主文 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人Aは,埼玉県騎西町に対し,145万6015円及びうち145万6000円に対する平成12年8月25日から支払済みまで年5分の割合による金員並びに,被控訴人Bと連帯して,11万2012円及びこれに対する同月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被控訴人Bは,埼玉県騎西町に対し,被控訴人Aと連帯して,11万2012円及びこれに対する平成12年8月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 訴訟費用は,第1,2審を通じ,これを20分し,その19を被控訴人Aの負担とし,その余を被控訴人Bの負担とする。 5 この判決は,第2,3項に限り仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨主文同旨第2 事案の概要本件は,埼玉県騎西町において,平成11年10月27日から同月28日にわたって実施された,同町の区長・区長代理50人の視察研修・栃木県防災館見学(以下「本件視察」という。)について,本件視察は,実質的には観光及び懇親を目的とした慰安旅行に過ぎず,これに充てられた公金156万8012円(区長らの参加費用145万6000円及び被控訴人ら町職員の参加費用11万2012円)の支出は,地方財政法4条1項(最少経費原則)に反し違法であり,騎西町は同額の損害を被ったとして,騎西町の住民である控訴人が上記公金を支出した被控訴人らに対し,騎西町に代位して損害賠償(付帯請求の起算日は不法行為の日の後である各訴状送達の日の翌日であるので,被控訴人Aについては平成12年8月25日,被控訴人Bについては同月26日となる。)を請求した事案である。 被控訴人らは,平成11年10月26日(本件視察の前日)に,騎西町から全区長に対し平成11年度の行政区運営委託料の増額 年8月25日,被控訴人Bについては同月26日となる。)を請求した事案である。 被控訴人らは,平成11年10月26日(本件視察の前日)に,騎西町から全区長に対し平成11年度の行政区運営委託料の増額分(区長一人当たり2万8000円×52)として145万6000円(以下「本件増額支出」という。)が支払われたが,本件視察の旅費として支出されたものではなく,これが実際上区長らの参加費用(区長ら一人当たり2万9000円)に充てられたとしても,本件視察に参加した区長各自の判断によるものであって,上記区長らの参加費用は自己負担によるものであること,また,被控訴人らほか3人の町職員の参加費用(旅費,時間外手当,公用車使用料等及び有料道路代金)11万2012円(以下「本件旅費支出等」という。)は,公務として本件視察に参加するためのものであったから,いずれも違法な公金の支出ではないなどと主張して争った。 原審は,本件増額支出を町長として決裁した被控訴人Aの判断には裁量権の濫用・逸脱はなく,本件増額支出は違法な公金支出に当たらない,本件視察は区長会が実施主体となって各区長の負担で実施されたもので騎西町が実施したものではないが,被控訴人ら町職員が本件視察に参加したことは,町長,町職員として適切な行為であり公務と評価すべきであるとして,本件旅費支出等も違法な公金支出に当たらないとして,控訴人の損害賠償請求を棄却した。なお,騎西町の総務課長であった被控訴人Bの本件増額支出についての決裁権限の有無も,争点となり,原審は,被控訴人Bの専決権限を否定して,被控訴人Bに対する訴え中本件増額支出に係る部分(区長の参加費用145万6000円に係る損害賠償請求)を却下したが,控訴人は,この部分に対する控訴を取り下げたので,被控訴人Bに対しては,本件旅費支出に係る部分のみの訴 え中本件増額支出に係る部分(区長の参加費用145万6000円に係る損害賠償請求)を却下したが,控訴人は,この部分に対する控訴を取り下げたので,被控訴人Bに対しては,本件旅費支出に係る部分のみの訴え(11万2012円の損害賠償請求)が当審の対象となった。 