令和7(行ケ)10007

裁判年月日・裁判所
令和7年5月29日 知的財産高等裁判所 4部 判決 請求棄却
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判決文本文3,865 文字)

令和7年5月29日判決言渡令和7年(行ケ)第10007号審決取消請求事件口頭弁論終結日令和7年5月13日判決 原告 X同訴訟代理人弁理士岩田敏 被告 Y同訴訟代理人弁護士白倉典武 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 特許庁が無効2023-890078号事件について令和6年12月16日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがないか、又は当裁判所に顕著である。) (1) 被告は、「JAPANMINIATUREAUTOMOBILECLUB」の欧文字を横書きしてなる商標(本件商標)について、第28類「ミニチュアカー、おもちゃ、人形」を指定商品として令和3年11月22日商標登録出願をし、令和4年6月3日に登録査定がされ、同月17日に設定登録を受けた(登録第6573770号)。 (2) 原告は、令和5年9月29日、本件商標について無効審判を請求し、特許 庁は、同請求を無効2023−890078号事件として審理を行った。 特許庁は、令和6年12月16日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との本件審決をし、その謄本は同月26日原告に送達された。 (3) 原告は、令和7年1月22日、本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。 2 無効理由(商標法4条1項7号)についての本件審決の判断は、以下のとおりである。 (1) 先願主義を採用 原告は、令和7年1月22日、本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。 2 無効理由(商標法4条1項7号)についての本件審決の判断は、以下のとおりである。 (1) 先願主義を採用する日本法においては、商標法4条1項7号の公序良俗違反を私的領域まで拡大することは許されない。 (2) JAPANMINIATUREAUTOMOBILECLUB(以 下「本件団体」という。)は昭和36年結成のミニチュアカー文化の普及と発展を目的とする団体であり、「JMAC」を通称としている。 原告は、本件団体の初代会長とされるN氏が平成20年に死亡した後、会長代行となり(組織の決定として会長代行に選任されたかについては争いがある。)、令和元年には会長となった。 一方、被告は、出願時に本件団体の関西支部長であったが、令和5年2月1日発行の本件団体の会報では、令和4年12月末で会員取消となった旨記載されている(この会員取消が組織の決定としてされたものであるかについては争いがある。)。 (3) 本件の実体は、本件団体の会長である原告と、出願時には本件団体の関西 支部長であった被告との間の、同じ団体で活動する関係にあった者の間における商標権の帰属等をめぐる問題であり、原告自ら速やかに出願を行うことを妨げるべき事実も認められず、あくまでも当事者同士の私的な問題として解決すべきであるから、商標法4条1項7号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するというべき事情はみいだせない。 3 原告主張の取消事由 商標法4条1項7号該当性の判断の誤り第3 当事者の主張 1 原告の主張(1) 本件審決は、本件商標について、原告自ら速やかに出願を行うことを妨げるべき事実は認められ 事由 商標法4条1項7号該当性の判断の誤り第3 当事者の主張 1 原告の主張(1) 本件審決は、本件商標について、原告自ら速やかに出願を行うことを妨げるべき事実は認められないとしている。 しかし、本件団体は趣味の任意団体であり、業としての行為(商標法2条1項各号)は存在しないから、本件団体が「JAPANMINIATUREAUTOMOBILECLUB」を用いたとしても、それは「標章」であって「商標」ではない。JAPANMINIATUREAUTOMOBILECLUBが商標でない以上、原告が自ら出願することが可能とはいえな い。 (2) 被告は、審判手続において、本件団体のために出願したと主張していたが、出願時、登録時とも何の報告もない。 2 被告の主張原告は、商標法2条1項各号にいう「業として」を営利目的と理解しているよ うであるが、各号所定の行為が「業として」なされたというためには、営利の目的をもってなされる必要はなく、反復継続してされれば足りるものである。 