平成19(行ウ)342 行政文書非開示処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成19年12月6日 東京地方裁判所 情報公開
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判決文本文6,756 文字)

主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求原告が平成18年11月14日に行った東京都建築審査会裁決案の評議の議事録の開示請求に対して,処分行政庁が同月28日に行った非開示処分(○○都市建調第○○○号)を取り消す。 第2事案の概要 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1)原告は,平成18年11月14日,処分行政庁に対し,東京都情報公開条例6条1項に基づき,平成16年6月21日に東京都建築審査会(以下,単に「建築審査会」ともいう。)で口頭審査が行われ,同年8月25日付けで裁決書が出された審査請求事件(以下「本件審査請求事件」という。)に関する議事録のうち,口頭審査の議事録を除いたもの(同年6月21日から同年8月25日の間のもの)(以下「本件文書」という。)について,開示請求を行った(甲1。以下「本件開示請求」という。)。 (2)処分行政庁は,原告に対し,平成18年11月28日付けの非開示決定通知書で,本件文書の全部を開示しないことを決定し,その旨通知した(○○都市建調第○○○号。以下,同決定を「本件処分」という。)。 なお,本件処分においては,本件開示請求に係る公文書の件名は「第1124回東京都建築審査会(平成16年7月26日開催)裁決案の評議の議事録」(以下「本件議事録」という。)とされ,本件処分の理由(開示しないこととする根拠規定及び当該規定を適用する理由)は,「東京都情報公開条例第7条第5・6号に該当東京都建築審査会の裁決の評議は非公開とされ ており,対立関係にある審査請求人と処分庁(不作為庁)の双方からそれぞれ意見を書面及び口頭審査により確認し,処分(不作為)の違法性に関して裁決を評議するとい 建築審査会の裁決の評議は非公開とされ ており,対立関係にある審査請求人と処分庁(不作為庁)の双方からそれぞれ意見を書面及び口頭審査により確認し,処分(不作為)の違法性に関して裁決を評議するという性質上,議事録が開示されれば,今後の当該審査会の審議において,委員の自由かつ率直な意見交換が妨げられ,意思決定の中立性・正確性が不当に損なわれるおそれがあるため」とされた。 (以上について,甲2) 法令の定め(1)東京都建築審査会条例建築審査会の会議は,公開する。ただし,建築基準法94条3項の規定に基づき口頭審査を行う場合を除くほか,裁定の評議その他議長が公開を不適当と認めるときは,この限りでない。(6条1項)。 (2)東京都情報公開条例実施機関は,情報開示請求があったときは,開示請求に係る公文書に7条各号のいずれかに該当する情報(以下「非開示情報」という。)が記録されている場合を除き,開示請求者に対し,当該公文書を開示しなければならない(7条柱書き)。 そして,同条各号の非開示情報として,①(同条5号)都の機関並びに国,独立行政法人等,他の地方公共団体及び地方独立行政法人の内部又は相互間における審議,検討又は協議に関する情報であって,公にすることにより,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ,不当に都民の間に混乱を生じさせるおそれ又は特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれがあるもの,②(同条6号)都の機関又は国,独立行政法人等,他の地方公共団体若しくは地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報であって,公にすることにより,同号イないしヘに掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上,当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものがある。 争点 本件の争点は,次のとお 報であって,公にすることにより,同号イないしヘに掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上,当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものがある。 争点 本件の争点は,次のとおりであり,これらに関して摘示すべき当事者の主張は後記第3「争点に対する判断」記載のとおりである。 (1)本件文書として存在する文書の範囲(2)本件処分の適法性第3争点に対する判断 争点(1)について(1)まず,争点(1)について検討する前提として,前記前提事実,掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア本件審査請求事件は,建築審査会において,15建審・請4号,6号,10号及び16号の各審査請求事件として審議された。ただし,後にこれらの事件が分離,併合された結果,実際には,15建審・請17号,18号審査請求事件として審議された。(以上について,甲5,6,10)。 イ本件審査請求事件は,平成16年6月21日に開催された第1123回建築審査会で口頭審査され,同年7月26日に開催された第1124回建築審査会で裁決案の評議がされ,同年8月25日付けで裁決書が発せられた(甲5,6,10)。 