本件事案の概要は,次のとおり付加するほか,原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」欄に記載のとおりであるから,これを引用する。 (控訴人の当審における主張)本件増額支出について,被控訴人らは,区長が町の行事等への関与に必要な日数を概ね10日と見積もり,これに特別職非常勤職員の職務遂行に伴う実費としての費用弁償額単価7200円を乗じた7万2000円と積算した上,予算の制約等を勘案して区長一人当たりの増額分を2万8000円の限度とし,結局,区長一人当たりの行政区運営委託料は年額6万7000円となったと主張し,原判決もこれを認めている。しかし,本件増額支出も含めて騎西町から区長に対し支給される行政委託料,行政区運営委託料の金額等具体的な内訳は,平成11年度の騎西町の予算書,決算書に一切記載されておらず,その点は区長の視察旅行が町主催で行われていた平成10年度と異ならないのであり,上記被控訴人らの主張するところは予算書,決算書等の何ら裏付けのないものである。また,区長の町の行事等への関与日数は従来から明らかであるし,7万2000円といったん積算しておきながら,増額分が2万8000円となるように決定した具体的な根拠・理由が明らかでない。 以上から見ても,本件増額支出は,視察に充てる予算額を変えずに,内部的な名目変更をしたに過ぎないものというべきである。 本件視察の日程やこの費用に行政区運営委託料の一部を充てること,その受領を区長会長に一任すること等について,区長会役員会や区長全体会議 ずに,内部的な名目変更をしたに過ぎないものというべきである。 本件視察の日程やこの費用に行政区運営委託料の一部を充てること,その受領を区長会長に一任すること等について,区長会役員会や区長全体会議で決定,了承されたことはない。しかも,本件増額支出については,実際には区長会長を経由せずに,町の会計課窓口から町職員であるC総務課主事に支払われているし,本件視察における支出処理についても,本件視察後に区長会役員会に対する報告がされただけで,区長会の監査も経ていない。また,本件視察に参加しなかった区長らへの本件増額支出分は,区長会長,役員の一致した意見の下に,C主事が保管しているが,行政区運営委託料であり個々の区長への報酬の性質を持つ以上,不参加の区長に個別に支払われるべきであるのに,そうした処理がされていない。以上から見ても,本件増額支出は,実質において,町が本件視察のために行った公金支出であることが明らかである。 本件視察には,栃木県防災館の見学が含まれているが,無料で一般市民に公開されている県外の施設にわざわざ出かけて見学することが区長らの職務上必要であったとは到底いえないし,その見学も,日帰りが十分可能な距離・内容であって,宿泊を伴う必要がなかったこと,わざわざ遠方の温泉旅館に出かけて懇親会を開催し,2日目の漁港・魚センターに立ち寄るなど,研修・視察とは全く関係がない懇親・観光の日程が含まれていたことから見て,本件視察が,研修・視察ではなく,慰安旅行であったことは明らかである。被控訴人らの主張するオウム真理教問題に関する説明等は,旅行目的と関係なく,被控訴人ら町職員の本件視察への参加は,およそ公務に当たらないので,本件旅費支出等は,社会通念を逸脱し,行政の遂行上から見ても,不必要かつ不相当なものであって,地方自治法2条14項及び地方 関係なく,被控訴人ら町職員の本件視察への参加は,およそ公務に当たらないので,本件旅費支出等は,社会通念を逸脱し,行政の遂行上から見ても,不必要かつ不相当なものであって,地方自治法2条14項及び地方財政法4条1項に明らかに違反する。 (被控訴人らの当審における反論)騎西町においては,平成11年度から行政改革の一環として,各種委員会等の視察旅行の見直しの必要があり,町主催の区長視察旅行も平成11年度から予算を削除することとする一方で,これとは別の考慮,すなわち,地域内の連携・協調性が希薄化する中で,地方分権を推進していくために,地域活動の重要性が高まり,区長の職務も多様化・煩雑化して区長の負担が増加していることを考慮して,同年度に行政区運営委託料を増額する方針案が取りまとめられた。