主文 1 原告らの請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 第1 当事者の求めた裁判 1 請求の趣旨(1) 被告は,原告らに対し,18億3420万円及びこれに対する平成9年11月20日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (2) 訴訟費用は被告の負担とする。 (3) 仮執行宣言 2 請求の趣旨に対する答弁主文同旨第2 当事者の主張 1 請求原因(1) 当事者アたくぎん抵当証券株式会社(以下「たくぎん抵当」という。)は,昭和59年3月1日に抵当証券に関する資金の貸付・管理・保証,抵当証券の保有・売買・売買の仲介,不動産担保貸付等を主な営業目的として設立された株式会社であるところ,平成9年11月18日,当裁判所に対して自己破産の申立てをし,同月19日午後6時45分破産宣告を受け,原告らは,その破産管財人に選任された(当庁平成9年(フ)第1765号破産事件)。 イ被告は,生命保険業等を主な営業目的とする相互会社である。 (2) 債権質権設定契約ア被担保債権被告は,平成9年10月9日の時点で,たくぎん抵当に対し,次のとおり元金合計18億3420万円の貸金債権(以下「本件貸金債権」という。)を有していた。 (ア) 平成6年3月31日付け金銭消費貸借契約残元金3億1320万円(イ) 平成7年8月31日付け金銭消費貸借契約残元金7億2200万円(ウ) 平成8年9月30日付け金銭消費貸借契約残元金4億円(エ) 平成8年12月16日付け金銭消費貸借契約残元金3億9900万円イ債権質権設定契約たくぎん抵当は,平成9年10月9日,被告に対し,同日の時点で負担していた一切の債務及び将来負担する一切の債務の根担保として,たくぎん抵当の株式会社北海道拓殖銀行(以下「拓銀」とい 債権質権設定契約たくぎん抵当は,平成9年10月9日,被告に対し,同日の時点で負担していた一切の債務及び将来負担する一切の債務の根担保として,たくぎん抵当の株式会社北海道拓殖銀行(以下「拓銀」という。)に対する18億3420万円の定期預金債権(以下「本件預金債権」という。)につき,質権を設定し(以下「本件質権設定契約」といい,その質権を「本件質権」という。),本件預金債権に係る証書を交付した。 (3) 質権実行被告は,平成9年11月19日,本件質権を実行して,拓銀から18億3420万円の支払を受けた。 (4) 本件質権設定契約が故意否認事由に該当することたくぎん抵当が被告に対してした本件質権の設定は,次のとおりの事実に照らすと,破産法72条1号所定の「破産者カ破産債権者ヲ害スルコトヲ知リテ為シタル行為」(以下「故意否認事由」ということがある。)に該当する。 アたくぎん抵当の経営の破綻状況(ア) 債務超過たくぎん抵当は,平成4年から平成8年までの各事業年度(たくぎん抵当の事業年度は,毎年4月1日から翌年の3月31日までの1年間であり,その決算期末は3月31日である。以下,事業年度を単に「年度」という。)の決算が営業利益及び経常利益ともに赤字であり,そのままでは債務超過となるため,母体行である拓銀から累計約722億円の債務免除を受けて形式的に債務超過の状態を回避していた。 また,たくぎん抵当は,破産宣告の際に,約2051億円の債務超過の状態にあった。 したがって,たくぎん抵当は平成9年10月9日の時点では,債務超過の状態にあった。 (イ) 新規貸付事業の停止,事業規模縮小及び延滞債権の増大たくぎん抵当は,企業に資金を貸し付けるとともに,その企業からその所有する不動産に抵当権の設定を受け,この抵当権付き債権を証券化し,これを小口に 新規貸付事業の停止,事業規模縮小及び延滞債権の増大たくぎん抵当は,企業に資金を貸し付けるとともに,その企業からその所有する不動産に抵当権の設定を受け,この抵当権付き債権を証券化し,これを小口に分割して販売することを主な事業としていたところ,平成5年以降は,新たに企業に資金を貸し付けることがなくなり,専らそれ以前に貸し付けた資金の回収をすることになった。 そして,その貸付金残高は,平成3年度の決算期末(平成4年3月31日)においては,約5282億円であったが,以後漸次減少し,平成8年度の決算期末(平成9年3月31日)においては,約3016億円となり,事業規模は縮小していった。 しかも,たくぎん抵当の貸付金残高に占める延滞債権の割合は,漸次増大し,平成8年度の決算期末(平成9年3月31日)には,約50%となり,本件質権設定契約締結直前である平成9年9月には,その延滞債権の額は,約2138億円となっていた。 (ウ) プロラタ返済たくぎん抵当は,平成4年度から,被告を含む大口債権者(株式会社A銀行,株式会社B銀行,株式会社C銀行,株式会社D銀行,E組合,F信用金庫,G相互会社,H株式会社等)に対する債務の弁済を約定どおりにすることができず,その協力を得て,同債権者に対するいわゆるプロラタ返済(約定の弁済期にかかわらず,平等の一定割合で債務の弁済をする返済)を実施してきた。なお,プロラタ返済の実施をする場合には,仮に,大口債権者がたくぎん抵当から債権の約定弁済期にその債権の全額の支払を受けたとしても,その後,大口債権者がプロラタ返済率に見合うようにたくぎん抵当に対する再度の貸付をすることになる。 