調整手当及び客室乗務管理職の管理職乗務調整手当について,上記の5%の減額を含めて合計30%減額するという内容であった。 (3) 人選基準の合理性に関する主張ア人選基準の内容そもそも整理解雇における解雇対象者の人選基準は,人員削減の必要性の程度に応じた比較,相対の中で設定されるものであり,解雇対象者の非を問うものではないということができるところ,人選基準としては,一般に企業貢献度,被害度等の観点が考えられるが,これらの基準の何を優先させて被解雇者を選択するかは,使用者がその経営判断として判断すべきものであるから,基準自体が使用者の恣意的選択を排除する内容のもので- 26 -ある限り,その合理性を肯定する方向に働くというべきである。 本件解雇においては,一次的には企業貢献度を考慮しつつ,被害度についても加味する基準が設定された。 中でも,企業貢献度の検討に当たっては,主に将来の被告の業務に対する貢献度に着目した。将来の貢献度を評価するに当たっては,過去の貢献度から推認することとし,貢献度の程度の判断に当たっては,具体的指標として,「病気欠勤日数」「休職期間」「人事考課」等の客観的データを考慮することとした。このような基準によってもなお,人員削減目標が達成できない場合には,年齢の高い者から順に解雇対象者とする年齢基準の考え方をとることとした。 また,被告が本件人選基準を設定するに当たっては,P9やP15との労使交渉も踏まえて,平成22年11月15日に本件人選基準案を変更するに至っている。すなわち,被告側は,P9及びP15に対し,客室乗務職に関する本件人選基準案を提示した後,P15からの「現在何の問題もなく乗務復帰している者は,将来の貢献度が低いとは言えないのではないか」と指摘されたことを踏まえて改めて検討 P15に対し,客室乗務職に関する本件人選基準案を提示した後,P15からの「現在何の問題もなく乗務復帰している者は,将来の貢献度が低いとは言えないのではないか」と指摘されたことを踏まえて改めて検討した結果として,病欠日数・休職日数基準に該当するものの,同年9月27日現在で乗務復帰している者であって,平成18年10月1日から平成20年3月31日までの間に,連続して1か月を超える病気欠勤期間及び休職期間がなかった者については,将来において高い貢献が期待できると判断し,人選基準の対象から除外とすることとした。 これらの基準はいずれも客観的であり,使用者の恣意の入る余地のないものである。 イ病欠日数・休職日数基準の合理性病気欠勤等があった場合には,他の社員と比較して,当該病気欠勤,休職等による不就労があった分,貢献度が低いと評価されるから,解雇対象- 27 -者を選定するに当たって,病気欠勤等を理由とすることには十分合理性がある。 この点,本件解雇における病欠日数・休職日数基準は,1年間に付与される年次有給休暇の最大日数,前年度から繰り越される有給休暇の最大日数,月間休日の日数,その対象期間を考慮し,使用者たる被告の恣意が介在しないように配慮されたものであるから,このような人選基準には合理性があるというべきである。 なお,被告においては,休職中の客室乗務職が乗務に復帰するに際しては,主治医の診断書の提出のほか,管理職との復帰面談,産業医との面談を経た上で,健康諮問委員会において復帰可能と判定される必要があるところ,原告番号63番,64番,69番の原告らについては,これらの手続が完了しておらず,労働契約上の債務の本旨に従った履行の提供の前提として,乗務に復帰可能な状態であるか否かの判断がされていないのであるから,同原告らの請 4番,69番の原告らについては,これらの手続が完了しておらず,労働契約上の債務の本旨に従った履行の提供の前提として,乗務に復帰可能な状態であるか否かの判断がされていないのであるから,同原告らの請求は,この点からしても理由がない。 ウ年齢基準の合理性高年齢者から順に解雇対象者とする内容の年齢基準は,使用者の恣意が介在する余地がなく,公平性が担保される上,将来の貢献度を考慮に入れて将来の再建に向けた原動力となる若年層を残すという観点からも合理性があるというべきである。この点,被告においては,60歳を定年としているところ,高年齢者ほど定年による退職の時期が近接し,将来勤務可能な期間が短くなるし,高年齢者の方が賃金水準も高いから,高年齢者から順に解雇した方が将来の人件費削減にも効果的である。 また,被害度の観点からも,上記内容の年齢基準には合理性がある。 すなわち,被告においては,客室乗務職の賃金体系は年功序列的であり,高年齢者は若年者に比べて高額の賃金を受領しているし,勤続年数に応じて退職金額は高額なものとなる上,高年齢者は年金受給時期も早いから,- 28 -高年齢者の方が若年者に比べて整理解雇された場合に生活が困窮することは少なく,経済的にも再出発が容易であるということができる。 したがって,高年齢者から順に解雇するという基準には合理性がある。 エ本件解雇における人選基準の当てはめ本件解雇は,客室乗務職84名(稼働ベースで60.5名分)に対して行ったものであるが,一連の希望退職措置のいずれにも応募しなかった客室乗務職のうち,病欠日数・休職日数基準の該当者が20名,人事考課基準の該当者は0名であった。そして,本件解雇においては,上記各基準によっても目標人数に達しなかったことから,年齢基準に基づき,年齢の高い者から順 ,病欠日数・休職日数基準の該当者が20名,人事考課基準の該当者は0名であった。そして,本件解雇においては,上記各基準によっても目標人数に達しなかったことから,年齢基準に基づき,年齢の高い者から順に目標人数に達するまでを対象とした結果,53歳の者の一部と54歳以上の者(両年齢の該当者合計64名)がその対象者となったものである。 しかも,本件解雇に当たっては,扶養家族に障がい者がおり,将来に亘って金銭的負担が大きいと予想される客室乗務職1名については,被害度の観点から個別に本件解雇の対象外とすることとし,被告は,当該1名分について解雇人数から除くこととし,改めてほかの対象者を人選して解雇する措置はとらなかった。 以上のとおり,本件人選基準は客観的かつ合理的なものであり,本件人選基準に該当する者であっても個別事情を考慮して解雇対象者から除外しているのであるから,本件解雇における人選基準には合理性がある。 (4) 解雇手続の相当性に関する主張ア P9との交渉経緯被告は,平成22年9月27日に本件人選基準案をP9及びP15に提示した後,被告側からは労務,客室本部の担当者が出席し(管財人代理及びP14担当者が出席することもあった。),交渉の途中からは,社長及び管財人も出席して両労働組合との交渉,協議を行ってきた。これらの交- 29 -渉,協議において,P9が「人選基準については,議論する立場にない。」と表明する中で,被告は,本件解雇に至るまでの間,本件人選基準に基づく整理解雇の実施に当たっての交渉,協議を重ねてきた。特に,P9との交渉は,同日から同年12月31日までの間,合計17回にも上っている。 しかも,被告は,個別の交渉において,予定時間を延長してまで交渉実施に努めていた。 イ本件解雇に関する労働組合に対する説明内容 渉は,同日から同年12月31日までの間,合計17回にも上っている。 しかも,被告は,個別の交渉において,予定時間を延長してまで交渉実施に努めていた。 イ本件解雇に関する労働組合に対する説明内容(ア) 本件解雇の必要性について被告は,P9に対し,平成22年9月27日に本件人選基準案を提示してから,各団体交渉の場において,本件更生計画案に従って事業規模に見合った人員数にすることが必要であること,余剰人員を抱えることで余分な人件費コストが発生することなどを説明した。具体的には,被告は,P9に対し,同月29日の団体交渉において,人員数に関しては,本件更生計画案中に事業規模の縮小に伴って適正な人員規模にまで削減する旨が記載されており,これを達成する必要があること,人員削減目標が達成できなかった場合には,債権者らの理解を得られず,被告の会社再建が困難になることなどを説明し,翌30日の団体交渉においても,同様の説明を行った。その後も,被告は,P9との間の団体交渉において,人員調整施策の必要性に関する説明を継続して行った。 このように,被告は,P9に対し,本件解雇の必要性についての説明を行い,その後の団体交渉においても真摯な説明を継続していたにもかかわらず,P9は,同年12月9日の労使交渉の時点で本件解雇の撤回要求を行うなどして,既に,本件解雇の実施を認めない旨を表明していたため,本件解雇の必要性に関する被告とP9との団体交渉が平行線となってしまったにすぎない。 (イ) 解雇回避措置について- 30 -被告は,P9に対し,本件解雇に先立ち行った解雇回避措置(以下「本件解雇回避措置」という。)の内容について,役員の人数の減員,報酬額の減額,海外地区ナショナルスタッフの契約終了等の組合員の労働条件に直接関連しない事項を除いて,真 立ち行った解雇回避措置(以下「本件解雇回避措置」という。)の内容について,役員の人数の減員,報酬額の減額,海外地区ナショナルスタッフの契約終了等の組合員の労働条件に直接関連しない事項を除いて,真摯に説明してきた。 被告も,P9との交渉過程で,P9から具体的に提案された解雇回避措置としては,希望退職措置の対象年齢の拡大,一時帰休,ワークシェアリング,部分就労,解雇回避措置の平成23年3月31日までの実施延長があった。このうち希望退職措置の対象年齢の拡大について,被告は,P9に対し,従来の人員構成を踏まえ,将来において競争力を備えた組織運営を行うための人材確保の必要性があること,会社更生手続下にある会社として人件費や退職金を含む費用の圧縮や抑制の必要性があること,解雇対象者の多くが年金制度上の優遇措置を受けられることなどの様々な観点から,年齢制限が合理的理由に基づくものであることを説明した。他方,希望退職について,被告は,労働組合側からの要請があったことを踏まえ,本件最終希望退職措置において対象年齢を一般職42歳以上に拡大し,その後,本件追加希望退職措置を実施し,募集期間も延長した。また,一時帰休,ワークシェアリング,部分就労について,被告は,P9に対し,いずれも抜本的,恒久的な施策ではないとして,採用することができない旨を回答した。 また,P9は,被告に対し,平成23年3月31日までの解雇回避措置の延長実施を求めたが,被告は,解決を先延ばしするものでしかなく内容も不合理なものであると判断して,応じられない旨回答したものである。 以上のとおり,被告は,労働組合側に対して本件解雇回避措置に関する説明を行うとともに,労働組合側が提案した解雇回避措置についても,真摯に検討して回答した。 - 31 -(ウ) 本件人選基準案につ 以上のとおり,被告は,労働組合側に対して本件解雇回避措置に関する説明を行うとともに,労働組合側が提案した解雇回避措置についても,真摯に検討して回答した。 - 31 -(ウ) 本件人選基準案について被告は,P9に対し,平成22年9月27日に本件人選基準案を提示し,同月28日の事務折衝においてその内容を説明した。同日の事務折衝においては,本件人選基準案に関する全般的な説明として,会社再建過程の2,3年の期間で予想される貢献度を重視したこと,過去の貢献度についても客観的にみることとしたこと,貢献度の程度の判断に当たっては,本件人選基準案に示した基準をみることとしたことなどを説明した上,各基準に示した日数,基準日等の根拠についても説明した。 被告は,P9及びP15に対し,平成22年9月27日,本件人選基準案を示した後,両組合との交渉を行っていたものであるが,P9が,本件人選基準案を巡っては一貫して団体交渉を行うつもりはないとの交渉姿勢を示す一方で,P15からは,「現在何の問題もなく乗務復帰している者は,将来の貢献度が低いとは言えないのではないか。」との指摘があったことを踏まえ(乙25の1の9頁),被告は,病欠日数・休職日数基準等に該当するものの,その時点で乗務復帰している者については,解雇対象者から除外することとした。 このように,本件解雇に当たって,被告は,労働組合側との交渉,協議を経て,本件人選基準案の変更も行っており,その交渉,協議の経緯も実のあるものであったということができる。 (5) 小括以上のように,本件解雇は,① 会社更生手続下の事業規模の縮小に伴う人員削減策の一つであって,削減目標数の策定も合理的であり,債権者との合意内容を実現するという意味においても,その必要性が高いことは明らかであること, 雇は,① 会社更生手続下の事業規模の縮小に伴う人員削減策の一つであって,削減目標数の策定も合理的であり,債権者との合意内容を実現するという意味においても,その必要性が高いことは明らかであること,② 複数回に渡って希望退職措置をとるなど様々な解雇回避措置を尽くした上での解雇であって,本件解雇回避措置にはいずれも相当性があること,③ 本件人選基準についても,従業員の貢献度を基- 32 -本とし,これに被害度を加味するという手法で客観的な基準を設定したものであって,合理性があること,④ P9との間で事務折衝や団体交渉を何度も重ねており,解雇対象者に対しては①ないし③の各事情の説明を尽くしていたということができるから,解雇手続の相当性もあることに加えて,⑤ 各種希望退職措置に応じて平成22年11月30日付けで退職した希望退職者とのバランスを図りつつ,本件解雇による経済生活への影響を可能な限り抑えるための配慮をし,解雇対象者が,会社都合等の事由により退職した場合の退職金のほかに特別退職金と5か月分(希望退職に応募した者と比較して,整理解雇対象者には,12月分の給与が支払われるため,5か月分の支払とすることによって,上記希望退職者と同様合計6か月分相当となる。)の一時金とを受給することができるようにしたり,再就職支援サービス(当該サービスを希望しないときは10万円を支給)の提供を行ったり,グループ会社での就業の機会を紹介したり,本件解雇予告通知後においても,平成22年12月27日までの間,解雇対象者に対して引き続き希望退職の募集を行ったことなどの諸事情に鑑みれば,被告は本件解雇に当たって実施可能な最大限の措置をとったということができるから,本件解雇は整理解雇の要件を具備しており,有効であるというべきである。 【原告らの主張】 事情に鑑みれば,被告は本件解雇に当たって実施可能な最大限の措置をとったということができるから,本件解雇は整理解雇の要件を具備しており,有効であるというべきである。 【原告らの主張】(1) 人員削減の必要性に関する主張整理解雇である本件解雇においては,以下に述べるとおり,人員削減の必要性が欠如しており,原告らは,この点を最も問題とするものである。 ア史上最高の利益を計上する経営状況下での人員削減の必要性の欠如被告の平成22年度の経営実績は,営業利益1884億円(本件更生計画の初年度目標値との比較で2.9倍),経常利益1912億円,当期純利益8161億円,純資産2182億円というものであったところ,被告- 33 -は,主要行との間で,平成22年12月頃には,平成24年度中に再上場申請を目指すため,本件更生計画において7年間の均等弁済としていた弁済計画を大幅に前倒しし,リファイナンスの方法による債務の繰上償還によって,本件会社更生手続を終結させる方針を合意するまでに至っていた。 こうした金銭的余裕のある経営状況の下においては,企業の合理的運営上,実施を余儀なくされる整理解雇の方法による人員削減の必要性は,全く存在しない。現に,P18会長は,本件解雇が経営上必要なかったことを記者会見の場で公式に語っている(P18発言)。 イリスク耐性が強化された基盤下での人員削減の必要性の不存在被告においては,本件解雇を実施した平成22年12月の時点で,本件会社更生手続下での諸施策の実施,殊に希望退職等の実施による大規模な人員削減をはじめとする様々な固定費削減の効果によって,イベントリスクによる下振れリスクに対する耐性(以下「リスク耐性」という。)を強化した経営基盤が着実に形成されていた。 リスク耐性の強化の上 員削減をはじめとする様々な固定費削減の効果によって,イベントリスクによる下振れリスクに対する耐性(以下「リスク耐性」という。)を強化した経営基盤が着実に形成されていた。 リスク耐性の強化の上で,固定費の削減は,極めて重要な要素となるところ,本件会社更生手続下において行われた財産評定による減価償却費の削減等の固定費の削減効果は,平成23年度では460億円であったことに加え,平成22年度に実施された希望退職による人件費削減効果は,180億円であり,平成23年1月から実施された新人事賃金制度の導入による人件費の削減効果は,100億円であり,これらの削減効果を合算しただけでも,被告においては,平成23年度以降も,少なくとも740億円の固定費削減効果が継続して見込まれるような経営基盤が形成されていることがうかがわれる。しかも,740億円にも上る固定費の削減は,被告の損益分岐点を1396億円も引き下げる財務効果をもたらすものであり,これによって目標利益達成のためのハードルを引き下げることが可能である。 - 34 -さらに,本件新事業再生計画に基づく諸施策による航空機財及びリース資産の減価償却費の減少,年金費用の引下げ,希望退職,新人事賃金制度の導入,債権放棄(支払利息の減少)等によって,平成23年度の経常利益ベースでいうと1621億円の下振れリスクを吸収するに足りる程度の固定費の削減がされたことになる。 