【DRY-RUN】主 文 原判決中被告人Aに関する部分を全部破棄する。 被告人Aを懲役八月に処する。 但し、本裁判確定の日から参年間右刑の執行を猶予する。 その余の被告人ら
主文 原判決中被告人Aに関する部分を全部破棄する。 被告人Aを懲役八月に処する。 但し、本裁判確定の日から参年間右刑の執行を猶予する。 その余の被告人らの本件各控訴を棄却する。 訴訟費用中原審証人B1に支給分は被告人Aと原審及び当審相被告人C、同D、同E、同F、同G、同H、同I、原審相被告人J、同K、同L、同Mとの連帯負担、原審証人Nに支給分は被告人Aの単独負担、当審証人B1に支給分は被告人I、同E、同F、同G、同C、同H、同Aの連帯負担、当審証人Oに支給分は被告人P、同Q、同R、同S、同Dの連帯負担とする。 理由 本件各控訴の趣意は、被告人T、同U、同P、同Q、同R、同S、同I、同G、同C、同H、同A、同Dの各弁護人井出甲子太郎及び同館孫蔵連名提出の控訴趣意書、被告人Eの弁護人桝田光及び同正木亮各提出の控訴趣意書、被告人Fの弁護人小町愈一及び同高橋一成連名提出の控訴趣意書にそれぞれ記載されたとおりであるから、ここにこれを引用し、これに対し次のように判断する。 弁護人井出甲子太郎及び同館孫蔵の控訴趣意第一点ないし第十一点及び第十三点について。 原判決の判示第三、第四、第六、第七の(一)、(二)、第八の(一)、(二)、第十一、第十二、第十六、第十七、第十八、第十九の(一)、(二)、第二十一の各犯罪事実は、それぞれこれらに対応する原判決挙示の証拠を総合すれば充分にこれを認定することができ、記録を精査検討し、当審における事実取調の結果に徴しても、原審が必要な審理を尽さず、採証法則に違反して、事実を誤認したとは断ぜられない。論旨は理由がない。 右弁護人らの控訴趣意第十二点について。 被告人Aに関する原判示犯罪事実第十九の(一)及び(二)に対応する原判決挙示の証 、採証法則に違反して、事実を誤認したとは断ぜられない。論旨は理由がない。 右弁護人らの控訴趣意第十二点について。 被告人Aに関する原判示犯罪事実第十九の(一)及び(二)に対応する原判決挙示の証拠によれば、同被告人は、原判示選挙に際し、昭和三十五年十一月初旬頃原判示候補者Vの選挙運動者B1から、同人が右判示(一)記載の趣旨で供与するものであることの情を知りながら現金十万円の供与を受けたこと、同月上旬頃Nを介してWに対し、右判示(二)記載の趣旨で、さきにB1から供与を受けた右の現金十万円をそのまま供与したこと、同月中旬頃右Wから、原判示選挙の選挙運動に使用すべき趣旨をもつて、右の現金十万円とは同一性のない別の現金二万円を受け取り、うち金一万四千三百円を費消し、残金五千七百円をその頃同人に返却したこと、右費消額一万四千三百円のうち金一万一千五百円は右選挙運動のための実費に使用されているが、金二千八百円は、さきに同年十月下旬頃同被告人がX及びYと共に選挙運動の骨休めのため料理店で飲食した時に同被告人の所持金から支払つた飲食代の補填に充てられていること、をそれぞれ認定することができる。 <要旨>以上の経過によれば、同被告人はB1から収受した利益(金十万円)を、同人から供与された趣旨に従つて</要旨>更にWに供与し、右利益はWの所持に移転したことになるのであるから、後の受供与者Wから右利益を没収し若しくはその価額を追徴すべきか否かは格別、前の受供与者たる同被告人から右利益を没収することができない状態に至つたものとしてその価額を追徴すべきものでないことは言うを俟たず(昭和三十一年二月二十九日東京高等裁判所判決、高等裁判所刑事裁判特報三巻七号三〇一頁参照)、しかも前記飲食代の補填金二千八百円は、同被告人がB1から供与を受け更にWに供与した現金十万 言うを俟たず(昭和三十一年二月二十九日東京高等裁判所判決、高等裁判所刑事裁判特報三巻七号三〇一頁参照)、しかも前記飲食代の補填金二千八百円は、同被告人がB1から供与を受け更にWに供与した現金十万円、即ち同被告人の収受した利益から出捐されているのではなく、それとは全く別個の現金二万円から出捐されているのであるから、同被告人がB1から収受した利益の価額が右二千八百円を飲食者三名に平分した一人前九百三十円の限度において同被告人に還元されて残存しているものとは認め難く、従つて右金九百三十円を同被告人の収受した利益の価額として同被告人から追徴することもできないものと解すべきである。 然らば、被告人Aに対し右金額の追徴を言い渡した原判決は公職選挙法第二百二十四条の解釈適用を誤まつたものというべく、その違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、原判決中同被告人に関する部分は全部破棄を免がれない。