このプロラタ返済率は,平成4年度が約20%,平成5年度が約15%,平成6年度が約30%,平成7年度が約10%,平成8年度が約15%,平成9年度 にたくぎん抵当に対する再度の貸付をすることになる。 このプロラタ返済率は,平成4年度が約20%,平成5年度が約15%,平成6年度が約30%,平成7年度が約10%,平成8年度が約15%,平成9年度が約15%であり,このようなプロラタ返済を実施しなければならないこと自体が,たくぎん抵当の経営状態が悪化していたことを示すものである。 そして,H株式会社は,平成9年4月,たくぎん抵当から,たくぎん抵当に対する債権5億4100万円の弁済を受けたが,たくぎん抵当に対する再度の貸付をしなかったことから,他の大口債権者は,プロラタ返済破りがあったとして,これ以後,たくぎん抵当に対する債務弁済圧力を強めていくことになった。 (エ) 母体行である拓銀の支援たくぎん抵当は,前記(ア)で触れたとおり,拓銀から多額の債務免除を受け続けていた(その金額は,前記のとおり累計約722億円)ほか,拓銀及びその関連会社から,多額の借入をし(その金額は,平成9年3月31日時点で,約1244億円),また,拓銀に,多額の抵当証券を購入してもらう(その金額は,同時点で,約541億円)などの拓銀の支援によって,事業を行っていたもので,母体行である拓銀の支援がなければ,資金繰りが恒常的に困難な状態にあった。 イ母体行である拓銀の信用低下と母体行主義の崩壊(ア) 母体行である拓銀の信用低下拓銀は,平成8年8月,I社の財務格付で,Eランクとされ,これがテレビ・新聞などで報道されることにより,その信用は低下し,株価が下落し,預金の流出が増加していった。 拓銀は,平成9年4月1日,経営不振の打開策として,株式会社J銀行との合併を発表したが,同年9月12日,合併延期(その実は,合併中止)の発表をせざるを得なくなり,その信用不安は増大していった。 拓銀の株価は,平成9年9月18日には, 打開策として,株式会社J銀行との合併を発表したが,同年9月12日,合併延期(その実は,合併中止)の発表をせざるを得なくなり,その信用不安は増大していった。 拓銀の株価は,平成9年9月18日には,一株当たり100円を割り,さらに,同年10月15日には,一株当たり80円を割るようになった。 また,拓銀の預金は,平成9年9月から破綻した同年11月17日までの間に,約4000億円も流出した。 (イ) 母体行主義の崩壊母体行主義とは,銀行系のノンバンクの不良債権は,「その母体行が引き受けるという金融界の暗黙の了解」あるいは「母体行が債務をすべてかぶるか,かぶり切れない場合は自らの債権を放棄してから他の金融機関に負担を求めること」であり,これが金融界の常識とされていた。 しかし,平成7年から銀行系ノンバンクの倒産が相次ぎ,平成7年に32件,平成8年に10件,平成9年に7件と多発していたところ,平成9年4月に,日債銀系ノンバンク3社が自己破産の申立てをし,これが,母体行主義の終焉を告げるものとして,金融界に大きな衝撃を与えていた。 ウ本件質権の設定の性質たくぎん抵当は被告に対して担保供与の義務を負っていなかったにもかかわらず,自己破産の申立てをした平成9年11月18日の約1か月強前の同年10月9日に,被告に対し,支払の確実な拓銀の本件預金債権を担保に供するという本件質権の設定をしたものであり,これにより,たくぎん抵当が破産したときに,被告は債権の確実な満足を得ることができるが,他の破産債権者は本件預金債権から平等弁済を受けることができなくなったものである。 (5) たくぎん抵当の害意たくぎん抵当は,平成9年10月9日の時点で,本件質権の設定が破産債権者を害することを知っていた。 (6) 否認権行使原告らは,平成11年9月24日に送達され のである。 (5) たくぎん抵当の害意たくぎん抵当は,平成9年10月9日の時点で,本件質権の設定が破産債権者を害することを知っていた。 (6) 否認権行使原告らは,平成11年9月24日に送達された本訴状をもって,被告に対し,本件質権設定契約につき,破産法72条1号に基づき否認する旨の意思表示をした。 (7) よって,原告らは,被告に対し,否認権行使による原状回復請求権に基づき,被告が本件質権の実行により拓銀から支払を受けた18億3420万円及びこれに対する本件質権実行の日の翌日である平成9年11月20日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。 2 請求原因に対する認否(1) 請求原因(1)ないし(3)の事実は認める。 (2) 同(4)の主張は争う。 本件質権設定契約が故意否認事由に該当しないことは,後記被告の主張(1)のとおりである。 (3) 同(5)の事実は否認する。 3 被告の主張(1) 本件質権設定契約が故意否認事由に該当しないことたくぎん抵当が被告に対してした本件質権の設定は,次のとおりの事実に照らすと,破産法72条1号所定の「破産者カ破産債権者ヲ害スルコトヲ知リテ為シタル行為」に該当しない。 