他方,客室乗務職に対する本件解雇及び運行乗務職の解雇による人件費削減効果(被解雇者の1年間分の人件費総額14.7億円)が寄与,貢献することができる割合は,固定費削減によって吸収し得る営業収益の下振れリスクのわずか2%にすぎず,本件解雇をしなければ,リスク耐性を形成することが不可能となる状況にはなかった。 ウ人件費削減目標の超 ことができる割合は,固定費削減によって吸収し得る営業収益の下振れリスクのわずか2%にすぎず,本件解雇をしなければ,リスク耐性を形成することが不可能となる状況にはなかった。 ウ人件費削減目標の超過達成状況の下での人員削減の必要性の不存在被告は,本件更生計画の基礎となる本件新事業再生計画が目標としていた営業収入,営業経費,利益等の目標を全て達成し,とりわけ,人件費を2755億円とする削減目標に対して2549億円まで削減し,上記目標よりも206億円も大幅に超過して削減していた。このように,被告は,平成22年12月の本件解雇時において,人件費の削減目標を大幅に超過している経営状況にあったのであるから,仮に,被告主張の「余剰人員」が認められたとしても,整理解雇という方法で人員削減しなければならない合理的必要性を見い出すことはできない。 エ人件費の水準と競争力からみた人員削減の必要性の不存在被告における営業費用に占める人件費の割合は,内外の航空会社と比較しても抜群に低いものとなっている。 すなわち,過去10年間の営業費用に占める人件費の割合は,内外の航空会社とも概ね低下傾向にある中で,被告における営業費用に占める人件費の比重は,P28株式会社(以下「P28」という。)と比べても,一貫して約3%ポイント低い水準で推移している。 - 35 -また,海外の航空会社4社の中では,P29における営業費用に占める人件費の割合が他の3社と比較して終始約6%ポイント低いところ,P29と同じ航空運送セグメント(部門)で比べても被告の人件費の割合は2から3%ポイント低い水準で推移しており,被告における営業費用に占めるの人件費の割合に係る競争力は,海外他社と比較しても優位にある状況にある。 他方,被告がした整理解雇(運行乗務職及び客室乗務 から3%ポイント低い水準で推移しており,被告における営業費用に占めるの人件費の割合に係る競争力は,海外他社と比較しても優位にある状況にある。 他方,被告がした整理解雇(運行乗務職及び客室乗務職に対するもの)によって削減が予想される人件費は約14.7億円であるところ,これを営業収益に割り戻したとしても約27.7億円となるにすぎず,これは,本件会社更生手続及びその基礎となる本件新事業再生計画の実施に基づく新人事賃金制度によって削減される約740億円の固定費の中で吸収可能な営業収益の下振れリスクの約2%にすぎない。 このように,微々たる効果しかもたらさない整理解雇による人員削減に固執する合理的理由は全くない。 オ本件更生計画上の人員削減の必要性の不存在本件更生計画上の基礎となる本件新事業再生計画の骨子は,固定費をはじめとしたコスト削減等により所期の利益を確保することにあったのであり,人員数削減は,本件更生計画上も総人件費の削減のために実施するものとされており,コスト削減や利益計上と関係なく「余剰人員を一切抱えない」とか,「平成22年11月30日あるいは同年12月31日までに人員削減を完遂する」とか,「その時点での余剰人員は整理解雇によって削減する」などという「プリンシプル」や「コンセプト」は存在しない。 被告は,平成22年12月の本件解雇時点において,本件更生計画を上方修正した修正計画上の目標に対して290億円ものコストを超過削減しており,本件解雇を断行しなくても,本件更生計画における目標値を約206億円も上回る人件費の削減を実現していた。 - 36 -他方,被告の同月時点での累計営業利益は,本件更生計画上の年度目標値を約1000億円も上回る1586億円を計上するに至っており,この時点における財産評定によるコスト 実現していた。 - 36 -他方,被告の同月時点での累計営業利益は,本件更生計画上の年度目標値を約1000億円も上回る1586億円を計上するに至っており,この時点における財産評定によるコスト削減効果693億円を除いても,被告の売上高営業利益率は8.7%となり,同時期のP28の売上高営業利益率7.5%を大きく上回る結果となっていたのであるから,被告の収益力は真の「実力」と評価されて然るべきものであった。 そうすると,被告は,同月の時点において,本件更生計画上のコスト削減目標や利益目標を達成するため,更なる人件費削減も利益対策も必要なかったというべきであり,ましてや,整理解雇をする必要性は全くなかったというほかない。 また,本件更生計画に明記された連結人員数の削減目標である「平成22年度末3万2600人体制」についても,同年10月の時点で子会社売却による約1000人の超過(追加)削減が確定し,同年12月の時点で人員削減目標の超過達成が確実であったのであるから,本件更生計画の遂行のために,本件解雇を行う必要性は全くなかった。 さらに,被告は,東日本大震災・福島第一原発事故後の平成23年度第1四半期において,整理解雇による人件費削減効果を除いて約165億円の営業利益を計上し,平成23年9月の中間連結決算では営業利益が通期目標を上回る1061億円となったのであるから,収益改善は一時的なものではなく,イベントリスクへの耐性も十分備わっていたというべきである。 そして,被告の主要な債権者らは,更生計画案の提出段階で既に賛意を表明していたものであり,被告に対して整理解雇の実施を求めたことは一切なかった。 そうすると,被告が主張するとおり,平成22年12月の本件解雇の時点において,165名(運航乗務職81名,客室乗務職84名) たものであり,被告に対して整理解雇の実施を求めたことは一切なかった。 そうすると,被告が主張するとおり,平成22年12月の本件解雇の時点において,165名(運航乗務職81名,客室乗務職84名)の従業員- 37 -が「余剰」であったとしても,その当時の連結人員数の削減状況,人件費の削減状況,大幅に上振れしていた(想定した数値・指標より上回っていた)営業利益状況等を考慮すれば,被告が原告らの雇用を維持することは当然に可能であったというべきである。 カ本件解雇決定時に予測可能な本件解雇後の事情との関係被告の経営状況については,営業利益及び損益計算書上並びに純資産額及びバランスシート上も,大幅に本件更生計画の目標値を超過し,堅実なキャッシュフローが確保されており,財務基盤の安定化が図られていた。 現に,被告は,① 更生債権等3951億円余りを繰上償還したり(このうち約1402億円は,金融機関等からの借入金によるものでではなく,いわゆる手元資金によるものであった。甲160),② 雇用を維持した従業員に対し,平成23年3月31日,同年7月5日,同年12月9日に1年足らずのうちに3回も一時金を支払ったり,③ 同年8月16日には,P25,P26株式会社と共同出資してLCCの新会社P27を設立することを発表したりしており,財務基盤の安定化が裏付けられている。 (2) 解雇回避措置の相当性に関する主張ア解雇回避措置の相当性についての考え方整理解雇が,何ら非のない労働者との間の労働契約関係を解消する最終的手段である以上,整理解雇を選択するに当たって,使用者には,整理解雇を回避するため,考え得る措置を真摯に実行する努力を尽くすばかりでなく,このような解雇回避努力を尽くした上でもなお,整理解雇による人員削減の必要性の有無を改 選択するに当たって,使用者には,整理解雇を回避するため,考え得る措置を真摯に実行する努力を尽くすばかりでなく,このような解雇回避努力を尽くした上でもなお,整理解雇による人員削減の必要性の有無を改めて真摯に検討することが求められるというべきである。 イ希望退職募集における年齢条件の不十分さについて必要稼働数を超える人員の削減に当たって,年齢制限を付す内容の年齢条件を設定する合理的理由は存しないところ,実際に,若年層の客室乗務- 38 -職から希望退職募集について年齢制限の引下げの要望が出ていたのであるから,年齢制限を撤廃し,又は条件を引き下げることによって,希望退職の応募が増加することは明白であった。このことは,本件最終希望退職措置において,年齢制限を45歳から42歳へと3歳引き下げただけで応募者が約300人増加したことからしても明らかであるということができる。 したがって,被告は,本件解雇に当たって,人員削減の必要性があったとしても,多数の客室乗務職が各種希望退職措置に応募することができるように,応募者の年齢制限を撤廃ないし引き下げて改めて募集すべきであったのであり,年齢制限に固執した被告の各種希望退職措置は,いずれも解雇回避措置として不十分,不合理であったというべきである。 なお,被告は,P28と比較した場合の「競争力」の優位性を指摘しているが,その内容は明らかにされておらず,① 仮に,それがサービス品質の問題であるならば,むしろ年齢が高く経験豊富なベテラン客室乗務職の方が客室乗務職としてのサービス品質は高度なものがあるのであるから,根拠にならないというべきであり,② 仮に,それが顧客ニーズに含まれるものであるならば,その最たるものが安全運航を大前提に安心して高度なサービスを受けることにあるから,同様に根拠に るのであるから,根拠にならないというべきであり,② 仮に,それが顧客ニーズに含まれるものであるならば,その最たるものが安全運航を大前提に安心して高度なサービスを受けることにあるから,同様に根拠にならないというべきであり,③ 仮に,それが人件費コストの問題であるならば,平成23年1月導入の新人事賃金制度の効果を考慮しない主張であるといわざるを得ず,やはり根拠にならないというべきである。 ウ希望退職措置における傷病条件の不十分さについて被告は,平成20年度以降,傷病により1日でも欠勤,休職,休業をしたことがあれば,年齢とは関係なく希望退職措置に応募可能であったというが,希望退職措置の募集の案内文書では,被告が措置適用を認めることが条件とされているから,病欠者の人数が直ちに希望退職措置の対象者の- 39 -人数であると考えることはできず,実際,被告は,上記の傷病条件の該当者に対し,退職金に関する資料を提示したものの,個人面談もしておらず,退職勧奨もしなかったのであるから,該当者も,自分が希望退職措置の対象者であるとの自覚もない状況であったと考えられる。また,被告は,P9が有給休暇を取得した者についても希望退職措置に応募できるように対象者の範囲を拡大することを提案したにもかかわらず,この提案に応じなかったのである。 このように,被告が傷病者に関して採用した希望退職措置の条件は不十分なものであった。 エリフレッシュ休職,部分就労,一時帰休等の不実施仮に,本件解雇に当たって,人員削減の必要性があったとしても,被告は,P9の提案するリフレッシュ休職,部分就労,一時帰休等の解雇回避手段を真摯に検討しなかったのであるから,解雇回避努力を怠ったと評価すべきである。なお,被告は,平成22年1月19日頃,一般職及び管理職の の提案するリフレッシュ休職,部分就労,一時帰休等の解雇回避手段を真摯に検討しなかったのであるから,解雇回避努力を怠ったと評価すべきである。なお,被告は,平成22年1月19日頃,一般職及び管理職の基準内賃金及び各職種の代表的な手当の5%減額を実施したことを解雇回避措置の1つとして主張するが,失当である。 (3) 人選基準の合理性に関する主張ア休職者基準,病欠日数・休職日数基準の不合理性客室乗務職は,保安業務という重責を担う勤務内容と苛酷な勤務環境とによって,業務上外を問わず,病気やけがに見舞われることが不可避的であるといえる。客室乗務職にとって,病気やけがは,勤務に対する熱心さや献身性のゆえである。したがって,その意に反して欠勤,休業せざるを得なくなったり,欠勤,休業が長引いたとしても,それは,客室乗務職の責任ではない上,完全に傷病が癒えて万全の態勢で勤務に臨むことが要求される保安任務の特性によるものであり,病気欠勤,休業は,業務犠牲又は業務に対する献身性の現れというべきであるから,これを解雇の基準と- 40 -するのは不合理である。 また,被告においては,中長期休業者が復帰するに当たって,その療養期間の長さと疾病名とに応じた復帰の手順が定められているところ,中長期の休業からの復帰手続が厳格すぎることに加え,管理職面談で「復帰しても絶対に大丈夫」などと言わない限り,復帰不可の意見を付されるという運用や,中長期休業者の職場復帰の検討を行う諮問委員会が1か月に1度しか開催されないため,乗務不可と判断されると,少なくとも1か月間は待機しなければならなかった。このような運用は,休業者本人の個人的努力によっては克服できない性質のものである。 さらに,病気欠勤,休職等が解雇の理由とされれば,以後,客室乗務職は, も1か月間は待機しなければならなかった。このような運用は,休業者本人の個人的努力によっては克服できない性質のものである。 さらに,病気欠勤,休職等が解雇の理由とされれば,以後,客室乗務職は,体調が悪かったり,病気やけがからの復調が不十分であったりするときであっても,自ら病気欠勤等を抑制して無理にでも乗務しようとする傾向が生まれるおそれがあることに加えて,体調が万全でない客室乗務職が乗務することは,極端な場合運航の不安全要因ともなり得るものである。 この点は,著しく不合理であり,安全運航と快適なサービスとを確保する責務を負う航空会社としては,採用してはならない選定基準であるといえる。 しかも,事故や疾病によって欠勤,休職に至った者が,その時期が偶然解雇基準の対象期間に該当したために解雇されるのでは,対象期間外に病気欠勤,休職した者と比較して著しく公平を欠き,不合理であるというべきである。同様に,本件人選基準の下では,「病気欠勤・休職等による基準に該当する者について,平成22年9月27日現在で乗務復帰している者」であれば,本件解雇の対象から除外される余地があるが,反面,その後に乗務復帰した者については,除外される余地がない。特に,原告らの中には,主治医及び産業医との面談も終了し,復帰前諮問委員会の開催を待つのみとなっていた者のほか,管理職との復帰面談及び復帰前諮問委員- 41 -会の開催を待つ者らとの関係で諮問委員会の開催が凍結されたために復帰することができなくなり,本件解雇によって解雇された者も含まれているし,平成22年9月の産業医との面談で「復帰可」と判断され,同年12月16日の復帰前諮問委員会ではほぼ間違いなく復帰可能と判定される予定であった者も含まれていた。このように,休職からの復帰手続を凍結しておきながら,本件解雇 との面談で「復帰可」と判断され,同年12月16日の復帰前諮問委員会ではほぼ間違いなく復帰可能と判定される予定であった者も含まれていた。このように,休職からの復帰手続を凍結しておきながら,本件解雇を実施する合理的理由は全くない。 他方,本件人選基準の下では,病気やけがで欠勤する場合,有給休暇を取得すれば,病欠日数・休職日数基準に該当しないが,欠勤すれば,当該基準に該当する可能性があることとなり,両者の違いは著しく大きい。このような結果を招来する本件人選基準は,不公平極まりなく不合理である。 そもそも,休職者基準及び病欠日数・休職日数基準は,病気欠勤を有給休暇で対応しなかったことを解雇という不利益扱いの事由とするに等しいものであり,有給休暇の自由利用の原則に反し,その点からも不合理である。また,被告においては,従前,病気欠勤を後に有給休暇に振り替える取扱いもされていたが,本件人選基準が発表された後は,事後的な有給休暇への振替が拒否されるようになったところ,事後的な有給休暇への振替が認められれば,本件人選基準に該当せず本件解雇の対象から除外されていたはずが,振替が認められない結果,本件解雇の対象に含まれることになった者もおり,振替拒否による不利益も著しい。 したがって,休職基準,病欠基準・休職日数基準は,いずれも不合理であるというべきである。 イ年齢基準の不合理性客室乗務職の担当する保安業務は,限られた時間と空間との中で様々な乗客の要望に応えてサービスを提供しつつ,機体や機内の異常に気付くために常に五感を働かせることによって,事故を未然に防ぎ,また,緊急事態の発生時には瞬時に的確に対応する必要があるものであり,的確かつ速- 42 -やかな対応ができないときには,人命にもかかわる重要な任務であるということができる。フ 事故を未然に防ぎ,また,緊急事態の発生時には瞬時に的確に対応する必要があるものであり,的確かつ速- 42 -やかな対応ができないときには,人命にもかかわる重要な任務であるということができる。フライト中,状況は刻一刻と変化するし,変化する乗務の環境や条件に対応するためには,訓練やマニュアルから学んだだけでは足りない。訓練では習得できない要素やマニュアルには完全に表現できない問題への対処は,実際の乗務経験の中で学び取るしかない。ところが,年齢の高い者から順次解雇するということになると,こうした貴重な知識や経験を蓄積して活用している者から順に解雇することを意味する。これは,安全運航の維持又は安全運航のための知識,経験の承継伝達の上で重大な問題である。 また,年齢の高い者から順に解雇するという人選基準は,解雇による被害の程度が高い順に解雇する点での不合理がある。