そして,いずれについても,同年1月21日の町長査定,同年第1回定例議会における同年度一般会計予算審議を経て,同年3月18日に議会で上記の方針に基づく予算が可決承認されたものである。予算書,その附属資料である「予算に関する説明書」等の説明欄の記載事項は,複雑化等を避けるために,事業項目等を全て明示することなく,関連する事業等を整理し取りまとめて記載するのが通例であり,これに記載がないからといって本件増額支出の根拠がないことにはならない。 本件視察は,区長会主催で行うことや,視察場所,宿泊先等の具体的な内容について,平成11年8月6日の区長役員会で取りまとめをし,同日午後の全区長が出席する第2回区長連絡会議における全区長の了解を得て,区長会が企画し実施したものであり,騎西町が主催したものではなく,町の予算上も,行政区運営委託料には本件視察の費用は一切計上されていない。確かに,本件増額支出は,本件視察の前日に町から支出されているが,増額を行うこと自体については、既 西町が主催したものではなく,町の予算上も,行政区運営委託料には本件視察の費用は一切計上されていない。確かに,本件増額支出は,本件視察の前日に町から支出されているが,増額を行うこと自体については、既に半年以上前の予算の検討・審議において決定されていたものである。そして、各区長が,職務遂行の対価として支払を受けた行政区運営委託料を,自らの判断で本件視察の費用に充てただけであり,区長が上記委託料をどのように使うかについては,町長のあずかり知らない事項であって,町長に責任のないことはいうまでもない。いずれにせよ,本件増額支出は,違法な公金支出といえないことは明らかである。 本件視察の内容も,区長が地域リーダーとしての知識を高めるとともに,相互に親睦を深めるためのものであり,被控訴人ら町職員の参加も,行政活動を補完する区長との関係を良好に保ち地域に密着した行攻を展開するため,社会通念上相当な範囲で対応したものであって,本件旅費支出等も違法な公金支出ではない。 第3 当裁判所の判断 1 まず,本件の事実関係について判断する。 (1) 騎西町の行政区の性格と町総務課の関わり,本件増額支出の決定経緯,区長に対する研修実施の態様の変更,本件視察決定の経緯,本件増額支出の会計処理及び実施された本件視察の具体的内容は,原判決14頁25行目冒頭から同20頁15行目末尾まで(ただし,同16頁7行目冒頭から14行目末尾までの(イ)欄を除く。)に記載のとおりであるから,これを引用する。 なお,当審の証人Dの証言及び甲8号証(Dの陳述書)中には,区長役員会や区長全体会が,本件視察の日程や内容を決定したり,これを区長会主催とすること,更にはその費用に充てることとなる本件増額支出の受領を区長会長に一任したり,その保管を町総務課にゆだねることを決定したことはない旨を述べる部 視察の日程や内容を決定したり,これを区長会主催とすること,更にはその費用に充てることとなる本件増額支出の受領を区長会長に一任したり,その保管を町総務課にゆだねることを決定したことはない旨を述べる部分があるが,当該部分は,上記事実の認定証拠に照らして採用できない。 (2) 被控訴人らは,平成12年度の予算案作成の段階から,区長に対する行政区運営委託料を本件増額支出のとおり増額する必要があったとする。なるほど,区長の職務とそれを取り巻く地域環境の変化等から見て,区長の地域活動の負担が増加しつつあり,区長の職務遂行の対価である行政区運営委託料について,増額の必要性が生じていたであろうことは理解できないではない。そして,被控訴人らの主張によれば,本件増額支出の具体的な算定根拠として,特別職非常勤職員(昭和62年度の条例改正まで区長にはこの地位が認められていた。)の職務遂行に伴う実費としての費用弁償額単価7200円に,区長が地域活動(町の行事・事業等への関与)に必要な日数である概ね10日を乗じて,区長一人当たり7万2000円と積算した上で,町の財政状況や従来の経緯等を踏まえ,区長等に関わる従来の予算額の総枠内で見直すという考え方から,前年度より2万8000円を増額した6万7000円とするにとどめたというのである。