アたくぎん抵当が実質的財産的危機状態になかったこと故意否認事由は,破産者が実質的財産的危機状態にあることを前提とする。しかし,次のとおりの事実に照らすと,たくぎん抵当は,本件質権設定契約を締結した平成9年10月9日当時,実質的財産的危機状態にはなかった。 (ア) K大蔵大臣は,平成9年2月10日,衆議院予算委員会において,「大手20行をしっかり支えるのは当然のこと」と言い,拓銀を含む大手銀行の破綻があり得ない旨を明言していた。 (イ) 拓銀は,たくぎん抵当の母体行であるところ,拓銀は,自らの信用を保 員会において,「大手20行をしっかり支えるのは当然のこと」と言い,拓銀を含む大手銀行の破綻があり得ない旨を明言していた。 (イ) 拓銀は,たくぎん抵当の母体行であるところ,拓銀は,自らの信用を保持するため,たくぎん抵当に対し,継続した多額の資金援助をし,経営再建を図ろうとし,母体行主義を変更する意思がなく,自らが破綻した平成9年11月17日の直前まで,その姿勢を変えていなかった。 (ウ) 拓銀は,平成9年9月12日にJ銀行との合併延期を公表したり,株価が下落することがあったが,取付騒ぎが起きることはなかった。 ちなみに,L銀行及びM銀行も,平成13年末に一株当たり100円割れになり,平成14年中は,80円割れの状態が続いているが,両行に信用不安は発生していない。 (エ) たくぎん抵当は,自己破産の申立てをした平成9年11月18日のわずか4日前の同月14日まで,抵当証券の中途解約の申入れに応じていた。 (オ) 拓銀の破綻の直接の原因は,平成9年11月14日(金曜日),コール市場での資金調達ができなかったことによって準備預金の積立不足を引き起こし,翌週以降の目途が立たなくなったことにある。そして,このコール市場での資金調達ができなくなった原因は,N株式会社が同月3日に会社更生法に基づく更生手続開始の申立てをしたことに端を発してコール市場の信用収縮が発生したためであり,このようなコール市場の信用収縮は,偶発的なものであった。 イ本件質権設定契約締結の目的たくぎん抵当の被告に対する本件質権の設定は,被告がたくぎん抵当に対して本件貸金債権の弁済期を平成9年9月30日から同年12月29日に延長することと引き換えにされたものであって,本件質権の設定時点では,たくぎん抵当の経営再建を図るためには,他に適切な方法がなかった。すなわち,被告が本件 を平成9年9月30日から同年12月29日に延長することと引き換えにされたものであって,本件質権の設定時点では,たくぎん抵当の経営再建を図るためには,他に適切な方法がなかった。すなわち,被告が本件貸金債権の弁済を求めれば,たくぎん抵当は破綻することになるため,被告は,たくぎん抵当の事業継続,破綻回避に協力するために,本件貸金債権の弁済期の延長を認め,それに伴って,たくぎん抵当から本件質権の設定を受けたものである。 したがって,被告とたくぎん抵当が,本件質権設定契約をすることを条件として,本件貸金債権の弁済期を平成9年9月30日から同年12月29日に延長することを合意したことは,社会的に必要かつ正当な行為であり,相当性を有するものとして否認権の対象とはならない。 ウ本件預金債権が破産者の責任財産に属さないこと(ア) 拓銀は,たくぎん抵当に対して多額の貸金債権を有し,たくぎん抵当の拓銀に対する預金債権は,拓銀において相殺できるものであった。したがって,本件預金債権は,本来,破産債権者の平等弁済の原資となる性質のものではなかった。 (イ) 拓銀及びたくぎん抵当は,被告のたくぎん抵当に対する本件貸金債権の弁済期の延長のために,本件預金債権を用意し,拓銀においてその相殺権を放棄したものである。したがって,本件質権設定契約は,拓銀が本件預金債権について有していた優先弁済を受けうる地位を,拓銀から被告に移転したものに過ぎない。 (2) 被告が故意否認事由該当性につき知らなかったこと被告は,本件質権設定契約締結当時,同契約が破産債権者を害することを知らなかった。 4 被告の主張に対する認否(1) 被告の主張(1)の主張は争う。 (2) 同(2)の事実は否認する。 理由 1 請求原因(1)ないし(3)について請求原因(1)ないし( った。 4 被告の主張に対する認否(1) 被告の主張(1)の主張は争う。 (2) 同(2)の事実は否認する。 理由 1 請求原因(1)ないし(3)について請求原因(1)ないし(3)の事実は,当事者間に争いがない。 2 請求原因(4)について(1) 上記事実に加えて,甲第3ないし第19号証,第21,第22号証,第23号証の1ないし5,第24ないし第44号証,第45号証の1ないし6,第46,第47号証,第49,第50号証,第58ないし第67号証,第69ないし第73号証,第74号証の1ないし28,第75号証,第80ないし第85号証,第88号証,第111ないし第115号証,第139号証の1,2,乙第2ないし第6号証,第8,第9号証,証人O及び同Pの各証言並びに弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる(以下,括弧内に主要な証拠等を示す。)。 