令和7年9月30日宣告令和6年(わ)第19号殺人被告事件判決被告人 A 主文 被告人を懲役12年に処する。 未決勾留日数中350日をその刑に算入する。 理由 (犯行に至る経緯) 被告人は、平成25年頃から、被告人方において、両親、実妹、実弟であるB(以下「被害者」という。)と同居生活を送っていたところ、被害者は、とりわけ、令和2年頃からは、ゲームをしていて苛立った時などに、被告人方の壁やドアに穴をあけたり、物を壊したりするなどの粗暴な行動を継続的に繰り返すようになり、被告人に対しても蹴るなどの暴力を加えることもあった。そのため、被告人は、被害者に 対する不満や恐れ、怒りの感情を鬱積させていった。そのような状況下で、被告人は、令和5年10月22日未明、ゲームをしていたところ、被害者から文句を言われて蹴られるなどしたことで、腹立ちを覚え、被害者の殺害を考えるようになった。同月23日、被告人は、犯罪捜査を題材にしたテレビドラマを視聴したことを契機に柳刃包丁を凶器とすることを思い付いたが、実行に及ぶまでには至らなかった。被 告人は、同月26日頃、被告人方において、日頃から自分が管理を任されていたお茶の入ったポットを被害者に捨てられたなどとして被害者と揉め事になるなどしたことから、それまでの鬱積した感情を抑え切れなくなり、被害者に対する殺意を抱きつつ、台所に置いてあった柳刃包丁を選んで持ち出すなどして、被害者がいる1階仏間に赴いた。 (罪となるべき事実) 被告人は、令和5年10月26日、長崎県島原市ab番地所在の被告人 つ、台所に置いてあった柳刃包丁を選んで持ち出すなどして、被害者がいる1階仏間に赴いた。 (罪となるべき事実) 被告人は、令和5年10月26日、長崎県島原市ab番地所在の被告人方1階仏間において、B(当時31歳)に対し、殺意をもって、その左胸部等を柳刃包丁(刃体の長さ約21センチメートル)で複数回突き刺し、よって、同日午前3時42分頃、同市c町d番地所在のC病院において、同人を胸部刺切創に伴う心臓損傷に基づく失血死により死亡させて殺害したものである。 (争点に対する判断)第1 本件の争点被告人が判示日時・場所、方法等により被害者を殺害した事実は証拠上明らかであり、本件の争点は、被告人の責任能力の有無及び程度である(なお、被告人及び弁護人は、殺意の存在は積極的に争っておらず、殺意の発生時期を含めた当裁 判所の認定事実は、前記「犯行に至る経緯」の項で示したとおりである。)。 第2 前提事実 1 本件各証拠から、以下の事実が認められる(なお、年は、特に表示のない限り、全て「令和5年」である。)。 ⑴ 被告人は、平成17年2月頃から、耳鳴りや他人から笑われるなどの幻聴 が聞こえるようになり、実父に反発するようになった。同年10月、喉に盗聴器を仕掛けられたなどの被害妄想の症状から統合失調症と診断された。また、平成18年5月、実父に火ばさみで襲いかかり、怪我を負わせ、統合失調症による自閉、追跡妄想、幻覚の症状が認められたため、医療保護入院した。 ⑵ その後、被告人は、薬物療法等により症状が改善したため、約4か月後には退院し、以後は1か月に1回程度通院し、仕事には就かず、父母らと居住する自宅で生活していた。被告人は、退院後、本件発生時に至るまでの間にも、幻聴が聞こえることがあったが、そ したため、約4か月後には退院し、以後は1か月に1回程度通院し、仕事には就かず、父母らと居住する自宅で生活していた。被告人は、退院後、本件発生時に至るまでの間にも、幻聴が聞こえることがあったが、それが幻聴であるとの自覚があり、幻聴について相談した実母から聞き流すようにと言われて、やり過ごすなどし ており、幻聴による顕著な異常行動に及ぶことはなかった。 ⑶ 被害者は、平成20年、軽度知的障害者として障害者手帳を交付され、平成23年から仕事をしていたが、退職し、平成25年11月から両親や被告人らと自宅で同居するようになったが、ゲームばかりするようになり、引きこもりのような生活を送るようになった。