しかし,区長の負担増に対応するために増額するのであれば,算定に用いた費用弁償額単価や地域活動の必要日数についても,従前の算定に用いていたものから増額ないし増加させたものを用いる必要があるはずであるのに,従前と同様のものを使用していることから見て,前年度3万9000円であったものを,7割以上も増額させる根拠の説明としては十分とはいいがたいと評価せざるを得ない。 (3) 一方,区長の視察旅行が町主催で行われた平成10年度におけるこの視察旅行 前年度3万9000円であったものを,7割以上も増額させる根拠の説明としては十分とはいいがたいと評価せざるを得ない。 (3) 一方,区長の視察旅行が町主催で行われた平成10年度におけるこの視察旅行に支出された公費は,合計135万1429円であり,これと本件増額支出と本件旅費支出等の合計額である145万6000円との間には10万円程度の違いしかないものとなっている。この事実と,本件増額支出の額の決定において,積算上7万2000円とすべきところを6万7000円に抑えた理由として,被控訴人らが区長関係の従来の予算額の総枠内での見直しという考え方を挙げていることを合わせ考えると,本件増額支出は,実質的には,平成11年度予算では計上しなかった,区長の視察旅行に要する費用額に充てるためのものであったといわざるを得ない。現に,この区長一人当たり2万8000円という増加額は,本件視察の区長一人当たりの参加費用である2万9000円にほぼ見合うものとなっている。 (4) さらに,本件増額支出は,本件視察の前日(平成11年10月26日)に全額支出されているところ,これが本件視察に参加した区長なり区長代理の参加費用に充てることになることは,町側においても認識していたことは明らかである(この点は,被控訴人らも争っていない。)。しかも,その支払形態は,区長役員会や区長全体会の了承があったとはいえ,各区長が,町の会計課で個別に受領して,領収書に相当する「債権者・職員(集合〉票」に受領印を押すという通常の方法(乙12,14,被控訴人B)とは違って,区長会の会長が一括して「支出負担行為兼支出命令票」に受領印を押す(乙13)というものであるし,支出された現金の実際の保管管理は,区長会の事務局という名目の下に,町の総務課において行っていたのである。ところで,本件視察には,2 担行為兼支出命令票」に受領印を押す(乙13)というものであるし,支出された現金の実際の保管管理は,区長会の事務局という名目の下に,町の総務課において行っていたのである。ところで,本件視察には,2名の区長が欠席したが(甲1),本件増額支出中,この2名の区長に対する分は,行政区運営委託料である限り,当該欠席した区長に交付されるべきであるのに,本件視察の終了後も,町の総務課において保管していて,欠席した区長に交付されていない(被控訴人B)。また,区長会には,会計担当区長がいるにもかかわらず,本件視察の会計報告(乙8)は,町の総務課の職員が作成しこれに区長会の会長が承認印を押しただけであり,会計担当区長が作成に関与したり承認した形跡はない(被控訴人B,証人D)。 (5) 以上に認定した本件増額支出の金額,その金額の算定に至る経過,実際にとられた支出や管理の方法等を総合すると,本件増額支出は,区長が本件視察に参加する費用に充てることを目的として予算に計上され,被控訴人Aが騎西町の長としての予算執行権限を行使し,区長らの本件視察の参加費用として,区長らに対し,支払われたものであると評価せざるを得ない。そして,本件視察は,区長会の主催で企画・実施された形式をとってはいるが,上記の費用の賄い方,会計報告から見ると,名ばかりであったといわざるを得ず,本件増額支出の使途について見ても,区長が本件視察に参加する費用に充てることに限定されており,区長の自らの判断でその使途を決定できるものとして支払われていないと断ぜざるを得ない。 