年齢の高い者は,近い将来に定年というダメージの少ない理由で退職することが予定されているところ,一般に年齢が高くなるほどに再就職の機会も少なくなることもあって,定年退職までの残存期間中に取得可能な賃金に対する期待を軽視することができない。しかも,年齢の高い者は,子供の教育費,結婚資金,両親の介護費,住宅ローン等,生活費がかさむライフステージにあり,とりわけ,客室乗務職は,その多くが女性であり,定年前に退職する者も少なくないものの,反面,定年までの就労継続を希望していた原告らは,経済的にも就労継続の必要性が高く,就労意欲も強かった。それだけに,定年まじかの年齢で解雇されるダメージは一段と大きいということができる。 したがって,年齢基準も同様に不合理であるということができる。 ウ P9の弱体化を図る本件人選基準の不合理性P9は,乗務の安全,組合員の生活と権利を守る きいということができる。 したがって,年齢基準も同様に不合理であるということができる。 ウ P9の弱体化を図る本件人選基準の不合理性P9は,乗務の安全,組合員の生活と権利を守るとの立場を貫いてきたため,被告と対立する場面が少なくなく,被告はP9を嫌悪してきた。被告は,昭和50年5月,P9を破壊するために,P15(当時は,「P3- 43 -0労働組合」という名称であった。)内に客室乗務職を組織する支部を誕生させ,同支部を活用してP9の分裂労務政策を展開した上,P9とP15との間に賃金差別,昇格差別をはじめとする様々な差別,選別を実行してきた経緯がある。 本件人選基準に基づき本件解雇の対象となったのは,53歳以上の客室乗務職であるが,50歳以上で希望退職措置に応募しなかった者を所属組合別にみると,圧倒的にP9組合員が多く,年齢の高い順に解雇することになれば,そのほとんどがP9組合員となるのは自明の理であった。しかも,解雇された原告らは,そのほとんどが長年に亘って組合の執行委員などを歴任し,P9の組合活動の中核を担っており,被告は,このことを十分承知の上,年齢の高い者から順に解雇したのであり,これらの者が解雇されることがP9への重大なダメージとなることは明白である。 さらに,本件人選基準のうちの休職者基準は,そもそも稼働ベースでゼロカウントであり,削減目標数の減少には効果がないのであるから,結局,このような人選基準は,実質的には,年齢の高いP9組合員を優先して解雇する仕組みであるということができる。 しかも,本件人選基準案を修正した本件人選基準によって救済対象となった12人のうち10人はP15所属の客室乗務職であり,病欠日数・休職日数基準によって解雇される者が減少すれば,その分年齢基準によって解雇される者 選基準案を修正した本件人選基準によって救済対象となった12人のうち10人はP15所属の客室乗務職であり,病欠日数・休職日数基準によって解雇される者が減少すれば,その分年齢基準によって解雇される者が増加することになるから,年齢層の高いP9組合員には極めて不利な結果となるのであり,結局,本件人選基準は,P15所属の被解雇者を救済する規程として機能したにすぎない。このように,本件人選基準の狙いは,年齢基準の適用によってP9組合の活動家を排除することにあったということができる。現に,原告P31(原告番号70番)は,本件人選基準に関する修正救済規定の適用除外事由に該当するとして解雇されたものである。 - 44 -以上のとおり,本件解雇は,P9の組合活動弱体化を図ったものであって不当労働行為である。このような本件解雇対象者の人選結果は不合理そのものであり,本件人選基準とりわけその年齢基準はこのような狙いを持つものとして設計されたものであって,いささかの合理性もない。 (4) 解雇手続の相当性に関する主張ア解雇手続の相当性における十分な協議の持つ意義と実際の協議状況「労働組合あるいは被解雇者との十分な協議」とは,第1に,整理解雇に当たっては,これにかかわる諸問題について,関係当事者の意見を十分に聴取し,協議した上で最終決定すべきであるということを意味し,十分な協議を経ることによって,整理解雇に関して労使自治的解決が促されることとなる。第2に,整理解雇は,使用者の経営上の都合によって労働者に重大な不利益を課すものであるから,仮に,労使間において客観的に交渉の余地がない問題であっても,信義則上,労働組合や被解雇者に対して十分事情を説明し,その納得を得るように最大限努力することが,使用者に求められているということができる。具体的に において客観的に交渉の余地がない問題であっても,信義則上,労働組合や被解雇者に対して十分事情を説明し,その納得を得るように最大限努力することが,使用者に求められているということができる。具体的には,使用者は,労働組合又は被解雇者に対し,適切な時期に,人件費削減の方法として人員を削減する必要性のほか,解雇回避措置の内容,人員削減の方法として解雇を行う必要性,解雇を行う場合には,その時期,規模,方法,被解雇者の選定基準とその適用方法,解雇条件等について,労働組合又は被解雇者の納得を得るために説明を行い,誠意を持って協議すべき信義則上の義務を負っているというべきである。 ところが,被告は,P9との間の団体交渉その他の労使協議を適切な時期に行わないばかりか,協議開始の当初から整理解雇方針を固めてその方針を一方的にP9に提示し,P9の強い要求があっても,人員削減の必要性ひいては整理解雇の必要性を裏付ける情報を全く開示しないまま,不適切かつ虚偽の説明を繰り返した上,P9の提案をことごとく無視して本件- 45 -解雇に至ったものであるから,このような経緯で断行された整理解雇は無効である。 イ 「S10」「S19」スケジュールアサインによる退職強要被告は,一連の希望退職措置に応募しない意思を固めていた客室乗務職に対し,平成22年10月以降,本件解雇を強行する同年12月31日までの間,被告が本件人選基準の年齢基準によれば,対象者に該当する客室乗務職について,無用なスタンバイ(いわゆるブランクスケジュール)勤務としての「S10」「S19」スケジュールアサインをし続けた。これは,対象者が退職の決断をするまで乗務を外し続ける,いわゆる仕事外しの退職強要そのものであった。そして,P9が団体交渉その他の場で被告に「S10」「S19」 9」スケジュールアサインをし続けた。これは,対象者が退職の決断をするまで乗務を外し続ける,いわゆる仕事外しの退職強要そのものであった。そして,P9が団体交渉その他の場で被告に「S10」「S19」スケジュールアサインを撤回するように求めても,被告は一切聞く耳を持たなかった。 このように,被告は,P9と不誠実な団体交渉を繰り返しながら,時間の経過とともに,整理解雇の対象者を,原告らを含む限られた範囲の客室乗務職に絞り込み,整理解雇は不可避との虚偽の情報によって原告らを精神的に追い込んだ上,「S10」「S19」スケジュールアサインという方法で退職を強要し,退職を拒否した原告らを同年12月31日をもって整理解雇した(本件解雇)ものである。 こうした被告の交渉姿勢は,整理解雇される労働者の納得を得るために説明を行い,誠意を持って協議すべきとする使用者の信義則上の義務に違反した不誠実,不信義な交渉態度そのものであった。 ウ整理解雇に至る過程での争議権投票への支配介入被告は,平成22年11月15日に行われたP9との間の団体交渉において,整理解雇の方針を発表する一方,それ以前からP9やP32組合による争議権の確立に介入する旨の発言を開始し,同月16日には,争議権が確立されれば,P14からの3500億円の出資を受けられないし,更- 46 -生計画案も認可されず,二次破綻の危機に直面するかのような不当な発言を行った上,当該発言内容を職場に周知させて職場を混乱させ,組合員間の不安を煽った。 以上のとおり,原告らに対する違法なブランクスケジュールアサインを継続しながら,団体交渉による解決を拒否した上,P9の争議権確立のプロセスにまで介入してその権利行使を阻止した被告の一連の行為は,支配介入の不当 ,原告らに対する違法なブランクスケジュールアサインを継続しながら,団体交渉による解決を拒否した上,P9の争議権確立のプロセスにまで介入してその権利行使を阻止した被告の一連の行為は,支配介入の不当労働行為を構成するから,このような不当労働行為の下で強行された本件解雇は,社会通念上,著しく相当性を欠くものであったというべきである。 (5) 小括以上のとおり,本件解雇については,① 被告が史上最高の利益を計上し,リスク耐性が強化されている中,人件費の削減目標も超過達成していたにもかかわらず,下振れリスクへの影響度の小さい人件費を必要以上に削減するために断行されたものであるから,人員削減の必要性は認められないこと,② 解雇回避措置として,年齢条件や傷病条件の不十分な希望退職措置を実施したものの,P9が導入を求めるリフレッシュ休職,部分就労,一時帰休を実施しないまま行われたものであって,解雇回避措置も不十分であること,③ 本件人選基準は,不合理な病欠日数・休職日数基準,年齢基準を設定しており,その実質は,P9の弱体化を図るための不当労働行為というべきであって,著しく不合理であること,④ 本件解雇に至る手続経緯も,団体交渉その他労使協議においては,既定の整理解雇方針を押しつけるばかりであった上,「S10」「S19」スケジュールアサインによる退職強要のほか,P9の争議権の行使に対する支配介入の不当労働行為の末,整理解雇対象者に限定して実施した本件解雇通知後の希望退職の募集によって解雇対象者を不安な状況に置いたまま,本件解雇に至っているのであって,その手続経緯は著しく不相当なものであり,被告の用意する退職金や再就職支援等の退職- 47 -条件もそれほど有利な内容ものではないことを指摘することができる。 以上①ないし④の諸事情に照ら て,その手続経緯は著しく不相当なものであり,被告の用意する退職金や再就職支援等の退職- 47 -条件もそれほど有利な内容ものではないことを指摘することができる。 以上①ないし④の諸事情に照らせば,本件解雇は,およそ整理解雇の要件を満たすとはいえないから,無効であるというほかはない。 第5 当裁判所の判断 1 争点1(本件解雇に整理解雇法理を適用することの当否)について被告は,会社更生手続下でされた本件解雇については,会社清算・破産手続下でされた整理解雇の場合と同様に,いわゆる整理解雇法理を機械的に適用すべきではないと主張する。 しかしながら,① 会社更生手続は,窮境にある株式会社について,更生計画を策定するなどして,債権者,株主その他の利害関係人の利害を適切に調整し,もって当該株式会社の事業の維持更生を図ることを目的とする再建型の倒産処理手続であり(会社更生法1条参照),更生手続開始の決定時点で破綻した更生会社を観念的に清算する手続であるとはいっても,清算型の倒産処理手続である会社清算・破産手続とは異なり,事業の継続を前提としており,直ちに労働者の就労が拒否されるわけではないこと,② 清算型の倒産処理手続下において労働者を解雇する場合であっても,当該解雇には解雇制限規定(労働基準法19条)及び解雇予告規定(同法20条)の適用があると解される上,会社更生手続や民事再生手続のような再建型の倒産処理手続においては,労働者の労働基本権に配慮する趣旨で,更生管財人が労働協約を解除することができない旨の特則(会社更生法61条3項,民事再生法49条3項)が置かれていること,③ ②と同様の趣旨で,労働契約は,継続的給付を目的とする双務契約であるにもかかわらず,反対給付不履行の場合の履行拒絶禁止規定が適用されない旨の特則(会社更生 再生法49条3項)が置かれていること,③ ②と同様の趣旨で,労働契約は,継続的給付を目的とする双務契約であるにもかかわらず,反対給付不履行の場合の履行拒絶禁止規定が適用されない旨の特則(会社更生法62条3項,民事再生法50条3項)が置かれていることに鑑みると,会社更生手続下でされた整理解雇については,労働契約法16条(解雇権濫用法理)の派生法理と位置付けるべき整理解雇法理の適用があると解するのが相当である。もっとも,整理解雇法理適用の要件を検討- 48 -するに当たっては,解雇の必要性の判断において使用者である更生会社の破綻の事実が,重要な要素として考慮されると解すべきである。 2 争点2(本件解雇の有効性)について(1) 基本的な考え方本件解雇は,被告の就業規則52条1項(4)の「企業整備等のため,やむを得ず人員を整理するとき」(甲4)を理由とする整理解雇であるところ,上記1で判示したとおり,会社更生手続下における整理解雇についても,いわゆる整理解雇法理の適用があると解するのが相当である。 したがって,本件解雇の効力を判断するに当たっても,本件解雇にいわゆる整理解雇法理の適用があるとの前提で,以下,① 人員削減の必要性の有無,程度,② 解雇回避措置の有無,程度(解雇回避措置実施の有無,内容等),③ 人選の合理性の有無(本件人選基準の合理性等),④ 解雇手続の相当性(労使交渉の経緯,不当労働行為性等も含む。)を具体的に検討し,これらを総合考慮するのが相当である。 被告は,本件解雇に整理解雇法理を適用するとしても,本件解雇が複数の利害関係人の犠牲と負担とを強いながら,公的資金も投入されての会社更生手続下の整理解雇であるという事案の特殊性から,その適用判断に当たっては,通常の労使関係における整理解雇法理の適用判断 雇が複数の利害関係人の犠牲と負担とを強いながら,公的資金も投入されての会社更生手続下の整理解雇であるという事案の特殊性から,その適用判断に当たっては,通常の労使関係における整理解雇法理の適用判断の際よりも,適用要件を緩和すべきである旨主張するが,被告の指摘する上記事情は,整理解雇法理の判断枠組み自体を否定したり,適用要件を緩和したりするほどの事情とはなり得ないというべきであり,当該事情は,各要素の検討判断において考慮すれば足りるものと解するのが相当である。 そこで,以下,整理解雇法理の判断枠組みに従って,上記①ないし④の具体的事情について検討を進めることとする。 (2) 人員削減の必要性についてア認定事実- 49 -前提事実並びに証拠(甲7,8,13ないし15,23,34,36,45,115,131,137,162,176,179,181,195,266,293,310,311,271,279,357,乙1,2,4ないし6,9,13,14,17,34ないし38,40,44ないし47,60,証人P13,同P33,同P34,同P35,原告P36,同P37,被告代表者P18)及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実を認めることができ,この認定を左右するに足りる的確な証拠はない。なお,以下においては,参照等の便宜のため,個別に基本書証等を摘示することもある。 (ア) 本件会社更生手続開始申立前の被告の経営状況平成13年以降,国際線を中心とする航空ネットワーク事業を展開するP5グループにとって,米国同時多発テロ,イラク戦争及びSARS(重症急性呼吸器症候群),新型インフルエンザの発生等の事業展開に支障を与える外部要因が立て続けに発生する中,P5グループにおいては,航空需要の見通しを誤り,機種の削減や機材の小型化が遅れてい RS(重症急性呼吸器症候群),新型インフルエンザの発生等の事業展開に支障を与える外部要因が立て続けに発生する中,P5グループにおいては,航空需要の見通しを誤り,機種の削減や機材の小型化が遅れていた上,地元自治体や労働組合の反発等に配慮する余り,不採算路線からの撤退や思い切った人件費の削減に踏み込めないまま,高コスト体質が温存されていた。 また,過去の為替差損やホテル事業,リゾート事業の失敗によって財務体質が脆弱であったものの,当該財務体質が改善されないまま,借入金,社債,リース等に係る負債が極めて多額なものとなり,平成20年度末時点において,自己資本率が10.0%と低迷していた。さらに,国際線の依存度が高い業務構造下において,同年秋口以降,国際線について,リーマンショックに端を発した金融危機の影響や高収益の見込める路線への競合他社の進出等によって,ビジネス需要及び国際貨物需要が急激に減少し,国内線についても,競合他社との競争が激化し,顧客の争奪の様相を呈していた上,平成20年度以降の歴史的な燃油価格の高騰及び燃油サーチャ- 50 -ージの高額化によって,観光需要が低迷するようになった。このような事情の重なりから,P5グループの同年度の連結決算では約500億円の営業損失を計上し,最終損失は約630億円にも達した。 加えて,P5グループにおいては,平成21年度に入っても,長引く金融危機の影響や新型インフルエンザの流行等を原因とする航空需要の低迷による大幅な減収に加え,費用平準化のために実施していた燃油デリバティブ取引で1937億円の繰延ヘッジ損失が発生したことなどから,同年8月7日時点(平成21年度第1四半期決算発表時)では前年と同規模の630億円程度の最終損失となる見込みであった。 (以上全体につき,甲279,乙2)(イ) ジ損失が発生したことなどから,同年8月7日時点(平成21年度第1四半期決算発表時)では前年と同規模の630億円程度の最終損失となる見込みであった。 (以上全体につき,甲279,乙2)(イ) 経営改善計画の策定指示このような事業環境の急激な悪化を受け,平成21年4月,国土交通省は,被告に対し経営改善計画の策定を指示したところ,被告は,同年6月,路線の見直し,貨物事業の見直し,年金制度の改定を含む営業費用の見直しを柱とした経営改善の方向性を公表するとともに,主要行に対しては,政府の指定金融機関からの緊急融資を含めた協調融資を要請した。その結果,同月,主要行(ただし,P24は債務保証を担当するものである。)による協調融資の形で合計1000億円の融資が実行された。しかしながら,この融資金も約半年間で不足する見込みとなったため,主要行との間では,同年9月30日を期限とする経営改善計画の策定,計画の実現性にかかわる第三者機関による審査等を条件に,年内を目途とした追加融資の実行が検討されることとなった。 被告は,そのころ,国土交通省が組成した「P11の経営改善のための有識者会議」に対し,2度に亘って検討状況の報告を行った後,同月24日,国土交通大臣に対し,経営改善計画についての説明を行うとともに,同年4月に成立した改正「産業活力の再生及び産業活動の革新に- 51 -関する特別措置法」に基づく出融資の活用を含む支援を求めるに至った。 しかしながら,政権交代後の国土交通大臣は,上記有識者会議を解散し,同年9月25日には,P5グループの再生を確実にするため,事業再生計画を作り直す必要があると判断し,私的な諮問機関として,事業再生の専門家をもって構成される「P5再生タスクフォース」(以下「タスクフォース」という。)を立ち上げたため,その後, するため,事業再生計画を作り直す必要があると判断し,私的な諮問機関として,事業再生の専門家をもって構成される「P5再生タスクフォース」(以下「タスクフォース」という。)を立ち上げたため,その後,被告は,タスクフォースの助言,指導の下,同年10月31日までに新たな事業再生計画を策定することとなった。その一方で,タスクフォースは,同年10月29日,当時の国土交通大臣に対し,P5グループがP14による支援を受けて再建することを妥当とする内容の調査結果を報告した。調査結果の報告を受けた国土交通大臣は,同日,P5グループの再建に当たっては,P14を活用することが相当である旨を表明したため,被告は,P14に対しP5グループの再生支援を依頼すると同時に,再生支援に向けた事前相談を開始した。 (以上全体につき,甲14,279,乙40)(ウ) P14による調査と本件会社更生手続の開始決定被告は,平成21年11月頃には,再び事業運転資金が枯渇する状況に陥っていたことから,同月13日,産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法に基づく特定認証裁判外紛争手続(事業再生ADR手続)の正式申込みを行うとともに,金融機関から債権回収等の一時停止と同法52条に基づくプレDIPファイナンスの優先性の確認を得た上で,P20から,つなぎ資金として,同月27日に150億円,同年12月25日に400億円の融資を受けるに至った。 一方,被告は,P14から,ビジネス,会計,法務を含めた多角的な視点からの調査(いわゆるデューディリジェンス)を受けて事業再生計画案の検討,策定を進めた結果,機構法上の諸手続を有効に活用するた- 52 -めには,会社更生手続を併用し,更生裁判所の監督の下,P14が管財人として業務執行及び財産管理処分を行いながら再建手続を主導するこ ,策定を進めた結果,機構法上の諸手続を有効に活用するた- 52 -めには,会社更生手続を併用し,更生裁判所の監督の下,P14が管財人として業務執行及び財産管理処分を行いながら再建手続を主導することが必要であると判断された(以上につき,甲14,279,乙40)。 そのため,被告は,平成22年1月19日,本件会社更生手続の開始申立てをして開始決定を受けるとともに(甲2),主要行と連名でP14に対して再生支援の申込みをし,機構法25条4項に基づく支援決定を受けるに至った(甲7,乙14)。 他方,日本政府は,同日,被告が再生を果たすまでの間,十分な資金を確保するほか,外国政府に対して理解と協力を求めるなど,運航の継続と確実な再生を図るため,必要な支援を行う旨の政府声明を発表した(乙13)。 加えて,P14は,そのころ,当面の事業運営資金が不足することのないように,P20と協議の上,被告に対する総額6000億円の追加融資枠を設定した(甲7,乙14)。 (エ) 事業再建計画の見直しに関する経営判断の内容平成22年1月19日に公表された本件旧事業再生計画は,本件会社更生手続の開始決定前にP14が検討したものであり,本件会社更生手続における更生計画の策定に当たっては,本件旧事業再生計画を見直すことが予定されていた(乙14)。 P14は,本件会社更生手続の開始決定後,P13元管財人と共に更生管財人に就任し,更生計画案の策定に向け,本件旧事業再生計画の内容を見直すべく,被告に対し,ビジネス,ファイナンス,会計,法務等の専門家約20名の役職員を派遣してP5グループの実態調査に当たった。 そして,これらの計画案の前提として,管財人は,国際線及び国内線の赤字路線の大幅な削減(平成20年度比でその事業規模について,国- 53 -際線は約4割の縮 P5グループの実態調査に当たった。 そして,これらの計画案の前提として,管財人は,国際線及び国内線の赤字路線の大幅な削減(平成20年度比でその事業規模について,国- 53 -際線は約4割の縮小,国内線は約3割の縮小)を内容とする,平成22年度下期(平成22年10月から平成23年3月まで)の路線便数計画を策定し,これを平成22年4月28日に公表した。 さらに,管財人は,平成22年度下期路線便数計画を踏まえつつ,本件更生計画案の基礎となるべき本件新事業再生計画を策定し,これを平成22年6月4日に正式決定した。 本件新事業再生計画は,被告の再建のため,赤字路線を大幅に削減するほか,燃費効率の高い航空機への更新,拠点数の削減,関連会社の整理・売却といった事業リストラ策を実施するとともに,再建を加速させ,計画初年度からの大幅な事業縮小と黒字化とを目指すことを内容とするものであり,特に,早期の確実な再建を実現するため,本件旧事業再生計画が3年で実施することを予定していた諸施策(甲8)を大幅に前倒しして初年度に完遂することととし,大幅な事業縮小に応じた適正規模の人員体制に速やかに移行することを内容としていた。 上記の事業再建計画の見直しは,本件会社更生手続の開始当時,被告の経営体制については,国際線はP281社で足り,被告を必要としないなどとする「国際線1社論」をはじめとする強い批判の声もある中,債務超過額が巨額であり,債権者や株主等の利害関係人に多大な経済的損失を与えることが必至であったことから,航空事業の公共性,公共交通機関としての事業価値を維持しつつ,利害関係人の理解を得て再建手続を進めるためには,事業リストラ策のより一層の深堀りと早期の完遂が不可避であるとの経営判断に基づくものであった(甲357,乙60)。 (オ) 本件更生計 を維持しつつ,利害関係人の理解を得て再建手続を進めるためには,事業リストラ策のより一層の深堀りと早期の完遂が不可避であるとの経営判断に基づくものであった(甲357,乙60)。 (オ) 本件更生計画案の人員計画策定に関する経営判断の内容本件更生計画案及びその基礎となる本件新事業再生計画案は,事業規模に応じた適正人員を配置して余剰人員を抱えない体制を構築するとの基本的コンセプトの下,事業規模の縮小に見合った人員削減を行うもの- 54 -であった。具体的には,職種別(運航乗務職,客室乗務職,整備技術職,地上職事務系)に,グループ会社は会社ごとに人員削減の方針を定め,本件新事業再生計画の基礎となる,平成22年10月以降に実施される平成22年度下期の路線便数計画を同年8月31日までに見直しをして確定し,直近の人員状況を反映した上で,同年9月30日までに最終的な削減目標を確定させることを前提として,早期退職,子会社売却等によってP5グループ全体の人員削減を推進し,平成21年度末の人員数4万8714人を平成22年度末(平成23年3月末)には約3万2600人に削減することを予定するものとなった(乙17,40)。 上記の内容の本件更生計画案が策定された理由は,同計画案が,それまでの被告の経営に対する利害関係人等の強い批判もある中,P14から事業資金として3500億円もの巨額の公的資金が投入される一方,債権者には,5000億円を超える債務免除を求める厳しい内容のものであったから,債権者のみならず,国民の目から見て納得がいく内容のものでなくてはならないため,被告が二次破綻することがないように,事業規模を縮小してこれに見合った適正な配置人員を超える人員を削減し,余剰人員を抱えない体制を構築するための自助努力が不可欠であるとの経営判断がされたからで め,被告が二次破綻することがないように,事業規模を縮小してこれに見合った適正な配置人員を超える人員を削減し,余剰人員を抱えない体制を構築するための自助努力が不可欠であるとの経営判断がされたからであった(乙60)。 (カ) 本件解雇の基本方針決定及び表明に関する経営判断の内容管財人は,平成22年11月12日,希望退職者数が目標値に達しない場合には整理解雇も辞さないとの基本方針を決定し,同月15日,正式に発表した。 管財人が上記のような基本方針を決定し,発表したのは,次の経営判断に基づくものであった。すなわち,本件更生計画案が可決されるためには,投票期限である同月19日までに更生債権者等から法定の賛成票を得る必要があった。また,更生計画によって一般更生債権の多額の免- 55 -除を余儀なくされる各主要行(免除債権額は,更生3社の吸収合併に伴う主債務,保証債務の一本化,更生担保権付き債権の一本化後の残存確定債権額に限っても,P20が約1681億円,P24が約71億円,P21が約523億円及び約4974万USドル,P22が約514億円,P23が約179億円であった。)は,被告に対し,本件更生計画案の基礎となる本件新事業再生計画を真に完遂することができるか否かについて,様々な角度から質問するなどして調査を進め,その遂行可能性について慎重に見極めていた。他方,管財人は,本件会社更生手続中,毎月開催されていた主要行を交えた会議において,各主要行に対し,人員削減施策の進捗状況を含め,本件新事業再生計画に盛り込まれた各種施策の実施状況について説明し,その都度,理解を求めてきたという経緯があった。管財人は,以上の諸事情を踏まえ,本件更生計画案に対する更生債権者等からの賛成票を得るには,管財人が確実に人員削減施策を実行し,削減目標値を達成する ,その都度,理解を求めてきたという経緯があった。管財人は,以上の諸事情を踏まえ,本件更生計画案に対する更生債権者等からの賛成票を得るには,管財人が確実に人員削減施策を実行し,削減目標値を達成する決意であることを対外的に表明することが必要であるとの経営判断をしたものである。 そして,管財人による上記発表後,本件更生計画案に対する更生債権者等の賛成票は,投票期限前日の同月18日になってようやく法定多数に達し,最終的には96%超の賛成票を得た結果,本件更生計画案は,同月19日,更生債権者ら議決権者の大多数の同意を得て可決されるに至った(乙60)。 (キ) リファイナンス契約の基本合意締結に関する経営判断の内容管財人は,平成22年11月30日,更生債権の早期弁済を目的としたリファイナンス契約を締結するため,主要行との間で,本件基本合意を締結し,同年12月1日,P14から3500億円の出資を受けた。 管財人が主要行との間で本件基本合意を締結し,平成22年度途中の同年12月31日付けで本件解雇に及んだのは,① P14は,支援決定- 56 -の日から原則として3年以内に,当該支援決定に係るすべての再生支援を完了するように努めなければならない旨が法定されており(機構法33条3項),支援決定の対象事業者に対する出資金は,それまでの間に回収しなければならないところ,被告に対する支援決定は,同年1月に行われたことから,被告は,出資金3500億円の平成25年1月までの償還が義務付けられていたこと,② このような巨額の出資金を3年以内(実際の出資時からは2年4か月以内)に償還するためには,株式の再上場による資金調達が最も有力な手段であったことから,管財人は,平成25年1月までに再上場を果たすため,少なくとも平成23年度1期分相当の活動実績を基に上場 4か月以内)に償還するためには,株式の再上場による資金調達が最も有力な手段であったことから,管財人は,平成25年1月までに再上場を果たすため,少なくとも平成23年度1期分相当の活動実績を基に上場申請を行うことが必要であると考えたことが理由であった。 しかも,本件基本合意に続き,主要行との間で法的拘束力のあるリファイナンス契約を締結するに当たっての管財人と主要行との交渉は,難航していたため,管財人は,<ア> 更生計画に基づく人員削減施策を完遂して初めて,利率,担保,返済期限,コベナンツ等の諸条件の協議を行うことができるようになること,<イ> 上記の諸条件についての内容を確定させるための協議には,相当程度の時間を要することが予想されたこと,<ウ> 協議結果についても,主要行内の稟議決裁手続に要する期間が更に必要となることなどの諸事情を考慮し,どんなに遅くとも,平成22年11月30日には,主要行との間で本件基本合意を締結しておく必要があると判断するに至ったものである。 (ク) 本件解雇の最終決断に至った経営判断の内容このような経緯の中,管財人は,原告らに対し,平成22年12月9日付けで同月31日を解雇日とする本件解雇予告通知を発した(本件解雇)。 管財人が同日頃に本件解雇の最終判断に至った理由としては,① 被- 57 -告においては,本件新事業再生計画に基づき,平成22年度下期(同年10月から平成23年3月まで)から大幅に事業規模を縮小した路線便数計画が実行に移されており,これに基づく人員の余剰が顕在化していたこと,② 客室乗務職を含む職種ごとに一連の希望退職措置に基づく希望退職の募集を行っていたが,客室乗務職については,同年12月9日時点で応募者が763人(稼働ベースで534人分)にとどまり,頭数こそ削減目標人数に達しては む職種ごとに一連の希望退職措置に基づく希望退職の募集を行っていたが,客室乗務職については,同年12月9日時点で応募者が763人(稼働ベースで534人分)にとどまり,頭数こそ削減目標人数に達してはいたが,削減目標数として定めた稼働ベース606人分を未だ達成していなかったこと(乙36),③ 管財人は,被告が3500億円という巨額の出資金を償還するのに不可欠なリファイナンスを受けるためには,本件基本合意記載の人員削減計画を完遂する必要があると考えたこと,が挙げられる。 (ケ) 本件解雇の対象人数の設定に至った経営判断の内容a 本件解雇の対象人数は,本件更生計画案及びその基礎となる本件新事業再生計画に基づく事業規模の縮小に伴って被告の行う航空事業の遂行,維持に必要な人員が減少したことに基づき,原則として,事業規模縮小後の必要人員(必要稼働数)を算出し,当該人員数を本件解雇通知時の人員数(有効配置数)から控除することによって設定されたものである。 b また,被告においては,従前から運航乗務職や客室乗務職等の職種別人員配置計画を策定するに当たって,次のような稼働ベースの考え方を採用していた。 ① 通常勤務者(1稼働)② 休職者(0稼働)③ 長期病欠者=1歴月以上の病気欠勤者(0稼働)④ 部分就労制度適用者=1歴月10日勤務者(0.5稼働)⑤ 制限乗務者=個々人により制限が異なる勤務者(0.5稼働)- 58 -⑥ 深夜業免除者=深夜勤務にかからない日帰り便の業務限定で稼働する勤務者(日帰り乗務で割当て可能なパターンの必要稼働数までは1稼働換算,必要数を超えた深夜免除申請者分については0稼働)c 被告が,稼働ベースの考え方に従って人員計画を策定してきた理由は,客室乗務職全体のうち,通常勤務を行っていない者が4分の1程度 は1稼働換算,必要数を超えた深夜免除申請者分については0稼働)c 被告が,稼働ベースの考え方に従って人員計画を策定してきた理由は,客室乗務職全体のうち,通常勤務を行っていない者が4分の1程度を占める状況においては,在籍乗務職の頭数によって人員計画を立てても,運航維持の可否の判断を行うことができないからであった(乙36)。 d 被告側は,平成22年8月19日,本件新事業再生計画の前提として同年4月28日の時点で策定していた平成22年度下期の路線便数計画(乙4)を修正したことに伴って(乙8),平成22年度末(平成23年3月31日)時点の人員計画を見直さざるを得なくなったため,同年6月4日時点における平成22年度末時点の人員計画と,同年9月30日時点における平成22年度末時点の人員計画とでは,次のとおりの変動が生じた(乙5,6,36)。 6月4日時点 9月30日時点① 総在籍従業員数 5943名 5898名② 休職者数 894名 894名③ 総配置数(①-②) 5049名 5004名④ 契約社員地上業務 10名 10名⑤ 非稼働乗務員要素 327名 268名⑥ 有効配置数(③-④-⑤) 4712名 4726名⑦ 希望退職削減必要数(⑥-⑧) 517名 606名⑧ 必要稼働数(⑨+⑩) 4195名 4120名⑨ バランス(スタンバイ引当数) 124名 124名⑩ 総必要数(⑪+⑫+⑬) 4071名 3996名- 59 -⑪ 訓練必要数 259名 259名⑫ ライン外必要数 124名⑩ 総必要数(⑪+⑫+⑬) 4071名 3996名- 59 -⑪ 訓練必要数 259名 259名⑫ ライン外必要数 180名 180名⑬ ライン維持必要数(⑭+⑮) 3632名 3557名⑭ 路線外必要数 240名 236名⑮ 路線必要数 3392名 3321名e なお,上記の用語の意味は,次のとおりである。 ④ 契約社員地上業務=客室乗務ではなく地上業務に従事する契約社員⑤ 非稼働乗務員要素=長期病欠者,制限乗務者,深夜業免除者の非稼働要素部分(稼働ベース)の合計数⑨ バランス=イレギュラー対応に備えて,1日を3つの時間帯に分けてアサインされるスタンバイの引当数(平成22年度は邦人120名分に邦人以外分4名を加えて合計124名分)⑪ 訓練必要数=客室乗務職の訓練に必要な労働力(新年度訓練計画に基づき,平成22年度は259名分)⑫ ライン外必要数=客室組織の運営及び運航を支える常務以外の業務に必要な労働力(訓練教官,客室本部間接業務,管理職業務等)⑬ ライン維持必要数=国際線定期便ライン必要数,国内線定期便ライン必要数,臨時便必要数を合計した上で,運航遅延要因,運用調整変動分,路線外必要数を加算した結果,必要とされる労働力⑭ 路線外必要数=休暇,特別休暇,欠勤,生理休暇,運用変動等に備えて,ライン維持のために見込んでおく労働力f 以上のとおり,被告側は,人員計画策定に当たって採用していた稼働ベースの考え方によって,平成22年6月時点の有効配置数から,本件新事業再生計画に基づく事業規模の縮小に伴う必要稼働数を控除する方法で,本件解雇の対象者数の前提となる平成23年3月31日 ていた稼働ベースの考え方によって,平成22年6月時点の有効配置数から,本件新事業再生計画に基づく事業規模の縮小に伴う必要稼働数を控除する方法で,本件解雇の対象者数の前提となる平成23年3月31日- 60 -時点での客室乗務職の人員削減必要数を稼働ベースで517名分と算定した。 この削減目標数517名から,休職者を除く在籍客室乗務職を割り出すに当たって,被告側は,引き続き希望退職措置を実施した場合には,高年齢者から応募があるであろうことを予想し,特別早期退職措置後の実在籍者の年齢が高い者から順次希望退職措置への応募があることを想定し,休職者を除いた場合の削減目標数517名分に達する在籍客室乗務職数を算出したところ,上記573名(頭数)という結果が出た(甲13,乙36)。 そこで,被告側は,P9及びP15に対し,同年9月2日,客室乗務職の削減目標数を573名の概数である「約570名」と説明した。 被告側による,客室乗務職の削減目標は「約570名」であるとの説明に対し,P9側は,これは稼働ベースかと質問し,被告側は頭数であると回答した上,いろいろなやりとりがされた。また,P9側からは,春先は稼働ベースで573名という数字を労務部からもらっていたが,今回は(頭数だというが)休職者も含めて約570名になったという理解でよいのかという発言もあった(甲239)。 g 説明会において,被告側は,上記の客室乗務職の削減目標については,変更の可能性もあり,平成22年9月30日を目途に最終化する旨も説明していたところ,被告側が平成22年8月19日に本件新事業再生計画における平成22年度下期の路線便数計画を見直したことによって,平成23年3月31日の時点で想定される必要稼働数が4120名分に変更される一方,同日時点の有効配置稼働数は472 に本件新事業再生計画における平成22年度下期の路線便数計画を見直したことによって,平成23年3月31日の時点で想定される必要稼働数が4120名分に変更される一方,同日時点の有効配置稼働数は4726名分と想定されることとなった。このため,被告側は,両者の差である606名分(稼働ベース)を最終的な削減目標として掲げることとし,P9及びP15に対し,同年9月28日,この内容を説明した(甲- 61 -115,137,乙9,36)。 (コ) 本件解雇前後のP5グループの経営実績a 平成22年度の被告の累積営業利益(平成22年4月以降の合計営業利益)のうち,本件解雇前後に公表されたもの(通例,各翌月末までに実施される定例記者会見で公表される。)は,次のとおりであった(甲34,36,45)。 10月累計の連結営業利益は1327億円(P6単体の累計営業利益は1048億円)11月累計の連結営業利益は1460億円(P6単体の営業利益は1148億円)12月累計の連結営業利益は1586億円(P6単体の営業利益は1251億円)b また,本件更生計画案における平成22年度の収支等の目標は,次のとおりであった(人員数は休職者を除く在籍人員数である。)(甲15,176)。 連結営業収益 1兆3250億円連結営業費用 1兆2608億円うち人件費 2755億円連結営業利益 641億円連結純資産 248億円連結人員数約3万2600名(対前年度末約1万6000名減)c これに対し,平成22年度における被告の収支等の実績は,次のとおりであった(人員数は休職者を除く在籍者数である。)(甲176・2~3頁,甲266・2頁,同4頁,甲293)。 0名減)c これに対し,平成22年度における被告の収支等の実績は,次のとおりであった(人員数は休職者を除く在籍者数である。)(甲176・2~3頁,甲266・2頁,同4頁,甲293)。 連結営業収益 1兆3622億円(対目標約372億円の増収)連結営業費用 1兆1738億円(対目標約870億円の超過削減)- 62 -うち人件費 2549億円(対目標約206億円の超過削減)連結営業利益 1884億円(対目標約1243億円の増益)連結純資産 2182億円(対目標約1934億円の増額)連結人員数 3万1263名 (対目標約1300名の超過削減)イ人員削減の必要性に関する判断上記アの認定事実を前提として,被告の人員削減の必要性について判断する。 (ア) 前記認定事実のとおり,被告については,これまで幾度となく試みられた再建策が失敗に終わり,本件会社更生手続が開始される前年(平成21年)においては,多額の営業損失を計上し,平成21年6月には事業資金として1000億円もの融資が実行されたにもかかわらず,わずか半年のうちに枯渇する見込みとなった上,タスクフォースの助言,指導の下で事業再生計画の策定を試みたが,奏功しなかったばかりか,続いて,P14の支援の下で改めて事業再生計画の検討,策定を進めたものの,P14には,もはや,私的整理による事業再建は不可能であるとの評価を受けた。そして,更生3社は,総額約9252億円の債務超過に陥るような状況にあったため,平成22年1月19日,本件会社更生手続開始申立てをし,同日のうちに開始決定を受けるに至り,本件会社更生手続下において策定された本件新事業再生計画に基づき,航空機の機種数の削減,機材のダウンサイジング,不採算 月19日,本件会社更生手続開始申立てをし,同日のうちに開始決定を受けるに至り,本件会社更生手続下において策定された本件新事業再生計画に基づき,航空機の機種数の削減,機材のダウンサイジング,不採算路線の廃止等の大規模な事業のスリム化が図られることとなった。 このような,いわば一旦沈んだ船ともいえる被告を引き上げて再建を図るために事業規模を大幅に縮小し,これに応じた適正な人員配置とするとともに,株主には100%減資を強い,債権者には約5000億円を超える債務免除を求め,かつ,3500億円もの巨額の公的資金を投入するというのが本件更生計画の骨子であって,本件更生計画は,被告- 63 -を二度と沈むことのない船にするために立案・実行されたものであり,本件会社更生手続の究極の目的は,こうした,公共交通機関として航空機の運航業務を担う被告の事業の持続と安定を図る点にあったというべきである。 以上を踏まえると,事業規模の縮小に伴う人員計画に基づき算定された必要稼働数に応じた適正な人員配置を行うとの観点から,有効配置数のうち必要稼働数を超える人員の削減を行うことは,真にやむを得ないものであったと評価することができる。 (イ) 次に,本件再生計画案の基礎となるものとして策定された本件新事業再生計画は,P14から被告に派遣された各分野の専門家が,被告の経営実態を把握した上,その問題点を徹底的に洗い出し,当該問題点に対する具体的な改善点を指摘しつつ,大規模な事業のスリム化と迅速な再建策とを提案するものであり,その策定に至る経緯,事業規模縮小の方向性,具体的内容,実施に向けての方法等は,いずれも合理的なものであって,信頼性が高いということができる。 そうすると,本件新事業再生計画に基づく大規模な事業のスリム化に伴って必要稼働数を算 方向性,具体的内容,実施に向けての方法等は,いずれも合理的なものであって,信頼性が高いということができる。 そうすると,本件新事業再生計画に基づく大規模な事業のスリム化に伴って必要稼働数を算定すれば,有効配置数との間で差異が生じる結果となることは必至であって,これを解消することが被告の再建にとって喫緊の課題であったというべきところ,本件新事業再生計画に示された人員削減施策につき,被告における当時の従業員数(約4万8700人)の約3分の1に相当する人員を削減するには,これを希望退職の募集のみによってまかなうことは相当の困難を伴うものであるということができる。現に,原告ら客室乗務職については,一連の希望退職措置によっても,人員削減の目標数である606名分(稼働ベース)の削減には至らなかったのであり,人員削減の目標数に達しなかった人数分の人員につき,それぞれの担当業務において要求される専門性を考慮せず,被告- 64 -内における様々な職種の中で人員を融通して解雇者を出さずに全員を吸収することは,その削減規模が大きいことのほか,各職種の勤務形態及び賃金体系の大幅な変動を伴うことなども勘案すると,ほぼ不可能に近いものであったということができる。 以上によれば,原告ら72名を含む84名の客室乗務職につき,整理解雇の手法によって人員削減を図ることの必要性も,相当に高いものであったと評価することができる。 (ウ) そして,P14に対する出資金を3年以内となる平成25年1月までに償還するためには,遅くとも平成24年12月以前の段階で株式を上場し,資金調達を図ることが最も現実的な手段であると考えられるところ,被告の株式を上場するためには,早期に本件会社更生手続を終結し,少なくとも直前の会計年度である平成23年度において営業実績を積み上げ ,資金調達を図ることが最も現実的な手段であると考えられるところ,被告の株式を上場するためには,早期に本件会社更生手続を終結し,少なくとも直前の会計年度である平成23年度において営業実績を積み上げる必要があり,そのためには,主要行の理解を得てリファイナンスの実行を受けることにより,本件更生計画に基づく弁済計画を前倒しして履行し,本件会社更生手続を平成24年3月31日までに終結させる必要があったということができる。 そうすると,具体的なリファイナンスの条件を整え,実際にリファイナンスの実行を受けて更生債権の返済を実施するまでにある程度の期間が必要であることは自明のことであるから,本件基本合意においてリファイナンスの条件交渉に入るための前提条件とされていた本件更生計画案及びその前提となる本件新事業再生計画の実現時期,すなわち平成22年度確定下期便数計画に基づく人員削減の完遂時期を遅くとも平成22年12月31日と設定し,そのような人員削減策を希望退職募集等の方法によって実現することが困難であると見込まれた場合には,同日を解雇日とする整理解雇を実施することもやむなしとした管財人の判断には,合理性を認めることができるというべきである。 - 65 -(エ) 以上によれば,本件において,人員削減の必要性は相当に高いものであったと認めることができ,本件解雇は,その実施目的,実施規模,実施時期のいずれについても,合理的な経営判断の下で実施されたものと認めることができる。 ウ人員削減の必要性に関する原告らの反論に対する検討(ア) 史上最高の利益を計上する経営状況下での人員削減の必要性の欠如について(P18発言に対する検討を含む)a 原告らは,被告の平成22年度の営業利益が,史上最高の1884億円であったことなどを指摘して,人員削減の 計上する経営状況下での人員削減の必要性の欠如について(P18発言に対する検討を含む)a 原告らは,被告の平成22年度の営業利益が,史上最高の1884億円であったことなどを指摘して,人員削減の必要性がなかったと主張する。 確かに,平成22年10月から同年12月までの間の被告の連結営業利益は,順調に増加しており,平成22年度の収支も本件更生計画案の目標値を大きく上回り(連結営業利益で1243億円,連結純資産で1934億円),連結人員数についても,削減目標を大きく上回る実績を残していた(約1300人が削減目標を超過して削減された。)ということができる。しかしながら,上記イで判示したとおり,本件解雇は,被告が莫大な債務超過の下で倒産状態に陥り,法的再建手続の下で策定された本件更生計画及びその基礎となる本件新事業再生計画に基づく被告の事業規模の縮小に合理性が認められる中,当該計画に基づき算定された必要稼働数を超える人員の削減を図る目的の下で実施されたものであって,一旦合理的なものとして決定された事業規模を短期間のうちに拡大する方向で変更する必要性等の特段の事情の認められない限り,縮小された事業規模の下で営業利益が予想値を上回ったからといって,直ちに人員削減の必要性が失われることになるものではないというべきである。しかも,営業利益の増大は,①為替レート及び燃油市況の変動による収支改善効果,② 会社更生- 66 -手続下における財産評定方法の採用に伴う一時的な費用削減効果(資産の評価替えに伴い,航空機材の減価償却費等が会社更生手続前と比較して低く計上されたことにより,費用が約639億円少なく計上されるに至ったこと。乙35)を原因とする財務諸表上の見掛けの実績ともいうべきものであり,必ずしも被告の事業実態に基づく実力を示すもの 較して低く計上されたことにより,費用が約639億円少なく計上されるに至ったこと。乙35)を原因とする財務諸表上の見掛けの実績ともいうべきものであり,必ずしも被告の事業実態に基づく実力を示すものということはできないし,その他,③ 広告宣伝費等の一時的な抑制に伴う削減効果,④ 従業員に対する賞与の不支給に伴う効果等が反映された結果であるということができるものの(甲357,乙60,証人P13),いずれも一時的な施策に伴う効果であり,航空事業においては,常に突発的に生じ得るイベントリスクに対する備えも欠かせないことなどを併せ考慮した場合,平成22年度の営業実績及び同年度の実績等から予測される平成23年度の営業実績が好調であるからといって,直ちに,人員削減の必要性を減殺する理由にはならないというべきである。 b また,原告らは,人員削減の必要性がなかったことは,P18発言からも明らかであると主張する。 確かに,P18発言は,整理解雇による被解雇者(本件原告らを含む客室乗務職及び運航乗務職ら約160名)を残すことが経営上不可能ではなかった旨述べるものであり,その当時,P18会長が被告の代表取締役会長の地位にあったこと,P18発言が記者会見という公の場での発言であったこと,さらには,P18発言は,整理解雇である本件解雇における人員削減の必要性がなかったことを大きな理由として掲げた本件訴訟が提起された後にされたものであること等から,原告らがP18発言を根拠として人員削減の必要性の欠如を主張することも,理解することができないものではない。 しかしながら,P18発言全体をみた場合,その文脈からは,必ず- 67 -しも人員削減の必要性の欠如を認めているわけではなく,かえって,本件更生計画の実行は,多大な犠牲を払った金融機関をはじめと しかしながら,P18発言全体をみた場合,その文脈からは,必ず- 67 -しも人員削減の必要性の欠如を認めているわけではなく,かえって,本件更生計画の実行は,多大な犠牲を払った金融機関をはじめとする債権者等,各種の利害関係人に対する社会的義務であって,本件解雇がやむを得なかった趣旨を述べているということができるし,整理解雇による被解雇者を残すことが経営上不可能ではなかった旨の発言は,短期的に,その当時の被告の営業利益をもってすれば,被解雇者の人件費の支出が不可能ではなかった事実を発言しているにとどまり,本件更生計画及びその基礎となる本件新事業再生計画に基づく事業規模縮小の合理性を否定したり,将来の事業規模の拡大に伴う必要稼働数の増加等に言及したりするものではないということができる。 そうすると,P18発言は,これまで従業員を解雇せずに企業経営をしてきた同人が,被告の経営の一翼を担う立場にある者の苦渋の決断としてやむなく整理解雇を選択せざるを得なかったことに対する主観的心情を吐露したにすぎないものと評価するのが相当であって,前提事実及び上記アの認定事実において指摘した客観的状況に照らせば,P18発言があったことをもって,人員削減の必要性を否定することはできないというべきである。 したがって,原告らの上記主張は採用することができない。 (イ) リスク耐性が強化された基盤下での人員削減の必要性の不存在について原告らは,リスク耐性が強化された基盤下では,人員削減の必要性がない旨主張する。 