被害者は、この頃には、時折、過剰に怒りやすい状態になり、食器を割るなどの粗暴な言動が見られるように なり、とりわけ、令和2年頃からは、ゲームをしていて苛立ったときなどに、被告人方の壁やドアに穴をあけたり、物を壊したりするなどの粗暴な言動に継続的に及ぶようになり、被告人は、被害者に対する不満や恐れ、怒りの感情を募らせていた。 ⑷ そのような状況下で、被告人は、10月22日未明、被害者から「ゲーム するなら出ていけ。」などと言われて蹴られたことに腹立ちを覚え、被害者の殺害を考えるようになったが、一方で、無期懲役になったりするのが怖いなどと考えて、被害者の殺害を逡巡していた(なお、弁護人は、10月22日の上記暴力被害は、被告人が事件から1年以上経過した後にD医師の鑑定時に初めて供述した事実であり、捜査段階では供述しておらず、同旨をいう 末弟のEの証言も信用できないことから、実際にあった出来事かは定かではない、と主張する。しかし、Eが、あえて被告人に不利な虚偽の証言をする動機はない。また、弁護人は、目撃時にEが眼鏡を いう 末弟のEの証言も信用できないことから、実際にあった出来事かは定かではない、と主張する。しかし、Eが、あえて被告人に不利な虚偽の証言をする動機はない。また、弁護人は、目撃時にEが眼鏡を掛けていなかったことも問題視するが、蹴られたかどうかの識別に大きな影響はない。したがって、Eの証言は信用することができ、被告人が10月22日に被害者から上記暴 力被害に遭った事実が認められる。)。 ⑸ また、被告人は、10月23日、犯罪捜査を題材としたテレビドラマを視聴したことを契機として、柳刃包丁であれば、貫通率が高いなど考えて、被害者を殺害するための凶器として使用することを考えた。 ⑹ 詳しい経緯は不明であるものの、被告人は、10月26日頃、被告人方に おいて、同人が日常的に管理していたお茶のポットを被害者が捨てたなどと して、被害者との間で揉め事となるなどし、それまでの鬱積した不満を抑えることができなくなり、被害者に対する殺意を抱きつつ、台所の包丁立てに並んだ包丁等の中から柳刃包丁を選んで持ち出し、更に懐中電灯も持った上で、仏間にいた被害者のもとに行き、その身体の中心部分を狙って複数回突き刺した(被害者の遺体には、左胸部等にその際に生じた10か所の刺切傷 が認められ、刺切創のうち5か所は、浅いもので約10cm、深いものでは約19cm近くに達しており、肋骨を切断したり、心臓まで達したりしている。)。なお、当時、仏間の隣の和室では、被告人の実母や実妹が就寝していた。 ⑺ その後、異変に気付いて起きた実母が、離れにいる実父を呼びに行き、救 急車を呼ぶなどしている間、被告人は、血が付いた凶器の包丁を洗い、自分が着ていた血の付いた上衣を着替えるなどしたが、現場から逃走することはなかった。 2 以上の事実 る実父を呼びに行き、救 急車を呼ぶなどしている間、被告人は、血が付いた凶器の包丁を洗い、自分が着ていた血の付いた上衣を着替えるなどしたが、現場から逃走することはなかった。 2 以上の事実に関して、被告人は、後述するD医師による鑑定時(令和6年11月26日から令和7年2月7日)と被告人質問時(令和7年9月18日)とで異 なる供述をしている部分がある。すなわち、①10月22日の被害者からの暴力被害について、鑑定時には「倒してこい。」というEの声が聞こえた旨述べていたが、被告人質問では特に供述していない。②また、犯行当日の被害者との揉め事について、鑑定時には被害者からお茶に塩を入れられた旨述べていたが、被告人質問ではお茶に何かされたりしたことを否定している。③犯行直前に聞 こえたという幻聴についても、鑑定時には誰の声と特定せずに「しとかんね。」という幻聴が聞こえた旨述べていたが、被告人質問では小中学校時代の同級生の女性の声で、被害者を刺しとかないともっと酷い目に遭わせるなどといった内容の幻聴が聞こえた旨供述している。