令和5年11月9日判決言渡 令和5年(ネ)第10048号販売差止等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所令和2年(ワ)第31524号) 口頭弁論終結日令和5年9月7日判決 控訴人(第1審被告) 株式会社エムディ企画 同訴訟代理人弁護士村岡千鶴子 同小沼晶裕 被控訴人(第1審原告)エア・ウェアーインターナショナルリミテッド 同訴訟代理人弁護士波田野晴朗 同髙山大蔵 同松本陸 同石戸あかね 同橋沙耶香 同補佐人弁理士栗下清治 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 3 原判決主文3項は、仮に執行することができる。 事実及び理由 (略語は原判決の例による。) 第1 事案の要旨 被控訴人は、「ドクターマーチン」のブランドで靴商品等を展開するところ、控訴人の販売するブーツ(控訴人各商品)は、被控訴人各商標権を侵害し、また、被控訴人の商品等表示として形態周知となっているブーツ(被控訴人商品)との混同を生じさせる不正競争を構成すると主張する。 第2 当事者の求めた裁判 1 被控訴人の請求 (1) 控訴人は、控訴人標章を付した控訴人商品1を販売し又は販売のために展示してはならない。 (2) 控訴人は、控訴人商品2を販売し又は販売のため 事者の求めた裁判 1 被控訴人の請求(1) 控訴人は、控訴人標章を付した控訴人商品1を販売し又は販売のために展示してはならない。 (2) 控訴人は、控訴人商品2を販売し又は販売のために展示してはならない。 (3) 控訴人は、控訴人各商品を廃棄せよ。 【請求の法的根拠】対象商品控訴人商品1控訴人商品2請求(1)①被控訴人商標権1 に基づく商標法36 条1 項に基づく差止請求②被控訴人商標権2 に基づく商標法36 条1 項に基づく差止請求③不競法3 条1 項(2 条1 項1 号)に基づく差止請求(①~③は選択的併合) 請求(2) 不競法3 条1 項(2 条1 項1号)に基づく差止請求請求(3)①被控訴人商標権1 に基づく商標法36 条2 項に基づく廃棄請求不競法3 条2 項(2 条1 項1号)に基づく廃棄請求 ②被控訴人商標権2 に基づく商標法36 条2 項に基づく廃棄請求③不競法3 条2 項(2 条1 項1 号)に基づく廃棄請求(①~③は選択的併合) 2 原審の判断及び控訴の提起原審は被控訴人の請求を全部認容(控訴人商品1については、被控訴人商標権1に基づく請求を認容、控訴人商品2については、被控訴人商品の形態(ア)につき周知の商品等表示該当性を認めて認容)する判決をしたところ、これを不服とする控訴人が控訴を提起した。 【控訴の趣旨】(1) 原判決を取り消す。 (2) 被控訴人の請求をいずれも棄却する。 第3 争点及び当事者の主張 1 本件の争点は、原判決の第2の3(4頁)記載のとおりである。 2 当事者の主張は、当審における当事者の補充的主張を以下に補足す 人の請求をいずれも棄却する。 第3 争点及び当事者の主張 1 本件の争点は、原判決の第2の3(4頁)記載のとおりである。 2 当事者の主張は、当審における当事者の補充的主張を以下に補足するほか、原判決の第2の4(4頁~)に記載のとおりである。 【当審における控訴人の補充的主張】(1) 被控訴人商品の形態の周知の商品等表示該当性(争点2-1)関係ア原判決は、被控訴人商品の形態を形態(ア)~(ク)の各要素に分解する 形で商品等表示該当性を検討・判断しているが、被控訴人の本来の主張内容は、上記各要素が組み合わさった全体の形態をもって商品等表示性が認められるというものであって、原審の判断とは齟齬がある。これは弁論主義に反するものというべきである。 イ原判決は、被控訴人商品の「黄色のウェルトステッチ」のみについて特 別顕著性と周知性を肯定して「商品等表示」該当性を認めたが、まず、 特別顕著性については、黒を含む暗色系のウェルトと明るい色合いの縫合糸との組み合わせによって明暗のコントラストを演出する靴製品は、国内外の各靴製造業者が長年にわたって販売してきており(新たに提出する証拠として乙32、33)、そこにさしたる個性や特異性はなく、特別顕著性は認められない。 