昭和62(う)4 強姦、傷害被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和62年6月18日 広島高等裁判所 松江支部
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【DRY-RUN】主    文      本件控訴を棄却する。      当審における未決勾留日数中一二〇日を原判決の本刑に算入する。          理    由  本件控訴の趣意は弁護人吾郷計宜作成の控訴趣意書記

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判決文本文3,825 文字)

主    文      本件控訴を棄却する。      当審における未決勾留日数中一二〇日を原判決の本刑に算入する。          理    由  本件控訴の趣意は弁護人吾郷計宜作成の控訴趣意書記載のとおりであり、これに 対する答弁は検察官大迫勇壮作成の答弁書記載のとおりであるから、ここにこれら を引用する。  これに対する当裁判所の判断は次のとおりである。  控訴趣意第一(訴訟手続の法令違反の主張)について  所論は、要するに、原判決は原判示第一の強姦の事実を認定するにあたり、被告 人の検察官に対する昭和六〇年四月一〇日付、司法警察員に対する同年三月六日付 及び同月八日付各供述調書並びに共犯者Aの検察官に対する同年四月八日付、司法 警察員に対する同年三月六日付、同月八日付及び同月一五日付各供述調書を証拠と して採用したが、右各供述調書はいずれも右事実について公訴が提起された後に被 告人らを取調べて作成されたものであり、しかも被告人らに任意の取調べであるこ とを説明することなく、かつ、かなりの回数にわたり、公訴事実全般について広く 取調べられたものであるから証拠能力がない。しかるにこれを証拠に採用した原判 決はこの点につき訴訟手続の法令違反がある、というのである。  なるほど、起訴後においては、被告人の当事者たる地位にかんがみ、捜査官が当 該公訴事実について被告人を取調べることはなるべく避けなければならないけれど も、刑訴法一九七条は、捜査については、その目的を達するため必要な取調べをす ることができる旨を規定しており、同条は捜査官の任意捜査について何ら制限をし ていないので、起訴後に被告人を当該公訴事実について取調べたからといつて直ち にその取調べを違法とし、その取調べの上作成された供述調書の証拠能力が否定さ れるものではなく(最高裁判所昭和三六年一一月二一日決定・刑 で、起訴後に被告人を当該公訴事実について取調べたからといつて直ち にその取調べを違法とし、その取調べの上作成された供述調書の証拠能力が否定さ れるものではなく(最高裁判所昭和三六年一一月二一日決定・刑集一五巻一〇号一 七六四頁参照)、また起訴後の被告人の取調べについては、被告人に対し任意捜査 である旨の説明を要するとか、捜査の範囲は補充的事項に限られるべきである等所 論指摘のごとき具体的要件があるとは解せられない。本件については、被告人らが 自白しない限り起訴されないとして、起訴前は終始一貫しない場当り的な供述を繰 り返していたことから、余儀なく起訴後(第一回公判前)の取調べが必要とされた ものと認められるのであり、前記各供述調書を証拠に採用した原判決に所論の違法 はない。論旨は理由がない。  控訴趣意第三(事実誤認の主張)について  所論は、要するに、原判決は原判示第一において被告人がAと共謀して被害者を 交々強姦した事実を認定したが、(一)被告人とAは被害者を強姦することを共謀 した事実はない。また、(二)Aは被害者と性交していないので、原判決にはこの 二点につき判決に影響を及ぼすこと明らかな事実誤認があるという。  しかしながら、右(一)の主張についてみると、被害者B子は、原審公判廷にお いて「車を止めて被告人とAが車から降り小便をしながら何事か話をし互いに顔を 見合せてにたつと笑つた、それから二人に輪姦された」旨証言しているのみなら ず、被告人は、司法警察員並びに検察官に対し「Aと二人で立小便をしながら被害 者を輪姦することを話し、小便を終え車に戻るや、直ちに被告人が被害者に対し姦 淫行為に着手し、Aに対しお前もやりたけりややれ、上をやれと言い、それから二 人が同時に被害者の上に乗りかかり、一人が陰部、他方が口に陰茎を挿入し、途中 でこれを交替する方法で強姦した」旨 害者に対し姦 淫行為に着手し、Aに対しお前もやりたけりややれ、上をやれと言い、それから二 人が同時に被害者の上に乗りかかり、一人が陰部、他方が口に陰茎を挿入し、途中 でこれを交替する方法で強姦した」旨供述しているのであつて、被告人らに強姦の 点について共謀のあつた事実はこれを認めるに十分である。