本件増額支出によって増額された騎西町の区長の行政区運営委託料等が,埼玉県内47市町村における区長等への報酬支払状況の実績(乙9)で見ると,概ね26番目にランクされることは,既に認定したとおりであるが,この実績が平成12年12月現在 の区長の行政区運営委託料等が,埼玉県内47市町村における区長等への報酬支払状況の実績(乙9)で見ると,概ね26番目にランクされることは,既に認定したとおりであるが,この実績が平成12年12月現在のものであることからすると,本件増額支出を予算化する段階で考慮されたものではないし,そもそも,この事実は,上記認定の妨げとなるものではない。 2 そこで次に,本件増額支出という形での公金支出が,町長としての被控訴人Aの裁量権の濫用ないし逸脱に当たるかが問題となる。具体的に問題となるのは,区長の本件視察への参加費用として公金を支出した判断の当否である。 (1) 本件視察の内容は,原判決の別紙2「旅行日程表」(乙7の2)のとおりであり,視察ないし研修的な意味合いを持つものは,1日目の栃木県防災館の見学程度である。本件視察は,この日程を見ただけでも,相当部分が慰安ないし観光的要素のものであったものといわざるを得ない。栃木県防災館の見学にしても,地域の防災対策という区長の職務に役立つ面があることは否定できないとしても,栃木県防災館自体は無料の施設であるし,わざわざ県外の施設にまで出向く必要性があったのかとの疑問がある上,変更前の日程(原判決の別紙1「旅行日程表(変更前)」(乙7の1))で予定されていたα・茨城原子力科学館(原子力発電所)のような,区長の職務に関連する見分や知識を広める視察や研修の意義が認められる見学先はなく,これが中止された後においても,これに匹敵する代替見学先が検討されたこともないことからすると,視察・研修のために宿泊をする必要性があったとは到底認められない。 (2) もとより,地域社会において行政を補完する役割を果たす区長の業務からすれば,区長同士や区長と町の責任者が,相互に理解や懇親を深めることが円滑な区長の職務遂行につながる面が 到底認められない。 (2) もとより,地域社会において行政を補完する役割を果たす区長の業務からすれば,区長同士や区長と町の責任者が,相互に理解や懇親を深めることが円滑な区長の職務遂行につながる面があることは確かであるが,ここでは,そのために公金を用いてまで,本件視察のような行事を実施する必要があるかが問われているのである。そして,本件視察の会計報告(乙8)の支出の部によると,区長等の宿泊費が56万9400円(このほか乗務員の宿泊費として2万8800円が計上されている。),宴会費(カラオケ代,朝食の飲物等含む。)が31万2601円であったから,宿泊をし懇親会を開くために,少なくとも88万2001円の費用を要している。本件視察に参加した区長ないし区長代理は50名であるので,本件視察に区長が参加するために,2万8000円の50人分である140万円の公金が支出されていることになるが,その6割を超える部分が宿泊と懇親会に充てられていることになる。以上に2日目の昼食代(8万1900円)や昼のビール代(1万5750円)も加えると,実に140万円の7割に相当することになるのであり,その使途だけから見ても,公務に必要な相互理解・懇親の必要性を超え,区長に対する慰安の要素が強かったものと評価せざるを得ない。 (3) 一方,証拠(乙10,22,被控訴人B)によると,バスによる移動時間を利用して,被控訴人Bらから,当時地域の懸案となっていたオウム真理教進出問題について,町の基本方針や対応策の説明,協力依頼があり,区長等との間で意見交換が行われたこと,及び,懇親会の冒頭では,被控訴人Aから平成11年度における町の主要施策・事業の概要等の説明があり,区長等との間で意見交換が行われたことが認められる。被控訴人らは,これらを一つの根拠として,本件視察への被控訴人らの では,被控訴人Aから平成11年度における町の主要施策・事業の概要等の説明があり,区長等との間で意見交換が行われたことが認められる。被控訴人らは,これらを一つの根拠として,本件視察への被控訴人らの参加が公務としての性格を持っていたと主張する。しかし,前者については,乙15,16号証ないし類似の資料が配付されたことが認められないではないが,後者については,資料が配付されたことを認めるに足りる証拠はないし,いずれについても,議事録等意見交換の結果についての記録が残されているわけではなく,移動する車中ないし懇親会の冒頭といった各状況から見て,ごく短時間のものであって,突っ込んだ意見交換がされたとは,到底考えられない。