周知性についても、原判決が根拠とする国内の過去の流通状況は証拠上不明であり、長期的な視点に立った経時的観察をすべきである。原判決は、周知性の否定につながるアンケート結果である本件控訴人調査(乙15~18)について、「認識の主体」(需要者)の想定に関し、「革靴及びブーツの購入及び使用に関心のある一般消費者」に絞り込まれて いないからとして排斥したが、控訴人各商品及び被控訴人商品のいずれ 18)について、「認識の主体」(需要者)の想定に関し、「革靴及びブーツの購入及び使用に関心のある一般消費者」に絞り込まれて いないからとして排斥したが、控訴人各商品及び被控訴人商品のいずれも履物(靴製品)という一般的な消費財であるから、本件控訴人調査のとおり、需要者は広く一般消費者とすべきである。 (2) 控訴人各商品に係る混同惹起行為該当性(争点2-4、5)関係原判決は、控訴人商品2の販売等が被控訴人商品との混同を生じさせると したが、被控訴人が「黄色のウェルトステッチ」の形態を継続的独占的に使用していたと証拠上認定することはできない。しかも、控訴人各商品は5000円程度、被控訴人商品は2万6000円程度であり、両商品の価格帯から想定される購買層には大きな違いがある。また、被控訴人商品は天然皮革等の高級な素材が用いられ、縫製等の作りも丁寧な仕事によってなされてお り、重厚感があり一見して上等上質な商品であることが明白であるのに対し、控訴人各商品は安価な合成皮革が用いられ、縫製等も粗雑な感が否めず、両者の混同が生じるとは考えられない。 【被控訴人の主張】(1) 被控訴人商品の形態の周知の商品等表示該当性(争点2-1)関係 ア原審で主張したとおり、被控訴人商品の形態的特徴である「黄色のウェ ルトステッチ」、「ソールエッジ」、「ヒールループ」及び「ソールパターン」には顕著な形態的特徴があり、それぞれが単独で出所識別機能を有しているところ、これらの形態的特徴が組み合わされ、さらには「アウトソール踵部分の傾斜」、「丸みを帯びた靴の前部(トゥ)」、「ピューリタンステッチ」、「8ホール」といった形態的特徴も加わることで、被控訴 人商品の形態に極めて強 が組み合わされ、さらには「アウトソール踵部分の傾斜」、「丸みを帯びた靴の前部(トゥ)」、「ピューリタンステッチ」、「8ホール」といった形態的特徴も加わることで、被控訴 人商品の形態に極めて強い出所識別力が認められる。原判決は、こうした被控訴人の主張のうち、識別力が最も強い「黄色のウェルトステッチ」に着目して商品等表示性を認めたものであり、原判決の判断は何ら弁論主義に反するものではない。 イ 「黄色のウェルトステッチ」に関する形態は、被控訴人が被控訴人商品 の販売を開始した昭和60年当時から、他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有していたもので、その後少なくとも控訴人が控訴人商品2を販売した令和2年までの35年近くにわたり、他の同種商品には見られない形態として被控訴人によって継続的かつ独占的に使用されてきた(甲75、106、117、142~147)。 これに対し、控訴人は、控訴審において新たに乙32(パラブーツ、フランス)及び乙33(バーウィック、スペイン)を提出し、上記の形態の靴製品は、国内外の各靴製造業者が長年にわたって販売してきたと主張するが、これらの証拠によっても、記載された靴製品の販売時期や販売数量は不明である。しかも、乙32及び乙33の靴製品のステッチ は白色又はベージュであり、被控訴人商品の上記形態とは異なるものである。 ウ控訴人は、「黄色のウェルトステッチ」の周知性に関し、控訴人各商品及び被控訴人商品が一般的な消費財であるから、広く一般消費者を対象とした本件控訴人調査の結果を採用すべきであるとも主張する。 しかし、不競法2条1項1号の周知性の判断は、商品・営業の性質、 取引の形態、宣伝活動の態様といった事情を考慮して判断すべきで 主張する。 