昭和53(行コ)1 損害賠償請求控訴並びに附帯控訴事件

裁判年月日・裁判所
昭和55年3月31日 東京高等裁判所 住民訴訟
ファイル
hanrei-pdf-17443.txt
🤖 AI生成要約2026/3/13

【DRY-RUN】○ 主文 原判決中控訴人ら敗訴の部分を取り消す。 被控訴人の請求及び附帯控訴(当審で拡張した請求を含む)をいずれも棄却する。 訴訟費用(当審で拡張した請求に関する訴訟費用を含む)は第一、二審とも、被控

タグ

キーワード(AI生成)

判決文本文45,698 文字)

○ 主文原判決中控訴人ら敗訴の部分を取り消す。 被控訴人の請求及び附帯控訴(当審で拡張した請求を含む)をいずれも棄却する。 訴訟費用(当審で拡張した請求に関する訴訟費用を含む)は第一、二審とも、被控訴人(附帯控訴人)の負担とする。 ○ 事実以下の記述において、控訴人Aと、控訴人(附帯被控訴人)川崎市を控訴人川崎市と、被控訴人(附帯控訴人)Bを被控訴人と、それぞれ略称する。 (申立)一本件控訴(昭和五三年(行コ)第一号)について控訴人ら代理人らは、「原判決中控訴人ら敗訴の部分を取り消す。被控訴人の請求を却下、予備的に棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、控訴棄却の判決を求めた。 二附帯控訴(昭和五三年(行コ)第四七号)について被控訴代理人は、「原判決中被控訴人と控訴人川崎市に関する部分中、被控訴人敗訴の部分を取り消す。被控訴人が控訴人Aに対する訴に勝訴したときは、控訴人川崎市は被控訴人に対し、さらに金一七六万円及び内金四九万円に対しては昭和五二年一二月二〇日から、内金一二七万円に対しては本件控訴審判決言渡の日の翌日から、各支払いずみまで年五分の割合による金員を支払え。」との判決を求め(このうち、金一二七万円及びこれに対する本件控訴審判決言渡の日の翌日から支払ずみまで年五分の割合による金員の支払いを求める部分は、当審において拡張した請求である)、控訴人川崎市代理人らは、附帯控訴(当審で拡張した請求を含む)棄却の判決を求めた。 (主張)当事者双方の主張は、次のとおり付加するほかは、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する(但し、原判決一七枚目-記録三〇丁-表三行目「財産上」を「財政上」と、原判決一八枚目-記録三一丁-裏四行目「訓令第三号」を「訓令第八号」と、同裏五行目「別表第三 示と同一であるから、これを引用する(但し、原判決一七枚目-記録三〇丁-表三行目「財産上」を「財政上」と、原判決一八枚目-記録三一丁-裏四行目「訓令第三号」を「訓令第八号」と、同裏五行目「別表第三」を「別表第二3」と、同裏九行目「(3)」を「(4)」と、それぞれ訂正する。)第一被控訴人の主張一本件退職手当支出の前提をなす本件分限免職処分の無効もしくは違法事由の補足。 1 Cは、その逮捕後まもなく、本件分限免職処分以前に、毎月二〇万円宛一五回、合計三〇〇万円の現金収賄事実を自供しているのであり、控訴人Aとしては、当時既にCの弁護人に選任されていた弁護士Dに間いただすことによつて、容易に右三〇〇万円収賄の事実を知り得た筈である。しかるに控訴人Aはこれをなすことなく、右分限処分に当り、その処分対象とすべき事実を敢て右逮捕にかかわるガスライター、デパートギフト券の収賄事実のみに限定したのであり、かくて、本来処分の対象となるべき右現金三〇〇万円の収賄事実についての処分を脱漏する結果となつた。(請求原因2(二)(1)、(2)の各違法事由の補足) 2 控訴人Aは、その職歴、経験、市長としての職責から、Cがその逮捕にかかわる右非行事実のみでも、当然に起訴され、裁判の結果最も軽くても執行猶了つきの懲役刑に処せられ、その刑が早晩確定すべきことを確実に予見し得ていた。懲役刑が確定すれば、Cは退職手当の受給資格を喪失する。そこで控訴人Aは、これを回避せんがため、進んで本件分限免職処分にふみきつたのに外ならない。これに関連して、「昭和二八年九月一〇日自丙行発第四九号各都道府県総務部長、都道府県人事委員会事務局長、五大市人事委員会事務局長あて自治省行政部長通知、別紙一、職員の退職手当に関する条例(案)」があることを指摘する(第一法規、地方公務員関係法令、実 号各都道府県総務部長、都道府県人事委員会事務局長、五大市人事委員会事務局長あて自治省行政部長通知、別紙一、職員の退職手当に関する条例(案)」があることを指摘する(第一法規、地方公務員関係法令、実例、判例集六四〇頁から六五五の六頁参照)。これは「準則」と称せられて、各地方公共団体の退職手当に関する条例制定の基準となつているものであり、その第一二条(起訴中に退職した場合の退職手当の取扱)第一項に、「職員が刑事事件に関し起訴された場合で、その判決の確定前に退職したときは、一般の退職手当及び第九条の規定による退職手当は支給しない。但し禁錮以上の刑に処せられなかつたときはこの限りでない。」と規定されている。控訴人川崎市の退職手当条例には、右準則の規定に従つた条項はないが、多数の地方自治体が右準則の規定どおりの取扱いをしている以上、控訴人Aも川崎市の退職手当条例の運用に当つて、右準則の規定の趣旨を十分尊重すべきである。右準則の規定は、職員の任意退職の場合のみを定めたかの如くであるが、分限免職処分の場合も退職手当が支給されるのであるから、その点に関しては、任意退職の場合と同様に扱うべきであり、又起訴以前に分限免職処分がなされたときでも、起訴が確実に予測され、Cのように逮捕勾留中の場合には、右準則の規定の趣旨に沿つた取扱いがなされるべきである。これを要するに、控訴人Aのなした本件分限免職処分は、右準則の規定の趣旨をも回避することを目的としたもので、不正な動機に出でたものであるというべきものである。(請求原因2(二)(5)の違法事由の補足)二本件分限免職処分を自ら取り消さない違法。 控訴人Aは、第一回の退職手当が支給された昭和四九年一二月二一日の以前である同月七日、新聞記者会見の席上、「これからも司直の取調べが進むが、中間発表ごとにではなく、判決が 分を自ら取り消さない違法。 控訴人Aは、第一回の退職手当が支給された昭和四九年一二月二一日の以前である同月七日、新聞記者会見の席上、「これからも司直の取調べが進むが、中間発表ごとにではなく、判決が確定した段階で検討したい」旨述べ、同席した川崎市E職員局長も、「免職になつた元職員に追懲を加えることはむづかしいとされているが、全国でその例がないことはない」旨述べており(甲第三号証)、翌一二月八日附の読売新聞(甲第四号証)紙上には、Cが昭和四八年八月から昭和四九年一〇月まで、毎月二〇万円、合計三〇〇万円の現金を収賄した事実が報道されている。してみれば、控訴人Aは、この段階において、先になされた本件分限免職処分には、処分の脱漏ないし重大な事実の誤認という瑕疵があつたものとして、これを取り消すべき義務があつたといわなければならない。しかるに控訴人Aは、右取消し処分をなさず、敢て本件退職手当を支給したのであつて、右公金の支出は、この点からみても違法というべきである。 仮に右取消し処分についても、裁量の余地があろとしても、前述した諸般の事情を考えれば、右取消しをしなかつた不作為は、裁量権を逸脱したもので、違法というべきである。 三附帯控訴による拡張請求の原因事実。 被控訴人は、本件控訴事件につき、被控訴代理人坂田治吉に訴訟代理を委任し、その報酬として第一東京弁護士会報酬規程に基づき、一二七万円を支払うべきことを約した。よつて被控訴人は、地方自治法二四二条の二第七項の規定に則り、被控訴人が当審においても、控訴人Aに勝訴したときは、控訴人川崎市に対し、原判決で敗訴した四九万円及びこれに対する昭和四九年一二月二〇日から完済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求めるほか、一二七万円及びこれに対する本件控訴審判決言渡しの日の翌日から完済まで、 敗訴した四九万円及びこれに対する昭和四九年一二月二〇日から完済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求めるほか、一二七万円及びこれに対する本件控訴審判決言渡しの日の翌日から完済まで、右同様年五分の割合による遅延損害金の支払いを求めるため、附帯控訴に及んだものである。 第二控訴人らの主張及び反論。 一控訴人Aに被告適格がないこと(本案前の主張2(一))についての補足。 Cに対する第一回の退職手当裁定回議(甲第一五号証の一)に、「市長決裁」という押印がなされているが、これは行政庁において、「一応供覧」としてしばしばみられるもので、控訴人Aが右回議を事実上閲覧したことを確認するための押印に過ぎず、市長として右回議を実質上決裁したものではない。 二被控訴人の前記一ないし三の各主張は争う。任命権者が分限免職処分を発令した後、被処分者について新たな事実が判明し、この事実によれば、右分限免職処分は不相当であり、懲戒免職処分にするのが相当であると判断されるべき場合であつても、右分限免職処分が、その処分時において、取消し原因となる瑕疵を伴わない場合には、これを取り消して、新たに懲戒免職処分をすることはできない。本件分限免職処分には、その処分時において、なんら違法となすべき瑕疵はないのであるから、これを取り消すに由ない。 (証拠)(省略)○ 理由一先ず、控訴人らの本案前の主張について判断する。 被控訴人が川崎市の住民であり、控訴人Aが同市の市長であることは、当事者間に争いがなく、控訴人Aに対する本件訴えが地方自治法二四二条の二第一項四号によるいわゆる代位請求訴訟であることは、被控訴人の主張に徴し明らかである。 ところで、右代位請求訴訟は、地方公共団体が、職員又は違法な行為若しくは怠る事実に係る相手方に対し、実体法上損害賠償等の請求権を有す わゆる代位請求訴訟であることは、被控訴人の主張に徴し明らかである。 ところで、右代位請求訴訟は、地方公共団体が、職員又は違法な行為若しくは怠る事実に係る相手方に対し、実体法上損害賠償等の請求権を有するにもかかわらず、これを積極的に行使しようとしない場合に、住民が地方公共団体に代位し右請求権に基づいて提起するものであるから、右訴訟の被告適格を有する者は、右訴訟の原告により訴訟の目的である地方公共団体が有する実体法上の請求権を履行する義務があると主張されている者であるというべきである。 被控訴人は、本件において、控訴人Aについて違法な公金の支出があるとして、同控訴人が川崎市に損害賠償をなす義務を負うと主張しているのであるから、控訴人Aは被告適格を有するといわなければならない。 控訴人らは、前記地方自治法二四二条の二第一項四号は、「普通地方公共団体に代位して行なう当該職員に対する損害賠償の請求」と規定し、控訴人Aは右「当該職員」に該当しないから被告適格を欠く旨主張するが、代位請求訴訟における被告適格は同訴訟の構造からして前記のとおり解するのを相当とし、前記「当該職員」は、同法二四二条一項を受け、普通地方公共団体がこうむつた損害の原因たる違法な支出行為を行つた職員を意味するにとどまり、被告適格を規定したものとは認められないから、控訴人らの主張は理由がない。(控訴人Aが右のような「支出行為を行つた職員」であるかどうかは、本案の判断において取り上げられるべき問題で、被告適格の問題ではないというべきである。)従つて、控訴人Aが被告適格を欠き、同控訴人に対する本訴が不適法である旨の主張及び同控訴人に対する本訴の不適法を前提とし、控訴人川崎市に対する本訴が不適法である旨の主張(控訴人らの本案前の主張)は、いずれも採用することができない。 二そこで進んで 訴が不適法である旨の主張及び同控訴人に対する本訴の不適法を前提とし、控訴人川崎市に対する本訴が不適法である旨の主張(控訴人らの本案前の主張)は、いずれも採用することができない。 二そこで進んで、控訴人Aに対する請求について判断する。 (一) 川崎市港湾管理部長Cが昭和四九年一一月二六日「同人は昭和四八年八月頃時価八万円相当のガスライター一個及び同年一二月頃二〇万円相当のデパートのギフト券を収賄した」との容疑で川崎警察署に逮捕されたこと、控訴人Aが昭和四九年一一月三〇日Cを「その職に必要な適格性を欠く」として、地方公務員法二八条一項三号により分限免職処分に付したこと、同人が前記事実について同年一二月一七日起訴され、次いで同月二八日別件の収賄で追起訴され、さらに昭和五〇年一月三〇日「同人は毎月二〇万円宛、一五回にわたり合計三〇〇万円の金員を収賄した」との事実について追起訴されたこと、同人が昭和五〇年七月一五日横浜地方裁判所川崎支部において公訴事実全部につき有罪判決(懲役二年、執行猶予四年)を受け、右判決はその頃確定したこと、同人が川崎市退職手当支給条例三条に基づき、退職手当として、第一回分六六九万五〇〇〇円、第二回分(給与引上げに伴う差額分)一一〇万五〇〇〇円、合計七八〇万円の支給を受けたことは、当事者間に争いがなく、成立に争いのない乙第三号証及び甲第一五号証の四によれば、右退職手当の第一回分の支給は昭和四九年一二月二一日、第二回分の支給は昭和五〇年二月二七日に行われたことが認められる。そして、被控訴人が昭和五〇年九月三〇日川崎市監査委員に対し右退職手当の支給は違法な公金の支出であるとして、地方自治法二四二条に基づき監査請求をしたこと、同監査委員が同年一一月二六日付をもつて被控訴人に対し、右請求は理由がない旨の監査結果を通知したことは、 右退職手当の支給は違法な公金の支出であるとして、地方自治法二四二条に基づき監査請求をしたこと、同監査委員が同年一一月二六日付をもつて被控訴人に対し、右請求は理由がない旨の監査結果を通知したことは、当事者間に争いがない。 (二) 被控訴人は、控訴人Aは右退職手当の支出をしたと主張し、控訴人らは、これを争い、右退職手当の裁定は「川崎市事務決裁規程」に基づく市長の委任により職員局長が、支出命令は「川崎市金銭会計規則」に基づく市長の委任により職員局給与課長が、支払は収入役がそれぞれ行つたもので、市長である控訴人Aは右退職手当の支出には一切関与していない旨主張するので、考えるに、成立に争いのない乙第一、第二号証及び当審証人Fの証言によれば、右退職手当支給当時、川崎市においては、退職手当の裁定の権限は、「川崎市事務決裁規程」(昭和四一年訓令八号)により、加算支給の場合を除き職員局長に、支出命令の権限は、「川崎市金銭会計規則」(昭和三九年規則三一号)により職員局給与課長にそれぞれ委任されていたことが認められる。しかし、右乙第一号証によれば、右「川崎市事務決裁規程」は、三条一項において、「助役並びに局長、部長及び課長(以下「局部課長」という。)は、この規程の定めるところにより、自己の判断に基づき、その責任において、市長の権限に属する所管の事務又は補助執行に係る事務を専決又は代決するものとする。」と定める一方、同条二項において、「前項の規定にかかわらず、重要若しくは異例と認める事項又は疑義のある事項については、上司の決裁を受けなければならない。」と定めていることも認められるのである。(なお、右規程においては、「専決」とは、専決者が本規程に定める範囲に属する事務について、市長の在、不在にかかわらず、常時市長に代わつて決裁することをいう旨、また「代決」と とも認められるのである。(なお、右規程においては、「専決」とは、専決者が本規程に定める範囲に属する事務について、市長の在、不在にかかわらず、常時市長に代わつて決裁することをいう旨、また「代決」とは、市長又は専決者が不在である場合において、本規程に定める者が代わつて決裁することをいう旨、定義規定が置かれている。)そして、前記乙第三号証、甲第一五号証の四、成立に争いのない甲第一五号証の一ないし三及び当審証人Fの証言によると、Cは前記分限免職処分を受けた後の昭和四九年一二月九日退職手当請求をし、川崎市職員局給与課(退職手当の所管課)においては退職手当裁定回議を起こし (同月一一日起案)、裁定金額(案)六六九万五〇〇〇円について上司の決裁を求め、右金額どおりの決裁(退職手当裁定)があつたこと、右回議(決裁文書)には決裁日同月一六日と記載されていること、同回議には同局給与第二係長、給与課長、次長、局長の順に押印(いずれも日付入り)があり、職員局長の押印(同月一三日付)に続いて、さらに助役、市長の欄に助役及び控訴人Aの捺印があり、市長欄のわきに角印をもつて「市長決裁」と押捺されていること、右退職手当裁定後、同月一六日(裁定日と同日)職員局給与課長による支出命令(同課長不在のため、支出命令書は同局給与第二係長が代決)がなされ、同月二一日収入役により第一回の退職手当(所得税及び住民税を差し引き六六七万五〇二〇円)がCに支払われたこと、、第二回の退職手当の支出もほぼ右と同様の手続で行われ、支出命令は昭和五〇年二月二二日職員局給与課長により、支払(所得税及び住民税を差し引き一〇二万一三八〇円)は同月二七日収入役によりなされたが、その前提をなす退職手当裁定回議(起案日同年二月一七日、決裁日同月二〇日)は、第一回と異なり、職員局長どまりの決裁(同局長印の日 民税を差し引き一〇二万一三八〇円)は同月二七日収入役によりなされたが、その前提をなす退職手当裁定回議(起案日同年二月一七日、決裁日同月二〇日)は、第一回と異なり、職員局長どまりの決裁(同局長印の日付は同月二〇日)で、同局長決裁印のわきに角印をもつて「局長専決」と押捺されていることが認められる。 以上認定した事実によれば、Cに対する退職手当の支出命令及び支払は第一、二回とも職員局給与課長及び収入役によつてなされたものであるが、退職手当裁定は、通常は職員局長の専決であつたのに、本件では、重要事案として、前記規程三条二項により、市長である控訴人Aによつてなされたものと認めるのが相当である。 (第二回の退職手当裁定回議には、前記のように市長決裁印は存しない。しかし、第二回の退職手当は給与引上げに伴う差額分で、その支給は第一回の退職手当裁定の時に当然予想されたところであるから、第一回の退職手当裁定は実質的に第二回の退職手当裁定を包含していると目すべく、従つて、右事実はいまだ右認定を妨げるものではない。)控訴人らは、第一回の退職手当裁定は専決者たる職員局長の決裁により終つたもので、決裁文書に存する前記市長の印は行政上の一応供覧にすぎない旨主張し、原審証人G及び当審証人Fの供述中には右にそう部分があるが、「川崎市事務決裁規程」においては、前記のように、専決者が定められている場合においても、さらに上司の決裁を受けなければならない場合が定められていること、右回議上には市長である控訴人Aの捺印のほか、そのわきに角印をもつて「市長決裁」と押捺されていること、同回議上の職員局長の押印は昭和四九年一二月一三日の日付印をもつてなされているが、同回議の決裁日欄には同月一六日と記入されていること、Cに対する分限免職処分に関する決裁文書(成立に争いのない甲第一四号証) 上の職員局長の押印は昭和四九年一二月一三日の日付印をもつてなされているが、同回議の決裁日欄には同月一六日と記入されていること、Cに対する分限免職処分に関する決裁文書(成立に争いのない甲第一四号証)には市長である控訴人Aの捺印の上部(決裁区分欄)に角印をもつて「市長決裁」と押捺されており、前記裁定回議上の「市長決裁」もこれと同様に決裁区分を表わしたものと見るのが自然であることに照らせば右供述部分は採用し難く、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。 ところで、地方自治法二四二条の二による住民訴訟は財務会計上の行為を対象とするので、右退職手当の裁定が財務会計上の行為であるかどうかについて検討する。 本件において、前記分限免職処分から退職手当支払に至る一連の行為のうち、分限免職処分が財務会計上の行為に当たらないこと並びに退職手当の支出命令及び支払が財務会計上の行為に当たることは明らかであるが、退職手当の裁定が財務会計上の行為であるかどうかは必ずしも明確ではない。すなわち、地方自治法二三二条の三及び同条の四によれば、同法は支出行為を支出負担行為と支出命令及びこれに基づく支出とに分けているが、前記乙第二号証によれば、「川崎市金銭会計規則」においては、局長の指定する課長(本件においては職員局給与課長)が支出負担行為担当者と定められているのみで、局長又は市長のなす退職手当裁定が右手続においてどのように位置づけられているか、規定上明らかでない。しかし、前記のとおり、本件退職手当の裁定は、Cの退職手当の請求を受け、支給金額を具体的に決定したものであり、その後の手続はすべて同裁定を基礎として進められていること、退職手当裁定回議を起こしたのは職員局給与課であり、支出負担行為担当者も支出命令者も同局給与課長であること、退職手当の具体的な支給金額が決定した後の事 続はすべて同裁定を基礎として進められていること、退職手当裁定回議を起こしたのは職員局給与課であり、支出負担行為担当者も支出命令者も同局給与課長であること、退職手当の具体的な支給金額が決定した後の事務手続としては、支出につき所属年度及び歳出科目に誤りのないこと、金額に違算のないこと、支出に必要な書類が整備されていること等を調査する程度の事務しか残らないことにかんがみれば、右退職手当の裁定は、退職手当の支出原因を確認し、具体的に金額を決定したものとして、支出段階の行為に属し、財務会計上の行為に当たると認めるのが相当である。 従つて、控訴人Aは本件退職手当の支出に関与したものであり、地方自治法二四二条の二第一項四号の関係では、該規定にいう「当該職員」に該当するというべきである。(付言するに、同法二四二条の二第一項柱書きでは普通地方公共団体の「長」と「職員」とを書き分けているが、同項四号が代位請求訴訟であることからして、同号の当該「職員」には「長」を含むものと解する。)(三) 次に、被控訴人は控訴人Aの右退職手当の支出は違法であると主張するので、検討する。 1 被控訴人は、先ず、右退職手当の支出の前提である本件分限免職処分が違法であるから、右退職手当の支出も違法であると主張する。右分限免職処分は、Cの川崎市職員たる身分を剥奪する法的効果を生ずるのみであり、その直接の効果として、Cに退職手当の受給権を付与するものではないが、右分限免職処分がなければ、右退職手当支給の問題も生じないのであるから、その意味において、右分限免職処分は、右退職手当支出の前提をなしているといつて差支えない。 しかしながら、分限免職処分は行政処分であるから、仮りにその処分に違法な点があつたとしても、それが取り消されることなく、外形上有効なものとして存在する限り、何人も(右処 しているといつて差支えない。 しかしながら、分限免職処分は行政処分であるから、仮りにその処分に違法な点があつたとしても、それが取り消されることなく、外形上有効なものとして存在する限り、何人も(右処分庁自身をも含めて)これを有効なものとして取り扱わざるを得ず(いわゆる行政処分の公定力)、従つて分限免職処分に違法な点があるからといつて、その結果これを前提とする退職手当の支出が当然に違法となるものではない。右退職手当の支出が違法であるというためには、分限免職処分に、処分の不存在、処分権限の欠缺、あるいはその他処分の無効を来たすような重大かつ明白な瑕疵がある場合でなければならない。と解するのが、相当である。 これを本件についてみるに、前記甲第一四号証、原審証人Gの証言によれば、控訴人Aは、川崎市職員の任免権者(地方自治法一七二条二項)として、その権限に基づいて、Cがフランス製ガスライター一個及び二〇万円相当のデパートギフト券を収賄したという非行事実(当時判明していたのは、この事実だけである。)を処分対象とし、昭和四九年一一月二九日川崎市の担当助役、職員局長、同局次長、同局人事課長と協議の末、Cを地方公務員法二八条一項三号所定の「その職に必要な適格性を欠く場合」に該当するものとして、分限免職処分にすることとし、翌三〇日その発令をなしたものであることが認められ、Cの右行為は右分限免職の事由に該当するというべきであるから、これら事実経過から見る限りにおいて、右分限免職処分に処分の無効を来たすような瑕疵が存するとは認められない。 しかるところ、被控訴人は、右処分が時期尚早であり、事実の調査が不十分であつたこと、より慎重に調査をつくしていれば、その後間もなく判明した現金三〇〇万円の収賄の事実の疑いを持ちえたはずであるのに、右調査をつくさず、右現金三〇〇万 が時期尚早であり、事実の調査が不十分であつたこと、より慎重に調査をつくしていれば、その後間もなく判明した現金三〇〇万円の収賄の事実の疑いを持ちえたはずであるのに、右調査をつくさず、右現金三〇〇万円収賄の事実につき処分を脱漏する結果になつたこと、そのため本来懲戒免職処分に付すべき事案であるのに、分限免職処分という極端に軽い処分にとどまり、不公平、不平等な処分であるとのそしりを免れないこと、更に、右分限免職処分は、懲戒免職処分、懲役刑の確定等による退職手当不支給の事態を回避し、Cに退職手当を支出することを目的とした不正な動機に因る処分であり、かつ選挙対策、市議会対策という他事考慮に基づくものであることを挙げ、本件分限免職処分には、いちぢるしく社会通念に反し、裁量権を逸脱した違法があると主張するが、これら被控訴人が主張する違法事由は、そのいずれをとつても、本件分限免職処分を無効ならしめるような重大かつ明白な瑕疵に当たるといえないことが明らかである。 してみれば、本件分限免職処分が違法であることを前提として、退職手当の支出が違法である旨の被控訴人の主張は、右分限免職処分の違法事由の存否につき判断するまでもなく、失当として、これを採用することはできないというべきである。 2 次に、被控訴人は、昭和四九年一二月八日ころ、Cの現金三〇〇万円収賄の事実が新聞報道されたのであるから、この段階で、控訴人Aは、本件分限免職処分を取り消すべきであつたのに、これを取り消さなかつたことは違法であり、従つて本件退職手当の支出は違法であると主張する。 しかしながら、一旦分限免職処分がなされた後に、被処分者に新たな非行事実が判明し、この事実を勘案すれば、懲戒処分に付すべきが当然であるからといつて、右分限免職処分を取り消さなければならない義務があるとは解されず、また、瑕疵 職処分がなされた後に、被処分者に新たな非行事実が判明し、この事実を勘案すれば、懲戒処分に付すべきが当然であるからといつて、右分限免職処分を取り消さなければならない義務があるとは解されず、また、瑕疵のある行政処分を行政庁みずから取り消すいわゆる自庁取消しなるものが一定の場合に考えられるとしても、本件における退職手当の支出は本件分限免職処分の取消があつてはじめて支出の根拠を欠くに至るものであるが、右分限免職処分は現に取り消されていないのであるから、本件退職手当の支給がその支出の根拠を欠くということはできず、被控訴人の右主張もまた採るを得ない。 