論旨は理由がある。 弁護人正木亮の控訴趣意第一、二点並びに同桝田光の控訴趣意第一点について。 原判決の判示第十三の犯罪事実は、これに対応する原判決挙示の証拠を総合すれば充分にこれを認定することができ、記録を精査検討し、当審における事実取調の結果に徴しても、原判決挙示にかかる被告人Eの検察官に対する供述調書につき、その供述の特信性を疑うに足りる形跡を認め難く、また原審が必要な審理を尽さず、採証法則に違反して、事実を誤認したとは断ぜられない。各論旨は理由がない。 弁護人桝田光の控訴趣意第二点の(一)、(二)について。 原判決の判示第十三の犯罪事実に対応する原判決挙示の証拠によれば、被告人Eは、原判示選挙に際し、昭和三十五年十一月上旬頃原判示候補者Vの選挙運動者B1から、同人が右判示記載の趣旨で供与するものであることの情を知りながら現金五万円の供与を 判決挙示の証拠によれば、被告人Eは、原判示選挙に際し、昭和三十五年十一月上旬頃原判示候補者Vの選挙運動者B1から、同人が右判示記載の趣旨で供与するものであることの情を知りながら現金五万円の供与を受けたこと、そして右金員は、右候補者のためにする選挙運動の費用並びに報酬等として無条件に同被告人に供与され、その自由処分に委ねられたこと、をそれぞれ認めることができる。 然らば、論旨主張の如く、たとえ同被告人が右供与を受けた金員そのものの一部若しくはそれに相当する額の金員を後日供与者に返還したとしても、さきに供与を受けた金員の全額につき公職選挙法第二百二十一条第一項第四号の金銭受供与罪が成立すべく、後日返還した分を控除した残額に限り同罪が成立すると解すべきものでないことは多言を要せず(昭和三年二月三日大審院判決・大審院刑事判例集七巻一号四二頁参照)、また同条同項の受供与者が供与を受けた金員そのものの全部若しくは一部を供与者に返還した場合は格別、これを自ら費消した以上はその後これと同額の金員を供与者に返還したからといつて、この返還部分につき同法第二百二十四条による追徴を免がれ得るものではなく(昭和二十九年八月二十四日最高裁判所第三小法廷判決・最高裁判所刑事判例集八巻八号一四四〇頁参照)、前掲証拠によれば、同被告人は斉藤勇輔から供与を受けた本件の現金五万円を自己の手持金と混同して全額費消(内金一万円は選挙事務所の必要経費としてZに交付)した後本件について捜査が開始されるに及び昭和三十六年二月一日B1に対し金四万円(受供与金額五万円から右一万円を控訴したものの相当額)を返還しているのであつて、右金四万円が本件の受供与金員そのものの一部であるとは認められないのであるから、原判決が金五万円の全額について受供与罪の成立を認定し、且つ収受した利益の価額を のの相当額)を返還しているのであつて、右金四万円が本件の受供与金員そのものの一部であるとは認められないのであるから、原判決が金五万円の全額について受供与罪の成立を認定し、且つ収受した利益の価額を金四万円と算定し、これを追徴する旨言い渡したのは洵に相当であり、何ら所論の如き違法はない。論旨は理由がない。 弁護人正木亮及び同桝田光の各控訴趣旨第三点について。 所論にかんがみ、記録を精査し、これに現われている本件犯行の動機、罪質、態様、供与を受けた金員の額並びに被告人Eの年令、境遇、経歴、その他一切の事情を総合して考察すると、各所論摘録の同被告人に有利な事情を充分に斟酌しても、原判決の量刑は決して重きに失し不当であるとは断し難く、この程度の科刑はやむを得ないものといわなければならない。各論旨は理由がない。 弁護人小町愈一及び同高橋一成の控訴趣意について。 原判決の判示第十四の犯罪事実は、これに対応する原判決挙示の証拠を総合すれば充分にこれを認定することができ、記録を精査検討し、当審における事実取調の結果に徴しても原判決挙示にかかる被告人Fの検察官に対する各供述調書につき、その供述の任意性及び特信性を疑うに足りる形跡を認め難く、また原審が必要な審理を尽さず、採証法則に違反して事実を誤認したとは断ぜられない。 