しかし、不競法2条1項1号の周知性の判断は、商品・営業の性質、 取引の形態、宣伝活動の態様といった事情を考慮して判断すべきであり、同号の「需要者」は当該商品や営業の取引者、需要者をいうと解するのが相当であるから、革靴及びブーツの購入及び使用に関心のない者までを対象者として含んだ本件控訴人調査を採用することはできない。 (2) 控訴人各商品に係る混同惹起行為該当性(争点2-4、5)関係 被控訴人が「黄色のウェルトステッチ」の形態を継続的独占的に使用していたことは前記(1)イのとおりであり、この点についての証拠の欠如を論難する控訴人の主張は失当である。 また、控訴人は、控訴人各商品と被控訴人商品の価格差を指摘して混同が生じないとするが、前者について5000円程度、後者について2万60 00円程度であることを前提にしても、取引者及び需要者の心理を基準にすれば、その程度の価格差から、想定される購買層に大きな違いがあると推認することはできない。控訴人が自認するように、控訴人商品において安価な合成皮革が用いられ、縫製等も粗雑であったとしても、前記認定の「黄色のウェルトステッチ」の形態の継続的独占的使用状況に鑑みれば、やはり混同 を生じさせるおそれがあるといえる。 第4 当裁判所の判断当裁判所は、形態(ア)~(ク)を全て備える被控訴人商品の全体の形態が周知の商品等表示(不競法2条1項1号)に該当するという理由により、同法3条1項及び2項に基づく控訴人各商品に係る差止請求及び廃棄請求を全部認容すべき ものと判断する。その理由は次のとおりである。 1 認定事実認定事実は、原判決の第2の2(3頁~)及び第3の1(29頁~)に記載のとお 商品に係る差止請求及び廃棄請求を全部認容すべき ものと判断する。その理由は次のとおりである。 1 認定事実認定事実は、原判決の第2の2(3頁~)及び第3の1(29頁~)に記載のとおりであるから、これを引用する。 2 被控訴人商品の形態の周知の商品等表示該当性その1(いわゆる特別顕著 性の有無)について (1) 上記認定事実のとおり、被控訴人のブランド「ドクターマーチン」の商品として我が国で販売されている「1460 8ホールブーツ」(革製のブーツ)は、その大半のモデルにおいて、黄色のウェルトステッチ(形態(ア))、ソールエッジ(形態(イ))、ヒールループ(形態(ウ))、ソールパターン(形態(エ))、アウトソール踵部分の傾斜(形態(オ))、丸みを帯び た靴の前部(形態(カ))、ピューリタンステッチ(形態(キ))及び8ホール(形態(ク))という形態上の特徴を備えていると認められる。 その個別的な特徴は、原判決の第3の3(2)ア~ク(41頁~)のとおりであると認められる(ただし、①ア~クの各項中の「(ウ) 周知性について」及び「(エ) 小括」の各小項目部分は除く。また、②ア~クの各項中の「(イ) 特別顕著性について」の表題を、いずれも「(イ) 個別要素としての顕著な特徴について」に改め、③ア~ウの各(イ)中の「他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有していたものと認められる/認めることができる。」を、いずれも「被控訴人商品全体の特別顕著性を基礎づける個別要素としての顕著な特徴を有していたものと認められる。」に改め、④エ、カ~クの各(イ)中の 「本件全証拠によっても、特別顕著性を基礎付ける事実を認めることはできない。」及びオ(イ)中の「原告商品の形態 の顕著な特徴を有していたものと認められる。」に改め、④エ、カ~クの各(イ)中の 「本件全証拠によっても、特別顕著性を基礎付ける事実を認めることはできない。」及びオ(イ)中の「原告商品の形態(オ)が他の同種商品とは異なる顕著な特徴であるとまでは認められないというべきであり、他に特別顕著性を基礎付ける事実を認めるに足りる証拠はない。」を、いずれも「これだけを独立してみれば、さほど特徴的な形態とまではいえないものの、他の特徴的 な形態との組合せにより商品全体の特別顕著性を導く一つの要素にはなり得るものと解される。」に改める。)。 (2) 以上のとおり、被控訴人商品は、特に形態(ア)(黄色のウェルトステッチ)、形態(イ)(ソールエッジ)及び形態(ウ)(ヒールループ)の3点において、他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有し、強い出所識別力を発揮し ていると認められる。さらに、個別にみればさほど特徴的な形態とまではい えない形態(エ)~形態(ク)とも組み合わせて全体的に観察すれば、他の同種商品(ブーツ)には全く見られない顕著な特徴を有するものといえる。 すなわち、上記の形態(ア)~(ク)の特徴を全て備える被控訴人商品は、いわゆる特別顕著性を備えるものと認められる。 (3) これに対し、控訴人は、黒を含む暗色系のウェルトと明るい色合いの縫 合糸との組合せによって明暗のコントラストを演出する靴製品にさしたる個性や特異性はない旨主張する。確かに「黒色のウェルトと明るい黄色の糸のステッチ」という形態だけを単独で取り上げれば、靴製品のパーツ(ウェルト、ステッチ糸)において普通に使用されることが想定される、ありふれた色彩のうちの任意の組合せにとどまるものであり、それだけから特別顕 ッチ」という形態だけを単独で取り上げれば、靴製品のパーツ(ウェルト、ステッチ糸)において普通に使用されることが想定される、ありふれた色彩のうちの任意の組合せにとどまるものであり、それだけから特別顕著性 を認めることは、過剰な独占を認める結果になり相当でない。黒と明るい黄色とのコントラストによってウェルトステッチが明瞭に視認できるという効果があるにしても、控訴人の主張するとおり、これに類する明暗のコントラストが採用されている靴製品は他にも普通に見受けられるところ(乙32、33)である。 しかし、本件において、被控訴人は、被控訴人商品を「被控訴人主張形態(ア)ないし(ク)の形態的特徴を全て有するもの」として定義し(原判決別紙「原告商品目録」)、これらの「形態上の特徴を全て備える被控訴人商品の全体の形態」が被控訴人の周知の商品等表示であるとして、不競法2条1項1号の不正競争に係る請求を組み立てているところである(原判決15頁2 3行目~24行目)。 当裁判所は、被控訴人のこの主張を前提に、黄色のウェルトステッチ(形態(ア))だけでなく、形態(ア)~(ク)を全て備える被控訴人商品の全体の形態が商品等表示に該当するかどうかを検討し、そのような観点から、被控訴人商品の特別顕著性を肯定したものである。控訴人の主張は、黄色のウェルト ステッチ(形態(ア))だけに着目した議論としては首肯できるにしても、当 裁判所の上記判断を左右するものではない。 (4) なお、これに関連して、原審の判断について付言しておく。 原審は、被控訴人商品が備える形態のうち、黄色のウェルトステッチ(形態(ア))だけを取り上げて、これが周知の商品等表示に当たると判断しているところ、この して、原審の判断について付言しておく。 原審は、被控訴人商品が備える形態のうち、黄色のウェルトステッチ(形態(ア))だけを取り上げて、これが周知の商品等表示に当たると判断しているところ、この判断は、控訴人が控訴理由で批判しているとおり、弁論主義 に反するものであったといわざるを得ない。もっとも、被控訴人は、当審において、原審の判断は被控訴人の主張と異なるものではないとの趣旨を述べているから、その瑕疵は治癒されていると解されるが、実体判断として採用できないことは上述のとおりである。 3 被控訴人商品の形態の周知の商品等表示該当性その2(周知性の有無)に ついて(1) 上記1の認定事実のとおり、被控訴人商品を含む「1460 8ホールブーツ」は、昭和60年以降現在に至るまで、被控訴人の日本子会社であるドクターマーチンジャパンを通じて我が国において販売されていること、その販売チャンネルは、同社の運営する実店舗72店舗及び公式オンラインス トアのほか、靴小売りチェーン、セレクトショップ等の正規取扱店が含まれること、「1460」シリーズの売上げは、令和3年度だけで10万足近く、販売額で14億円余りに上ること、ドクターマーチンジャパンは、ファッション雑誌を中心に「ドクターマーチン」の広告を継続的に掲出しており、被控訴人商品の写真が掲載されたものもあること、被控訴人商品は、雑誌等 