平成15(わ)307 覚せい剤取締法違反,大麻取締法違反(変更後の訴因国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律違反(以下,「麻薬特例法」という。),麻薬特例法違反被告事件

裁判年月日・裁判所
平成15年11月4日 新潟地方裁判所
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判決文本文6,086 文字)

主文 被告人を懲役5年及び罰金50万円に処する。 未決勾留日数中60日をその懲役刑に算入する。 その罰金を完納することができないときは,金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。 押収してあるビニール袋入り覚せい剤11袋(平成15年押第49号の1ないし11),注射器入り覚せい剤(同号の12),ビニールに包まれた大麻1包(同号の13),大麻2個(同号の14,15),ビニール袋入り大麻12袋(同号の16ないし19,24,26ないし32),アルミ箔とビニールに包まれた大麻1包(同号の20),ビニール袋入りでアルミ箔等で包まれた大麻4袋(同号の21ないし23,33)及びビニール袋入り大麻樹脂1袋(同号の25)をいずれも没収する。 被告人が株式会社A銀行に対してB名義で有する普通預金債権(a支店扱い,口座番号***)全額(平成15年10月3日現在の残高金16万700円及びこれに対するそれ以降の利息債権)及び被告人が日本郵政公社に対して有する通常貯金債権(b貯金事務センター扱い,記号***,番号***)残高(平成15年10月6日現在の残高金26万968円及びこれに対するそれ以降の利息債権)のうち金3万7000円(以上の一部は当庁平成15年(む)第143号没収保全請求事件で没収保全に係るもの。)を没収する。 被告人から金274万3380円を追徴する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,第1 みだりに,営利の目的で, 1 平成15年3月中旬ころから同年6月下旬ころまでの間,別表1(略)記載のとおり,前後3回にわたり,大阪市c所在のC郵便局ほか2か所から,覚せい剤であるフェニルメチルアミノプロパン塩酸塩の結晶合計約1・984グラムを代金合計8万9000円で,新潟市d所在のD郵便局留めでE宛て及び兵庫県龍野市e所在 阪市c所在のC郵便局ほか2か所から,覚せい剤であるフェニルメチルアミノプロパン塩酸塩の結晶合計約1・984グラムを代金合計8万9000円で,新潟市d所在のD郵便局留めでE宛て及び兵庫県龍野市e所在のF方宛てに,いずれも郵便小包で発送して,同郵便局及び上記F方に到達させ,同郵便局において,上記Eに覚せい剤約0・7グラムを受領させて譲り渡し,上記F方において,同人に覚せい剤約0・6グラムを受領させて譲り渡したが,上記Eをして,上記郵便局留めで受領させようとした覚せい剤約0・684グラムは同覚せい剤入り小包を警察官に発見押収されたためその目的を遂げず,さらに,別表2(略)記載のとおり,前後9回にわたり,大阪市f所在のG郵便局等から,覚せい剤様の結晶合計約7・3グラムを覚せい剤として,代金合計32万3000円で,石川県小松市g所在のH方及び上記D郵便局留めで上記E宛てに配達記録郵便等で発送し,上記H方ほか2か所において,同人及び上記Eにそれぞれ覚せい剤様の結晶を覚せい剤として受領させて譲り渡したほか,薬物犯罪を犯す意思をもって,多数回にわたり,上記G郵便局等から,覚せい剤様の結晶を覚せい剤として,大麻様の乾燥植物を大麻として,代金合計259万1180円(送料込み)で,氏名不詳の多数の者宛てに郵便小包等で発送し,氏名不詳の多数の者をして,覚せい剤様の結晶を覚せい剤として,また,大麻様の乾燥植物を大麻として受領させて譲り渡し,もって規制薬物等を譲り渡すことを業とした,2(1) 平成15年7月1日,大阪市h所在のI***号室の当時の被告人方居室において,覚せい剤であるフェニルメチルアミノプロパン塩酸塩の結晶約2・712グラム(平成15年押第49号の1ないし12はいずれもその鑑定残量)を所持した,(2) 同日,上記被告人方居室において,大麻を含有す 覚せい剤であるフェニルメチルアミノプロパン塩酸塩の結晶約2・712グラム(平成15年押第49号の1ないし12はいずれもその鑑定残量)を所持した,(2) 同日,上記被告人方居室において,大麻を含有する樹脂状固形物約0・081グラム(同号の25はその鑑定残量)及び乾燥大麻約11・232グラム(同号の13ないし24及び26ないし32はいずれもその鑑定残量)を所持した, 3 同日,上記第1の2(1)記載のI駐車場に駐車中の普通乗用自動車内において,乾燥大麻約1・633グラム(同号の33はその鑑定残量)を所持した,第2 薬物犯罪の犯罪行為により得た財産等を仮名口座に入金しようと企て,同年3月4日から同年7月2日までの間,別表3記載のとおり,前後100回にわたり,上記E及び上記Hほか多数の者に対して譲り渡した規制薬物等の送料及び対価合計290万4080円を上記譲受人らをして,被告人管理に係る仮名口座である大阪市i所在の株式会社A銀行a支店B名義の普通預金口座(口座番号***)に振込入金させ,もって薬物犯罪収益等の取得につき事実を仮装した,第3 法定の除外事由がないのに,同年6月30日ころ,上記第1の2(1)記載の被告人方居室において,覚せい剤であるフェニルメチルアミノプロパンの塩類若干量をガラスパイプに入れて加熱昇華させて口腔から吸引し,もって覚せい剤を使用したものである。 (証拠の標目)略(法令の適用)被告人の判示第1の1の所為は麻薬特例法5条4号(同法8条2項,別表1番号2については覚せい剤取締法41条の2第3項,2項,1項,その余についてはいずれも同法同条2項,1項)に,判示第1の2(1)の所為は覚せい剤取締法41条の2第2項,1項に,判示第1の2(2)及び第1の3の各所為はいずれも大麻取締法24条の2第2項,1項にそれぞれ該当す いずれも同法同条2項,1項)に,判示第1の2(1)の所為は覚せい剤取締法41条の2第2項,1項に,判示第1の2(2)及び第1の3の各所為はいずれも大麻取締法24条の2第2項,1項にそれぞれ該当するところ,判示第1の2(1)の営利目的で所持した覚せい剤並びに判示第1の2(2)及び3の営利目的で所持した大麻は,密売目的で判示第1の1の罪の行為の一環として所持していたものであるから,これらは包括して麻薬特例法5条4号に該当し,判示第2の所為は同法6条1項に,判示第3の所為は覚せい剤取締法41条の3第1項1号,19条にそれぞれ該当するところ,判示第1の罪について所定刑中有期懲役刑及び罰金刑を選択し,判示第2の罪について情状により所定の懲役と罰金を併科し,以上は刑法45条前段の併合罪であるから,懲役刑については同法47条本文,10条により最も重い判示第1の罪の刑に同法14条の制限内で法定の加重をした刑期の範囲内で,罰金刑については同法48条2項により判示第1,第2の各罪所定の罰金の多額を合計した金額の範囲内で,被告人を懲役5年及び罰金50万円に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中60日をその懲役刑に算入し,その罰金を完納することができないときは,同法18条により金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置し,押収してあるビニール袋入り覚せい剤11袋(平成15年押第49号の1ないし11),注射器入り覚せい剤(同号の12)は,判示第1の2(1)の罪に係る覚せい剤で犯人の所有するものであるから,覚せい剤取締法41条の8第1項本文により,ビニールに包まれた大麻1包(同号の13),大麻2個(同号の14,15),ビニール袋入り大麻12袋(同号の16ないし19,24,26ないし32),アルミ箔とビニールに包まれた大麻1包(同号の20),ビニール袋入 まれた大麻1包(同号の13),大麻2個(同号の14,15),ビニール袋入り大麻12袋(同号の16ないし19,24,26ないし32),アルミ箔とビニールに包まれた大麻1包(同号の20),ビニール袋入りでアルミ箔等で包まれた大麻4袋(同号の21ないし23,33)及びビニール袋入り大麻樹脂1袋(同号の25)は,判示第1の2(2),3の罪に係る大麻で犯人の所有するものであるから,大麻取締法24条の5第1項本文によりいずれもこれを没収し,被告人が株式会社A銀行に対してB名義で有する普通預金債権(a支店扱い,口座番号***)全額(平成15年10月3日現在の残高金16万700円及びこれに対するそれ以降の利息債権)及び被告人が日本郵政公社に対して有する通常貯金債権(b貯金事務センター扱い,記号***,番号***)残高(平成15年10月6日現在の残高金26万968円及びこれに対するそれ以降の利息債権)のうち金3万7000円(以上の一部は当庁平成15年(む)第143号没収保全請求事件で没収保全に係るもの。)は,判示第2の罪に係る薬物犯罪収益等又は判示第1の1の罪に係る薬物犯罪収益であるから,麻薬特例法11条1項本文,12条,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律14条,15条1項本文により没収し,判示第2の犯行により被告人が取得の事実を仮装した薬物犯罪収益等のうち274万3380円は,麻薬特例法11条1項3号の薬物犯罪収益等に該当するが,既に費消して没収することができないので,同法13条1項前段によりその価額を被告人から追徴することとする。 (量刑の理由)本件は,被告人が,多数の者に対し,インターネットを通じて覚せい剤等の違法な薬物等を譲り渡すことを業とし,また,そのための覚せい剤及び大麻を所持したという覚せい剤取締法違反及び大麻取締法違反を )本件は,被告人が,多数の者に対し,インターネットを通じて覚せい剤等の違法な薬物等を譲り渡すことを業とし,また,そのための覚せい剤及び大麻を所持したという覚せい剤取締法違反及び大麻取締法違反を伴う麻薬特例法違反(判示第1の犯行)の,その譲渡代金等を架空人名義の銀行口座に振り込ませて譲渡による利益等の取得の事実を仮装したという麻薬特例法違反(判示第2の犯行)の,さらに入手した覚せい剤を自ら吸引して使用したという覚せい剤取締法違反(判示第3の犯行)の事案である。 