しかして、右判示事実に対応する原判決挙示の証拠によれば、被告人Fは、原判示選挙の終了後である昭和三十五年十一月下旬頃原判示候補者Vの選挙運動者であつたB1及びB2等から現金十万円を受け取つたこと、右現金十万円中には、同被告人が右選挙期間中に右候補者の選挙運動のため立て替えた費用の弁償金か一部含まれていたことを窺がい得るが、それと共に同被告人が右選挙期間中に右候補者のため選挙運動をしたことに対する報酬もまた含まれていたこと、右十万円のう 候補者の選挙運動のため立て替えた費用の弁償金か一部含まれていたことを窺がい得るが、それと共に同被告人が右選挙期間中に右候補者のため選挙運動をしたことに対する報酬もまた含まれていたこと、右十万円のうち幾何が選挙運動費用の立替弁償金で、幾何が選挙運動の報酬であるのか、両者の割合が劃然指示されることなく、両者を不可分的に一括して授受されたこと、当時においては選挙運動費用の立替金の金額は未だ確定されておらず、従つて、この授受された立替弁償金が何れの項目の立替費用に照応するものであるかさえ判然としていなかつたこと、しかし、同被告人は、B1らが、右十万円中に前記運動報酬をも含めた趣旨でこれを供与するものであることの情を知りながら該金員の供与を受けたこと、をそれぞれ認めることができる。 然らば、たとえ論旨主張の如く、同被告人の立替にかかる選挙運動費用が悉く合法的費用であり、後日精算をしてみればその立替金の金額が右授受の当時仮りに金十万円を超えていたことが明らかに成つたとしても、本件の如く、選挙運動者が違法な運動報酬と、そうでない合法的な選挙運動の立替弁償金とを一括して供与を受けた場合において、その両者の区分が明らかでないときは、その金員全部について公職選挙法第二百二十一条第一項第四号の受供与罪が成立すると解すべきであり(昭和三十年五月十日最高裁判所第三小法廷判決、最高裁判所刑事判例集九巻六号一〇〇六頁参照)、かように、その両者の区分が明らかでないため、その金員の全部について右受供与罪が成立すると解される以上は、その金員全部が不法性を帯ぶべきものであるから、裁判所が同罪の成立を認定するに当つては、違法な運動報酬以外の金員、本件に就いていえば、被告人Fが弁償を受け得べき立替金の数額及び内容を成す具体的項目を審理し確定することを要せず(昭和八年十一月二 、裁判所が同罪の成立を認定するに当つては、違法な運動報酬以外の金員、本件に就いていえば、被告人Fが弁償を受け得べき立替金の数額及び内容を成す具体的項目を審理し確定することを要せず(昭和八年十一月二十九日大審院判決・大審院刑事判例集一二巻二三号二一五四頁参照)、しかも、いやしくも選挙運動者が違法な運動報酬とそうでない合法的な選挙運動費用の立替弁償金とを不可分的に包括する金員を供与され、その趣旨を諒知してこれを収受した以上は、その金員全部につき直ちに右受供与罪が成立するのであるから、後日精算の結果右立替金の金額が右収受金員の全額を超えていることが明らかとなり、そのため受供与者の収受すべき利益、即ち運動報酬となるべき分を生ずる余地がなくなつたとしても、これがため金員授受の当時に遡つて同罪の罪責を免かれ得ないことは多言を要しないから(昭和七年九月十六日大審院判決・大審院刑事判例集一一巻一七号一三二七頁参照)、原判決には所論の如き違法は全く存しない。論旨は理由がない。 よつて、刑事訴訟法第三百八十条、第三百九十七条第一項により、原判決中被告人Aに関する部分を全部破棄し、同法第四百条但書により当裁判所において次のとおり自判すべく、同法第三百九十六条により、その余の被告人らの本件各控訴を棄却すべきものとする。 被告人Aにつき原判決が適法に確定した事実に法律を適用すると、被告人の判示第十九の(一)の所為は昭和三十七年法律第一一二号公職選挙法等の一部を改正する法律による改正前の公職選挙法第二百二十一条第一項第四号、第一号に、同(二)の所為は同条同項第一号にそれぞれ該当し、各所定刑中罰金の額については罰金等臨時措置法第三条第一項を適用すべく、以上は刑法第四十五条前段の併合罪であり且つ各所定刑中懲役刑を選択して処断し、同法第四十七条本文、第十条により情 れぞれ該当し、各所定刑中罰金の額については罰金等臨時措置法第三条第一項を適用すべく、以上は刑法第四十五条前段の併合罪であり且つ各所定刑中懲役刑を選択して処断し、同法第四十七条本文、第十条により情状が重いと認められる(二)の供与罪の所定刑期に併合罪の加重をした刑期の範囲内において被告人を懲役八月に処し、なお情状刑の執行を猶予するのを相当と認めるから、同法第二十五条第一項により本裁判確定の日から参年間右の刑の執行を猶予すべきものとする。 そこで訴訟費用の負担につき、被告人ら全員に対し刑事訴訟法第百八十一条第一項本文、第百八十二条を適用して主文末項記載のとおり定め、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官坂間孝司裁判官栗田正裁判官赤塔政夫)
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