また前記(二)の主張 についてみるに、被害者B子は、原審公判廷において「Aの陰茎が私の陰部に入つ たのは間違いない」旨繰り返して証言し、被告人もまた検察官に対し「Aの陰茎が B子の陰部に入つたかどうかはつきり確認したわけではないがその格好から入つて いたのは間違いないはずです」と供述しているのであり、これらの証言、供述はそ れ自体具体的かつ合理的であるのみならず他の情況証拠とも合致しており十分信用 に値し、その他原判決挙示の関係証拠をも総合すると、共犯者Aもまた姦淫を遂げ たとする原判決の認定に誤りはなく、被告人がAと共謀のうえ、被害者を輪姦した ことを疑う余地は全くない。所論は被害者B子の証言の信用性について緩々述べる が、同人の証言は本件公訴事実に関する限り一貫性があり被告人らから強姦された 状況などにつき相当詳細かつ具体的に供述しその内容においても不合理な点はな く、他の関係各証拠、客観的事実とも合致しており、十分に信用できる。これに比 し被告人及びAの公判廷における供述は終始常に大きく変遷し、支離滅裂で客観的 証拠に反し、到底信用できず採用に値しない。論旨は理由がない。  控訴趣意第二(法令適用の誤りの主張)について  所論は、要するに、原判決は被告人につき強姦罪の成立を認めたけれども、被告 人と被害者B子は犯時夫婦であり、夫婦は互いに性交を求める権利を有しかつこれ に応ずる義務があるから、夫が妻に対し暴行、脅迫を用いて性交に及んだとして も、暴行、脅迫罪が成立するは格別、性 れども、被告 人と被害者B子は犯時夫婦であり、夫婦は互いに性交を求める権利を有しかつこれ に応ずる義務があるから、夫が妻に対し暴行、脅迫を用いて性交に及んだとして も、暴行、脅迫罪が成立するは格別、性交自体は処罰の対象とならないため、強姦 罪の成立する余地はないのである。また夫が第三者と共同して妻を輪姦した場合で あつても、夫自身は妻に対する関係においては強姦罪の主体となりえない以上、従 犯あるいは暴行罪として処罰されるに過ぎない。したがつて、原判決にはこの点に つき刑法一七七条の適用(解釈)の誤りがあり、この誤りは判決に影響を及ぼすこ とが明らかであるから、原判決は破棄を免れない、というのである。  <要旨>よつて検討するに、記録によれば、なるほど被告人と被害者B子は昭和五 六年一二月一八日婚姻届を提出し</要旨>て夫婦となつたこと、しかし被告人は、働 くことを嫌い、妻を扶養するでなく、その人格を無視して単にこれを性の対象とし て弄び、気に入らないと殴る蹴るの暴行を加えて常にこれを虐待し、その振舞たる やまさに常軌を逸し言語に絶するものであつたこと、その結果、妻B子は、夫の虐 待から逃れるため、実家に逃げ帰り、あるいは他所に身を隠し、ときには自殺まで 試み、その都度夫に連れ戻されては隙を見ていくたびか家出を繰り返し、ひたすら 婚姻生活に復帰することを拒み、本件当時両名の婚姻関係は完全に破綻し両名はす でに夫婦たるの実質を失つていたこと、しかるに被告人は、原判示第一のとおり、 自分の遊び仲間である共犯者Aと二人で暴力を用いて妻をその実家から無理矢理連 れ出し自宅に連れ帰る途中、Aと共謀のうえ、同女を輪姦しようと企て、白昼人里 離れたAにおいて、同女に対し暴行を加えてその反抗を抑圧したうえ、こもごも同 女を強いて姦淫したものであることが認められる。婚姻中夫婦が互いに性交渉を求 Aと共謀のうえ、同女を輪姦しようと企て、白昼人里 離れたAにおいて、同女に対し暴行を加えてその反抗を抑圧したうえ、こもごも同 女を強いて姦淫したものであることが認められる。婚姻中夫婦が互いに性交渉を求 めかつこれに応ずべき所論の関係にあることはいうまでもない。しかしながら、右 「婚姻中」とは実質的にも婚姻が継続していることを指し、法律上は夫婦であつて も、婚姻が破綻して夫婦たるの実質を失い名ばかりの夫婦にすぎない場合には、も とより夫婦間に所論の関係はなく、夫が暴行又は脅迫をもつて妻を姦淫したときは 強姦罪が成立し、夫と第三者が暴力を用い共同して妻を輪姦するに及んだときは、 夫についてもむろん強姦罪の共同正犯が成立する。してみれば、先に認定したとお り婚姻が完全に破綻して夫婦たるの実質を失いいわば名のみの夫婦にすぎない被告 人と被害者B子の場合において、被告人の原判示第一の所為が刑法一七七条前段、 六〇条に該当するとした原審の判断は正当として是認することができ、原判決に所 論の法令適用の誤りはない。論旨は理由がない。  よつて、刑訴法三九六条により本件控訴を棄却することとし、当審における未決 勾留日数の算入につき刑法二一条を適用し、当審における訴訟費用は刑訴法一八一 条一項ただし書を適用して、これを被告人に負担させないこととし、主文のとおり 判決する。  (裁判長裁判官 古市清 裁判官 松本昭彦 裁判官 岩田嘉彦)

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