アたくぎん抵当の設立及び資本等たくぎん抵当は,昭和59年3月1日,抵当証券に関する資金の貸付・管理・保証,抵当証券の保有・売買・売買の仲介,不動産担保貸付等を主な営業目的として設立された(当事者間に争いがない。)。 たくぎん抵当は,拓銀が主導して,拓銀の関連会社として設立されたものであり,その資本は,設立当初には,拓銀及びその関連会社(以下「拓銀グループ」という。)が約51%を保有し,破産宣告当時には,拓銀グループが約90%を保有していた(甲第74号証の1の5頁,同号証の3ないし5)。 たくぎん抵当の役員及び従業員のほとんどは,設立当初から破産宣告時に至るまで拓銀グループから派遣されていた。その役職員数は,設立当初は7名であり,以後漸増して平成5年3月31日の決算期末には63名となり,以後漸減して破産宣告時には42名となったが,主要な役職員の人事は,実質的には拓銀が決定していた(甲 その役職員数は,設立当初は7名であり,以後漸増して平成5年3月31日の決算期末には63名となり,以後漸減して破産宣告時には42名となったが,主要な役職員の人事は,実質的には拓銀が決定していた(甲第74号証の1の8頁,9頁,同号証の7)。 たくぎん抵当は,その役職員数が以上のとおりであったことなどから,一般投資家に対する後記モーゲージ証券の販売業務は,主に拓銀(職員約5000人,支店約200店)の本支店に取り次いでもらって行い,たくぎん抵当の職員が行うことはほとんどなかった(甲第50号証の90頁,第74号証の1の9頁,乙第8号証の18頁)。 イたくぎん抵当の経営状態(ア) たくぎん抵当は,モーゲージ証券(抵当証券会社が金融機関から資金を借り入れ,その資金を債務者に貸し付け,その際に設定を受けた抵当権を法務局に届け出て抵当証券の発行を受け,それを小口に分割したもの)を一般投資家に販売することを主な業務としていたが,いわゆるバブル経済の進展に伴い,不動産業者,パチンコ業者,ホテル業者等に対する一般ローン(通常の貸付)業務をも取り扱うようになり,平成4年3月31日の決算期末には,たくぎん抵当の貸付残高約5282億円のうち,抵当証券分が約2533億円,一般ローン分が約2749億円となるなど,一般ローンの占める比率が高くなっていった(甲第74号証の1の6頁,10頁,14頁,同号証の13)。 (イ) たくぎん抵当は,平成4年3月31日の決算期末には,いわゆるバブル経済の崩壊に伴う不良債権が現実化し,貸付残高約5282億円のうち,正常債権が約2750億円,不良債権が約2532億円となり,不良債権の占める割合が約48%となっていた(甲第74号証の13)。 そして,モーゲージ証券の新規販売は,平成4年度までは相当数あったものの,平成5年度以降は, 円,不良債権が約2532億円となり,不良債権の占める割合が約48%となっていた(甲第74号証の13)。 そして,モーゲージ証券の新規販売は,平成4年度までは相当数あったものの,平成5年度以降は,微々たるものとなり(平成4年度件数1071件,平成5年度以降は最大の年度でも30件),その反面,既に販売したモーゲージ証券の買戻しに応じなければならなくなっていた(甲第74号証の17)。 (ウ) たくぎん抵当は,平成4年3月31日の決算期末以後には,以上のような状況からその経営が困難になっていたため,拓銀は,同年6月に開催された経営会議において,たくぎん抵当の経営再建を拓銀において責任をもって行うことを決定し,以後,たくぎん抵当に対して,種々の再建支援策を実施することとした。その理由は,たくぎん抵当の業況悪化が明白になり,そのままの状態で放置すると大変な事態になり,ひいては,拓銀の信用そのものが大きく毀損されることになるため,拓銀が負担を伴っても支援し,たくぎん抵当の再建を図るということにあった(乙第8号証の25頁,42頁,第9号証の2頁,7頁)。 (エ) たくぎん抵当の再建支援策は,①たくぎん抵当の代表取締役を更迭し,たくぎん抵当の新たな代表取締役に拓銀のQ常務取締役を送り込み,拓銀が責任をもってたくぎん抵当の再建を図る意思があることを内外に示すこと,②拓銀が,たくぎん抵当の大口債権者に対し,「たくぎん抵当の経営改善計画」と題する文書を配付するなどして,たくぎん抵当の債務についてプロラタ返済(約定の弁済期にかかわらず,平等の一定割合で債務の弁済をする返済)とすることに応じてもらうこと,③拓銀のたくぎん抵当に対する資金繰り支援,債権放棄,金利減免,モーゲージ証券の販売取次手数料の免除などの金融支援措置を講ずることなどであった(甲第74号証 する返済)とすることに応じてもらうこと,③拓銀のたくぎん抵当に対する資金繰り支援,債権放棄,金利減免,モーゲージ証券の販売取次手数料の免除などの金融支援措置を講ずることなどであった(甲第74号証の10,第114号証,乙第8号証の26頁,27頁,第9号証の7頁)。 (オ) たくぎん抵当の大口債権者は,拓銀の要請により,たくぎん抵当に対する債権についてのプロラタ返済に応じ,このプロラタ返済率は,平成4年度が約20%,平成5年度が約15%,平成6年度が約30%,平成7年度が約10%,平成8年度が約15%,平成9年度が約15%であった(甲第74号証の22,原告らの平成12年5月22日付け準備書面(五)参照)。 (カ) 拓銀の金融支援措置には,具体的には次のようなものがあった。 ① 資金繰り支援などa 貸付の増加たくぎん抵当の平成4年3月31日の決算期末の借入金債務は,約3979億円であり,うち他行などの大口債権者からのものが約3320億円,拓銀グループからのものが約659億円であったが,平成5年3月31日の決算期末の借入金債務は,約3550億円であり,うち他行などの大口債権者からのものが約2457億円と約863億円も減少したが,拓銀グループからのものが約1093億円と約434億円も増加した。たくぎん抵当は,これ以後,経営のスリム化を図り,資産(貸付金)及び負債(借入金)のいずれをも圧縮していくが,拓銀グループからの借入金は,破産宣告時の一時的な増加を除いても,約1000億円を維持していた(甲第74号証の13)。 b モーゲージ証券の購入たくぎん抵当の平成5年3月31日の決算期末のモーゲージ証券販売残高は,約1340億円であり,平成6年3月31日の決算期末の同販売残高は,約1337億円であり,この間の同販売残高の減少額はわずかであるが ん抵当の平成5年3月31日の決算期末のモーゲージ証券販売残高は,約1340億円であり,平成6年3月31日の決算期末の同販売残高は,約1337億円であり,この間の同販売残高の減少額はわずかであるが,これは,たくぎん抵当の一般投資家等に対する同販売残高がたくぎん抵当のモーゲージ証券の買戻しなどによって約611億円減少したところ,拓銀が,この間に,たくぎん抵当から,モーゲージ証券約608億円分を購入したことによって支えられたものであった。そして,この拓銀の上記モーゲージ証券の購入によってたくぎん抵当が得た資金は,たくぎん抵当のモーゲージ証券の買戻原資又は大口債権者に対する債務返済原資などとして使用された(甲第74号証の18,乙第8号証の30頁)。 c 不良債権の間接的な買取拓銀は,平成4年度に,約9社のR社(債権買取回収のために拓銀が設立した会社であって,実際には,実働部隊はいない。)に資金を貸し付け,そのR社がその資金を原資としてたくぎん抵当から不良債権を買い取り,これにより,たくぎん抵当は,約887億円の不良債権を処理することができた。このR社によるたくぎん抵当からの不良債権の買取は,ピーク時には,残高約1016億円となるが,大蔵省からの指導によって,平成9年7月には,残高なしとなるように整理した(甲第74号証の13,乙第8号証の90頁から96頁,とりわけ,R社に実働部隊がいないことについては,同号証の95頁。なお,類似の不良債権処理については,甲第50号証の56頁から59頁参照)。 ② 債権放棄拓銀は,たくぎん抵当に対し,平成4年度に90億円,平成5年度に約89億円,平成6年度に約246億円,平成7年度に約165億円,平成8年度に約132億円と,累計約722億円の債権を放棄をした(甲第4号証,第6号証,第8号証,第10号証, 90億円,平成5年度に約89億円,平成6年度に約246億円,平成7年度に約165億円,平成8年度に約132億円と,累計約722億円の債権を放棄をした(甲第4号証,第6号証,第8号証,第10号証,第12号証)。 ③ 貸付金の金利の減免拓銀は,たくぎん抵当に対し,貸付債権の金利の減免をした(乙第8号証の31頁)。 ④ モーゲージ証券販売取次手数料の免除拓銀は,たくぎん抵当に対し,平成4年4月1日から,一般投資家向けのモーゲージ証券の販売取次手数料を免除した(甲第74号証の10)。 (キ) たくぎん抵当は,平成4年度決算以降破産宣告に至るまでの各決算において,次のとおり経常利益が赤字の状態であったが,拓銀から,前記のとおりの債権放棄などの金融支援措置を受けることにより,平成4年度決算を除いては損失を出さず,また,債務超過になっていなかったが,拓銀の金融支援がなければ,損失を出し,また,債務超過になるべき経営状態であった(甲第3ないし第12号証)。 (経常利益) (当期純利益)平成4年度決算 △30億円 △33億円平成5年度決算 △63億円 0円平成6年度決算 △67億円 0円平成7年度決算 △25億円 0円平成8年度決算 △17億円 0円(いずれも概数。△はマイナスを表す。)ウプロラタ返済の足並みの不一致ないしは不協力の発生(ア) 被告との関係(平成8年度)① 被告は,平成8年3月31日時点で,たくぎん抵当に対し,24億4700万円の貸金債権を有していた。そのうちの8億8800万円は,弁済期が平成8年6月28日となっていた。 そこで,たくぎん抵当は,上記弁済期に先立ち,プロラタ返済計画(平成8年度結果約15%)に基づき,被告 の貸金債権を有していた。そのうちの8億8800万円は,弁済期が平成8年6月28日となっていた。 そこで,たくぎん抵当は,上記弁済期に先立ち,プロラタ返済計画(平成8年度結果約15%)に基づき,被告に対し,折り返し融資(再融資)の打診をしたが,被告は,折り返し融資を認めるに足りる適切な資料の提出がないとして,たくぎん抵当から上記8億8800万円の弁済を受けながら,たくぎん抵当に対する折り返し融資に直ちには応じなかった(甲第83号証,乙第3号証,証人Oの証言)。 ② たくぎん抵当は,上記プロラタ返済破り(折り返し融資に直ちに応じなかったこと)が他の大口債権者に及ぼす影響を懸念し,被告に対し,プロラタ返済計画に沿うように再びたくぎん抵当に対し金銭を貸し付けていわゆる残高復元をするよう繰り返し要求した(甲第88号証,乙第3号証)。 その結果,被告は,プロラタ返済計画に沿う残高復元に応じることとし,たくぎん抵当に対し,平成8年9月30日に弁済期を平成9年9月30日として4億円を貸し付け,また,同年12月16日に弁済期を上記同弁済期日として3億9900万円を貸し付けた(甲第18,第19号証)。 ただし,被告は,上記残高復元に応じる見返りとして,たくぎん抵当に対し,平成8年12月16日当時の貸付金債権合計24億0100万円について,弁済期をすべて平成9年9月30日に揃えることを要求してこれを承諾させるとともに,平成8年12月16日貸付の3億9900万円について,拓銀の債務保証を付けることを要求して拓銀にこれを承諾させた(甲第19号証,第83号証,第88号証,乙第3号証)。 (イ) H株式会社との関係たくぎん抵当の大口債権者であるH株式会社は,平成9年4月,たくぎん抵当に対して有する債権5億4100万円を全額回収し,その後,たくぎん抵当に対して 証,乙第3号証)。 (イ) H株式会社との関係たくぎん抵当の大口債権者であるH株式会社は,平成9年4月,たくぎん抵当に対して有する債権5億4100万円を全額回収し,その後,たくぎん抵当に対して折り返し融資をせず,プロラタ返済破りをした。 これによって,他のたくぎん抵当の大口債権者のたくぎん抵当に対する債務弁済圧力が一気に高まった(甲第80号証の6項,第88号証)。 エ拓銀の信用低下,再建計画及びプロラタ返済確保のための預金の造成(ア) 拓銀の信用低下拓銀は,平成8年8月,I社の財務格付で,Eランクとされ,これがテレビ・新聞などで報道されることにより,その信用は低下し,株価が下落し,預金の流出が増加していった(甲第45号証の1ないし6,第50号証の84頁から86頁,283頁)。 拓銀は,平成9年4月1日,経営不振の打開策として,J銀行との合併を発表したが,同年9月12日,合併延期(その実は,合併中止)の発表をせざるを得なくなり,その信用不安は増大していった(甲第50号証の86頁から100頁)。 拓銀の株価は,平成9年9月18日には,一株当たり100円を割った(甲第36,第37号証)。 (イ) 拓銀の再建計画及び預金の造成拓銀は,平成9年9月12日,J銀行との合併延期発表と同時に,拓銀の再建計画を発表した。 その内容は,①不良債権約3500億円につき,一括前倒し処理をすること,②そのための自己資本増強のため,約1500億円の増資をすること,③その増資は,たくぎん抵当の大口債権者などに引き受けてもらうことなどであった(甲第47号証,第50号証の102頁,乙第8号証の46頁,以下,上記増資計画を「増資スキーム」という。)。 そして,拓銀は,同年10月2日,たくぎん抵当のプロラタ返済に関して,(a)大口債権者の債権残高に応じ,たくぎん抵当名 102頁,乙第8号証の46頁,以下,上記増資計画を「増資スキーム」という。)。 そして,拓銀は,同年10月2日,たくぎん抵当のプロラタ返済に関して,(a)大口債権者の債権残高に応じ,たくぎん抵当名義の同額の定期預金債権を設定すること,(b)たくぎん抵当は,大口債権者に対し,その定期預金債権に質権を設定すること,(c)たくぎん抵当は,拓銀の増資が実行されたときに,大口債権者に対して債務を弁済すること,(d)この担保の設定に伴い,既存の担保等については,担保解除を求めることを内容とする取締役会の決議をし,そのころ,同債権者に対し,同年9月付け文書でその旨の要請をした(甲第46号証,第80号証の12項,以下「定期預金造成・担保提供計画」という。)。 拓銀の定期預金造成・担保提供計画は,①たくぎん抵当の大口債権者の一部から拓銀において債務保証をして欲しい旨の要請があったものの,拓銀が上記債務保証に一つでも応ずれば全部債務保証をしなければならない事態に陥る可能性があり,これを受諾することはできなかったこと,②たくぎん抵当のプロラタ返済を維持するためには,拓銀の債務保証に代わる方法が必要であったこと,③拓銀の信用保持と増資スキームの実現に向けての環境整備を図ることなどを考慮して策定されたものであった(甲第75号証の33頁,第80号証の11項)。 そして,拓銀の定期預金造成・担保提供計画は,現実的には,何らの資金を必要とすることなく,帳簿上の操作によって実現できるものであった。すなわち,拓銀はたくぎん抵当に対して資金を貸し付け,たくぎん抵当は拓銀にこの貸付資金と同額の定期預金をすると,拓銀はたくぎん抵当に対する貸金債権を有することになり,たくぎん抵当は拓銀に対する上記貸金債権と同額の定期預金債権を取得することができるものであり,このために上記資 付資金と同額の定期預金をすると,拓銀はたくぎん抵当に対する貸金債権を有することになり,たくぎん抵当は拓銀に対する上記貸金債権と同額の定期預金債権を取得することができるものであり,このために上記資金を現実に準備することは全く必要がないからである(弁論の全趣旨)。 