メディアにも再三取り上げられており、その中には、「一目でドクターマーチンだとわかる黄色のウェルトステッチやロゴ入りのヒールループなど…も特徴」、「ドクターマーチンのトレードマークともいえるイエローステッチ」など、特に形態(ア)に具体的に言及し、これがドクターマーチンのブーツの最大の特徴であるとの趣旨のコメントをするものが多いことが認められる ドクターマーチンのトレードマークともいえるイエローステッチ」など、特に形態(ア)に具体的に言及し、これがドクターマーチンのブーツの最大の特徴であるとの趣旨のコメントをするものが多いことが認められる。 さらに、被控訴人の依頼により行われたアンケート調査(本件被控訴人 調査)では、「店舗、通信販売サイト、雑誌等で革靴やブーツを見たり、過去1年以内に革靴やブーツを購入した15歳から59歳までの全国の男女」を対象に(1019人から回答)、被控訴人商品の写真を示した上で、当該写真のように靴の外周に沿って黄色のステッチのある革靴やブーツはどこのブランドの商品だと思うかと質問したところ、「ドクターマーチン」を想起 できた者は、30.7%(自由回答式)~37.6%(選択式)であったというのである(前記引用に係る認定事実)。 以上によれば、形態(ア)~(ウ)の特徴を備える被控訴人商品の形態は、需要者の間に広く認識されており、周知の商品等表示に該当するものと優に認められる。 (2) これに対し、アンケートの対象者を「15歳から69歳までの全国の男女」とする本件控訴人調査の結果では、アンケートで示された写真から「ドクターマーチン」を想起できた者は全回答者の5.47%などとされている(乙15~18)ところ、控訴人は、これは周知性を否定するものであり、アンケートの対象者として、控訴人各商品及び被控訴人商品の需要者である 一般消費者を広く対象とする本件控訴人調査の結果を採用すべきであると主張する。 しかし、本件控訴人調査は、被控訴人商品の全体の形態を示すことなく、ウェルト、黄色のウェルトステッチ及びアウトソールが写っている部分のみを切り取った写真を示して質問が行われ と主張する。 しかし、本件控訴人調査は、被控訴人商品の全体の形態を示すことなく、ウェルト、黄色のウェルトステッチ及びアウトソールが写っている部分のみを切り取った写真を示して質問が行われている(乙15の2〔2頁〕)とこ ろ、被控訴人商品全体の形態の周知性が問題となっている本件において、適切な質問方法とはいえない。また、需要者の範囲に関しても、革靴又はブーツに関心のある消費者という属性を求めるのが適切というべきであり、この点、本件被控訴人調査の対象者はやや絞りすぎ(特に「過去1 年以内」の要件)のきらいはあるものの、本件控訴人調査よりは、実際の需要者に近い対 象者の選定になっていると評価できる。 よって、本件控訴人調査の結果を採用すべき旨をいう控訴人の主張は理由がない。 4 被控訴人商品と控訴人各商品の形態の類似性について(1) 被控訴人商品は、形態(ア)~(ク)の特徴を全て備えるものとして周知の商品等表示該当性が認められるものであるが、被疑侵害商品が上記の特徴を 全て備えていない場合であっても、同一性はともかく類似性が当然に否定されるものではない。その類否の判断に当たっては、被控訴人商品の形態の最大の特徴というべき形態(ア)(黄色のウェルトステッチ)がいわば要部となり、最も重視されるべきであるが、それ以外の形態も含めた総合的な判断が求められると解される。 (2) このような観点から検討するに、まず控訴人商品1については、証拠(甲44)及び弁論の全趣旨によれば、控訴人商品1は、前記認定(引用に係る原判決の第3の1(1)イ〔30頁~〕)の被控訴人商品の形態(ア)~(ク)の特徴を全て備えていることが認められる(原判決別紙「商品対 4)及び弁論の全趣旨によれば、控訴人商品1は、前記認定(引用に係る原判決の第3の1(1)イ〔30頁~〕)の被控訴人商品の形態(ア)~(ク)の特徴を全て備えていることが認められる(原判決別紙「商品対比表1」参照)。