3 なお、地方自治体の退職手当に関する条例の制定につき、その基準となるべき、いわゆる準則即ち「昭和二八年九月一〇日自丙行発第四九号各都道府県総務部長、都道府県人事委員会事務局長、五大市人事委員会事務局長あて自治省行政部長通知、別紙一、職員の退職手当に関する条例(案)」の第一二条(起訴中に退職した場合の退職手当の取扱)第一項に、「職員が刑事事件に関し起訴された場合で、その判決の確定前に退職したときは、一般の退職手当及び第九条の規定による退職手当は支給しない。但し禁錮以上の刑に処せられなかつたときはこの限りでない。」との規定が存することは、弁論の全趣旨を通じて控訴人らの明らかに争わないところである。そして本件第一回の退職手当の支給がなされた昭和四九年一二月二一日より以前である同月一七日、Cは、ガスライター、デパートギフト券収賄の事実により起訴されたこと、前記のとおりである。してみれば、前記の準則の規定の趣旨に照らし、右退職手当を支給すべきではなかつたのではないか、との疑いが生ずるのも一応もつともである。しかし控訴人川崎市における本件退職手当条例に、右準則の規定のような定めがないことは、被控訴人の自認する らし、右退職手当を支給すべきではなかつたのではないか、との疑いが生ずるのも一応もつともである。しかし控訴人川崎市における本件退職手当条例に、右準則の規定のような定めがないことは、被控訴人の自認するところであるから、本件退職手当の支出が不当といいうる余地があるかはとも角、違法ということができないことも明らかである。従つて、右準則の規定に依拠して本件分限免職処分の違法をいう被控訴人の主張もまた採用することができない。 以上のとおりであつて、他に、本件退職手当の支出が法令又は予算の定めるところに違反し、川崎市に損害を与えたことは認められないから、被控訴人の控訴人Aに対する本訴請求は理由がなく、棄却を免れない。 三次に、被控訴人の控訴人川崎市に対する請求は、地方自治法二四二条の二第七項に基づく請求であつて、本件においては控訴人Aに対する請求が認容されることを前提とするものであるところ、該請求が理由がないことは上記のとおりであるから、その余の点について判断するまでもなく、失当として棄却(本訴請求及び附帯控訴により拡張した請求とも。)すべきである。 四よつて、これと異る原判決中控訴人らの敗訴部分を取り消し、被控訴人の本訴請求及び附帯控訴(当審で拡張した請求を含む。)を棄却することし、訴訟費用(当審で拡張した請求に関する訴訟費用を含む。)の負担につき、民訴法九六条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。 (裁判官大内恒夫森綱郎新田圭一)(原裁判等の表示)○ 主文一原告の被告Aに対する第一次的請求を却下する。 二被告Aは被告川崎市に対し、金七七六万九四〇〇円と、内金六六八万九七二〇円に対しては昭和四九年一二月二一日から、残金一〇七万九六八〇円に対しては昭和五〇年二月二七日から、各支払済みに至るまで年五分の割合による金員とを支払え。 七六万九四〇〇円と、内金六六八万九七二〇円に対しては昭和四九年一二月二一日から、残金一〇七万九六八〇円に対しては昭和五〇年二月二七日から、各支払済みに至るまで年五分の割合による金員とを支払え。 三被告川崎市は原告に対し、金七八万円とこれに対する昭和五二年一二月二〇日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員とを支払え。 四原告の被告らに対するその余の請求をいずれも棄却する。 五訴訟費用は被告Aの負担とする。 ○ 事実第一当事者の申立一原告 1 被告Aは、第一次的には原告に対し、予備的には被告川崎市に対し、金七八〇万円と、内金六六九万五〇〇〇円に対しては昭和四九年一二月一七日から、内金一一〇万五〇〇〇円に対しては、昭和五〇年二月二二日から、各支払済みに至るまで年五分の割合による金員とを支払え。 2 被告川崎市は原告に対し、金一二七万円とこれに対する昭和五二年一二月二〇日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員とを支払え。 3 訴訟費用は被告らの負担とする。 4 仮執行の宣言。 二被告ら 1 本案前の申立(一) 本件訴えをいずれも却下する。 (二) 訴訟費用は原告の負担とする。 2 本案に対する申立(一) 原告の請求はいずれも棄却する。 (二) 訴訟費用は原告の負担とする。 第二当事者の主張一請求原因(原告) 1 原告は、肩書地に居住する被告川崎市(以下「川崎市」という。)の住民であり、被告Aは、川崎市の市長である。 2 被告Aは、川崎市の元港湾管理部長であつたCに対し、川崎市職員退職手当支給条例(以下「本件退職手当条例」という。)第三条に基づき、その退職手当として、昭和四九年一二月二一日に第一回分金六六九万五〇〇〇円、昭和五〇年二月二一日に第二回分(すなわち給与引上げに伴う差額分)金一一〇万五〇〇〇円、合計七八〇万円( )第三条に基づき、その退職手当として、昭和四九年一二月二一日に第一回分金六六九万五〇〇〇円、昭和五〇年二月二一日に第二回分(すなわち給与引上げに伴う差額分)金一一〇万五〇〇〇円、合計七八〇万円(以下「本件退職手当」という。)を支給した。 しかし、右公金の支出は、次の理由により違法であり、被告Aは、川崎市に対し右同額の損害を与えた。 (一) 川崎市の港湾管理部長の職にあつたCは、昭和四九年一一月二六日、「同人は昭和四八年八月頃時価八万円相当のフランス製ガスライター一個および同年一二月頃二〇万円相当のデパートのギフト券を収賄した。」との容疑で川崎警察署に逮捕され、右被疑事実について昭和四九年一二月一七日起訴された。同人は、更に同月二八日別件の収賄で追起訴され、のみならず、また更に昭和五〇年一月三〇日、「同人は毎月二〇万円宛、一五回にわたり合計三〇〇万円の金員を収賄した。」との事実について追起訴されるに至つた。その後同人は、同年七月一五日右各公訴事実につき、いずれも有罪と認定され、懲役二年、執行猶了四年の判決の言渡しを受け、右判決はその頃確定したのである。 しかるに、被告Aは、右逮捕の僅か四日後に過ぎない昭和四九年一一月三〇日、Cは「その職に必要な適格性を欠く」として、地方公務員法(以下「地公法」という。)二八条一項三号を適用して同人を分限免職処分に付し(以下「本件分限免職処分」という。)、前記のとおり、同人に対し本件退職手当を支給したのである。 (二) しかし、本件分限免職処分は、次のように重大な瑕疵があり無効である。 仮に無効でないとしても、違法たるを免れない。 (1) すなわち、本件分限免職処分には、処分の対象となる事実を確定せずになされた点において手続不備の瑕疵がある。 被告Aは、処分権者として、処分の対象となるべき事実を確定したうえで処分 を免れない。 (1) すなわち、本件分限免職処分には、処分の対象となる事実を確定せずになされた点において手続不備の瑕疵がある。 被告Aは、処分権者として、処分の対象となるべき事実を確定したうえで処分を決定すべきであるのにもかかわらず、何らさしたる調査もせず、警察がCの逮捕の翌日の記者会見の席上で発表した前記逮捕時の被疑事実のみが同人の収賄事犯のすべてであるとし、これを基礎として前記のとおり逮捕の僅か四日後に本件分限免職処分をなした。もちろん、事実の確定といつても絶対的なものではなく、職務の誠実な遂行として要求される程度の慎重さをもつて調査したうえでのものであれば足りる。しかし、本件分限免職処分がなされたのは前記のとおりCの逮捕後僅か四日目であるが、そもそも逮捕後三日や四日程度で、同人の右収賄事犯の全貌が明らかになるはずはなく、右警察の発表にあつても、捜査が終了したと言つている訳ではないうえ、Cの身柄は拘束中であり、まして検察庁の処分などは未決定の状態である。被告Aが捜査総指揮者である県警察本部刑事部長以上の幹部の意見を聞くとか、捜査担当検察官或いは地方検察庁の刑事部長、検事正の意見を聞くとか、C或いは同人の弁護人から事情を聴取する等して、もうこれ以上同人の捜査は発展しないとの確信を得たのならともかく、かかる調査は行なわれていないのであるから、右処分の時点で、同被告には、Cに対する犯罪捜査がどのように発展するか一切不明であり、同人の非行事実は不確定の状態にあることは明瞭であつた。 これを要するに、被告Aは、Cに対する処分の対象となすべき事実が、同被告の行う調査とは比較にならない程強力な強制捜査によつて解明されつつある段階において、右捜査の終了或いは結果を待つどころか、反対にこれを無視し、極端に不十分な調査に基づいて本件分限免職処分をなした 告の行う調査とは比較にならない程強力な強制捜査によつて解明されつつある段階において、右捜査の終了或いは結果を待つどころか、反対にこれを無視し、極端に不十分な調査に基づいて本件分限免職処分をなしたものであつて、右処分が、対象とすべき事実を確定しないままなされたものであることは明らかである。 このように、事実を確定しないまま処分をなすことは、一部の事実についてのみ処分し、爾余の事実は処分の対象から外し、処分を免れしめることであつて、手続的に瑕疵があり、被告Aの裁量権の範囲を逸脱しているものである。 (2) もつとも、右手続上の瑕疵は、事実が確定された後において、結局のところ、Cの収賄事犯が本件分限免職処分の対象とされた事実の限度にとどまつていれば、その瑕疵を問題とするに足りないともいえよう。しかし、本件においては、果せるかな被告Aが認定した事実は、Cの収賄事犯の極く一部に過ぎないことが、前記のとおり判明したのである。 この点において、本件分限免職処分は、重大な事実誤認の瑕疵をも免れないのである。 (3) 本件分限免職処分には、誤つた法令を適用した瑕疵がある。地公法二八条(分限)一項と同法二九条(懲戒)一項とのいずれを適用するかが、処分権者の自由裁量であるならば、要件ならびに効果を異にする右両条を別個に規定する必要はない。分限処分は、行政機関の能率保持を目的とするものであり、懲戒処分は、道義的に非難されるべき場合にこれを行うものである。すなわち、その職に必要な適格性を欠くこと(同法二八条一項三号)は別に道義的非難に価しないが、全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合(同法二九条一項三号)は道義的な非難を加えられる場合である。右両条は本来異質のものである。従つて、一つの確定された事実に右両法条のいずれを適用するかは、慎重を要するものであ しくない非行のあつた場合(同法二九条一項三号)は道義的な非難を加えられる場合である。右両条は本来異質のものである。従つて、一つの確定された事実に右両法条のいずれを適用するかは、慎重を要するものである。ただ事案によつては、両法条のいずれにも該当する場合もありえよう。そのような場合に右両法条のいずれを適用するかは、自由裁量であるであろう。しかし、本件の場合は現金のみでも三〇〇万円の収賄という事実であつて、それはまさに道義的に非難されるべき場合であり、同法二九条(懲戒)一項に該当する場合であり、同法二八条(分限)一項には該当しない。たとえ、逮捕事実(被告Aが本件分限免職処分の対象とした事実)のみについてみても、懲戒事案であつて分限事案ではない。 右のように、本件分限免職処分は、懲戒処分とすべき収賄事犯について分限処分にしたのであるから、法令の適用に誤りがあり、被告Aの裁量権を逸脱したものである。 (4) 本件分限免職処分は、平等原則ならびに比例原則に違反している。 一つの事案に対して下さるべき処分の軽重は他の実例と比較し常識の範囲内にとどまるべきもので、些細な非行をとらえて、懲戒免職処分にすれば、裁量の限界を逸脱して違法となるが如く、本来重き事案に対し、著しく軽き処分をすればまた裁量の限界を越える。本件のように、市の港湾管理部長の要職にある者が現金のみでも三〇〇万円にのぼる金員等を収賄して、懲役二年の確定判決を受けた事案について、いかに平素の勤務成績や功績を考慮したとしても、懲戒免職処分にかえて、分限免職処分にするがごときことが、世上一般の事例に見られようか。また、川崎市における分限、懲戒免職処分を受けたものの実例と比較してみるがよい。同市においても、右のような悪質な犯罪者が、懲戒を受けず、分限免職となつた例があるかどうか。これ以下の非行者 れようか。また、川崎市における分限、懲戒免職処分を受けたものの実例と比較してみるがよい。同市においても、右のような悪質な犯罪者が、懲戒を受けず、分限免職となつた例があるかどうか。これ以下の非行者でも懲戒免職となつたものは多数ある筈である。従つて、本件分限免職処分は、社会通念に反し、極端に軽き処分であつて、世上一般および川崎市の処分実例に徴しても、不公平、不平等なものであることは明瞭である。 更に、本件退職手当条例一条一項に、退職手当受給権を喪失する場合として、「懲戒によつて退職を命ぜられた」場合と「禁錮以上の刑の確定した」場合とを併わせ規定している事実に照らしても、本件処分は軽きに失するというべきである。 結局、本件分限免職処分は、社会通念上著しく妥当を欠き、平等原則ならびに比例原則に違背し、被告Aの裁量権を逸脱した瑕疵がある。 (5) そして、右のように、被告Aが著しく社会通念に反する本件分限免職処分をなしたのは、Cを懲戒免職処分に付すると、或いは同人に対する判決があれば(禁錮以上の刑に処せられることが確実であつたので)、本件退職手当条例一条一項によつて、同人に退職手当を支給することができなくなるので、同人に前記のように七八〇万円もの多額の本件退職手当を支給せんがため、分限処分に藉口したからなのである。 