この点,原告らが指摘するとおり,固定費削減には目標利益の達成を左右する損益分岐点を下げる効果があり,740億円に上る固定費の削減は損益分岐点を1396億円も引き下げる財務効果をもたらすとする見解もある(甲264)。 - 68 - 費削減には目標利益の達成を左右する損益分岐点を下げる効果があり,740億円に上る固定費の削減は損益分岐点を1396億円も引き下げる財務効果をもたらすとする見解もある(甲264)。 - 68 -しかしながら,リスク耐性の強化は,飽くまで本件更生計画及びその基礎となる本件新事業再生計画に基づく事業規模縮小の効果によって達成されたものであり,リスク耐性が強化されたから人員削減の必要性がないというのは,本末転倒の議論であるというべきである。そして,原告らの前記主張は,結局のところ,持続的に経営上の余裕が生じることを理由に雇用確保をすべきであるとするものであるところ,本件更生計画及びその基礎となる本件新事業再生計画に基づく事業規模縮小の合理性が否定されたり,その拡大方向での見直しの必要性が生じたりしない限り,本件解雇時の人員削減の必要性を否定することにはならないことは,上記(ア)で判示したとおりである。加えて,航空事業においては,一度,イベントリスクが発生すれば,直ちに1000億円規模の営業損失が発生することもあるのであって(現実にも,平成23年3月11日に発生した東日本大震災によって,被告にも著しい営業損失が発生した。 乙35,P33証人),平成22年度及び平成23年度の営業実績をみただけで,被告のリスク耐性が強化され,盤石のものとなったとも認め難い。 原告らは,本件解雇による人件費削減効果が固定費削減によって吸収し得る営業収益の下振れリスクのわずか2%にすぎないとも主張するが,上記の判示によれば,人件費削減効果の多寡は,直ちに人員削減の必要性の有無に影響しないというべきであるから,このような原告らの主張も採用することができない。 (ウ) 人件費削減目標の超過達成状況の下での人員削減の必要性の不存在について原告ら の必要性の有無に影響しないというべきであるから,このような原告らの主張も採用することができない。 (ウ) 人件費削減目標の超過達成状況の下での人員削減の必要性の不存在について原告らは,被告が本件更生計画に基づく人件費の削減目標値を連結ベースで206億円も超過して達成しているのであるから,本件解雇の必要性はないと主張する。 - 69 -確かに,本件更生計画における平成22年度の人件費削減後の目標値が連結ベースで2755億円であったのに対し,平成22年度の収支実績のうち,人件費は2549億円にとどまった結果,206億円の超過削減が達成されていることは,上記(2)ア(コ)のとおりである。しかしながら,人員の削減目標は,本件更生計画及びその基礎となる本件新事業再生計画における事業規模の縮小を前提として算出された必要稼働数を元に,航空事業の専門性,特殊性によって職種間の人員の融通が困難な中,それぞれ専門性を有する職種ごとに示されたものであると認められることは,前判示のとおりであり,本件解雇の当時,原告らを含む客室乗務職につき,削減目標数が超過達成していたということはできない。 加えて,P5グループの連結人員数が削減目標を大きく上回って減少したのは,予想に反して株式会社P38及び株式会社P39等の売却が実施されたことに起因するものであったことを認めることができる(甲8,15によれば,本件更生計画及び本件新事業再生計画の下で売却を予定していた子会社は,ホテル事業や旅行事業等の航空事業に直結しない事業を目的とする会社であって,航空事業の一端を担う上記両社の売却は,本件新事業再生計画の策定当初は予定していなかったものと認めることができる。)。 繰り返し述べるが,本件更生計画及びその基礎となる本件新事業再生計画は,これ 業の一端を担う上記両社の売却は,本件新事業再生計画の策定当初は予定していなかったものと認めることができる。)。 繰り返し述べるが,本件更生計画及びその基礎となる本件新事業再生計画は,これまで被告の再生計画が失敗に終わってきたことの反省の上に立って,二度と倒産状態に陥らないために,事業規模に応じた適正人員を配置して余剰人員を抱えない体制を構築するとの基本コンセプトの下,事業規模の縮小に見合った人員削減を行うというものであり,この観点から適正に設定された削減目標数に達成していないのに,現実の人件費額が想定されていた人件費額の目標値を下回ったからとして,本件解雇の必要性がなくなるということはできない。 - 70 -したがって,本件において,人件費削減目標が超過達成しているということはできないから,原告らの上記主張は,採用することができない。 (エ) 人件費の水準と競争力からみた人員削減の必要性の不存在について原告らは,被告における営業費用に占める人件費の割合が内外の航空会社と比較しても抜群に低く,競争力が優位にあることを理由に,本件解雇の必要性の欠如を主張するもののようである。 しかしながら,原告らの主張するところによって,本件更生計画及びその基礎となる本件新事業再生計画は,これまで被告の再生計画が失敗に終わってきたことの反省の上に立って,二度と倒産状態に陥らないために,事業規模に応じた適正人員を配置して余剰人員を抱えない体制を構築するとの基本コンセプトの下,事業規模の縮小に見合った人員削減を行うというものであることを否定することができるものではない。また,そもそも公開されている情報には限界があり,限られた情報の中で人件費割合を比較することの当否が問題となる上,被告と他の航空会社それぞれとでは,会計単 ることを否定することができるものではない。また,そもそも公開されている情報には限界があり,限られた情報の中で人件費割合を比較することの当否が問題となる上,被告と他の航空会社それぞれとでは,会計単位のほか,会計処理方針の相違があり得るし,各種サービスを外部委託している場合には,単純に人件費のみを比較するのは相当でなく,外部委託費に占める人件費割合が明らかでなければ正確な判断をすることが不可能であるというべきであるから,営業費用に占める人件費割合を単純に比較しても,被告の競争力の優位性を判断することはできない。 したがって,原告らの上記主張は,採用の限りではない。 (オ) 本件更生計画上の人員削減の必要性の不存在についてa 原告らは,本件更生計画及びその基礎となる本件新事業再生計画における目標値を超過達成し,リスク耐性も備わった状況の中で本件解雇を実施する必要性はない旨主張する。 しかしながら,そもそも上記計画の主眼がコスト削減による利益確保- 71 -にあったというのは,当該計画の究極の目的である被告の再建のための手段,方法の1つを強調して評価したにすぎず,首肯することのできない見方であるといわざるを得ない。すなわち,前判示のとおり,本件更生計画及びその基礎となる本件新事業再生計画は,公共交通機関としての航空機の運航事業を担う被告が倒産状態に陥ったため,その再建を図るべく開始された本件会社更生手続の下で策定されたものであり,その究極の目的は,被告の担う航空事業の持続と安定とにあった(いわば,一度沈んだ船である被告が二度と沈まないようにすること)というべきものである。このような目的の達成のために,被告においては,事業規模の見直しが急務とされ,P14をはじめとして主要行等の利害関係人の意見も踏まえつつ上記計画が策定さ まないようにすること)というべきものである。このような目的の達成のために,被告においては,事業規模の見直しが急務とされ,P14をはじめとして主要行等の利害関係人の意見も踏まえつつ上記計画が策定されたことは,前記アで認定したとおりであり,当該計画の主眼は,飽くまで事業規模の縮小による経営体制の維持,強化にあったというべきであって,コスト削減による利益確保が主眼であったわけではないと解するのが相当である。また,被告のリスク耐性が必ずしも万全なものと認められないことについては,上記(イ)で判示したとおりである。 したがって,原告らの,本件更生計画及びその基礎となる本件新事業再生計画の主眼がコスト削減による利益確保にあったとする上記主張は,当を得ないものといわざるを得ず,採用することができない。 b なお,原告らは,被告が削減人員数を算定するに当たって,単純に頭数によるのではなく,稼働ベースの考え方によって算定したことを論難する。 しかしながら,少なくとも客室乗務職については,通常勤務(1稼働換算)をしていない者も多いから(出産,育児の関係もあって休職者〔0稼働換算〕は非常に多い。例えば,平成22年9月1日時点における休職者は836名であり,その他,長期欠勤者,特殊な勤務形態として,- 72 -部分就労制度適用者,制限乗務者,深夜業免除者がいる。甲110,乙1,33),単純に頭数ではなく,稼働ベース換算によって削減人員数を算定することは,客室乗務職の勤務実態に即した合理的なものということができるし,被告においては,従前から,人員計画の策定には稼働ベースの考え方を採用しており,P9を含む組合側も被告の人員計画が稼働ベースの考え方に基づくことを認識していたということができる(甲239,乙32)。 したがって,削減人員数の算定に当たっ は稼働ベースの考え方を採用しており,P9を含む組合側も被告の人員計画が稼働ベースの考え方に基づくことを認識していたということができる(甲239,乙32)。 したがって,削減人員数の算定に当たって稼働ベースの考え方を採用することも理に適っており,何ら問題がないというべきである。 (カ) 本件解雇決定時に予測可能な本件解雇後の事情について原告らは,本件解雇の前後を通じ,被告の経営状況が改善し,財務基盤の安定化が図られる中,被告は,本件解雇後,本件更生計画における更生債権を繰上償還し,従業員に対し1年足らずのうちに3回も一時金を支給した上,P25等との共同出資によるLCCの設立に参画しており,財務基盤の安定化が裏付けられており,本件解雇の必要性を減殺する事情に当たる旨主張する。 しかしながら,公共交通機関としての航空機の運航事業を担う被告が倒産状態に陥ったため,その再建を図るべく開始された本件会社更生手続の下で策定された本件更生計画及びその基礎となる本件新事業再生計画において,将来に亘っての航空事業の持続と安定とを図りつつ被告を再建するためには,事業規模の縮小が急務であり,その合理性も認められる一方,近い将来の事業規模の拡大方向での見直しの可能性が認められない以上,縮小された事業規模から算出される必要稼働数を超える人員の削減の必要性が合理的なものとして認められるのは,これまで繰り返し判示してきたところである。そして,このような判断枠組みの下では,仮に,本件解雇時に原告ら主張の上記の諸事情が予測されたとして- 73 -も,本件解雇の必要性そのものが減殺されるものではないことは,明らかである。 しかも,被告が平成23年3月28日に実施した更生債権者に対する繰上償還は,原資の多くが主要行からのリファイナンスの実行に基づくも 必要性そのものが減殺されるものではないことは,明らかである。 しかも,被告が平成23年3月28日に実施した更生債権者に対する繰上償還は,原資の多くが主要行からのリファイナンスの実行に基づくものであり,新たな債務負担によるものであるし,株式の再上場が具体化しているわけでもない中,P14に対する3500億円の償還が未了の状態にあることに変わりがない。 なお,付加して述べるに,被告に残った従業員に対する3回の一時金支給がされたことは前提事実(19)記載のとおりであるところ,整理解雇された原告らがこの一時金支給について納得できないとの思いを有することは理解できないものではないが,その支給規模は,前提事実(19)において認定したとおり過大とまではいえないし(甲148,346,347),これまで平成21年度の年末及び平成22年度夏期,年末賞与も支給されておらず,また,新人事賃金制度の導入によって収入が減少する従業員に対する士気向上策として支給するという目的の合理性に鑑みれば,好調に推移する売上高の配分先として不合理であるということもできない。さらに,LCCの設立への出資の事実はあるものの,これは,将来的な事業展開をにらんだ経営判断の1つというべきである上,前提事実(19)において認定したとおりその出資額は必ずしも大きくはない。したがって,原告らの上記主張も採用することができない。 なお,原告らは,本件解雇前から,LCC設立のための協議が行われていたのであるから,LCC設立等の事業規模拡大に向けて雇用を維持し,本件解雇の解雇対象者の出向先として確保すべきであったなどと主張するが,本件解雇時においては,LCC設立に当たっての関係各社との交渉成立の可否及び具体的時期,内容が不明であり,そのような不安定な状況下で原告ら主張の解雇回避措置を て確保すべきであったなどと主張するが,本件解雇時においては,LCC設立に当たっての関係各社との交渉成立の可否及び具体的時期,内容が不明であり,そのような不安定な状況下で原告ら主張の解雇回避措置を検討することはできなかった- 74 -というべきであるから,原告らの上記主張も失当である。 (3) 解雇回避措置の相当性についてア認定事実前提事実に加えて,証拠(甲10,14,17,22,52,108,109,149,306,307,乙10,17,18,36)及び弁論の全趣旨を総合すれば,被告が実施した解雇回避措置は,別紙「解雇回避措置一覧」記載のとおりであると認めることができる。すなわち,(ア) 被告は,希望退職措置として,本件特別早期退職措置(部長級を含む管理職対象のものと,一般職・休職者対象のものとで各1回ずつ),本件希望退職措置(第1次,第2次の2回),本件最終希望退職措置(1回),整理解雇の方針を発表した後に実施した本件追加希望退職措置(1回。ただし,募集期間を2回延長した。)をそれぞれ実施した(甲10,14,17,22,108,109,乙17)。 (イ) また,被告は,その他の解雇回避措置として,① 副操縦士昇格訓練中断による地上職への職種変更(合計265名),② 非正規雇用社員の契約終了(合計192名)や海外地区ナショナルスタッフの契約終了(850名),③ 高齢者雇用や新規雇用の凍結,④ 客室乗務職内定者の入社時期の延伸,⑤ 1か月単位の無給特別リフレッシュ休職の募集,⑥ 子会社8社の売却や子会社4社を吸収合併することによる会社再編,⑦ 定期昇給の停止や昇格の凍結,⑧ 月例賃金の5%削減や管理職手当の25%削減(原告らは,これを解雇回避措置ではないと主張するが,総人件費の圧縮という意味での解雇回避措置として理解 よる会社再編,⑦ 定期昇給の停止や昇格の凍結,⑧ 月例賃金の5%削減や管理職手当の25%削減(原告らは,これを解雇回避措置ではないと主張するが,総人件費の圧縮という意味での解雇回避措置として理解するのが相当である。),⑨ 執行役員数の減員(8名)や特別参与・顧問制度の廃止,役員報酬額の減額,⑩ 賞与の不支給や退職給付(企業年金)の5割削減,⑪ 通勤手段としてのタクシーの利用制限やJR在来線のグリーン車利用の禁止,⑬ 出張・乗務旅費の引下げと一部を支給- 75 -対象外とすること,⑬ 出張,デッドヘッド(便乗)時の座席等級の引下げや社機私用搭乗制度の全廃,⑭ 特別繰越休暇の新規積立中止と用途の限定化,⑮ 機内食やクリーニングクーポンの支給基準の見直し,⑯ 社員食堂の閉鎖等の各種措置を講じた(甲52,149,306,307,乙10,18,36)。 イ解雇回避措置の相当性に関する判断前提事実及び上記アの認定事実を前提として,被告の解雇回避努力を基礎付ける解雇回避措置の相当性について判断するに,被告は,有効配置数から必要稼働数を控除した削減必要数に合致する削減数を確保するために,まずは,複数回に渡る希望退職措置に基づく希望退職の募集を実施しており,可能な限り希望退職の募集によって必要な削減数を確保しようとしたものと評価することができる上,一連の希望退職措置以外にも,各種解雇回避措置を実施しており,別紙「解雇回避措置一覧」の「内容・効果等」欄記載のとおり,一定の効果もあったことが認められ,可能な限り本件解雇を回避しようとした姿勢がうかがわれる。 また,一連の希望退職措置における退職条件は,① 会社都合と同率の支給係数による基本退職金の支給,② 定年退職に準じた事由による退職として扱うものとすることによる特別退職金の支給(こ われる。 また,一連の希望退職措置における退職条件は,① 会社都合と同率の支給係数による基本退職金の支給,② 定年退職に準じた事由による退職として扱うものとすることによる特別退職金の支給(このような特別退職金の性質からすると,定年まで長年勤務し,会社に貢献したことに対する功労褒賞的な性格のものと評価すべきであるから,希望退職募集との関係では特別加算の性質がある。),③ 解雇予告手当に代わるものとして,1か月分の賃金相当額を80万円とし,原則としてその6か月分の一時金の支給(甲4によれば,被告の就業規則上支払が義務付けられている解雇予告手当は,60日分の平均賃金であるから,これを超える部分には特別加算の性質がある。),④ 改定前の制度による企業年金(前判示のとおり,受給額の約53%減額ではなく,約30%の減額)の存続,⑤ 年次- 76 -有給休暇の買取り,⑥ 再就職支援サービスの提供等であり,一旦倒産して会社更生手続下にある被告の逼迫した経済状況の下での退職条件としては,破格の内容であると評価することができる。 