④さらに、犯行後の行動について、鑑定時には犯行後に凶器を庭に埋めることを考えたり、「蛇に咬まれた」と言い逃れ をしようと考えたりした旨述べていたが、被告人質問では凶器を洗ったのは血 が怖かったからであるなど述べ、自己防衛的な意図はなかった旨供述している。 3 また、被告人は、自分が被害者を刺したのは3回であり、その後、現場に臨場した救急隊員3名が、1回ずつ被害者を刺して、罪を軽くしてやる旨言ってきたと供述している。 第3 D医師の精神鑑定 1 鑑定の内容D医師の鑑定の要旨は、①被告人は、犯行当時、統合失調症に罹患し、妄想・幻聴等の陽性症状と自閉・意欲低下等の陰性症状が見られ、社会復 供述している。 第3 D医師の精神鑑定 1 鑑定の内容D医師の鑑定の要旨は、①被告人は、犯行当時、統合失調症に罹患し、妄想・幻聴等の陽性症状と自閉・意欲低下等の陰性症状が見られ、社会復帰するまでではないが、投薬により本人が過ごしやすい環境で何とか地域生活が送ることができている状態であった、②被害者は、過去10年間、家財道具の破壊等の粗 暴な行為を継続しており、被告人は蹴られる等の身体的暴力も受けていたところ、力では負けてしまうので我慢を強いられていた、③被告人は、そのような状況下で、10月21日頃に被害者から蹴られるなどの暴力被害を受けたことで、被害者に対し殺意を抱いた(その際、被告人は、Eの言葉で「倒してこい。」という声が聞こえたと供述する。)、④被告人は、同月26日、被害者からお茶に 塩を入れられた、お茶のポットを捨てられたなどとして、それが直接の引き金となり被害者の殺害に及び、殺害に至った最終局面では、「しとかんね。」と声が聞こえたと述べるが、先に述べた同月21日頃の暴力被害により既に殺意が生じており、犯行までの5日間、「無期懲役になる」などと考えて逡巡し、利害得失の検証を続けており、同月23日にはテレビドラマの影響で柳刃包丁を凶 器として選択していることから、殺意の発生や手段選択は、犯行当日にあったとされる幻覚・妄想に時間的に先行しているから、幻覚・妄想の内容は殺意に基づくものといえる、⑤また、被告人は、凶器の包丁を庭に埋設することを考える、包丁の血痕を念入りに洗うなどの自己防衛的行動をとっている、⑥最終的な引き金となった被害者による犯行直前のお茶のポットの投棄等が事実ではな く、幻覚・妄想である可能性は否定できないが、仮にそうであるとしても、正常 心理の延長線上にある疑心暗鬼ある 的な引き金となった被害者による犯行直前のお茶のポットの投棄等が事実ではな く、幻覚・妄想である可能性は否定できないが、仮にそうであるとしても、正常 心理の延長線上にある疑心暗鬼あるいは邪推といえる内容であり、犯行の必要条件ではないし、「倒してこい。」「しとかんね。」という幻聴は、自己の思考が音声化されて、幻聴として聞こえるという正常心理に近い性質のもので、ストレス関連性では正常心理が反映された幻聴が聞こえやすいといえる、⑦また、被告人の供述は、一貫性が欠如しており、時系列の混乱等も見られ、また、非現 実的な内容(救急隊員による被害者の刺傷等)が混在し妄想的要素も存在するところ、これらは、追想妄想による記憶の改変や本人の性質等に起因するものと考えられ、後になってした供述は信頼できないと考えられる、⑧結論としては、被告人の精神病症状の犯行への影響は、多少はあるものの、その程度は限定的であり、犯行の主たる要因は暴力被害体験による現実的な恨みであり、統合 失調症の影響により被害者からの粗暴な言動を被害的に捉えて増幅させた可能性があるほか、善悪の判断はできているが、軽度知的能力障害の影響により倫理的に深い部分や社会的な影響までは深く理解できずに抑止力となることが難しく、状況を言語化して他者に助けを求めて解決することを困難にした可能性はあるが、精神疾患が本件犯行に及ぼした影響は強いものではなかった、とい うものである。 2 信用性の検討D医師の鑑定人としての資質・能力、鑑定手法等に問題はなく、捜査資料や被告人との面接等を含め十分な根拠資料に基づいて鑑定を実施し、国際的にも承認された基準に沿って診断をしており、公正さ等一般的な信頼性に疑問を生じ させる事情はない。