控訴人商品1は、被控訴人商品のデッドコピーに等しいものとい わなければならず、両者の形態が類似することは明らかである。 控訴人は、両者の形態の細部の相違(ウェルトステッチの実際の色合いがオレンジ色に近い、ヒールループの文字の一部が縫い込まれて読み取れないなど)について様々な主張をするが、需要者の注意を引くのは、被控訴人主張形態(ア)~(ク)の特徴、中でも同(ア)であり、これらの特徴を全て 備えた上での細部の違いは、両者の類似性の判断に影響を及ぼすものとはいえない。 (3) 次に、控訴人商品2については、ヒールループ(形態(ウ))を除く部分は控訴人商品1と同様であるが、被控訴人商品のヒールループには被控訴人標章が刺繍のように織り込まれているのに対し、控訴人商品2のヒール ループは、黒っぽい無地の素材が使用され、長さも被控訴人商品のものの 半分程度である点で異なっている。 しかし、このような違いはあっても、ブーツの履き口の踵側に、上方に向けて立ち上がるヒールループが設けられているという基本的な形態においては共通しており、上記の違いは、需要者において、同じシリーズ商品の異なる型番商品の細部のデザインの違いと認識する程度のものと解され る。 そして、上記の相違点のほか、控訴人商品2が被控訴人商品の形態(ア)、(イ)、(エ)~(ク))の特徴を全て備えること、特に被控訴人商品の最大の特徴と考えられる黄色のウェルトステッチ(形態(ア))において共通の特徴が 違点のほか、控訴人商品2が被控訴人商品の形態(ア)、(イ)、(エ)~(ク))の特徴を全て備えること、特に被控訴人商品の最大の特徴と考えられる黄色のウェルトステッチ(形態(ア))において共通の特徴があることを踏まえて総合的に検討すれば、控訴人商品2の形態も被控訴人 商品の形態と類似するものと認められる。 5 控訴人各商品に係る混同惹起該当性について上記認定の被控訴人商品の形態に係る商品等表示の周知性、当該商品形態と控訴人各商品の形態との類似性に照らせば、控訴人が控訴人各商品を販売した場合、被控訴人の商品との誤認混同を生じさせるものと認められる。 これに対し、控訴人は、①控訴人各商品と被控訴人商品との価格差から、購買層に大きな違いがある、②一見して上等上質な被控訴人商品と、安価な素材で縫製も粗雑な控訴人各商品の違いから混同は生じないなどと主張する。 しかし、控訴人の主張するような価格差があること(被控訴人商品の真正品は5000円程度では買えないこと)を知っている需要者ばかりとはいえな いこと、需要者において、購入しようとしている商品(ブーツ)が被控訴人商品の本来備える品質を備えているかどうかを的確に判断できるとは限らないことを考えると、控訴人の上記主張は採用できない。 6 差止め及び廃棄の必要性について以上に述べたところによれば、控訴人による控訴人各商品の販売は、不競法 2条1項1号の不正競争に当たるところ、被控訴人は、これによって営業上の 利益を侵害されているといえる。したがって、被控訴人は控訴人に対し、同法3条1項に基づく販売及び販売のための展示の差止め、同条2項に基づく控訴人各商品の廃棄を、それぞれ求めることができる(選択的併 利益を侵害されているといえる。したがって、被控訴人は控訴人に対し、同法3条1項に基づく販売及び販売のための展示の差止め、同条2項に基づく控訴人各商品の廃棄を、それぞれ求めることができる(選択的併合関係にある商標法に基づく請求は、判断を要しない。)。 第5 結論 以上によれば、被控訴人の請求は全部理由があり、本件控訴は理由がないことに帰するから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。なお、控訴人各商品の廃棄命令について、第1審段階であればともかく、現時点においては仮執行宣言を付するのが相当になっていると判断する。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官宮坂昌利 裁判官 岩井直幸 裁判官頼晋一
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