また、被告Aが、Cの逮捕後僅か四日しか経過していない早い段階で同人を処分したのは、右逮捕時において、たまたま市議会が開催中であつたところ、次のような事情から、同被告か市議会対策上その必要性を感じたからなのである。 すなわち、選挙戦はその告示以前から熾烈な事前運動が行われ、告示の時点は既に最終盤戦であることは今や公知の事実であるところ、前回の川崎市長選挙においても、なるほど投票日は昭和五〇年四月一三日であつたが、その前哨戦は既にそれ以前 から熾烈な事前運動が行われ、告示の時点は既に最終盤戦であることは今や公知の事実であるところ、前回の川崎市長選挙においても、なるほど投票日は昭和五〇年四月一三日であつたが、その前哨戦は既にそれ以前に始まつていた。昭和四九年の一月には早くも被告Aの前々回の際に結成された「明るい革新市政をつくる市民の会」が事務所開きをしたほか、同年一〇月三〇日には、同被告を推す社共両党が政策協定に調印し、組織作りの追い込みに懸命であつた。しかして、昭和五〇年一月二九日には同被告は市長選に出馬を声明し、対立候補との間に激しい前哨戦を展開している。 同被告にとつては、社会党、共産党のほかに、民社党、公明党による推薦ないし選挙協方の党機関決定が、選挙における勝敗の重大な鍵となる情勢にあつた。従つて、同被告としては、市長選挙のため、いわゆるイメージアツプを大いに必要とする重要な時期に、Cの収賄事犯が発覚し「一大シヨツクを受けた」のである。そこで市議会対策として「格好よく処置」する必要があつた。軽卒にも事実を十分調査することなく、早過ぎる処分をしたのは、このような事情があつたからである。 しかし、被告Aにとりいかに主観的に議会対策の必要があつたとしても、職員の処分は法の定める目的に則つて行われるべきものであつて、議会対策のために行われるべきものではない。 これを要するに、本件分限免職処分は、処分の本来の目的に違背し、不正な動機或いは他事考慮に基づいてなされたものであつて、被告Aの裁量権の範囲を逸脱し、或いは裁量権を濫用した瑕疵がある。 (三) ところで、前記のとおり、被告Aは、Cから退職手当の請求を受けるや、本件退職手当条例三条に基づいて、同人に対し合計七八〇万円の本件退職手当を支給したのであるが、(1) 右のとおり、その前提となる本件分限免職処分が無効である以上、本 Cから退職手当の請求を受けるや、本件退職手当条例三条に基づいて、同人に対し合計七八〇万円の本件退職手当を支給したのであるが、(1) 右のとおり、その前提となる本件分限免職処分が無効である以上、本件退職手当の支給も違法たるを免れない。 (2) 仮に本件分限免職処分が無効でないとしても、右処分は取消されるべき違法があり、Cが懲戒免職処分に付されるベきものであること明らかであるところ、懲戒免職処分に付されれば、同人は本件退職手当条例一条一項三号に定めるところにより退職手当の受給資格を喪失するのであるから、同人に対する本件退職手当の支給は、右条項に反し、違法となるというべきである。 (3) なお、本件分限免職処分と本件退職手当の支給とは、同一目的を追求する手段・結果の関係をなしているから、右分限免職処分の瑕疵は右退職手当の支給に承継されるものである。すなわち、「本件退職手当の支給」、という観点から見れば、単に支出負担行為のみでは足りず、その前提として本件分限免職処分が必要である。他面、右分限免職処分のみでは本件退職手当の支給は行えず、支出負担行為が必要である。右二つの行為は、「本件退職手当の支給」という一つの目的に奉仕する相前後する手続関係であるというべく、前提となる本件分限免職処分に瑕疵があれば、支出負担行為にも右瑕疵は承継されるものである。 仮に、本件分限免職処分と本件退職手当の支給とが、一つの法律効果を目的とする相前後する手続関係にないものとしても、分限免職処分は、一方において特定の職員の地位を剥脱するが、他方において同職員に退職手当の受給資格を授与するものである。また仮に後の効果は、分限免職処分の直接的効果でないとしても、退職手当の受給資格の授与が少なくとも、右処分の反射的効果であることは否定できない。右二つの法律効果は、いずれにして 授与するものである。また仮に後の効果は、分限免職処分の直接的効果でないとしても、退職手当の受給資格の授与が少なくとも、右処分の反射的効果であることは否定できない。右二つの法律効果は、いずれにしても、分限免職処分から生ずる不可分一体的な効果である。すなわちCを分限免職処分に付すれば、市は同人に対し、当然に退職手当の支払義務を負担するに至るのである。 従つて、もし本件分限免職処分が無効或いは違法であるとすれば、右処分に基づく本件退職手当の支給も、また違法となるというべきである。 よつて、被告Aは、右違法に支給した本件退職手当相当額につき、川崎市に対し損害賠償責任を負うのである。 3 原告は、本件退職手当の支給は違法な公金の支出であるとして、昭和五〇年九月三〇日川崎市監査委員に対し、地方自治法(以下「地自法」という。)二四二条に基づき、監査請求をした。これに対し同監査委員は、昭和五〇年一一月二六日付をもつて原告に対し、請求は理由がない旨の監査の結果を通知したが、原告は右監査の結果に不服がある。 4 原告は、地自法二四二条の二第一項四号に則り、川崎市に代位して、右損害金の賠償を求めるものであるが、被告Aと川崎市の代表者のAとは事実上同一人であるから、右損害の支払の履行がなされたか否か原告に確認する方法がない。かかる場合、債権者代位権の法理を準用し、原告は、被告Aに対し直接原告に右金員を支払うべきことを求めうると思料する。仮に、原告の右主張が認められないときは、被告Aに対し、右金員を川崎市に補填することを求めるものである。 よつて、原告は被告Aに対し、第一次的には原告に、予備的には川崎市に、右損害金七八〇万円と、内金六六九万五〇〇〇円に対しては昭和四九年一二月一七日から、残金一一〇万五〇〇〇円に対しては昭和五〇年二月二二日から、各支払済に至るまで 次的には原告に、予備的には川崎市に、右損害金七八〇万円と、内金六六九万五〇〇〇円に対しては昭和四九年一二月一七日から、残金一一〇万五〇〇〇円に対しては昭和五〇年二月二二日から、各支払済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金との支払を求める。 5 本件提訴にあたつて、原告は、原告訴訟代理人との間に、第一東京弁護士会報規則に基づき、七〇〇万円の経済的利益の価額に対する手数料、謝金として、一二七万円を支払うべきことを約し、同代理人に対し、右同額の債務を負担した。よつて、原告は、地方自治法第二四二条の二第七項に基づき、川崎市に対し、金一二七万円とこれに対する判決言渡の日の翌日(昭和五二年二月二〇日)から支払済みに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金との支払を求める。 二本案前の主張(被告) 1 (住民訴訟の性質と対象)(一) 地自法二四二条の二所定の住民訴訟は、行政事件訴訟法五条の民衆訴訟の一形態である。 民衆訴訟は、国または公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟であつて、国民が右法条によりとくに賦与された権原に基づいて、自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起するものである。されば、民衆訴訟の内容である訴訟物、請求の範囲、被告適格などは、法律の規定によつて厳格に拘束されることは当然であり、裁判所の審理の範囲もまた同様である。 住民訴訟の対象となる地方公共団体の機関ないし職員の行為は、「公金の支出」、「財産の取得、管理若しくは処分」、「契約の締結若しくは履行」、「債務その他の義務の負担」、「公金の賦課徴収若しくは財産の管理を怠る事実」について、違法なものに限られるものである。 本件訴訟は、「違法な公金の支出」があつたとするものであるが、「違法な公金の支出」とは、普通地方公共団体の職員が、その管理する公金を、 産の管理を怠る事実」について、違法なものに限られるものである。 本件訴訟は、「違法な公金の支出」があつたとするものであるが、「違法な公金の支出」とは、普通地方公共団体の職員が、その管理する公金を、その職務に関する法令または条例の規定もしくは当該団体の議会の議決に違反し、もしくは私利を図る目的で、その任務に背いて支出することをいうのである。 (二) 次に、住民訴訟の目的とするところは、地方公共団体の機関ないし職員の違法行為による財産上の腐敗を防止是正することにある。すなわち、住民監査請求および住民訴訟は、住民に自治参加の機会を与えようとするものであつて、直接民主主義の一制度であるけれども、同様の趣旨に出た地自法第五章に規定された直接請求制度が住民に対し地方公共団体事務執行の全般にわたり不正の防止是正の機会を与えようとするものであるのと異り、住民訴訟は財政土の腐敗行為を防止、是正することを目的として設けられたものである。 右の次第で、本件訴訟において、原告は、本件分限免職処分の効力を争うことはできないのであつて、本件の審理、判断の対象は右処分を前提として本件退職手当の支給が「公金の違法な支出」に該当するか否か、という点のみに限定されるのである。 2 (被告Aに対する訴えの不適法)(一) 本件訴訟は、地自法二四二条の二第一項四号の規定に基づき、住民たる原告が川崎市に代位して行う「当該職員」に対する損害賠償を請求するものであるところ、「当該職員」とは、市が蒙つた損害の発生原因となつた、違法な支出行為を行つた職員、を意味するものである。 そして、次に述べるとおり、被告Aは「当該職員」に該当しないから、被告適格を欠くものである。 (1) 収入役は、市長の支出命令がなければ、公金の支出をすることができない(地自法二三二条の四)。一方、市長は右権限を助 るとおり、被告Aは「当該職員」に該当しないから、被告適格を欠くものである。 (1) 収入役は、市長の支出命令がなければ、公金の支出をすることができない(地自法二三二条の四)。一方、市長は右権限を助役以下の職員に委任または代理させることができる(同法一五三条)。そして、市長がどの範囲で右支出命令の決裁の内部委任をするかは各市ごとの事務処理規程に委ねられているのである(同法一五三条の規定から明らかであるように、長の判断、裁量に委ねられている)。 川崎市においては、「川崎市事務決裁規程」(昭和四一年訓令第三号)六条ならびに同条に基づく別表第三(職員局に関する事項)により「(5)職員の退職手当の裁定に関すること」は職員局長に委任されており、退職手当の支出命令の権限は、すべて「川崎市金銭会計規則」(昭和三九年規則第三一号)三条一項(3)により各局の予算主管課長に委任されている。 (2) これを本件についてみるに、職員局給与課長が、右に述べた権限に基づいて、Cに対する本件退職手当の支出命令を発し、これによつて収入役がその支払をしている。 市長たる被告Aは、右退職手当の支給については、一切関与していないのであるから、「当該職員」に該当しないものである(なおこの点につき名古屋地裁昭和四六年一二月二四日判決行裁例集二二巻一一・一二号二〇五八頁以下参照)。よつて、被告Aは、本件住民訴訟について、被告たる地位に立つべくもないものであるから、同被告に対する訴えは不適法であり、却下されなければならない。 (二) 被告Aに対する訴えのうち、「第一次的には原告に対して金員の支払いを求める」部分は、次に述べる理由により却下されるべきである。 地自法二四二条の二第一項四号の規定による住民訴訟は、原告たる住民に対して、当該職員が損害金を支払うべきことを規定していないのであるか いを求める」部分は、次に述べる理由により却下されるべきである。 地自法二四二条の二第一項四号の規定による住民訴訟は、原告たる住民に対して、当該職員が損害金を支払うべきことを規定していないのであるから、右第一次的請求と称するものについて、原告は当事者適格ないし訴の利益を有しない。 この点について、原告は、民法四二三条(債権者代位権)の準用を主張する。しかしながら、同条は、債権者が「自己の」債権を保全するために認められた私法上の債権保全に関する規定であるところ、原告は川崎市ないし被告Aに対して、何らの債権をも有しないのであるから、右主張は失当である。 3 (被告川崎市に対する訴えの不適法)被告川崎市に対する訴えは、被告Aに対する訴えが認容されることを前提条件とするものであるが、右に述べたとおり、被告Aに対する訴え自体が不適法であつて却下を免れないのであるから、被告川崎市に対する訴えもまた不適法として却下されるべきである。 三請求原因に対する認否ならびに反論(被告) 1 認否(一) 請求原因1の事実は認める。 (二) (1)同2前段の事実中、川崎市の元港湾管理部長であつたCに対し、本件退職手当条例三条に基づいて、本件退職手当が支給されたことは認める(但し、被告Aが右支給をなした「当該職員」に該らないことは前記二2(一)のとおりである。)が、右支出が違法であるとの主張は争う。 (2) 同2(一)の事実は認める(但し、右のとおり被告Aは本件退職手当を支給した「当該職員」ではない。)(3) 同2(二)の本件分限免職処分が無効または違法であるとの主張は争う。 (4) 同2(三)の主張は争う。 (三) 同3の事実は認める。 (三) 同4および5の主張は争う。 2 反論(一) (1)前述のとおり、住民訴訟は、財政腐敗の防止是正のみを目的として、住民に特別 (4) 同2(三)の主張は争う。 (三) 同3の事実は認める。 (三) 同4および5の主張は争う。 2 反論(一) (1)前述のとおり、住民訴訟は、財政腐敗の防止是正のみを目的として、住民に特別の訴権が賦与されたものであるから、住民が住民訴訟において行政処分自体の当否を争うことは許されない。原告の主張は、任命権者の行つた本件分限免職処分の妥当性(裁量行為の当否)を争うものであつて、住民訴訟の範囲を逸脱するものである。 (2) また行政処分は、公定力を有し、仮に瑕疵があつても、法定された手続によつて取消されまたは無効確認がなされない以上は、これを有効な処分として取り扱うべきであるが、さらに出訴期間が経過した後はその効力が確定し、何人もこれを争うことができない。 公務員はその意に反して不利益な処分を受けたときは、当該職員は人事委員会(または公平委員会)に対して、六〇日以内に不服申立をすることができ(地公法四九条の二、三)、その裁決または決定を経た後でなければ処分の取消訴訟を提起することができない(同法五一条の二)。Cは、川崎市人事委員会に対して、右不服申立をしなかつたから、本件分限免職処分は昭和五〇年一月二九日の経過によつて確定したものである。 (3) 従つて、本件訴訟の争点は、本件分限免職処分を前提とした上で、本件退職手当の支給が違法であるか否かに限られるものである。 しかし、原告は、本件分限免職処分が無効或いは違法なものであるとの前提に立ち、本件退職手当の支給が違法支出であると主張するので、本件分限免職処分の適法性の点も含めて、原告の主張に対し反論を加える。 (二) 任命権者は、違法行為を行つた職員に対して処分を行うにあたつては、広い裁量権が認められており、「裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつた場合に限り、裁判所は、その処分を取り消す 反論を加える。 (二) 任命権者は、違法行為を行つた職員に対して処分を行うにあたつては、広い裁量権が認められており、「裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつた場合に限り、裁判所は、その処分を取り消すことができる」のである(行訴法三〇条)。 これを本件についてみるに、本件分限免職処分は、Cが、原告の請求原因2(一)掲記の収賄容疑で逮捕されたことが市の港湾管理部長たる職に必要な適格性を欠くものであることを理由として、昭和四九年一一月三〇日発令されたものであるところ、右の事実を処分理由として発令された右分限免職処分が、裁量権の濫用に該当すると仮定しても、取消しうべき瑕疵ある処分であるにとどまり、無効な処分ということはできない。行政処分の無効は、任命権のない者の発令、要式行為に違反した発令などの如く、何人にも一見明白かつ重大な瑕疵がある場合、をいうものである。後に詳述するとおり、任命権者によつて適式な手続によつて発令された以上、仮に全く存在しない事実を理由として発令された懲戒処分ないし分限処分であつても裁量権の濫用であるとして取消されることはあつても、無効ではない。 (三) (1)地方公務員には、地公法二七条二項の規定により、「この法律の定める事由による場合でなければ、その意に反して、降任され、若しくは免職されない」という、強い身分保障がある。しかして、同法二八条は分限処分事由を、同法二九条は懲戒処分事由をそれぞれ規定しているが、注意すべきことは両条とも「することができる」と規定していることである。右各事由該当事実がある場合において任命権者は、裁量権の範囲内において職員を処分することができるのであるけれども、必ず処分すべきことを義務づけられてはいない。 この点について、最高裁判所第三小法廷昭和二九年七月三〇日判決(最高裁判所判例集八巻七号一四六三頁 内において職員を処分することができるのであるけれども、必ず処分すべきことを義務づけられてはいない。 この点について、最高裁判所第三小法廷昭和二九年七月三〇日判決(最高裁判所判例集八巻七号一四六三頁)は、次のとおり判示している。 およそ、行政庁における公務員に対する懲戒処分は所属公務員の勤務についての秩序を保持し、綱紀を粛正して公務員としての義務を全からしめるため、その者の職務上の義務違反その他公務員としてふさわしくない非行に対して科する所謂特別権力関係に基づく行政監督権の作用であつて、懲戒権者が懲戒処分を発動するかどうか、懲戒処分のうち、いずれの処分を選ぶべきかを決定することは、その処分が全く事実上の根拠に基かないと認められる場合であるか、もしくは社会観念上著しく妥当を欠き懲戒権者に任された裁量権の範囲を超えるものと認められる場合を除き、懲戒権者の裁量に任されているものと解するのが相当である。 右判示は、地公法二九条の懲戒処分についてなされたものであつて、懲戒処分は内在的制約を伴う自由裁量処分であることを明示している。 この法理は、分限処分についても、そのまま適合するものである。すなわち、処分理由事実が存在しない場合若しくは社会通念上重すぎる処分である場合は、裁量権の濫用として取消判決がなされるのであるが、反対に該当事実があつても、処分をしないこと若しくは社会通念の範囲内においてどの処分を発動するかの選択は任命権者の裁量に任されているのである。 (2) なるほど地公法二八条は、分限処分として、一項各号に該当する場合に免職と降任、二項各号に該当する場合に休職を規定し、同法二九条は、一項各号に該当する場合に懲戒処分を規定している。分限処分は、行政機関の能率保持を目的とするものであつて、両者その目的を異にしている。 しかしながら、一個の行為が同時 合に休職を規定し、同法二九条は、一項各号に該当する場合に懲戒処分を規定している。分限処分は、行政機関の能率保持を目的とするものであつて、両者その目的を異にしている。 しかしながら、一個の行為が同時に両者の事由に該当する場合がある。たとえば、会計課の職員が公金を着服横領した事案は、当該行為職員の性格のしみに由来するものであつて、「その職に必要な適格性を欠く」(二八条一項三号)ことを表象するものとして分限処分の事由となるが、同時に二九条一項各号に該当する行為として懲戒処分の事由となる。かかる事案について、分限処分と懲戒処分のいずれを選択するかは、任命権者が諸般の事情を総合的に判断して、決定すべきものである。 (3) また、職員が逮捕起訴された場合に、当該職員に対して休職処分に付して判決の結果をまつて処分を決定するか、起訴前に分限ないし懲戒の処分に付するかのいずれを採るかは、任命権者の裁量に委ねられているのである。何となれば、逮捕起訴は刑罰の手続であるところ、刑罰は国民としての反社会的行為に対して国家が行う制裁であるのに対し、分限、懲戒の各処分は公務員の服務上の義務に違反する行為もしくは全体の奉仕者としてふさわしくない行為に対して特別権力関係内部において科せられる監督作用であつて、両者はその性格、目的を異にしている。されば、職員が逮捕、起訴された場合に、任命権者の立場から問題とすべきことは、当該職員の被疑事実ないし公訴事実が存在するか否かという事実認定、存在するとすれば地公法二八条または二九条に該当するか否かという法律判断およびどの段階でいかような処分をすることが行政機関の能率保持、綱紀粛正という処分本来の目的に適合するかという裁量権行使である。 (4) これを本件についてみると、川崎警察署は昭和四九年一一月二七日正午記者会見の席上で、Cの逮 分をすることが行政機関の能率保持、綱紀粛正という処分本来の目的に適合するかという裁量権行使である。 (4) これを本件についてみると、川崎警察署は昭和四九年一一月二七日正午記者会見の席上で、Cの逮捕と前記被疑事実を発表したが、川崎市は、同日午後、警察と職務上密接なかかわり合いをもつ総務局車輛管理課長を同署に赴かせて事実聴取を行つたところ、係官から右同様の事実をCと贈賄側の業者がともに自白したことを告げられたが、その他の容疑については全く告げられなかつた。 一方、市当局は、現金三〇〇万円の収賄の事実については、昭和五〇年一月三〇日に追起訴がなされ、新聞で報道されてはじめて知つたのである。 仮に、本件分限免職処分時において、Cの三〇〇万円の現金の収賄が発覚しても、市長としては、Cを必ず懲戒免職処分に付さなければならないものではなくて、停職以下の処分にすること、起訴をまつて起訴休職処分にし(法二八条二項二号)で判決確定までの間給与の六割を支給すること、極端な場合には何らの処分をしないで判決の結果をまつことのいずれもが、妥当か否かという問題はあるにもせよ、違法でないことは右に引用した最高裁判例により容易に納得されるであろう。 まして、本件においては、Cの最初に発覚した収賄は、分限、懲戒のいずれの事由にも該当するものであつて、前記のとおり、このような事案の場合港湾局管理部長という職に必要な適格性を欠くという点をとらえて地公法二八条一項三号の規定による分限免職にするか、もしくはその職の信用を傷け職員全体の不名誉となる行為として同法二九条一項の規定による懲戒免職にするかは、任命権者の裁量に委ねられているのであるから、起訴をまたずして分限免職処分を採択し、公務員としての身分を失わせたものであつて、右処分をもつて違法と目する余地は寸毫もないのである。 (四 にするかは、任命権者の裁量に委ねられているのであるから、起訴をまたずして分限免職処分を採択し、公務員としての身分を失わせたものであつて、右処分をもつて違法と目する余地は寸毫もないのである。 (四) なお、原告は、「被告AはCに七八〇万円もの多額の退職手当を支給せんがため、分限処分に藉口したものである。」と主張するので、これに対し反論する。 被告Aが、あえて逮捕後四日目の一一月三〇日に本件分限免職処分を発令したのは次の理由による。 市の部長の職にある職員が業者から収賄した嫌疑によつて逮捕されたのは、市はじまつて以来いまだかつてなかつた不祥事である。Cの逮捕時の被疑事実は、昭和四九年一一月二七日に川崎警察署担当官が新聞記者に対して公式発表をしたため、同日の各新聞夕刊に大々的に報道された。市長以下市の幹部職員は、非常なシヨツクを受けるとともに、住民の信託を受けて行政執行の責を負うものとして、重大な責任を感じた。このため、同日被告Aは、市役所の幹部会を開き、綱紀の粛正について全職員に徹底させるとともに、監督不行届の故をもつて担当助役を減給一ヵ月、港湾局長を減給二ヵ月の各懲戒処分に付し、また自らを減給一ヵ月の懲戒処分に付した。本件分限免職処分は、これらの一連の措置の一環として発令されたものである。たまたま、市議会が開会中であつたため、右事件は議会でも取り上げられ、市長以下の監督責任が追及された。市長としては、市民の代表者で構成される市議会に対して陳謝と責任を示すために、Cの早急な処分の必要を痛感したことは当然のことである。 そのため、職員局としては、容疑事実しか存在ないという前提のもとで、判例等を十分に研究の上懲戒免職と分限免職との二案を準備し、一一月二九日の市長、助役、職員局長、同次長、人事課長の会合の席上にこれを提案し、種々協議した結果、 疑事実しか存在ないという前提のもとで、判例等を十分に研究の上懲戒免職と分限免職との二案を準備し、一一月二九日の市長、助役、職員局長、同次長、人事課長の会合の席上にこれを提案し、種々協議した結果、Cを分限免職処分に付することが決定されたのである。右決定に至つた理由として、当時知り得た被疑事実しか存在しないとする認識に基づいて、右に述べた早急な処分の必要性とあわせて、Cが長年真面目に勤務したという実績と収賄した物品が一月分の月収程度のものでもつたことを考慮した。 右事実に徴し、本件分限免職処分がCに本件退職手当を支給することを目的として、故意に分限免職処分に付したものでないことは明らかである。 また、原告は、本件分限免職処分は市長選挙のための人気取りのために行われたかの如く主張するが、市長選挙は翌五〇年四月に施行されたことに照し、これまた一片のいいがかりに過ぎないことは明らかである。 (五) 次に、公金の「違法な支出」とは、前記のとおり、普通地方公共団体の職員が、その管理する公金をその職務に関する法令または条例の規定もしくは当該団体の議会の議決に反し、または私利を図る目的で任務に背いて支出する場合である。 これを本件についていうならば、Cを懲戒免職処分にした場合に同人に退職手当を支給することは、違法な支出となることは明らかであるが、分限免職処分を選択した本件の場合には、市は、本件退職手当条例に従つて、Cに対し本件退職手当を支給しなければならないのであるから、仮に本件分限免職処分が違法であるとしても、右支給を目して「違法な支出」とする余地は寸毫もないのである。 (六) 右の次第で、本件分限免職処分の発令に伴い、川崎市は、Cに対して、本件退職手当条例三条の規定に基づき、本件退職手当を支給したものであるから、右支給をもつて違法な公金の支出と目する余 である。 (六) 右の次第で、本件分限免職処分の発令に伴い、川崎市は、Cに対して、本件退職手当条例三条の規定に基づき、本件退職手当を支給したものであるから、右支給をもつて違法な公金の支出と目する余地は皆無である。 