本件の中心となる判示第1及び第2の各犯行は,自らインターネットを通じて密売人から覚せい剤を購入し,その使用を再開した被告人が,覚せい剤等の違法な薬物がインターネットを通じて簡単に売買されていることを知り,自らも覚せい剤等を仕入れて顧客に密売して金銭的な利益を得るため,業として覚せい剤等を密売し,その際,捜査機関に犯行が発覚することを免れるために架空人名義の銀行口座に譲渡代金等を振り込ませてその取得の事実を仮装したものであって,自らの利益追求のためならばあえて違法な行為をすることも辞さないという反社会性が強く,極めて利欲的かつ自己中心的なものであり,その動機に酌量の余地は全くない。 被告人は,判示第1及び第2の各犯行を敢行するに当たり,あらかじめ顧客との連絡用のプリペイド式携帯電話と密売代金の振込先となる架空人名義の銀行口座を購入し,インターネットの匿名性を利用して違法な薬物に関する掲示板に覚せい剤等を販売する旨書き込んで顧客からの連絡を待ち,顧客からの注文を受けると,顧客に上記銀行口座に偽名を用いて代金を振り込むよう指示し,入金を確認した後,大麻については,その臭いが外部に漏れないよう対策を講じた上,OA機器の部品を発送するように装い,偽名を使用して郵便小包等で顧客のもとに覚 に偽名を用いて代金を振り込むよう指示し,入金を確認した後,大麻については,その臭いが外部に漏れないよう対策を講じた上,OA機器の部品を発送するように装い,偽名を使用して郵便小包等で顧客のもとに覚せい剤等を発送したもので,インターネットを利用することで居ながらにして多量かつ多額の違法な薬物を密売しており,その密売方法は相当に巧妙かつ用意周到で悪質である。そして,被告人は,平成15年3月ころから本件で逮捕されるまでの約4か月間にわたり,譲渡先の身元が判明しているだけでも3名に覚せい剤を合計約1・984グラム及び覚せい剤様の結晶を合計約7・3グラム譲渡し,譲渡先が判然としないものも含めると,延べ約100名に対し,覚せい剤や大麻を多数回かつ多量に密売することを繰り返し,これらの譲渡代金として多額の収入を得ていたもので,それにより得た利益は,被告人が供述するところによっても約80万円と高額である上,その大部分を上記銀行口座に振り込ませて譲渡による利益等の取得の事実を仮装し,これを生活費等として費消していたものであって,その犯情は非常に悪質である。また,判示第1の2及び3の各犯行は,その密売のための所持の一環となるものであり,その所持した量も覚せい剤が約2・712グラム,乾燥大麻が合計約12・865グラム,大麻樹脂が約0・081グラムと少なくない。さらに,判示第3の犯行は,被告人が入手した覚せい剤の使用を継続してきた一環となるものであって,被告人の覚せい剤に対する親和性,依存性が極めて顕著と言わざるを得ず,再犯の虞も高い。 以上の犯情に加え,被告人は,本件で逮捕される直前にも密売元に多量の大麻を発注するなどその密売の犯意は相当に強固なものであり,本件で逮捕されていなければさらに密売を継続し,覚せい剤等の害悪を社会に拡散していた可能性が高いこと,判 件で逮捕される直前にも密売元に多量の大麻を発注するなどその密売の犯意は相当に強固なものであり,本件で逮捕されていなければさらに密売を継続し,覚せい剤等の害悪を社会に拡散していた可能性が高いこと,判示第1及び第2の各犯行は,極めて反社会的な犯行で模倣性が高く,特に判示第2の犯行自体が,薬物犯罪収益の保持,運用を容易にして新たな薬物犯罪への再投資を助長誘引するものであり,一般予防の必要性が高いことなどを考慮すると,被告人の刑事責任は重大である。 他方,被告人は,日常的に利用されているインターネット等を悪用して覚せい剤等の密売取引を行っていたものであり,その背後には組織の存在が窺われないこと,被告人は,事実を認めて反省していること,被告人は,これまで前科がなく,本件で身柄を拘束され,公判請求されて事案の重大性を自覚して今後の更生を誓い,財団法人法律扶助協会に対し,金3万円の贖罪寄附をしていること,被告人の両親が今後の被告人の指導監督を約束し,被告人の経営する美容室のマネージャーがその経営に協力することを表明するなど更生環境が一応整っていることなど被告人のために斟酌すべき諸事情も認められるので,これらの諸情状を併せ考慮し,被告人を主文に掲げた刑に処することにした。 よって,主文のとおり判決する。 平成15年11月4日新潟地方裁判所刑事部裁判長裁判官榊五十雄 裁判官三村三緒 裁判官入江克明(別表1ないし3 略) 主文 1ないし3 略)

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