また、前述のとおり、被告人が体験したとさ 接等を含め十分な根拠資料に基づいて鑑定を実施し、国際的にも承認された基準に沿って診断をしており、公正さ等一般的な信頼性に疑問を生じ させる事情はない。また、前述のとおり、被告人が体験したとされる幻聴の内容や犯行後の自己防衛的とも取れる行動(包丁の洗浄等)に関する意味づけに関して、鑑定時と被告人質問時とでは被告人の供述に変遷が見られることから、鑑定の結論への影響が問題となるものの、D医師は、変遷後の被告人の供述の信用性が乏しいと考えられる理由について具体的に根拠を示して説明している し、仮に変遷後の被告人の供述を前提としても、幻聴の内容は、正常心理の延長 上のものと理解できるし、事後の行動の意味づけも、通常あり得る理解可能なものであり、病的なものの介在は見られないから、鑑定結果に影響しない、と説明しているところ、これらの説明は説得的で合理的なものである。 この点に関して、弁護人は、10月21日頃に被害者からの暴力被害を契機として被告人が殺意を抱いたとの前提には疑問があると主張する。しかしなが ら、D医師によれば、「殺意」を抱いたとの発言は、被告人が自発的にしたものであり、被告人が軽い意味合いで「殺意」という言葉を用いていたことから、その段階で殺害を決断したとまでいえるかについては慎重に判断すべきであると考えたが、一方で、被告人が「無期懲役」という言葉も用いていたことから、それなりの重みをもって「殺意」という言葉を用いていると理解し、10月21日 頃に上記暴力被害に遭ったことにより、被害者に対するそれ以前からの鬱積した不満等が、攻撃的な感情に転じた契機となったと考えられ、そのような理解は、その後の被告人の行動とも整合していることから、上記暴力被害が被害者の殺害を考える起点となったと分析しているところ、そのよ た不満等が、攻撃的な感情に転じた契機となったと考えられ、そのような理解は、その後の被告人の行動とも整合していることから、上記暴力被害が被害者の殺害を考える起点となったと分析しているところ、そのような分析・理解に不合理な点はない。 その他、弁護人が主張している点も踏まえても、D鑑定は信用できる。 第4 検討以上のD医師の鑑定を踏まえて、本件犯行時の被告人の責任能力の有無及び程度について検討する。①被告人は、犯行当時、統合失調症に罹患し、軽度知的能力障害もあった。もっとも、被告人には、平成17年から幻聴が見られるようにな り、平成18年に医療保護入院し、退院後は仕事に就いていないが、自宅で家事をするなどして日常生活を送っており、本件犯行に至るまでの間、幻覚・妄想といった統合失調症の症状が活発に発現する状況にはなく、発病から長期間経過し症状は慢性化した状態(低め安定の状態)であり、本件犯行までは顕著な問題行動は見られなかった。②被告人は、長年にわたり粗暴な行動等を繰り返す被害者に対し、 不満や恐れ、怒りの感情を鬱積しており、10月22日の被害者からの暴力被害 を契機に被害者の殺害を考えるようになり、その5日後に直接の引き金となった出来事が生じたことで本件犯行に及んでおり、被害者殺害の動機形成の契機が存在する。また、犯行直前には幻聴が存在した可能性があるものの、それらの幻聴は、自己の思考が声として聞こえたものと解され、正常心理の延長といえる性質のものであることから幻聴はあくまで被告人が自分の意思で決定した犯行を後押 ししたにとどまる。そして、被告人が抱いた被害者に対する怒りの感情が、強い殺意にまで至ったのは、軽度知的能力障害による不満耐性の低さなども影響しており、殺意が幻覚・妄想により何の原因もなく 押 ししたにとどまる。そして、被告人が抱いた被害者に対する怒りの感情が、強い殺意にまで至ったのは、軽度知的能力障害による不満耐性の低さなども影響しており、殺意が幻覚・妄想により何の原因もなく突発的に生じたものではない。