第三証拠(省略)○ 理由一原告が川崎市の住民であり、被告Aが同市の市長であること、同市の港湾管理部長の職にあつたCが、昭和四九年一一月二六日「同人は昭和四八年八月頃時価八万円相当のフランス製ガスライター一個および同年一二月頃二〇万円相当のデパートのギフト券を収賄した」との容疑で川崎警察署に逮捕されたこと、同人が右被疑事実について昭和四九年一二月一七日起訴されたこと、同人が、同月二八日別件の収賄で追起訴されたこと、同人が更に昭和五〇年一月三〇日「同人は、毎月二〇万円宛、一五回にわたり合計三〇〇万円の金員を収賄した」との容疑により追起訴されたこと、同人が、同年七月一五日右各公訴事実につきいずれも有罪と認定され、懲役二年、執行猶了四年の判決の言渡しを受けたこと、右判決はその頃確定したこと、被告Aが、右Cの逮捕後四日目である昭和四九年一一月三〇日、Cは「その職に必要な適格性を欠く」として、地公法二八条一項三号を適用して同人を本件分限免職処分に付したこと、Cが本件退職手当条例第三条に基づき本件退職手当の支給を受けたこと、原告が、昭和五〇年九月三〇日川崎市監査委員に対し、本件退職手当の支給は違法な公金の支出であるとして、地自法二四二条に基づき監査請求をしたこと、同監査委員が、昭和五〇年一一月二六目付をもつて原告に対し、右請求は理由がない旨の監査の結果を通知したこと、以上の事実は当事者間に争いがない。 二 1ところで、原告の主張は、要するに「本件分限免職処分は無効であり、仮にそうでないとしても違法たるを免れないから、右処分を前提とする の監査の結果を通知したこと、以上の事実は当事者間に争いがない。 二 1ところで、原告の主張は、要するに「本件分限免職処分は無効であり、仮にそうでないとしても違法たるを免れないから、右処分を前提とする本件退職手当の支給は、地自法二四二条一項所定の『違法な公金の支出』に該る」というのであるが、これに対し、被告らは、「同法二四二条の二所定の住民訴訟は、地方公共団体の財政上の腐敗を防止・是正することを目的として設けられたものであるから、原告は本訴において、本件分限免職処分の効力を争うことはできず、本訴における審理・判断の対象は、右処分を前提として、本件退職手当の支給が違法な公金支出に該るか否か、という点にのみ限定されるべきである。」旨主張し、また、「行政処分は公定力を有し、仮に瑕疵があつても、法定の手続により取消され、または無効確認がなされない以上は、これを有効な処分として取扱うべきであるから、本訴の争点は、本件分限免職処分を前提としたうえで、本件退職手当の支給が違法であるか否かに限られるべきである」旨主張するので、これらの点につき順次考察する。 2 (一)地自法二四二条の二所定の住民訴訟は、地方公共団体の機関または職員の違法行為により地方公共団体の蒙る損害を防止し、あるいはこれを補填せしめるため、特に法律により住民に訴権を付与し、また右訴訟を通じて、地方公共団体の財政上の腐敗の防止、是正を図り、財務会計上の公正を期するものであつて、右訴訟の対象となる地方公共団体の機関または職員の行為ならびに請求の種類は、同法二四二条一項、二四二条の二第一項の定めるところに限られるものである。 (二) (1)ところで、或る地方公務員に対する分限免職処分の法的効果は、当該地方公務員の地方公務員たる身分の剥奪であつて、その者に対する退職手当の支給に関する法律関係は、 ろに限られるものである。 (二) (1)ところで、或る地方公務員に対する分限免職処分の法的効果は、当該地方公務員の地方公務員たる身分の剥奪であつて、その者に対する退職手当の支給に関する法律関係は、これとは別個の法規により規律されるものである。従つて、本件分限免職処分それ自体は、財務会計上の行為に該らないものであること、いうまでもない。 しかし、成立に争いのない甲第一九号証ならびに第二〇号証によれば、川崎市においては、その職員の退職手当については、本件退職手当条例ならびに同条例施行規則に定めるところであつて、右条例一条一項は、退職手当の受給権の発生要件につき、「本市職員で退職または死亡したときは、この条例によつて退職手当を支給する。 ただし、次の各号の一に該当する者には支給しない。 (1) 常時勤務に服さない者(2) 給料を受けない者(3) 懲戒によつて退職を命ぜられた者(4) 禁錮以上の刑の確定した者」と規定し、また退職手当の額は同条例三条以下に規定するところである(なお、本件退職手当は、右条例一条二項にいう「普通退職手当」であることは明らかであるところ、以下単に「退職手当」というは、右普通退職手当をいう。)。右によれば、川崎市の職員の退職という事由が発生すれば、同市は、右所定の欠格事由のない限り、他に何らの債務負担行為を要することなく、当然に、当該職員に対し、右所定の基準に従つた額の退職手当を支給する義務を負担するに至るものであることが認められる。これを本件に則していえば、本件分限免職処分により、Cの川崎市職員たる身分が剥奪され、同人の退職という事由が発生し、これにより(Cには、右所定の欠格事由がなかつたから)川崎市は、当然に、同人に対し、右所定の基準に従つた額の本件退職手当の支給義務を負担するに至り、これが、前示のとおり同人に 職という事由が発生し、これにより(Cには、右所定の欠格事由がなかつたから)川崎市は、当然に、同人に対し、右所定の基準に従つた額の本件退職手当の支給義務を負担するに至り、これが、前示のとおり同人に対し支給されたわけである。反面、本件分限免職処分がなされなければ、川崎市がCに対し本件退職手当支給義務を負担し、これを同人に支給することもなかつた、ということができるのである。 右のような事情からすれば、本件分限免職処分と本件退職手当の支給とは密接不可分の関係にあり、仮に本件分限免職処分が無効または違法であれば、本件退職手当の支給もまた違法性を帯びるに至るものというべきである。すなわち、本件分限免職処分の適否は、実体的に、本件退職手当支給の適否の判断の前提問題をなしているのである。 (2) そうとすれば、原告の「本件分限免職処分は無効或いは違法である」旨の主張が、右処分それ自体を訴えの対象としてその効力を争うためにではなく、右処分を前提とする本件退職手当の支給を訴えの対象とし、これが地自法二四二条一項所定の「違法な公金の支出」に該るというがために主張されているものである(この点は原告の主張自体から明らかである。)以上、本件分限免職処分の公定力に抵触するものでない限り(この点は次に考察するところである。)、裁判所が、右処分の適否について審理すべきであることはいうまでもなく、このように解したからといつて、何ら前示住民訴訟の制度の趣旨・目的に反するものではないのである。 (三) (1)次に、一般に、行政処分にはいわゆる公定力が認められ、たとえ行政処分に瑕疵があつても、その瑕疵が無効事由に該らない限り、権限ある機関によつて適法に取消されるまでは、裁判所もこれに拘束されるものとされる。しかし、これは行政処分の公益目的を一応実現せしめ、これを保護すべき必要が つても、その瑕疵が無効事由に該らない限り、権限ある機関によつて適法に取消されるまでは、裁判所もこれに拘束されるものとされる。しかし、これは行政処分の公益目的を一応実現せしめ、これを保護すべき必要があるところから当該行政処分の法的効果に一定の範囲の運用力を付与し、取消訴訟によることなく、右効果を覆滅し或いはこれを実質的に否定するような結果を生ぜしめるような裁判を許さないこととするものであるから、右公定力が及ぶ範囲は、個々の行政処分の目的、内容に応じて、当該行政処分が持ち得べき法的効果の具体的内容によつて限定されるところである。 (2) これを本件についてみると、本件分限免職処分の本来の法的効果は、Cの川崎市職員たる身分の剥奪であるところ、本訴は、前示のように、直接に右処分の効力そのものを争うものではなく、本件退職手当の支給にかかる住民訴訟上の損害賠償の代位請求であつて、その請求の前提として、本件分限免職処分の違法が主張されているのに過ぎないのであるから、これについて裁判所がどのように判断をしたとしても、そのことにより何ら、Cの川崎市職員たる身分の剥奪という本件分限免職処分本来の効果が覆滅せしめられるものではなく、また、これを実質的に考察しても、本訴請求は財産上の請求であつて、Cの市職員たる身分の剥奪という非財産的な効果を本質とする本件分限免職処分の公益目的を、実質的に否定するような結果を生ぜしめることはあり得ないことも明らかである。 (3) これを要するに、本件分限免職処分に認められる公定力の範囲は、本訴において、裁判所が本件退職手当の支給の適否につき判断する前提として、本件分限免職処分の適否を審理することを封じ、或いはその判断を拘束する、というところにまで及ぶものではないのである。 よつて、右の点に関する被告らの主張はいずれも採用しない につき判断する前提として、本件分限免職処分の適否を審理することを封じ、或いはその判断を拘束する、というところにまで及ぶものではないのである。 よつて、右の点に関する被告らの主張はいずれも採用しない。 三そこで、次に本件の事実経過について考察する。 いずれも成立に争いのない甲第二ないし第四号証、第六ないし第一四号証、第一五号証の一ないし四、第一六、第一七号証、乙第三号証、第四号証の一ないし四、ならびに証人Gの証言を総合すれば、次の事実が認められ、他にこの認定を左右するに足りる証拠はない。 (一) Cは、昭和四八年一月一日から昭和四九年一月三日まで、川崎市港湾局の出先機関である川崎港務所長、同月四日から同年三月三一日まで同局次長、同年四月一日から同年一一月三〇日まで同局管理部長として、同市の管理する川崎港の繋留施設、荷捌き場、野積地等の港湾施設の管理運用および同施設の使用許可事務等の職務を掌理していた。 (二) 同人は、昭和四九年一一月二六日深夜、川崎警察署により、おおむね「同人が川崎市港湾局川崎港港務所長の職に従事していた間の昭和四八年九月頃右港務所所長室において、三聖興業株式会社(以下「三聖興業」という。)の代表取締役Hから、同港荷捌き場の使用の便宜を図つた謝礼として、フランス製ガスライター一個(八万円相当)を、同年一二月頃デパートのギフト券(二〇万円相当)を、それぞれ収賄した。」との容疑で逮捕された(但し、右Cが逮捕されたことおよびその被疑事実の大略については当事者間に争いがない。)。川崎市当局は、翌二七日朝の同警察による同市港湾局ならびに港務所の捜索により、Cが逮捕されたことを知り、職員を同警察に調査に赴かせたが、格別の情報の収集はできなかつた。同警察は、同日正午の記者会見の席上で、右Cの逮捕ならびに容疑事実を公式発表し、右事実は 務所の捜索により、Cが逮捕されたことを知り、職員を同警察に調査に赴かせたが、格別の情報の収集はできなかつた。同警察は、同日正午の記者会見の席上で、右Cの逮捕ならびに容疑事実を公式発表し、右事実は同日の新聞各紙の夕刊において一般に報道された。川崎市当局は、同日午後再び職員を同警察に赴かせ情報の収集に当たらせたが、同警察からは、右記者会見において公表された事実以上の事実や、捜査の今後の進展についての見込み等について何らの言及も得られなかつた。 (三) 翌二八日、Cは右被疑事実について勾留され、併わせて接見禁止の決定を受けた。 同日付の読売新聞には、Cが右逮捕容疑についてほぼ全面的に自供した旨、また、川崎警察署では、Cは、Hに荷捌き場使用許可の便宜を図つただけでなく、他の業者についても同様の不正を働いていた疑いがあるとみて、同人を更に追及する方針である旨、また川崎港の右荷捌き場は、貨物の量が増大したため手狭まとなり、滞貨が増え、このため右荷捌き場は事実上一部の既存業者の独占使用するところとなり、この数年来三聖興業以外の新規業者は、全く使用が許可されておらず、右荷捌き場の使用許可に対する港務所の態度がとかく業者間の噂にのぼり、港務所と一部業者との癒着が取沙汰されていた旨、の報道がなされている。 (四) たまたま右当時、川崎市市議会が会期中であつたところから、右事件が市議会においても取り上げられ、被告Aの市長としての監督責任等が問題とされるところとなつた。 市当局は、Cの処分について協議、検討した結果、同月二九日の午後被告Aのほか担当助役、職員局長、同局次長、同局人事課長が出席した会議の席上において、Cについて、同人の日頃のまじめな勤務ぶりからみて前記逮捕事実以外には余罪がないものと判断し、右逮捕事実を処分の基礎として、これは、地公法二八条一項三 次長、同局人事課長が出席した会議の席上において、Cについて、同人の日頃のまじめな勤務ぶりからみて前記逮捕事実以外には余罪がないものと判断し、右逮捕事実を処分の基礎として、これは、地公法二八条一項三号所定の「その職に必要な適格性を欠く場合」に該当するものとして、同人を分限免職処分に付する旨の内部的な方針が決定された。また併わせて、被告Aを減給一ヵ月、担当助役を減給一ヵ月、港湾局長を減給二ヵ月の各懲戒処分とする旨の方針も決定された。なお、川崎市当局は、右Cの処分の基礎とする事実を認定するについて、前記(二)の警察に対する情報収集活動のほかは、格別の事情調査を行わなかつた。 翌三〇日、被告Aは右方針のとおり、関係職員の回議を経て、本件分限免職処分を発令した。なお、処分理由説明書によれば、処分の理由として、Cは「川崎港の荷捌き場の使用をめぐり収賄容疑で逮捕されるという不祥事件をひき起したが、これはその職に必要な適格性を欠いたものであつた。」との記載があるが、右処分は、前示のとおり、Cが実際に逮捕の容疑事実を犯したものとの認定に基づいているのであつて、同人が「収賄容疑で逮捕され」たことの一事をもつてなされたものではない。 (五) 翌一二月八日付の読売新聞には、Cにつき、更に、同人が同年一月一五日、日新運輸倉庫株式会社川崎支店長Iと港栄作業株式会社川崎出張所長Jとから、川崎港の資材置場(通称野積地)について使用の便宜を図つたことの謝礼として、スイス製腕時計一個(八万九〇〇〇円相当)を収賄した事実が判明し、右贈賄者らが逮捕され、また更に、Cが、三聖興業のHから、前示逮捕事実の収賄のほか、昭和四八年八月から同四九年一〇月まで毎月二〇万円宛、合計三〇〇万円の現金を謝礼として収賄していた事実が判明した旨の報道がなされた。