ウ平成16年8月25日には,第1125回建築審査会が開催された。平成16年度東京都建築審査会年報(甲6)には,同審査会では,6件の審査請求事件及び1件の執行停止申立事件について裁決案の評議が行われた旨記載されているが,本件審査請求事件はこれらに含まれていない。 エ原告は,平成19年9月6日付けで,処分行政庁に対し,第1125回建築審査会の議事録について開示請求をした。これに対し,処分行政庁は,平成19年9月20日付けで,原告に対し,同建築審査会は,議事録を作成し公開している口頭審査及び同意議案の上程がない審査会であったため,議 の議事録について開示請求をした。これに対し,処分行政庁は,平成19年9月20日付けで,原告に対し,同建築審査会は,議事録を作成し公開している口頭審査及び同意議案の上程がない審査会であったため,議事録作成を行っておらず,上記開示請求に係る公文書は存在しないこと を理由に,公文書の全部を開示しないことを決定し,その旨通知した。 (以上について,乙5)(2)ア第1125回建築審査会議事録原告は,平成16年8月25日に開催された第1125回建築審査会において,本件審査請求事件に係る裁決案の評議がされ,その議事録が存在する旨主張する。 これに対し,被告は,第1125回建築審査会においては,本件審査請求に係る裁決案の決定は行われたが,裁決案の評議はされていない旨主張し,併せて,議決案の評議や決定は公開を予定していないことから会合には速記を入れず,したがって,議事録を作成しないのを原則とするが,平成16年当時,裁決案の評議や決定を行う建築審査会で,併せて口頭審査や同意議案が上程された場合には,これらの手続のために速記を入れており,裁決の評議や決定を含めた会議全体の議事録を作成する運用がなされていたものであって,第1125回建築審査会では,口頭審査や同意議案の上程が予定されていなかったため,速記は入れられず,議事録も作成されなかった旨主張する。 そこで検討するに,東京都建築審査会条例においては,議事録作成についての定めはなく(乙1参照),前記前提事実,証拠(甲6,乙5)及び弁論の全趣旨によれば,口頭審査及び同意議案が上程された第1123回建築審査会及び第1124回建築審査会については議事録が作成されたこと,また,処分行政庁は,本件議事録については,存在することを前提として非開示事由に該当することを理由としているのに対し,原告に対する第112 び第1124回建築審査会については議事録が作成されたこと,また,処分行政庁は,本件議事録については,存在することを前提として非開示事由に該当することを理由としているのに対し,原告に対する第1125回建築審査会の議事録については,平成19年9月20日付け非開示決定通知書(乙5)において,第1125回建築審査会は,議事録を作成し公開している口頭審査及び同意議案の上程がない審査会であったため,議事録作成を行っておらず,当該公文書は存在しないという,上記 被告の主張と同旨の根拠を挙げて,非開示の理由としていることが認められる。これらの事情に加え,被告の上記運用に関する主張があながち不自然とはいえないことに照らすと,本件議事録が存在するからといって,他の第1125回建築審査会における議事録が存在すると推認するに足らず,他に同事実を認めるに足りる証拠はない。 イ平成16年8月18日における建築審査会開催の有無原告は,また,平成16年8月18日にも建築審査会が開催され,本件審査請求事件に係る裁決案の評議がされ,その議事録も存在する旨主張し,確かに,被告作成の情報公開検索画面(甲8)には,これにそう表示がある。これに対し,被告は,上記甲8の表示は誤記であり,同日に建築審査会が開催された事実はない旨主張し,平成19年9月20日付け一部開示決定通知書(甲7)の備考欄においてもその旨の記載がある。 そこで検討するに,甲6及び弁論の全趣旨によれば,建築審査会は1か月に1回開催されるのが通例であり,各建築審査会には,すべて順次開催回につき通し番号で表示されていたところ,第1124回建築審査会が平成16年7月26日に開催され,第1125回建築審査会が同年8月25日に開催されたことが認められる。そして,第1124回建築審査会と第1125回建築審査会の各番号 ところ,第1124回建築審査会が平成16年7月26日に開催され,第1125回建築審査会が同年8月25日に開催されたことが認められる。そして,第1124回建築審査会と第1125回建築審査会の各番号が連続しており,間に欠番がないことによれば,同年7月27日から同年8月24日の間に建築審査会の会合が開催されたというのは不自然であるから,上記原告の主張する事実を認めることはできず,甲8の上記部分は,速やかな訂正がされていない点において怠慢とのそしりは免れないところであるが,誤記であると認められる。 (3)以上によれば,第1125回建築審査会については,議事録が作成されたということはできないので,本件文書として存在する文書とはいえない。また,平成16年8月18日に建築審査会が開催されたということはできないので,そもそも同建築審査会に関する議事録は存在し得ないから,これも本 件文書として存在する文書とはいえない。 そして,前記前提事実のとおり,第1123回建築審査会で行われた口頭審査に関する議事録は,そもそも本件文書の範囲から除外されているので,本件文書として開示の対象になるのは,第1124回建築審査会の議事録のうち,本件審査請求事件の裁決案の評議に係る部分となる。 争点(2)について(1)前記1(1)のとおり,第1124回建築審査会では,本件審査請求事件の裁決案の評議がされたことが認められる。そこで,争点(2)においては,同評議の内容が非開示情報に当たるかどうかが問題となる。 