以上によれば,被告が本件解雇に先立ち行った解雇回避措置は,いずれも合理的なものであり,総合して,破格の内容のものであるということができるから,被告は,本件解雇に当たって十分な解雇回避努力を尽くしたものと認めるのが相当である。 ウ解雇回避措置に関する原告らの反論に対する検討(ア) 希望退職措置における年齢条件の不十分さについて原告らは,被告が実施した一連の希望退職措置について,希望退職の募集に当たって,若年層を対象者から排除する年齢制限を付す合理的理由はない旨主張する。 しかしながら,乙20によれば,被告における客室乗務職の自己都合退職率は,20代後半から30代後半までの間の若年層において極端に 対象者から排除する年齢制限を付す合理的理由はない旨主張する。 しかしながら,乙20によれば,被告における客室乗務職の自己都合退職率は,20代後半から30代後半までの間の若年層において極端に高いことが認められる中,再建途上にある被告が,総人件費の圧縮を図りつつ,社内の指揮命令系統や連携体制を保持しながら,円滑な組織運営を図るとともに,先達のノウハウを途切れなく後進に引き継がせ,永続した企業体として存続発展していくために,希望退職の募集に当たって,対象者を人件費の高額な中高年層に限定し,若年層を対象者から排除してその温存を図ることには,合理性が認められるというべきである。 このように解したとしても,希望退職の募集対象から排除された若年層に該当する者であっても,自己都合による退職は禁じられていないのであるから,何らの不都合はない。 したがって,原告らの上記主張は採用することができない。 (イ) 希望退職措置における傷病条件の不十分さについて原告らは,平成20年以降に傷病により欠勤,休職,休業した者が希- 77 -望退職措置に応募する場合には,被告が希望退職措置の適用を認めることを条件としているから,当該傷病条件の該当者が希望退職措置に応募しても,被告の適用承認がなければ,希望退職が認められるわけではなく,病欠者の人数が直ちに希望退職措置の対象者の人数であると考えることはできないし,当該傷病条件の該当者には個人面談も退職勧奨もなく,自分が希望退職措置の対象者であると自覚することもできないから,条件として不十分であると主張するもののようである。 しかしながら,希望退職措置に応募した傷病者が被告にとって有為の人材であると認められる場合にこれを慰留する余地を残す内容には合理性があるし,希望退職措置を実施するに当たって,必ずし ようである。 しかしながら,希望退職措置に応募した傷病者が被告にとって有為の人材であると認められる場合にこれを慰留する余地を残す内容には合理性があるし,希望退職措置を実施するに当たって,必ずしも対象人数を明示する必要もない。また,希望退職措置の募集の案内文書(甲10,17,22)が発出されている中で,当該傷病条件の該当者が自分が対象者であると自覚することもできない状況であったとの主張は,憶測の域を出るものではない。 原告らは,希望退職措置の募集対象者を有給休暇取得者にまで拡大しなかったことの不当性も主張するが,有給休暇取得者まで拡大すれば,その対象者は,かなりの人数に上ることも予想され,希望退職者選別の基準となり得ないばかりか,前記のとおり再建途上にある被告が,総人件費を圧縮しつつ,円滑な組織運営を図るとともに,蓄積されたノウハウを伝達し,永続した企業体としての存続発展を企図するという希望退職措置の導入に当たっての趣旨に反することにもなるから,このような措置を取らない経営判断にはなお,合理性を認めることができる。 したがって,原告らの上記主張は,いずれも採用することができない。 (ウ) リフレッシュ休職,部分就労,一時帰休等の不実施について原告らは,本件解雇に当たって,被告が解雇回避措置としてリフレッシュ休職,部分就労,一時帰休等のワークシェアリングの考え方に基づ- 78 -く措置を採用しなかったことが不合理であると主張する。 しかしながら,被告においては,本件更生計画及びその基礎となる本件新事業再生計画に基づく事業規模の縮小を前提として必要稼働数を算出し,これを超える人員削減のために本件解雇に臨んだものであるところ,原告らが被告側に要求していた上記各措置(甲25ないし27)は,いずれも必要稼働数を超える過 規模の縮小を前提として必要稼働数を算出し,これを超える人員削減のために本件解雇に臨んだものであるところ,原告らが被告側に要求していた上記各措置(甲25ないし27)は,いずれも必要稼働数を超える過大な有効配置数を前提に仕事を分け合うことを内容とするものであり,上記計画に基づく事業規模の縮小を前提とする人員削減の直接的な処方箋とはなり得ない。しかも,① 上記各措置は,その都度,従業員の応募を前提とする制度であって,恒常的に機能する制度ではないこと,② 部分就労に関しては,被告のCSA制度上,客室乗務職については,連続する就労義務のない10日間があらかじめ定型的に確保されていることから(甲51),乗務,スタンバイ勤務,訓練等の業務指示を柔軟に行うことが困難になること,③ 一時帰休については,その間の賃金,休業手当が発生するのであるから,人件費の削減という意味でも,解雇回避のための抜本的な措置とはなり得ないこと,④ 上記各措置では,在籍社員数が変わらないため,訓練,社会保障といった雇用者1人当たりに掛かる固定経費を削減することができず,同様に解雇回避のための抜本的措置とはなり得ないことから,解雇回避措置として上記各措置を採用しなかったことが,経営判断として不合理であったということはできない。 したがって,原告らの上記主張も採用することができない。 (4) 人選基準の合理性についてア本件人選基準の設定理由本件人選基準が,① 休職者基準,② 病欠日数・休職日数基準,③ 人事考課基準,④ 年齢基準を併用し,①から④までを順に適用するものであったことは,前提事実(12)のとおりである。また,証拠(乙24,37)- 79 -及び弁論の全趣旨によれば,被告が本件人選基準を設定したのは,一次的には,企業貢献度,特に将来の被告の業務 のであったことは,前提事実(12)のとおりである。また,証拠(乙24,37)- 79 -及び弁論の全趣旨によれば,被告が本件人選基準を設定したのは,一次的には,企業貢献度,特に将来の被告の業務に対する貢献度に着目し,二次的には,被害度に着目した結果であると認めることができる。そして,本件人選基準のうち,被告が病欠日数・休職日数基準及び人事考課基準中の各基準を設定した具体的な理由の要旨は,以下のとおりであると認めることができる。すなわち,(ア) 病欠日数・休職日数基準のうち,a 平成22年4月1日から同年8月31日までの5か月間の病気欠勤日数が41日以上,又は平成20年4月1日から平成22年8月31日までの2年5か月間の病気欠勤日数が81日以上という基準は,それぞれの期間における繰越可能な日数も含めた有給休暇の最大付与数に着目して設定したものである。 b 平成22年4月1日から同年8月31日までの5か月間の休職期間が2か月以上,病気欠勤日数及び休職期間の合計が61日以上,又は平成20年4月1日から平成22年8月31日までの2年5か月間の休職期間が4か月以上,病気欠勤日数及び休職期間の合計が121日以上という基準は,有給休暇日数20日分と月間休日日数10日分とを合計すると休職期間1か月間分に相当することに着目して,それぞれの期間における上記各期間及び日数を病気欠勤日数に相当するものとして設定したものである。 c 病気欠勤日数が,平成20年度に13日以上,平成21年度に13日以上,平成22年4月1日から同年8月31日までの5か月間に6日以上という基準は,それぞれの期間中に平均して1か月当たり1日を超えて欠勤する者の場合,日常的に健康に不安があり,貢献度が低いことに着目して設定したものである。 (イ) 平成19年度から平成 日以上という基準は,それぞれの期間中に平均して1か月当たり1日を超えて欠勤する者の場合,日常的に健康に不安があり,貢献度が低いことに着目して設定したものである。 (イ) 平成19年度から平成21年度までの間の3年の人事考課が毎年2- 80 -以下であった者という人事考課基準は,当該期間を通じて人事考課が2以下である者の場合,標準的な人事考課の水準を満たさず,貢献度が低いことに着目して設定したものである。 イ本件人選基準の合理性に関する判断上記によれば,本件人選基準については,① 本件解雇対象者を人選するに当たって,現在及び過去の一定の期間内において休職又は病気欠勤のために就労していない者について,将来に亘って企業貢献度が低いものと判断し,年齢基準及び変更後の病欠日数・休職日数基準の適用においては,対象者の被害度も考慮したものとなっていること,② 休職者基準,病欠日数・休職日数基準及び年齢基準については,いずれも使用者側の恣意の入る余地の少ない客観性に優れた基準であるということができること(なお,人事考課基準については,被告における人事考課制度の内容が必ずしも明らかでないから,基準としての客観性の程度は不明であるが,本件解雇に当たって人事考課基準が適用された事実はないから,当該基準の当否を判断する必要はないし,その当否判断が不能であるからといって,当該基準の該当者がいない以上,当該基準を含む本件人選基準全体の合理性を欠くことにはならないというべきである。),③ 病欠日数・休職日数基準で設定された具体的な休職期間及び病欠日数についても,過去の一定期間を対象期間として対象期間ごとに年次有給休暇の日数,前年度から繰り越される日数を含めて1年間に取得可能な有給休暇の最大日数,月間休日の日数を考慮したものとなっていること,④ ついても,過去の一定期間を対象期間として対象期間ごとに年次有給休暇の日数,前年度から繰り越される日数を含めて1年間に取得可能な有給休暇の最大日数,月間休日の日数を考慮したものとなっていること,④ 平成22年9月27日に関係者に発表されたところ,本件人選基準適用の基準日が同年8月31日とされたのは,発表に当たって参照し得る従業員の勤務状況を示す最新データが同日のものであったからであり,最新データを基に各基準の設定がされていること,⑤ 被告は,その発表後,労使交渉の末,労働組合側からの提案を受け入れ,同年11月15日付けで,病欠日数・休職日数基準を- 81 -一部変更して,同基準の該当者であっても,同年9月27日現在で職場復帰している者について,一定の要件の下,本件解雇の対象外とする旨の救済措置を設けるに至ったこと,を指摘することができる。 以上の諸事情を総合すれば,本件人選基準は,本件解雇に当たっての人選基準として合理的な内容のものであるということができる。 ウ人選基準の合理性に関する原告らの反論についての検討(ア) 休業者基準,病欠日数・休職日数基準の合理性についてa 原告らは,客室乗務職の休職,病欠は,それが業務上のものであるか否かを問わず,一律に,過酷な保安業務に熱心かつ献身的に従事したことによるものであるから,企業貢献度がないとするのは相当でないとして,休職者基準,病欠日数・休職日数基準が不合理であると主張するもののようである。 しかしながら,私傷病による休職,病欠に基づく不就労がある者について,休職,病欠のない他の社員と同様の企業貢献度を認めるのは相当でないし,そもそも,業務に起因する傷病による休業期間中及びその後30日間の解雇は許されないから(労働基準法19条1項),当該解雇制限の適用のある者は ない他の社員と同様の企業貢献度を認めるのは相当でないし,そもそも,業務に起因する傷病による休業期間中及びその後30日間の解雇は許されないから(労働基準法19条1項),当該解雇制限の適用のある者は,休職者基準,病欠日数・休職日数基準による解雇対象者から除外される。そして,業務起因性のある傷病による休職,病欠歴があるものの,上記解雇制限期間のものではないため,当該解雇制限の適用のない者であっても,休職,病欠のない他の社員と比較した場合には,不就労の点で企業貢献度が劣ると評価せざるを得ない。 したがって,休職者基準,病欠日数・休職日数基準の不合理性をいう原告らの上記主張は採用することができない。 b また,原告らは,中長期休職者の復帰手続が厳格すぎる上,職場復帰が認められにくい運用がされていること,復帰手続に時間が掛かり- 82 -すぎることから,職場復帰がほぼ確実な状況下にある者であっても一律に休職者基準,病欠日数・休職日数基準に該当してしまう可能性があり,不合理であると主張する。 しかしながら,客室乗務職の業務が乗客の安全に直結する保安業務を含むものであることからすると,心身共に健康上の問題のない者が担当すべきであり,休職,病欠者の健康状態を点検し,就労の可否を判断するに当たっては,産業医を含む専門家の医学的知見を踏まえつつ,一定の時間を掛けて厳格な手続を履践すべきものと解するのが相当であるし,被告の復帰手続において,職場復帰が認められにくい運用がされていると認めるに足りる証拠もない。そして,確定的な復帰判断がされない状況下では,将来の貢献度を推し量ることも困難であるというほかない。 したがって,原告らの上記主張も採用することができない。 c さらに,原告らは,① 休職者基準,病欠日数・休職日数基準を設定 では,将来の貢献度を推し量ることも困難であるというほかない。 したがって,原告らの上記主張も採用することができない。 c さらに,原告らは,① 休職者基準,病欠日数・休職日数基準を設定することによって,将来的に,病気欠勤の取得が抑止される結果,航空機の安全運行に支障を来す事態にもなり得るし,② 休職者基準,病欠日数・休職日数基準の該当者が本件解雇の対象者となるのに対し,企業貢献度の点で同じ休職,病欠者であっても,上記基準の対象期間以外の期間に病欠したり,休職したり,病欠の代わりに有給休暇を取得したりしたため,上記基準に該当しない結果,本件解雇の対象者とならないことと比較して,著しく不合理である旨主張する。 しかしながら,①については,単なる憶測にすぎず,これを認めるに足りる統計的裏付け等があるわけではないし,上記基準の設定によって航空機の安全運行に支障を来す旨主張する点で論理の飛躍があるといわざるを得ない。②については,そもそも人選基準というのは,人員の選別のための条件を備え,その適用によって当該条件に該当す- 83 -る者と該当しない者とを区別することを本質とするのであるから,このような基準を採用する以上,限界事例にある者等の間で,当該基準の適用の結果が大きく異なる事態となるからといって,そのことのみから当該基準が不合理であるということはできない。 したがって,上記①,②の事情から上記基準が不合理であるということはできないし,本件解雇の必要性の大きさ等に照らしても,上記基準の不合理性をいう原告らのその余の主張も,いずれも採用することができないというべきである。 (イ) 年齢基準の不合理性についてa 原告らは,航空機の安全運航に資する保安業務には,知識,経験の豊富なベテラン客室乗務職の方が適切に対 ,いずれも採用することができないというべきである。 (イ) 年齢基準の不合理性についてa 原告らは,航空機の安全運航に資する保安業務には,知識,経験の豊富なベテラン客室乗務職の方が適切に対応し得るのであるから,年齢の高い者から順に解雇するという内容の年齢基準は不合理であると主張する。 保安業務を円滑に行うには,一定の知識,経験の積重ねが有用であることは首肯することができるところであるが,他方,将来の貢献度を考えた場合,残された勤務期間の短い高年齢層よりも勤務期間の長い若年層を残す年齢基準は合理的であるし,人員削減によって人件費を圧縮するためには,賃金の高額な高年齢層から順に解雇するのが効果的でもある。そして,一般的に客室乗務職を少なくとも数年経験すれば,保安業務等についても一定のレベルには到達するものと考えられるし(平成20年から平成22年に機体異常を発見して表彰された客室乗務職の中には2,3年目の者もおり,現在はフライトアテンダント,キャビンコーディネーター,キャビンスーパーバイザーという職位になっているものの,昔の,スチュワーデス,アシスタントパーサー,パーサーという職位でいえば,3,4年の経験を積んで1つ上の職位であるアシスタントパーサーになれば,狭い範囲ではあるけれ- 84 -ども,客室の統括をすることができるようになることは,原告P37本人も供述するところである。),本件解雇は53歳の者の一部と54歳以上の者がその対象者となったものであるが,本件解雇によって,保安業務についての知識,経験豊富なベテラン客室乗務職がすべて解雇されるものでもなく(乙36によれば,平成23年1月1日現在で53歳以上の客室乗務職は31名,社歴20年以上の者が約1000名も残っていることを認めることができる。),ノウハウの伝承に がすべて解雇されるものでもなく(乙36によれば,平成23年1月1日現在で53歳以上の客室乗務職は31名,社歴20年以上の者が約1000名も残っていることを認めることができる。),ノウハウの伝承に支障を来すものとも考えられない。 したがって,原告らの上記主張は採用することができない。 b また,原告らは,高年齢層の者は,再就職の機会が少ないし,生活費がかさむライフステージにあるから,若年層と比較して解雇による被害度が大きいとして,年齢基準の不合理性を主張する。 