したがって、本件犯行の動機・経緯は、統合失調症の幻覚・妄想の存在を踏まえても、理解可能である。③被告人は、家族が隣の部屋で寝ている状況で犯行に及び、公判供 述によれば、血が怖いからなどという理由で包丁を洗っているとのことであって、その場の状況にはそぐわない行動をとっているといえなくもないが、他方で、犯行時の一連の行動は、殺傷能力の高い柳刃包丁をあえて選択した上で懐中電灯を持ち出し使用し、人体の中心部を狙って力を入れて集中的に刺すなど、被害者を殺害するという目的にかなった行動を一貫してとっているといえる。また、包丁 を洗ったり、上衣を着替えたりしていることは、前述した被告人の公判供述を前提とすれば、自己防御的な行動と捉えることはできないにしても、少なくとも、被告人が自己の意思で行動していたことの表れということはできる。以上の事情は、犯行当時、被告人には犯罪行為を行わないように自分の意思で思い止まることができる能力が備わっていたことを示す事情といえる。④被告人は、10月22日 に被害者の殺害を考えた後、「無期懲役になる。」等と考え、5日間犯行を逡巡している。被告人が、刑罰による制裁を受けることについて、その社会的な意味等をどこまで深く理解していたかは疑問であるものの、上記の程度の理解ができるのであれば、犯罪行為を思い止まる契機となり得る程度には行為の違法性を認識できる実質的な能力は備わっていたと認められる。 第5 結論 以上によれば、本件犯行の動機形成や犯行に統合失調症や知的能力障 為を思い止まる契機となり得る程度には行為の違法性を認識できる実質的な能力は備わっていたと認められる。 第5 結論 以上によれば、本件犯行の動機形成や犯行に統合失調症や知的能力障害が一定程度影響を及ぼしてはいるものの、その程度は限定的なものであり、被告人が、統合失調症による幻覚・妄想の圧倒的な影響により殺人を犯したとか、その影響を著しく受けた状態で殺人を犯したといった疑いは生じず、被告人には責任能力が認められる。 (量刑の理由)被告人は、殺傷能力の高い柳刃包丁を用いて、身体の中心部分である胸部等を複数回にわたり突き刺しており、前述した刺切創の深さや臓器の損傷状況等によれば、相当強い力で手加減なく刺したことが認められる。犯行態様は、危険かつ悪質であり、強い殺意もうかがわれる。被害者は、31歳の若さで、突然、その生命を奪われ ており、結果は取り返しのつかない重大なものである。また、既に述べたとおり、統合失調症や軽度知的能力障害が、本件犯行に及ぼした影響は限定的であり、被害者の殺害を選択した意思決定に対する非難を大きく減じる事情とはいえない。もっとも、被告人は、同居する被害者の長年にわたる粗暴な言動に悩まされ、統合失調症に罹患し知的能力障害もあったことから自立が困難な状態にあった。家庭内で問題の 解決を図ることも、周囲に援助を求めることも、現実的には困難な中で、本件犯行に至った経緯には酌むべき点がある(このような被告人やその家族の置かれた状況を考慮せず、検察官が主張するように、怒りによる身勝手な犯行とだけ評価することは一面的といえ、賛同し難い。)。 以上の犯情に関する評価等を踏まえると、本件は、凶器を用いた殺人1件で被害 者との関係が親・子以外の親族、量刑上考慮した前科がない事案の中で、やや重 することは一面的といえ、賛同し難い。)。 以上の犯情に関する評価等を踏まえると、本件は、凶器を用いた殺人1件で被害 者との関係が親・子以外の親族、量刑上考慮した前科がない事案の中で、やや重い部類に位置するといえることから、主文のとおり刑を量定した(なお、親族間の殺人事件であることを考慮すると、両親の処罰感情は量刑上それほど考慮できない。)。 (検察官松永竜樹、奧江隆太、弁護人大田真和(主任)、山口裕介(いずれも国選)各出席) (求刑-懲役15年) 令和7年10月1日長崎地方裁判所刑事部 裁判長裁判官太田寅彦 裁判官上原美也子 裁判官井上裕貴
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