また、同日付の東京新聞には、右読 から、前示逮捕事実の収賄のほか、昭和四八年八月から同四九年一〇月まで毎月二〇万円宛、合計三〇〇万円の現金を謝礼として収賄していた事実が判明した旨の報道がなされた。また、同日付の東京新聞には、右読売新聞のそれと同旨の報道の他、被告Aが同月七日の記者会見で、「Cに対する判決が確定後、同人に対する右処分を検討し直すことも考えている旨述べた旨の報道がなされた。 (六) 一二月一七日、Cは、「同人は、土木工事請負、同工事資材販売等を営業目的とする三聖興業のHから、三聖興業が埋立用土砂を船積みするため、川崎市の管理する繋留施設の使用許可について職務上便宜な取扱いを受けたい趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら、昭和四八年六月二九日ころ、川崎港港務所所長室において、フランス製ライター「カルチエ」一個(時価四五、〇〇〇円相当)の供与を受け、同年七月六日ころ、同所において、横浜高島屋発行にかかるお好みギフト券四〇枚(金額合計二〇〇、〇〇〇円)の供与を受け、もつて自己の職務に関し賄賂を収受した」との事実によつて第一回目の起訴を受けた。 (七) 同月二一日、C側の請求に基づき、本件退職手当の第一回支給分として六六九万五〇〇〇円(但し、所得税一万四七〇〇円および住民税五二八〇円を予め控除されたので、Cの現実の受領額は六六七万五〇二〇円である。)が同人に対し支給された(但し、退職手当が同人に対し支給されたことは当事者間に争いがない。)。 (八) 一二月二八日、Cは、「同人は、昭和四九年一月一五日ころ、自宅において、港湾運送業等を営業目的とする日新運輸倉庫株式会社川崎支店長のIおよび同業等を営業目的とする港栄作業株式会社川崎営業所長のJの両名から、右野積地、荷捌き場等の使用について職務上便宜な取扱いを受けたことに対する謝礼、ならびに将来も同様職務上種 会社川崎支店長のIおよび同業等を営業目的とする港栄作業株式会社川崎営業所長のJの両名から、右野積地、荷捌き場等の使用について職務上便宜な取扱いを受けたことに対する謝礼、ならびに将来も同様職務上種々便宜な取扱いを受けたい趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら、スイス製腕時計オメガコンステレーシヨン一個(時価八九、〇〇〇円相当)の供与を受け、もつて自己の職務に関し賄賂を収受した」との事実によつて第二回目の起訴を受けた。 更に、昭和五〇年一月三〇日、Cは、「同人は、三聖興業のHから、三聖興業が川崎市の管理する業留施設、荷捌き場の使用許可について職務上便宜な取扱いを受けたことに対する謝礼、ならびに将来も同様種々職務上便宜な取扱いを受けたい趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら、昭和四八年八月二〇日ころから同四九年一〇月三〇日ころまでの間、前後一五回にわたり、川崎港港務所所長室ほか八ヶ所において、現金合計三〇〇万円の供与を受け、もつて自己の職務に関し賄賂を収受した」との事実により第三回目の起訴を受けた。 翌三一日、Cにつき、保釈許可決定がなされた。 (九) 同年二月二七日、Cに対し、給与の改定に伴う退職手当の差額の一一〇万五〇〇〇円(但し、所得税五万八三〇〇円および住民税二万五三二〇円を予め控除されたので、同人の現実の受領額は一〇二万一三八〇円である。)が支給された(但し、右退職手当が支給されたことは当事者間に争いがない。)。 (一〇) 同年七月一五日、Cは、横浜地方裁判所川崎支部において、右各公訴事実につき、いずれも有罪と認定され、懲役二年、執行猶予四年、前出腕時計の没収、追徴金三二〇万円の判決の言渡しを受け、右判決はその頃確定した(但し、右事実の大略は当事者間に争いがない。)四原告は、「本件分限免職処分は、無効であり、 懲役二年、執行猶予四年、前出腕時計の没収、追徴金三二〇万円の判決の言渡しを受け、右判決はその頃確定した(但し、右事実の大略は当事者間に争いがない。)四原告は、「本件分限免職処分は、無効であり、仮に無効でないとしても違法である。」旨主張するので、この点につき判断する。 1 (一)本件分限免職処分は、前示のように、Cが地公法二八条一項三号所定の「その職に必要な適格性を欠く」もの、としてなされたものである。 (二) ところで、地公法二八条所定の分限制度は、公務の能率の維持ならびにその適正な運営の確保を目的とするものであつて、これを同条一項についてみると、主として職員の職務遂行の能力ないし資質の観点から処分の要件を規定し、その効果として、降任および免職の二種を規定している。他方、同法二九条所定の懲戒制度は、職員の非違行為に対し、職場の規律を正し、その秩序の回復、維持を図ることを目的とするものであつて、同条一項において、右非違行為を類型化して、処分の要件を規定し、その効果として、戒告、減給、停職ならびに免職の四種を規定している。右のように、分限と懲戒とは、各々その制度の趣旨目的を異にし、それゆえまた、右両条の規定する処分の要件ならびに効果も各々異つているのである。 従つて、一般に、一定の事実について、これを分限処分に付するか、或いは懲戒処分に付するかの判断が、任命権者の自由な裁量に委ねられているということはできないものと解するのが相当である。 もつとも、懲戒制度といえども、右のように、直接には、職場の綱紀を粛清し、秩序の維持等を図るものであるが、これを通して終局的には、公務の適正かつ能率的な運営に資するものであるから(地公法一条参照)、具体的な同法二八条所定の分限事由と同法二九条所定の懲戒事由とが相互に有機的な関連性を有していることは否定できず して終局的には、公務の適正かつ能率的な運営に資するものであるから(地公法一条参照)、具体的な同法二八条所定の分限事由と同法二九条所定の懲戒事由とが相互に有機的な関連性を有していることは否定できず、従つて、一定の事実が、同時に分限事由としての性質と、懲戒事由としての性質とを併有する場合も少くない(このようなことは、右一定の事実が非違行為である場合に多くその例をみよう。)ということができる。このような両法条に競合して該当する場合においては、その事実について、公務の能率の維持ならびにその適正な運営の確保の必要という観点から、当該職員を分限処分に付するか、或いは右事実の非違性の要素に着目し、職場の綱紀を粛清し、秩序の回復、維持を図る必要という観点から、これを懲戒処分に付するかの判断は、一定の範囲において、任命権者の合理的な裁量に委ねられていると解するのが相当である。しかし、任命権者の右判断が、地公法所定の分限および懲戒の各制度の趣旨・目的、処分の要件および効果についての同法二八条、二九条の規定内容ならびに社会通念に照らし、合理性を有するものとして許容される限度を超えた不当なものであるときは、裁量権の行使を誤つたものとして違法たるを免れないというべきである(任命権者の裁量権につき最高裁判所第二小法廷昭和四八年九月一四日判決、民集二七巻八号九二五頁参照)。 (三) そこで、これを本件についてみると、前示のとおり、Cは、川崎市の港務所所長、港湾局次長、同局管理部長の要職にありながら、その川崎港の港湾施設の管理運用ならびに同施設の使用許可事務等を掌理する地位を利用し、昭和四八年六月頃から逮捕された昭和四九年一一月までの間に、複数の業者から職務上便宜な取扱をしたことの謝礼等として、フランス製ガスライター、スイス製高級腕時計、デパートのギフト券(二〇万 を利用し、昭和四八年六月頃から逮捕された昭和四九年一一月までの間に、複数の業者から職務上便宜な取扱をしたことの謝礼等として、フランス製ガスライター、スイス製高級腕時計、デパートのギフト券(二〇万円相当)を収賄し、また、継続的に毎月二〇万円宛合計三〇〇万円もの金員を収賄していたのであるところ、Cの右収賄の所為は、公務の不可買収性を侵し、職務行為の公正さに対する社会一般の信頼を著しく毀損せしめ、ひいては、公務員制度の根幹をおびやかすものであつて、公務員として最も慎しむべき破廉恥な所為であるといわざるを得ないものである。 (四) このように、Cの右収賄の事実は、公務員の典型的なともいうべき非違行為であつて、その本質的な要素は、地公法二九条一項各号所定の懲戒事由としてのそれにあることは明らかなところである。 なるほど、右収賄事犯を、公務の適正な運営の確保という観点から考察すれば、これを同法二八条一項三号所定の「その職に必要な適格性を欠く」ものと評し得るものであることは被告ら主張のとおりであるといえなくもない。しかし、本件の如き典型的な非違行為であつて、その本質的な要素が懲戒事由としてのそれにあるというべき事案について、それが分限事由としての側面をも具有するからといつて、これを分限免職処分に付して事足りるとするならば(なお、分限処分中、同法二八条二項二号所定のいわゆる起訴休職処分に付し得ることについては別論であることは、右規定の性質上当然である。)、著しく社会通念に反するところであり、前示のように地公法が、各々その目的、要件ならびに効果を異にする分限および懲戒の両制度を設けた趣旨が全く没却されてしまう結果となることは明らかであるといわなければならない。 そして、右のことは、仮に、被告Aが本件分限免職処分の基礎とした前示逮捕事実に限つて論じても、 び懲戒の両制度を設けた趣旨が全く没却されてしまう結果となることは明らかであるといわなければならない。 そして、右のことは、仮に、被告Aが本件分限免職処分の基礎とした前示逮捕事実に限つて論じても、全く同様である。 しかして、右事案の非違性の程度に鑑みれば、Cを懲戒処分中の免職処分に付するのが相当であつたというべきである。 (五) これを要するに、本件分限免職処分は、Cの収賄という公務員の典型的な非違行為で、本質的に懲戒事由に該当するというべき事案について、同人を分限免職処分に付したものであり、被告Aの右判断は、地公法所定の分限および懲戒の各制度の趣旨・目的、処分の要件および効果についての同法二八条、二九条の規定内容ならびに社会通念に照らし、合理性を有するものとして許容される限度を超えた不当なものであつて、その裁量権の行使を誤つたものとして違法たるを免れない。 2 (一)次に、本件分限免職処分は、前示のように、Cの逮捕後僅か三、四日しか経過していない段階において、従つてまた、前示逮捕事実のみを基礎としてなされたものである。 (二) ところで、前示分限処分或いは懲戒処分制度の趣旨・目的からみて、或る事案について、如何なる時期・段階において、(従つてまた、如何なる事実を基礎として)当該職員を処分すべきかの判断は、当該事案の性質に応じて、一定の範囲において、任命権者の合理的な裁量に委ねられていると解するのが相当であるが、任命権者の右の点についての判断が、合理性を有するものとして許容される限度を超えた不当なものであるときは、その裁量権の行使を誤つたものとして違法たるを免れないというべきである。 (三) そこで、これを本件についてみると、(1) 前示のように、Cが逮捕されたのは昭和四九年一一月二六日の深夜のことであり、川崎市当局が、右事実を知つたのは 違法たるを免れないというべきである。 (三) そこで、これを本件についてみると、(1) 前示のように、Cが逮捕されたのは昭和四九年一一月二六日の深夜のことであり、川崎市当局が、右事実を知つたのは、翌二七日朝のことであるが、同月二九日の午後には既に内部的には本件分限免職処分の方針が決定され、翌三〇日被告Aはこれを発令したのである。そして、右処分決定の前提として、被告Aは、早くも右の時点で、Cについて逮捕事実以外に余罪はないものと判断しているのである。 しかし、右の時点においては、Cの収賄容疑についての捜査は、強制捜査の緒についたばかりであつて(右逮捕に引続いて、裁判所の勾留決定がされたのは二八日のことである。)、一般に、右のような段階においては、それ以降捜査が如何に進展するかは、捜査当局といえども予測は困難な情況にあるものであり、まして、捜査機関でもない市当局がこれを予測し、妥当な事実認定をなし得るものではないということができる。 (2) 従つて、本件のように、処分の対象とすべき事実が、刑事罰の対象として、その捜査が進行中であるような事実においては、任命権者としては、特段の事由がない限り、右捜査の進展を見極め、それが一応の終結をみた段階において、任命権者としての職務の遂行上要求されるべき相当の調査を経て収集し得た資料を基に処分の対象とするべき事実を認定し、その事実認定に基づいて、処分をなすことが合理的である。 (3) しかるに、本件においては、前示のとおり、被告Aは、逮捕の翌日である一一月二七日に、市職員を警察に赴かせて調査に当らせたのみであつて(しかも、右調査によつても、結局記者会見の席上で発表された右逮捕事実以上の事実は収集し得なかつたことは前示のとおりであり、また捜査の見通しについての警察の言及も得られなかつたことも前示のとおり て(しかも、右調査によつても、結局記者会見の席上で発表された右逮捕事実以上の事実は収集し得なかつたことは前示のとおりであり、また捜査の見通しについての警察の言及も得られなかつたことも前示のとおりである。)、本件分限免職処分決定まで他に何ら格別の調査をしたわけでもなかつた。 