一般に年齢が高くなるほど再就職の機会が少なくなるのは公知の事実であるが,当然に個人差があるし,年齢が高い者は,若年層と比較して,勤続年数が長いために獲得賃金も多額に上り,退職後の年金受給においても有利な地位にある上,本件解雇においては,退職に伴う退職金,特別退職金及び一時金の支給があるのは,前提事実(17)のとおりであるところ,このような退職給付においても,高年齢層の方が有利に取り扱われている。また,高年齢者の中には子育ても終了した者もおり,その生活費がかさむとも一概にはいえないし,これを認めるに足りる証拠もない。 したがって,原告らの上記主張も採用することができない。 (ウ) 不当労働行為について原告らは,本件人選基準は,P9の弱体化を企図し,比較的年齢構成の高いP9の組合員,特に組合活動の中核を担う幹部組合員を狙い撃ちした恣意的なものであって,著しく不合理である旨主張する。 - 85 -しかしながら,本件人選基準に該当したのは,必ずしもP9の組合員ばかりではないから(甲133,乙31),本件人選基準の該当者にP9の組合員が多いとの事実のみから,被告がP9の弱体化を企図したと認めることはできないし,本件全証拠によっても,被告がP9弱体化を企 ばかりではないから(甲133,乙31),本件人選基準の該当者にP9の組合員が多いとの事実のみから,被告がP9の弱体化を企図したと認めることはできないし,本件全証拠によっても,被告がP9弱体化を企図して本件人選基準を策定したと認めることはできない。 したがって,原告らの上記主張も採用の限りではない。 (5) 解雇手続の相当性についてア認定事実前提事実及び(2)アの認定事実に加えて,証拠(甲18,102,107,115,224,239ないし262,乙5,9,22ないし24,32,51)及び弁論の全趣旨によれば,被告と原告らの所属するP9との間で実施された事務折衝及び団体交渉の概要は,別紙「人員調整に関する交渉経緯」記載のとおりであると認めることができる。すなわち,(ア) 被告は,本件更生計画案を更生裁判所に提出した後,本件解雇に至るまでの間,P9との間で,合計10回の事務折衝と合計17回の団体交渉とを行い,その都度,関係資料を配付しながら,① 希望退職の募集に関する事柄,② 希望退職措置の応募状況,③ 人員削減の必要性に関する事柄,④ 稼働ベースの考え方,⑤ 被告が実施した解雇回避措置の内容,⑥ 原告らが提案するワークシェアリング等の解雇回避措置の実施の可否,⑦ 本件人選基準案の内容に関する事柄,⑧ 整理解雇を実施する場合の退職条件等の種々の事情について真摯に説明したほか,ときには,予定外の議題について議論したり,P9からの質問に応対したりするなどして,予定時間を超過することもあった。 (イ) 被告においては,従前から客室乗務職等の職種別人員配置計画を策定するに当たって,稼働ベースの考え方を採用していた。 (ウ) 被告は,平成22年9月2日に開催されたP9との間の事務折衝の- 86 -場において,具体的な客室乗務職 職等の職種別人員配置計画を策定するに当たって,稼働ベースの考え方を採用していた。 (ウ) 被告は,平成22年9月2日に開催されたP9との間の事務折衝の- 86 -場において,具体的な客室乗務職の人員削減目標を頭数で約570名と説明し,人員削減目標の算定方法に関するP9側からの「これは稼働者ベースということですか。」との質問に対して,削減目標については,事業計画や希望退職措置の一次募集の結果等を踏まえて再精査した上で人員計画上の稼働ベースに基づき改めて説明する旨を述べた(また,この事務折衝の場において,P9は当初,平成22年春に稼働ベースで573名という数字を労務部からもらっていたが,今回は頭数で約570名になったという理解でよいかとも発言していることは,前記「(2) 人員削減の必要性」において認定したとおりである。)。 (エ) 平成22年9月28日に開催された被告とP9との間の事務折衝の場において,P9は,「部分就労は以前0.5だと言っていたではないか。」と発言していた。 イ解雇手続の相当性に関する判断上記アの認定事実によれば,被告は,本件解雇に至るまでの間,P9との間で,事務折衝及び団体交渉を頻繁に重ね,その都度,関係資料を配付して真摯に説明することを心掛けながら,一連の団体交渉等を通じて,被告の再建状況を踏まえた人員削減の目標数,算定方法,数値の変更があった場合には,その変更後の数値及び変更理由等の人員削減の必要性のほか,原告らの処遇に直接的には影響しない海外地区ナショナルスタッフとの間の契約関係の終了,執行役員数の削減,役員報酬の減額等に関する措置を除く解雇回避措置の内容,採用理由等を説明した上,本件人選基準案の内容,採用理由等についても説明し,P15からの指摘に応じて人選基準内容の一部を変更するなどしたこと(前 員報酬の減額等に関する措置を除く解雇回避措置の内容,採用理由等を説明した上,本件人選基準案の内容,採用理由等についても説明し,P15からの指摘に応じて人選基準内容の一部を変更するなどしたこと(前提事実(12)のとおり)が指摘できるのであるから,本件解雇に当たっての手続的相当性は,十分に備えているものと評価するのが相当である。 ウ解雇手続の相当性に関する原告らの反論に対する検討- 87 -(ア) 実際の協議状況についてa 原告らは,被告が遅くとも平成22年6月7日の時点で人員削減の規模及び時期に関して基本的な方針を確定していたにもかかわらず,方針確定の過程においてP9を一切関与させなかったから,解雇手続の相当性を欠く旨主張する。 しかしながら,同日の時点において,被告が人員削減を整理解雇の方法によって実現する可能性を意識していたとしても,整理解雇実施の最終決定をしていたことまでを認めるに足りる証拠はなく,極力希望退職の募集によって人員削減を実現しようとしていたことが認められるにとどまり,そうすると,未だ人員削減の規模及び時期等の経営判断の内容を労働組合に示して調整を図るべき段階にはなかったということができるから,原告らの上記主張は採用することができない。 b また,原告らは,遅くとも同年6月の段階で,「稼働ベース」という被告による自在の操作を許す概念を道具として,削減対象者を高年齢者から順に特定し,P9の組合活動の中心を担う客室乗務職を整理解雇の対象者とする工作を開始しながら,同年9月末から労働組合側との間で人員調整施策に関する団体交渉が開始した後,ようやく「稼働ベース」の考え方に基づき削減目標を算出していることを説明するに至ったのであるから,解雇手続の相当性が認められない旨主張する。 しかしながら,稼 施策に関する団体交渉が開始した後,ようやく「稼働ベース」の考え方に基づき削減目標を算出していることを説明するに至ったのであるから,解雇手続の相当性が認められない旨主張する。 しかしながら,稼働ベースの考え方は,被告において従前から人員計画の策定時に採用されてきた概念であり,様々な勤務形態の従業員の労働力を客観的に把握し,事業運営に必要な労働力を正確に算出する方法として合理性を有し,P9も稼働ベースの考え方を所与の前提として労使交渉に臨んできた経緯があることは,前記アの認定事実記載のとおりである。 したがって,人員削減数を算定するに当たって稼働ベースの考え方- 88 -を採用したことを非難する原告らの上記主張は,採用することができない。 c さらに,原告らは,被告が人員削減の決定の当初から整理解雇方針を固め,P9に対しその方針を一方的に提示するばかりで,P9との間の事務折衝及び団体交渉において,P9の情報開示の要求や各種提案をことごとく無視したのであり,被告とP9との間の事務折衝及び団体交渉は極めて不十分なものであったから,解雇手続の相当性を欠く旨主張する。 しかしながら,① 被告は,本件解雇通知後も含め,本件解雇に至るまでの間,複数回に亘って希望退職措置を実施して任意の退職者を募っていること,② 人員削減目標数に達した整備職及びその他の地上職については,整理解雇が実施されていないこと,③ 上記イで判示したとおり,被告は,本件人選基準についてP15から提案された修正意見に応じ,本件人選基準の基準の一部を提案のとおり変更している一方,P9の提案は,被告が採用し得ないワークシェアリングの提案であったこと,④ P9は,被告との間の一連の事務折衝及び団体交渉において,一貫して人選基準案について団体交渉に応じるつもりは ている一方,P9の提案は,被告が採用し得ないワークシェアリングの提案であったこと,④ P9は,被告との間の一連の事務折衝及び団体交渉において,一貫して人選基準案について団体交渉に応じるつもりはないとの交渉姿勢を示していたこと(証人P35,原告P36)などの諸事情に照らせば,P9と被告との間の本件解雇を巡る協議が不十分であったとする原告らの上記主張は,採用することができないといわざるを得ない。 (イ) 「S10」「S19」スケジュールアサインによる退職強要について原告らは,被告の原告らに対する「S10」「S19」スケジュールアサインの継続が仕事外しの退職強要そのものであり,その交渉姿勢は,不誠実であり,信義則に反する交渉態度であるから,本件解雇に至る手- 89 -続は不相当であったと主張する。 確かに,「S10」「S19」スケジュールは,具体的な乗務予定のないスタンバイ勤務であり,搭乗予定の客室乗務職の急病時等に備えて搭乗待機する通常のスタンバイ勤務とは性質を異にするものであるから,搭乗を強く希望する原告らのストレスとなる面があることは否定し得ないが,当時はすでに平成22年度確定下期便数計画が実施されており,搭乗便数が減少していた上に,原告らに対して「S10」「S19」スケジュールアサインがされた当時,被告は,約200名にも上る整理解雇対象者(運航乗務職約110名,客室乗務職約90名)に対する面談を実施しており,手続の円滑な遂行のために原告らをスタンバイ勤務とすることに合理性があったというべきであるから,「S10」「S19」スケジュールアサインが直ちに仕事外しの退職強要であるということはできない。 したがって,原告らの上記主張も採用の限りではない。 (ウ) 整理解雇に至る過程での争議権投票への支配介入について スケジュールアサインが直ちに仕事外しの退職強要であるということはできない。 したがって,原告らの上記主張も採用の限りではない。 (ウ) 整理解雇に至る過程での争議権投票への支配介入について原告らは,被告側が,平成22年11月16日のP9との間の事務折衝において,原告ら加入のP9の争議権の確立によって,被告が二次破綻の危機に直面する旨の発言をしたことは,支配介入の不当労働行為を構成し,このような不当労働行為の下で強行された本件解雇は,手続的相当性を欠くと主張する。 しかしながら,整理解雇の要素としての人員削減の必要性,解雇回避努力,人選の合理性,手続の相当性の有無の問題と不当労働行為の成否の問題とは,性質を異にする別個の問題である。加えて,整理解雇の手続の過程において何らかの不当労働行為があったとしても,当該整理解雇の手続的相当性が直ちに減殺されることになるわけではなく,当該不当労働行為の性質,程度,同行為に至る経緯のほか,整理解雇手続への- 90 -影響の有無,程度等を慎重に検討する必要があるというべきところ,本件全証拠によっても,本件解雇手続における上記発言の性質,程度,当該発言に至る経緯,その影響の有無,程度等は必ずしも明らかでない。 したがって,原告らの上記主張も採用することができない。 (6) 総合評価(まとめ)以上のとおり検討してきたことを前提として,整理解雇としての本件解雇の効力について改めて判断する。 第1に,巨額の負債を抱え,これまで何度も策定された再建策が失敗に終わり,その後のタスクフォースの助言,指導及びP14の支援の下での再建も断念せざるを得なかった被告が,厳格な手続要件を備えた法的再建手続の下で事業再建を図るべく本件会社更生手続開始の申立てに至ったことについては,やむを得ない事情があっ 導及びP14の支援の下での再建も断念せざるを得なかった被告が,厳格な手続要件を備えた法的再建手続の下で事業再建を図るべく本件会社更生手続開始の申立てに至ったことについては,やむを得ない事情があったということができるし,そのような状況にあった被告は,いわば一旦沈んだ船であり,二度と沈まないように,大幅な事業規模の縮小に伴う適正規模の人員体制への移行を内容とする事業再生計画を策定することが必要不可欠であったということができる。また,被告がP14からの出資金を3年の法定期限内に返済するためには,主要行からリファイナンスを受けて,これを原資に本件更生計画における更生債権の弁済計画を前倒しして実行することにより,本件会社更生手続を遅くとも平成23年3月31日までに終結させた上,株式会社としての安定的な経営実績を一会計年度に亘って積み上げ,株式を再上場するという枠組みの中で資金調達を図ることが有効であるとの経営判断は,合理的なものあったということができる。そして,その際,大幅な更生債権の減額を余儀なくされる主要行にリファイナンスの実行を求めるためには,主要行等の債権者をはじめとする多くの利害関係人との間の利害調整の上で策定された本件更生計画及びその基礎となる本件新事業再生計画が滞ることなく完全に実行に移される必要があったことも認められる。そうすると,上記内容の盛り込まれた事業再生- 91 -計画の下では,大幅に縮小される事業規模に応じた必要稼働数を超える人員が余剰となることは必至であり,これを解消するための人員削減は,限られた期間内に実施すべき上記枠組みの資金計画の中で,リファイナンスのための条件設定及び実施に至る期間も見込んだ結果として,平成22年12月31日までに実行する必要性が極めて高かったというべきである。 第2に,被告は,必要 枠組みの資金計画の中で,リファイナンスのための条件設定及び実施に至る期間も見込んだ結果として,平成22年12月31日までに実行する必要性が極めて高かったというべきである。 第2に,被告は,必要稼働数を超える人員の削減を図ると同時に,将来の企業貢献度を考慮して人員構成の再構築を企図し,従業員の年齢構成を若年層を厚くする方向に転換すべく,まずは,再三に亘る希望退職措置の方法で任意の退職者を募集し,その対象を休職者,病欠者のほか,概ね中高年層に限定する内容の人選基準を設けたが,一連の希望退職措置においては,一旦倒産状態に陥った更生会社であるにもかかわらず,退職金の割増支給を含む非常に手厚い退職条件を提示した上,併せて,その当時,採用可能な各種の解雇回避措置を実施した。しかしながら,被告は,恒常的な営業利益の上昇を必ずしも期待することができず,リスク耐性も未だ盤石とはいい難い中,上記枠組みの資金計画に基づく債務の弁済計画の実現のための限られた期間内に,希望退職の募集等の方法によっては,必要稼働数を超える人員の削減を実現することができなかった。そのような中,原告ら客室乗務職の勤務実態に即した稼働ベースの考え方で算定した必要稼働数を超える人員の削減を整理解雇(本件解雇)の方法によって実施することは,やむを得なかったものと評価することができるし,本件解雇における人員削減数についても,その必要性の程度との関係で均衡を保ったものであったということができる。 第3に,本件解雇に当たって採用された本件人選基準のうちの休職者基準,病欠日数・休職日数基準,年齢基準は,いずれも使用者である被告の恣意の入る余地の少ない客観的なものであったし,人事考課基準についてはそもそも該当者がなく,当該基準の当否を判断するまでもない。そして,休職者基準,病欠日数・休職 基準は,いずれも使用者である被告の恣意の入る余地の少ない客観的なものであったし,人事考課基準についてはそもそも該当者がなく,当該基準の当否を判断するまでもない。そして,休職者基準,病欠日数・休職日数基準については,過去の病欠歴を基に被告に対する- 92 -将来の貢献度を推定する基準として合理的であるということができるし,年齢基準についても,若年層に厚い人員構成への転換を図るべく,被告に対する将来の貢献度とともに,解雇対象者の被害度を客観的に考慮した結果として設定されたものであって,合理性があるものと評価することができる。しかも,解雇対象者に提示された退職条件は,一旦倒産状態に陥って会社更生手続下にある企業の整理解雇であることに鑑みると,割増退職金の支給を含む破格の内容であったと評価することができる。 第4に,被告は,本件解雇に至るまでの間,P9との間で,再三に亘って事務折衝及び団体交渉を重ね,その都度,関係資料を配付して人員削減の必要性等についての被告の立場を真摯に説明したり,予定された交渉時間を超過して協議に応じたりしており,手続的相当性も備えていたものということができる。 以上の第1から第4までの判示を総合すると,本件解雇は,被告の就業規則52条1項4号の「企業整備等のため,やむを得ず人員を整理するとき」に該当し,整理解雇として,客観的に合理的な理由があり,社会通念上相当であると認めることができるから,有効であるというべきである。 第6 結論よって,原告らの本訴請求は,いずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第11部 裁判長裁判官白石 哲 - 93 -裁判官菊池憲久 判決する。 東京地方裁判所民事第11部 裁判長裁判官 白石哲 裁判官 菊池憲久 裁判官 吉川昌寛

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