第4 当裁判所の判断 1 取消事由(商標法4条1項7号該当性の判断の誤り)について(1) 商標法4条1項7号については、公序良俗に反する商標の登録を阻止する ためのものであり、典型的には、商標を構成する標章自体が公序良俗に反する場合に、登録商標による保護を与えないことを趣旨とするものである。 商標登録につき先願主義(同法8条1項)を採用する我が国の法制度の下では、私的紛争の範囲内において、一方の利害関係人が先に出願し登録を得たとしても、当然には同法4条1項7号には該当しないものと解される。 (2) 証拠(甲2ないし35、40ないし50、乙1、2)及び弁論の全趣旨によ れば、以下 係人が先に出願し登録を得たとしても、当然には同法4条1項7号には該当しないものと解される。 (2) 証拠(甲2ないし35、40ないし50、乙1、2)及び弁論の全趣旨によ れば、以下の事実が認められる。 ア本件団体は、昭和36年結成のミニチュアカー文化の普及と発展を目的とする団体であり、「JMAC」を通称としている。 本件団体の会員数は昭和44年5月頃に46人(甲35)、平成23年に約110人(甲7)、令和4年に96人である(甲56、弁論の全趣旨)。 イ本件団体の初代会長である A は平成20年に死亡し、原告が会長代行として活動した後、令和元年に会長となった。 被告は、本件出願時において本件団体の関西支部長であった。 ウ原告は、令和4年12月21日付けで、被告に対し、関西支部長である被告には、「2022年新年モデル制作」について迷惑行為があった(新年モ デルは通常1種であるべきところを勝手に2種とし、高額で販売しており営利性があり、本件団体の趣旨に反する行為をしている)、何度も注意したりメールのやり取りをしたがらちが明かないとして、会員取消に関する警告をし、被告が関西支部長になった時点以降の新年モデル関連事項の報告を求めた(甲50)。 エ令和5年2月1日付けの本件団体の会報では、「JMAC関西支部・新年モデル」制作・取扱について不祥事があったとして、令和4年12月末日付で被告を会員取消とした旨の記載がある(甲43)。 (3) 本件商標の構成自体には公序良俗に反する要素は認められない。 (2)の事実経過によれば、本件出願時に原告が本件団体の会長の、被告が関 西支部長の地位にあったことは客観的事実であり、本件の実体は、原告と被告の間の本件団体の在り方を巡る見解の対立等から派 (2)の事実経過によれば、本件出願時に原告が本件団体の会長の、被告が関 西支部長の地位にあったことは客観的事実であり、本件の実体は、原告と被告の間の本件団体の在り方を巡る見解の対立等から派生した問題とみられ、原告自ら速やかに商標登録出願を行うことを妨げるべき事実も認められない。 本件団体の会員数が近時100人前後であることに鑑みれば、本件商標の出願・登録が、当事者間の私的領域の問題を超えて公序良俗に関わることにな るとはいえず、本件商標が商標法4条1項7号に該当するとは認められない。 (4) 原告は、本件団体は趣味の会であるから本件商標は「標章」ではあるが商標ではなく、原告が商標登録出願をする機会があったとする本件審決の判断は誤りである旨主張する。 商標法2条1項各号によれば、「商標」は、「標章」のうち、業として商品を生産、譲渡等し、又は業として役務を提供等する者が商品ないし役務につ いて使用するものである。 しかし、「業として」というためには営利を目的とする必要はなく、同号記載の各行為が反復継続してされれば足りるものであるところ、本件団体は、近時はミニカーに本件団体の通称である「JMAC」の文字やロゴを入れたものを支部単位で年2回まで会員に配布し、本件団体の中央でも50周年モ デル、60周年モデルとしてこのようなミニカーを各支部に配布するなどしており(甲20、21、53等)、上記(2)ウで原告が被告に指摘したのも、このミニカーの配布の頻度や価格に関するものであると解される。したがって、本件団体において使用されていた本件商標が「商標」に該当しないとはいえない。 (5) 以上のとおりであって、本件商標が商標法4条1項7号に該当しないとした本件審決の判断に誤りはなく、原告主張の取消事由は理由がな れていた本件商標が「商標」に該当しないとはいえない。 以上のとおりであって、本件商標が商標法4条1項7号に該当しないとした本件審決の判断に誤りはなく、原告主張の取消事由は理由がない。 結論以上によれば、本件審決について取り消されるべき違法は認められず、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官 増田稔 裁判官 本吉弘行 裁判官 岩井直幸

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