オ本件質権設定契約(ア) 拓銀の定期預金造成・担保提供計画は,たくぎん抵当関係分の定期預金債権を総額733億円とし,平成9年10月15日に造成し,増資スキームについての打診をして前向きの感触を得た大口債権者約26社に対して順次担保提供する予定であった(乙第8号証の111頁,原告らの平成12年2月24日付け準備書面(三)の別紙3ないし5)。 そして,実際には,後記拓銀の破綻によって,たくぎん抵当の大口債権者のうち約7社に対して合計金額約240億円の定期預金債権が担保提供された段階で,計画は頓挫した(同別紙3)。 (イ) 被告に関しては,拓銀の定期預金造成・担保提供計画の中で,最も早い時期に,担保提供が実現した(同別紙3)。 その理由は,被告のたくぎん抵当に対して有する債権の弁済期が平成9年9月30日となっていた状況下で,被告が約定どおりの債務の弁済を求める意思を表明していたことに対応して,拓銀側が,上記弁済期に先立つ同月29日に,「条件付きでもよいから,基本的方向に賛同する債権者には,10月1日以降,預金担保を付保する」「被告の動向を他の金融債権者も注目しているので,率先して,たくぎん抵当を助けて欲しい」との要請をせざるを得なかったことにあった(乙第3号証の17頁)。 (ウ) たくぎん抵当は,平成9年10月1日,5億円を拓銀から当座借越の方法で借り入れ,拓銀に対する預金債権である自己資金と合わせて18億3420万円の定期預金債権(すなわち,本件預金債権)を造成した(甲第81 ん抵当は,平成9年10月1日,5億円を拓銀から当座借越の方法で借り入れ,拓銀に対する預金債権である自己資金と合わせて18億3420万円の定期預金債権(すなわち,本件預金債権)を造成した(甲第81,第82号証)。 そして,たくぎん抵当は,平成9年10月9日,本件預金債権に係る「預金質権設定契約証書」(甲第21号証)を作成し,本件預金債権に係る預金通帳とともにこれを被告に交付し,また,たくぎん抵当は拓銀に対して本件預金債権につき被告のために質権を設定することを承諾されたい旨の「預金質権設定承諾依頼書」(甲第22号証)を作成し,拓銀がその末尾に,本件預金債権についての相殺権を放棄した上,その質権設定を異議なく承諾した旨の文言を付し,これを被告に交付し,被告は,たくぎん抵当に対し,本件預金債権に係る預金通帳を預かった旨を記載した「預り証」(甲第23号証の1)を交付し,これにより,本件質権設定手続を終えた(甲第21,第22号証,第23号証の1)。 なお,この本件質権設定契約締結と同時に,被告のたくぎん抵当に対する元金18億3420万円の本件貸金債権は,その弁済期が平成9年9月30日から同年12月29日に変更された(甲第83号証)。 カ拓銀の破綻(ア) K大蔵大臣は,平成9年2月10日,衆議院予算委員会において,「20行というメジャーバンクについてはしっかりと支えていくこと,大蔵大臣として当然のこと,自助努力の中でリストラが進み,対応が進んでおることを考えればなおのこと,これを支持するのは当たり前だ,こう思っております。」という発言をしていた(乙第2号証)。 (イ) しかし,拓銀は,前記エのとおり,信用が低下し,株価が下落し,預金の流出が増加していき,平成9年9月12日にはJ銀行との合併延長を公表せざるを得なくなり,拓銀の株価は,同月18日に 号証)。 (イ) しかし,拓銀は,前記エのとおり,信用が低下し,株価が下落し,預金の流出が増加していき,平成9年9月12日にはJ銀行との合併延長を公表せざるを得なくなり,拓銀の株価は,同月18日には,一株当たり100円を割ることになった。 (ウ) そして,拓銀は,たくぎん抵当に対し,引き続き再建支援をしていたが,その理由は,前記認定のとおり,たくぎん抵当の業況悪化が明白になり,そのままの状態で放置すると大変な事態になり,ひいては,拓銀の信用そのものが大きく毀損されることになるため,拓銀が負担を伴っても支援し,たくぎん抵当の再建を図るということにあり,拓銀幹部は,増資スキームが実現すれば,拓銀もたくぎん抵当も再建できるものと信じていた(乙第8号証の69頁)。 (エ) 拓銀の破綻の直接の原因は,平成9年11月14日(金曜日),コール市場での資金調達ができなかったことによって準備預金の積立不足を引き起こし,翌週以降の目途が立たなくなったことにある。そして,このコール市場での資金調達ができなくなった原因は,N株式会社が同月3日に会社更生法に基づく更生手続開始の申立てをしたことに端を発してコール市場の信用収縮が発生したためであり,このようなコール市場の信用収縮は,偶発的なものであった(甲第50号証の105頁から109頁,乙第8号証の46頁から56頁)。 (オ) 拓銀は,平成9年11月17日(月曜日),経営が破綻した旨の発表をした(甲第139号証の1,2)。 (2) 以上の事実に基づいて,たくぎん抵当が被告に対してした本件質権の設定が故意否認事由に該当するか否かについて判断する。 アまず,本件質権設定契約締結日である平成9年10月9日におけるたくぎん抵当の経営の状態についてみるに,確かに,たくぎん抵当の経営は,平成4年3月31日の決算期末におい るか否かについて判断する。 