この点について,被告は,次のとおり主張する。すなわち,建築審査会は,行政庁や建築主事等の行った処分について,対立関係にある審査請求人と処分庁との双方から意見を聞き,処分の違法性の有無について委員間で意思決定を行ういわば準司法的な性格を有する機関であるとした上で, 行政庁や建築主事等の行った処分について,対立関係にある審査請求人と処分庁との双方から意見を聞き,処分の違法性の有無について委員間で意思決定を行ういわば準司法的な性格を有する機関であるとした上で,本件文書は,建築審査会という被告の機関の内部における評議に関する情報であって,公にすることにより,率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあり,また,建築審査会の議事録は,都の機関が行う事務又は事業に関する情報であって,公にすることにより,当該事務又は事業の性質上,当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとする。 (2)アそこで検討するに,第1124回建築審査会における裁決案の評議は,建築審査会が,それまでに行われた口頭審査等の結果を踏まえて,本件審査請求に対する裁決の内容を建築審査会内で協議し決定する手続であるというべきであるから,同評議の内容は,東京都情報公開条例7条5号にいう都の機関の内部における審議に関する情報であるというべきである。 そして,建築審査会の裁定の評議が非公開とされている(東京都建築審査会条例6条1項ただし書)のは,建築基準法に規定する同意及び同法94条1項の審査請求に対する裁決についての議決を行い,また,特定行政 庁の諮問に応じて,同法の施行に関する重要事項を調査審議するという建築審査会の職責(建築基準法78条)を果たすためには,審査の過程で建築審査会の委員による意思表明及び議論が何らの制約を受けることなく,率直に行われることが必要不可欠であり,その意思決定に不当な影響が及ぶおそれを極力排除する必要があり,また,裁決の評議の内容が公開された場合,将来の同種類似の事案の処理に影響を及ぼし,又は及ぼしかねないととられるおそれがある情報等が開示されることにより,無用な誤解や憶測を招く 排除する必要があり,また,裁決の評議の内容が公開された場合,将来の同種類似の事案の処理に影響を及ぼし,又は及ぼしかねないととられるおそれがある情報等が開示されることにより,無用な誤解や憶測を招くなどのおそれを懸念して,これを回避しようとする点にあると解される。 このように,建築審査会の裁定の評議において,委員による議論が自由かつ率直に行われることが必要とされ非公開とされていることによれば,裁定の評議の議事録は,東京都情報公開条例7条にいう,都の機関並びに国,独立行政法人等,他の地方公共団体及び地方独立行政法人の内部又は相互間における審議,検討又は協議に関する情報であって,公にすることにより,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ,不当に都民の間に混乱を生じさせるおそれ又は特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれがあるもの(同5号)に該当するというべきである。 イまた,上記建築審査会における評議は,前記条例7条6号にいう都の機関が行う事務に関する情報であるというべきであるところ,上記アのとおり,建築審査会の裁決の評議が公開されることにより将来の同種類似の事案の処理に影響を及ぼし,又は及ぼしかねないととられるおそれがある情報等が開示されることにより,無用な誤解や憶測を招く等のおそれを回避するため非公開とする必要があるとされていることによれば,裁定の評議の内容は,公にすることにより,同条例列記のおそれその他当該事務又は事業の性質上,当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあ るものにも該当するというべきである。 (3)以上に対し,原告は,本件審査請求事件に係る建物が竣工しており,非公開とする理由がないその議事録が公開されても審査結果の中立性が害されることはなく,また,発言者の氏名を るというべきである。 (3)以上に対し,原告は,本件審査請求事件に係る建物が竣工しており,非公開とする理由がないその議事録が公開されても審査結果の中立性が害されることはなく,また,発言者の氏名を非開示とすれば,委員の率直な意見交換を害することもない旨主張する。 しかしながら,裁定の評議が公開された場合,同種類似事案の処理に影響を及ぼし,又は及ぼしかねないとされる情報等が開示され,それによって,将来の裁決の評議における委員の中立性や率直な意見交換が阻害されるおそれが想定できるのみならず,仮に発言者の氏名を非開示としたとしても,口頭審査における各委員の発言内容等に照らし,発言者を特定することができるともいうことができ,こうした場合には,建築審査会の事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるので,上記原告の主張は採用できない。 (4)以上によれば,本件文書は,東京都情報公開条例7条5号及び6号に該当するというべきであるので,これを非開示とした本件処分は適法である。 よって,原告の請求は理由がないのでこれを棄却することとし,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部大門匡裁判長裁判官田徹裁判官吉 倉澤守春裁判官

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