いずれにせよ,このことをもって,本件視察の基本的な性格や目的において,慰安ないし観光の要素が強いものであったとの推認を覆すことはできない。 (4) 以上認定した本件視察の性格や目的,公金の使途等については,被控訴人Aにおいて事前にその概要を認識していたと推認すべきであり,これらの事実を総合勘案すると,本件視察に対する本件増額支出は,社会通念上相当な範囲にとどまるものとは考えられず,本件増額支出のため公金を支出した被控訴人Aの判断は,町長に許された予算執行上の裁量権を逸脱したもので,違法な財務会計上の行為というべきである。したがって,被控訴人Aには,本件増額支出について,騎西町に対し,同額の損害賠償をする責任がある。 3 次に,本件旅費支出等の違法性について判断する。 (1) 上記2認定のとおり,本件視察には栃木県防災館の訪問,オウム真理教進出問題に対する対応や方針の説明のように,区長の職務遂行に必要な見分や知識を広める視察・研修的な要素があったし,区長同士ないし区長と町の担当者との間で,相互の理解や懇親を深めることによつて,日常的な 出問題に対する対応や方針の説明のように,区長の職務遂行に必要な見分や知識を広める視察・研修的な要素があったし,区長同士ないし区長と町の担当者との間で,相互の理解や懇親を深めることによつて,日常的な地域社会における公務の円滑な遂行に役立つ面があったことは否定できない。しかし,本件視察を全体として見れば,相互理解や懇親の域を超えて,慰安ないし観光に比重が置かれたものであったのであるから,こうした行事に被控訴人ら町の職員が参加することは,町の総務課が区長会の事務局的な機能を果たしているとの点を考慮しても,公務とはいえないものである。したがって,本件旅費支出等のため公金を支出した町側の判断も,予算執行上の裁量権を逸脱した違法な財務会計上の行為というべきである。 (2) 本件旅費支出等を構成する各費目(旅費7万9400円,時間外手当4074円,公用車使用料(燃料代及び軽油税)1万8738円及び有料道路代金(町長車分)9800円)はいずれも10万円未満であり,被控訴人Bが騎西町の規程で認められている権限により専決処理しているところ,被控訴人Bは,行政区に関する事務を所管する総務課の課長として,本件視察が慰安ないし観光を主な目的とするものであるのに,公金である本件増額支出によって賄われることを知りながら,これに参加する町職員の旅費等や町長の有料道路代金の支払に充てる本件旅費支出等の支出を承認したのであるから,これが重過失(地方自治法243条の2第1項後段)に基づくものであることは明らかである。したがって,被控訴人Bには,本件旅費支出等について,騎西町に対し,同額の損害賠償をする責任がある。 また,本件旅費支出に至る経過によれば,被控訴人Aにも,被控訴人Bが上記財務会計上の違法行為を阻止すべき指揮監督上の義務があったのに,これを怠った過失が認められる 同額の損害賠償をする責任がある。 また,本件旅費支出に至る経過によれば,被控訴人Aにも,被控訴人Bが上記財務会計上の違法行為を阻止すべき指揮監督上の義務があったのに,これを怠った過失が認められるので,騎西町に対し,被控訴人Bと連帯して本件旅費支出に対応する損害賠償をする責任がある。 4 以上のとおりであるので,違法な財務会計上の行為により騎西町に損害を与えた被控訴人らに対し,騎西町に代位して損害賠償金の支払を求める控訴人の請求は相当であり,本件控訴は理由がある。よって,原判決を取り消し,被控訴人らに対する損害賠償請求を認容することとして,主文のとおり判決する(なお,主文2項の145万6015円中の15円は,本件旅費支出等に係る11万2012円に対する平成12年8月25日分の遅延損害金である。)。 東京高等裁判所第2民事部裁判長裁判官森脇勝裁判官林道晴裁判官藤下健
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