アまず,本件質権設定契約締結日である平成9年10月9日におけるたくぎん抵当の経営の状態についてみるに,確かに,たくぎん抵当の経営は,平成4年3月31日の決算期末において既に多額の不良債権を抱え,拓銀の再建支援がなくては存続し得ない状態になっていたものといえるが,同時に,拓銀は,これ以後,たくぎん抵当の存続は拓銀の信用維持に欠かせないとの方針の下に,あらゆる手段方法を用いて,たくぎん抵当の再建支援をしていたものであり,この拓銀のたくぎん抵当に対する再建支援がある限り,たくぎん抵当は存続し得る状態であったものと認めるのが相当である。いわば,たくぎん抵当の存続の可否は,拓銀の存続と表裏一体になっていたものと認めることができる。そして,拓銀の経営の破綻は,前記(1)カのような経緯で発生したものであり,平成9年10月9日時点では,予測することが困難であったと認めるのが相当である。 イ次に,たくぎん抵当の本件質権の設定の意図についてみるに,本件質権の設定は,拓銀がその再建を賭けた増資スキーム及び定期預金造成・担保提供計画の下に,最も早く実行されたものであり,これを受けたたくぎん抵当の本件質権の設定は,拓銀及びたくぎん抵当の再建を意図してされたものであり,たくぎん抵当において,近い将来に自らの経営が破綻することを認識・予見しながらしたものではないものと認めるのが相当である。 また,たくぎん抵当の被告に対する本件質権の設定は,被告がたくぎん抵当のプロラタ返済計画に協力し,たくぎん抵当に対する債権の弁済期を平成9年9月30日から同年12月29日に延長することの見返りとしてされたものであり,かつ,拓銀が被告に対する債務保証(この債務保証は,仮にされていたものとすれば,たくぎん抵当の行為ではなく,拓銀の行為であるから,故意 同年12月29日に延長することの見返りとしてされたものであり,かつ,拓銀が被告に対する債務保証(この債務保証は,仮にされていたものとすれば,たくぎん抵当の行為ではなく,拓銀の行為であるから,故意否認事由とならないものである。)をすることに代えてされたものであると認めるのが相当である。 ウさらに,本件預金債権についてみるに,本件預金債権は,たくぎん抵当の拓銀に対する預金債権である自己資金と拓銀からの平成9年10月1日の借入金5億円を併せて造成されたものであるところ,甲第85号証及び弁論の全趣旨(原告らの平成12年7月17日付け準備書面(六)参照)によれば,①拓銀のたくぎん抵当に対する貸付金債権はその前日時点で約2009億円であり,たくぎん抵当の拓銀に対する預金債権は同日時点で約26億円であったこと,②たくぎん抵当は,その設立後間もない昭和59年5月,拓銀に対し,銀行取引約定書を差し入れて,拓銀との間で,銀行取引に関する基本契約を締結していること,その契約中には,たくぎん抵当に期限の利益の喪失事由(その例として,たくぎん抵当について破産の申立てがあったとき,たくぎん抵当の拓銀に対する預金債権についての仮差押え又は差押えの各命令が発送されたときがあげられている。)などがあった場合には,拓銀において,拓銀のたくぎん抵当に対する債権とたくぎん抵当の拓銀に対する預金債権とを対当額で相殺できる旨の約定があることが認められ,これらの事実に照らすと,本件預金債権は,たくぎん抵当の自己資金部分についても,拓銀からの平成9年10月1日の借入金5億円部分についても,たくぎん抵当について破産の申立てがあったり,たくぎん抵当の他の債権者からの差押えなどがあれば,拓銀において相殺できるものであって,もともと,たくぎん抵当の他の債権者の満足に供することのでき ても,たくぎん抵当について破産の申立てがあったり,たくぎん抵当の他の債権者からの差押えなどがあれば,拓銀において相殺できるものであって,もともと,たくぎん抵当の他の債権者の満足に供することのできないものであったものと認めるのが相当である。 また,被告が本件預金債権に対する本件質権を実行した結果は,被告のたくぎん抵当に対する本件貸金債権が消滅するが,拓銀のたくぎん抵当に対するこれと同額の貸金債権が存続するものであって,たくぎん抵当の破産債権者の総債権額は,本件質権の実行があった場合とこれがなかった場合とで相違するものではない(ただし,劣後債権となる利息・遅延損害金においては,若干相違することはある。)。すなわち,被告が本件預金債権に対する本件質権を実行した結果は,たくぎん抵当の積極財産額に実質的な変動がなく,かつ,その破産債権者の総債権額にも実質的な変動がなく,ただ,破産債権者が被告から拓銀に変更したに過ぎないことになる。 エ以上によれば,たくぎん抵当が被告に対してした本件質権の設定は,破産法72条1号所定の「破産者カ破産債権者ヲ害スルコトヲ知リテ為シタル行為」に該当しないものと認めるのが相当である。 3 結論よって,原告らの本訴請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がないからこれを棄却し,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 札幌地方裁判所民事第2部裁判長裁判官橋本昇二裁判官岩松浩之裁判官石川真紀子
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