却つて、前示のように、一一月二八日付の新聞紙上に、捜査当局は、Cは逮捕事実の他にも同様の不正を働いていた疑いがあるとみて、更に余罪の有無を追及する方針である旨の報道がなされているところであり、これが事件の進展につき深い関心を寄せていた市当局の目に入らないはずはなく、また、前示のように、同日付の新聞紙上には右事件の背景につき、川崎港の取扱い貨物量が増大し、荷捌き場等が手狭になり、滞貨が増え、その使用許可をめぐり港務所と一部業者との癒着が取沙汰されていた旨報道されており、前出甲第二号証(同日付の読売新聞の報道)によれば、市としても、右のような荷捌き場等の過密ぶりを改善し、秩序化を図ろうとして、新しい方式を検討中のところであつたというのであるから、被告Aとしても、市長として、右事件の背景として、荷捌き場をめぐる右のような問題が存在していたことを知悉していたものと推認される。 (四) (1)右のような事実関係に徴すれば、被告Aが、本件分限免職処分の時点において、Cにつき、同人が日頃はまじめな勤務ぶりであつたとの一事をもつて、逮捕事実以外に余罪はないものとした判断には、何ら合理的な基礎はないといわなければならない。 (2) また、前示三認定の全事実関係に徴しても、被告Aが、右のようにCの逮捕後僅か四日後の、同人に対する捜査がまだその緒にあるというべき早い時点において、敢えて同人を本件分限免職処分に付したことの合理性を基礎づけるに足りる理由も何ら見当らないのである。 被告Aが、 の逮捕後僅か四日後の、同人に対する捜査がまだその緒にあるというべき早い時点において、敢えて同人を本件分限免職処分に付したことの合理性を基礎づけるに足りる理由も何ら見当らないのである。 被告Aが、その市長としての職責上、Cの収賄事犯について職場の綱紀の粛正あるいは、公務の適正な運営の確保の観点から、可及的速かに何らかの処分をなすべき必要を感じたとしても、この種事案については、一般に、任命権者としては右の必要を感ずるものといい得るのであり、かつ右のような事案について如何なる段階において処分を決するのが合理的であるかは前示のとおりであつて、右の点は、何ら本件分限免職処分のとおりであつて、右の点は、何ら本件分限免職処分の時期の合理性を基礎づけ得るものではないのである。 また、たまたま、当時は市議会の会期中であり、市議会においても、Cの右事件が取り上げられ、被告Aの市長としての監督責任等が問題とされたことは前示のとおりであつて、同被告としては、市議会対策上からも、可及的速かに関係者の処分を決定し、議会に対し陳謝の意を表すべき必要を感じたであろうことは推認に難くない。そして、右のようないわば政治的判断も、社会通念上相当と認められる範囲に留まる限り、本来考慮すべきでない事項を考慮して処分の時期が決定せられたものとして、あえて問題とするには足りないといえよう。しかし、本件において、被告Aは、右の必要を感じたが故に、前示のような時点で本件分限免職処分をなしたものであるとしても、これのみでは到底右のような極端に早過ぎる段階における処分決定の合理性を肯認せしめるには足りず、かえつて、右のような段階で本件分限免職処分がなされたのは、社会通念上相当と認められる限度を越えて、本来考慮すべきでない事項を考慮したことの結果でなかつたかとの疑いも残るところである。 ( は足りず、かえつて、右のような段階で本件分限免職処分がなされたのは、社会通念上相当と認められる限度を越えて、本来考慮すべきでない事項を考慮したことの結果でなかつたかとの疑いも残るところである。 (五) 本件においては、結局、Cは、昭和四九年一二月一七日の第一回から翌五〇年一月三〇日の第三回まで、都合三回にわたり、各収賄事実について起訴され、いずれも有罪の判決を受けたわけであるが、前示のように右第一回の起訴より約一〇日前、逮捕から僅か一二日ほど後に過ぎない一二月八日には、既に第二回および第三回目の起訴にかかる事実が判明したことが新聞報道されたところであり、また、前示(三)(3)掲記のように、捜査側の余罪追及の方針が処分前にも報道されたところでもあるのであるから、被告Aが、いま少し捜査の進展を見守つていさえすれば、容易に本来処分の対象とすべき事実を認定し得たはずである。 (六) これを要するに、本件分限免職処分は、如何なる時期・段階においてCを処分すべきかの判断について被告Aの裁量に委ねられている範囲を超え、何ら合理的な根拠に基づくことなく、事案の性質に鑑み著しく尚早というべき時期・段階においてなされたものであつて、ひいては、本来処分の基礎として考慮すべき事実を考慮することなく右処分をなす結果を生ぜしめたものであつて、その裁量権の行使を誤つたものとして、本件分限免職処分はこの点においても違法たるを免れないといわなければならない。 3 右のように、本件分限免職処分が違法であることは、既に明らかであるので、その余の原告主張の瑕疵事由については触れるまでもない。 なお、原告は、本件分限免職処分は無効である旨も主張するが、前示の事実関係ならびに事案の性質に鑑みれば、無効事由に該当する程の瑕疵はないというべきである。 五 1右のように、本件分限免職処分 ない。 なお、原告は、本件分限免職処分は無効である旨も主張するが、前示の事実関係ならびに事案の性質に鑑みれば、無効事由に該当する程の瑕疵はないというべきである。 五 1右のように、本件分限免職処分が違法である以上、本件退職手当の支給もまた違法たるを免れないことは、前示二2(二)(1)に考察したとおりである。 2 そこで、次に右違法な本件退職手当支給についての、被告Aの責任の存否につき考察する。 被告Aは、川崎市長として本件退職手当の支出命令権限を有する(地自法一四八条、一四九条、二三二条の四)。しかし、被告らは、「被告Aは、本件退職手当の支給については関与していないから、地自法二四二条の二第一項四号所定の『当該職員』に該当しないので、被告適格を欠く」旨主張するので、この点につき検討する。 (一) なるほど、前出甲第二〇号証、いずれも成立に争いのない乙第一、第二号証ならびに前出G証人の証言によれば、川崎市においては、退職手当を支給する場合は、まず回議により当該退職手当の額を裁定した後、支出命令に基づき支給するものであるところ、同市事務決裁規程第三条および第六条により、加算して支給される場合を除き、職員の退職手当の裁定に関することは、同市職員局長に委任されており(なお、Cの退職手当が、右「加算して支給される場合」でなかつたことは、同証言により認められる。)、また、同市金銭会計規則第三条一項(4)により、退職手当の支出命令の権限は、職員局の予算主管課長に委任されていることが認められる。 しかし、右のように、市長が職員の退職手当の裁定(決裁)権限や支出命令権限等を、内部的に他の職員に委任していたとしても、当然に、市長が退職手当の支給についての責任を免れるものではなく、具体的な事案について、その退職手当の支給につき、名実ともに何ら関与していないと 令権限等を、内部的に他の職員に委任していたとしても、当然に、市長が退職手当の支給についての責任を免れるものではなく、具体的な事案について、その退職手当の支給につき、名実ともに何ら関与していないと認められる場合においてはじめて、その責を免れることができるものと解するのが相当である。 (二) これを本件についてみると、前出甲第一五号証の一ならびに同乙第三号証によれば、被告Aは、昭和四九年一二月一六日、本件の第一回目の支給(六六九万五〇〇〇円分)にかかる退職手当裁定回議につき、決裁しているのであり(これは、当時Cに対する退職手当の支給の当否が新聞報道等でも問題とされていた(前出甲第三号証によりこれを認める。)ところでもあつたので、前出市事務決裁規程三条二項(「前項の規定(前記市長の権限の他の職員への委任規定)にかかわらず、重要もしくは異例と認める事項または疑義のある事項については、上司の決裁を受けなければならない。」)に拠つて、被告Aが決裁したものと推認される。)、右裁定に基づき、職員局予算主管課長が支出命令を発し、これにより右退職手当が支給されたものであることが認められる。なお、前出甲第一五号証の二によれば、第二回目の支給(一一〇万五〇〇〇円分)にかかる退職手当の裁定回議については、市職員局長が決裁しており、被告Aはこれに関与していないが、右支給は、差額分の支給にかかるものであるから、基本となる第一回目の支給分について被告Aの決裁を得ている以上、第二回目については、あえて同被告の決裁を必要としないものとされたものと推認される。 (三) 右の認定事実に徴すれば、本件退職手当の支給につき被告Aが現実に関与したものであることは明らかである。 また、本件の場合においては、被告Aの違法な本件分限免職処分によつて、川崎市は当然に、Cに対し本件退職手当 実に徴すれば、本件退職手当の支給につき被告Aが現実に関与したものであることは明らかである。 また、本件の場合においては、被告Aの違法な本件分限免職処分によつて、川崎市は当然に、Cに対し本件退職手当を支給すべき義務を負担するに至つたのである(その後には、その履行行為としての内部的な裁定回議、支出命令ならびに支出行為が残されているのみである)から、仮に被告Aが、本件退職手当の支給そのものについては形式的に直接関与していなかつたとしても、右支給につき同被告がその責を免れ得べきものではないというべきである。 よつて、この点についての被告らの主張は失当であり、被告Aは、川崎市に対し、違法な本件退職手当の支給により同市に与えた損害を賠償すべき責を負うものである。 3 ところで、前示三(七)および(九)認定のように、本件退職手当は、第一回支給分、第二回支給分とも、支出命令書記載の退職手当額から所得税および住民税相当額があらかじめ控除され、その残額がCに交付されている。本件の場合、右住民税は神奈川県の県民税と川崎市の市民税とからなることは明らかであるが、右のうち、市民税として現実に川崎市の金庫に収入された額については、同市に損害はなかつたことになる。換言すれば、右住民税額中、神奈川県の県民税相当額のみが川崎市の蒙つた損害であるところ、右損害額を識別するに足りる証拠はない。そうとすれば、結局右各住民税額の全部について損害の証明がないことに帰するといわなければならない。 従つて、本件退職手当の支給(すなわち公金の支出)によつて川崎市の蒙つた損害は、第一回支給分については、六六八万九七二〇円(すなわち、総額六六九万五〇〇〇円から住民税五二八〇円を除外した残額)、第二回支給分については一〇七万九六八〇円(すなわち総額一一〇万五〇〇〇円から住民税二万五三二〇円を いては、六六八万九七二〇円(すなわち、総額六六九万五〇〇〇円から住民税五二八〇円を除外した残額)、第二回支給分については一〇七万九六八〇円(すなわち総額一一〇万五〇〇〇円から住民税二万五三二〇円を除外した残額)となる。 六原告は、被告Aに対し、第一次的には原告に対して右損害金を支払えと訴求し、その根拠として、民法四二三条所定の債権者代位権の法理の準用を主張する。 しかしながら、同条の規定は、債権者が自己の債権を保全するために、その債務者に属する権利を行使することを認めたものであるところ、原告が川崎市に対し私法上の債権を有するとは何ら認められないから、右主張はその基礎を欠く、のみならず、そもそも住民訴訟につき規定する地自法二四二条の二は、住民に対し、当該職員が右損害の賠償を直接原告たる住民に支払うべきことを求める訴権を付与していないから、原告の被告Aに対する第一次的請求は、その原告適格を欠くものであつて不適法であり、この点に関する被告らの本案前の主張は理由がある。 七弁護士の報酬については、弁論の全趣旨によれば、原告が原告代理人との間に、手数粁および謝金として一二七万円を支払うべきことを約したことが認められるが、本件の審理期間、開廷回数、証拠調回数、事案の難易等、諸般の事情を考慮すれば、右金額のうち、原告が被告川崎市に対し支払を請求し得る額は、金七八万円をもつて相当と認める。 八以上の次第で、原告の本訴請求中、被告Aに対する第一次的請求は不適法であるからこれを却下し、同被告に対する第二次的請求は、金七七六万九四〇〇円と、内金六六八万九七二〇円に対する損害発生の日である昭和四九年一二月二一日から、残金一〇七万九六八〇円に対する損害発生の日である昭和五〇年二月二七日から、各支払済みに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払とを に対する損害発生の日である昭和四九年一二月二一日から、残金一〇七万九六八〇円に対する損害発生の日である昭和五〇年二月二七日から、各支払済みに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払とを求める限度において理由があるからこれを認容し、被告川崎市に対する請求は、金七八万円とこれに対する損害補填義務発生の日の後(判決言渡の日の翌日)である昭和五二年一二月二〇日から支払済みに至るまで、民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払とを求める限度において理由があるからこれを認容し、被告らに対するその余の請求は失当であるからいずれもこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、九三条一項を適用し、仮執行の宣言は相当でないのでこれを付さないこととし、主文のとおり判決する。

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る